説明

ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置

【課題】超音波を印加してボンディングを行う前に、ボンディングで発生する異常を検出できるワイヤボンディング方法及び装置を提供する。
【解決手段】ワイヤボンディング装置1は、接合ヘッド2と、接合ヘッド2の位置情報を検出する検出器3と、制御回路等とを備える。接合ヘッド2は、ワイヤ11のボール部11aを電極等のボンディング部に接触させるボンディングツール4を含み、このボンディングツール4を上下動させる。制御回路は、ワイヤ11のボール部がボンディング部に接触した後から超音波を印加する前までの期間における、接合ヘッド2の動作軌跡を取得する。また、制御回路は、この取得した動作軌跡Aと、予め把握された正常な動作軌跡Bとを比較し、ボンディング条件を考慮した上で良否判定を行い、良好と判定されるとUS振動の印加に移行し、不良と判定されると警報を発生させ、ワイヤボンディングを中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置に関し、更に詳しくは、ワイヤの接合異常を検出可能なワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置は、後工程に含まれるボンディング工程で用いられ、例えば、半導体チップの表面周辺部に配置された電極等のボンディング部に、金属線(ワイヤ)を接続する。また、ワイヤボンディング装置は、ワイヤ不着を検知する機能を有しており、ボンディング部にワイヤが接続されていない不良品を検知して、その後の工程に不良品が流出することを防止する。
【0003】
ワイヤ不着を検知する方法としては、ボンディングツールの真上に配置され、ワイヤを挟持するカットクランプを通して、ワイヤに電流を流し、ワイヤの接続時と不着時とにおける応答波形の違いに基づいて、ワイヤ不着か否かを判定する方法が知られている。
【0004】
しかし、上記方法では、微小なゴミの上や、微小な傷で生じた凹部でボンディングを行った場合であっても、ボンディング部にワイヤが少しでも接触していれば、電気的に接続していることになり、異常とは判定されない。このようなボンディング工程を経た半導体チップは、判定時には問題が発見されなくても、その後の工程での加熱による熱膨張や経年劣化により、異常が発生しやすい。つまり、上記方法では、本来不良品である半導体チップを良品として判定してしまう可能性があった。
【0005】
特許文献1には、ボンディングツールで支持したワイヤのボール部を、ボンディングツールの下降動によりボンディング部に接触させた後に、所定のボンディング荷重で押圧しながら超音波振動を印加し、これに伴うボール部の潰し変形量により、接合の良否判定を行う技術が記載されている。この技術では、ボール部の潰し変形量を、最適な潰し変形量と比較することで良否判定を行うので、ワイヤとボンディング部とが電気的に接続されているか否かで判定を行う前記方法に比べて、信頼性が高い。
【0006】
【特許文献1】特開2000−269262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、ワイヤがボンディング部に接触した位置(タッチ位置)を基準として潰し変形量曲線を演算しているので、タッチ位置が変化した場合には、潰し変形量曲線も変化することになる。また、タッチ位置は、リードフレームや半導体チップの高さのばらつきだけでなく、ボンディング部に付着した微細なゴミや、微細な傷によっても変化する。このため、タッチ位置が変化した原因をタッチ位置の高さから判別することは困難であるから、例えば、微細なゴミや傷が原因で変化したタッチ位置を基準とする潰し変形量曲線で良否判定を行った場合には、判定の信頼性が低下する。
【0008】
さらに、特許文献1では、超音波振動を印加してボール部を潰した後に、はじめてボンディングの良否が判定されるので、判定されたときには、既に不良品が発生していることになる。
【0009】
本発明は、超音波を印加してボンディングを行う前に、ボンディングで発生する異常を検出できるワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のワイヤボンディング方法は、超音波を印加してワイヤボンディングを行うワイヤボンディング方法であって、
