説明

ワイヤハーネスの製造方法及び製造装置

【課題】 多品種少量生産時における部品の在庫量を減らし、必要なものを必要な量だけ供給して全体の低コスト化を図ることができるワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の電線11に少なくとも端子13と成形品16,21の組付部品13,16,21をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスW/Hを製造するワイヤハーネスの製造方法において、ワイヤハーネス組立工場W内に備えられた各設備12,14,17により電線11と組付部品13,16,21を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造し、次に、これら電線11と組付部品13,16,21を組立ライン22上で組み付けることにより、ワイヤハーネスW/Hを製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の電線に少なくとも端子とコネクタ等の成形品の組付部品を組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のワイヤハーネスの製造方法として、図3に示すものが知られている。図3に示すように、従来のワイヤハーネスの製造は、ワイヤハーネスを組み立てる工程の前の工程において、部品製造工場1で電線と端子及びコネクタ等の組付部品をそれぞれ製造し、これらをワイヤハーネス組立工場2の各部品置き場3A,3B,3Cに搬送して供給していた。
【0003】そして、図3に示すように、ワイヤハーネス組立工場2内の電線加工工程において、各部品置き場3A,3B,3Cより電線と端子及びコネクタ等の組付部品を、ロット加工機4と電線セット加工機5の電線加工自動機や手作業による電線手加工6により組み付けていた。即ち、電線置き場3Aと端子置き場3Bに保管された電線と端子を必要に応じてロット加工機4に持って行き、電線を測長して切断した後で該電線の皮剥きをして端子を圧着し、次に、コネクタ置き場3Cに保管されたコネクタを必要に応じて電線セット加工機5に持って行き、サブワイヤハーネスを製造する。そして、このサブワイヤハーネスをワイヤハーネス組立工程の加工済電線置き場7に保管する。
【0004】次に、ワイヤハーネス組立工場2内のワイヤハーネス組立工程において、加工済電線置き場7に保管しておいたサブワイヤハーネスを組立コンベア8に持って行くと共に、その他の部品置き場9に保管しておいたクリップやプロテクタ等の他の組付部品を組立コンベヤ8に供給して組み付けることによりワイヤハーネスを製造していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のワイヤハーネスの製造方法では、多品種少量生産等の場合に使う頻度の少ない電線や端子やコネクタ等も常に各部品置き場3A,3B,3C,7に保管しておく必要があるため、ワイヤハーネス組立工場2内に部品を置く広いスペースが必要不可欠であった。また、部品製造工場1より部品を少量のみ購入しようとすると、部品の在庫管理が煩雑になると共に、部品費に占める物流費の割合が大きくなって部品が高価なものとなり、ワイヤハーネスがコスト高になった。
【0006】そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、多品種少量生産時等における部品の在庫量を減らし、必要なものを必要な量だけ供給して全体の低コスト化を図ることができるワイヤハーネスの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法において、ワイヤハーネス組立工場内に備えられた各設備により前記電線と前記組付部品を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造し、次に、これら電線と組付部品を組立ライン上で組み付けることを特徴とする。
【0008】このワイヤハーネスの製造方法では、ワイヤハーネス組立工場内で組み付けに必要な量だけ製造された電線と組付部品を組立ライン上で組み付けることによりワイヤハーネスを製造するようにしたので、部品在庫が必要最小限となり、生産数量の変動に簡単に対応できる。また、部品の在庫管理が簡単となり、全体の低コスト化が図られる。
【0009】請求項2の発明は、複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられる製造装置おいて、ワイヤハーネス組立工場内に前記電線を製造する電線製造機と前記組付部品を製造する組付部品製造機をそれぞれ備えると共に、該ワイヤハーネス組立工場内に前記各製造機で製造された前記電線と前記組付部品を必要な量だけ組み付ける電線加工装置を備えたことを特徴とする。
