説明

ワーク搬送装置

【課題】組立てライン上を搬送される台車に作業者が接触した場合に、作業者等が台車から強い衝撃を受けて負傷する事態を可及的に回避することのできるワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】ワーク搬送装置は、組立てラインに沿ってチェーンベルト11を駆動可能に配設したチェーンコンベアと、組立てラインに供給するワークを載置可能な台車と、台車をチェーンベルト11に連結する連結装置20とを備えており、台車は、チェーンベルト11の駆動力で牽引されることで、組立てライン上を搬送される。ここで、連結装置20は、チェーンベルト11と係合し、係合した状態で台車をチェーンベルト11により牽引可能とする係合部20を有すると共に、台車に所定の負荷が作用した場合に、台車の搬送方向への移動を許容し、搬送方向に直交する向きの移動を規制した状態で、チェーンベルト11と係合部22との係合状態が解除されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送装置に関し、特にチェーンコンベアと、このコンベアに牽引可能に連結した台車とを備え、ワークを載置した台車をチェーンコンベアで搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン等の自動車部品を生産する際に用いられる組立てラインには様々な種類があり、工場内のレイアウトや生産台数等に応じて組立てラインの形態が決定される。このような組立てラインとして、例えば下記特許文献1に記載の如き組立てラインが知られている。すなわち、この組立てラインは、当該組立てラインの軌道に沿って床面より上方にチェーンベルトを配設してなるチェーンコンベアと、チェーンベルトと同期して組立てラインの軌道上を搬送する台車と、この台車をチェーンベルトに連結する係止具とを備えたものであって、係止具により台車をチェーンベルトに連結した状態では、チェーンベルトの駆動に伴い台車を組立てラインに沿って搬送させると共に、台車に載置された自動車部品に対して所定の作業を施せるようにしたものである。また、上記係止具は、軌道上の所定位置(屈曲部分)でチェーンベルトと離れる以外は、常にチェーンベルトと連結して台車を牽引するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−286559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記組立てラインにおいては、作業者が、台車に載置されたワーク(自動車部品)に対して様々な方向から組立て作業を実施する際、あるいは組立てライン上に配設されている台車間を通過する際に、誤って台車と接触又は衝突することがある。通常、組立てライン上にあっては、台車は上記特許文献1に記載のように係止具を介してチェーンベルトにロック(連結固定)されている。そのため、上述のように、作業者が台車に接触又は衝突した場合には、台車および台車に載置したワークの総重量に相当する力(衝撃)をまともに受けることになり、作業者が負傷するおそれがあった。
【0005】
また、上記のように、チェーンベルトを床面よりも上方に配設してなる組立てラインは、チェーンベルトを床下に埋設した形態の組立てラインに比べてメンテナンス面およびコスト面で優れているため、不定期に稼動する頻度の高い少量生産用途に用いられる傾向にある。また、少量生産用途であれば、それほど高い作業効率は要求されないため、例えば各作業スペース間を詰めるなどして、組立てラインの省スペース化を図る傾向にある。しかしながら、このような組立てラインにあっては、上述のように、チェーンベルトが床上に露出していたり、ライン全体の省スペース化を図っていることもあって、作業者等(組立てラインで直接的に作業を行う者だけでなく、その補助、監視、管理を行う者も含まれる)の移動スペースが限られる。そのために、移動時に組立てライン上の台車に接触又は衝突し易い問題があった。
【0006】
以上の事情に鑑み、組立てライン上を搬送される台車に作業者が接触した場合に、作業者等が台車から強い衝撃を受けて負傷する事態を可及的に回避することのできるワーク搬送装置を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係るワーク搬送装置により達成される。すなわち、このワーク搬送装置は、組立てラインに沿ってチェーンベルトを駆動可能に配設したチェーンコンベアと、組立てラインに供給するワークを載置可能な台車と、台車をチェーンベルトに連結する連結装置とを備え、台車は、チェーンベルトの駆動力で牽引されることで、組立てライン上を搬送されるワーク搬送装置において、連結装置は、チェーンベルトと係合し、係合した状態で台車をチェーンベルトにより牽引可能とする係合部を有し、かつ、台車に所定の負荷が作用した場合に、台車の搬送方向への移動を許容し、搬送方向に直交する向きの移動を規制した状態で、チェーンベルトと係合部との係合状態が解除されるように構成されている点をもって特徴付けられる。
