説明

ワイパ装置

【課題】停止位置に停止するブレードラバーに所定の姿勢を維持させることができるワイパ装置を得る。
【解決手段】リヤワイパ装置10は、リヤウインドウガラス16を有するバックドア12に設けられており、ワイパモータ18の駆動力によってワイパブレード22が上下の反転位置Ut、Lt間で往復動することで該ワイパブレード22がリヤウインドウガラス16を払拭する。装置停止時にはワイパブレード22が下反転位置Ltで停止される。ワイパECU38は、ワイパブレード22が下反転位置Ltに停止している状態でバックドア12が閉動作された場合に、ワイパブレード22が下反転位置Ltから微少量だけ上反転位置Ut側に移動された後、反転されて下反転位置Ltで停止するようにワイパモータ18を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉ドアに設けられ、停止時にはワイパブレードがウインドウガラスに接触したまま所定の停止位置で停止されるワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイパブレードのブレードラバーの永久変形を防止するために、ワイパスイッチをオフする毎に、ワイパブレードが停止位置を超えないでそのまま停止する場合と、ワイパブレードが停止位置を超えた後反転して停止位置に戻って停止する場合とを交互に繰り返すようにする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、ワイパブレードの停止毎に、ブレードラバーのリップ部のガラス面に対する姿勢が入れ替わる。
【特許文献1】実開平5−37616
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術によっても、使用頻度が比較的少ないリヤワイパに適用された場合、ブレードラバーの永久変形を防止することは難しい。特に、リヤワイパは、開閉ドアに取り付けられている場合が多く、特許文献1の如くワイパブレードの停止毎にブレードラバーのリップ部のガラス面に対する停止姿勢を交互に反対方向としても、開閉ドアの閉鎖時の振動によってワイパブレードが振動し、その振動によってブレードラバーのリップ部のガラス面に対する姿勢が変化してしまう場合がある。すると、結局、ブレードラバーは永久変形してしまうが、その変形方向はコントロールできず不安定となってしまう。そのため、ブレードラバーの永久変形の変形方向を予め想定して、ブレードラバーが永久変形しても確実に反転動作が行われるようピボット軸の傾斜やワイパアームねじり形状等を設定することができなかった。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、停止位置に停止するブレードラバーに所定の姿勢を維持させることができるワイパ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係るワイパ装置は、ウインドウガラスを有する開閉ドアに設けられ、ワイパモータの駆動力によってワイパブレードが上下の反転位置間で往復動することで該ワイパブレードのブレードラバーが前記ウインドウガラスを払拭し、停止時には前記ブレードラバーが前記ウインドウガラスに接触したままで所定の停止位置に停止されるワイパ装置であって、前記ワイパブレードが前記停止位置に停止している状態で前記開閉ドアによって開口部が閉止された場合に、前記ワイパブレードが前記停止位置から前記上下の反転位置間側に所定量だけ移動された後、前記停止位置側に反転されて停止するように前記ワイパモータを制御する制御手段を備えた。
【0006】
請求項1記載のワイパ装置では、ワイパモータが駆動されると、ワイパブレードが上下の反転位置間を往復動し、開閉ドアのウインドウガラスが払拭される。停止する際には、ワイパブレードが所定の停止位置まで移動された後に、ワイパモータが停止される。したがって、本ワイパ装置では、停止位置で停止しているワイパブレードのブレードラバーは、ウインドウガラスに対する姿勢が略一定とされる。
【0007】
ここで、本ワイパ装置では、ワイパブレードが停止位置に停止されている状態において、開閉ドアによって車体開口部が閉止されると、制御手段は、ワイパモータを制御し、ワイパブレードを停止位置から上下の反転位置間(払拭領域)側に移動させた後、停止位置側に反転させ停止させる。
【0008】
