説明

ワイピングクロスおよびその製造方法

【課題】吸水性、保水性、および拭取性に優れ、かつ洗濯耐久性に優れた、抗菌性および拭取性の高い拭取布帛であり、工業用または一般家庭用のワイピングクロスとして広範囲に用いられ、かつ、乾湿両用途において効果を発揮するワイピングクロスを提供する。
【解決手段】単繊維繊度が0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)が50〜80重量%と、単繊維繊度が1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)が50〜20重量%とによって多層構造に形成された布帛からなる、少なくとも片面に立毛を有することを特徴とするワイピングクロス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性、保水性、および拭取性に優れ、かつ洗濯耐久性に優れた、抗菌性および拭取性の高い拭取布帛であり、工業用または一般家庭用のワイピングクロスとして広範囲に用いられ、かつ、乾湿両用途において効果を発揮するワイピングクロスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用拭取布帛または一般家庭用および病院用拭取布帛は、塵、埃、人為的汚れを拭き取ることによって非拭き面を綺麗にする効果を奏するものである。
【0003】
一般的には、工業用拭取布帛または一般家庭用および病院用拭取布帛として、例えば木綿、麻、およびレーヨンなど天然繊維または再生繊維の紡績糸を使用した織物などが使用されてきた。該布帛によれば、主に吸水性や保水性に優れており、繊維自身が親水性であるために、水に馴染み易く、容易に水分や汚れ水を吸い取ることができ、布帛内部に水分または汚れ水を保持し易いことにある。しかしながら、繊維間の隙間または単繊維内部に取り込まれた水分または汚れ水は、たとえ手で硬く絞ったつもりでも容易に排出されず、布帛内部に残ってしまう。そのため、非拭き面に再付着し、逆に汚れを残す結果となり、非拭き面を綺麗にすることは困難であった。
【0004】
一方、合成繊維素材は、疎水性であるため、水に馴染みにくく、吸水性や保水性においては、木綿、麻およびレーヨンなどの天然繊維や再生繊維に比べて劣っている。そのため、水分または汚れ水は殆ど単繊維内部に取り込まれることがなく、手で絞ることによって容易に排出される。しかしながら、拭取効果は水分を介在して始めて綺麗にする効果が得られることが知られており、吸水性や保水性を高めた合成繊維からなる種々の布帛(編織物)が拭取布帛として提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、極細フィラメント糸からなる布帛を少なくとも片面に配したワイピング材が提案されているものの、多層構造や立毛構造に関する検討や湿式による検討がなされていない。
【0006】
また、特許文献2では、捲縮加工された極細繊維からなるワイピングクロスが提案されているものの、多層構造や立毛構造に関する検討がなされていない。
【0007】
また、特許文献3では、極細繊維表面からなる布帛表面を起毛した起毛織物が提案されているものの、多層構造に関する検討がなされていない。
【0008】
また、特許文献4では、極細繊維で構成された高密度布帛が提案されてものの、多層構造や立毛構造に関する検討がなされていない。
【0009】
また、特許文献5では、長い極細繊維立毛と短い太い繊維立毛が混在した払拭用基布が提案されているものの、多層構造に関する検討がなされていない。
【特許文献1】特開昭62−217933号公報
【特許文献2】特開平2−139449号公報
【特許文献3】特開平4−65557号公報
【特許文献4】特開平6−184928号公報
【特許文献5】特開2004−308025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者などの各種検討によれば、吸水性および保水性は多層構造とすることで、汚れは極細繊維とその他の繊維で構成した布帛の少なくとも片面に立毛を配する構造にすることによって、乾湿両用途において非拭き面を綺麗にする効果を奏することが判明し、本発明に至ったものである。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決せんとすることにあり、吸水性、保水性、および拭取性に優れ、かつ洗濯耐久性に優れた、抗菌性および拭取性の高い拭取布帛であり、工業用または一般家庭用のワイピングクロスとして広範囲に用いられ、かつ、乾湿両用途において効果を発揮するワイピングクロスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)単繊維繊度が0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)が50〜80重量%と、単繊維繊度が1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)が50〜20重量%とによって多層構造に形成された布帛からなる、少なくとも片面に立毛を有することを特徴とするワイピングクロス。
【0013】
(2)多層構造に形成された布帛が多層構造を繋ぐ合成フィラメント繊維で結着され、該多層構造を繋ぐ合成フィラメント繊維の太さが0.1デシテックス以上10デシテックス以下の太さであることを特徴とする前記(1)に記載のワイピングクロス。
【0014】