【0008】
このように、本発明では、チェーンコンベア(チェーンベルト)と台車との係合により両者を連結する連結装置を、その係合状態が台車に所定の負荷が作用した際に解除されるように構成したので、例えば、作業者等が作業中や移動中に誤って台車に接触又は衝突した場合に、接触時(衝突時)の衝撃により、台車とチェーンコンベアとの係合状態が解除される。これにより、作業者が台車から受ける衝撃が緩和され、結果、作業者が負傷する事態を可及的に回避することができる。また、上記係合状態の解除は、台車の組立てライン上の搬送方向に直交する向きの移動を規制した状態で行われるようになっているので、上記係合状態が解除された状態においても、台車がチェーンコンベアから完全に離脱する事態を防止して、台車の可動範囲を必要最小限(組立てライン上)に抑えることができる。従って、チェーンベルトと分離した台車が作業者等と再び接触又は衝突する事態を可及的に回避することができる。
【0009】
特に、この種の組立てラインにおいては、例えば図1に示すように、組立てライン1上の各作業エリア3で作業を行う作業者Wは、通常、基準の立ち位置(作業位置)において、組立てライン1の搬送方向と直交する向きに対峙している。そのため、作業者等が台車と不意に接触又は衝突する位置は、組立てライン上に配置された台車と台車との間の領域に限られ、またその際の接触(衝突)方向は、おおよそ、台車を組立てラインに沿って移動させる向き(図1でいうと、矢印dで示す向き)に限定される。本願発明は、この点も踏まえて成されたものであって、台車の組立てライン上の搬送方向への移動のみを許容した状態で、台車とチェーンベルトとの係合状態を解除するようにすることで、台車と衝突した作業者から離れる向きに当該台車を逃がすことができる。これにより、作業者が台車から受ける衝撃を大幅に緩和しつつも、衝突後の台車の移動により作業者が再び当該台車と接触又は衝突する可能性を排除して、作業者が負傷する事態をより高い確率で防止することが可能となる。
【0010】
ここで、チェーンベルトとの係合解除時における台車の移動を部分的に規制するための手段として、例えば係合部とは別に、係合部とチェーンベルトとの係合解除時に、台車の搬送方向への移動を許容しつつ、搬送方向に直交する向きの移動を規制する移動規制手段を設けるようにしてもよい。あるいは、係合部を、チェーンベルトを挟持する挟持部材で構成し、かつ、挟持部材とチェーンベルトとの係合状態が解除された状態において、挟持部材によるチェーンベルトの挟持状態が維持されるように構成してもよい。特に後者の構成によれば、係合部(挟持部材)を、チェーンベルトとの係合解除時には、台車の移動規制手段としても機能させることができるので、連結装置の構成を単純化でき、製作コストおよびスペースの両面で有益である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係るワーク搬送装置によれば、組立てライン上を搬送される台車に作業者が接触した場合に、作業者等が台車から強い衝撃を受けて負傷する事態を可及的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク搬送装置を備えた組立て工程の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】台車とチェーンベルトを連結する連結装置の断面図である。
【図4】(a)は図3のB−B部分断面図、(b)は図3のC−C断面図である。
【図5】図3のB−B部分断面図であって、台車に所定の負荷が作用した場合の連結装置とチェーンベルトとの係合状態を示す図である。
【図6】台車に所定の負荷が作用した場合の連結装置の断面図である。
