説明

ワックスモデル射出成形装置の射出ノズル

【課題】ワックス鋳造後、ワックス射出装置のワックス供給流路内に残存し、廃棄しなければならないワックス量を減らすことができる射出ノズルを提供する。
【解決手段】ワックス樹脂の射出鋳造装置に使用される射出ノズル1であって、先端にワックス樹脂の吐出口8を有する外筒部2と、一端が該吐出口8と流体的に連通し、他端が排気系に流体的に連通するように、該外筒部2内に画定される排気流路3と、該排気流路3と該吐出口8との間を閉鎖し、または開放するように、該排気流路3内を摺動可能な排気流路封止弁4とを備え、一端が該吐出口8と流体的に連通し、他端がワックス樹脂供給源に流体的に連通するように画定されるワックス供給流路5と、該ワックス樹脂流路5と該吐出口8との間を閉鎖し、または開放するように、該ワックス樹脂流路5内を摺動可能なワックス封止弁6とを備える射出ノズル1により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロストワックス鋳造に代表されるワックス樹脂鋳造に用いるワックス樹脂の真空射出成形装置に関する。特に、その真空射出成形装置のノズル部分に関する。
【背景技術】
【0002】
(ロストワックス法)
複雑な形状の精密鋳造法の一つとしてロストワックス法が知られており、様々な産業分野で使用されている。特に、金属アクセサリなど、中空部を有する複雑な形状の製品を精密に製造するためには、ロストワックス鋳造法が適している。金属アクセサリに適用されるロストワックス鋳造法では,「ゴム型成形工程(第1工程)」と、「ゴム型を用いてワックスによるワックスモデル製作工程(第2工程)」と、「ワックスモデルを用いての鋳型製作工程(第3工程)」と、「金型を用いて最終的な鋳造品の鋳造工程(第4工程)」と、「鋳造品の仕上加工工程(第5工程)」との各段階からなっている。これら第1工程から第5工程までを順次実行することにより、最終的な鋳造製品が完成する。
【0003】
第1工程のゴム型成形工程では、最終製品と同じ形状の中空パターンが内部に形成されるシリコンゴム製のゴム型を製作する。第2工程のワックスモデル製作工程では、そのゴム型の中空パターンにワックスを射出注入してワックスモデルを製作する。第3工程では、そのワックスモデルを鋳型原料に投入して固め、電気炉でワックスモデルを溶かしてワックスを除去し、鋳型材料を焼成させて鋳型を製作する。第4工程の鋳造工程ではその鋳型に金属材料を流し込んで鋳造し、第5工程の仕上げ加工工程では鋳造品から不要箇所を切除するとともに研磨等最終的な仕上げを行う。
【0004】
本発明は、第2工程であるワックスモデル製作工程に使用されるワックスモデル真空射出成形装置(以下、「ワックス射出装置」とよぶ)に関するものである。図4から図6を参照して、特に、第2工程である「ワックスモデル製作工程」について説明する。
【0005】
図4は、第1工程のゴム型成形工程で製作されるゴム型40を示す。ゴム型40は、最終製品と同形状の鋳型原型モデルを内部に埋設して、シリコンゴムで箱型状に固化したものである。ゴム型40の内部には、鋳型原型モデルの中空パターン40cが形成されている。中空パターン40cは、シリコンゴムが固化した後に、ゴム型40を上側ゴム型40aと下側ゴム型40bとに分離して、鋳型原型モデルを取り出して形成される。
【0006】
(ワックスモデル製作工程)
図5は、第2工程であるワックスモデル製作工程で使用するワックス射出装置50を示している。第2工程のワックスモデル製作工程では、ワックス射出装置50を用いて、ゴム型40内の中空パターン40cに、圧力を加えた状態でワックスを注入する。まず、ゴム型40のワックス注入口43がワックス射出装置50のワックス射出ノズル51と接合するように、ワックス射出装置50のクランプ上にゴム型40を載置する。ドライバ61により圧縮板63を押し下げて、ゴム型40にクランプ圧力としての面圧を加える。その後クランプユニットをノズル方向に前進させ、その状態で、ワックス射出装置50の炉内で溶融したワックスを、ワックス射出ノズル51からワックス注入口43を介して、中空パターン40c内に注入する。
【0007】
