説明

ワイヤボンディング方法

【課題】ホーンに取り付けられ当該ホーンによって移動・振動を行うキャピラリを用いてワイヤを被接合部材に接合するワイヤボンディング方法において、キャピラリをホーンから取り外して交換することなく、キャピラリの先端部に付着した有機物を適切に除去できるようにする。
【解決手段】プラズマ照射を行うプラズマ照射部210を被接合部材10、20の周囲に設けておき、ボンディングワイヤ30の被接合部材10、20への接合を行う前に、ホーンによってキャピラリ100をプラズマ照射部210まで移動させてキャピラリ100の先端部102にプラズマ照射を行って当該先端部102に付着している有機物を除去し、続いて、ホーン110によってキャピラリ100を被接合部材10、20まで移動させてワイヤ30の接合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーンに取り付けられたキャピラリを用いてワイヤを被接合部材に接合するワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のワイヤボンディングは、ワイヤを保持しながら引き出すことのできるキャピラリを、ワイヤボンディング装置のホーンに取り付けて行う。このホーンは、キャピラリを移動・振動させることができるものである。
【0003】
具体的には、キャピラリの内部にワイヤを挿入し、キャピラリの先端部から導出されたワイヤの部分を、被接合部材に押し当てた状態で、上記ホーンによってキャピラリを振動させることにより、ワイヤを被接合部材に接合するものである。このようなワイヤボンディング方法は、いわゆるボールボンディング法と言われる(たとえば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開平9−17817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の半導体実装は、多種の複合部材を組み合わせる工程を持つ高密度な実装を行う傾向にある。ここで、図5は、本発明者が試作した半導体実装構造を示す概略断面図である。
【0005】
この図5に示される実装構造は、アルミナダイキャストの様な筐体50に、セラミック、樹脂などよりなる基板10を、シリコーン系接着剤40によって接続し、基板10上のランド11と基板10に実装された半導体素子20の電極21とを、Au線よりなるワイヤ30で接続する構造である。
【0006】
ここで、ワイヤ30は、セラミック等で形成されるキャピラリ100の内孔101に挿入されキャピラリ100の先端部102から導出されている。このキャピラリ100は、図示しないワイヤボンディング装置の上記ホーンに取り付けられ、所望の位置に移動したり、振動することができるようになっている。
【0007】
そして、ワイヤボンディング工程では、被接合部材における上記各電極11、21に対して、キャピラリ100を当て、上記ホーンからの振動によってキャピラリ100を振動させることにより、ワイヤ30をボンディングする。
【0008】
この場合、ワイヤボンディング工程の前に、シリコーン接着剤40の硬化工程を有するため、硬化時に基板10のランド11および半導体素子20の電極21に、シリコーン接着剤40から発生したシロキサン成分等の有機物Kが付着したり、また、ワイヤボンディング時に基板10の加熱を行う際に飛散する有機物Kが、キャピラリ100の先端部102に付着したりする。
【0009】
キャピラリ100の先端部102にこのような有機物Kが付着した場合、ワイヤ30の接合強度が不足したり、ワイヤ30の未着が発生するといったワイヤボンディング性能の劣化が発生することが問題となっている。
【0010】
また、キャピラリ100の先端部102に有機物Kが付着した場合、その付着度合に応じて、キャピラリ100を上記ホーンから取り外して交換しなければならず、その交換等に手間が掛かるなどの問題が生じる。
【0011】
ここで、上記特許文献1では、キャピラリの汚染防止のために、加熱時のヒュームを排気する通気孔を、ワイヤボンディングの固定治具に設けるようにしている。しかし、この方法では、いったんキャピラリに上記有機物が付着した場合には、これを除去することはできず、やはり上記したキャピラリの交換の問題が発生する。
【0012】