これにより、本ワイパ装置では、ワイパブレードのブレードラバーは、ワイパブレードがウインドウガラスの払拭終了後に該ウインドウガラスの払拭領域から停止位置に移動された場合の姿勢と、開閉ドアによる車体開口部の閉止後の姿勢とが同じ姿勢になる。したがって、本ワイパ装置では、仮に外的要因である開閉ドアの閉動作に伴ってワイパブレードのブレードラバーの姿勢が変化されていても、その後の払拭領域側への移動及び反転によってワイパブレードのブレードラバーの姿勢が装置停止後の姿勢に強制的に戻される。
【0009】
このように、請求項1記載のワイパ装置では、停止位置に停止するブレードラバーに所定の姿勢を維持させることができるため、ブレードラバーの永久変形の変形方向を予め想定して確実なブレードラバーの反転動作が実行できるワイパの諸設定が可能である。
【0010】
請求項2記載の発明に係るワイパ装置は、上下の反転位置間を往復動することで、車体開口部を開閉するための開閉ドアのウインドウガラスを払拭するブレードラバーを有するワイパブレードと、前記ワイパブレードが前記上下の反転位置間で往復動するように該ワイパブレードに駆動力を付与するためのワイパモータと、ワイパスイッチのオフ時には前記ワイパブレードが所定の停止位置に停止され、ワイパスイッチのオン時には前記ワイパブレードが前記上下の反転位置間で往復動され、かつ、前記ワイパスイッチのオフ時であってドアセンサから前記開閉ドアが前記車体開口部を閉止したことに対応する信号が入力された場合に、前記ワイパブレードが前記停止位置から前記上下の反転位置間側に所定量だけ移動された後、前記停止位置側に反転されて停止するように、前記ワイパモータを制御する制御手段と、を備えている。
【0011】
請求項2記載のワイパ装置では、ワイパスイッチからオン信号が入力された制御手段は、ワイパブレードが上下の反転位置間で往復動するようにワイパモータを制御する。これにより、上下の反転位置間を往復動するワイパブレードによって、開閉ドアのウインドウガラスが払拭される。一方、ワイパスイッチからオン信号が入力された制御手段は、ワイパブレードが所定の停止位置に停止されるように、ワイパモータを制御する。これにより、ワイパブレードが停止位置で停止されると、ワイパモータも停止される。したがって、本ワイパ装置では、停止位置で停止しているワイパブレードのウインドウガラスに対する姿勢が略一定とされる。
【0012】
ここで、本ワイパ装置では、ワイパブレードが停止位置に停止されているワイパスイッチのオフ状態でおいて、開閉ドアによって車体開口部が閉止された場合には、制御手段は、ワイパモータを制御し、ワイパブレードを停止位置から上下の反転位置間(払拭領域)側に所定量だけ移動させた後、停止位置側に反転させ停止させる。
【0013】
これにより、本ワイパ装置では、ワイパブレードのブレードラバーは、ワイパブレードがウインドウガラスの払拭終了後に該ウインドウガラスの払拭領域から停止位置に移動された場合の姿勢と、開閉ドアによる車体開口部の閉止後の姿勢とが同じ姿勢になる。したがって、本ワイパ装置では、仮に外的要因である開閉ドアの閉動作に伴ってワイパブレードのブレードラバーの姿勢が変化されていても、その後の払拭領域側への移動及び反転によってワイパブレードのブレードラバーの姿勢が装置停止後の姿勢に強制的に戻される。
【0014】
このように、請求項2記載のワイパ装置では、停止位置に停止するブレードラバーに所定の姿勢を維持させることができるため、ブレードラバーの永久変形の変形方向を予め想定して確実なブレードラバーの反転動作が実行できるワイパの諸設定が可能である。
【0015】
請求項3記載の発明に係るワイパ装置は、請求項1又は請求項2記載のワイパ装置において、前記ブレードラバーは、前記ウインドウガラスに接触された前記ブレードラバーのリップ部が前記上下の反転位置間側と反対側に倒れる方向に傾斜した姿勢が、前記停止位置に位置する際の正規の停止姿勢とされており、前記制御手段は、前記ブレードラバーが前記正規の停止姿勢で停止されるように、前記ワイパモータを制御する設定とされている。
【0016】
請求項3記載のワイパ装置では、ウインドウガラスの払拭動作から停止位置に移動して停止したワイパブレードのブレードラバーの姿勢、開閉ドアの閉動作後に上下反転位置間側に移動した後に反転して停止したワイパブレードのブレードラバーの姿勢は、それぞれ前記ブレードラバーのリップ部が上下反転位置間(払拭領域)側とは反対側に倒れる方向に(該反対側でウインドウガラスに近づくように)傾斜した姿勢とされる。これにより、仮にこの姿勢でブレードラバーに永久変形が生じた場合でも、該ブレードラバーによる払拭性能の低下が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るワイパ装置としてのリヤワイパ装置10について、図1〜図6に基づいて説明する。
【0018】
