説明

ワークの曲がり不良検査装置

【課題】頭部と首下軸部を有するワークの首下軸部の曲がりの有無を検査して不良品を取り除く曲がり不良検査装置について、ワークの首下軸部の小さな曲がりも検出して高精度の検査が行なえるようにし、流れ作業による効率的な検査も可能にする。
【解決手段】円盤21の外周の切欠き溝設置部にワークWを吊り下げて間欠送りする搬送装置2と、曲がり検出ユニット3を設け、曲がり検出ユニット3を、駆動ローラ31bと従動ローラ31cとでワークを挟んで回転させる回転駆動機構31と、Vブロック32aと押え板32bとで前記首下軸部の先端側を挟む位置決め機構32と、首下軸部の径方向への振れ量を検出する測定器と、測定した変位量が閾値を越えたときに不良判定を下す判定部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、頭部と首下軸部を有するワーク(ボルトやねじに代表される頭部付き軸体)の首下軸部の曲がりの有無を検査して曲がりを生じた不良品を取り除く曲がり不良検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、汎用のボルトは、コイル線材を巻き戻して所定長さに切断し、その後に、ヘッダによる頭付け、転造盤によるねじの加工、焼入れ、めっきなどの工程を経て製造される。完成した製品は、いくつかの項目について不良検査を行い、不良品を取り除いて出荷される。このときの検査項目の1つに、首下軸部の曲がり検査がある。首下軸部の曲がりの有無は、ワークを例えば平板上で転がし、そのときの転がり状態で知ることもできるが、この方法は、人手に頼るような検査となるため、高能率を期待できない。また、首下軸部の曲がり度合いが小さいものは良品との転がり状態に明瞭な差が現れないため、高精度検査が要求されるときには利用しにくい。
【0003】
検査効率を高めるには、流れ作業で検査を行なえる装置が必要である。その要求に応えられる装置を本出願人は先に提案している(下記特許文献1、2)。これらの特許文献に開示された検査装置は、ワーク(頭部付き軸体)の頭部を傾斜配置のガイド板の縁に引っ掛け、さらに、このワークの首下軸部の先端側を傾斜配置の台板に載せ、この状態でワークを一方向に転がらせる。ガイド板と台板の上方には両者のワーク載置面から所定量上方に離間した梁を設けており、ワークの首下軸部が曲がっている場合には、ワークが台板と梁の2者に拘束され、そのワークの頭部がガイド板から外れてワークがガイド板と台板間に落下する。
【0004】
このほかに、下記特許文献3が開示している検査装置もある。
【特許文献1】特許第3029980号公報
【特許文献2】特開平2004−123314号公報
【特許文献3】特開平9−79828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1,2の装置は、ワークの首下軸部の曲がり度合いが小さいと、ワークの頭部がガイド板から外れず、検査の信頼性を得にくい。ボルト、ねじ類の検査では、わずかな曲がりの有無を見分けて不良品を確実に取り除くことが要求され、その要求に応えられる装置が必要である。
【0006】
また、特許文献3が開示している検査装置は、垂直姿勢にしたワークを、駆動ローラで回転させる構成と、回転中のワークの曲がりに起因した振れを測定して曲がりの有無を検知する構成が後述する本願発明の検査装置と共通するが、この装置は、ワークを軸受に1個ずつセットして検査するので、流れ作業による効率的な検査が行なえない。
【0007】
この発明は、ワークの首下軸部の小さな曲がりも検出して高精度の検査が行なえるようにし、また同時に、流れ作業による効率的な検査も可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明においては、周期的に反復移動する搬送面の側縁に切欠き溝を定ピッチで設け、その切欠き溝にワークの首部を入れ、そのワークの頭部を前記搬送面で下から支えて吊り下げ状態でワークを間欠送りする搬送装置と、搬送路の途中の検査部に配置する曲がり検出ユニットを設けた。
また、前記曲がり検出ユニットを、駆動ローラと複数個の従動ローラとでワークの首下軸部の根元側を挟んでワークを回転させる回転駆動機構と、Vブロックとこれに対向させた押え板とで前記首下軸部の先端側を挟んで前記VブロックのV溝内に回転可能に保持する位置決め機構と、前記位置決め機構と回転駆動機構との間において前記首下軸部の径方向への振れ量を検出する測定器と、測定した変位量が閾値を越えたときに不良判定を下す判定部を備えたものにしてワーク(頭部付き軸体)の曲がり不良検査装置を構成した。
【0009】
