説明

ワイヤーハーネス用クランプ

【課題】組み付け精度が得られ、ワイヤーハーネスを保護するための保護部材の使用量を減らすことができるワイヤーハーネス用クランプを提供する。
【解決手段】保持アーム20は、第1バンド部材21を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300に固定した状態で第1バンド部材21の位置が保持アーム20の長手方向Lに沿ってずれるのを阻止する第1移動阻止部301と、第2バンド部材22を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300に固定した状態で第2バンド部材22の位置が保持アーム20の長手方向Lに沿ってずれるのを阻止する第2移動阻止部302を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用クランプに関し、特にワイヤーハーネスの主電線束と、この主電線束から分岐した分岐電線束に固定して、ワイヤーハーネスを車体や機器などの装着対象物に対して組み付けるためのワイヤーハーネス用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネス用クランプは、ワイヤーハーネスの主電線束と、この主電線束から分岐した分岐電線束に固定して、ワイヤーハーネスを車体や機器などの装着対象物に対して組み付けるのに用いられる。ワイヤーハーネス用クランプは、基部と、この基部の両側に形成された左右の巻付バンド保持アームと、左右の巻付バンド保持アームにそれぞれスライド自在に装着された一対の装着部と、各装着部に固定された一対の巻付バンドとを有している。
【0003】
一対の巻付バンドは、主電線束と分岐電線束に巻き付けて、一対の巻付バンドは基部の穴にはめ込んで固定して、基部をワイヤーハーネスの外周部に組み付ける。そして、基部が車体や機器等の装着対象物に対して固定される。
【0004】
ワイヤーハーネスの主電線束の太さと分岐電線束の太さは、車体や機器等の装着対象物の種類に応じて多様になっている。このため、一対の巻付バンドがそれぞれ巻付バンド保持アームにおいてスライドして一対の巻付バンドの間隔を調整でき、ワイヤーハーネス用クランプは、どのような太さのワイヤーハーネスにも固定できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−84736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この種のワイヤーハーネス用クランプを使用する場合には、次のような問題がある。すなわち、ワイヤーハーネス用クランプの一対の巻付バンドの位置は、ワイヤーハーネスの分岐電線束の太さに応じて、それぞれ巻付バンド保持アームの長手方向に沿ってスライドして調整できることから、巻付バンドが自由に動いてしまい、ワイヤーハーネス用クランプをワイヤーハーネスに取り付ける際にずれてしまう。従って、ワイヤーハーネス用クランプの各巻付バンドは、ワイヤーハーネスに対して正確な位置に組み付けることができず、クランプの組み付け精度が得にくく、ワイヤーハーネスの製造効率が低下する。
【0006】
しかも、クランプの組み付け精度が得られないので、ワイヤーハーネスと、例えば自動車の車体のエッジやバリとの距離は、余計に多く採る必要があり、ワイヤーハーネスをエッジやバリにより損傷することから保護するための保護部材の使用量が増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、組み付け精度が得られワイヤーハーネスを保護するための保護部材の使用量を減らすことができるワイヤーハーネス用クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するために、本発明のワイヤーハーネス用クランプは、主電線束と前記主電線束から分岐した分岐電線束を有するワイヤーハーネスに固定して、前記ワイヤーハーネスを装着対象物に対して組み付けるためのワイヤーハーネス用クランプであって、
前記主電線束に配置される帯状の保持アームと、
前記保持アームに組み付けられて前記保持アームの長手方向に沿って移動可能であり、前記ワイヤーハーネスの前記主電線束に巻き付けるための第1バンド部材と、
前記保持アームに組み付けられて前記保持アームの長手方向に沿って移動可能であり、前記ワイヤーハーネスの前記主電線束に巻き付けるための第2バンド部材と、
前記保持アームに固定され前記第1バンド部材と前記第2バンド部材の間に配置されており、前記第1バンド部材の端部と前記第2バンド部材の端部をそれぞれはめ込んで固定するためのバンド固定部と、を備え、
前記保持アームは、
前記第1バンド部材を前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けて前記バンド固定部に固定した状態で前記第1バンド部材の位置が前記保持アームの長手方向に沿ってずれるのを阻止する第1移動阻止部と、
