ワクチン接種用および薬物送達用リポソームおよびリポソーム組成物
本発明は、リポソームおよびリポソームを含む組成物、その生成、ならびに増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーを予防し治療するための使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームおよびリポソームを含む組成物、その生成、ならびに増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーを予防し治療するための使用に関する。このリポソームおよび組成物は、治療剤の送達、好ましくは抗原を造血系細胞に送達するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどの治療薬は、フリーフォームで患者に投与されているが、このフリーフォームとは、溶液状であり、媒体に結合しない、または組み込まれていないことを意味する。用語「フリーフォーム」は、さらに、所与の治療剤の化学的誘導体および治療剤と形成され得る様々な付加塩を含む。しかし、特に治療剤と比較した場合、およびそのフリーフォームの抗原と比較した場合、投与送達媒体へ治療剤を取り付け、または治療剤を組み込むことによって利点が得られることが判明している。そのような媒体へ組み込みまたは取り付けることによって、所与の治療剤の全体的効力に作用する数種の要因に有利な影響を与えることができる。これらの要因には、組織特異的分配、特に当該組織中または疾患部位への優先的な蓄積、特定の細胞型への薬物または抗原のターゲティング、特に抗原提示造血細胞、例えば、樹状細胞(DC)やランゲルハンス細胞(LC)などによって取り込んだ抗原を送達するためのターゲティングが含まれる。様々な送達媒体の適合性を比較したとき、上記要因も重要ではあるが、そのような送達媒体のうち、媒体からの治療剤に特徴的な放出などの要因もその効力に重要なものとなる。
【0003】
これらの要因の全ては、所与の治療剤の効力の改善の可能性にある程度寄与するが、そのような送達媒体に結合させ、または組み込んだ場合、新規な送達媒体に関する究極の試験は、その「フリーフォーム」の治療剤と比較した、または別の媒体と比較した、疾患動物モデルまたは患者にけるその効力である。
【0004】
近年注目を浴びている送達媒体の一つの型は、リポソームおよびリポソーム製剤である。用語「リポソーム」は、概括的には、形成されたその脂質膜の数に応じて、水性内部を封入した単層または多層脂質構造体をさす。典型的には、リポソームは、治療剤を搭載することができ、すなわち、治療剤をリポソーム内部にカプセル化し、および/または治療剤をリポソームに取り付けもしくは脂質二重層中に組み込むことができる。そのようなリポソーム製剤は、フリーの薬物と比較して効力が増大することが示されている。例えば、ビンカアルカロイドビンクリスチンを含むリポソーム製剤は、フリーのビンクリスチンと比較した場合、白血病細胞に対して効力が非常に高いが、全体的毒性が低いことも既に示されている(Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24)。リポソームは、ほぼどんな脂質からでも形成することができるので、多様な異なるリポソーム製剤が当技術分野で知られている。しかし、所与の疾患に対する薬効における個々の脂質が有する作用だけでなく、2種以上の異なる脂質のどのモル比が脂質組成物の効力を改善し、かつ/または免疫応答を上昇させるかについてはほとんど分かっていない。
【0005】
抗原およびアジュバントをリポソーム組成物に含めて投与することは従来技術に記載されている。Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319には、5mоl%のホスファチジルエタノールアミン(PE)の有り無しで、ホスファチジルコリン(PC)およびコレステロール(CH)を等モル量で含むリポソームの使用について記載され、このリポソームはCpGオリゴヌクレオチドおよびHER‐2/neu由来ペプチドをさらに含む。フリーの抗原の使用と比べたとき、この製剤の免疫化は上昇することが示された。
【0006】
Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp. Therap., 298: 1185には、DSPC、CH、DODAP、およびミリストイルスフィンゴシンをモル比20:45:25:10で含むリポソーム中に、フリーのCpG ODNをカプセル化したとき、免疫刺激の上昇を観察したと開示されている。
【0007】
Lee et al. (1992) Biochimica Biophysica Acta, 1103: 185は、リポソームによる細胞認識、すなわち、認識時のリポソームの細胞型特異性、特異的脂質頭基の影響、および表面電荷密度について研究した。彼らは、9mоl%までのホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、またはホスファチジン酸(PA)のいずれかが存在すると、アフリカザルの腎細胞へのリポソームの結合が増大することを結論付け、このリポソームはその他の点では、PCおよびコレステロールをモル比で2:1含有していた。しかし、彼らは、PS、PG、PAのいずれかをさらに上昇させても、これらの細胞への特異的結合は改善されなかったとも記載している。
【0008】
Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23は、リポソームペプチドワクチンによる生体内での抗原の搭載およびDCの活性化、ならびに得られた抗ウイルス免疫および抗腫瘍免疫について説明している。使用されたリポソームは、モル比で5:1のPCとコレステロールの混合物、および免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含む。
【0009】
Agrita et al. (2003) Infection and Immunity 71: 5210には、リポソームとDCの相互作用を改善する標的法が記載されている。使用されたリポソームには、PC、PS、コレステロールがモル比8:2:2で、またはPC:PG:コレステロールが同モル比で含まれていた。ワクチンに対する高い免疫応答が示された。
【非特許文献1】Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24
【非特許文献2】Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319
【非特許文献3】Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp. Therap., 298: 1185
【非特許文献4】Lee et al. (1992) Biochimica Biophysica Acta, 1103: 185
【非特許文献5】Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23
【非特許文献6】Agrita et al. (2003) Infection and Immunity 71: 5210
【非特許文献7】Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507
【非特許文献8】Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53
【非特許文献9】SEREX; Tureci et al., Mоl Med Today. 1997, 3:342-349
【非特許文献10】Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174
【非特許文献11】Olson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23
【非特許文献12】Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979
【非特許文献13】Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194-
【非特許文献14】Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155
【非特許文献15】Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216
【非特許文献16】Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272
【非特許文献17】Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、送達媒体として所与のリポソームの適合性、特に、抗原提示に関与する造血細胞系細胞に抗原を送達するための適合性に影響を及ぼす要因は未だ不明である。従って、効力を改善し、特に造血系細胞への送達を改善する送達媒体も依然として必要とされている。そのような送達の改善は、例えば、抗原やアジュバントなどを刺激し、かつ/または免疫応答を引き出す分子の投与に特有のものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、コレステロール(CH)を一定の範囲で含み、さらに2種の負荷電脂質、すなわち、PSおよびPGを一定の範囲で含むリポソーム、あるいは1種の負荷電脂質、すなわち、PSもしくはPG、およびPEを一定の範囲で含むリポソームは、CHと共に、PS、PG、もしくはPEを含まない、またはPS、PG、もしくはPEしか含まない従来技術のリポソームと比較した場合、造血系細胞、特に樹状細胞およびランゲルハンス細胞への結合が増大し、かつ/または高い免疫応答を引き出すことを発見している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従って、本発明の一態様は、リポソームの全モル脂質組成物に対して、
a)CH20mоl%〜60mоl%、および
b)20mоl%〜50mоl%のPS、20mоl%〜50mоl%のPG、および20mоl%〜50mоl%のPEの群から選択される少なくとも2種の成分、
c)少なくとも一種の治療剤、および/または少なくとも一種の診断剤
を含むリポソームを提供することである。
【0013】
他の脂質と関連して60mоl%を超えるCH濃度が、規則的な脂質二重層構造の形成に有害であることは判明しており、従って、CHの含有量は60%が本発明のリポソームの上限である。他方で、コレステロール濃度を20mоl%未満に下げると、循環からのリポソームの排出速度が増加し、それによって所与の治療化合物の生物学的半減期が減少すると思われる。好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHが、モル比で約23〜約42mоl%で存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0014】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、PSはリポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0015】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、PGは、リポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0016】
発明のリポソームの好ましい実施形態では、PEはリポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0017】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPSおよびPGのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0018】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPSおよびPEのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPGおよびPEのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0020】
脂質残部、すなわち事例によっては、CH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;またはCH、PG、およびPEのいずれでもなく、かつ加えて100mоl%にするのに必要な脂質の量は、どんな脂質からなっていてもよい。ここでおよび本発明全体にわたって使用する用語「脂質」は、脂肪特性または脂肪様特性を有するどんな物質をもさす。一般に、脂質は、長い無極性残基(X)と、通常、水溶性極性親水性残基(Y)を含み、この脂質は以下の基本式によって特徴付けることができる。
X‐Yn
【0021】
式中、nは0以上である。n=0の脂質は「無極性脂質」と称し、n≧1の脂質は「極性脂質」と称する。本発明の好ましいリポソームの脂質残部を構成することができる脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される。
【0022】
これらの脂質の中で、脂質残部は一種または複数のリン脂質を含むのが好ましい。そのリン脂質は、PCおよびPEからなる群から選択するのが好ましい。
【0023】
本発明のリポソームの好ましい実施形態は、CH、PG、およびPSを上記した範囲であり、好ましい範囲で含み、PEを全モル脂質組成物に対して約1〜約40mоl%の濃度でさらに含み、好ましくは約5〜約20mоl%で、より好ましくは約8〜約15mоl%で含む。
【0024】
別の実施形態では、リポソームは、PCを全モル脂質組成物に対して約20〜約40mоl%の濃度で含み、好ましくは約5〜約20mоl%で、より好ましくは約8〜約15mоl%で含む。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソームの脂質は、本質的にCH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;あるいはCH、PG、およびPEからなる。この場合は、CH、PS、PG、および/またはPEは、上記の好ましい濃度範囲で、特に好ましい濃度範囲で存在してよい。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームが、全モル脂質組成物に対して、本質的に、CH、PS、およびPGからなる場合、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在し;CH、PS、およびPEからなる場合、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在し;CH、PG、およびPEからなる場合は、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在する。
【0026】
PSおよびPGは、それぞれ類似するホスファチジルセリン頭基およびホスファチジルグリセロール頭基を有する脂質の包括的用語である。しかし、これらの頭基に多くの異なる無極性残基を取り付けることができる。従って、異なる天然源から単離したPSおよびPGは、取り付けられた無極性残基の長さ、組成、および/または化学構造がかなり異なり、自然に存在するPSおよびPGは、通常、異なる無極性残基を有するPSおよびPGの混合物である。現在までに試験した、PSおよびPG混合物、あるいは純粋単離した、もしくは化学合成したPSおよびPG化合物は全て、本発明のリポソーム中に示した範囲で、または好ましい範囲で組み込んだ場合、優れた免疫応答をもたらすが、ある種のPSおよびPG型は、特定の強力な免疫応答を刺激することが本発明者らによって観察されており、従って、本発明のリポソーム中に使用されるPSは、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(palmitoyloleoylphosphatidylserine)、パルミトイルリノエオイルホスファチジルセリン(palmitoyllinoeoylphosphatidylserine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルセリン(palmitoylarachidonoylphosphatidylserine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルセリン(stearoyloleoylphosphatidylserine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルセリン(stearoyllinoleoylphosphatidylserine)、ステアロイル‐アラキドノイルホスファチジルセリン(stearoyl-arachidonoylphosphatidylserine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ジカプリルホスファチジルセリン(dicaprylphosphatidylserine)、ジラウロイルホスファチジルセリン(dilauroylphosphatidylserine)、ジミリストイルホスファチジルセリン(dimyristoylphosphatidylserine)、ジフィタノイルホスファチジルセリン(diphytanoylphosphatidylserine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルセリン(diheptadecanoylphosphatidylserine)、ジオレオイルホスファチジルセリン(dioleoylphosphatidylserine)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(dipalmitoylphosphatidylserine)、ジステアロイルホスファチジルセリン(distearoylphosphatidylserine)、ジリノレオイルホスファチジルセリン(dilinoleoylphosphatidylserine)、ジエルコイルホスファチジルセリン(dierucoylphosphatidylserine)、ジドコサヘキサエノイル‐ホスパチジルセリン(didocosahexaenoyl-phospahtidylserine)、脳由来PS、および大豆由来PSからなる群から選択することが好ましく、特に好ましいのはジオレオイルホスファチジルセリンである。本発明のリポソーム中に使用されているPGは、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyloleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(palmitoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(palmitoyldocosahexaenoyl phosphatidylglycerol)、ステアロイルオレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyloleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(stearoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylglycerol)、ジカプリルホスファチジルグリセロールジラウロイルホスファチジルグリセロール(dicaprylphosphatidylglycerol dilauroylphosphatidylglycerol)、ジヘプタデカノイルホスファチジルグリセロール(diheptadecanoylphosphatidyl-glycerol)、ジフィタノイルホスファチジルグリセロール(diphytanoylphosphatidylglycerol)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(dimyristoylphosphatidylglycerol)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、ジエライドイルホスファチジルグリセロール(dielaidoylphosphatidylglycerol)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(distearoylphosphatidylglycerol)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol)、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール(dilinoeoylphosphatidylglycerol)、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール(diarachidonoylphosphatidylglycerol)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(docosahexaenoylphosphatidylglycerol)、
および卵由来PGからなる群から選択することが好ましく、特にジオレオイルホスファチジルグリセロールが好ましい。
【0027】
PSおよびPGと同様に、PEもホスファチジルエタノールアミン頭基を有する脂質の総称である。ある種のPEは、本発明のリポソーム中に組み込まれた場合、特定の強力な免疫応答を刺激するのも本発明者らによって観察されており、従って、好ましい実施形態では、PEは、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyloleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoylarachidonoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyloleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoylarachidonoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(dilauroylphosphatidylethanolamine)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoylphosphatidylethanolamine)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(diphytanoylphosphatidylethanolamine)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルエタノールアミン(diheptadecanoylphosphatidylethanolamine)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine)、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン(dielaidoylphosphatidylethanolamine)、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(diarachidonoylphosphatidylethanolamine)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(docosa hexaenoylphosphatidylethanolamine)、細菌由来PE、心臓由来PE、脳由来PE、肝臓由来PE、卵由来PE、および大豆由来PEからなる群から選択され、特に1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1‐アシル‐2‐アシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1,2‐ジパルミトイル‐PE、および/または1,2‐ジラウロイル‐sn‐グリセロ‐3‐PE(DLPE)である。
【0028】
好ましい実施形態では、治療剤は、薬物、アジュバント、または抗原からなる群から選択される。抗原をアジュバントと共に同時投与するのが特に好ましい。抗原によって引き出された免疫応答が存在するアジュバントによって増強され得るからである。本明細書で使用する用語「アジュバント」は、抗原の投与前に、投与と共に、または投与後に投与した場合、抗原の単独投与と比較して、抗原に対する免疫応答を増大する物質をさす。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、少なくとも一種のアジュバントおよび少なくとも一種の抗原を含む。
【0029】
本明細書全体にわたって使用される用語「抗原」は、ヒトを含む動物で投与と同時に抗原に対する免疫応答を引き出す物質全てをさす。そのような免疫応答は、例えば、B細胞の増殖と抗体分泌、サイトカインの分泌(例えば、IL‐1、IL‐6、TNFα)によって評価される単球および/またはマクロファージの活性化、特異的表面抗原の特異的発現および/または上方もしくは下方制御(例えば、上方制御されるMHCクラスII、CD80、CD86、CD83、CD40、DC‐LAMP、および下方制御される抗原、例えば、マンノース受容体、DEC‐205、DC‐SIGN)によって評価される樹状細胞(DC)の活性化および分化、ならびに抗原特異性T細胞が伴う体液および/または細胞介在免疫応答によって特徴付けることができ、この抗原特異性T細胞は、そのCD4もしくはCD8発現および適当な抗原、特に免疫応答誘発に使用したのと同じペプチド抗原での活性化(再刺激)に続くサイトカインの放出(例えばIFNγ)によって特徴付けられる。ある場合には、薬物も免疫応答を引き出すことができるが、検出された免疫応答が、以下に定義した腫瘍抗原判定基準を満たす場合、そのような物質は薬物ではなく抗原と見なされる。抗原もしくはその断片は、MHCを提示でき、従って細胞介在免疫応答を引き出すことができるのが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己抗原、またはアレルゲンである。
【0030】
用語「腫瘍抗原」は、腫瘍に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。特に適当な物質は、正常細胞と比べて腫瘍細胞に豊富にある物質である。これらの物質は、腫瘍細胞内に存在し、かつ/または腫瘍細胞の外側で利用できるのが好ましい。腫瘍抗原が、腫瘍細胞内にしか存在していなくても、その抗原もしくはその断片はMHC系によって細胞表面に提示されるので、免疫系は腫瘍抗原を利用することができる。好ましい態様では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に概ね排他的に存在し、同じ細胞型の正常細胞中には存在しない。
【0031】
適当な腫瘍抗原は、例えば、同じ細胞型の腫瘍細胞と正常細胞の間のタンパク質の発現量の差をマイクロアレイをベースにした手法(Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507)を使用して分析することにより同定できる。また、PCRまたはマイクロアレイを基に腫瘍特異的変異細胞遺伝子をスクリーニング(Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53)することによって、あるいは組換え発現クローニングにより抗原を血清学的に同定(SEREX; Tureci et al., Mоl Med Today. 1997, 3:342-349)することによって同定できる。当業者は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に優先的にまたは排他的に存在する多数の物質について把握しており、その物質には、例えば、発癌遺伝子、例えば、切断型上皮細胞成長因子、葉酸塩結合タンパク質、メラノフェリン、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、HER2‐neuなど、およびある種の糖鎖、例えば、上皮ムチンなどが含まれる。
【0032】
腫瘍細胞中におよび/または腫瘍細胞上に優先的にまたは排他的に存在する物質の全てが、強力な免疫応答を引き出すわけではなく、従って、本発明のリポソームに含めるために、強力な免疫応答を引き出す腫瘍抗原を選択することが好ましい。強力な免疫応答を引き出す抗原は、増殖させるために、抗原で攻撃すると同時に、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%の、その抗原で予め免疫化したマウスから単離したIFNγ産生CD8+T細胞またはCD4+T細胞を誘発させ、かつ/または抗原で攻撃すると同時に、好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも15%の、その抗原で予め免疫化したマウスから単離したB細胞を誘発させる。これらの基準を満たす抗原は、治療的および/または予防的癌ワクチンで使用するための候補である。
【0033】
特定の好ましい実施形態では、腫瘍抗原は、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特にサイクリン依存性キナーゼ(例えば、CDC2、CDK2、CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pml‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特にNY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6、MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE‐8)、NY‐ESO‐1、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特にヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMT‐1、LMP‐2;過剰発現抗原または組織特異的分化抗原、特にgp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP‐1およびTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1、ならびにそれらの断片および誘導体からなる群から選択される。特定の好ましい腫瘍抗原は、チロシナーゼ関係タンパク質に由来する抗原である。本発明のリポソームに含めるために選択された腫瘍抗原またはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0034】
用語「ウイルス抗原」は、ウイルスに対する、特にウイルス感染細胞に対する免疫応答を引き出す物質全てを含む。ウイルス抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、ウイルス抗原は、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルス、および黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特にコロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特に、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特にインフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロータウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特にB型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特にパルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、乳頭腫ウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;ならびにイリドウイルス科、特にアフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなる群から選択されるウイルスに由来する。特に好ましいウイルス抗原は、HPVL6、HPVL7、それらの断片および誘導体からなる群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができるウイルス抗原もしくはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0035】
用語「真菌抗原」は、真菌に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。この真菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、真菌抗原は、クリプトコックス種、特にクリプトコックスネオフォルマンス、ヒストプラスマ種、特にヒストプラスマカプスラーツム、コクシジオイデス種、特にコクシジオイデスイミティス、ブラストミセス種、特にブラストミセスデルマティティジス、クラミジア種、特にクラミジアトラコマティス、およびカンジダ種、特にカンジダアルビカンスからなる群から選択される真菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい真菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0036】
用語「細菌抗原」は、細菌に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。細菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すのが好ましい。本発明好ましい実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター種、特にピロリ菌;ボレリア種、特にボレリアブルグドルフェリ;レジオネラ種、特にレジオネラニューモフィラ;マイコバクテリア種、特に結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラール、M.カンサシイ、M.ゴルドナ;ブドウ球菌種、特に黄色ブドウ球菌;ナイセリア種、特に淋菌、髄膜炎菌;リステリア種、特にリステリアモノサイトゲネス;レンサ球菌種、特に化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌;S.フェーカリス;S.ボビス、肺炎球菌;嫌気性レンサ球菌種;病原性カンピロバクター種;腸球菌種;ヘモフィルス種、特にインフルエンザ菌;バシラス種、特に炭疽菌;コリネバクテリウム種、特にジフテリア菌;エリシペロトリックス種、特に豚丹毒菌;クロストリジウム種、特にC.ペルフリンゲンス、破傷風菌;エンテロバクター種、特にエンテロバクターアエロゲネス、クレブシエラ種、特に肺炎桿菌、パスツレラ種、特にパスツレラムルトシダ、バクテロイド種;フソバクテリウム種、特にフソバクテリウムヌクレアツム;ストレプトバシルス種、特にストレプトバシルスモニリホルミス;トレポネーマ種、特にトレポネーマペルテヌ;レプトスピラ;病原性エシェリキア種;および放線菌種、特に放線菌イスラエリからなる群から選択される細菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい細菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0037】
