ワクチン増強剤としてのαチモシンペプチド
本発明は、ワクチン接種に対する非応答者および低応答者を含む、免疫不全もしくは易感染性の患者のためのものを含む、ワクチン接種の方法ならびにワクチンの有効性を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。本明細書に開示されているように、本発明はより高い抗体価を提供し、そのような抗体価の発生を加速し、および/またはそのような抗体価のより長い持続時間を提供し、これにより、より高い保護効果を提供するための、ワクチンの投与およびチモシンαペプチドの投与計画に関する。別の局面において、本発明は、チモシンペプチドの投与計画での投与によって、インフルエンザワクチン投与量等のワクチン投与量を減少させることを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2010年4月12日出願の米国仮出願第61/323,155号、および2009年5月8日出願の米国仮出願第61/176,625号、および2009年8月28日出願の米国仮出願第61/237,932号に優先権を主張し、これらの各々は参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ワクチンの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒト、家畜およびペットは、疾患を予防するため、もしくは疾患の重症度を減少させるために、しばしばワクチン接種される。ワクチン接種は、ワクチン中に使用された抗原物質と特異的に結合できる血清タンパク質である抗体の産生をもたらす。この体液性応答は、抗体産生血漿細胞のクローンを得るためのBリンパ球の特定の系統の選択、ならびに選択された細胞の増殖および分化を含む。
【0004】
抗体産生は免疫感作後の数週間以内に頂点に達し、その後徐々に低下する。血清タンパク質は常に代謝回転しているため、抗体産生の低下は抗体の循環レベルの対応する低下を伴う。しかしながら、患者が同一の抗原に再度攻撃された場合には、新しい応答曲線は最初のものよりも、より速くかつより強く開始される。これは二次応答、追加免疫(booster)応答、もしくは既往反応と呼ばれ、健常な患者において初回暴露もしくは一次免疫よりも、抗原に対してより高い親和性を持ったより高い抗体レベルをもたらす。抗体合成の速度の増大は、抗体産生血漿細胞の数が増大した結果である。これらの細胞は免疫されていない患者のリンパ節には稀であり、そこには主に小リンパ球が含まれる。しかしながら、健常な患者では、一次免疫の後には血漿細胞が全リンパ節細胞の最大3%を構成し、二次免疫の後にはリンパ節細胞の30%をも構成する。
【0005】
二次応答は、免疫記憶によるものであると言われる。すなわち、健常な生物は抗原に対する事前暴露を「思い出す」ことができ、その間に血清中の特定の抗体の量がとても低いレベルにまで低下していたとしてすら、二度目に暴露されたときには、より素早くかつ効率的に反応できる。
【0006】
加齢、栄養障害、薬物依存、アルコール依存症等の特定の状態、ならびに糖尿病、慢性腎疾患、およびAIDS等の特定の病態は免疫不全(例えば易感染性の被験体)を引き起こし、多くの免疫応答が消失してワクチン接種の有効性が減少する。したがって、当技術分野においては、特に免疫不全患者のために改善されたワクチンおよびワクチン接種の方法が必要とされ続けている。
【0007】
患者にTA1を数回投与することでワクチン接種に関連した免疫を強化するための、いくらかの展望が示されている。例えば、McConnell et al. (The Gerontologist 29:188A (1989))(非特許文献1)は、高齢患者に毎週2回TA1を注射し、全部で8回注射したところ、インフルエンザのワクチン接種に応答した抗体産生が強化されることを示している。Shen et al. (Kidney International 31:217 (1987))(非特許文献2)は、(以前はB型肝炎のワクチン接種に非反応性であった)血液透析患者にTA1を5回注射したところ、B型肝炎のワクチン接種に対する抗体応答を強化できることを示している。しかしながら、ワクチンの有効性を強化するための、より便利で効率的かつ費用対効果の高い戦略が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】McConnell et al. (The Gerontologist 29:188A (1989))
【非特許文献2】Shen et al. (Kidney International 31:217 (1987))
【発明の概要】
【0009】
本発明は、免疫不全もしくは易感染性の患者のためのものを含む、ワクチン接種の方法ならびにワクチンの有効性を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。本発明は、ワクチンの有効性を強化するために、1回以上のチモシンペプチドとともにワクチンを投与することを含む。本明細書に開示されているように、本発明はより高い抗体価、および/またはワクチン接種に対するより速い応答、および/または抗体価のより長い持続時間を提供し、これによりワクチン接種に不応性もしくは低応答者である個人に対してさえも、患者へのより高い保護効果を提供する。例えば、様々な態様において、本発明はワクチン接種に不応性もしくは低応答者のためのものを含む、ワクチン接種に応答した血清転換および/または血清保護の可能性を改善するか、もしくは発生を加速する。特定の態様において、本発明はワクチン抗原に対する患者の応答を強化するためのチモシンペプチドの投与計画を提供することによって、ワクチン投与量の節約を提供する。
【0010】
一つの局面において、本発明はワクチンに対する被験体の応答を強化するための方法を提供する。本方法は、抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または抗体価(例えば防御抗体価)の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体にチモシンペプチド(例えばチモシンα1もしくは「TA1」)を投与することを含む。特定の態様において、被験体はヒトであり、高齢患者、糖尿病患者、または慢性腎疾患、AIDS、もしくは他の易感染性とする(immunocompromising)疾病または栄養障害、薬物乱用、もしくはアルコール依存症を含む状態を患う患者等の、免疫不全もしくは易感染性であってもよい。被験体は、ワクチン接種に対して低応答者であってもよい。
【0011】
この局面において、本発明はいくつもの感染症のため等の、ワクチン接種が容認された治療もしくは予防である任意の状態のためのワクチン接種を含んでよい。例えば、様々な態様において、感染症はA型インフルエンザ(例えばH1N1および/またはH5N1)、B型インフルエンザ、もしくはSARSの感染等の急性ウイルス感染によってもたらされ、またはB型肝炎もしくはC型肝炎等の慢性感染症であり、またはAIDS等の免疫不全がもたらされる感染症である。本発明に従ってワクチン接種が強化されるかもしれない様々な他の種類の感染症および他の状態は本明細書に記載されている。ワクチン接種は一次ワクチン接種もしくは二次ワクチン接種(例えば追加免疫)であってよい。
【0012】
ワクチン接種は、汎発性インフルエンザもしくは生物テロ物質(例えば炭疽菌)等の汎発性疾病に対するものであってもよい。本明細書に開示されているように、本発明は患者をより早く保護するために抗体価の発生の加速を助け、このことは潜在的に汎発性の疾病を予防し、または生物テロの攻撃もしくは脅威の影響を減少させるのに重要であり得る。
【0013】
この局面に従って、チモシンペプチド(例えばTA1)は抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体に投与される。例えば、チモシンペプチドは少なくとも約0.5mg(例えば1.6mg)、もしくは少なくとも約3mg(例えば3.2mg)、もしくは少なくとも約5mg(例えば6.4mg)に対応する投与量でヒト患者に投与されてもよい。チモシンペプチド(例えばTA1)は、約2から約8mg以内、もしくは約3から約7mg以内(例えば約3.2もしくは約6.4mg)の投与量で投与されてもよい。チモシンペプチドは、通常は1から4回まで、もしくは1から3回まで投与され、そして特定の態様においては、1回もしくは2回投与される。これらのもしくは他の態様において、TA1は約5日間から約9日間の間隔を置く等の、約1日間から約10日間まで間隔を置いて、例えば約7日間の間隔を置いて患者に投与される。例えば、チモシンペプチドはワクチン接種の前に、例えば1から10日間まで前に、もしくは5から9日間まで前に、およびワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドはワクチン接種の約7日間前に、およびワクチン接種の日に再度投与されてもよい。本明細書に開示されているように、(H1N1ワクチン接種について本明細書に示されているように)ワクチン接種の前およびワクチン接種の日に再度チモシンペプチドを投与することで、血清転換および/または血清保護を達成した易感染性の患者数の統計的に有意な増大が引き起こされ、抗体価の発生が加速される。
【0014】
同一の日に投与される場合には、ワクチンおよびαチモシンペプチドは別々もしくは単一の注射で一緒に投与され得る。
【0015】
TA1が一次ワクチン接種の前に、および/または同時に投与される場合には、特定の態様において、追加免疫のワクチン接種が投与されてもよい。しかしながら、他の態様においては、追加免疫のワクチンは必要ではない。追加免疫のワクチン接種が望ましい場合(例えば、一次ワクチン接種の後に患者が血清転換もしくは血清保護を達成できない場合)は、追加免疫のワクチン接種の日における1回以上のチモシン等の、1回以上のチモシンペプチド(例えば1、2、3、もしくは4回)が追加免疫の前(例えば4、5、6、もしくは7日間前を含む、約1から10日間以内前)に投与されてもよい。
【0016】
別の局面において、本発明は便利なワクチン強化のための薬学的組合せおよびキットを提供する。本明細書により詳しく記載されているように、組合せおよびキットは本発明の方法を実施するための個々の投与単位におけるワクチン組成物およびチモシンペプチドを含む。通常は、薬学的組合せもしくはキットは、被験体において病原体に対する抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチンを含む。典型的なワクチン組成物は本明細書に記載されており、急性および慢性のウイルス性、細菌性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンを含み、ある態様においては、インフルエンザもしくは肝炎ワクチンである。ワクチン組成物は腫瘍抗原を含んでいてもよい。ワクチンは、死滅したもしくは不活化された感染性物質(例えばウイルス)、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、組換えワクチン、もしくはトキソイドワクチン等の様々な種類のワクチンから選択されてよい。ワクチンはウイルスベクターを含んでもよく、もしくはウイルス様粒子(VLPs)を含んでもよい。ワクチンは中でも、生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、または不活化もしくは死滅ウイルスワクチンであってよい。ワクチンはアジュバント化されていてもアジュバント化されていなくてもよい。
【0017】
薬学的組合せもしくはキットは、(本明細書に詳しく記載されているように)さらにワクチン強化量のαチモシンペプチドを含み、これは被験体において、ワクチンに応答した抗体の産生および/または持続時間を強化する。通常は、チモシンペプチドはワクチンに対する独立した投与のために包装されており、1、2、3、もしくは4の個々の投与単位で提供されてよい。
【0018】
特定の態様において、組合せもしくはキットは有効量のチモシンペプチド(例えばTA1)を含む第一の投与単位、(アジュバント化されたもしくはアジュバント化されていない)ワクチンおよび(単一もしくはワクチンに対する別々の投与単位における)有効量のチモシンペプチドを含む第二の投与単位を含む。他の態様において、本発明は1もしくは2のワクチン組成物、および1、2、3、もしくは4のチモシン投与単位を含むキットの形態をとる。そのようなチモシン投与単位は、本明細書に記載された投与量、例えば0.1および20mgの間、そしてある態様においては、約もしくは少なくとも3.2mgまたは約6.4mgのチモシンペプチドを含んでもよい。各々の態様において、チモシンペプチドの個々の投与単位は投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは前もって投与量とされた(pre-dosed)ペン等で提供されてもよい。
【0019】
さらに他の局面において、本発明はワクチン強化のためのキットであって、それぞれが独立して約(または少なくとも)3.2もしくは約6.4mg等の本明細書に記載された投与量(例えば0.1および20mgの間)である、正確に1もしくは2のTA1投与単位を含むキットを提供する。キットは、ある態様において、ワクチン成分を提供する必要はない。個々の投与単位のチモシンペプチドは、投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは(例えば、前もって投与量とされたペン等による)皮下注射のための水性懸濁液で提供されてもよい。2つの投与単位は販売のために一緒に包装され、ワクチンの有効性を強化するために、任意でTA1の再構成のための水性希釈剤とともに包装される。
【0020】
別の局面において、本発明はワクチン投与量を減少させる方法を提供する。本方法はワクチン、例えばインフルエンザワクチンもしくは他のワクチンの認可された投与量を減少させ、チモシンペプチドの投与計画とともに減少させた投与量を投与することを含む。チモシンペプチドは、本明細書に記載された投与量および投与計画で投与されてもよい。特定の態様において、ワクチンはインフルエンザウイルスワクチンであり、15μg未満の任意の一種類の死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルス株を含む。例えば、ワクチンは表示された各株からの、2μgから約12μgまでの死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルスを含んでもよい。
【0021】
本発明の他の目的および局面は、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Fluvirin(登録商標)の投与に関して、示された投与量および様々な時間にチモシンペプチドを与えられた際に、3株のインフルエンザに対して所望の抗体価に達したマウスの数を示す。
【図2】ワクチンの投与(Fluvirin(登録商標))に関して、示された投与量および様々な時間にチモシンペプチドを与えられた際に、所望の抗体価に達したマウスの数を示す。示されているように、ワクチンと同時およびワクチンの7日間前にチモシンペプチドを与えられたマウスは、3株のインフルエンザに対してすべて保護されていた。
【図3】3.2および6.4mgのチモシンのヒト等価物を、アジュバント化されていないワクチンと同日に、そしていくつかの場合には7日間前に投与した際に、フェレットにおいて達成された抗体価を示す。アジュバント化されたワクチンを陽性対照として示す。
【図4】血液透析を必要とする末期腎疾患の患者における結果を示す。患者は、(Focetria(商標)による)ワクチン接種の当日および7日間前にチモシンペプチドを与えられた。左図は、21日目に血清保護を達成した患者の百分率を示す。右図は、21日目に抗体価の少なくとも4倍の増大を達成した患者の百分率を示す。
【図5】血液透析を必要とする末期腎疾患の患者における結果を示す。患者は、(Focetria(商標)による)ワクチン接種の当日および7日間前にチモシンペプチドを与えられた。グラフは、ワクチン接種に続く21日間の期間にわたる抗体価の発生を示す。
【図6A】インフルエンザワクチンのみ、または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画とともに与えられた患者における血清転換の百分率および抗体価(幾何平均比もしくはGMR)を示す。血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちHI力価<1:10)かつワクチン接種後にHI力価≧1:40もしくはワクチン接種前に非陰性(≧1:10)のHI力価からの4倍増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均HI力価の比。図6Aは、21日目の結果を示す。
【図6B】インフルエンザワクチンのみ、または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画とともに与えられた患者における血清転換の百分率および抗体価(幾何平均比もしくはGMR)を示す。血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちHI力価<1:10)かつワクチン接種後にHI力価≧1:40もしくはワクチン接種前に非陰性(≧1:10)のHI力価からの4倍増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均HI力価の比。図6Bは、42日目の結果を示す。
【図7A】1回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図7Aは、21日目の結果を示す。
【図7B】1回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図7Bは、42日目の結果を示す。
【図8A】2回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図8Aは、21日目の結果を示す。
【図8B】2回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図8Bは、42日目の結果を示す。
【図9】2回のインフルエンザワクチンを与えられた患者における42日目の血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を、1回のワクチンおよび2回のTA1の投与計画を与えられた患者と比較して示す。
【図10A】ベースラインにおいて陰性(HI力価<1:10)であった患者における血清転換の百分率およびワクチン接種後の力価が>1:40の百分率を示す。図10Aは、21日目の結果を示す。
【図10B】ベースラインにおいて陰性(HI力価<1:10)であった患者における血清転換の百分率およびワクチン接種後の力価が>1:40の百分率を示す。図10Bは、42日目の結果を示す。
【図11】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる血清転換(HI試験)を95%信頼区間とともに示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図12】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる血清保護(HI試験)を95%信頼区間とともに示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図13】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる幾何平均力価(HI試験)を、95%信頼区間を含めて示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図14】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる幾何平均比(HI試験)を、95%信頼区間を含めて示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図15】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清転換もしくは有意な増大(95% CI)を示す(HI試験)。
【図16】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清保護(95% CI)を示す(HI試験)。
【図17】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均力価(95% CI)を示す(HI試験)。
【図18】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均比(95% CI)を示す(HI試験)。
【図19】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清転換もしくは有意な増大(95% CI)を示す(SRH試験)。
【図20】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均面積(95% CI)を示す(SHR試験)。