前記第2バンド部材を前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けて前記バンド固定部に固定した状態で前記第2バンド部材の位置が前記保持アームの長手方向に沿ってずれるのを阻止する第2移動阻止部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明のワイヤーハーネス用クランプは、好ましくは前記保持アームの前記第1移動阻止部と前記第2移動阻止部は、前記保持アームの長手方向に沿って配列された複数の突起部分であることを特徴とする。
【0010】
本発明のワイヤーハーネス用クランプは、好ましくは前記保持アームの前記第1移動阻止部と前記第2移動阻止部は、のこぎり波状に形成された複数の突起部分であり、前記第1移動阻止部の前記複数の突起部分の形状と前記第2移動阻止部の前記複数の突起部分の形状は、逆向きに形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のワイヤーハーネス用クランプは、好ましくは前記第1バンド部材は、前記保持アームを通して前記第1移動阻止部にかみ合わされる第1基部と、前記第1基部から形成され前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けられた状態で前記バンド固定部に対して固定される第1バンドとを有し
前記第2バンド部材は、前記保持アームを通して前記第2移動阻止部にかみ合わされる第2基部と、前記第2基部から形成され前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けられた状態で前記バンド固定部に対して固定される第2バンドとを有していることを特徴とする。
【0012】
本発明のワイヤーハーネス用クランプは、好ましくは前記第1基部と前記第2基部は、前記複数の突起部分にかみ合うかみ合い端部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のワイヤーハーネス用クランプは、好ましくは前記バンド固定部は、前記装着対象物にはめ込んで固定するためのはめ込み突起部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイヤーハーネス用クランプによれば、組み付け精度が得られワイヤーハーネスを保護するための保護部材の使用量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい第1の実施形態と、装着対象物の例を示す斜視図である。図2は、図1の第1バンド部材と第2バンド部材の形状例を示す一部省略して示す側面図である。図3は、ワイヤーハーネス用クランプをワイヤーハーネスに装着した状態を示す平面図である。図4は、ワイヤーハーネス用クランプの保持アームに対して第1バンド部材と第2バンド部材が移動阻止された状態例を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すワイヤーハーネス用クランプ10は、図3に例示するように、ワイヤーハーネス100に固定して、このワイヤーハーネス100を、図3に示すような装着対象物200に対して組み付けるためのクランプ部材である。ワイヤーハーネス100は、主電線束101と主電線束101から分岐した分岐電線束102を有する。装着対象物200としては、例えば自動車等の車両や、電子機器や電気機器および、それらを車両などに組み付けるためのブラケットなどである。
【0017】
図1に示すワイヤーハーネス用クランプ10は、帯状の保持アーム20と、第1バンド部材21と、第2バンド部材22と、はめ込み突起部23を有している。ワイヤーハーネス用クランプ10は例えば電気絶縁性を有しており、フレキシブルな材料であるプラスチックにより成形されている。
【0018】
図1の保持アーム20は、図3の主電線束101の長手方向Lに沿って配置され、図1に示すように幅Wに比べて厚みtが薄い帯状の部材であり、第1端部31と第2端部32を有している。はめ込み突起部23は、保持アーム20の一方の面24において、第1端部31と第2端部32の中央位置に突出して設けられている。図3に示すようにワイヤーハーネス用クランプ10の保持アーム20がワイヤーハーネス100の主電線束101に組み付けて固定された状態で、このはめ込み突起部23は、図3に示すように装着対象物200の穴201にはめ込んで取れないようになっている。これにより、ワイヤーハーネス用クランプ10は、ワイヤーハーネス100を装着対象物200に対して、確実かつ簡単に固定することができる。
【0019】
図1ないし図3を参照して、第1バンド部材21と第2バンド部材22の構造を説明する。図1と図2に示す第1バンド部材21と第2バンド部材22は、同じ構造を有している。図1に示すように、第1バンド部材21は、第1装着基部(第1基部に相当)51と第1バンド61を有している。
【0020】
第1装着基部51は貫通穴53を有しており、第1装着基部51はこの貫通穴53により保持アーム20の第1端部31からはめ込まれて保持アーム20の長手方向Lに沿って位置がスライド可能である。第1バンド61は、ワイヤーハーネス100の主電線束101と分岐電線束102に巻き付ける。第1バンド61には凹凸部63が形成されている。
【0021】