用語「自己免疫抗原」は、体内、特に、正常な細胞、組織、または臓器に通常存在する物質、例えば、タンパク質に対する免疫応答を引き出す物質全てを含む。自己免疫抗原は、自己免疫疾患、例えば、1型糖尿病、従来の臓器特異的自己免疫疾患、神経系疾患、リウマチ性疾患、乾癬、結合組織疾患、自己免疫血球減少症、他の自己免疫疾患などを治療し、かつ/または予防するための脱感作法に使用することができる。そのような従来の臓器特異的自己免疫は、甲状腺炎(Graves病+Hashimoto病)、胃炎、副腎炎(Addison病)、卵巣炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、性腺機能不全、副甲状腺機能低下症、脱毛症、吸収不良症候群、悪性貧血、肝炎、抗受容体抗体疾患、白斑症を含み得る。そのような神経系疾患は、統合失調症、アルツハイマー病、うつ病、下垂体機能不全、尿崩症、乾燥症候群、多発性硬化症を含み得る。そのようなリウマチ性疾患/結合組織疾患は、リューマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)もしくはループス、強皮症、多発性筋炎、炎症性腸疾患、皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、血管炎、乾癬性関節炎、剥脱性乾癬皮膚炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群を含み得る。他の自己免疫関連疾患は、本明細書記載し関連技術分野で知られているような自己免疫ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、心筋梗塞開心術後症候群、肺ヘモシデリン沈着症、アミロイド症、類肉腫症、アフタ性口内炎、および他の免疫関連疾患を含み得る。それぞれ示した疾患の原因となる自己免疫抗原は、当技術分野で知られており、それだけには限らないが、全て本発明のリポソーム中に含めることができる。
【0038】
用語「アレルゲン」は、ウイルス抗原、細菌抗原、または真菌抗原ではない外来物質に対して免疫応答を引き出す物質をさす。アレルゲンは、脱感作法によってアレルギーを治療しまたは予防するために、本発明のリポソーム中に含めることができる。好ましいアレルゲンは、花粉、特に、カエデ、カバノキ、ハンノキ、ヘイゼルナッツ、ヨモギ、ビーチマウンテンセダー、オーク、クルミ、ニレ、オリーブ、スズカケノキ、ハコヤナギ、アメリカトネリコ、およびストローブマツの花粉;イネ科草本、特に、ハルガヤ、カモガヤ、ギョウギシバ、野生オート麦、ドクムギの草本;昆虫、特にダニ;食材、特に、乳や乳製品、ナッツ、特に、ピーナッツ、ヘイゼルナッツ、およびアーモンド;獣毛、特に、ネコ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、マウス、ラット、モルモット、およびウサギに由来する毛髪からなる群から選択し、または得てよい。本発明のリポソームに含めることができるそれ以上のアレルゲンは、接触過敏症を引き出す、例えば、ニッケルや銅などのアレルゲンである。
【0039】
本発明のリポソームは、身体のある種の細胞型、すなわち、造血系細胞に対して高い親和性を示し、従ってこれらの細胞型に優先的に薬物を送達するために使用することができる。好ましい実施形態では、薬物は、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、血管新生阻害薬、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および抗喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、特に免疫調節サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤およびそのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬特に、NF‐кBアクチベータ、MAPキナーゼ、STATタンパク質、および/またはタンパク質リン酸化酵素B/Akt;ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。もちろん、本発明のリポソームは同時に一種を超える薬物を含み、あるいは一種もしくは複数の抗原および/または一種もしくは複数のアジュバントと共に、一種もしくは複数の薬物を含むことも想定されている。好ましい実施形態では、薬物は、ケモカイン、サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤、およびそのプロドラッグ、免疫賦活薬、ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、および生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、またはサイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。
【0040】
本発明のリポソームは、顕著な細胞型特異性を示すので、診断剤をその特定の組織に優先的に送達するためにこれらを使用することもできる。診断剤を治療剤と共に含めることも想定されており、それにより患者で治療剤の送達および分布のモニタリングが可能になるはずである。リポソームが以下に定義した標的部分を含む場合は、リポソームは診断剤を含むのがよりさらに好ましく、この標的部分は、標的組織または疾患部位に本発明のリポソームを優先的に局在化するのにさらに役立つ。
【0041】
用語「診断剤」は、蛍光測定、核磁気共鳴、コンピュータ断層撮影、またはシンチグラムを含む分析法によって直接的または間接的に検出可能な化学部分をさす。好ましい実施形態では、診断剤は、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子、例えば、13N、15O,18F、51Gr、54Fe、60Co、67Ga、75Se、99mTc、111In、112mAg、113mIn、123I、133Xe、148Au、35S、33P、32P、11Cなど;例えば、2Hや13Cを含む非放射性同位元素、ならびに蛍光分子、または蛍光や光などを発する分子、例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、および様々な蛍光色素からなる群から選択され、それらの全ては当業者によく知られている。
【0042】
既に述べたように、本発明のリポソームは、ある種の造血細胞系、より詳細には、樹状細胞およびランゲルハンス細胞に高い親和性を有する。様々な疾病の予防または治療を目指す免疫化/ワクチン接種法において、この特異性が、本発明のリポソームを抗原および/またはアジュバントの送達に特に相応しいものにする一方で、この特性によってリポソームは造血性細胞系細胞へ薬物を送達するための送達媒体として特に相応しいものになっている。リポソームはどんな細胞分裂停止薬物または細胞障害薬を含んでもよいが、既知の細胞分裂停止薬および細胞障害薬からは以下のものが特に好ましい:アルキル化物質、抗代謝産物、抗生物質、エポシロン、核内受容体作用薬および拮抗薬、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)阻害薬、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害薬、生体脂肪酸;プロスタノイド、ロイコトリエンを含む脂肪酸誘導体;タンパク質リン酸化酵素阻害薬、タンパク質ホスファターゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、白金配位錯体、エチレンイメン、メチルメラミン、トラジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホン酸、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、L‐アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ホリン酸カルシウム、カルボプラチン、カルペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロランブシル、シス‐プラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロンプロプアミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポシロンB、エポシロンD、エストラムシンホスファート、エストロゲン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロックスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミドホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、ヒドロキシプロゲステロネカプロアト、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスフアミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルルトテカン、マフェニドスルファートオールアミド、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセタート、メガストロールアセタート、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフララジン、ニフルティモックス、ニムスチン、ニノルアゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン、オキソリン酸、ペンタアミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイッシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロリド、セムスチンストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルフアセタミド、スルファクロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、co‐トリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テルチポシド、テストラクトン、テストステロンプロピオナート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジクォン、トレオサルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN‐01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾルビシン、あるいはそのそれぞれの誘導体もしくは類似体。次に、癌を治療するために上記の薬物の数種を同時に投与し、従って、一種を超える細胞分裂停止薬物および/または細胞障害薬を本発明のリポソーム中に含めることも想定されている。
【0043】
本発明者らは、本発明のリポソームが、リポソームに含めたまたは取り付けた抗原に対してかなりの免疫応答を引き出すことができることを発見している。
【0044】
アジュバントを抗原と同時投与すれば、免疫応答をさらに刺激できることが当技術分野で知られてはいても、驚くべきことに、「フリー」のアジュバントの同時投与と比較したとき、アジュバントを含むリポソームは非常に強力な免疫刺激をもたらすことを見出した。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームは少なくとも一種のアジュバントを含む。アジュバントは、リポソーム内部に「フリーに」含めることができ、またはアジュバントは、リポソームを構成するどんな成分、例えば、脂質、好ましくはPE、PSおよび/またはPG、リポソーム中に含まれるタンパク質、またはリポソーム膜に一体化したタンパク質に取り付けることができる。本発明のリポソームが、抗原およびアジュバントを含むいくつかの実施形態では、アジュバントを抗原に取り付けることもできる。
【0045】
本発明のリポソーム中に含めることができるアジュバントは、抗原応答を少なくとも20%増大させることが好ましく、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも1000%増大させる。好ましいアジュバントは、以下からなる群から選択される:非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体、合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、およびより高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチド。本発明のリポソーム中に含めることができる特定の好ましいアジュバントは、群:非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA(CpGモチーフ)、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN)および合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cysから選択される。
【0046】
本発明のリポソームは、2種以上のアジュバントを含むことができる。2種以上のアジュバントは、免疫系の刺激では相乗的に作用するのが好ましい。特に、アジュバントの作用の媒介に関与する異なる分子経路をアジュバントが刺激する場合に、2種のアジュバントの相乗効果を観察することができる。従って、2種以上のアジュバントを使用する場合、それぞれが異なる経路を通る免疫応答を刺激することが好ましい。免疫応答を刺激する経路は、当業者に知られており、例えば、Toll様受容体2(TLR2)、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、およびTLR9経路が含まれる。従って、異なるTLR経路を刺激する2種のアジュバントをリポソーム中に含めることが好ましい。それぞれのTLR経路を刺激するアジュバントは当業者に知られている。TLR2では、このようなアジュバントには、例えば、リポペプチド、リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン、ザイモサンおよびHSPが含まれ;TLR3では、例えばDS‐RNA;TLR4では、例えば、リポ多糖、HSP、タキソール、RSV、フィブロネクチン;TLR5では、例えばフラジェリン;TLR7では、例えばイミダゾキノリン;ならびにTLR9では、例えば、非メチル化DNA、特にCpG‐DNA;非メチル化ホスホロチオ酸(PTO)オリゴヌクレオチド、特にCpG‐PTOオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0047】
本発明の好ましいリポソームは、少なくとも一種の抗原、好ましくは少なくとも一種の腫瘍抗原、少なくとも1種のアジュバント、さらに好ましくは少なくとも2種のアジュバント含む。この意味において、アジュバントは、前記したように相乗的に作用するように選択することが好ましい。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、治療剤および/または診断剤のモル量:全脂質のモル量比が1:100〜1:10、好ましくは1:80〜1:15、より好ましくは1:50〜1:20となるような量で治療剤および/または診断剤を含む。
【0049】
本発明のリポソームの直径は10〜1000nmであってよい。しかし、好ましい実施形態ではリポソームの直径は50〜200nmであり、80〜150nmがより好ましい。例えば、既知の孔径の篩またはメッシュを通してリポソーム組成物を押し出すことによって、リポソームの直径に作用することができる。径を制御するこの方法や別の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174またはOlson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23に記載されている。
【0050】
別の実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する成分のどれも別の化学部分に取り付けることができる。用語、化学部分は特に限定されない。しかし、好ましい実施形態では、化学部分は以下に、より詳細に記載するような標的部分、または安定化部分である。
【0051】
本記述全体にわたって使用されている用語「取り付ける」は、それぞれ、化学部分、特に標的部分もしくは安定化部分と、リポソームの別の成分の間の直接的もしくは間接的共有もしくは非共有結合および接続をさす。先に定義した取付けを可能にする多様な化学基は、例えば、ビオチン‐ストレプトアビジン、アミノ反応基(例えば、カルボジイミド、ヒドロキシルメチルホスフィン、イミドエステル、N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、イソチオシアナート、イソシアナート)、スルフヒドリル反応基(例えば、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、アジリジン)、カルボキシル反応分子(例えば、カルボジイミド、カルボジイミダゾール、ジアオアルカン)、ヒドロキシル反応基(例えば、カルボニルジイミダゾール、アルキルハロゲン、イソシアナート)を含め、当技術分野で知られており、適宜、当業者が容易に選択することができる。
【0052】
本発明の意味内での安定化部分は、一旦、投与したならば、リポソームの循環時間を延長させる。特定の好ましい安定化部分は、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、またはPEGであり、特定の好ましいPEGの分子量は、約1,000〜約10,000g/mоlであり、約5,000g/mоlがより好ましい。
【0053】
好ましい実施形態では、化学部分、特に安定化部分は、リポソーム膜を構成する分子画分にのみ取り付けられる。リポソーム膜成分の約1〜約20mоl%が、取り付けられた化学部分を有するのが好ましく、約3〜約10mоl%がより好ましく、約5mоl%がさらにいっそう好ましい。
【0054】
化学部分、特に安定化部分を取り付けるための好ましいリポソーム成分は、脂質成分である。異なる化学部分を異なる脂質成分に取り付けることができるが、化学部分は本発明のリポソーム内に含まれている一種もしくは複数のリン脂質に取り付けるのが好ましい。さらに好ましい実施形態では、一種もしくは複数の化学部分をPEに取り付ける。特に、例えば、PEGのような安定化剤を使用する場合、取付けにはPEを使用する。
【0055】
安定化部分の界面活性剤の取付けに加えて、本発明のリポソームの脂質二重層を安定させるために、タンパク質およびペプチドをリポソームに組み込むことができる。二重層安定化成分として使用することができる界面活性剤には、それだけには限らないが、Triton X-100、デオキシコラート、オクチルグルコシド、リゾホスファチジルコリンが含まれる。二重層安定化成分として使用することができるタンパク質には、それだけには限らないが、グリコホリンやチトクロム酸化酵素が含まれる。好ましい実施形態では、リポソームは、0.05〜15mоl%の安定化剤を含むことができる。
【0056】
先に指摘したように、本発明のリポソームは、ある種の細胞、特に造血系細胞に優先的に結合する。いくつかの適用例では、例えば、ワクチン接種法では、抗原を造血系細胞により特異的に送達するのが望ましいこともあり得る。これは、リポソームにターゲティング手段を備え付けることによって実現することができ、この手段によって主として体内の特異的部位にリポソームを指向させることが可能になり、それが望ましくない全身的作用および/または毒性の低減に役立つ。従って、本発明のリポソームの別の実施形態では、標的部分を前記リポソームに取り付ける。先に述べたように、化学部分に関して標的部分はリポソームのどの成分にも取り付けることができる。標的部分は、a)リポソームの脂質成分の1種に取り付ける、b)本発明のリポソーム膜に組み込むことができる膜タンパク質に取り付ける、あるいはc)それ自体をその脂質層に挿入し、または組込むことができるのが好ましい。
【0057】
好ましい実施形態では、標的部分は、ペプチドもしくはタンパク質、特に、抗体もしくはその断片、一本鎖抗体もしくはその断片、受容体リガンドもしくはその断片、炭水化物、およびリガンドからなる群から選択される。
【0058】
より詳細には、標的部分は、天然もしくは合成の受容体結合ペプチドおよびそれらの模倣体、単糖もしくはオリゴ糖、受容体リガンドもしくはその断片、抗体もしくはその断片からなる群から選択することができ、それらの全ては、DC特異的表面分子もしくは受容体、特にCD54(ICAM‐1)とICAM‐2、マンノース受容体、CD207(ランゲリン)、ASGPR、CLEC‐1、CLEC‐2、DCIR、dectin‐1、DC‐SIGN、DEC‐205、BDCA‐2、TLR‐1、TLR‐2、TLR‐3、TLR‐4、TLR‐5、TLR‐7、TLR‐9、CD40、CD16/32(FcγR‐IIIとII)、CD11、CD1a、CD1d、およびMHCクラスIIを対象とする。
【0059】
好ましい実施形態では、標的部分をスペーサーに取り付ける。本記述全体にわたって使用される用語「スペーサー」は、それがリポソーム成分、例えば、脂質に取り付けられたときでさえも、標的部分が到達しやすくする目的のために役立つ化学部分をさし、そうでない場合は標的部分のそのそれぞれの標的構造物への結合が立体的に妨害される。この意味内でのスペーサーの直線的伸長は少なくとも0.5nmであり、スペーサーの直線的伸長は1〜10nmが好ましく、2〜5nmがさらにいっそう好ましい。スペーサーは、直鎖もしくは分枝、飽和もしくは不飽和糖鎖であることが好ましい。糖鎖は、単量体構成単位の多量体反復を含むのが好ましい。それぞれの単量体構成単位の長さに応じて、単量体構成単位の2〜10個の多量体反復が好ましい。好ましい実施形態では、スペーサーは親水性である。スペーサーは、一末端への標的部分の取付けを可能にする官能基、および他方の末端にリポソーム成分、例えば、本発明の脂質へのスペーサーの取付けを可能にする別の官能基を含むことができる。
【0060】
好ましいスペーサーは、二機能性分子、特に、約1〜40個の反復配列を含むことが好ましい二機能性ポリエチレンもしくはポリプロピレングリコール誘導体であり、オリゴペプチドは天然および/または合成アミノ酸を含む。このオリゴペプチドは、好ましくは1〜40個の、好ましくは2〜20個の、より好ましくは2〜10個のアミノ酸含む。スペーサーの特定の好ましい構成単位は、8‐アミノ‐3,6‐ジオキサタン酸(doo)であり、1〜10個のdoo反復配列を含むスペーサーが好ましい。2〜5個のdoo単位を含むスペーサーが、さらにより好ましく、3個のdoo単位を含むスペーサーが最も好ましい。リポソームと関連して、スペーサーには最適な長さがあり、それは2〜5nmであることが本発明者らによって発見されている。一方で、長さが約0.5nm未満のスペーサーでは、ほとんどの場合、リポソーム表面から標的部分が取り付けられている場所までの距離が十分ではなく、効率的な相互作用、すなわち、標的部分とそのそれぞれの標的、例えば、腫瘍細胞などとの結合が行われない。他方で、約10nmより長いスペーサーは、「緩み」が増大し、これも標的部分とその標的との間の相互作用に有害である。従って、好ましい実施形態では、スペーサーの長さは約1〜約10nmであり、約2.5〜約5nmが好ましい。
【0061】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、標的部分は、脂質、好ましくはリン脂質、例えば、PE、PG、PC、PSなどにに取り付けられ、標的部分の取付けに使用される脂質は、N‐カプロイルアミン(caproylamine)‐PE、N‐ドデカニルアミン(dodecanylamine)‐PE、ホファチジルチオエタノール(phophatidylthioethanol)、N‐[4‐(p‐マレイミドメチル(maleimidomethyl))シクロヘキサン(cyclohexane)‐カルボキサミド(carboxamide)‐PE(N‐MCC‐PE)、N‐[4‐(p‐マレイミドフェニル(maleimidophenyl))ブチルアミド(butyramide)]‐PE(N‐MPB)、N‐[3‐(2‐ピリジルジチオ(pyridyldithio))プロピオナート(propionate)]‐PE(N‐PDP)、N‐スクシニル(succinyl)‐PE、N‐グルタリル(glutaryl)‐PE、N‐ドデカニル(dodecanyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐cap‐PE、ホスファチジル(phosphatidyl)‐(エチレングリコール(ehtylene glycol))、PE‐ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)‐カルボン酸(carboxylic acid)、PE‐PEG‐マレイミド(maleimide)、PE‐PEG‐PDP、PE‐PEG‐アミン(amine)、PE‐PEG‐ビオチン(biotin)、PE‐PEG‐HNS、ジパルミトイルグリセロスクシニル(dipalmitoyl glycerosuccinyl)‐リジン(lysine)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジオクタデセノイルオキシグリセリル(dioctadecenoyloxy glyceryl))(DO)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジテトラデセノイルオキシグリセリル(ditetradecenoyloxy glyceryl))(DT)からなる群から選択されるのが好ましい。
【0062】
先に述べた主成分のように、および多くの実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する唯一の成分は脂質である。しかし、本発明のある態様では、リポソーム膜は、脂質層中に挿入し/組み込むことができる成分をさらに含むことができる。そのような成分の例には、一個もしくは複数の膜貫通ドメイン、GPI‐アンカー、リポペプチドや糖脂質などの他の両親媒性分子、あるいは一種もしくは複数の脂肪酸、脂質、または他の疎水性部分に接合しまたは融合された分子を含め、親水性部分を有するタンパク質がある。そのような分子は、例えば、リポソームに標的化能力を付与することができ、すなわち、そのような分子は先に定義した標的部分であってよく、または酵素機能を有していてよい。
【0063】
PEに対して負荷電成分PSまたはPGが存在すること、好ましい実施形態では、PSとPG双方が存在することによって、従来技術のリポソームよりも強力な免疫応答を引き出すリポソームがもたらされることが、本発明者らによって発見されているので、リポソームの正味表面電荷は、陰性であり、すなわち、リポソーム中の正電荷量の脂質を越える負荷電量の脂質をリポソームが含むのが好ましい。
【0064】
本発明のリポソームは構造が安定しており、生成後、周囲の薬物溶液または緩衝液を除去するために、例えば、ろ過することができる。治療剤および/または診断剤を用いて、または用いずに「純粋な」リポソームを使用することもできるが、その安定性によって、容易な乾燥状態での貯蔵を促進するために、リポソームから本質的に液体全てを除去することも可能である。従って、本発明のリポソームは、乾燥形で、好ましくは凍結乾燥形で供給することができる。これらのリポソームは、使用時点で水溶液および/または緩衝液を添加することによって容易に再含水させることができる。
【0065】
治療もしくは診断化合物は、リポソーム内部に含め、または親油性薬物の場合には脂質二重層内もしくは層間にも含めることが特に好ましい。リポソームに所与の治療剤および/または診断剤を「搭載」するために、従来技術の様々な方法を利用することができる。その最も単純な形では、リポソーム形成中に治療または診断剤を脂質成分と混合する。他の受動的な搭載方法には、脱水再含水法(Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979)、逆相蒸発法(Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194-)、または界面活性剤除去法(Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155)が含まれる。しかし、これらの技術は、搭載中、しばしば、かなりの量の治療剤および/または診断剤の損失を招き、これは治療または診断剤が高価な場合には特に欠点である。
【0066】
治療剤および/または診断剤をカプセル化するための他の方法には、いわゆる「遠隔搭載」または「能動的搭載」が含まれ、その際、予備成形したリポソームの外部と内部間の勾配、例えば、pH勾配または塩勾配に基づいて、治療または診断剤を勾配に従ってリポソーム中に輸送する(参照、例えば、Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216;Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272;Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345)。
【0067】
ほとんどの能動的および受動的な搭載手順では、溶媒中に治療および/または診断化合物を可溶化する必要がある。化合物、特に疎水性化合物、または高分子量化合物、例えば、ペプチドもしくはタンパク質などでは、水性溶媒中への可溶化は困難であることを証明でき、これは搭載を非効率的に、すなわち、特に、高価な化合物を不経済なものにしかねない。従って、そのような場合には水性溶媒を使用するのではなく、従来技術では有機溶媒が使用されてきた。しかし、有機溶媒を含むリポソームまたはリポソーム組成物の投与は、有機溶媒が生体適合性に問題があり、従って投与前にそれらを除去しなくてはならず実施不可能であることが多い。しかし、本発明者らは、今回、以下を含む方法によって本発明のリポソームを効率よく生成できることを発見した。
a)CHを上記したモル範囲であり、かつ好ましい範囲で、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を上記したモル範囲であり、かつ好ましい範囲で含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、ならびに
b)懸濁液を均質化するステップ。
【0068】
好ましい実施形態では、脂質、および/または治療剤、および/または診断剤は、本質的に、液体媒体に溶解しない。治療剤および/または診断剤は、本質的に溶解しないのが好ましい。液体媒体は、H20、塩水溶液、および/または緩衝液が好ましい。好ましい脂質、および治療剤、および/または診断剤は上記した範囲であり、好ましい範囲で使用する。
【0069】
それ以上の受動的および能動的搭載技術は、当技術分野で周知であり、それらは全て、それだけには限らないが、本発明のリポソームを生成するために当業者が使用することができる。所与の任意の治療および/または診断化合物に最も効率的な搭載方法は、十分に確立された手順により常法の実験によって決定することができる。通常調整する変数は、pH、温度、塩の型、塩濃度、緩衝液の型などである。
【0070】
好ましい実施形態では、治療剤および/または診断剤は、遠隔搭載によってリポソーム中に搭載する。この方法によって搭載しようとする物質の損失が非常に少なくなるからである。好ましい実施形態では、搭載にはpH勾配を使用する。搭載しようとする物質に応じて、通常、リポソーム内部をその外部に対して酸性化する。内部をpH1〜6にした後、治療剤および/または診断剤を搭載するのが好ましい。
【0071】
従って、本発明の別の態様は、上記方法の1つ、特に、CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、ならびに懸濁液を均質化するステップの方法によって生成されたリポソームである。
【0072】
本発明の別の態様は、アジュバント、添加剤、緩衝液および補助物質からなる群から選択される物質を含む液体媒体に本発明のリポソームを含むリポソーム組成物である。液体媒体は、PBSやリンゲル液などの生体適合性水性媒体であることが好ましい。液体媒体は、少なくとも一種のアジュバントを含むことが好ましい。
【0073】
この意味において、用語、アジュバントは上記の意味と同じ意味である。本発明のリポソーム組成物に含めることができる好ましいアジュバントは、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、より高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチドからなる群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができる特定の好ましいアジュバントは、非メチル化DNA、特に、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN)および合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys群から選択される。
【0074】
リポソーム組成物中に含まれるリポソームは、抗原、特に腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己抗原、またはアレルゲンを含むのが好ましい。本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソームは少なくとも一種の抗原を含み、リポソーム組成物は少なくとも一種のアジュバントを含む。このアジュバントをリポソーム中に含めることができ、かつ/またはリポソームが含まれている液体媒体内に含めることができる。好ましくは、少なくとも一種のアジュバントは、リポソームとリポソームが含まれている液体媒体双方に含める。リポソーム内外のアジュバントは、相乗的に作用して免疫刺激を増強するのがさらに好ましい。そのような相乗的作用を実現するために、アジュバントが異なる分子経路、特に前記した異なるTLR経路に作用するのが好ましい。さらに、リポソーム組成物は、リポソームの外側に、アジュバント活性を有するサイトカイン、例えば、GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、またはTNF‐αなどを含むのが好ましい。GM‐CSFの使用が特に好ましく、すなわち、リポソーム外側にGM‐CSFを含み、リポソーム内側に別のアジュバント、好ましくは上記の好ましいアジュバントの一つ含むリポソーム組成物である。
【0075】
本発明のリポソームおよび/または本発明のリポソーム組成物は、安定剤を含むのが好ましく、安定剤は、α‐トコフェロールまたは炭水化物、特にグルコース、ソルビトール、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、セルビオース、ラフィノース、マルトトリオース、またはデキストランからなる群から選択される。
【0076】
本発明のリポソームおよび/またはリポソーム組成物は、疾患を治療し、または予防するために使用される免疫化/ワクチン接種法として、治療剤および/診断剤をある種の細胞型に、特に造血細胞系細胞に送達するための有能な送達媒体であることが示され、従って本発明の別の態様は、増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、特に自己免疫疾患およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するための本発明のリポソームまたは本発明のリポソーム組成物の使用である。
【0077】
リポソームまたはリポソーム組成物は、筋肉内、静脈内、鼻腔内、腹腔内、皮内もしくは皮下、および結節内施用を含む様々な方式によって投与することができる。化合物を疾患部位に直接注射することもできる。リポソームは、他のワクチン接種/免疫化法で通常使用されている量および間隔で投与し、または薬物送達の場合にはフリーの薬物で通常使用されている服用量で投与する。
