説明

ワーク回転装置およびワーク実装システム

【課題】簡易な構成でワークを迅速かつ精確に所望の姿勢にすることができるワーク回転装置およびワーク実装システムを提供する。
【解決手段】本発明のワーク回転装置70は、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bと、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bと、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bと、ストッパ機構75と、フレームブロック76と、駆動機構77と、を主に備える。また、本発明のワーク実装システムは、搬送装置と、ワーク供給装置と、第1位置調整装置と、極性検出装置と、不良品排出装置と、ワーク回転装置70と、外観検査装置と、第2位置調整装置と、ワーク格納テーブルと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の小型電子部品の向きを所定角度に回転させて変える際に用いられるワーク回転装置、および、ワーク実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICチップ、抵抗素子、コンデンサー素子、コイル素子、発光ダイオード等の各種の小型電子部品(ワーク)を回路基板等に実装するに際して、そのワークを所定の姿勢で保持して実装装置に供給するために、ワークをテープに保持する実装用テープなどの実装用基材が用いられる。この実装用テープには、ワークの特性、実装装置への実装位置、用途等に応じて、所望の姿勢、所定の角度でワークが配置される。
【0003】
この実装用テープとして、例えば、キャップが被せられた発光ダイオード(ワーク)を実装用テープの表面に所定の角度で整列して配置した発光ダイオード実装用テープが知られている。この発光ダイオード実装用テープは、特に、発光ダイオードが、正しい極性で実装されることが必要であるため、より精確に所望の姿勢に整列させて、その発光ダイオードが配列されていることが求められる。
【0004】
こうしたワークを所定の姿勢に整列させるための装置として、ICチップ(ワーク)の表裏を判別した後、ICチップを表裏いずれかの向きに揃えて実装用テープに配列する装置が知られている(特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。また、電子部品に限らず、各種の産業分野で物品の整列が求められる場合がある。そして、整列に際して、表裏の回転だけでなく、30度、60度等、物品の包装姿勢にすることが求められることがある。
【特許文献1】特開2001−196441号公報(段落番号[0102]〜[0106]、図10、図21、図22)
【特許文献2】特開2000−150209号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平11−255325号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の装置は、ワークを表裏いずれかの向きに反転させるものであるため、ワークの回転させる角度を自由に設定することが困難であった。また、小さなワークの搬送を行う搬送径路に沿って装置が設置されるため、簡易な構成でかつ精確な動作をすることが困難であった。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決するために創案されたものであり、簡易な構成でワークを迅速かつ精確に所望の姿勢にすることができるワーク回転装置およびワーク実装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のワーク回転装置は、テープ状の実装用基材の実装位置にワークを予め設定された向きで配置するために、前記ワークを所定角度に回転させるワーク回転装置において、前記ワークを吸着保持するワーク保持手段が予め設定した設定位置に前記ワークを搬送したときに前記ワークの両側から近接離間自在に直線移動して当該ワークを挟持する第1挟持機構および第2挟持機構と、この第1挟持機構および第2挟持機構にそれぞれ設けられ、前記直線移動の移動軸周りに前記第1挟持機構および第2挟持機構を同期して所定角度において回転させる第1回転機構および第2回転機構と、前記第1挟持機構および前記第2挟持機構を支持する支持体と、この支持体を予め設定された上昇端から下降端まで移動させる駆動機構と、この駆動機構により移動する前記第1回転機構および前記第2回転機構に対面して設置され前記上昇端から前記下降端までガイドする第1ガイド手段および第2ガイド手段と、を備え、前記第1回転機構および前記第2回転機構が、前記第1ガイド手段および前記第2ガイド手段に沿って移動するときに、前記上昇端から前記下降端まで、あるいは、前記下降端から前記上昇端までの往復動のいずれか一方において、前記第1挟持機構および前記第2挟持機構を設定した角度に回転させる構成とした。
【0008】
このように構成したワーク回転装置は、ワークが所定位置に搬送されてくると、第1挟持機構および第2挟持機構が両側から直線移動してワークを挟持し、その挟持した第1挟持機構および第2挟持機構を、駆動機構により支持体を介して下降端まで移動させるとともに、下降端から上昇端まで再び移動させる。ワーク回転装置は、この往復移動を行うときに、第1回転機構が第1ガイド手段に沿って移動し、かつ、第2回転機構が第2ガイド手段に沿って移動して、第1回転機構と第2回転機構が同期してワークを所定角度に回転させている。
【0009】
また、本発明のワーク回転装置において、前記第1挟持機構および前記第2挟持機構は、互いに近接する方向に付勢する弾性部材を介して設けた軸部と、この軸部を直線方向に移動可能にスプラインを介して設けた軸筐体と、この軸筐体から前記ワーク側に突出する前記軸部の先端に設けられ前記ワークに当接して挟持する先端挟持部と、この先端挟持部を支持するとともに前記軸部に設けたフランジと、をそれぞれ備え、前記第1回転機構および第2回転機構は、前記軸筐体を保持すると共に、一方向に回転させ他方向に回転させない軸用一方向回転機構と、この軸用一方向回転機構または前記軸筐体に設けた歯付プーリと、をそれぞれ備え、前記第1ガイド手段および前記第2ガイド手段は、一方と他方の回動軸と、この回動軸の一方に、一方向に回転させ他方向に回転させないガイド用一方向回転機構を設けると共に、前記回動軸の他方に設けたプーリと、前記ガイド用一方向回転機構および前記プーリに掛け渡し前記歯付プーリと噛合する歯付ベルトと、をそれぞれ備え、前記ワーク保持手段から前記第1挟持機構および前記第2挟持機構に前記ワークを受け渡すまでと、前記ワーク保持手段に前記ワークを受け渡した後に前記第1挟持機構および前記第2挟持機構の前記直線方向の移動を規制するストッパ機構を前記支持体に設けた構成とした。
【0010】
