説明

ワークピースキャリア

ワークピースキャリアが、鉛直な軸線(2)回りで回転可能な上方部分(1)と、ボルト(4)によって上方部分(1)に少し離れて連結された下方部分(3)とを備えたベースを具備する。各ワークピースホルダが、ワークピースのシャフトが挿入されうるダクト(10)を囲む、ゴムのような弾性変形可能な材料のスリーブ(9)を具備し、スリーブ(9)はベース上の凹部(5)内に収容される。ベースの上方部分(1)及び下方部分(3)における孔(6、7)を通って延在する、スリーブ(9)の鉛直部分は、下方部分(3)における孔(7)を囲む凹状のリム(8)と、スリーブ(9)の下側に面する突出リム(13)との間に形成されるストッパーによってそれぞれ固定される。シャフトは、押し込まれるように、レバー(14)の圧縮面(15)がスリーブ(9)を圧縮する作動位置にレバー(14)を一つのボルト(4)回りで旋回させることによって固定され、且つ、圧縮面(15)がスリーブ(9)に接触しない非作動位置に戻すようにレバー(14)を旋回させることによって解放されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミーリング工具(milling tool)のようなシャフトを備えたワークピースが、例えば摺動研磨法又は他の表面処理方法によって加工される様々な加工設備において使用されるようなワークピースキャリア(workpiece carrier)に関する。
【背景技術】
【0002】
各ワークピースホルダが、ワークピースのシャフトを収容するスチールのような剛性材料から成るスリーブの形状である、標準タイプ(generic type)のワークピースキャリアが公知である。所定位置にワークピースのシャフトを確実に保つために、スリーブはシャフトを狭く囲まなければならない。すなわち、スリーブの内径はシャフトの直径に適合しなければならない。ワークピースのシャフトの直径が変わるときは常にワークピースキャリアを交換しなければならず、加工が長時間に亘って中断される。
【0003】
径方向にネジが切られたスリーブ内のボアと係合するネジボルトを使用することも公知であり、ネジボルトは、スリーブの対壁にシャフトをクランプすることによって、直径がスリーブの内径よりも小さいシャフトを固定することができる。この態様では、ほとんどの場合、ワークピースキャリアの交換を回避することができる。しかしながら、ワークピースの解放及び固定はやや面倒であり且つ時間がかかる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、様々なシャフト径を有するワークピースを収容することができ且つそれにも関わらず迅速且つ容易な装填及び非装填を可能とする、標準タイプのワークピースキャリアを提供することである。この目的は、請求項1の特徴部分における特徴によって実現される。
【0005】
本発明に係るワークピースキャリアによって、かなり広い範囲に亘って様々であるシャフト径を有するワークピースを、適応を全く必要とすることなく、確実に保持することができる。適応を回避することができない、シャフトの直径が非常に広範囲に亘って異なる場合でさえも、適応は簡単であり且つ時間があまりかからない。ワークピースの固定及び解放を非常に容易且つ迅速に行うことができるので、ワークピースにつき一つの手動作のみが必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明に係るワークピースキャリアを通した鉛直断面を示す。
【図2】図2は、図1のワークピースキャリアを通した水平断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明は、実施形態を示す図面を参照してより詳細に記述される。
ワークピースキャリアはベースを具備し、ベースはディスク形状の上方部分1(図2では図示せず)及びリング形状の下方部分3から成り、ディスク形状の上方部分1は鉛直な軸線2回りで回転可能であるように設置され、リング形状の下方部分3は上方部分1よりも下側に少し離れて配置され且つ複数の鉛直ボルト4によって上方部分1に連結され、各鉛直ボルト4は上方部分1及び下方部分3を貫通する。ワークピースホルダがベースの外周に沿って配置され、各ワークピースホルダは、一つのワークピースを取り込むための凹部5を備える。凹部5はベースの外周の周りで軸線2から固定距離だけ離れて一様に分配される。各凹部5は、上方部分1における円形孔6と、下方部分3における、直径が僅かに小さい同軸の円形孔7とから成る。孔7はリム8によって囲まれ、リム8は下方部分3の上面から僅かに凹んでいる。リム8の外形は上方部分1における孔6の直径と等しい。
【0008】
凹部5の各々はスリーブ9を収容し、スリーブ9は、弾性材料、好ましくはゴム又はいくつかの弾性変形可能なプラスチックから成る。スリーブは一定の断面の円形ダクト10を囲み且つ下方部分11及び上方部分12を具備し、下方部分11の外形は下方部分3の孔7の直径よりも僅かに小さく、上方部分12の外形は下方部分11の外形よりも大きく且つベースの上方部分3における孔6の外形よりも僅かに小さく、上方部分12はその下端部を備え、下端部は、下側に面する環状の突出リム13を形成し、突出リム13は、孔7を囲むリム8によって形成されたストッパーに当接する。スリーブ9は、凹部5内に収容され且つ孔6、7の縁によって緊密に囲まれ、横方向の遊びはほとんどなく、スリーブ9の鉛直位置は、リム8によって設けられたストッパーによって固定される。スリーブ9の上方部分12は上方部分1よりも上側にいくらか突出し且つスリープ9の下方部分11はベースの下方部分3よりも下側にいくらか突出する。