【0078】
本発明者らが実施した実験では、このリポソームおよびリポソーム組成物は、腫瘍の治療および/または予防に優れた効力を有することが示され、従って好ましい実施形態では、治療または予防しようとする増殖性疾患は、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される。
【0079】
本発明のリポソームおよび組成物の好ましい使用では、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に、一種もしくは複数のアジュバント、およびまたはサイトカインを投与する。ここで使用する用語、アジュバントは既に定義されている。好ましいアジュバントは、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、より高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチドからなるアジュバントの群から選択される。本発明のリポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与中、または投与後に投与することができる特定の好ましいアジュバントは、アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、またはTNF‐αである。
【0080】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施にあたって首尾よく機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施に好ましい方式とみなし得ることを当業者には理解されたい。しかし、本開示に照らして、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨と範囲を逸脱することなしに、開示した具体的実施形態では多くの変化を行うことができることを当業者は理解すべきものとする。引用した参照文献は全て、参照により本明細書に組み込む。
【実施例1】
【0081】
AVE3およびAVE5を抗原提示細胞へ結合
様々な型の抗原提示細胞への結合について、様々なリポソーム製剤:AVE3(コレステロール、DLPE、DOPSはモル比で1:1:1)、AVE5(コレステロール、DLPE、DOPGはモル比で1:1:1)、またはAVE14(コレステロール、DLPE、EPCモル比で1:1:1)を分析した。脂質は全て、Avanti Polar Lipids(米国)、Calbiochem(米国)、またはLipoid GmbH(ドイツ国)から購入し、さらに精製することなく使用した。リポソームは、乾燥脂質フィルムから含水によって調製した。この目的のために、脂質をクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール(1:1)に溶解し、示した割合で混合した。結合を調査するために、0.3mоl%のローダミン標識DPPEを加えた。ロータリーエバポレーターを使用して脂質を乾燥し、残留溶媒を高真空除去した。次いで、脂質フィルムに10mmоl/lのヘペスpH7.4を含水させて最終脂質濃度10μmоl/mlにした。リポソームを50nm膜を通して21回押し出した。調製したリポソームは全て、平均径が80〜110nmであった。平均ゼータ電位は、AVE3では‐67mV、AVE5では‐43mV、およびAVE14では‐12mVであった。
【0082】
未処置C57BL/6マウスの大腿骨から採取した骨髄細胞からマウス樹状細胞を発生させ、mGM‐CSFの存在下で6日間培養した。これらの骨髄由来樹状細胞(bmDC)を無血清培地または10%のFCSを含む培地中、0.2〜1.3mmоl/lのローダミン標識リポソーム製剤と共に、8℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで2度洗浄し、CD11c‐FITCに対するモノクローナル抗体を用いてDCを対比染色剤で着色し、フローサイトメトリーによって分析した。結果(図1)として、負荷電PSもしくはPG含有リポソーム(AVE3およびAVE5)は、マウスbmDCに強く結合するが、AVE14リポソームは結合しないことが示された。これらの実験では、10%のFCSの存在下でインキュベートされたリポソームでは、平均蛍光強度(MFI)分析によって定量されたように強い結合が観察された(図2)。さらに、37℃で細胞をインキュベートすることによって蛍光強度は改善された(図2)。
【0083】
それ以上の研究では、マウス脾臓由来抗原提示細胞(APC)、T細胞、またはB細胞への結合を分析した。抗MHC II抗体での染色によってAPC、抗CD3抗体での染色によってT細胞、抗CD45R/B220での染色によってB細胞が同定された。
【0084】
この研究によって、AVE3またはAVE5はAPCおよびB細胞へ強力に結合することが実証されたが、AVE14はほんのわずかにしか結合しないことが観察された(図4)。
【0085】
1週間末梢血単核細胞を培養して得られたヒトマクロファージまたは樹状細胞を用いて、AVE3と、IL‐4およびGM‐CSFの強力な結合も観察された(図4)。それに反して、35mоl%のコレステロール、32.1mоl%のPOPC、14.7mоl%のDLPE、18.2mоl%の乳SMからなるPCリポソームは、これらの細胞に非常に弱い結合しか示さなかった。
【0086】
免疫化に使用したリポソームが皮膚ランゲルハンス細胞(LC)に結合するかどうかさらに分析した。これらの細胞が、皮内ワクチン接種に続いて抗原を捕獲する最初の細胞だからである。主要なLCをマウス皮膚から単離し、記載の通りリポソームと共にインキュベートした。約60%のMHCクラスII+LCがAVE3リポソームと結合した(図5A、B)。さらに、先に記載した通り、マウスCD11c+bmDCもAVE3リポソームに結合した。さらに、DCのCD11c+集団中のうち、約54%がAVE3リポソームに結合するが、対照リポソームAVE14には結合しなかった(図5C、D)。FACS分析に並行して、AVEリポソームとbmDCの結合も蛍光顕微鏡によって分析した(図5)。bmDCでは強力な細胞内蛍光が観察され、DCへの結合後、リポソームが内部移行するようになることが示された。
【0087】
これらの実験は、AVE3だけでなくAVE5も、様々な免疫系抗原提示細胞に対して強力な結合活性を有することを実証している。この結合は、血清タンパク質の存在下37℃でも観察され、これらのリポソームが、生理学的条件下でこれらの細胞への結合活性を示すことを証明している。
【実施例2】
【0088】
ホスファチジルセリン、コレステロール、およびホスファチジルエタノールアミン濃度が抗原提示細胞への結合に及ぼす影響
第一の実験では、マウス脾臓から単離した樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なホスファチジルセリン(DOPS)の濃度の影響を分析した。他の脂質濃度を一定に維持するために、検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE31(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、33.3mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE31‐10PS(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、10mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE31‐50PS(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、50mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。抗CD11c抗体を用いた対比染色によってDC、抗CD3抗体を用いてT細胞、および抗CD45R抗体を用いてB細胞を同定した。全てのリポソーム(200nmоlの脂質と共にインキュベートした5×105個の脾細胞)で、DCだけでなくB細胞に対する強力な結合が観察されたが、T細胞とは弱い結合しか観察されなかった。DCへの強力な結合を示す、PS濃度依存性結合は、33.3および50mоl%(約80〜90%のCD11c陽性細胞が結合)で観察されたが、10mоl%ではPS結合は約65%に低減された(図6)。同様の結合特性は、培地中、10%のFCSが存在する際にも観察された。これらの実験によって、DCや、B細胞などの他の抗原提示細胞に対する最も強力な結合がPS濃度20〜50mоl%で観察されることが明瞭に実証された。この結合挙動は、10%のFCSの存在下でも同様に観察された。
【0089】
第2の実験では、樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なコレステロール濃度の影響を分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE32(33.3mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE32‐10Chol(10mоl%、コレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE32‐50Chol(50mоl%、コレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。上記した抗体染色によってDC、B細胞、およびT細胞が同定された。再度、DCおよびB細胞への強力な結合が観察された。結合はコレステロール濃度に依存しており、最も強力な結合は50mоl%のコレステロールで観察された(図7)。
【0090】
第3の実験では、樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なホスファチジルエタノールアミン濃度の影響を分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE33‐0PE(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDOPS、50mоl%のPOPC)、AVE33‐10PE(25mоl%のコレステロール、10mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE33‐20PE(25mоl%のコレステロール、20mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、30mоl%のPOPC)、AVE33‐33PE(25mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE33‐50PE(25mоl%のコレステロール、50mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。上記した抗体染色によってDC、B細胞、およびT細胞が同定された。PE濃度を上昇させると、DCへのリポソームの結合が増大し、B細胞およびT細胞への結合もある程度増えた(図8)。この知見は、PE濃度を上昇させると、リポソームの結合および取込みが改善されることを実証している。
【0091】
最終実験では、DCへ結合させるための、PS、PG、PE、Chol、およびPCの様々な組成からなるリポソームを分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを試験した:AVE3(DOPS、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE5(DOPG、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE14(EPC、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE41(DOPS、DOPG、Cholモル比で1:1:1)、AVE43(DOPS、DPPC、Cholモル比で1:1:1)、およびAVE44(DOPG、DPPC、Cholモル比で1:1:1)。組成を下表1に要約する。
【0092】
【表1】
【0093】
10%のFCSの存在下または非存在下、培地中、4℃または37℃でマウス脾細胞をリポソームと共にインキュベートした。上記したように抗体染色によってDCを同定した。先に観察されたように(実施例1)、AVE3およびAVE5は、樹状細胞に強く結合するが、AVE14は非常に弱い結合しか示さなかった。AVE3のPEをPCに(=AVE43)またはAVE5のPEをPCに(=AVE44)変えると、DCへの結合が劇的に減少したが、これは平均蛍光強度およびDCへの結合した細胞の割合によって判明した(図9)。37℃でリポソームを分析した場合、この差は最も強く、DCによるリポソームの取込みにPEがなんらかの作用を及ぼすことを示していた。この知見は、AVE3またはAVE5中のPEの存在は、樹状細胞への結合、および同細胞による取込みに有益な効果があることを明瞭に実証している。この知見はまた、PSまたはPG非存在下のPE(=AVE14)は、リポソームがDCへ結合するには十分でないことも示している。しかし、驚くべきことに、等モル量のPS、PG、およびコレステロールからなるリポソーム(AVE41)は、AVE3またはAVE5の結合活性と同様の結合活性を示すことが判明した(図9)。この知見は、コレステロールと組み合せて2種の負荷電リン脂質(PSおよびPG)からなるリポソームは、コレステロール、PE、およびPSもしくはPGのどちらかからなるリポソームの代用とすることができることを示している。
【実施例3】
【0094】
注射部位および流入領域リンパ節での持続性リポソーム沈着
異なるリポソーム製剤の生体内での利用能および安定性を評価するために、ローダミン標識AVE3またはAVE14リポソーム(実施例1を参照)をC57BL/6マウス脇腹または後肢足蹠に皮内注射した。異なる時点で、注射部位から得た皮膚および流入領域リンパ節を包埋し凍結切片を調製した(図l0A)。AVE3の注射後7日目まで皮膚内に強力な蛍光シグナルが観察されたのに対して、AVE14リポソームの場合には有意な蛍光を検出することができなかった(図l0A)。さらに、流入領域リンパ節では、AVE3の場合にのみ注射後7日目まで蛍光を検出することができたのに対して、中性リポソーム(AVE14)は注射から16時間後、弱い蛍光しか検出することができなかった。これらの知見は、AVE3によって注射部位および流入領域リンパ節で持続性沈着がもたらされることを示している。
【実施例4】
【0095】
樹状細胞によるカプセル化化合物の取込みおよび流入領域リンパ節での局在化
さらに、リポソーム封入化分子が、DC/LCによっても取り込まれ、リンパ系に輸送されることを実証するために、Cy3標識非CpGオリゴヌクレオチド(ODN)をAVE3リポソーム中にカプセル化した(実施例6を参照)。DC/LCに働くCpG ODN媒介活性化作用を排除し、それによってそれら遊走に働く作用を排除するために非CpG ODNをカプセル化した。脇腹または後肢足蹠に皮内注射してから24時間後、リンパ節(LN)を採取し、単一細胞懸濁液を調製し、FACSによって分析した。後肢足蹠に注射したマウスの非常に多くのDC(14.7%)が、リポソーム封入化Cy3‐ODNを取り込んだが、脇腹に皮内注射したマウスのDCは数個しか取り込まなかった(図10B、C)。
【実施例5】
【0096】
抗原ペプチドをAVE3およびAVE5へカプセル化
抗原ペプチドTRP‐2(SVYDFFVWL)をAVE3またはAVE5中にカプセル化した(組成については実施例1を参照)。脂質を29.4mgのTRP‐2とモル比で1:20で混合し、50mlのDuranガラス製ボトルに充填した。50gのヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)を加え、Ultra−Turrax T8分散装置(IKAWerke, Staufen、ドイツ国)によって、混合物を55℃の温浴中約25000rpmで30分間攪拌した。Ultra‐Turraxは、S8N‐8G分散エレメントを具備していた。その間、ボトルをボルテックスで数回攪拌して、ボトルの隅で沈殿が生じるのを回避した。均質な懸濁液を得た後、蒸発した水分を交換し、調製物をEmulsiflex C‐5 ホモジナイザ(Avestin Inc., Ottawa、カナダ国)に移した。均質化ノズル前50.000〜150.000kPaで以下の均質化を30分間実施したが、ホモジナイザ圧力は300kPaであった。このステップの最後で、フィルタユニットを挿入し、孔径100nmのポリカーボネート膜を用いて5分間リポソーム分散体をろ過した後、滅菌ろ過を行った。1日貯蔵した後、粒径を光子相関分光法によって測定し、リポソーム中のTRP‐2の量をHPLC分析によって測定した。リポソーム径は130〜180nmであった。カプセル化効率は、230〜300μg/ml(39〜51%)の範囲であった。
【0097】
10、20、または40mоl%のホスファチジルセリンを含む、様々なAVE3ベース製剤を並行比較することによって、PS濃度を上昇させるとカプセル化効率が改善することが実証された。以下の製剤を試験した:AVE3‐10PS(33.3mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、10mоl%のDOPS、23.3mоl%のPOPC)、AVE3‐20PS(33.3mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、20mоl%のDOPS、13.3mоl%のPOPC)、AVE3‐40PS(33.3mоl%のコレステロール、26.7mоl%のDLPE、40mоl%のDOPS)、およびAVE14(実施例1を参照)。カプセル化効率は、AVE3‐10PSで28%、AVE3‐20PSで34%、AVE3‐40PSで43%、およびAVE14で13%であった。リポソーム径は、100〜120nmの範囲であった。この知見は、PSは抗原ペプチドのカプセル化に影響し、PS濃度が高いほどカプセル化が改善されることを実証している。
【実施例6】
【0098】
オリゴヌクレオチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(40μmоl/ml)(AVE3の脂質組成については実施例1を参照)を30mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで15分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをさらに10mbarの真空チャンバで乾燥した。その後、10mg/mlのオリゴヌクレオチドCpG‐1826または非CpG‐1982(ホスホロチオ酸(PTO)およびリン酸ジエステル(PDO)としてCpG‐1826、5'‐TCCATGACGTTCCTGACGTT‐3';非CpG‐1982‐PTO、5'‐TCCAGGACTTCTCTCAGGT‐3')を含む等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)1mlに数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。次いで、分散体を孔径50nmのポリカーボネート膜を通して21回押し出した。フリーのオリゴヌクレオチドを除去するために、リポソーム懸濁液をセファロースCL‐4Bカラム(Pharmacia、スウェーデン国)によるサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。採取したリポソーム画分をカットオフ30000MWのVivaspin濃縮装置(Vivascience、ドイツ国)を使用し、限外濾過濃縮した。最後に、小胞を200nmの滅菌フィルタ膜でろ過した。水力学的直径をZetasizer 3000HS(Malvern, Herrenberg、ドイツ国)を使用し測定した。カプセル化したオリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCによって定量した。リポソーム径は100〜125nmであった。カプセル化効率は4〜7%の範囲であった。ホスホロチオ酸またはリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドでは差は観察されず、ホスホロチオ酸およびリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドはAVE3リポソームにカプセル化できることが証明された。
【実施例7】
【0099】
Pam3Cysおよび抗原ペプチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(実施例1を参照)およびPam3Cys(2.5mоl%)、ならびにDMSOに溶解させた抗原ペプチドを10mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで60分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをクロロホルム中に分解し、再度先に記載した通り乾燥した。滑らかで均質なフィルムを得られるまでこのステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤を滅菌ろ過した。
【実施例8】
【0100】
モノホスホリル脂質A(MPLA)および抗原ペプチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(実施例1を参照)およびMPLA(5%もしくは10%(w/w))、ならびにDMSOに溶解させた抗原ペプチドを10mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで60分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをクロロホルム中に分解し、再度先に記載した通り乾燥した。滑らかで均質なフィルムが得られるまでこのステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤を滅菌ろ過した。
【実施例9】
【0101】
AVE3カプセル化CpGPTOオリゴヌクレオチドがB細胞増殖を誘発
CpGオリゴヌクレオチドは、B細胞増殖を誘発すると記載されてきた。フリーのまたはカプセル化CpGホスホロチオ酸オリゴヌクレオチド(CpG‐PTO)(実施例6を参照)がマウスB細胞の増殖に及ぼす作用(図11A)を比較した。AVE3カプセル化CpGは、未カプセル化CpG‐PTOと同じ活性を示すことが判明した(図10)。B細胞増殖の誘発は、施用されたODNの濃度に依存し、強力なB細胞増殖は50〜200nmоl/lのカプセル化ODNで観察された。同様の値は、異なる濃度でカプセル化されたCpG‐ODN(4.6μg/μmоl脂質〜93.5μg/μmоl脂質)でも得られた。フリーのまたはカプセル化した非CpG‐ODNを使用した際には、B細胞増殖の誘発は観察されなかった(図11B)。この知見は、AVE3カプセル化CpG‐ODNが生物学的に活性であることを実証している。
【実施例10】
【0102】
AVE3がCpG‐PDOオリゴヌクレオチドを分解から保護
濃度5〜200nmоl/lのODNを使用し、フリーのまたはAVE3カプセル化形のB細胞増殖の誘発について、CpGホスホロチオ酸(CpG‐PTO)またはCpGリン酸ジエステル(CpG‐PDO)オリゴヌクレオチド(実施例6を参照)を分析した。フリーのおよびカプセル化CpG‐PTOによって、濃度に依存したB細胞増殖の誘発がもたらされた(図12)。誘発は、同様にAVE3カプセル化CpG‐PDOでも観察された。低濃度(5〜10nmоl/l)では、カプセル化CpG‐PTOよりもカプセル化CpG‐PDOで強力な誘発が観察された。高い濃度(50〜200nmоl/l)では、誘発は、カプセル化CpG‐PTOの方が高かった。最も興味深いことに、フリーのCpG‐PDOは、極めて可能性が高い急速分解のために、これらの濃度では全く増殖を誘発しなかった。従って、AVE3リポソームは、リン酸ジエステルオリゴヌクレオチドなどの感受性化合物が分解されないように保護することができ、活性形での分子の送達を可能にする。
【実施例11】
【0103】
リポソームワクチン接種後に特異的かつ高結合性T細胞免疫応答の誘発
抗原モデルペプチドとしてTRP‐2ペプチド(SVYDFFVWL)を使用し、マウスで免疫応答の発生に及ぼす様々なAVE3ベース製剤の作用を分析した。このペプチドは、ヒトHLA‐A*0201によって提示されたが、マウスMHCクラスI分子H‐2Kbおよび同質遺伝子的B16黒色腫細胞系によっても提示された。この目的のために、後肢足蹠への一回の注射によってマウス(C57BL/6)を免疫化した。4日後、マウスを屠殺し、流入領域リンパ節を取り出し、IL‐2の存在下で6、7日間リンパ節の細胞を培養した。次いで、抗原ペプチド(TRP‐2)または無関係なペプチド(OVAペプチド、SIINFEKL)で細胞を刺激した。16時間後、サイトカイン分泌アッセイによりIFNγの産生についてCD8陽性細胞を分析した。全ての実験で、ヨウ化プロピジウムを用いた染色によって死細胞を除外した。
【0104】
初期実験では、1頭につき50〜100μgの濃度のフリーのTRP‐2によって、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発がもたらされたことが判明した。未カプセル化CpGでは1頭につき2.5〜5nmоlの濃度で強力な免疫応答が得られた。
【0105】
100μgの未カプセル化TRP‐2の存在下で、様々な濃度のAVE3カプセル化CpG‐PTOの作用(図13)を分析した。この実験によって、1.3nmоlのリポソームCpG‐ODN濃度付近でIFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された。濃度を高くしても免疫応答は改善せず、少量のカプセル化CpG‐PTOでもT細胞応答の誘発には十分なことが示された。
【0106】
5nmоlのフリーのCpG‐PTOの存在下でのAVE3カプセル化TRP‐2の滴定では、1頭につき10〜20μgのペプチドで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された(図14)。10μgのAVE3カプセル化TRP‐2の存在下でのフリーのCpG‐PTOの滴定では、1頭につき5〜10nmоlのCpG‐PTOで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された(図15)。
【0107】
別の実験では、リポソームTRP‐2およびリポソームCpG‐PTOの作用(図16)を比較した。1頭につき10μgのAVE3カプセル化TRP‐2を使用し、1頭につき0.6〜2.5nmоlのAVE3カプセル化CpG‐PTOで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が見出された。1頭につき1.3nmоlのAVE3カプセル化CpG‐PTOを施用し、10〜20μgのAVE3カプセル化TRP‐2で、AVE3カプセル化CpG‐PTOの強力な誘発(図17)が観察された。未カプセル化TRP‐2およびCpG‐PTOの使用と比較して、IFNγ産生CD8+細胞の同じ誘発は、100μgのフリーのTRP‐2および5nmоlのCpG‐PTOを使用した場合にのみ観察された。従って、これらの化合物をAVE3へカプセル化することによって、抗原ペプチドおよびCpG‐PTOの量を1/4〜1/10倍に削減できるようになる(図18)。
【0108】
TRP‐2のAVE3へのカプセル化またはAVE5へのカプセル化を比較することによって、1頭につき10μgの施用ペプチド濃度では、AVE5よりもAVE3をワクチン接種した後に、IFNγ産生CD8+細胞のはるかに強力な誘発が観察されたことが示され、これにはアジュバントとしてCpG‐PTOを同時施用する必要があった。CpG‐PTO単独またはアジュバントを用いないリポソームでは、有意なレベルのIFNγ産生CD8+細胞(図19)はもたらされなかった。
【0109】
別の実験組では、リポソームワクチン接種後の細胞障害性Tリンパ球の抗原特異性(図20)を分析した。上記のように、AVE3カプセル化TRP‐2またはフリーのTRP‐2およびCpG‐PTOによってマウスを免疫化した。次いで、H‐2Kbに対してTRP‐2を提示することが判明しているマウス黒色腫細胞系B16.F1、潜在的なNK細胞の活性を排除するために、TRP‐2をパルスしたEL4細胞、OVAペプチドをパルスしたEL4細胞、未パルスのEL4細胞、およびYAC‐1細胞を標的として使用し、リンパ節から調製した細胞の細胞毒性を試験した。10μgのリポソームTRP‐2および1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOによる免疫化後、細胞比を標的とした様々なエフェクタで、TRP‐2提示細胞(B16.F1、およびTRP‐2をパルスしたEL4)の特異的CTL媒介溶解を実証した。YAC‐1細胞は死滅しないことが観察され、CTLは抗原特異的を示すが、NK様細胞障害活性は示さないことが示唆された。上記のように、フリーのTRP‐2の10倍を超える量、およびCpG‐PTOの4倍を超える量が、同じCTL応答を誘発するのに必要であった。
【0110】
CTLは、DCの成熟を誘発する因子を産生することができ、従って特に、それらが高頻度に存在する場合、それ自体で同時刺激的環境を作出すると思われる。従って、検出のために、TRP‐2またはOVA対照ペプチドをパルスしたH‐2Kb二量体を使用した免疫化から0〜4日後の、血中でのTRP‐2特異的CD8+T細胞の頻度(図21)を測定した。未処置マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水、10μgのリポソームTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水、10μgのTRP‐2リポソームと1.3nmоlのCpG‐PTOリポソームでワクチン接種し、または未処理のまま残した。ワクチン接種直後(0日目)、またはワクチン接種後1、2、および4日目に特異的T細胞の頻度を測定した。生理食塩水中のみならずリポソームTRP‐2とCpGを含む生理食塩水中でのワクチンでも有意な数の特異的CTLを誘発することができなかった。リポソームにカプセル化したTRP‐2およびCpGでのワクチン接種でのみ、かなりの数の特異的T細胞集団が得られた(全CD8+集団中に5%のTRP‐2特異的CD8+T細胞)。
【0111】
最後に、リポソームTRP‐2またはフリーのTRP‐2のそれぞれで免疫化した動物のTRP‐2特異的CTLの結合力(図21)を比較した。数度の免疫化後、IFNγ+産生CD8+T細胞の頻度は、脾細胞中では上昇しLN中では減少した(図22A)。これは、活性化したT細胞はLNを離れ血管および脾臓に侵入するということを反映しているかもしれない。興味深いことに、リポソームTRP‐2で一回免疫化後、フリーのTRP‐2で免疫化したマウスと比較して、著しく多くのIFNγ+T細胞がLN中で検出された(図22B)。IFNγ分泌アッセイと並行して、ナイロン‐ウールカラム濃縮脾細胞を高用量のTRP‐2(10−6mоl/l)および低用量のTRP‐2(10−9mоl/l)で5日間培養し、ATPlite(商標)‐Mシステムを使用して細胞増殖を定量した。低用量TRP‐2(10−9mоl/l)に対するその増殖によって評価されたように、リポソームTRP‐2による一回免疫化によって、数個の高結合性T細胞しか生じなかった(図22C)。しかし、免疫化を繰り返すと、低用量TRP‐2にだけ応答し高用量TRP‐2には応答しないで、高結合性T細胞に向かって変化した。リポソームTRP‐2対フリーのTRP‐2を直接比較すると、2回の免疫化後、フリーフォームは、低高結合性T細胞および高結合性T細胞からなる脾細胞のポリクローナル応答をより多く生じることが分かる。それに反して、リポソームTRP‐2による免疫化では、ほんの少数の低結合性T細胞しか生じない。増殖特異性を探し求めて、H‐2Kb結合OVAペプチドSIINFEKLを使用した。これは、高結合性T細胞でクロスプライミングによって部分的増殖を誘発した。未処理動物の脾細胞を対照として使用し、背景レベルでの増殖を証明した。
【0112】
これらの実験は、特異的かつ高結合性T細胞は、AVE3カプセル化抗原ペプチドによる免疫化後に生じることを実証している。強力な免疫応答の誘発には、未カプセル化化合物と比較して、かなり低い濃度のカプセル化ペプチドおよびアジュバントが必要である。
【実施例12】
【0113】
AVE3カプセル化TRP‐2ペプチドの抗腫瘍効果
B16.F1マウス黒色腫細胞の皮下腫瘍モデルで、予防的設定を使用し抗腫瘍効果を分析した(図23)。一週間空けて2度、マウス(C57BL/6)は後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSS中によりマウスを皮下接種した。高用量(100μgのTRP‐2+5nmоlのCpG‐PTO)および低用量(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)のワクチンを含む生理食塩水による免疫化後腫瘍増殖と、低用量のリポソームワクチン(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)による免疫化後腫瘍増殖を比較した。ワクチンを含む生理食塩水によって免疫化したマウスの腫瘤は、未処理マウスの腫瘍に類似し、B16接種から17日後にリポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤よりも約14倍大きかった(図23A)。B16黒色腫細胞の移植後生存期間(図23B)も調査した。ワクチンを含む生理食塩水では有意な生存率の上昇は実現できなかった(平均生存時間:未処理17日、高用量生理食塩水19日、低用量生理食塩水21日)。リポソームワクチンによってマウスを免疫化した場合、平均生存時間は著しく長期化されて28日間になった(n=5、p<0.0172対未処理)。リポソーム抗原およびアジュバントで処理した1頭のマウスは、完全に腫瘍を拒絶し、120日以上腫瘍がないまま過した。
【0114】
第2の実験では、治療設定でB16腫瘍細胞に対するワクチン接種(図24)も調査した。C57BL/6マウス(1群につき5頭)は、1×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを皮下接種した。4日後に、一週間空けてマウスを2度免疫化した。腫瘍増殖をモニターし、腫瘍が直径1.5cmになり、または潰瘍化した時にマウスを安楽死させた。低用量のリポソームワクチンによる免疫化後腫瘍増殖と、未処理マウスの腫瘍増殖を比較した。未処理マウスの腫瘤は、B16接種から17日後リポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤の約23倍であった(図24A)。B16黒色腫細胞の移植後生存期間(図24B)も調査した。生存率の有意な上昇は、リポソームワクチンによって実現することができた(平均生存時間:未処理20日、低リポソーム用量38日、n=10、p<0.0012)。さらに、2頭のマウスは完全に腫瘍を拒絶し、腫瘍がないまま180日間を越えて過ごし、攻撃から7週間以内に脱色素(白斑症)の徴候が示され、TRP2特異的T細胞応答を実証し、同様にメラニン細胞もTRP‐2を発現した。
【0115】