図1には、リヤワイパ装置10の概略全体構成が模式的な斜視図にて示されている。この図に示される如く、リヤワイパ装置10は、自動車Aに適用され、該自動車Aを構成する開閉ドアとしてのバックドア12に設けられている。バックドア12は、図示しない上ヒンジ又は横ヒンジを介して車体に連結されており、車体後部開口であるリヤゲート14を閉止する姿勢(図1参照)と、リヤゲート14を開放させる姿勢(図示省略)とを取り得る構成とされている。このリヤゲート14の上部には、後方視界を確保するためのリヤウインドウガラス16が設けられており、リヤワイパ装置10は、リヤウインドウガラス16の外表面(に付着した雨水や洗浄水等)を払拭するようになっている。
【0019】
具体的には、リヤワイパ装置10は、ワイパモータ18と、ワイパモータ18によって揺動されるワイパアーム20と、ワイパアーム20の先端20Aに連結され該ワイパアーム20の往復動に伴って上下の反転位置Ut、Lt間を往復動するワイパブレード22とを機械的な主要部として構成されている。リヤワイパ装置10では、ワイパアーム20とワイパブレード22との間に設けられた図示しないスプリングによって、ワイパブレード22がリヤウインドウガラス16に押し付けられて(アーム圧が作用されて)いる。
【0020】
これにより、リヤワイパ装置10では、ワイパブレード22が上反転位置Ut、下反転位置Lt間を往復動することで、該ワイパブレード22によってリヤウインドウガラス16が払拭されるようになっている。また、リヤワイパ装置10では、その停止時には、ワイパブレード22が所定の停止位置で停止されるようになっている。この実施形態では、所定の停止位置は、下反転位置Ltに一致されて設定されている。
【0021】
ワイパブレード22について補足すると、図4に示される如く、ワイパブレード22は、リヤウインドウガラス16を払拭するためのブレードラバー24と、ブレードラバー24に剛性を付与するバッキング26と、ブレードラバー24を保持すると共にワイパアーム20に連結される連結部材を構成するレバー28を主要構成要素として構成されている。
【0022】
ブレードラバー24は、全体としてワイパブレード22の長手方向に長手とされた長尺状部材とされており、リヤウインドウガラス16を払拭するための払拭部としてのリップ部30と、レバー28に保持されると共にバッキング26が装着された基部32と、リップ部30と基部32とを連結しリヤウインドウガラス16の払拭時に倒れ方向に弾性変形するネック部34とが一体に形成されている。リップ部30は、長手方向直角断面視で略逆三角形状を成している。なお、バッキング26は、ブレードラバー24の長手方向に沿って長手とされた金属板材として構成されており、基部32における幅方向両側部にそれぞれ形成されたバッキング用溝36嵌入されている。
【0023】
以上説明したワイパブレード22は、図3(A)及び図3(B)に示される如く、リヤウインドウガラス16の被払拭面である外表面16Aに対し傾斜した姿勢で、上下の反転位置Ut、Lt間を往復動されるように、ワイパアーム20に連結支持されている。具体的には、ワイパブレード22は、ブレードラバー24の基部32の幅方向中心線CLbとリヤウインドウガラス16の外表面16Aの法線NLとの成す角であるアタックアングルθaが上下の反転位置Ut、Lt間で所定の角度変化となるように設定されている。
【0024】
このアタックアングルθaは、ブレードラバー24の基部32の幅方向中心線CLbがリヤウインドウガラス16の外表面16Aの法線NLに対し上反転位置Ut側に傾く(ブレードラバー24が上反転位置Ut側に倒れる)方向に設定されている。
【0025】
一方、上記の通り図示しないスプリングによってアーム圧が作用されているワイパブレード22は、ブレードラバー24のリップ部30がリヤウインドウガラス16の外表面16Aに対し傾斜した姿勢で該外表面16Aに接触するようになっている。このリップ部30の幅方向中心線CLlと、リヤウインドウガラス16の外表面16Aとの成す角は、接触角θcとされている。リヤワイパ装置10では、良好な払拭性能を得るため、上下の反転位置Ut、Lt間の払拭領域の全範囲に亘って接触角θcが略一定の角度となるように上記アタックアングルθaの角度変化を設定している。
【0026】
