ワイヤーハーネス
【課題】被取付体への取付作業性が良好で安価なワイヤーハーネスを提供すると共に、クランプのワイヤーハーネスに対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネスの組立作業工数を削減できるワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】被取付体43の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴31にクランプ33を保持した片面自己粘着シート17によって、ワイヤーハーネス13を外装した。片面自己粘着シート17の特殊粘着剤層25と反対側の表面材15は、防水性を有することが望ましい。クランプ33を挿通するための片面自己粘着シート17に穿設されるシート穴31の位置は、ワイヤーハーネス13の配索位置Xからオフセットさせてもよい。シート穴31に挿通されるクランプ33の支軸39は、ピッチ調整可能にシート穴31の穴径より細くしてもよい。
【解決手段】被取付体43の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴31にクランプ33を保持した片面自己粘着シート17によって、ワイヤーハーネス13を外装した。片面自己粘着シート17の特殊粘着剤層25と反対側の表面材15は、防水性を有することが望ましい。クランプ33を挿通するための片面自己粘着シート17に穿設されるシート穴31の位置は、ワイヤーハーネス13の配索位置Xからオフセットさせてもよい。シート穴31に挿通されるクランプ33の支軸39は、ピッチ調整可能にシート穴31の穴径より細くしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
被取付体である車両のボディやドアに取り付けられるワイヤーハーネスは、複数本の電線相互を配索板上で布線し、電線の端末部にコネクタを取り付けたり、分岐部にプロテクタを取り付けたり、保護するための保護材(スポンジ等)を取付ながらテープ巻きを施したりすることにより、ハーネス配索経路に沿った所定の配索形態に成形される。そして、ワイヤーハーネスに取り付けられた複数のクランプを、ボディやドアに穿設されたクランプ取付穴に係止して取り付けられる。
図15に示す例えばドア501に取り付けられるワイヤーハーネス503は、複数のクランプ505によって固定されている。このワイヤーハーネス503は、図16に示すように、結束された電線507aの端末部507cや、分岐部507bの端末部507dにコネクタ509が取り付けられ、必要に応じて打音発生を防止するための防音テープ511が所定箇所に巻かれたり、プロテクタ513が取り付けられたりしている。
【0003】
クランプ505は、一つ一つが個別にワイヤーハーネス503にテープ515によって固定される(例えば特許文献1参照)。図17に示すように、クランプ505は、基板部517より軸部519を立設し、この軸部519の先端より両側に係止羽根部521を突設してなり、軸部519を挟んで基板部517の両側がテープ515によってワイヤーハーネス503に巻き固定される。クランプ505は、所定のクランプピッチP1で取り付けられることで、被取付体525に穿設されたクランプ穴527に一致して、ワイヤーハーネス503を被取付体525に取り付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−248039号公報(図5)
【特許文献2】特開2004−357415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなワイヤーハーネス503は、複数の電線507aを束ねるためにテープ巻き等を行っているのみのため、ワイヤーハーネス503自体は所定の配索形態を保持することができない。そこで、車両取付け時にはクランプ505や電線の分岐箇所等の取付基準部分を被取付体525の複数の固定部位に合わせながら、ハーネス配索経路に沿ってワイヤーハーネス503を取り付ける必要があり、取付作業性がよくなかった。
【0006】
尚、特許文献2等に開示されているように、所定の配索形態に成形された樹脂製のプロテクタを用いることにより、ワイヤーハーネスの配索形態を保持させることは可能である。しかしながら、プロテクタは特定のワイヤーハーネスや固定部位に対する専用品になるため、ハーネス配索経路が変わるごとに配索形態の異なるプロテクタを新設する必要があり、製造に費用と時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、クランプ505は、一つ一つ個別にワイヤーハーネス503に固定されるため、取付ピッチ精度が悪くなる虞があり、そこで、被取付体525に余裕を持って取り付けることから、被取付体525のクランプ穴ピッチP2よりもプラス側の公差に設定する必要があった。このため、クランプピッチP1がプラスに取り付けられた部位では、ワイヤーハーネス503が弛み、その弛みが車両走行時の打音を発生させる可能性を有していた。また、一つ一つのクランプ505をテープ515にて個別にワイヤーハーネス503に固定するので、時間を要し、取付作業性が悪かった。これに加え、防音テープ511やプロテクタ513の取り付けも必要であったため部品点数が多くなり、さらに取付作業性を悪くした。
【0008】
また、図18に示すように、クランプ505がクランプ穴527に取り付けられたとき、そのクランプ穴527が防水を必要とする部位の場合がある。このようなとき、図19に示すように、クランプ505の円形の皿部523にはパッキン531が貼られた。このため、それぞれのクランプ505にパッキン531を貼る手間が生じるとともに、パッキン531にズレや捲れが発生する可能性があった。また、クランプ505のシール面533が円形の皿部外周の線状部535のため、この線状部535が傷つくと防水性が損なわれる虞があった。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、被取付体への取付作業性が良好で安価なワイヤーハーネスを提供すると共に、クランプのワイヤーハーネスに対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネスの組立作業工数を削減できるワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 被取付体に対する所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装することにより、前記配索形態を保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(1)のワイヤーハーネスによれば、所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装するだけで、電線の曲り箇所や分岐箇所、直線状箇所等の配索形態が保持される。そこで、被取付体の配索経路に合わせてワイヤーハーネスを容易に取り付けることができる。また、片面粘着シートで外装されたワイヤーハーネスは、現状で取り付けられている複数の部品(結束テープ、防音シート、クランプ取付テープ等)が統合され、治具上での組立作業工程が大幅に削減される。
(2) 上記(1)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体に対するワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせた外形状に成形されることを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(2)のワイヤーハーネスによれば、片面粘着シートの外形形状をワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせて成形することで、例えば電線の曲り箇所や分岐箇所、クランプ取付位置等のワイヤーハーネスの取付基準部分を片面粘着シートで覆われた外観からも視認することができる。そこで、ハーネス取付け時のワイヤーハーネスは、被取付体におけるワイヤーハーネスの配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が更に向上する。また、片面粘着シートの余分な部分を減らして軽量化を図ると共に配索スペースをコンパクトにできる。
(3) 上記(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定間隔に形成された電線の曲り箇所及び分岐箇所の少なくともいずれか2箇所に対応する外形状部を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(3)のワイヤーハーネスによれば、ハーネス取付け時に被取付体の複数の固定部位に対してワイヤーハーネスの取付基準部分となる電線の曲り箇所や分岐箇所に対応する外形状部が、プレス加工等により予め片面粘着シートに形成される為、取付基準部分間の高い間隔精度が得られるようになる。
(4) 上記(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて前記電線の曲り箇所又は分岐箇所に対して所定間隔に開けられたシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(4)のワイヤーハーネスによれば、ハーネス取付け時に被取付体の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所や分岐箇所に対応する外形状部と、クランプを保持するためのシート穴とが、プレス加工等により予め片面粘着シートに形成される為、これら取付基準部分の高い間隔精度が得られるようになる。
(5) 上記(1)又は(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【0011】
上記(5)のワイヤーハーネスによれば、クランプを保持するためのシート穴がプレス加工等により予め片面粘着シートに開けられ、クランプの現状の手作業による取り付けに比べ、高いピッチ精度が得られるようになる。
【0012】
(6) 上記(4)又は(5)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートの粘着面に対する反対側の表面材が、防水性を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【0013】
