説明

ワイヤボンディング方法

【課題】ワイヤループの膨らみを除去すると共に、更に一層の直進性の向上が図るワイヤボンディング方法の提供。
【解決手段】クランパ6が開状態でキャピラリ5を外部リード1の上方より下降させてワイヤ10が完全に外部リード1に接続させない程度に押し潰して薄肉部を形成する。クランパ6を閉じてキャピラリ5を薄肉部と共に第1ボンド点Aとほぼ同じ高さに上昇させ、続いてキャピラリ5を第1ボンド点Aから離れる方向に移動させてワイヤを引っ張って直線状ワイヤ部18とすると共に薄肉部より切断させる。キャピラリ5で直線状ワイヤ部18の端部19を押圧して外部リード1にボンディングすると共に、キャピラリ5下端のワイヤ先端を外部リード1に軽く接続する。クランパ6が開いてキャピラリ5の上昇途中にクランパ6を閉じてキャピラリ5下端のワイヤ先端20を外部リード1より剥がしてキャピラリ5の下端にテール部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイの電極パッドと外部リードとの間をワイヤで接続するワイヤボンディング方法に係り、特に低ワイヤループ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第2ボンド点にワイヤをボンディングするために、キャピラリが第2ボンド点の僅かに上方に移動した場合には、キャピラリの下端から余分のワイヤが垂れ下がって垂れ下がり部を形成したワイヤ形状となっている。この垂れ下がり部は、第2ボンド点にワイヤをボンディングした時に反発を起こして上方に膨らみ、ワイヤループの直進性を劣化させる。従来、第2ボンド点へのボンディング時におけるワイヤループの膨らみを防止するワイヤボンディング方法として、例えば特許文献1及び2が挙げられる。
【特許文献1】特開平4−370941号公報(特許第3049515号)
【特許文献1】特開2000−82717号公報
【0003】
特許文献1は、第1ボンド点にワイヤを接続後、キャピラリを第2ボンド点の僅かに上方で、かつ僅かに第1ボンド点側に位置させた後、キャピラリを第2ボンド点の方向に斜めに下降させて第2ボンド点にワイヤをボンディングする。このように、キャピラリを斜めに下降させることにより、キャピラリの下端から垂れ下がっている垂れ下がり部が吸収される。
【0004】
特許文献2は、第1ボンド点にワイヤを接続した後、キャピラリを第2ボンド点より僅かに第1ボンド点側に下降してキャピラリの下端より垂れ下がった垂れ下がり部を水平面に押し付け、次にキャピラリは上昇及び第2ボンド点の上方に移動させた後、キャピラリを下降させて第2ボンド点にワイヤをボンディングする。このように、第2ボンド点にボンディングする前にキャピラリの下端より垂れ下がったワイヤを水平面に押し付けるので、第2ボンド点へのボンディング時におけるワイヤループの膨らみを防止することができる。
【0005】
なお、発明が解決しようとする課題と直接関係ないが、第1ボンド点からのワイヤループの高さを低く形成するワイヤボンディング方法として、例えば特許文献3が挙げられる。特許文献3は、ワイヤの先端に形成したボールをダイの電極パッドに圧着して圧着ボールを形成し、次にキャピラリを上昇移動・水平移動等のループコントロールを行った後に圧着ボール上にワイヤを圧着してワイヤボンディング部を形成している。このように、第1ボンド点へのボンディングを行うことにより第1ボンド点からワイヤループ高さを低くすることができる。
【特許文献3】特開平9−51011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように第2ボンド点へのボンディング前にキャピラリを斜めに下降させても、キャピラリの下端部にはワイヤの垂れ下がり部は通常の第2ボンド点へのボンディング方法より少ないが、依然として残る。従って、第2ボンド点にボンディングした時における前記垂れ下がり部によるワイヤの塑性変形による反発は避けられなく、ワイヤループの傾斜部に膨らみが生じる。
【0007】
特許文献2のように垂れ下がり部を水平面に押し付けた場合、垂れ下がり部はキャピラリ内とワイヤループの傾斜部に分散し、それぞれの部分を弛ませる。次の工程でキャピラリが或る高さまで上昇した時、キャピラリ内に弛んでいたワイヤが下方に押し戻され、キャピラリの下端部に出てくる。次の第2ボンド点へのボンディングで前記キャピラリの下端部に出てきたワイヤを第2ボンド点に押圧するので、特許文献1の時と同様に、ワイヤの塑性変形による反発が生じ、通常の第2ボンド点へのボンディング方法より小さいが、ワイヤループの傾斜部に膨らみが生じる。
【0008】