【図21】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均比(95% CI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫不全もしくは易感染性の患者、またはワクチン接種に不応性もしくは低応答者である患者のためのものを含む、ワクチン接種を強化するための方法ならびにワクチンの有効性を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。本明細書に開示されているように、本発明はより高い抗体価を提供でき、および/または防御抗体価の発生を加速でき、および/またはそのような抗体価のより長い持続時間を提供でき、これにより、より高い保護効果(もしくは保護効果のより高い可能性)を提供する。例えば、様々な態様において、本発明はワクチン接種に応答した血清転換および/または血清保護の可能性を改善する。
【0024】
通常は、本発明はワクチンの有効性を強化するためにαチモシンペプチド(「チモシンペプチド」)を投与することを含む。チモシンペプチドは、チモシンα1(「TA1」)およびTA1に構造的相同性を有するペプチドを含む。TA1は、アミノ酸配列(N-アセチル)-Ser-Asp-Ala-Ala-Val-Asp-Thr-Ser-Ser-Glu-Ile-Thr-Thr-Lys-Asp-Leu-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Val-Val-Glu-Glu-Ala-Glu-Asn-OH(配列番号:1)を有するペプチドである。TA1のアミノ酸配列は米国特許第4,079,137号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。TA1は、アセチル化されたN末端および約3108の分子量を有するグリコシル化されていない28アミノ酸ペプチドである。TA1の合成版はZADAXINの商品名で特定の国において市販されている。
【0025】
TA1は血清中を約0.1から1.0ng/mlで循環している。3.2mgのTA1(約40μg/kg)を注射した後のピーク血漿レベルは約100ng/mlである。血液循環中のTA1の半減期は約2時間である。
【0026】
チモシンαはウシ胸腺から最初に単離され、そこで「免疫機能」を再構成することが胸腺摘出動物モデルにおいて示された。チモシンは炎症性および先天性の免疫応答において役割を果たし、哺乳動物において自己の非自己からの区別を助長すると考えられている。チモシンによるPAMP(pathogen-associated molecular patterns)リガンドの活性化によって細胞内シグナル伝達経路の刺激が引き起こされ、共刺激分子、炎症誘発性サイトカイン、一酸化窒素、およびエイコサノイドの発現がもたらされる。チモシンは、例えば樹状細胞、T細胞、B細胞、およびNK細胞に影響を及ぼすかもしれない。
【0027】
理論に拘束されることは意図していないが、チモシンペプチド(例えばTA1)は、中でもToll様レセプター9(TLR)を活性化し、結果としてTh1細胞、B細胞、およびNK細胞の増大をもたらして、これによりワクチン有効性の強化を引き起こすと考えられている。例えば、TA1はリンパ球の浸潤、走化性サイトカインの分泌、樹状細胞の成熟および分化、IFN-α、IL-7、およびIL-15を含むサイモポイエチンの(thymopoietic)サイトカインの分泌、ならびにB細胞の抗体産生を増大もしくは強化するかもしれない。
【0028】
本発明で使用が見出されるチモシンペプチドは、天然のTA1(例えば組織から精製もしくは単離したTA1)、ならびに合成TA1および組換えTA1を含む。ある態様において、チモシンペプチドは(任意でN末端がアシル化、例えばアセチル化された)配列番号:1のアミノ酸配列を含む。ある態様において、チモシンペプチドはTA1と実質的に類似したアミノ酸配列を含み、TA1の免疫調節活性を維持する。実質的に類似した配列は、例えばTA1に対して(合わせて)約1から約10までのアミノ酸の欠失、挿入、および/または置換を有していてもよい。例えば、チモシンペプチドはTA1に対して(合わせて)約1から約5まで(例えば1、2、もしくは3)のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換を有していてもよい。
【0029】
したがって、チモシンペプチドは例えばTA1に対して1から約10アミノ酸まで、もしくは約1から5アミノ酸まで、または1、2、もしくは3アミノ酸の欠失を有する省略されたTA1配列を含んでいてもよい。そのような欠失は、ペプチドの免疫調節活性が実質的に維持されている限り、NもしくはC末端、および/または内部にあってもよい。あるいは、もしくは加えて、実質的に類似した配列はTA1の免疫調節活性を実質的に維持し、TA1に対して約1から約5アミノ酸までの挿入(例えば1、2、もしくは3アミノ酸の挿入)を有していてもよい。あるいは、もしくは加えて、実質的に類似した配列は免疫調節活性を実質的に維持し、1から約10アミノ酸までの置換を有していてもよい。例えば、実質的に類似した配列は1から約5まで、または1、2、もしくは3アミノ酸の置換を有していてもよく、それは保存的および非保存的置換を含んでいてよい。ある態様において、置換は保存的である。通常は、保存的置換は化学的に類似したアミノ酸(例えば有極性、無極性、もしくは帯電)の置換を含む。置換されたアミノ酸は、20の標準的アミノ酸より選択されてもよく、もしくは非標準的アミノ酸(例えば、保存された非標準的アミノ酸)であってもよい。
【0030】
ある態様において、チモシンペプチドはTA1の免疫調節活性を維持する一方で、配列番号:1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、チモシンペプチドは配列番号:1に対して少なくとも80%、90%、もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。チモシンペプチドは配列番号:1に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。すべての場合において、N末端は例えばC1-10もしくはC1-C7アシルまたはアルキル基により、任意でアシル化(例えばアセチル化)またはアルキル化されていてもよい。
【0031】
特定の態様において、上記の実質的に類似した相同なペプチドはTA1(配列番号:1)に比べて少なくとも約50%、70%、80%、90%、もしくは約100%のレベルで機能してよい。
【0032】
チモシンペプチドは、例えば固相合成によって合成的に調製されてもよく、もしくは組換え的に作製されてもよい。
【0033】
チモシンペプチドは凍結乾燥の形態で提供され、投与前に滅菌された(例えば水性)希釈剤で再構成されてもよい。皮下注射のための剤形を含むチモシンペプチドの剤形は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0034】
特定の態様においては、チモシンペプチドは循環中の半減期を増大させるためにペグ化されている。治療タンパク質の半減期を増大させるためのそのような戦略は周知である。
【0035】
本発明に従って、チモシンペプチド(例えばTA1)は抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体に投与される。本発明は、様々な態様において、比較的少ないTA1の投与をもってこの目標を達成し、これにより治療を患者にとって比較的便利で、効率的で、かつ快適にし、さらにより手頃な価格で効果的にする。
【0036】
本発明は、ヒトおよび動物の健康の両方に適用可能である。したがって、被験体は通常、免疫反応において抗体を形成できる動物であって、様々な態様において、ヒト、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等)、またはペット(例えばネコもしくはイヌ)等の哺乳動物である。ワクチンが鳥インフルエンザのためのものである態様を含む他の態様において、被験体は家畜化された鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、もしくはガチョウ)であってもよい。
【0037】
特定の態様において、被験体は免疫不全である。免疫不全の被験体は、感染症と闘う能力の減少および/またはワクチン接種に応答する能力の減少を呈する被験体(例えばヒト被験体)であってもよい。そのような免疫不全の被験体の例は、高齢患者、もしくは(例えば慢性腎疾患の治療のために)血液透析を受けている患者、AIDS患者、遺伝的欠陥、栄養障害、薬物乱用、アルコール依存症、もしくは癌を含む他の易感染性とする疾病もしくは状態に起因する免疫不全を含む。
【0038】
特定の態様において、患者は対象となるワクチンで以前にワクチン接種されておらず、対象となる抗原もしくは病原体に対する特異的な抗体に陰性であってもよい。他の態様において、患者は疾患もしくは状態について以前にワクチン接種されたが、ワクチン接種に十分に応答しなかった。例えば、患者はそのような態様において、一次ワクチン接種に応答して血清保護を達成しなかった。
【0039】
特定の態様において、被験体は高齢である。動物は年を取ると免疫応答が減少し、低親和性抗体応答が優勢となるためにワクチン接種の有効性が小さくなる。したがって、これらの態様における被験体は、45歳を超えるヒト患者もしくは50歳を超えるヒト患者であってもよい。ある態様において、被験体は60歳以上、65歳以上、もしくは70歳以上のヒト患者である。
【0040】
特定の態様において、被験体はシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、もしくは抗体の産生を減少させる薬剤等の免疫抑制剤で治療中である。例えば、被験体は移植患者であってもよい。移植患者は通常、シクロスポリン等の拒絶反応抑制剤の投与の結果として免疫不全である。
【0041】
ある態様において、患者は(例えば慢性腎疾患のために)血液透析を受けている。血液透析は循環系に到達する必要があるため、血液透析を受けている患者は、その循環系を微生物に暴露するかもしれず、それにより敗血症、心臓弁に影響を与える感染(心内膜炎)もしくは骨に影響を与える感染(骨髄炎)が引き起こされ得る。そのような疾病および患者の状態は、通常、インフルエンザおよび肝炎を含む他の感染症と闘う患者の能力を減退させるかもしれない。
【0042】
ある態様において、被験体は侵襲性の外科的処置、重い損傷、重い創傷もしくは火傷から回復している間に感染(例えば院内感染)する危険性がある。
【0043】
特定の態様において、被験体は悪性腫瘍(例えば黒色腫)を発生する傾向を有し、これはそのような患者において、そのような悪性腫瘍を免疫系が認識できないことによるのかもしれない。
【0044】
ワクチンは、状態の治療もしくは予防のための任意のワクチンであってよく、様々な態様において、感染症のためのワクチンである。本発明は様々なワクチン、ならびに死滅したもしくは不活化された感染性物質(例えばウイルス)を含むワクチン、DNAワクチン、ペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、およびトキソイドワクチンを含むワクチンの種類に適用可能であると考えられている。ワクチンはウイルスベクターを含んでもよく、もしくはウイルス様粒子(VLPs)を含んでもよい。ワクチンは生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、または不活化もしくは死滅ウイルスワクチンであってもよい。
【0045】
適切なワクチンの例は、急性または慢性のウイルス性、細菌性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンを含む。例えば、ワクチンはインフルエンザ、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病、ポリオ、およびポックスウイルス(例えば痘瘡、牛痘、サル痘等)に対するものであってもよい。
【0046】
ワクチンは、ある態様において、多価である。例えば、ワクチンは季節性の三価インフルエンザワクチンであってもよく、または2もしくは3の細菌性および/またはウイルス性の感染性物質からの抗原成分を含んでいてもよい。
【0047】
さらなる典型的なワクチンは、不活化されたポリオワクチン、黄熱ワクチン、日本脳炎ワクチン、アデノウイルスワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、肺炎球菌多糖体ワクチン、炭疽ワクチン、腸チフスワクチン、ペストワクチン、コレラワクチン、結核ワクチン(もしくはカルメット・ゲラン菌ワクチン)、および髄膜炎菌ワクチンを含む。
【0048】
本発明が免疫応答を強化するのに効果的かもしれない、典型的な市販されているワクチンは、次のものを含む:FLUARIX、FLUVIRIN、FOCETRIA、FLUZONE、FLULAVAL、AFLURIA、FLUMISTの商品名の下で入手可能なもの等のインフルエンザワクチン、および同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン;ならびにHAVRIX、VAQTA、ENERIX-B、RECOMBIVAX HB、COMVAX、PEDIARIX、およびTWINRIXの商品名の下で入手可能なもの等の肝炎ワクチン、および同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン。
【0049】
特定の態様に従って、本発明はSARS、RSV等の呼吸器系ウイルス、もしくは例えばA型、B型および/またはC型インフルエンザ、ならびに豚インフルエンザ感染および/または鳥インフルエンザ感染を含む、潜在的に汎発性のインフルエンザウイルス感染を含むインフルエンザウイルスに対するワクチンに適用できる。例えば、本発明は被験体におけるH1N1感染および/またはH5N1感染に対するワクチンに適用できる。
【0050】
インフルエンザは季節的流行において世界中に蔓延し、毎年何十万人の、世界的流行の年にはときどき何百万人の死者をもたらす。インフルエンザに対するワクチン接種は、たいてい先進国の国民および飼育されている鳥類に与えられる。最も一般的なヒトワクチンは、3つのウイルス株からの精製および不活化された材料を含む三価インフルエンザワクチン(TIV)である。一般的に、このワクチンは2つのA型インフルエンザウイルス亜型および1つのB型インフルエンザウイルス株からの材料を含む。TIVは疾患を伝染させる危険性を伴っておらず、反応性がとても低い。
【0051】
特定の態様に従って、本発明はA型インフルエンザ豚インフルエンザおよび/またはA型インフルエンザ鳥インフルエンザに対するワクチンに適用できる。本発明を適用できる豚インフルエンザワクチンはH1N1型、H1N2型、H3N1型、H3N2型および/またはH2N3型に対するワクチンを含むが、それらに限定されない。本発明を適用できる鳥インフルエンザワクチンはH1N1型、H1N8型、H2N9型、H3N8型、H3N2型、H4N6型、H4N3型、H5N3型、H5N9型、H5N1型、H6N2型、H6N8型、H6N5型、H6N1型、H7N7型、H7N1型、H7N3型、H8N4型、H9N2型、H9N6型、H10N7型、H10N8型、H11N6型、H11N9型、H12N5型、H13N6型、H13N4型および/またはH15N9型に対するワクチンを含むが、それらに限定されない。特定の態様において、鳥インフルエンザワクチンはH5N1型、H7N3型、H7N7型および/またはH9N2型に対する。典型的な鳥インフルエンザ株は以下のものを含む:
【0052】
(表1)鳥インフルエンザ株
【0053】
さらなる態様に従って、本発明は被験体におけるC型インフルエンザ豚インフルエンザに対するワクチンに適用できる。
【0054】
他の態様において、ワクチンは癌の治療もしくは予防のためのものであり、ワクチンは1以上の腫瘍抗原を含むか、もしくは自己細胞免疫療法を含んでもよい。癌ワクチンは、PROVENGEの商品名の下で入手可能なものと同一もしくは類似した免疫療法、または類似もしくは同等の治療を含んでもよい。
【0055】
本発明に従って強化されるワクチンは、一次もしくは二次ワクチン接種(例えば追加免疫)であってよい。
【0056】
通常は、ワクチン組成物は各態様において効果的と決定された量、または(例えばチモシンペプチドを投与しない場合に)選択されたワクチンを患者において使用することが政府規制機関によって認可された量(もしくはより少量)で被験体に投与される。免疫応答誘発量はワクチンの組成に依存する。通常は、ワクチンの抗原組成物は約1×10−9gから約1×10−3gまでの範囲内で、そしてより一般的には約1×10−8gから約1×10−4gまでの範囲内で被験体に投与されてよい。ワクチンは、筋肉内もしくは皮下注射、もしくは鼻腔内投与、または対象となる特定のワクチンについて効果的であることが示された他の経路で投与されてよい。
【0057】
ある態様において、本発明はワクチン投与量を減少させるための方法を含む、減少したワクチン投与量を提供する。本方法はワクチン単独について規制機関に認可された投与量よりも少ないワクチンの投与量とともに、本明細書に記載された投与計画でチモシンペプチドを投与することを含む。これらの態様において、本発明はワクチンの節約を可能にし、このことは汎発性疾病もしくは生物テロの脅威に対して集団にワクチン接種するために重要であり得る。特定の態様において、ワクチンはインフルエンザワクチンであり、ワクチンは15μg未満の任意の一種類の死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルス株を含む。例えば、ワクチン(例えばFLUARIXもしくは同等のワクチン)は表示された各株からの、2μgから約12μgまでの死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルスを含んでもよい。
【0058】
チモシンペプチドは抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または防御抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量で被験体に投与される。例えば、様々な態様において、チモシンペプチドは少なくとも約0.5mg(例えば少なくとも約1.6mg)、少なくとも約3mg(例えば少なくとも約3.2mg)、もしくは少なくとも約5mg(例えば少なくとも約6.4mg)のTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される。チモシンペプチドは、通常は約0.1から20mgのTA1、もしくは約1から10mgのTA1、もしくは約2から10mgのTA1、もしくは約2から8mgのTA1、もしくは約2から7mgのTA1に対応する範囲内で投与されてもよい。特定の態様において、投与単位は約3.2もしくは6.4mgのTA1等の、3から6.5mgの範囲内である。投与量は被験体の種もしくは患者に応じて調整されてもよいが、各々の場合において、TA1(mg/kg)のヒト相当量に概ね対応する。
【0059】
チモシンペプチド(例えばTA1)は、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射もしくは点滴、および経口を含む任意の効果的な経路で投与されてよい。特定の態様において、チモシンペプチドは皮下注射によって投与される。通常は、チモシンの予定された投与は単回投与(例えば注射)として投与されてもよく、または例えば持続点滴もしくは反復注射等によって24時間以内にわたって配置されてもよい。チモシンペプチドの予定された投与は、単回注射として投与されてもよい。
【0060】
動けないもしくは入院中の患者のため等の、ある態様において、TA1は持続点滴によって投与されてもよい。TA1の持続点滴は、US 2005/0049191に詳しく記載されており、そのすべての開示は参照により本明細書に組み入れられる。手短に言うと、チモシンペプチドの持続点滴は免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系でより長い期間維持する。皮下注射されたTA1の血漿半減期は約2時間であり、したがって特定の態様に従って、チモシンペプチドは少なくとも約6、10、12時間もしくはより長い治療期間、患者に投与されてもよく、それによりある態様において、有効性が改善されるかもしれない。点滴は、ミニポンプ等の任意の適切な手段によって実行されてよい。
【0061】
あるいは、チモシンペプチドは免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系でより長い期間、実質的かつ連続的に維持するために、治療日に複数回の注射(チモシンペプチドの亜投与量(sub-dose))によって投与され得る。適切な注射の投与計画は、チモシン治療日に免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系で実質的かつ連続的に維持するために、投与の日に2、3、4、6時間等おきに注射すること(例えば2から5回までの注射)を含んでもよい。
【0062】
免疫刺激有効量のチモシンペプチド(例えばTA1)は、患者の体重の約0.0001〜0.1mg/時間/Kgの範囲内の速度でTA1ペプチドを患者に投与することによって患者の循環系で実質的かつ連続的に維持されてもよい。典型的な投与速度は、患者の体重の約0.0003〜0.03mg/時間/Kgの範囲内である。持続点滴のために、TA1ペプチドは注射用水もしくは生理学的濃度の生理食塩水等の薬学的に許容される液体担体中に存在する。