上記(6)のワイヤーハーネスによれば、片面粘着シートがパッキンを兼用するので、クランプごとのパッキン取付作業が不要となる。個別のクランプに設けていたパッキンが片面粘着シートと一体となるので、防水シール面が拡大し、パッキンのズレ、捲れ、変形等が無くなり、防水性が向上する。
【0014】
(7) 上記(4)〜(6)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記クランプを挿通するための前記片面粘着シートに穿設されるシート穴の位置が、前記ワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【0015】
上記(7)のワイヤーハーネスによれば、クランプがワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされることで、クランプの高さとワイヤーハーネスの高さとが積算されなくなり、被取付体からのワイヤーハーネスの取付高さが低く抑えられる。
【0016】
(8) 上記(7)のワイヤーハーネスであって、前記シート穴に挿通される前記クランプの支軸が、ピッチ調整可能に前記シート穴の穴径より細いことを特徴とするワイヤーハーネス。
【0017】
上記(8)のワイヤーハーネスによれば、シート穴に対してクランプが移動可能となることで、クランプピッチの微調整が可能となる。
【0018】
(9) 上記(4)〜(8)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記クランプには、該クランプが前記被取付体に取り付けられたときに該被取付体に前記片面粘着シートを密着させるシール面圧生成部が形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【0019】
上記(9)のワイヤーハーネスによれば、クランプが被取付体に取り付けられると、クランプのシール面圧生成部が片面粘着シートを被取付体に押しつけ、被取付体との当たり面が広く取れ、シール面が安定して、確実な防水性が確保される。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、自身の粘着面同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワイヤーハーネスによれば、車両取付け時に被取付体の複数の固定部位に対して容易に取り付けることができる。また、クランプのワイヤーハーネスに対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネスの組立作業工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの平面図である。
【図2】図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスに沿う方向の面の断面図である。
【図3】図2の直交方向の断面図である。
【図4】図2に示したクランプの斜視図である。
【図5】クランプを介して被取付体に取り付けられたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図6】複数箇所にクランプが設けられたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図7】図1に示したクランプ付ワイヤーハーネスの分解図である。
【図8】図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスと直交する方向の面の分解断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの分解図である。
【図10】図9に示したE部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスと直交する方向の面の分解断面図である。
【図11】図10に示したクランプ近傍においてワイヤーハーネスが片面自己粘着シートに挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るワイヤーハーネスの分解斜視図である。
【図13】図12に示したワイヤーハーネスの組立後の斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るワイヤーハーネスの要部斜視図である。
【図15】従来のクランプによってワイヤーハーネスが取り付けられたドアの正面図である。
【図16】図15に示したワイヤーハーネスの平面図である。
【図17】クランプとクランプ穴との位置関係を表した斜視図である。
【図18】皿部を被取付体に当接したクランプの側面図である。
【図19】(a)は図18に示したクランプの正面図、(b)は(a)に示した皿部の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの平面図である。
クランプ付ワイヤーハーネス11は、所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート17によって挟んで外装されている。ワイヤーハーネス13は、例えば図15に示したドア501に対する配索経路に合わせた所定の配索形態に布線された複数本の幹線部19と、この幹線部19から分岐された分岐部21とからなり、これら幹線部19の端末部19a、分岐部21の端末部21aに不図示の車両に搭載された補機等と接続されるコネクタ23が取り付けられている。
【0023】
本実施の形態で用いられる片面粘着シートとしての片面自己粘着シート17は、図2及び図3に示すように、自身の粘着面(裏面)同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートである。つまり、糊や結束テープを不要にして粘着面(裏面)同士を合わせるだけで簡単に貼ることが可能となる。更に、片面自己粘着シート17は、特殊粘着剤層25がワイヤーハーネス13や作業者の手指などに貼り付くことがなく、組立作業性を低下させることがない。片面自己粘着シート17は、PP(ポリプロピレン)発泡材からなるシート基材28の表面に表面材15が積層され、裏面に特殊粘着剤層25が積層される。表面材15にはクラフト紙、ライナーボード、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPフィルム、不織布等が使用可能となる。引張強さは、タテ方向が49N/cm幅、ヨコ方向が23N/cm幅(JIS K−6767準拠)、引裂強さは、タテ方向が7.8N、ヨコ方向が6.8N(JIS K−6767準拠)、水蒸気透過率は0.0052g/cm2・24hrs(FS−101B)、初期粘着力は2.5N/cm幅(T型剥離試験)等の特性を有する。この片面自己粘着シート17としては例えば米国クロウェル社製のCro−nel(登録商標)等を用いることができる。尚、本発明に係る片面粘着シートとしては、上記片面自己粘着シート17に限らず、シート基材の裏面に粘着剤層を積層した公知の粘着シートを用いることもできる。
【0024】
図2は図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネス13に沿う方向の面の断面図、図3は図2の直交方向の断面図である。
本実施の形態において、片面自己粘着シート17は、第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29からなる(図7参照)。第1の片面自己粘着シート材27は、裏面に特殊粘着剤層25が積層されたシートで、図1のF部以外のコネクタ23付近における自由な端末部19a、21aを除き外形状が予めワイヤーハーネス13の配索経路形状に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材29は、第1の片面自己粘着シート材27と同様に、裏面に特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材27と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。第2の片面自己粘着シート材29の所定位置にはシート穴31が穿設される。このシート穴31にはクランプ33が挿通される。シート穴31にクランプ33が挿通された第2の片面自己粘着シート材29は、クランプ・シート組立体を構成する。
なお、これら第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29の外形状は、幹線部19や分岐部21等の部位に限らず、目的や用途に合わせ、多種多様に成形される。
図1のF部に示したように、コネクタ23とワイヤーハーネス13の端末部21aをも一括して包囲する形状に片面自己粘着シート17を成形することで、コネクタ23と端末部21aをリジット化したり、端末部21aを被取付体(例えば、ドアパネル)43等との接触から保護することができる。勿論、全てのコネクタ23とワイヤーハーネス13の端末部19a、21aをも一括して包囲する略矩形状に片面自己粘着シート17を成形することもできる。
【0025】
図4は図2に示したクランプ33の斜視図である。
クランプ33は、直径方向両端に凸片35を有した円形状のシール面圧生成部37を有する。シール面圧生成部37の一方の面には支軸39が立設され、その先端には一対の弾性係止爪41が形成される。このクランプ33は、第2の片面自己粘着シート材29のシート穴31に支軸39及び弾性係止爪41が挿通される。したがって、シール面圧生成部37は、第2の片面自己粘着シート材29とワイヤーハーネス13に挟まれて保持されることになる。
【0026】
なお、本実施の形態では、シール面圧生成部37は凸片35を有した円形状としたが、円形状に限らず、シール性が確保されるものであれば、種々の形態を採ることができる。なお、凸片35は省略しても良いが、この凸片35によりシール面圧生成部37の面積を実質的に拡大させて、クランプ33の片面自己粘着シート17に対する保持力を増大することができる。
【0027】
クランプ33は、異なる形態で取り付けることができる。例えば、図2、図3に示すように、ワイヤーハーネス13とクランプ33を縦に積層して取り付けることができる。図1に示したA部、B部がこの取り付け部に相当する。