このように構成したワーク回転装置は、第1回転機構および第2回転機構が支持体の移動に伴って下降する方向に移動すると、第1ガイド手段および第2ガイド手段のガイド用一方向回転機構により、空回りした状態で歯付ベルトを回転させ、第1挟持機構および第2挟持機構の軸用一方向回転機構により、歯付プーリが回転しない状態で、ワークを挟持する両挟持機構を下降端まで移動させる。つぎに、ワーク回転装置は、支持体の移動に伴って上昇する方向に移動すると、今度は第1ガイド手段および第2ガイド手段のガイド用一方向回転機構により歯付ベルトが回転できない状態となり、かつ、第1回転機構および第2回転機構のそれぞれの軸用一方向回転機構が空回りする状態となり、歯付プーリの回転に伴って両挟持機構の軸筐体を所定角度回転させ、両挟持機構の先端挟持部が保持するワークを所定角度回転させている。なお、ワーク回転装置は、ストッパ機構により両挟持機構が上昇端となっているときには、ワークから離間している状態となる。
【0011】
また、本発明のワーク回転装置において、前記ストッパ機構は、前記フランジに当接する当接アームと、この当接アームの一端に所定角度を付けて設けた水平アームと、この水平アームの他端側を前記支持体に回動自在に軸支するストッパ支軸とをそれぞれ備え、前記支持体は、前記第1挟持機構および第2挟持機構を同じ高さ位置に支持する第1ブロックおよび第2ブロックと、この第1ブロックおよび第2ブロックの間に設けられ、中央に連通溝を有する中央ブロックとを備え、前記連通溝は、その連通方向の所定位置に溝幅を大きくした溝大部を有し、前記駆動機構は、駆動モータと、この駆動モータの回転を直線運動に変換するクランクと、このクランクにより前記支持体を上下に移動させるセンタシャフトとを備え、前記センタシャフトは、その先端が前記上昇端において前記ストッパ機構の水平アームを押動する位置に配置されると共に、前記支持体の連通溝に沿って連通して配置され、かつ、前記溝大部に遊嵌するように形成された当接押部を有すると共に、前記中央ブロックを常に上方に付勢するブロック用弾性部材を当該センタシャフトおよび中央ブロックの間に有し、前記水平アームを押動する位置に、前記センタシャフトが前記ブロック用弾性部材に抗して前記中央ブロックより突出するように前記支持体の上昇端位置を規制する規制部を備える構成とした。
【0012】
このように構成したワーク回転装置は、センタシャフトが溝大部内において降下する方向に移動することで、当該センタシャフトの先端で押していたストッパ機構の水平アームが開放され、挟持部のフランジの移動を規制していた当接アームによる規制が解除される。そのため、両挟持機構の軸部が弾性部材により付勢されることで先端挟持部がワークの両側から当該ワークを挟持する。また、ワーク回転装置は、駆動機構によりセンタシャフトが下端方向方に移動すると、支持体の中央ブロックの溝大部に遊嵌した状態から溝大部の一面に当接するまで、ブロック用弾性部材に抗してセンタシャフトが移動し、溝大部の一面に当接押部が当接してさらにセンタシャフトが降下することで支持体を下降端まで移動させる。また、ワーク回転装置は、センタシャフトを上昇方向に移動させることで、支持体を上昇端まで移動する。このとき、センタシャフトの当接押部と中央ブロックの溝大部との位置関係は、ブロック用弾性部材により維持されている。そして、支持体が上昇端において規制部に当接すると、センタシャフトの当接押部が溝大部内において移動できる範囲でセンタシャフトをブロック用弾性部材の弾性力に抗して上昇させ、センタシャフトの先端をストッパ機構の水平アームに当接させ、当接アームにより両挟持機構のフランジを離間させる方向に弾性部材に抗して移動させる。
【0013】
また、本発明のワーク実装システムは、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワーク回転装置と、前記ワーク回転装置にワークを搬送して供給するワーク供給装置と、前記ワーク回転装置によって所定の姿勢で回転されたワークを実装用基材に格納するワーク格納装置と、を備える構成とした。
【0014】
このワーク実装システムでは、本発明のワーク回転装置によって、ワーク供給装置によって供給されるワークを所定角度に回転させ、回転させたワークをワーク格納装置によって実装用基材に供給して実装用基材の実装位置に所定の姿勢で配置することで、迅速かつ精確にワークを整列させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のワーク回転装置によれば、ワークを迅速かつ精確に所定角度に回転させて所望の姿勢にすることができる。そのため、所望の姿勢でワークを実装用基材の実装位置に配置することが可能となる。しかも、ワーク回転装置は、ワークの実装時の姿勢、配向角度等を任意に制御することを、駆動源の少ない比較的に簡易な構成で実現することが可能となる。
【0016】
また、本発明のワーク実装システムによれば、ワークを迅速かつ精確に所望の姿勢にして、実装用基材に実装することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明のワーク回転装置およびこのワーク回転装置を備えたワーク実装システムについて、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明に係るワーク実装システムの構成例を模式的に示す平面図である。
【0018】
図1に示すワーク実装システム1は、搬送装置20と、ワーク供給装置30と、第1位置調整装置40と、極性検出装置50と、不良品排出装置60と、ワーク回転装置70と、外観検査装置80と、第2位置調整装置90と、ワーク格納テーブル100と、を備えている。そして、ワーク実装システム1は、矢印Aの方向に回転駆動される搬送装置20の搬送台21を囲むように各装置が円周上に配置され、ワーク実装テープ(実装用基材)Tを搬送台21に対してその円弧を横断するように配置して構成されている。
【0019】
搬送装置20は、ワークW(図2参照)をワーク実装システム1の各装置に搬送するためのものであって、円板状に形成した搬送台21と、この搬送台21に設けられたワーク保持手段22とを備えて構成される。
【0020】
搬送台21は、略円盤状であって、中心部には、図示しない駆動装置から延びる軸が連結されて回転可能に保持されている。
また、搬送台21は、図示しない制御装置により、その間欠的な回転動作が制御されている。
【0021】
ワーク保持手段22は、ワークW(図2参照)を保持するものであり、搬送台21の周縁にその円周方向に沿って適宜間隔を空けて設けられている。ワーク保持手段22は、例えば、先端部にワークWを吸着するワーク吸着部22A(図2参照)を有しており、このワーク吸着部22AがワークWの表面を吸着して保持する。このワーク保持手段22は、後記する実装用基材TにワークWを実装するときにワークを下方に移動させる動作ができるように移動機構(図示せず)を有している。
【0022】
