説明

ワーク姿勢変換装置

【課題】ワークの搬送や姿勢変換を円滑に行うことが可能であるとともに、ワークの損傷や保守工数の削減が可能なワーク姿勢変換装置を提供する。
【解決手段】搬送路に沿ってワーク8を搬送しつつワーク8の姿勢変換を行うワーク姿勢変換装置1であって、搬送路が複数の搬送溝21、31を搬送方向に連結させることで構成されており、各搬送溝21、31が、搬送方向に沿って開口方向が上方向より水平方向までの間になるようにして時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に捻られるように形成されており、搬送溝21、31間の連結部において上流側と下流側の搬送溝21、31の内面を滑らかに連続させるとともに、下流側の搬送溝31の開口方向を上流側の搬送溝21の開口方向に対して上方向に切り替えるようにした後に、下流側の搬送溝31が上流側の搬送溝21と同じ方向に捻られるようにして形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインに沿って搬送されるワークの向きを変更するためのワーク姿勢変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場における生産ラインの中に連続してワークを供給し、搬送するための技術が数多く開示されている。例えば、特許文献1においては、振動を利用してワークを一方向に搬送するリニア型パーツフィーダとしての部品供給装置が示されている。当該部品供給装置では、部品貯留部から部品を取り出しつつ搬送路に沿って一方向に搬送するとともに、搬送中の部品の姿勢を検知し、その姿勢が所定のものでないときにはその部品に対してエアを噴出させて姿勢を修正するようにされている。
【0003】
しかしながら、上記のように各部品の姿勢を揃えつつ搬送したとしても、次工程によってはワークの姿勢を上下反転させたほうが都合がよい場合がある。そのためには一旦ある向きに揃えたワークの姿勢を別の姿勢に変換することが必要となる。
【0004】
こうしたワーク姿勢変換装置としては、例えば特許文献2のようなものが知られている。これは整列させたワークを上下反転させるための装置であって、円柱状の部材の表面に半周に渡って螺旋状の溝が形成されている。そして、当該溝の入口から出口の間を通過させることでワークは軸方向に搬送されつつ上下が反転されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−276993号公報
【特許文献2】特開平9−2641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2のワーク姿勢変換装置は円柱状の部材の表面に形成された溝が螺旋状に大きく方向を変えているために、この溝の内部を進むにつれて溝内面によるワークの支持状態が大きく変化して不安定になる場合があり、こうした問題は小型で軽量のワークを扱う場合にはより顕著にあらわれることが予想される。
【0007】
このような溝内部におけるワークの支持の不安定性によって、当該溝を覆うカバーがない場合にはワークが飛び出しやすくなる。また、カバーを設けている場合には溝とカバーとの間でワークが詰まりやすくなり、詰まったワークを除去するために搬送を停止してカバーを取り外した際には、ワークが十分に支持されておらず不安定であるために溝内部にあったワークは全て落下することになってしまう。
【0008】
上記のような溝内部でのワークの支持の不安定性に起因する飛び出しや落下によって、ワークに損傷が生じることがある。また、飛び出しまたは落下したワークが隣接する別の工程の装置に紛れ込んで予期せぬ装置トラブルが発生し保守にかかる作業時間が増大する可能性もある。
【0009】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には溝内部でのワークの支持状態を安定化させて搬送を円滑に行わせることによって、ワークの詰まりや飛び出しを生じさせないとともに保守作業にかかる工数削減を可能とするワーク姿勢変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明のワーク姿勢変換装置は、搬送路に沿ってワークを搬送しつつ当該ワークの姿勢変換を行うものであって、前記搬送路がワークの姿勢を内面によって規制する複数の搬送溝をワーク搬送方向に連結させることで構成されており、前記各搬送溝が、ワーク搬送方向に沿って開口方