ボンディングツールに支持されたワイヤの一端を、ボンディング部に接触させるステップと、
前記接触させた後の前記ボンディングツールの動作軌跡を取得するステップと、
前記取得した動作軌跡の良否を判定するステップと、
前記判定ステップで良と判定されると、超音波の印加に移行するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のワイヤボンディング装置は、超音波を印加してワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
ワイヤの一端をボンディング部に接触させるボンディングツールと、
前記ワイヤが前記ボンディング部に接触した後の前記ボンディングツールの動作軌跡を計測する軌跡計測部と、
前記軌跡計測部が取得した動作軌跡の良否を判定する判定部とを備え、
前記判定部での判定結果が良であると、超音波を印加してボンディングを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置によると、ワイヤの一端がボンディング部に接触した後から超音波を印加する前までの、ボンディングツールの動作軌跡を取得して良否判定を行うので、超音波を印加してボンディングを行う前に、ボンディングで発生する異常を検出できる。また、異常を検出すれば、ボンディングを中止し、不良品の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るワイヤボンディング装置の概略を示す構成図である。図2は、ワイヤボンディング装置の一部を拡大して示す図である。ワイヤボンディング装置1は、半導体チップ製造工程に含まれるボンディング工程で用いられる装置であって、例えば、ボンディングの対象となる半導体チップ10の表面周辺部に配置された電極等のボンディング部10a(図2参照)に、ワイヤ11を接続する機能を有する。ワイヤ11は、導電性を有する材質であれば、特に限定されず、金以外にも、銅、アルミ等で形成してもよい。また、半導体チップ10は、リードフレーム12に搭載されている。リードフレーム12は、ヒータにより加熱される金属製のヒータブロック13に載置されている。
【0014】
ワイヤボンディング装置1は、接合ヘッド2と、接合ヘッド2の位置情報を検出する検出器3と、図示しない制御回路等とを備える。接合ヘッド2は、ワイヤ11の一端を支持するボンディングツール4を含み、ボンディングツール4を上下動させる機構を有する。また、ワイヤ11の一端には、図2に示すように、放電等によりボール部11aが形成されている。ワイヤ11のボール部11aは、接合ヘッド2の下降動により、半導体チップ10のボンディング部10aに接触(タッチ)することになる。このとき、制御回路は、検出器3からの位置情報に基づいてタッチ検出を行う。
【0015】
制御回路は、詳細は後述するが、上記タッチ検出後から、超音波(US:ultrasonic)振動を印加するまでの間に、検出器3からの位置情報に基づいて接合ヘッド2の動作軌跡を取得し、この取得した動作軌跡と、ボンディング条件を考慮して予め設定された正常な動作軌跡とを比較することにより、ボンディング前の段階で良否判定を行う。なお、接合ヘッド2の動作軌跡は、接合ヘッド2の一部であるボンディングツール4の動作軌跡と同様となる。
【0016】
ボンディング条件とは、ワイヤ11の径、ボール部11aの径、サーチ速度、サーチ荷重、ボンディング荷重等、ボンディングに関わる全てのパラメータを含む。ワイヤ11のボール部11aをボンディング部10aに接触させるとき、その接触の際の速度や荷重は、ボンディングに影響を与える。このため、ボンディング部10aの高さが半導体チップ10(製品)によってばらつきがあっても、ボール部11aがボンディング部10aに同じ速度で接触するように制御される。この速度がサーチ速度である。また、接触の際に、荷重を必要以上に加えないように荷重制限値が設定される。この荷重制限値がサーチ荷重である。ボンディング荷重は、タッチ検出後に、ボンディングツール4をボンディング部10aに押圧するために設定される荷重である。
【0017】