【0009】
ボルト4の一つは、凹部5の各々と軸線2との間に設けられ、ベースの下方部分3をベースの上方部分1に連結すること以外に、レバー14についての旋回軸としても機能し、レバー14は一方の端部において円筒体を保持し、円筒体の外周は滑らかな凸状の圧縮面15として機能する。レバー14はその他方の端部においてボルト4を越えて延在してハンドル16を形成し、ハンドル16はボルト4回りでレバー14を回転すべく把持されることができる。
【0010】
ワークピースがスリーブ9の各スリーブによって保持されることができ、ワークピースのシャフト17はダクト10内に挿入され、加工されるべき部分は、ベースよりも下側に懸架されて、例えば研磨剤(abrasive paste)で満たされた盥(basin)内に延在することができ、ベースは軸線2回りで回転する。当然のことながら、シャフト17の直径は、ダクト10の幅以下であり、好ましくはダクト10の幅よりも小さい。
【0011】
レバー14が基本的には径方向に向けられる、レバー14の作動位置(図2における右側)では、圧縮面15はベースの上方部分1とベースの下方部分3との間でスリーブ9の外側を圧迫し、これによってスリーブ9は弾性的に圧搾され、スリーブ9が、その断面が変形される圧縮された把持形態をとるような態様では、スリーブ9内に収容されたワークピースのシャフト17が、押し込まれて、これによって固定して保持されるように、ダクト10は径方向において狭くされる。この態様において固定されたワークピースは、その位置が実質的に影響されるリスクが全く無い状態で相当な負荷を受けることができる。ワークピースに作用する力が相当なものとなりうる摺動研磨のような表面処理方法でさえも、この点に関しては問題が生じない。シャフト17は、その直径がダクト10の幅よりも著しく小さい場合でさえも、スリーブ9が、それに応じて変形せしめられることができ、シャフトの大きさに自動的に適応するので、確実に固定される。
【0012】
ワークピースの装填及び非装填のために、(図2の左側における)レバー14は、その方向が基本的には方位方向(azimutal)にあるように、約90°だけボルト4回りで回転せしめられる。この非作動位置では圧縮面15はスリーブ9と接触せず、このため、スリーブ9は、その断面が基本的には円形である弛緩した装填形態にあるので、シャフトを押し込まない。このとき、ワークピースは容易に取り外されることができ、新しいワークピースが、装填されて、レバー14をその作動位置に戻すように旋回させることによって固定される。
【0013】
スリーブ9が圧縮面15によって接触せしめられる領域よりも上側及び下側の両方でスリーブ9を固定することによって、スリーブ9が、圧縮面15の衝突によってもたらされる径方向の圧縮を越えて変形することなく、相当な圧力がスリーブに及ぼされうる。このことは、レバー14がその作動位置をとるときにシャフト17の方向が乱されないことを確実なものとする。ボルト4がベースの上方部分1及び下方部分3の両方においてしっかりと固定されるので、これら部分とのボルト4の連結部は、相当な力が圧縮面15によってスリーブ9に及ぼされる場合でさえも、大きなモーメントを受けない。
【0014】
一つの手動作、すなわちハンドル16を把持して引く又は押すことによって、作動位置から非作動位置への変化及び戻りをそれぞれ行うことができる。レバー14がその作動位置に旋回せしめられるときにスリーブ9によって与えられる抵抗は、スリーブ9自体の特性以外にもハンドル16の長さ並びに圧縮面15の形状及び旋回軸(すなわちボルト4)からの距離を選択することによって制御されうる。
【0015】
既に述べられたように、単一タイプのスリーブを用いて、相当な範囲の種々のシャフト径に対処することができる。しかしながら、スリーブを極めて容易に交換できるので、各スリーブが、同じ外形寸法を有するが、異なる幅のダクトを有する種々の組のスリーブを使用することによって範囲を広げることもできる。同一のタイプに関連するスリーブ、又は異なるタイプに関連するスリーブを使用して、直径が異なるシャフトを有するワークピースをワークピースキャリア上に平行に設置して加工することができる。
【0016】
上述された実施形態の多数の修正が本発明の範囲内において可能である。スリーブは、外周が閉じられることができ、すなわち基本的にはチューブ形状にされることができるが、スリーブを圧縮するのに必要な力が小さくなるように、その全長に亘って又はその一部分のみに亘って延在しうる軸方向のスロット又は傾斜したスロットを有することもできる。このことは、スリーブの壁がかなり厚い場合に便利なことがある。レバーの代わりに、スリーブをその把持形態に保持するための他の機械的固定手段、例えばスリーブを囲む伸長可能なワイヤ又はストリップ(strip)を採用することもできる。
【符号の説明】
【0017】
1 上方部分
2 軸線
3 下方部分
4 ボルト
5 凹部
6 孔
7 孔
8 リム
9 スリーブ
10 ダクト
11 下方部分
12 上方部分
13 突出リム
14 レバー
15 圧縮面
16 ハンドル