向が上方向より水平方向までの間になるようにして時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に捻られるように形成されており、前記搬送溝間の連結部において当該連結部を境界とする上流側と下流側の搬送溝の内面を滑らかに連続させるとともに、前記下流側の搬送溝の開口方向を前記上流側の搬送溝の開口方向に対して上方向に切り替えるようにした後に、前記下流側の搬送溝が前記上流側の搬送溝と同じ方向に捻られるようにして形成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、複数の搬送溝間を通過させることで大きくワークの姿勢変換を行うことができるとともに、搬送溝の内部でワークを安定して支持することができるため、搬送溝の内部でのワークの搬送や姿勢変換を円滑に行うことができ、ワークの詰まりや飛び出しを防止することができ、工程安定化を図ることが可能になるとともに、ワークの損傷や保守にかかる工数の削減を図ることができる。さらには、ワークの搬送路を開口部を備えた搬送溝として形成しているために、簡単な溝加工をベースにして容易に形成することができるとともに、搬送溝の開口部より搬送するワークへのアクセスが容易になり保守作業がより容易になる。
【0013】
また、搬送溝の内部におけるワークの搬送をより円滑に行わせるとともに、こうした装置を製作するための機械加工をより簡便に実施するためには、前記搬送溝が各々異なるガイド部材の表面に形成されているとともに、ワーク搬送方向に対する捻りにともなって、各搬送溝の中心位置が下方向に移行するようにして形成することが好適である。
【0014】
また、ワークの搬送溝からの飛び出しをより一層確実に防止するとともに、搬送溝の内部で詰まりが生じた場合でも詰まりの生じている箇所を外部から容易に把握することができるようにするためには、前記搬送溝を覆うようにしてカバー部材を設けるとともに、当該カバー部材にワーク搬送方向に沿って切り欠き部を形成して、当該切り欠き部を通じて前記搬送溝の一部がワーク搬送方向に連続して確認できるように構成することが好適である。
【0015】
また、搬送溝間または搬送溝と外部装置に形成されたワークの搬送路との間の連結部において、ワークを上記連結部に生じる微小な凹凸を安定して通過させるためには、ワークに対して進行方向以外の力をできる限り作用させないことが好ましいため、前記搬送溝の始端および終端近傍を直線状に形成することが好適である。
【0016】
さらに、連結部を通過する際のワークの挙動をより安定化させるためには、連結部における搬送溝内部に対するワークの遊びを小さくすることが好ましいため、前記カバー部材の内面を前記搬送溝の始端および終端近傍で平面になるように形成することが好適である。
【0017】
また、ワークを適切な姿勢にしつつ搬送し、次工程に適した姿勢に変換して供給することのできるコンパクトで操作性の良いワーク供給装置として構成するためには、ワークの姿勢を揃えつつ搬送するワーク搬送整列手段と、上記のワーク姿勢変換装置とを備えており、前記ワーク搬送整列手段と前記ワーク姿勢変換装置とが共通する振動付与手段によって駆動されるように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によれば、搬送溝に沿ってワークの搬送や姿勢変換を円滑に行うことが可能であるとともに、ワークの詰まりや飛び出しを生じさせず保守作業にかかる工数を削減できるワーク姿勢変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク姿勢変換装置の側面図。
【図2】同ワーク姿勢変換装置の斜視図。
【図3】同ワーク姿勢変換装置のガイド部材よりカバー部材を取り外した状態を示す斜視図。
【図4】同ワーク姿勢変換装置の要部を示す拡大斜視図。
【図5】同ワーク姿勢変換装置において図4の状態よりカバー部材を取り外した状態を示す要部拡大斜視図。
【図6】同ワーク姿勢変換装置における図4に示したA−A、B−B、C−C、D−D、E−E断面矢視図。
【図7】同ワーク姿勢変換装置におけるカバー部材の表面の形状と搬送溝との位置関係を模式的に示す要部正面図。
【図8】同ワーク姿勢変換装置におけるカバー部材に形成した搬送溝の寸法関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のワーク姿勢変換装置1はワーク搬送整列手段9と連続して設けられており、これらが全体としてワーク8を適切な姿勢にしつつ次の装置に供給するワーク供給装置7として機能する。