また、ワーク保持手段22は、ワークWを吸着した状態で、ワークWを水平方向に回転させる機構(図示せず)を有する構成であってもよい。ワークWが水平方向に回転することにより、後記する極性検出装置50により極性の向きが所望の向きと反対であると検出されたワークWの向きを変えることができる。
【0023】
ワーク供給装置30は、ワークWを一つ一つ整列させ搬送台21に供給するものであって、ランダムに重なり合ったワークWを順次一列に整列させて、ワーク保持手段22に供給する。
【0024】
第1位置調整装置40は、ワークWを後記する極性検出装置50に供するためにワークWの位置のずれを補正する。たとえば、ワークWの端面を前後左右の4方向から挟み込んで同じ押圧力を加えながら押圧するなどしてワークWの中心に対して位置決めできるように一つ一つの位置を調整する。
【0025】
極性検出装置50は、ワークWに電流を供給してその極性および動作状態を検出し、この検出結果に基づいて後記する不良品排出装置60およびワーク回転装置70の動作のタイミングを制御するものであって、図示しない電流供給装置および制御装置を有している。
【0026】
極性検出装置50は、図示しない制御装置において、電流の向き等の検出結果に基づいてワークWを回転させる必要があると判断した場合、後記するワーク回転装置70に対象となるワークWの情報を送信し、ワークWに動作不良があると判断した場合、後記する不良品排出装置60に対象となるワークWの情報を送信する。
【0027】
不良品排出装置60は、動作不良のあるワークW(不良品)をワーク実装システム1の外部に排出するものである。この不良品排出装置は、たとえば、極性検出装置50からの信号に基づいて、動作不良があると判断され、ワーク保持手段22の保持から開放されたワークWを吸引するなどして、図示しない回収機構に回収する。
【0028】
外観検査装置80は、後記するワーク回転装置70により所望の姿勢に回転させられたワークWが所定の外観を有するか否かを検査するものである。この外観検査装置80は、たとえば、ワークWを撮像し、この撮像画像をあらかじめ保存されている基準のワークWのアウトラインとマッチングすることで比較し、許容範囲であるかないかを判断することでワークWの検査を行っている。
なお、外観検査装置80により所定の規格を満たさないと判断されたワークWは、図示しない排出機構から排出される。
【0029】
実装用基材Tは、ワークWを図示しない実装装置に供給するためのものであって、たとえば、長帯状のテープ状のものがリールに巻かれて用いられる。
【0030】
この実装用基材Tは、表面にワークWを格納する格納孔T1が複数形成されており、長手方向に進行しながら所定の規格を満たしたワークWを順次、格納孔に格納する。
実装用基材Tは、図示しない送出リールから一定量ずつ送出されており、図示しない制御装置により送出のタイミングが制御されている。
【0031】
ワーク格納テーブル100は、ワークWを実装用基材Tに格納するときに使用されるものである。このワーク格納テーブル100は、ワーク保持手段22Aが図示しない移動手段により実装用基材Tの格納孔T1に向かってワークを格納する方向に移動させたときの位置決め手段(図示せず)等を有している。
【0032】
次に、本発明に係るワーク回転装置70について図2および図3を参照して説明する。図2は、ワーク回転装置の一部を切欠いて示す正面図、図3は、ワーク回転装置の側面図、図4(a)は、ワーク回転装置においてワークを挟持する位置の構成を一部断面にして拡大して示す部分拡大正面図である。
【0033】
図2および図3に示すように、ワーク回転装置70は、フレーム筐体71に支持されており、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bと、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bと、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bと、ストッパ機構75と、フレームブロック76と、駆動機構77とを主として備えている。
【0034】
図2および図3に示すように、フレーム筐体71は、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72B等の各構成を支持しており、左右に所定間隔で平行に配置されるフレーム柱71a,71aと、このフレーム柱71a,71aの上部側に水平方向に曲折して形成され、後記する規制部77kが設置される上部フレーム71bと、フレーム柱71a,71aの中段位置に第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bを設けるために接続される接続フレーム71c、71cとを備えている。このフレーム筐体71は、金属のフレームにより折り曲げて、あるいは、溶接やネジ止めされることにより所定の形状に形成されている。また、接続フレーム71c、71cは、第1ガイド手段74Aが、第1挟持機構72Aの第1歯付プーリ73aと対面する位置に配置されるようにL字形状に形成され、また、第2ガイド手段74Bが、第2挟持機構72Bの第2歯付プーリ73cと対面する位置に配置されるようにL字形状に形成されている。なお、歯付ベルト74e,74eは、このではベルトの表面側に歯を設けたものである。
【0035】
図4に示すように、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、ワークWを挟持するためのものであり、軸部72aと、弾性部材72bと、軸筐体72cと、スプライン72dと、先端挟持部72eと、フランジ72fとをそれぞれ備えている。
軸部72aは、軸筐体72c内の軸溝内に弾性部材72bを介して前側軸部72aおよび後側軸部72aに分割した状態で配置されている。そして、この軸部72aは、その後側軸部が軸筐体72cに固定され、前側軸部が軸筐体72cの溝内およびスプライン72dにより直線方向にスライドできるように設けられている。
【0036】
この軸部72aは、前側軸部72aが常にワークW側に向かって付勢するように、弾性部材72bであるコイルスプリングを介して設けられている。なお、弾性部材72bであるコイルスプリングは、その両端部分を軸部72aの後側軸部72aの先端および前側軸部72aの後端に係合させており、前側軸部72aが予め設定した以上に軸筐体72cより突出しないように設置されている。また、軸部72aの前側軸部72aは、スプライン72dを介して軸筐体72cの内部において直線方向にスライド自在に設けられている。このスプライン72dは、例えば、ボールを使用したボールスプラインが用いられ、軸部72aの前側軸部72aを直線方向にスライド自在に移動させることができるものであればよい。
【0037】