(3)前記極細合成フィラメント繊維(A)および合成フィラメント繊維(B)がポリエステル系繊維および/またはポリアミド系繊維からなることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0015】
(4)立毛が、単繊維繊度0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)が50〜80重量%と、単繊維繊度1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)が50〜20重量%で構成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0016】
(5)立毛の長さが0.1mm〜10mmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0017】
(6)厚さが0.5〜1.5mmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0018】
(7)ピリジン系抗菌剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0019】
(8)保水率が200〜400重量%であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のワイピングクロス。
【0020】
(9)海島構造または剥離構造を有する複合合成繊維と該複合合成繊維の海成分除去処去後または剥離処理後の複合合成繊維の単繊維繊度よりも太い合成繊維を用いて複数枚の筬を有するタテ編み機または織機に掛けて成編織してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分除去処理または剥離処理した後、少なくとも片面を起毛することを特徴とするワイピングクロスの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸水性、保水性、および拭取性に優れ、かつ洗濯耐久性に優れた、抗菌性および拭取性の高い拭取布帛であり、工業用または一般家庭用のワイピングクロスとして広範囲に用いられ、かつ、乾湿両用途において効果を発揮するワイピングクロスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、さらに詳しく本発明について説明する。
【0023】
本発明のワイピングクロスは、吸水性および保水性を持たせるために、多層構造とし、汚れを掻き取るまたは拭き取るために極細合成フィラメント繊維とその他の合成フィラメント繊維で構成した布帛の少なくとも片面に立毛を配する構造にしたことによって、乾湿両用途において非拭き面を綺麗にする効果が得られたものである。
【0024】
本発明の多層構造の布帛は、2層以上からなる織物、あるいは編物、不織布などからなる布帛であり、層数は特に限定されないが、表層部、裏層部の2層、あるいは表層部、中層部、裏層部の3層が好ましい。ここで、表層部、裏層部のいずれか、または両層は、立毛を配する構造にし拭き取り層とする。
【0025】
多層構造の少なくとも単層は極細合成フィラメント繊維(A)と該極細合成フィラメント繊維以外の合成フィラメント繊維(B)で構成される。
【0026】
すなわち、まず、本発明のワイピングクロスに含まれる極細合成フィラメント繊維(A)は太さにおいて単繊維繊度が0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の合成繊維であり、該極細合成ィラメント繊維(A)の好ましい太さは0.005〜0.5デシテックス以下、さらに好ましくは0.01〜0.1デシテクッス以下のフィラメントである。0.001デシテックスを下回る場合にはあまりにも細いため、拭圧に耐えられず単糸切れが発生して逆にゴミを発生することになり、1.0デシテックスを上回る場合は太すぎるため微細な塵や埃を捕獲することができにくくなる。
【0027】
極細合成フィラメント繊維(A)以外の合成フィラメント繊維(B)の単繊維繊度は、1.0デシテックス以上10デシテックス以下のものであり、好ましくは1.3デシテックス以上9デシテックス以下、さらに好ましくは1.5デシテックス以上8デシテックス以下のものである。1.0デシテックスを下回る場合には布帛全体として腰がなくフニャフニャのものになって拭き取りにくくなり、実用上好ましくない。10デシテックスを上回る場合には逆に硬いものになり、これも実用上好ましくない。
【0028】
また、少なくとも多層構造を繋ぐ合成フィラメント繊維の単繊維の太さは0.1デシテックス以上10デシテックス以下であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5デシテックス以上9デシテックス以下、より好ましくは1.0デシテックス以上8デシテックス以下のものである。0.1デシテックスを下回る場合には布帛全体として腰がなくフニャフニャのものになり、実用上好ましくない。10デシテックスを上回る場合には逆に硬いものになり、これも実用上好ましくない。
【0029】
布帛を構成する合成繊維としては、極細化可能な合成繊維とその他の合成繊維を用いる。極細化可能な繊維としては、例えば、海島型合成繊維または剥離型合成繊維などが挙げられる。
【0030】