【0022】
ワーク搬送整列手段9は、供給されたワーク8の姿勢を揃えつつ搬送するためのものであり、ワーク搬送台93の上部に形成されたワーク8の搬送路としての搬送溝93aによってワーク8を支持しつつ図中のW方向で示すワーク搬送方向に搬送することができるとともに、その搬送路の途中に上述の特許文献1と同様の構成からなるワーク8の姿勢を揃えるための機構(図示せず)を備えている。そして、ワーク搬送台93はプレート92の上に固定されているとともに、プレート92はベース91に対して2つの板バネ94、94によって弾性的に支持されている。板バネ94、94は各々鉛直方向に対してやや傾きをもたせつつ平行に配され、各板バネ94、94の上端は取付部材94a、94bによってプレート92の下面に固定されるとともに、下端は取付部材94c、94dによってベース91の上面に固定されている。また、ベース91の上面には取付台95aを介して振動付与手段としての電磁石95が取り付けられているとともに、当該電磁石95と対向するようにして磁性ブロック96がプレート92の下面に取り付けられている。
【0023】
上記のように構成することによって、電磁石95に周期的な電流を付与することで、磁性ブロック96に対して周期的な磁力を発生させ、板バネ94、94に対する法線方向である図中F方向にワーク搬送台93を振動させることができる。この振動によってワーク搬送台93に載せられたワーク8に対してワーク搬送方向(図中のW方向)の推力が与えられて搬送が行われるようになっている。
【0024】
本実施形態におけるワーク姿勢変換装置1は、上記ワーク搬送台93とともにプレート92の上に固定されており、板バネ94、94によって弾性支持されつつ振動付与手段としての電磁石95によって振動が付与されるようになっている。そのため、ワーク搬送台93とワーク姿勢変換装置1とは一体となって振動することができるようになっている。そのため、ワーク姿勢変換装置1とワーク搬送整列手段9とは駆動源が一個で操作性が良く、かつ、コンパクトなワーク供給装置7として一体に構成されている。
【0025】
さらに、ワーク姿勢変換装置1は概ね段差ブロック6と、当該段差ブロック6の上に設けられた第1および第2のガイド部材2、3と、それら第1および第2のガイド部材2、3の上に各々設けられた第1および第2のカバー部材4、5とから構成されている。第1および第2のガイド部材2、3の表面には各々ワーク8を支持するための搬送溝21、31が形成されており、上述したワーク搬送台93に形成した搬送溝93aから上記の搬送溝21へ、さらには搬送溝31へと連続してワーク8の搬送路が形成されるようになっている。
【0026】
本実施形態においては、図2に示すように、第1のガイド部材2と第1のカバー部材4とが対向して組み合わされた状態で段差ブロック6の上段61の上に設置されているとともに、第2のガイド部材3と第2のカバー部材5とが対向して組み合わされた状態で段差ブロック6の下段62の上に設置されており、上述したようにワーク搬送台93に形成した搬送溝93aと、第1および第2のガイド部材2、3に形成された搬送溝21、31とが連続するようになっている。
【0027】
第1および第2のガイド部材2、3より、それぞれ第1および第2のカバー部材4、5を取り外した状態を図3に示す。本実施形態においては第1のガイド部材2と第2のガイド部材3とを同一の形状にするとともに、第1のカバー部材4と第2のカバー部材5とを同一の形状に構成している。第1および第2のガイド部材2、3は、ワーク8の搬送方向に長手方向を向けた直方体状のブロックの一辺に大きな曲面24、34を形成した形状となっており、底面25、35によって上記段差ブロック6(図1参照)の上に固定されている。そして、第1および第2のガイド部材2、3に形成した搬送溝21、31は、各々上面22、32から曲面24、34を通じて側面23、33までの間で下方向に移動しつつ一方向に約90°捻れるようにして形成されており、その間を通過することでワーク8は各々90°の姿勢変換が行われるようになっている。このようにして、第1のガイド部材2に形成する搬送溝21は始端21aと終端21bとの間で高さ方向にも横方向にもずれることになるため、第1のガイド部材2と第2のガイド部材とは同一の形状でありながら、高さ方向にも横方向にも位置をずらして設けている。
【0028】