【0063】
チモシンペプチドは、通常は1から4回まで、もしくは1から3回まで投与され、特定の態様においては、(例えば2日間の治療日に)2回投与される。例えば、αチモシンペプチドは一次もしくは二次ワクチン接種の前に、一緒に、および/または後に投与される。本明細書に開示されているように、一次ワクチン接種を強化するためにチモシンペプチドが投与される場合には、後になって任意で追加免疫のワクチン接種が続いて行われてもよい。特定の態様において、ワクチンは、ワクチンの最初の一次投与として投与され、αチモシンペプチドは一次投与の前、同時もしくは後の少なくともいずれかで投与される。特定の態様において、αチモシンペプチドはワクチンの一次投与の後で、かつ該ワクチンの追加免疫の投与の前に投与される。したがって、チモシンペプチドは一次および/または二次ワクチン接種の前に、および一緒に投与されてもよい。
【0064】
チモシン投与の時期は、抗体価(例えば抗体価の発生もしくはレベル)および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を強化するように選択される。例えば、特定の態様において、チモシンペプチドの投与は約5日間から約9日間の間隔を置いて与えられ、様々な態様において、約6、7、もしくは8日間の間隔を置いて投与される。チモシンの投与は、約7日間の間隔を置いて与えられてもよい。他の態様において、チモシンペプチドの投与は1、2、3、もしくは4日間の間隔を置いて与えられる。
【0065】
ある態様において、チモシンペプチドは一次ワクチン接種の前、および一次ワクチン接種の日に再度投与される。例えば、チモシンペプチドは一次ワクチン接種の約5から約9日間まで前等の、一次ワクチン接種の1から10日間まで前に、および一次ワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドは一次ワクチン接種の約7日間前に、および一次ワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドをワクチン接種の前およびワクチン接種の日に再度投与することで、防御抗体価を達成する易感染性の患者の数において統計的に有意な増大が引き起こされる。例えば、本発明に従ってTA1を与えられた患者は、少なくとも21日間、少なくとも42日間、少なくとも84日間、もしくはより長く血清転換を達成するかもしれない。
【0066】
他の態様において、ワクチン接種の方法は、(上述したように)免疫不全の動物に、動物にとって異質である病原体に対する抗体の産生を動物において刺激できる免疫応答誘発ワクチンの第一投与を投与し;その後、第一投与の投与後の約1週間および約2カ月の間の一定期間内に、動物においてワクチンの有効性を強化するために:1)動物においてワクチンに応答して抗体の産生を強化するワクチン有効性強化量のαチモシンペプチド;もしくは2)ワクチン有効性強化量のαチモシンペプチドと一緒にワクチンの追加免疫の投与、のいずれかを動物に投与することを含む。
【0067】
特定の態様において、αチモシンペプチドは免疫応答の誘発においてワクチンの有効性を維持しながら、投与されるワクチンのより少ない投与量を可能にする。したがって、本発明はワクチン投与量の節約を提供し、このことは汎発性インフルエンザ等の汎発性疾病の発生または生物テロの脅威もしくは攻撃から集団を防御するために重要かもしれない。
【0068】
αチモシンペプチドは、二次(追加免疫)ワクチン接種の投与に関連して投与されてもよい。二次もしくは追加免疫のワクチン接種は、通常は第一(一次)ワクチン投与の投与後の約1週間から約2カ月の一定期間内に投与される。特定の態様において、追加免疫のワクチンは第一ワクチン投与から約10から45日間以内、もしくは第一ワクチン投与の投与から約10から30日間以内、そしてある態様に従って、第一ワクチン投与の投与から約10から20日間以内に投与される。しかしながら、追加免疫のワクチン接種は特定の態様においては投与されてもよいが、他の態様においては、追加免疫のワクチンは投与されない。
【0069】
一つの態様に従って、1回以上のチモシンペプチドが二次(追加免疫)ワクチン投与の投与から数日間前(例えば1から10日間前)、例えば二次(追加免疫)ワクチン投与の投与から約2から9日間(例えば約5から7日間)、もしくはある態様において、3から4日間前に被投与個体に投与される。特定の態様において、αチモシンペプチドは二次(追加免疫)ワクチン投与の投与と同時にも投与される。
【0070】
同一の日に投与される場合には、ワクチンおよびαチモシンペプチドは別々もしくは単一の注射で一緒に投与され得る。ワクチンおよびαチモシンペプチドが同時に投与される場合には、それらはワクチンおよびαチモシンペプチドを含む単一の組成物として提供され得る。
【0071】
別の局面において、本発明はワクチン接種のための、もしくはワクチン接種を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。上述したように、および以下の記載に関連して、組合せおよびキットは本発明の方法を実施するための個々の投与単位におけるワクチン組成物およびチモシンペプチドを含む。
【0072】
上記に詳しく記載されているように、薬学的組合せもしくはキットは被験体において抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチンを、(上述したように)個々の投与単位のチモシンペプチドとともに含んでもよい。特定の態様において、本発明はインフルエンザワクチン接種を強化するためのキットであって、1もしくは2投与単位の、例えばFLUARIX、FLUVIRIN、FOCETRIA、FLUZONE、FLULAVAL、AFLURIA、もしくはFLUMISTの商品名の下で入手可能なインフルエンザワクチンまたは同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン等のインフルエンザワクチンを含むキットを提供する。他の態様において、本発明は肝炎ワクチン接種を強化するためのキットを提供し、したがって1もしくは2投与単位の、HAVRIX、VAQTA、ENERIX-B、RECOMBIVAX HB、COMVAX、PEDIARIX、およびTWINRIXの商品名の下で入手可能なものから選択される肝炎ワクチン、ならびに同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン等の肝炎ワクチンを含む。
【0073】
ワクチン組成物に加えて、上記に詳しく記載されているように、薬学的組合せもしくはキットはさらにワクチン有効性強化量のαチモシンペプチドを含む。αチモシンペプチド(例えばTA1)は、1、2、3、もしくは4の投与単位等の個々の投与単位で提供されてもよい。そのような投与単位は、投与前に滅菌希釈剤(これもキットの一成分として提供されてもよい)で再構成されるために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくはさもなければ皮下注射のため等、本明細書に記載されているように注射のための液体懸濁液として製剤されてもよい。例えば、チモシンペプチドは前もって投与量とされたペン等で提供されてもよい。様々な態様において、チモシンペプチドの投与単位は少なくとも約0.5mgのTA1、少なくとも約3mg、少なくとも約5mg、または通常は約0.1から20mgのTA1、もしくは約1から10mgのTA1、もしくは約2から10mgのTA1、もしくは約2から8mgのTA1、もしくは約2から7mgのTA1に対応する範囲内に対応する。特定の態様において、投与単位は約3.2もしくは6.4mgのTA1等の、3から6.5mgの範囲内である。
【0074】
特定の態様において、組合せもしくはキットは本明細書に記載されたような投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mgのTA1)の有効量のチモシンペプチドを含む第一の投与単位、ワクチン(例えば、記載されているように季節性インフルエンザワクチンもしくはH1N1もしくはH5N1ワクチン、または肝炎ワクチン)を含む第二の投与単位、および本明細書に記載された投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mgのTA1)の有効量のチモシンペプチドを含む第三の投与単位を含む。キットはさらに凍結乾燥の形態で提供されたTA1を再構成するための滅菌希釈剤(例えば滅菌水性希釈剤)の密封容器を含んでもよい。成分は販売のために一緒に包装されてもよい。
【0075】
ワクチンおよび/またはチモシンペプチドを含む組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、および任意で他の治療成分も含み得る。注射もしくは点滴に適した剤形は、任意で酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および剤形を対象とする被投与個体の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含む。例えば、チモシンペプチド(例えばTA1)はマンニトールおよびリン酸ナトリウムとともに凍結乾燥の剤形で提供されてもよい。剤形は単位投与量もしくは複数投与量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在してもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみが必要なフリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保存されてもよい。特定の態様において、本発明のキットは、各々が記載されたような凍結乾燥されたTA1の投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mg)を含み、滅菌水性希釈剤を含む密封バイアルもしくは他の容器と一緒に販売のために包装された、凍結乾燥されたTA1の2個の個々のアンプルもしくはバイアルを提供する。
【0076】
一つの典型的な態様において、本発明はインフルエンザワクチン(例えば季節性の三価ワクチンまたはH1N1もしくはH5N1ワクチン)の個々の投与単位、および各々が5mg以上(例えば6.4mg)であって、皮下投与のために液体担体で再構成されるように凍結乾燥の形態である正確に1もしくは2の投与量のTA1を含む、販売のために包装されたキットの形態をとる。個々の単位の中の滅菌液体担体(例えば滅菌水)も、TA1の投与単位の便利な再構成のために提供されてもよい。
【0077】
さらに他の局面において、本発明はワクチン強化のためのキットであって、各々が本明細書に記載されたような投与量、例えば1および10mgの間、または約3.2もしくは6.4mgである、正確に2つのチモシンペプチドの投与単位を含むキットを提供する。チモシンペプチドの個々の投与単位は、投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは前もって投与量とされたペン等で提供されてもよい。凍結乾燥の形態で提供される場合には、TA1の再構成のための滅菌水性担体(例えば約0.5から約3mlまで、例えば約1ml)の1もしくは2個のバイアルも提供される。2つの投与単位、およびもし提供される場合には担体は、ワクチンの有効性を強化するために、販売のために一緒に包装される。この局面において、ワクチンが提供される必要はない。
【実施例】
【0078】
実施例1:マウスにおけるH1N1ワクチン接種の強化
概要
CD-1マウスにおいて、季節性インフルエンザワクチンFluvirin(登録商標)2008-2009を用いた異なるワクチン接種スケジュールに続いて抗インフルエンザ抗体の形成を強化するTA1(thymalfasin)の潜在能力を決定するための研究が行われた。マウスは研究日(SD)1および10もしくはSD8および17に対照物質またはワクチンのいずれかを与えられた。マウスはワクチン投与に関連して異なる時間に異なる投与量のTA1も与えられた。対照物質およびワクチンの両方は、右および左後肢の両方に筋肉内注射によって投与され、TA1は腹腔内経路によって投与された。すべてのマウスは体重とは無関係に一定投与量の対照/ワクチンを与えられた。マウスは1日に2回、死亡数、瀕死状態、全体的な健康、および毒性兆候を観察され、投与の前に体重が記録された。血液試料はSD20もしくは27(最後のワクチン投与の10日後)のいずれかに採取され、これらの試料についてHAI抗体産生が解析された。血液採取に続いて、すべての動物を安楽死させ、剖検せずに処分した。
【0079】
結果は、TA1およびFLUVIRINの両方を与えられたマウスではFLUVIRINのみを与えられたものに比べてHAI力価が高かったことを示している。加えて、本研究において使用されたTA1の最も高い投与量(1.2mg/kg)では、他の投与量と比べた場合に、力価がより一貫して増大した。さらに、すべての試験株においてすべての動物が所望の抗インフルエンザ抗体を達成したため、最良の投与スケジュールはSD8におけるFLUVIRINのワクチン接種の7日間前および当日にTA1を投与することであった。
【0080】
実験研究
チモシンα1(TA1;商品名ZADAXIN(登録商標))は認可され、市販されている。TA1は血液循環中に天然に見出され、体の胸腺で生産される。ZADAXIN(登録商標)(チモシンα1の合成版)は、少なくとも部分的にはT細胞およびNK細胞に影響を与えることによって免疫系を刺激する。
【0081】
TA1は優秀な安全性の記録を有する。今日までの臨床研究において、成人、高齢者、および小児を含む、ウイルス性B型肝炎およびC型肝炎、原発性免疫不全症、および多数の癌を有する3,000名を超える患者が、事実上、薬剤に関連した副作用なしにTA1で治療されてきた。TA1がインターフェロンおよび化学療法等の他の薬剤と組み合わされた場合にも、副作用の悪化は少しもない。動物実験において、TA1は推奨されるヒトの投与量の800倍もの投与量で投与されているが、有害な臨床的兆候の証拠はない。
【0082】
臨床試験によって、TA1が高齢および血液透析の患者においてインフルエンザおよびB型肝炎ワクチンへの応答を増大させることが明らかにされている。しかしながら、治療の投与計画にはワクチン接種に続いて8回のTA1の注射が含まれている。本研究は、CD-1マウスにおいて、季節性インフルエンザワクチンFluvirin(登録商標)2008-2009を用いた2つの異なるワクチン接種スケジュールに続いて抗インフルエンザ抗体の形成を強化する異なる投与量および(主として、より少数の注射を含む)投与計画のTA1の潜在能力を決定するために行われた。
【0083】
適当な数の雄CD-1マウスをCharles River Laboratoriesから購入した。動物は、第一投与の際に25から40グラムの重さで、7から9週齢であった。すべての動物はCertified Global Harlan Teklad Laboratory Diet 2018(ペレット)および水を、自動給水システムおよび/または給水瓶によって与えられた。動物は硬材の床敷Certified SaniChip(登録商標)とともにポリカーボネート製のケージの中に個々に収容され、ステンレス鋼のラックに吊るされた。温度および湿度の範囲は、それぞれ18から26℃および30から70%であった。
【0084】
対照物質は0.9% Sodium Chloride for Injection, USPであり、室温で保存した。
【0085】
TA1はリン酸緩衝生理食塩水を用いて適当な濃度まで希釈し、使用まで2から8℃で保存した。
【0086】
Fluvirin(登録商標)2008-2009は0.9% Sodium Chloride for Injection, USPを用いて適当な濃度まで希釈し、製剤の日に使用した。
【0087】
研究は、ワクチン投与スケジュールに応じて2つのコホートに分けられ、5匹のマウス/群が各群に無作為に割り当てられた。第一コホートのマウス(20群)は、研究日(SD)8(ワクチン)および17(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられ、第二コホートのマウス(23群)はSD1(ワクチン)および10(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられた。TA1の投与は、表3および4に示されたように行われた。
【0088】
対照物質(0.9% Sodium Chloride for Injection, USP)およびワクチン(9μg/投与のFluvirin(登録商標)2008-2009)は、両方とも(体重とは無関係に)一定の投与量である0.05mLの対照物質/ワクチンを右および左後肢の両方に筋肉内注射によって投与した。
【0089】
TA1(0.3、0.6もしくは1.2mg/kg/投与)は、1mL/kgの投与量で腹腔内経路によって投与した。
【0090】
(表2)マウス/フェレット/ヒト投与スケジュール
【0091】
動物は1日に2回、死亡数、瀕死状態、全体的な健康、および毒性兆候を観察された。動物は、皮膚および毛皮の特徴、注射部位、目および粘膜、呼吸器系、循環系、および自律神経系および中枢神経系、体の動き(somatomotor)および挙動のパターンを観察された。体重は投与の前にのみ記録した。
【0092】
インフルエンザ抗体価の解析(HAI解析)のための血液試料は、SD20もしくはSD27(最後の対照物質/ワクチン投与の10日後)にすべての動物から心臓スティック(cardiac stick)によって採取した。血液採取に続いて、すべての動物をCO2吸入によって安楽死させ、失血させて、剖検せずに処分した。
【0093】
HAI解析は、Fluvirin(登録商標)2008-2009ワクチン中に存在する3つのワクチン株(Florida [B]、Brisbane 10およびBrisbane)に対して三連で実行した。
【0094】
(表3)コホート1(SD1および10に投与された対照物質/ワクチン)
【0095】
(表4)コホート2(SD8および17に投与された対照物質/ワクチン)
【0096】
結果
すべての動物は予定された終了時まで生存し、いずれの動物にも被験物質関連の臨床的/ケージサイド(cageside)の所見もしくは体重の影響は認められなかった。
【0097】
Fluvirin(登録商標)2008-2009のワクチン接種に関連して異なるスケジュールで2回のTA1が雄CD-1マウスに投与された場合には、HAI力価はFluvirin(登録商標)2008-2009のみを与えられた動物に比べてTA1およびFluvirin(登録商標)2008-2009の両方を与えられたもののほうが概して高かった。
【0098】
本研究において調べられた異なるスケジュールの下では、1.2mg/kgの投与量のTA1が他の投与量と比べた場合に、力価をより一貫して増大させた。図1および2を参照。マウスにおける1.2mg/kgの投与量は、ヒトにおける約6.4mgの投与量に相当する。
【0099】
さらに、最良の投与スケジュールはSD8のFluvirin(登録商標)2008-2009のワクチン接種の7日間前および当日にTA1を投与することであり、なぜならこの投与計画によって、すべての試験株においてすべての動物が所望の抗インフルエンザ抗体を達成した。図1および2を参照。
【0100】
したがって、HAI力価測定法で決定されたように、9μgの投与量のFluvirin(登録商標)2008-2009で2回ワクチン接種されたCD-1マウスにおいて、TA1は抗インフルエンザ抗体の形成を強化する。最も効果的な投与計画は1.2mg/kgのTA1をワクチン接種の7日間前および当日の2回与えることであった。
【0101】
実施例2:フェレットにおけるH1N1ワクチン接種の強化
チモシンは、抗体応答の増強を含む様々な機構によって、いくつかの微生物および腫瘍環境において免疫修飾を発揮することが示されてきた。ブタ由来の新規のA型/H1N1ウイルスに起因する進行中のインフルエンザの世界的流行を制御するための取り組みにおいて、多くの国々で自発的な集団ワクチン接種が実施され、ワクチンがアジュバントとともに、もしくはアジュバントなしで使用されるであろう。これらのワクチンの少なくともいくつかは、ワクチン接種を受けた人の大半においてウイルス中和抗体の相当な生産を誘導するために1か月後の追加免疫の投与が必要となる。さらに、標的集団の全体に対するこれらのワクチンの入手可能性は疑わしい。したがって、インフルエンザワクチンと別々ではあるが併せて投与される適切な投与量のチモシンがウイルスに対する抗体応答を増強するかどうかを評価することは重要である。
【0102】
実験研究
インフルエンザに罹っていないフェレットはインフルエンザウイルスにとても反応しやすく、したがって防御の抗ウイルス効果を試験するのに使用できる。実験では、アジュバント化されたインフルエンザワクチン(Fluad:対照として)およびアジュバント化されていないインフルエンザワクチン(Agrippal、以下の表では単に「ワクチン」と表示)の両方を用いてワクチンの免疫原性の増強を試験した。
【0103】
4匹のフェレットの5群は、SD0(ワクチン)および21(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられた。TA1の投与は、表5に示されたように行われた。チモシン投与量の案は、マウスおよびヒトで公開されたデータに関して、フェレットの重量を考慮に入れて推測された。事前の出血(pre-bleeding)によって抗インフルエンザ力価が陰性であることを確認した。
