ワーク用処理装置
【課題】複数の搬入部を備えているにもかかわらず、他のワークの処理内容でワークに処理が施されることがないようにする。
【解決手段】レンズ12を特定可能な識別番号が識別タグ(バーコード)として設けられたレンズ毎のトレイTを備える。トレイTとともにレンズ12が順次搬入される第1、第2の処理ユニット21,22と、前記識別タグを読むための識別タグリーダー(第2のバーコードリーダー65)とを備える。第1、第2の処理ユニット21,22のうち一方の処理ユニットのレンズ12にマーキングを施すワーク処理部を備える。指定した処理ユニットに搬入されているレンズ12がレンズ毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部を備える。前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部68を備えている。
【解決手段】レンズ12を特定可能な識別番号が識別タグ(バーコード)として設けられたレンズ毎のトレイTを備える。トレイTとともにレンズ12が順次搬入される第1、第2の処理ユニット21,22と、前記識別タグを読むための識別タグリーダー(第2のバーコードリーダー65)とを備える。第1、第2の処理ユニット21,22のうち一方の処理ユニットのレンズ12にマーキングを施すワーク処理部を備える。指定した処理ユニットに搬入されているレンズ12がレンズ毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部を備える。前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部68を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが搬入される複数の搬入部を備えたワーク用処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク用処理装置としては、搬入部に搬入されたワークをワーク処理部に順次送る構成のものが多い。たとえば、特許文献1に記載されているワーク用処理装置においては、眼鏡レンズが一箇所の搬入部に搬入され、この搬入部から一つずつマーキング装置(ワーク処理部)に送られる。マーキングが終了した眼鏡レンズは、マーキング装置から搬入部に戻され、ここから搬出される。この装置では、マーキングが終了した眼鏡レンズが搬出されるまでは搬入部に次の眼鏡レンズを搬入することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−53227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、特許文献1に記載されているような眼鏡レンズ用処理装置において、一つのマーキング装置に対して二つの搬入部を設けることによって、生産性の向上を図ることを考えている。しかしながら、このような構成を採ると、以下に説明するような問題が生じるおそれがある。
【0005】
眼鏡レンズは、所定の順序で眼鏡レンズ用処理装置に送られる。この眼鏡レンズの搬入先は、送られた順序で作業者によって二つの搬入部に交互に振り分けられる。このとき、何らかの原因で眼鏡レンズの搬入先が変わってしまった場合は、眼鏡レンズには他のレンズの印がマーキングされてしまうことになる。
【0006】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、連続的に異種、異タイプのワークを処理する際に、他のワークの処理内容でワークに処理が施されるようなことを確実に防ぐことができるワーク用処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係るワーク用処理装置は、ワークを特定可能な識別番号が識別タグとして設けられたワーク毎の識別部材と、前記識別部材とともにワークが順次搬入される複数の搬入部と、これらの搬入部に搬入された前記識別部材の識別タグを読むための識別タグリーダーと、前記複数の搬入部の中から選択した一つの搬入部のワークに処理を施すワーク処理部と、前記複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定し、この搬入部に搬入されているワークがワーク毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記制御部には警報装置が接続され、前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない場合に前記警報装置を動作させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記ワーク処理部は、前記搬入部に設けられているスタートスイッチがON操作されたときに処理動作を開始するものであり、前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチの機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチの機能を有効にすることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記識別部材は、ワークを個々に収納するトレイであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、前記発明において、前記ワークは眼鏡レンズであり、前記ワーク処理部は、眼鏡レンズに印を付与するマーキング装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬入部に搬入されたワークと、ワーク処理部において処理の対象になっているワークとが一致している場合のみにワーク処理部による処理が行われる。したがって、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、他のワークの処理内容でワークに処理が施されるようなことを確実に防ぐことが可能なワーク用処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る眼鏡レンズ用マーキング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】マーキング装置の正面図である。
【図3】マーキング装置の側面図である。
【図4】マーキング位置設定装置の正面図である。
【図5】計測装置の正面図である。