そして、軸部72aの前側軸部72aには、フランジ72fを介して先端挟持部72eが設けられている。この先端挟持部72eは、ワークWに当接して当該ワークWを挟持するため、樹脂、金属、ゴム等の素材で形成されている。また、先端挟持部72eを支持するフランジ72fは、軸部72aに取り付けられており、軸筐体72cの先端に当接離間自在となるように設置されている。このフランジ72fは、その鍔部分に後記するストッパ機構75の当接アーム75aが当接するように設置されている。なお、第1挟持機構72Aの軸筐体72cは、後記するフレームブロック76の第1ブロック76aに第1回転機構73Aを介して回転自在に設けられ、また、第2挟持機構72Bの軸筐体72cは、第2ブロック76bに第2回転機構73Bを介して回転自在に設けられている。
【0038】
図2および図4に示すように、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bは、それぞれ第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bを支持してフレームブロック76に設けられており、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bにより挟持するワークWを所定角度に回転させるためのものである。第1回転機構73Aは、第1歯付プーリ73aと、軸用一方向回転機構であるワンウェイクラッチ73bとを有している。また、第2回転機構73Bは、第2歯付プーリ73cと、軸用一方向回転機構であるワンウェイクラッチ73dとを有している。
【0039】
第1回転機構73Aの第1歯付プーリ73aは、第1挟持機構72Aの軸筐体72cの後部側に設けられており、回転することで軸筐体72cおよび軸部72aを回転させるように設けられている。また、第1回転機構73Aのワンウェイクラッチ73bは、第1歯付プーリ73aに隣り合う位置で軸筐体72cに設けられている。そして、ワンウェイクラッチ73bは、第1ブロック76aに支持されている。
第2回転機構73Bの第2歯付プーリ73cは、第2挟持機構72Bの軸筐体72cの後部側に設けられており、当該第2歯付プーリ73cが回転することで軸筐体72cおよび軸部72aを回転させるように設けられている。また、第2回転機構73Bのワンウェイクラッチ73dは、第2歯付プーリ73cに隣り合う位置で軸筐体72cに設けられている。そして、ワンウェイクラッチ73dは、第2ブロック76bに支持されている。
【0040】
なお、ワンウェイクラッチ73b,73dは、一方向に回転するときにはクラッチが外れて支持する軸筐体72cを回転させ、他方向に回転するときにはクラッチが噛み込んで支持する軸筐体72cを回転させないように動作する。このワンウェイクラッチ73b,73dは、一般的な構成のものであり、例えば、外輪および内輪と、その外輪と内輪の間に配置されたボール(ローラ)およびバネと、外輪あるいは内輪にボールをロック(クラッチ)するクラッチ部およびロックを解除するアンロック部とを備えている。そして、外輪あるいは内輪のクラッチ部にボールが噛み込むことで外輪のあるいは内輪の回転を停止させ、クラッチ部からボールの噛み込みが外れることで、外輪あるいは内輪を回転できるように構成されている。
【0041】
図2ないし図3に示すように、第1歯付プーリ73aおよび第2歯付プーリ73cに対面する位置に、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bが、設置されている。この第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bは、上下に離間して配置されるガイド用回動軸(回動軸)74a,74bと、このガイド用回動軸74a,74bの一方と他方に設けたガイド用ワンウェイクラッチ74cおよびプーリ74dと、このガイド用ワンウェイクラッチ74cおよびプーリ74dに掛け渡した無端ベルトである歯付ベルト74eとをそれぞれ備えている。そして、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bのそれぞれの歯付ベルト74e,74eに第1歯付プーリ73aおよび第2歯付プーリ73cが噛合できる位置となるように、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bは、設置されている。
なお、ガイド用ワンウェイクラッチ74c,74cは、クラッチする方向が、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bのワンウェイクラッチ73b,73dとは反対となるように設置されている。
【0042】
ストッパ機構75は、図4に示すように、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bのフランジ72f,72fに当接して弾性部材72b,72bに抗して、先端挟持部72e,72eが離間するように規制するものである。このストッパ機構75は、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bのそれぞれのフランジ72f,72fに当接する当接アーム75a,75aと、この当接アーム75a,75aから所定角度で連続する水平アーム75b,75bと、この水平アーム75b,75bを軸支するためのストッパ支軸75c,75cと、を備えている。そして、ストッパ機構75のそれぞれのストッパ支軸75c,75cは、フレームブロック76の中央ブロック76cの中央から左右となる位置に取り付けられている。
【0043】
当接アーム75aは、先端が二股に分かれたU形状あるいはV形状に形成されており、フランジ72fの中央の出っ張り部分を跨いで鍔面部分に当接するように形成されている。そして、この当接アーム75aは、フランジ72fに当接する部分が円弧状にアーム部分よりフランジ72f側に出っ張るように形成されている。
水平アーム75bは、ここでは当接アーム75aに対して直角となるように当該当接アーム75aに連続して一体に形成されている。この水平アーム75b,75bは、後記するセンタシャフト77cの先端部77eにより押される位置に配置されている。
【0044】
そして、ストッパ機構75は、水平アーム75b,75bが、センタシャフト77cの先端部77eにより下から押されている状態のとき、ストッパ支軸75c,75cを支点として所定角度において回動し、当接アーム75a,75aが第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bのそれぞれのフランジ72f,72fに当接する位置となり、ワークWから先端挟持部72e,72eを離間させる状態となる。
【0045】
また、ストッパ機構75は、水平アーム75b,75bが、センタシャフト77cの先端部77eにより下から押されていない状態のとき、ストッパ支軸75c,75cを支点として所定角度において回動し、当接アーム75a,75aが第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bのそれぞれのフランジ72f,72fから離間する位置となる。そのため、ストッパ機構75が解除された状態であると、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、弾性部材72b,72bの弾性力により軸部72a,72aの前側軸部72a,72aのそれぞれが、スプライン72d,72dを介してワークW側に軸筐体72c,72cから突出し、その前側軸部72a,72aの先端にフランジ72f,72fを介して設けた先端挟持部72e,72eによりワークWを両側から挟持する。