第2バンド部材22は、第2装着基部(第2基部に相当)52と第2バンド62を有している。第2装着基部51は貫通穴54を有しており、第2装着基部52はこの貫通穴54により保持アーム20の第2端部32からはめ込まれて保持アーム20の長手方向Lに沿って位置がスライド可能である。第2バンド62は、ワイヤーハーネス100の主電線束101と分岐電線束102に巻き付ける。第2バンド62には凹凸部64が形成されている。
【0022】
次に、図1と図3を参照して、バンド固定部300について説明する。
【0023】
図1と図3に示すバンド固定部300は、保持アーム20の中間位置に一体的に設けられている。このバンド固定部300は、2つの貫通する断面長方形の組み付け穴156,156を有している。組み付け穴156,156の形成方向は、保持アーム20の長手方法Lに対して直交する方向であり、はめ込み突起部23は、バンド固定部300の中央位置に突出して形成されている。
【0024】
図3に示すように、第1バンド61が主電線束101と分岐電線束102の外周部に巻き付けられた後に、第1バンド61の先端部が組み付け穴156にはめ込まれることにより固定することができる。この際には、第1バンド61の任意の位置の凹凸部63が組み付け穴156内の第1固定部57にかみ合う。
【0025】
同様にして、図3に示すように、第2バンド62が主電線束101と分岐電線束102の外周部に巻き付けられた後に、第2バンド62の先端部が組み付け穴156にはめ込まれることにより固定することができる。この際には、第2バンド62の任意の位置の凹凸部64が組み付け穴156内の第2固定部58にかみ合う。第1バンド61と第2バンド62は、バンド固定部300の手前の位置において、すなわち主電線束101と分岐電線束102の接続領域においてX状に交差している。
【0026】
次に、図1と図3を参照して、保持アーム20の第1移動阻止部301と第2移動阻止部302の構造について説明する。
【0027】
図1と図3に示すように、保持アーム20は、この保持アーム20の長手方向Lに沿って第1移動阻止部301と第2移動阻止部302を有している。第1移動阻止部301は、バンド固定部300と第1端部31の間であって、保持アーム20の端面90に形成されている。同様にして、第2移動阻止部302は、バンド固定部300と第2端部32の間であって、保持アーム20の端面90に形成されている。
【0028】
図1と図3の第1移動阻止部301は、第1バンド部材21の第1バンド61を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けて、第1バンド61の先端部をバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定した状態で、第1バンド部材21の位置が保持アーム20の長手方向Lに沿ってずれるのを確実に阻止する手段である。
【0029】
図1と図3の第2移動阻止部302は、第2バンド部材22の第2バンド62を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けて、第2バンド62の先端部をバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定した状態で、第2バンド部材22の位置が保持アーム20の長手方向Lに沿ってずれるのを確実に阻止する手段である。
【0030】
図1と図3の第1移動阻止部301は、保持アーム20の長手方向Lに沿って配列された複数の突起部分351であり、第2移動阻止部302は、保持アーム20の長手方向Lに沿って配列された複数の突起部分352である。より詳しく説明すると、突起部分351,352は、ともにのこぎり波状に形成されている。しかし、突起部分351の形状と突起部分352の形状とは、バンド固定部300を中心として左右逆向きに形成されている。図示例では、4つの突起部分351と4つの突起部分352が、保持アーム20の端面90に形成されている。
【0031】
図3に示すように、第1装着基部51は、任意の位置の突起部分351にかみ合うかみ合い端部171を有し、第2装着基部52は、任意の位置の突起部分352にかみ合うかみ合い端部172を有する。
【0032】
図3と図4に示すように、第1バンド部材21の第1バンド61を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定し、しかも第2バンド部材22の第2バンド62を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定した状態では、ワイヤーハーネス用クランプ10は、次のような特徴的な構造を有している。
【0033】
図4に示すように、第1バンド部材21と第2バンド部材22の各長手方向Cは、長手方向Lと直交する方向Bに対して角度θだけ傾斜する。このように傾斜した状態では、第1装着基部51のかみ合い端部171が任意の位置の突起部分351にかみ合うとともに、第2装着基部52のかみ合い端部172が任意の位置の突起部分352にかみ合うことで、第1バンド部材21と第2バンド部材22が、長手方向Lに沿って移動したり、横ずれするのを阻止することができる構造を採用している。
