説明

ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス用保護部材

【課題】ワイヤーハーネスを保護しつつ、特定方向に曲げて経路規制できるようにすることを目的とする。
【解決手段】ワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネス本体部と、保護本体部32及び線状部材40を有する保護部材30とを備える。保護本体部32は、曲げ変形可能で、前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆うように構成される。線状部材40は、扁平な線状形状に形成されると共に前記保護本体部にその延在方向に沿って配設され、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後にワイヤーハーネス本体部の前記少なくとも一部及び保護本体部32を一定の形状に維持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両等においてワイヤーハーネスを保護しつつその経路を規制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、当該車両に搭載された各種電気部品を相互接続する配線材として、複数の電線を適宜束ねたワイヤーハーネスが配設されている。かかるワイヤーハーネスに対しては、保護チューブ或はプロテクタが装着されることがある。
【0003】
保護チューブは、コルゲートチューブ、可撓性樹脂チューブ或はゴムチューブ等の屈曲可能なチューブであり、ワイヤーハーネスに被せられた状態で用いられる。
【0004】
プロテクタは、ワイヤーハーネスを収容可能なケース形状等に形成された樹脂製の金型成形品であり、ワイヤーハーネスを収容した状態で車両に固定されて用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤーハーネスを車両に配索する際、ワイヤーハーネスと他の車両搭載部品との干渉を抑制するため、ワイヤーハーネスに対して経路規制が必要となる場合がある。
【0006】
しかしながら、上記保護チューブは、曲げ可能なチューブであるため、それ自体ではワイヤーハーネスの経路規制を行うことは難しい。
【0007】
プロテクタは、樹脂製の金型成形品であり、ある程度の剛性を有しているため、ワイヤーハーネスの経路規制を行うことができる。しかしながら、プロテクタを用いて経路規制を行う場合には、当該経路に応じた金型を設計、起工して、当該経路に応じた形状のプロテクタを製造する必要があるため、ワイヤーハーネスのコストアップを招く。
【0008】
ここで、保護チューブに沿って金属線等を配設し、金属線をワイヤーハーネス及び保護チューブと共に曲げ変形させれば、曲げ変形後の金属線の剛性によって、ワイヤーハーネス及び保護チューブを所定の曲げ形状に維持することができる。
【0009】
しかしながら、金属線の曲げ方向に関する自由度は高すぎるため、配索場所によっては、ワイヤーハーネスをうまく配設できない恐れがある。例えば、ワイヤーハーネスを平面的な配索場所に配索しようとする場合に、ワイヤーハーネスが3次元的に曲げってしまうと、ワイヤーハーネスは配索場所から浮いてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスを保護しつつ、主として特定方向に曲げて経路規制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスは、少なくとも1本の電線を有するワイヤーハーネス本体部と、曲げ変形可能に構成され、前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆う保護本体部と、扁平な線状形状に形成されると共に前記保護本体部にその延在方向に沿って配設され、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後に前記ワイヤーハーネス本体部の前記少なくとも一部及び前記保護本体部を一定の形状に維持する線状部材とを有する保護部材とを備える。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記保護本体部は、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成されたコルゲートチューブであり、前記コルゲートチューブに前記線状部材が埋設されている。
【0013】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記線状部材は、金属線とされている。
【0014】
また、上記課題を解決するため、第4の態様は、少なくとも1本の電線を有するワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護するワイヤーハーネス用保護部材であって、曲げ変形可能に構成され、前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆う保護本体部と、扁平な線状形状に形成されると共に前記保護本体部にその延在方向に沿って配設され、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後に前記ワイヤーハーネス本体部の前記少なくとも一部を一定の形状に維持する線状部材とを備える。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、保護本体部によってワイヤーハーネス本体部を保護することができる。また、線状部材は扁平な線状形状に形成されているため、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って線状部材を容易に塑性変形させることができ、異なる方向へは曲げ難い。このため、線状部材の扁平な方向に対して直交する平面に沿った特定方向には、線状部材と共に保護本体部及びワイヤーハーネス本体部を曲げることができる。そして、線状部材によって、保護本体部及びワイヤーハーネス本体部を曲げ後の一定形状に維持して経路規制することができる。
