ワイヤレスローカルエリアネットワーク上の緊急呼出のサポート
【課題】ワイヤレスローカルエリアネットワークにおいて、ステーションおよびアクセスポイント(AP)の間で緊急呼出能力情報を通信するためのいくつかの方法が提供される。
【解決手段】この方法は、緊急呼出能力についてAPによるアドバタイズ、緊急呼出能力についてステーションによるアナウンスを含む。APはその緊急呼出能力をビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、再アソシエーション応答フレーム、または再認証応答フレームにおいてアドバタイズすることができる。ステーションはその緊急呼出能力を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームにおいてアナウンスすることができる。
【解決手段】この方法は、緊急呼出能力についてAPによるアドバタイズ、緊急呼出能力についてステーションによるアナウンスを含む。APはその緊急呼出能力をビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、再アソシエーション応答フレーム、または再認証応答フレームにおいてアドバタイズすることができる。ステーションはその緊急呼出能力を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームにおいてアナウンスすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)に関し、より詳細には、WLANにおける緊急呼出のサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の802技術(802.11WLAN、802.15ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)など)では伝統的にセルラーで行われるような、緊急呼出をサポートする必要はない。セルラーに関しては、緊急呼出のサポートはその技術に課された規制要件に起因することが多く、それゆえ今日の配備されたワイヤレスセルラーネットワークおよびハンドセットの大部分において広く実装されている。緊急呼出に対するサポートは、すべての通信レイヤにわたる多くの態様、特にシグナリングサポートおよび指令手順を伴い、これらは802.11および802.15技術には存在しない。WLANにおけるVoIP(Voice over Internet Protocol)の出現およびWLANについての増大する日常的使用により、WLANにおける緊急呼出に対するサポートは必要になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
住宅市場に対する「固定型」のVoIP電話サービスの提供でさえ、限定された緊急呼出サポートしか有しない。PSAP(Public Safety Answering Point)における指令員(dispatcher)によって番号位置情報が常に追跡できるわけではなく、コールバックが常に可能であるわけではなく、アドレス登録が設備の購入の際に必要になるかもしれない。VoIP電話が新しい場所に移動したときにも、緊急呼出は依然として登録されたアドレス位置に基づいて送られるであろう。登録されたアドレスは原理的に変更することができるが、PSAPにて情報を更新するにあたって、少なくとも何日または何週間の遅れがある。さらに、一部のユーザは彼らの登録情報を、たとえしたとしても時機よく更新しない可能性がある。
【0004】
WLANを使用したVoIP電話によってより多くの移動性が可能になるにつれ、この状況は悪化する。WLANベースのVoIP電話は任意の場所から動作することができ、ユーザは、オフィスから家庭や公共のホットスポットなどへのように、場所の間を継ぎ目なく移動すると予期することができる。
【0005】
ワイヤレスアクセス、アクセスポイント(AP)の位置、発呼者位置、および緊急呼出のアドミッションを含む、ある種の802.11特有の問題が存在する。ワイヤレスアクセスに関して、802.11標準においては緊急呼出に対するプライオリティは現在存在せず、WLANアクセスネットワークに対して通常の呼出から緊急呼出を区別する手段はない。APまたはSTAの位置は、現在は、例えばAPの識別を容易に判定することができても、非独自仕様の方法ではネットワークには知り得ない。また、非独自仕様の方法においては発呼者の位置をマップすることも現在可能ではない。
【0006】
アドミッションに関しては、発呼者がネットワークに入る権限を有さない場合には、しっかり管理されたWLANによって緊急の発呼者が緊急呼出を確立することを妨げられることがある。STAおよびAPの間の通常の接続手順は、STAがアソシエーション要求を送り、続いてSTAをAPに関連付けるのに先立ってAPとのネゴシエーションが行われる。STAが緊急電話をかけていることを示すことができない場合、許可されるかどうかを判定するために全アソシエーション手順を行わなければならないであろう。この種の困難性の一例として、STAがシステムにアクセスするための適切なパスワードまたは認証クレデンシャルを有しない場合(例えば私的なホットスポットまたは企業/オフィスのWLANに存在することがあるように、APがパスワードを要求したり、認証クレデンシャルを要求したりするように構成される場合)、APはそのSTAのアソシエーション要求をにべもなく拒否するであろう。しかしSTAが適切なパスワードまたは認証クレデンシャルを有していても、APが、音声ユーザに対するその構成された最大容量に基づいて、ネットワークへの許容を拒否するかもしれない。この場合、APにとっての正しい決定は、この新しい緊急呼出を許容し(最優先にて)、別の既存の音声呼出を切断することであろう。APが第一に現在この区別をなす手段を欠いているため、このような機能を既存の最新のWLAN技術で実装することができない。これは、どのデバイスも、SIMカードのないデバイスでさえ、緊急呼出をかけることができるセルラーシステムの動作と対照的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、802.11および802.15技術により緊急呼出取り扱いサポートを可能にするための様々なシステム動作態様を提案する。本提案のいくつかは、緊急呼出をAPに示すための新しいL2シグナリングメッセージまたは情報要素に関する。新しい手順および制御メカニズムが緊急状況に対して提案される。加えて、デュアルモード(WLANおよび第2世代(2G)セルラーまたは第3世代(3G)セルラー)の実装に対する手順が扱われる。緊急呼出の要件が緊急発呼者の場所についての位置報告に関する規制要件と結び付くことが多いため、WLANネットワークにおける地理的な場所についての要求および報告を可能にする手段およびシグナリング手順が提案される。場所の情報は、緊急呼出と結合されたり、または別々に実装されたりすることができる。
【0008】
STAが緊急呼出を識別できることの利点は、APが、通常のように取り扱うべき(すなわち、通常のアソシエーション手順に従うべき)STAと、ネットワークがどのように構成されるかにかかわらず、すべての状況下で許容すべき(すなわち、緊急呼出を許容するためにどのセキュリティ要件をもバイパスする)STAとを区別できるようにする単純な論理を、APにインストールすることができるということである。
【0009】
ワイヤレスローカルエリアネットワークにおいてステーションおよびアクセスポイント(AP)の間で緊急呼出の能力情報を通信するためのいくつかの方法が提供される。この方法には、APがその緊急呼出能力についてアドバタイズすること、ステーションがその緊急呼出能力についてアナウンスすることが含まれる。APはその緊急呼出能力を、ビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、再アソシエーション応答フレーム、または再認証応答フレームにおいてアドバタイズすることが可能である。ステーションはその緊急呼出能力を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームにおいてアナウンスすることができる。
【0010】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のSTAによって緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信され、STAが認証手順を行うことを要求することなく許容される。STAは、緊急呼出に関連する設定を与えられて、STAがWLANにアクセスすることを許可する。
【0011】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のステーションによって緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信され、STAが認証手順を行うことを要求することなく許容される。緊急呼出は、緊急呼出センターにルートされる。
【0012】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、緊急BSS IDをSTAに提供することによって始まり、この緊急BSS IDは緊急呼出のためにのみ使用される。STAによって開始されるどの緊急呼出も緊急BSS識別子を使用する。
【0013】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のステーションが緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信される。STAが緊急呼出を完了するために十分な能力を有するかどうかの判定がなされる。STAが緊急呼出を完了するために十分な能力を有さない場合、インフラストラクチャネットワークの要素が、STAに対するプロキシとして動作して緊急呼出を完了する。
【0014】
例として与えられ、添付された図面に関連して理解されるべき、好適な実施形態についての以下の説明から、本発明のより詳細な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】標準の媒体アクセス制御(MAC)フレームの図である。
【図2A】緊急呼出を示すビットフラグを伴うMACフレームの図である。
【図2B】緊急呼出を示す情報要素(IE)を伴うMACフレームの図である。
【図3】標準のRTS(Ready To Send)フレームの図である。
【図4A】緊急呼出を示すビットフラグを伴うRTSフレームの図である。
【図4B】緊急呼出を示すIEを伴うRTSフレームの図である。
【図5】図4Aまたは4Bにおいて示されるRTSフレームを使用するための方法のフロー図である。
【図6】無線技術を切り替えて緊急呼出を完了するための方法のフロー図である。
【図7】緊急呼出を示すSOSビーコンフレームの図である。
【図8】図7において示されたSOSフレームを送信し、使用するための方法のフロー図である。
【図9】プロキシ機能を適用するかどうかを判定する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、用語「ステーション」(STA)は、限定されないが、ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)、ユーザ設備(UE)、固定または移動体の加入者ユニット、ページャ、またはワイヤレス環境において動作する能力がある任意の他のタイプのデバイスを含む。以降参照されると、用語「アクセスポイント」(AP)は、限定されないが、基地局、ノードB、サイトコントローラ、またはワイヤレス環境における任意の他のタイプのインタフェーシングデバイスを含む。
【0017】
本発明は、すべてのWLAN、PAN(Personal Area Network)、およびMAN(Metropolitan Area Network)に適用可能であるが、特に802.11ベースのWLAN、802.15ベースのワイヤレスPAN、802.16/20ベースのワイヤレスMAN、およびこれらと同等な物に適用可能である。1つの実現において、本発明は、WLAN、PAN、MAN、および携帯電話マルチモードWTRUを含むこれらのアクセス技術の組み合わせを実装するWTRUに適用可能である。
【0018】
緊急サポートを取り扱うための本発明は、いくつかの主要な領域にグループ化分類されて、以降説明されることになる。しかしながら、これは説明の便宜のためであり、本発明の限定として捉えるべきではない。
【0019】
I.エアインタフェース関連のシグナリング/サポートおよび手順
A.MACフレームおよびMACシグナリングメッセージにおける緊急呼出の表示
標準MACフレーム100が図1に示されている。MACフレーム100は、フレーム制御フィールド102、持続期間/IDフィールド104、1つまたは複数のアドレスフィールド106a〜106d、シーケンス制御フィールド108、サービス品質(QoS)制御フィールド110、フレームボディ112、およびフレームチェックシーケンス(FCS)フィールド114を含む。QoS制御フィールド110は、示されるように複数のサブフィールドに分割される。
【0020】
緊急呼出に対するプライオリティは、ビットフラグにより、緊急メッセージタイプIEにより、既存または新規IE上の緊急メッセージフィールドの部分により、またはMACフレームの任意の既存のIEまたはフィールドにおける予備の(現在未使用の)値を使用して実装される緊急呼出コードにより示すことができる。インディケータによりAPは緊急呼出を許容する必要があることを知ることができるようになる。同様の目的のために、QoSプライオリティまたは要件がQoSクラス(例えばDiffServ)によって示される。任意の既存のMACフレームタイプ(制御、管理、またはデータ)も、緊急呼出インディケータを含むように変更することができる。緊急呼出インディケータは、説明されたメカニズムのいずれかを用いて、ヘッダまたはボディにおいてMACの任意の位置に追加することができる。
【0021】
図2Aに示されるように、MACフレーム200はフィールド202〜214を含み、これらは図1との関連で上述されたフィールド102〜114と同じである。一実施形態において、単純なビットフラグ220を使用してこれが緊急呼出であるということを受信機に示す。図2Aに示されるように、ビットフラグ220のための1つの可能な位置は、QoS制御フィールド210の予備のビット(ビット7)にある。当該技術分野における通常の知識を有する者は、MACフレームの既存のヘッダまたはフレームボディフィールドのいずれにおいても任意の現在予備の位置にビットフラグ220を配置することが可能であることに気付くであろう。
【0022】
図2Bに示されるように、MACフレーム250は、フレーム制御フィールド252、長さフィールド254、および緊急呼出を示す緊急呼出IE256を含む。緊急呼出IE256は、限定されないが、緊急呼出フラグ260、理由コードフィールド262、能力情報フィールド264、位置情報フィールド266、音声コーデック適用フィールド268、および追加フィールド270を含むことができる。緊急呼出IE256は、任意のMACフレームに追加することができる。加えて、緊急呼出IE256に収容される情報は、既存のIEタイプに追加することができる。
