説明

ワイヤレス送信器

【課題】 低コストでありながら、内部への水分の浸入を確実に防止することができるワイヤレス送信器を提供する。
【解決手段】 ワイヤレス送信器は、本体部11と押しボタン部材12とによって形成される内部空間に、少なくとも当該押しボタン部材12の操作にともないオン状態に切り替えるスイッチ24が実装された基板21と、本体部11と接合して押しボタン部材12と基板21との間に当該基板21の全体を覆うように介設された中カバー部材22とを備える。中カバー部材22は、所定の防水性を有する基体26の最上面に、押しボタン部材12を上方に付勢するとともに、当該押しボタン部材12を上方に付勢する弾性体としてのバネ27、突起受け部27Aが当該基体26と一体成型されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、客席等に設置して従業員等の呼び出しを行うワイヤレス送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲食店等においては、顧客に対する従業員の迅速な応対を目的として、客席の卓上毎に、所定の押しボタンの押下に応じて呼出信号を送信するワイヤレス送信器を設け、このワイヤレス送信器からの呼出信号を所定のワイヤレス受信器によって受信することにより、呼び出しがあった旨を従業員に通知するワイヤレスコールシステムが使用されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
飲食店等のサービス提供者は、このようなワイヤレスコールシステムを利用することにより、最低限、顧客からの要求があった場合に接客等の各種サービスを提供すればよいため、必要以上に従業員を雇うことを回避することができ、経営上の無駄なコストを削減することができる。また、従業員が、顧客の要求に迅速に対応することが可能となることから、来店した顧客のサービスに対する満足度が向上し、営業上の大きなメリットを獲得することができる。
【特許文献1】特開平9−212754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したワイヤレスコールシステムに使用されるワイヤレス送信器は、客席の卓上に載置されて使用されるものである。そのため、ワイヤレス送信器は、顧客による飲食等の動作に起因して生じる不都合に対する耐性を高める必要がある。
【0005】
しかしながら、従来のワイヤレス送信器においては、顧客が卓上で飲食物や調味料等を溢した場合等には、押しボタンの摺動部位等から水分が浸入し、内部に設けられた基板が腐食してしまうという問題があった。また、このような問題に対応するために、弾性を有するシート材等の別部材を設けることによって基板の防水を図ることも考えられるが、かかる別部材を設けた防水構造とした場合には、別部材を設けることによる製造コストの高騰を招来するという他の問題が生じることになる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、低コストでありながら、内部への水分の浸入を確実に防止することができるワイヤレス送信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワイヤレス送信器は、本体部と押しボタン部材とによって形成される内部空間に、少なくとも当該押しボタン部材の操作にともないオン状態に切り替えるスイッチが実装された基板と、本体部と接合して押しボタン部材と基板との間に当該基板の全体を覆うように介設された中カバー部材とを備える。そして、本発明に係るワイヤレス送信器においては、中カバー部材として、所定の防水性を有する基体の最上面に、押しボタン部材を上方に付勢するとともに、当該押しボタン部材の押下操作をスイッチに伝達するための弾性体としてのバネが当該基体と一体成型されたものを用いることで、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤレス送信器によれば、中カバー部材によって基板の全体を覆うことにより、基板への水分の浸入を確実に防止することができる。また、本発明に係るワイヤレス送信器においては、基体とバネとが一体成型された中カバー部材を用いることから、別部材としてのバネを設ける必要がなく、低コストでありながら、高い防水性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[実施形態に係るワイヤレス送信器の概略構成]
