説明

ワイヤレス電子内視鏡システム

【課題】意識的な動作を行わずとも、確実に電子内視鏡の設定情報を入力することができるワイヤレス電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】ワイヤレス電子内視鏡システム2の電子内視鏡10、11は、操作部18にRFIDタグ38を備えている。RFIDタグ38には、電子内視鏡10、11で使用する電波の周波数などの設定情報が記憶されている。台車16の電子内視鏡10、11を吊り下げるためのハンガー21には、RFIDタグ38から設定情報を読み取るためのRFIDタグリーダ22が取り付けられている。RFIDタグリーダ22は、電子内視鏡10、11を吊り下げた際にRFIDタグ38と対面する部分に設けられている。プロセッサ装置12は、設定情報を受けて、周波数切り替え回路94で使用する電子内視鏡の電波の周波数に受信周波数を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を撮像して得られた画像データを、電子内視鏡とプロセッサ装置との間で無線通信にて遣り取りするワイヤレス電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、電子内視鏡を利用した医療診断が盛んに行われている。電子内視鏡の体腔内に挿入される挿入部の先端には、CCDなどの固体撮像素子や、体腔内を照明する照明部が内蔵されている。CCDから出力される撮像信号に対して、プロセッサ装置で各種信号処理を施すことで、体腔内の画像をモニタで観察することができる。
【0003】
普通、電子内視鏡とプロセッサ装置とは、信号ケーブルにより接続されているが、最近、信号ケーブルを取り除いた、いわゆるワイヤレス電子内視鏡システムも考案されている。このシステムでは、信号を電波に変調する変調部、および電波を送信する送信部を電子内視鏡に、電波を受信する受信部、および電波を元の信号に復調する復調部をプロセッサ装置にそれぞれ設け、電子内視鏡とプロセッサ装置との間で電波によって信号の遣り取りを行えるようにしている。
【0004】
ワイヤレス電子内視鏡システムは、電子内視鏡の使用時に、信号ケーブルによる操作の制約がなくなり、操作性が向上する。そのうえ、信号ケーブルを用いた従来の電子内視鏡システムでは、電子内視鏡側の患者回路とプロセッサ装置側の二次回路との間で約4kVの絶縁耐圧を維持することが必須となるが、ワイヤレス電子内視鏡システムでは、電子内視鏡とプロセッサ装置との間に信号ケーブルによる電気的接続が存在しないため、上記のように高い絶縁耐圧を維持する構成が不要となる。
【0005】
ところで、電子内視鏡システムは、実際には病院内の専用の処置室に複数台纏めて設置される。また、設備費を節約するために、用途や性能が異なる複数種類の電子内視鏡を一台のプロセッサ装置で扱うことが多い。このため、複数種類の電子内視鏡を個々に識別して管理する必要が生じる。特に、ワイヤレス電子内視鏡システムの場合、電子内視鏡同士の混信を防ぐためには、電子内視鏡毎に使用する電波の周波数を管理することは必須である。
【0006】
従来、このような設定情報の管理は、術者がコンピュータに入力するなどして手作業で行っていたが、一々手入力することは煩雑であり、誤った設定情報を入力するおそれもあった。このような背景を踏まえて、設定情報を入力する手間を省き、厳密な情報管理を達成するための様々な対策が講じられている(特許文献1〜3参照)。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、電子内視鏡の洗浄回数や使用来歴などの情報を記憶するトランスポンダ(無線通信を利用した非接触ID)を、電子内視鏡とプロセッサ装置とを繋ぐケーブルのコネクタ付近に取り付け、プロセッサ装置近傍に配した読取器で情報を読み取っている。
【0008】
特許文献2には、電子内視鏡やプロセッサ装置が載置されるカートの上部側方に、電子内視鏡に埋め込まれたRFIDタグの情報を読み取るRFID端末を設けた内視鏡システムが開示されている。
【0009】
特許文献3では、ワイヤレス電子内視鏡システムにおいて、使用する電波の周波数の情報を示すバーコードを電子内視鏡の操作部に設け、プロセッサ装置に接続されたバーコードリーダでバーコードの情報を読み取って、プロセッサ装置の受信周波数を設定する旨が記載されている。
【特許文献1】特開2001−327459号公報
【特許文献2】特開2005−095567号公報
【特許文献3】特開2001−353124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の発明では、電子内視鏡とプロセッサ装置とを繋ぐケーブルのコネクタ付近にトランスポンダを取り付けるため、ケーブルを有さないワイヤレス電子内視鏡システムには適用することができない。
【0011】