なお、上記試作品に示したようなもの以外にも、被接合部材自身あるいは被接合部材に付随する部分が、接着剤や樹脂部を有するものであれば、ワイヤボンディング時において、これら接着剤や樹脂部から、上記と同様に飛散物が発生すると考えられる。そのため、上記したキャピラリの先端部への有機物の付着は、このような接着剤や樹脂部を有する構造体であれば、共通して起こりうると考えられる。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ホーンに取り付けられたキャピラリを用いてワイヤを被接合部材に接合するワイヤボンディング方法において、キャピラリをホーンから取り外して交換することなく、キャピラリの先端部に付着した有機物を適切に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明のワイヤボンディング方法は、プラズマ照射を行うプラズマ照射部(210)を被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、ワイヤ(30)の被接合部材(10、20)への接合を行う前に、ホーン(110)によってキャピラリ(100)をプラズマ照射部(210)まで移動させてキャピラリ(100)の先端部(102)にプラズマ照射を行って当該先端部(102)に付着している有機物を除去し、続いて、ホーン(110)によってキャピラリ(100)を被接合部材(10、20)まで移動させてワイヤ(30)の接合を行うことを特徴とする。
【0015】
それによれば、ワイヤ(30)の被接合部材(10、20)への接合を行う前に、キャピラリ(100)をホーン(110)に取り付けたままキャピラリ(100)の先端部(102)にプラズマ照射を施すことができるため、キャピラリ(100)をホーン(110)から取り外して交換することなく、キャピラリ(100)の先端部(102)に付着した有機物を適切に除去することができる。
【0016】
その結果、本発明によれば、ワイヤボンディング性能を向上させることが可能となる。ここで、プラズマ照射としては、酸素ラジカル照射やアルゴンプラズマ照射などを採用することができる。
【0017】
この場合、レーザ照射を行うレーザ照射部(220)を被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、プラズマ照射を行う前に、ホーン(110)によってキャピラリ(100)をレーザ照射部(220)まで移動させてキャピラリ(100)の先端部(102)にレーザ照射を行い、続いて、ホーン(110)によってキャピラリ(100)をプラズマ照射部(210)まで移動させ、プラズマ照射を行うようにしてもよい。
【0018】
それによれば、プラズマ照射の前に、キャピラリ(100)の先端部(102)にレーザ照射を行うことで、当該先端部(102)に付着した有機物を熱分解したり、当該有機物を物理的に削り取ったりすることができるため、その後のプラズマ照射による除去を容易に行うことが可能になる。
【0019】
また、この場合、キャピラリ(100)の先端部(102)が擦り付けられるクリーニング部材(230)を被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、プラズマ照射を行った後であってワイヤ(30)の被接合部材(10、20)への接合を行う前に、ホーン(110)によってキャピラリ(100)をクリーニング部材(230)まで移動させ、キャピラリ(100)の先端部(102)をクリーニング部材(230)に押し当てて擦りつけるようにしてもよい。
【0020】
それによれば、プラズマ照射後にキャピラリ(100)の先端部(102)に残っている有機物を擦り落とすことができる。
【0021】
また、被接合部材(10、20)として、加熱により硬化するとともに当該加熱により空中に飛散物を発生する接着剤(40)が付着しているものを用いると、上記した有機物のキャピラリ(100)の先端部(102)への付着が顕著になるが、その場合においても、上記各手段は有効である。
【0022】
ここで、そのような接着剤(40)としては、上記したシロキサンなどの有機物が飛散するシリコーン樹脂よりなるものを用いる。
【0023】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る電子装置S1の概略断面図である。この電子装置S1において、基板10は、セラミック基板、プリント基板、リードフレーム、ヒートシンクなどであり、この基板10の一面(図1中の上面)には、半導体素子としてのICチップ20が搭載されている。
【0026】
このICチップ20は、図示しないダイボンド材などにより基板10に接合されている。このICチップ20は、シリコン半導体などにトランジスタ素子などによりIC回路を形成してなる一般的なものであり、その表面に、AlやCuなどよりなる電極21を有するものである。
【0027】
また、基板10の一面においてICチップ20の近傍には、基板の電極としてのランド11が設けられている。このランド11は、AuやCuなどの箔や導体ペーストなどよりなるものである。そして、この基板10のランド11とICチップ20の電極21とが、ボンディングワイヤ30を介して結線されている。
【0028】
このように、本実施形態では、これら基板10およびICチップ20が、ボンディングワイヤ30が接続される被接合部材として構成されており、上記のようにランド11と電極21とのボンディングワイヤ30による結線により、基板10とICチップ20とが、電気的に接続されている。
