説明

ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】導電路の外装部材として柔軟な管体を単に備えるだけでなく、樹脂成形されるプロテクタを必要とすることなく、管体を所望の形状に保持できるようにする。
【解決手段】高圧電線27及び低圧電線29を備える導電路集合体23をコルゲートチューブ25で覆う。コルゲートチューブ25の外周に、そのほぼ全長にわたり水硬化性部材33の全体用水硬化性テープ35を巻き付け、さらに強度が必要とする屈曲部に対しては、水硬化性部材33の部分用水硬化性テープ37を巻き付けて二重構造とし、補強部Cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電路集合体の外装部材として柔軟な管体を備えるワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、導電路集合体となる三本の高圧電線を有し、この三本の高圧電線は、エンジンルーム内においてエンジンから所定範囲を三本まとめて柔軟な管体となるコルゲートチューブで覆っている。そして、このコルゲートチューブの末端以降のエンジンルーム内及びフロアの下側においては、三本の高圧電線をそれぞれ一本ずつ金属製保護パイプで覆っている。
【0003】
このような金属製保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができ、かつ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
上記したワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属製保護パイプに高圧電線を挿通し、これを三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属製保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。このようなワイヤハーネスは、ハーネスメーカの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術にあっては、ワイヤハーネスの搬送の際に、金属保護パイプ同士の接触や変形を抑えるために、金属保護パイプ毎、及びワイヤハーネス毎に充分なスペースを確保する必要がある。また、金属保護パイプを三次元的に曲げ加工していることから、立体的なスペースを確保する必要もある。
【0007】
上記問題点を解消するためとして、柔軟性を有する管体を金属保護パイプの代替部材とすることが考えられる。しかしながら上記管体を単に代替部材とするだけでは、次のような幾つかの問題点を解消することは困難である。
【0008】
すなわち、柔軟性を有するだけの管体であると、ワイヤハーネスの組み付け・配索時及び配索後において、所望の形状を保持することが困難である。また、柔軟性を有するだけの管体であると、この管体を車両の所定位置に組み付けるために例えばプロテクタが必要になるが、このプロテクタは配索経路に合わせて樹脂成形される部材であることから、車両毎に専用設計・専用部材になってしまうという問題点、さらには汎用性が低くコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0009】
プロテクタに関しては、開発段階で何度も試作金型を起こす場合があることから、設計費用、金型費用、設計時間などが掛かってしまい、また管体への組み付け部分が大型化することから、地面に近づき不具合が生じてしまうという問題点を有している。
【0010】
そこで、本発明は、導電路の外装部材として柔軟な管体を単に備えるだけでなく、樹脂成形されるプロテクタを必要とすることなく、管体を所望の形状に保持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数本の電線を備えた導電路集合体を柔軟性を有する管体で覆うとともに、この管体を軟質状態から硬質状態へと硬化可能な物質を有する硬化性部材で覆い、この硬化性部材によって部位に応じて強度に変化を持たせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性部材を硬化させることによって、樹脂成形されるプロテクタを使用することなく、導電路の外装部材としての柔軟な管体を所望の形状に保持することができ、その際、必要とする部位の強度を硬化性部材により高めることができ、形状保持性を向上させることができる。また、硬化性部材が硬化前の軟質状態であれば、柔軟な管体を硬化性部材とともに丸めるなどしてコンパクトにすることで、ワイヤハーネスの搬送の際に大きなスペースを確保する必要がなく、搬送面で省スペース化や低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のワイヤハーネスに係る図であり、(a)はワイヤハーネスをハイブリッド自動車に配索した状態を示す概略図、(b)はワイヤハーネスの構成及び形状保持部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すワイヤハーネスの概略図である。
【図3】屈曲(湾曲)形状を持つ長尺部材を、その一端が固定端となるよう片持ち梁の状態で支持し、開放端となる他端に荷重を付与したときの応力集中部を示す説明図である。
【図4】図2のワイヤハーネスの屈曲部に巻き付ける水硬化性部材の部分用水硬化性テープの巻き方の例を(a)〜(e)として各種示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態では、一例として、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよい)1にワイヤハーネス3を使用する。ハイブリッド自動車1は、周知のように、エンジン5及びモータユニット7の二つ動力源を利用して駆動する車両であって、モータユニット7には、インバータユニット9を介してバッテリ11(電池パック)から電力が供給される。