この装置は、前記検査部に、前記回転駆動機構の駆動ローラと従動ローラ及び前記位置決め機構のVブロックと押え板に挟まれたワークを下から突き上げてそのワークの頭部を前記搬送面から浮き上がらせるワーク突き上げ機構を設けると好ましい。
【0010】
また、前記従動ローラとVブロックを支持する可動フレームと、可動フレーム駆動用のアクチュエータを設け、可動フレームをアクチュエータで押し引きして前記従動ローラとVブロックをワーク挟持位置と挟持解除位置に動かすようにしたものも好ましい。
【0011】
さらに、前記従動ローラとVブロックを前記可動フレームに高さ位置調整可能に取付けたものや、前記搬送装置の搬送面を間欠回転させる円盤の上面で構成し、この円盤の周りに、検査するワークを搬送装置に受け渡すワーク供給部と、前記曲がり検出ユニットを有する検査部と、不良判定が成立したワークを搬送装置から取り出す不良品排出部と、曲がり不良のないワークを搬送装置から取り出す良品排出部を設けたものも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の検査装置は、搬送面の側縁に吊り掛け用の切欠き溝を設けた搬送装置を使用してワークを吊り下げ状態で間欠送りし、搬送途中にある検査部でそのワークの首下軸部の曲がりの有無を検査するので、検査を流れ作業で効率的に行なうことができる。
【0013】
検査部では、回転駆動機構と位置決め機構でそれぞれワークの首下軸部を挟む構造にしており、前記回転駆動機構の駆動ローラと従動ローラ及び位置決め機構のVブロックと押え板をワークの移動を妨げない位置に配置してワークの検査部への送り込みと検査部からの送り出しを支障なく行うことができ、これも流れ作業での検査を実現するのに役立っている。
【0014】
検査は、位置決め機構でワークを位置決めし、回転駆動機構で回転させて行なう。首下軸部が曲がっているワークはこのときに回転駆動機構と位置決め機構による支持点間で首下軸部が径方向に振れる。その振れをセンサで検出して閾値と比較するので、小さな首下軸部の曲がりも検出することができ、適用範囲が拡大して従来の効率検査が可能な装置では難しかったボルトやねじなどの首下軸部の検査も行なえるようになる。
【0015】
なお、ワーク突き上げ機構を設けた装置は、ワークを駆動ローラで駆動して回転させるときにワークの頭部を搬送面から浮き上がらせることができるので、ワークの頭部と搬送面のワーク回転による傷つきが起こらない。
【0016】
また、従動ローラとVブロックを可動フレームで支持してワーク挟持位置と挟持解除位置に動かすものは、単純なアクチュエータで従動ローラとVブロックをワーク移動路から一括して退避させることができ、装置が複雑にならない。
【0017】
さらに、従動ローラとVブロックを可動フレームに高さ位置調整可能に取付けたものは、首下長さの異なるワークの検査が可能になって装置の利用範囲が拡大する。
【0018】
このほか、搬送装置の搬送面を円盤の上面で形成し、この円盤の外周に、ワーク供給部、検査部、不良品排出部及び良品排出部を設けた装置は、円盤が1回転する間に検査から良品、不良品の振り分けまでの作業が完了し、コンパクトな装置で量産品の全品検査などを効率よく行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面の図1〜図5に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。例示の検査装置は、フィーダ1を有するワーク供給部Iと、搬送装置2と、曲がり検出ユニット3を有する検査部IIと、プッシャ4を有する不良品排出部IIIと、案内具5を有する良品排出部IVと、制御装置6とで構成されている。
【0020】
フィーダ1は、ワークWの頭部を左右の支持面1aで下から支え、吊り下げた状態にして搬送装置2に送り込む。図示の供給フィーダ1は、振動フィーダであるが、エアーでワークを吹き流すようなものであってもよい。
【0021】
搬送装置2は、円盤21と、その円盤を一定回転角度で間欠的に回転させるモータ22(図2参照)と、それらを支持するスタンド23と、ガイド板24とで構成されている。円盤21の外周縁部には、切欠き溝25を定ピッチで設けてあり、その切欠き溝25を設けた外周領域の上面が搬送面26として用いられる。この搬送装置2は、切欠き溝25にワークWの首部を入れ、そのワークの頭部を搬送面26で下から支えて吊り下げた状態でワークを搬送する。搬送面26は円盤21の回転により周期的に反復移動する。上記ワーク供給部I、検査部II、不良品排出部III及び良品排出部IVは、円盤21の外周に適当な間隔をあけて設置される。
【0022】