【0023】
緊急呼出フラグ260は、その呼出が緊急呼出であるということを識別する単純なインディケータ(例えばビットフラグ)とすることができる。理由コードフィールド262は、緊急呼出の理由(例えば火災、医療的緊急事態など)を示す。能力情報フィールド264は、STAが緊急呼出をかける能力を含み、緊急呼出を可能な限り迅速に完了するのを援助するために使用される。位置情報フィールド266は、STAが緊急呼出をかけているSTAの位置を含む。音声コーデック適用フィールド268は、STAによって使用される音声コーデックを識別し、緊急呼出を扱おうと試みるSTAおよびAPの間に何らかの非互換性がある場合に使用される。緊急呼出IEに含めることができる追加情報(フィールド270として)は、タイムスタンプおよびWTRUおよび/またはオペレータサービス能力情報がある。
【0024】
802.11eの下での既存のMACフレームは、呼出プライオリティを有する。伝送仕様(TSPEC:Transmission Specification)IEは、伝送仕様情報フィールドにおける3ビットのプライオリティサブフィールドを含む。また、本発明の原理は、TSPEC IEにおいて緊急呼出のための値を定義することによって実施することができる。セルラーシステムにおいて、同様なメカニズム(シグナリングフレーム)を使用して、ネットワークに呼出パラメータを送り、緊急呼出を識別する予備のフィールドを含む。当技術分野において知られているように、TSPEC IEは追加トラフィックストリーム(ADDTS)フレームにおいて使用される。ここで説明された変更されたTSPEC IEはそれゆえ、ADDTSフレームにおいて使用することができる。同様に、同じ情報を収容する新規のIEは、緊急呼出を示すADDTSフレームにおいて使用することができる。
【0025】
以上の説明は、特に802.11ベースのMACフレームについて説明したが、MACフレームを拡張する概念は、任意のタイプのMACフレームに適用することができる。例えば、イーサネット(登録商標)タイプのMACフレームもまた、同様に変更することができるであろう。そのようなMACフレームは、例えば、Wi−Fiプロテクティッドアクセス(WPA)可能ネットワークにおいてセキュリティ上の理由で交換されるEAPOL(Extensible Authentication Protocol Over LAN)フレームにおいて使用される。さらに、この概念は、イーサタイプ(Ethertype)がヘッダ中の1ビットにより示されるため、新しいイーサタイプを定義するために拡張することができる。
【0026】
B.緊急呼出のための仮想BSS ID
仮想BSS設定において、単一の物理的APは、1つより多いBSS(すなわち、仮想BSS)として動作するように構成され、各BSSがそれ自身のIDを有している。1つのBSS IDを緊急呼出の使用のためにのみ予約することができる。WLANにおいて送信される各MACフレームはBSS IDを含むため、緊急呼出は、緊急呼出を送信しようと試みるとき緊急BSS IDを使用するであろう。
【0027】
STAは、緊急BSS IDをAPからのダウンリンク上で受信することができる。例えば、緊急BSS IDは、APにより応答フレーム(例えば、プローブ応答、アソシエーション応答、または再アソシエーション応答)において送ることができる。緊急BSS IDは、他の様々な方法によりSTAに提供することができることを注記する。
【0028】
C.APまたはSTAがその緊急呼出能力をアドバタイズ
APは、緊急呼出をサポートするその能力および意志をアドバタイズする。例えば、APは、緊急呼出が可能化されていることをアドバタイズし、APに関連付けて緊急呼出を完了するためにSTAにパラメータを提供することができる。このアドバタイズはまた、そのAPにおける緊急呼出能力が現在アクティブであるかの表示を含むことができる。このタイプのアドバタイズは、多くの異なるタイプのユーザが合理的に期待できる公共のホットスポットにおいて使用される可能性がある。
【0029】
AP能力IEは、APがその緊急呼出能力を示すビーコンフレームまたはプローブフレームにおいて使用することができる。現在のビーコンフレームにおいて、2バイトの能力フィールドがあるが、このフィールドのビットのすべてが使用されている。拡張可能な能力IEは、すべての新しいAP能力を示すためにフレームの端に追加されている。上述されたビットフラグは、APの緊急呼出能力を示すために拡張可能な能力IEに追加することができる。加えて、APの緊急呼出能力表示は、再アソシエーションまたは再認証フレームに追加することができる。
【0030】
あるいはまた、STAは緊急呼出をサポートする能力をアナウンスすることができる。この情報は、例えば、そのSTAによってどのタイプの音声符号化が実装されているかを含むことができる。STAは、その緊急呼出能力情報を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームに追加することができる。この情報は、新しいIEを使用することにより、または1または複数のビットフラグを既存のIEに追加することにより、送信することができる。STAがその緊急呼出能力をアナウンスすることの1つの利点は、そのSTAが緊急呼出をかける必要がある場合にAPがこの情報を格納して、より迅速にその緊急呼出を処理することができることである。
【0031】
STAが緊急呼出能力をAPへ提供する場合、APはまた、それが属するWLANが緊急呼出をサポートすることができるかを承知しているべきである。あらゆるWLANが緊急呼出センターに接続する能力を有していないかもしれない。例えば、WLANがデータ収集ネットワーク(例えば、工場のテレメトリのネットワーク)として構成される場合があり、STAが緊急呼出センターに接続することを可能とするであろうインターネット接続を有さないかもしれない。そのような状況において、WLANが緊急呼出をサポートできず、それゆえSTAが別のWLANを特定することを試みることができるということをAPがSTAに知らせるべきである。WLANのインターネット接続が何らかの理由で一時的に利用できない場合に、同様のメカニズムを採用することができる。
【0032】
D.位置情報
位置情報はまた、緊急呼出確立の理由の伝達に加えて、これらの新しいMACフレーム200、250(例えば位置情報フィールド266)に付加することができる。例えば、APまたはSTAは基本サービスセット(BSS)ID、APまたはSTAのMACアドレス、静的または動的に割り当てられたIPアドレス、またはこの機能を実装するAPまたはSTAからの全地球側位システム(GPS)情報を使用し、この情報を緊急呼出センターに転送することができる。位置情報はまた、緊急呼出情報とは別個に伝達することができることを注記する。
【0033】
緊急STAを特定する他の手段は、限定されないが、発呼者IDにより緊急呼出をかけているSTAを識別すること、コールバック番号を利用すること、緊急呼出センターによるSTAを特定するのに役立つ既知のアドレスを使用すること(例えばAPまたはネットワークIDなど、そのSTAの現在の接続点(point of attachment)のMACアドレス、またはAPの地理的座標を使用すること)を含む。
【0034】
例えば、APがSTAから場所を要求することができる場合には、WLANのMACシグナリングメカニズムを使用することができる。STAはAPにSTAの場所を付けて報告するであろう。1つの可能な実装は、現在、セルラーハンドセットにおいて現在広く普及している、アシスト型GPS(A−GPS)の座標の使用を含む。限定されないが、アップリンク到達時間差(U−TDOA)、拡張観測時間差(E−OTD)、アイドル期間ダウンリンク観測到達時間差(IPDL−OTDOA)、A−GPS、ユニバーサル地理座標(例えばIEEE規格802.11kまたはIETF RFC3825で定義されるような)、ならびにWLANのAP位置、セルサイト、またはセクター情報およびタイミング進行または往復時間測定を用いる方法を含む複数の位置決定方法を、異なるアクセスネットワークに対してサポートすることができる。位置情報を伝達する先の例について特に言及しているが、当事業者は、地理座標を伝達する任意のフォーマットを使用することができることに気付くであろう。
【0035】
緊急呼出機能は、位置報告機能から独立して(相補的ではあるが)行うことが可能である。例証すると、(1)STAが実際に緊急呼出を発呼するとき、緊急呼出シグナリングフレームに位置情報を付加すること、および(2)緊急呼出がなければ単独の機能として位置更新をシグナルすることが可能である。後者の一例は、周期的に(例えば数秒毎)、APのバックグラウンドの一部としてポーリングされるか、またはSTAによるAPへの自立的な通常の位置報告によるかのいずれかにより、最新のSTAの位置についてAPが通知され、更新された状態にすることであろう。APにおいて位置情報を維持することが好ましいかもしれない。なぜなら、STAが緊急呼出を発行するとき、APは、STAが緊急呼出要求の上にその位置を明示的に相乗りさせる必要がないように、STAの位置の合理的に最近の推定を既に有するからである。
【0036】
例えば、そのような単独のSTA位置情報報告は、規制要件に取り組むことと並行して、WLANネットワークにおける位置依存のサービスについての実装できるように使用することができる。
【0037】
このように、位置情報はまた、インターワーキングWAN(I−WLAN)、公衆地上移動通信網(PLMN)、またはSTAに存在する位置サービス(LCS)アプリケーションに提供することができる。加えて、発呼者をサービスしているセルの識別、またはサービスしているAPの識別をLCSクライアントに提供することができる。
【0038】
E.既存のRTS/CTSフレーム交換メカニズムおよび手順の拡張
標準のRTSフレーム300を図3に示す。RTSフレーム300は、フレーム制御フィールド302、持続期間(duration)フィールド304、受信機アドレス(RA)フィールド306、送信機アドレス(TA)フィールド308、およびFCSフィールド310を含む。
【0039】
緊急呼出を送信したいSTAは、図4Aに示す特別なシグナリングフラグを収容する拡張されたRTSフレーム400、または図4Bに示す新規のIEを収容する拡張されたRTSフレーム450を送信する。
【0040】
図4Aは、RTSフレーム400を示している。RTSフレーム400のフィールド402〜410は、図3に関連して上述されたRTSフレーム300のフィールド302〜310と同じである。フレーム制御フィールド402は、プロトコルバージョンサブフィールド412、タイプサブフィールド414、サブタイプサブフィールド416、DSへ(to Distribution System)サブフィールド418、DSからサブフィールド420、より多くのフラグメント(MF)サブフィールド422、リトライサブフィールド424、電力管理サブフィールド426、より多くのデータ(MD)サブフィールド428、WEP(Wired Equivalent Privacy)サブフィールド430、および順序(order)サブフィールド432を含む、いくつかのサブフィールドを有する。
【0041】
シグナリングフラグは、RTSフレーム400におけるどの予備ビットにも追加することができる。予備ビットのための潜在的な場所には、プロトコルバージョンサブフィールド412、種別サブフィールド414、およびサブタイプサブフィールド416が含まれる。当事業者は、RTSフレーム400におけるどの予備ビットにおいてもシグナリングフラグをおくことができるであろうことを注記する。
【0042】
図4Bは、フレーム制御フィールド452、持続期間フィールド454、RAフィールド456、TAフィールド458、目的IE460、およびFCSフィールド462を含む、拡張されたRTSフレーム450を示している。目的IE460は、上述された緊急呼出IE256と内容において同様にすることができる。拡張されたRTSフレーム450を受信するすべてのSTAは、次に、ワイヤレス媒体を待機状態にし、緊急状態のSTAに送信する機会を与えるために予め定められた時間の間に何らかの送信の試みをも停止するよう要求される。
【0043】
一実施形態において、拡張されたRTSフレームを受信すると、緊急呼出をかけているSTAに、媒体へのアクセスの取得に成功するより高い確率を与えるために、受信するSTAは変更されたバックオフ処理に入る。バックオフ処理を変更する2つの実装が可能である。すなわち、(1)他のSTAに対して、緊急呼出をかけているSTAのバックオフ時間を短縮すること、または(2)緊急でないSTAのバックオフ時間を延長することである。いずれの実装においても、最終的な結果は、緊急のSTAが緊急でないSTAよりもより短いバックオフ時間を有することである。
【0044】
RTSフレーム400または450を使用するための方法500が図5に示されている。方法500の目的は、STAが緊急呼出を送信することを可能とするために送信媒体を待機状態にすることである。この方法は、STAがRTSフレーム400または450を送ることによって緊急呼出をかけることで開始する(ステップ502)。APは、RTSフレームを受信し(ステップ504)、標準のCTSフレームによりSTAに応答する(ステップ506)。APによって使用されるべきバックオフタイプが判定される(ステップ508)。2つの可能なバックオフタイプがあり、その両方とも、送信を待つ他のすべてのSTAに先立って、緊急呼出をかけているSTAが媒体にアクセスすることを可能とするであろう。
【0045】
バックオフタイプが、緊急状態にあるSTA(すなわち、緊急呼出をかけているSTA)がより短いバックオフ時間を有する場合、緊急状態にあるSTAは、短縮されたバックオフ時間の間待機し(ステップ510)、それから緊急呼出を送信する(ステップ512)。媒体にアクセスすることを試みている他のすべてのSTAは、標準のバックオフ時間の間待機し(ステップ514)、それから送信することができる(ステップ516)。次に、方法500は、終了する(ステップ518)。
【0046】
バックオフタイプが、他のすべてのSTAがより長いバックオフ時間を有する場合(ステップ508)、緊急状態にあるSTAは、標準のバックオフ時間の間待機し(ステップ520)、緊急呼出を送信する(ステップ522)。他のSTAのすべては、より長いバックオフ時間の間待機し(ステップ524)、それから送信することができる(ステップ516)。次に、方法500は終了する(ステップ518)。
【0047】
一般に、STAがバックオフ手順に入ると、STAは、一連のN個のタイムスロットの1つにおいて無作為に送信することを試みる。送信の衝突がある場合、STAは再度バックオフし、Nとして予め定められた最大値までNの値を増加することになる。STAが送信することを試みることができる前に、STAは、M個のタイムスロットの間待機しなければならない。この基本手順は、どのSTAにも、媒体へのアクセスを勝ち取る平等な機会を提供する。802.11eにおいて、QoSを実装するために特定のステーションが媒体へのアクセスを勝ち取るより大きい機会を有することを保証する2つの方法がある。第1は、Mの値を低減し、これによってSTAにより短い待ち時間を与えることである。第2は、Nに対してより小さい値を使用することであり、これによりSTAが特定のタイムスロットにおいて送信できることになる機会を増大する。