この実施形態に係るワイヤレス送信器は、図1(a)乃至図1(c)に示すように、略楕円状の底面を有するドーム状の筐体によって外観が形成されている。この筐体は、下部を形成する本体部11と、この本体部11の上面を覆うように配設された押しボタン部材12とに大別されて構成される。
【0011】
このようなワイヤレス送信器は、操作者が押しボタン部材12を押下操作するのに応じて、当該ワイヤレス送信器を識別するための識別情報を含む無線信号を所定のワイヤレス受信器に対して送信することにより、操作者が従業員等を呼んでいる旨を知らせる。また、ワイヤレス送信器は、押しボタン部材12が押下されたことを操作者自身が確認できるように、当該押しボタン部材12が押下操作されるのに応じて、所定の通知音を出力したり、所定の光源による点灯動作を行ったりすることが可能に構成される。
【0012】
[実施形態に係るワイヤレス送信器の詳細構成]
このようなワイヤレス送信器は、具体的には、図2に分解斜視図、及び図3に図2中X−X断面図を示すように構成される。
【0013】
本体部11は、後述する基板21を支持するベース部材13を備える。このベース部材13の底部は、当該ワイヤレス送信器の駆動電力を供給する一次電池14が装着される電池ケースとして構成され、この電池ケースは、所定の蓋部材15が取り付けられることによって閉塞される。また、このベース部材13には、支持している基板21への水分の浸入を防止するために、後述する中カバー部材22との接合部の内側近傍領域であって基板21の主面よりも大きい領域の周囲にわたって、凸状の防水壁16が設けられている。
【0014】
また、押しボタン部材12は、凸曲面状の主面を有し、本体部11に対して摺動するように当該本体部11と係合することにより、当該本体部11の上面を覆いつつ押下可能に構成される。
【0015】
このような本体部11と押しボタン部材12とによって形成される内部空間には、押しボタン部材12が押下操作されるのに応じて無線信号を送信する電子部品等が実装された基板21と、この基板21の全体を覆うように配設された中カバー部材22とが収納されている。
【0016】
基板21は、ベース部材13に設けられたネジ穴17に挿入される所定のネジ23等を介して、ベース部材13に取り付けられる。ここで、ベース部材13には、基板21を支持するための基板支持部材18が設けられている。基板21は、この基板支持部材18により、ベース部材13と中カバー部材22との接合部よりも高い位置に支持される。
【0017】
また、基板21には、少なくともスイッチ24が実装されている。このスイッチ24は、押しボタン部材12が押下操作されるのに応じて、オン状態に切り替えられる。ワイヤレス送信器は、このスイッチ24がオン状態に切り替えられるのに応じて、電池ケースに装着された一次電池14から供給される駆動電力に基づいて、無線信号の送信を行うとともに、所定の通知音の出力や光源による点灯動作等を行う。なお、基板21は、このスイッチ24が押しボタン部材12の主面略中央に位置するように、ベース部材13に取り付けられる。
【0018】
中カバー部材22は、所定のネジ25等を介して本体部11におけるベース部材13と接合することにより、押しボタン部材12と基板21との間に当該基板21の全体を覆うように介設される。この中カバー部材22は、所定の防水性を有する基体26と、この基体26の最上面に当該基体26と一体成型された渦巻状のバネ27と、バネ27の渦巻き中心位置にバネ27とともに一体成型され、バネ27の付勢力を伝える突起受け部27Aとからなり、通常時は、このバネ27によって突起受け部27Aを介して押しボタン部材12を上方に付勢している。
【0019】
そして、中カバー部材22は、押しボタン部材12が押下操作されるのに応じて、当該押しボタン部材12の裏面に設けられた突起12aによって突起受け部27Aを下方に押下することにより、突起受け部27Aがバネ27の付勢力に抗して下方に変位し、基板21上に実装されたスイッチ24に当接するように動作する。また、中カバー部材22は、押しボタン部材12の押下が解除されるのに応じて、バネ27の付勢力によって突起受け部27Aを上方に変位させることにより、スイッチ24から離れるように動作する。すなわち、ワイヤレス送信器においては、押しボタン部材12を上方に付勢するとともに、当該押しボタン部材12の押下操作をスイッチ24に伝達するための弾性体として、中カバー部材22とは別個のバネ部材を設けるのではなく、当該中カバー部材22と一体成型されたバネ27、突起受け部27Aを設けている。
【0020】