【図6】マーキング装置の正面図で、同図(A)は眼鏡レンズの一側部にマーキングを施している状態を示し、同図(B)は眼鏡レンズの他側部にマーキングを施している状態を示している。
【図7】マーキング後の眼鏡レンズの平面図である。
【図8】プリズムレンズを使用する場合のマーキング装置の正面図で、同図(A)は眼鏡レンズの一側部にマーキングを施している状態を示し、同図(B)は眼鏡レンズの他側部にマーキングを施している状態を示している。
【図9】レーザーパワーの大きさを説明するための図である。
【図10】マークの高さを説明するためのグラフで、同図(A)は本発明によるマーキング装置によって形成された耳側のマークの高さを示し、同図(B)は本発明によるマーキング装置によって形成された鼻側のマークの高さを示している。
【図11】制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】マーキング装置の準備動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】マーキング装置のマーキング動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】計測装置の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るワーク用処理装置の一実施の形態を図1〜図13によって詳細に説明する。この実施の形態では、本発明を眼鏡レンズ用マーキング装置に適用する場合の例を示す。
図1に示す眼鏡レンズ用マーキング装置11は、詳しくは後述するがワークとしてのプラスチック製眼鏡レンズ12(以下、単にレンズ12という)をレンズ面が上方を指向する状態で水平方向に搬送する搬送装置13を備えている。
【0015】
この搬送装置13は、前記レンズ12をマーキング位置設定工程A→計測工程B→距離調整工程C→マーキング工程Dという一連の工程において順次所定の動作が行われるように搬送する。この搬送装置13は、レンズ12を後述する第1、第2の搬送テーブル14,15に保持させた状態で搬送するものである。
【0016】
前記マーキング位置設定工程Aは、レンズ12の目標マーキング位置を特定する工程である。この工程は、後述するマーキング位置設定装置16を用いて実施される。
前記計測工程Bは、レンズ12の目標マーキング位置と後述するレーザーマーカー17との間の距離(図6および図8参照)を測る工程である。この工程は、詳細は後述するが、前記目標マーキング位置に対して高さを読み取る変位計測器を使用した計測装置18によって実施される。
この工程は、後述する計測装置18を用いて実施される。
【0017】
前記距離調整工程Cは、前記計測工程Bで計測された距離が予め定めたマーキング距離Lと一致するようにレンズ12とレーザーマーカー17との距離を変化させる工程である。この工程は、後述する距離調整装置19によって実施される。
前記マーキング工程Dは、レンズ12の目標マーキング位置にレーザーマーキングを施す工程である。この工程は、後述するレーザーマーカー17によって実施される。
【0018】
この実施の形態によるマーキング装置11の水平方向の両端部には、作業者(図示せず)がレンズ12の搬入と搬出とを行うために第1、第2の処理ユニット21,22が設けられている。第1の処理ユニット21は、マーキング装置11における図1において左側の端部に設けられ、第2の処理ユニット22は、他端部に設けられている。これらの第1、第2の処理ユニット21,22には、装置前方(図1の紙面の上方)に向けて開放された作業スペースSがそれぞれ形成されている。この実施の形態においては、これらの第1、第2の処理ユニット21,22によって、本発明でいう搬入部が構成されている。すなわち、この実施の形態に示すマーキング装置11は、二箇所の搬入部を備えている。
【0019】
第1の処理ユニット21においては、第1の搬送テーブル14に対してレンズ12の着脱が行われる。第2の処理ユニット22においては、第2の搬送テーブル15に対してレンズ12の着脱が行われる。このように二つの搬送テーブル14,15を使用する理由は、第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにおいてレンズ12の搬入・搬出作業を個別に行うことができるようにするためである。
【0020】
レンズ12は、作業者によって第1または第2の処理ユニット21,22内に搬入される。レンズ12は、左眼用のものと右眼用のものとが一つのトレイT(図1参照)に収納されており、このトレイT毎に第1、第2の処理ユニット21,22に対して搬入または搬出が行われる。前記トレイTには、このトレイTに収納されたレンズ12を特定可能なレンズ毎の識別番号が付与されている。この識別番号は、この実施の形態においてはバーコードとしてトレイTに設けられている。このバーコードによって、本発明でいう「識別タグ」が構成されている。なお、識別タグとしては、バーコードを用いる他に、RFIDタグ(図示せず)を使用することができる。
【0021】
第1、第2の処理ユニット21,22に搬入されたレンズ12は、マーキング位置設定装置16を用いて所定の位置に位置決めされ、この位置決め状態で第1、第2の搬送テーブル14,15に保持される。次に、このレンズ12は、搬送装置13によって計測装置18とレーザーマーカー17とに送られ、これらの装置による処理が終了した後に搬入時と同じ第1または第2の処理ユニット21,22に戻される。この実施の形態によるマーキング装置11は、このような各装置の動作を自動的に行うために制御装置23とマーカー側PLC24とを備えている。
【0022】
前記搬送装置13は、前記第1、第2の搬送テーブル14,15をそれぞれ上下方向に移動させる機能と、これらの搬送テーブル14,15をそれぞれ水平方向に移動させる機能とを有している。第1、第2の搬送テーブル14,15は、図4に示すように、支持板25と、この支持板25に設けられた二つの吸着パッド26,26とによって構成されている。前記支持板25は、後述する搬送装置13の昇降スライダ27に支持されている。
【0023】
吸着パッド26は、空気ホース28を介して図示していない吸引装置に接続されており、レンズ12の下面(マーキングが施されるレンズ面とは反対側の面)に吸着し、レンズ12を移動することがないように保持する。二つの吸着パッド26,26は、搬送装置13の搬送方向に予め定めた距離をおいて並べられている。一方の吸着パッド26には左眼用レンズ12Lが吸着され、他方の吸着パッド26には右眼用レンズ12Rが吸着される。図4は、同図の右側に左眼用レンズ12Lが位置し、同図の左側に右眼用レンズ12Rが位置する状態で描いてある。