【0048】
方法500において、STAが使用するバックオフ値を知るためのいくつかの可能な手段がある。第1の手段は、緊急呼出に関連して、MおよびNに対するハード的に符号化された値を使用することであり、MおよびNに対してハード的に符号化された値が緊急状態にあるSTAにより使用されることになるようにする。第2の手段は、APから緊急状態にあるSTAに、MおよびNに対する値を明示的にシグナルすることである。APは典型的には、通常のシステム動作の間にブロードキャストまたは専用管理フレームのいずれかを使用することによって、それらのパラメータをSTAに送るであろう。STAは、緊急呼出を設定する必要がある場合に使用されることになる緊急呼出関連の構成パラメータを読み出す。一例は、APがビーコンまたはプローブ応答の管理フレームの部分として、他のBSSの構成値をそのBSSのすべてのSTAに送ることである。緊急呼出関連のMおよびNのパラメータを追加することは、これらの自然な拡張である。例えば、BSSのすべてのSTAにより使用されることになる、アクセスカテゴリごとの802.lleのQoS関連の構成パラメータ(バックオフ値、ウィンドウなど)は、今日ではAPが同様のメカニズムを使用することによってシグナルされる。
【0049】
第3の手段は、第1および第2の手段の組み合わせであり、これによりSTAは、STAが通常使用するMおよびNに対するハード的に符号化されたデフォルト値を有し、STAが緊急状態にある場合には、APはMおよびNに対する新しい値をシグナルして、ハード的に符号化されたデフォルト値をオーバライドすることになる。当事業者は、緊急状態にあるSTAおよび媒体へのアクセスを求めている他のすべてのSTAに、適切なバックオフ時間を通信するための追加的手段を想定することができるであろう。
【0050】
F.デュアルモードWLANのSTA(例えば3GおよびWLAN)に対する別の無線技術への指令切替え
緊急の場合、デュアルモードWLANのSTAは、WLAN上ではなく、第一に、セルラーネットワーク上で何らかの緊急呼出を試みるであろう。これは、原理上、STA単独の「ハード的に符号化された」手順である。この手順を実装する方法600を図6に示す。
【0051】
方法600は、ユーザがSTAにおいて緊急呼出をかけることにより開始する(ステップ602)。STAがセルラーネットワークまたはWLAN上で動作する能力があるかの判定がなされる(ステップ604)。STAがセルラーネットワーク上で動作している(すなわち、現在、セルラーネットワークに接続されている)場合、STAは、緊急呼出のためにセルラーネットワーク上に留まる(ステップ606)。STAがセルラーネットワーク上で動作する能力があるが、現在セルラーネットワークに接続されていない場合、STAはセルラーネットワークへの接続を確立し(ステップ608)、セルラーネットワーク上で緊急呼出をかける(ステップ606)。STAがWLAN上で動作している場合、STAはセルラーネットワークに切替えて、緊急呼出をかける(ステップ610)。
【0052】
緊急呼出がかけられた後、その緊急呼出がセルラーネットワーク上を通過したかの判定がなされる(ステップ612)。通過した場合、方法600は終了する(ステップ614)。緊急呼出がセルラーネットワーク上を通過しなかった場合、STAはWLANに切替えて、その呼出をかけ(ステップ616)、方法600は終了する(ステップ614)。
【0053】
緊急呼出がデュアルモードのWLAN−セルラーのハンドセットにより発行される必要がある場合、好適な手順は、ハンドセットをセルラーモデム上にフォールバックさせる(すなわち、セルラー無線リンク上で緊急呼出を確立する)ことである。なぜなら、緊急呼出サポートはWLANについては利用可能でないか、または信頼性が低い場合があるからである。
【0054】
方法600に対する代替案には、(1)緊急呼出を送信しようと試みるときに切替えるべき、好ましい、指令による、または推奨される無線技術(例えばWLANまたはセルラー)の順序を確立すること、(2)システムオペレータが、デュアルモードの電話機に対してSIMカードまたは同様なデバイスで緊急呼出のふるまいを構成すること、(3)緊急の場合に、VoIPコールをセルラーネットワーク上で維持するか、またはそのコールを従来技術の回線交換の音声チャネル上に移動すること、(4)システム運用者が、ワイヤレスインタフェースを介して無線技術の好ましいローカルの順序をシグナルすること、または(5)ユーザが、ポリシー設定を手動により構成することである。
【0055】
G.緊急呼出を試みるときの認証およびセキュリティのバイパス
WLANにおいて緊急呼出を確立することを求めるどの802.xxのSTAもAPによって許可されなければならないという手順が指令される。これには、802.1xのような認証およびネットワーク側の他のセキュリティ対策をバイパスすることが含まれる。この手順は、拡張されたRTS/CTSの方法500を使用することにより(図5において示されるように)、またはMACフレームにおけるビットフラグ、IE、ヘッダ、予備情報フィールド、もしくはビット/シーケンス値により(図2Aおよび図2Bに示すように)トリガすることができるであろう。
【0056】
現在のWLAN実装において、各STAの認証ステータスは、ステートマシンを介してトラックされ、1xポートフィルタリングと称される。STAは、認証された場合にのみWLAN上で送信することができ、そうでなければポートフィルタによってブロックされることになる。しかし緊急呼出をかけているSTAはWLANに対して許可されねばならないので、このことは認証の観点から問題を呈する。この認証の問題を克服するために、ポートフィルタを調整して、STAがいつ緊急呼出を送っているかを容易に判定し、緊急呼出を続けることを可能にすることができる。例えば、新しいイーサタイプまたは既存のイーサタイプの変更に関連して、上述したように、表示を提供することができるであろう。
【0057】
WLANにおけるアクセス制御は、本質的にセキュリティに結び付けられる。現在の標準の下では、すべてのSTAはAPに関連付けるためにすべての認証プロセスを行わなければならないという点でAPにおいてアクセス制御を回避する方法はない。STAがAPに関連付けるために適切なクレデンシャル欠いていても、APは緊急呼出を許可するべきである。APが緊急呼出を識別したときに2つのオプションがあり、この緊急呼出の識別はL2で行われるべきである。第1のオプションは、APのセキュリティを完全にバイパスし、認証を要求することなくその呼出を許可することである。第2のオプションは、異なるセキュリティ設定でその呼出を許可することである。例えば、緊急呼出は、特定の緊急関連のアクセスコードまたはセキュリティキーを提供することができる。
【0058】
APが、APのセキュリティをバイパスすることによって緊急呼出に対するアクセスを認可する場合、緊急呼出であるように見せかける呼出(例えばシグナリング情報のなりすましによる)からセキュリティバイパスの悪用を防止するよう注意が払われる必要がある。この問題に対する1つの解決法は、緊急呼出がWLANへの一般的なアクセスを提供することなく緊急呼出センターに自動的にルートされるように、すべての緊急呼出に対して準静的なルーティングをすることが含まれる。緊急呼出に対して準静的なルーティングを使用することによって、なりすましの緊急呼出さえも緊急呼出センターにルートされるであろう。
【0059】
II.緊急の場合におけるWTRUのふるまい/手順
A.WLANがSOSビーコン信号を送出して発呼者を見つけ出すのを容易にする
緊急呼出が終了すると(またはその途中であっても)、STAおよび/または関係するAPが図7に示すSOSタイプのシグナリングフレーム700を一定の間隔で送信し始める手順がSTAにおいて指令されるか、またはネットワークにより構成される。
【0060】
SOSシグナリングフレーム700は、プローブ要求フレームの変更バージョンである。SOSシグナリングフレーム700は、フレーム制御フィールド702、持続期間フィールド704、送信先アドレス(DA)フィールド706、送信元アドレス(SA)フィールド708、BSSIDフィールド710、シーケンス制御フィールド712、SSID IE714、サポートレートIE716、および緊急呼出IE718を含む。緊急呼出IE718は、図2Bに関連して上述された緊急呼出IE256と同一とすることができる。サポートレートIE716は、オプションであり、その機能性に影響を及ぼすことなくSOSシグナリングフレーム700から削除することができることを注記する。
【0061】
一実施形態において、媒体へのアクセスを確実にするために、ショートインターフレームスペース(SIFS)プライオリティまたはプライオリティインターフレームスペース(PIFS)プライオリティと共に送出されるプローブ要求フレームとして、SOS信号フレーム700を定義することができる。SOS信号フレームは、911ID(例えば発呼者ID)、装置の詳細(国際モバイル機器識別(IMEI)など)、ネットワーク所属、ユーザ名、および緊急理由コードなど、緊急呼出IEにおける新しい緊急呼出関連の要素を収容する。理由コードは、デバイスがユーザにその緊急呼出に対する理由を識別するように促すこと(例えば「火災緊急の場合には1を押して下さい」など)により取得することができる。理由コードは、進行中の呼を終了しようがない場合に、その緊急事態を処理するための何らかの能力を提供するであろう。
【0062】
SOS信号フレームを、毎100ミリ秒程度で送信するようにスケジュールして、位置のロギングおよび追跡を容易にすることができる。APは、信号のタイムスタンプおよび詳細と共にどのSOS信号フレームの受信をもログする必要があるであろう。信号強度の詳細には、信号強度、信号品質、アンテナ方位および利得、ならびにIMEI、ユーザ名(利用可能の場合)、識別および能力目的のために有用な他の802.11デバイス情報などの発呼者の詳細が含まれる。SOS信号フレームを受信するAPはまた、緊急応答、無線リソース調整、位置、および発呼デバイスの追跡に責任のある緊急ネットワークノードにイベントを報告する必要があるであろう。
【0063】
これは、SOSシグナリングフレームが送出され、緊急作業員(emergency worker)が発呼者に接近すると彼らによって受信することができる、アクティブなプローブメカニズムである。1つのアナロジーは、航空機のブラックボックスにおける緊急ビーコンである。新規のMACフレームをこの目的のために導入することができ、または既存のMACフレーム、例えばプローブ要求フレームを、新規のIE(緊急呼出IE256など)により拡張してこの目的を満足させることができる。
【0064】
SOSシグナリングフレームを利用するための方法800が図8に示されている。ユーザが、STAから緊急呼出をかける(ステップ802)。STAは、SOSフレームを送信し始める(ステップ804)。所望の実装に基づいて、SOSフレームは、プローブとして送出するか、または緊急作業員との直接接続を確立するために使用することができる(ステップ806)。
【0065】
SOSフレームがプローブとして送出されることになる場合、送信期間が設定され、送信期間の終了に達しているかの判定がなされる(ステップ810)。送信期間が終了していない場合、STAはSOSフレームを送信し続け(ステップ812)、方法はステップ810に戻る。送信期間の終了に達している場合(ステップ810)、STAはSOSフレームを送信するのを止め(ステップ814)、方法は終了する(ステップ816)。
【0066】
SOSフレームが緊急作業員との直接接続を確立するために使用されることになる場合(ステップ806)、緊急作業員がSTAのレンジ内にいるかの判定がなされる(ステップ820)。緊急作業員がSTAのレンジ内にいない場合、STAはSOSフレームを送信し続け(ステップ822)、方法はステップ820を継続する。緊急作業員がSTAのレンジ内にいる場合(ステップ820)、STAはSOSフレームを送信するのを止め、発呼者と緊急作業員との間に直接接続を確立し(ステップ824)、方法は終了する(ステップ816)。
【0067】
第1の代替案(ステップ810〜814)においては、緊急呼出が終了すると、STAにより送信されるSOSフレームは、APからのシグナリングによって、またはセッションイニシエーションプロトコル(SIP)のような上位レイヤのプロトコルによって、トリガすることができるであろう。SOSフレームの持続期間/頻度は、このトリガ信号に収容される。緊急呼出が終了した後にSOSフレームを送出することにより、緊急呼出が誤りであった場合、または緊急作業員がその呼出に応答して到着する必要がなかった場合、不要なSOSフレームの送信を防止する。
【0068】
第2の代替案(ステップ820〜824)において、緊急作業員と発呼者の間の直接VoIP接続は、彼らが互いのレンジ内であるときに確立される。SOSフレームが届く他のSTAは、図4A、図4B、および図5に関連して上述された拡張されたRTSフレームのようにそのSOSフレームを取り扱うことができる(すなわち他のSTAはその媒体にアクセスしようとはせず、緊急発呼者がその帯域幅によりよいアクセスを有するであろう)。
【0069】
B.ネットワーク(例えばAP)が緊急呼出を処理するコールバック機能を実施する
緊急呼出が確立されると、コールバックの場合、緊急呼出が終了した後、WLANはある一定の期間、緊急呼出を開始したユーザへのアクティブ接続を維持する。この機能は、ユーザに対してトランスペアレントとすることができる。
【0070】
III.インフラストラクチャにおける機能
A.プロキシ機能
APがSTAに対してプロキシとして動作する必要があるかを判定するための方法900を図9に示す。STAが緊急呼出をなし(ステップ902)、APがその緊急呼出を受信する(ステップ904)。STAが緊急呼出をその呼出を伝達するために使用されるネットワークに基づいて完了する能力を有するかの判定がなされる(ステップ906)。APは、STAがその呼出をサポートするために要求されるすべての機能(例えばSIP/H.323プロトコルターミネーション、ボコーダなど)を有するかを検査する。この情報は、MACフレームの一部分(例えばMACフレーム200、250)として示すことができ、またはAPがアクセスできるネットワークにおける加入者情報の一部分とすることができる。
【0071】
STAが必要な能力のすべてを有する場合、STAは通常通りにその呼出を続行する(ステップ908)。APは必要に応じてその呼出に、STAの位置および/またはAPの位置(ネットワークID、APのMACアドレスなど)を含む、位置情報を追加することができる(ステップ910)。そして、方法900は終了する(ステップ912)。
【0072】
STAがその呼出を完了するために必要な能力のすべては有してはいない場合(ステップ906)、APがSTAに対するプロキシとして動作し、必要などの機能をも提供する(ステップ914)。APは必要に応じてその呼出に位置情報を追加(ステップ910)し、方法900は終了する(ステップ912)。
【0073】