【0104】
ワクチン(アジュバント化されていないAgrippal influPozzi季節性ワクチン、もしくはアジュバント化されたFluad, MF-59のいずれか)は、ヒト投与量の全量である0.5mLが筋肉内注射によって右脚に投与された。TA1(0.285もしくは0.570mg/kg/投与)は、フェレット/ヒト投与のためのスケーリング因子(scaling factor)を用いて、3.2もしくは6.4mg/kgというヒトの投与量に大体対応する投与量で皮下経路によって投与された。動物は1日に2回、専門の獣医の責任下で死亡数、全体的な健康、ならびに局所および全身の両方の毒性および疾病の兆候、ならびに挙動を観察された。体重は投与の前にのみ記録した。
【0105】
インフルエンザ抗体価の解析(赤血球凝集抑制;HAI解析)のための血液試料は、SD21(追加免疫のワクチン投与の前)、SD35、およびSD120にすべての動物から心臓スティックによって採取した。HAI解析は、3つのワクチン株(Florida [B]、Brisbane 10およびBrisbane 59)に対して三連で実行した。H1N1 A/ Brisbane 59のデータを図3に示した。すべてのフェレットは、H3N2 A/ Brisbane 10に対する既存の抗体を有していた。
【0106】
(表5)研究の設計および予定表
【0107】
結果
フェレットにおけるHAI力価(21日目)は、ワクチンのみを与えられた動物に比べてTA1およびワクチンの2回の注射を与えられたもののほうが概して高かった(図3を参照)。0.57mg/kgの投与量のTA1(ヒトの投与量の約6.4mg/kgに相当)をワクチン接種の7日間前および当日に投与するのが最良の実行投与量/スケジュールであり、なぜならこの投与計画によって3/4の動物が所望の抗インフルエンザ抗体を与えられた。力価はワクチン接種の42日間後に評価した際にも維持されていた。同様に、0日目および+21日目にTA1を与えられたフェレットは、TA1なしで追加免疫されたものに比べて、ワクチンの追加免疫後により高いHAI力価を示した。TA1とは無関係に、アジュバント化されたワクチンを与えられたフェレットの抗体応答は、アジュバント化されていないワクチンからのものを、はるかに上回った。
【0108】
図3は、各群における抗体価を示している。1:40という力価は防御的と考えられる。示されているように、6.4mgのヒト相当量のthymalfasinがワクチン接種(アジュバントなし)の−7日目および当日に与えられた場合は防御的であった。ワクチンのみに対して4倍の増大が観察された。さらに、この投与計画は4匹中3匹の動物において防御力価を産生した。
【0109】
TA1は安全かつ耐容性が良好なようであり、ケージサイドの所見は認められなかった。したがって、TA1はアジュバント化されていないインフルエンザワクチンへの抗体応答を強化でき、これはワクチン接種に対する応答の低下した被験体、特に高齢者へのワクチン接種に関連する発見である。
【0110】
実施例3:血液透析患者におけるH1N1ワクチン接種の強化
チモシンTA1がMF59アジュバント化H1N1インフルエンザ一価ワクチンであるFocetria(商標)に対する免疫応答を強化する能力が調べられた。研究は血液透析患者において行われた。血液透析を必要とする末期腎疾患もしくは免疫系を損なう他の状態の患者、ならびに高齢者は、しばしばH1N1インフルエンザ等の感染症を撃退するのに十分な抗体を発生させない。加えて、最初は防御力価を達成した多数の患者がそれらを長期間維持できず、患者を感染させやすくして、ワクチン再接種もしくは追加免疫の注射を必要とさせる。
【0111】
長期にわたる透析を受けている末期腎疾患の約120名の患者において、無作為の三群(three-arm)研究を行った。1つのコホートの患者はH1N1ワクチンのみを与えられ、他の2つの群は2回の低用量のthymalfasin(TA1)の注射(ワクチン接種の7日間前およびワクチン接種の当日に3.2mg)、もしくは2回のより高用量のthymalfasinの注射(ワクチン接種の7日間前およびワクチン接種の当日に6.4mg)のいずれかを与えられた。21日目に少なくとも1:40の抗体価を達成しなかったすべての患者は、その日に第二のH1N1ワクチン接種を与えられた。投与計画はフェレットおよびマウスのモデルにおいて得られた前臨床の結果に基づく。血液は0、21、42、84、および168日目に採取された。H1N1ワクチンの第二の投与は、第一のワクチン接種から18〜28日目に防御力価に達しなかったすべての患者に投与された(8名の被験者、もしくはワクチンのみを与えられた32名の被験者の25%;2名、もしくはワクチンおよび3.2mgの投与量のTA1を与えられた28名の被験者の7.1%;および2名、もしくはワクチンおよび6.4mgの投与量のTA1を与えられた32名の被験者の6.3%)。
【0112】
本研究の主要な効能のエンドポイントは、血清転換、具体的には防御的と考えられている特定の抗体価における有意な上昇、を達成した患者の比率である。HI力価を用いた本研究との関連では、「血清転換」はワクチン接種前に陰性の血清(例えばHI力価<1:10)からワクチン接種後の力価≧1:40への変化、もしくは力価におけるベースラインからの少なくとも4倍の増大と定義される。加えて、患者は防御力価の耐久性を評価するために6カ月間経過観察される。「血清保護」は、HI力価が≧1:40と定義される。「幾何平均比」(GMR)は、x日目/1日目の幾何平均力価の比である。
【0113】
H1N1ワクチンとともに与えられたthymalfasin治療は、H1N1ワクチンのみを与えられた者と比べた場合に、ワクチン接種から21日間後に血清転換した被験者の百分率において、かなりの統計的な(p値≦0.01)増大を引き起こした。具体的には、ワクチン接種に続く21日目に、ワクチンのみの群の患者のたった56%と比較して、低用量群の患者の89%は高用量群の患者の88%と同様に血清転換を達成した。
【0114】
図5に図示されるように(ベースラインおよび21日目における平均力価を示す)2つの投与量のthymalfasinを用いた治療は、容量依存的な形で平均力価を増大させる。図4は、血清保護の人の数および血清転換した人の数が、thymalfasin治療でより大きいことを示す。
【0115】
H1N1ワクチンとともに与えられたthymalfasin治療は、H1N1ワクチンのみを与えられた者と比べて、ワクチン接種から42日間後に評価した場合にも、血清転換した被験者の百分率において統計的に有意な(P値=0.04)増大を引き起こした。加えて、thymalfasin処理患者において見られた力価の改善は、この時点で維持されていた。具体的には、ワクチン接種に続く42日目に測定したときには、本研究のワクチンのみの群の患者のたった77%と比較して、低用量群の患者の93%および高用量群の患者の94%が血清転換を達成した。この増大した血清転換は、ワクチン接種に続く21日目に見られたものに勝っている。
【0116】
以下の表に、本研究の84日目までのマイクロ中和(MN)および血清転換(SC)のデータをまとめる。
【0117】
(表6)
全集団:
血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)かつワクチン接種後のMN力価≧1:20もしくはワクチン接種前のMN力価が非陰性(≧1:10)から4倍の増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均MN力価の比。
1回のワクチン投与を与えられた被験者のみ
ベースラインにおいて防御されていない被験者のみ
ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)もしくは非陰性(≧1:10)だが非防御(すなわちMN力価≦1:20)と定義される。
ベースラインにおいて陰性の被験者のみ
ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)と定義される。
2回のワクチン投与を与えられた被験者のみ
【0118】
図6および7は、21および42日目のHI試験の結果を図示し、TA1治療による血清転換の患者のより高い百分率およびより高い幾何平均比を示す。図8は、第二のワクチン接種を与えられた患者の結果を図示し、42日目におけるTA1治療による改善を示す。
【0119】
図9は、2回のワクチン投与を与えられた患者についての結果を、1回のワクチン接種およびTA1を与えられた患者と比較する。
【0120】
図10は、ベースラインにおいて陰性であった患者についての、21および42日目の結果を図示する。すべての患者が42日目までに血清転換を達成した一方で、21日目には、TA1を与えられた患者の方が血清転換を達成している傾向が高かった。
【0121】
図11から21は、本研究の84日目までの結果を図示する。
【0122】
本研究は、H1N1アジュバント化ワクチンに加えて与えられたTA1の2回の注射がワクチンの効能の増大、具体的には:より速い応答時間によって患者がより早く防御されることが可能となり、ワクチンのみの1回の投与もしくは2回のワクチンの注射よりも良い応答を引き起こしたことを示している。
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2010年4月12日出願の米国仮出願第61/323,155号、および2009年5月8日出願の米国仮出願第61/176,625号、および2009年8月28日出願の米国仮出願第61/237,932号に優先権を主張し、これらの各々は参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ワクチンの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒト、家畜およびペットは、疾患を予防するため、もしくは疾患の重症度を減少させるために、しばしばワクチン接種される。ワクチン接種は、ワクチン中に使用された抗原物質と特異的に結合できる血清タンパク質である抗体の産生をもたらす。この体液性応答は、抗体産生血漿細胞のクローンを得るためのBリンパ球の特定の系統の選択、ならびに選択された細胞の増殖および分化を含む。
【0004】
抗体産生は免疫感作後の数週間以内に頂点に達し、その後徐々に低下する。血清タンパク質は常に代謝回転しているため、抗体産生の低下は抗体の循環レベルの対応する低下を伴う。しかしながら、患者が同一の抗原に再度攻撃された場合には、新しい応答曲線は最初のものよりも、より速くかつより強く開始される。これは二次応答、追加免疫(booster)応答、もしくは既往反応と呼ばれ、健常な患者において初回暴露もしくは一次免疫よりも、抗原に対してより高い親和性を持ったより高い抗体レベルをもたらす。抗体合成の速度の増大は、抗体産生血漿細胞の数が増大した結果である。これらの細胞は免疫されていない患者のリンパ節には稀であり、そこには主に小リンパ球が含まれる。しかしながら、健常な患者では、一次免疫の後には血漿細胞が全リンパ節細胞の最大3%を構成し、二次免疫の後にはリンパ節細胞の30%をも構成する。
【0005】
二次応答は、免疫記憶によるものであると言われる。すなわち、健常な生物は抗原に対する事前暴露を「思い出す」ことができ、その間に血清中の特定の抗体の量がとても低いレベルにまで低下していたとしてすら、二度目に暴露されたときには、より素早くかつ効率的に反応できる。
【0006】
加齢、栄養障害、薬物依存、アルコール依存症等の特定の状態、ならびに糖尿病、慢性腎疾患、およびAIDS等の特定の病態は免疫不全(例えば易感染性の被験体)を引き起こし、多くの免疫応答が消失してワクチン接種の有効性が減少する。したがって、当技術分野においては、特に免疫不全患者のために改善されたワクチンおよびワクチン接種の方法が必要とされ続けている。
【0007】
患者にTA1を数回投与することでワクチン接種に関連した免疫を強化するための、いくらかの展望が示されている。例えば、McConnell et al. (The Gerontologist 29:188A (1989))(非特許文献1)は、高齢患者に毎週2回TA1を注射し、全部で8回注射したところ、インフルエンザのワクチン接種に応答した抗体産生が強化されることを示している。Shen et al. (Kidney International 31:217 (1987))(非特許文献2)は、(以前はB型肝炎のワクチン接種に非反応性であった)血液透析患者にTA1を5回注射したところ、B型肝炎のワクチン接種に対する抗体応答を強化できることを示している。しかしながら、ワクチンの有効性を強化するための、より便利で効率的かつ費用対効果の高い戦略が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】McConnell et al. (The Gerontologist 29:188A (1989))
【非特許文献2】Shen et al. (Kidney International 31:217 (1987))
【発明の概要】
【0009】
本発明は、免疫不全もしくは易感染性の患者のためのものを含む、ワクチン接種の方法ならびにワクチンの有効性を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。本発明は、ワクチンの有効性を強化するために、1回以上のチモシンペプチドとともにワクチンを投与することを含む。本明細書に開示されているように、本発明はより高い抗体価、および/またはワクチン接種に対するより速い応答、および/または抗体価のより長い持続時間を提供し、これによりワクチン接種に不応性もしくは低応答者である個人に対してさえも、患者へのより高い保護効果を提供する。例えば、様々な態様において、本発明はワクチン接種に不応性もしくは低応答者のためのものを含む、ワクチン接種に応答した血清転換および/または血清保護の可能性を改善するか、もしくは発生を加速する。特定の態様において、本発明はワクチン抗原に対する患者の応答を強化するためのチモシンペプチドの投与計画を提供することによって、ワクチン投与量の節約を提供する。
【0010】
一つの局面において、本発明はワクチンに対する被験体の応答を強化するための方法を提供する。本方法は、抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または抗体価(例えば防御抗体価)の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体にチモシンペプチド(例えばチモシンα1もしくは「TA1」)を投与することを含む。特定の態様において、被験体はヒトであり、高齢患者、糖尿病患者、または慢性腎疾患、AIDS、もしくは他の易感染性とする(immunocompromising)疾病または栄養障害、薬物乱用、もしくはアルコール依存症を含む状態を患う患者等の、免疫不全もしくは易感染性であってもよい。被験体は、ワクチン接種に対して低応答者であってもよい。
【0011】
この局面において、本発明はいくつもの感染症のため等の、ワクチン接種が容認された治療もしくは予防である任意の状態のためのワクチン接種を含んでよい。例えば、様々な態様において、感染症はA型インフルエンザ(例えばH1N1および/またはH5N1)、B型インフルエンザ、もしくはSARSの感染等の急性ウイルス感染によってもたらされ、またはB型肝炎もしくはC型肝炎等の慢性感染症であり、またはAIDS等の免疫不全がもたらされる感染症である。本発明に従ってワクチン接種が強化されるかもしれない様々な他の種類の感染症および他の状態は本明細書に記載されている。ワクチン接種は一次ワクチン接種もしくは二次ワクチン接種(例えば追加免疫)であってよい。
【0012】
ワクチン接種は、汎発性インフルエンザもしくは生物テロ物質(例えば炭疽菌)等の汎発性疾病に対するものであってもよい。本明細書に開示されているように、本発明は患者をより早く保護するために抗体価の発生の加速を助け、このことは潜在的に汎発性の疾病を予防し、または生物テロの攻撃もしくは脅威の影響を減少させるのに重要であり得る。
【0013】
この局面に従って、チモシンペプチド(例えばTA1)は抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体に投与される。例えば、チモシンペプチドは少なくとも約0.5mg(例えば1.6mg)、もしくは少なくとも約3mg(例えば3.2mg)、もしくは少なくとも約5mg(例えば6.4mg)に対応する投与量でヒト患者に投与されてもよい。チモシンペプチド(例えばTA1)は、約2から約8mg以内、もしくは約3から約7mg以内(例えば約3.2もしくは約6.4mg)の投与量で投与されてもよい。チモシンペプチドは、通常は1から4回まで、もしくは1から3回まで投与され、そして特定の態様においては、1回もしくは2回投与される。これらのもしくは他の態様において、TA1は約5日間から約9日間の間隔を置く等の、約1日間から約10日間まで間隔を置いて、例えば約7日間の間隔を置いて患者に投与される。例えば、チモシンペプチドはワクチン接種の前に、例えば1から10日間まで前に、もしくは5から9日間まで前に、およびワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドはワクチン接種の約7日間前に、およびワクチン接種の日に再度投与されてもよい。本明細書に開示されているように、(H1N1ワクチン接種について本明細書に示されているように)ワクチン接種の前およびワクチン接種の日に再度チモシンペプチドを投与することで、血清転換および/または血清保護を達成した易感染性の患者数の統計的に有意な増大が引き起こされ、抗体価の発生が加速される。
【0014】
同一の日に投与される場合には、ワクチンおよびαチモシンペプチドは別々もしくは単一の注射で一緒に投与され得る。
【0015】
TA1が一次ワクチン接種の前に、および/または同時に投与される場合には、特定の態様において、追加免疫のワクチン接種が投与されてもよい。しかしながら、他の態様においては、追加免疫のワクチンは必要ではない。追加免疫のワクチン接種が望ましい場合(例えば、一次ワクチン接種の後に患者が血清転換もしくは血清保護を達成できない場合)は、追加免疫のワクチン接種の日における1回以上のチモシン等の、1回以上のチモシンペプチド(例えば1、2、3、もしくは4回)が追加免疫の前(例えば4、5、6、もしくは7日間前を含む、約1から10日間以内前)に投与されてもよい。
【0016】
別の局面において、本発明は便利なワクチン強化のための薬学的組合せおよびキットを提供する。本明細書により詳しく記載されているように、組合せおよびキットは本発明の方法を実施するための個々の投与単位におけるワクチン組成物およびチモシンペプチドを含む。通常は、薬学的組合せもしくはキットは、被験体において病原体に対する抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチンを含む。典型的なワクチン組成物は本明細書に記載されており、急性および慢性のウイルス性、細菌性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンを含み、ある態様においては、インフルエンザもしくは肝炎ワクチンである。ワクチン組成物は腫瘍抗原を含んでいてもよい。ワクチンは、死滅したもしくは不活化された感染性物質(例えばウイルス)、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、組換えワクチン、もしくはトキソイドワクチン等の様々な種類のワクチンから選択されてよい。ワクチンはウイルスベクターを含んでもよく、もしくはウイルス様粒子(VLPs)を含んでもよい。ワクチンは中でも、生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、または不活化もしくは死滅ウイルスワクチンであってよい。ワクチンはアジュバント化されていてもアジュバント化されていなくてもよい。
【0017】
薬学的組合せもしくはキットは、(本明細書に詳しく記載されているように)さらにワクチン強化量のαチモシンペプチドを含み、これは被験体において、ワクチンに応答した抗体の産生および/または持続時間を強化する。通常は、チモシンペプチドはワクチンに対する独立した投与のために包装されており、1、2、3、もしくは4の個々の投与単位で提供されてよい。
【0018】
特定の態様において、組合せもしくはキットは有効量のチモシンペプチド(例えばTA1)を含む第一の投与単位、(アジュバント化されたもしくはアジュバント化されていない)ワクチンおよび(単一もしくはワクチンに対する別々の投与単位における)有効量のチモシンペプチドを含む第二の投与単位を含む。他の態様において、本発明は1もしくは2のワクチン組成物、および1、2、3、もしくは4のチモシン投与単位を含むキットの形態をとる。そのようなチモシン投与単位は、本明細書に記載された投与量、例えば0.1および20mgの間、そしてある態様においては、約もしくは少なくとも3.2mgまたは約6.4mgのチモシンペプチドを含んでもよい。各々の態様において、チモシンペプチドの個々の投与単位は投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは前もって投与量とされた(pre-dosed)ペン等で提供されてもよい。
【0019】