図3は、接合ヘッド2の動作軌跡を示す図である。図中、横方向は時間の経過を示し、縦方向は接合ヘッド2の位置を示す。まず、接合ヘッド2の下降動により、時刻t0でタッチ検出が行われ、そのときの位置をタッチ検出位置Pとする。ボンディングツール4の制御モードは、タッチ検出される時刻t0までは、ある目標軌道に追従するように位置が制御される位置制御Caとなり、時刻t0以降では、設定されたボンディング荷重でボンディングツール4をボンディング部10aに押圧する荷重制御Cbに移行する。そして、ボンディングツール4は、位置制御Caから荷重制御Cbへの移行に伴い勢いがついているので、タッチ検出位置Pでは停止せずに、残留振動を発生させることになる。
【0018】
次に、ボンディングツール4は、時刻t1で最下点Nに到達し、その後、時刻t2で最上点Mに到達する。この最下点Nから最上点Mまでの距離をバウンド距離Daという。さらに、ボンディングツール4は、時刻t3で整定位置Qに留まる。整定位置Qとは、ボンディング荷重によりボール部11aが多少変形しつつ、残留振動が収まり、ボンディング荷重とつりあった位置をいう。
【0019】
その後、整定位置Qに留まった状態のボンディングツール4に対して、適宜の期間US振動を印加することで、ボンディングツール4は、図中矢印に示すように沈み込む。これにより、ボール部11aは、潰れ変形して半導体チップ10のボンディング部10aと接合する。
【0020】
次に、時刻t0〜t3で発生する残留振動について説明する。荷重制御Cbにより設定されたボンディング荷重で、ボンディングツール4をボンディング部10aに押圧することは、例えるなら、テーブルの上にボールを落とすようなものである。これは、テーブルに接触した後のボールの振動が、テーブルに接触する際の速度や、ボール及びテーブルの材質等により変化することを意味する。つまり、接合ヘッド2の残留振動は、接合ヘッド2を下降させる速度を遅くすればする程、減少することになる。しかも、残留振動は、製造工程において本来望ましいものではないから、この下降速度を遅くしても構わないはずである。
【0021】
しかし、下降速度を遅くすると、生産性が悪くなるため、生産性を考慮すれば、できる限り速くする必要もある。このため、ワイヤ11のボール部11aの変形により勢いを吸収できるまで速度を遅くすれば、残留振動は発生しないが、それ以上に生産性を高めようとすれば、ある程度の残留振動の発生は許容する必要がある。
【0022】
本発明にあたり、残留振動には、ボンディング接合物の不具合が反映されることが実験評価の結果により確認された。ボンディング接合物とは、ワイヤ11、ワイヤ11のボール部11a、半導体チップ10のボンディング部10a、リードフレーム12、ヒータブロック13、及びボンディングツール4等、ボンディングに関するもの全般を含む。
【0023】
本実施形態のワイヤボンディング装置1では、この残留振動に着目し、US振動を印加してボンディングを行う前に、ボンディングの良否判定を行う。以下、このワイヤボンディング装置1の動作について詳細に説明する。図4は、本発明の実施形態に係るワイヤボンディング方法の各処理を示すフローチャートである。まず、接合ヘッド2のボンディングツール4が位置制御Caにより下降動し、ボンディングツール4に支持されたワイヤ11のボール部11aを半導体チップ10のボンディング部10aに接触させる(S1)。ステップS1でボール部11aとボンディング部10aとが接触したことを検知したとき、ボンディングツール4は荷重制御Cbに切り替わる。次に、制御回路内の軌跡計測部は、検出器3からの位置情報を連続的なデータとして取得し、この位置情報に基づいて、上記残留振動によって発生する接合ヘッド2の動作軌跡を取得する(S2)。
【0024】
次に、制御回路内の判定部は、ステップS2で取得した接合ヘッド2の動作軌跡の良否判定を行う(S3)。そして、制御回路は、良否判定の結果、良好と判定された場合には(S3、Y)、US振動の印加に移行し(S4)、不良と判定された場合には(S3、N)、アラームによる警報を発して(S5)、ワイヤボンディングを中止する(S6)。
【0025】
以下、ステップS3の良否判定について説明する。ステップS3の良否判定は、取得した接合ヘッド2の動作軌跡と、ボンディング条件を考慮した実験や解析等によって予め把握された正常な動作軌跡とを比較することで行われる。図5は、取得した接合ヘッド2の動作軌跡と予め把握された正常な動作軌跡とを比較した状態を示す図である。図中、正常な動作軌跡Aを点線で示し、取得した動作軌跡Bを実線で示した。ここでは、一例として、図3で示したバウンド距離Daに着目して比較を行った。
【0026】