第1および第2のカバー部材4、5は、各々第1および第2のガイド部材2、3に対応するようにして設けられており、それぞれ内面形状が第1および第2のガイド部材2、3の外形形状に沿うように形成されており、第1および第2のガイド部材2、3の表面に取り付けることで、搬送溝21、31のほとんどの部分を覆うことができるようになっている。
【0029】
図4に上記ガイド部材2(3)に対して、カバー部材4(5)を取り付けた状態を拡大して示す。以下、第1および第2のガイド部材2、3および第1および第2のカバー部材4、5をそれぞれ総称して、単にガイド部材2(3)、カバー部材4(5)と称す。
【0030】
ガイド部材2(3)の表面の搬送溝21(31)は、上述したように上面22(32)から側面24(34)にかけて約90°の捻れるようにして形成されている。具体的には、搬送方向における搬送溝21(31)は、始端21a(31a)近傍では開口方向を上にした直線部として形成されるとともに、終端21b(31b)近傍では開口方向を図中左向きの水平方向にした直線部として形成されている。さらに、これらの直線部をつなぐ部分が捻れ部として90°捻れるようにして形成されている。
【0031】
こうした搬送溝21(31)を覆うカバー部材4(5)には、搬送溝21(31)と同様に捻れを伴った切り欠き部44(54)が形成されており、当該切り欠き部44(54)を通じて搬送溝21(31)の一部が搬送方向に連続して確認できるようになっている。このため、搬送溝21(31)の内部で詰まりが生じた場合には、どの部分に原因があるかを外部より容易に確認することができる。
【0032】
図4の状態より、カバー部材4(5)を取り外した状態を図5に示す。
【0033】
ガイド部材2(3)は、上述したようにワーク搬送方向に長手方向を向けた直方体状のブロックの一辺に大きな曲面を形成した形状となっている。具体的には、水平面として形成した上面22(32)と、カバー部材4(5)と対向する側に鉛直面として形成した側面23(33)と、これら上面22(32)と側面23(33)とをつなぐようにして形成した曲面24(34)とを有している。そして、搬送溝21(31)のワーク搬送方向に対する始端は上面22(32)に直線部21a(31a)として形成された後に、曲面24(34)に沿って捻れ部21c(31c)として90°の捻れを伴いながら下方に進み、側面23(33)に至ってからは再度終端に直線部21b(31b)が形成されている。
【0034】
このようにして形成された搬送溝21(31)の内面によって、図3に示すようにしてワーク8は支持されつつ搬送される。このとき、まずワーク8は第1のガイド部材2に形成された搬送溝21の内面によって姿勢を規制されつつ、当該搬送溝21の開口方向が上向きから水平方向になるまでの捻りにともなって90°姿勢変換がなされる。そして、搬送溝21の終端21bに連結されている第2のガイド部材3の搬送溝31の始端31aに向かって搬送され、当該搬送溝31の内面によって姿勢を規制されつつさらに搬送溝21と同方向に90°姿勢変換が行われることで、合計180°の姿勢変換が行われる。上記の受け渡しに際して、搬送溝21、31の連結部を境界としたときの上流側の搬送溝としての搬送溝21の開口部は水平方向になっているが、下流側の搬送溝としての搬送溝31の開口部は上方向に切り替わるものの、連結部の前後で各搬送溝21、31の内面は滑らかに連続するようにして形成されており、搬送溝31は搬送溝21とは異なるワ−ク8の面を開放しつつ、同じ方向に捻られるようにして形成されている。
【0035】
本実施形態においては、搬送溝21、31は矩形断面を有する溝として形成されており、当該溝の内面であるところの底面および両壁面によって搬送するワーク8の三方向を支持することが可能となっている。そして、搬送の正逆の二方向以外の残りの一方向が開口部とされており、当該開口部より自由にワーク8の挿脱が可能になっている。搬送溝21、31の底面からの当該開口部に向けた方向が開口方向となっており、概ね搬送方向に垂直な搬送溝21、31の断面における壁面の向きと等しいものといえる。このように、ワーク8を搬送するための搬送路を溝として形成することで、機械加工によって簡便に構成することが可能であるとともに、内部を搬送させるワーク8へのアクセスが容易になることで保守作業を容易に行うことができる。
【0036】