さらに他の局面において、本発明はワクチン強化のためのキットであって、それぞれが独立して約(または少なくとも)3.2もしくは約6.4mg等の本明細書に記載された投与量(例えば0.1および20mgの間)である、正確に1もしくは2のTA1投与単位を含むキットを提供する。キットは、ある態様において、ワクチン成分を提供する必要はない。個々の投与単位のチモシンペプチドは、投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは(例えば、前もって投与量とされたペン等による)皮下注射のための水性懸濁液で提供されてもよい。2つの投与単位は販売のために一緒に包装され、ワクチンの有効性を強化するために、任意でTA1の再構成のための水性希釈剤とともに包装される。
【0020】
別の局面において、本発明はワクチン投与量を減少させる方法を提供する。本方法はワクチン、例えばインフルエンザワクチンもしくは他のワクチンの認可された投与量を減少させ、チモシンペプチドの投与計画とともに減少させた投与量を投与することを含む。チモシンペプチドは、本明細書に記載された投与量および投与計画で投与されてもよい。特定の態様において、ワクチンはインフルエンザウイルスワクチンであり、15μg未満の任意の一種類の死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルス株を含む。例えば、ワクチンは表示された各株からの、2μgから約12μgまでの死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルスを含んでもよい。
【0021】
本発明の他の目的および局面は、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Fluvirin(登録商標)の投与に関して、示された投与量および様々な時間にチモシンペプチドを与えられた際に、3株のインフルエンザに対して所望の抗体価に達したマウスの数を示す。
【図2】ワクチンの投与(Fluvirin(登録商標))に関して、示された投与量および様々な時間にチモシンペプチドを与えられた際に、所望の抗体価に達したマウスの数を示す。示されているように、ワクチンと同時およびワクチンの7日間前にチモシンペプチドを与えられたマウスは、3株のインフルエンザに対してすべて保護されていた。
【図3】3.2および6.4mgのチモシンのヒト等価物を、アジュバント化されていないワクチンと同日に、そしていくつかの場合には7日間前に投与した際に、フェレットにおいて達成された抗体価を示す。アジュバント化されたワクチンを陽性対照として示す。
【図4】血液透析を必要とする末期腎疾患の患者における結果を示す。患者は、(Focetria(商標)による)ワクチン接種の当日および7日間前にチモシンペプチドを与えられた。左図は、21日目に血清保護を達成した患者の百分率を示す。右図は、21日目に抗体価の少なくとも4倍の増大を達成した患者の百分率を示す。
【図5】血液透析を必要とする末期腎疾患の患者における結果を示す。患者は、(Focetria(商標)による)ワクチン接種の当日および7日間前にチモシンペプチドを与えられた。グラフは、ワクチン接種に続く21日間の期間にわたる抗体価の発生を示す。
【図6A】インフルエンザワクチンのみ、または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画とともに与えられた患者における血清転換の百分率および抗体価(幾何平均比もしくはGMR)を示す。血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちHI力価<1:10)かつワクチン接種後にHI力価≧1:40もしくはワクチン接種前に非陰性(≧1:10)のHI力価からの4倍増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均HI力価の比。図6Aは、21日目の結果を示す。
【図6B】インフルエンザワクチンのみ、または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画とともに与えられた患者における血清転換の百分率および抗体価(幾何平均比もしくはGMR)を示す。血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちHI力価<1:10)かつワクチン接種後にHI力価≧1:40もしくはワクチン接種前に非陰性(≧1:10)のHI力価からの4倍増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均HI力価の比。図6Bは、42日目の結果を示す。
【図7A】1回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図7Aは、21日目の結果を示す。
【図7B】1回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図7Bは、42日目の結果を示す。
【図8A】2回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図8Aは、21日目の結果を示す。
【図8B】2回のインフルエンザワクチンを単独または3.2もしくは6.4mgのTA1の投与計画と一緒のいずれかで与えられた患者における血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を示す。図8Bは、42日目の結果を示す。
【図9】2回のインフルエンザワクチンを与えられた患者における42日目の血清転換の百分率および幾何平均比(HI試験)を、1回のワクチンおよび2回のTA1の投与計画を与えられた患者と比較して示す。
【図10A】ベースラインにおいて陰性(HI力価<1:10)であった患者における血清転換の百分率およびワクチン接種後の力価が>1:40の百分率を示す。図10Aは、21日目の結果を示す。
【図10B】ベースラインにおいて陰性(HI力価<1:10)であった患者における血清転換の百分率およびワクチン接種後の力価が>1:40の百分率を示す。図10Bは、42日目の結果を示す。
【図11】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる血清転換(HI試験)を95%信頼区間とともに示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図12】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる血清保護(HI試験)を95%信頼区間とともに示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図13】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる幾何平均力価(HI試験)を、95%信頼区間を含めて示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図14】すべての患者におけるインフルエンザワクチン接種後84日間の期間にわたる幾何平均比(HI試験)を、95%信頼区間を含めて示す。二次ワクチン接種を与えられた被験者については、21日目の力価は42および84日目に繰り越した。
【図15】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清転換もしくは有意な増大(95% CI)を示す(HI試験)。
【図16】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清保護(95% CI)を示す(HI試験)。
【図17】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均力価(95% CI)を示す(HI試験)。
【図18】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均比(95% CI)を示す(HI試験)。
【図19】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における血清転換もしくは有意な増大(95% CI)を示す(SRH試験)。
【図20】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均面積(95% CI)を示す(SHR試験)。
【図21】1回のみのインフルエンザワクチン接種を与えられた患者における幾何平均比(95% CI)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫不全もしくは易感染性の患者、またはワクチン接種に不応性もしくは低応答者である患者のためのものを含む、ワクチン接種を強化するための方法ならびにワクチンの有効性を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。本明細書に開示されているように、本発明はより高い抗体価を提供でき、および/または防御抗体価の発生を加速でき、および/またはそのような抗体価のより長い持続時間を提供でき、これにより、より高い保護効果(もしくは保護効果のより高い可能性)を提供する。例えば、様々な態様において、本発明はワクチン接種に応答した血清転換および/または血清保護の可能性を改善する。
【0024】
通常は、本発明はワクチンの有効性を強化するためにαチモシンペプチド(「チモシンペプチド」)を投与することを含む。チモシンペプチドは、チモシンα1(「TA1」)およびTA1に構造的相同性を有するペプチドを含む。TA1は、アミノ酸配列(N-アセチル)-Ser-Asp-Ala-Ala-Val-Asp-Thr-Ser-Ser-Glu-Ile-Thr-Thr-Lys-Asp-Leu-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Val-Val-Glu-Glu-Ala-Glu-Asn-OH(配列番号:1)を有するペプチドである。TA1のアミノ酸配列は米国特許第4,079,137号に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。TA1は、アセチル化されたN末端および約3108の分子量を有するグリコシル化されていない28アミノ酸ペプチドである。TA1の合成版はZADAXINの商品名で特定の国において市販されている。
【0025】
TA1は血清中を約0.1から1.0ng/mlで循環している。3.2mgのTA1(約40μg/kg)を注射した後のピーク血漿レベルは約100ng/mlである。血液循環中のTA1の半減期は約2時間である。
【0026】
チモシンαはウシ胸腺から最初に単離され、そこで「免疫機能」を再構成することが胸腺摘出動物モデルにおいて示された。チモシンは炎症性および先天性の免疫応答において役割を果たし、哺乳動物において自己の非自己からの区別を助長すると考えられている。チモシンによるPAMP(pathogen-associated molecular patterns)リガンドの活性化によって細胞内シグナル伝達経路の刺激が引き起こされ、共刺激分子、炎症誘発性サイトカイン、一酸化窒素、およびエイコサノイドの発現がもたらされる。チモシンは、例えば樹状細胞、T細胞、B細胞、およびNK細胞に影響を及ぼすかもしれない。
【0027】
理論に拘束されることは意図していないが、チモシンペプチド(例えばTA1)は、中でもToll様レセプター9(TLR)を活性化し、結果としてTh1細胞、B細胞、およびNK細胞の増大をもたらして、これによりワクチン有効性の強化を引き起こすと考えられている。例えば、TA1はリンパ球の浸潤、走化性サイトカインの分泌、樹状細胞の成熟および分化、IFN-α、IL-7、およびIL-15を含むサイモポイエチンの(thymopoietic)サイトカインの分泌、ならびにB細胞の抗体産生を増大もしくは強化するかもしれない。
【0028】
本発明で使用が見出されるチモシンペプチドは、天然のTA1(例えば組織から精製もしくは単離したTA1)、ならびに合成TA1および組換えTA1を含む。ある態様において、チモシンペプチドは(任意でN末端がアシル化、例えばアセチル化された)配列番号:1のアミノ酸配列を含む。ある態様において、チモシンペプチドはTA1と実質的に類似したアミノ酸配列を含み、TA1の免疫調節活性を維持する。実質的に類似した配列は、例えばTA1に対して(合わせて)約1から約10までのアミノ酸の欠失、挿入、および/または置換を有していてもよい。例えば、チモシンペプチドはTA1に対して(合わせて)約1から約5まで(例えば1、2、もしくは3)のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換を有していてもよい。
【0029】
したがって、チモシンペプチドは例えばTA1に対して1から約10アミノ酸まで、もしくは約1から5アミノ酸まで、または1、2、もしくは3アミノ酸の欠失を有する省略されたTA1配列を含んでいてもよい。そのような欠失は、ペプチドの免疫調節活性が実質的に維持されている限り、NもしくはC末端、および/または内部にあってもよい。あるいは、もしくは加えて、実質的に類似した配列はTA1の免疫調節活性を実質的に維持し、TA1に対して約1から約5アミノ酸までの挿入(例えば1、2、もしくは3アミノ酸の挿入)を有していてもよい。あるいは、もしくは加えて、実質的に類似した配列は免疫調節活性を実質的に維持し、1から約10アミノ酸までの置換を有していてもよい。例えば、実質的に類似した配列は1から約5まで、または1、2、もしくは3アミノ酸の置換を有していてもよく、それは保存的および非保存的置換を含んでいてよい。ある態様において、置換は保存的である。通常は、保存的置換は化学的に類似したアミノ酸(例えば有極性、無極性、もしくは帯電)の置換を含む。置換されたアミノ酸は、20の標準的アミノ酸より選択されてもよく、もしくは非標準的アミノ酸(例えば、保存された非標準的アミノ酸)であってもよい。
【0030】
ある態様において、チモシンペプチドはTA1の免疫調節活性を維持する一方で、配列番号:1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、チモシンペプチドは配列番号:1に対して少なくとも80%、90%、もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。チモシンペプチドは配列番号:1に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。すべての場合において、N末端は例えばC1-10もしくはC1-C7アシルまたはアルキル基により、任意でアシル化(例えばアセチル化)またはアルキル化されていてもよい。
【0031】
特定の態様において、上記の実質的に類似した相同なペプチドはTA1(配列番号:1)に比べて少なくとも約50%、70%、80%、90%、もしくは約100%のレベルで機能してよい。
【0032】
チモシンペプチドは、例えば固相合成によって合成的に調製されてもよく、もしくは組換え的に作製されてもよい。
【0033】
チモシンペプチドは凍結乾燥の形態で提供され、投与前に滅菌された(例えば水性)希釈剤で再構成されてもよい。皮下注射のための剤形を含むチモシンペプチドの剤形は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0034】
特定の態様においては、チモシンペプチドは循環中の半減期を増大させるためにペグ化されている。治療タンパク質の半減期を増大させるためのそのような戦略は周知である。
【0035】
本発明に従って、チモシンペプチド(例えばTA1)は抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量および投与計画で被験体に投与される。本発明は、様々な態様において、比較的少ないTA1の投与をもってこの目標を達成し、これにより治療を患者にとって比較的便利で、効率的で、かつ快適にし、さらにより手頃な価格で効果的にする。
【0036】
本発明は、ヒトおよび動物の健康の両方に適用可能である。したがって、被験体は通常、免疫反応において抗体を形成できる動物であって、様々な態様において、ヒト、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等)、またはペット(例えばネコもしくはイヌ)等の哺乳動物である。ワクチンが鳥インフルエンザのためのものである態様を含む他の態様において、被験体は家畜化された鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、もしくはガチョウ)であってもよい。
【0037】
特定の態様において、被験体は免疫不全である。免疫不全の被験体は、感染症と闘う能力の減少および/またはワクチン接種に応答する能力の減少を呈する被験体(例えばヒト被験体)であってもよい。そのような免疫不全の被験体の例は、高齢患者、もしくは(例えば慢性腎疾患の治療のために)血液透析を受けている患者、AIDS患者、遺伝的欠陥、栄養障害、薬物乱用、アルコール依存症、もしくは癌を含む他の易感染性とする疾病もしくは状態に起因する免疫不全を含む。
【0038】
特定の態様において、患者は対象となるワクチンで以前にワクチン接種されておらず、対象となる抗原もしくは病原体に対する特異的な抗体に陰性であってもよい。他の態様において、患者は疾患もしくは状態について以前にワクチン接種されたが、ワクチン接種に十分に応答しなかった。例えば、患者はそのような態様において、一次ワクチン接種に応答して血清保護を達成しなかった。
【0039】
特定の態様において、被験体は高齢である。動物は年を取ると免疫応答が減少し、低親和性抗体応答が優勢となるためにワクチン接種の有効性が小さくなる。したがって、これらの態様における被験体は、45歳を超えるヒト患者もしくは50歳を超えるヒト患者であってもよい。ある態様において、被験体は60歳以上、65歳以上、もしくは70歳以上のヒト患者である。
【0040】
特定の態様において、被験体はシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、もしくは抗体の産生を減少させる薬剤等の免疫抑制剤で治療中である。例えば、被験体は移植患者であってもよい。移植患者は通常、シクロスポリン等の拒絶反応抑制剤の投与の結果として免疫不全である。
【0041】
ある態様において、患者は(例えば慢性腎疾患のために)血液透析を受けている。血液透析は循環系に到達する必要があるため、血液透析を受けている患者は、その循環系を微生物に暴露するかもしれず、それにより敗血症、心臓弁に影響を与える感染(心内膜炎)もしくは骨に影響を与える感染(骨髄炎)が引き起こされ得る。そのような疾病および患者の状態は、通常、インフルエンザおよび肝炎を含む他の感染症と闘う患者の能力を減退させるかもしれない。
【0042】
ある態様において、被験体は侵襲性の外科的処置、重い損傷、重い創傷もしくは火傷から回復している間に感染(例えば院内感染)する危険性がある。
【0043】
特定の態様において、被験体は悪性腫瘍(例えば黒色腫)を発生する傾向を有し、これはそのような患者において、そのような悪性腫瘍を免疫系が認識できないことによるのかもしれない。
【0044】
ワクチンは、状態の治療もしくは予防のための任意のワクチンであってよく、様々な態様において、感染症のためのワクチンである。本発明は様々なワクチン、ならびに死滅したもしくは不活化された感染性物質(例えばウイルス)を含むワクチン、DNAワクチン、ペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、およびトキソイドワクチンを含むワクチンの種類に適用可能であると考えられている。ワクチンはウイルスベクターを含んでもよく、もしくはウイルス様粒子(VLPs)を含んでもよい。ワクチンは生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、または不活化もしくは死滅ウイルスワクチンであってもよい。
【0045】
適切なワクチンの例は、急性または慢性のウイルス性、細菌性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンを含む。例えば、ワクチンはインフルエンザ、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病、ポリオ、およびポックスウイルス(例えば痘瘡、牛痘、サル痘等)に対するものであってもよい。
【0046】
ワクチンは、ある態様において、多価である。例えば、ワクチンは季節性の三価インフルエンザワクチンであってもよく、または2もしくは3の細菌性および/またはウイルス性の感染性物質からの抗原成分を含んでいてもよい。
【0047】
さらなる典型的なワクチンは、不活化されたポリオワクチン、黄熱ワクチン、日本脳炎ワクチン、アデノウイルスワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、肺炎球菌多糖体ワクチン、炭疽ワクチン、腸チフスワクチン、ペストワクチン、コレラワクチン、結核ワクチン(もしくはカルメット・ゲラン菌ワクチン)、および髄膜炎菌ワクチンを含む。
【0048】