ここで、ワックスモデル製作工程で、溶融したワックスを射出する従来のワックス射出装置50のワックス射出ノズル51を説明する。図6は、ワックス射出装置50の内部の概略図である。ワックス射出装置50は、ワックス樹脂供給源たるワックス供給系57と、排気系58と、射出ノズル51とを備えている。ワックス供給系58は、溶融ワックスを貯めたワックスリザーバタンク57aと、供給系配管57bとを備えている。排気系58は、排気ポンプ58a(たとえば、真空ポンプ)と、排気ポンプ58aに結合されている排気タンク58b(たとえば、真空タンク)、排気タンク58bに接続される排気系配管58cとを有している。排気系58は、排気タンク58bを介することなく、排気ポンプ58aと排気系配管58cとを直接接続される場合もある。
【0008】
射出ノズル51内には、ワックス樹脂バッファ53と、排気系バッファ54とが、対で配置されている。ワックス樹脂バッファ53を供給系配管57bに流体的に接合することで供給系57に流体的に接合される。排気系バッファ54を排気系配管58cに流体的に接合することで排気系58に流体的に接合される。射出ノズル51内では、ワックス樹脂バッファ53は供給口53aを介してワックス供給流路52に接続され、排気系バッファ54は連通口54aを介してワックス供給流路52に接続されている。連通口53aと連通口54aとに最も近いワックス供給流路52の箇所を供給点52bとすると、ワックス供給流路52は、供給点52bからワックス射出ノズル51の先端側のノズル吐出口52aまで細長く延在する。ワックス樹脂バッファ53の供給口53aとワックス供給流路52の供給点52bは、それぞれ、バルブ55およびバルブ56で開閉可能である。
【0009】
バルブ55のバルブヘッド55aが供給口53aを開放するとワックス樹脂バッファ53の供給口53aとワックス供給流路52の供給点52bとが流体的に連通する。一方、バルブヘッド55aが供給口53aを閉鎖するとワックス樹脂バッファ53の供給口53aとワックス供給流路52の供給点52bとの連通が遮断される。一方、バルブ56のバルブヘッド56aが連通口54aを開放すると排気系バッファ54の連通口54aとワックス供給流路52の供給点52bとが流体的に連通する。一方、バルブヘッド56aが連通口54aを閉鎖すると排気系バッファ54の連通口54aとワックス供給流路52の供給点52bとの連通が遮断される。
【0010】
使用の際には、まず、ゴム型40のワックス注入口43にワックス射出装置50のワックス射出ノズル51と接合させる。排気ポンプ58aで排気タンク59を排気すると、排気ポンプと流体的に連通している排気系バッファ54内の気体も排気される。バルブ56aを開くと、排気系バッファ54の連通口54aとワックス供給流路52の供給点52bとが連通し、ワックス供給流路52から中空パターン40cが排気される。一方で、溶融し、加圧されたワックスをワックスリザーバタンク57からワックス樹脂バッファ53に流す。ワックス供給流路52から中空パターン40cに至るまで完全に排気された時点で、排気系バッファ54側のバルブ56aを閉鎖し、ワックス樹脂バッファ53側のバルブ55aを開放する。バルブ55aが開放されると、高圧側のワックス樹脂バッファ53から低圧となっているワックス供給流路52および中空パターン40cにワックスが流入し射出される。ワックスが予定量射出されれば、充填が完了する。
【0011】
ワックスの充填が完了した後には、排気系バッファ54側のバルブ56aを閉鎖してワックスの供給を断ち、ゴム型40へのワックスの供給を終了する。ワックス注入口43からワックス射出ノズル51を取り外す。その後、次のワックスの供給のために、排気系バッファ54側のバルブ56aを開放して、ワックス供給流路52をワックス樹脂バッファ53と連通させ、ワックス供給流路52に残存したワックスを除去し、ワックス供給流路52を清掃する。ワックス固化後にワックスをゴム型40から外せば、ワックスモデル製作工程が終了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のワックス射出装置50では、ワックス供給流路52は、ワックス射出装置50内のワックスの供給点52bからワックス射出ノズル51の先端側のノズル吐出口52aまで区間の距離が長かった。