【0016】
第2の態様によると、保護本体部自体はコルゲートチューブにより形成されているため、容易に曲げ変形させることができる。このため、配索箇所に応じたワイヤーハーネスの変形を容易に行える。
【0017】
第3の態様によると、金属線によって経路規制を行うことができる。
【0018】
第4の態様によると、保護本体部によってワイヤーハーネス本体部を保護することができる。また、線状部材は扁平な線状形状に形成されているため、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って線状部材を容易に塑性変形させることができ、異なる方向へは曲げ難い。このため、線状部材の扁平な方向に対して直交する平面に沿った特定方向には、線状部材と共に保護本体部及びワイヤーハーネス本体部を曲げることができる。そして、線状部材によって、保護本体部及びワイヤーハーネス本体部を曲げ後の一定形状に維持して経路規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ワイヤーハーネスのうち保護部材の装着部分を示す概略斜視図である。
【図2】保護部材を示す概略部分正面図である。
【図3】ワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す説明図である。
【図4】変形例に係る保護部材を示す概略部分正面図である。
【図5】他の変形例に係る保護部材を示す概略斜視図である。
【図6】さらに他の変形例に係るシート状部材を示す概略斜視図である。
【図7】同上の変形例に係る保護部材を死す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態に係るワイヤーハーネス及びワイヤーハーネス用保護部材について説明する。本実施形態では、保護部材として一種のコルゲートチューブを用い、このコルゲートチューブに線状部材を埋設した形態について説明する。
【0021】
図1はワイヤーハーネス10のうち保護部材30の装着部分を示す概略斜視図であり、図2は保護部材を示す概略正面図であり、図3は同ワイヤーハーネス10を車両に配設固定した状態を示す説明図である。
【0022】
このワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、保護部材30とを備えている。
【0023】
ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。もっとも、ワイヤーハーネス本体部12は、必ずしも分岐している必要はないし、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネス本体部12に対して、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。このワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部分に保護部材30が装着される。なお、ワイヤーハーネス本体部12のうち保護部材30が装着される部分は、当該ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部分であればよい。
【0024】
保護部材30は、保護本体部32と、線状部材40とを備えている。保護本体部32は、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆うように構成されている。線状部材40は、保護部材30にその延在方向に沿って配設され、固定される。そして、線状部材40を曲げ変形させると、当該曲げ形状に応じてワイヤーハーネス本体部12及び保護本体部32が一定形状に維持され経路規制されるようになっている。
【0025】
より具体的には、線状部材40は、扁平な線状形状に形成されると共に保護本体部32にその延在方向に沿って配設されている。そして、線状部材40は、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後にワイヤーハーネス本体部12の前記少なくとも一部及び前記保護本体部を一定の形状に維持可能に構成されている。すなわち、線状部材40は、扁平な線状形状に形成されているため、その扁平な方向に対して直交する平面に沿っては容易に曲げて塑性変形できる(図1及び図2の矢符P参照)一方、それとは異なる方向、特に、前記平面に対して直交する方向に対しては、容易に曲げて塑性変形できないようになっている(図1及び図2の矢符Q参照)。つまり、線状部材40は、前記平面に沿った方向とは異なる方向よりも、前記平面に沿った方向へ容易に曲げて塑性変形できるようになっている。
【0026】
線状部材40は、少なくとも1本あればよく、複数であってもよい。本実施形態では、保護本体部32周りに線状部材40が1つ設けられている。なお、線状部材40を複数設ける場合、それぞれの扁平方向を同一方向に揃えて配設するとよい。
【0027】