【0029】
ここで、ボンディングワイヤ30は、後述するようにボールボンディング法を用いたワイヤボンディングにより形成されたものであり、たとえばAuやCuなどよりなる。なお、基板10の一面には、ICチップ20以外にも図示しないコンデンサや抵抗素子などよりなる電子部品が搭載されていてもよい。
【0030】
そして、基板10の他面(図1中の下面)には、接着剤40を介して、筐体50が接続されている。ここで、この接着剤40は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂など加熱により硬化するものよりなり、当該加熱により接着剤40中の低分子成分、たとえばシロキサンなどが飛散物として発生するものである。
【0031】
つまり、本実施形態においては、基板10の他面に、この接着剤40が付着していることにより、上記飛散物を発生する接着剤が被接合部材としての基板10に付随した形となっている。
【0032】
また、筐体50は、基板10を収納したり、支持するものであり、基板10と接着剤40を介して接着されるものであれば、特に限定されるものではない。具体的に、基板10としては、一般的なリードフレームやバスバー、あるいはアルミニウムなどよりなるケースなどが挙げられる。
【0033】
なお、図1では、ボンディングワイヤ30による接続は、基板10とICチップ20との間で行われているが、それ以外にも、たとえば基板10と筐体50との間や、基板10上の異なる電極同士、さらにはICチップ20と筐体50との間などでも、本実施形態のボンディングワイヤ30による接続が行われていてもよい。
【0034】
かかる本実施形態の電子装置S1は、基板10とICチップ20とを、上記ダイボンド材を介して接続し、さらに、筐体50と基板10とを、接着剤40を介して接続した後、ボンディングワイヤを行って、ICチップ20と基板10とを、ボンディングワイヤ30を介して接続することによって形成される。
【0035】
次に、本実施形態の電子装置S1におけるボンディングワイヤ30の形成方法すなわちワイヤボンディング方法について、図2、図3を参照して述べる。図2は、本ワイヤボンディング方法を行うためのワイヤボンディング装置のキャピラリ100周辺部を示す図であり、図3は、本ワイヤボンディング方法におけるワイヤ30を被接合部材10、20に接合する工程(ワイヤ接合工程)を示す工程図である。
【0036】
ここでは、ICチップ20の電極21を1次ボンディング側、基板10のランド21を2次ボンディング側として、これら両接合部材10、20がボールボンディング法によりワイヤボンドされる。
【0037】
なお、本実施形態におけるワイヤボンディング装置は、一般的なボールボンディングを行うことのできるボールボンディング装置であり、図2に示されるように、超音波などにより振動するホーン110に対して、ワイヤ30を保持するキャピラリ100が取り付けられたものである、
そして、キャピラリ100は、当該ホーン110によって移動・振動させられる。また、図3に示されるように、キャピラリ100は、その内孔101にボンディングワイヤ30を挿入して当該ワイヤ30を保持するとともに、その先端部102にワイヤ30を繰り出すものである。
【0038】
まず、図3(a)に示されるように、キャピラリ100の内孔101に挿入されたワイヤ30において、キャピラリ100の先端部102から導出された部分の先端に、放電加工により球状をなすボール(イニシャルボール)31を形成する。
【0039】
次に、このボール31をICチップ20の電極21に押し当てて、図3(b)中の矢印Yに示されるように、超音波振動を加えながら接合し、1次ボンディングを行う。その後、ワイヤ30を、キャピラリ100の先端部102から繰り出して基板10のランド11まで引き回す(図3(c)参照)。
【0040】
次に、ランド11まで引き回されたワイヤ30を、キャピラリ100の先端部102にて当該ランド11に押しつけて、図3(d)中の矢印Yに示されるように、超音波振動を加えながら接合し、2次ボンディングを行う。
【0041】
そして、図3(e)の矢印に示す順に、キャピラリ100を上方へ移動させ、2次ボンディング側である基板10のランド11からボンディングワイヤ30を切り離す。こうして、本ワイヤボンディング方法におけるワイヤ接合工程が完了する。
【0042】
なお、このボンディングワイヤ30を切り離したとき、キャピラリ100の先端部102からは、ワイヤ30が突出してテール32として残るが、このテール32に再び上記同様に放電加工を行い、上記ボール31を形成する。こうして、ボールボンディングの1サイクルが完了し、次のサイクルを行う。
【0043】
ここで、本実施形態のワイヤボンディング方法においても、接着剤40が加熱によって飛散物が発生するものであるため、その飛散した有機物がキャピラリ100の先端部102に付着する恐れがある。