【0028】
また、シート穴31の位置をワイヤーハーネス13の配索位置Xからずらして(オフセットして)、ワイヤーハーネス13とクランプ33を横に並べて取り付けてもよい。この場合、クランプ33は、シール面圧生成部37が第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29に直接挟持されることになる。クランプ33がワイヤーハーネス13の配索位置Xからオフセット(図1中のΔtで示す離間距離)されることで、クランプ33の高さとワイヤーハーネス13の高さとが積算されなくなり、被取付体43からのワイヤーハーネス13の取付高さが低く抑えられる。図1に示したC部、D部がこの取り付け部に相当する。
【0029】
ここで、シート穴31に挿通されるクランプ33の支軸39は、ピッチ微調整可能にシート穴31の穴径より細いことが好ましい。この場合、図2及び図3に示すように、シート穴31と支軸39との間に隙間38が生じることによって、シート穴31に対してクランプ33が移動可能となり、クランプピッチP1(図14参照)の微調整等が可能となる。なお、シート穴31をピッチ調整の方向に長い長穴としても良い。但し、シート穴31の基本的な位置は、第2の片面自己粘着シート材29の成形時に、プレス加工等によって一体的に位置決めされる。これにより、従来の手作業によるクランプ33の取り付けに比べ極めて高い精度でクランプ位置が位置決めされるようになっている。
【0030】
このようにして、クランプ付ワイヤーハーネス11は、ボディやドア等の被取付体43(図5参照)の取付位置に合わせて所定ピッチに複数のクランプ33を保持した片面自己粘着シート17によってワイヤーハーネス13が外装されることになる。
【0031】
図5はクランプ33を介して被取付体43に取り付けられたクランプ付ワイヤーハーネス11の断面図、図6は複数箇所にクランプ33が設けられたクランプ付ワイヤーハーネス11の断面図である。
本実施の形態では、クランプ付ワイヤーハーネス11の片面自己粘着シート17の表面材15が、防水性を有する。すなわち、表面材15が上記した例えばPPやPETからなる。クランプ33には、クランプ33が被取付体43に取り付けられたときに、被取付体43に片面自己粘着シート17の表面材15を密着させる上記したシール面圧生成部37が形成されている。
【0032】
クランプ付ワイヤーハーネス11では、クランプ33が被取付体43のクランプ穴47に取り付けられると、クランプ33のシール面圧生成部37が片面自己粘着シート17の表面材15を被取付体43に押しつける。シール面圧生成部37は、クランプ33の支軸39を中心に円形面でシール圧を第2の片面自己粘着シート材29に加える。これにより、被取付体43との当たり面が広く取れるようになり、シール面49が安定して、確実な防水性が確保される。また、表面材15が防水性を有する一枚の第2の片面自己粘着シート材29に複数のクランプ33が取り付けられるため、図6に示すように、防水必要箇所のクランプ個々のパッキンを不要として構成部品点数を削減し、パッキン取付作業を省略することができる。
【0033】
次に、図7及び図8を参照して上記のクランプ付ワイヤーハーネス11の組立方法を説明する。
図7は図1に示したクランプ付ワイヤーハーネス11の分解図、図8は図1に示したA部におけるクランプ33近傍のワイヤーハーネス13と直交する方向の面の分解断面図である。
クランプ付ワイヤーハーネス11を組み立てるには、先ず、作業台等に第2の片面自己粘着シート29が敷かれる。第2の片面自己粘着シート材29は、特殊粘着剤層25を上にする。この第2の片面自己粘着シート材29を下敷きにしてその上に所定の配索形態(本実施形態においては、ドア501の配索経路に合わせた配索形態)に予め布線されたワイヤーハーネス13を置く。第2の片面自己粘着シート材29のシート穴31にはクランプ33があらかじめ挿通されるが、ワイヤーハーネス13の載置と共にクランプ33をシート穴31に挿通して組み付けてもよい。
【0034】
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から第1の片面自己粘着シート材27を被せる。第1の片面自己粘着シート材27は特殊粘着剤層25を下にする。ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29とを圧着する。これにより、複数のクランプ33が所定ピッチで取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート17に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス11が完成する(図1参照)。
【0035】
次に、上記構成を有するクランプ付ワイヤーハーネス11の作用及び効果を説明する。
上記第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス11では、ドア501の配索経路に合わせて所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネス13を片面自己粘着シート17で挟んで外装するだけで、電線の曲り箇所3Aや分岐箇所3B、直線状箇所3C等の配索形態が保持される(図7参照)。そこで、ハーネス取付作業時には、ドア501の配索経路に合わせてクランプ付ワイヤーハーネス11を容易に取り付けることができる。
【0036】
更に、片面自己粘着シート17は、外形形状がワイヤーハーネス13の配索経路形状に合わせて予め成形されることで、電線の曲り箇所13Aや分岐箇所13B、クランプ33を取り付けるシート穴57の位置をワイヤーハーネス13の配索位置からオフセットさせる為に突出している部分(E部)や片面自己粘着シート17の一方の面から複数のクランプ33が突出して目視が容易なクランプ取付位置等のワイヤーハーネス13の取付基準部分を片面自己粘着シート17で覆われたクランプ付ワイヤーハーネス11の外観からも視認することができる。そこで、ハーネス取付け時のクランプ付ワイヤーハーネス11は、ドア501における配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が更に向上する。また、片面自己粘着シート17の余分な部分を減らして軽量化を図ると共に配索スペースをコンパクトにできる。
【0037】
また、クランプ付ワイヤーハーネス11では、クランプ33を保持するためのシート穴31がプレス加工等により予め片面自己粘着シート17に開けられ、クランプの現状の手作業による取り付けに比べ、高いピッチ精度が得られるようになる。クランプ33を保持できる片面自己粘着シート17にてワイヤーハーネス13が外装されるので、現状で取り付けられている複数の部品(結束テープ、防音シート、クランプ取付テープ等)が統合され、組み立てに必要であった部品の大部分が削減されて、治具上での組立作業工程が大幅に削減される。
【0038】
また、片面自己粘着シート17がパッキンを兼用するので、クランプ33ごとのパッキン取付作業が不要となる。これに加え、個別のクランプ33に設けていたパッキンが片面自己粘着シート17と一体となるので、防水シール面が拡大し、パッキンのズレ、捲れ、変形等が無くなり、防水性も格段に高まる。
【0039】
したがって、本実施の形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス11によれば、クランプ33のワイヤーハーネス13に対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネス13の組立作業工数を削減でき、しかも、パッキンを不要にして防水性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態の片面自己粘着シート17では、図7に示したように、二枚の第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29を用いる構成を説明したが、本発明に係る片面粘着シートはこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネスが片面粘着シートによって外装されるものであれば、種々の形態を採ることができる。
【0041】
図9は本発明の第2実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス51の分解図、図10は図9に示したE部におけるクランプ33近傍のワイヤーハーネス13と直交する方向の面の分解断面図、図11は図10に示したクランプ33近傍においてワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス51の断面図である。なお、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図9〜図11に示したクランプ付ワイヤーハーネス51は、ワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50によって外装される。
本第2実施形態で用いられる片面自己粘着シート50は、図9に示すように、第1の片面自己粘着シート材53と第2の片面自己粘着シート材55を一体化させた一枚のシートで、折り目部60で折り重ねた際にワイヤーハーネス13の配索経路形状になるように外形状が予め成形される。
図10に示すように、第2の片面自己粘着シート材55の所定位置にはシート穴57が穿設され、このシート穴57にはクランプ33が挿通される。シート穴57にクランプが挿通された片面自己粘着シート50は、クランプ・シート組立体を構成する。
【0043】
そして、クランプ付ワイヤーハーネス51を組み立てるには、先ず、作業台等に特殊粘着剤層25を上にして片面自己粘着シート50を敷く。この片面自己粘着シート50における第2の片面自己粘着シート材55を下敷きにしてその上に所定の配索形態に予め布線されたワイヤーハーネス13を置く。
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から折り目部60で折り重ねた第1の片面自己粘着シート材53を被せる。
【0044】
図11に示すように、ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材53の特殊粘着剤層25と第2の片面自己粘着シート材55の特殊粘着剤層25とを貼り合わせて圧着する。これにより、複数のクランプ33が所定ピッチで取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス51が完成する。