また、線状部材40が、ワイヤーハーネス本体部12及び保護本体部32を曲げ変形後の形状に維持するためには、塑性変形による曲げ変形後にある程度の剛性を有している必要がある。通常、保護本体部32に沿って配設される1本又は複数本(本実施形態では1本)の線状部材40が全体として、曲げ変形後のワイヤーハーネス本体部12及び保護本体部32が原形状に戻ろうとする力に耐えてそれらを一定形状に維持し得る剛性を有しているようにするとよい。このように、線状部材40が塑性変形後に持つべき剛性は、線状部材40の材質、太さ、本数等によって調整され、規制対象となるワイヤーハーネス本体部12の太さ、電線本数、電線材質等、その規制形状(曲げ変形量)、保護本体部32の材質、太さ等に応じて、実験的、経験的に設定される。例えば、規制対象となるワイヤーハーネス本体部12が太く、また、電線本数が多いような場合には、曲げ変形後のワイヤーハーネス本体部12が元に戻ろうとする力が大きくなる。このような場合には、線状部材40として、より大きな剛性を持つ材質のもの、或は、太いものを用いる等すればよい。
【0028】
かかる線状部材40としては、鉄線、銅線、ステンレス線、或はこれらの合金線等の金属線、或は、塑性変形後にある程度の剛性を呈する樹脂等を、扁平な線状に形成したものを用いることができる。線状部材40の長手方向に対して直交する断面形状は、長方形状であってもよいし、或は、楕円状であってもよい。ここでは、線状部材40の長手方向に対して直交する断面形状が長方形状である例で説明する。
【0029】
保護本体部32は、曲げ変形可能に構成されており、前記ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆う筒状に形成されている。ここでは、保護本体部32は、大径部32aと小径部32bとが段部を介して交互に連なる筒部材、いわゆるコルゲートチューブによって構成されている。かかる保護本体部32は、大径部32aと小径部32bの間の段部等で、容易に弾性変形するため、全体として曲げ変形容易な性質を有している。なお、保護本体部32は、作業者等の人力によって曲げ変形できる程度の性質を有していればよい。
【0030】
また、保護本体部32の一側部が、その延在方向に沿って分断されており、その分断部分の一側縁部に係止突部34が形成され、分断部分の他側縁部に前記係止突部34に係止可能な係止部36が形成されている。係止突部34は、前記保護本体部32の分断部分の一側縁部より外周側に突出しつつその延在方向に沿って延びる突条形状に形成されている。係止部36は、前記保護本体部32の分断部分の他側縁部より前記一側縁部の外周側に向けて延出すると共にその先端部で保護本体部32の内周側に延出する形状に形成されており、その内周側に前記係止突部34を収容可能な係止凹部36aが形成されている。そして、係止突部34の外周側に係止部36を被せるようにして、係止突部34を前記係止凹部36a内に収容させることで、係止突部34と係止部36とが係止し、保護本体部32の分断部分が閉じた状態に維持されるようになっている。
【0031】
線状部材40は、保護本体部32に対して次のようにしてその延在方向に沿った姿勢で埋設されている。すなわち、上記係止突部34は、保護本体部32の他の部分とは異なり、大径部32a、小径部32bの形状とは関係なく、その長手方向に沿って一定の厚みを有する突条形状に形成されている。そして、この係止突部34内にその長手方向に沿って線状部材40が埋設されている。ここでは、線状部材40は、全体が隠れるように係止突部34内に埋設されているが、線状部材40の一部が係止突部34から露出していてもよい。
【0032】
かかる線状部材40は、例えば、保護本体部32を金型成型する際にインサート成形することによって、係止突部34内に埋設することができる。また、例えば、溶融樹脂を筒状形状に押出し、これをバキューム金型等でバキュームして保護本体部32を成型するような場合には、線状部材40を、筒状形状に押出される溶融樹脂とともに押出して、当該線状部材40を筒状形状に押出される溶融樹脂に埋設し、これをバキューム成型するとよい。
【0033】
上記のように構成された保護部材30は、次のようにしてワイヤーハーネス本体部12に取付固定される。すなわち、保護部材30の分断部分で当該保護部材30を割開くようにして、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を保護部材30内に配設する。この後、係止突部34と係止部36とを係止させて、保護部材30の分断部分を閉じる。なお、この後、保護部材30の外周に結束バンドを取付、或は、粘着テープを巻付けてもよい。この際、好ましくは、保護部材30の端部と当該端部から延出するワイヤーハーネス本体部12の一部分にも粘着テープ等を巻付けて、保護部材30とワイヤーハーネス本体部12の一部分とをその延在方向に沿って位置決め固定する。また、必要に応じて、保護部材30の外周に、車体60への固定用の車両固定部品を取付固定する。車両固定部品は、例えば、車体への取付孔に挿入固定可能なクランプ部分と、保護部材30の外周部に巻付固定可能な結束バンド部分とが一体化された部品である。
【0034】
これにより、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部に保護部材30が取付けられたワイヤーハーネス10が製造される。
【0035】
上記ワイヤーハーネス10は、製造段階では、製造工程をシンプルにするため、保護部材30を取付けた部分を直線状の形態で製造することが好ましい。また、ワイヤーハーネス10を製造した後、車体に組付ける迄の保管、運搬段階では、ワイヤーハーネス10がなるべく嵩張らないようにして単位体積あたりの収容個数をなるべく大きくできるようにすることが好ましい。このため、保管、運搬段階でも、ワイヤーハーネス10のうち上記保護部材30を取付けた部分を直線状として、多数のワイヤーハーネス10を重ねて収容できるようにすることが好ましい。
【0036】