特許文献2、3に記載の発明では、RFID端末、またはバーコードリーダに情報を読み取らせるために、RFIDタグ、またはバーコードを、RFID端末、またはバーコードリーダにかざさなければならない。また、かざし方が不十分で読み取り不良が起こった場合、再度かざす動作をしなければならず、読み取り不良を検知する機構も必要となる。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、意識的な動作を行わずとも、確実に電子内視鏡の設定情報を入力することができるワイヤレス電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被検体内を撮像して得られた画像データを電波送信する電子内視鏡と、前記電子内視鏡から前記画像データを電波受信して、診断に供する内視鏡画像を生成するプロセッサ装置と、前記電子内視鏡を吊り下げるためのハンガーを有し、前記プロセッサ装置などが載置される台車とからなるワイヤレス電子内視鏡システムにおいて、前記電子内視鏡に設けられ、前記電子内視鏡に関わる設定情報を無線通信する第一無線通信手段と、前記電子内視鏡を吊り下げた際に前記第一無線通信手段と対面する前記ハンガーの部分に設けられ、前記設定情報を前記第一無線通信手段との間で無線通信する第二無線通信手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記第一、第二無線通信手段は、RFIDタグ、RFIDタグリーダであることが好ましい。この場合、前記RFIDタグは、前記RFIDタグリーダから供給される電力で動作することが好ましい。
【0015】
前記電子内視鏡に設けられ、前記電子内視鏡に内蔵された電力供給用の二次電池を充電するための電力を受電する受電手段と、前記ハンガーに設けられ、前記受電手段に電力を送電するための送電手段とを備えることが好ましい。
【0016】
この場合、前記受電手段、および前記送電手段は、電磁誘導を利用して非接触で電力の遣り取りを行うものであり、前記送電手段は、前記電子内視鏡を吊り下げた際に前記受電手段と対面する前記ハンガーの部分に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、前記受電手段、および前記送電手段は、電力とともに前記設定情報の遣り取りを行うものであり、前記第一、第二無線通信手段として兼用されていることが好ましい。
【0018】
前記設定情報は、前記電子内視鏡の型番、製造番号、前記電波の周波数、前記被検体内を撮像する撮像手段のスペック、前記内視鏡画像を表示する際のテンプレートのデータのうち、少なくともいずれか一つであることが好ましい。
【0019】
前記設定情報は、前記電波の周波数を少なくとも含み、前記電子内視鏡、または前記プロセッサ装置は、前記設定情報に応じて、前記電波の送信周波数、または受信周波数を切り替える周波数切り替え手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のワイヤレス電子内視鏡システムによれば、電子内視鏡の設定情報を無線通信する手段を台車のハンガーに設けるので、電子内視鏡をハンガーに掛けておくという無意識的な動作を利用して、設定情報を読み取らせる動作を術者に意識させずに、確実に設定情報を入力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1において、本発明のワイヤレス電子内視鏡システム2は、体腔内撮影用の電子内視鏡10、11、内視鏡画像を生成するプロセッサ装置12、内視鏡画像を表示するモニタ13、キーボード14、あるいはVTRなどの周辺機器15が、移動自在な台車16に一体的に載置されてなる。
【0022】
電子内視鏡10、11は、外形上は同様の構成を有し、患者の体腔内に挿入される挿入部17と、挿入部17の基端部分に連設された操作部18とを備えている(図2も参照)。電子内視鏡10、11は、互いに異なる周波数の電波19、20にて、プロセッサ装置12と信号の遣り取りを行う。また、電子内視鏡10、11は、撮影の対象とする被観察部位や撮影範囲など、その用途や性能が互いに異なるものが用意されている。電子内視鏡10、11のうち、いずれを使用するかは、キーボード14を操作することで選択することが可能となっている。
【0023】
電子内視鏡10、11は、台車16の側方に設けられた一対のハンガー21に操作部18を保持させることにより、挿入部17が下方に垂れ下がった状態でハンガー21に吊るされる。ハンガー21には、RFIDタグ(以下、単にタグと略す)38(図2、3参照)からデータを読み取るためのRFIDタグリーダ(以下、単にリーダと略す)22、および送電回路23(図4も参照)が設けられている。これらリーダ22、および送電回路23は、図示しない信号線でプロセッサ装置12に接続されている(図6参照)。なお、以下では、代表として電子内視鏡10の構成について説明する。
【0024】