【0045】
なお、図9に示したE部においては、片面自己粘着シート50に穿設されるシート穴57の位置が、ワイヤーハーネス13の配索位置からオフセットされているので、横に並べられたクランプ33の高さとワイヤーハーネス13の高さとが積算されず、被取付体43からのワイヤーハーネス13の取付高さが低く抑えられる(図11参照)。
【0046】
したがって、本第2実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス51は、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様に、クランプ33のワイヤーハーネス13に対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネス13の組立作業工数を削減でき、しかも、パッキンを不要にして防水性を向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態のクランプ付ワイヤーハーネス11,51では、ワイヤーハーネス13の配索形態を保持するために片面自己粘着シート17,50がワイヤーハーネス13の略全体に外装された構成を説明したが、本発明に係るワイヤーハーネスはこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネス13が部分的に片面粘着シートによって外装されるものでもよい。
【0048】
図12は本発明の第3実施形態に係るワイヤーハーネス71の分解斜視図、図13は図12に示したワイヤーハーネス71の組立後の斜視図である。なお、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図12及び図13に示したワイヤーハーネス71は、ワイヤーハーネス13の一部が片面自己粘着シート70によって外装される。
本第3実施形態で用いられる片面自己粘着シート70は、第1の片面自己粘着シート材73と第2の片面自己粘着シート材75からなる(図12参照)。第1の片面自己粘着シート材73は、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、外形状が図12のワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及び直線箇所13Cに対応する配索経路形状の一部分に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材75は、第1の片面自己粘着シート材73と同様に、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材73と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。第2の片面自己粘着シート材75の所定位置(直線箇所13Cに対して所定間隔有する位置)には、シート穴72が穿設される。このシート穴72にはクランプ33が挿通される。シート穴72にクランプ33が挿通された第2の片面自己粘着シート材75は、クランプ・シート組立体を構成する。
【0050】
そして、ワイヤーハーネス71を組み立てるには、先ず、作業台等に特殊粘着剤層25を上にして第2の片面自己粘着シート材75を敷く。この第2の片面自己粘着シート材75を下敷きにしてその上に所定の配索形態に予め布線されたワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及び直線箇所13Cを置く。
【0051】
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から第1の片面自己粘着シート材73を被せる。第1の片面自己粘着シート材73は特殊粘着剤層25を下にする。ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材73と第2の片面自己粘着シート材75とを圧着する。
これにより、図13に示すように、クランプ33が取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート70に挟んで保持されたワイヤーハーネス71が完成する。
【0052】
従って、本第3実施形態のワイヤーハーネス71は、ハーネス取付け時に被取付体43の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及びシート穴72に対応する外形状部が、プレス加工等により予め片面自己粘着シート70に形成される為、これら取付基準部分の高い間隔精度が得られるようになる。
【0053】
この様に、本第3実施形態のワイヤーハーネス71は、被取付体43の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13A及び分岐箇所13B等の少なくともいずれか2箇所を含むワイヤーハーネス13の部分的に片面自己粘着シート70を外装することで、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様に、ハーネス取付け時には被取付体43の配索経路の複数の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が向上する。
なお、上記第3実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス71では、ワイヤーハーネス13が部分的に片面自己粘着シート70で外装される構成を説明したが、ワイヤーハーネス13が片面粘着シートによって外装されるものでもよい。
【0054】
図14は本発明の第4実施形態に係るワイヤーハーネス81の要部斜視図である。
図14に示したワイヤーハーネス81は、ワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A付近のみが片面自己粘着シート80によって外装される。
本第4実施形態で用いられる片面自己粘着シート80は、第1の片面自己粘着シート材83と第2の片面自己粘着シート材85からなる。第1の片面自己粘着シート材83は、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、外形状がワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13Aに対応する配索経路形状の一部分に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材85は、第1の片面自己粘着シート材83と同様に、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材83と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。
【0055】
この様に、本第4実施形態のワイヤーハーネス81は、被取付体43の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13Aを少なくとも含むワイヤーハーネス13の一部に片面自己粘着シート80を外装することで、ハーネス取付け時には被取付体43の配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が向上する。
なお、被取付体43の固定部位に対する取付基準部分としては、ワイヤーハーネス13の曲り箇所13Aに限らず、分岐箇所13Bを少なくとも含むワイヤーハーネス13の一部に合わせて成形された片面自己粘着シート80を外装してもよく、クランプ33を併設してもよい。
【0056】
また、ワイヤーハーネスの直線箇所を部分的に長尺状の片面粘着シートによって外装し、この片面粘着シートの長手方向に沿って複数のクランプ33を所定ピッチで取り付けたワイヤーハーネスを構成することもできる。
以上、本発明のワイヤーハーネスを詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、前述した各実施形態に限定されるものではなく、この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
11 クランプ付ワイヤーハーネス(ワイヤーハーネス)
13 ワイヤーハーネス
15 表面材
17 片面自己粘着シート
25 特殊粘着剤層
31 シート穴
33 クランプ
37 シール面圧生成部
39 支軸
43 被取付体
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
被取付体である車両のボディやドアに取り付けられるワイヤーハーネスは、複数本の電線相互を配索板上で布線し、電線の端末部にコネクタを取り付けたり、分岐部にプロテクタを取り付けたり、保護するための保護材(スポンジ等)を取付ながらテープ巻きを施したりすることにより、ハーネス配索経路に沿った所定の配索形態に成形される。そして、ワイヤーハーネスに取り付けられた複数のクランプを、ボディやドアに穿設されたクランプ取付穴に係止して取り付けられる。
図15に示す例えばドア501に取り付けられるワイヤーハーネス503は、複数のクランプ505によって固定されている。このワイヤーハーネス503は、図16に示すように、結束された電線507aの端末部507cや、分岐部507bの端末部507dにコネクタ509が取り付けられ、必要に応じて打音発生を防止するための防音テープ511が所定箇所に巻かれたり、プロテクタ513が取り付けられたりしている。
【0003】
クランプ505は、一つ一つが個別にワイヤーハーネス503にテープ515によって固定される(例えば特許文献1参照)。図17に示すように、クランプ505は、基板部517より軸部519を立設し、この軸部519の先端より両側に係止羽根部521を突設してなり、軸部519を挟んで基板部517の両側がテープ515によってワイヤーハーネス503に巻き固定される。クランプ505は、所定のクランプピッチP1で取り付けられることで、被取付体525に穿設されたクランプ穴527に一致して、ワイヤーハーネス503を被取付体525に取り付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−248039号公報(図5)