吐出の後にはこの区間にはワックスが残存し、ワックス吐出後のワックス供給流路52の清掃の際にワックスを除去する際には、この区間に残存したワックスを結果的に廃棄せざるをえず、ワックスが無駄に消費されることになり、経済的にも環境的にも不都合であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ワックス樹脂の射出鋳造装置に使用される射出ノズルであって、先端にワックス樹脂の吐出口を有する外筒部と、一端が該吐出口と流体的に連通し、他端が排気系に流体的に連通するように、該外筒部内に画定される排気流路と、該排気流路と該吐出口との間を閉鎖し、または開放するように、該排気流路内を摺動可能な排気流路封止弁とを備え、一端が該吐出口と流体的に連通し、他端がワックス樹脂供給源に流体的に連通するように画定されるワックス供給流路と、該ワックス樹脂流路と該吐出口との間を閉鎖し、または開放するように、該ワックス樹脂流路内を摺動可能なワックス封止弁とを備える射出ノズルにより解決する。
【発明の効果】
【0014】
ワックス鋳造後、ワックス射出装置のワックス供給流路内に残存し、廃棄しなければならないワックス量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の実施の形態のワックス射出装置の系統を示した概略図である。
【図2A】本願発明の一の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル部分の詳細図である。
【図2B】本願発明の他の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル部分の詳細図である。
【図3A】本願発明の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル部分の動作を示した図であって、ワックス樹脂射出前の状態を示している。
【図3B】本願発明の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル部分の動作を示した図であって、真空引きの状態を示している。
【図3C】本願発明の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル部分の動作を示した図であって、ワックス樹脂射出時の状態を示している。
【図3D】本願発明の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズルを用いて射出成形した直後に、ゴム型からノズル先端を分離した状態を示した図である。
【図4】従来および本発明に用いられるロストワックス鋳造ゴム型を示した図である。
【図5】従来および本発明に用いられるロストワックス鋳造装置の外観図である。
【図6】従来の形態のワックス射出装置の系統を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のワックス樹脂の射出鋳造装置(ワックス射出装置)の実施形態について、図1から図3を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本願発明の実施形態のワックス射出装置50および配管の系統を示している。ワックス射出装置50が、ワックス樹脂供給源たるワックス供給系57と、排気系58とを備えている点では従来の装置と同様である。ワックス供給系57および排気系58の構成も、従来の装置と同じである。
【0018】
本願発明のワックス射出装置50は、従来の射出ノズル50の代わりに、射出ノズル1を備えている。図2は、本願発明の実施の形態のワックス射出装置の射出ノズル1の詳細図である。射出ノズル1は、ノズル外筒部2と、排気流路3と、排気流路封止弁4と、ワックス樹脂供給流路5と、ワックス封止弁6とを備えている。
【0019】
射出ノズル1は、ワックス射出装置50から射出ノズル1が延出する形状であって、ゴム型40のワックス注入口43に接続可能な先細形状のノズル外筒部2を有している。ノズル外筒部2の先端には、ワックス樹脂を吐出する吐出口8が配置されている。
【0020】