図2において、挿入部17の先端には、体腔内撮影用のCCD73(図5参照)などが内蔵された先端部30が連設されている。先端部30の後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部31が設けられている。湾曲部31は、操作部18に設けられたアングルノブ32が操作されて、挿入部17内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部30が体腔内の所望の方向に向けられる。
【0025】
操作部18の下方には、水が貯留される貯水タンク33と、エアーが貯留されるエアーボンベ34とが内蔵されたカートリッジ35が着脱自在に取り付けられている。これら貯水タンク33、エアーボンベ34に貯留された水、エアーは、操作部18の送水・送気ボタン36の操作に連動して、挿入部17の内部に配設された送水パイプ、送気パイプを通って、先端部30に形成された噴射ノズル(図示せず)から観察窓76(図5参照)や体腔内に向けて噴射される。これにより、観察窓76の表面に付着した汚物などの除去や、体腔内への送気を行うことが可能となる。カートリッジ35は、電子内視鏡10を使用する際に、操作者の手の付け根が当接する位置に取り付けられており、電子内視鏡10の操作性を安定化させる役割も果たしている。なお、符号37は、注射針や高周波メスなどが先端に配された各種処置具が挿通される鉗子口である。
【0026】
操作部18には、前述のアングルノブ32や送水・送気ボタン36の他に、タグ38、および受電回路39が埋設されている。タグ38、および受電回路39は、電子内視鏡10をハンガー21に吊るした際に、リーダ22、および送電回路23と対面する位置に配されている。
【0027】
図3において、タグ38は、アンテナ50を介してリーダ22とデータの無線通信を行う無線通信回路51と、データを記憶するメモリ52と、これらを制御する制御回路53とを備えている。メモリ52には、電子内視鏡10の用途や性能を表す設定情報(型番、製造番号、電波19の周波数、CCD73のスペック、内視鏡画像をモニタ13に表示する際のテンプレートのデータなど)が記憶されている。タグ38の電源54は、アンテナ50が受信した電波から電磁誘導によって発電する。つまり、タグ38は、リーダ22から電力を受けて動作する、いわゆるパッシブ方式のタグからなる。
【0028】
図4において、受電回路39は、交流電圧が印加される送電回路23の送電コイル60からの誘導起電力を受けて、バッテリ84(図5参照)を充電するための電力を発生する受電コイル61を有し、送電回路23とともに周知の非接触充電器を構成している。なお、受電回路39に描かれた抵抗は、電子内視鏡10各部の負荷を表し、スイッチは、電子内視鏡10の電源スイッチを表す。
【0029】
図5において、CPU70は、電子内視鏡10全体の動作を統括的に制御する。CPU70には、電子内視鏡10の動作を制御するための各種プログラムやデータが記憶されたROM71が接続されている。CPU70は、ROM71から必要なプログラムやデータを読み出し、電子内視鏡10の動作制御を行う。
【0030】
CPU70には、タイミングジェネレータ(以下、TGと略す)72が接続されている。TG72は、CCD73、アナログフロントエンド(以下、AFEと略す)74、パラレル/シリアル変換部(以下、P/Sと略す)75に接続されており、これら各部にタイミング信号(クロックパルス)を送信する。CCD73、AFE74、およびP/S75は、TG72から送信されるタイミング信号に基づいて動作する。
【0031】
CCD73は、先端部30に設けられた観察窓76、および対物光学系77を介して入射する体腔内の像光を撮像する。CCD73は、例えばインターライン型のCCDからなり、複数の画素が配列された撮像面が表面に設けられたベアチップが用いられる。
【0032】
観察窓76、対物光学系77を介して入射した像光がCCD73の撮像面に結像されると、CCD73の各画素からこれに応じた撮像信号が出力される。AFE74は、CPU70の制御の下に、CCD73から入力された撮像信号に対して、相関二重サンプリング、増幅、およびA/D変換を施して、撮像信号をデジタルの画像データに変換する。P/S75は、AFE74から入力されるデジタルの画像データを、パラレルデータからシリアルデータに変換する。
【0033】
変調部78は、P/S75から出力されたシリアルデータに、例えば、4値PSK(QPSK)方式を用いてデジタル直交変調を施し、RF信号に変調する。送信部79は、変調部78で変調されたRF信号に応じた高周波電流を、給電器でアンテナ80に給電する。これにより、アンテナ80から電波19が発せられる。
【0034】
先端部30には、観察窓76の他に、照明窓81や鉗子出口(図示せず)が設けられている。照明窓81の奥には、体腔内照明用のLED82が配されている。LED82には、駆動部83が接続されている。駆動部83は、CPU70の制御の下に、LED82をオン/オフ駆動させる。LED82から発せられた光は、照明窓81を介して体腔内の被観察部位に照射される。なお、先端部30ではなく、操作部18の内部にLED82を配し、ライトガイドで先端部30に導光する構成としてもよい。
