説明

ワーク取り出し仕上げ装置

【課題】成形機から取り出した樹脂製のワークを加工する一連の作業を容易、かつ正確に連続的に短時間で行えるワーク取り出し仕上げ装置を提供する。
【解決手段】成形機41から取り出される樹脂製のワークを加工するワーク取り出し仕上げ装置において、前記ワークを前記金型2,3から直接又は間接で取り出すワーク取り出しロボット100と、前記ワークを加工する加工ロボット200とを備え、前記加工ロボット200のアーム先端にはフローティング機構を介して前記ワークの熱収縮に対応すべく倣いが可能な加工具が取り付けられ、前記ワーク取り出しロボット100で取り出したワークを当該ワーク取り出しロボット100で位置決めして保持した状態で、前記加工ロボット200のアーム先端200Aに設けた前記倣いが可能な加工具により前記ワークを保持したまま加工可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機で成形されたワークを自動で取り出し加工・仕上げする一連の作業を容易、かつ正確に行えるワーク取り出し仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂成形などにおいては、成形後のワークを成形機内の金型から取り出して、このワークの端材やバリなどを加工具により除去して製品化することが知られている。従来では、ワークを作業者が成形機内の金型から取り出して、手作業でバリ取りなどを行うか、または、ワークの温度が常温程度まで低下し、寸法変化が収束した後に、ワークを型治具にセットし、例えば、多関節ロボットに超音波カッタを取り付けた切断装置(例えば、特許文献1参照)などにより、ワークの端材やバリなどを除去するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2007/039978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、ワークを成形後に金型から取り出した後、台や治具などに置いて後工程の加工・仕上げを行っていた。しかし、この手法は、タクトタイムが掛かり、一製品一型治具となり、型治具が高価であると同時に、型治具の段取り替えが必要になっていた。更に、成形品を冷却し寸法変化が収束した後に加工する専用機が必要となっていた。成形直後のワークは熱収縮があり、時間と共に寸法が変化するため自動化が困難なためである。製品仕上げを人手によるバリ取りやトリミングで行っていたため、製品品質が安定せず、ワークの高温時に人手が介在することから火傷などの災害の問題があった。同様に、人手の作業が介在すると、休憩などにより、金型による成形を停止する必要があり、製品を安定させるためのテストショットが再度必要となり、余分な時間と共に、余分なコストが発生していた。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、成形機から取り出した樹脂製のワークを加工する一連の作業でワークを保持したまま容易、かつ正確に連続的に短時間で行えるワーク取り出し仕上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、成形機で成形されたワークを自動で取り出し加工・仕上げするワーク取り出し仕上げ装置において、前記ワークを前記成形機から直接又は間接で取り出すワーク取り出しロボットと、前記ワークを加工する加工ロボットとを備え、前記加工ロボットのアーム先端にはフローティング機構を介して前記ワークの熱収縮に対応すべく倣いが可能な加工具が取り付けられ、前記ワーク取り出しロボットで取り出したワークを当該ワーク取り出しロボットで位置決めして保持した状態で、前記加工ロボットのアーム先端に設けた前記倣いが可能な加工具により前記ワークを加工・仕上げ可能としたことを特徴とする。
本発明では、ワーク取り出しロボットがワークを成形機から取り出すと共に、このワーク取り出しロボットで位置決めして保持した状態で、加工ロボットのアーム先端に設けた加工具によりワークを加工し、しかも、この加工具はフローティング機構により前記ワークの熱収縮に対応して、倣い加工が可能に構成されているため、熱収縮でワーク外形が収縮する事態にあっても、ワークの加工が可能であり、成形機から取り出した樹脂製のワークを加工・仕上げする一連の作業を容易、正確にかつ連続的に短時間で行える。
【0006】
この場合において、前記成形機がブロー成形機であり、前記ブロー成形機がワーク取り出し機構を備え、前記取り出し機構で搬送したワークを前記ワーク取り出しロボットが受け取ってもよい。