次に、予防的設定を使用し、B16.F1肺転移モデルで抗腫瘍効果(図25)を分析した。生体内での細胞障害性T細胞を準備刺激するために、マウス(1群につき10頭)は、一週間空けて2度後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、レシピエントC57BL/6マウスに2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを尾静脈注射によって接種した。腫瘍細胞接種後20日目に、マウスを殺し肺転移数を測定した。腫瘍攻撃から20日後、リポソームワクチン(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)により免疫化したマウスの平均肺転移数は7.7±0.98(平均±SEM)であったが未処理マウスでは50.7±4.33に達した(図25)。転移コロニー数は、リポソームワクチン接種後約90%減少し(図25)、生じた免疫応答がB16の転移を抑制したことを示した。さらに、リポソームのアジュバントのみ(1.3nmоlのCpG‐PTO)によりワクチン接種したマウスは、腫瘍攻撃に対して保護されなかった(平均44.75±10.08)。従って、抗腫瘍効果がCpGそれ自体に対する作用のためである場合を排除することができた。
【0116】
要約すると、予防的設定および治療的設定での生体内実験は、(i)高用量の生理食塩水ワクチンは腫瘍からの保護を誘発しない、(ii)低用量の本発明者らのリポソームワクチンは致死性皮内または静脈内腫瘍攻撃からマウスを保護する、(iii)観察された作用はCpG‐PTOの作用ではないことを実証した。
【実施例13】
【0117】
ワクチン接種のアジュバントとしてのCpGリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドのAVE3媒介物
実施例10に示すように、AVE3は、血漿成分による分解から、リン酸ジエステルオリゴヌクレオチドなどの感受性化合物を保護することができる。未カプセル化CpG‐PDO ODNではなく、リポソームCpG‐PDO ODNは、IFNγ産生CD8+細胞の産生によって定量されるように、マウスで免疫応答を誘発することができた(図26)。高免疫賦活が得られるリポソームCpG‐PDOの最適の濃度を判定するために、1頭につき10μgのAVE3カプセル化TRP‐2および異なる量のCpG‐PDOによるワクチン接種後、用量応答分析および活性化Tリンパ球中のIFNγ分泌の測定を実施した。1頭につき0.3〜1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO ODNは、同様の免疫応答を誘発する(図27)。さらに、リポソームにカプセル化したリン酸ジエステルおよびホスホロチオ酸CpG‐ODNの効力を比較した。この目的のために、用量応答分析を実施し、活性化Tリンパ球のIFNγ分泌を測定した。1頭につき0.3〜1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO ODNは、リポソームCpG‐PTOよりも高い免疫応答を誘発した(図28)。0.3nmоlのリポソームCpG‐PTOは、IFNγ産生CD8+細胞を生成しなかったので、これらのデータはCpG‐PDO ODNは、AVE3にカプセル化した場合、低濃度でCpG‐PTOよりも強力なアジュバントであることを示している。
【0118】
次いで、予防的設定を使用するB16.F1マウス黒色腫細胞の皮下腫瘍モデルでの抗腫瘍効果(図29)を分析した。一週間空けて2度、マウス(C57BL/6)の後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、マウスは2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを皮下接種した。1頭につき10μgのリポソームTRP‐2と組み合せて0.3nmоlのリポソームカプセル化リン酸ジエステルCpG ODNを含む低用量リポソームワクチンにより免疫化後、腫瘍増殖を分析した。未処理マウスの腫瘤は、B16接種から13日後、リポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤の約3.5倍大きかった。この知見は、カプセル化CpG‐PO ODNが抗腫瘍免疫応答を誘発するためのアジュバントとして役立ち得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】DCへのリポソーム製剤の結合を示す図である。様々な濃度のリポソームを分析した、骨髄由来マウス樹状細胞(bmDC)へのAVE3およびAVE5の結合、AVE14の非結合。8℃でインキュベーションを実施し、結合をCD11c陽性細胞への%相対結合として表した。
【図2】DCへのリポソーム製剤の結合を示す図である。10%のFCSの非存在または存在下、インキュベーション時間に依存した、4℃または37℃でのマウスbmDCへのAVE3およびAVE5の結合、AVE14の非結合。結合を平均蛍光強度(MFI)として示す。
【図3】APCおよびB細胞へのAVE3およびAVE5の結合を示す図である。マウスAPCおよびB細胞へのAVE3およびAVE5の結合、T細胞へのほんのわずかな結合。
【図4】ヒトマクロファージおよび樹状細胞へのAVE3の結合を示す図である。ヒトマクロファージおよび末梢血単核細胞由来樹状細胞へのAVE3の結合。ローダミン標識AVE3の結合をフローサイトメトリーによって分析した。陰性対照としてPCリポソーム(AVE14)を含めた。
【図5】ランゲルハンス細胞に結合するAVE3を示す図である。リポソームなしにインキュベートした細胞(A)と比較して、ローダミン標識AVE3は、マウス皮膚から単離したランゲルハンス細胞に強く結合する(B)。強力なAVE3の結合は、bmDCでも観察される(C)が、対照リポソームAVE14は、これらの細胞には結合しない(D)。顕微鏡によって可視化したbmDCとAVE3の結合および内部移行。下段左図のリンパ球は、いかなるAVE3結合も示さない。位相差顕微鏡(E)および蛍光顕微鏡(F)。
【図6】ホスファチジルセリン含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞への結合に対するホスファチジルセリン濃度の影響を評価した。培地中4〜8℃で結合を実施した。
【図7】コレステロール含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞へのリポソームの結合に対するコレステロール含有量の影響を評価した。培地中4〜8℃で結合を実施した。
【図8】ホスファチジルエタノールアミン含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞へのリポソームの結合および内部移行に対するホスファチジルエタノールアミン(DLPE)含有量の影響を評価した。10%の血清を含め、または含めず、それぞれ、4℃および37℃で結合を実施した。ヨウ化プロピジウム染色(1μg/ml)によって死細胞を除外した。
【図9】DCへの結合に対する異なる脂質組成物の影響を示す図である。10%のFCSの存在下または非存在下、培地中で4℃または37℃で実施した結合を評価した。この実験は、DCへの結合に対する、等モル量のPEおよびコレステロールと組み合せた、PSまたはPGの有益な効果を実証する。さらに、PS、PG、およびコレステロールからなるリポソーム、すなわち、2種の負荷電脂質を含むリポソームは、一種の負荷電リン脂質(PSまたはPG)、PE、およびコレステロールからなるリポソームと同様の結合活性を示す。(A)および(C)4℃でのインキュベーション、(B)および(D)37℃でのインキュベーション、(A)および(B)DCへの結合の平均蛍光強度、(C)および(D)細胞結合リポソームのパーセント。
【図10】リポソーム沈着を示す図である。(A)注射部位での持続的なリポソームの沈着。注射から7日後、ローダミン標識AVE3では注射部位(皮膚)に強力な蓄積が検出できたが、流入領域リンパ節でも検出された。それに反して、AVE14は、これらの臓器で蓄積を示さなかった。FACS分析によって示されたように、脇腹に皮内注射されたマウス(C)のリンパ節から得たDCと比較して、後肢足蹠に注入されたマウス(B)では、リポソームに封入されたODNは、DC(MHC‐II陽性細胞)によって取り込まれ、流入領域リンパ節に輸送された。
【図11−1】B細胞増殖の誘発を示す図である。(A)AVE3にカプセル化されたCpG‐PTOオリゴヌクレオチドは、フリーのCpG‐PTOによる誘発に匹敵してB細胞増殖を誘発する。(B)非CpGオリゴヌクレオチドを用いた場合、効果は観察されず、B細胞増殖がCpGオリゴヌクレオチドによって特異的に媒介されたことが証明された。
【図11−2】B細胞増殖の誘発を示す図である。(A)AVE3にカプセル化されたCpG‐PTOオリゴヌクレオチドは、フリーのCpG‐PTOによる誘発に匹敵してB細胞増殖を誘発する。(B)非CpGオリゴヌクレオチドを用いた場合、効果は観察されず、B細胞増殖がCpGオリゴヌクレオチドによって特異的に媒介されたことが証明された。
【図12】CpG‐PTOおよびCpG‐PDOの生物活性の比較を示す図である。細胞をCFSEで標識した後、終濃度0〜0.2μmоl/lでODNを含む生理食塩水またはリポソームによって48時間刺激した。(黒色ダイヤモンド)CpG‐PTOを含む生理食塩水、(灰色ダイヤモンド)CpG‐PDOを含む生理食塩水、(黒色四角)リポソームCpG‐PTO、(灰色四角)リポソームCpG‐PDO。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図13】リポソームCpG‐PTOの滴定を示す図である。0.3〜10nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した100μgのTRP‐2によってマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図14】リポソームTRP‐2の滴定を示す図である。一週間間隔で2度AVE3/TRP2と5nmоlのCpG‐PTO(CpG)でマウスを免疫化した。免疫化に使用したTRP2の全量は1〜50μg/頭(2頭/群)であった。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、0.5%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。
【図15】CpG‐PTOを含む生理食塩水と10μgのリポソームTRP‐2の滴定を示す図である。0〜10nmоlのCpG‐PTO ODNと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞のパーセントを示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図16】リポソームCpG‐PTOの滴定を示す図である。0.3〜5nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μM)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞のパーセントを示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図17】リポソームTRP‐2およびCpGの滴定を示す図である。TRP‐2およびCpG ODNの濃度に依存する抗原特異的CD8+T細胞の誘発。BL6マウス後肢足蹠に、(A)様々な量のフリーのTRP‐2(□)またはリポソームカプセル化TRP‐2(■)を5nmоlのフリーのCpG ODNと共に注射し、あるいは(B)段階的用量のフリーのCpG ODN(□)またはリポソームカプセル化CpG ODN(■)を10μgのリポソームカプセル化TRP‐2と共に注射し、あるいはC 100μgのフリーの(フリーのTRP‐2)または10μgのリポソームカプセル化TRP‐2(リポソームTRP‐2)を1.3nmоlのリポソームカプセル化CpG ODNと共に注射し、4日後に流入領域LNからリンパ球を単離し、さらに6日間低用量のIL‐2(30U/ml)の存在下、試験管内で培養した。5μmоl/lのTRP‐2および対照ペプチドSIINFEKLでリンパ球を終夜刺激し、IFNγ捕獲アッセイを実施した。対照ペプチドSIINFEKLでは、IFNγ陽性細胞の割合は常に0.5%未満であった。2回の類似実験の1回から得た代表的なデータを示す。
【図18】抗原特異的CD8+T細胞の誘発を示す図である。1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した2.5〜20μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図19】IFNγ産生CD8+の誘発の比較を示す図である。AVE3またはAVE5にカプセル化した20μgのTRP‐2でワクチン接種後、フリーのCpG‐PTOの存在下または非存在下でIFNγ産生CD8+細胞の誘発を比較。ペプチドなしに、または対照Ova‐ペプチド(SIINFEKL)を用いて、終夜再評価すると、0.5%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。各免疫化群につき2頭のマウスを使用した。
【図20】免疫化後のCTL誘発の比較を示す図である。マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む両生理食塩水(A)または10μgのTRP‐2と1.3nmоlのCpG‐PTOを含む両リポソーム(B)で免疫化した。
【図21】リポソームワクチン接種によって血中に特異的T細胞が高頻度でもたらされたことを示す図である。マウスは、100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(赤色)、10μgのリポソームTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(橙色)、10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOのいずれかによって免疫化し、または未処理のまま残した(青色)。投与量は、1頭ごとに注射した量である。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図22】リポソームカプセル化TRP‐2とCpG‐PTOによるワクチン接種を示す図である。リポソームカプセル化TRP‐2とCpG‐PTOによるワクチン接種によって高結合性T細胞が得られた。BL6マウスに10μgのリポソームTRP‐2または100μgのフリーのTRP‐2と5nmоlのフリーのCpG ODNとを1週間毎に3回までワクチン接種した。最後の免疫化から1週間後、脾臓(A)およびリンパ節(LN)(B)からリンパ球を単離し、記載した通りIFNγ捕獲アッセイを実施した。C.リポソームTRP‐2およびフリーのTRP‐2とCpG ODNでワクチン接種後のT細胞の結合力。最後の免疫化から1週間後、脾細胞をナイロン‐ウール濃縮し、5日間、試験管内で低用量のIL2(30U/ml)と共に、高用量TRP‐2(10−6mоl/l)もしくは低用量TRP‐2(10−9mоl/l)、または対照ペプチドSIINFEKL(10−6mоl/l)の存在下で培養した。ATP含有量を測定する発光アッセイベース検出系によって増殖を推定した。抗TCRと抗CD28mAbの存在下での脾細胞の増殖を100%に設定した。2回の類似実験の1回から得た代表的なデータを示す。
【図23】予防的設定において、(A)低用量のリポソームワクチン接種によって腫瘍増殖が防止され、(B)生存が延長されることを示す図である。マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(紺色、n=4)、10μgのTRP‐2と1.3nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(水色、n=4)、10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO(緑色、n=4)によって2度免疫化し、または未処理のまま残した(赤色、n=4)。マウスに2×105個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。腫瘍の大きさを9日目から測定した。
【図24】治療的設定における、(A)リポソームワクチン接種後の腫瘍拒絶、および(B)生存の延長を示す図である。1×105個のB16黒色腫細胞をマウスに皮下接種した後、マウスを10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOによって2度免疫化(緑色、n=10)し、または未処理のまま残した(赤色、n=10)。腫瘍の大きさを10日目から測定した。P<0.0012:低リポソーム用量対未処理)。
【図25】予防的設定での免疫化後の肺中B16黒色腫転移コロニー数を示す図である。10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpGPTO(免疫化、n=12)、1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO(AVE3/CpG、n=8)によってマウスを2度免疫化し、または未処理のまま残した(未処理、n=7)。最後の免疫化から1週間後、マウスに尾静脈注射によりB16黒色腫細胞の致死注射を1回施した。肺のコロニーをカウントした。‐‐‐,各群の平均転移コロニー。有意差(スチューデントt検定)が見出された:免疫化対未処理、p<0.0001、免疫化対AVE3/CpG、p<0.0003。
【図26】CpG‐PDOのリポソームカプセル化によってアジュバントの効率が改善したことを示す図である。5nmоlのCpGを含む生理食塩水(生理食塩水)または1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO(リポソーム)と混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図27】リポソームCpG‐PDOの滴定を示す図である。0.3〜2.5nmоlのリポソームCpG‐PDOと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図28】リポソームCpG‐PDOとリポソームCpG‐PTOの比較を示す図である。0.3nmоlもしくは1.3nmоlのリポソームCpG‐PDOまたはリポソームCpG‐PTOと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図29】低用量のリポソームワクチン接種が、腫瘍増殖を低減させることを示す図である。10μgのリポソームTRP‐2と0.3nmоlのリポソームCpG‐PDO(13nmоl/kg)(緑色、n=4)によってマウスを2度免疫化し、または未処理のまま残した(赤色、n=4)。マウスに2×105個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。8日目から腫瘍の大きさを測定した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームおよびリポソームを含む組成物、その生成、ならびに増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーを予防し治療するための使用に関する。このリポソームおよび組成物は、治療剤の送達、好ましくは抗原を造血系細胞に送達するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどの治療薬は、フリーフォームで患者に投与されているが、このフリーフォームとは、溶液状であり、媒体に結合しない、または組み込まれていないことを意味する。用語「フリーフォーム」は、さらに、所与の治療剤の化学的誘導体および治療剤と形成され得る様々な付加塩を含む。しかし、特に治療剤と比較した場合、およびそのフリーフォームの抗原と比較した場合、投与送達媒体へ治療剤を取り付け、または治療剤を組み込むことによって利点が得られることが判明している。そのような媒体へ組み込みまたは取り付けることによって、所与の治療剤の全体的効力に作用する数種の要因に有利な影響を与えることができる。これらの要因には、組織特異的分配、特に当該組織中または疾患部位への優先的な蓄積、特定の細胞型への薬物または抗原のターゲティング、特に抗原提示造血細胞、例えば、樹状細胞(DC)やランゲルハンス細胞(LC)などによって取り込んだ抗原を送達するためのターゲティングが含まれる。様々な送達媒体の適合性を比較したとき、上記要因も重要ではあるが、そのような送達媒体のうち、媒体からの治療剤に特徴的な放出などの要因もその効力に重要なものとなる。
【0003】
これらの要因の全ては、所与の治療剤の効力の改善の可能性にある程度寄与するが、そのような送達媒体に結合させ、または組み込んだ場合、新規な送達媒体に関する究極の試験は、その「フリーフォーム」の治療剤と比較した、または別の媒体と比較した、疾患動物モデルまたは患者にけるその効力である。
【0004】
近年注目を浴びている送達媒体の一つの型は、リポソームおよびリポソーム製剤である。用語「リポソーム」は、概括的には、形成されたその脂質膜の数に応じて、水性内部を封入した単層または多層脂質構造体をさす。典型的には、リポソームは、治療剤を搭載することができ、すなわち、治療剤をリポソーム内部にカプセル化し、および/または治療剤をリポソームに取り付けもしくは脂質二重層中に組み込むことができる。そのようなリポソーム製剤は、フリーの薬物と比較して効力が増大することが示されている。例えば、ビンカアルカロイドビンクリスチンを含むリポソーム製剤は、フリーのビンクリスチンと比較した場合、白血病細胞に対して効力が非常に高いが、全体的毒性が低いことも既に示されている(Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24)。リポソームは、ほぼどんな脂質からでも形成することができるので、多様な異なるリポソーム製剤が当技術分野で知られている。しかし、所与の疾患に対する薬効における個々の脂質が有する作用だけでなく、2種以上の異なる脂質のどのモル比が脂質組成物の効力を改善し、かつ/または免疫応答を上昇させるかについてはほとんど分かっていない。
【0005】
抗原およびアジュバントをリポソーム組成物に含めて投与することは従来技術に記載されている。Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319には、5mоl%のホスファチジルエタノールアミン(PE)の有り無しで、ホスファチジルコリン(PC)およびコレステロール(CH)を等モル量で含むリポソームの使用について記載され、このリポソームはCpGオリゴヌクレオチドおよびHER‐2/neu由来ペプチドをさらに含む。フリーの抗原の使用と比べたとき、この製剤の免疫化は上昇することが示された。
【0006】
Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp. Therap., 298: 1185には、DSPC、CH、DODAP、およびミリストイルスフィンゴシンをモル比20:45:25:10で含むリポソーム中に、フリーのCpG ODNをカプセル化したとき、免疫刺激の上昇を観察したと開示されている。
【0007】
Lee et al. (1992) Biochimica Biophysica Acta, 1103: 185は、リポソームによる細胞認識、すなわち、認識時のリポソームの細胞型特異性、特異的脂質頭基の影響、および表面電荷密度について研究した。彼らは、9mоl%までのホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、またはホスファチジン酸(PA)のいずれかが存在すると、アフリカザルの腎細胞へのリポソームの結合が増大することを結論付け、このリポソームはその他の点では、PCおよびコレステロールをモル比で2:1含有していた。しかし、彼らは、PS、PG、PAのいずれかをさらに上昇させても、これらの細胞への特異的結合は改善されなかったとも記載している。
【0008】
Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23は、リポソームペプチドワクチンによる生体内での抗原の搭載およびDCの活性化、ならびに得られた抗ウイルス免疫および抗腫瘍免疫について説明している。使用されたリポソームは、モル比で5:1のPCとコレステロールの混合物、および免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含む。
【0009】
Agrita et al. (2003) Infection and Immunity 71: 5210には、リポソームとDCの相互作用を改善する標的法が記載されている。使用されたリポソームには、PC、PS、コレステロールがモル比8:2:2で、またはPC:PG:コレステロールが同モル比で含まれていた。ワクチンに対する高い免疫応答が示された。
【非特許文献1】Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24
【非特許文献2】Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319
【非特許文献3】Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp. Therap., 298: 1185
【非特許文献4】Lee et al. (1992) Biochimica Biophysica Acta, 1103: 185
【非特許文献5】Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23
【非特許文献6】Agrita et al. (2003) Infection and Immunity 71: 5210
【非特許文献7】Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507
【非特許文献8】Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53
【非特許文献9】SEREX; Tureci et al., Mоl Med Today. 1997, 3:342-349
【非特許文献10】Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174
【非特許文献11】Olson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23
【非特許文献12】Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979
【非特許文献13】Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194-
【非特許文献14】Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155
【非特許文献15】Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216
【非特許文献16】Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272
【非特許文献17】Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、送達媒体として所与のリポソームの適合性、特に、抗原提示に関与する造血細胞系細胞に抗原を送達するための適合性に影響を及ぼす要因は未だ不明である。従って、効力を改善し、特に造血系細胞への送達を改善する送達媒体も依然として必要とされている。そのような送達の改善は、例えば、抗原やアジュバントなどを刺激し、かつ/または免疫応答を引き出す分子の投与に特有のものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、コレステロール(CH)を一定の範囲で含み、さらに2種の負荷電脂質、すなわち、PSおよびPGを一定の範囲で含むリポソーム、あるいは1種の負荷電脂質、すなわち、PSもしくはPG、およびPEを一定の範囲で含むリポソームは、CHと共に、PS、PG、もしくはPEを含まない、またはPS、PG、もしくはPEしか含まない従来技術のリポソームと比較した場合、造血系細胞、特に樹状細胞およびランゲルハンス細胞への結合が増大し、かつ/または高い免疫応答を引き出すことを発見している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従って、本発明の一態様は、リポソームの全モル脂質組成物に対して、
a)CH20mоl%〜60mоl%、および
b)20mоl%〜50mоl%のPS、20mоl%〜50mоl%のPG、および20mоl%〜50mоl%のPEの群から選択される少なくとも2種の成分、
c)少なくとも一種の治療剤、および/または少なくとも一種の診断剤
を含むリポソームを提供することである。
【0013】
他の脂質と関連して60mоl%を超えるCH濃度が、規則的な脂質二重層構造の形成に有害であることは判明しており、従って、CHの含有量は60%が本発明のリポソームの上限である。他方で、コレステロール濃度を20mоl%未満に下げると、循環からのリポソームの排出速度が増加し、それによって所与の治療化合物の生物学的半減期が減少すると思われる。好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHが、モル比で約23〜約42mоl%で存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0014】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、PSはリポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0015】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、PGは、リポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0016】
発明のリポソームの好ましい実施形態では、PEはリポソームの全モル脂質組成物に対して、モル比で約23〜約42mоl%存在し、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%存在する。
【0017】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPSおよびPGのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0018】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPSおよびPEのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームは、CHおよびPGおよびPEのそれぞれを約23〜約42mоl%含み、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%含む。
【0020】
脂質残部、すなわち事例によっては、CH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;またはCH、PG、およびPEのいずれでもなく、かつ加えて100mоl%にするのに必要な脂質の量は、どんな脂質からなっていてもよい。ここでおよび本発明全体にわたって使用する用語「脂質」は、脂肪特性または脂肪様特性を有するどんな物質をもさす。一般に、脂質は、長い無極性残基(X)と、通常、水溶性極性親水性残基(Y)を含み、この脂質は以下の基本式によって特徴付けることができる。
X‐Yn
【0021】
式中、nは0以上である。n=0の脂質は「無極性脂質」と称し、n≧1の脂質は「極性脂質」と称する。本発明の好ましいリポソームの脂質残部を構成することができる脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される。
【0022】
これらの脂質の中で、脂質残部は一種または複数のリン脂質を含むのが好ましい。そのリン脂質は、PCおよびPEからなる群から選択するのが好ましい。
【0023】
本発明のリポソームの好ましい実施形態は、CH、PG、およびPSを上記した範囲であり、好ましい範囲で含み、PEを全モル脂質組成物に対して約1〜約40mоl%の濃度でさらに含み、好ましくは約5〜約20mоl%で、より好ましくは約8〜約15mоl%で含む。
【0024】
別の実施形態では、リポソームは、PCを全モル脂質組成物に対して約20〜約40mоl%の濃度で含み、好ましくは約5〜約20mоl%で、より好ましくは約8〜約15mоl%で含む。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソームの脂質は、本質的にCH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;あるいはCH、PG、およびPEからなる。この場合は、CH、PS、PG、および/またはPEは、上記の好ましい濃度範囲で、特に好ましい濃度範囲で存在してよい。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームが、全モル脂質組成物に対して、本質的に、CH、PS、およびPGからなる場合、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在し;CH、PS、およびPEからなる場合、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在し;CH、PG、およびPEからなる場合は、それぞれは、約23〜約42mоl%、より好ましくは約26〜約39mоl%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mоl%、最も好ましくは約32〜約34mоl%の範囲で存在する。
【0026】