【0035】
操作部18の後部には、バッテリ84を着脱可能に収納するバッテリ収納室が設けられており、その内部にバッテリ84が接続されるコネクタ85が配されている。バッテリ84の電力は、CPU70により制御される電力供給部86から、電子内視鏡10の各部に供給される。
【0036】
図6において、CPU90は、プロセッサ装置12全体の動作を統括的に制御する。CPU90には、プロセッサ装置12の動作を制御するための各種プログラムやデータが記憶されたROM91が接続されている。CPU90は、このROM91から必要なプログラムやデータを読み出し、プロセッサ装置12の動作制御を行う。また、CPU90は、キーボード14からの操作入力信号に応じて、プロセッサ装置12の各部を動作させる。
【0037】
アンテナ92は、電子内視鏡10、11からの電波19、20を受信する。受信部93は、アンテナ92で受信された電波19、20をRF信号に変換して、適当な増幅率で増幅する。受信部93には、使用する電子内視鏡10、11に応じて、電波19、20の送信周波数に受信周波数を切り替える周波数切り替え回路94が設けられている。
【0038】
復調部95は、電波19、20を変換したRF信号に対して、例えばデジタル直交検波を施して、RF信号を電子内視鏡10、11で変調される前の画像データに復調する。画像処理部96は、CPU90の制御の下に、復調部95で復調された画像データに対して、γ補正、ホワイトバランス補正などの各種画像処理を施し、内視鏡画像や患者の個人情報、検査日などの文字情報のテンプレートへの付加などの表示制御を行う。画像処理部96で各種画像処理、および表示制御がされた画像データは、内視鏡画像としてモニタ13に表示される。
【0039】
リーダ22で読み取られたタグ38の設定情報は、CPU90の内蔵RAM(図示せず)に入力される。CPU90は、電子内視鏡10、11のうち、キーボード14で使用が選択された電子内視鏡の設定情報を内蔵RAMから読み出し、読み出した設定情報に基づいて、各部の動作を制御する。具体的には、周波数切り替え回路94の受信周波数を、使用が選択された電子内視鏡の電波の送信周波数に切り替える。また、使用が選択された電子内視鏡の型番、CCDのスペック、あるいは内視鏡画像を表示する際のテンプレートのデータなどに応じて、画像処理部96で行う画像処理、表示制御の内容を変更する。
【0040】
上記のように構成されたワイヤレス電子内視鏡システム2で患者の体腔内を観察する際には、プロセッサ装置12などの電源を投入し、キーボード14を操作して、電子内視鏡10、11のうち、使用する電子内視鏡(ここでは説明の便宜上、電子内視鏡10とする)を選択して、その電源を投入する。そして、電子内視鏡10をハンガー21から外して、挿入部17を体腔内に挿入し、体腔内をLED82で照明しながら、CCD73によって得られた内視鏡画像をモニタ13で観察する。
【0041】
プロセッサ装置12の電源が投入されると、リーダ22が駆動され、電子内視鏡10、11のタグ38の設定情報が読み取られる。リーダ22で読み取られた設定情報は、CPU90に入力される。また、使用が選択されなかった電子内視鏡(この場合は電子内視鏡11)が吊るされている側の送電回路23が駆動され、電子内視鏡11の受電回路39に電力が供給される。これにより、電子内視鏡11のバッテリ84が充電される。
【0042】
観察窓76、対物光学系77を介して入射した体腔内の像光は、CCD73の撮像面に結像され、これによりCCD73から撮像信号が出力される。CCD73から出力された撮像信号は、AFE74で相関二重サンプリング、増幅、およびA/D変換が施され、デジタルの画像データに変換される。
【0043】
AFE74から出力されたデジタルの画像データは、P/S75によりシリアルデータに変換される。P/S75から出力されたシリアルデータは、変調部78でデジタル直交変調が施され、RF信号となる。RF信号は、送信部79を介してアンテナ80から電波19として発せられる。
【0044】
一方、プロセッサ装置12では、電子内視鏡10のタグ38から読み取った設定情報に基づいて、CPU90により周波数切り替え回路94の受信周波数が電波19の周波数に切り替えられる。電波19がアンテナ92で受信されると、受信部93で電波19がRF信号に変換され、増幅される。そして、復調部95で、受信部93からのRF信号にデジタル直交検波が施され、RF信号が変調部78で変調される前の画像データに復調される。
【0045】
復調部95で復調された画像データは、CPU90の制御の下に、画像処理部96で電子内視鏡10のタグ38の設定情報に応じた画像処理、および表示制御が行われ、モニタ13に内視鏡画像として表示される。
【0046】