前記取り出し機構に沿って製品押さえを配置し、前記製品押さえでワークを押さえた状態で、ワークを前記ワーク取り出しロボットが取り出してもよい。
前記成形機が射出成形機であり、前記成形機に前記ワーク取り出しロボットのアーム先端が進入し、前記ワーク取り出しロボットが前記ワークを取り出してもよい。
【0007】
前記ワーク取り出しロボットによる保持面と反対側の面を前記加工ロボットが加工した後のワークを載置する型治具を備え、この型治具で保持した状態で、前記保持面を前記加工ロボットが加工してもよい。
前記加工ロボットのアーム先端に取り付けられ、振動子で振動してワークの直線部或いは曲線部を切断可能とするカッタ刃を備えてもよい。
前記加工ロボットによるワークの加工位置に端材回収手段を設け、前記端材回収手段とは別の位置に、ワークの製品回収手段を設け、ワークの加工後に前記ワーク取り出しロボットにより当該ワークを製品回収手段に移送してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ワーク取り出しロボットがワークを成形機から取り出すと共に、このワーク取り出しロボットで位置決めして保持した状態で、加工ロボットのアーム先端に設けた加工具によりワークを加工し、しかも、この加工具はフローティング機構により前記ワークの熱収縮に対応して倣い加工が可能に構成されているため、熱収縮でワーク外形が収縮しても、ワークの加工が可能であり、成形機から取り出した樹脂製のワークを加工する一連の作業を容易、かつ正確に連続的に短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態によるワーク取り出し仕上げ装置の平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】ワーク取り出しロボットの動作説明図である。
【図4】加工具を示す側面図である。
【図5】同正面図である。
【図6】加工具を示す斜視図である。
【図7】別実施の形態による加工具を示す斜視図である。
【図8】別実施の形態によるワーク取り出し仕上げ装置を示す平面図である。
【図9】別実施の形態によるワーク取り出し仕上げ装置を示す平面図である。
【図10】ワーク取り出しロボットの動作説明図である。
【図11】別実施の形態によるワーク取り出し仕上げ装置を示す平面図である。
【図12】ワーク取り出しロボットの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態によるワーク取り出し仕上げ装置を示す。
一般的に、仕上げ加工が完了するまでは半製品であり、仕上げ加工が完了した後は、完成品と呼称されるが、本明細書では、説明上の便宜のため、半製品および完成品を、共に、ワークと呼称するものとする。
本ワーク取り出し仕上げ装置は、ブロー成形機41によるブロー成形直後に成形機内の金型2,3から取り出された樹脂製のワークに付随したバリの除去や、トリミングや、穴開け加工・仕上げなどを行う装置であり、ワーク取り出しロボット100と、加工ロボット200とを備えて構成されている。
成形機内の金型2,3から取り出されたワークは、ワーク取り出しロボット100がそのまま位置決めした状態で保持し、ワークがブロー成形直後に加工ロボット200のアーム先端200Aに設けた加工具により加工される。
【0011】
上記ブロー成形機1は、成形機内に一対の金型2,3を備え、一対の金型2,3内にパリソンを充填して、当該パリソン内に空気をブローすることにより、製品がブロー成形される。このブロー成形後には、一対の金型2,3が矢印方向に開かれて、金型2,3から取り出し機構4を介してワークが取り出される。
この取り出し機構4は、図2に示すように、一対の金型2,3の上方に沿うレール5に対しチェーン駆動などによる搬送手段6が掛け渡されており、この搬送手段6により例えばワーク40が吊り下げられた状態で図中左方へ搬送される。ワーク40は成形直後の高温の状態にあり、製品(例えば樹脂製容器。)となる本体40Aの周囲に、金型2,3のパーテーションラインに沿う大きなバリ40Bが形成され、バリ40Bが搬送手段6で吊り下げられて搬送される。
【0012】
上記取り出し機構4に沿って製品押さえ7が配置されている。この製品押さえ7は、図1に示すように、シリンダ7Aと、シリンダ7Aのロッド先端に固定された押さえバー7Bと、複数のガイドロッド7Cとを備えている。ワーク40が取り出し機構4で吊り下げられて製品押さえ7の位置に搬送されると、シリンダ7Aの駆動により押さえバー7Bが突出し、押さえバー7Bとワーク40が当接する。