具体的には、正常な動作軌跡Aは、図示のように、時刻t0でのタッチ検出後、時刻t1Aで最下点NAに到達し、その後、時刻t2Aで最上点MAに到達した。この最下点NAから最上点MAまでの距離がバウンド距離DaAとなる。これに対して、取得した動作軌跡Bは、図示のように、時刻t1Bで最下点NBに到達し、その後、時刻t2Bで最上点MBに到達した。この最下点NBから最上点MBまでの距離がバウンド距離DaBとなる。
【0027】
バウンド距離Daは、実験評価の結果により、リードフレーム12のアイランドが浮いていた場合や、樹脂ゴミ上にボンディングした場合には、正常時と明らかに異なることが確認されている。一例として、樹脂ゴミ上にボンディングした場合には、ゴミの変形によるクッションが働くためにバウンド距離Daが大きくなるような異常な残留振動が発生する。一方、ゴミがない正常な状態でボンディングした場合には、変形するのはワイヤ11のボール部11aのみであるから、バウンド距離Daは大きくならない。
【0028】
図5では、取得した動作軌跡Bのバウンド距離DaBが、正常な動作軌跡Aのバウンド距離DaAよりも大きい。つまり、ステップS3では、予め把握された正常なバウンド距離DaAと、取得されたバウンド距離DaBとを比較し、バウンド距離DaBが、製品としての半導体チップ10に異常がないとみなせる許容範囲を超えるか否かにより、良否判定を行うことになる。
【0029】
さらに、上記したように接合ヘッド2の残留振動は、ボンディング接合物の不具合が反映されるので、ステップS3の良否判定はバウンド距離Daの比較に限定されない。なお、ボンディング接合物の不具合としては、ボール部11aの表面に傷や凹みがあること、ボール部11aの径が大きく違うこと、ワイヤ11が変形していること、ボンディング部10aが変形して凹凸があること、リードフレーム12が浮いていること、ヒータブロック13の温度が異常であること、ボンディング部10aに付着したゴミ上にボンディングしたこと等が挙げられる。
【0030】
以下では、動作軌跡を各種距離や時間で区分し、その区分した各種距離や時間に基づいた比較により、ボンディングの良否判定を行う例を示す。図6は、動作軌跡を各種距離や時間で区分した状態を示す図である。動作軌跡は、図示のように、上記最下点N、最上点M、タッチ検出位置P、及び整定位置Qで規定される距離で区分され、さらに、タッチ検出された時刻t0、最下点Nとなる時刻t1、最上点Mとなる時刻t2、及び整定位置Qとなる時刻t3で規定される時間で区分されている。
【0031】
具体的には、動作軌跡は、最下点Nから最上点Mまでの上記バウンド距離Da、タッチ検出位置Pから最下点Nまでの行き過ぎ距離Db、タッチ検出位置Pから最上点Mまでの戻り距離Dc、タッチ検出位置Pから整定位置Qまでの押し込み距離Dd、最下点Nから整定位置Qまでの整定行き過ぎ距離De、及び最上点Mから整定位置Qまでの整定戻り距離Dfで区分されている。これらの距離Da〜Dfは、ボンディング接合物の不具合を反映する可能性が高い。このため、ステップS3では、取得した動作軌跡Bを正常な動作軌跡Aと比較するとき、いずれの距離Da〜Dfを用いても良否判定を行うことができる。
【0032】
さらに、動作軌跡は、タッチ検出位置Pから最下点Nに至るまでの行き過ぎ時間Ta、最下点Nから最上点Mに至るまでのバウンド時間Tb、タッチ検出位置Pから最上点Mに至るまでの戻り時間Tc、タッチ検出位置Pから整定位置Qに至るまでの整定時間Td、最下点Nから整定位置Qに至るまでの整定行き過ぎ時間Te、及び最上点Mから整定位置Qに至るまでの整定戻り時間Tfで区分されている。これらの時間Ta〜Tfは、ボンディング接合物の不具合を反映する可能性が高い。このため、ステップS3では、取得した動作軌跡Bを正常な動作軌跡Aと比較するとき、いずれの時間Ta〜Tfを用いても良否判定を行うことができる。
【0033】
従って、本実施形態のワイヤボンディング装置1によれば、タッチ検出後からUS振動を印加する前までの、接合ヘッド2の動作軌跡を取得して良否判定を行うので、US振動を印加してボンディングを行う前に、ボンディングで発生する異常を検出できる。また、異常を検出したら、ボンディングを中止できるので、ボンディング工程後の各種工程に不良品が流出する可能性を低減させ、その結果、製品品質の安定化や向上を図ることができる。
【0034】