【図7】ワーク搬送装置の他の実施形態を示す要部(連結装置)の断面図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態を図面に基づき説明する。この実施形態では、自動車エンジンの組立ラインに本発明に係るワーク搬送装置を適用した場合を例にとって説明する。なお、これ以降の説明においては、特に断りのない限り、鉛直方向を単に上下方向というものとする。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る組立て工程の平面図を示している。同図に示すように、この組立て工程は、閉ループを構成する自動車エンジンの組立てライン1と、この組立てライン1に組み込まれたワーク搬送装置とを具備したもので、台車2と部品箱(図示は省略)が一体的に搬送されて各作業エリア3で作業者Wの手によりエンジン部品(何れも図示は省略)の組立て作業が実施されるようになっている。具体例を挙げて説明すると、まず、組立てライン1上の所定の作業エリア3に搬送された台車2上に、図1中の矢印aで示す向きからシリンダブロックが移載されると共に、この作業エリア3よりも下流側でオイルパン、フライホイールなどの部品が、担当する作業者Wにより台車2に付設した部品箱から取り出されて、シリンダブロックに組付けられる。そして、さらに下流側となる作業エリア3に搬送された台車2上に、図1中の矢印bで示す向きからシリンダヘッドが移載され、シリンダブロックと一体に組み立てられる。そして、この中間組立て体に対して、さらに下流側の作業エリア3において各種部品(カムキャップやヘッドカバーなど)を部品箱から取り出して組み付けた後(エンジンの組付け作業が完了した後)、組立てライン1から、図1中矢印cで示す向きに搬出され、検査工程等の後工程に移送される。
【0015】
ワーク搬送装置は、組立てライン1に沿ってチェーンベルト11(図2を参照)を駆動可能に配設したチェーンコンベア10と、組立てライン1に供給するワークを載置可能な台車2と、台車2をチェーンベルト11に連結する連結装置20とを備える。ここで、台車2は、チェーンベルト11の駆動力で牽引されることで組立てライン1上を搬送されるようになっている。また、この実施形態では、チェーンコンベア10は、図2に示すように、床面より上方に配設されたベース12によってチェーンベルト11が支持された構造を有しており、図示しないモータによりチェーンベルト11を組立てライン1に沿って駆動できるようになっている。
【0016】
連結装置20は、図2に示すように、組立てライン1の幅方向(水平方向であって、組立てライン1に直交する向きをいう。以下、単に幅方向という。)に向かって伸び、幅方向一端側が台車2の側縁に固定される基部21と、基部21の幅方向他端側に設けられ、チェーンコンベア10のチェーンベルト11と係合可能な係合部22とを主に備える。係合部22は、この実施形態では、図3に示すように、チェーンベルト11を挟持する一対の挟持部材23と、チェーンベルト11に装着され、一対の挟持部材23によるチェーンベルト11の挟持を容易に行うための挟持補助部材24とで構成される。
【0017】
挟持補助部材24は、図4(a)に示すように略円盤状を成すもので、例えばドグと呼ばれるチェーンベルト11の汎用装着部品を使用することができる。ここで、挟持補助部材24は、略半円状に分割した状態で、チェーンベルト11を構成する一対の内側プレート14および一対の外側プレート15を相互に連結するピン16を挟み込むようにして、一対の内側プレート14間に装着される(図3および図4を参照)。この挟持補助部材24は、所定の間隔でチェーンベルト11の複数箇所に装着される。もちろん、台車2の連結装置20よりも細かいピッチで挟持補助部材24をチェーンベルト11に装着してもよい。図1の形態で例示すると、1台の台車2をチェーンベルト11に連結する2個の連結装置20,20間に対応する位置にも挟持補助部材24を装着してもよい。
【0018】
一対の挟持部材23は、図3に示すように、略板状をなす上側部分でもって基部21の下端からさらに下方に伸びるプレート部21aを外側から挟むようにして例えばボルト25およびナット26で固定される。また、挟持部材23の下端には、チェーンベルト11を幅方向に挟持可能な爪部27が設けられており、後述する挟持力調整手段28により、互いに近接する向きの力(言い換えると挟持力)が爪部27に付与されるようになっている。ここで、爪部27は、チェーンベルト11に装着された挟持補助部材24の外周面24aに対応した内周面形状(ここでは略半円筒面形状)をなし、挟持補助部材24を幅方向外側から挟持できるようになっている。また、爪部27の先端(下端)27aは、挟持補助部材24の挟持面(略半円筒面)よりも幅方向内側に突出しており、図3に示すように、挟持補助部材24を挟持した状態では、上下左右何れの方向にも移動不能に固定されるようになっている。
【0019】