【0034】
次に、上述したワイヤーハーネス用クランプ10が、図3に示すようにワイヤーハーネス100に対して組み付けられる例について説明する。
【0035】
まず、図1に示すように、保持アーム20には、第1バンド部材21と第2バンド部材22が装着されている。図1の第1バンド部材21と第2バンド部材22は、保持アーム20の長手方向Lに沿ってスライドすることで、それぞれ位置決めが可能であり、第1バンド部材21と第2バンド部材22の各位置は、主電線束101から分岐した分岐電線束102の太さに応じて任意に設定できる。
【0036】
そして、図3の第1バンド部材21の第1バンド61は、主電線束101の外周部から分岐電線束102の交差部分に巻き付けた後に、第1バンド61の先端部を、バンド固定部300の一方の組み付け穴156にはめ込むことにより固定することができる。第2バンド部材22の第2バンド62は、主電線束101の外周部から分岐電線束102の交差部分に巻き付けた後に、第2バンド62の先端部を、バンド固定部300のもう1つの組み付け穴156にはめ込むことにより固定することができる。これにより、保持アーム20は、主電線束101の長手方向Lに沿って横ずれのないように固定される。
【0037】
この場合に、図4に示すように、第1バンド部材21の第1バンド61を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定し、しかも第2バンド部材22の第2バンド62を主電線束101と分岐電線束102に巻き付けてバンド固定部300の組み付け穴156にはめ込んで固定した状態では、第1バンド部材21と第2バンド部材22の各長手方向Cは、角度θだけ互いに反対に傾斜する。
【0038】
このように傾斜した状態では、第1装着基部51のかみ合い端部171が任意の位置の突起部分351にかみ合うとともに、第2装着基部52のかみ合い端部172が任意の位置の突起部分352にかみ合うことで、第1バンド部材21と第2バンド部材22が、長手方向Lに沿って移動するのを確実かつ簡単に阻止することができる。つまり、第1装着基部51のかみ合い端部171は、突起部分351に対して斜めに締め付けられて互いに引っかかり、第2装着基部52のかみ合い端部172は、突起部分352に対して斜めに締め付けられて互いに引っかかることから、第1バンド部材21と第2バンド部材22が長手方向Lに沿って横ずれすることがない。
【0039】
これにより、ワイヤーハーネス100の装着対象物200への組み付け作業性あるいは製造作業性を向上できる。
【0040】
このようにして、主電線束101と分岐電線束102に対して一体化されたワイヤーハーネス用クランプ100は、そのはめ込み突起部23を、図1に示す装着対象物200の穴201にはめ込むことにより、ワイヤーハーネス100は、装着対象物200に対して簡単かつ確実に装着することができる。
【0041】
また、あらかじめ第1バンド部材21と第2バンド部材22を保持アーム20に組んでおいても、保持アーム20の第1移動阻止部301,302の存在により、第1バンド部材21と第2バンド部材22が保持アーム20の第1端部31と第2端部32から簡単に脱落してしまうことを防止できるメリットもある。
【0042】
以上説明したように第1の実施形態では、ワイヤーハーネス用クランプ10の第1バンド部材21と第2バンド部材22は、ワイヤーハーネス100に対して正確な位置に組み付けることができるので、クランプ10の組み付け精度が得やすく、ワイヤーハーネス100の製造効率が向上する。
【0043】
しかも、クランプ10の組み付け精度が得られるので、ワイヤーハーネス100と例えば自動車の車体のエッジや、バリまでの距離を多く採る必要がなく、エッジや、バリによるワイヤーハーネス100の損傷から保護するための保護部材の使用量が減らせる。
【0044】
上述したように、本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい実施形態では、ワイヤーハーネス用クランプの第1バンド部材と第2バンド部材との間の設定間隔を、ワイヤーハーネスの分岐電線束の太さに応じて、それぞれ保持アームの長手方向に沿ってスライドして位置を調整する際に、第1バンド部材と第2バンド部材は、それぞれ第1移動阻止部と第2移動阻止部により横ずれしないように位置を確実に固定できる。
【0045】
従って、ワイヤーハーネスの製造作業性を向上できる。1種類のワイヤーハーネス用クランプを用意すれば、主電線束の太さと分岐電線束の太さに応じて、ワイヤーハーネスを装着対象物に装着でき、ワイヤーハーネス用クランプの管理コストや量産コストを削減でき、ワイヤーハーネスの量産のコストダウンが図れる。
【0046】
(第2の実施形態)
図5は、本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい第2の実施形態と、装着対象物の例を示す斜視図である。図6は、図5の第1バンド部材と第2バンド部材の形状例を示す一部省略して示す側面図である。図7は、ワイヤーハーネス用クランプをワイヤーハーネスに装着した状態を示す平面図である。