【0016】
エンジン5、モータユニット7及びインバータユニット9は、車両前方(図1(a)中の矢印FR方向)のエンジンルーム13内に搭載している。また、バッテリ11は、車両後方の荷室15や図示しないシート下など、エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内などに搭載している。
【0017】
モータユニット7とインバインバータユニット9とは、公知の高電圧ワイヤハーネス17により接続し、バッテリ11とインバータユニット9とは、前記した本発明のワイヤハーネス3により接続している。ワイヤハーネス3は、高圧用のものとして構成されている。このワイヤハーネス3は、その中間部3aを車体床下19の地面側に配索している。車体床下19は、公知のボディであるとともにフロアパネルを構成するパネル部材であって、この車体床下19に形成した貫通孔(符号省略)にワイヤハーネス3を挿通している。
【0018】
上記したワイヤハーネス3とバッテリ11とは、バッテリ11に設けられるジャンクションブロック21を介して接続し、ジャンクションブロック21には、ワイヤハーネス3の後端3bをコネクタ接続している。このワイヤハーネス3の後端3b側は、自動車室内側となる床上に配索している。床上には、ワイヤハーネス3の前端3c側も配索しており、この前端3c側は、インバータユニット9にコネクタ接続している。
【0019】
ここで本実施形態の補足説明をすると、モータユニット7はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとし、インバータユニット9は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。また、モータユニット7は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとし、インバータユニット9もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。
【0020】
バッテリ11は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化したものとし、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。このようなバッテリ11は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0021】
ワイヤハーネス3は、その中間部3aを車体床下19に沿ってほぼ平行に配索しており、その際、中間部3aが地面からの距離を稼ぐことができるように配索している。このワイヤハーネス3が地面からの距離を稼ぐための方策として、ワイヤハーネス3が低背化となる構造にて製造している(低背化に有効な構造は後述する)。
【0022】
このようなワイヤハーネス3は、図1(b)に示すように、導電路集合体23と、この導電路集合体23の外装部材となる管体25とを備え、導電路集合体23を管体25で覆っている。導電路集合体23は、それぞれ二本の高圧電線27及び低圧電線29と、これら各電線27,29を一括してシールドする電磁シールド部材31とを備えている。このため、各電線27,29は、非シールド電線としているが、電磁シールド部材31を廃止してシールド電線としてもよい。
【0023】
高圧電線27は、導体及び絶縁体(被覆材)を含む導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成している。導体は、銅や銅合金やアルミニウムやアルミニウム合金により製造している。この導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形または丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよい。これら高圧電線27及び低圧電線29の端末には、図示しないコネクタを設けてある。
【0024】
なお、本実施形態においては高圧電線27を用いているが、高圧電線27に変えて公知のバスバーに絶縁体を設けたものを用いてもよい。
【0025】
低圧電線29は、公知のものであって、本実施形態においては導電路集合体23の構成に含まれているが、この限りでないものとする。すなわち、低圧電線29を備えるか否かは任意であるものとし、少なくとも高圧電線27を備えていればよい。
【0026】
電磁シールド部材31は、高圧電線27及び低圧電線29を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、あるいは金属箔単体などにて筒状に形成している。この電磁シールド部材31は、高圧電線27及び低圧電線29の全長とほぼ同じ長さに形成してあり、上記した図示しないコネクタを介して、または直接インバータユニット9のシールドケースなどに接続している。
【0027】
なお、電磁シールド部材31は、本実施形態において金属箔を含んでいるが、この限りではない。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよい。編組は、導電性を有して筒状に形成されるものとする。
【0028】
管体25は、可撓性があって柔軟性を有する管状部材であり、外周面に凹凸を有する樹脂製の平型のコルゲートチューブ(蛇腹管)としている。コルゲートチューブに代えて、外周面に凹凸なしの樹脂製やゴム製などのチューブ、外周面に凹凸を有する金属性のチューブ(蛇腹管)などでもよい。また、管体25は、図1(b)では断面横長形状としているが、断面円形状や、断面四角形状などの形状であってもよい。
【0029】