また、連結装置20は、一対の挟持部材23によるチェーンベルト11への挟持力を調整するための挟持力調整手段28をさらに備えている。従って、この実施形態では、係合部22と、挟持力調整手段28とで、チェーンベルトとの係合解除時に、台車の搬送方向への移動を許容しつつ、搬送方向に直交する向きの移動を規制する移動規制手段が構成される。ここで、挟持力調整手段28は、一対の挟持部材23および基部21のプレート部21aを水平方向に貫通するボルト29と、ボルト29に螺合するナット30と、ボルト29のヘッド部と一方(図3中右側)の挟持部材23との間、およびナット30と他方(図3中左側)の挟持部材23との間にそれぞれ配設される弾性部材31,31とで構成される。このように構成された挟持力調整手段28にあっては、例えばナット30の締付け力を調整することで、弾性部材31の弾性復元力(圧縮状態から元の大きさに戻ろうとする力)を制御して、一対の爪部27によるチェーンベルト11(挟持補助部材24)への挟持力を調整できるようになっている。また、このような形態を採る場合、挟持部材23は、幅方向外側に若干の傾動が許容されるように、基部21のプレート部21aにボルト25,29で固定されている。
【0020】
以上の構成をなすワーク搬送装置において、ワーク搬送時には、連結装置20の挟持部材23に設けられた爪部27が、チェーンベルト11に装着された挟持補助部材24を幅方向外側から挟持し、相対移動不能に固定される(図3および図4(a)を参照)。これにより、連結装置20を介して台車2とチェーンベルト11とが連結され、チェーンベルト11の駆動に伴いワークを載置した台車2が牽引され、組み立てライン1上を搬送する(図1を参照)。
【0021】
また、例えば、各作業エリア3で所定の組立て作業を行う作業者W等が、何らかの理由で不意に台車2と図1中矢印dの方向から接触又は衝突した場合であっても、予め、作業者W等と台車2との接触力(衝撃力)を考慮して、挟持部材23(の爪部27)の挟持力を挟持力調整手段28で調整しておくことにより、作業者W等が台車2に接触又は衝突した際に、爪部27が挟持補助部材24に対して押し拡げられる(図5でいえば、上向き矢印の方向に拡がる)。これにより、爪部27と挟持補助部材24との係合状態が解除されることになるので、作業者W等が接触又は衝突により台車2から受ける反力(衝撃力)を緩和することができ、作業者W等が負傷する事態を可及的に回避することができる。
【0022】
また、この実施形態では、挟持力調整手段28で、一対の爪部27(挟持部材23)に一定の挟持力を与えるようにしたので、上記のようにして挟持(係合)状態が解除された場合、挟持部材23が図5の右向き矢印の方向に移動しながらも、引き続き挟持補助部材24を挟持しようとする力が挟持補助部材24に付与される。そのため、挟持(係合)状態が解除された状態において、台車2の組立てライン1の搬送方向に沿った向きの移動が許容されつつ、当該搬送方向に直交する向きの移動が規制される。これにより、台車2と衝突した作業者W等から離れる向きに台車2を逃がすことができる。よって、作業者W等が台車2から受ける衝撃を大幅に緩和しつつも、衝突後の台車2の移動により作業者W等が再び台車2と接触又は衝突する可能性を排除して、作業者W等が負傷する事態をより高い確率で防止することが可能となる。
【0023】
なお、図5に示すように、爪部27の水平方向端部が挟持補助部材24の外周面24aの幅方向(図5でいえば上下方向)最外部に到達した時点で未だ矢印fの向きに移動を続ける場合、爪部27は完全に挟持補助部材24から離脱することになるが、その場合であっても、挟持部材23は挟持力調整手段28により基部21のプレート部21aに押し付けられ、所定の対向間隔が維持される(図3を参照)。そのため、一対の爪部27ないし挟持部材23がチェーンベルト11を間に挟んだ状態となり、これにより、台車2の組立てライン1の搬送方向に沿った向きの移動が許容されつつ、当該搬送方向に直交する向きの移動が若干の遊びを残して規制される。従って、想定外の大きな衝撃を受けた場合においても、台車2をチェーンベルト11から完全に離脱させることなく、作業者W等が台車2から受ける衝撃を大幅に緩和することができる。
【0024】
また、この実施形態のように、挟持補助部材24を介してチェーンベルト11を挟持部材23(係合部22)で係合連結するのであれば、挟持補助部材24の装着位置および装着数を調整することで、台車2のチェーンコンベア10への連結位置および連結台数を設定できる。そのため、台車2の間隔を自由かつ容易に変更することができ、タクト変動への対応が容易となる利点が得られる。
【0025】
以上、本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態を説明したが、このワーク搬送装置は、上記例示の形態に限定されることなく、本発明の範囲内において任意の形態を採ることが可能である。