【0024】
搬送装置13は、図2および図3に示すように、前記各搬送テーブル14,15を上下方向に移動させる二つの昇降装置31と、各搬送テーブル14,15を水平方向に移動させる二つの水平移動装置32とを備えている。
前記昇降装置31は、第1、第2の搬送テーブル14,15が取付けられた昇降用スライダ27をボールねじ機構によって昇降させる構成が採られている。
【0025】
昇降用スライダ27は、後述する水平移動装置32に支持された昇降ベースプレート33に上下方向に移動自在に支持されている。昇降用スライダ27の移動する方向は、昇降ベースプレート33に設けられた2本のガイドレール34によって規制されている。これらのガイドレール34は、上下方向に延びるとともに、互いに水平方向に離間している。
昇降ベースプレート33には、上下方向に延びるボールねじ軸35が回転自在に支持されているとともに、このボールねじ軸34を回転させる第1、第2の昇降サーボモータ36,37が取付けられている。
【0026】
前記ボールねじ軸35は、2本のガイドレール34の間に配設されている。このボールねじ軸35には、昇降用スライダ27に回転自在に支持されたボールねじナット38が螺合している。すなわち、この昇降装置31は、第1、第2の昇降サーボモータ36,37の駆動によりボールねじ軸35が回転することによって、昇降用スライダ27が第1の搬送テーブル14または第2の搬送テーブル17とともに上昇または下降する。
【0027】
第1、第2の昇降サーボモータ36,37の動作は、後述する制御装置23によって制御される。制御装置23は、第1、第2の搬送テーブル14,15が後述する計測装置18の下方に位置しているときと、レーザーマーカー17の下方に位置しているときに昇降装置31によって第1、第2の搬送テーブル14,15を昇降させる。
【0028】
前記水平移動装置32は、図2および図3に示すように、前記昇降装置31の昇降ベースプレート33をボールねじ機構によって水平方向に移動させる構成が採られている。昇降ベースプレート33は、水平方向に延びるように形成された横移動ベースプレート41に水平方向に移動自在に支持されている。
【0029】
昇降ベースプレート33が移動する方向は、横移動ベースプレート41に設けられた2本のガイドレール42によって規制されている。これらのガイドレール42は、水平方向に延びるとともに、互いに上下方向に離間している。前記横移動ベースプレート41には、水平方向に延びるボールねじ軸43が回転自在に支持されているとともに、このボールねじ軸43を回転させる第1、第2の横移動サーボモータ44,45が取付けられている。
【0030】
前記ガイドレール42は、二つの昇降ベースプレート33,33を支持している。前記ボールねじ軸43には、昇降ベースプレート33に回転自在に支持されたボールねじナット46が螺合している。この実施の形態による二つの水平移動装置32は、横移動ベースプレート41とガイドレール42とを共有する構成が採られている。すなわち、ボールねじ軸43と、第1、第2の横移動サーボモータ44,45と、ボールねじナット46とは、それぞれ昇降ベースプレート33毎に設けられている。
【0031】
2本のボールねじ軸43は、2本のガイドレール42の間に上下方向に並ぶ状態で配置されている。上側に位置するボールねじ軸43は、前記第1の処理ユニット21と対応する一端部が第1の横移動サーボモータ44によって駆動される。下側に位置するボールねじ軸43は、前記第2の処理ユニット22と対応する他端部が第2の横移動サーボモータ45によって駆動される。
【0032】
すなわち、第1の搬送テーブル14は、第1の横移動サーボモータ44の駆動により上側のボールねじ軸43が回転することによって水平方向に移動する。第2の搬送テーブル15は、第2の横移動サーボモータ45の駆動により下側のボールねじ軸43が回転することによって水平方向に移動する。これらの横移動サーボモータ44,45の動作は、後述する制御装置23によって制御される。
【0033】
前記マーキング位置設定装置16は、図1に示すように、前記第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにそれぞれ設けられている。この実施の形態によるマーキング位置設定装置16は、図4に示すように、撮像装置51と、この撮像装置51によって撮像された画像を表示するためのモニター52とによって構成されている。これらの撮像装置51とモニター52とは、図11に示すように、マーカー側PLC24を介して制御装置23に接続されている。
【0034】
撮像装置51は、第1、第2の処理ユニット21,22に位置している第1、第2の搬送テーブル14,15と、この搬送テーブル14,15上に吸着されたレンズ12とを上方から撮像するように構成されている。この実施の形態による撮像装置51は、図示していない移動装置に支持されており、右眼用レンズ12Rの真上に位置している状態で右眼用レンズ12Rを撮像し、その後、左眼用レンズ12Lの真上に移動し、左眼用レンズ12Lを撮像する。
モニター52は、第1、第2の搬送テーブル14,15およびレンズ12を上方から撮像した画像の他に、レンズ12上のペイントマーク(図示せず)を合わせるための基準線を表示する。この基準線は、レンズ12毎に予め決められた位置に表示される。モニター52による基準線の表示は、制御装置23の表示部53(図11参照)によって制御される。
【0035】
前記ペイントマークは、マーキング装置11によってレーザーマーキングを施す位置(以下、この位置を目標マーキング位置という)を特定するためのものである。このペイントマークは、レンズ面に目視可能な状態で予め記入されている。この実施の形態で使用するレンズ12の目標マーキング位置は、レンズ12の一側部(耳側)と他側部(鼻側)とにある。レンズ12は、前記二箇所の目標マーキング位置が搬送装置13の搬送方向に並ぶ状態で第1、第2の搬送テーブル14,15に吸着されて位置決めされる。
【0036】
この位置決めは、モニター52に表示されたペイントマークの画像がモニター52の基準線と一致するようにレンズ12を第1、第2の搬送テーブル14,15の吸着パッド26に吸着させることによって行う。このようにレンズ12が第1、第2の搬送テーブル14,15上で位置決めされることにより、レンズ12の目標マーキング位置が特定されることになる。
【0037】