海島型合成繊維の場合は島成分としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの極細化可能な繊維であればいかなる繊維でもよいが、なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらの共重合体などからなるポリエステル系繊維や、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合体などからなるポリアミド系繊維が好ましい。さらに、極細化した後の洗濯による寸法変化の小さいポリエステル系繊維がより好ましい。海成分としては、例えば、ポリエステル系変成樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられるが、なかでも、島成分との相性が良く製糸し易い、ポリエステル系変成樹脂が好ましい。極細化は、海成分を例えばアルカリ溶液中で溶解することによって、容易に得ることができる。
【0031】
また、剥離型合成繊維の場合は、2〜5成分の合成樹脂繊維を組み合わせて得ることができ、単一成分としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などを挙げることができるが、なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらの共重合体などからなるポリエステル系繊維や、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合体などからなるポリアミド系繊維、およびこれらの組み合わせのものが好ましい。
【0032】
剥離型の場合は、例えば、アルカリ液中で処理することによって、剥離し、極細化することができる。
【0033】
その他の合成繊維としては、布帛全体の風合いを調整する重要な役割を果たすものであり、風合いをコントロールできる繊維であればいかなる繊維でもよく、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などを挙げることができるが、なかでも、極細繊維との相性がよい、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらの共重合体などからなるポリエステル系繊維や、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合体などからなるポリアミド系繊維が好ましい。
【0034】
また、極細化可能な合成繊維とその他の合成繊維は、生糸のまま使うことはできるが、予め、各々、別々に仮撚り、押し込み、擦過などの加工糸にして使うこともできるし、両者をエアー交絡、実撚りを施して使うこともでき、目的に応じて選ぶことができる。
【0035】
本発明のワイピングクロス布帛は、中層部に位置する繊維はダンボール構造にすることにより、中層部に多くの空隙が生じ、この空隙によって汚れ液が内部に取り込まれて湿または濡れた表面の汚れを捕獲することができ好ましい。所謂、スポンジ構造である。該スポンジ構造は中層に空隙を有する多層構造であれば織物、編物のいずれでも良く、例えば織物であれば、二重、三重などの重ね織りであり、編み物であればダブル丸編み、ダブルラッセル、ダブルトリコット、ダブルジャージーなどのタテ編みなどが挙げられるが、柔軟な風合いを有するダブル丸編みが好ましい。
【0036】
本発明の布帛の表層、裏層のいずれか片面、もしくは両層は立毛を有していることが重要である。
【0037】
立毛の構成は立毛が0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維が50〜80重量%と1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維が50〜20重量%であり、かつその立毛の長さは0.1mm〜10mmであることが好ましい。立毛は汚れた非拭き面の汚れを拭き取る際に極細フィラメント繊維は極細かい塵や埃を捕獲することができるが、大きい汚れ、例えば、砂、土などの腰がないため捕獲できない。大きい汚れは極細フィラメント繊維以外の太い繊維で掻き出し拭き取るのに有用である。上記の範囲を外れる場合には十分な該拭取効果は得られない。立毛の長さもまた同様である。
【0038】
立毛を得る方法としては、目的によって自由に選ぶことができる。例えば公知の針布起毛、バフィング、多層間のシャーリング、植毛などが挙げられるが、針布起毛、バフィングなど簡易な方法が好ましく用いることができる。
【0039】
本発明のワイピングクロス布帛の厚さは(株)大栄精機製作所製の中型測厚器(型式:UF−60A)を用いて測定した厚さが0.5〜1.5mmであることが好ましい。さらに好ましくは0.7〜1.3mm、より好ましくは0.9〜1.1mmである。厚さが0.5mmを下回る場合には保水率が不足し、1.5mmを上回る場合には厚くなりすぎるため、実用上、扱いにくいものになる。
【0040】
本発明のワイピングクロス布帛はピリジン系抗菌剤を含有することが好ましい。ピリジン系抗菌剤としては、2−クロロ−6−トリクロロメチルピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−メトキシピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−(2−フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4−クロロフェニル)ピリジン、2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛、ジ(2−ピリジルチオール−1−オキシド)から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0041】