【0010】このワイヤハーネスの製造装置では、ワイヤハーネス組立工場内に電線を製造する電線製造機と組付部品を製造する組付部品製造機をそれぞれ備えたので、組み付けに必要な量の電線と組付部品がワイヤハーネス組立工場内で簡単かつ確実に製造されると共に、ワイヤハーネス組立工場内の部品在庫スペースが大幅に縮小される。また、ワイヤハーネス組立工場内に各製造機で製造された電線と組付部品を必要な量だけ組み付ける電線加工装置を備えたので、必要な量のワイヤハーネスが低コストで製造される。
【0011】請求項3の発明は、複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられる製造装置おいて、ワイヤハーネス組立工場内に、前記電線を製造する電線製造機と前記端子を製造する端子機とこれら電線及び端子を一定量組み付ける電線ロット加工機とから成る電線加工装置を備えたことを特徴とする。
【0012】このワイヤハーネスの製造装置では、電線を製造する電線製造機と端子を製造する端子機とこれら電線及び端子を一定量組み付ける電線ロット加工機とから成る電線加工装置を備えたので、一定量の電線及び組付部品が簡単に製造され、一定量のワイヤハーネスが確実かつ低コストで製造される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】図1は本発明の実施形態のワイヤハーネス組立工場W内に設けられた多品種少量生産型のワイヤハーネスの製造装置10を示す概略説明図である。
【0015】図1に示すように、この多品種少量生産型のワイヤハーネスの製造装置10はワイヤハーネス組立工場W内に備えられ、複数の電線11に端子13とコネクタ(成形品)16等の組付部品をそれぞれ組み付けて必要な量(必要な数)のワイヤハーネスW/Hを必要な量だけ製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられるものである。
【0016】即ち、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアには、必要な量の電線11を製造する電線製造機12と、必要な量の端子(組付部品)13を製造する端子製造機(組付部品製造機)14と、これら電線11と端子13をストックする部品ストア15をそれぞれ備えると共に、コネクタ(組付部品)16を製造する成形機(組付部品製造機)17と上記各製造機12,14,17で製造された電線11と端子13及びコネクタ16を必要な量だけ組み付ける電線セット加工機(電線加工装置)18と、成形機17で製造されたコネクタ16及び電線セット加工機18で製造されたサブワイヤハーネスSW/Hをストックする部品ストア19とを備えている。これら各製造機12,14,17,18と各部品ストア15,19とでサブワイヤハーネスの製造装置20が構成されている。
【0017】また、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアのサブワイヤハーネスの製造装置20の隣りには、サブワイヤハーネスSW/Hとクリップ(成形品)やプロテクタ(成形品)等のその他の組付部品21とを組み付けてワイヤハーネスW/Hを製造する組立コンベア(組立ライン)22を配置してある。
【0018】尚、多品種のワイヤハーネスW/Hを少量生産するためには、各設備12,14,17で製造する各部品の種類は多くなるため、その分、1台の各設備12,14,17は多種多様の金型をそれぞれ持っている。また、その他の組付部品21は図示しない成形機等によりワイヤハーネス組立工場W内で製造したり、部品製造工場より搬入して部品ストア19にストックされている。
【0019】以上実施形態のワイヤハーネスの製造装置10によれば、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアに備えられた各製造機(設備)12,14,17により電線11と組付部品としての端子13及びコネクタ16を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造する。
【0020】そして、部品ストア15にストック(貯蔵)された電線11と端子13を組み付けに必要な量だけ電線セット加工機18に供給し、電線11を測長して切断した後で該電線11の皮剥きをして端子13を圧着すると共に、成形機17よりコネクタ16を必要な量だけ電線セット加工機18に供給してサブワイヤハーネスSW/Hを製造する。
【0021】次に、部品ストア19より必要の量のサブワイヤハーネスSW/Hとコネクタ16及びクリップやプロテクタ等のその他の組付部品21を組立コンベア22上に必要な量だけ供給して組み付けることにより、多品種のワイヤハーネスW/Hが少量生産される。