そして、図5に戻って、上記のようなガイド部材2(3)と対応するカバー部材4(5)は、それぞれガイド部材2(3)の表面に接触しつつ上記搬送溝21(31)を覆うようにして取り付けることができるようになっている。そのため、当該カバー部材4(5)の内面形状と、上記ガイド部材2(3)の外形とは概ね対応している。すなわち、カバー部材4(5)の内側上面41(51)はガイド部材2(3)の上面22(32)に対応して平面として構成され、カバー部材4(5)の内側側面42(52)はガイド部材2(3)の側面23(33)に対応して平面として構成され、カバー部材4(5)の内側曲面43(53)はガイド部材2(3)の曲面24(34)に対応してこれと同一の曲率をもつ曲面として構成されている。また、カバー部材4(5)には上述したように、搬送溝21(31)の一部が連続して確認できるようにそれぞれ切り欠き部44(54)が設けられている。
【0037】
上記のようにしてガイド部材2(3)に形成した搬送溝21(31)およびこれと対応するカバー部材4(5)の位置関係をさらに詳細に説明するため、図4におけるA−A、B−B、C−C、D−DおよびE−E位置における断面を図6に示す。以下、図4を参照しつつ図6を用いて説明する。
【0038】
まず、A−A位置においては、搬送溝21(31)はガイド部材2(3)の上面22(32)にあり開口方向は上方向となっている。そして、カバー部材4(5)の切り欠き部44(54)によって、図中における搬送溝21(31)の右上方部分が開放部21d(31d)として開放されている。
【0039】
さらに、B−B位置においては、搬送溝21(31)は曲面部24(34)に沿って図中の左下方に移動するとともに反時計回りに捻れている。この時にも、カバー部材4(5)の切り欠き部44(54)によって、図中における搬送溝21(31)の右上方部分が開放部21d(31d)として開放されている。
【0040】
さらに、C−C位置、D−D位置に進むに従って、搬送溝21(31)は曲面部24(34)に沿ってさらに図中の左下方に移動するとともに反時計回りに捻れている。また、上記と同様にしてカバー部材4(5)の切り欠き部44(54)によって、搬送溝21(31)の一部が開放部21d(31d)として開放されている。
【0041】
さらに、E−E位置においては、搬送溝21(31)はガイド部材2(3)の側面23(33)にあり開口方向は左方向となっている。そして、カバー部材4(5)の切り欠き部44(54)によって、図中における搬送溝21(31)の左上方部分が開放部21d(31d)として開放されている。
【0042】
上記のように、A−A位置からE−E位置に至る搬送溝21(31)は円滑に形成され、これらの位置の間で90°の捻りが与えられる。また、当該搬送溝21(31)を覆うようにして設けられているカバー部材4(5)の切り欠き部44(54)にも同様に捻りが与えられており、当該切り欠き部44(54)によって搬送方向の全ての位置に渡って連続して搬送溝21(31)の開放部21d(31d)が形成され、いずれの位置においても搬送溝21(31)の一部を確認することができるようになっている。
【0043】
これらのA−A〜E−E位置におけるそれぞれの搬送溝21A〜21E(31A〜31E)の相互の位置関係を、模式的に図7に示す。以下、図4を参照しつつ図7を用いて説明する。
【0044】
A−A位置における搬送溝21Aは、平面として形成された上面22(32)に形成されており、図中における搬送溝21Aの左上部の稜線を起点として、曲面部24(34)は形成されている。そして、B−B〜D−D位置における搬送溝21B〜21Dは上記曲面部24(34)に形成されている。さらに、E−E位置における搬送溝21Eは平面として形成された側面23(33)に形成されている。当該搬送溝21Eにおける図中の左上方の稜線が上記曲面部24(34)の終点とされている。
【0045】
このA−A位置における搬送溝21AからE−E位置における搬送溝21Dに至るまでは、搬送方向より見て同一の回転中心Oを軸にして90°反時計回りに回転するようにして捻れるように形成されている。また、曲面部24(34)は同一の回転中心Oを有する円筒面の一部として形成されている。ただし、上述した当該曲面部24(34)と上面22(32)および側面23(33)との位置関係から、曲面部24(34)の中心角は90°よりも小さなものになる。
【0046】