フィーダ1から供給されたワークWは、円盤21の切欠き溝形成部に乗り移り、円盤21の回転によって検査部IIに送られて行く。切欠き溝25の入口は、このときにワークWが円盤21から外れて落ちることがないようにガイド板24によって塞がれる。
【0023】
検査部IIに設けた曲がり検出ユニット3は、回転駆動機構31と、位置決め機構32と、変位量の測定器33と、判定部34と、ワーク突き上げ機構35を組み合わせて構成されている。回転駆動機構31は、モータ31aで駆動して回転させる駆動ローラ31bと、複数個の従動ローラ31cとで構成されており、ワークの移動路となる部分を間にして対向配置された駆動ローラ31bと従動ローラ31cでワークWの首下軸部の根元側を挟んでワークWを回転させる。
【0024】
また、位置決め機構32は、Vブロック32aと、これにワークの移動路となる部分を間にして対向させた押え板32bとで構成され、ワークの首下軸部の先端側をVブロック32aと押え板32bで挟んでVブロック32aのV溝内に回転可能に保持する。
【0025】
回転駆動機構の従動ローラ31cと位置決め機構のVブロック32aは同一可動フレーム36に高さ位置調整可能に取付けられている。可動フレーム36はアクチュエータ37(図のそれはシリンダ)で円盤21の回転中心側に向けて押し引きするようにしてあり、この押し引きによって従動ローラ31cとVブロック32aがワーク挟持位置と挟持解除位置(ワーク移動路からの退避点)に一括して移動する。従動ローラ31cとVブロック32a及び検知子33aの高さ位置の調整機能を付与すると、同一装置を首下軸部の長さが異なるワークの検査に利用することが可能になる。従動ローラ31cとVブロック32aの固定用ボルト38を可動フレーム36に設けた縦長のボルト孔39に通しており、それによって従動ローラ31cとVブロック32aの高さ調整が可能になっている(図6参照)。
【0026】
駆動ローラ31bは、従動ローラ31cをワーク挟持位置に押し出したときにワークの首下軸部の外周に接触するようにその位置が調整されている。駆動ローラ31bの外周面が平面視で切欠き溝25の溝底が通る円上又はそれよりも円盤21の外径側にわずかに飛び出した位置にあれば、その駆動ローラ31bが位置固定のローラであってもその駆動ローラをワークの首下軸部に接触させることができる。その駆動ローラ31bと従動ローラ31c及びVブロック32aと押え板32bで挟持したワークWを首下軸部に接触した駆動ローラ31bで駆動して回転させる。なお、駆動ローラ31bは、位置固定のローラ、シリンダアクチュエータなどでワーク挟持位置と挟持解除位置に動かすローラのどちらであってもよい。押え板32bについても同様のことが言える。
【0027】
測定器33は、ワークの首下軸部に接触させる検知子33aと、その検知子33aを変位可能に支持するスライダ33bと、検知子33aの動き量を検出する変位センサ33cとで構成されている(図5参照)。スライダ33bはスプリング(図示せず)によって一方向に付勢されており、その付勢力で検知子33aがワークの首下軸部に押し当てられ、ワークの回転に伴う首下軸部の振れを、その検知子33aを介して変位センサ33cで検出する。その検出信号は閾値と比較され、その信号が閾値を越えたときに判定部34が検査したワークについて不良判定を下すようにしてある。図示の変位センサ33cは接触式センサであるが、非接触式のセンサも勿論利用できる。判定部34は、制御装置6の内部回路として構成されている。
【0028】
検査時のワークWの回転は、ワーク突き上げ機構35でワークWを下から突き上げ、ワークの頭部を搬送面から浮き上がらせて行なわれる。ワーク突き上げ機構35は、ヘッドピース35aとそれを押し上げるアクチュエータ(図のそれはシリンダ)35bとからなる。アクチュエータ35bは、図2に示すようにVブロック32aに取付けると、ワークの首下軸部の長さ変動に対する対応が簡単になる。例えば、Vブロック32aの高さ位置を首下軸部の先端との関係が常時一定するように調整すると、ワーク突き上げ機構35の高さ位置も同時に調整され、首下軸部の長さ変化に合わせて突き上げ量を別途調整する必要がなくなる。
【0029】
検査部IIにおいて検査を終えたワークWは排出部に向けて送り出され、不良判定が下されたワークが不良品排出部IIIにおいて不良品排出口7に取り出される。このときの取り出しは、良品の通過を妨げないように、シリンダアクチュエータなどを利用したプッシャ4で不良判定が下されたワークを選択的に円盤21上から押し落とす方法でなされる。
【0030】