図3に示すように、ワイヤーハーネス10を車体60に組付ける際には、車体60の各部分62を避けたワイヤーハーネス10の配設経路に応じて、作業者が人力等でワイヤーハーネス10のうちの保護部材30の装着部分を曲げ変形させる。図3に示す例では、車体60における平面60aに沿って、かつ、車体60の部分62を避けるように、ワイヤーハーネス10のうちの保護部材30の装着部分が緩やかなS字状を描くように曲げられている。この際、線状部材40の扁平方向を前記平面60aに対して直交する姿勢とした状態で、上記曲げ変形作業を行う。すると、線状部材40は、その扁平な方向と直交する方向、即ち、前記平面60aに沿った方向で最も容易に曲げ変形でき、前記平面60aに対して直交する方向へは変形し難い。このため、線状部材40を主として前記平面60aに沿って曲げることができ、その結果、ワイヤーハーネス本体部12及び保護本体部32も主として前記平面60aに沿って曲げることができる。従って、車体60の平面60a上でワイヤーハーネス本体部12及び保護部材30を曲げる際に、なるべく特定平面内で曲げることができ、ワイヤーハーネス10が前記平面60aから部分的に浮いた状態になり難い。
【0037】
そして、上記ワイヤーハーネス10を、車体固定用部品等を介して車体60に固定すると、ワイヤーハーネス10の車体60への取付作業が終了する。この固定状態では、ワイヤーハーネス10のうち保護部材30が取付けられた部分は、線状部材40によって一定の曲げ状態に維持されているため、車体60の部分62への接触が抑制される。また、ワイヤーハーネス本体部12のうち保護部材30が取付けられた部分は、当該保護本体部32によって囲まれていることによっても、直接的な車体60の部分62への接触が抑制されている。
【0038】
以上のように構成されたワイヤーハーネス10及び保護部材30によると、保護本体部32によってワイヤーハーネス本体部12を保護することができる。また、線状部材40は、扁平な線状形状に形成されているため、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って容易に塑性変形でき、異なる方向へは曲げ難い。このため、線状部材40の扁平な方向に対して直交する平面に沿った特定方向には、線状部材40と共に保護本体部32及びワイヤーハーネス本体部12を曲げることができる。これにより、本ワイヤーハーネス10を平面60aに沿って配設する場合、ワイヤーハーネス10が部分的に平面60aから浮き難くなる。これにより、ワイヤーハーネス10をよりコンパクトなスペースに収めることができると共に、車体60との断続的な接触によるガタガタ音等を抑制できる。
【0039】
また、保護本体部32自体は大径部32aと小径部32bとが段部を介して交互に連なるコルゲートチューブによって形成されているため、容易に曲げ変形することができる。このため、ワイヤーハーネス本体部12及び保護部材30を曲げ変形させる際に、保護本体部32が邪魔になり難く、配索箇所に応じた曲げ変形作業を容易に行える。
【0040】
なお、線状部材40が埋設される部分は、上記実施形態で説明した例に限られない。例えば、図4に示すように、係止突部34の基端側に溝38gを介して厚肉部38を形成し、この厚肉部38に線状部材40を埋設してもよい。なお、厚肉部38は、大径部32aと小径部32bとの形状に関係無く、保護本体部32の長手方向に沿って一定の厚みを有する形状に形成されている。また、上記係止突部34に線状部材40を埋設する製法と同様の方法によって、線状部材40を厚肉部38に埋設することができる。
【0041】
この場合でも、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
なお、係止突部34及び係止部36が設けられた部分は、本来的に伸縮変形し難い部分であるため、これらの係止突部34及び係止部36に、或は、その周辺部に線状部材40を埋設したとしても、保護本体部32の曲げ性に対する影響は小さい。
【0043】
もっとも、線状部材40は、保護本体部32のうち係止突部34及び係止部36が設けられた部分以外の部分に埋設されてもよい。
【0044】
また、保護本体部に対して線状部材を配設する構成は上記例に限られない。
【0045】
例えば、図5に示す変形例のように、保護本体部32に対応する保護本体部32Bの外周にその長手方向に沿って線状部材40を配設した状態で、粘着テープTを巻付けて、線状部材40を保護本体部32Bに取付けるようにしてもよい。この場合、線状部材40の平坦な主面が保護本体部32Bの外周面に対して押付けられるため、保護本体部32Bに対して線状部材40は一定姿勢に維持される。
【0046】
その他、保護本体部に線状部材を挟持可能な挟持部を形成する構成、結束バンドによって保護本体部及び線状部材を結束固定する構成等であってもよい。要するに、保護本体部に対して線状部材を一定の姿勢で取付固定できる構成であればよい。また、これらの場合には、係止突部34及び係止部36は無くてもよい。図5に示す保護本体部32Bでも、係止突部34及び係止部36は省略され、代りに単なるスリットSが形成されている。
【0047】
また、保護本体部は、上記のようなコルゲートチューブである必要はなく、曲げ変形可能で、かつ、ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆う構成であればよい。
【0048】
例えば、図6及び図7に示すように、シート状部材130aをワイヤーハーネス本体部12に巻付けて保護本体部132を形成してもよい。
【0049】
すなわち、シート状部材130aは、ポリ塩化ビニル或はウレタン等で形成された曲げ変形可能なシートである。シート状部材130aは、ワイヤーハーネス本体部12を少なくとも1周覆った状態で巻付可能な広がりを有している。ここでは、シート状部材130aは、方形シート状であるが、必ずしもその必要はなく、他の多角形或は円形シート状等であってもよい。また、シート状部材130aの一辺部分に線状部材40が埋設されている。シート状部材130aに線状部材40が埋設される構成は、例えば、シート状部材130aを押出成型する際に、当該シート状部材130aを形成する樹脂と共に線状部材40を押出すことによって実現できる。線状部材40は、シート状部材130aの一辺部分ではなく、中間部に埋設されてもよい。複数の線状部材40がシート状部材130aに埋設されていてもよい。