ついで、図3に示すように、ワーク取り出しロボット100が駆動されて、そのアーム先端100Aが製品押さえ7位置のワーク40に対向し、アーム先端100Aの吸着プレート100Bと、押さえバー7Bとの間にワーク40が挟まれ、吸着プレート100Bの吸盤(不図示)によりワーク40が吸着され保持される。
【0013】
ワーク取り出しロボット100は、アーム先端100Aの吸着プレート100Bにワーク40を吸着保持した後、駆動されて、図1に示すように、ワーク40を端材コンベア10上、又は、切り屑回収箱11上のワーク加工位置に移動する。
このときには、後述する加工ロボット200の加工作業が容易になるように、ワーク40の加工面が加工ロボット200に向けて移動される。
端材コンベア10、及び切り屑回収箱11は、ワーク取り出しロボット100、及び加工ロボット200の各動作範囲の重複範囲T内に設置されている。端材コンベア10上でワーク40が加工されると、端材が端材コンベア10上に落下し、端材コンベア10を介して例えばクラッシャー(不図示)に移送される。また、切り屑回収箱11上でワーク40が加工されると、端材が切り屑回収箱11に落下する。大きな端材は、クラッシャー(不図示)に移送して端材処理に回すが、小さな切り屑はクラッシャー(不図示)を壊す恐れがあるため、切り屑回収箱11に回収して処理する。
【0014】
ワーク取り出し仕上げ装置では、上述したように、ワーク取り出しロボット100がワーク40を位置決めして保持した状態で、加工ロボット200によりワーク40の加工が行われる。ワーク40の加工時に、ブロー成形完了から時間が殆ど経過しておらず、ワーク40は冷却されておらず、高温の状態にある。
加工ロボット200は、一般的な6軸垂直多関節ロボットであり、図4及び図5に示すように、そのアーム先端200Aには、エア駆動付きスライドテーブル21が取り付けられ、スライドテーブル21にはスライド部23が設けられている。このスライド部23は一対のエア供給口(図示せず)に印加されるエア圧力のバランスに依存して、その位置が矢印A方向に移動自在、すなわち、ワーク40に対してフローティング状態となるようにされたフローティング機構として構成されている。
各エア供給口(図示せず)に印加されるエア圧力は、両者のバランスを取れるように独立して制御可能であり、ツール姿勢に起因してツール重量が負荷となるときには、このツール重量をキャンセルすべく各エア供給口に印加される圧力を、ツール姿勢に応じて自動調整できる。ワーク40に対しフローティング状態のスライド部23には、超音波振動子ホルダ25が取り付けられ、この超音波振動子ホルダ25には超音波振動子27が取り付けられている。
【0015】
超音波振動子27の支持ホーン27Aの先端には、図5に示すように、カッタ刃29が固定されている。このカッタ刃29は、超音波振動子27の振動に応じてカッタ刃29の送り方向(矢印B方向)とほぼ直交する方向(矢印C方向)に超音波振動する。超音波振動子27には超音波ユニット(図示せず)が接続され、当該超音波ユニットで駆動される。尚、超音波振動子27に限定されず、振動体または振動機構でもよい。
カッタ刃29は、図6に示すように、前端面29Fおよび後端面29Rを有し、ワーク40(例えば介護用ベッド部品、コピー機部品、ツールボックス、保温樹脂ボックス、自動車用エアスポイラー、自動車用内装部品、家電製品の樹脂部品など)の例えばパーティングライン44に形成されたバリ40Bの基部(根元)に当接する。
この場合において、前端面10Fの後退角φは適宜設定するが、およそ10゜程度に設定される。カッタ刃29は、バリ40Bの根元に対応した例えば幅数mm程度の切れ刃部29Aと、ワーク40の各面部43A,43Bに対応した切れ刃を構成しない曲面状の倣い部29Bとを、カッタ刃本体部29Cの前端面29F側に備えて構成されている。この場合、切れ刃部29Aの幅Wは0.6〜1mm程度が一般的であるが、ワーク40に形成されたバリの形状などに応じて適宜変更が可能である。
【0016】
図1を参照し、加工ロボット200の動作範囲内には、センサー130が設置されている。このセンサー130は、例えばタッチセンサーであって、加工ロボット200の制御装置(不図示)に接続されており、センサー130から接触検出の信号が入力されると、制御装置(不図示)が瞬時に加工ロボット200を停止させる。センサー130はタッチセンサーのほか、押し込み量に応じて出力が可変するセンサーでもよい。