【0044】
そこで、本実施形態のワイヤボンディング方法では、さらに、上記ボールボンディングを行う前に、キャピラリ100の先端部102にプラズマ照射を行って、当該先端部102に付着した有機物を除去する工程を備えている。具体的には、この有機物除去工程は、上記ボールボンディングの第1回目のサイクルの前、もしくは、ボールボンディングの個々のサイクルの間に行う。
【0045】
すなわち、本実施形態の有機物除去工程は、ワイヤ接合工程の前後に行うものであるが、この有機物除去工程は、キャピラリ100の汚れ度合に応じて行えばよく、上記ワイヤ接合工程の1サイクル、つまり上記図3に示されるボールボンディングの1サイクル毎に行ってもよいし、複数サイクル毎に行ってもよい。
【0046】
そこで、本実施形態のワイヤボンディング装置は、上記した通常のワイヤボンディング装置に加えて、この有機物除去工程を行うための部分として有機物除去部を備えている。ここで、図4は、この有機物除去部200を備える本実施形態のワイヤボンディング装置の模式的な構成を示す図である。
【0047】
図4に示されるように、ワイヤ接合工程は、ワークを、ヒートコマ120の上に搭載して支持した状態で行われる。このヒートコマ120は、当該ワークを支持する固定治具として機能するとともに、通電によりワークを加熱するヒータとしても機能するものであり、この種のボールボンディングにおいて、一般的に使用されるものである。
【0048】
そして、図4に示されるように、ワイヤ接合時の加熱により、被接合部材である基板10に付着している接着剤40から、有機物Kが発生し、これがキャピラリ100の先端部102に付着する。
【0049】
本実施形態では、有機物除去部200がヒートコマ120の周囲すなわち被接合部材10、20の周囲に設けられており、ワイヤ接合工程の後、キャピラリ100はホーン110に取り付けられたまま、被接合部材10、20から有機物除去部200まで移動させられる。
【0050】
ここで、本実施形態のワイヤボンディング装置における有機物除去部200は、プラズマ照射を行うプラズマ照射部210と、レーザ照射を行うレーザ照射部220と、キャピラリ100の先端部102を擦り付けてクリーニングするためのクリーニング部材230とを備えて構成されている。
【0051】
このプラズマ照射部210は、たとえば一般的な大気圧プラズマ装置であり、このプラズマ照射部210においては、プラズマ吹き出し口211からプラズマが吹き出されるようになっている。
【0052】
ここで、プラズマ照射部210に使用されるガスとしては、酸素ラジカル照射やアルゴンプラズマ照射などが挙げられる。なお、酸素ラジカル照射の作用メカニズムは、有機物Cの分子を切り離しCO2の状態で除去するものであり、一方、アルゴンプラズマ照射は、物理的に有機物を除去するものである。
【0053】
また、本実施形態のレーザ照射部220は、たとえば一般的な半導体レーザ発生装置であり、当該半導体レーザ発生装置から発生する赤外線レーザを、レーザ導光ファイバー221から発射するものである。
【0054】
また、クリーニング部材230は、これにキャピラリ100の先端部102を擦り付けて上記有機物を除去するものであればよく、その材質としては、金属、樹脂、セラミックなど特に限定されるものではない。
【0055】
また、本ワイヤボンディング装置では、被接合部材10、20が搭載されたヒートコマ120と、有機物除去部200とを、上記ホーン110の可動範囲内に位置するように互いに近くに配置している。それにより、上記ホーン110によって、これら被接合部材10、20と有機物除去部200との間を、キャピラリ100が移動することが可能となっている。
【0056】
そして、本ワイヤボンディング方法では、この図4に示される有機物除去部200を用いて、上述したようにワイヤ接合工程のサイクル間にて、有機物除去工程を行う。なお、図4中の矢印Y1および矢印Y2は、本方法においてキャピラリ100が移動していく経路を示すものである。
【0057】
まず、この有機物除去工程では、たとえば、上記ワイヤ接合工程の1サイクルの終了後に、ホーン110によってキャピラリ100を、被接合部材10、20側からレーザ照射部220のレーザ導光ファイバー221の上方まで移動させる。
【0058】
そして、レーザ導光ファイバー221からキャピラリ100の先端部102にレーザ照射を行う。このレーザ照射を行うことで、キャピラリ100の先端部102に付着した有機物が熱分解されたり、当該先端部102の表面の微小切削による有機物の物理的な除去が行われたりする。
【0059】