管体25において、断面横長形状で樹脂製のコルゲートチューブは、軽量化に有効な構造になるのはもちろんのこと、前述した低背化となる構造、すなわち地面からの距離を稼げる有効な構造にもなっている。このようなコルゲートチューブは、スリットなしのものであって、外周面が水密に形成されるものが好ましい。
【0030】
そして、本実施形態では、上記した管体25の外周面に水硬化性部材33を設けて管体25を水硬化性部材33で覆っている。この水硬化性部材33は、軟質状態から硬質状態へと硬化可能な物質を有する硬化性部材を構成している。なお、水硬化性部材33に代えて光硬化性部材であっても構わない。
【0031】
水硬化性部材33は、本実施形態ではテープ状のものを管体25の外周面に巻き付ける構成である。このような水硬化性部材33は、図2に示すように、管体25の両端部を除くほぼ全長にわたり巻き付けてある全体用水硬化性テープ35と、図1(a)におけるワイヤハーネス3の屈曲部Aのような強度を必要とする一部位に巻き付ける部分用水硬化性テープ37とを備えている。
【0032】
図2では、全体用水硬化性テープ35を管体25のほぼ全長にわたりその外周面に巻き付けた後に、部分用水硬化性テープ37を上記した屈曲部Aに対応する屈曲部のような強度を必要とする一部位に巻き付けて補強部Cを形成している。
【0033】
水硬化性部材33は、硬化することで柔軟性のある管体25の形状を保持させることができ、例えば図1(b)のような屈曲状態を保持した形状保持部38を形成することができる。具体的には、図1(b)に示す水分39(光硬化性部材の場合は可視光39や専用の照明などの光)により硬化する部分と、この硬化する部分が一体化する基材とを含んで構成されている。水硬化性部材33の場合には、給水面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されており、水分39の噴射・滴下などや、水中への浸漬などで硬化する部材になっている。この際、硬化部は、水硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸などで保持される。
【0034】
水硬化性部材33は、硬化時間が即時硬化、ゆっくり硬化などの調整可能な部材になることが好ましい。
【0035】
光硬化性部材の場合には、光照射面を有する硬化部と、基材とを含んで構成されている。上記硬化部は、光硬化性樹脂組成物からなり、これが上記基材に対し含浸などで保持され、水分を嫌う作業環境下の場合等に有効である(使用環境下での水分は問題ない)
基材としては、ガラスウール、ガラスクロス、ポリエステルクロス、不織布などが挙げられる(光硬化性部材に限らず水硬化性部材33も同様である。なお、ガラスクロス、ポリエステルクロスはニット織りが含浸に適しており、むらなく均一に含浸させることが可能になるという利点を有する)。また、硬化部としては、光硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。光硬化性部材も、水硬化性部材33と同様に硬化時間を調整することが可能になることが好ましい。
【0036】
水硬化性部材33(または光硬化性部材)を硬化させて形状を保持させるための水分39(または可視光41や専用の照明)を供給する供給手段43(図1(b)参照)は、形状を保持させる部分の形成範囲に合わせて製造現場に設置されるものとする。
【0037】
上記製造現場において、形状を保持させる部分を所望の形状に硬化させるにあたり、治具や金型を用いると作業性が良好になる。図1(b)では曲げた形状にて保持された状態を示しているが、捻りを加えた形状に保持してもよい。また、図2のようにほぼS字状や、クランク形状に曲げてこの形状を保持させるようにしてもよい。
【0038】
水硬化性部材33は、硬化させると、管体25の外周面における凹部に入り込み、また、凸部にも引っ掛かることから、形状を保持させる部分の形成及び配置が安定する。
【0039】
なお、水硬化性部材33の密着相手が仮に接着力の弱くなる例えばオレフィン系樹脂からなる場合、上記凹凸はズレ防止に有効であるという利点を有している。
【0040】
次に、上記したワイヤハーネス1の製造方法について説明する。全長が所望の長さとなる管体25及び導電路集合体23を準備し、この後に導電路集合体23を管体25に挿通する。
【0041】
そして、導電路集合体23を構成する高圧電線27や低圧電線29の端末にコネクタを設け、さらに、管体25の外周面の両端部を除くほぼ全長にわたり全体用水硬化性テープ35を巻き付ける。さらに、この全体用水硬化性テープ35上の、図1(a)の屈曲部Aに対応する一部位に、部分用水硬化性テープ37を巻き付けて図2のような補強部Cを形成すると、搬送前のワイヤハーネス3の製造が完了する。
【0042】
なお、管体25に対しあらかじめ水硬化性部材33を巻き付けておき、この後に導電路集合体23を管体25に挿通するようにしてもよい。また、水硬化性部材33は、部分用水硬化性テープ37を先に巻き付けて、その後に全体用水硬化性テープ35を巻き付けてもよい。
【0043】
このようにして製造されたワイヤハーネス3は、水硬化性部材33が硬化前であって可撓性を有して軟質状態であるので、例えば丸めて搬送しやすい状態にし、図示しない通箱などに収納して例えば自動車メーカの組み立て工場へと搬送する。
【0044】
上記組み立て工場へ搬送された後は、図示しない通箱から取り出し、製造現場で取り回し容易な状態にする。そして、図1(a)の屈曲部Aに対応する図2の部分用水硬化性テープ37を設けた補強部Cを、所望の屈曲形状にした上で、水分39を供給して、該供給部位の水硬化性部材33の全体を硬化させる。
【0045】
水硬化性部材33を硬化させて形状を保持させることで、ワイヤハーネス3の製造が完了する。そして、このワイヤハーネス3は、図1(a)の車体床下19などに組み付けて固定するとともに、電気的な接続を実施することで、配索が完了する。
【0046】