制御装置(不図示)は、所定のプログラムに従って、工具先端がセンサー130に接近・接触するよう加工ロボット200の動作を制御するほか、上記所定のプログラムにおける工具の基準座標を記憶しており、工具先端がセンサー130に接触して加工ロボット200が停止するたびに、基準座標と実際の工具先端の座標とを比較して、基準座標と実際の工具先端の座標とのずれ量が、許容値以内であるか否かを判定する。
【0017】
この基準座標は、例えば、工具交換直後に、上記所定のプログラムにしたがって加工ロボット200を動作させた際に、センサー130が工具先端の接触を検出して加工ロボット200が停止したときの工具先端の座標である。また、上記判定タイミングは、製品を加工するサイクルで少なくとも一回は行うとよい。
なお、制御装置(不図示)には、ランプやスピーカー等の警報信号出力装置が接続されており、基準座標と工具先端の座標とのずれ量が許容値を超えている場合には、工具交換を促す警報信号が出力される。
あるいは、ワーク取り出し仕上げ装置が、自動で刃物の交換を行う工具自動交換装置を備え、基準座標と工具先端の座標とのずれ量が許容値を超えている場合には、刃物を自動交換するプロセスへ移行する構成であってもよい。
【0018】
この実施の形態では、加工ロボット200でワーク40の加工(例えば、バリ取り加工。)が行われるとき、図1に示すように、ワーク取り出しロボット100がワーク40を位置決めして保持する。即ち、ワーク取り出しロボット100がワーク40を位置決めして保持した状態で、図6に示すように、加工ロボット200のアーム先端200Aに設けた加工具としてのカッタ刃29によりワーク40が加工される。
本実施の形態では、加工ロボット200のアーム先端200Aにフローティング状態のスライド部23が設けられ、スライド部23に超音波振動子ホルダ25、超音波振動子27を介してカッタ刃29が取り付けられるため、例えば、ワーク40の形状が熱収縮などにより変化しても、フローティング機構によりカッタ刃29がワーク40の形状変化に倣うことが可能となり、成形機内の金型2,3から取り出したブロー成形直後の高温状態にあるワーク40であっても精度良い加工を行うことができる。
この構成では、所謂加工具がフローティング機構により前記ワーク40の熱収縮に対応して倣い加工が可能に構成されているため、熱収縮でワーク外形が収縮しても、ワークの加工が可能であり、金型2,3から取り出した樹脂製のワーク40を加工する一連の作業を容易、かつ正確に連続的に短時間で行える。
【0019】
さて、ワーク取り出しロボット100、及び加工ロボット200の一連の作業は、6軸垂直多関節ロボットへのティーチングにより実行される。このティーチングには、オペレータが実際に一度ないし数度、6軸垂直多関節ロボットのアームを動かしてアームの移動経路に相当する経路情報を記憶させるダイレクトティーチングや、CADシステムなどの設計システムで作成した形状情報を利用して自動的に経路情報を生成する経路自動生成システムが考えられる。
樹脂成形品の場合には、ダイレクトティーチングあるいは経路自動生成システムにより得られる経路情報は、実際の加工対象となるワーク40の大きさにバラツキがあるため、必ずしも正しい経路とはならない。
とくに本実施の形態では、上述したように成形機内の金型2,3から取り出されるワーク40がかなり高温であり、冷却せずに高温のまま加工ロボット200が加工を実行するため、加工の最中にワーク40が熱収縮し、例えば700mmの大きさのワークに対し20mm程度の熱収縮が起こり、この熱収縮も影響して各ワーク40に対して必ずしも正しい経路とはなり得ない。
【0020】
本実施の形態では、上述したように、加工ロボット200がスライド部23を用いたフローティング機構を有し、このフローティング機構による倣い制御を行っているため、樹脂成形直後の熱収縮によるワーク40の外形収縮のみならず、製品のばらつきによる「ずれ」を吸収でき、ワーク取り出しロボット100、及び加工ロボット200による一連の加工作業を正確にかつ円滑に実現できる。
また、ワーク取り出しロボット100に対する加工ロボット200の姿勢が変化し、ワーク40に対するカッタ刃29の姿勢が変化しても、カッタ刃29に倣い部29Bが形成されているため、切れ刃部29Aがワーク40に食い込むことがなく正確にかつ円滑な加工(バリ取り加工)が行われる。尚、従来において、金型2,3の設計時には樹脂製品の縮み代を考慮した大きさとなるように、金型の設計が行われている。この考え方を反映させ、加工ロボット200のティーチングに際し、樹脂製品の縮み代を考慮したティーチングを行うことも可能である。