【0047】
図5ないし図7に示す第2の実施形態が、図1ないし図4に示す第1の実施形態と異なるのは、保持アーム20が、この保持アーム20の長手方向Lに沿って別の形状の第1移動阻止部1301と第2移動阻止部1302を有している点である。図5ないし図7に示す第2の実施形態の他の構成要素は、図1ないし図4に示す第2の実施形態の対応する構成要素と同じであるので、その説明を用いる。
【0048】
第1移動阻止部1301と第2移動阻止部1302は、ともに同じ形状を有しており、複数の突起部分1351,1352をそれぞれ有している。各突起部分1351,1352の間に形成されている凹部1400は、例えば半円形状を有する。
【0049】
第1装着基部51は、任意の位置の突起部分1351にかみ合うかみ合い端部1171を有し、第2装着基部52は、任意の位置の突起部分1352にかみ合うかみ合い端部1172を有する。かみ合い端部(かみ合い突起ともいう)1171とかみ合い端部(かみ合い突起ともいう)1172は、図6に示すように半円形状の突起であり、貫通穴53,54の中に形成されている。
【0050】
このような保持アーム20、第1移動阻止部1301と第2移動阻止部1302を用いても、第1の実施形態と同様の作用効果を生じる。すなわち、図5ないし図7に示す第2の実施形態では、ワイヤーハーネス用クランプ10の第1バンド部材21と第2バンド部材22は、ワイヤーハーネス100に対して正確な位置に組み付けることができるので、クランプ10の組み付け精度が得やすく、ワイヤーハーネス100の製造効率が向上する。特に、第1バンド部材21のかみ合い端部1171と第2バンド部材22のかみ合い端部1172は例えば半球状であり、例えば半球状の凹部1400にかみ合わせることで、第1バンド部材21と第2バンド部材22は保持アーム20の長手方向Lに関して確実に位置決めすることができる。
【0051】
しかも、クランプ10の組み付け精度が得られるので、ワイヤーハーネス100と例えば自動車の車体のエッジや、バリまでの距離を多く採る必要がなく、エッジや、バリによるワイヤーハーネス100の損傷から保護するための保護部材の使用量が減らせる。
【0052】
ワイヤーハーネス用クランプ10の第1バンド部材21と第2バンド部材22との間の設定間隔を、ワイヤーハーネス100の分岐電線束102の太さに応じて、それぞれ保持アーム20の長手方向に沿ってスライドして位置を調整する際に、第1バンド部材21と第2バンド部材22は、それぞれ第1移動阻止部1301と第2移動阻止部1302により横ずれしないように位置を確実に固定できる。従って、ワイヤーハーネス100の製造作業性を向上できる。1種類のワイヤーハーネス用クランプ10を用意すれば、主電線束101の太さと分岐電線束102の太さに応じて、ワイヤーハーネス100を装着対象物に装着でき、ワイヤーハーネス用クランプ10の管理コストや量産コストを削減でき、ワイヤーハーネス100の量産のコストダウンが図れる。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい別の実施形態を説明する。
【0054】
図8に示すワイヤーハーネス用クランプ10は、主電線束と前記主電線束から分岐した分岐電線束を有するワイヤーハーネスに固定して、ワイヤーハーネスを装着対象物200に対して組み付けるためのものである。
【0055】
ワイヤーハーネス用クランプ10は、帯状の保持アーム20と第1バンド部材21と第2バンド部材22を有する。保持アーム20は、主電線束に配置される。第1バンド部材21は、保持アーム20に組み付けられて保持アーム20の長手方向Lに沿って移動可能であり、ワイヤーハーネスの主電線束に巻き付けるためのものである。第2バンド部材22は、保持アーム20に組み付けられて保持アーム20の長手方向Lに沿って移動可能であり、ワイヤーハーネスの前記主電線束に巻き付けるためのものである。
【0056】
第1バンド部材21は、第1装着基部53と、第1装着基部53に形成されてワイヤーハーネスに巻き付ける際に凹凸部63を通すためのバンド通し部55とを有する。第2バンド部材22は、第2装着基部54と、第2装着基部54に形成されてワイヤーハーネスに巻き付ける際に凹凸部64を通すためのバンド通し部56とを有する。
【0057】
保持アーム20の第1移動阻止部1301は、第1バンド部材21に形成されている第1凹凸形成部401と、保持アーム20に形成されて第1バンド部材21によりワイヤーハーネスを巻き付けた時に第1凹凸形成部401にかみ合う第2凹凸形成部402と、により構成されている。
【0058】
同様にして、保持アーム20の第2移動阻止部1302は、第2バンド部材22に形成されている第1凹凸形成部401と、保持アーム20に形成されてワイヤーハーネスを巻き付けた時に第1凹凸形成部401にかみ合う第2凹凸形成部402と、により構成されている。
【0059】
保持アーム20の第1端部31と第2端部32にはそれぞれ抜け止め防止部41,42が形成されている。これらの抜け止め防止部41,42は、保持アーム20から第1バンド部材21と第2バンド部材22が抜け出ないようにしている。
【0060】