また、接合ヘッド2の動作軌跡は、ボンディング接合物の不具合を反映するから、この動作軌跡に基づいてボンディングで発生する異常を検出することにより、ワイヤ11とボンディング部10aとが電気的には接続していても、良品ではないような製品、即ち従来の方法では良否判定が困難とされた不良品を検出できる。
【0035】
さらに、ボンディング接合物の不具合によりタッチ位置が変化しても、取得された動作軌跡がボンディング接合物の不具合を反映しているので、タッチ位置を基準とした動作軌跡によって、ボンディングで発生する異常を検出できる。
【0036】
上記実施形態では、ボンディングの良否判定について、取得した動作軌跡Bと正常な動作軌跡Aとを比較する点について説明したが、これらの動作軌跡A,Bが完全に一致している必要はなく、ある程度の許容範囲を設定することができる。一例として、許容範囲は、ボンディング工程を経た半導体チップ10の製品品質が良好となるように、上記区分された距離Da〜Dfや時間Ta〜Tf、及び動作軌跡全体のパターンから適宜設定してもよい。
【0037】
さらに、取得した動作軌跡Bが、上記区分された距離Da〜Dfや時間Ta〜Tfのうちいずれかが許容範囲外であり、他の距離や時間が許容範囲内である場合でも、製品品質が良好になるように、区分された距離や時間を適宜選択し、許容範囲を設定してもよい。
【0038】
上記実施形態では、半導体チップ10のボンディング部10aにワイヤ11を接続する場合について説明したが、これに限定されず、リードフレーム12のリード端子にワイヤ11を接続する場合や、半導体チップ10同士をワイヤ11で接続する場合等、他のワイヤボンディングにも適用できる。
【0039】
本発明のワイヤボンディング方法では、以下の態様の採用が可能である。判定ステップ(S3)は、取得した動作軌跡(B)と予め設定された動作軌跡(A)とを比較するステップを含む。この場合には、ボンディング条件を考慮した正常な動作軌跡を設定し、取得した動作軌跡が正常な動作軌跡と一致又は略一致しているか否かを比較することで、ボンディングの良否を判定できる。
【0040】
動作軌跡が、ボンディングツール(4)の残留振動によって発生する。この場合、動作軌跡は、ワイヤがボンディング部に接触してから超音波が印加されるまでの期間における、ボンディング接合物の状態を反映したものとなり、超音波を印加してボンディングを行う前に、ボンディングで発生する異常を検出できる。
【0041】
判定ステップでは、動作軌跡においてボンディングツールの最下点(N)、最上点(M)、ボンディング部(10a)に接触した位置(P)、及び、残留振動が収束する位置(Q)の少なくとも2つの位置で規定される距離(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)と、ボンディング条件とに基づいて判定する。これにより、最下点から最上点までの距離(Da)、接触した位置から最下点までの距離(Db)、接触した位置から最上点までの距離(Dc)、接触した位置から収束する位置までの距離(Dd)、最下点から収束する位置までの距離(De)、最上点から収束する位置までの距離(Df)のうち、いずれの距離を用いても、ボンディング条件を考慮した正常な距離と比較することで、ボンディングの良否を判定できる。
【0042】
判定ステップでは、動作軌跡においてボンディングツールが最下点となる時刻(t1)、最上点となる時刻(t2)、ボンディング部に接触した時刻(t0)、及び、残留振動が収束した時刻(t3)の少なくとも2つで規定される時間(Ta、Tb、Tc、Td、Te、Tf)と、ボンディング条件とに基づいて判定する。これにより、接触した位置から最下点に至るまでの時間(Ta)、最下点から最上点に至るまでの時間(Tb)、接触した位置から最上点に至るまでの時間(Tc)、接触した位置から収束する位置に至るまでの時間(Td)、最下点から収束する位置に至るまでの時間(Te)、最上点から収束する位置に至るまでの時間(Tf)のうち、いずれの時間を用いても、ボンディング条件を考慮した正常な時間と比較することで、ボンディングの良否を判定できる。
【0043】
ボンディングツールは、位置制御(Ca)によってワイヤの一端をボンディング部に接触させた後に、位置制御から荷重制御(Cb)に移行し、設定されたボンディング荷重値でワイヤの一端をボンディング部に押圧する。この場合には、ボンディングツールは、位置制御から荷重制御に移行するとき勢いがついているので、ボンディング部からボンディング荷重値に応じた力を受けて押し返され、残留振動を生じる。