排気流路3は、ノズル外筒部2の内に、ノズル外筒部2の内壁により画定されている。一の実施の形態としては、ノズル外筒部2の内部に、吐出口8の軸方向に沿って細長く延在するように、画定されている。排気流路3は、一端が吐出口8に流体的に連通し、他端が排気路13を介して排気系58に流体的に連通している。排気流路3の断面は吐出口8の断面よりも大きい。吐出口8側の排気流路3の端部のノズル外筒部2の内壁面には、吐出口8との接合部付近で段差状の座部3aを有している。なお、排気路13は、なるべく吐出口8側に配置するとよい。排気すべき気体の量を低減することができる。
【0021】
排気流路封止弁4は、排気流路3の内に、配置されている。排気流路封止弁4は、排気流路3に沿って配置される中空の棒状の部材である。排気流路封止弁4は、ワックス樹脂供給流路5の軸方向に沿って、摺動可能である。排気流路封止弁4の先端4aにはパッキングまたはOリングが配置されている。排気流路封止弁4の先端4aは、ノズル外筒部2の内壁面の座部3aに当接可能である。排気流路封止弁4の摺動により、排気流路封止弁4の先端4aが排気流路3の内壁面の座部3aに当接して、吐出口8と排気流路3との間の経路が閉鎖されると、排気流路3と吐出口8との流体的連通が失われる。一方、排気流路封止弁4の先端4aが排気流路3の座部3aを離れて吐出口8への排気流路3が開放されると、排気流路3と吐出口8との流体的連通が生じる。したがって、この実施の形態では、排気流路3は、排気流路封止弁4とノズル外筒部2の内壁との間に画定されることになる。また、排気流路3は、排気流路封止弁4が摺動して排気流路3の座部3aを離れて吐出口8への排気流路3が開放した際にのみ排気流路3が排気路13へ流体的に連通し、排気流路封止弁4が摺動して排気流路3の座部3aに当接した際には排気流路3と排気路13とが排気路13に連通せずに排気路13を封止するように排気流路封止弁4の外径が設定された排気路封止部4bを有している。
【0022】
ワックス樹脂供給流路5は、排気流路封止弁4内に、配置されている。本実施形態では、ワックス樹脂供給流路5は、排気流路封止弁4の中空部として真直に細長く延在するように、排気流路封止弁4の内壁によって画定されている。ワックス樹脂供給流路5は、一端が吐出口8と流体的に連通し、他端が供給路14を介してワックス供給系57に流体的に連通する。吐出口8側の端部のワックス樹脂供給流路5の径は、吐出口8の径より大きくなっている。また、ワックス樹脂供給流路5は大きめの径で、ワックス樹脂供給流路5の軸が吐出口8の軸と同軸になるように配置すれば、ワックスの流動抵抗を下げることができる。
【0023】
ワックス封止弁6は、ワックス樹脂供給流路5内に、ワックス樹脂供給流路5の軸方向に沿って、延在するように配置される。ワックス封止弁6は中実の棒状の弁体で、ワックス樹脂供給流路5の軸方向に摺動可能である。ワックス封止弁6は、ワックス封止弁6が吐出口8側に摺動した状態で、ワックス封止弁6の先端6aが吐出口8側の端部の排気流路封止弁4の内壁に当接可能である。ワックス封止弁6の摺動により、ワックス封止弁6の先端6aが排気流路封止弁4の内壁に当接して、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路が閉鎖されると、ワックス樹脂供給流路5と吐出口8との流体的連通が失われる。一方、ワックス封止弁6の先端6aが排気流路封止弁4の内壁から離れて吐出口8へのワックス樹脂供給流路5が開放されると、ワックス樹脂供給流路5と吐出口8との流体的連通が生じる。
【0024】
これらの排気流路封止弁4の動作およびワックス封止弁6の動作により、吐出口8は、排気流路3またはワックス樹脂供給流路5と、選択的に連通可能である。
すなわち、ワックス封止弁6の先端6aが吐出口8側の端部の排気流路封止弁4の内壁に当接して、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路が閉鎖された状態で、排気流路封止弁4は摺動することが可能である。この摺動で、ワックス樹脂供給流路5と連通せずに、吐出口8と排気流路3との間の連通(開放)または封鎖(閉鎖)が可能である。
また、排気流路封止弁4の先端4aが排気流路3の内壁面の座部3aに当接して、吐出口8と排気流路3との間の経路が閉鎖されている状態で、ワックス封止弁6は摺動可能である。この摺動で、排気流路3と連通せずに、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の連通(開放)または封鎖(閉鎖)が可能である。