本発明の課題は、ワイヤループの膨らみを除去することができ、更に一層の直進性の向上が図れるワイヤボンディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、キャピラリに挿通されたワイヤをキャピラリで第1ボンド点である電極パッドと第2ボンド点である外部リードとの間を接続するワイヤボンディング方法において、電極パッドにボンディング後、クランパが開状態でキャピラリを外部リードの上方より下降させてワイヤが完全に外部リードに接続させない程度にワイヤを押し潰して薄肉部を形成し、次にクランパを閉じてキャピラリを第1ボンド点とほぼ同じ高さに上昇させて前記薄肉部をキャピラリと共に上昇させ、続いてキャピラリを第1ボンド点から離れる方向に移動させて第1ボンド点に接続させたワイヤを引っ張って該ワイヤを直線状ワイヤ部とすると共に前記薄肉部より切断させ、次にキャピラリで前記直線状ワイヤ部の端部を押圧して外部リードにボンディングすると共に、キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードに軽く接続し、次にクランパが開いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて前記キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードより剥がしてキャピラリの下端より延在したテール部を形成することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の請求項2は、キャピラリに挿通されたワイヤをキャピラリで第1ボンド点である電極パッドと第2ボンド点である外部リードとの間を接続するワイヤボンディング方法において、電極パッドにボンディング後、クランパが開状態でキャピラリを外部リードの上方より下降させてワイヤが完全に外部リードに接続させない程度にワイヤを押し潰して薄肉部を形成し、次にクランパを閉じてキャピラリを第1ボンド点とほぼ同じ高さに上昇させて前記薄肉部をキャピラリと共に上昇させ、続いてキャピラリを第1ボンド点から離れる方向に移動させて第1ボンド点に接続させたワイヤを引っ張って該ワイヤを直線状ワイヤ部とすると共に前記薄肉部より切断させ、次にキャピラリを下降させてキャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードに軽く接続し、次にクランパが開いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて前記キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードより剥がしてキャピラリの下端より延在したテール部を形成し、このテール部にボールを形成した後、このボールを前記直線状ワイヤ部の端部に押し付けて該直線状ワイヤ部の端部と共にボールを外部リードにボンディングしてボールを圧着ボールに形成し、続いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて圧着ボールよりワイヤを切断してキャピラリ下端より延在したテール部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
キャピラリを第1ボンド点から離れる方向に移動させて第1ボンド点に接続させたワイヤを引っ張って該ワイヤを直線状ワイヤ部とすると共に前記薄肉部より切断させる。この工程により跳ね上がり部は引っ張られ、また薄肉部より切断されて片持支持の直線状ワイヤ部となる。この片持支持の直線状ワイヤ部の端部をキャピラリによって押圧して外部リードにボンディングするので、ワイヤループの直進性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のワイヤボンディング方法の第1の実施の形態を図1乃至図3により説明する。外部リード1が形成されたリードフレーム2上には、電極パッド3が形成されたダイ4がマウントされている。図3(b)に示すように、キャピラリ5にはワイヤ10が挿通されている。なお、6はクランパを示す。
【0013】