第1装着基部53は第1バンド部材61と一体に形成されており、第2装着基部54は第2バンド部材62と一体に形成されている。第1装着基部53と第2装着基部54は、ともに保持アーム20を通すための通し孔部99を有しており、通し孔部99の上側の内面には第1凹凸部401が形成されている。
【0061】
これに対して、保持アーム20には、第1凹凸部401に対面する側に2カ所の第2凹凸部402が形成されている。第1装着基部53の第1凹凸部401と一方の第2凹凸形成部402は、上述したように第1移動阻止部1301を構成していて、第2装着基部54の第1凹凸形成部401と他方の第2凹凸部402は、上述したように第2移動阻止部1302を構成している。
【0062】
第1装着基部53には、凹凸部63を通すためのバンド通し部55が形成されており、第2装着基部54には、凹凸部64を通すためのバンド通し部56が形成されている。
【0063】
第1装着基部53の第1凹凸形成部401と一方の第2凹凸形成部402と第2装着基部54の第1凹凸形成部401と他方の第2凹凸形成部402は、共に溝と突起を繰り返して形成することで構成されているが、溝と突起は保持アーム20の長手方向Lとは直交する方向に沿っている。しかし、溝と突起は、長手方向Lと交差する斜め方向に形成してもよい。
【0064】
これにより、第1バンド部材21の凹凸部63と第2バンド部材22の凹凸部64が、それぞれ第1装着基部53のバンド通し部55と第2装着基部54のバンド通し部56に挿入されてワイヤーハーネスを固定した状態では、第1装着基部53の第1凹凸形成部401と第2凹凸形成部402がかみ合い、しかも第2装着基部54の第1凹凸形成部401と第2凹凸形成部402がかみ合う。
【0065】
従って、第1バンド部材21と第2バンド部材22が、保持アーム20の長手方向Lに沿って横ずれしてしまうことを確実に防止して、第1バンド部材21と第2バンド部材22は、保持アーム20の長手方向Lに沿った任意に位置でワイヤーハーネスを固定できることから、ワイヤーハーネスを保持する際の組み付け精度が得られ、ワイヤーハーネスを保護するための保護部材の使用量を減らすことができる。
(第4の実施形態)
次に、図9〜図12を参照して、図1等に示す、第1〜第3実施形態におけるはめ込み突起部23に代えて用いることができる例を説明する。
【0066】
図1等に示すはめ込み突起部23は、上から見て円形状であるが、図9に示すはめ込み突起部23Dは、円形状以外の形状、例えば楕円形である。
【0067】
図10に示すはめ込み突起部23Fは、支柱部分23Jと複数の突出部分23Gを有している。複数の突出部分23Gは支柱部分23Jに対して間隔を置いて配列されている。これにより、図1の装着対象物200の厚みが変更されても、その厚みの変更に応じてワイヤーハーネス用クランプ10は、装着対象物200に対して確実に固定することができる。
【0068】
図11に示すはめ込み突起部23Kは、装着対象物200のスタッド200Sをはめ込んで固定する構造を有している。はめ込み突起部23Kは、ケース23Lと突起23Mを有しており、ケース23Lは保持アーム20から直接突出して形成されている。突起23Mはケース23L内においてスタッド200Sに引っかかることで、ワイヤーハーネス用クランプの保持アーム20は、装着対象物200に対して確実に固定することができる。
【0069】
図12は、さらに別の例を示しており保持アーム20はクランプ20Cを有している。装着対象物200はブラケット200Bを有しており、ブラケット200Bがクランプ20Cの孔20Hにはまり込むことで、ブラケット200Bの孔200Yに対してブラケット20Cの孔20H内の突起20Xがはまり込む。これにより、ワイヤーハーネス用クランプの保持アーム20は、装着対象物200に対して確実に固定することができる。
【0070】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
【0071】
例えば、第1移動阻止部と第2移動阻止部の形状と、突起部分の形状と、かみ合い端部の形状は、図示例に限らず、任意に選択することができる。第1移動阻止部と第2移動阻止部の形状は、のこぎり波状でなく三角形状あるいは四角形状等の他の形状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の第1バンド部材と第2バンド部材の形状例を示す一部省略して示す側面図である。
【図3】ワイヤーハーネス用クランプをワイヤーハーネスに装着した状態を示す平面図である。
【図4】ワイヤーハーネス用クランプの保持アームに対して第1バンド部材と第2バンド部材が移動阻止された状態例を示す斜視図である。
【図5】本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい第2の実施形態と、装着対象物の例を示す斜視図である。
【図6】図5の第1バンド部材と第2バンド部材の形状例を示す一部省略して示す側面図である。
【図7】ワイヤーハーネス用クランプをワイヤーハーネスに装着した状態を示す平面図である。
【図8】本発明のワイヤーハーネス用クランプの好ましい別の実施形態を示す図である。