ワーク40の収縮や変形が、上記スライド部23の許容差より大きい場合などには、図示を省略したセンサーやカメラなどによりワーク40の収縮や変形を検知し、該スライド部23の範囲内にワーク40を位置させるようにすれば、ワーク40に食い込むことなく正確にかつ円滑に倣い加工ができる。
【0021】
ワークの加工後には、ワーク取り出しロボット100が動作し、端材コンベア10又は切り屑回収箱11の上方のワーク加工位置から製品排出シュート51の上に移送し、吸着プレート100Bの吸盤(不図示)による吸着を解除し、ワーク40を製品排出シュート51内に落下させて製品回収される。尚、製品によって排出の仕方は種々提案できる。例えば外面に傷が付いてもよいとき、上述の製品排出シュート51により回収すればよく、製品通箱に並べて管理するときには、ワーク取り出しロボット100が直接通箱に整列させて並べるようにしてもよい。
上述の一連のワーク加工作業が終了すると、ワーク取り出しロボット100は、ワーク40を取り出せる状態となり、取り出し機構4に沿う製品押さえ7の近傍に移動し、つぎの成形サイクル完了後に取り出し機構4で吊り下げられてワーク40が金型2,3から所定位置に搬送されるまで待機する。
【0022】
上記端材には、例えば大きな端材、或いは小さな端材、更には細かい切り屑などが混在する。樹脂加工では回収した端材を再利用することが頻繁に行われ、しかも、樹脂の端材の大きさで再利用の仕様が異なることがある。
このときには、図示は省略したが、ワーク取り出しロボット100及び加工ロボット200の動作範囲の重複範囲T内に、複数の端材コンベア10を設置する。例えば、大きな端材がでるとき、第1の端材コンベア(不図示)上に、ワーク40を吸着したワーク取り出しロボット100を移動させ、第1の端材コンベア上の加工位置で、加工ロボット200で加工を行い、小さな端材がでるとき、例えば第2の端材コンベア(不図示)上にワーク取り出しロボット100を移動させ、第2の端材コンベア上の加工位置で加工ロボット200により加工を行い、細かい切り屑がでるとき、切り屑回収箱11上にワーク取り出しロボット100を移動させ、切り屑回収箱11上の加工位置で加工ロボット200により加工を行えばよい。
【0023】
本実施の形態では、ワーク取り出しロボット100がワークを保持した状態で、加工ロボット200がワークを加工するため、各ロボット100,200の移動により、所謂ワーク40の加工位置を任意の位置に容易に変更できる。
従って、例えば端材コンベア10上の加工位置で加工することで大きな端材を端材コンベア10に移送して、クラッシャー(不図示)に移送して端材処理に回すと共に、細かい切り屑はクラッシャー(不図示)を壊す恐れがあるため、切り屑回収箱11に回収して処理するなど、端材を所謂分別回収できる。
加工時に、ワーク40が大きく、ワーク40の下部と上部とで端材を切り分ける場合には、切り離した端材が、ワーク取り出しロボット100のアームに干渉しないように、ワーク40を回転させて端材を落下させればよい。
このとき、ワーク取り出しロボット100は、加工ロボット200がワーク40を加工し易い位置に当該ワーク40を位置させるように、逐次姿勢制御され、最適な作業範囲に位置付けられる。
【0024】
上記構成においては、ワーク取り出しロボット100がワーク40を吸着保持するため、ワーク取り出しロボット100による保持面(吸着面)は加工ロボット200により加工することができない。
この場合には、まず、加工ロボット200により保持面(吸着面)と反対側の面が加工され、ついで、加工後のワークがワーク取り出しロボット100により型治具55(図1参照。)上に移送され、型治具55上に載置される。型治具55は、図1に示すように、重複範囲T内の切り屑回収箱11の例えば内側に配置されている。型治具50は中空体であり、図示は省略したが、表面に吸着孔が開口し、型治具50の表面に空気の漏洩を防止するパッキンを介してワーク40が載置され、吸着孔(不図示)から吸引されてワーク40が型治具55上に吸引固定される。
そして、型治具55にワーク40を固定した状態で、ワーク40の保持面(吸着面)を加工ロボット200により加工できる。この加工時の端材は、切り屑回収箱11(または上記端材コンベア10)を介して回収される。
【0025】
図7は、上記加工具の別実施の形態を示す。