まず、図1(a)に示す第1ボンド点Aにボンディングを行い、圧着ボール11と該圧着ボール11上にワイヤボンディング部12を形成する。この圧着ボール11及びワイヤボンディング部12の形成は、例えば特許文献3の方法で行う。即ち、図3(b)に示すように、クランパ6が閉じた状態でキャピラリ5の下端より延在するテール部13に図示しない電気トーチによる火花放電によってボール14を形成する。次にクランパ6は開いた状態となり、キャピラリ5が第1ボンド点Aの上方に移動した後に下降し、ボール14を第1ボンド点Aにボンディングして、図1(a)に示すように圧着ボール11を形成する。続いてキャピラリ5が上昇移動・水平移動等のループコントロールを行った後に圧着ボール11上にワイヤ10を圧着してワイヤボンディング部12を形成する。その後、キャピラリ5は外部リード1の第2ボンド点Bの僅かに上方に位置する。この場合、キャピラリ5の下端から余分のワイヤ10が垂れ下がった垂れ下がり部15が形成されている。
【0014】
次に図1(b)に示すように、キャピラリ5が下降してワイヤ10をリードフレーム2の外部リード1に押し付け、薄肉部16を形成する。このように、ワイヤ10を外部リード1に押し付けると、垂れ下がり部15が跳ね上がり、跳ね上がり部17となる。この場合、薄肉部16は外部リード1に完全に接続されなく、次の図1(c)工程でクランパ6が閉じてキャピラリ5が上昇する時、薄肉部16がキャピラリ5と共に持ち上げられる半接続状態に押し潰される。次にクランパ6が閉じて図1(c)に示すように、キャピラリ5は第1ボンド点Aの高さとほぼ同じ高さまで上昇する。
【0015】
次に図2(a)に示すように、キャピラリ5は第1ボンド点Aから離れる方向に水平移動する。これにより、跳ね上がり部17が引っ張られてほぼ水平な直線状ワイヤ部18が形成されると共に、薄肉部16より切断される。続いて図2(b)に示すように、キャピラリ5は該キャピラリ5の下端が直線状ワイヤ部18の端部19の上方に位置するように移動する。次に図2(c)に示すように、キャピラリ5が下降し、直線状ワイヤ部18の端部19を外部リード1にボンディングする。この時、キャピラリ5の下端より僅かに伸びたワイヤ先端部20も外部リード1に接続される。
【0016】
次にクランパ6は開き、図3(a)(b)に示すように、キャピラリ5が上昇する。このキャピラリ5の上昇途中、即ち図3(a)に示すように上昇した時にクランパ6が閉じる。これにより、図3(b)に示すように、ワイヤ先端部20は外部リード1より剥がれ、キャピラリ5の下端にはテール部13が形成される。このテール部13に電気トーチによってボール14を形成した後に図1の工程に移る。
【0017】
このように、図1(c)から図2(a)の工程により跳ね上がり部17は引っ張られ、また薄肉部16より切断されて片持支持の直線状ワイヤ部18となる。この片持支持の直線状ワイヤ部18の端部19を図2(b)(c)に示すように、キャピラリ5によって押圧して第2ボンド点Bにボンディングするので、ワイヤループの直進性が向上する。
【0018】
本発明のワイヤボンディング方法の第2の実施の形態を図4乃至図6により説明する。本実施の形態は、前記実施の形態と図1(a)から図2(a)までは同じである。図4(a)は図2(a)の状態を示す。前記実施の形態は、図2(a)の工程後、直線状ワイヤ部18の端部19をキャピラリ5により直接第2ボンド点Bにボンディングした。本実施の形態は、図4(a)(図2(a))の工程後、直線状ワイヤ部18の端部19をキャピラリ5により直接第2ボンド点Bにボンディングしない。
【0019】
図4(a)の工程後、図4(b)に示すように、キャピラリ5が下降し、ワイヤ先端部20を外部リード1に軽く接続する。次にクランパ6は開き、図4(c)及び図5(a)に示すように、キャピラリ5が上昇する。このキャピラリ5の上昇途中、即ち図4(c)に示すように上昇した時にクランパ6が閉じる。これにより、図5(a)に示すように、ワイヤ先端部20は外部リード1より剥がれ、キャピラリ5の下端にはテール部25が形成される。このテール部25に図示しない電気トーチによる火花放電によってボール26を形成する。
【0020】
次にクランパ6は開いた状態となり、キャピラリ5は直線状ワイヤ部18の端部19の上方に移動する。続いて図5(c)に示すように、キャピラリ5が下降して直線状ワイヤ部18の端部19を外部リード1に押し付けると共に、ボール26を直線状ワイヤ部18の端部19上及び外部リード1にボンディングし、圧着ボール27を形成する。次に図6(a)(b)に示すように、キャピラリ5が上昇する。このキャピラリ5の上昇途中、即ち図6(a)に示すように上昇した時にクランパ6が閉じる。これにより、図6(b)に示すように、圧着ボール27の上端よりワイヤ10は切断され、キャピラリ5の下端にはテール部13が形成される。このテール部13に図示しない電気トーチによる火花放電によってボール14を形成した後に図1の工程に移る。
【0021】