このレーザ照射の一具体例を述べると、半導体レーザから発生する赤外線レーザを、たとえばφ0.8mmのレーザ導光ファイバー221から、キャピラリ100の先端部102に照射することにより、100〜200℃程度に加熱する。それにより、有機物を熱分解させる。ここで、有機物の種類にもよるが、シロキサン分解温度の一例は130℃程度である。なお、この加熱による温度について、詳細に温度範囲を設定する場合には、一般的な赤外線から温度を計測する方法を採用すればよい。
【0060】
このレーザ照射の後、続いて、ホーン110によってキャピラリ100をプラズマ照射部210のプラズマ吹き出し口211の上方まで移動させる。そして、プラズマ吹き出し口211からキャピラリ100の先端部102にプラズマ照射を行って当該先端部102に付着している有機物を除去する。
【0061】
このプラズマ照射の一具体例を述べると、プラズマ装置から発生する酸素ラジカルなプラズマをφ5〜10mmのスポットサイズにて、キャピラリ100の先端部102に、30〜50mm/秒の速度で照射する。それにより、当該先端部102に付着した有機物Cの分子を切り離し、二酸化炭素CO2の状態で除去することができる。
【0062】
そして、このプラズマ照射を行った後であってワイヤ30の被接合部材10、20への接合を行う前に、ホーン110によってキャピラリ100をクリーニング部材230まで移動させる。
【0063】
そして、キャピラリ100の先端部102をクリーニング部材230に押し当てて、ホーン110を振動させることにより、当該先端部102をクリーニング部材230に擦りつける。これにより、プラズマ照射の後も残っている有機物を、機械的に除去することが可能になる。
【0064】
こうして、有機物除去工程が終了し、続いて、ホーン110によってキャピラリ100を、クリーニング部材230から被接合部材10、20まで移動させてワイヤ30の接合を行う。そして、ボンディングワイヤ30を複数形成する場合には、上記したワイヤ接合、有機物除去の各工程を繰り返す。
【0065】
このように、本実施形態のワイヤボンディング方法によれば、プラズマ照射部210を被接合部材10、20の周囲に設けておき、有機物除去工程として、ワイヤ接合を行う前に、ホーン110によってキャピラリ100をプラズマ照射部210まで移動させプラズマ照射を行うことで、キャピラリ100の先端部102の有機物の除去を行い、続いて、ホーン110によってキャピラリ100を被接合部材10、20まで移動させて、ワイヤ30による被接合部材10、20の接合を行うようにしている。
【0066】
この方法によれば、ワイヤ接合を行う前に、キャピラリ100をホーン110に取り付けたままキャピラリ100の先端部102にプラズマ照射を施すことができるため、キャピラリ100をホーン110から取り外して交換することなく、キャピラリ100の先端部102に付着した有機物を除去することができる。
【0067】
その結果、本実施形態によれば、ワイヤ30の接合強度の確保や未着防止が行え、ワイヤボンディング性能を向上させることが可能となるとともに、キャピラリ100の交換のインターバルを長くすることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態のワイヤボンディング方法では、レーザ照射部220を被接合部材10、20の周囲に設けておき、有機物除去工程において、プラズマ照射を行う前に、ホーン110によってキャピラリ100をレーザ照射部220まで移動させてキャピラリ100の先端部102にレーザ照射を行い、続いて、ホーン110によってキャピラリ100をプラズマ照射部210まで移動させている。
【0069】
それによれば、キャピラリ100をホーン110から取り外して交換することなく、プラズマ照射の前に、キャピラリ100の先端部102にレーザ照射を行うことで、当該先端部102に付着した有機物の熱分解や物理的な切削が行われる。そのため、その後のプラズマ照射による除去を容易に行える。
【0070】
さらに、本実施形態のワイヤボンディング方法では、プラズマ照射後且つワイヤ接合前に、ホーン110によってキャピラリ100をクリーニング部材230まで移動させ、キャピラリ100の先端部102の擦りつけを行っているため、プラズマ照射後にキャピラリ100の先端部102に残っている有機物を擦り落とすことができ、さらなる清浄化が可能となる。
【0071】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、有機物除去部200は、プラズマ照射部210とレーザ照射部220とクリーニング部材230とを備えて構成されていたが、有機物除去部200は、少なくともプラズマ照射部210を有していればよい。
【0072】
たとえば、有機物除去部200としては、プラズマ照射部210のみにより構成されたものであってもよいし、プラズマ照射部210およびレーザ照射部220のみ、あるいは、プラズマ照射部210およびクリーニング部材230のみにより、構成されたものであってもよい。
【0073】