PSおよびPGは、それぞれ類似するホスファチジルセリン頭基およびホスファチジルグリセロール頭基を有する脂質の包括的用語である。しかし、これらの頭基に多くの異なる無極性残基を取り付けることができる。従って、異なる天然源から単離したPSおよびPGは、取り付けられた無極性残基の長さ、組成、および/または化学構造がかなり異なり、自然に存在するPSおよびPGは、通常、異なる無極性残基を有するPSおよびPGの混合物である。現在までに試験した、PSおよびPG混合物、あるいは純粋単離した、もしくは化学合成したPSおよびPG化合物は全て、本発明のリポソーム中に示した範囲で、または好ましい範囲で組み込んだ場合、優れた免疫応答をもたらすが、ある種のPSおよびPG型は、特定の強力な免疫応答を刺激することが本発明者らによって観察されており、従って、本発明のリポソーム中に使用されるPSは、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(palmitoyloleoylphosphatidylserine)、パルミトイルリノエオイルホスファチジルセリン(palmitoyllinoeoylphosphatidylserine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルセリン(palmitoylarachidonoylphosphatidylserine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルセリン(stearoyloleoylphosphatidylserine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルセリン(stearoyllinoleoylphosphatidylserine)、ステアロイル‐アラキドノイルホスファチジルセリン(stearoyl-arachidonoylphosphatidylserine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ジカプリルホスファチジルセリン(dicaprylphosphatidylserine)、ジラウロイルホスファチジルセリン(dilauroylphosphatidylserine)、ジミリストイルホスファチジルセリン(dimyristoylphosphatidylserine)、ジフィタノイルホスファチジルセリン(diphytanoylphosphatidylserine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルセリン(diheptadecanoylphosphatidylserine)、ジオレオイルホスファチジルセリン(dioleoylphosphatidylserine)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(dipalmitoylphosphatidylserine)、ジステアロイルホスファチジルセリン(distearoylphosphatidylserine)、ジリノレオイルホスファチジルセリン(dilinoleoylphosphatidylserine)、ジエルコイルホスファチジルセリン(dierucoylphosphatidylserine)、ジドコサヘキサエノイル‐ホスパチジルセリン(didocosahexaenoyl-phospahtidylserine)、脳由来PS、および大豆由来PSからなる群から選択することが好ましく、特に好ましいのはジオレオイルホスファチジルセリンである。本発明のリポソーム中に使用されているPGは、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyloleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(palmitoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(palmitoyldocosahexaenoyl phosphatidylglycerol)、ステアロイルオレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyloleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(stearoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylglycerol)、ジカプリルホスファチジルグリセロールジラウロイルホスファチジルグリセロール(dicaprylphosphatidylglycerol dilauroylphosphatidylglycerol)、ジヘプタデカノイルホスファチジルグリセロール(diheptadecanoylphosphatidyl-glycerol)、ジフィタノイルホスファチジルグリセロール(diphytanoylphosphatidylglycerol)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(dimyristoylphosphatidylglycerol)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、ジエライドイルホスファチジルグリセロール(dielaidoylphosphatidylglycerol)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(distearoylphosphatidylglycerol)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol)、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール(dilinoeoylphosphatidylglycerol)、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール(diarachidonoylphosphatidylglycerol)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(docosahexaenoylphosphatidylglycerol)、
および卵由来PGからなる群から選択することが好ましく、特にジオレオイルホスファチジルグリセロールが好ましい。
【0027】
PSおよびPGと同様に、PEもホスファチジルエタノールアミン頭基を有する脂質の総称である。ある種のPEは、本発明のリポソーム中に組み込まれた場合、特定の強力な免疫応答を刺激するのも本発明者らによって観察されており、従って、好ましい実施形態では、PEは、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyloleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoylarachidonoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyloleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoylarachidonoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(dilauroylphosphatidylethanolamine)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoylphosphatidylethanolamine)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(diphytanoylphosphatidylethanolamine)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルエタノールアミン(diheptadecanoylphosphatidylethanolamine)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine)、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン(dielaidoylphosphatidylethanolamine)、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(diarachidonoylphosphatidylethanolamine)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(docosa hexaenoylphosphatidylethanolamine)、細菌由来PE、心臓由来PE、脳由来PE、肝臓由来PE、卵由来PE、および大豆由来PEからなる群から選択され、特に1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1‐アシル‐2‐アシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1,2‐ジパルミトイル‐PE、および/または1,2‐ジラウロイル‐sn‐グリセロ‐3‐PE(DLPE)である。
【0028】
好ましい実施形態では、治療剤は、薬物、アジュバント、または抗原からなる群から選択される。抗原をアジュバントと共に同時投与するのが特に好ましい。抗原によって引き出された免疫応答が存在するアジュバントによって増強され得るからである。本明細書で使用する用語「アジュバント」は、抗原の投与前に、投与と共に、または投与後に投与した場合、抗原の単独投与と比較して、抗原に対する免疫応答を増大する物質をさす。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、少なくとも一種のアジュバントおよび少なくとも一種の抗原を含む。
【0029】
本明細書全体にわたって使用される用語「抗原」は、ヒトを含む動物で投与と同時に抗原に対する免疫応答を引き出す物質全てをさす。そのような免疫応答は、例えば、B細胞の増殖と抗体分泌、サイトカインの分泌(例えば、IL‐1、IL‐6、TNFα)によって評価される単球および/またはマクロファージの活性化、特異的表面抗原の特異的発現および/または上方もしくは下方制御(例えば、上方制御されるMHCクラスII、CD80、CD86、CD83、CD40、DC‐LAMP、および下方制御される抗原、例えば、マンノース受容体、DEC‐205、DC‐SIGN)によって評価される樹状細胞(DC)の活性化および分化、ならびに抗原特異性T細胞が伴う体液および/または細胞介在免疫応答によって特徴付けることができ、この抗原特異性T細胞は、そのCD4もしくはCD8発現および適当な抗原、特に免疫応答誘発に使用したのと同じペプチド抗原での活性化(再刺激)に続くサイトカインの放出(例えばIFNγ)によって特徴付けられる。ある場合には、薬物も免疫応答を引き出すことができるが、検出された免疫応答が、以下に定義した腫瘍抗原判定基準を満たす場合、そのような物質は薬物ではなく抗原と見なされる。抗原もしくはその断片は、MHCを提示でき、従って細胞介在免疫応答を引き出すことができるのが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己抗原、またはアレルゲンである。
【0030】
用語「腫瘍抗原」は、腫瘍に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。特に適当な物質は、正常細胞と比べて腫瘍細胞に豊富にある物質である。これらの物質は、腫瘍細胞内に存在し、かつ/または腫瘍細胞の外側で利用できるのが好ましい。腫瘍抗原が、腫瘍細胞内にしか存在していなくても、その抗原もしくはその断片はMHC系によって細胞表面に提示されるので、免疫系は腫瘍抗原を利用することができる。好ましい態様では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に概ね排他的に存在し、同じ細胞型の正常細胞中には存在しない。
【0031】
適当な腫瘍抗原は、例えば、同じ細胞型の腫瘍細胞と正常細胞の間のタンパク質の発現量の差をマイクロアレイをベースにした手法(Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507)を使用して分析することにより同定できる。また、PCRまたはマイクロアレイを基に腫瘍特異的変異細胞遺伝子をスクリーニング(Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53)することによって、あるいは組換え発現クローニングにより抗原を血清学的に同定(SEREX; Tureci et al., Mоl Med Today. 1997, 3:342-349)することによって同定できる。当業者は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に優先的にまたは排他的に存在する多数の物質について把握しており、その物質には、例えば、発癌遺伝子、例えば、切断型上皮細胞成長因子、葉酸塩結合タンパク質、メラノフェリン、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、HER2‐neuなど、およびある種の糖鎖、例えば、上皮ムチンなどが含まれる。
【0032】
腫瘍細胞中におよび/または腫瘍細胞上に優先的にまたは排他的に存在する物質の全てが、強力な免疫応答を引き出すわけではなく、従って、本発明のリポソームに含めるために、強力な免疫応答を引き出す腫瘍抗原を選択することが好ましい。強力な免疫応答を引き出す抗原は、増殖させるために、抗原で攻撃すると同時に、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%の、その抗原で予め免疫化したマウスから単離したIFNγ産生CD8+T細胞またはCD4+T細胞を誘発させ、かつ/または抗原で攻撃すると同時に、好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも15%の、その抗原で予め免疫化したマウスから単離したB細胞を誘発させる。これらの基準を満たす抗原は、治療的および/または予防的癌ワクチンで使用するための候補である。
【0033】
特定の好ましい実施形態では、腫瘍抗原は、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特にサイクリン依存性キナーゼ(例えば、CDC2、CDK2、CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pml‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特にNY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6、MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE‐8)、NY‐ESO‐1、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特にヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMT‐1、LMP‐2;過剰発現抗原または組織特異的分化抗原、特にgp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP‐1およびTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1、ならびにそれらの断片および誘導体からなる群から選択される。特定の好ましい腫瘍抗原は、チロシナーゼ関係タンパク質に由来する抗原である。本発明のリポソームに含めるために選択された腫瘍抗原またはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0034】
用語「ウイルス抗原」は、ウイルスに対する、特にウイルス感染細胞に対する免疫応答を引き出す物質全てを含む。ウイルス抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、ウイルス抗原は、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルス、および黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特にコロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特に、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特にインフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロータウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特にB型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特にパルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、乳頭腫ウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;ならびにイリドウイルス科、特にアフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなる群から選択されるウイルスに由来する。特に好ましいウイルス抗原は、HPVL6、HPVL7、それらの断片および誘導体からなる群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができるウイルス抗原もしくはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0035】
用語「真菌抗原」は、真菌に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。この真菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、真菌抗原は、クリプトコックス種、特にクリプトコックスネオフォルマンス、ヒストプラスマ種、特にヒストプラスマカプスラーツム、コクシジオイデス種、特にコクシジオイデスイミティス、ブラストミセス種、特にブラストミセスデルマティティジス、クラミジア種、特にクラミジアトラコマティス、およびカンジダ種、特にカンジダアルビカンスからなる群から選択される真菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい真菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0036】
用語「細菌抗原」は、細菌に対して免疫応答を引き出す物質全てを含む。細菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すのが好ましい。本発明好ましい実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター種、特にピロリ菌;ボレリア種、特にボレリアブルグドルフェリ;レジオネラ種、特にレジオネラニューモフィラ;マイコバクテリア種、特に結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラール、M.カンサシイ、M.ゴルドナ;ブドウ球菌種、特に黄色ブドウ球菌;ナイセリア種、特に淋菌、髄膜炎菌;リステリア種、特にリステリアモノサイトゲネス;レンサ球菌種、特に化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌;S.フェーカリス;S.ボビス、肺炎球菌;嫌気性レンサ球菌種;病原性カンピロバクター種;腸球菌種;ヘモフィルス種、特にインフルエンザ菌;バシラス種、特に炭疽菌;コリネバクテリウム種、特にジフテリア菌;エリシペロトリックス種、特に豚丹毒菌;クロストリジウム種、特にC.ペルフリンゲンス、破傷風菌;エンテロバクター種、特にエンテロバクターアエロゲネス、クレブシエラ種、特に肺炎桿菌、パスツレラ種、特にパスツレラムルトシダ、バクテロイド種;フソバクテリウム種、特にフソバクテリウムヌクレアツム;ストレプトバシルス種、特にストレプトバシルスモニリホルミス;トレポネーマ種、特にトレポネーマペルテヌ;レプトスピラ;病原性エシェリキア種;および放線菌種、特に放線菌イスラエリからなる群から選択される細菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい細菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0037】
用語「自己免疫抗原」は、体内、特に、正常な細胞、組織、または臓器に通常存在する物質、例えば、タンパク質に対する免疫応答を引き出す物質全てを含む。自己免疫抗原は、自己免疫疾患、例えば、1型糖尿病、従来の臓器特異的自己免疫疾患、神経系疾患、リウマチ性疾患、乾癬、結合組織疾患、自己免疫血球減少症、他の自己免疫疾患などを治療し、かつ/または予防するための脱感作法に使用することができる。そのような従来の臓器特異的自己免疫は、甲状腺炎(Graves病+Hashimoto病)、胃炎、副腎炎(Addison病)、卵巣炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、性腺機能不全、副甲状腺機能低下症、脱毛症、吸収不良症候群、悪性貧血、肝炎、抗受容体抗体疾患、白斑症を含み得る。そのような神経系疾患は、統合失調症、アルツハイマー病、うつ病、下垂体機能不全、尿崩症、乾燥症候群、多発性硬化症を含み得る。そのようなリウマチ性疾患/結合組織疾患は、リューマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)もしくはループス、強皮症、多発性筋炎、炎症性腸疾患、皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、血管炎、乾癬性関節炎、剥脱性乾癬皮膚炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群を含み得る。他の自己免疫関連疾患は、本明細書記載し関連技術分野で知られているような自己免疫ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、心筋梗塞開心術後症候群、肺ヘモシデリン沈着症、アミロイド症、類肉腫症、アフタ性口内炎、および他の免疫関連疾患を含み得る。それぞれ示した疾患の原因となる自己免疫抗原は、当技術分野で知られており、それだけには限らないが、全て本発明のリポソーム中に含めることができる。
【0038】
用語「アレルゲン」は、ウイルス抗原、細菌抗原、または真菌抗原ではない外来物質に対して免疫応答を引き出す物質をさす。アレルゲンは、脱感作法によってアレルギーを治療しまたは予防するために、本発明のリポソーム中に含めることができる。好ましいアレルゲンは、花粉、特に、カエデ、カバノキ、ハンノキ、ヘイゼルナッツ、ヨモギ、ビーチマウンテンセダー、オーク、クルミ、ニレ、オリーブ、スズカケノキ、ハコヤナギ、アメリカトネリコ、およびストローブマツの花粉;イネ科草本、特に、ハルガヤ、カモガヤ、ギョウギシバ、野生オート麦、ドクムギの草本;昆虫、特にダニ;食材、特に、乳や乳製品、ナッツ、特に、ピーナッツ、ヘイゼルナッツ、およびアーモンド;獣毛、特に、ネコ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、マウス、ラット、モルモット、およびウサギに由来する毛髪からなる群から選択し、または得てよい。本発明のリポソームに含めることができるそれ以上のアレルゲンは、接触過敏症を引き出す、例えば、ニッケルや銅などのアレルゲンである。
【0039】
本発明のリポソームは、身体のある種の細胞型、すなわち、造血系細胞に対して高い親和性を示し、従ってこれらの細胞型に優先的に薬物を送達するために使用することができる。好ましい実施形態では、薬物は、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、血管新生阻害薬、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および抗喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、特に免疫調節サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤およびそのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬特に、NF‐кBアクチベータ、MAPキナーゼ、STATタンパク質、および/またはタンパク質リン酸化酵素B/Akt;ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。もちろん、本発明のリポソームは同時に一種を超える薬物を含み、あるいは一種もしくは複数の抗原および/または一種もしくは複数のアジュバントと共に、一種もしくは複数の薬物を含むことも想定されている。好ましい実施形態では、薬物は、ケモカイン、サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤、およびそのプロドラッグ、免疫賦活薬、ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、および生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、またはサイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。
【0040】
本発明のリポソームは、顕著な細胞型特異性を示すので、診断剤をその特定の組織に優先的に送達するためにこれらを使用することもできる。診断剤を治療剤と共に含めることも想定されており、それにより患者で治療剤の送達および分布のモニタリングが可能になるはずである。リポソームが以下に定義した標的部分を含む場合は、リポソームは診断剤を含むのがよりさらに好ましく、この標的部分は、標的組織または疾患部位に本発明のリポソームを優先的に局在化するのにさらに役立つ。
【0041】
用語「診断剤」は、蛍光測定、核磁気共鳴、コンピュータ断層撮影、またはシンチグラムを含む分析法によって直接的または間接的に検出可能な化学部分をさす。好ましい実施形態では、診断剤は、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子、例えば、13N、15O,18F、51Gr、54Fe、60Co、67Ga、75Se、99mTc、111In、112mAg、113mIn、123I、133Xe、148Au、35S、33P、32P、11Cなど;例えば、2Hや13Cを含む非放射性同位元素、ならびに蛍光分子、または蛍光や光などを発する分子、例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、および様々な蛍光色素からなる群から選択され、それらの全ては当業者によく知られている。
【0042】
既に述べたように、本発明のリポソームは、ある種の造血細胞系、より詳細には、樹状細胞およびランゲルハンス細胞に高い親和性を有する。様々な疾病の予防または治療を目指す免疫化/ワクチン接種法において、この特異性が、本発明のリポソームを抗原および/またはアジュバントの送達に特に相応しいものにする一方で、この特性によってリポソームは造血性細胞系細胞へ薬物を送達するための送達媒体として特に相応しいものになっている。リポソームはどんな細胞分裂停止薬物または細胞障害薬を含んでもよいが、既知の細胞分裂停止薬および細胞障害薬からは以下のものが特に好ましい:アルキル化物質、抗代謝産物、抗生物質、エポシロン、核内受容体作用薬および拮抗薬、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)阻害薬、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害薬、生体脂肪酸;プロスタノイド、ロイコトリエンを含む脂肪酸誘導体;タンパク質リン酸化酵素阻害薬、タンパク質ホスファターゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、白金配位錯体、エチレンイメン、メチルメラミン、トラジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホン酸、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、L‐アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ホリン酸カルシウム、カルボプラチン、カルペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロランブシル、シス‐プラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロンプロプアミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポシロンB、エポシロンD、エストラムシンホスファート、エストロゲン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロックスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミドホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、ヒドロキシプロゲステロネカプロアト、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスフアミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルルトテカン、マフェニドスルファートオールアミド、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセタート、メガストロールアセタート、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフララジン、ニフルティモックス、ニムスチン、ニノルアゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン、オキソリン酸、ペンタアミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイッシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロリド、セムスチンストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルフアセタミド、スルファクロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、co‐トリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テルチポシド、テストラクトン、テストステロンプロピオナート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジクォン、トレオサルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN‐01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾルビシン、あるいはそのそれぞれの誘導体もしくは類似体。次に、癌を治療するために上記の薬物の数種を同時に投与し、従って、一種を超える細胞分裂停止薬物および/または細胞障害薬を本発明のリポソーム中に含めることも想定されている。
【0043】
本発明者らは、本発明のリポソームが、リポソームに含めたまたは取り付けた抗原に対してかなりの免疫応答を引き出すことができることを発見している。
【0044】
アジュバントを抗原と同時投与すれば、免疫応答をさらに刺激できることが当技術分野で知られてはいても、驚くべきことに、「フリー」のアジュバントの同時投与と比較したとき、アジュバントを含むリポソームは非常に強力な免疫刺激をもたらすことを見出した。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームは少なくとも一種のアジュバントを含む。アジュバントは、リポソーム内部に「フリーに」含めることができ、またはアジュバントは、リポソームを構成するどんな成分、例えば、脂質、好ましくはPE、PSおよび/またはPG、リポソーム中に含まれるタンパク質、またはリポソーム膜に一体化したタンパク質に取り付けることができる。本発明のリポソームが、抗原およびアジュバントを含むいくつかの実施形態では、アジュバントを抗原に取り付けることもできる。
【0045】
本発明のリポソーム中に含めることができるアジュバントは、抗原応答を少なくとも20%増大させることが好ましく、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも1000%増大させる。好ましいアジュバントは、以下からなる群から選択される:非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体、合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、およびより高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチド。本発明のリポソーム中に含めることができる特定の好ましいアジュバントは、群:非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA(CpGモチーフ)、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN)および合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cysから選択される。
【0046】
本発明のリポソームは、2種以上のアジュバントを含むことができる。2種以上のアジュバントは、免疫系の刺激では相乗的に作用するのが好ましい。特に、アジュバントの作用の媒介に関与する異なる分子経路をアジュバントが刺激する場合に、2種のアジュバントの相乗効果を観察することができる。従って、2種以上のアジュバントを使用する場合、それぞれが異なる経路を通る免疫応答を刺激することが好ましい。免疫応答を刺激する経路は、当業者に知られており、例えば、Toll様受容体2(TLR2)、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、およびTLR9経路が含まれる。従って、異なるTLR経路を刺激する2種のアジュバントをリポソーム中に含めることが好ましい。それぞれのTLR経路を刺激するアジュバントは当業者に知られている。TLR2では、このようなアジュバントには、例えば、リポペプチド、リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン、ザイモサンおよびHSPが含まれ;TLR3では、例えばDS‐RNA;TLR4では、例えば、リポ多糖、HSP、タキソール、RSV、フィブロネクチン;TLR5では、例えばフラジェリン;TLR7では、例えばイミダゾキノリン;ならびにTLR9では、例えば、非メチル化DNA、特にCpG‐DNA;非メチル化ホスホロチオ酸(PTO)オリゴヌクレオチド、特にCpG‐PTOオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0047】
本発明の好ましいリポソームは、少なくとも一種の抗原、好ましくは少なくとも一種の腫瘍抗原、少なくとも1種のアジュバント、さらに好ましくは少なくとも2種のアジュバント含む。この意味において、アジュバントは、前記したように相乗的に作用するように選択することが好ましい。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、治療剤および/または診断剤のモル量:全脂質のモル量比が1:100〜1:10、好ましくは1:80〜1:15、より好ましくは1:50〜1:20となるような量で治療剤および/または診断剤を含む。
【0049】
本発明のリポソームの直径は10〜1000nmであってよい。しかし、好ましい実施形態ではリポソームの直径は50〜200nmであり、80〜150nmがより好ましい。例えば、既知の孔径の篩またはメッシュを通してリポソーム組成物を押し出すことによって、リポソームの直径に作用することができる。径を制御するこの方法や別の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174またはOlson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23に記載されている。
【0050】
別の実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する成分のどれも別の化学部分に取り付けることができる。用語、化学部分は特に限定されない。しかし、好ましい実施形態では、化学部分は以下に、より詳細に記載するような標的部分、または安定化部分である。
【0051】
本記述全体にわたって使用されている用語「取り付ける」は、それぞれ、化学部分、特に標的部分もしくは安定化部分と、リポソームの別の成分の間の直接的もしくは間接的共有もしくは非共有結合および接続をさす。先に定義した取付けを可能にする多様な化学基は、例えば、ビオチン‐ストレプトアビジン、アミノ反応基(例えば、カルボジイミド、ヒドロキシルメチルホスフィン、イミドエステル、N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、イソチオシアナート、イソシアナート)、スルフヒドリル反応基(例えば、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、アジリジン)、カルボキシル反応分子(例えば、カルボジイミド、カルボジイミダゾール、ジアオアルカン)、ヒドロキシル反応基(例えば、カルボニルジイミダゾール、アルキルハロゲン、イソシアナート)を含め、当技術分野で知られており、適宜、当業者が容易に選択することができる。
【0052】