【0046】
ストッパ機構75が支持されているフレームブロック76は、第1回転機構73Aのワンウェイクラッチ73bおよび第2回転機構73Bのワンウェイクラッチ73dの外周部分を支持する第1ブロック76aおよび第2ブロック76bと、この第1ブロック76aおよび第2ブロック76bとの間に設けた中央ブロック76cとを備えており、後記する駆動機構により設定された範囲において昇降移動できるように、フレーム筐体71にブロック用スライド機構76fを介して設けられている。そして、中央ブロック76cは、後記するセンタシャフト77cが上下方向に連通する連通溝76dと、この連通溝76dの所定位置に形成されセンタシャフト77cの当接押部77dが収納される溝大部76eとを形成している。
【0047】
図3に示すように、駆動機構77は、駆動モータ77aと、クランク77bと、センタシャフト77cと、シャフト用弾性部材77f、スライド機構77gと、カム77hと、ピン77iと、を備えている。
駆動モータ77aは、回転数を制御することが可能なサーボモータである。この駆動モータ77aは、フレーム筐体71の両フレーム柱の間に設置されている。
クランク77b、カム77h、およびピン77iは、駆動モータ77aの回転を直線運動に変換するためのものであり、ここでは、センタシャフト77cを予め設定した範囲において上下動(昇降)させるように構成されている。
【0048】
なお、ここでは、クランク77bは、センタシャフト77cとの係合部分として図2で示すように、中央に長孔を形成したカム77hに駆動モータ77aの駆動軸に対して偏心した位置に設けたピン77iを介してセンタシャフト77cに係合した状態で設置されている。そして、規制制御板が駆動モータ77aにより90度回転すると共に、センタシャフト77cを上昇または下降する方向に移動させることで、ピン77iの移動できる長孔の範囲内においてセンタシャフト77cは、移動できるように構成されている。
【0049】
図4に示すように、センタシャフト77cは、先端部77e(上端)が平坦に形成され、中央ブロックの溝大部76eに対応した形状の当接押部77dを有し、カム77hにピン77iを介してクランク77bに接続され、かつ、リニアガイド等のスライド機構77gによりフレーム筐体71にスライド自在に支持されている。そして、このセンタシャフト77cは、その当接押部77dが、中央ブロック76cの溝大部76eに遊嵌できる大きさに形成されている。なお、センタシャフト77cの上昇端となったときに、中央ブロック76cの上面に当接して移動を規制する規制部77kを、上部フレーム71b(図3参照)の中央に設置している。この規制部77kは、図面では、センタシャフト77cの中心からずれた位置に点線に仮想的に示しているが、中央ブロック76cの幅方向における中央に当接する位置であることが好ましい。
【0050】
センタシャフト77cは、上昇端であるときにその先端部77eがストッパ機構75の水平アーム75b,75bに当接して当該ストッパ機構75により第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72BによるワークWの挟持を規制する。このとき、当接押部77dは、その下面77dが、溝大部76eの下部上面77eに対して非当接状態となる。また、センタシャフト77cを上昇端からストッパ機構75の規制を解除して下降端まで移動させる場合には、当接押部77dは、その下面77dが、溝大部76eの下部上面77eに対した当接状態となる。
【0051】
そのため、センタシャフト77cが降下移動するときには、図6に示すように、中央ブロック76cを当接押部77dが下方に押すことでフレームブロック76を降下させている。また、センタシャフト77cを降下端から上昇移動させるときには、中央ブロック76cの溝大部76eと当接押部77dとの位置関係は、当該当接押部77dの下面77dが、溝大部76eの下部上面77eに当接状態となっている。つまり、中央ブロック76cが規制部77kから離間した状態になると、センタシャフト77cと中央ブロック76cとの間に設けたシャフト用弾性部材77fの付勢力により、常に中央ブロック76cが下方に引っ張られている状態にある。したがって、中央ブロック76cの上昇端は、規制部77kに当接する位置であり、また、センタシャフト77cの上昇端は、規制部77kに当接した中央ブロック76cの位置からシャフト用弾性部材77fの付勢力に抗して、当該中央ブロック76cの上面より先端部77eが突出し、ストッパ機構75の水平アーム75bに当接した状態である。
【0052】
さらに、センタシャフト77cの移動によりフレームブロック76が移動する際に第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bも同時に移動する。第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bが上昇端から下降する方向に移動する場合、第1歯付プーリ73aが第1ガイド手段74Aの歯付ベルト74e,74eに噛合した状態、および、第2歯付プーリ73cが第2ガイド手段74Bの歯付ベルト74eに噛合した状態で、下降端まで移動する(図7参照)。
【0053】
下降端まで移動する場合、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bは、ワンウェイクラッチ73b,73dがクラッチして第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bの軸筐体72c,72cを回転させることがない状態となる。このとき、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bのガイド用ワンウェイクラッチ74c,74cは、クラッチせずに空回りするため、歯付ベルト74e,74eが空転する。そのため、第1歯付プーリ73aおよび第2歯付プーリ73cは、歯付ベルト74e,74eに噛合したままの状態で回転することなく、当該歯付ベルト74e,74eを空回りさせている。
【0054】
また、下降端から上昇するように移動する場合、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bのワンウェイクラッチ73b,73dは空回りするため、第1歯付プーリ73a,第2歯付プーリ73cが第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bの軸筐体72c,72cを所定角度において回転させることになる。このとき、第1歯付プーリ73a,第2歯付プーリ73cが噛合している第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bの歯付ベルト74e,74eは、ガイド用ワンウェイクラッチ74c,74cがクラッチしているため、固定された状態となる。