【特許文献2】特開2004−357415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなワイヤーハーネス503は、複数の電線507aを束ねるためにテープ巻き等を行っているのみのため、ワイヤーハーネス503自体は所定の配索形態を保持することができない。そこで、車両取付け時にはクランプ505や電線の分岐箇所等の取付基準部分を被取付体525の複数の固定部位に合わせながら、ハーネス配索経路に沿ってワイヤーハーネス503を取り付ける必要があり、取付作業性がよくなかった。
【0006】
尚、特許文献2等に開示されているように、所定の配索形態に成形された樹脂製のプロテクタを用いることにより、ワイヤーハーネスの配索形態を保持させることは可能である。しかしながら、プロテクタは特定のワイヤーハーネスや固定部位に対する専用品になるため、ハーネス配索経路が変わるごとに配索形態の異なるプロテクタを新設する必要があり、製造に費用と時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、クランプ505は、一つ一つ個別にワイヤーハーネス503に固定されるため、取付ピッチ精度が悪くなる虞があり、そこで、被取付体525に余裕を持って取り付けることから、被取付体525のクランプ穴ピッチP2よりもプラス側の公差に設定する必要があった。このため、クランプピッチP1がプラスに取り付けられた部位では、ワイヤーハーネス503が弛み、その弛みが車両走行時の打音を発生させる可能性を有していた。また、一つ一つのクランプ505をテープ515にて個別にワイヤーハーネス503に固定するので、時間を要し、取付作業性が悪かった。これに加え、防音テープ511やプロテクタ513の取り付けも必要であったため部品点数が多くなり、さらに取付作業性を悪くした。
【0008】
また、図18に示すように、クランプ505がクランプ穴527に取り付けられたとき、そのクランプ穴527が防水を必要とする部位の場合がある。このようなとき、図19に示すように、クランプ505の円形の皿部523にはパッキン531が貼られた。このため、それぞれのクランプ505にパッキン531を貼る手間が生じるとともに、パッキン531にズレや捲れが発生する可能性があった。また、クランプ505のシール面533が円形の皿部外周の線状部535のため、この線状部535が傷つくと防水性が損なわれる虞があった。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、被取付体への取付作業性が良好で安価なワイヤーハーネスを提供すると共に、クランプのワイヤーハーネスに対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネスの組立作業工数を削減できるワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 被取付体に対する所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装することにより、前記配索形態を保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(1)のワイヤーハーネスによれば、所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装するだけで、電線の曲り箇所や分岐箇所、直線状箇所等の配索形態が保持される。そこで、被取付体の配索経路に合わせてワイヤーハーネスを容易に取り付けることができる。また、片面粘着シートで外装されたワイヤーハーネスは、現状で取り付けられている複数の部品(結束テープ、防音シート、クランプ取付テープ等)が統合され、治具上での組立作業工程が大幅に削減される。
(2) 上記(1)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体に対するワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせた外形状に成形されることを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(2)のワイヤーハーネスによれば、片面粘着シートの外形形状をワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせて成形することで、例えば電線の曲り箇所や分岐箇所、クランプ取付位置等のワイヤーハーネスの取付基準部分を片面粘着シートで覆われた外観からも視認することができる。そこで、ハーネス取付け時のワイヤーハーネスは、被取付体におけるワイヤーハーネスの配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が更に向上する。また、片面粘着シートの余分な部分を減らして軽量化を図ると共に配索スペースをコンパクトにできる。
(3) 上記(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定間隔に形成された電線の曲り箇所及び分岐箇所の少なくともいずれか2箇所に対応する外形状部を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(3)のワイヤーハーネスによれば、ハーネス取付け時に被取付体の複数の固定部位に対してワイヤーハーネスの取付基準部分となる電線の曲り箇所や分岐箇所に対応する外形状部が、プレス加工等により予め片面粘着シートに形成される為、取付基準部分間の高い間隔精度が得られるようになる。
(4) 上記(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて前記電線の曲り箇所又は分岐箇所に対して所定間隔に開けられたシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
上記(4)のワイヤーハーネスによれば、ハーネス取付け時に被取付体の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所や分岐箇所に対応する外形状部と、クランプを保持するためのシート穴とが、プレス加工等により予め片面粘着シートに形成される為、これら取付基準部分の高い間隔精度が得られるようになる。
(5) 上記(1)又は(2)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【0011】
上記(5)のワイヤーハーネスによれば、クランプを保持するためのシート穴がプレス加工等により予め片面粘着シートに開けられ、クランプの現状の手作業による取り付けに比べ、高いピッチ精度が得られるようになる。
【0012】
(6) 上記(4)又は(5)のワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートの粘着面に対する反対側の表面材が、防水性を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【0013】
上記(6)のワイヤーハーネスによれば、片面粘着シートがパッキンを兼用するので、クランプごとのパッキン取付作業が不要となる。個別のクランプに設けていたパッキンが片面粘着シートと一体となるので、防水シール面が拡大し、パッキンのズレ、捲れ、変形等が無くなり、防水性が向上する。
【0014】
(7) 上記(4)〜(6)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記クランプを挿通するための前記片面粘着シートに穿設されるシート穴の位置が、前記ワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【0015】
上記(7)のワイヤーハーネスによれば、クランプがワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされることで、クランプの高さとワイヤーハーネスの高さとが積算されなくなり、被取付体からのワイヤーハーネスの取付高さが低く抑えられる。
【0016】
(8) 上記(7)のワイヤーハーネスであって、前記シート穴に挿通される前記クランプの支軸が、ピッチ調整可能に前記シート穴の穴径より細いことを特徴とするワイヤーハーネス。
【0017】
上記(8)のワイヤーハーネスによれば、シート穴に対してクランプが移動可能となることで、クランプピッチの微調整が可能となる。
【0018】
(9) 上記(4)〜(8)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記クランプには、該クランプが前記被取付体に取り付けられたときに該被取付体に前記片面粘着シートを密着させるシール面圧生成部が形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【0019】
上記(9)のワイヤーハーネスによれば、クランプが被取付体に取り付けられると、クランプのシール面圧生成部が片面粘着シートを被取付体に押しつけ、被取付体との当たり面が広く取れ、シール面が安定して、確実な防水性が確保される。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれか1つのワイヤーハーネスであって、前記片面粘着シートが、自身の粘着面同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るワイヤーハーネスによれば、車両取付け時に被取付体の複数の固定部位に対して容易に取り付けることができる。また、クランプのワイヤーハーネスに対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネスの組立作業工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの平面図である。
【図2】図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスに沿う方向の面の断面図である。
【図3】図2の直交方向の断面図である。
【図4】図2に示したクランプの斜視図である。
【図5】クランプを介して被取付体に取り付けられたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図6】複数箇所にクランプが設けられたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図7】図1に示したクランプ付ワイヤーハーネスの分解図である。