本発明の意味内での安定化部分は、一旦、投与したならば、リポソームの循環時間を延長させる。特定の好ましい安定化部分は、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、またはPEGであり、特定の好ましいPEGの分子量は、約1,000〜約10,000g/mоlであり、約5,000g/mоlがより好ましい。
【0053】
好ましい実施形態では、化学部分、特に安定化部分は、リポソーム膜を構成する分子画分にのみ取り付けられる。リポソーム膜成分の約1〜約20mоl%が、取り付けられた化学部分を有するのが好ましく、約3〜約10mоl%がより好ましく、約5mоl%がさらにいっそう好ましい。
【0054】
化学部分、特に安定化部分を取り付けるための好ましいリポソーム成分は、脂質成分である。異なる化学部分を異なる脂質成分に取り付けることができるが、化学部分は本発明のリポソーム内に含まれている一種もしくは複数のリン脂質に取り付けるのが好ましい。さらに好ましい実施形態では、一種もしくは複数の化学部分をPEに取り付ける。特に、例えば、PEGのような安定化剤を使用する場合、取付けにはPEを使用する。
【0055】
安定化部分の界面活性剤の取付けに加えて、本発明のリポソームの脂質二重層を安定させるために、タンパク質およびペプチドをリポソームに組み込むことができる。二重層安定化成分として使用することができる界面活性剤には、それだけには限らないが、Triton X-100、デオキシコラート、オクチルグルコシド、リゾホスファチジルコリンが含まれる。二重層安定化成分として使用することができるタンパク質には、それだけには限らないが、グリコホリンやチトクロム酸化酵素が含まれる。好ましい実施形態では、リポソームは、0.05〜15mоl%の安定化剤を含むことができる。
【0056】
先に指摘したように、本発明のリポソームは、ある種の細胞、特に造血系細胞に優先的に結合する。いくつかの適用例では、例えば、ワクチン接種法では、抗原を造血系細胞により特異的に送達するのが望ましいこともあり得る。これは、リポソームにターゲティング手段を備え付けることによって実現することができ、この手段によって主として体内の特異的部位にリポソームを指向させることが可能になり、それが望ましくない全身的作用および/または毒性の低減に役立つ。従って、本発明のリポソームの別の実施形態では、標的部分を前記リポソームに取り付ける。先に述べたように、化学部分に関して標的部分はリポソームのどの成分にも取り付けることができる。標的部分は、a)リポソームの脂質成分の1種に取り付ける、b)本発明のリポソーム膜に組み込むことができる膜タンパク質に取り付ける、あるいはc)それ自体をその脂質層に挿入し、または組込むことができるのが好ましい。
【0057】
好ましい実施形態では、標的部分は、ペプチドもしくはタンパク質、特に、抗体もしくはその断片、一本鎖抗体もしくはその断片、受容体リガンドもしくはその断片、炭水化物、およびリガンドからなる群から選択される。
【0058】
より詳細には、標的部分は、天然もしくは合成の受容体結合ペプチドおよびそれらの模倣体、単糖もしくはオリゴ糖、受容体リガンドもしくはその断片、抗体もしくはその断片からなる群から選択することができ、それらの全ては、DC特異的表面分子もしくは受容体、特にCD54(ICAM‐1)とICAM‐2、マンノース受容体、CD207(ランゲリン)、ASGPR、CLEC‐1、CLEC‐2、DCIR、dectin‐1、DC‐SIGN、DEC‐205、BDCA‐2、TLR‐1、TLR‐2、TLR‐3、TLR‐4、TLR‐5、TLR‐7、TLR‐9、CD40、CD16/32(FcγR‐IIIとII)、CD11、CD1a、CD1d、およびMHCクラスIIを対象とする。
【0059】
好ましい実施形態では、標的部分をスペーサーに取り付ける。本記述全体にわたって使用される用語「スペーサー」は、それがリポソーム成分、例えば、脂質に取り付けられたときでさえも、標的部分が到達しやすくする目的のために役立つ化学部分をさし、そうでない場合は標的部分のそのそれぞれの標的構造物への結合が立体的に妨害される。この意味内でのスペーサーの直線的伸長は少なくとも0.5nmであり、スペーサーの直線的伸長は1〜10nmが好ましく、2〜5nmがさらにいっそう好ましい。スペーサーは、直鎖もしくは分枝、飽和もしくは不飽和糖鎖であることが好ましい。糖鎖は、単量体構成単位の多量体反復を含むのが好ましい。それぞれの単量体構成単位の長さに応じて、単量体構成単位の2〜10個の多量体反復が好ましい。好ましい実施形態では、スペーサーは親水性である。スペーサーは、一末端への標的部分の取付けを可能にする官能基、および他方の末端にリポソーム成分、例えば、本発明の脂質へのスペーサーの取付けを可能にする別の官能基を含むことができる。
【0060】
好ましいスペーサーは、二機能性分子、特に、約1〜40個の反復配列を含むことが好ましい二機能性ポリエチレンもしくはポリプロピレングリコール誘導体であり、オリゴペプチドは天然および/または合成アミノ酸を含む。このオリゴペプチドは、好ましくは1〜40個の、好ましくは2〜20個の、より好ましくは2〜10個のアミノ酸含む。スペーサーの特定の好ましい構成単位は、8‐アミノ‐3,6‐ジオキサタン酸(doo)であり、1〜10個のdoo反復配列を含むスペーサーが好ましい。2〜5個のdoo単位を含むスペーサーが、さらにより好ましく、3個のdoo単位を含むスペーサーが最も好ましい。リポソームと関連して、スペーサーには最適な長さがあり、それは2〜5nmであることが本発明者らによって発見されている。一方で、長さが約0.5nm未満のスペーサーでは、ほとんどの場合、リポソーム表面から標的部分が取り付けられている場所までの距離が十分ではなく、効率的な相互作用、すなわち、標的部分とそのそれぞれの標的、例えば、腫瘍細胞などとの結合が行われない。他方で、約10nmより長いスペーサーは、「緩み」が増大し、これも標的部分とその標的との間の相互作用に有害である。従って、好ましい実施形態では、スペーサーの長さは約1〜約10nmであり、約2.5〜約5nmが好ましい。
【0061】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、標的部分は、脂質、好ましくはリン脂質、例えば、PE、PG、PC、PSなどにに取り付けられ、標的部分の取付けに使用される脂質は、N‐カプロイルアミン(caproylamine)‐PE、N‐ドデカニルアミン(dodecanylamine)‐PE、ホファチジルチオエタノール(phophatidylthioethanol)、N‐[4‐(p‐マレイミドメチル(maleimidomethyl))シクロヘキサン(cyclohexane)‐カルボキサミド(carboxamide)‐PE(N‐MCC‐PE)、N‐[4‐(p‐マレイミドフェニル(maleimidophenyl))ブチルアミド(butyramide)]‐PE(N‐MPB)、N‐[3‐(2‐ピリジルジチオ(pyridyldithio))プロピオナート(propionate)]‐PE(N‐PDP)、N‐スクシニル(succinyl)‐PE、N‐グルタリル(glutaryl)‐PE、N‐ドデカニル(dodecanyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐cap‐PE、ホスファチジル(phosphatidyl)‐(エチレングリコール(ehtylene glycol))、PE‐ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)‐カルボン酸(carboxylic acid)、PE‐PEG‐マレイミド(maleimide)、PE‐PEG‐PDP、PE‐PEG‐アミン(amine)、PE‐PEG‐ビオチン(biotin)、PE‐PEG‐HNS、ジパルミトイルグリセロスクシニル(dipalmitoyl glycerosuccinyl)‐リジン(lysine)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジオクタデセノイルオキシグリセリル(dioctadecenoyloxy glyceryl))(DO)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジテトラデセノイルオキシグリセリル(ditetradecenoyloxy glyceryl))(DT)からなる群から選択されるのが好ましい。
【0062】
先に述べた主成分のように、および多くの実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する唯一の成分は脂質である。しかし、本発明のある態様では、リポソーム膜は、脂質層中に挿入し/組み込むことができる成分をさらに含むことができる。そのような成分の例には、一個もしくは複数の膜貫通ドメイン、GPI‐アンカー、リポペプチドや糖脂質などの他の両親媒性分子、あるいは一種もしくは複数の脂肪酸、脂質、または他の疎水性部分に接合しまたは融合された分子を含め、親水性部分を有するタンパク質がある。そのような分子は、例えば、リポソームに標的化能力を付与することができ、すなわち、そのような分子は先に定義した標的部分であってよく、または酵素機能を有していてよい。
【0063】
PEに対して負荷電成分PSまたはPGが存在すること、好ましい実施形態では、PSとPG双方が存在することによって、従来技術のリポソームよりも強力な免疫応答を引き出すリポソームがもたらされることが、本発明者らによって発見されているので、リポソームの正味表面電荷は、陰性であり、すなわち、リポソーム中の正電荷量の脂質を越える負荷電量の脂質をリポソームが含むのが好ましい。
【0064】
本発明のリポソームは構造が安定しており、生成後、周囲の薬物溶液または緩衝液を除去するために、例えば、ろ過することができる。治療剤および/または診断剤を用いて、または用いずに「純粋な」リポソームを使用することもできるが、その安定性によって、容易な乾燥状態での貯蔵を促進するために、リポソームから本質的に液体全てを除去することも可能である。従って、本発明のリポソームは、乾燥形で、好ましくは凍結乾燥形で供給することができる。これらのリポソームは、使用時点で水溶液および/または緩衝液を添加することによって容易に再含水させることができる。
【0065】
治療もしくは診断化合物は、リポソーム内部に含め、または親油性薬物の場合には脂質二重層内もしくは層間にも含めることが特に好ましい。リポソームに所与の治療剤および/または診断剤を「搭載」するために、従来技術の様々な方法を利用することができる。その最も単純な形では、リポソーム形成中に治療または診断剤を脂質成分と混合する。他の受動的な搭載方法には、脱水再含水法(Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979)、逆相蒸発法(Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194-)、または界面活性剤除去法(Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155)が含まれる。しかし、これらの技術は、搭載中、しばしば、かなりの量の治療剤および/または診断剤の損失を招き、これは治療または診断剤が高価な場合には特に欠点である。
【0066】
治療剤および/または診断剤をカプセル化するための他の方法には、いわゆる「遠隔搭載」または「能動的搭載」が含まれ、その際、予備成形したリポソームの外部と内部間の勾配、例えば、pH勾配または塩勾配に基づいて、治療または診断剤を勾配に従ってリポソーム中に輸送する(参照、例えば、Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216;Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272;Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345)。
【0067】
ほとんどの能動的および受動的な搭載手順では、溶媒中に治療および/または診断化合物を可溶化する必要がある。化合物、特に疎水性化合物、または高分子量化合物、例えば、ペプチドもしくはタンパク質などでは、水性溶媒中への可溶化は困難であることを証明でき、これは搭載を非効率的に、すなわち、特に、高価な化合物を不経済なものにしかねない。従って、そのような場合には水性溶媒を使用するのではなく、従来技術では有機溶媒が使用されてきた。しかし、有機溶媒を含むリポソームまたはリポソーム組成物の投与は、有機溶媒が生体適合性に問題があり、従って投与前にそれらを除去しなくてはならず実施不可能であることが多い。しかし、本発明者らは、今回、以下を含む方法によって本発明のリポソームを効率よく生成できることを発見した。
a)CHを上記したモル範囲であり、かつ好ましい範囲で、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を上記したモル範囲であり、かつ好ましい範囲で含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、ならびに
b)懸濁液を均質化するステップ。
【0068】
好ましい実施形態では、脂質、および/または治療剤、および/または診断剤は、本質的に、液体媒体に溶解しない。治療剤および/または診断剤は、本質的に溶解しないのが好ましい。液体媒体は、H20、塩水溶液、および/または緩衝液が好ましい。好ましい脂質、および治療剤、および/または診断剤は上記した範囲であり、好ましい範囲で使用する。
【0069】
それ以上の受動的および能動的搭載技術は、当技術分野で周知であり、それらは全て、それだけには限らないが、本発明のリポソームを生成するために当業者が使用することができる。所与の任意の治療および/または診断化合物に最も効率的な搭載方法は、十分に確立された手順により常法の実験によって決定することができる。通常調整する変数は、pH、温度、塩の型、塩濃度、緩衝液の型などである。
【0070】
好ましい実施形態では、治療剤および/または診断剤は、遠隔搭載によってリポソーム中に搭載する。この方法によって搭載しようとする物質の損失が非常に少なくなるからである。好ましい実施形態では、搭載にはpH勾配を使用する。搭載しようとする物質に応じて、通常、リポソーム内部をその外部に対して酸性化する。内部をpH1〜6にした後、治療剤および/または診断剤を搭載するのが好ましい。
【0071】
従って、本発明の別の態様は、上記方法の1つ、特に、CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、ならびに懸濁液を均質化するステップの方法によって生成されたリポソームである。
【0072】
本発明の別の態様は、アジュバント、添加剤、緩衝液および補助物質からなる群から選択される物質を含む液体媒体に本発明のリポソームを含むリポソーム組成物である。液体媒体は、PBSやリンゲル液などの生体適合性水性媒体であることが好ましい。液体媒体は、少なくとも一種のアジュバントを含むことが好ましい。
【0073】
この意味において、用語、アジュバントは上記の意味と同じ意味である。本発明のリポソーム組成物に含めることができる好ましいアジュバントは、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、より高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチドからなる群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができる特定の好ましいアジュバントは、非メチル化DNA、特に、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN)および合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys群から選択される。
【0074】
リポソーム組成物中に含まれるリポソームは、抗原、特に腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己抗原、またはアレルゲンを含むのが好ましい。本発明のリポソーム組成物の一実施形態では、リポソームは少なくとも一種の抗原を含み、リポソーム組成物は少なくとも一種のアジュバントを含む。このアジュバントをリポソーム中に含めることができ、かつ/またはリポソームが含まれている液体媒体内に含めることができる。好ましくは、少なくとも一種のアジュバントは、リポソームとリポソームが含まれている液体媒体双方に含める。リポソーム内外のアジュバントは、相乗的に作用して免疫刺激を増強するのがさらに好ましい。そのような相乗的作用を実現するために、アジュバントが異なる分子経路、特に前記した異なるTLR経路に作用するのが好ましい。さらに、リポソーム組成物は、リポソームの外側に、アジュバント活性を有するサイトカイン、例えば、GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、またはTNF‐αなどを含むのが好ましい。GM‐CSFの使用が特に好ましく、すなわち、リポソーム外側にGM‐CSFを含み、リポソーム内側に別のアジュバント、好ましくは上記の好ましいアジュバントの一つ含むリポソーム組成物である。
【0075】
本発明のリポソームおよび/または本発明のリポソーム組成物は、安定剤を含むのが好ましく、安定剤は、α‐トコフェロールまたは炭水化物、特にグルコース、ソルビトール、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、セルビオース、ラフィノース、マルトトリオース、またはデキストランからなる群から選択される。
【0076】
本発明のリポソームおよび/またはリポソーム組成物は、疾患を治療し、または予防するために使用される免疫化/ワクチン接種法として、治療剤および/診断剤をある種の細胞型に、特に造血細胞系細胞に送達するための有能な送達媒体であることが示され、従って本発明の別の態様は、増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、特に自己免疫疾患およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するための本発明のリポソームまたは本発明のリポソーム組成物の使用である。
【0077】
リポソームまたはリポソーム組成物は、筋肉内、静脈内、鼻腔内、腹腔内、皮内もしくは皮下、および結節内施用を含む様々な方式によって投与することができる。化合物を疾患部位に直接注射することもできる。リポソームは、他のワクチン接種/免疫化法で通常使用されている量および間隔で投与し、または薬物送達の場合にはフリーの薬物で通常使用されている服用量で投与する。
【0078】
本発明者らが実施した実験では、このリポソームおよびリポソーム組成物は、腫瘍の治療および/または予防に優れた効力を有することが示され、従って好ましい実施形態では、治療または予防しようとする増殖性疾患は、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される。
【0079】
本発明のリポソームおよび組成物の好ましい使用では、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に、一種もしくは複数のアジュバント、およびまたはサイトカインを投与する。ここで使用する用語、アジュバントは既に定義されている。好ましいアジュバントは、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、より高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチドからなるアジュバントの群から選択される。本発明のリポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与中、または投与後に投与することができる特定の好ましいアジュバントは、アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、またはTNF‐αである。
【0080】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施にあたって首尾よく機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施に好ましい方式とみなし得ることを当業者には理解されたい。しかし、本開示に照らして、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨と範囲を逸脱することなしに、開示した具体的実施形態では多くの変化を行うことができることを当業者は理解すべきものとする。引用した参照文献は全て、参照により本明細書に組み込む。
【実施例1】
【0081】
AVE3およびAVE5を抗原提示細胞へ結合
様々な型の抗原提示細胞への結合について、様々なリポソーム製剤:AVE3(コレステロール、DLPE、DOPSはモル比で1:1:1)、AVE5(コレステロール、DLPE、DOPGはモル比で1:1:1)、またはAVE14(コレステロール、DLPE、EPCモル比で1:1:1)を分析した。脂質は全て、Avanti Polar Lipids(米国)、Calbiochem(米国)、またはLipoid GmbH(ドイツ国)から購入し、さらに精製することなく使用した。リポソームは、乾燥脂質フィルムから含水によって調製した。この目的のために、脂質をクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール(1:1)に溶解し、示した割合で混合した。結合を調査するために、0.3mоl%のローダミン標識DPPEを加えた。ロータリーエバポレーターを使用して脂質を乾燥し、残留溶媒を高真空除去した。次いで、脂質フィルムに10mmоl/lのヘペスpH7.4を含水させて最終脂質濃度10μmоl/mlにした。リポソームを50nm膜を通して21回押し出した。調製したリポソームは全て、平均径が80〜110nmであった。平均ゼータ電位は、AVE3では‐67mV、AVE5では‐43mV、およびAVE14では‐12mVであった。
【0082】
未処置C57BL/6マウスの大腿骨から採取した骨髄細胞からマウス樹状細胞を発生させ、mGM‐CSFの存在下で6日間培養した。これらの骨髄由来樹状細胞(bmDC)を無血清培地または10%のFCSを含む培地中、0.2〜1.3mmоl/lのローダミン標識リポソーム製剤と共に、8℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで2度洗浄し、CD11c‐FITCに対するモノクローナル抗体を用いてDCを対比染色剤で着色し、フローサイトメトリーによって分析した。結果(図1)として、負荷電PSもしくはPG含有リポソーム(AVE3およびAVE5)は、マウスbmDCに強く結合するが、AVE14リポソームは結合しないことが示された。これらの実験では、10%のFCSの存在下でインキュベートされたリポソームでは、平均蛍光強度(MFI)分析によって定量されたように強い結合が観察された(図2)。さらに、37℃で細胞をインキュベートすることによって蛍光強度は改善された(図2)。
【0083】
それ以上の研究では、マウス脾臓由来抗原提示細胞(APC)、T細胞、またはB細胞への結合を分析した。抗MHC II抗体での染色によってAPC、抗CD3抗体での染色によってT細胞、抗CD45R/B220での染色によってB細胞が同定された。
【0084】
この研究によって、AVE3またはAVE5はAPCおよびB細胞へ強力に結合することが実証されたが、AVE14はほんのわずかにしか結合しないことが観察された(図4)。
【0085】
1週間末梢血単核細胞を培養して得られたヒトマクロファージまたは樹状細胞を用いて、AVE3と、IL‐4およびGM‐CSFの強力な結合も観察された(図4)。それに反して、35mоl%のコレステロール、32.1mоl%のPOPC、14.7mоl%のDLPE、18.2mоl%の乳SMからなるPCリポソームは、これらの細胞に非常に弱い結合しか示さなかった。
【0086】
免疫化に使用したリポソームが皮膚ランゲルハンス細胞(LC)に結合するかどうかさらに分析した。これらの細胞が、皮内ワクチン接種に続いて抗原を捕獲する最初の細胞だからである。主要なLCをマウス皮膚から単離し、記載の通りリポソームと共にインキュベートした。約60%のMHCクラスII+LCがAVE3リポソームと結合した(図5A、B)。さらに、先に記載した通り、マウスCD11c+bmDCもAVE3リポソームに結合した。さらに、DCのCD11c+集団中のうち、約54%がAVE3リポソームに結合するが、対照リポソームAVE14には結合しなかった(図5C、D)。FACS分析に並行して、AVEリポソームとbmDCの結合も蛍光顕微鏡によって分析した(図5)。bmDCでは強力な細胞内蛍光が観察され、DCへの結合後、リポソームが内部移行するようになることが示された。
【0087】
これらの実験は、AVE3だけでなくAVE5も、様々な免疫系抗原提示細胞に対して強力な結合活性を有することを実証している。この結合は、血清タンパク質の存在下37℃でも観察され、これらのリポソームが、生理学的条件下でこれらの細胞への結合活性を示すことを証明している。
【実施例2】
【0088】
ホスファチジルセリン、コレステロール、およびホスファチジルエタノールアミン濃度が抗原提示細胞への結合に及ぼす影響
第一の実験では、マウス脾臓から単離した樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なホスファチジルセリン(DOPS)の濃度の影響を分析した。他の脂質濃度を一定に維持するために、検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE31(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、33.3mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE31‐10PS(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、10mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE31‐50PS(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、50mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。抗CD11c抗体を用いた対比染色によってDC、抗CD3抗体を用いてT細胞、および抗CD45R抗体を用いてB細胞を同定した。全てのリポソーム(200nmоlの脂質と共にインキュベートした5×105個の脾細胞)で、DCだけでなくB細胞に対する強力な結合が観察されたが、T細胞とは弱い結合しか観察されなかった。DCへの強力な結合を示す、PS濃度依存性結合は、33.3および50mоl%(約80〜90%のCD11c陽性細胞が結合)で観察されたが、10mоl%ではPS結合は約65%に低減された(図6)。同様の結合特性は、培地中、10%のFCSが存在する際にも観察された。これらの実験によって、DCや、B細胞などの他の抗原提示細胞に対する最も強力な結合がPS濃度20〜50mоl%で観察されることが明瞭に実証された。この結合挙動は、10%のFCSの存在下でも同様に観察された。
【0089】
第2の実験では、樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なコレステロール濃度の影響を分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE32(33.3mоl%のコレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE32‐10Chol(10mоl%、コレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE32‐50Chol(50mоl%、コレステロール、25mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。上記した抗体染色によってDC、B細胞、およびT細胞が同定された。再度、DCおよびB細胞への強力な結合が観察された。結合はコレステロール濃度に依存しており、最も強力な結合は50mоl%のコレステロールで観察された(図7)。
【0090】
第3の実験では、樹状細胞、B細胞、およびT細胞への結合に及ぼす様々なホスファチジルエタノールアミン濃度の影響を分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを生成した:AVE33‐0PE(25mоl%のコレステロール、25mоl%のDOPS、50mоl%のPOPC)、AVE33‐10PE(25mоl%のコレステロール、10mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、40mоl%のPOPC)、AVE33‐20PE(25mоl%のコレステロール、20mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、30mоl%のPOPC)、AVE33‐33PE(25mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS、16.7mоl%のPOPC)、AVE33‐50PE(25mоl%のコレステロール、50mоl%のDLPE、25mоl%のDOPS)。マウス脾細胞を4〜8℃でリポソームと共にインキュベートした。上記した抗体染色によってDC、B細胞、およびT細胞が同定された。PE濃度を上昇させると、DCへのリポソームの結合が増大し、B細胞およびT細胞への結合もある程度増えた(図8)。この知見は、PE濃度を上昇させると、リポソームの結合および取込みが改善されることを実証している。
【0091】
最終実験では、DCへ結合させるための、PS、PG、PE、Chol、およびPCの様々な組成からなるリポソームを分析した。検出用に0.3mоl%のローダミン標識PEを添加して、以下のリポソームを試験した:AVE3(DOPS、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE5(DOPG、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE14(EPC、DLPE、Cholモル比で1:1:1)、AVE41(DOPS、DOPG、Cholモル比で1:1:1)、AVE43(DOPS、DPPC、Cholモル比で1:1:1)、およびAVE44(DOPG、DPPC、Cholモル比で1:1:1)。組成を下表1に要約する。
【0092】
【表1】
【0093】
10%のFCSの存在下または非存在下、培地中、4℃または37℃でマウス脾細胞をリポソームと共にインキュベートした。上記したように抗体染色によってDCを同定した。先に観察されたように(実施例1)、AVE3およびAVE5は、樹状細胞に強く結合するが、AVE14は非常に弱い結合しか示さなかった。AVE3のPEをPCに(=AVE43)またはAVE5のPEをPCに(=AVE44)変えると、DCへの結合が劇的に減少したが、これは平均蛍光強度およびDCへの結合した細胞の割合によって判明した(図9)。37℃でリポソームを分析した場合、この差は最も強く、DCによるリポソームの取込みにPEがなんらかの作用を及ぼすことを示していた。この知見は、AVE3またはAVE5中のPEの存在は、樹状細胞への結合、および同細胞による取込みに有益な効果があることを明瞭に実証している。この知見はまた、PSまたはPG非存在下のPE(=AVE14)は、リポソームがDCへ結合するには十分でないことも示している。しかし、驚くべきことに、等モル量のPS、PG、およびコレステロールからなるリポソーム(AVE41)は、AVE3またはAVE5の結合活性と同様の結合活性を示すことが判明した(図9)。この知見は、コレステロールと組み合せて2種の負荷電リン脂質(PSおよびPG)からなるリポソームは、コレステロール、PE、およびPSもしくはPGのどちらかからなるリポソームの代用とすることができることを示している。
【実施例3】
【0094】
注射部位および流入領域リンパ節での持続性リポソーム沈着
異なるリポソーム製剤の生体内での利用能および安定性を評価するために、ローダミン標識AVE3またはAVE14リポソーム(実施例1を参照)をC57BL/6マウス脇腹または後肢足蹠に皮内注射した。異なる時点で、注射部位から得た皮膚および流入領域リンパ節を包埋し凍結切片を調製した(図l0A)。AVE3の注射後7日目まで皮膚内に強力な蛍光シグナルが観察されたのに対して、AVE14リポソームの場合には有意な蛍光を検出することができなかった(図l0A)。さらに、流入領域リンパ節では、AVE3の場合にのみ注射後7日目まで蛍光を検出することができたのに対して、中性リポソーム(AVE14)は注射から16時間後、弱い蛍光しか検出することができなかった。これらの知見は、AVE3によって注射部位および流入領域リンパ節で持続性沈着がもたらされることを示している。
【実施例4】
【0095】
樹状細胞によるカプセル化化合物の取込みおよび流入領域リンパ節での局在化
さらに、リポソーム封入化分子が、DC/LCによっても取り込まれ、リンパ系に輸送されることを実証するために、Cy3標識非CpGオリゴヌクレオチド(ODN)をAVE3リポソーム中にカプセル化した(実施例6を参照)。DC/LCに働くCpG ODN媒介活性化作用を排除し、それによってそれら遊走に働く作用を排除するために非CpG ODNをカプセル化した。脇腹または後肢足蹠に皮内注射してから24時間後、リンパ節(LN)を採取し、単一細胞懸濁液を調製し、FACSによって分析した。後肢足蹠に注射したマウスの非常に多くのDC(14.7%)が、リポソーム封入化Cy3‐ODNを取り込んだが、脇腹に皮内注射したマウスのDCは数個しか取り込まなかった(図10B、C)。
【実施例5】
【0096】
抗原ペプチドをAVE3およびAVE5へカプセル化
抗原ペプチドTRP‐2(SVYDFFVWL)をAVE3またはAVE5中にカプセル化した(組成については実施例1を参照)。脂質を29.4mgのTRP‐2とモル比で1:20で混合し、50mlのDuranガラス製ボトルに充填した。50gのヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)を加え、Ultra−Turrax T8分散装置(IKAWerke, Staufen、ドイツ国)によって、混合物を55℃の温浴中約25000rpmで30分間攪拌した。Ultra‐Turraxは、S8N‐8G分散エレメントを具備していた。その間、ボトルをボルテックスで数回攪拌して、ボトルの隅で沈殿が生じるのを回避した。均質な懸濁液を得た後、蒸発した水分を交換し、調製物をEmulsiflex C‐5 ホモジナイザ(Avestin Inc., Ottawa、カナダ国)に移した。均質化ノズル前50.000〜150.000kPaで以下の均質化を30分間実施したが、ホモジナイザ圧力は300kPaであった。このステップの最後で、フィルタユニットを挿入し、孔径100nmのポリカーボネート膜を用いて5分間リポソーム分散体をろ過した後、滅菌ろ過を行った。1日貯蔵した後、粒径を光子相関分光法によって測定し、リポソーム中のTRP‐2の量をHPLC分析によって測定した。リポソーム径は130〜180nmであった。カプセル化効率は、230〜300μg/ml(39〜51%)の範囲であった。
【0097】
10、20、または40mоl%のホスファチジルセリンを含む、様々なAVE3ベース製剤を並行比較することによって、PS濃度を上昇させるとカプセル化効率が改善することが実証された。以下の製剤を試験した:AVE3‐10PS(33.3mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、10mоl%のDOPS、23.3mоl%のPOPC)、AVE3‐20PS(33.3mоl%のコレステロール、33.3mоl%のDLPE、20mоl%のDOPS、13.3mоl%のPOPC)、AVE3‐40PS(33.3mоl%のコレステロール、26.7mоl%のDLPE、40mоl%のDOPS)、およびAVE14(実施例1を参照)。カプセル化効率は、AVE3‐10PSで28%、AVE3‐20PSで34%、AVE3‐40PSで43%、およびAVE14で13%であった。リポソーム径は、100〜120nmの範囲であった。この知見は、PSは抗原ペプチドのカプセル化に影響し、PS濃度が高いほどカプセル化が改善されることを実証している。