【0026】
図7はその一例を示すもので、同図に示すワーク搬送装置の連結装置20は、基部21の下端からさらに下方に伸びるプレート部(第1のプレート部)21aを有すると共に、挟持部材23よりも幅方向外側に位置し、水平方向に伸びるプレート部(第2のプレート部)21bを有する。また、このプレート部21bの下方には、鉛直方向を回転軸とするローラ32が回転自在に取り付けられている。このローラ32は、幅方向一方側に2個ずつ計4個設けられており(図8を参照)、爪部27で挟持補助部材24を挟持した状態では、全てのローラ32の外周面が、チェーンコンベア10のベース12の両外側面12aと当接するようになっている。
【0027】
このようにローラ32をチェーンコンベア10の幅方向両側に配設することで、図1および図3に示す通常搬送時には、ローラ32が連結装置20ひいては台車2の搬送方向へのガイドローラとして機能する。また、図5や図6に示すように、係合部22とチェーンベルト11との係合状態(爪部27と挟持補助部材24との挟持状態)が解除された状態では、チェーンコンベア10をローラ32で挟み込んだ状態が維持される。そのため、爪部27が完全に挟持補助部材24から完全に離脱した場合にあっても、台車2の組立てライン1の搬送方向に沿った向きの移動が許容されつつ、当該搬送方向に直交する向きの移動を完全に規制して、台車2の衝突後の移動範囲を最小限に抑えることができる。
【0028】
もちろん、上記のようにローラ32を配設した場合には、ローラ32自体が移動規制手段として機能するので、係合部22を必ずしも一対の挟持部材23で構成する必要はない。この場合、例えば係合部22を、図示は省略するが、チェーンベルト11の内側プレート14,14間に挿入することでチェーンベルト11と係合でき、係合した状態では台車2をチェーンベルト11により牽引可能とする係合ピンで構成してもよい。また、この係合ピンのチェーンベルト11との係合力を調整する係合力調整手段を別途設けて、台車2に作業者W等からの接触力又は衝撃力に相当する力が作用した場合に、チェーンベルト11と係合ピンとの係合状態が解除されるように、係合ピンとチェーンベルト11との係合力を調整する係合力調整手段を別に設けてもよい。もちろん、係合部22に限らず、連結装置20は、上記実施形態に限られることなく本発明の範囲内で任意の形態を採ることが可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、自動車エンジンの組立て工程に本発明に係るワーク搬送装置を適用した場合を例にとって説明を行ったが、本発明は、自動車エンジン以外の部品組立て工程にも当然に適用することが可能である。
【0030】
また、上記以外の事項についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0031】
1 組立てライン
2 台車
3 作業エリア
10 チェーンコンベア
11 チェーンベルト
12 ベース
14 内側プレート
15 外側プレート
16 ピン
20 連結装置
21 基部
21a (第1の)プレート部
21b (第2の)プレート部
22 係合部
23 挟持部材
24 挟持補助部材
25,29 ボルト
26,30 ナット
27 爪部
28 挟持力調整手段
31 弾性部材
32 ローラ
W 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立てラインに沿ってチェーンベルトを駆動可能に配設したチェーンコンベアと、前記組立てラインに供給するワークを載置可能な台車と、該台車を前記チェーンベルトに連結する連結装置とを備え、前記台車は、前記チェーンベルトの駆動力で牽引されることで、前記組立てライン上を搬送されるワーク搬送装置において、
前記連結装置は、前記チェーンベルトと係合し、該係合した状態で前記台車を前記チェーンベルトにより牽引可能とする係合部を有し、かつ、
前記台車に所定の負荷が作用した場合に、前記台車の搬送方向への移動を許容し、該搬送方向に直交する向きの移動を規制した状態で、前記チェーンベルトと前記係合部との係合状態が解除されるように構成されていることを特徴とするワーク搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−207615(P2011−207615A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79149(P2010−79149)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】