説明

ワイヤボンディング装置及びその制御方法

【課題】 ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制し、ループ形状を有効に制御する。
【解決手段】 電子部品120の第1のボンディング面122をXY平面(水平面)上に沿って所定位置に配置した状態で、この第1のボンディング面122にボンディングヘッド110によってワイヤボンディングを行う。次に、電子部品20をXYZ方向及び回転方向に同時にボンディングヘッド110を移動制御し、電子部品120の第2のボンディング面124をXY平面上に沿って所定位置に配置する。そして、この状態で電子部品120の第2のボンディング面124にボンディングヘッド110によってワイヤボンディングを行う。したがって、ボンディングヘッド110と電子部品120の第1のボンディング面122との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面124への移行を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体部品やその他の電子部品等に対して自動作業によりワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、互いに90°異なる第1及び第2のボンディング面を有する電子部品にワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置として、図2に示すような制御方法を用いるものが知られている。このワイヤボンディング装置は、各ボンディング面にワイヤボンディングを行うボンディングヘッド10と、このボンディングヘッド10のボンディング位置に対して電子部品20の各ボンディング面22、24を回転させるための回転機構(図示せず)とを有する。ボンディングヘッド10は、リードワイヤ12を繰り出しながら各ボンディング面へのリードワイヤー接続又はリードワイヤー配線を行うものであり、Z及びXY方向に移動し、XY平面上の所定位置でボンディング面にワイヤボンディングを行うようになっている。
【0003】また、電子部品20は、上述のように第1のボンディング面22と第2のボンディング面24が互いに90°異なる方向に設けられたものである。なお、本説明においては、先にボンディングを行う面を第1のボンディング面といい、後にボンディングを行う面を第2のボンディング面というものとする。この電子部品20を保持した回転機構は、この電子部品20を90°の範囲で回転させるものであり、ボンディングヘッド10のZ方向及びXY方向の移動との組み合わせにより、電子部品20の2つのボンディング面22、24に順番にボンディングを行うためのものである。
【0004】具体的には、まず図2(A)において、電子部品20の第1のボンディング面22をXY平面(水平面)上に沿って配置した状態で、この第1のボンディング面22にボンディングヘッド10によってワイヤボンディングを行う。そして、図2(B)に示すように、ボンディングヘッド10をZ方向(上方向)に移動させて、電子部品20より後退させ、回転機構により電子部品20を90°回転させる。次に、図2(C)に示すように、XY方向にボンディングヘッド10を移動させ、さらに図2(D)に示すように、ボンディングヘッド10をZ方向(下方向)に移動させ、電子部品20側に前進させて第2のボンディング面24へのワイヤボンディングを行う。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来例では、ボンディングヘッド10と電子部品20との相対移動をZ方向、回転方向、XY方向に分けて順番に行うため、2つのボンディング面22、24に対するワイヤボンディング作業の間でリードワイヤ12の引き出し量が大きくなり、各ボンディング面22、24の間でのリードワイヤ12のループ形状を制御することが困難で、ループ形状が不安定となってしまう。このため、弛んだリードワイヤ12がワイヤボンディング作業自体に障害を与えたり、また、他の部材に引っ掛かったりする問題が発生する。
【0006】そこで本発明の目的は、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制し、ループ形状を有効に制御できるワイヤボンディング装置及びその制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するため、互いに異なる角度に配置された第1及び第2のボンディング面を有する部品についてワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置において、前記部品の各ボンディング面に対してワイヤボンディングを行うボンディングヘッドと、前記部品及びボンディングヘッドを保持するとともに、前記部品をボンディングヘッドに対してXYZ方向及び回転方向に相対的に移動させることにより、前記部品の各ボンディング面をボンディングヘッドによってワイヤボンディングを行うためのXY平面上の所定位置に順次配置する移動機構とを有し、前記ボンディングヘッドによって前記部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、前記部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次に前記ボンディングヘッドによって前記部品の第2のボンディング面にボンディングを行うようにしたことを特徴とする。
【0008】また本発明は、互いに異なる角度に配置された第1及び第2のボンディング面を有する部品についてワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置の制御方法において、前記ワイヤボンディング装置は、前記部品の各ボンディング面に対してワイヤボンディングを行うボンディングヘッドと、前記部品及びボンディングヘッドを保持するとともに、前記部品をボンディングヘッドに対してXYZ方向及び回転方向に相対的に移動させることにより、前記部品の各ボンディング面をボンディングヘッドによってワイヤボンディングを行うためのXY平面上の所定位置に順次配置する移動機構とを有し、前記ボンディングヘッドによって前記部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、前記部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次に前記ボンディングヘッドによって前記部品の第2のボンディング面にボンディングを行うように制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】本発明のワイヤボンディング装置においては、ボンディングヘッドによって部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、この部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次にボンディングヘッドによって部品の第2のボンディング面にボンディングを行う。このため、ボンディングヘッドと部品の第1のボンディング面との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面への移行を行うことができ、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制できる。したがって、ループ形状を有効に制御でき、不安定なリードワイヤのループによる障害をなくすことが可能となる。
【0010】本発明のワイヤボンディング装置の制御方法においても同様に、ボンディングヘッドによって部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、この部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次にボンディングヘッドによって部品の第2のボンディング面にボンディングを行う。このため、ボンディングヘッドと部品の第1のボンディング面との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面への移行を行うことができ、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制できる。したがって、ループ形状を有効に制御でき、不安定なリードワイヤのループによる障害をなくすことが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明によるワイヤボンディング装置及びその制御方法の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態によるワイヤボンディング装置によってワイヤボンディング作業を行う工程を示す説明図である。本例のワイヤボンディング作業は、互いに90°異なる第1及び第2のボンディング面122、124を有する電子部品120にワイヤボンディングを行うものであり、この電子部品120は、移動機構(図示せず)によって保持され、この移動機構によってXYZ方向及び回転方向に移動制御されるものである。また、ボンディングヘッド110は、リードワイヤ112を繰り出しながら各ボンディング面へのリードワイヤー接続又はリードワイヤー配線を行うものである。また、本例では、XY平面上の所定位置に第1のボンディング面122と第2のボンディング面124を順番に配置し、ボンディングヘッド110によってZ方向にワイヤボンディングを行う。