【実施例6】
【0098】
オリゴヌクレオチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(40μmоl/ml)(AVE3の脂質組成については実施例1を参照)を30mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで15分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをさらに10mbarの真空チャンバで乾燥した。その後、10mg/mlのオリゴヌクレオチドCpG‐1826または非CpG‐1982(ホスホロチオ酸(PTO)およびリン酸ジエステル(PDO)としてCpG‐1826、5'‐TCCATGACGTTCCTGACGTT‐3';非CpG‐1982‐PTO、5'‐TCCAGGACTTCTCTCAGGT‐3')を含む等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)1mlに数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。次いで、分散体を孔径50nmのポリカーボネート膜を通して21回押し出した。フリーのオリゴヌクレオチドを除去するために、リポソーム懸濁液をセファロースCL‐4Bカラム(Pharmacia、スウェーデン国)によるサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。採取したリポソーム画分をカットオフ30000MWのVivaspin濃縮装置(Vivascience、ドイツ国)を使用し、限外濾過濃縮した。最後に、小胞を200nmの滅菌フィルタ膜でろ過した。水力学的直径をZetasizer 3000HS(Malvern, Herrenberg、ドイツ国)を使用し測定した。カプセル化したオリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCによって定量した。リポソーム径は100〜125nmであった。カプセル化効率は4〜7%の範囲であった。ホスホロチオ酸またはリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドでは差は観察されず、ホスホロチオ酸およびリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドはAVE3リポソームにカプセル化できることが証明された。
【実施例7】
【0099】
Pam3Cysおよび抗原ペプチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(実施例1を参照)およびPam3Cys(2.5mоl%)、ならびにDMSOに溶解させた抗原ペプチドを10mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで60分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをクロロホルム中に分解し、再度先に記載した通り乾燥した。滑らかで均質なフィルムを得られるまでこのステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤を滅菌ろ過した。
【実施例8】
【0100】
モノホスホリル脂質A(MPLA)および抗原ペプチドをAVE3へカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(実施例1を参照)およびMPLA(5%もしくは10%(w/w))、ならびにDMSOに溶解させた抗原ペプチドを10mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで60分間乾燥させた。得られた脂質フィルムをクロロホルム中に分解し、再度先に記載した通り乾燥した。滑らかで均質なフィルムが得られるまでこのステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmоl/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤を滅菌ろ過した。
【実施例9】
【0101】
AVE3カプセル化CpGPTOオリゴヌクレオチドがB細胞増殖を誘発
CpGオリゴヌクレオチドは、B細胞増殖を誘発すると記載されてきた。フリーのまたはカプセル化CpGホスホロチオ酸オリゴヌクレオチド(CpG‐PTO)(実施例6を参照)がマウスB細胞の増殖に及ぼす作用(図11A)を比較した。AVE3カプセル化CpGは、未カプセル化CpG‐PTOと同じ活性を示すことが判明した(図10)。B細胞増殖の誘発は、施用されたODNの濃度に依存し、強力なB細胞増殖は50〜200nmоl/lのカプセル化ODNで観察された。同様の値は、異なる濃度でカプセル化されたCpG‐ODN(4.6μg/μmоl脂質〜93.5μg/μmоl脂質)でも得られた。フリーのまたはカプセル化した非CpG‐ODNを使用した際には、B細胞増殖の誘発は観察されなかった(図11B)。この知見は、AVE3カプセル化CpG‐ODNが生物学的に活性であることを実証している。
【実施例10】
【0102】
AVE3がCpG‐PDOオリゴヌクレオチドを分解から保護
濃度5〜200nmоl/lのODNを使用し、フリーのまたはAVE3カプセル化形のB細胞増殖の誘発について、CpGホスホロチオ酸(CpG‐PTO)またはCpGリン酸ジエステル(CpG‐PDO)オリゴヌクレオチド(実施例6を参照)を分析した。フリーのおよびカプセル化CpG‐PTOによって、濃度に依存したB細胞増殖の誘発がもたらされた(図12)。誘発は、同様にAVE3カプセル化CpG‐PDOでも観察された。低濃度(5〜10nmоl/l)では、カプセル化CpG‐PTOよりもカプセル化CpG‐PDOで強力な誘発が観察された。高い濃度(50〜200nmоl/l)では、誘発は、カプセル化CpG‐PTOの方が高かった。最も興味深いことに、フリーのCpG‐PDOは、極めて可能性が高い急速分解のために、これらの濃度では全く増殖を誘発しなかった。従って、AVE3リポソームは、リン酸ジエステルオリゴヌクレオチドなどの感受性化合物が分解されないように保護することができ、活性形での分子の送達を可能にする。
【実施例11】
【0103】
リポソームワクチン接種後に特異的かつ高結合性T細胞免疫応答の誘発
抗原モデルペプチドとしてTRP‐2ペプチド(SVYDFFVWL)を使用し、マウスで免疫応答の発生に及ぼす様々なAVE3ベース製剤の作用を分析した。このペプチドは、ヒトHLA‐A*0201によって提示されたが、マウスMHCクラスI分子H‐2Kbおよび同質遺伝子的B16黒色腫細胞系によっても提示された。この目的のために、後肢足蹠への一回の注射によってマウス(C57BL/6)を免疫化した。4日後、マウスを屠殺し、流入領域リンパ節を取り出し、IL‐2の存在下で6、7日間リンパ節の細胞を培養した。次いで、抗原ペプチド(TRP‐2)または無関係なペプチド(OVAペプチド、SIINFEKL)で細胞を刺激した。16時間後、サイトカイン分泌アッセイによりIFNγの産生についてCD8陽性細胞を分析した。全ての実験で、ヨウ化プロピジウムを用いた染色によって死細胞を除外した。
【0104】
初期実験では、1頭につき50〜100μgの濃度のフリーのTRP‐2によって、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発がもたらされたことが判明した。未カプセル化CpGでは1頭につき2.5〜5nmоlの濃度で強力な免疫応答が得られた。
【0105】
100μgの未カプセル化TRP‐2の存在下で、様々な濃度のAVE3カプセル化CpG‐PTOの作用(図13)を分析した。この実験によって、1.3nmоlのリポソームCpG‐ODN濃度付近でIFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された。濃度を高くしても免疫応答は改善せず、少量のカプセル化CpG‐PTOでもT細胞応答の誘発には十分なことが示された。
【0106】
5nmоlのフリーのCpG‐PTOの存在下でのAVE3カプセル化TRP‐2の滴定では、1頭につき10〜20μgのペプチドで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された(図14)。10μgのAVE3カプセル化TRP‐2の存在下でのフリーのCpG‐PTOの滴定では、1頭につき5〜10nmоlのCpG‐PTOで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が示された(図15)。
【0107】
別の実験では、リポソームTRP‐2およびリポソームCpG‐PTOの作用(図16)を比較した。1頭につき10μgのAVE3カプセル化TRP‐2を使用し、1頭につき0.6〜2.5nmоlのAVE3カプセル化CpG‐PTOで、IFNγ産生CD8+細胞の強力な誘発が見出された。1頭につき1.3nmоlのAVE3カプセル化CpG‐PTOを施用し、10〜20μgのAVE3カプセル化TRP‐2で、AVE3カプセル化CpG‐PTOの強力な誘発(図17)が観察された。未カプセル化TRP‐2およびCpG‐PTOの使用と比較して、IFNγ産生CD8+細胞の同じ誘発は、100μgのフリーのTRP‐2および5nmоlのCpG‐PTOを使用した場合にのみ観察された。従って、これらの化合物をAVE3へカプセル化することによって、抗原ペプチドおよびCpG‐PTOの量を1/4〜1/10倍に削減できるようになる(図18)。
【0108】
TRP‐2のAVE3へのカプセル化またはAVE5へのカプセル化を比較することによって、1頭につき10μgの施用ペプチド濃度では、AVE5よりもAVE3をワクチン接種した後に、IFNγ産生CD8+細胞のはるかに強力な誘発が観察されたことが示され、これにはアジュバントとしてCpG‐PTOを同時施用する必要があった。CpG‐PTO単独またはアジュバントを用いないリポソームでは、有意なレベルのIFNγ産生CD8+細胞(図19)はもたらされなかった。
【0109】
別の実験組では、リポソームワクチン接種後の細胞障害性Tリンパ球の抗原特異性(図20)を分析した。上記のように、AVE3カプセル化TRP‐2またはフリーのTRP‐2およびCpG‐PTOによってマウスを免疫化した。次いで、H‐2Kbに対してTRP‐2を提示することが判明しているマウス黒色腫細胞系B16.F1、潜在的なNK細胞の活性を排除するために、TRP‐2をパルスしたEL4細胞、OVAペプチドをパルスしたEL4細胞、未パルスのEL4細胞、およびYAC‐1細胞を標的として使用し、リンパ節から調製した細胞の細胞毒性を試験した。10μgのリポソームTRP‐2および1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOによる免疫化後、細胞比を標的とした様々なエフェクタで、TRP‐2提示細胞(B16.F1、およびTRP‐2をパルスしたEL4)の特異的CTL媒介溶解を実証した。YAC‐1細胞は死滅しないことが観察され、CTLは抗原特異的を示すが、NK様細胞障害活性は示さないことが示唆された。上記のように、フリーのTRP‐2の10倍を超える量、およびCpG‐PTOの4倍を超える量が、同じCTL応答を誘発するのに必要であった。
【0110】
CTLは、DCの成熟を誘発する因子を産生することができ、従って特に、それらが高頻度に存在する場合、それ自体で同時刺激的環境を作出すると思われる。従って、検出のために、TRP‐2またはOVA対照ペプチドをパルスしたH‐2Kb二量体を使用した免疫化から0〜4日後の、血中でのTRP‐2特異的CD8+T細胞の頻度(図21)を測定した。未処置マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水、10μgのリポソームTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水、10μgのTRP‐2リポソームと1.3nmоlのCpG‐PTOリポソームでワクチン接種し、または未処理のまま残した。ワクチン接種直後(0日目)、またはワクチン接種後1、2、および4日目に特異的T細胞の頻度を測定した。生理食塩水中のみならずリポソームTRP‐2とCpGを含む生理食塩水中でのワクチンでも有意な数の特異的CTLを誘発することができなかった。リポソームにカプセル化したTRP‐2およびCpGでのワクチン接種でのみ、かなりの数の特異的T細胞集団が得られた(全CD8+集団中に5%のTRP‐2特異的CD8+T細胞)。
【0111】
最後に、リポソームTRP‐2またはフリーのTRP‐2のそれぞれで免疫化した動物のTRP‐2特異的CTLの結合力(図21)を比較した。数度の免疫化後、IFNγ+産生CD8+T細胞の頻度は、脾細胞中では上昇しLN中では減少した(図22A)。これは、活性化したT細胞はLNを離れ血管および脾臓に侵入するということを反映しているかもしれない。興味深いことに、リポソームTRP‐2で一回免疫化後、フリーのTRP‐2で免疫化したマウスと比較して、著しく多くのIFNγ+T細胞がLN中で検出された(図22B)。IFNγ分泌アッセイと並行して、ナイロン‐ウールカラム濃縮脾細胞を高用量のTRP‐2(10−6mоl/l)および低用量のTRP‐2(10−9mоl/l)で5日間培養し、ATPlite(商標)‐Mシステムを使用して細胞増殖を定量した。低用量TRP‐2(10−9mоl/l)に対するその増殖によって評価されたように、リポソームTRP‐2による一回免疫化によって、数個の高結合性T細胞しか生じなかった(図22C)。しかし、免疫化を繰り返すと、低用量TRP‐2にだけ応答し高用量TRP‐2には応答しないで、高結合性T細胞に向かって変化した。リポソームTRP‐2対フリーのTRP‐2を直接比較すると、2回の免疫化後、フリーフォームは、低高結合性T細胞および高結合性T細胞からなる脾細胞のポリクローナル応答をより多く生じることが分かる。それに反して、リポソームTRP‐2による免疫化では、ほんの少数の低結合性T細胞しか生じない。増殖特異性を探し求めて、H‐2Kb結合OVAペプチドSIINFEKLを使用した。これは、高結合性T細胞でクロスプライミングによって部分的増殖を誘発した。未処理動物の脾細胞を対照として使用し、背景レベルでの増殖を証明した。
【0112】
これらの実験は、特異的かつ高結合性T細胞は、AVE3カプセル化抗原ペプチドによる免疫化後に生じることを実証している。強力な免疫応答の誘発には、未カプセル化化合物と比較して、かなり低い濃度のカプセル化ペプチドおよびアジュバントが必要である。
【実施例12】
【0113】
AVE3カプセル化TRP‐2ペプチドの抗腫瘍効果
B16.F1マウス黒色腫細胞の皮下腫瘍モデルで、予防的設定を使用し抗腫瘍効果を分析した(図23)。一週間空けて2度、マウス(C57BL/6)は後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSS中によりマウスを皮下接種した。高用量(100μgのTRP‐2+5nmоlのCpG‐PTO)および低用量(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)のワクチンを含む生理食塩水による免疫化後腫瘍増殖と、低用量のリポソームワクチン(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)による免疫化後腫瘍増殖を比較した。ワクチンを含む生理食塩水によって免疫化したマウスの腫瘤は、未処理マウスの腫瘍に類似し、B16接種から17日後にリポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤よりも約14倍大きかった(図23A)。B16黒色腫細胞の移植後生存期間(図23B)も調査した。ワクチンを含む生理食塩水では有意な生存率の上昇は実現できなかった(平均生存時間:未処理17日、高用量生理食塩水19日、低用量生理食塩水21日)。リポソームワクチンによってマウスを免疫化した場合、平均生存時間は著しく長期化されて28日間になった(n=5、p<0.0172対未処理)。リポソーム抗原およびアジュバントで処理した1頭のマウスは、完全に腫瘍を拒絶し、120日以上腫瘍がないまま過した。
【0114】
第2の実験では、治療設定でB16腫瘍細胞に対するワクチン接種(図24)も調査した。C57BL/6マウス(1群につき5頭)は、1×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを皮下接種した。4日後に、一週間空けてマウスを2度免疫化した。腫瘍増殖をモニターし、腫瘍が直径1.5cmになり、または潰瘍化した時にマウスを安楽死させた。低用量のリポソームワクチンによる免疫化後腫瘍増殖と、未処理マウスの腫瘍増殖を比較した。未処理マウスの腫瘤は、B16接種から17日後リポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤の約23倍であった(図24A)。B16黒色腫細胞の移植後生存期間(図24B)も調査した。生存率の有意な上昇は、リポソームワクチンによって実現することができた(平均生存時間:未処理20日、低リポソーム用量38日、n=10、p<0.0012)。さらに、2頭のマウスは完全に腫瘍を拒絶し、腫瘍がないまま180日間を越えて過ごし、攻撃から7週間以内に脱色素(白斑症)の徴候が示され、TRP2特異的T細胞応答を実証し、同様にメラニン細胞もTRP‐2を発現した。
【0115】
次に、予防的設定を使用し、B16.F1肺転移モデルで抗腫瘍効果(図25)を分析した。生体内での細胞障害性T細胞を準備刺激するために、マウス(1群につき10頭)は、一週間空けて2度後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、レシピエントC57BL/6マウスに2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを尾静脈注射によって接種した。腫瘍細胞接種後20日目に、マウスを殺し肺転移数を測定した。腫瘍攻撃から20日後、リポソームワクチン(10μgのTRP‐2+1.3nmоlのCpG‐PTO)により免疫化したマウスの平均肺転移数は7.7±0.98(平均±SEM)であったが未処理マウスでは50.7±4.33に達した(図25)。転移コロニー数は、リポソームワクチン接種後約90%減少し(図25)、生じた免疫応答がB16の転移を抑制したことを示した。さらに、リポソームのアジュバントのみ(1.3nmоlのCpG‐PTO)によりワクチン接種したマウスは、腫瘍攻撃に対して保護されなかった(平均44.75±10.08)。従って、抗腫瘍効果がCpGそれ自体に対する作用のためである場合を排除することができた。
【0116】
要約すると、予防的設定および治療的設定での生体内実験は、(i)高用量の生理食塩水ワクチンは腫瘍からの保護を誘発しない、(ii)低用量の本発明者らのリポソームワクチンは致死性皮内または静脈内腫瘍攻撃からマウスを保護する、(iii)観察された作用はCpG‐PTOの作用ではないことを実証した。
【実施例13】
【0117】
ワクチン接種のアジュバントとしてのCpGリン酸ジエステルオリゴヌクレオチドのAVE3媒介物
実施例10に示すように、AVE3は、血漿成分による分解から、リン酸ジエステルオリゴヌクレオチドなどの感受性化合物を保護することができる。未カプセル化CpG‐PDO ODNではなく、リポソームCpG‐PDO ODNは、IFNγ産生CD8+細胞の産生によって定量されるように、マウスで免疫応答を誘発することができた(図26)。高免疫賦活が得られるリポソームCpG‐PDOの最適の濃度を判定するために、1頭につき10μgのAVE3カプセル化TRP‐2および異なる量のCpG‐PDOによるワクチン接種後、用量応答分析および活性化Tリンパ球中のIFNγ分泌の測定を実施した。1頭につき0.3〜1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO ODNは、同様の免疫応答を誘発する(図27)。さらに、リポソームにカプセル化したリン酸ジエステルおよびホスホロチオ酸CpG‐ODNの効力を比較した。この目的のために、用量応答分析を実施し、活性化Tリンパ球のIFNγ分泌を測定した。1頭につき0.3〜1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO ODNは、リポソームCpG‐PTOよりも高い免疫応答を誘発した(図28)。0.3nmоlのリポソームCpG‐PTOは、IFNγ産生CD8+細胞を生成しなかったので、これらのデータはCpG‐PDO ODNは、AVE3にカプセル化した場合、低濃度でCpG‐PTOよりも強力なアジュバントであることを示している。
【0118】
次いで、予防的設定を使用するB16.F1マウス黒色腫細胞の皮下腫瘍モデルでの抗腫瘍効果(図29)を分析した。一週間空けて2度、マウス(C57BL/6)の後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、マウスは2×105個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSを皮下接種した。1頭につき10μgのリポソームTRP‐2と組み合せて0.3nmоlのリポソームカプセル化リン酸ジエステルCpG ODNを含む低用量リポソームワクチンにより免疫化後、腫瘍増殖を分析した。未処理マウスの腫瘤は、B16接種から13日後、リポソームワクチンによって免疫化したマウスの腫瘤の約3.5倍大きかった。この知見は、カプセル化CpG‐PO ODNが抗腫瘍免疫応答を誘発するためのアジュバントとして役立ち得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】DCへのリポソーム製剤の結合を示す図である。様々な濃度のリポソームを分析した、骨髄由来マウス樹状細胞(bmDC)へのAVE3およびAVE5の結合、AVE14の非結合。8℃でインキュベーションを実施し、結合をCD11c陽性細胞への%相対結合として表した。
【図2】DCへのリポソーム製剤の結合を示す図である。10%のFCSの非存在または存在下、インキュベーション時間に依存した、4℃または37℃でのマウスbmDCへのAVE3およびAVE5の結合、AVE14の非結合。結合を平均蛍光強度(MFI)として示す。
【図3】APCおよびB細胞へのAVE3およびAVE5の結合を示す図である。マウスAPCおよびB細胞へのAVE3およびAVE5の結合、T細胞へのほんのわずかな結合。
【図4】ヒトマクロファージおよび樹状細胞へのAVE3の結合を示す図である。ヒトマクロファージおよび末梢血単核細胞由来樹状細胞へのAVE3の結合。ローダミン標識AVE3の結合をフローサイトメトリーによって分析した。陰性対照としてPCリポソーム(AVE14)を含めた。
【図5】ランゲルハンス細胞に結合するAVE3を示す図である。リポソームなしにインキュベートした細胞(A)と比較して、ローダミン標識AVE3は、マウス皮膚から単離したランゲルハンス細胞に強く結合する(B)。強力なAVE3の結合は、bmDCでも観察される(C)が、対照リポソームAVE14は、これらの細胞には結合しない(D)。顕微鏡によって可視化したbmDCとAVE3の結合および内部移行。下段左図のリンパ球は、いかなるAVE3結合も示さない。位相差顕微鏡(E)および蛍光顕微鏡(F)。
【図6】ホスファチジルセリン含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞への結合に対するホスファチジルセリン濃度の影響を評価した。培地中4〜8℃で結合を実施した。
【図7】コレステロール含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞へのリポソームの結合に対するコレステロール含有量の影響を評価した。培地中4〜8℃で結合を実施した。
【図8】ホスファチジルエタノールアミン含有量の影響を示す図である。DC、B細胞、およびT細胞へのリポソームの結合および内部移行に対するホスファチジルエタノールアミン(DLPE)含有量の影響を評価した。10%の血清を含め、または含めず、それぞれ、4℃および37℃で結合を実施した。ヨウ化プロピジウム染色(1μg/ml)によって死細胞を除外した。
【図9】DCへの結合に対する異なる脂質組成物の影響を示す図である。10%のFCSの存在下または非存在下、培地中で4℃または37℃で実施した結合を評価した。この実験は、DCへの結合に対する、等モル量のPEおよびコレステロールと組み合せた、PSまたはPGの有益な効果を実証する。さらに、PS、PG、およびコレステロールからなるリポソーム、すなわち、2種の負荷電脂質を含むリポソームは、一種の負荷電リン脂質(PSまたはPG)、PE、およびコレステロールからなるリポソームと同様の結合活性を示す。(A)および(C)4℃でのインキュベーション、(B)および(D)37℃でのインキュベーション、(A)および(B)DCへの結合の平均蛍光強度、(C)および(D)細胞結合リポソームのパーセント。
【図10】リポソーム沈着を示す図である。(A)注射部位での持続的なリポソームの沈着。注射から7日後、ローダミン標識AVE3では注射部位(皮膚)に強力な蓄積が検出できたが、流入領域リンパ節でも検出された。それに反して、AVE14は、これらの臓器で蓄積を示さなかった。FACS分析によって示されたように、脇腹に皮内注射されたマウス(C)のリンパ節から得たDCと比較して、後肢足蹠に注入されたマウス(B)では、リポソームに封入されたODNは、DC(MHC‐II陽性細胞)によって取り込まれ、流入領域リンパ節に輸送された。
【図11−1】B細胞増殖の誘発を示す図である。(A)AVE3にカプセル化されたCpG‐PTOオリゴヌクレオチドは、フリーのCpG‐PTOによる誘発に匹敵してB細胞増殖を誘発する。(B)非CpGオリゴヌクレオチドを用いた場合、効果は観察されず、B細胞増殖がCpGオリゴヌクレオチドによって特異的に媒介されたことが証明された。
【図11−2】B細胞増殖の誘発を示す図である。(A)AVE3にカプセル化されたCpG‐PTOオリゴヌクレオチドは、フリーのCpG‐PTOによる誘発に匹敵してB細胞増殖を誘発する。(B)非CpGオリゴヌクレオチドを用いた場合、効果は観察されず、B細胞増殖がCpGオリゴヌクレオチドによって特異的に媒介されたことが証明された。
【図12】CpG‐PTOおよびCpG‐PDOの生物活性の比較を示す図である。細胞をCFSEで標識した後、終濃度0〜0.2μmоl/lでODNを含む生理食塩水またはリポソームによって48時間刺激した。(黒色ダイヤモンド)CpG‐PTOを含む生理食塩水、(灰色ダイヤモンド)CpG‐PDOを含む生理食塩水、(黒色四角)リポソームCpG‐PTO、(灰色四角)リポソームCpG‐PDO。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図13】リポソームCpG‐PTOの滴定を示す図である。0.3〜10nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した100μgのTRP‐2によってマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図14】リポソームTRP‐2の滴定を示す図である。一週間間隔で2度AVE3/TRP2と5nmоlのCpG‐PTO(CpG)でマウスを免疫化した。免疫化に使用したTRP2の全量は1〜50μg/頭(2頭/群)であった。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、0.5%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。
【図15】CpG‐PTOを含む生理食塩水と10μgのリポソームTRP‐2の滴定を示す図である。0〜10nmоlのCpG‐PTO ODNと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞のパーセントを示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図16】リポソームCpG‐PTOの滴定を示す図である。0.3〜5nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μM)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞のパーセントを示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図17】リポソームTRP‐2およびCpGの滴定を示す図である。TRP‐2およびCpG ODNの濃度に依存する抗原特異的CD8+T細胞の誘発。BL6マウス後肢足蹠に、(A)様々な量のフリーのTRP‐2(□)またはリポソームカプセル化TRP‐2(■)を5nmоlのフリーのCpG ODNと共に注射し、あるいは(B)段階的用量のフリーのCpG ODN(□)またはリポソームカプセル化CpG ODN(■)を10μgのリポソームカプセル化TRP‐2と共に注射し、あるいはC 100μgのフリーの(フリーのTRP‐2)または10μgのリポソームカプセル化TRP‐2(リポソームTRP‐2)を1.3nmоlのリポソームカプセル化CpG ODNと共に注射し、4日後に流入領域LNからリンパ球を単離し、さらに6日間低用量のIL‐2(30U/ml)の存在下、試験管内で培養した。5μmоl/lのTRP‐2および対照ペプチドSIINFEKLでリンパ球を終夜刺激し、IFNγ捕獲アッセイを実施した。対照ペプチドSIINFEKLでは、IFNγ陽性細胞の割合は常に0.5%未満であった。2回の類似実験の1回から得た代表的なデータを示す。
【図18】抗原特異的CD8+T細胞の誘発を示す図である。1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO ODNと混合した2.5〜20μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。データは、TRP2(5μmоl/l)での再刺激から16時間後、CD8+集団中のIFNγ分泌T細胞の割合を示す。無関係なペプチド(Ova‐ペプチドSIINFEKL)で再刺激すると、1.0%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図19】IFNγ産生CD8+の誘発の比較を示す図である。AVE3またはAVE5にカプセル化した20μgのTRP‐2でワクチン接種後、フリーのCpG‐PTOの存在下または非存在下でIFNγ産生CD8+細胞の誘発を比較。ペプチドなしに、または対照Ova‐ペプチド(SIINFEKL)を用いて、終夜再評価すると、0.5%未満のIFNγ+細胞がもたらされた。各免疫化群につき2頭のマウスを使用した。
【図20】免疫化後のCTL誘発の比較を示す図である。マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む両生理食塩水(A)または10μgのTRP‐2と1.3nmоlのCpG‐PTOを含む両リポソーム(B)で免疫化した。
【図21】リポソームワクチン接種によって血中に特異的T細胞が高頻度でもたらされたことを示す図である。マウスは、100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(赤色)、10μgのリポソームTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(橙色)、10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOのいずれかによって免疫化し、または未処理のまま残した(青色)。投与量は、1頭ごとに注射した量である。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図22】リポソームカプセル化TRP‐2とCpG‐PTOによるワクチン接種を示す図である。リポソームカプセル化TRP‐2とCpG‐PTOによるワクチン接種によって高結合性T細胞が得られた。BL6マウスに10μgのリポソームTRP‐2または100μgのフリーのTRP‐2と5nmоlのフリーのCpG ODNとを1週間毎に3回までワクチン接種した。最後の免疫化から1週間後、脾臓(A)およびリンパ節(LN)(B)からリンパ球を単離し、記載した通りIFNγ捕獲アッセイを実施した。C.リポソームTRP‐2およびフリーのTRP‐2とCpG ODNでワクチン接種後のT細胞の結合力。最後の免疫化から1週間後、脾細胞をナイロン‐ウール濃縮し、5日間、試験管内で低用量のIL2(30U/ml)と共に、高用量TRP‐2(10−6mоl/l)もしくは低用量TRP‐2(10−9mоl/l)、または対照ペプチドSIINFEKL(10−6mоl/l)の存在下で培養した。ATP含有量を測定する発光アッセイベース検出系によって増殖を推定した。抗TCRと抗CD28mAbの存在下での脾細胞の増殖を100%に設定した。2回の類似実験の1回から得た代表的なデータを示す。
【図23】予防的設定において、(A)低用量のリポソームワクチン接種によって腫瘍増殖が防止され、(B)生存が延長されることを示す図である。マウスを100μgのTRP‐2と5nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(紺色、n=4)、10μgのTRP‐2と1.3nmоlのCpG‐PTOを含む生理食塩水(水色、n=4)、10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO(緑色、n=4)によって2度免疫化し、または未処理のまま残した(赤色、n=4)。マウスに2×105個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。腫瘍の大きさを9日目から測定した。
【図24】治療的設定における、(A)リポソームワクチン接種後の腫瘍拒絶、および(B)生存の延長を示す図である。1×105個のB16黒色腫細胞をマウスに皮下接種した後、マウスを10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpG‐PTOによって2度免疫化(緑色、n=10)し、または未処理のまま残した(赤色、n=10)。腫瘍の大きさを10日目から測定した。P<0.0012:低リポソーム用量対未処理)。
【図25】予防的設定での免疫化後の肺中B16黒色腫転移コロニー数を示す図である。10μgのリポソームTRP‐2と1.3nmоlのリポソームCpGPTO(免疫化、n=12)、1.3nmоlのリポソームCpG‐PTO(AVE3/CpG、n=8)によってマウスを2度免疫化し、または未処理のまま残した(未処理、n=7)。最後の免疫化から1週間後、マウスに尾静脈注射によりB16黒色腫細胞の致死注射を1回施した。肺のコロニーをカウントした。‐‐‐,各群の平均転移コロニー。有意差(スチューデントt検定)が見出された:免疫化対未処理、p<0.0001、免疫化対AVE3/CpG、p<0.0003。
【図26】CpG‐PDOのリポソームカプセル化によってアジュバントの効率が改善したことを示す図である。5nmоlのCpGを含む生理食塩水(生理食塩水)または1.3nmоlのリポソームCpG‐PDO(リポソーム)と混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図27】リポソームCpG‐PDOの滴定を示す図である。0.3〜2.5nmоlのリポソームCpG‐PDOと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図28】リポソームCpG‐PDOとリポソームCpG‐PTOの比較を示す図である。0.3nmоlもしくは1.3nmоlのリポソームCpG‐PDOまたはリポソームCpG‐PTOと混合した10μgのリポソームTRP‐2でマウスを免疫化した。(no)未処理、(TRP‐2)5μmоl/lのTRP‐2ペプチドにより試験管内で16時間再刺激、(OVA)5μmоl/lのOVAペプチドにより試験管内で16時間再刺激。ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【図29】低用量のリポソームワクチン接種が、腫瘍増殖を低減させることを示す図である。10μgのリポソームTRP‐2と0.3nmоlのリポソームCpG‐PDO(13nmоl/kg)(緑色、n=4)によってマウスを2度免疫化し、または未処理のまま残した(赤色、n=4)。マウスに2×105個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。8日目から腫瘍の大きさを測定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、