【0025】
排気流路3の内壁面の座部3aおよびワックス封止弁6の先端6aが排気流路封止弁4の内壁に当接する位置に近接して、吐出口8の一端が配置される。そして、吐出口8の長さが短くなるように、ノズル外筒部2の先端において、吐出口8の他端の位置が決定される。吐出口8の長さは、一般には、図2Aに示すように、一定の長さを有するように設定される。また、ノズル先端の排気流路3またはワックス樹脂供給流路5を、吐出口8に連通させる箇所を、なるべく吐出口8に接近させるようにする。たとえば、吐出口8の直径よりも短くなるように決定することが好ましい。吐出口8は、断面積一定の管路としてもよいが、中心軸に対してワックス封止弁6から離れるにしたがって角度が大きくなる広がり断面積を有する管路が好ましい。たとえば、心軸に対してワックス封止弁6から離れるにしたがって、約1度から約30度で任意選択された一の角度の広がりをもった管路が好ましい。また、吐出口8の内表面には、撥水処理を施しておくことが好ましい。なお、吐出口8の長さは、図2Bに示すようにノズル外筒部2の先端の最低限の肉厚に対応する長さでもよい。
【0026】
ワックス封止弁6の先端6aには突起7が配置されている。ワックス封止弁6の先端6aが排気流路封止弁4の内壁に当接して吐出口8へのワックス樹脂供給流路5を閉鎖した際に、突起7は吐出口8内に嵌入される。突起7の形状は曲面ないし球面をなし、ワックス樹脂が分離しやすい。また、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路が閉鎖された状態で、吐出口8と排気流路3との間を連通させた際に、排気された気体が突起7に衝突して滑らかに分流するような効果を生じる。突起7の表面にも、撥水処理を施しておくことが好ましい。さらに、突起7が吐出口8に嵌入された状態で、吐出口8の長さから突起7の嵌入長さを差し引いた距離が吐出口8の直径よりも短くなるように決定することが好ましい。
【0027】
続いて、図3Aから図3Cを参照して、本願発明の射出ノズル1の動作について説明する。図3Aから図3Cは、本願発明の射出ノズル1の動作シーケンスを示している。
図3Aは、射出ノズル1の射出前状態を示している。この状態では、ワックス封止弁6の先端6aは吐出口8側の端部の排気流路封止弁4の内壁に当接して、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路が閉鎖されている。また、排気流路封止弁4の先端4aも排気流路3の内壁面の座部3aに当接して、吐出口8と排気流路3との間の経路が閉鎖されている。突起7は、吐出口8内に嵌入されている。この状態で、ゴム型40はワックス射出装置50の所定の位置に載置され、射出ノズル1はゴム型40のワックス注入口43に接合される。
【0028】
射出工程の準備が整い次第、ゴム型40内を脱気する。図3Bは、真空引き状態を示している。ゴム型40内の脱気は、以下のように行う。まず、真空ポンプ58aを稼動させて、排気系58を真空にする。吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路が閉鎖したままで、排気流路封止弁4の先端4aを排気流路3の内壁面の座部3aから離して吐出口8と排気流路3とを連通(開放)させる。
【0029】
ゴム型40内部(中空パターン40c)の圧力が所定の圧力にまで下がった段階で、排気流路封止弁4の先端4aを排気流路3の内壁面の座部3aに当接させて吐出口8と排気流路3との間の経路を閉鎖して、脱気を終了する。この後、ワックス封止弁6の先端6aを吐出口8側の端部の排気流路封止弁4の内壁から離して、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路を連通(開放)させる。加圧されているワックス樹脂は、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路を連通により、ゴム型40内部の中空パターン40cへ充填される。
【0030】
所定量のワックス樹脂がゴム型40内部の中空パターン40cへ充填された段階で、ワックス封止弁6の先端6aを吐出口8側の端部の排気流路封止弁4の内壁に当接させて、吐出口8とワックス樹脂供給流路5との間の経路を閉鎖して、図3Aの状態に戻る。