リヤワイパ装置10では、ワイパブレード22の往復動方向の反転に伴って、リヤウインドウガラス16の外表面16Aに対するリップ部30傾斜方向が反転する(接触角θcの正負が入れ替わる)ようになっている。具体的には、下反転位置Ltから上反転位置Utに向かう(以下、「オープン方向の」という)払拭動作では、図3(A)に矢印Aにて示される如く、リップ部30が実線の姿勢から想像線の姿勢へと姿勢変化(接触角θcが反転)し、上反転位置Utから下反転位置Ltに向かう(以下、「クローズ方向の」という)払拭動作では、図3(B)に矢印Bにて示される如く、リップ部30が実線の姿勢から想像線の姿勢へと姿勢変化(接触角θcが反転)する構成とされている。
【0027】
また、以下の説明では、図3(A)に実線にて示すようにリップ部30(の幅方向中心線CLl)が法線NLに対し下反転位置Lt側(上下の反転位置Ut、Lt間である払拭領域に対する反対側))に倒れる接触角θcを正の接触角、図3(A)に想像線にて示すようにリップ部30が法線NLに対し上反転位置Ut側に倒れる接触角θcを負の接触角ということとする。
【0028】
リヤワイパ装置10では、下反転位置Ltにおいて上記したアタックアングルθaは、ワイパブレード22がオープン方向に移動する際に、リップ部30が正の接触角θcから負の接触角θcに反転し易いように設定されている。このアタックアングルθaの設定は、例えば、ワイパアーム20が固定されるピボット軸の傾き角度とその傾き方向を設定することや、ワイパアーム20に所定のねじり形状を施すことなどによって行われる。
【0029】
また、図1に示される如く、リヤワイパ装置10は、制御手段としてのワイパECU38を備えている。ワイパECU38は、ワイパモータ18の作動、停止を制御するようになっている。より具体的には、図2に示される如く、ワイパECU38は、リヤウインドウガラス16、電源40、ワイパスイッチ42、ドアセンサとしてのバックドアセンサ44、ワイパモータ18に内蔵された位置センサ46のそれぞれに電気的に接続されている。
【0030】
ワイパスイッチ42は、自動車Aの運転者等によりON操作された場合にON信号を出力し、自動車Aの運転者等によりOFF操作された場合にOFF信号を出力する構成とされている。バックドアセンサ44は、バックドア12がリヤゲート14を開放する姿勢から閉止する姿勢に姿勢変化された場合に、該姿勢変化が生じたことに対応するドア閉信号を出力するように構成されている。バックドアセンサ44として、例えばカーテシスイッチ等を用いることができる。位置センサ46は、ワイパブレード22の位置に対応する位置信号を出力するようになっている。
【0031】
ワイパECU38は、位置センサ46からの位置信号を、少なくともワイパブレード22が停止位置(下反転位置Lt)に位置するか否かを判断するために用いるように構成されている。なお、ワイパモータ18は、例えば一定方向に連続回転することでリンク機構等を介してワイパブレード22を往復動させる構成とされても良く、また例えば所定角範囲で往復回動することでワイパブレード22を直接的に又はリンク機構等を介して往復動させる構成とされても良いが、前者の構成をとる場合でも、ワイパECU38の制御に応じた正逆回転可能に構成されている。
【0032】
この実施形態では、ワイパECU38は、ワイパモータ18に設けた位置センサ46からの信号に基づいて、ワイパブレード22が下反転位置Ltから所定の微小量だけ上反転位置Ut側に移動したことを検知可能とされている。上記した所定の微小量は、ワイパブレード22を移動(回動)させて図3(B)に矢印Bにて示される如くリップ部30の接触角θcが負から正へと反転されるのに、必要かつ十分な角度として設定されている。より具体的には、この実施形態では、上記した所定の微小量は、ワイパブレード22を略3°だけ回動させる量として設定されている。以下、ワイパブレード22が下反転位置Ltから上反転位置Ut側に略3°だけ移動された位置を矯正用反転位置Stということとする。
【0033】
そして、ワイパECU38は、ワイパスイッチ42、バックドアセンサ44、位置センサ46から入力される信号に基づいて、ワイパブレード22が所要の動作を行うように、ワイパモータ18を制御するように構成されている。すなわち、ワイパECU38は、ワイパスイッチ42からON信号が入力されると、ワイパブレード22が上下の反転位置Ut、Lt間を往復動するようにワイパモータ18を作動させるようになっている。また、ワイパECU38は、ワイパスイッチ42からOFF信号が入力されると、ワイパブレード22が下反転位置Ltに移動されるようにワイパモータ18を作動させ、ワイパブレード22が下反転位置Ltに至るとワイパモータ18を停止させるようになっている。
【0034】
さらに、ワイパECU38は、ワイパブレード22が下反転位置Ltで停止している期間中にバックドアセンサ44からドア閉信号が入力されると、ワイパブレード22が下反転位置Ltから矯正用反転位置Stまで移動された後、該ワイパブレード22が反転され(ワイパモータ18の回転方向が切り替えられ)下反転位置Ltで停止されるようにワイパモータ18を制御するように構成されている。