本発明が免疫応答を強化するのに効果的かもしれない、典型的な市販されているワクチンは、次のものを含む:FLUARIX、FLUVIRIN、FOCETRIA、FLUZONE、FLULAVAL、AFLURIA、FLUMISTの商品名の下で入手可能なもの等のインフルエンザワクチン、および同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン;ならびにHAVRIX、VAQTA、ENERIX-B、RECOMBIVAX HB、COMVAX、PEDIARIX、およびTWINRIXの商品名の下で入手可能なもの等の肝炎ワクチン、および同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン。
【0049】
特定の態様に従って、本発明はSARS、RSV等の呼吸器系ウイルス、もしくは例えばA型、B型および/またはC型インフルエンザ、ならびに豚インフルエンザ感染および/または鳥インフルエンザ感染を含む、潜在的に汎発性のインフルエンザウイルス感染を含むインフルエンザウイルスに対するワクチンに適用できる。例えば、本発明は被験体におけるH1N1感染および/またはH5N1感染に対するワクチンに適用できる。
【0050】
インフルエンザは季節的流行において世界中に蔓延し、毎年何十万人の、世界的流行の年にはときどき何百万人の死者をもたらす。インフルエンザに対するワクチン接種は、たいてい先進国の国民および飼育されている鳥類に与えられる。最も一般的なヒトワクチンは、3つのウイルス株からの精製および不活化された材料を含む三価インフルエンザワクチン(TIV)である。一般的に、このワクチンは2つのA型インフルエンザウイルス亜型および1つのB型インフルエンザウイルス株からの材料を含む。TIVは疾患を伝染させる危険性を伴っておらず、反応性がとても低い。
【0051】
特定の態様に従って、本発明はA型インフルエンザ豚インフルエンザおよび/またはA型インフルエンザ鳥インフルエンザに対するワクチンに適用できる。本発明を適用できる豚インフルエンザワクチンはH1N1型、H1N2型、H3N1型、H3N2型および/またはH2N3型に対するワクチンを含むが、それらに限定されない。本発明を適用できる鳥インフルエンザワクチンはH1N1型、H1N8型、H2N9型、H3N8型、H3N2型、H4N6型、H4N3型、H5N3型、H5N9型、H5N1型、H6N2型、H6N8型、H6N5型、H6N1型、H7N7型、H7N1型、H7N3型、H8N4型、H9N2型、H9N6型、H10N7型、H10N8型、H11N6型、H11N9型、H12N5型、H13N6型、H13N4型および/またはH15N9型に対するワクチンを含むが、それらに限定されない。特定の態様において、鳥インフルエンザワクチンはH5N1型、H7N3型、H7N7型および/またはH9N2型に対する。典型的な鳥インフルエンザ株は以下のものを含む:
【0052】
(表1)鳥インフルエンザ株
【0053】
さらなる態様に従って、本発明は被験体におけるC型インフルエンザ豚インフルエンザに対するワクチンに適用できる。
【0054】
他の態様において、ワクチンは癌の治療もしくは予防のためのものであり、ワクチンは1以上の腫瘍抗原を含むか、もしくは自己細胞免疫療法を含んでもよい。癌ワクチンは、PROVENGEの商品名の下で入手可能なものと同一もしくは類似した免疫療法、または類似もしくは同等の治療を含んでもよい。
【0055】
本発明に従って強化されるワクチンは、一次もしくは二次ワクチン接種(例えば追加免疫)であってよい。
【0056】
通常は、ワクチン組成物は各態様において効果的と決定された量、または(例えばチモシンペプチドを投与しない場合に)選択されたワクチンを患者において使用することが政府規制機関によって認可された量(もしくはより少量)で被験体に投与される。免疫応答誘発量はワクチンの組成に依存する。通常は、ワクチンの抗原組成物は約1×10−9gから約1×10−3gまでの範囲内で、そしてより一般的には約1×10−8gから約1×10−4gまでの範囲内で被験体に投与されてよい。ワクチンは、筋肉内もしくは皮下注射、もしくは鼻腔内投与、または対象となる特定のワクチンについて効果的であることが示された他の経路で投与されてよい。
【0057】
ある態様において、本発明はワクチン投与量を減少させるための方法を含む、減少したワクチン投与量を提供する。本方法はワクチン単独について規制機関に認可された投与量よりも少ないワクチンの投与量とともに、本明細書に記載された投与計画でチモシンペプチドを投与することを含む。これらの態様において、本発明はワクチンの節約を可能にし、このことは汎発性疾病もしくは生物テロの脅威に対して集団にワクチン接種するために重要であり得る。特定の態様において、ワクチンはインフルエンザワクチンであり、ワクチンは15μg未満の任意の一種類の死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルス株を含む。例えば、ワクチン(例えばFLUARIXもしくは同等のワクチン)は表示された各株からの、2μgから約12μgまでの死滅したもしくは不活化されたインフルエンザウイルスを含んでもよい。
【0058】
チモシンペプチドは抗体価を強化するのに十分な、および/または抗体価の発生を加速するのに十分な、および/または防御抗体価の持続時間を延長するのに十分な投与量で被験体に投与される。例えば、様々な態様において、チモシンペプチドは少なくとも約0.5mg(例えば少なくとも約1.6mg)、少なくとも約3mg(例えば少なくとも約3.2mg)、もしくは少なくとも約5mg(例えば少なくとも約6.4mg)のTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される。チモシンペプチドは、通常は約0.1から20mgのTA1、もしくは約1から10mgのTA1、もしくは約2から10mgのTA1、もしくは約2から8mgのTA1、もしくは約2から7mgのTA1に対応する範囲内で投与されてもよい。特定の態様において、投与単位は約3.2もしくは6.4mgのTA1等の、3から6.5mgの範囲内である。投与量は被験体の種もしくは患者に応じて調整されてもよいが、各々の場合において、TA1(mg/kg)のヒト相当量に概ね対応する。
【0059】
チモシンペプチド(例えばTA1)は、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射もしくは点滴、および経口を含む任意の効果的な経路で投与されてよい。特定の態様において、チモシンペプチドは皮下注射によって投与される。通常は、チモシンの予定された投与は単回投与(例えば注射)として投与されてもよく、または例えば持続点滴もしくは反復注射等によって24時間以内にわたって配置されてもよい。チモシンペプチドの予定された投与は、単回注射として投与されてもよい。
【0060】
動けないもしくは入院中の患者のため等の、ある態様において、TA1は持続点滴によって投与されてもよい。TA1の持続点滴は、US 2005/0049191に詳しく記載されており、そのすべての開示は参照により本明細書に組み入れられる。手短に言うと、チモシンペプチドの持続点滴は免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系でより長い期間維持する。皮下注射されたTA1の血漿半減期は約2時間であり、したがって特定の態様に従って、チモシンペプチドは少なくとも約6、10、12時間もしくはより長い治療期間、患者に投与されてもよく、それによりある態様において、有効性が改善されるかもしれない。点滴は、ミニポンプ等の任意の適切な手段によって実行されてよい。
【0061】
あるいは、チモシンペプチドは免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系でより長い期間、実質的かつ連続的に維持するために、治療日に複数回の注射(チモシンペプチドの亜投与量(sub-dose))によって投与され得る。適切な注射の投与計画は、チモシン治療日に免疫刺激有効量のチモシンペプチドを患者の循環系で実質的かつ連続的に維持するために、投与の日に2、3、4、6時間等おきに注射すること(例えば2から5回までの注射)を含んでもよい。
【0062】
免疫刺激有効量のチモシンペプチド(例えばTA1)は、患者の体重の約0.0001〜0.1mg/時間/Kgの範囲内の速度でTA1ペプチドを患者に投与することによって患者の循環系で実質的かつ連続的に維持されてもよい。典型的な投与速度は、患者の体重の約0.0003〜0.03mg/時間/Kgの範囲内である。持続点滴のために、TA1ペプチドは注射用水もしくは生理学的濃度の生理食塩水等の薬学的に許容される液体担体中に存在する。
【0063】
チモシンペプチドは、通常は1から4回まで、もしくは1から3回まで投与され、特定の態様においては、(例えば2日間の治療日に)2回投与される。例えば、αチモシンペプチドは一次もしくは二次ワクチン接種の前に、一緒に、および/または後に投与される。本明細書に開示されているように、一次ワクチン接種を強化するためにチモシンペプチドが投与される場合には、後になって任意で追加免疫のワクチン接種が続いて行われてもよい。特定の態様において、ワクチンは、ワクチンの最初の一次投与として投与され、αチモシンペプチドは一次投与の前、同時もしくは後の少なくともいずれかで投与される。特定の態様において、αチモシンペプチドはワクチンの一次投与の後で、かつ該ワクチンの追加免疫の投与の前に投与される。したがって、チモシンペプチドは一次および/または二次ワクチン接種の前に、および一緒に投与されてもよい。
【0064】
チモシン投与の時期は、抗体価(例えば抗体価の発生もしくはレベル)および/または(例えば防御)抗体価の持続時間を強化するように選択される。例えば、特定の態様において、チモシンペプチドの投与は約5日間から約9日間の間隔を置いて与えられ、様々な態様において、約6、7、もしくは8日間の間隔を置いて投与される。チモシンの投与は、約7日間の間隔を置いて与えられてもよい。他の態様において、チモシンペプチドの投与は1、2、3、もしくは4日間の間隔を置いて与えられる。
【0065】
ある態様において、チモシンペプチドは一次ワクチン接種の前、および一次ワクチン接種の日に再度投与される。例えば、チモシンペプチドは一次ワクチン接種の約5から約9日間まで前等の、一次ワクチン接種の1から10日間まで前に、および一次ワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドは一次ワクチン接種の約7日間前に、および一次ワクチン接種の日に再度投与されてもよい。チモシンペプチドをワクチン接種の前およびワクチン接種の日に再度投与することで、防御抗体価を達成する易感染性の患者の数において統計的に有意な増大が引き起こされる。例えば、本発明に従ってTA1を与えられた患者は、少なくとも21日間、少なくとも42日間、少なくとも84日間、もしくはより長く血清転換を達成するかもしれない。
【0066】
他の態様において、ワクチン接種の方法は、(上述したように)免疫不全の動物に、動物にとって異質である病原体に対する抗体の産生を動物において刺激できる免疫応答誘発ワクチンの第一投与を投与し;その後、第一投与の投与後の約1週間および約2カ月の間の一定期間内に、動物においてワクチンの有効性を強化するために:1)動物においてワクチンに応答して抗体の産生を強化するワクチン有効性強化量のαチモシンペプチド;もしくは2)ワクチン有効性強化量のαチモシンペプチドと一緒にワクチンの追加免疫の投与、のいずれかを動物に投与することを含む。
【0067】
特定の態様において、αチモシンペプチドは免疫応答の誘発においてワクチンの有効性を維持しながら、投与されるワクチンのより少ない投与量を可能にする。したがって、本発明はワクチン投与量の節約を提供し、このことは汎発性インフルエンザ等の汎発性疾病の発生または生物テロの脅威もしくは攻撃から集団を防御するために重要かもしれない。
【0068】
αチモシンペプチドは、二次(追加免疫)ワクチン接種の投与に関連して投与されてもよい。二次もしくは追加免疫のワクチン接種は、通常は第一(一次)ワクチン投与の投与後の約1週間から約2カ月の一定期間内に投与される。特定の態様において、追加免疫のワクチンは第一ワクチン投与から約10から45日間以内、もしくは第一ワクチン投与の投与から約10から30日間以内、そしてある態様に従って、第一ワクチン投与の投与から約10から20日間以内に投与される。しかしながら、追加免疫のワクチン接種は特定の態様においては投与されてもよいが、他の態様においては、追加免疫のワクチンは投与されない。
【0069】
一つの態様に従って、1回以上のチモシンペプチドが二次(追加免疫)ワクチン投与の投与から数日間前(例えば1から10日間前)、例えば二次(追加免疫)ワクチン投与の投与から約2から9日間(例えば約5から7日間)、もしくはある態様において、3から4日間前に被投与個体に投与される。特定の態様において、αチモシンペプチドは二次(追加免疫)ワクチン投与の投与と同時にも投与される。
【0070】
同一の日に投与される場合には、ワクチンおよびαチモシンペプチドは別々もしくは単一の注射で一緒に投与され得る。ワクチンおよびαチモシンペプチドが同時に投与される場合には、それらはワクチンおよびαチモシンペプチドを含む単一の組成物として提供され得る。
【0071】
別の局面において、本発明はワクチン接種のための、もしくはワクチン接種を強化するための薬学的組合せおよびキットを提供する。上述したように、および以下の記載に関連して、組合せおよびキットは本発明の方法を実施するための個々の投与単位におけるワクチン組成物およびチモシンペプチドを含む。
【0072】
上記に詳しく記載されているように、薬学的組合せもしくはキットは被験体において抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチンを、(上述したように)個々の投与単位のチモシンペプチドとともに含んでもよい。特定の態様において、本発明はインフルエンザワクチン接種を強化するためのキットであって、1もしくは2投与単位の、例えばFLUARIX、FLUVIRIN、FOCETRIA、FLUZONE、FLULAVAL、AFLURIA、もしくはFLUMISTの商品名の下で入手可能なインフルエンザワクチンまたは同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン等のインフルエンザワクチンを含むキットを提供する。他の態様において、本発明は肝炎ワクチン接種を強化するためのキットを提供し、したがって1もしくは2投与単位の、HAVRIX、VAQTA、ENERIX-B、RECOMBIVAX HB、COMVAX、PEDIARIX、およびTWINRIXの商品名の下で入手可能なものから選択される肝炎ワクチン、ならびに同一もしくは類似した抗原成分を含む同等のワクチン等の肝炎ワクチンを含む。
【0073】
ワクチン組成物に加えて、上記に詳しく記載されているように、薬学的組合せもしくはキットはさらにワクチン有効性強化量のαチモシンペプチドを含む。αチモシンペプチド(例えばTA1)は、1、2、3、もしくは4の投与単位等の個々の投与単位で提供されてもよい。そのような投与単位は、投与前に滅菌希釈剤(これもキットの一成分として提供されてもよい)で再構成されるために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくはさもなければ皮下注射のため等、本明細書に記載されているように注射のための液体懸濁液として製剤されてもよい。例えば、チモシンペプチドは前もって投与量とされたペン等で提供されてもよい。様々な態様において、チモシンペプチドの投与単位は少なくとも約0.5mgのTA1、少なくとも約3mg、少なくとも約5mg、または通常は約0.1から20mgのTA1、もしくは約1から10mgのTA1、もしくは約2から10mgのTA1、もしくは約2から8mgのTA1、もしくは約2から7mgのTA1に対応する範囲内に対応する。特定の態様において、投与単位は約3.2もしくは6.4mgのTA1等の、3から6.5mgの範囲内である。
【0074】
特定の態様において、組合せもしくはキットは本明細書に記載されたような投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mgのTA1)の有効量のチモシンペプチドを含む第一の投与単位、ワクチン(例えば、記載されているように季節性インフルエンザワクチンもしくはH1N1もしくはH5N1ワクチン、または肝炎ワクチン)を含む第二の投与単位、および本明細書に記載された投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mgのTA1)の有効量のチモシンペプチドを含む第三の投与単位を含む。キットはさらに凍結乾燥の形態で提供されたTA1を再構成するための滅菌希釈剤(例えば滅菌水性希釈剤)の密封容器を含んでもよい。成分は販売のために一緒に包装されてもよい。
【0075】
ワクチンおよび/またはチモシンペプチドを含む組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、および任意で他の治療成分も含み得る。注射もしくは点滴に適した剤形は、任意で酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および剤形を対象とする被投与個体の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含む。例えば、チモシンペプチド(例えばTA1)はマンニトールおよびリン酸ナトリウムとともに凍結乾燥の剤形で提供されてもよい。剤形は単位投与量もしくは複数投与量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在してもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみが必要なフリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保存されてもよい。特定の態様において、本発明のキットは、各々が記載されたような凍結乾燥されたTA1の投与量(例えば1から10mgまで、または約3.2もしくは約6.4mg)を含み、滅菌水性希釈剤を含む密封バイアルもしくは他の容器と一緒に販売のために包装された、凍結乾燥されたTA1の2個の個々のアンプルもしくはバイアルを提供する。
【0076】
一つの典型的な態様において、本発明はインフルエンザワクチン(例えば季節性の三価ワクチンまたはH1N1もしくはH5N1ワクチン)の個々の投与単位、および各々が5mg以上(例えば6.4mg)であって、皮下投与のために液体担体で再構成されるように凍結乾燥の形態である正確に1もしくは2の投与量のTA1を含む、販売のために包装されたキットの形態をとる。個々の単位の中の滅菌液体担体(例えば滅菌水)も、TA1の投与単位の便利な再構成のために提供されてもよい。
【0077】
さらに他の局面において、本発明はワクチン強化のためのキットであって、各々が本明細書に記載されたような投与量、例えば1および10mgの間、または約3.2もしくは6.4mgである、正確に2つのチモシンペプチドの投与単位を含むキットを提供する。チモシンペプチドの個々の投与単位は、投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されてもよく、もしくは前もって投与量とされたペン等で提供されてもよい。凍結乾燥の形態で提供される場合には、TA1の再構成のための滅菌水性担体(例えば約0.5から約3mlまで、例えば約1ml)の1もしくは2個のバイアルも提供される。2つの投与単位、およびもし提供される場合には担体は、ワクチンの有効性を強化するために、販売のために一緒に包装される。この局面において、ワクチンが提供される必要はない。
【実施例】
【0078】
実施例1:マウスにおけるH1N1ワクチン接種の強化
概要
CD-1マウスにおいて、季節性インフルエンザワクチンFluvirin(登録商標)2008-2009を用いた異なるワクチン接種スケジュールに続いて抗インフルエンザ抗体の形成を強化するTA1(thymalfasin)の潜在能力を決定するための研究が行われた。マウスは研究日(SD)1および10もしくはSD8および17に対照物質またはワクチンのいずれかを与えられた。マウスはワクチン投与に関連して異なる時間に異なる投与量のTA1も与えられた。対照物質およびワクチンの両方は、右および左後肢の両方に筋肉内注射によって投与され、TA1は腹腔内経路によって投与された。すべてのマウスは体重とは無関係に一定投与量の対照/ワクチンを与えられた。マウスは1日に2回、死亡数、瀕死状態、全体的な健康、および毒性兆候を観察され、投与の前に体重が記録された。血液試料はSD20もしくは27(最後のワクチン投与の10日後)のいずれかに採取され、これらの試料についてHAI抗体産生が解析された。血液採取に続いて、すべての動物を安楽死させ、剖検せずに処分した。
【0079】
結果は、TA1およびFLUVIRINの両方を与えられたマウスではFLUVIRINのみを与えられたものに比べてHAI力価が高かったことを示している。加えて、本研究において使用されたTA1の最も高い投与量(1.2mg/kg)では、他の投与量と比べた場合に、力価がより一貫して増大した。さらに、すべての試験株においてすべての動物が所望の抗インフルエンザ抗体を達成したため、最良の投与スケジュールはSD8におけるFLUVIRINのワクチン接種の7日間前および当日にTA1を投与することであった。
【0080】
実験研究