【0031】
射出ノズル1をゴム型40のワックス注入口43から取り外すと、吐出口8の角度,表面処理および突起7の効果により、吐出口8内にワックス樹脂が残余することなく、吐出口8からきれいに離間して取り外すことができる(図3D)。このように、排気流路とワックス樹脂供給流路との切換え位置を吐出口近くに移動させることができるようになり、従来、吐出後に装置内に残余し廃棄せざるをえないワックスの量を減らすことができる。1回の射出において残余するワックス樹脂の排気量は、従来では0.45(立方センチメートル/回)であったのに対し、本願発明を適用すれば、0.009(立方センチメートル/回)と、従来の射出ノズルに対して、廃棄される残余ワックスの量50分の1にまで低減化できる。また、これは、排気系における排気タンクを小さくすることができることにもつながる。
【符号の説明】
【0032】
1 射出ノズル
2 ノズル外筒
3 排気流路
4 排気流路封止弁
5 ワックス樹脂供給流路
6 ワックス封止弁
7 突起
8 吐出口
40 ゴム型
50 ワックス射出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス樹脂の射出鋳造装置に使用される射出ノズルであって、
先端にワックス樹脂の吐出口を有する外筒部と、
一端が該吐出口と流体的に連通し、他端が排気系に流体的に連通するように、該外筒部内に画定される排気流路と、
該排気流路と該吐出口との間を閉鎖し、または開放するように、該排気流路内を摺動可能な排気流路封止弁とを備え、
一端が該吐出口と流体的に連通し、他端がワックス樹脂供給源に流体的に連通するように画定されるワックス供給流路と、
該ワックス樹脂流路と該吐出口との間を閉鎖し、または開放するように、該ワックス樹脂流路内を摺動可能なワックス封止弁とを備え、
該排気流路封止弁は、該ワックス封止弁が摺動して該ワックス樹脂流路と該吐出口との間を閉鎖した状態で、該排気流路と該吐出口との間を連通するように開放し、
該ワックス封止弁は、該排気流路封止弁が摺動して該排気流路と該吐出口との間を閉鎖した状態で、該ワックス樹脂流路と該吐出口との間を連通するように開放する射出ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のワックス樹脂射出装置であって、
該排気流路は、該外筒部の内壁と該排気流路封止弁の外壁との間に画定され、
該ワックス供給流路は、該排気流路封止弁の内壁と該排気流路封止弁との外壁との間に画定され、
該排気流路封止弁が摺動して、該排気流路封止弁が該外筒部の先端側内壁に当接して、前記排気流路と吐出口との間の閉鎖した状態が生じ、
該ワックス封止弁が摺動して、該ワックス封止弁が該排気流路封止弁の先端側内壁に当接して、前記ワックス樹脂流路と吐出口との間の閉鎖した状態が生じることを特徴とする射出ノズル。
【請求項3】
請求項2に記載のワックス樹脂射出装置であって、
該ワックス封止弁は、その先端に突起を備え、該ワックス封止弁が該排気流路封止弁の先端側内壁に当接した状態で、該突起は該吐出口に嵌入されることを特徴とするワックス樹脂射出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のワックス樹脂射出装置であって、
該吐出口は、該ワックス封止弁から離れるにしたがって、断面が広がる広がり断面を有していることを特徴とするワックス樹脂射出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のワックス樹脂射出装置であって、
該吐出口の長さは、該吐出口の直径よりも短いことを特徴とするワックス樹脂射出装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143581(P2011−143581A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4903(P2010−4903)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(395003176)安井インターテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】