STAが現在の環境において緊急呼出を完全に完了するために要求されるすべての機能は有してはいないとAPが判定した場合、APはSTAに対するプロキシとして動作することになる(ステップ914)。例えば、STAがSIPプロトコルサポートを有さない場合、APは、STAに対するSIPプロキシとして動作することができる。別の例として、STAはSIPサポートを有するがネットワークはH.323のみをサポートする場合、APは、STAからのSIPメッセージをネットワークの残りの部分に対してH.323メッセージとして相互に作用させることができる。STAがボコーダさえ有さないという極端な場合には、APは、STAにシンボコーダクライアントをダウンロードし、ネットワークのどこかにあるより標準的なボコーダと相互に作用させることができる。APがSTAに対してプロキシ機能のすべてを提供する必要はないことを注記する。これらの機能は、専用ゲートウェイノードなどインフラストラクチャネットワークにおける別の要素によって提供されるかもしれない。プロキシ機能をAPの外に移すことによって、これは、WLANのインターネット接続の中断のイベントにおいて、緊急呼出を取り扱うために、WLANにより大きい柔軟性を提供する。
【0074】
別の方法は、STAおよびネットワークにおけるSTAの対応物によってシグナリングまたは通常のトラヒックのために使用されるIPパケットの内容に関してAPがなりすます(すなわち、内容および/またはタイプ情報を公式にはサポートされていない場合でさえ、読取る)ことである。例えば、IPを介したSIPシグナリングプロトコルメッセージが、現在では呼出処理のために通常使用される。そのようなSIPシグナリングは、能力情報および送信先アドレスなど、APがプロキシとしてのその役割を果たすために有用な情報を収容する。前述の方法に加えて、APがSTAリモートの送信先の高位レイヤ(すなわち、L2MACより上位)のメッセージ内容に関してなりすましそのような情報を抽出する場合、より効率的にその役割を果たすことができる。当事業者は、SIPがIPベースの呼出に対する管理プロトコルの一例であり、他の同等なプロトコルが存在し、かつ業界で広く使用されていることを認めるであろう。それゆえ、この方法はSIPのみに限定されない。
【0075】
B.APを緊急呼出センターにリンクする
STAが緊急呼出をかけていることをAPが知ると、APは、STAからの呼出を適切にルートするために、緊急呼出センターへのリンクを確立する必要がある。緊急呼出をAPから呼出センターに届けるいくつかの可能な転送メカニズムがある。例えば、APがゲートウェイと通信して、それを呼出センターにリンクすることができる。
【0076】
緊急ネットワークノードの概念を拡張して、「マンインザループ」(man-in-the-loop)能力を有する緊急応答オペレーションセンターを含むことができる。緊急ネットワークノードは、拡張サービスセット(ESS)またはインフラストラクチャアプリケーションに仕立てられたネットワークであろう。例えば、大学構内において、指定された緊急ネットワークノードは、構内警備員部門であろう。別の例として、製造工場においては、緊急ネットワークノードは警備員室であろう。緊急ネットワークノードは、VoIP呼出を受信し、呼出情報をログし、呼出を選別し、次に公衆電話交換網(PSTN)に緊急呼出をかけて、適切な機関に警報を出すオペレータを含むであろう。
【0077】
緊急ネットワークノードの概念をさらに拡張して、PSTNへの直通ラインによる自動化ノードを含むことができる。自動化ノードは音声回線ブリッジとして動作して、電話をかけ、ワイヤレスの発呼者をPSTN緊急センターに接続するであろう。
【0078】
緊急ネットワークノードへの接続のための方法を拡張して、認証、許可、またはセキュリティ機能なしに呼出をルートし、処理する能力を含むことができるであろう。これによりワイヤレスの発呼者と緊急ネットワークノードとの間の直接的な暗号化されない接続またはトンネル化接続が可能となるであろう。
【0079】
緊急ネットワークノードの機能を拡張して、呼出処理、呼出ハンドオフ、およびローミングの調整を含むことができるであろう。この機能が隣りのAP(ワイヤレス呼出をサービスしているAPに隣接するAP)におけるリソースを予め許可して、発呼者が、APの境界を横切って移動するときにワイヤレス接続を失うことなく、新規の緊急呼出を再確立する必要なく、ローミングすることができ、したがって、同じ緊急事態に関し重複呼出を排除することができるであろう。一実装方法において、ハンドオフが完了した後に新しいAPが中断なく緊急呼出を続けることができるように、上述されたように緊急IEを収容するMACフレームを使用することができるであろう。
【0080】
IV.相互作用(Interworking)
相互作用は、ネットワーク側の構成要素が相互作用する方法に関連し、また緊急呼出を取り扱う際に、特に緊急呼出が完了されるために異なったネットワークタイプを越えねばならない場合に重要である。この問題の1つの解決法は、新規ユーザがシステムに入るときその緊急呼出能力を示すということである。集中化されたデータベースはその新規ユーザの情報により更新され、その新規ユーザが緊急呼出をかける場合この情報が容易に利用可能であり、そうでなければネットワークにわたってこの情報を交換しなければならないことにより、呼出を完了するために要求されるであろう待ち時間を低減する。位置情報については、緊急呼出能力情報をバックグラウンドで自動的に更新して、絶えず更新された情報を提供することができる。
【0081】
実施形態
1.ワイヤレスローカルエリアネットワークにおいて緊急呼出をサポートするための方法であって、アクセスポイント(AP)の緊急呼出能力についてAPによりアドバタイズするステップを備えることを特徴とする方法。
2.アドバタイズするステップは、APが緊急呼出を受信する能力があるというインディケータを提供することと、緊急呼出をかけているステーションが、それ自体を構成して緊急呼出をAPに通信することができるようにパラメータを提供することとを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
3.アドバタイズするステップは、ビーコンフレームを使用してAPの緊急呼出能力を定期的に送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
4.ビーコンフレームは、APの緊急呼出能力を収容する拡張可能な能力情報要素を含むことを特徴とする実施形態3に記載の方法。
5.アドバタイズするステップは、プローブ応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
6.アドバタイズするステップは、アソシエーション応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
7.アドバタイズするステップは、再アソシエーション応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
8.アドバタイズするステップは、認証応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
9.アドバタイズするステップは、再認証応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
10.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、ステーションの緊急呼出能力についてのステーションによりアクセスポイント(AP)にアナウンスするステップを備えることを特徴とする方法。
11.アナウンスするステップは、情報要素を使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
12.アナウンスするステップは、既存の情報要素にビットフラグを追加してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
13.アナウンスするステップは、アソシエーション要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
14.アナウンスするステップは、再アソシエーション要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信するためにことを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
15.アナウンスするステップは、認証要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
16.アナウンスするステップは、再認証要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
17.WLAN上の任意のデバイスによってアクセス可能な位置にステーションの緊急呼出能力を格納するステップをさらに備える実施形態10に記載の方法。
18.格納するステップは、WLANと他のネットワークタイプの間で相互作用させて緊急呼出をサポートすることを可能とすることを特徴とする実施形態17に記載の方法。
19.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、APにより他の呼出を許可するために要求される認証手順を、緊急呼出をかけているステーションが行うことを要求することなく、緊急呼出をAPにより許可するステップと、緊急呼出に関連する設定をステーションに提供してステーションがWLANにアクセスすることを可能とするステップとを備えることを特徴とする方法。
20.緊急呼出に関連する設定は、緊急呼出アクセス符号を含むことを特徴とする実施形態19に記載の方法。
21.緊急呼出に関連する設定は、緊急呼出セキュリティキーを含むことを特徴とする実施形態19または20に記載の方法。
22.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、APにより他の呼出を許可するために要求される認証手順を、緊急呼出をかけているステーションが行うことを要求することなく、緊急呼出をAPにより許可するステップと、緊急呼出を緊急呼出センターにルートするステップとを備えることを特徴とする方法。
23.ルートするステップは、準静的なルーティングを行うステップを含み、これによりすべての緊急呼出が緊急呼出センターにルートされることを特徴とする実施形態22に記載の方法。
24.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、緊急基本サービスセット(BSS)識別子をステーションに提供するステップであって、緊急BSS識別子が緊急呼出のためにのみ使用されるステップと、ステーションにより緊急呼出を開始するステップであって、緊急呼出が緊急BSS識別子を含むステップとを備えることを特徴とする方法。
25.提供するステップは、緊急BSS識別子をプローブ応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
26.提供するステップは、緊急BSS識別子をアソシエーション応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
27.提供するステップは、緊急BSS識別子を再アソシエーション応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
28.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、ステーションが緊急呼出を完了させるために充分な能力を有するかを判定するステップと、ステーションが緊急呼出を完了させるために充分な能力を有さない場合、インフラストラクチャネットワークの要素をプロキシとして動作させるステップとを備えることを特徴とする方法。
29.インフラストラクチャネットワークの要素は、専用ゲートウェイノードを含むことを特徴とする実施形態28に記載の方法。
30.インフラストラクチャネットワークの要素により緊急呼出に位置情報を追加するステップをさらに備えることを特徴とする実施形態28または29に記載の方法。
31.インフラストラクチャネットワークの要素によりWLAN上のトラフィックを監視するステップであって、それによりインフラストラクチャネットワークの要素がステーションのためにプロキシとして動作することができるように、インフラストラクチャネットワークの要素は、WLAN上のステーションの能力情報を知るステップをさらに備えることを特徴とする実施形態28〜30の1つに記載の方法。
【0082】
本発明の概念は、上で例証された特定の例を超えて拡張することができる。例えば、本発明は、メッシュネットワークおよびアドホックネットワークに拡張することができる。ここで説明された緊急呼出能力は、ネットワークのどの部分においても実装することができ、APに限定されない。例えば、これらの能力は、STAにおいて実装され、いくつかのAPにわたって分散され、アクセス制御装置において、または呼出サーバにおいて実装することができる。
【0083】
代替手段として、人間のユーザの代わりに、本発明は、WLANでの緊急の取り扱いに対するマシン対マシンの使用シナリオに拡張することができる。1つの可能性は、ホームセキュリティシステムにおいて802.11を使用すること、すなわちハードワイヤの電話回線(切断される可能性がある)の代わりにWLANを使用することであろう。この例において、WLANの緊急呼出を人間のユーザが発生させる代わりに、だれかが侵入したときに、ホームセキュリティシステムがセキュリティ呼出センターへ緊急呼出を自動的に発生する。あるいはまた、上述されたように、ホームセキュリティシステムが緊急SOSフレームの送出を開始することができよう。
【0084】
本発明の特徴および要素は、特定の組合せにおける好適な実施形態において説明されるが、各特徴または要素を、単独で(好適な実施形態の他の特徴および要素なしに)、または本発明の他の特徴および要素の有無に関わらず、様々な組合せにおいて使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)に関し、より詳細には、WLANにおける緊急呼出のサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の802技術(802.11WLAN、802.15ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)など)では伝統的にセルラーで行われるような、緊急呼出をサポートする必要はない。セルラーに関しては、緊急呼出のサポートはその技術に課された規制要件に起因することが多く、それゆえ今日の配備されたワイヤレスセルラーネットワークおよびハンドセットの大部分において広く実装されている。緊急呼出に対するサポートは、すべての通信レイヤにわたる多くの態様、特にシグナリングサポートおよび指令手順を伴い、これらは802.11および802.15技術には存在しない。WLANにおけるVoIP(Voice over Internet Protocol)の出現およびWLANについての増大する日常的使用により、WLANにおける緊急呼出に対するサポートは必要になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