前記計測装置18は、図1および図2に示すように、レーザーマーカー17の両側であって、搬送装置13の搬送経路の上方に位置付けられている。この計測装置18は、図示してはいないが、このマーキング装置11のフレームに支持ブラケットを介して固定されている。この実施の形態による計測装置18の変位計測器は、図5に示すように、二つの高さ計測ゲージ54によって構成されている。これらの二つの高さ計測ゲージ54は、1枚のレンズ12の耳側の目標マーキング位置と鼻側の目標マーキング位置との距離と同じ距離で配置されている。
【0038】
これらの高さ計測ゲージ54は、下端部に設けられている接触子54aが上方へ移動したときの接触子54aの移動量を計測するものである。接触子54aは、レンズ12が接触したときにレンズ12が損傷されることがないように、フッ素樹脂によって形成されている。この実施の形態による高さ計測ゲージ54は、上述した昇降装置31によって上昇させられたレンズ12により接触子54aが下方から押し上げられたときの接触子54aの移動量を検出する。
【0039】
この検出データは、マーカー側PLC24を介して制御装置23の計測部55(図11参照)に送られる。この計測部55は、前記接触子54aの移動量と、高さ計測ゲージ54の設置時の高さと、この高さ計測ゲージ54とレーザーマーカー17との高低差とに基づいて、前記目標マーキング位置とレーザーマーカー17との高低差を計算によって求める。目標マーキング位置とレーザーマーカー17との高低差は、目標マーキング位置がレーザーマーカー17の真下(鉛直方向の下方)に位置している状態においては、これら両者間の距離になる。すなわち、計測装置18は、目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を測ることになる。
【0040】
また、接触式変位センサである高さ計測ゲージ54の代わりに、たとえば図14に示すように、非接触式変位センサ54Aを用いることも可能である。この非接触式変位センサ54Aの例としては、投光素子から投光レンズを介してレンズ12に投光し、レンズ12から反射した光線の一部を受光して距離を測定するレーザセンサ等が挙げられる。この非接触式変位センサ54Aを使用して目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を測るためには、非接触式変位センサ54Aで目標マーキング位置毎に連続して計測する。
【0041】
前記距離調整装置19は、前記搬送装置13の昇降装置31を利用して構成されている。昇降装置31は、制御装置23の距離調整部56(図11参照)により制御されることによって、距離調整装置19として動作する。距離調整部56は、前記計測装置18によって検出された距離、すなわち目標マーキング位置とレーザーマーカー17と間の距離(高低差)と、予め定めたマーキング距離Lとが一致するように、昇降装置31によってレンズ12を上昇または下降させる。
【0042】
前記マーキング距離Lは、制御装置23に設けられたメモリ57(図11参照)に距離データとして記憶されている。この実施の形態による前記マーキング距離Lは、レーザーマーカー17の焦点距離に設定されている。このため、レンズ12の目標マーキング位置は、レーザーマーカー17の真下に位置付けられた状態においては、レーザーマーカー17の焦点位置に配置される。なお、マーキング距離Lは、前記焦点距離に限定されることはなく、焦点距離より長く設定することができるし、焦点距離より短く設定することもできる。
【0043】
前記レーザーマーカー17は、図6および図8に示すように、一箇所の照射部17aからレーザー光を照射する構成のものである。このレーザーマーカー17は、レーザー光が鉛直方向の下方を指向して照射されるように、マーキング装置11のフレームに取付けられている。このレーザーマーカー17は、図11に示すように、マーカー側PLC24を介して制御装置23に接続されている。レーザーマーカー17の動作は、制御装置23のマーキング部58によって制御される。
【0044】
レーザーマーカー17から照射されるレーザー光のレーザーパワーは、図9に示すように、最大値と最小値との略中間となるような大きさに設定されている。この実施の形態によるレーザーマーカー17は、レーザーパワーを最大にするとレンズ面の反射防止膜が剥がれ、レーザーパワーを最小にした状態では視認性が最も低くなる状態でマーキングが行われるものが用いられている。
【0045】
上述した各装置を制御する制御装置23は、図11に示すように、データ処理部60と、搬送部61と、表示部53と、計測部55と、距離調整部56と、マーキング部58と、メモリ57とを備え、サーバー62、第1のバーコードリーダー63およびマーカー側PLC24などが接続されている。
【0046】
前記データ処理部60は、後述するサーバー62から取得したデータを用いてレンズ12毎のマーキングデータを作成する。このマーキングデータは、レーザーマーカー17を制御するためのものである。
前記搬送部61は、前記搬送装置13の動作を制御する。前記表示部53は、前記モニター52の表示を制御する。前記計測部55は、前記計測装置18から送られた検出データを用いて目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を求める。
【0047】
前記距離調整部56は、前記計測部55が求めた前記距離と予め定めたマーキング距離Lとが一致するように前記昇降装置31(距離調整装置19)の動作を制御する。
前記マーキング部58は、前記マーキングデータに基づいて目標マーキング位置に所定のマークが形成されるように前記レーザーマーカー17の動作を制御する。
前記メモリ57は、制御装置23が各装置の動作を制御する際に用いる各種のデータを記憶するためのものである。
【0048】
前記サーバー62は、マーキングを行う全てのレンズ12の全データを記憶する機能と、データを制御装置23やマーカー側PLC24に送る機能とを有している。
前記第1のバーコードリーダー63は、オーダーシート(図示せず)に記載されたバーコードを読むためのものである。オーダーシートには、マーキング装置11において1回の作業単位(以下、単に1ロットという)でマーキングを行うすべてのレンズ収納用トレイTの識別番号とマーキング順序とがバーコードとして記載されている。
【0049】