【0050】
また、上記シート状部材130aの他辺の一主面には、粘着層等の接合部130bが設けられている(図6で網線を付した領域参照)。そして、シート状部材130aの一辺に沿ってワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を配設した状態で、シート状部材130aの他辺側部分をワイヤーハーネス本体部12の当該部分に被せるようにして、シート状部材130aをワイヤーハーネス本体部12の前記部分に巻付ける。そして、接合部130bを、シート状部材130aの外周側の面に固着させると、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部を覆った状態で筒状を呈する保護本体部132が形成される。この保護本体部132と、上記線状部材40とによって保護部材130が構成される。なお、保護本体部132の外周に粘着テープ等を巻付けることで、保護本体部132の筒形状が維持されていてもよい。
【0051】
この変形例によっても、上記実施形態で説明したのと同様に、ワイヤーハーネス本体部12と線状部材40と保護本体部132とを所望の経路形状に応じて曲げ変形させ、その後、線状部材40の剛性によって、ワイヤーハーネス本体部12を曲げ変形後の形状に維持することができる。また、その際、主として線状部材40の扁平方向に対して直交する方向では容易に曲げ変形させることができ、他の方向へは曲げ変形を困難とすることで、主として特定の平面に沿って曲げ変形することができる。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、上記変形例で述べたように、上記線状部材40は、シート状部材130aに埋設されている必要はない。
【0053】
その他、保護本体部としては、柔軟な各種シートをワイヤーハーネス本体部に巻付ける構成、柔軟な各種チューブ内にワイヤーハーネス本体部を挿通させる構成、熱等による収縮チューブをワイヤーハーネス本体部周りで収縮させる構成等を用いることができる。
【0054】
これらの場合の線状部材の固定構成としては、上記したように、埋設、粘着テープによる構成、結束バンドを用いた構成等を採用するとよい。これらの場合でも、保護本体部と線状部材とを別体とした場合には、粘着テープ、結束バンド等の固定部材によって、線状部材を保護本体部の外面に押付ける等して、保護本体部に対して線状部材の姿勢が変らないようにするとよい。つまり、扁平な線状部材は、保護本体部自体に埋設するか、或は、扁平方向に沿った主面を保護本体部の内周面或は外周面等に押し当てつつ上記のような固定部材等で固定することで、保護本体部に対する姿勢を一定にすることができる。
【0055】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0056】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0057】
10 ワイヤーハーネス
12 ワイヤーハーネス本体部
30、130 保護部材
32、32B、132 保護本体部
32a 大径部
32b 小径部
40 線状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の電線を有するワイヤーハーネス本体部と、
曲げ変形可能に構成され、前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆う保護本体部と、扁平な線状形状に形成されると共に前記保護本体部にその延在方向に沿って配設され、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後に前記ワイヤーハーネス本体部の前記少なくとも一部及び前記保護本体部を一定の形状に維持する線状部材とを有する保護部材と、
を備えるワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記保護本体部は、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成されたコルゲートチューブであり、前記コルゲートチューブに前記線状部材が埋設されている、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記線状部材は、金属線である、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
少なくとも1本の電線を有するワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を保護するワイヤーハーネス用保護部材であって、
曲げ変形可能に構成され、前記ワイヤーハーネス本体部の少なくとも一部を覆う保護本体部と、
扁平な線状形状に形成されると共に前記保護本体部にその延在方向に沿って配設され、その扁平な方向に対して直交する平面に沿って塑性変形可能で、かつ、塑性変形後に前記ワイヤーハーネス本体部の前記少なくとも一部を一定の形状に維持する線状部材と、
を備えるワイヤーハーネス用保護部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59232(P2013−59232A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197046(P2011−197046)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】