このように形成されたガイド部材2(3)の外形形状に沿うようにして、図5に示すようにガイド部材4(5)の内面形状は形成されている。上述したように、搬送溝21(31)の始端近傍の直線部21a(31a)はガイド部材2(3)の平面部である上面22(32)に形成されており、終端近傍の直線部21b(31b)はガイド部材2(3)の平面部である側面23(33)に形成されている。そのため、これら搬送溝21(31)の始端および終端近傍に形成された直線部21a(31a)、21b(31b)を覆うカバー部材4(5)の内面部分も、平面部としての内側上面41(51)および内側側面42(52)として形成されることになる。
【0047】
これらの部分における寸法関係を、図7における終端近傍の搬送溝21E(31E)の場合を例として、図8に模式的に示す。本図より分かるように、搬送溝21E(31E)を覆うカバー部材4(5)の内面を曲面とした場合には、搬送溝21E(31E)の内部を搬送させるワーク8に対する遊びが大きくなってしまう。これに対して、搬送溝21E(31E)を覆うカバー部材4(5)の内面を平面とした場合には、図中に示したδの分だけ遊びを小さくすることができる。そのため、形状や大きさ、重量によって不安定となりがちであって、搬送溝21E(31E)の内部で回転しやすいワーク8を搬送する場合であっても、ワーク8の姿勢を適切に保つことができる。
【0048】
上記のように構成したワーク姿勢変換装置1は、以下のようにしてワーク8を搬送しつつその姿勢を変換することができる。
【0049】
まず、図1に示すように、供給されたワーク8は搬送整列手段9によって、搬送台93の表面に形成された搬送溝93aに沿って搬送されつつ同一の方向を向いた姿勢となるように整列させられる。
【0050】
そして、図2に示すように、搬送溝93aと連続するようにして第1のガイド部材2に形成された搬送溝21に向かって搬送され、当該搬送溝21の内部を通過した後に、これと連続する第2のガイド部材3に形成された搬送溝31を通過し、次工程の装置に供給される。
【0051】
図1に示すように、第1のガイド部材2と第2のガイド部材3とは、段差ブロック6を介して、搬送整列手段9と共通するプレート92の上に設けられており、共通の弾性支持手段としての板バネ94、94によって弾性支持されるとともに、共通の振動付与手段としての電磁石95による周期的な磁力を与えられて、搬送台93と連続したままで一体的にF方向に振動することで、ワーク8に対して推力を与えるようになっている。そのため、搬送整列手段9からワーク姿勢変換装置1に向けてワーク8を順次押し込んでいかなくても、ワーク姿勢変換装置1の内部でワーク8に対して直接推力を付与することができるようにしているため、円滑にワーク8の搬送を行わせることができる。
【0052】
また、本実施形態においては、図2に示すように、搬送溝21、31を捻りにともなってその中心位置が下方向に移行するのみで、上方向にならないように形成しているために、当該搬送溝22、31の内部を搬送中のワーク8に対してブレーキ力を作用させることなく、より円滑に搬送させることが可能となっている。
【0053】
このような搬送溝21、31の内部を通過することで、ワーク8は姿勢変換がなされる。具体的には、各搬送溝21、31の始端から終端までを通過することによって、それぞれワーク8は搬送方向を軸とする軸回りに90°姿勢が変換されることになり、第1のガイド部材2と第2のガイド部材3に形成された2つの搬送溝21、31が連結されることで形成される搬送路を連続して通過することで、合計180°姿勢が変換されるようになっている。このとき、各搬送溝21、31において、その開放方向は上方から水平方向の範囲を移行するのみであり下方向を向くことがないため、搬送溝21、31の内部でワーク8を安定して支持させることができる。そのため、搬送中のワーク8の挙動を安定させてカバー部材4、5の内面に必要以上に接触させることがないため、詰まりなどの不具合を生じさせることがなく円滑にワーク8の搬送および姿勢変換を行うことができる。また、たとえ詰まりが生じた場合であっても、当該詰まりの原因であるワーク8を取り除くためにカバー部材4、5を取り外した際にも搬送溝21、31の内部でワーク8が安定的に支持されているために、ワーク8が搬送溝21、31より飛び出すことがなく、保守作業を効率的に進めることができるとともに復旧時間が短縮でき、工数の削減を図ることができる。
【0054】