a)20mol%〜60mol%のコレステロール(CH)、および
b)20mol%〜50mol%のホスファチジルセリン(PS)、20mol%〜50mol%のホスファチジルグリセロール(PG)、および20mol%〜50mol%のホスファチジルエタノールアミン(PE)からなる群から選択される少なくとも2種の成分、
c)少なくとも一種の治療剤、ならびに/あるいは少なくとも一種の診断剤
を含むリポソーム。
【請求項2】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、CH、PS、PG、および/またはPEがモル比で30mol%〜36mol%存在する、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記リポソームの残りの脂質が、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される、請求項1または2に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記残りのリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)またはPEである、請求項1〜3の一項に記載のリポソーム。
【請求項5】
PSが、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン、パルミトイルリノエオイルホスファチジルセリン、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルセリン、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルセリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルセリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルセリン、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン、ジカプリルホスファチジルセリン、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジフィタノイルホスファチジルセリン、ジヘプタデカノイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン、ジリノレオイルホスファチジルセリンジエルコイルホスファチジルセリン、ジドコサヘキサエノイルホスパチジルセリン、脳由来PS、および大豆由来PSからなる群から選択され、
PGが、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルリノレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルオレオイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルリノレオイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、ジカプリルホスファチジルグリセロールジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジヘプタデカノイルホスファチジルグリセロール、ジフィタノイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジエライドイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、ドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、および卵由来PGからなる群から選択され、ならびに/あるいは
PEが、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジヘプタデカノイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、ドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、細菌由来PE、心臓由来PE、脳由来PE、肝臓由来PE、卵由来PE、および大豆由来PEからなる群から選択される、請求項1〜4の一項に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記脂質組成物の脂質が、本質的に、CH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;CH、PG、およびPE;あるいはCH、PG、PS、およびPEからなる、請求項1〜5の一項に記載のリポソーム。
【請求項7】
治療剤が、薬物、アジュバント、または抗原からなる群から選択される、請求項1〜6の一項に記載のリポソーム。
【請求項8】
少なくとも一種のアジュバントと、少なくとも一種の抗原を含む、請求項1〜7の一項に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己免疫抗原、またはアレルゲンである、請求項7または8に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記腫瘍抗原が、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特に、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pml‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特に、NY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE‐8)、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特に、ヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMP‐1、LMP‐2;過剰発現抗原または組織特異的分化抗原、特に、gp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP‐1およびTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1、ならびにそれらの断片および誘導体にからなる群から選択される、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記ウイルス抗原が、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルス、および黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特にコロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特に、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特にインフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロータウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特にB型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特にパルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、乳頭腫ウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;およびイリドウイルス科、特にアフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなるウイルス群から選択されるウイルスに由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項12】
前記真菌抗原が、クリプトコックス種、特にクリプトコックスネオフォルマンス、ヒストプラスマ種、特にヒストプラスマカプスラーツム、コクシジオイデス種、特にコクシジオイデスイミティス、ブラストミセス種、特にブラストミセスデルマティティジス、クラミジア種、特にクラミジアトラコマティス、およびカンジダ種、特にカンジダアルビカンスからなる群から選択される真菌に由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項13】
前記細菌抗原が、ヘリコバクター種、特にピロリ菌;ボレリア種、特にボレリアブルグドルフェリ;レジオネラ種、特にレジオネラニューモフィラ;マイコバクテリア種、特に、結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラール、M.カンサシイ、M.ゴルドナ;ブドウ球菌種、特に黄色ブドウ球菌;ナイセリア種、特に淋菌、髄膜炎菌;リステリア種、特にリステリアモノサイトゲネス;レンサ球菌種、特に、化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌;S.フェーカリス;S.ボビス、肺炎球菌;嫌気性レンサ球菌種;病原性カンピロバクター種;腸球菌種;ヘモフィルス種、特にインフルエンザ菌;バシラス種、特に炭疽菌;コリネバクテリウム種、特にジフテリア菌;エリシペロトリックス種、特に豚丹毒菌;クロストリジウム種、特にC.ペルフリンゲンス、破傷風菌;エンテロバクター種、特にエンテロバクターアエロゲネス、クレブシエラ種、特に肺炎桿菌、パスツレラ種、特にパスツレラムルトシダ、バクテロイド種;フソバクテリウム種、特にフソバクテリウムヌクレアツム;ストレプトバシルス種、特にストレプトバシルスモニリホルミス;トレポネーマ種、特にトレポネーマペルテヌ;レプトスピラ;病原性エシェリキア種;および放線菌種、特に放線菌イスラエリからなる群から選択される細菌に由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項14】
前期薬物が、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、血管新生阻害薬、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および抗喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、特に免疫調節サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤およびそのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬、特に、NF‐кBアクチベータ、MAPキナーゼ、STATタンパク質、ならびに/あるいはタンパク質リン酸化酵素B/Akt;ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される、請求項7に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、1α、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸ならびに/あるいはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなる群から選択される、請求項7〜14の一項に記載のリポソーム。
【請求項16】
前記診断剤が、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子からなる群から選択される、請求項1〜15の一項に記載のリポソーム。
【請求項17】
治療剤または診断剤のモル量:全脂質のモル量の比が1:100〜1:10であり、好ましくは1:50〜1:20である、請求項1〜16の一項に記載のリポソーム。
【請求項18】
前記リポソームの直径が50〜200nmであり、好ましくは80〜150nmである、請求項1〜17の一項に記載のリポソーム。
【請求項19】
前記リポソームの表面電荷が陰性である、請求項1〜18の一項に記載のリポソーム。
【請求項20】
標的部分が、前記リポソームに取り付けられる、請求項1〜19の一項に記載のリポソーム。
【請求項21】
乾燥、好ましくは凍結乾燥されている、請求項1〜20の一項に記載のリポソーム。
【請求項22】
請求項1〜21の一項に記載のリポソームを生成する方法であって、
a)CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、および
b)懸濁液を均質化するステップ
を含む方法。
【請求項23】
前記治療剤および/または前記診断剤および/または前記脂質が、本質的に液体媒体に溶解しない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記液体媒体が、H20、塩水溶液、および緩衝液からなる群から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項22〜24の一項に記載の方法によって生成されたリポソーム。
【請求項26】
請求項1〜21または請求項25のリポソーム、ならびにアジュバント、添加剤、緩衝液、および補助物質からなる群から選択される少なくとも一種の別の成分を含むリポソーム組成物。
【請求項27】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA、特にCpG PTO ODNまたはCpG PO ODN;ミョウバン;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にMPLA、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;HSP、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特に、GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特に、インターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80およびSpan 85およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、ポリホスファゼン;BAY R1005、カルシトリオール;DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸ならびに/あるいはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなるアジュバントの群から選択される、請求項26に記載のリポソーム組成物。
【請求項28】
増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するための請求項1〜21または請求項25の一項に記載のリポソームもしくは請求項31または32に記載のリポソーム組成物の使用。
【請求項29】
増殖性疾患が、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、ホルモン非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される請求項28の使用。
【請求項30】
アジュバントおよび/またはサイトカインが、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に投与される、請求項28または29の使用。
【請求項31】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特に非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA、特にCpG PTO ODNまたはCpG PO ODN;ミョウバン;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にMPLA、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;HSP、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80およびSpan 85およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体;ポリホスファゼン;BAY R1005、カルシトリオール;DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなるアジュバントの群から選択される、請求項30の使用。
【請求項1】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、
a)20mol%〜60mol%のコレステロール(CH)、および
b)20mol%〜50mol%のホスファチジルセリン(PS)、20mol%〜50mol%のホスファチジルグリセロール(PG)、および20mol%〜50mol%のホスファチジルエタノールアミン(PE)からなる群から選択される少なくとも2種の成分、
c)少なくとも一種の治療剤、ならびに/あるいは少なくとも一種の診断剤
を含むリポソーム。
【請求項2】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、CH、PS、PG、および/またはPEがモル比で30mol%〜36mol%存在する、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記リポソームの残りの脂質が、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される、請求項1または2に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記残りのリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)またはPEである、請求項1〜3の一項に記載のリポソーム。
【請求項5】
PSが、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン、パルミトイルリノエオイルホスファチジルセリン、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルセリン、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルセリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルセリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルセリン、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン、ジカプリルホスファチジルセリン、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジフィタノイルホスファチジルセリン、ジヘプタデカノイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン、ジリノレオイルホスファチジルセリンジエルコイルホスファチジルセリン、ジドコサヘキサエノイルホスパチジルセリン、脳由来PS、および大豆由来PSからなる群から選択され、
PGが、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルリノレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルオレオイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルリノレオイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、ジカプリルホスファチジルグリセロールジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジヘプタデカノイルホスファチジルグリセロール、ジフィタノイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジエライドイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、ドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール、および卵由来PGからなる群から選択され、ならびに/あるいは
PEが、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジヘプタデカノイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、ドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン、細菌由来PE、心臓由来PE、脳由来PE、肝臓由来PE、卵由来PE、および大豆由来PEからなる群から選択される、請求項1〜4の一項に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記脂質組成物の脂質が、本質的に、CH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;CH、PG、およびPE;あるいはCH、PG、PS、およびPEからなる、請求項1〜5の一項に記載のリポソーム。
【請求項7】
治療剤が、薬物、アジュバント、または抗原からなる群から選択される、請求項1〜6の一項に記載のリポソーム。
【請求項8】
少なくとも一種のアジュバントと、少なくとも一種の抗原を含む、請求項1〜7の一項に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己免疫抗原、またはアレルゲンである、請求項7または8に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記腫瘍抗原が、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特に、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pml‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特に、NY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE‐8)、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特に、ヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMP‐1、LMP‐2;過剰発現抗原または組織特異的分化抗原、特に、gp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP‐1およびTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1、ならびにそれらの断片および誘導体にからなる群から選択される、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記ウイルス抗原が、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルス、および黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特にコロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特に、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特にインフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロータウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特にB型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特にパルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、乳頭腫ウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;およびイリドウイルス科、特にアフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなるウイルス群から選択されるウイルスに由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項12】
前記真菌抗原が、クリプトコックス種、特にクリプトコックスネオフォルマンス、ヒストプラスマ種、特にヒストプラスマカプスラーツム、コクシジオイデス種、特にコクシジオイデスイミティス、ブラストミセス種、特にブラストミセスデルマティティジス、クラミジア種、特にクラミジアトラコマティス、およびカンジダ種、特にカンジダアルビカンスからなる群から選択される真菌に由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項13】
前記細菌抗原が、ヘリコバクター種、特にピロリ菌;ボレリア種、特にボレリアブルグドルフェリ;レジオネラ種、特にレジオネラニューモフィラ;マイコバクテリア種、特に、結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラール、M.カンサシイ、M.ゴルドナ;ブドウ球菌種、特に黄色ブドウ球菌;ナイセリア種、特に淋菌、髄膜炎菌;リステリア種、特にリステリアモノサイトゲネス;レンサ球菌種、特に、化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌;S.フェーカリス;S.ボビス、肺炎球菌;嫌気性レンサ球菌種;病原性カンピロバクター種;腸球菌種;ヘモフィルス種、特にインフルエンザ菌;バシラス種、特に炭疽菌;コリネバクテリウム種、特にジフテリア菌;エリシペロトリックス種、特に豚丹毒菌;クロストリジウム種、特にC.ペルフリンゲンス、破傷風菌;エンテロバクター種、特にエンテロバクターアエロゲネス、クレブシエラ種、特に肺炎桿菌、パスツレラ種、特にパスツレラムルトシダ、バクテロイド種;フソバクテリウム種、特にフソバクテリウムヌクレアツム;ストレプトバシルス種、特にストレプトバシルスモニリホルミス;トレポネーマ種、特にトレポネーマペルテヌ;レプトスピラ;病原性エシェリキア種;および放線菌種、特に放線菌イスラエリからなる群から選択される細菌に由来する、請求項9に記載のリポソーム。
【請求項14】
前期薬物が、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、血管新生阻害薬、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および抗喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、特に免疫調節サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤およびそのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬、特に、NF‐кBアクチベータ、MAPキナーゼ、STATタンパク質、ならびに/あるいはタンパク質リン酸化酵素B/Akt;ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される、請求項7に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、1α、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸ならびに/あるいはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなる群から選択される、請求項7〜14の一項に記載のリポソーム。
【請求項16】
前記診断剤が、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子からなる群から選択される、請求項1〜15の一項に記載のリポソーム。
【請求項17】
治療剤または診断剤のモル量:全脂質のモル量の比が1:100〜1:10であり、好ましくは1:50〜1:20である、請求項1〜16の一項に記載のリポソーム。
【請求項18】
前記リポソームの直径が50〜200nmであり、好ましくは80〜150nmである、請求項1〜17の一項に記載のリポソーム。
【請求項19】
前記リポソームの表面電荷が陰性である、請求項1〜18の一項に記載のリポソーム。
【請求項20】
標的部分が、前記リポソームに取り付けられる、請求項1〜19の一項に記載のリポソーム。
【請求項21】
乾燥、好ましくは凍結乾燥されている、請求項1〜20の一項に記載のリポソーム。
【請求項22】
請求項1〜21の一項に記載のリポソームを生成する方法であって、
a)CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、および
b)懸濁液を均質化するステップ
を含む方法。
【請求項23】
前記治療剤および/または前記診断剤および/または前記脂質が、本質的に液体媒体に溶解しない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記液体媒体が、H20、塩水溶液、および緩衝液からなる群から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項22〜24の一項に記載の方法によって生成されたリポソーム。
【請求項26】
請求項1〜21または請求項25のリポソーム、ならびにアジュバント、添加剤、緩衝液、および補助物質からなる群から選択される少なくとも一種の別の成分を含むリポソーム組成物。
【請求項27】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA、特にCpG PTO ODNまたはCpG PO ODN;ミョウバン;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にMPLA、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;HSP、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特に、GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特に、インターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80およびSpan 85およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、ポリホスファゼン;BAY R1005、カルシトリオール;DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸ならびに/あるいはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなるアジュバントの群から選択される、請求項26に記載のリポソーム組成物。
【請求項28】
増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するための請求項1〜21または請求項25の一項に記載のリポソームもしくは請求項31または32に記載のリポソーム組成物の使用。
【請求項29】
増殖性疾患が、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、ホルモン非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される請求項28の使用。
【請求項30】
アジュバントおよび/またはサイトカインが、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に投与される、請求項28または29の使用。
【請求項31】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特に非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA、特にCpG PTO ODNまたはCpG PO ODN;ミョウバン;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にMPLA、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;HSP、特にHSP 70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80およびSpan 85およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体;ポリホスファゼン;BAY R1005、カルシトリオール;DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCクラスIIによって提示されるペプチドからなるアジュバントの群から選択される、請求項30の使用。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図25】
【図27】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図28】
【図29】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図19】
【図20】
【図25】
【図27】
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【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図12】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2007−515452(P2007−515452A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546066(P2006−546066)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014631
【国際公開番号】WO2005/063201
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501023476)
【住所又は居所原語表記】Kogle Alle 6,DK−2970 Horsholm DENMARK
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014631
【国際公開番号】WO2005/063201
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501023476)
【住所又は居所原語表記】Kogle Alle 6,DK−2970 Horsholm DENMARK
【Fターム(参考)】
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