住宅市場に対する「固定型」のVoIP電話サービスの提供でさえ、限定された緊急呼出サポートしか有しない。PSAP(Public Safety Answering Point)における指令員(dispatcher)によって番号位置情報が常に追跡できるわけではなく、コールバックが常に可能であるわけではなく、アドレス登録が設備の購入の際に必要になるかもしれない。VoIP電話が新しい場所に移動したときにも、緊急呼出は依然として登録されたアドレス位置に基づいて送られるであろう。登録されたアドレスは原理的に変更することができるが、PSAPにて情報を更新するにあたって、少なくとも何日または何週間の遅れがある。さらに、一部のユーザは彼らの登録情報を、たとえしたとしても時機よく更新しない可能性がある。
【0004】
WLANを使用したVoIP電話によってより多くの移動性が可能になるにつれ、この状況は悪化する。WLANベースのVoIP電話は任意の場所から動作することができ、ユーザは、オフィスから家庭や公共のホットスポットなどへのように、場所の間を継ぎ目なく移動すると予期することができる。
【0005】
ワイヤレスアクセス、アクセスポイント(AP)の位置、発呼者位置、および緊急呼出のアドミッションを含む、ある種の802.11特有の問題が存在する。ワイヤレスアクセスに関して、802.11標準においては緊急呼出に対するプライオリティは現在存在せず、WLANアクセスネットワークに対して通常の呼出から緊急呼出を区別する手段はない。APまたはSTAの位置は、現在は、例えばAPの識別を容易に判定することができても、非独自仕様の方法ではネットワークには知り得ない。また、非独自仕様の方法においては発呼者の位置をマップすることも現在可能ではない。
【0006】
アドミッションに関しては、発呼者がネットワークに入る権限を有さない場合には、しっかり管理されたWLANによって緊急の発呼者が緊急呼出を確立することを妨げられることがある。STAおよびAPの間の通常の接続手順は、STAがアソシエーション要求を送り、続いてSTAをAPに関連付けるのに先立ってAPとのネゴシエーションが行われる。STAが緊急電話をかけていることを示すことができない場合、許可されるかどうかを判定するために全アソシエーション手順を行わなければならないであろう。この種の困難性の一例として、STAがシステムにアクセスするための適切なパスワードまたは認証クレデンシャルを有しない場合(例えば私的なホットスポットまたは企業/オフィスのWLANに存在することがあるように、APがパスワードを要求したり、認証クレデンシャルを要求したりするように構成される場合)、APはそのSTAのアソシエーション要求をにべもなく拒否するであろう。しかしSTAが適切なパスワードまたは認証クレデンシャルを有していても、APが、音声ユーザに対するその構成された最大容量に基づいて、ネットワークへの許容を拒否するかもしれない。この場合、APにとっての正しい決定は、この新しい緊急呼出を許容し(最優先にて)、別の既存の音声呼出を切断することであろう。APが第一に現在この区別をなす手段を欠いているため、このような機能を既存の最新のWLAN技術で実装することができない。これは、どのデバイスも、SIMカードのないデバイスでさえ、緊急呼出をかけることができるセルラーシステムの動作と対照的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、802.11および802.15技術により緊急呼出取り扱いサポートを可能にするための様々なシステム動作態様を提案する。本提案のいくつかは、緊急呼出をAPに示すための新しいL2シグナリングメッセージまたは情報要素に関する。新しい手順および制御メカニズムが緊急状況に対して提案される。加えて、デュアルモード(WLANおよび第2世代(2G)セルラーまたは第3世代(3G)セルラー)の実装に対する手順が扱われる。緊急呼出の要件が緊急発呼者の場所についての位置報告に関する規制要件と結び付くことが多いため、WLANネットワークにおける地理的な場所についての要求および報告を可能にする手段およびシグナリング手順が提案される。場所の情報は、緊急呼出と結合されたり、または別々に実装されたりすることができる。
【0008】
STAが緊急呼出を識別できることの利点は、APが、通常のように取り扱うべき(すなわち、通常のアソシエーション手順に従うべき)STAと、ネットワークがどのように構成されるかにかかわらず、すべての状況下で許容すべき(すなわち、緊急呼出を許容するためにどのセキュリティ要件をもバイパスする)STAとを区別できるようにする単純な論理を、APにインストールすることができるということである。
【0009】
ワイヤレスローカルエリアネットワークにおいてステーションおよびアクセスポイント(AP)の間で緊急呼出の能力情報を通信するためのいくつかの方法が提供される。この方法には、APがその緊急呼出能力についてアドバタイズすること、ステーションがその緊急呼出能力についてアナウンスすることが含まれる。APはその緊急呼出能力を、ビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、再アソシエーション応答フレーム、または再認証応答フレームにおいてアドバタイズすることが可能である。ステーションはその緊急呼出能力を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームにおいてアナウンスすることができる。
【0010】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のSTAによって緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信され、STAが認証手順を行うことを要求することなく許容される。STAは、緊急呼出に関連する設定を与えられて、STAがWLANにアクセスすることを許可する。
【0011】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のステーションによって緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信され、STAが認証手順を行うことを要求することなく許容される。緊急呼出は、緊急呼出センターにルートされる。
【0012】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、緊急BSS IDをSTAに提供することによって始まり、この緊急BSS IDは緊急呼出のためにのみ使用される。STAによって開始されるどの緊急呼出も緊急BSS識別子を使用する。
【0013】
WLANにおいて緊急呼出をサポートするための方法は、WLAN上のステーションが緊急呼出を開始することによって始まる。緊急呼出は、WLAN上のAPによって受信される。STAが緊急呼出を完了するために十分な能力を有するかどうかの判定がなされる。STAが緊急呼出を完了するために十分な能力を有さない場合、インフラストラクチャネットワークの要素が、STAに対するプロキシとして動作して緊急呼出を完了する。
【0014】
例として与えられ、添付された図面に関連して理解されるべき、好適な実施形態についての以下の説明から、本発明のより詳細な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】標準の媒体アクセス制御(MAC)フレームの図である。
【図2A】緊急呼出を示すビットフラグを伴うMACフレームの図である。
【図2B】緊急呼出を示す情報要素(IE)を伴うMACフレームの図である。
【図3】標準のRTS(Ready To Send)フレームの図である。
【図4A】緊急呼出を示すビットフラグを伴うRTSフレームの図である。
【図4B】緊急呼出を示すIEを伴うRTSフレームの図である。
【図5】図4Aまたは4Bにおいて示されるRTSフレームを使用するための方法のフロー図である。
【図6】無線技術を切り替えて緊急呼出を完了するための方法のフロー図である。
【図7】緊急呼出を示すSOSビーコンフレームの図である。
【図8】図7において示されたSOSフレームを送信し、使用するための方法のフロー図である。
【図9】プロキシ機能を適用するかどうかを判定する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、用語「ステーション」(STA)は、限定されないが、ワイヤレス送受信ユニット(WTRU)、ユーザ設備(UE)、固定または移動体の加入者ユニット、ページャ、またはワイヤレス環境において動作する能力がある任意の他のタイプのデバイスを含む。以降参照されると、用語「アクセスポイント」(AP)は、限定されないが、基地局、ノードB、サイトコントローラ、またはワイヤレス環境における任意の他のタイプのインタフェーシングデバイスを含む。
【0017】
本発明は、すべてのWLAN、PAN(Personal Area Network)、およびMAN(Metropolitan Area Network)に適用可能であるが、特に802.11ベースのWLAN、802.15ベースのワイヤレスPAN、802.16/20ベースのワイヤレスMAN、およびこれらと同等な物に適用可能である。1つの実現において、本発明は、WLAN、PAN、MAN、および携帯電話マルチモードWTRUを含むこれらのアクセス技術の組み合わせを実装するWTRUに適用可能である。
【0018】
緊急サポートを取り扱うための本発明は、いくつかの主要な領域にグループ化分類されて、以降説明されることになる。しかしながら、これは説明の便宜のためであり、本発明の限定として捉えるべきではない。
【0019】
I.エアインタフェース関連のシグナリング/サポートおよび手順
A.MACフレームおよびMACシグナリングメッセージにおける緊急呼出の表示
標準MACフレーム100が図1に示されている。MACフレーム100は、フレーム制御フィールド102、持続期間/IDフィールド104、1つまたは複数のアドレスフィールド106a〜106d、シーケンス制御フィールド108、サービス品質(QoS)制御フィールド110、フレームボディ112、およびフレームチェックシーケンス(FCS)フィールド114を含む。QoS制御フィールド110は、示されるように複数のサブフィールドに分割される。
【0020】
緊急呼出に対するプライオリティは、ビットフラグにより、緊急メッセージタイプIEにより、既存または新規IE上の緊急メッセージフィールドの部分により、またはMACフレームの任意の既存のIEまたはフィールドにおける予備の(現在未使用の)値を使用して実装される緊急呼出コードにより示すことができる。インディケータによりAPは緊急呼出を許容する必要があることを知ることができるようになる。同様の目的のために、QoSプライオリティまたは要件がQoSクラス(例えばDiffServ)によって示される。任意の既存のMACフレームタイプ(制御、管理、またはデータ)も、緊急呼出インディケータを含むように変更することができる。緊急呼出インディケータは、説明されたメカニズムのいずれかを用いて、ヘッダまたはボディにおいてMACの任意の位置に追加することができる。
【0021】
図2Aに示されるように、MACフレーム200はフィールド202〜214を含み、これらは図1との関連で上述されたフィールド102〜114と同じである。一実施形態において、単純なビットフラグ220を使用してこれが緊急呼出であるということを受信機に示す。図2Aに示されるように、ビットフラグ220のための1つの可能な位置は、QoS制御フィールド210の予備のビット(ビット7)にある。当該技術分野における通常の知識を有する者は、MACフレームの既存のヘッダまたはフレームボディフィールドのいずれにおいても任意の現在予備の位置にビットフラグ220を配置することが可能であることに気付くであろう。
【0022】
図2Bに示されるように、MACフレーム250は、フレーム制御フィールド252、長さフィールド254、および緊急呼出を示す緊急呼出IE256を含む。緊急呼出IE256は、限定されないが、緊急呼出フラグ260、理由コードフィールド262、能力情報フィールド264、位置情報フィールド266、音声コーデック適用フィールド268、および追加フィールド270を含むことができる。緊急呼出IE256は、任意のMACフレームに追加することができる。加えて、緊急呼出IE256に収容される情報は、既存のIEタイプに追加することができる。
【0023】
緊急呼出フラグ260は、その呼出が緊急呼出であるということを識別する単純なインディケータ(例えばビットフラグ)とすることができる。理由コードフィールド262は、緊急呼出の理由(例えば火災、医療的緊急事態など)を示す。能力情報フィールド264は、STAが緊急呼出をかける能力を含み、緊急呼出を可能な限り迅速に完了するのを援助するために使用される。位置情報フィールド266は、STAが緊急呼出をかけているSTAの位置を含む。音声コーデック適用フィールド268は、STAによって使用される音声コーデックを識別し、緊急呼出を扱おうと試みるSTAおよびAPの間に何らかの非互換性がある場合に使用される。緊急呼出IEに含めることができる追加情報(フィールド270として)は、タイムスタンプおよびWTRUおよび/またはオペレータサービス能力情報がある。
【0024】
802.11eの下での既存のMACフレームは、呼出プライオリティを有する。伝送仕様(TSPEC:Transmission Specification)IEは、伝送仕様情報フィールドにおける3ビットのプライオリティサブフィールドを含む。また、本発明の原理は、TSPEC IEにおいて緊急呼出のための値を定義することによって実施することができる。セルラーシステムにおいて、同様なメカニズム(シグナリングフレーム)を使用して、ネットワークに呼出パラメータを送り、緊急呼出を識別する予備のフィールドを含む。当技術分野において知られているように、TSPEC IEは追加トラフィックストリーム(ADDTS)フレームにおいて使用される。ここで説明された変更されたTSPEC IEはそれゆえ、ADDTSフレームにおいて使用することができる。同様に、同じ情報を収容する新規のIEは、緊急呼出を示すADDTSフレームにおいて使用することができる。
【0025】
以上の説明は、特に802.11ベースのMACフレームについて説明したが、MACフレームを拡張する概念は、任意のタイプのMACフレームに適用することができる。例えば、イーサネット(登録商標)タイプのMACフレームもまた、同様に変更することができるであろう。そのようなMACフレームは、例えば、Wi−Fiプロテクティッドアクセス(WPA)可能ネットワークにおいてセキュリティ上の理由で交換されるEAPOL(Extensible Authentication Protocol Over LAN)フレームにおいて使用される。さらに、この概念は、イーサタイプ(Ethertype)がヘッダ中の1ビットにより示されるため、新しいイーサタイプを定義するために拡張することができる。
【0026】
B.緊急呼出のための仮想BSS ID
仮想BSS設定において、単一の物理的APは、1つより多いBSS(すなわち、仮想BSS)として動作するように構成され、各BSSがそれ自身のIDを有している。1つのBSS IDを緊急呼出の使用のためにのみ予約することができる。WLANにおいて送信される各MACフレームはBSS IDを含むため、緊急呼出は、緊急呼出を送信しようと試みるとき緊急BSS IDを使用するであろう。