【0035】
以上説明したように、リヤワイパ装置10では、ワイパブレード22は、下反転位置Ltで停止する際には、上反転位置Ut又は矯正用反転位置St側から下反転位置Ltに至って(クローズ方向に移動して)停止するので、図6(A)に示される如く下反転位置Ltで停止しているワイパブレード22のブレードラバー24は、そのリップ部30の姿勢が正の接触角θcをとる姿勢とされる構成である。換言すれば、リヤワイパ装置10では、リップ部30が正の接触角θcをとる姿勢が、下反転位置Ltで停止するブレードラバー24の正規の停止姿勢と(して設定)されている。
【0036】
次に、本実施の形態の作用について、ワイパECU38の制御フローを示す図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0037】
上記構成のリヤワイパ装置10では、ワイパECU38は、ステップS10でワイパスイッチ42からON信号が入力されているか否かを判断する。ON信号が入力されたと判断したワイパECU38は、ステップS12に進み、ワイパモータ18を払拭モードで作動させる。すなわち、ワイパECU38は、ワイパブレード22が上下の反転位置Ut、Lt間で往復動するようにワイパモータ18を制御する。これにより、リヤウインドウガラス16がワイパブレード22によって払拭される。
【0038】
ワイパECU38は、ステップS14に進み、ワイパスイッチ42からOFF信号が入力されたか否かを判断する。OFF信号が入力されていないと判断したワイパECU38は、ステップS12に戻り、ワイパブレード22によってリヤウインドウガラス16を払拭させるためのワイパモータ18の動作を維持する。一方、OFF信号が入力されたと判断したワイパECU38は、ステップS16に進む。
【0039】
ステップS16でワイパECU38は、ワイパモータ18を停止モードで作動させる。すなわち、ワイパECU38は、位置センサ46からの信号に基づいて、ワイパブレード22が上反転位置Ut側に向かって移動している場合には、該ワイパブレード22が上反転位置Utに至って反転するように、ワイパブレード22が下反転位置Lt側に向かって移動している場合にその移動を維持するように、ワイパモータ18を作動させる。
【0040】
次いでワイパECU38は、ステップS18に進み、位置センサ46からの信号に基づいて、ワイパブレード22が停止位置すなわち下反転位置Ltに至ったか否かを判断する。ワイパECU38は、ステップS18で、位置センサ46からの信号に基づいて、ワイパブレード22が停止位置すなわち下反転位置Ltに至っていないと判断した場合には、ステップS16に戻る。これにより、リヤワイパ装置10では、ワイパブレード22が下反転位置Ltに至るまで停止モードの動作が維持される。そして、ワイパブレード22が下反転位置Ltに至ったと判断したワイパECU38は、ステップS20に進み、ワイパモータ18を停止させる。
【0041】
また、ステップS10でワイパスイッチ42からON信号が入力されていないと判断したワイパECU38は、ステップS22に進み、バックドアセンサ44からドア閉信号が入力されたか否かを判断する。バックドアセンサ44からドア閉信号が入力されていないと判断したワイパECU38は、ステップS10に戻る。
【0042】
一方、バックドアセンサ44からドア閉信号が入力されたと判断したワイパECU38は、ステップS24に進み、ワイパブレード22がオープン方向に移動するようにワイパモータ18を作動させる(例えば正転させる)。これにより、ワイパブレード22は、下反転位置Ltから矯正用反転位置St(上反転位置Ut)側に移動される。次いでワイパECU38は、ステップS26に進み、位置センサ46からの信号に基づいてワイパブレード22が矯正用反転位置Stに到達したか否かを判断する。ワイパブレード22が矯正用反転位置Stに到達していないと判断したワイパECU38は、ステップS24に戻り、ワイパブレード22をオープン方向(矯正用反転位置St側)に移動させるワイパモータ18の動作を維持する。
【0043】
ワイパブレード22が矯正用反転位置Stに到達したと判断したワイパECU38は、ステップS28に進み、ワイパモータ18の回転方向を反転させる(例えば逆転させる)。すると、ワイパブレード22は、移動方向がクローズ方向に反転される。次いでワイパECU38は、ステップS18に進む。これにより、ワイパブレード22は、上記した払拭モードからの停止の場合と同様に、下反転位置Ltで停止される。また、ステップS20に進むとワイパモータ18が停止される。