【0012】次に、図1に基づいて本例におけるワイヤボンディング装置の制御方法について説明する。まず図1R>1(A)において、電子部品120の第1のボンディング面122をXY平面(水平面)上に沿って所定位置に配置した状態で、この第1のボンディング面122にボンディングヘッド110によってワイヤボンディングを行う。次に、図1(B)に示すように、電子部品20をXYZ方向及び回転(θ)方向に同時にボンディングヘッド110を移動制御し、図1(C)に示すように、電子部品120の第2のボンディング面124をXY平面上に沿って所定位置に配置する。そして、この状態で電子部品120の第2のボンディング面124にボンディングヘッド110によってワイヤボンディングを行う。
【0013】以上のように本例では、電子部品120の第1のボンディング面122のワイヤボンディングの後に、電子部品20をXYZ方向及び回転(θ)方向に同時にボンディングヘッド110を移動制御して、電子部品120の第2のボンディング面124のワイヤボンディングを行うことから、ボンディングヘッド110と電子部品120の第1のボンディング面122との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面124への移行を行うことができ、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤ112の引き出し量を抑制できる。したがって、ループ形状を有効に制御でき、不安定なリードワイヤ112のループによる障害をなくすことが可能となる。
【0014】なお、以上の例では、移動機構によって電子部品120をXYZ方向及び回転方向に移動し、ボンディングヘッド110は静止した状態でワイヤボンディング作業を行うものであるが、本発明はこれに限定されず、ボンディングヘッド110側を移動するように構成することも可能である。また、以上の例では、1つの電子部品に2つのボンディング面122、124を設けたものであるが、さらに多数のボンディング面を設けた電子部品にワイヤボンディングを行う構成であってもよい。また、以上の例では、90°異なる方向の2つのボンディング面122、124を設けたものであるが、他の角度を有するボンディング面についてワイヤボンディングを行う構成であってもよい。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように本発明のワイヤボンディング装置においては、ボンディングヘッドによって部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、この部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次にボンディングヘッドによって部品の第2のボンディング面にボンディングを行う。このため、ボンディングヘッドと部品の第1のボンディング面との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面への移行を行うことができ、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制できる。したがって、ループ形状を有効に制御でき、不安定なリードワイヤのループによる障害をなくすことが可能となる。これにより、作業効率を改善でき、時間短縮を実現できる効果がある。
【0016】また、本発明のワイヤボンディング装置の制御方法においても同様に、ボンディングヘッドによって部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、この部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次にボンディングヘッドによって部品の第2のボンディング面にボンディングを行う。このため、ボンディングヘッドと部品の第1のボンディング面との離間を最小限に抑えた状態で第2のボンディング面への移行を行うことができ、ワイヤボンディング作業によるリードワイヤの引き出し量を抑制できる。したがって、ループ形状を有効に制御でき、不安定なリードワイヤのループによる障害をなくすことが可能となる。これにより、作業効率を改善でき、時間短縮を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるワイヤボンディング装置によってワイヤボンディング作業を行う工程を示す説明図である。
【図2】従来のワイヤボンディング装置によってワイヤボンディング作業を行う工程を示す説明図である。
【符号の説明】
110……ボンディングヘッド、112……リードワイヤ、120……電子部品、122……第1のボンディング面、124……第2のボンディング面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに異なる角度に配置された第1及び第2のボンディング面を有する部品についてワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置において、前記部品の各ボンディング面に対してワイヤボンディングを行うボンディングヘッドと、前記部品及びボンディングヘッドを保持するとともに、前記部品をボンディングヘッドに対してXYZ方向及び回転方向に相対的に移動させることにより、前記部品の各ボンディング面をボンディングヘッドによってワイヤボンディングを行うためのXY平面上の所定位置に順次配置する移動機構とを有し、前記ボンディングヘッドによって前記部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、前記部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次に前記ボンディングヘッドによって前記部品の第2のボンディング面にボンディングを行うようにした、ことを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】 前記第1及び第2のボンディング面は、前記部品に互いに90°異なる方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】 前記移動機構は、静止したボンディングヘッドに対して部品をXYZ方向及び回転方向に移動するものであることを特徴とする請求項1記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】 互いに異なる角度に配置された第1及び第2のボンディング面を有する部品についてワイヤボンディングを行うワイヤボンディング装置の制御方法において、前記ワイヤボンディング装置は、前記部品の各ボンディング面に対してワイヤボンディングを行うボンディングヘッドと、前記部品及びボンディングヘッドを保持するとともに、前記部品をボンディングヘッドに対してXYZ方向及び回転方向に相対的に移動させることにより、前記部品の各ボンディング面をボンディングヘッドによってワイヤボンディングを行うためのXY平面上の所定位置に順次配置する移動機構とを有し、前記ボンディングヘッドによって前記部品の第1のボンディング面にボンディングを行った後、前記部品を移動機構によってXYZ方向及び回転方向に同時に移動し、次に前記ボンディングヘッドによって前記部品の第2のボンディング面にボンディングを行うように制御するようにした、ことを特徴とするワイヤボンディング装置の制御方法。
【請求項5】 前記第1及び第2のボンディング面は、前記部品に互いに90°異なる方向に形成されていることを特徴とする請求項4記載のワイヤボンディング装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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