【0027】
STAは、緊急BSS IDをAPからのダウンリンク上で受信することができる。例えば、緊急BSS IDは、APにより応答フレーム(例えば、プローブ応答、アソシエーション応答、または再アソシエーション応答)において送ることができる。緊急BSS IDは、他の様々な方法によりSTAに提供することができることを注記する。
【0028】
C.APまたはSTAがその緊急呼出能力をアドバタイズ
APは、緊急呼出をサポートするその能力および意志をアドバタイズする。例えば、APは、緊急呼出が可能化されていることをアドバタイズし、APに関連付けて緊急呼出を完了するためにSTAにパラメータを提供することができる。このアドバタイズはまた、そのAPにおける緊急呼出能力が現在アクティブであるかの表示を含むことができる。このタイプのアドバタイズは、多くの異なるタイプのユーザが合理的に期待できる公共のホットスポットにおいて使用される可能性がある。
【0029】
AP能力IEは、APがその緊急呼出能力を示すビーコンフレームまたはプローブフレームにおいて使用することができる。現在のビーコンフレームにおいて、2バイトの能力フィールドがあるが、このフィールドのビットのすべてが使用されている。拡張可能な能力IEは、すべての新しいAP能力を示すためにフレームの端に追加されている。上述されたビットフラグは、APの緊急呼出能力を示すために拡張可能な能力IEに追加することができる。加えて、APの緊急呼出能力表示は、再アソシエーションまたは再認証フレームに追加することができる。
【0030】
あるいはまた、STAは緊急呼出をサポートする能力をアナウンスすることができる。この情報は、例えば、そのSTAによってどのタイプの音声符号化が実装されているかを含むことができる。STAは、その緊急呼出能力情報を、アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション要求フレーム、認証要求フレーム、または再認証要求フレームに追加することができる。この情報は、新しいIEを使用することにより、または1または複数のビットフラグを既存のIEに追加することにより、送信することができる。STAがその緊急呼出能力をアナウンスすることの1つの利点は、そのSTAが緊急呼出をかける必要がある場合にAPがこの情報を格納して、より迅速にその緊急呼出を処理することができることである。
【0031】
STAが緊急呼出能力をAPへ提供する場合、APはまた、それが属するWLANが緊急呼出をサポートすることができるかを承知しているべきである。あらゆるWLANが緊急呼出センターに接続する能力を有していないかもしれない。例えば、WLANがデータ収集ネットワーク(例えば、工場のテレメトリのネットワーク)として構成される場合があり、STAが緊急呼出センターに接続することを可能とするであろうインターネット接続を有さないかもしれない。そのような状況において、WLANが緊急呼出をサポートできず、それゆえSTAが別のWLANを特定することを試みることができるということをAPがSTAに知らせるべきである。WLANのインターネット接続が何らかの理由で一時的に利用できない場合に、同様のメカニズムを採用することができる。
【0032】
D.位置情報
位置情報はまた、緊急呼出確立の理由の伝達に加えて、これらの新しいMACフレーム200、250(例えば位置情報フィールド266)に付加することができる。例えば、APまたはSTAは基本サービスセット(BSS)ID、APまたはSTAのMACアドレス、静的または動的に割り当てられたIPアドレス、またはこの機能を実装するAPまたはSTAからの全地球側位システム(GPS)情報を使用し、この情報を緊急呼出センターに転送することができる。位置情報はまた、緊急呼出情報とは別個に伝達することができることを注記する。
【0033】
緊急STAを特定する他の手段は、限定されないが、発呼者IDにより緊急呼出をかけているSTAを識別すること、コールバック番号を利用すること、緊急呼出センターによるSTAを特定するのに役立つ既知のアドレスを使用すること(例えばAPまたはネットワークIDなど、そのSTAの現在の接続点(point of attachment)のMACアドレス、またはAPの地理的座標を使用すること)を含む。
【0034】
例えば、APがSTAから場所を要求することができる場合には、WLANのMACシグナリングメカニズムを使用することができる。STAはAPにSTAの場所を付けて報告するであろう。1つの可能な実装は、現在、セルラーハンドセットにおいて現在広く普及している、アシスト型GPS(A−GPS)の座標の使用を含む。限定されないが、アップリンク到達時間差(U−TDOA)、拡張観測時間差(E−OTD)、アイドル期間ダウンリンク観測到達時間差(IPDL−OTDOA)、A−GPS、ユニバーサル地理座標(例えばIEEE規格802.11kまたはIETF RFC3825で定義されるような)、ならびにWLANのAP位置、セルサイト、またはセクター情報およびタイミング進行または往復時間測定を用いる方法を含む複数の位置決定方法を、異なるアクセスネットワークに対してサポートすることができる。位置情報を伝達する先の例について特に言及しているが、当事業者は、地理座標を伝達する任意のフォーマットを使用することができることに気付くであろう。
【0035】
緊急呼出機能は、位置報告機能から独立して(相補的ではあるが)行うことが可能である。例証すると、(1)STAが実際に緊急呼出を発呼するとき、緊急呼出シグナリングフレームに位置情報を付加すること、および(2)緊急呼出がなければ単独の機能として位置更新をシグナルすることが可能である。後者の一例は、周期的に(例えば数秒毎)、APのバックグラウンドの一部としてポーリングされるか、またはSTAによるAPへの自立的な通常の位置報告によるかのいずれかにより、最新のSTAの位置についてAPが通知され、更新された状態にすることであろう。APにおいて位置情報を維持することが好ましいかもしれない。なぜなら、STAが緊急呼出を発行するとき、APは、STAが緊急呼出要求の上にその位置を明示的に相乗りさせる必要がないように、STAの位置の合理的に最近の推定を既に有するからである。
【0036】
例えば、そのような単独のSTA位置情報報告は、規制要件に取り組むことと並行して、WLANネットワークにおける位置依存のサービスについての実装できるように使用することができる。
【0037】
このように、位置情報はまた、インターワーキングWAN(I−WLAN)、公衆地上移動通信網(PLMN)、またはSTAに存在する位置サービス(LCS)アプリケーションに提供することができる。加えて、発呼者をサービスしているセルの識別、またはサービスしているAPの識別をLCSクライアントに提供することができる。
【0038】
E.既存のRTS/CTSフレーム交換メカニズムおよび手順の拡張
標準のRTSフレーム300を図3に示す。RTSフレーム300は、フレーム制御フィールド302、持続期間(duration)フィールド304、受信機アドレス(RA)フィールド306、送信機アドレス(TA)フィールド308、およびFCSフィールド310を含む。
【0039】
緊急呼出を送信したいSTAは、図4Aに示す特別なシグナリングフラグを収容する拡張されたRTSフレーム400、または図4Bに示す新規のIEを収容する拡張されたRTSフレーム450を送信する。
【0040】
図4Aは、RTSフレーム400を示している。RTSフレーム400のフィールド402〜410は、図3に関連して上述されたRTSフレーム300のフィールド302〜310と同じである。フレーム制御フィールド402は、プロトコルバージョンサブフィールド412、タイプサブフィールド414、サブタイプサブフィールド416、DSへ(to Distribution System)サブフィールド418、DSからサブフィールド420、より多くのフラグメント(MF)サブフィールド422、リトライサブフィールド424、電力管理サブフィールド426、より多くのデータ(MD)サブフィールド428、WEP(Wired Equivalent Privacy)サブフィールド430、および順序(order)サブフィールド432を含む、いくつかのサブフィールドを有する。
【0041】
シグナリングフラグは、RTSフレーム400におけるどの予備ビットにも追加することができる。予備ビットのための潜在的な場所には、プロトコルバージョンサブフィールド412、種別サブフィールド414、およびサブタイプサブフィールド416が含まれる。当事業者は、RTSフレーム400におけるどの予備ビットにおいてもシグナリングフラグをおくことができるであろうことを注記する。
【0042】
図4Bは、フレーム制御フィールド452、持続期間フィールド454、RAフィールド456、TAフィールド458、目的IE460、およびFCSフィールド462を含む、拡張されたRTSフレーム450を示している。目的IE460は、上述された緊急呼出IE256と内容において同様にすることができる。拡張されたRTSフレーム450を受信するすべてのSTAは、次に、ワイヤレス媒体を待機状態にし、緊急状態のSTAに送信する機会を与えるために予め定められた時間の間に何らかの送信の試みをも停止するよう要求される。
【0043】
一実施形態において、拡張されたRTSフレームを受信すると、緊急呼出をかけているSTAに、媒体へのアクセスの取得に成功するより高い確率を与えるために、受信するSTAは変更されたバックオフ処理に入る。バックオフ処理を変更する2つの実装が可能である。すなわち、(1)他のSTAに対して、緊急呼出をかけているSTAのバックオフ時間を短縮すること、または(2)緊急でないSTAのバックオフ時間を延長することである。いずれの実装においても、最終的な結果は、緊急のSTAが緊急でないSTAよりもより短いバックオフ時間を有することである。
【0044】
RTSフレーム400または450を使用するための方法500が図5に示されている。方法500の目的は、STAが緊急呼出を送信することを可能とするために送信媒体を待機状態にすることである。この方法は、STAがRTSフレーム400または450を送ることによって緊急呼出をかけることで開始する(ステップ502)。APは、RTSフレームを受信し(ステップ504)、標準のCTSフレームによりSTAに応答する(ステップ506)。APによって使用されるべきバックオフタイプが判定される(ステップ508)。2つの可能なバックオフタイプがあり、その両方とも、送信を待つ他のすべてのSTAに先立って、緊急呼出をかけているSTAが媒体にアクセスすることを可能とするであろう。
【0045】
バックオフタイプが、緊急状態にあるSTA(すなわち、緊急呼出をかけているSTA)がより短いバックオフ時間を有する場合、緊急状態にあるSTAは、短縮されたバックオフ時間の間待機し(ステップ510)、それから緊急呼出を送信する(ステップ512)。媒体にアクセスすることを試みている他のすべてのSTAは、標準のバックオフ時間の間待機し(ステップ514)、それから送信することができる(ステップ516)。次に、方法500は、終了する(ステップ518)。
【0046】
バックオフタイプが、他のすべてのSTAがより長いバックオフ時間を有する場合(ステップ508)、緊急状態にあるSTAは、標準のバックオフ時間の間待機し(ステップ520)、緊急呼出を送信する(ステップ522)。他のSTAのすべては、より長いバックオフ時間の間待機し(ステップ524)、それから送信することができる(ステップ516)。次に、方法500は終了する(ステップ518)。
【0047】
一般に、STAがバックオフ手順に入ると、STAは、一連のN個のタイムスロットの1つにおいて無作為に送信することを試みる。送信の衝突がある場合、STAは再度バックオフし、Nとして予め定められた最大値までNの値を増加することになる。STAが送信することを試みることができる前に、STAは、M個のタイムスロットの間待機しなければならない。この基本手順は、どのSTAにも、媒体へのアクセスを勝ち取る平等な機会を提供する。802.11eにおいて、QoSを実装するために特定のステーションが媒体へのアクセスを勝ち取るより大きい機会を有することを保証する2つの方法がある。第1は、Mの値を低減し、これによってSTAにより短い待ち時間を与えることである。第2は、Nに対してより小さい値を使用することであり、これによりSTAが特定のタイムスロットにおいて送信できることになる機会を増大する。
【0048】
方法500において、STAが使用するバックオフ値を知るためのいくつかの可能な手段がある。第1の手段は、緊急呼出に関連して、MおよびNに対するハード的に符号化された値を使用することであり、MおよびNに対してハード的に符号化された値が緊急状態にあるSTAにより使用されることになるようにする。第2の手段は、APから緊急状態にあるSTAに、MおよびNに対する値を明示的にシグナルすることである。APは典型的には、通常のシステム動作の間にブロードキャストまたは専用管理フレームのいずれかを使用することによって、それらのパラメータをSTAに送るであろう。STAは、緊急呼出を設定する必要がある場合に使用されることになる緊急呼出関連の構成パラメータを読み出す。一例は、APがビーコンまたはプローブ応答の管理フレームの部分として、他のBSSの構成値をそのBSSのすべてのSTAに送ることである。緊急呼出関連のMおよびNのパラメータを追加することは、これらの自然な拡張である。例えば、BSSのすべてのSTAにより使用されることになる、アクセスカテゴリごとの802.lleのQoS関連の構成パラメータ(バックオフ値、ウィンドウなど)は、今日ではAPが同様のメカニズムを使用することによってシグナルされる。
【0049】
第3の手段は、第1および第2の手段の組み合わせであり、これによりSTAは、STAが通常使用するMおよびNに対するハード的に符号化されたデフォルト値を有し、STAが緊急状態にある場合には、APはMおよびNに対する新しい値をシグナルして、ハード的に符号化されたデフォルト値をオーバライドすることになる。当事業者は、緊急状態にあるSTAおよび媒体へのアクセスを求めている他のすべてのSTAに、適切なバックオフ時間を通信するための追加的手段を想定することができるであろう。
【0050】
F.デュアルモードWLANのSTA(例えば3GおよびWLAN)に対する別の無線技術への指令切替え
緊急の場合、デュアルモードWLANのSTAは、WLAN上ではなく、第一に、セルラーネットワーク上で何らかの緊急呼出を試みるであろう。これは、原理上、STA単独の「ハード的に符号化された」手順である。この手順を実装する方法600を図6に示す。
【0051】
方法600は、ユーザがSTAにおいて緊急呼出をかけることにより開始する(ステップ602)。STAがセルラーネットワークまたはWLAN上で動作する能力があるかの判定がなされる(ステップ604)。STAがセルラーネットワーク上で動作している(すなわち、現在、セルラーネットワークに接続されている)場合、STAは、緊急呼出のためにセルラーネットワーク上に留まる(ステップ606)。STAがセルラーネットワーク上で動作する能力があるが、現在セルラーネットワークに接続されていない場合、STAはセルラーネットワークへの接続を確立し(ステップ608)、セルラーネットワーク上で緊急呼出をかける(ステップ606)。STAがWLAN上で動作している場合、STAはセルラーネットワークに切替えて、緊急呼出をかける(ステップ610)。