制御装置23の前記データ処理部60は、前記第1のバーコードリーダー63を用いてオーダーシートのバーコードから1ロット分の全てのトレイTの識別番号を読み取る。そして、データ処理部60は、各トレイTに収納されているレンズ12の詳細なデータをサーバー62から取得する。このときにサーバー62から取得するデータとしては、例えば、左眼用レンズと右眼用レンズとを判別するためのデータ、凸面カーブ・凹面カーブのデータ、中心部の厚み、モニター52に表示する画像のデータなどである。これらのデータと各トレイTの識別番号のデータとは、レンズ12にマーキングを施すときに前記マーキング順序通りにマーカー側PLC24にレンズ12毎に送られる。
【0050】
前記マーカー側PLC24(プログラマブル ロジック コントローラ)は、制御装置23から送られた上記データに基づいてマーキング装置11の各装置を所定の順序で動作させるためのものである。この実施の形態によるマーカー側PLC24には、メモリ64が設けられているとともに、第2のバーコードリーダー65が接続されている。
前記メモリ64は、制御装置23から送られたマーキングデータとトレイTの識別番号のデータとを保存するためのものである。
【0051】
この第2のバーコードリーダー65は、レンズ収納用トレイTに設けられているバーコードを読むためのものである。このバーコードは、各トレイTの識別番号を判別できるように形成されている。なお、レンズ収納用トレイTにバーコードの代わりにRFIDタグを取付ける場合は、第2のバーコードリーダー65の代わりにRFIDタグリーダー(図示せず)を使用する。
第2のバーコードリーダー65は、前記第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにおいてそれぞれトレイTのバーコードを読むことができるように構成されている。
【0052】
第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とには、作業者によって操作されるスタートスイッチ66,67(図11参照)がそれぞれ設けられている。マーカー側PLC24は、前記スタートスイッチ66,67がON操作されたときにマーキング装置11に実際のマーキング動作を開始させる。
【0053】
マーカー側PLC24は、第1の処理ユニット21のスタートスイッチ66がON操作された場合は、第1の処理ユニット21に位置している第1の搬送テーブル14を使用してマーキング動作を開始する。また、マーカー側PLC24は、第2の処理ユニット22のスタートスイッチ67がON操作された場合は、第2の処理ユニット22に位置している第2の搬送テーブル15を使用してマーキング動作を開始する。
【0054】
レンズ12は、作業者によって第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とに交互に搬入される。レンズ12の搬入順序は、オーダーシートに記載されているマーキング順序と一致していなければならない。すなわち、第1の処理ユニット21に搬入される予定のレンズ12が第2の処理ユニット22に誤って搬入された場合、このレンズ12に他のレンズ12のマークがマーキングされてしまう。この実施の形態によるマーカー側PLC24は、このような不具合を解決するために、チェック機能を有している。
【0055】
このチェック機能は、マーカー側PLC24に設けられた判定部68によって実現している。判定部68は、前記第2のバーコードリーダー65を用いて読み込まれたトレイTの識別番号(レンズ毎の識別番号)と、制御装置23からマーカー側PLC24に送られたレンズ12毎のデータに含まれているトレイTの識別番号(レンズ毎の識別番号)とを照合する。これら両方の識別番号どうしが一致するということは、第1、第2の処理ユニット21,22に搬入されたレンズ12と、マーキング用データの対象になっているレンズ12とが一致していることを意味する。
【0056】
また、前記判定部68は、前記二つの識別番号が一致していない状態では前記スタートスイッチ66,67の機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を有効にする構成が採られている。
さらに、前記判定部68は、前記二つの識別番号を照合させた結果、これらの識別番号が一致していない場合は、前記モニター52に警告情報を表示させ、図示していないブザーで警報を発生させる。この実施の形態においては、前記モニター52とブザーとによって、請求項2記載の発明でいう警報装置が構成されている。
【0057】
この実施の形態においては、前記制御装置23と、前記制御用PLC24と、前記サーバー62とによって、本発明でいう制御部(図11参照)が構成されている。また、この実施の形態においては、前記撮像装置51および前記モニター52(マーキング位置設定装置16)と、計測装置18と、レーザーマーカー17と、搬送装置13と、スタートスイッチ66,67などによって、本発明でいうワーク処理部が構成されている。
【0058】
次に、上述したように構成された眼鏡レンズ用マーキング装置11の動作を図12および図13に示すフローチャートによって詳細に説明する。
先ず、図12に示すフローチャートのステップS1において、作業者が1ロット分の全てのレンズ収納用トレイTの識別番号とマーキング順序とを制御装置23に入力する。この入力は、第1のバーコードリーダー63でオーダーシートのバーコードを読むことによって行う。
【0059】
このデータが入力された制御装置23は、ステップS2において、マーキング順序通りにトレイTの搬入先を選択する。すなわち、複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定する。ステップS2においては、例えばマーキング順序を示す数値が1番、3番、5番等の奇数であるトレイTの搬入先は第1の処理ユニット21が選択され、偶数であるトレイTの搬入先は第2の処理ユニット22が選択される。
ステップS2において、該当するトレイTの搬入先として第1の処理ユニット21が選択された場合はステップS3に進む。
【0060】
ステップS3において、制御装置23は、該当するトレイTに収納されている2枚のレンズ12にマーキングを施すために必要なデータをサーバー62から取得する。そして、制御装置23は、ステップS4において、サーバー62から取得したデータに基づいてレーザーマーカー制御用のマーキングデータを作成する。このマーキングデータと、該当するレンズ収納用トレイTの識別番号データとは、制御装置23からマーカー側PLC24に送られる(ステップS5)。
【0061】
上記ステップS2において、該当するトレイTの搬送先として第1の処理ユニット21が選択された場合、作業者は、次にマーキングを施すレンズ12が収納されたトレイTを第1の処理ユニット21に搬入する。そして、作業者は、制御装置23による前記データ処理と平行して第1の処理ユニット21においてレンズ12の装着作業を行う(ステップS6)。