【0055】
このように構成されたワーク回転装置70の一連の動作について、図5ないし図7を参照して説明する。なお、構成については、適宜図2ないし図4を参照する。
図5(a)、(b)は、ワーク回転装置において動作説明図であり、(a)は、第1挟持機構および第2挟持機構が上昇端に位置する状態を示す側面図であり、(b)は、第1挟持機構および第2挟持機構が下降端に位置する状態を示す側面図である。また、図6(a)〜(c)はワーク回転装置において第1挟持機構および第2挟持機構によりワークを挟持する動作を一部断面にして示す動作説明図であり、(a)はストッパ機構により第1挟持機構および第2挟持機構が離間している状態を示す模式図、(b)はストッパ機構が解除された状態を示す模式図、(c)はセンタシャフトにより降下している状態を示す模式図である。さらに、図7は、ワーク回転装置において第1回転機構および第2回転機構が第1ガイド手段および第2ガイド手段に沿って移動する状態を模式的に示す動作説明図であり、(a)はワークの挟持位置における両回転機構および両ガイド手段の状態を示す側面図および斜視図、(b)は降下端に移動する状態を示す側面図および斜視図、(c)は、降下端から上昇端に向かって移動する状態を示す側面図および斜視図である。
【0056】
図5(a)および図6(a)に示すように、ワーク保持手段22が移動してワーク回転装置70までワークWを保持して送られて来ると、図示しないセンサ等によりワークWの存在をワーク回転装置70が検知する。そして、ワーク回転装置70は、駆動モータ77aの回転運動を、クランク77b、カム77h等により往復運動に変換して、センタシャフト77cを降下する方向に移動させる。なお、この往復運動は、エアシリンダ等のアクチュエータに置き換えることも可能である。
【0057】
このとき、図6(a)、(b)に示すように、センタシャフト77cが降下方向に移動し始めると、シャフト用弾性部材77fの弾性力に抗して中央ブロック76cの溝大部76eの空間の範囲において降下することにより、センタシャフト77cの先端部77eがストッパ機構75の水平アーム75b,75bから離間する。そのため、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、その弾性部材72b,72bにより軸部72a,72aが、ワークW側に付勢される。そして、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、その軸部72a,72aの前側軸部72a,72aがスプライン72d,72dを介して直線方向に移動して先端挟持部72e,72eによりワークWを挟持する。
【0058】
図6(c)に示すように、さらに、センタシャフト77cが降下方向に移動すると、センタシャフト77cの当接押部77dの下面77dにより、溝大部76eの下部上面76eを押動することでフレームブロック76をセンタシャフト77cと共に降下方向に移動させる。
【0059】
フレームブロック76の移動に伴い、第1挟持機構72Aおよび第1回転機構73Aと、第2挟持機構72Bおよび第2回転機構73Bとがフレームブロック76と一緒に下降方向に移動する。そして、第1回転機構73Aの第1歯付プーリ73aおよび第2回転機構73Bの第2歯付プーリ73cは、図7(b)に示すように、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bの歯付ベルト74e,74eに沿って降下する。
【0060】
このとき、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bのそれぞれのワンウェイクラッチ73b,73dは、クラッチが噛みこんだ状態となり、かつ、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bは、それぞれのガイド用ワンウェイクラッチ74c,74cが歯付ベルト74e,74eを、空回りする状態とする。そのため、第1歯付プーリ73aおよび第2歯付プーリ73cは、歯付ベルト74e、74eに噛合して下降端に向かって移動するときに、回転しない状態となり、第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bの歯付ベルト74e、74eのみが、空回りするように回動する。
【0061】
そのため、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bが回転しないことにより、保持するワークWの姿勢を変えることなく、上昇端から下降端まで移動する。そして、駆動機構77は、センタシャフト77cが下降端に到達すると、クランク77bにより今度は、センタシャフト77cを上昇端に向かって移動させる。
【0062】
図7(c)に示すように、センタシャフト77cが下降端から上昇端に向かって移動することで、フレームブロック76も同様にセンタシャフト77cの移動に伴って移動する。このとき、第1回転機構73Aの第1歯付プーリ73aおよび第2回転機構73Bの第2歯付プーリ73cは、それぞれ第1ガイド手段74Aおよび第2ガイド手段74Bの歯付ベルト74e,74eに噛合した状態で回転方向に力が加わると、今度は、ガイド用ワンウェイクラッチ74c,74cがクラッチして歯付ベルト74e、74eを回転させないようになると共に、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bのワンウェイクラッチ73b,73dのクラッチが解除される。
【0063】
そのため、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、上昇方向への移動距離に伴って軸筐体72c,72cが所定角度(ここでは180度)に回転させられることで、ワークWを180度に反転させている。フレームブロック76は、ワークWが180度に反転する位置で、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bの上昇端となるように、当該フレームブロック76が規制部77kにより当接して移動を規制される位置に設定されているため、センタシャフト77cより先に上昇移動を停止する。
【0064】
そして、フレームブロック76が規制部77kにより規制されて停止すると、センタシャフト77cは、中央ブロック76cの溝大部76eにおいて遊嵌する範囲で当接押部77dがシャフト用弾性部材の弾性力に抗してさらに上昇方向に移動する。そのため、センタシャフト77cの先端部77eが中央ブロック76cの上端面より突出してストッパ機構75の水平アーム75b,75bを押動する。
【0065】