さらには、ワーク搬送台93に形成した搬送溝93aとの連結部としての搬送溝21の始端21aと、各ガイド部材2、3の間の連結部としての上流側の搬送溝21の終端21bおよび下流側の搬送溝31の始端31aと、想定される次工程の装置(図示せず)との連結部としての搬送溝31の終端31bとを直線状に形成していることから、これらの部分ではワーク8に対して搬送方向以外の力を生じさせることがない。そのため、これらの連結部において機械加工精度や取付誤差に起因する段差が生じており、当該段差をワーク8が通過する場合であってもワーク8の挙動が不安定になることがなく、より円滑に搬送を行わせることができる。また、各ガイド部材2、3の間の連結部としての上流側の搬送溝21の終端21bおよび下流側の搬送溝31の始端31aとの間では、内面が滑らかに連続するようにして形成しているために、搬送路の途中でワーク8の挙動が不安定となって内部でワーク8の詰まりが生じることがないようにされている。
【0055】
以上のように、本発明のワーク姿勢変換装置1は、搬送路に沿ってワーク8を搬送しつつ当該ワーク8の姿勢変換を行うものであって、前記搬送路がワーク8の姿勢を内面によって規制する複数の搬送溝21、31をワーク搬送方向に連結させることで構成されており、前記各搬送溝21、31が、ワーク搬送方向に沿って開口方向が上方向より水平方向までの間になるようにして時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に捻られるように形成されており、前記搬送溝21、31間の連結部において当該連結部を境界とする上流側と下流側の搬送溝21、31の内面を滑らかに連続させるとともに、前記下流側の搬送溝31の開口方向を前記上流側の搬送溝21の開口方向に対して上方向に切り替えるようにした後に、前記下流側の搬送溝31が前記上流側の搬送溝21と同じ方向に捻られるようにして形成したものである。
【0056】
このように構成しているため、ワーク8の姿勢変換を大きく行うという基本機能を有したまま、搬送溝21、31の内部でワーク8を安定して支持させて円滑に搬送および姿勢変換を行うことができ、ワーク8の詰まりや飛び出しを防止することができる。そのため、工程を安定化させることができるとともに、ワーク8の損傷や保守にかかる工数を削減をすることができる。また、搬送路を搬送溝21、31として形成しているため、加工が容易である上に、開口部から内部のワーク8へのアクセスが容易となり保守作業を効率的に行うことが可能となる。
【0057】
また、前記搬送溝21、31が各々異なるガイド部材2、3の表面に形成されているとともに、ワーク搬送方向に対する捻りにともなって、各搬送溝21、31の中心位置が下方向に移行するように形成されているため、ワーク8をより円滑に搬送することが可能となるとともに、上記の効果を有する装置を製作する際の加工がより容易になる。
【0058】
さらに、前記搬送溝21、31を覆うようにしてカバー部材4、5を設けるとともに、当該カバー部材4、5にワーク搬送方向に沿って切り欠き部44、54を形成して、当該切り欠き部44、54を通じて前記搬送溝21、31の一部がワーク搬送方向に連続して確認できるように構成しているため、搬送溝21、31の内部でのワーク8をより安定して支持することができるようになるとともに、搬送溝21、31の内部でワーク8の詰まりが生じた場合でも、詰まりの生じている箇所を外部から容易に把握することができるため速やかに保守作業を行うことが可能となる。
【0059】
また、前記搬送溝21、31の始端および終端近傍を直線状に形成するように構成しているため、搬送溝21、31の間または搬送溝21、31と外部との間の連結部において、ワーク8に対して進行方向以外の力を作用させないようにすることができるため、連結部に生じる微小な凹凸を越える際にもワーク8の挙動を安定化させることが可能となる。
【0060】
さらに、前記カバー部材4、5の内面を前記搬送溝21、31の始端および終端近傍で平面になるように形成しているため、上記の連結部において搬送溝21、31の内部での遊びを小さくさせることができ、当該連結部を通過する際のワーク8の挙動をより安定化させることが可能となる。
【0061】
また、本発明のワーク供給装置7は、ワーク8の姿勢を揃えつつ搬送するワーク搬送整列手段9と、上記のワーク姿勢変換装置1とを備えており、前記ワーク搬送整列手段9と前記ワーク姿勢変換装置1とが共通する振動付与手段95によって駆動されるように構成したものである。
【0062】
このように構成しているため、ワーク8を適切な姿勢にしつつ搬送し、次工程に適した姿勢に変換して供給することのできる操作性の良いワーク供給装置7としてコンパクトに構成することが可能となる