【0044】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のワイヤボンディング方法及びワイヤボンディング装置は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤボンディング装置の概略を示す構成図。
【図2】ワイヤボンディング装置の一部を拡大して示す図。
【図3】接合ヘッドの動作軌跡を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係るワイヤボンディング方法の各処理を示すフローチャート。
【図5】取得した接合ヘッドの動作軌跡と予め把握された正常な動作軌跡とを比較した状態を示す図。
【図6】動作軌跡を各種距離や時間で区分した状態を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1:ワイヤボンディング装置
2:接合ヘッド
3:検出器
4:ボンディングツール
10:半導体チップ
10a:ボンディング部
11:ワイヤ
11a:ボール部
12:リードフレーム
13:ヒータブロック
A,B:動作軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を印加してワイヤボンディングを行うワイヤボンディング方法であって、
ボンディングツールに支持されたワイヤの一端を、ボンディング部に接触させるステップと、
前記接触させた後の前記ボンディングツールの動作軌跡を取得するステップと、
前記取得した動作軌跡の良否を判定するステップと、
前記判定ステップで良と判定されると、超音波の印加に移行するステップと、を有することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記取得した動作軌跡と予め設定された動作軌跡とを比較するステップを含む、請求項1に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項3】
前記動作軌跡が、前記ボンディングツールの残留振動によって発生する、請求項1に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項4】
前記判定ステップでは、前記動作軌跡において前記ボンディングツールの最下点、最上点、前記ボンディング部に接触した位置、及び、前記残留振動が収束する位置の少なくとも2つの位置で規定される距離と、ボンディング条件とに基づいて判定する、請求項3に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項5】
前記判定ステップでは、前記動作軌跡において前記ボンディングツールが最下点となる時刻、最上点となる時刻、前記ボンディング部に接触した時刻、及び、前記残留振動が収束した時刻の少なくとも2つで規定される時間と、ボンディング条件とに基づいて判定する、請求項3に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項6】
前記ボンディングツールは、位置制御によって前記ワイヤの一端を前記ボンディング部に接触させた後に、前記位置制御から荷重制御に移行し、設定されたボンディング荷重値で前記ワイヤの一端を前記ボンディング部に押圧する、請求項1〜5の何れか一に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項7】
超音波を印加してワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置であって、
ワイヤの一端をボンディング部に接触させるボンディングツールと、
前記ワイヤが前記ボンディング部に接触した後の前記ボンディングツールの動作軌跡を計測する軌跡計測部と、
前記軌跡計測部が取得した動作軌跡の良否を判定する判定部とを備え、
前記判定部での判定結果が良であると、超音波を印加してボンディングを行うことを特徴とするワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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