17 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、複数のワークピースホルダとを備えたワークピースキャリアであって、各ワークピースホルダがワークピースのシャフト(17)を受容するためにあり且つ前記ベースに亘って分配される、ワークピースキャリアにおいて、
前記ワークピースホルダの少なくとも一部が、前記シャフトを囲むためのスリーブ(9)をそれぞれ具備し、該スリーブ(9)が、弾性変形可能な材料から成り、前記ベースの凹部(5)内に配置され、且つ、前記シャフト(17)が前記スリーブ(9)内に導入され又は該スリーブ(9)から取り外されることができる装填形態と、該スリーブが、該スリーブによって囲まれた前記シャフト(17)を押し込むように弾性的に圧縮される把持形態との間で変化可能であることを特徴とする、ワークピースキャリア。
【請求項2】
当該ワークピースキャリアが、各スリーブ(9)について、機械的固定手段であって、当該機械的固定手段が前記スリーブ(9)をその把持形態に保つように該スリーブ(9)に作用する作動位置と、当該機械的固定手段が前記スリーブにそのように作用せず、該スリーブがその装填形態の状態に残される非作動位置との間で切替可能である機械的固定手段を具備することを特徴とする、請求項1に記載のワークピースキャリア。
【請求項3】
各スリーブ(9)が、下方部分(11)と、前記ベース上のストッパーに当接する突出リム(13)によって前記下方部分(11)から隔てられた上方部分(12)とを具備することを特徴とする、請求項1又は2に記載のワークピースキャリア。
【請求項4】
前記ベースが、上方部分(1)と、該上方部分(1)から少し離れた下方部分(3)とから成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。
【請求項5】
各凹部(5)が、前記下方部分(3)における孔(7)であって、前記スリーブ(9)の下方部分(11)が当該孔(7)を通って延在する孔(7)と、前記上方部分におけるより大きな孔(6)であって、前記スリーブ(9)の上方部分(11)が当該孔(6)を通って延在する孔(6)とを具備し、前記スリーブ(9)が前記孔(6、7)の縁によって緊密に囲まれることを特徴とする、請求項3及び4に記載のワークピースキャリア。
【請求項6】
前記下方部分における孔(7)が、前記ストッパーを形成するリム(8)によって囲まれることを特徴とする、請求項5に記載のワークピースキャリア。
【請求項7】
前記固定手段が、それぞれの場合において、前記ベース上に固定された旋回軸回りで回転可能なレバー(14)を具備することを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。
【請求項8】
前記レバー(14)が前記ベースの上方部分(1)と前記ベースの下方部分(3)との間に設置されることを特徴とする、請求項4及び7に記載のワークピースキャリア。
【請求項9】
当該ワークピースキャリアが、各レバー(14)について、前記ベースの上方部分(1)を前記ベースの下方部分(3)と連結するボルト(4)であって、前記レバー(14)が当該ボルト(4)回りで旋回可能である、ボルト(4)を具備することを特徴とする、請求項8に記載のワークピースキャリア。
【請求項10】
前記レバー(14)が、該レバー(14)の作動位置において前記スリーブ(9)を圧迫する滑らかな圧縮面(15)と、前記旋回軸を越えて前記圧縮面(15)から離れるように延在するハンドル(16)とを示すことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。
【請求項11】
前記ベースが鉛直な軸線(2)回りで回転可能であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。
【請求項12】
前記ベースの上方部分(1)及び下方部分(3)がそれぞれディスク形状又はリング形状であり、且つ前記凹部(5)が前記ベースの外周の周りに前記軸線(2)から一定距離だけ離れて一様に分配されることを特徴とする、請求項4又は11に記載のワークピースキャリア。
【請求項13】
各スリーブ(9)が、軸線方向に一定の円形断面のダクト(10)を囲むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。
【請求項14】
各スリーブ(9)がゴム又は弾性変形可能なプラスチックから成ることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のワークピースキャリア。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512036(P2012−512036A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539962(P2011−539962)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008982
【国際公開番号】WO2010/069550
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(507317351)エルリコン トレーディング アクチェンゲゼルシャフト,トリューブバハ (7)
【Fターム(参考)】