本発明のワイピングクロス布帛は後記する測定法で測定される保水率が200〜400重量%であることが好ましい。さらに好ましくは225〜375重量%、より好ましくは250〜350重量%である。200重量%を下回る場合は、布帛から出る水分が短時間でなくなるため、汚れを拭き残す結果となり、400重量%を上回る場合は、非拭き取り面周辺に汚れた水分が飛散するため好ましくない。
【0042】
次に本発明のワイピングクロスの製造方法の一例を以下に示す。
【0043】
ポリエステル系成分を用いた海島型分割型複合繊維と1.0デシテックス以上5デシテックス以下の太さの合成繊維を用い、表裏に海島型複合繊維リッチとし中層を通常太さの繊維で構成された3層構造布帛を作成し、これを例えば熱水中やアルカリ液などで処理することにより、0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)と1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)とする。その後、ピリジン系抗菌剤を染色液中に投入し、染色と同時にまたは、染色後、ピリジン系抗菌剤を含む液中に投入し抗菌加工を行う。次に得られた布帛の少なくとも片面をバフィングして表面に立毛を敷設する。
【0044】
本発明のワイピングクロス布帛は、吸水性および保水性を持たせるために、多層構造とし、汚れを掻き取るまたは拭き取るために極細合成フィラメント繊維(A)とその他の合成フィラメント繊維(B)で構成した布帛の少なくとも片面に立毛を配する構造にしたことによって、塵、埃、人為的汚れを綺麗に拭き取ることができる工業用拭取布帛または一般家庭用および病院用拭取布帛を得ることができる。また、乾湿両用途において非拭き面を綺麗にするのみならず衛生的なワイピングクロスとして好適に使用される。特に自動車の最終拭き上げ用、例えばワックス仕上げとして効果を奏するものである。
【実施例】
【0045】
以下実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%とは、断らない限り重量%である。また実施例中での品質評価は次の方法に従った。
(1)拭取性評価方法
シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を注射針で5mlガラス板上に落とし、直径45mm、重さ9.807Nの円柱状荷重の一端面に、厚さ1mm相当の織物を介して固定された試料(ワイピングクロス)を、ガラス板上に乗せ、1×10−2m/minの速度で移動し、シリコーンを拭き取る。次に乾式複写機用トナーをガラス板上に振りかけ、そのトナーを圧縮空気(0.09807MPa)で吹き飛ばす。ガラス板上にセロテープ(積水化学工業(株)製、登録商標)を貼り付けて、ガラス板上の残留トナーを剥ぎ取り、セロテープに付着したトナーの程度を判定する。
【0046】
ドライ法は試料をそのまま使い、ウエット法は水中に1分間完全に浸漬した後、取り出してマングル0.09807MPaの加圧下で絞ったものを用いた。
【0047】
○:トナーが全く付着していないもの
△:トナーが少し付着しているもの
×:トナーが極めて多量に残っているもの
の3段階で肉眼判定した。
(2)抗菌評価方法
試験方法は統一試験法を採用し、試験菌体はMASA臨床分離株を用いた。試験方法は、滅菌試料布に上記試験菌のブイヨン懸濁液を注加し、密栓容器中で37℃、18時間培養後の生菌数を計測し、殖菌数に対する菌数を求め、次の基準に従った。
log(B/A)>1.5の条件下、log(B/C)を菌数増殖値差とし、1.5以上を合格レベルとした。ただし、
A:無加工品の接殖直後分散回収した菌数
B:無菌加工品の18時間培養後分散回収した菌数
C:加工品の18時間培養後分散回収した菌数を示す。
(3)保水率(%)
試料(10cm×20cm)の重量を計り、2分間水中に浸す。次に濡れた試料を引き上げて1分間ドリップ後、重量を計り、浸漬前後の重量差を次の式で求めた。
【0048】
保水率(%)=100×(A−B)/B
A:浸漬後、取り上げた試料の重量
B:浸漬前の試料の重量
とした。
【0049】
判定は、
○:200%以上400%以下の範囲のもの
×:上記範囲を外れるもの
とした。
(4)厚さ測定方法
大栄精機製作所(株)製の中型測厚器(型式:UF−60A)を用いて測定した。
判定は、
○:0.5mm以上1.5mm以下の範囲のもの
×:上記範囲を外れるもの
とした。
【0050】
(実施例1)
表裏の2層からなり、表裏面に海島型複合繊維として、トータル繊度が135デシテックス、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶ポリエステルからなる繊維(海島重量比率は20/80)40.6重量%と他の合成フィラメント繊維として56デシテックス、12フィラメント(単繊維繊度が4.7デシテックス)のポリエチレンテレフタレート繊維23.8重量%とを用い、表裏面の繋ぎ糸として56デシテックス、12フィラメント(単繊維繊度が4.7デシテックス)のポリエチレンテレフタレート繊維35.6%になるように設計し、通常のダブル丸編み機で製編した。得られた生機を130℃×30分間マレイン酸処理することによって海成分を脆化させた後、80℃×45分間水酸化ナトウム処理することにより、その海成分を完全に除去した。得られた極細合成フィラメント繊維の単繊維繊度は0.07デシテックス、編物の厚さは2.5mmであった。この編物を2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛1g/lと分散染料でライトブルーに染色した。得られた布帛の両面を#400のサンドペーパーを使ってバフィングしてワイピングクロスを得た。得られた布帛の厚みは0.98mm、立毛は極細合成フィラメント繊維とそれ以外の合成フィラメント繊維が混在して存在しており、保水率は304%、抗菌性は4.4であり、拭取性はドライ、ウエット布帛ともトナーが残っておらず、良くふき取れており、優れたワイピングクロスであった。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