チモシンα1(TA1;商品名ZADAXIN(登録商標))は認可され、市販されている。TA1は血液循環中に天然に見出され、体の胸腺で生産される。ZADAXIN(登録商標)(チモシンα1の合成版)は、少なくとも部分的にはT細胞およびNK細胞に影響を与えることによって免疫系を刺激する。
【0081】
TA1は優秀な安全性の記録を有する。今日までの臨床研究において、成人、高齢者、および小児を含む、ウイルス性B型肝炎およびC型肝炎、原発性免疫不全症、および多数の癌を有する3,000名を超える患者が、事実上、薬剤に関連した副作用なしにTA1で治療されてきた。TA1がインターフェロンおよび化学療法等の他の薬剤と組み合わされた場合にも、副作用の悪化は少しもない。動物実験において、TA1は推奨されるヒトの投与量の800倍もの投与量で投与されているが、有害な臨床的兆候の証拠はない。
【0082】
臨床試験によって、TA1が高齢および血液透析の患者においてインフルエンザおよびB型肝炎ワクチンへの応答を増大させることが明らかにされている。しかしながら、治療の投与計画にはワクチン接種に続いて8回のTA1の注射が含まれている。本研究は、CD-1マウスにおいて、季節性インフルエンザワクチンFluvirin(登録商標)2008-2009を用いた2つの異なるワクチン接種スケジュールに続いて抗インフルエンザ抗体の形成を強化する異なる投与量および(主として、より少数の注射を含む)投与計画のTA1の潜在能力を決定するために行われた。
【0083】
適当な数の雄CD-1マウスをCharles River Laboratoriesから購入した。動物は、第一投与の際に25から40グラムの重さで、7から9週齢であった。すべての動物はCertified Global Harlan Teklad Laboratory Diet 2018(ペレット)および水を、自動給水システムおよび/または給水瓶によって与えられた。動物は硬材の床敷Certified SaniChip(登録商標)とともにポリカーボネート製のケージの中に個々に収容され、ステンレス鋼のラックに吊るされた。温度および湿度の範囲は、それぞれ18から26℃および30から70%であった。
【0084】
対照物質は0.9% Sodium Chloride for Injection, USPであり、室温で保存した。
【0085】
TA1はリン酸緩衝生理食塩水を用いて適当な濃度まで希釈し、使用まで2から8℃で保存した。
【0086】
Fluvirin(登録商標)2008-2009は0.9% Sodium Chloride for Injection, USPを用いて適当な濃度まで希釈し、製剤の日に使用した。
【0087】
研究は、ワクチン投与スケジュールに応じて2つのコホートに分けられ、5匹のマウス/群が各群に無作為に割り当てられた。第一コホートのマウス(20群)は、研究日(SD)8(ワクチン)および17(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられ、第二コホートのマウス(23群)はSD1(ワクチン)および10(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられた。TA1の投与は、表3および4に示されたように行われた。
【0088】
対照物質(0.9% Sodium Chloride for Injection, USP)およびワクチン(9μg/投与のFluvirin(登録商標)2008-2009)は、両方とも(体重とは無関係に)一定の投与量である0.05mLの対照物質/ワクチンを右および左後肢の両方に筋肉内注射によって投与した。
【0089】
TA1(0.3、0.6もしくは1.2mg/kg/投与)は、1mL/kgの投与量で腹腔内経路によって投与した。
【0090】
(表2)マウス/フェレット/ヒト投与スケジュール
【0091】
動物は1日に2回、死亡数、瀕死状態、全体的な健康、および毒性兆候を観察された。動物は、皮膚および毛皮の特徴、注射部位、目および粘膜、呼吸器系、循環系、および自律神経系および中枢神経系、体の動き(somatomotor)および挙動のパターンを観察された。体重は投与の前にのみ記録した。
【0092】
インフルエンザ抗体価の解析(HAI解析)のための血液試料は、SD20もしくはSD27(最後の対照物質/ワクチン投与の10日後)にすべての動物から心臓スティック(cardiac stick)によって採取した。血液採取に続いて、すべての動物をCO2吸入によって安楽死させ、失血させて、剖検せずに処分した。
【0093】
HAI解析は、Fluvirin(登録商標)2008-2009ワクチン中に存在する3つのワクチン株(Florida [B]、Brisbane 10およびBrisbane)に対して三連で実行した。
【0094】
(表3)コホート1(SD1および10に投与された対照物質/ワクチン)
【0095】
(表4)コホート2(SD8および17に投与された対照物質/ワクチン)
【0096】
結果
すべての動物は予定された終了時まで生存し、いずれの動物にも被験物質関連の臨床的/ケージサイド(cageside)の所見もしくは体重の影響は認められなかった。
【0097】
Fluvirin(登録商標)2008-2009のワクチン接種に関連して異なるスケジュールで2回のTA1が雄CD-1マウスに投与された場合には、HAI力価はFluvirin(登録商標)2008-2009のみを与えられた動物に比べてTA1およびFluvirin(登録商標)2008-2009の両方を与えられたもののほうが概して高かった。
【0098】
本研究において調べられた異なるスケジュールの下では、1.2mg/kgの投与量のTA1が他の投与量と比べた場合に、力価をより一貫して増大させた。図1および2を参照。マウスにおける1.2mg/kgの投与量は、ヒトにおける約6.4mgの投与量に相当する。
【0099】
さらに、最良の投与スケジュールはSD8のFluvirin(登録商標)2008-2009のワクチン接種の7日間前および当日にTA1を投与することであり、なぜならこの投与計画によって、すべての試験株においてすべての動物が所望の抗インフルエンザ抗体を達成した。図1および2を参照。
【0100】
したがって、HAI力価測定法で決定されたように、9μgの投与量のFluvirin(登録商標)2008-2009で2回ワクチン接種されたCD-1マウスにおいて、TA1は抗インフルエンザ抗体の形成を強化する。最も効果的な投与計画は1.2mg/kgのTA1をワクチン接種の7日間前および当日の2回与えることであった。
【0101】
実施例2:フェレットにおけるH1N1ワクチン接種の強化
チモシンは、抗体応答の増強を含む様々な機構によって、いくつかの微生物および腫瘍環境において免疫修飾を発揮することが示されてきた。ブタ由来の新規のA型/H1N1ウイルスに起因する進行中のインフルエンザの世界的流行を制御するための取り組みにおいて、多くの国々で自発的な集団ワクチン接種が実施され、ワクチンがアジュバントとともに、もしくはアジュバントなしで使用されるであろう。これらのワクチンの少なくともいくつかは、ワクチン接種を受けた人の大半においてウイルス中和抗体の相当な生産を誘導するために1か月後の追加免疫の投与が必要となる。さらに、標的集団の全体に対するこれらのワクチンの入手可能性は疑わしい。したがって、インフルエンザワクチンと別々ではあるが併せて投与される適切な投与量のチモシンがウイルスに対する抗体応答を増強するかどうかを評価することは重要である。
【0102】
実験研究
インフルエンザに罹っていないフェレットはインフルエンザウイルスにとても反応しやすく、したがって防御の抗ウイルス効果を試験するのに使用できる。実験では、アジュバント化されたインフルエンザワクチン(Fluad:対照として)およびアジュバント化されていないインフルエンザワクチン(Agrippal、以下の表では単に「ワクチン」と表示)の両方を用いてワクチンの免疫原性の増強を試験した。
【0103】
4匹のフェレットの5群は、SD0(ワクチン)および21(追加免疫)に対照物質もしくはワクチンを与えられた。TA1の投与は、表5に示されたように行われた。チモシン投与量の案は、マウスおよびヒトで公開されたデータに関して、フェレットの重量を考慮に入れて推測された。事前の出血(pre-bleeding)によって抗インフルエンザ力価が陰性であることを確認した。
【0104】
ワクチン(アジュバント化されていないAgrippal influPozzi季節性ワクチン、もしくはアジュバント化されたFluad, MF-59のいずれか)は、ヒト投与量の全量である0.5mLが筋肉内注射によって右脚に投与された。TA1(0.285もしくは0.570mg/kg/投与)は、フェレット/ヒト投与のためのスケーリング因子(scaling factor)を用いて、3.2もしくは6.4mg/kgというヒトの投与量に大体対応する投与量で皮下経路によって投与された。動物は1日に2回、専門の獣医の責任下で死亡数、全体的な健康、ならびに局所および全身の両方の毒性および疾病の兆候、ならびに挙動を観察された。体重は投与の前にのみ記録した。
【0105】
インフルエンザ抗体価の解析(赤血球凝集抑制;HAI解析)のための血液試料は、SD21(追加免疫のワクチン投与の前)、SD35、およびSD120にすべての動物から心臓スティックによって採取した。HAI解析は、3つのワクチン株(Florida [B]、Brisbane 10およびBrisbane 59)に対して三連で実行した。H1N1 A/ Brisbane 59のデータを図3に示した。すべてのフェレットは、H3N2 A/ Brisbane 10に対する既存の抗体を有していた。
【0106】
(表5)研究の設計および予定表
【0107】
結果
フェレットにおけるHAI力価(21日目)は、ワクチンのみを与えられた動物に比べてTA1およびワクチンの2回の注射を与えられたもののほうが概して高かった(図3を参照)。0.57mg/kgの投与量のTA1(ヒトの投与量の約6.4mg/kgに相当)をワクチン接種の7日間前および当日に投与するのが最良の実行投与量/スケジュールであり、なぜならこの投与計画によって3/4の動物が所望の抗インフルエンザ抗体を与えられた。力価はワクチン接種の42日間後に評価した際にも維持されていた。同様に、0日目および+21日目にTA1を与えられたフェレットは、TA1なしで追加免疫されたものに比べて、ワクチンの追加免疫後により高いHAI力価を示した。TA1とは無関係に、アジュバント化されたワクチンを与えられたフェレットの抗体応答は、アジュバント化されていないワクチンからのものを、はるかに上回った。
【0108】
図3は、各群における抗体価を示している。1:40という力価は防御的と考えられる。示されているように、6.4mgのヒト相当量のthymalfasinがワクチン接種(アジュバントなし)の−7日目および当日に与えられた場合は防御的であった。ワクチンのみに対して4倍の増大が観察された。さらに、この投与計画は4匹中3匹の動物において防御力価を産生した。
【0109】
TA1は安全かつ耐容性が良好なようであり、ケージサイドの所見は認められなかった。したがって、TA1はアジュバント化されていないインフルエンザワクチンへの抗体応答を強化でき、これはワクチン接種に対する応答の低下した被験体、特に高齢者へのワクチン接種に関連する発見である。
【0110】
実施例3:血液透析患者におけるH1N1ワクチン接種の強化
チモシンTA1がMF59アジュバント化H1N1インフルエンザ一価ワクチンであるFocetria(商標)に対する免疫応答を強化する能力が調べられた。研究は血液透析患者において行われた。血液透析を必要とする末期腎疾患もしくは免疫系を損なう他の状態の患者、ならびに高齢者は、しばしばH1N1インフルエンザ等の感染症を撃退するのに十分な抗体を発生させない。加えて、最初は防御力価を達成した多数の患者がそれらを長期間維持できず、患者を感染させやすくして、ワクチン再接種もしくは追加免疫の注射を必要とさせる。
【0111】
長期にわたる透析を受けている末期腎疾患の約120名の患者において、無作為の三群(three-arm)研究を行った。1つのコホートの患者はH1N1ワクチンのみを与えられ、他の2つの群は2回の低用量のthymalfasin(TA1)の注射(ワクチン接種の7日間前およびワクチン接種の当日に3.2mg)、もしくは2回のより高用量のthymalfasinの注射(ワクチン接種の7日間前およびワクチン接種の当日に6.4mg)のいずれかを与えられた。21日目に少なくとも1:40の抗体価を達成しなかったすべての患者は、その日に第二のH1N1ワクチン接種を与えられた。投与計画はフェレットおよびマウスのモデルにおいて得られた前臨床の結果に基づく。血液は0、21、42、84、および168日目に採取された。H1N1ワクチンの第二の投与は、第一のワクチン接種から18〜28日目に防御力価に達しなかったすべての患者に投与された(8名の被験者、もしくはワクチンのみを与えられた32名の被験者の25%;2名、もしくはワクチンおよび3.2mgの投与量のTA1を与えられた28名の被験者の7.1%;および2名、もしくはワクチンおよび6.4mgの投与量のTA1を与えられた32名の被験者の6.3%)。
【0112】
本研究の主要な効能のエンドポイントは、血清転換、具体的には防御的と考えられている特定の抗体価における有意な上昇、を達成した患者の比率である。HI力価を用いた本研究との関連では、「血清転換」はワクチン接種前に陰性の血清(例えばHI力価<1:10)からワクチン接種後の力価≧1:40への変化、もしくは力価におけるベースラインからの少なくとも4倍の増大と定義される。加えて、患者は防御力価の耐久性を評価するために6カ月間経過観察される。「血清保護」は、HI力価が≧1:40と定義される。「幾何平均比」(GMR)は、x日目/1日目の幾何平均力価の比である。
【0113】
H1N1ワクチンとともに与えられたthymalfasin治療は、H1N1ワクチンのみを与えられた者と比べた場合に、ワクチン接種から21日間後に血清転換した被験者の百分率において、かなりの統計的な(p値≦0.01)増大を引き起こした。具体的には、ワクチン接種に続く21日目に、ワクチンのみの群の患者のたった56%と比較して、低用量群の患者の89%は高用量群の患者の88%と同様に血清転換を達成した。
【0114】
図5に図示されるように(ベースラインおよび21日目における平均力価を示す)2つの投与量のthymalfasinを用いた治療は、容量依存的な形で平均力価を増大させる。図4は、血清保護の人の数および血清転換した人の数が、thymalfasin治療でより大きいことを示す。
【0115】
H1N1ワクチンとともに与えられたthymalfasin治療は、H1N1ワクチンのみを与えられた者と比べて、ワクチン接種から42日間後に評価した場合にも、血清転換した被験者の百分率において統計的に有意な(P値=0.04)増大を引き起こした。加えて、thymalfasin処理患者において見られた力価の改善は、この時点で維持されていた。具体的には、ワクチン接種に続く42日目に測定したときには、本研究のワクチンのみの群の患者のたった77%と比較して、低用量群の患者の93%および高用量群の患者の94%が血清転換を達成した。この増大した血清転換は、ワクチン接種に続く21日目に見られたものに勝っている。
【0116】
以下の表に、本研究の84日目までのマイクロ中和(MN)および血清転換(SC)のデータをまとめる。
【0117】
(表6)
全集団:
血清転換は、ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)かつワクチン接種後のMN力価≧1:20もしくはワクチン接種前のMN力価が非陰性(≧1:10)から4倍の増大と定義される。GMR=x日目/0日目の幾何平均MN力価の比。
1回のワクチン投与を与えられた被験者のみ
ベースラインにおいて防御されていない被験者のみ
ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)もしくは非陰性(≧1:10)だが非防御(すなわちMN力価≦1:20)と定義される。
ベースラインにおいて陰性の被験者のみ
ワクチン接種前に陰性の血清(すなわちMN力価<1:10)と定義される。
2回のワクチン投与を与えられた被験者のみ
【0118】
図6および7は、21および42日目のHI試験の結果を図示し、TA1治療による血清転換の患者のより高い百分率およびより高い幾何平均比を示す。図8は、第二のワクチン接種を与えられた患者の結果を図示し、42日目におけるTA1治療による改善を示す。
【0119】
図9は、2回のワクチン投与を与えられた患者についての結果を、1回のワクチン接種およびTA1を与えられた患者と比較する。
【0120】
図10は、ベースラインにおいて陰性であった患者についての、21および42日目の結果を図示する。すべての患者が42日目までに血清転換を達成した一方で、21日目には、TA1を与えられた患者の方が血清転換を達成している傾向が高かった。
【0121】
図11から21は、本研究の84日目までの結果を図示する。
【0122】
本研究は、H1N1アジュバント化ワクチンに加えて与えられたTA1の2回の注射がワクチンの効能の増大、具体的には:より速い応答時間によって患者がより早く防御されることが可能となり、ワクチンのみの1回の投与もしくは2回のワクチンの注射よりも良い応答を引き起こしたことを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体にワクチン接種するための方法であって、被験体にワクチンを投与する工程、およびワクチンのみを投与するのに対して、より高い抗体価を提供し、抗体価の発生を加速し、および/または抗体価の持続時間を強化するのに効果的な投与量および投与計画で被験体にチモシンペプチドを投与する工程を含む方法。
【請求項2】
チモシンペプチドがチモシンα1(TA1)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チモシンペプチドが組換えもしくは合成である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
チモシンペプチドがペグ化されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
被験体が哺乳動物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
被験体がヒトである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
被験体が免疫不全もしくはワクチン接種に不応性である、請求項5または6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
被験体が高齢患者もしくは血液透析を受けている患者である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
被験体がAIDS患者である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
免疫不全が遺伝的欠陥、栄養障害、薬物乱用、アルコール依存症、もしくは癌に起因する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
被験体が免疫抑制剤を用いた治療を受けている、請求項7記載の方法。
【請求項12】
ワクチンが死滅したもしくは不活化された感染性物質、または腫瘍抗原を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
ワクチンがDNAワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
ワクチンがペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、および/またはトキソイドワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
ワクチンがウイルスベクターもしくはウイルス様粒子(VLPs)を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ワクチンが生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、もしくは不活化ウイルスワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
ワクチンが急性または慢性の細菌性、ウイルス性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
ワクチンがインフルエンザ、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、炭疽、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病、ポリオ、ポックスウイルス、黄熱、日本脳炎、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌多糖体、腸チフス、ペスト、コレラ、結核、および髄膜炎菌より選択される感染性物質に対するものである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ワクチンがH1N1、H1N8、H2N9、H3N8、H3N2、H4N6、H4N3、H5N3、H5N9、H5N1、H6N2、H6N8、H6N5、H6N1、H7N7、H7N1、H7N3、H8N4、H9N2、H9N6、H10N7、H10N8、H11N6、H11N9、H12N5、H13N6、H13N4および/またはH15N9より選択される少なくとも1つのインフルエンザに対するものである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ワクチンが肝炎ワクチンである、請求項17記載の方法。