良品のワークWは、不良品排出部IIIを通過して良品排出部IVに移動して良品排出口8に取り出される。ここでの取り出しは、移動してきたワークWを全て切欠き溝から押し出して落下させればよいので、固定された案内具5で行なっても差し支えない。
【0031】
なお、ワーク供給部Iから不良品排出部IIIに至る間でのワーク移動路には、ワークの頭部の形状や大きさの良否、首下軸部の長さの良否などを検査する検査部Vを必用に応じて設けることができる。ワークが首下軸部にねじが切られたボルトである場合には、ねじ山の良否検査も必要であり、そのための検査部も勿論設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の検査装置の実施形態を示す平面図
【図2】図1の検査装置の要部を示す図1矢視A方向の側面図
【図3】図2のX−X線に沿った部分の拡大断面図
【図4】図2のY−Y線に沿った部分の拡大断面図
【図5】図2のZ−Z線に沿った部分の拡大断面図
【図6】可動フレームの背面図
【符号の説明】
【0033】
I ワーク供給部
II,V 検査部
III 不良品排出部
IV 良品排出部
W ワーク
1 フィーダ
1a 支持面
2 搬送装置
3 曲がり検出ユニット
4 プッシャ
5 案内具
6 制御装置
7 不良品排出口
8 良品排出口
21 円盤
22 モータ
23 スタンド
24 ガイド板
25 切欠き溝
26 搬送面
31 回転駆動機構
31a モータ
31b 駆動ローラ
31c 従動ローラ
32 位置決め機構
32a Vブロック
32b 押え板
33 測定器
33a 検知子
33b スライダ
33c 変位センサ
34 判定部
35 ワーク突き上げ機構
35a ヘッドピース
35b アクチュエータ
36 可動フレーム
37 アクチュエータ
38 ボルト
39 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と首下軸部を有するワーク(W)の首下軸部の曲がり不良を検査する装置であって、
周期的に反復移動する搬送面(26)の側縁に切欠き溝(25)を定ピッチで設け、その切欠き溝(25)に前記ワーク(W)の首部を入れ、そのワークの頭部を前記搬送面(26)で下から支えて吊り下げ状態でワークを間欠送りする搬送装置(2)と、搬送路の途中の検査部(II)に配置する曲がり検出ユニット(3)を有し、
前記曲がり検出ユニット(3)が、
駆動ローラ(31b)と複数個の従動ローラ(31c)とで前記ワーク(W)の首下軸部の根元側を挟んでワークを回転させる回転駆動機構(31)と、Vブロック(32a)とこれに対向させた押え板(32b)とで前記首下軸部の先端側を挟んで前記Vブロック(32a)のV溝内に回転可能に保持する位置決め機構(32)と、前記回転駆動機構(31)と位置決め機構(32)との間において前記首下軸部の径方向への振れ量を検出する測定器(33)と、測定した変位量が閾値を越えたときに不良判定を下す判定部(34)を備えたワークの曲がり不良検査装置。
【請求項2】
前記検査部(II)に、前記回転駆動機構(31)の駆動ローラ(31b)と従動ローラ(31c)及び前記位置決め機構(32)のVブロック(32a)と押え板(32b)にそれぞれ挟まれたワーク(W)を下から突き上げてそのワークの頭部を前記搬送面(26)から浮き上がらせるワーク突き上げ機構(35)を設けた請求項1に記載のワークの曲がり不良検査装置。
【請求項3】
前記従動ローラ(31c)と前記Vブロック(32a)を支持する可動フレーム(36)と、可動フレーム駆動用のアクチュエータ(37)を設け、前記可動フレーム(36)を前記アクチュエータ(37)で押し引きして前記従動ローラ(31c)と前記Vブロック(32a)をワーク挟持位置と挟持解除位置に動かすようにした請求項1又は2に記載のワークの曲がり不良検査装置。
【請求項4】
前記従動ローラ(31c)と前記Vブロック(32a)を前記可動フレーム(36)に高さ位置調整可能に取付けた請求項3に記載のワークの曲がり不良検査装置。
【請求項5】
前記搬送装置(2)の搬送面(26)を間欠回転させる円盤(21)の上面で構成し、円盤(21)の周りに、検査するワーク(W)を搬送装置(2)に受け渡すワーク供給部(I)と、前記曲がり検出ユニット(3)を有する検査部(II)と、不良判定が成立したワークを搬送装置(2)から取り出す不良品排出部(III)と、曲がり不良のないワークを搬送装置(2)から取り出す良品排出部(IV)を設けた請求項1〜4のいずれかに記載のワークの曲がり不良検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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