このような構造からなるワイヤレス送信器においては、押しボタン部材12が押下操作されるのに応じて、基板21の全体を覆う中カバー部材22にバネ27とともに一体成型された突起受け部27Aが下方に変位し、変位した突起受け部27Aによってスイッチ24を押下することにより、当該スイッチ24がオフ状態からオン状態へと切り替わる。これにより、ワイヤレス送信器においては、無線信号の送信、通知音の出力、及び光源による点灯動作が行われる。
【0021】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、実施形態に係るワイヤレス送信器は、本体部11と押しボタン部材12とによって形成される内部空間に、少なくとも当該押しボタン部材12の操作にともないオン状態に切り替えるスイッチ24が実装された基板21と、本体部11と接合して押しボタン部材12と基板21との間に当該基板21の全体を覆うように介設された中カバー部材22とを備える。そして、このワイヤレス送信器においては、中カバー部材22として、所定の防水性を有する基体26の最上面に、押しボタン部材12を上方に付勢するとともに、当該押しボタン部材12の押下操作をスイッチ24に伝達するための弾性体としてのバネ27、突起受け部27Aが当該基体26と一体成型されたものを用いる。
【0022】
これにより、このワイヤレス送信器においては、中カバー部材22によって基板21の全体を覆うことにより、基板21への水分の浸入を確実に防止することができる。また、ワイヤレス送信器においては、基体26とバネ27、突起受け部27Aとが一体成型された中カバー部材22を用いることから、別部材としてのバネを設ける必要がなく、低コストでありながら、高い防水性能を発揮することができる。
【0023】
また、このワイヤレス送信器においては、本体部11に、中カバー部材22との接合部の内側近傍領域であって基板21の主面よりも大きい領域の周囲にわたって防水壁16を設けていることから、より高い防水性能を実現することができる。
【0024】
さらに、このワイヤレス送信器においては、本体部11に、中カバー部材22との接合部よりも高い位置に基板21を支持するための基板支持部材18を設けていることから、より確実に基板21への水分の浸入を防止することができる。
【0025】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態として示すワイヤレス送信器の概略外観構成を示す(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図2】本発明の実施形態として示すワイヤレス送信器の詳細構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2中X−X断面図である。
【符号の説明】
【0027】
11 本体部
12 押しボタン部材
12a 突起
13 ベース部材
14 一次電池
15 蓋部材
16 防水壁
17 ネジ穴
18 基板支持部材
21 基板
22 中カバー部材
23,25 ネジ
24 スイッチ
26 基体
27 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に対して摺動するように当該本体部と係合し、押下操作可能に構成された押しボタン部材と、
前記本体部と前記押しボタン部材とによって形成される内部空間に収納され、少なくとも当該押しボタン部材の操作にともないオン状態に切り替えるスイッチが実装された基板と、
前記本体部と前記押しボタン部材とによって形成される内部空間に収納され、前記本体部と接合して前記押しボタン部材と前記基板との間に当該基板の全体を覆うように介設された中カバー部材とを備え、
前記中カバー部材は、所定の防水性を有する基体の最上面に、前記押しボタン部材を上方に付勢するとともに、当該前記押しボタン部材の押下操作を前記スイッチに伝達するための弾性体としてのバネが当該基体と一体成型されていること
を特徴とするワイヤレス送信器。
【請求項2】
前記本体部には、前記中カバー部材との接合部の内側近傍領域であって前記基板の主面よりも大きい領域の周囲にわたって防水壁が設けられていること
を特徴とする請求項1記載のワイヤレス送信器。
【請求項3】
前記本体部には、前記中カバー部材との接合部よりも高い位置に前記基板を支持するための基板支持部材が設けられていること
を特徴とする請求項1記載のワイヤレス送信器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−87229(P2007−87229A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276881(P2005−276881)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】