したがって、ストッパ機構75は、当接アーム75a,75aが第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bのフランジ72f,72fを弾性部材72b,72bの弾性力に抗して離間させる方向に移動させ、ワークWの挟持を解除させる。なお、ワークWの上昇端位置では、すでに、ワーク保持手段22のワーク吸着部22Aが待機しているため、センタシャフト77cの先端部77eがストッパ機構75を押動する前には、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bで挟持するワークWを吸引しており、ストッパ機構75により第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72BによるワークWの挟持を解除すると同時にワークを受取っている。
第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bは、次のワークWが流れてくるまで、ストッパ機構75により離間したままの状態で待機する。
【0066】
なお、駆動モータ77aの回転数等を制御することで、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73B(図3(a)参照)の上昇および下降の範囲を制御して、第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bの回転角度(図3(a)参照)を30度、60度、90度等の任意の角度に回転させることも可能である。
【0067】
次に、このように構成されたワーク回転装置70を備えたワーク実装システム1の動作について説明する。なお、ワーク実装システム1のワーク回転装置70の動作については前記したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0068】
ワークWは、ワーク供給装置30により一列に整列させられた後、搬送装置20の搬送台21に送り出されて、ワーク保持手段22に吸着保持される。搬送装置20は、ワークWを、第1位置調整装置40まで移動させる。そして、ワークWをワーク保持手段22に吸着保持させたまま、第1位置調整装置40によりワークWを前後左右の4方向から挟み込んで同じ押圧力を加えながら押圧して位置を調整する。
【0069】
次に、搬送装置20は、位置を調整されたワークWを極性検出装置50まで移動させる。そして、極性検出装置50からワークWに電極を接触させて電流を流し、ワークWの極性および作動状態を検出する。この検出結果に基づいて、ワークWを回転させる必要があると判断した場合は、極性検出装置50の制御装置(図示しない)がワーク回転装置70に回転させるべきワークWに関する情報を送信し、ワークWの作動状態に不良がある場合は、不良品排出装置60に排出させるべきワークWに関する情報を送信する。
【0070】
ワークWが不良品排出装置60の位置で停止したときは、ワーク保持手段22によるワークWの吸引を停止してワークWを落下させ、落下したワークWを不良品排出装置60によりキャッチして、ワーク実装システム1のレーン外に排出する。
ワークWがワーク回転装置70の位置で停止したときは、ワーク回転装置70によりワークWを、例えば、180度回転させてからワーク保持手段22に受け渡す。
【0071】
次に、搬送装置20は、ワークWを外観検査装置80の位置まで移動させる。そして、外観検査装置80により、ワークWが所定の外観を有するかどうかを検査する。
このとき、外観検査装置80が所定の外観を有しないと判断した場合、図示しない排出装置に信号を送信し、所定の外観を有しないワークWをワーク実装システム1のレーン外に排出させる。
【0072】
次に、搬送装置20は、ワークWを実装用基材Tまで移動させる。そして、ワーク格納テーブル100において実装用基材Tの格納孔T1の上にワークWがワーク保持手段22により到来したときに、図示しない上下動機構によりワークWを下方に移動させて実装用基材Tの格納孔T1に当該ワークWを嵌め込むようにしてワークWを実装用基材Tの格納孔T1に格納する。
そして、ワークWが格納孔T1に格納されると、実装用基材Tを図示しない送出リールにより移動させて、格納孔T1が予め設定される位置に来るように実装用基材Tを順次進行方向に送っている。そして、前記した同じ動作を繰り返してワークWを実装用基材Tに格納する。この一連の動作を繰り返して、ワークWが格納された実装用基材Tを得た後、図示しないテープリールに順次巻き取っていく。巻き上がった実装用基材Tは製品として回収される。
【0073】
以上説明したように、ワーク回転装置70は、第1回転機構73Aおよび第2回転機構73Bを介して第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bを所定角度回転させて、この回転動作に伴いワークWを回転させるため、迅速かつ精確に所望の姿勢にワークWを回転させて実装用基材Tの格納孔T1に配置することが可能となる。また、ワークWの実装時の姿勢、配向角度等を任意に制御することができる。
【0074】
以上、本発明は、前記した実施形態に限られず、様々な形態で実施される。
本実施形態では、長方形のワークWを用いて説明したが、これに限らず、正方形、または、多面体の形状を有するワークWを回転させることも可能である。また、ワーク回転装置70では、下降端に移動させるときには、ワークの姿勢を変えないようにしたが、下降端に移動させるときにワークWの姿勢を変え、さらに、下降端から上昇端に移動するときには、ワークWの姿勢を変えないように構成しても構わない。
【0075】
また、ワンウェイクラッチ73a,73aおよびガイド用ワンウェイクラッチ74b,74dは、ワークWを第1挟持機構72Aおよび第2挟持機構72Bの間に挟持しながら挟持軸Cを軸中心として一方向に回転させることが可能な機構を備えた装置であれば特に制限されず、そのような機構を有していればどのような装置を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るワーク実装システムの構成例を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明に係るワーク回転装置の一部を切欠いて示す正面図である。
【図3】本発明に係るワーク回転装置の側面図である。
【図4】本発明に係るワーク回転装置においてワークを挟持する位置の構成を一部断面にして拡大して示す部分拡大正面図である。
【図5】本発明に係るワーク回転装置において動作説明図であり、(a)は、第1挟持機構および第2挟持機構が上昇端に位置する状態を示す側面図であり、(b)は、第1挟持機構および第2挟持機構が下降端に位置する状態を示す側面図である。
【図6】本発明に係るワーク回転装置において第1挟持機構および第2挟持機構によりワークを挟持する動作を一部断面にして示す動作説明図であり、(a)はストッパ機構により第1挟持機構および第2挟持機構が離間している状態を示す模式図、(b)はストッパ機構が解除された状態を示す模式図、(c)はセンタシャフトにより降下している状態を示す模式図である。