本実施の形態においても片持支持の直線状ワイヤ部18の端部19を第2ボンド点Bにボンディングするので、前記実施の形態と同様にワイヤループの直進性が向上する。また本実施の形態においては、第2ボンド点Bにボンディングされた端部19に圧着ボール27を形成するので、第2ボンド点Bへのボンディングの肉厚が厚くなり、強度が向上する。
【0022】
なお、上記実施の形態においては、第1ボンド点Aへのボンディングを特許文献3のボンディング方法でボンディングを行ったが、この方法に限定されるものではなく通常のボンディング方法でもよい。しかし、特許文献3のボンディング方法であると、第1ボンド点Aからの立ち上がりを低くすることができ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のワイヤボンディング方法の第1の実施の形態を示す工程図である。
【図2】図1の続きの工程図である。
【図3】図2の続きの工程図である。
【図4】本発明のワイヤボンディング方法の第2の実施の形態を示す工程図である。
【図5】図4の続きの工程図である。
【図6】図5の続きの工程図である。
【符号の説明】
【0024】
A 第1ボンド点
B 第2ボンド点
1 外部リード
2 リードフレーム
3 電極パッド
4 ダイ
5 キャピラリ
6 クランパ
10 ワイヤ
11 圧着ボール
12 ワイヤボンディング部
15 垂れ下がり部
16 薄肉部
17 跳ね上がり部
18 直線状ワイヤ部
19 端部
20 ワイヤ先端部
25 テール部
26 ボール
27 圧着ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリに挿通されたワイヤをキャピラリで第1ボンド点である電極パッドと第2ボンド点である外部リードとの間を接続するワイヤボンディング方法において、電極パッドにボンディング後、クランパが開状態でキャピラリを外部リードの上方より下降させてワイヤが完全に外部リードに接続させない程度にワイヤを押し潰して薄肉部を形成し、次にクランパを閉じてキャピラリを第1ボンド点とほぼ同じ高さに上昇させて前記薄肉部をキャピラリと共に上昇させ、続いてキャピラリを第1ボンド点から離れる方向に移動させて第1ボンド点に接続させたワイヤを引っ張って該ワイヤを直線状ワイヤ部とすると共に前記薄肉部より切断させ、次にキャピラリで前記直線状ワイヤ部の端部を押圧して外部リードにボンディングすると共に、キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードに軽く接続し、次にクランパが開いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて前記キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードより剥がしてキャピラリの下端より延在したテール部を形成することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
キャピラリに挿通されたワイヤをキャピラリで第1ボンド点である電極パッドと第2ボンド点である外部リードとの間を接続するワイヤボンディング方法において、電極パッドにボンディング後、クランパが開状態でキャピラリを外部リードの上方より下降させてワイヤが完全に外部リードに接続させない程度にワイヤを押し潰して薄肉部を形成し、次にクランパを閉じてキャピラリを第1ボンド点とほぼ同じ高さに上昇させて前記薄肉部をキャピラリと共に上昇させ、続いてキャピラリを第1ボンド点から離れる方向に移動させて第1ボンド点に接続させたワイヤを引っ張って該ワイヤを直線状ワイヤ部とすると共に前記薄肉部より切断させ、次にキャピラリを下降させてキャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードに軽く接続し、次にクランパが開いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて前記キャピラリ下端のワイヤ先端を外部リードより剥がしてキャピラリの下端より延在したテール部を形成し、このテール部にボールを形成した後、このボールを前記直線状ワイヤ部の端部に押し付けて該直線状ワイヤ部の端部と共にボールを外部リードにボンディングしてボールを圧着ボールに形成し、続いてキャピラリを上昇させる上昇途中にクランパを閉じて圧着ボールよりワイヤを切断してキャピラリ下端より延在したテール部を形成することを特徴とするワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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