この加工具は、取り付け状態は図示を省略したが、加工ロボット200のアーム先端200Aに取り付けられる。この加工具は接続アーム18を有し、接続アーム18にはスピンドルユニット31が固定されている。このスピンドルユニット31は主軸(スピンドル)32を有し、主軸32の先端にはチャック34が取り付けられ、チャック34にはエンドミル35が取り付けられている。主軸32は主軸モータを含み、主軸モータは小径かつ軽量ながらも、最高回転数20,000rpm以上を得ることが可能なモータであり、とくに望ましくは、40,000〜80,000rpmの超高速回転が可能な高周波モータが用いられる。また、接続アーム18には支持ブロック36を介して超音波振動装置37が取り付けられている。この超音波振動装置37は超音波振動子38および支持ホーン39を有し、支持ホーン39には上記の構成とほぼ同様に構成されたカッタ刃129が取り付けられている。このカッタ刃129には、図示は省略したが、切れ刃部と、倣い部とが一体に形成されている。
【0026】
カッタ刃129は、成形品の加工においては、直線のトリミング、曲率の小さな曲線(立体曲線を含む)のトリミング、所定直径以上(直径8mm以上)の穴あけを行う。また、エンドミル35は、例えば、多様な穴あけに対応可能な直径2mm程度のエンドミルであり、切れ味を向上させて切削抵抗および切削熱を抑制できるように、大きく正のすくい角を持たせてある。さらに切削屑を先端方向に排出するように逆リードに構成してもよい。このエンドミル35は、成形品の加工においては、曲率の大きな曲線のトリミングおよび所定直径未満(直径8mm未満)の孔の孔あけを行う。曲率が大きい場合、カッタ刃26では、刃折れが生じやすく、曲率の大きな曲線のトリミングや所定直径未満(直径8mm未満)の孔の穴あけが困難だからである。
【0027】
上記加工具は、図4,図5,図7に示す加工具に限定されない。例えば、本出願人が、既に特許出願して出願公開されている、倣い部を有したエンドミルや、スクレイパーを負のすくい角でワーク表面に押し当てながら、ロボット操作する面取り工具などでもよい。これら工具は、ワーク取り出しロボット100がワーク40を位置決めした状態で、加工ロボット200がワーク40の加工を行う際に、工具がワーク40に食い込むことがなく、精度よく仕上げられる。
【0028】
図8は、別の実施の形態を示す。尚、図8では、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して示し、説明を省略する。本実施の形態によれば、加工ロボット200が複合型多関節の作業ロボットで構成されている。加工ロボット200は双腕型ロボットで、それぞれ独立して機能する2台のロボットを一体に組み合わせたもので、それぞれの動作を一元的にコントロールできるようになっている。例えば、ワークが大きく、加工ロボット200による加工時間が長くかかる一方で、成形機による成形サイクルタイムが短い場合などには、加工ロボットを複数台配置し、協調作業を行うことによって、成形機による所謂成形サイクルに見合った加工作業を実現できる。この構成では、ワークの成形サイクルに合わせて加工スピードを向上できる。
【0029】
図9は、別の実施の形態を示す。尚、図9では、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して示し、説明を省略する。本実施の形態では、ワーク取り出しロボット100により、ワークが、射出成形機61の金型62から直接的に取り出される。この金型62は、上下に分割される構成となっており、射出による樹脂成形が完了すると、下型を基準に上型が上方へ離間し、下型側にワーク(成形品)が残る。ワークはイジェクトピン(不図示)で押し上げてもよい。この状態で、図10に示すように、ワーク取り出しロボット100のアーム先端100aが、上型と下型間に進入して、アーム先端100aの吸着プレート100Bによりワークが吸着保持される。
そして、ワーク取り出しロボット100が動作し、図9に示すように、端材コンベア10上の加工位置にワークが移送され、この加工位置で上記実施の形態と同様の手順で、加工ロボット200による加工が行われる。
【0030】
図11は、別の実施の形態を示す。尚、図11では、図9,図10と同一部分には同一符号を付して示し、説明を省略する。この実施の形態では、ブロー成形機41によるブロー成形後に、金型2,3から取り出された樹脂製のワーク40のバリ取りや、トリミングや、穴開け加工する装置として説明する。