【0062】
この装着作業は、前記マーキング位置設定装置16を使用して行う。すなわち、先ず、作業者が左眼用レンズ12Lと右眼用レンズ12Rとを第1の搬送テーブル14の吸着パッド26,26に吸着させる。そして、作業者は、モニター52に表示されたレンズ12のペイントマークの画像がモニター52の基準線と一致するように、吸着パッド26上でレンズ12の位置を変えて位置決めする。このようにレンズ12の位置決めが終了した後、作業者は、第1の処理ユニット21に搬入されたトレイTのバーコードを第2のバーコードリーダー65によってマーカー側PLC24に読み込ませる(ステップS7)。
【0063】
マーカー側PLC24は、前記トレイTのバーコードから読み出したトレイTの識別番号と、制御装置23から送られたデータに含まれているトレイTの識別番号とを照合する(ステップS8)。これらの識別番号が一致していた場合は、マーカー側PLC24がスタートスイッチ66を有効(操作可能)にする。また、これらの識別番号が一致しなかった場合は、マーカー側PLC24が例えばモニター52を用いて警告表示を行い、一時停止状態になる(ステップS9)。すなわち、第1または第2の処理ユニット21,22に搬入したトレイTが正規のものでなかった場合は、マーキング動作が中断するから、レンズ12に他のレンズ12のマークが誤ってマーキングされることを防ぐことができる。この場合は、作業者が正しいレンズ12を装着し、第2のバーコードリーダで正しいトレイTのバーコードをマーカー側PLC24に読ませることによって、マーキング動作が継続して行われる。
【0064】
上記ステップS2において、次にマーキングを行うレンズ12が収納されたトレイTの搬送先として第2の処理ユニット22が選択された場合は、制御装置23はこのトレイTに収納されているレンズ12のデータについて前記ステップS3〜S5と同じ処理をステップS10〜S12において行う。すなわち、制御装置23は、ステップS10において、該当するトレイTに収納されているレンズ12の詳細なデータをサーバー62から取得する。そして、制御装置23は、ステップS11において、マーキングデータを作成し、ステップS12において、マーキングデータとトレイTの識別番号のデータとをマーカー側PLC24に送る。
【0065】
一方、この場合においても、作業者は、第2の処理ユニット22においてレンズ12を第2の搬送テーブル15に装着して所定位置に位置決めする(ステップ13)。そして、作業者は、該当するトレイTのバーコードを第2のバーコードリーダー65によってマーカー側PLC24に読み込ませる(ステップS14)。マーカー側PLC24は、ステップS15において、制御装置23から送られたデータに含まれているトレイTの識別番号と、バーコードから読み込んだトレイTの識別番号とを照合する。マーカー側PLC24は、前記両識別番号が一致している場合はスタートスイッチ67を有効とし、両識別番号が一致していない場合は、モニター52で警告表示を行うとともに不図示のブザーから警報音を発生させて動作を停止する(ステップS16)。
【0066】
作業者は、上述したように第1の処理ユニット21または第2の処理ユニット22においてスタートスイッチ66,67が有効になった後、図13に示すフローチャートのステップP1において、スタートスイッチ66,67をON操作する。
スタートスイッチ66,67がON操作されることにより、マーカー側PLC24が全ての装置の動作を制御してマーキングが行われる。
【0067】
マーキングを行うに当たっては、先ず、搬送装置13が第1または第2の搬送テーブル14,15を計測装置18の下方に搬送し、レンズ12の目標マーキング位置の高さが計測される(ステップP2およびステップP3)。このとき、第1の処理ユニット21においてスタートスイッチ66がON操作された場合は、図2中に矢印(A)で示すように、第1の搬送テーブル14が搬送装置13によって最寄りの計測装置18の下方に搬送させられ、左眼用レンズ12Lが一対の高さ計測ゲージ54の下方に位置付けられる。そして、昇降装置31が第1の搬送テーブル14を上昇および下降させ、計測装置18が左眼用レンズ12Lの目標マーキング位置の高さを計測する。このとき、左眼用レンズ12Lの耳側の目標マーキング位置と鼻側の目標マーキング位置とが同時に高さ計測ゲージ54に下方から接触させられる。
【0068】
その後、搬送装置13が矢印(B)に示すように、右眼用レンズ12Rを高さ計測ゲージ54の下方に位置付け、昇降装置31と計測装置18とが動作して右眼用レンズ12Rの二箇所の目標マーキング位置の高さが計測される。右眼用レンズ12Rの高さ計測は、二つの高さ計測ゲージ54に耳側、鼻側の目標マーキング位置を同時に下方から接触させることによって行われる。
【0069】
一方、第2の処理ユニット22のスタートスイッチ67がON操作された場合には、図2中に矢印(a)で示すように、第2の搬送テーブル15が搬送装置13によって最寄りの計測装置18の下方に搬送させられ、右眼用レンズ12Rが一対の高さ計測ゲージ54の下方に位置付けられる。そして、昇降装置31が第2の搬送テーブル15を上昇および下降させ、計測装置18が右眼用レンズ12Rの高さを計測する。その後、搬送装置13が矢印(b)に示すように、左眼用レンズ12Lを高さ計測ゲージ54の下方に位置付け、昇降装置31と計測装置18とが動作して左眼用レンズ12Lの高さが計測される。
【0070】
両レンズ12の高さ計測が終了した後、ステップP4において、右眼用レンズ12Rの耳側に位置する目標マーキング位置がレーザーマーカー17の鉛直方向の下方に位置付けられる。このとき、第1の搬送テーブル14は、図2中に矢印(C)で示すように、同図において右方へ搬送される。一方、第2の搬送テーブル15は、図2中に矢印(c)で示すように、計測装置18の下方から同図において左方へ搬送される。
【0071】
この搬送、位置決めが終了した後、前記耳側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離がマーキング距離Lとなるように、距離調整装置19(昇降装置31)が第1の搬送テーブル14または第2の搬送テーブル15を上昇または下降させる{図6(A)および図8(A)参照}。そして、レーザーマーカー17がレーザー光を照射し、所定のマーキングが行われる(ステップP5)。
【0072】