【請求項22】
ワクチンが一次もしくは二次ワクチン接種である、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
チモシンペプチドが少なくとも約0.5mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
チモシンペプチドが約1から10mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
チモシンペプチドが約3.2もしくは6.4mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
チモシンペプチドが筋肉内もしくは皮下注射によって投与される、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
チモシンペプチドが持続点滴によって投与される、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
チモシンペプチドが1から4回まで投与される、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
チモシンペプチドが2回投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の前に、一緒に、および/または後に投与される、請求項28または29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
追加免疫のワクチン接種が投与される、請求項28〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
チモシンペプチドがワクチンの一次投与の後で、かつ追加免疫の投与の前および/または一緒に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
チモシンペプチドが、一次ワクチン接種の投与の前に1度目、および一次ワクチン接種と同日に2度目の2回投与される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の約5から約9日間まで前に投与され、および一次ワクチン接種の日に再度投与される、請求項28〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の約7日間前に投与され、および一次ワクチン接種の日に再度投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
チモシンペプチドがTA1であり、ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
被験体において抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチン、および
1から3までの個々の投与単位のチモシンペプチド
を含む、ワクチン接種のためのキット。
【請求項38】
ワクチンがインフルエンザもしくは肝炎ワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項39】
ワクチンが死滅したもしくは不活化された感染性物質、または腫瘍抗原を含む、請求項37記載のキット。
【請求項40】
ワクチンがDNAワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項41】
ワクチンがペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、および/またはトキソイドワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項42】
ワクチンがウイルスベクターもしくはウイルス様粒子(VLPs)を含む、請求項37記載のキット。
【請求項43】
ワクチンが生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、もしくは不活化ウイルスワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項44】
ワクチンが急性または慢性の細菌性、ウイルス性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項45】
ワクチンがインフルエンザ、インフルエンザ菌(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、炭疽、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ、ライム病、ポリオ、ポックスウイルス、黄熱、日本脳炎、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌多糖体、腸チフス、ペスト、コレラ、結核、および髄膜炎菌より選択される感染性物質に対するものである、請求項37記載のキット。
【請求項46】
ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項47】
ワクチンがH1N1、H1N8、H2N9、H3N8、H3N2、H4N6、H4N3、H5N3、H5N9、H5N1、H6N2、H6N8、H6N5、H6N1、H7N7、H7N1、H7N3、H8N4、H9N2、H9N6、H10N7、H10N8、H11N6、H11N9、H12N5、H13N6、H13N4および/またはH15N9より選択される少なくとも1つのインフルエンザに対するものである、請求項46記載のキット。
【請求項48】
個々のチモシン投与単位が投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されるか、もしくは前もって投与量とされた(pre-dosed)ペンで提供される、請求項37記載のキット。
【請求項49】
凍結乾燥されたチモシンペプチドを再構成するための滅菌希釈剤の容器をさらに含む、請求項48記載のキット。
【請求項50】
チモシンペプチドがTA1である、請求項37〜49のいずれか一項記載のキット。
【請求項51】
TA1の個々の投与単位が約1から10mgのTA1である、請求項50記載のキット。
【請求項52】
TA1の個々の投与単位が約3.2mgおよび約6.4mgより独立して選択される、請求項51記載のキット。
【請求項53】
約3および7mgの間の投与量の凍結乾燥されたTA1を含む第一の投与単位、
インフルエンザワクチンを含む第二の投与単位、および
約3および7mgの間の投与量の凍結乾燥されたTA1を含む第三の投与単位、ならびに
任意でTA1を再構成するための滅菌希釈剤、
から本質的になる、請求項37記載のキット。
【請求項54】
販売のために一緒に包装された約3.2もしくは6.4mgのTA1に対応する正確に2つのチモシンペプチドの投与単位を含む、ワクチン接種を強化するためのキット。
【請求項55】
チモシンペプチドがTA1である、請求項54記載のキット。
【請求項56】
チモシンペプチドが凍結乾燥の形態で提供される、請求項54または55のいずれか一項記載のキット。
【請求項57】
チモシンペプチドが前もって投与量とされた(pre-dosed)ペンで提供される、請求項54または55のいずれか一項記載のキット。
【請求項58】
さらに滅菌希釈剤の1もしくは2個のバイアルを含む、請求項54〜56のいずれか一項記載のキット。
【請求項1】
被験体にワクチン接種するための方法であって、被験体にワクチンを投与する工程、およびワクチンのみを投与するのに対して、より高い抗体価を提供し、抗体価の発生を加速し、および/または抗体価の持続時間を強化するのに効果的な投与量および投与計画で被験体にチモシンペプチドを投与する工程を含む方法。
【請求項2】
チモシンペプチドがチモシンα1(TA1)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チモシンペプチドが組換えもしくは合成である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
チモシンペプチドがペグ化されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
被験体が哺乳動物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
被験体がヒトである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
被験体が免疫不全もしくはワクチン接種に不応性である、請求項5または6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
被験体が高齢患者もしくは血液透析を受けている患者である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
被験体がAIDS患者である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
免疫不全が遺伝的欠陥、栄養障害、薬物乱用、アルコール依存症、もしくは癌に起因する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
被験体が免疫抑制剤を用いた治療を受けている、請求項7記載の方法。
【請求項12】
ワクチンが死滅したもしくは不活化された感染性物質、または腫瘍抗原を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
ワクチンがDNAワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
ワクチンがペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、および/またはトキソイドワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
ワクチンがウイルスベクターもしくはウイルス様粒子(VLPs)を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ワクチンが生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、もしくは不活化ウイルスワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
ワクチンが急性または慢性の細菌性、ウイルス性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
ワクチンがインフルエンザ、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、炭疽、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病、ポリオ、ポックスウイルス、黄熱、日本脳炎、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌多糖体、腸チフス、ペスト、コレラ、結核、および髄膜炎菌より選択される感染性物質に対するものである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ワクチンがH1N1、H1N8、H2N9、H3N8、H3N2、H4N6、H4N3、H5N3、H5N9、H5N1、H6N2、H6N8、H6N5、H6N1、H7N7、H7N1、H7N3、H8N4、H9N2、H9N6、H10N7、H10N8、H11N6、H11N9、H12N5、H13N6、H13N4および/またはH15N9より選択される少なくとも1つのインフルエンザに対するものである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ワクチンが肝炎ワクチンである、請求項17記載の方法。
【請求項22】
ワクチンが一次もしくは二次ワクチン接種である、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
チモシンペプチドが少なくとも約0.5mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
チモシンペプチドが約1から10mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
チモシンペプチドが約3.2もしくは6.4mgのTA1に対応する投与量でヒト患者に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
チモシンペプチドが筋肉内もしくは皮下注射によって投与される、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
チモシンペプチドが持続点滴によって投与される、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
チモシンペプチドが1から4回まで投与される、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
チモシンペプチドが2回投与される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の前に、一緒に、および/または後に投与される、請求項28または29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
追加免疫のワクチン接種が投与される、請求項28〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
チモシンペプチドがワクチンの一次投与の後で、かつ追加免疫の投与の前および/または一緒に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
チモシンペプチドが、一次ワクチン接種の投与の前に1度目、および一次ワクチン接種と同日に2度目の2回投与される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の約5から約9日間まで前に投与され、および一次ワクチン接種の日に再度投与される、請求項28〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
チモシンペプチドが一次ワクチン接種の約7日間前に投与され、および一次ワクチン接種の日に再度投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
チモシンペプチドがTA1であり、ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
被験体において抗体の産生を刺激できる免疫応答誘発ワクチン、および
1から3までの個々の投与単位のチモシンペプチド
を含む、ワクチン接種のためのキット。
【請求項38】
ワクチンがインフルエンザもしくは肝炎ワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項39】
ワクチンが死滅したもしくは不活化された感染性物質、または腫瘍抗原を含む、請求項37記載のキット。
【請求項40】
ワクチンがDNAワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項41】
ワクチンがペプチドサブユニットワクチン、組換えワクチン、および/またはトキソイドワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項42】
ワクチンがウイルスベクターもしくはウイルス様粒子(VLPs)を含む、請求項37記載のキット。
【請求項43】
ワクチンが生ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、もしくは不活化ウイルスワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項44】
ワクチンが急性または慢性の細菌性、ウイルス性、もしくは寄生性の感染に対するワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項45】
ワクチンがインフルエンザ、インフルエンザ菌(例えばB型)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、AIDSウイルス、結核、マラリア、クラミジア、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、肺炎球菌肺炎、髄膜炎菌性髄膜炎、炭疽、ジフテリア、百日咳、破傷風、狂犬病、ヘリコバクター・ピロリ、ライム病、ポリオ、ポックスウイルス、黄熱、日本脳炎、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌多糖体、腸チフス、ペスト、コレラ、結核、および髄膜炎菌より選択される感染性物質に対するものである、請求項37記載のキット。
【請求項46】
ワクチンがインフルエンザワクチンである、請求項37記載のキット。
【請求項47】
ワクチンがH1N1、H1N8、H2N9、H3N8、H3N2、H4N6、H4N3、H5N3、H5N9、H5N1、H6N2、H6N8、H6N5、H6N1、H7N7、H7N1、H7N3、H8N4、H9N2、H9N6、H10N7、H10N8、H11N6、H11N9、H12N5、H13N6、H13N4および/またはH15N9より選択される少なくとも1つのインフルエンザに対するものである、請求項46記載のキット。
【請求項48】
個々のチモシン投与単位が投与前の再構成のために凍結乾燥の形態で提供されるか、もしくは前もって投与量とされた(pre-dosed)ペンで提供される、請求項37記載のキット。
【請求項49】
凍結乾燥されたチモシンペプチドを再構成するための滅菌希釈剤の容器をさらに含む、請求項48記載のキット。
【請求項50】
チモシンペプチドがTA1である、請求項37〜49のいずれか一項記載のキット。
【請求項51】
TA1の個々の投与単位が約1から10mgのTA1である、請求項50記載のキット。
【請求項52】
TA1の個々の投与単位が約3.2mgおよび約6.4mgより独立して選択される、請求項51記載のキット。
【請求項53】
約3および7mgの間の投与量の凍結乾燥されたTA1を含む第一の投与単位、
インフルエンザワクチンを含む第二の投与単位、および
約3および7mgの間の投与量の凍結乾燥されたTA1を含む第三の投与単位、ならびに
任意でTA1を再構成するための滅菌希釈剤、
から本質的になる、請求項37記載のキット。
【請求項54】
販売のために一緒に包装された約3.2もしくは6.4mgのTA1に対応する正確に2つのチモシンペプチドの投与単位を含む、ワクチン接種を強化するためのキット。
【請求項55】
チモシンペプチドがTA1である、請求項54記載のキット。
【請求項56】
チモシンペプチドが凍結乾燥の形態で提供される、請求項54または55のいずれか一項記載のキット。
【請求項57】
チモシンペプチドが前もって投与量とされた(pre-dosed)ペンで提供される、請求項54または55のいずれか一項記載のキット。
【請求項58】
さらに滅菌希釈剤の1もしくは2個のバイアルを含む、請求項54〜56のいずれか一項記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−526149(P2012−526149A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510041(P2012−510041)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/034221
【国際公開番号】WO2010/129947
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(593199563)サイクローン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】SciClone Pharmaceuticals,Inc.
【住所又は居所原語表記】950 Tower Lane, Suite 900, Foster City, California 94404, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/034221
【国際公開番号】WO2010/129947
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(593199563)サイクローン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】SciClone Pharmaceuticals,Inc.
【住所又は居所原語表記】950 Tower Lane, Suite 900, Foster City, California 94404, United States of America
【Fターム(参考)】
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