この構成では、ワーク取り出しロボット100と加工ロボット200とが複合型多関節の作業ロボットで構成され、図示の例では、切り屑回収箱11上の加工位置でワーク取り出しロボット100が保持したワーク40を加工ロボット200が加工し、切り屑が切り屑回収箱11に落下する。
この複合型多関節ロボットは、切り屑回収箱11上のみならず、端材コンベア10上も加工位置とされ、このとき、端材は端材コンベア10に落下し、クラッシャー(不図示)に移送されて端材処理される。
【0031】
上記ブロー成形機1は、一対の金型2,3内にパリソンを充填し、当該パリソン内に空気をブローすることにより、製品がブロー成形される。ブロー成形後には、一対の金型2,3が開かれ、図12に示すように、ワーク取り出しロボット100のアーム先端100Aが、金型2,3間に進入し、吸着プレート100Bにより直接ワーク40を吸着保持する。そして、ワーク取り出しロボット100が、図11に示すように、ワーク40を切り屑回収箱11(又は端材コンベア10)上のワーク加工位置に移送する。このとき、加工ロボット200の加工作業が容易になるようにワーク加工面が加工ロボット200に向けて固定される。そして、この加工位置で上記形態と同様の手順で、加工ロボット200による加工が行われる。
この実施の形態では、ワーク取り出しロボット100と加工ロボット200とが複合型多関節の作業ロボットで構成されるため、作業ロボットの動作範囲内で加工が行われることとなり、省スペース化が図れる。
【符号の説明】
【0032】
2,3 金型
4 取り出し機構
7 製品押さえ
10 端材コンベア
11 切り屑回収箱
T 重複範囲
40 ワーク
41 ブロー成形機
55 型治具
61 射出成形機
100 ワーク取り出しロボット
200 加工ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機から取り出される樹脂製のワークを加工するワーク取り出し仕上げ装置において、前記ワークを前記成形機から直接又は間接で取り出すワーク取り出しロボットと、前記ワークを加工する加工ロボットとを備え、前記加工ロボットのアーム先端にはフローティング機構を介して前記ワークの熱収縮に対応すべく倣いが可能な加工具が取り付けられ、前記ワーク取り出しロボットで取り出したワークを当該ワーク取り出しロボットで位置決めして保持した状態で、前記加工ロボットのアーム先端に設けた前記倣いが可能な加工具により前記ワークを加工可能としたことを特徴とするワーク取り出し仕上げ装置。
【請求項2】
前記成形機が金型からワークを取り出す取り出し機構を備え、前記取り出し機構で搬送されたワークを前記ワーク取り出しロボットが受け取ることを特徴とする請求項1に記載のワーク取り出し仕上げ装置。
【請求項3】
前記取り出し機構に沿って製品押さえを配置し、前記製品押さえでワークを押さえた状態で、ワークを前記ワーク取り出しロボットが取り出すことを特徴とする請求項2に記載のワーク取り出し仕上げ装置。
【請求項4】
前記ワーク取り出しロボットによる保持面と反対側の面を前記加工ロボットが加工した後のワークを載置する型治具を備え、この型治具で保持した状態で、前記保持面を前記加工ロボットが加工することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のワーク取り出し仕上げ装置。
【請求項5】
前記加工ロボットによるワークの加工位置に端材回収手段を設け、前記端材回収手段とは別の位置に、ワークの製品回収手段を設け、ワークの加工後に前記ワーク取り出しロボットにより当該ワークを製品回収手段に移送することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のワーク取り出し仕上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−218192(P2012−218192A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83233(P2011−83233)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【特許番号】特許第4955823号(P4955823)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(599043585)日本省力機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】