その後、ステップP6において、搬送装置13が図2中に矢印(D)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、右眼用レンズ12Rの鼻側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP7において、距離調整装置19が前記鼻側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとする。このとき、図8に示すように、レンズ12の耳側12aの厚みが鼻側12bより厚い場合、図8(A)に示すように耳側にマーキングが施された後、図8(B)に示すように、例えばレンズ12が厚みの差分だけ上昇する。このようにレンズ12が高さ方向に位置決めされた後、レーザーマーカー17によって鼻側12bの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0073】
次に、ステップP8において、搬送装置13が図2中に矢印(E)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、左眼用レンズ12Lの鼻側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP9において、距離調整装置19が前記鼻側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとした後に、レーザーマーカー17によってこの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0074】
その後、ステップP10において、搬送装置13が図2中に矢印(F)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、左眼用レンズ12Lの耳側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP11において、距離調整装置19が前記耳側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとした後に、レーザーマーカー17によってこの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0075】
この実施の形態においては、四箇所の目標マーキング位置をレーザーマーカー17の下方に位置付けるに当たって、レンズ12を水平方向の一方に搬送して行っている。このため、水平移動装置32のボールねじ軸43の回転方向が一方向のみとなるから、バックラッシュの影響を受けることがなく、高い精度で位置決めを行うことができる。
【0076】
このマーキング工程Dにおいて、レンズ12には、図7に示すようにマーク71が付与される。マーク71は、図10(A),(B)に示すように、レンズ表面の一部が部分的に突出することによって形成されている。図10(A)は耳側のマーク部分の断面形状をを示し、図10(B)は鼻側のマーク部分の断面形状を示している。マーク71の視認性は、図10中に示す突部72の高さに対応して向上する。この実施の形態によるマーキング装置11によれば、レンズ表面が受けるレーザーパワーの強さを略一定とすることができるから、図10(A),(B)に示すように、耳側と鼻側とで突部72の高さが略等しくなる。
【0077】
マーキング工程が終了した後、図13に示すフローチャートのステップP12において、搬送装置13が第1、第2の搬送テーブル14,15を初期の処理ユニット21,22に戻す。このとき、第1の搬送テーブル14は、図2中に矢印(G)で示すように、同図において左方に搬送されて第1の処理ユニット21に戻される。一方、第2の搬送テーブル15は、図2中に矢印(d)で示すように、同図において右方に搬送され、第2の処理ユニット22に戻される。
【0078】
第1、第2の搬送テーブル14,15が第1、第2の処理ユニット21,22に戻された後、ステップP13において、作業者が第1、第2の搬送テーブル14,15からレンズ12を取り外し、収納用トレイTに収納する。レンズ12は、このトレイTに収納された状態で後工程に搬送される。
レンズ12の取り外しが完了した後、制御装置23が図12のステップS2において、次のマーキングの対象になるレンズ12を収納したトレイTの搬入先を選択する。そして、マーキング装置11は、1ロット分の全てのレンズ12にマーキングが施されるまで上述した動作を繰り返す。
【0079】
上述した実施の形態によるマーキング装置11は、二つの搬入部を備えており、後述する第1の搬送形態と第2の搬送形態とが交互に繰り返されるように動作するものである。第1の搬送形態とは、前記第1の搬送テーブル14でレンズ12を前記計測装置18および前記レーザーマーカー17に搬送する形態をいう。第2の搬送形態とは、第2の搬送テーブル15でレンズ12を前記計測装置18および前記レーザーマーカー17に搬送する形態をいう。
このため、作業者は、計測装置18やレーザーマーカー17が動作している間に一方の処理ユニットから他方の処理ユニットに移動し、次のレンズ12を第1または第2の搬送テーブル14,15に装着しておくことができる。したがって、この実施の形態によれば、処理能力が高いマーキング装置を提供することができる。
【0080】
また、このマーキング装置11においては、第1、第2の処理ユニット21,22(搬入部)に搬入されたレンズ12と、レーザーマーカー17においてマーキングの対象になっているレンズ12とが一致している場合のみにレーザーマーカー17によるマーキングが行われる。したがって、この実施の形態によれば、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、他のレンズ12の処理内容でレンズ12にマーキングが施されるようなことを確実に防ぐことが可能な眼鏡レンズ用マーキング装置を提供することができる。
【0081】
この実施の形態による前記判定部68は、前記第2のバーコードリーダー65を用いて読み込まれたトレイTの識別番号と、制御装置23からマーカー側PLC24に送られたレンズ12毎のデータに含まれているトレイTの識別番号とが一致していない場合にモニタ52で警告表示を行い、ブザーに警告音を発生させる。このため、この実施の形態によるマーキング装置11は、レンズ12が正規の処理ユニットに搬入されていないことを作業者に知らせることができる。
【0082】