以上のように、本実施形態のワイヤハーネス3は、柔軟性を有する管体25の周囲に樹脂成形されるプロテクタではなく、硬化前の軟質状態の水硬化性部材33を設け、この水光硬化性部材33を硬化させて形状を保持させることで、管体25を所望の形状に保持することができる。また、ワイヤハーネス3は、水硬化性部材33の硬化前の軟質状態で、柔軟な管体25とともに、搬送の際に丸めるなどしてコンパクトにすることで、大きなスペースを確保する必要がなく、搬送面で省スペース化や低コスト化を図ることができる。
【0047】
このような本実施形態のワイヤハーネス3では、特に荷重が集中しやすい図1(a)の屈曲部Aにおいて、全体用水硬化性テープ35の上にさらに部分用水硬化性テープ37を巻き付けて水硬化性部材33を二重にし、図2に示すような補強部Cを形成している。
【0048】
図3は、屈曲(湾曲)形状を持つ長尺部材101を、その一端101aが固定端となるよう片持ち梁の状態で支持し、開放端となる他端101bに荷重Fを付与した状態を示す。これによれば、屈曲部101cに凹みが発生し、応力が集中していることがわかる。
【0049】
このように、屈曲部101cには、直線部位に比較して応力が集中しやすいので、図2に示すワイヤハーネス3のように、湾曲した屈曲部に対し、全体用水硬化性テープ35を巻き付けた上にさらに部分用水硬化性テープ37を巻き付けて、水硬化性部材33を二重にして補強部Cとすることで、応力集中部位の強度を高めることができ、形状保持性を向上させることができる。
【0050】
すなわち、本実施形態のワイヤハーネス3は、柔軟性のあるコルゲートチューブ3に巻き付ける水硬化性部材33を、その全長にわたり一定に設けるのではなく、強度を必要とする部位に部分用水硬化性テープ37を巻き付けることで、部位に応じて強度に変化を持たせることができる。
【0051】
これにより、特に強度を必要としない部位に対しては、必要以上の水硬化性部材33を設けることがなくなり、水硬化性部材33の使用量の削減効果も期待でき、軽量化、省資源化も達成できる。
【0052】
図4は、補強が必要な屈曲部に対する部分用水硬化性テープ37の巻き方の例を、図2の補強部Cに対応する(a)に対して(b)〜(e)として各種示している。(b)は、(a)に対して巻き付ける際の重ね合わせ部のラップ量を多くしている。(c)は、(a)が一回巻きであるのに対して二回巻きとしている。(d)は、(a)に対して屈曲部の内側にさらに部分用水硬化性テープ37aを設けている。(e)は、(a)に対して屈曲部の外側にさらに部分用水硬化性テープ37bを設けている。
【0053】
また、水硬化性部材33に用いる繊維を太くするなどして部分用水硬化性テープ37自体をより強度が強いものに変更したものを屈曲部に巻き付けて補強してもよい。
【0054】
このようにして部分用水硬化性テープ37の巻き方などを工夫することで、屈曲部のような強度が必要とする部位の耐荷重特性をより一層高めることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、分岐部分のないワイヤハーネス3について説明したが、管体25を分割し、この分割部分から分岐部分を引き出しすることも可能である。そして、この引き出しの際、分岐部分の露出部及び管体25の端部を覆い隠すように水硬化性部材33を設け、これを硬化させるようにしてもよい。
【0056】
また、水硬化性部材33や光硬化性部材に代えて、熱により硬化する熱硬化性部材を用いてもよく、要するに軟質状態から硬質状態へと硬化可能な物質を有する硬化性部材であればよい。さらに、水硬化性部材33は、テープ状に限らず、シート状のものを巻き付けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
A ワイヤハーネスの屈曲部
C ワイヤハーネスの補強部
3 ワイヤハーネス
23 導電路集合体
25 管体
27 高圧電線(複数本の電線)
29 低圧電線(複数本の電線)
33 水硬化性部材(硬化性部材)
35 全体用水硬化性テープ
37 部分用水硬化性テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を備えた導電路集合体を柔軟性を有する管体で覆うとともに、この管体を軟質状態から硬質状態へと硬化可能な物質を有する硬化性部材で覆い、この硬化性部材によって部位に応じて強度に変化を持たせたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記管体のほぼ全長にわたり前記硬化性部材を設けるとともに、この硬化性部材を設けた部分の一部位に他の部位よりも多くの硬化性部材を設けて補強部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記管体のほぼ全長にわたり前記硬化性部材を設けるとともに、この硬化性部材を設けた部分の一部位に他の部位よりも強度の高い硬化性部材を設けて補強部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記補強部を屈曲部に形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
複数本の電線を備えた導電路集合体を柔軟性を有する管体で覆うとともに、この管体を、軟質状態から硬質状態へと硬化可能な物質を有する軟質状態の硬化性部材で覆い、このとき該硬化性部材によって部位に応じて強度に変化を持たせつつ前記管体を所望の形状にした状態で、前記硬化性部材を軟質状態から硬質状態へと硬化させることを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174666(P2012−174666A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38837(P2011−38837)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】