【図7】本発明に係るワーク回転装置において第1回転機構および第2回転機構が第1ガイド手段および第2ガイド手段に沿って移動する状態を模式的に示す動作説明図であり、(a)はワークの挟持位置における両回転機構および両ガイド手段の状態を示す側面図および斜視図、(b)は降下端に移動する状態を示す側面図および斜視図、(c)は、降下端から上昇端に向かって移動する状態を示す側面図および斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ワーク実装システム
20 搬送装置
22 ワーク保持手段
22A ワーク吸着部
30 ワーク供給装置
40 第1位置調整装置
50 極性検出装置
60 不良品排出装置
70 ワーク回転装置
71 フレーム筐体
71a フレーム柱
71b 上部フレーム
71c 接続フレーム
72A 第1挟持機構
72B 第2挟持機構
72a 軸部
72b 弾性部材
72c 軸筐体
72d スプライン
72e 先端挟持部
72f フランジ
73A 第1回転機構
73B 第2回転機構
73a 第1歯付プーリ
73b ワンウェイクラッチ(軸用一方向回転機構)
73c 第2歯付プーリ
73d ワンウェイクラッチ(軸用一方向回転機構)
74A 第1ガイド手段
74B 第2ガイド手段
74a ガイド用回動軸
74b ガイド用回動軸
74c ガイド用ワンウェイクラッチ(ガイド用一方向回転機構)
74d プーリ
74e 歯付ベルト
75 ストッパ機構
75a 当接アーム
75b 水平アーム
75c ストッパ支軸
76 フレームブロック(支持体)
76a 第1ブロック
76b 第2ブロック
76c 中央ブロック
76d 連通溝
76e 溝大部
76e 下部上面
76f ブロック用スライド機構
77 駆動機構
77a 駆動モータ
77b クランク
77c センタシャフト
77d 当接押部
77d 下面
77e 先端部
77f シャフト用弾性部材
77g スライド機構
77h カム
77i ピン
77k 規制部
80 外観検査装置
90 第2位置調整装置
100 ワーク格納テーブル
W ワーク
T 実装用基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の実装用基材の実装位置にワークを予め設定された向きで配置するために、前記ワークを所定角度に回転させるワーク回転装置において、
前記ワークを吸着保持するワーク保持手段が予め設定した設定位置に前記ワークを搬送したときに前記ワークの両側から近接離間自在に直線移動して当該ワークを挟持する第1挟持機構および第2挟持機構と、
この第1挟持機構および第2挟持機構にそれぞれ設けられ、前記直線移動の移動軸周りに前記第1挟持機構および第2挟持機構を同期して所定角度において回転させる第1回転機構および第2回転機構と、
前記第1挟持機構および前記第2挟持機構を支持する支持体と、
この支持体を予め設定された上昇端から下降端まで移動させる駆動機構と、
この駆動機構により移動する前記第1回転機構および前記第2回転機構に対面して設置され前記上昇端から前記下降端までガイドする第1ガイド手段および第2ガイド手段と、を備え、
前記第1回転機構および前記第2回転機構が、前記第1ガイド手段および前記第2ガイド手段に沿って移動するときに、前記上昇端から前記下降端まで、あるいは、前記下降端から前記上昇端までの往復動のいずれか一方において、前記第1挟持機構および前記第2挟持機構を設定した角度に回転させることを特徴とするワーク回転装置。
【請求項2】
前記第1挟持機構および前記第2挟持機構は、互いに近接する方向に付勢する弾性部材を介して設けた軸部と、この軸部を直線方向に移動可能にスプラインを介して設けた軸筐体と、この軸筐体から前記ワーク側に突出する前記軸部の先端に設けられ前記ワークに当接して挟持する先端挟持部と、この先端挟持部を支持するとともに前記軸部に設けたフランジと、をそれぞれ備え、
前記第1回転機構および第2回転機構は、前記軸筐体を保持すると共に、一方向に回転させ他方向に回転させない軸用一方向回転機構と、この軸用一方向回転機構または前記軸筐体に設けた歯付プーリと、をそれぞれ備え、
前記第1ガイド手段および前記第2ガイド手段は、一方と他方の回動軸と、この回動軸の一方に、一方向に回転させ他方向に回転させないガイド用一方向回転機構を設けると共に、前記回動軸の他方に設けたプーリと、前記ガイド用一方向回転機構および前記プーリに掛け渡し前記歯付プーリと噛合する歯付ベルトと、をそれぞれ備え、
前記ワーク保持手段から前記第1挟持機構および前記第2挟持機構に前記ワークを受け渡すまでと、前記ワーク保持手段に前記ワークを受け渡した後に前記第1挟持機構および前記第2挟持機構の前記直線方向の移動を規制するストッパ機構を前記支持体に設けたことを特徴とする請求項1に記載のワーク回転装置。
【請求項3】
前記ストッパ機構は、前記フランジに当接する当接アームと、この当接アームの一端に所定角度を付けて設けた水平アームと、この水平アームの他端側を前記支持体に回動自在に軸支するストッパ支軸とをそれぞれ備え、
前記支持体は、前記第1挟持機構および第2挟持機構を同じ高さ位置に支持する第1ブロックおよび第2ブロックと、この第1ブロックおよび第2ブロックの間に設けられ、中央に連通溝を有する中央ブロックとを備え、前記連通溝は、その連通方向の所定位置に溝幅を大きくした溝大部を有し、
前記駆動機構は、駆動モータと、この駆動モータの回転を直線運動に変換するクランクと、このクランクにより前記支持体を上下に移動させるセンタシャフトとを備え、
前記センタシャフトは、その先端が前記上昇端において前記ストッパ機構の水平アームを押動する位置に配置されると共に、前記支持体の連通溝に沿って連通して配置され、かつ、前記溝大部に遊嵌するように形成された当接押部を有すると共に、前記中央ブロックを常に上方に付勢するブロック用弾性部材を当該センタシャフトおよび中央ブロックの間に有し、
前記水平アームを押動する位置に、前記センタシャフトが前記ブロック用弾性部材に抗して前記中央ブロックより突出するように前記支持体の上昇端位置を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項2に記載のワーク回転装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のワーク回転装置と、前記ワーク回転装置にワークを搬送して供給するワーク供給装置と、前記ワーク回転装置によって所定角度で回転させたワークをテープ状の実装用基材に格納するワーク格納装置と、を備えることを特徴とするワーク実装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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