【0022】このように、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアに配置された各製造機12,14,17により電線11と端子13及びコネクタ16等を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造し、これら電線11と端子13及びコネクタ16等を組立コンベア22上で組み付けることによりワイヤハーネスW/Hを製造するようにしたので、部品在庫を必要最小限にすることができ、生産数量の変動(多品種少量生産)に簡単に対応させることができる。また、部品の在庫管理を簡単に行うことができ、全体の低コスト化を図ることができる。
【0023】特に、電線セット加工機18への電線11の供給も組み付けに必要な量だけ製造すれば良いので、大量に電線11を製造する必要がなくなり、低速・小型の電線セット加工機18で良く、設備価格が安価となる。また、端子製造機14や成形機17についても少量製造で良いので、端子製造機14や成形機17に用いられる金型も小型になり、設備費・金型費ともに安価になる。さらに、ワイヤハーネス組立工場W内の部品在庫スペースである部品ストア15,19の設置スペースを従来に比べて大幅に縮小することができる。これらにより、必要な量のワイヤハーネスW/Hを低コストで製造することができる。
【0024】また、この製造装置10によりワイヤハーネスW/Hを大量に製造する場合、例えば1日4巡でワイヤハーネスW/Hを大量生産する場合には、大量の電線11を使用し、流通等を考えても安価な場合は、従来通り部品工場から各部品を1日4度納入してもらい、1巡で数個や1日或いは1月で数個しか使用しない部品は必要な時のみ製造して供給することもでき、ワイヤハーネスW/Hの製造の低コストをより一段と図ることができる。
【0025】図2は本発明の他の実施形態のワイヤハーネス組立工場W内に設けられた同一品種大量生産型のワイヤハーネスの製造装置10′を示す概略説明図である。
【0026】図2に示すように、この同一品種大量生産型のワイヤハーネスの製造装置10′はワイヤハーネス組立工場W内に備えられ、複数の電線11に端子13とコネクタ(成形品)16等の組付部品をそれぞれ組み付けて一定量(一定数)のワイヤハーネスW/Hを製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられるものである。
【0027】即ち、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアには、一定量の端子(組付部品)13を製造する端子製造機(組付部品製造機)14と、一定量の電線11を製造する電線製造機12と、この電線製造機12に併設されて同期し、電線11を測長して切断した後で該電線11の皮剥きをして端子13を圧着させる電線ロット加工機12Bとをそれぞれ備えている。これら端子製造機14と電線製造機12及び電線ロット加工機12Bとで電線11の両端側に端子13をそれぞれ圧着した端子付き電線Hを一定量製造する電線加工装置18′が構成されている。
【0028】また、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアの電線加工装置18′の隣りには、一定量のコネクタ(組付部品)16を製造する成形機(組付部品製造機)17と、端子付き電線Hとコネクタ16をストックする部品ストア19′とをそれぞれ備えている。尚、この部品ストア19′には、クリップ(成形品)やプロテクタ(成形品)等のその他の組付部品21もストックされる。このその他の組付部品21は図示しない成形機等によりワイヤハーネス組立工場W内で製造したり、部品製造工場より搬入されるようになっている。
【0029】さらに、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアの部品ストア19′の隣りには、端子付き電線Hとクリップやプロテクタ等のその他の組付部品21とを組み付けてワイヤハーネスW/Hを製造する組立コンベア(組立ライン)22を配置してある。
【0030】以上実施形態のワイヤハーネスの製造装置10′によれば、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアに備えられた各製造機(設備)12,14,17により電線11と組付部品としての端子13及びコネクタ16を組み付けに必要な一定量それぞれ大量生産する。そして、電線ロット加工機12Bで電線11を測長して切断した後で該電線11の皮剥きをして端子13を圧着して端子付き電線Hを製造する。
【0031】次に、部品ストア19′より組み付けに必要な一定量の端子付き電線Hとコネクタ16及びクリップやプロテクタ等のその他の組付部品21を組立コンベア22上に供給して組み付けることによりワイヤハーネスW/Hを製造する。
【0032】このように、ワイヤハーネス組立工場W内の同一フロアに、端子13を製造する端子機14と電線11を製造する電線製造機13とこれら電線11及び端子13を一定量組み付ける電線ロット加工機12Bとから成る電線加工装置18′を備えたので、大量の端子付き電線Hを簡単に製造することができ、大量のワイヤハーネスW/Hを確実かつ低コストで製造することができる。特に、電線製造機12を電線ロット加工機12Bと同期させるため、大量の端子付き電線Hを低速・小型の電線加工装置18′でも十分に対処させて製造することができ、その分設備価格を安価にすることができる。