電子内視鏡10を使用しているときに、キーボード14が操作されて、電子内視鏡11が使用する電子内視鏡として選択された場合は、電子内視鏡11のタグ38から読み取った設定情報に基づいて、周波数切り替え回路94の受信周波数が電波19の周波数から電波20の周波数に切り替えられる。また、電子内視鏡11の設定情報に応じた画像処理、および表示制御が行われ、モニタ13の表示が電子内視鏡11用に変更される。
【0047】
以上説明したように、電子内視鏡10、11が吊るされるハンガー21にリーダ22を設けるので、設定情報を読み取らせる作業を術者が意識的に行うことなく、設定情報を読み取ることができる。また、電子内視鏡10、11を吊り下げた際にリーダ22と対面するハンガー21の部分にタグ38を設けるので、読み取り不良を防止することができる。
【0048】
設定情報の遣り取りにリーダ22およびタグ38を用いるので、バーコードなどに比して大量の情報を一度に送信することが可能となる。また、タグ38にパッシブ方式を採用するので、電子内視鏡10、11側でタグ38に供給する電力を確保する必要がなく、電子内視鏡10、11の電力消費を抑えることができる。
【0049】
送電回路23、および受電回路39でバッテリ84を充電するので、充電器を別に用意する必要がなく、バッテリ84をコネクタ85から外して充電器にセットするなどの作業が省かれる。また、電子内視鏡を使用していない待機時間を無駄にすることがない。
【0050】
送電回路23、および受電回路39は、非接触でバッテリ84の充電を行う構成であるので、送電回路と受電回路の接点を設けて接触式で充電を行う構成に比べて、接点の腐食、接触不良、水滴の付着によるショートなどを防ぐことができるため有利である。
【0051】
設定情報として電波の周波数の情報を送受信し、これに基づいて周波数切り替え回路94で周波数を切り替えるので、電子内視鏡同士の混信を確実に防ぐことができる。
【0052】
上記実施形態では、電波19、20の周波数が予め決められた電子内視鏡10、11を用い、プロセッサ装置12の周波数切り替え回路94で、使用が選択された電子内視鏡の電波に合わせて受信周波数を切り替える態様を例示しているが、図7および図8に示す例のように、電子内視鏡およびプロセッサ装置を、複数の周波数チャンネルを持ち、複数の周波数の電波を送受信可能な構成とし、システムの使用に際して、電子内視鏡からプロセッサ装置に、現在使用していない空いている周波数のチャンネルを問い合わせ、空いているチャンネルの情報を設定情報として電子内視鏡で受け取り、そのチャンネルの電波で送受信を行ってもよい。
【0053】
図7において、電子内視鏡100は、受電回路39とバッテリ84の間にデータ分離回路101が設けられ、変調部78に周波数切り替え回路102が設けられている他は、図5に示す電子内視鏡10の構成と同様である。また、図8において、プロセッサ装置110は、送電回路23とCPU90の間にデータ重畳回路111が設けられている他は、図6に示すプロセッサ装置12の構成と同様である。なお、この場合も上記実施形態と同様に、電子内視鏡100と構成を同じくし、その用途や性能が異なる複数の電子内視鏡をプロセッサ装置110で扱うものとして、以下の説明を行う。
【0054】
データ重畳回路111は、キーボード14で使用が選択された電子内視鏡(ここでは説明の便宜上、電子内視鏡100とする)に該当する送電回路23の送電コイル60に与える交流電圧に、空きチャンネルの情報を重畳する。データ分離回路101は、受電回路39の受電コイル61で受けた信号を、電力成分とデータ重畳回路111で重畳されたデータ成分とに分離する。そして、電力成分をバッテリ84に供給し、データ成分を元の空きチャンネルの情報に復調して、これをCPU70に出力する。
【0055】
CPU70は、空きチャンネルの情報に基づいて、周波数切り替え回路102の周波数を切り替える。電子内視鏡100以外の電子内視鏡の使用が選択された場合も、上記と同様に空きチャンネルの情報を遣り取りし、電子内視鏡の送信周波数を切り替える。全てのチャンネルが占有されていた場合は、例えば、空きチャンネルの情報の代わりに、使用することができない旨の信号を送信する。なお、この場合、リーダ22、およびタグ38で遣り取りする設定情報は、上記実施形態で周波数の情報を除いた情報となる。このように、送電回路23、および受電回路39を、設定情報を無線通信する手段として兼用すれば、これらをより有効に活用することができる。
【0056】
上記実施形態では、使用する電子内視鏡の電源を手動で投入しているが、ハンガー21に吊り下げたときに電子内視鏡の電源を自動的にオフし、ハンガー21から外したときに電源が自動的に投入されるような構成としてもよい。
【0057】