【0052】
緊急呼出がかけられた後、その緊急呼出がセルラーネットワーク上を通過したかの判定がなされる(ステップ612)。通過した場合、方法600は終了する(ステップ614)。緊急呼出がセルラーネットワーク上を通過しなかった場合、STAはWLANに切替えて、その呼出をかけ(ステップ616)、方法600は終了する(ステップ614)。
【0053】
緊急呼出がデュアルモードのWLAN−セルラーのハンドセットにより発行される必要がある場合、好適な手順は、ハンドセットをセルラーモデム上にフォールバックさせる(すなわち、セルラー無線リンク上で緊急呼出を確立する)ことである。なぜなら、緊急呼出サポートはWLANについては利用可能でないか、または信頼性が低い場合があるからである。
【0054】
方法600に対する代替案には、(1)緊急呼出を送信しようと試みるときに切替えるべき、好ましい、指令による、または推奨される無線技術(例えばWLANまたはセルラー)の順序を確立すること、(2)システムオペレータが、デュアルモードの電話機に対してSIMカードまたは同様なデバイスで緊急呼出のふるまいを構成すること、(3)緊急の場合に、VoIPコールをセルラーネットワーク上で維持するか、またはそのコールを従来技術の回線交換の音声チャネル上に移動すること、(4)システム運用者が、ワイヤレスインタフェースを介して無線技術の好ましいローカルの順序をシグナルすること、または(5)ユーザが、ポリシー設定を手動により構成することである。
【0055】
G.緊急呼出を試みるときの認証およびセキュリティのバイパス
WLANにおいて緊急呼出を確立することを求めるどの802.xxのSTAもAPによって許可されなければならないという手順が指令される。これには、802.1xのような認証およびネットワーク側の他のセキュリティ対策をバイパスすることが含まれる。この手順は、拡張されたRTS/CTSの方法500を使用することにより(図5において示されるように)、またはMACフレームにおけるビットフラグ、IE、ヘッダ、予備情報フィールド、もしくはビット/シーケンス値により(図2Aおよび図2Bに示すように)トリガすることができるであろう。
【0056】
現在のWLAN実装において、各STAの認証ステータスは、ステートマシンを介してトラックされ、1xポートフィルタリングと称される。STAは、認証された場合にのみWLAN上で送信することができ、そうでなければポートフィルタによってブロックされることになる。しかし緊急呼出をかけているSTAはWLANに対して許可されねばならないので、このことは認証の観点から問題を呈する。この認証の問題を克服するために、ポートフィルタを調整して、STAがいつ緊急呼出を送っているかを容易に判定し、緊急呼出を続けることを可能にすることができる。例えば、新しいイーサタイプまたは既存のイーサタイプの変更に関連して、上述したように、表示を提供することができるであろう。
【0057】
WLANにおけるアクセス制御は、本質的にセキュリティに結び付けられる。現在の標準の下では、すべてのSTAはAPに関連付けるためにすべての認証プロセスを行わなければならないという点でAPにおいてアクセス制御を回避する方法はない。STAがAPに関連付けるために適切なクレデンシャル欠いていても、APは緊急呼出を許可するべきである。APが緊急呼出を識別したときに2つのオプションがあり、この緊急呼出の識別はL2で行われるべきである。第1のオプションは、APのセキュリティを完全にバイパスし、認証を要求することなくその呼出を許可することである。第2のオプションは、異なるセキュリティ設定でその呼出を許可することである。例えば、緊急呼出は、特定の緊急関連のアクセスコードまたはセキュリティキーを提供することができる。
【0058】
APが、APのセキュリティをバイパスすることによって緊急呼出に対するアクセスを認可する場合、緊急呼出であるように見せかける呼出(例えばシグナリング情報のなりすましによる)からセキュリティバイパスの悪用を防止するよう注意が払われる必要がある。この問題に対する1つの解決法は、緊急呼出がWLANへの一般的なアクセスを提供することなく緊急呼出センターに自動的にルートされるように、すべての緊急呼出に対して準静的なルーティングをすることが含まれる。緊急呼出に対して準静的なルーティングを使用することによって、なりすましの緊急呼出さえも緊急呼出センターにルートされるであろう。
【0059】
II.緊急の場合におけるWTRUのふるまい/手順
A.WLANがSOSビーコン信号を送出して発呼者を見つけ出すのを容易にする
緊急呼出が終了すると(またはその途中であっても)、STAおよび/または関係するAPが図7に示すSOSタイプのシグナリングフレーム700を一定の間隔で送信し始める手順がSTAにおいて指令されるか、またはネットワークにより構成される。
【0060】
SOSシグナリングフレーム700は、プローブ要求フレームの変更バージョンである。SOSシグナリングフレーム700は、フレーム制御フィールド702、持続期間フィールド704、送信先アドレス(DA)フィールド706、送信元アドレス(SA)フィールド708、BSSIDフィールド710、シーケンス制御フィールド712、SSID IE714、サポートレートIE716、および緊急呼出IE718を含む。緊急呼出IE718は、図2Bに関連して上述された緊急呼出IE256と同一とすることができる。サポートレートIE716は、オプションであり、その機能性に影響を及ぼすことなくSOSシグナリングフレーム700から削除することができることを注記する。
【0061】
一実施形態において、媒体へのアクセスを確実にするために、ショートインターフレームスペース(SIFS)プライオリティまたはプライオリティインターフレームスペース(PIFS)プライオリティと共に送出されるプローブ要求フレームとして、SOS信号フレーム700を定義することができる。SOS信号フレームは、911ID(例えば発呼者ID)、装置の詳細(国際モバイル機器識別(IMEI)など)、ネットワーク所属、ユーザ名、および緊急理由コードなど、緊急呼出IEにおける新しい緊急呼出関連の要素を収容する。理由コードは、デバイスがユーザにその緊急呼出に対する理由を識別するように促すこと(例えば「火災緊急の場合には1を押して下さい」など)により取得することができる。理由コードは、進行中の呼を終了しようがない場合に、その緊急事態を処理するための何らかの能力を提供するであろう。
【0062】
SOS信号フレームを、毎100ミリ秒程度で送信するようにスケジュールして、位置のロギングおよび追跡を容易にすることができる。APは、信号のタイムスタンプおよび詳細と共にどのSOS信号フレームの受信をもログする必要があるであろう。信号強度の詳細には、信号強度、信号品質、アンテナ方位および利得、ならびにIMEI、ユーザ名(利用可能の場合)、識別および能力目的のために有用な他の802.11デバイス情報などの発呼者の詳細が含まれる。SOS信号フレームを受信するAPはまた、緊急応答、無線リソース調整、位置、および発呼デバイスの追跡に責任のある緊急ネットワークノードにイベントを報告する必要があるであろう。
【0063】
これは、SOSシグナリングフレームが送出され、緊急作業員(emergency worker)が発呼者に接近すると彼らによって受信することができる、アクティブなプローブメカニズムである。1つのアナロジーは、航空機のブラックボックスにおける緊急ビーコンである。新規のMACフレームをこの目的のために導入することができ、または既存のMACフレーム、例えばプローブ要求フレームを、新規のIE(緊急呼出IE256など)により拡張してこの目的を満足させることができる。
【0064】
SOSシグナリングフレームを利用するための方法800が図8に示されている。ユーザが、STAから緊急呼出をかける(ステップ802)。STAは、SOSフレームを送信し始める(ステップ804)。所望の実装に基づいて、SOSフレームは、プローブとして送出するか、または緊急作業員との直接接続を確立するために使用することができる(ステップ806)。
【0065】
SOSフレームがプローブとして送出されることになる場合、送信期間が設定され、送信期間の終了に達しているかの判定がなされる(ステップ810)。送信期間が終了していない場合、STAはSOSフレームを送信し続け(ステップ812)、方法はステップ810に戻る。送信期間の終了に達している場合(ステップ810)、STAはSOSフレームを送信するのを止め(ステップ814)、方法は終了する(ステップ816)。
【0066】
SOSフレームが緊急作業員との直接接続を確立するために使用されることになる場合(ステップ806)、緊急作業員がSTAのレンジ内にいるかの判定がなされる(ステップ820)。緊急作業員がSTAのレンジ内にいない場合、STAはSOSフレームを送信し続け(ステップ822)、方法はステップ820を継続する。緊急作業員がSTAのレンジ内にいる場合(ステップ820)、STAはSOSフレームを送信するのを止め、発呼者と緊急作業員との間に直接接続を確立し(ステップ824)、方法は終了する(ステップ816)。
【0067】
第1の代替案(ステップ810〜814)においては、緊急呼出が終了すると、STAにより送信されるSOSフレームは、APからのシグナリングによって、またはセッションイニシエーションプロトコル(SIP)のような上位レイヤのプロトコルによって、トリガすることができるであろう。SOSフレームの持続期間/頻度は、このトリガ信号に収容される。緊急呼出が終了した後にSOSフレームを送出することにより、緊急呼出が誤りであった場合、または緊急作業員がその呼出に応答して到着する必要がなかった場合、不要なSOSフレームの送信を防止する。
【0068】
第2の代替案(ステップ820〜824)において、緊急作業員と発呼者の間の直接VoIP接続は、彼らが互いのレンジ内であるときに確立される。SOSフレームが届く他のSTAは、図4A、図4B、および図5に関連して上述された拡張されたRTSフレームのようにそのSOSフレームを取り扱うことができる(すなわち他のSTAはその媒体にアクセスしようとはせず、緊急発呼者がその帯域幅によりよいアクセスを有するであろう)。
【0069】
B.ネットワーク(例えばAP)が緊急呼出を処理するコールバック機能を実施する
緊急呼出が確立されると、コールバックの場合、緊急呼出が終了した後、WLANはある一定の期間、緊急呼出を開始したユーザへのアクティブ接続を維持する。この機能は、ユーザに対してトランスペアレントとすることができる。
【0070】
III.インフラストラクチャにおける機能
A.プロキシ機能
APがSTAに対してプロキシとして動作する必要があるかを判定するための方法900を図9に示す。STAが緊急呼出をなし(ステップ902)、APがその緊急呼出を受信する(ステップ904)。STAが緊急呼出をその呼出を伝達するために使用されるネットワークに基づいて完了する能力を有するかの判定がなされる(ステップ906)。APは、STAがその呼出をサポートするために要求されるすべての機能(例えばSIP/H.323プロトコルターミネーション、ボコーダなど)を有するかを検査する。この情報は、MACフレームの一部分(例えばMACフレーム200、250)として示すことができ、またはAPがアクセスできるネットワークにおける加入者情報の一部分とすることができる。
【0071】
STAが必要な能力のすべてを有する場合、STAは通常通りにその呼出を続行する(ステップ908)。APは必要に応じてその呼出に、STAの位置および/またはAPの位置(ネットワークID、APのMACアドレスなど)を含む、位置情報を追加することができる(ステップ910)。そして、方法900は終了する(ステップ912)。
【0072】
STAがその呼出を完了するために必要な能力のすべては有してはいない場合(ステップ906)、APがSTAに対するプロキシとして動作し、必要などの機能をも提供する(ステップ914)。APは必要に応じてその呼出に位置情報を追加(ステップ910)し、方法900は終了する(ステップ912)。
【0073】
STAが現在の環境において緊急呼出を完全に完了するために要求されるすべての機能は有してはいないとAPが判定した場合、APはSTAに対するプロキシとして動作することになる(ステップ914)。例えば、STAがSIPプロトコルサポートを有さない場合、APは、STAに対するSIPプロキシとして動作することができる。別の例として、STAはSIPサポートを有するがネットワークはH.323のみをサポートする場合、APは、STAからのSIPメッセージをネットワークの残りの部分に対してH.323メッセージとして相互に作用させることができる。STAがボコーダさえ有さないという極端な場合には、APは、STAにシンボコーダクライアントをダウンロードし、ネットワークのどこかにあるより標準的なボコーダと相互に作用させることができる。APがSTAに対してプロキシ機能のすべてを提供する必要はないことを注記する。これらの機能は、専用ゲートウェイノードなどインフラストラクチャネットワークにおける別の要素によって提供されるかもしれない。プロキシ機能をAPの外に移すことによって、これは、WLANのインターネット接続の中断のイベントにおいて、緊急呼出を取り扱うために、WLANにより大きい柔軟性を提供する。
【0074】
別の方法は、STAおよびネットワークにおけるSTAの対応物によってシグナリングまたは通常のトラヒックのために使用されるIPパケットの内容に関してAPがなりすます(すなわち、内容および/またはタイプ情報を公式にはサポートされていない場合でさえ、読取る)ことである。例えば、IPを介したSIPシグナリングプロトコルメッセージが、現在では呼出処理のために通常使用される。そのようなSIPシグナリングは、能力情報および送信先アドレスなど、APがプロキシとしてのその役割を果たすために有用な情報を収容する。前述の方法に加えて、APがSTAリモートの送信先の高位レイヤ(すなわち、L2MACより上位)のメッセージ内容に関してなりすましそのような情報を抽出する場合、より効率的にその役割を果たすことができる。当事業者は、SIPがIPベースの呼出に対する管理プロトコルの一例であり、他の同等なプロトコルが存在し、かつ業界で広く使用されていることを認めるであろう。それゆえ、この方法はSIPのみに限定されない。
【0075】
B.APを緊急呼出センターにリンクする
STAが緊急呼出をかけていることをAPが知ると、APは、STAからの呼出を適切にルートするために、緊急呼出センターへのリンクを確立する必要がある。緊急呼出をAPから呼出センターに届けるいくつかの可能な転送メカニズムがある。例えば、APがゲートウェイと通信して、それを呼出センターにリンクすることができる。
【0076】