【0044】
ここで、リヤワイパ装置10では、バックドアセンサ44からドア閉信号が入力された場合に、ワイパブレード22が下反転位置Ltから所定量(3°)だけ上反転位置Ut側の矯正用反転位置Stまで移動された後、クローズ方向に反転されて停止するため、停止時のリップ部30の姿勢は、払拭モードからの停止の場合と同じ姿勢である正の接触角をとる正規の停止姿勢となる。これにより、仮にバックドア12によるリヤゲート14の開閉動作に伴って生じる振動等に起因して、ワイパブレード22が下反転位置Lt停止している状態においてリップ部30が負の接触角をとる図6(B)の姿勢に姿勢変化してしまっても、このリップ部30の姿勢を強制的に図6(A)に示す正規の停止姿勢に復帰させることができる。
【0045】
したがって、本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置10では、装置停止時のリップ部30の姿勢を、常に図6(A)に示す正規の停止姿勢に維持することができる。
【0046】
ところで、リップ部30が図6(B)に示す負の接触角をとる姿勢で長期間放置されると、リップ部30が負の接触角をとる姿勢でブレードラバー24が永久変形してしまう場合がある。このような姿勢で永久変形されたブレードラバー24では、オープン方向の払拭動作では払拭性能を確保できるものの、クローズ方向の払拭動作では、図3(B)に矢印Bにて示されるリップ部30の接触角の反転(正負の入れ替わり)が行われ難くなる。特に、払拭始動時の払拭をスムースに行うため、オープン方向の払拭動作に比べてクローズ方向の払拭動作でのリップ部30の反転は不利な方向のアタックアングルθaが設定されているので、該クローズ方向の払拭動作におけるリップ部30の反転不良が発生し易い。
【0047】
そして、このようなクローズ方向の払拭動作においてリップ部30の反転不良が生じると、リップ部30が負の接触角で外表面16Aに接触する状態を維持したままクローズ方向の払拭動作が行われ、換言すれば、リップ部30が外表面16Aを逆撫でする如くクローズ方向の払拭動作が行われ、びびり音が発生したり、払拭性能が著しく低下したりする原因となる。
【0048】
これに対して、リヤワイパ装置10では、上記の通り、停止中のリップ部30の姿勢が常に正規の停止姿勢に維持されるので、リップ部30が負の接触角をとる姿勢でブレードラバー24が永久変形されてしまうことが防止される。そして、仮にリップ部30が正規の停止姿勢をとる状態でブレードラバー24が永久変形されても、該姿勢はクローズ方向の払拭動作に適した姿勢であるため、クローズ方向の払拭動作に伴ってびびり音が発生したり、払拭性能が低下したりすることが防止又は抑制される。一方、リヤワイパ装置10では、オープン方向の払拭動作については、リップ部30の反転に適したアタックアングルθaが設定されているので、リップ部30が正の接触角をとる姿勢で永久変形されたブレードラバー24によっても所要の払拭性能を維持する(払拭性能の低下を抑制する)ことができる。
【0049】
以上により、リヤワイパ装置10では、ブレードラバー24の長寿命化、取り替え頻度の減少を図ることができる。そして、本発明は、フロントワイパ装置と比較して使用頻度が低く長期間放置によるブレードラバー24の永久変形が生じやすいリヤワイパ装置10に好適に適用される。特に、バックドア12のバックウインドウガラス16を払拭するリヤワイパ装置10において、バックドア12の閉動作に伴うワイパアーム20の振動によってブレードラバー24の停止姿勢が変更されてしまっても常に正規の停止姿勢に修正されるので、ブレードラバー24の永久変形の変形方向を一定とし、その変形方向を想定したワイパの諸設定を行い良好な払拭性を確保することができる。
【0050】
なお、上記した実施形態では、装置停止時におけるワイパブレード22の停止位置が下反転位置Ltに一致された例を示したが、本発明はこれに限定されず、ワイパブレード22の停止位置は、クローズ方向(アタックアングルθaの設定によりリップ部30の反転に不利になる方向)の動作で停止されれば足り、例えば下反転位置Ltに対し上反転位置Ut側に設定されても上反転位置Ut側と反対側に設定されても良く、停止位置が上反転位置に一致されても良い。また例えば、本発明は、装置停止時のワイパブレード22の停止位置と、矯正反転時(矯正用反転位置Stからの復帰時)のワイパブレード22とが一致している好ましい構成に限定されることもない。また、上記実施形態では、所定の微少量としてピボット軸廻りの角度で3°としたが、ワイパブレードの移動量として少なくとも5mm、より確実には10mmの移動を行わせるように設定しても良い。