【0063】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0064】
例えば、上記の実施形態においては、第1のガイド部材2および第2のガイド部材3を同一の形状のものとしていたが、これは必須ではなく別々の形状として構成することも可能である。この場合には、対応する第1および第2のカバー部材4、5の形状も別々のものとなる。
【0065】
また、上記の実施形態では各ガイド部材2、3に形成する搬送溝21、31の捻れ角を90°としていたが、本ワーク姿勢変換装置1の前後に設ける装置に形成された搬送路との関係から適宜、適切な角度に変更することも可能であり、合計で180°とすることも必須ではない。この時、連結部における下流側の搬送溝31の開口方向は、上流側の搬送溝21の開口方向に対して上方向になっていればよく、必ずしも鉛直上方向を向いている必要はない。また、本実施形態では各ガイド部材2、3に形成する搬送溝21、31の捻れ方向は搬送方向より見て反時計回りの方向としているが、各搬送溝21、31の捻れ方向が同一である限り逆向きの捻れ方向としても良い。
【0066】
さらには、第1のガイド部材2および第2のガイド部材3と連続させて、第3、第4のガイド部材および第3、第4のカバー部材を設けてワーク8を搬送するための搬送路をより細かく分割させることも可能である。
【0067】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ワーク姿勢変換装置
2…第1のガイド部材
3…第2のガイド部材
4…第1のカバー部材
5…第2のカバー部材
6…段差ブロック
7…ワーク供給装置
8…ワーク
9…ワーク搬送整列手段
21…搬送溝
31…搬送溝
94…板バネ
95…電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿ってワークを搬送しつつ当該ワークの姿勢変換を行うワーク姿勢変換装置であって、前記搬送路がワークの姿勢を内面によって規制する複数の搬送溝をワーク搬送方向に連結させることで構成されており、前記各搬送溝が、ワーク搬送方向に沿って開口方向が上方向より水平方向までの間になるようにして時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に捻られるように形成されており、前記搬送溝間の連結部において当該連結部を境界とする上流側と下流側の搬送溝の内面を滑らかに連続させるとともに、前記下流側の搬送溝の開口方向を前記上流側の搬送溝の開口方向に対して上方向に切り替えるようにした後に、前記下流側の搬送溝が前記上流側の搬送溝と同じ方向に捻られるようにして形成したことを特徴とするワーク姿勢変換装置。
【請求項2】
前記搬送溝が各々異なるガイド部材の表面に形成されているとともに、ワーク搬送方向に対する捻りにともなって、各搬送溝の中心位置が下方向に移行するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク姿勢変換装置。
【請求項3】
前記搬送溝を覆うようにしてカバー部材を設けるとともに、当該カバー部材にワーク搬送方向に沿って切り欠き部を形成して、当該切り欠き部を通じて前記搬送溝の一部がワーク搬送方向に連続して確認できることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク姿勢変換装置。
【請求項4】
前記搬送溝の始端および終端近傍を直線状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク姿勢変換装置。
【請求項5】
前記カバー部材の内面を前記搬送溝の始端および終端近傍で平面になるように形成したことを特徴とする請求項4に記載のワーク姿勢変換装置。
【請求項6】
ワークの姿勢を揃えつつ搬送するワーク搬送整列手段と、請求項1〜5のいずれかに記載のワーク姿勢変換装置とを備えており、前記ワーク搬送整列手段と前記ワーク姿勢変換装置とが共通する振動付与手段によって駆動されることを特徴とするワーク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−236703(P2012−236703A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107975(P2011−107975)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】