緊急ネットワークノードの概念を拡張して、「マンインザループ」(man-in-the-loop)能力を有する緊急応答オペレーションセンターを含むことができる。緊急ネットワークノードは、拡張サービスセット(ESS)またはインフラストラクチャアプリケーションに仕立てられたネットワークであろう。例えば、大学構内において、指定された緊急ネットワークノードは、構内警備員部門であろう。別の例として、製造工場においては、緊急ネットワークノードは警備員室であろう。緊急ネットワークノードは、VoIP呼出を受信し、呼出情報をログし、呼出を選別し、次に公衆電話交換網(PSTN)に緊急呼出をかけて、適切な機関に警報を出すオペレータを含むであろう。
【0077】
緊急ネットワークノードの概念をさらに拡張して、PSTNへの直通ラインによる自動化ノードを含むことができる。自動化ノードは音声回線ブリッジとして動作して、電話をかけ、ワイヤレスの発呼者をPSTN緊急センターに接続するであろう。
【0078】
緊急ネットワークノードへの接続のための方法を拡張して、認証、許可、またはセキュリティ機能なしに呼出をルートし、処理する能力を含むことができるであろう。これによりワイヤレスの発呼者と緊急ネットワークノードとの間の直接的な暗号化されない接続またはトンネル化接続が可能となるであろう。
【0079】
緊急ネットワークノードの機能を拡張して、呼出処理、呼出ハンドオフ、およびローミングの調整を含むことができるであろう。この機能が隣りのAP(ワイヤレス呼出をサービスしているAPに隣接するAP)におけるリソースを予め許可して、発呼者が、APの境界を横切って移動するときにワイヤレス接続を失うことなく、新規の緊急呼出を再確立する必要なく、ローミングすることができ、したがって、同じ緊急事態に関し重複呼出を排除することができるであろう。一実装方法において、ハンドオフが完了した後に新しいAPが中断なく緊急呼出を続けることができるように、上述されたように緊急IEを収容するMACフレームを使用することができるであろう。
【0080】
IV.相互作用(Interworking)
相互作用は、ネットワーク側の構成要素が相互作用する方法に関連し、また緊急呼出を取り扱う際に、特に緊急呼出が完了されるために異なったネットワークタイプを越えねばならない場合に重要である。この問題の1つの解決法は、新規ユーザがシステムに入るときその緊急呼出能力を示すということである。集中化されたデータベースはその新規ユーザの情報により更新され、その新規ユーザが緊急呼出をかける場合この情報が容易に利用可能であり、そうでなければネットワークにわたってこの情報を交換しなければならないことにより、呼出を完了するために要求されるであろう待ち時間を低減する。位置情報については、緊急呼出能力情報をバックグラウンドで自動的に更新して、絶えず更新された情報を提供することができる。
【0081】
実施形態
1.ワイヤレスローカルエリアネットワークにおいて緊急呼出をサポートするための方法であって、アクセスポイント(AP)の緊急呼出能力についてAPによりアドバタイズするステップを備えることを特徴とする方法。
2.アドバタイズするステップは、APが緊急呼出を受信する能力があるというインディケータを提供することと、緊急呼出をかけているステーションが、それ自体を構成して緊急呼出をAPに通信することができるようにパラメータを提供することとを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
3.アドバタイズするステップは、ビーコンフレームを使用してAPの緊急呼出能力を定期的に送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
4.ビーコンフレームは、APの緊急呼出能力を収容する拡張可能な能力情報要素を含むことを特徴とする実施形態3に記載の方法。
5.アドバタイズするステップは、プローブ応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
6.アドバタイズするステップは、アソシエーション応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
7.アドバタイズするステップは、再アソシエーション応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
8.アドバタイズするステップは、認証応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
9.アドバタイズするステップは、再認証応答フレームを使用してAPの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
10.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、ステーションの緊急呼出能力についてのステーションによりアクセスポイント(AP)にアナウンスするステップを備えることを特徴とする方法。
11.アナウンスするステップは、情報要素を使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
12.アナウンスするステップは、既存の情報要素にビットフラグを追加してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
13.アナウンスするステップは、アソシエーション要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
14.アナウンスするステップは、再アソシエーション要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信するためにことを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
15.アナウンスするステップは、認証要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
16.アナウンスするステップは、再認証要求フレームを使用してステーションの緊急呼出能力を送信することを含むことを特徴とする実施形態10に記載の方法。
17.WLAN上の任意のデバイスによってアクセス可能な位置にステーションの緊急呼出能力を格納するステップをさらに備える実施形態10に記載の方法。
18.格納するステップは、WLANと他のネットワークタイプの間で相互作用させて緊急呼出をサポートすることを可能とすることを特徴とする実施形態17に記載の方法。
19.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、APにより他の呼出を許可するために要求される認証手順を、緊急呼出をかけているステーションが行うことを要求することなく、緊急呼出をAPにより許可するステップと、緊急呼出に関連する設定をステーションに提供してステーションがWLANにアクセスすることを可能とするステップとを備えることを特徴とする方法。
20.緊急呼出に関連する設定は、緊急呼出アクセス符号を含むことを特徴とする実施形態19に記載の方法。
21.緊急呼出に関連する設定は、緊急呼出セキュリティキーを含むことを特徴とする実施形態19または20に記載の方法。
22.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、APにより他の呼出を許可するために要求される認証手順を、緊急呼出をかけているステーションが行うことを要求することなく、緊急呼出をAPにより許可するステップと、緊急呼出を緊急呼出センターにルートするステップとを備えることを特徴とする方法。
23.ルートするステップは、準静的なルーティングを行うステップを含み、これによりすべての緊急呼出が緊急呼出センターにルートされることを特徴とする実施形態22に記載の方法。
24.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、緊急基本サービスセット(BSS)識別子をステーションに提供するステップであって、緊急BSS識別子が緊急呼出のためにのみ使用されるステップと、ステーションにより緊急呼出を開始するステップであって、緊急呼出が緊急BSS識別子を含むステップとを備えることを特徴とする方法。
25.提供するステップは、緊急BSS識別子をプローブ応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
26.提供するステップは、緊急BSS識別子をアソシエーション応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
27.提供するステップは、緊急BSS識別子を再アソシエーション応答フレームにおいてステーションに提供することを含むことを特徴とする実施形態24に記載の方法。
28.先の任意の実施形態によるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)において緊急呼出をサポートするための方法であって、WLAN上のステーションにより緊急呼出を開始するステップと、WLAN上のアクセスポイント(AP)により緊急呼出を受信するステップと、ステーションが緊急呼出を完了させるために充分な能力を有するかを判定するステップと、ステーションが緊急呼出を完了させるために充分な能力を有さない場合、インフラストラクチャネットワークの要素をプロキシとして動作させるステップとを備えることを特徴とする方法。
29.インフラストラクチャネットワークの要素は、専用ゲートウェイノードを含むことを特徴とする実施形態28に記載の方法。
30.インフラストラクチャネットワークの要素により緊急呼出に位置情報を追加するステップをさらに備えることを特徴とする実施形態28または29に記載の方法。
31.インフラストラクチャネットワークの要素によりWLAN上のトラフィックを監視するステップであって、それによりインフラストラクチャネットワークの要素がステーションのためにプロキシとして動作することができるように、インフラストラクチャネットワークの要素は、WLAN上のステーションの能力情報を知るステップをさらに備えることを特徴とする実施形態28〜30の1つに記載の方法。
【0082】
本発明の概念は、上で例証された特定の例を超えて拡張することができる。例えば、本発明は、メッシュネットワークおよびアドホックネットワークに拡張することができる。ここで説明された緊急呼出能力は、ネットワークのどの部分においても実装することができ、APに限定されない。例えば、これらの能力は、STAにおいて実装され、いくつかのAPにわたって分散され、アクセス制御装置において、または呼出サーバにおいて実装することができる。
【0083】
代替手段として、人間のユーザの代わりに、本発明は、WLANでの緊急の取り扱いに対するマシン対マシンの使用シナリオに拡張することができる。1つの可能性は、ホームセキュリティシステムにおいて802.11を使用すること、すなわちハードワイヤの電話回線(切断される可能性がある)の代わりにWLANを使用することであろう。この例において、WLANの緊急呼出を人間のユーザが発生させる代わりに、だれかが侵入したときに、ホームセキュリティシステムがセキュリティ呼出センターへ緊急呼出を自動的に発生する。あるいはまた、上述されたように、ホームセキュリティシステムが緊急SOSフレームの送出を開始することができよう。
【0084】
本発明の特徴および要素は、特定の組合せにおける好適な実施形態において説明されるが、各特徴または要素を、単独で(好適な実施形態の他の特徴および要素なしに)、または本発明の他の特徴および要素の有無に関わらず、様々な組合せにおいて使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイント(AP)において使用される方法であって、
第1の基本サービスセット識別子(BSSID)に関連付けるためのセキュリティクレデンシャルを含む第1のビーコンフレームを送信するステップと、
第2のBSSIDに関連付けするための緊急呼出セキュリティクレデンシャルを含む第2のビーコンフレームを送信するステップと、
アソシエーションメッセージを受信するステップと、
前記受信したアソシエーションメッセージが前記第2のBSSIDを含むという条件で前記APへのアクセスを認可するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記受信したアソシエーションメッセージが、正当なセキュリティクレデンシャルを含むとの判定に応答して、ステーション(STA)へのアクセスを認可するステップと、
該受信したアソシエーションメッセージが第2のBSSIDを含むとの判定に応答して、前記STAへの前記緊急呼出に対するアクセスを認可するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記APの緊急呼出能力に関する表示を送信するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記APの緊急呼出能力がアクティブであることに関する表示を送信するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項1】
アクセスポイント(AP)において使用される方法であって、
第1の基本サービスセット識別子(BSSID)に関連付けるためのセキュリティクレデンシャルを含む第1のビーコンフレームを送信するステップと、
第2のBSSIDに関連付けするための緊急呼出セキュリティクレデンシャルを含む第2のビーコンフレームを送信するステップと、
アソシエーションメッセージを受信するステップと、
前記受信したアソシエーションメッセージが前記第2のBSSIDを含むという条件で前記APへのアクセスを認可するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記受信したアソシエーションメッセージが、正当なセキュリティクレデンシャルを含むとの判定に応答して、ステーション(STA)へのアクセスを認可するステップと、
該受信したアソシエーションメッセージが第2のBSSIDを含むとの判定に応答して、前記STAへの前記緊急呼出に対するアクセスを認可するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記APの緊急呼出能力に関する表示を送信するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記APの緊急呼出能力がアクティブであることに関する表示を送信するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−199988(P2012−199988A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126293(P2012−126293)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2011−182983(P2011−182983)の分割
【原出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2011−182983(P2011−182983)の分割
【原出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】
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