【図8】図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスと直交する方向の面の分解断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの分解図である。
【図10】図9に示したE部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネスと直交する方向の面の分解断面図である。
【図11】図10に示したクランプ近傍においてワイヤーハーネスが片面自己粘着シートに挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネスの断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るワイヤーハーネスの分解斜視図である。
【図13】図12に示したワイヤーハーネスの組立後の斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るワイヤーハーネスの要部斜視図である。
【図15】従来のクランプによってワイヤーハーネスが取り付けられたドアの正面図である。
【図16】図15に示したワイヤーハーネスの平面図である。
【図17】クランプとクランプ穴との位置関係を表した斜視図である。
【図18】皿部を被取付体に当接したクランプの側面図である。
【図19】(a)は図18に示したクランプの正面図、(b)は(a)に示した皿部の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネスの平面図である。
クランプ付ワイヤーハーネス11は、所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート17によって挟んで外装されている。ワイヤーハーネス13は、例えば図15に示したドア501に対する配索経路に合わせた所定の配索形態に布線された複数本の幹線部19と、この幹線部19から分岐された分岐部21とからなり、これら幹線部19の端末部19a、分岐部21の端末部21aに不図示の車両に搭載された補機等と接続されるコネクタ23が取り付けられている。
【0023】
本実施の形態で用いられる片面粘着シートとしての片面自己粘着シート17は、図2及び図3に示すように、自身の粘着面(裏面)同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートである。つまり、糊や結束テープを不要にして粘着面(裏面)同士を合わせるだけで簡単に貼ることが可能となる。更に、片面自己粘着シート17は、特殊粘着剤層25がワイヤーハーネス13や作業者の手指などに貼り付くことがなく、組立作業性を低下させることがない。片面自己粘着シート17は、PP(ポリプロピレン)発泡材からなるシート基材28の表面に表面材15が積層され、裏面に特殊粘着剤層25が積層される。表面材15にはクラフト紙、ライナーボード、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPフィルム、不織布等が使用可能となる。引張強さは、タテ方向が49N/cm幅、ヨコ方向が23N/cm幅(JIS K−6767準拠)、引裂強さは、タテ方向が7.8N、ヨコ方向が6.8N(JIS K−6767準拠)、水蒸気透過率は0.0052g/cm2・24hrs(FS−101B)、初期粘着力は2.5N/cm幅(T型剥離試験)等の特性を有する。この片面自己粘着シート17としては例えば米国クロウェル社製のCro−nel(登録商標)等を用いることができる。尚、本発明に係る片面粘着シートとしては、上記片面自己粘着シート17に限らず、シート基材の裏面に粘着剤層を積層した公知の粘着シートを用いることもできる。
【0024】
図2は図1に示したA部におけるクランプ近傍のワイヤーハーネス13に沿う方向の面の断面図、図3は図2の直交方向の断面図である。
本実施の形態において、片面自己粘着シート17は、第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29からなる(図7参照)。第1の片面自己粘着シート材27は、裏面に特殊粘着剤層25が積層されたシートで、図1のF部以外のコネクタ23付近における自由な端末部19a、21aを除き外形状が予めワイヤーハーネス13の配索経路形状に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材29は、第1の片面自己粘着シート材27と同様に、裏面に特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材27と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。第2の片面自己粘着シート材29の所定位置にはシート穴31が穿設される。このシート穴31にはクランプ33が挿通される。シート穴31にクランプ33が挿通された第2の片面自己粘着シート材29は、クランプ・シート組立体を構成する。
なお、これら第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29の外形状は、幹線部19や分岐部21等の部位に限らず、目的や用途に合わせ、多種多様に成形される。
図1のF部に示したように、コネクタ23とワイヤーハーネス13の端末部21aをも一括して包囲する形状に片面自己粘着シート17を成形することで、コネクタ23と端末部21aをリジット化したり、端末部21aを被取付体(例えば、ドアパネル)43等との接触から保護することができる。勿論、全てのコネクタ23とワイヤーハーネス13の端末部19a、21aをも一括して包囲する略矩形状に片面自己粘着シート17を成形することもできる。
【0025】
図4は図2に示したクランプ33の斜視図である。
クランプ33は、直径方向両端に凸片35を有した円形状のシール面圧生成部37を有する。シール面圧生成部37の一方の面には支軸39が立設され、その先端には一対の弾性係止爪41が形成される。このクランプ33は、第2の片面自己粘着シート材29のシート穴31に支軸39及び弾性係止爪41が挿通される。したがって、シール面圧生成部37は、第2の片面自己粘着シート材29とワイヤーハーネス13に挟まれて保持されることになる。
【0026】
なお、本実施の形態では、シール面圧生成部37は凸片35を有した円形状としたが、円形状に限らず、シール性が確保されるものであれば、種々の形態を採ることができる。なお、凸片35は省略しても良いが、この凸片35によりシール面圧生成部37の面積を実質的に拡大させて、クランプ33の片面自己粘着シート17に対する保持力を増大することができる。
【0027】
クランプ33は、異なる形態で取り付けることができる。例えば、図2、図3に示すように、ワイヤーハーネス13とクランプ33を縦に積層して取り付けることができる。図1に示したA部、B部がこの取り付け部に相当する。
【0028】
また、シート穴31の位置をワイヤーハーネス13の配索位置Xからずらして(オフセットして)、ワイヤーハーネス13とクランプ33を横に並べて取り付けてもよい。この場合、クランプ33は、シール面圧生成部37が第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29に直接挟持されることになる。クランプ33がワイヤーハーネス13の配索位置Xからオフセット(図1中のΔtで示す離間距離)されることで、クランプ33の高さとワイヤーハーネス13の高さとが積算されなくなり、被取付体43からのワイヤーハーネス13の取付高さが低く抑えられる。図1に示したC部、D部がこの取り付け部に相当する。
【0029】
ここで、シート穴31に挿通されるクランプ33の支軸39は、ピッチ微調整可能にシート穴31の穴径より細いことが好ましい。この場合、図2及び図3に示すように、シート穴31と支軸39との間に隙間38が生じることによって、シート穴31に対してクランプ33が移動可能となり、クランプピッチP1(図14参照)の微調整等が可能となる。なお、シート穴31をピッチ調整の方向に長い長穴としても良い。但し、シート穴31の基本的な位置は、第2の片面自己粘着シート材29の成形時に、プレス加工等によって一体的に位置決めされる。これにより、従来の手作業によるクランプ33の取り付けに比べ極めて高い精度でクランプ位置が位置決めされるようになっている。
【0030】
このようにして、クランプ付ワイヤーハーネス11は、ボディやドア等の被取付体43(図5参照)の取付位置に合わせて所定ピッチに複数のクランプ33を保持した片面自己粘着シート17によってワイヤーハーネス13が外装されることになる。
【0031】
図5はクランプ33を介して被取付体43に取り付けられたクランプ付ワイヤーハーネス11の断面図、図6は複数箇所にクランプ33が設けられたクランプ付ワイヤーハーネス11の断面図である。
本実施の形態では、クランプ付ワイヤーハーネス11の片面自己粘着シート17の表面材15が、防水性を有する。すなわち、表面材15が上記した例えばPPやPETからなる。クランプ33には、クランプ33が被取付体43に取り付けられたときに、被取付体43に片面自己粘着シート17の表面材15を密着させる上記したシール面圧生成部37が形成されている。
【0032】
クランプ付ワイヤーハーネス11では、クランプ33が被取付体43のクランプ穴47に取り付けられると、クランプ33のシール面圧生成部37が片面自己粘着シート17の表面材15を被取付体43に押しつける。シール面圧生成部37は、クランプ33の支軸39を中心に円形面でシール圧を第2の片面自己粘着シート材29に加える。これにより、被取付体43との当たり面が広く取れるようになり、シール面49が安定して、確実な防水性が確保される。また、表面材15が防水性を有する一枚の第2の片面自己粘着シート材29に複数のクランプ33が取り付けられるため、図6に示すように、防水必要箇所のクランプ個々のパッキンを不要として構成部品点数を削減し、パッキン取付作業を省略することができる。
【0033】
次に、図7及び図8を参照して上記のクランプ付ワイヤーハーネス11の組立方法を説明する。
図7は図1に示したクランプ付ワイヤーハーネス11の分解図、図8は図1に示したA部におけるクランプ33近傍のワイヤーハーネス13と直交する方向の面の分解断面図である。