なお、設定情報を無線通信する手段として、リーダ22、およびタグ38、送電回路23、および受電回路39を例に挙げて説明したが、赤外線通信などの他の無線通信手段を用いてもよく、無線通信の構成に本発明は特に限定されない。また、充電の構成も非接触でなくともよく、段落[0050]に記載の問題を十分考慮したうえで、接触式の充電器を用いてもよい。さらに、上記実施形態で挙げた設定情報、および設定情報に伴う周波数切り替えなどの制御は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない限り、如何様にも適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ワイヤレス電子内視鏡システムの概略構成を示す図である。
【図2】電子内視鏡の概略構成を示す図である。
【図3】RFIDタグの内部構成を示すブロック図である。
【図4】送電回路、および受電回路の回路構成を示す図である。
【図5】電子内視鏡の内部構成を示すブロック図である。
【図6】プロセッサ装置の内部構成を示すブロック図である。
【図7】電子内視鏡の内部構成の別の態様を示すブロック図である。
【図8】プロセッサ装置の内部構成の別の態様を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
2 ワイヤレス電子内視鏡システム
10、11、100 電子内視鏡
12、110 プロセッサ装置
16 台車
21 ハンガー
22 RFIDタグリーダ(リーダ)
23 送電回路
38 RFIDタグ(タグ)
39 受電回路
70 CPU
73 CCD
84 バッテリ
90 CPU
94、102 周波数切り替え回路
101 データ分離回路
111 データ重畳回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内を撮像して得られた画像データを電波送信する電子内視鏡と、前記電子内視鏡から前記画像データを電波受信して、診断に供する内視鏡画像を生成するプロセッサ装置と、前記電子内視鏡を吊り下げるためのハンガーを有し、前記プロセッサ装置などが載置される台車とからなるワイヤレス電子内視鏡システムにおいて、
前記電子内視鏡に設けられ、前記電子内視鏡に関わる設定情報を無線通信する第一無線通信手段と、
前記電子内視鏡を吊り下げた際に前記第一無線通信手段と対面する前記ハンガーの部分に設けられ、前記設定情報を前記第一無線通信手段との間で無線通信する第二無線通信手段とを備えることを特徴とするワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記第一、第二無線通信手段は、RFIDタグ、RFIDタグリーダであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記RFIDタグは、前記RFIDタグリーダから供給される電力で動作することを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記電子内視鏡に設けられ、前記電子内視鏡に内蔵された電力供給用の二次電池を充電するための電力を受電する受電手段と、
前記ハンガーに設けられ、前記受電手段に電力を送電するための送電手段とを備えることを特徴とするワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記受電手段、および前記送電手段は、電磁誘導を利用して非接触で電力の遣り取りを行うものであり、
前記送電手段は、前記電子内視鏡を吊り下げた際に前記受電手段と対面する前記ハンガーの部分に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記受電手段、および前記送電手段は、電力とともに前記設定情報の遣り取りを行うものであり、前記第一、第二無線通信手段として兼用されていることを特徴とする請求項5に記載のワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記設定情報は、前記電子内視鏡の型番、製造番号、前記電波の周波数、前記被検体内を撮像する撮像手段のスペック、前記内視鏡画像を表示する際のテンプレートのデータのうち、少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のワイヤレス電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記設定情報は、前記電波の周波数を少なくとも含み、
前記電子内視鏡、または前記プロセッサ装置は、前記設定情報に応じて、前記電波の送信周波数、または受信周波数を切り替える周波数切り替え手段を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のワイヤレス電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−72518(P2009−72518A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246588(P2007−246588)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】