また、プラズマ照射部210におけるプラズマ照射方法や、レーザ照射部220におけるレーザ照射方法は、上記した例に限定されるものではなく、有機物の種類により適宜、上記効果が発揮されるように変更してもよい。
【0074】
また、クリーニング部材230としては、キャピラリ100の先端部102が擦られる面を、ロールなどにより回転する面として構成することで、常に新しい面で擦ることが可能なものとしてもよい。
【0075】
また、被接合部材としては、上記した基板10やICチップ20に限定されるものではなく、上記したワイヤボンディング法によりワイヤ30が接続できるものであるならば、それ以外のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】上記実施形態に係るワイヤボンディング装置におけるキャピラリの周辺部を示す図である。
【図3】上記実施形態に係るワイヤボンディング方法におけるワイヤ接合工程を示す工程図である。
【図4】上記実施形態に係る有機物除去部を備えるワイヤボンディング装置の模式的構成を示す図である。
【図5】本発明者が試作した半導体実装構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0077】
10…被接合部材としての基板、20…被接合部材としてのICチップ、
30…ボンディングワイヤ、40…接着剤、100…キャピラリ、
101…キャピラリの内孔、102…キャピラリの先端部、110…ホーン、
210…プラズマ照射部、220…レーザ照射部、230…クリーニング部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーン(110)に取り付けられ前記ホーン(110)によって移動および振動させられるキャピラリ(100)の内孔(101)にワイヤ(30)を挿入し、前記キャピラリ(100)の先端部(102)から導出された前記ワイヤ(30)の部分を、被接合部材(10、20)に押し当てた状態で、前記キャピラリ(100)を振動させることにより、前記ワイヤ(30)を前記被接合部材(10、20)に接合するようにしたワイヤボンディング方法において、
プラズマ照射を行うプラズマ照射部(210)を前記被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、
前記ワイヤ(30)の前記被接合部材(10、20)への接合を行う前に、前記ホーン(110)によって前記キャピラリ(100)を前記プラズマ照射部(210)まで移動させて前記キャピラリ(100)の先端部(102)にプラズマ照射を行って当該先端部(102)に付着している有機物を除去し、
続いて、前記ホーン(110)によって前記キャピラリ(100)を前記被接合部材(10、20)まで移動させて前記ワイヤ(30)の接合を行うことを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
レーザ照射を行うレーザ照射部(220)を前記被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、
前記プラズマ照射を行う前に、前記ホーン(110)によって前記キャピラリ(100)を前記レーザ照射部(220)まで移動させて前記キャピラリ(100)の先端部(102)にレーザ照射を行い、
続いて、前記ホーン(110)によって前記キャピラリ(100)を前記プラズマ照射部(210)まで移動させ、前記プラズマ照射を行うことを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項3】
前記キャピラリ(100)の先端部(102)が擦り付けられるクリーニング部材(230)を前記被接合部材(10、20)の周囲に設けておき、
前記プラズマ照射を行った後であって前記ワイヤ(30)の前記被接合部材(10、20)への接合を行う前に、前記ホーン(110)によって前記キャピラリ(100)を前記クリーニング部材(230)まで移動させ、前記キャピラリ(100)の先端部(102)を前記クリーニング部材(230)に押し当てて擦りつけることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項4】
前記被接合部材(10、20)として、加熱により硬化するとともに当該加熱により空中に飛散物を発生する接着剤(40)が付着しているものを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。
【請求項5】
前記接着剤(40)はシリコーン樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項4に記載のワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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