極細合成フィラメント繊維として56デシテックス、18フィラメントの剥離分割型マルチフィラメント糸条(単糸繊維の断面形状は、中心がポリアミド成分の8葉形で、それを取り巻く形でポリエステル成分が配された剥離分割型の繊維であって、剥離後のポリアミド繊維の単糸繊度が0.89デシテックス、ポリエステル繊維の単糸繊度が0.22デシテックスの剥離分割型繊維)の仮より加工された糸を用い、90℃×45分間水酸化ナトウム処理で剥離分割をする以外は実施例1と同様の方法でワイピングクロスを作成した。
得られた布帛の厚みは1.02mm、立毛は極細合成フィラメント繊維とそれ以外の合成フィラメント繊維が混在して存在しており、保水率は298%、抗菌性は4.5であり、拭取性はドライ、ウエット布帛ともトナーが残っておらず、良くふき取れており、優れたワイピングクロスであった。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
110デシテックス、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維100%で平織り組織の織物を製織し、抗菌剤を使わないで染色・評価した。得られた布帛の厚みは0.3mm、立毛はなく、保水率は75%、抗菌性は全く見られず、拭取性はドライ、ウエット布帛ともトナーが極めて多量に残っており、ワイピングクロスとして不向きなものであった。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
市販の綿製ワイピングクロスを用いて評価した。布帛の厚みは0.8mm、立毛はなく、保水率は140%、抗菌性は全く見られず、拭取性はドライ、ウエット布帛ともトナーが極めて多量に残っており、ワイピングクロスとして不向きなものであった。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例1と同様の海島型複合繊維100%で丸編み組織を通常のヨコ編み機で製編し、脱海後、染色し、抗菌剤を使わないで染色・評価した。得られた布帛の厚みは0.2mm、立毛はなく、保水率は103%、抗菌性は全く見られず、拭取性はドライ、ウエット布帛ともトナーが僅かに残っており、ワイピングクロスとして不十分なものであった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)が50〜80重量%と、単繊維繊度が1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)が50〜20重量%とによって多層構造に形成された布帛からなる、少なくとも片面に立毛を有することを特徴とするワイピングクロス。
【請求項2】
多層構造に形成された布帛が多層構造を繋ぐ合成フィラメント繊維で結着され、該多層構造を繋ぐ合成フィラメント繊維の太さが0.1デシテックス以上10デシテックス以下の太さであることを特徴とする請求項1に記載のワイピングクロス。
【請求項3】
前記極細合成フィラメント繊維(A)および合成フィラメント繊維(B)がポリエステル系繊維および/またはポリアミド系繊維からなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項4】
立毛が、単繊維繊度0.001デシテックス以上1.0デシテックス未満の極細合成フィラメント繊維(A)が50〜80重量%と、単繊維繊度1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太さの合成フィラメント繊維(B)が50〜20重量%で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項5】
立毛の長さが0.1mm〜10mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項6】
厚さが0.5〜1.5mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項7】
ピリジン系抗菌剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項8】
保水率が200〜400重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイピングクロス。
【請求項9】
海島構造または剥離構造を有する複合合成繊維と該複合合成繊維の海成分除去処去後または剥離処理後の複合合成繊維の単繊維繊度よりも太い合成繊維を用いて複数枚の筬を有するタテ編み機または織機に掛けて成編織してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分除去処理または剥離処理した後、少なくとも片面を起毛することを特徴とするワイピングクロスの製造方法。

【公開番号】特開2007−130047(P2007−130047A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323233(P2005−323233)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】