クランプ付ワイヤーハーネス11を組み立てるには、先ず、作業台等に第2の片面自己粘着シート29が敷かれる。第2の片面自己粘着シート材29は、特殊粘着剤層25を上にする。この第2の片面自己粘着シート材29を下敷きにしてその上に所定の配索形態(本実施形態においては、ドア501の配索経路に合わせた配索形態)に予め布線されたワイヤーハーネス13を置く。第2の片面自己粘着シート材29のシート穴31にはクランプ33があらかじめ挿通されるが、ワイヤーハーネス13の載置と共にクランプ33をシート穴31に挿通して組み付けてもよい。
【0034】
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から第1の片面自己粘着シート材27を被せる。第1の片面自己粘着シート材27は特殊粘着剤層25を下にする。ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29とを圧着する。これにより、複数のクランプ33が所定ピッチで取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート17に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス11が完成する(図1参照)。
【0035】
次に、上記構成を有するクランプ付ワイヤーハーネス11の作用及び効果を説明する。
上記第1実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス11では、ドア501の配索経路に合わせて所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネス13を片面自己粘着シート17で挟んで外装するだけで、電線の曲り箇所3Aや分岐箇所3B、直線状箇所3C等の配索形態が保持される(図7参照)。そこで、ハーネス取付作業時には、ドア501の配索経路に合わせてクランプ付ワイヤーハーネス11を容易に取り付けることができる。
【0036】
更に、片面自己粘着シート17は、外形形状がワイヤーハーネス13の配索経路形状に合わせて予め成形されることで、電線の曲り箇所13Aや分岐箇所13B、クランプ33を取り付けるシート穴57の位置をワイヤーハーネス13の配索位置からオフセットさせる為に突出している部分(E部)や片面自己粘着シート17の一方の面から複数のクランプ33が突出して目視が容易なクランプ取付位置等のワイヤーハーネス13の取付基準部分を片面自己粘着シート17で覆われたクランプ付ワイヤーハーネス11の外観からも視認することができる。そこで、ハーネス取付け時のクランプ付ワイヤーハーネス11は、ドア501における配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が更に向上する。また、片面自己粘着シート17の余分な部分を減らして軽量化を図ると共に配索スペースをコンパクトにできる。
【0037】
また、クランプ付ワイヤーハーネス11では、クランプ33を保持するためのシート穴31がプレス加工等により予め片面自己粘着シート17に開けられ、クランプの現状の手作業による取り付けに比べ、高いピッチ精度が得られるようになる。クランプ33を保持できる片面自己粘着シート17にてワイヤーハーネス13が外装されるので、現状で取り付けられている複数の部品(結束テープ、防音シート、クランプ取付テープ等)が統合され、組み立てに必要であった部品の大部分が削減されて、治具上での組立作業工程が大幅に削減される。
【0038】
また、片面自己粘着シート17がパッキンを兼用するので、クランプ33ごとのパッキン取付作業が不要となる。これに加え、個別のクランプ33に設けていたパッキンが片面自己粘着シート17と一体となるので、防水シール面が拡大し、パッキンのズレ、捲れ、変形等が無くなり、防水性も格段に高まる。
【0039】
したがって、本実施の形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス11によれば、クランプ33のワイヤーハーネス13に対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネス13の組立作業工数を削減でき、しかも、パッキンを不要にして防水性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態の片面自己粘着シート17では、図7に示したように、二枚の第1の片面自己粘着シート材27と第2の片面自己粘着シート材29を用いる構成を説明したが、本発明に係る片面粘着シートはこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネスが片面粘着シートによって外装されるものであれば、種々の形態を採ることができる。
【0041】
図9は本発明の第2実施形態に係るクランプ付ワイヤーハーネス51の分解図、図10は図9に示したE部におけるクランプ33近傍のワイヤーハーネス13と直交する方向の面の分解断面図、図11は図10に示したクランプ33近傍においてワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス51の断面図である。なお、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図9〜図11に示したクランプ付ワイヤーハーネス51は、ワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50によって外装される。
本第2実施形態で用いられる片面自己粘着シート50は、図9に示すように、第1の片面自己粘着シート材53と第2の片面自己粘着シート材55を一体化させた一枚のシートで、折り目部60で折り重ねた際にワイヤーハーネス13の配索経路形状になるように外形状が予め成形される。
図10に示すように、第2の片面自己粘着シート材55の所定位置にはシート穴57が穿設され、このシート穴57にはクランプ33が挿通される。シート穴57にクランプが挿通された片面自己粘着シート50は、クランプ・シート組立体を構成する。
【0043】
そして、クランプ付ワイヤーハーネス51を組み立てるには、先ず、作業台等に特殊粘着剤層25を上にして片面自己粘着シート50を敷く。この片面自己粘着シート50における第2の片面自己粘着シート材55を下敷きにしてその上に所定の配索形態に予め布線されたワイヤーハーネス13を置く。
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から折り目部60で折り重ねた第1の片面自己粘着シート材53を被せる。
【0044】
図11に示すように、ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材53の特殊粘着剤層25と第2の片面自己粘着シート材55の特殊粘着剤層25とを貼り合わせて圧着する。これにより、複数のクランプ33が所定ピッチで取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート50に挟着保持されたクランプ付ワイヤーハーネス51が完成する。
【0045】
なお、図9に示したE部においては、片面自己粘着シート50に穿設されるシート穴57の位置が、ワイヤーハーネス13の配索位置からオフセットされているので、横に並べられたクランプ33の高さとワイヤーハーネス13の高さとが積算されず、被取付体43からのワイヤーハーネス13の取付高さが低く抑えられる(図11参照)。
【0046】
したがって、本第2実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス51は、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様に、クランプ33のワイヤーハーネス13に対する取付ピッチ精度を向上させることができるとともに、ワイヤーハーネス13の組立作業工数を削減でき、しかも、パッキンを不要にして防水性を向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態のクランプ付ワイヤーハーネス11,51では、ワイヤーハーネス13の配索形態を保持するために片面自己粘着シート17,50がワイヤーハーネス13の略全体に外装された構成を説明したが、本発明に係るワイヤーハーネスはこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネス13が部分的に片面粘着シートによって外装されるものでもよい。
【0048】
図12は本発明の第3実施形態に係るワイヤーハーネス71の分解斜視図、図13は図12に示したワイヤーハーネス71の組立後の斜視図である。なお、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図12及び図13に示したワイヤーハーネス71は、ワイヤーハーネス13の一部が片面自己粘着シート70によって外装される。
本第3実施形態で用いられる片面自己粘着シート70は、第1の片面自己粘着シート材73と第2の片面自己粘着シート材75からなる(図12参照)。第1の片面自己粘着シート材73は、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、外形状が図12のワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及び直線箇所13Cに対応する配索経路形状の一部分に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材75は、第1の片面自己粘着シート材73と同様に、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材73と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。第2の片面自己粘着シート材75の所定位置(直線箇所13Cに対して所定間隔有する位置)には、シート穴72が穿設される。このシート穴72にはクランプ33が挿通される。シート穴72にクランプ33が挿通された第2の片面自己粘着シート材75は、クランプ・シート組立体を構成する。
【0050】