【0033】尚、前記各実施形態によれば、部品ストアにクリップやプロテクタ等の他の組付部品をストックさせて組立コンベア上に供給するようにしたが、クリップやプロテクタ等を製造する成形機を組立コンベアに対向するように設けて直接供給するようにしても良い。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、ワイヤハーネス組立工場内に備えられた各設備により電線と組付部品を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造し、これら電線と組付部品を組立ライン上で組み付けることによりワイヤハーネスを製造するようにしたので、部品在庫を必要最小限にすることができ、生産数量の変動に簡単に対応させることができる。また、部品の在庫管理を簡単に行うことができ、全体の低コスト化を図ることができる。
【0035】請求項2の発明によれば、ワイヤハーネス組立工場内に電線を製造する電線製造機と組付部品を製造する組付部品製造機をそれぞれ備えると共に、該ワイヤハーネス組立工場内に各製造機で製造された電線と組付部品を必要な量だけ組み付ける電線加工装置を備えたので、ワイヤハーネス組立工場内で組み付けに必要な量の電線と組付部品を簡単かつ確実に製造することができると共に、必要な量のワイヤハーネスを低コストで製造することができる。また、ワイヤハーネス組立工場内の部品在庫スペースを大幅に縮小することができ、その分ワイヤハーネスの低コストをより一段と図ることができる。
【0036】請求項3の発明によれば、ワイヤハーネス組立工場内に電線を製造する電線製造機と端子を製造する端子機とこれら電線及び端子を一定量組み付ける電線ロット加工機とから成る電線加工装置を備えたので、一定量の電線及び組付部品を簡単に製造することができ、一定量のワイヤハーネスを確実かつ低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のワイヤハーネス組立工場内に設けられたワイヤハーネスの製造装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態のワイヤハーネス組立工場内に設けられたワイヤハーネスの製造装置を示す概略説明図である。
【図3】従来例の部品製造工場とワイヤハーネス組立工場の関係を示す概略説明図である。
【符号の説明】
10,10′ ワイヤハーネスの製造装置
11 電線
12 電線製造機(設備)
12B 電線ロット加工機
13 端子(組付部品)
14 端子製造機(組付部品製造機)
16 コネクタ(組付部品)
17 成形機(設備)
18 電線セット加工機(電線加工装置)
18′ 電線加工装置
21 組付部品
22 組立コンベア(組立ライン)
W ワイヤハーネス組立工場
W/H ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法において、ワイヤハーネス組立工場内に備えられた各設備により前記電線と前記組付部品を組み付けに必要な量だけそれぞれ製造し、次に、これら電線と組付部品を組立ライン上で組み付けることを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】 複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられる製造装置おいて、ワイヤハーネス組立工場内に前記電線を製造する電線製造機と前記組付部品を製造する組付部品製造機をそれぞれ備えると共に、該ワイヤハーネス組立工場内に前記各製造機で製造された前記電線と前記組付部品を必要な量だけ組み付ける電線加工装置を備えたことを特徴とするワイヤハーネスの製造装置。
【請求項3】 複数の電線に少なくとも端子と成形品の組付部品をそれぞれ組み付けてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造方法に用いられる製造装置おいて、ワイヤハーネス組立工場内に、前記電線を製造する電線製造機と前記端子を製造する端子機とこれら電線及び端子を一定量組み付ける電線ロット加工機とから成る電線加工装置を備えたことを特徴とするワイヤハーネスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−245876(P2002−245876A)
【公開日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−44696(P2001−44696)
【出願日】平成13年2月21日(2001.2.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】