【図9】保持アームのはめ込み突起部の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図10】保持アームのはめ込み突起部の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図11】保持アームのはめ込み突起部の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図12】保持アームのはめ込み突起部の好ましい別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 ワイヤーハーネス用クランプ
20 保持アーム
21 第1バンド部材
22 第2バンド部材
23 はめ込み突起部
24 一方の面
25 他方の面
31 第1端部
32 第2端部
51 第1装着基部
52 第2装着基部
61 第1バンド(第1バンド部材)
62 第2バンド(第2バンド部材)
90 保持アームの端面
200 装着対象物
300 バンド固定部
301 第1移動阻止部
302 第2移動阻止部
1171 かみ合い端部
1172 かみ合い端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電線束と前記主電線束から分岐した分岐電線束を有するワイヤーハーネスに固定して、前記ワイヤーハーネスを装着対象物に対して組み付けるためのワイヤーハーネス用クランプであって、
前記主電線束に配置される帯状の保持アームと、
前記保持アームに組み付けられて前記保持アームの長手方向に沿って移動可能であり、前記ワイヤーハーネスの前記主電線束に巻き付けるための第1バンド部材と、
前記保持アームに組み付けられて前記保持アームの長手方向に沿って移動可能であり、前記ワイヤーハーネスの前記主電線束に巻き付けるための第2バンド部材と、
前記保持アームに固定され前記第1バンド部材と前記第2バンド部材の間に配置されており、前記第1バンド部材の端部と前記第2バンド部材の端部をそれぞれはめ込んで固定するためのバンド固定部と、を備え、
前記保持アームは、
前記第1バンド部材を前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けて前記バンド固定部に固定した状態で前記第1バンド部材の位置が前記保持アームの長手方向に沿ってずれるのを阻止する第1移動阻止部と、
前記第2バンド部材を前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けて前記バンド固定部に固定した状態で前記第2バンド部材の位置が前記保持アームの長手方向に沿ってずれるのを阻止する第2移動阻止部と、を有していることを特徴とするワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項2】
前記保持アームの前記第1移動阻止部と前記第2移動阻止部は、前記保持アームの長手方向に沿って配列された複数の突起部分であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項3】
前記保持アームの前記第1移動阻止部と前記第2移動阻止部は、のこぎり波状に形成された複数の突起部分であり、前記第1移動阻止部の前記複数の突起部分の形状と前記第2移動阻止部の前記複数の突起部分の形状は、逆向きに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項4】
前記第1バンド部材は、前記保持アームを通して前記第1移動阻止部にかみ合わされる第1基部と、前記第1基部から形成され前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けられた状態で前記バンド固定部に対して固定される第1バンドとを有し
前記第2バンド部材は、前記保持アームを通して前記第2移動阻止部にかみ合わされる第2基部と、前記第2基部から形成され前記主電線束と前記分岐電線束に巻き付けられた状態で前記バンド固定部に対して固定される第2バンドとを有していることを特徴とする請求項3に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項5】
前記第1基部と前記第2基部は、前記複数の突起部分にかみ合うかみ合い端部を有することを特徴とする請求項4に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項6】
前記バンド固定部は、前記装着対象物にはめ込んで固定するためのはめ込み突起部を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つの項に記載のワイヤーハーネス用クランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−282481(P2007−282481A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66189(P2007−66189)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】