【0051】
また、上記した実施形態では、図5に示す制御フローを例示したが、本発明の制御は、図5の制御フローによって行われることに限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置の概略全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置を構成する制御系のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置を構成するワイパブレードを示す図であって、(A)は下反転位置におけるクローズ方向からオープン方向への払拭に伴うリップ部の反転を断面図、(B)は、上反転位置におけるオープン方向からクローズ方向への払拭に伴うリップ部の反転を断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置を構成するワイパブレードを示す長手方向直角断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置を構成するワイパECUによる制御フローを例示するフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るリヤワイパ装置を構成するワイパブレードを示す図であって、(A)はリップ部の正規の停止姿勢を示す断面図、(B)はリップ部の正規の停止姿勢から姿勢変化した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・リヤワイパ装置、12・・・バックドア(開閉ドア)、14・・・リヤゲート(車体開口部)、16・・・リヤウインドウガラス(ウインドウガラス)、18・・・ワイパモータ、22・・・ワイパブレード、30・・・リップ部、38・・・ワイパECU(制御手段)、42・・・ワイパスイッチ、44・・・バックドアセンサ(ドアセンサ)、Lt・・・下反転位置、Ut・・・上反転位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドウガラスを有する開閉ドアに設けられ、ワイパモータの駆動力によってワイパブレードが上下の反転位置間で往復動することで該ワイパブレードのブレードラバーが前記ウインドウガラスを払拭し、停止時には前記ブレードラバーが前記ウインドウガラスに接触したままで所定の停止位置に停止されるワイパ装置であって、
前記ワイパブレードが前記停止位置に停止している状態で前記開閉ドアによって開口部が閉止された場合に、前記ワイパブレードが前記停止位置から前記上下の反転位置間側に所定量だけ移動された後、前記停止位置側に反転されて停止するように前記ワイパモータを制御する制御手段を備えたワイパ装置。
【請求項2】
上下の反転位置間を往復動することで、車体開口部を開閉するための開閉ドアのウインドウガラスを払拭するブレードラバーを有するワイパブレードと、
前記ワイパブレードが前記上下の反転位置間で往復動するように該ワイパブレードに駆動力を付与するためのワイパモータと、
ワイパスイッチのオフ時には前記ワイパブレードが所定の停止位置に停止され、ワイパスイッチのオン時には前記ワイパブレードが前記上下の反転位置間で往復動され、かつ、前記ワイパスイッチのオフ時であってドアセンサから前記開閉ドアが前記車体開口部を閉止したことに対応する信号が入力された場合に、前記ワイパブレードが前記停止位置から前記上下の反転位置間側に所定量だけ移動された後、前記停止位置側に反転されて停止するように、前記ワイパモータを制御する制御手段と、
を備えたワイパ装置。
【請求項3】
前記ブレードラバーは、前記ウインドウガラスに接触された前記ブレードラバーのリップ部が前記上下の反転位置間側と反対側に倒れる方向に傾斜した姿勢が、前記停止位置に位置する際の正規の停止姿勢とされており、
前記制御手段は、前記ブレードラバーが前記正規の停止姿勢で停止されるように、前記ワイパモータを制御する設定とされている請求項1又は請求項2記載のワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12673(P2009−12673A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178384(P2007−178384)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】