そして、ワイヤーハーネス71を組み立てるには、先ず、作業台等に特殊粘着剤層25を上にして第2の片面自己粘着シート材75を敷く。この第2の片面自己粘着シート材75を下敷きにしてその上に所定の配索形態に予め布線されたワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及び直線箇所13Cを置く。
【0051】
ワイヤーハーネス13を載置したなら、その上から第1の片面自己粘着シート材73を被せる。第1の片面自己粘着シート材73は特殊粘着剤層25を下にする。ワイヤーハーネス13とクランプ33のシール面圧生成部37とが挟まれた状態で、第1の片面自己粘着シート材73と第2の片面自己粘着シート材75とを圧着する。
これにより、図13に示すように、クランプ33が取り付けられ、同時にワイヤーハーネス13が片面自己粘着シート70に挟んで保持されたワイヤーハーネス71が完成する。
【0052】
従って、本第3実施形態のワイヤーハーネス71は、ハーネス取付け時に被取付体43の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13A、分岐箇所13B及びシート穴72に対応する外形状部が、プレス加工等により予め片面自己粘着シート70に形成される為、これら取付基準部分の高い間隔精度が得られるようになる。
【0053】
この様に、本第3実施形態のワイヤーハーネス71は、被取付体43の複数の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13A及び分岐箇所13B等の少なくともいずれか2箇所を含むワイヤーハーネス13の部分的に片面自己粘着シート70を外装することで、上記第1実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス11と同様に、ハーネス取付け時には被取付体43の配索経路の複数の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が向上する。
なお、上記第3実施形態のクランプ付ワイヤーハーネス71では、ワイヤーハーネス13が部分的に片面自己粘着シート70で外装される構成を説明したが、ワイヤーハーネス13が片面粘着シートによって外装されるものでもよい。
【0054】
図14は本発明の第4実施形態に係るワイヤーハーネス81の要部斜視図である。
図14に示したワイヤーハーネス81は、ワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13A付近のみが片面自己粘着シート80によって外装される。
本第4実施形態で用いられる片面自己粘着シート80は、第1の片面自己粘着シート材83と第2の片面自己粘着シート材85からなる。第1の片面自己粘着シート材83は、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、外形状がワイヤーハーネス13における電線の曲り箇所13Aに対応する配索経路形状の一部分に合わせて成形される。第2の片面自己粘着シート材85は、第1の片面自己粘着シート材83と同様に、シート基材28の表裏面に表面材15及び特殊粘着剤層25が積層されたシートで、第1の片面自己粘着シート材83と粘着面(裏面)同士が合わされる形状に成形される。
【0055】
この様に、本第4実施形態のワイヤーハーネス81は、被取付体43の固定部位に対して取付基準部分となる電線の曲り箇所13Aを少なくとも含むワイヤーハーネス13の一部に片面自己粘着シート80を外装することで、ハーネス取付け時には被取付体43の配索経路の固定部位に対する取付基準部分の位置決めが容易になり、取付作業性が向上する。
なお、被取付体43の固定部位に対する取付基準部分としては、ワイヤーハーネス13の曲り箇所13Aに限らず、分岐箇所13Bを少なくとも含むワイヤーハーネス13の一部に合わせて成形された片面自己粘着シート80を外装してもよく、クランプ33を併設してもよい。
【0056】
また、ワイヤーハーネスの直線箇所を部分的に長尺状の片面粘着シートによって外装し、この片面粘着シートの長手方向に沿って複数のクランプ33を所定ピッチで取り付けたワイヤーハーネスを構成することもできる。
以上、本発明のワイヤーハーネスを詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、前述した各実施形態に限定されるものではなく、この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
11 クランプ付ワイヤーハーネス(ワイヤーハーネス)
13 ワイヤーハーネス
15 表面材
17 片面自己粘着シート
25 特殊粘着剤層
31 シート穴
33 クランプ
37 シール面圧生成部
39 支軸
43 被取付体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に対する所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装することにより、前記配索形態を保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体に対するワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせた外形状に成形されることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定間隔に形成された電線の曲り箇所及び分岐箇所の少なくともいずれか2箇所に対応する外形状部を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて前記電線の曲り箇所又は分岐箇所に対して所定間隔に開けられたシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1又は2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項4又は5記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートの粘着面に対する反対側の表面材が、防水性を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記クランプを挿通するための前記片面粘着シートに穿設されるシート穴の位置が、前記ワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項8】
請求項7記載のワイヤーハーネスであって、
前記シート穴に挿通される前記クランプの支軸が、前記シート穴の穴径より細いことを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項9】
請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記クランプには、該クランプが前記被取付体に取り付けられたときに該被取付体に前記片面粘着シートを密着させるシール面圧生成部が形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、自身の粘着面同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項1】
被取付体に対する所定の配索形態に布線されたワイヤーハーネスを片面粘着シートで挟んで外装することにより、前記配索形態を保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体に対するワイヤーハーネスの配索経路形状に合わせた外形状に成形されることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定間隔に形成された電線の曲り箇所及び分岐箇所の少なくともいずれか2箇所に対応する外形状部を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて前記電線の曲り箇所又は分岐箇所に対して所定間隔に開けられたシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1又は2記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、被取付体の取付位置に合わせて所定ピッチに開けられた複数のシート穴にクランプを保持することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項4又は5記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートの粘着面に対する反対側の表面材が、防水性を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記クランプを挿通するための前記片面粘着シートに穿設されるシート穴の位置が、前記ワイヤーハーネスの配索位置からオフセットされていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項8】
請求項7記載のワイヤーハーネスであって、
前記シート穴に挿通される前記クランプの支軸が、前記シート穴の穴径より細いことを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項9】
請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記クランプには、該クランプが前記被取付体に取り付けられたときに該被取付体に前記片面粘着シートを密着させるシール面圧生成部が形成されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記片面粘着シートが、自身の粘着面同士を合わせることによってのみ貼り合わすことができる自己粘着シートであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−161234(P2012−161234A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158286(P2011−158286)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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