この実施の形態による前記判定部68は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を有効にするものである。このため、この実施の形態によれば、レンズ12が正しい処理ユニットに搬入されていないときには、作業者がスタートスイッチ66,67を操作したとしてもマーキングが行われることはない。したがって、この実施の形態によれば、作業者によるスタート操作に対して装置が応答することがないから、作業者に疑念を生じさせ、レンズが正しく搬入されていないことを確実に知らせることができる。
【0083】
この実施の形態によるワーク毎の識別部材は、レンズ12を収納するトレイTによって構成されている。トレイTは、常にレンズ12とともに搬送されるものである。このため、この実施の形態においては、レンズ12と、このレンズ12を特定可能なバーコードを有するトレイTとが常に同一の処理ユニット21,22に搬入されるから、判定部68の判定結果の信頼性が高くなる。
【0084】
なお、上述した実施の形態ではレンズ12にレーザーマーキングを施すマーキング装置1に本発明を適用する例を示したが、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、本発明は、レンズにマーキングとは異なる処理を施す装置にも適用することができる。また、本発明に係る処理装置は、眼鏡レンズに何らかの処理を施す処理装置に限定されることはなく、例えば、機械部品に機械加工を施す処理装置でもよい。
【符号の説明】
【0085】
11…マーキング装置、12…レンズ、13…搬送装置、14…第1の搬送テーブル、15…第2の搬送テーブル、17…レーザーマーカー、18…計測装置、19…距離調整装置、21…第1の処理ユニット、22…第2の処理ユニット、23…制御装置、24…マーカー側PLC、54…高さ計測ゲージ、65…第2のバーコードリーダー、68…判定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが搬入される複数の搬入部を備えたワーク用処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク用処理装置としては、搬入部に搬入されたワークをワーク処理部に順次送る構成のものが多い。たとえば、特許文献1に記載されているワーク用処理装置においては、眼鏡レンズが一箇所の搬入部に搬入され、この搬入部から一つずつマーキング装置(ワーク処理部)に送られる。マーキングが終了した眼鏡レンズは、マーキング装置から搬入部に戻され、ここから搬出される。この装置では、マーキングが終了した眼鏡レンズが搬出されるまでは搬入部に次の眼鏡レンズを搬入することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−53227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、特許文献1に記載されているような眼鏡レンズ用処理装置において、一つのマーキング装置に対して二つの搬入部を設けることによって、生産性の向上を図ることを考えている。しかしながら、このような構成を採ると、以下に説明するような問題が生じるおそれがある。
【0005】
眼鏡レンズは、所定の順序で眼鏡レンズ用処理装置に送られる。この眼鏡レンズの搬入先は、送られた順序で作業者によって二つの搬入部に交互に振り分けられる。このとき、何らかの原因で眼鏡レンズの搬入先が変わってしまった場合は、眼鏡レンズには他のレンズの印がマーキングされてしまうことになる。
【0006】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、連続的に異種、異タイプのワークを処理する際に、他のワークの処理内容でワークに処理が施されるようなことを確実に防ぐことができるワーク用処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係るワーク用処理装置は、ワークを特定可能な識別番号が識別タグとして設けられたワーク毎の識別部材と、前記識別部材とともにワークが順次搬入される複数の搬入部と、これらの搬入部に搬入された前記識別部材の識別タグを読むための識別タグリーダーと、前記複数の搬入部の中から選択した一つの搬入部のワークに処理を施すワーク処理部と、前記複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定し、この搬入部に搬入されているワークがワーク毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記制御部には警報装置が接続され、前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない場合に前記警報装置を動作させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記ワーク処理部は、前記搬入部に設けられているスタートスイッチがON操作されたときに処理動作を開始するものであり、前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチの機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチの機能を有効にすることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記識別部材は、ワークを個々に収納するトレイであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、前記発明において、前記ワークは眼鏡レンズであり、前記ワーク処理部は、眼鏡レンズに印を付与するマーキング装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬入部に搬入されたワークと、ワーク処理部において処理の対象になっているワークとが一致している場合のみにワーク処理部による処理が行われる。したがって、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、他のワークの処理内容でワークに処理が施されるようなことを確実に防ぐことが可能なワーク用処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る眼鏡レンズ用マーキング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】マーキング装置の正面図である。
【図3】マーキング装置の側面図である。
【図4】マーキング位置設定装置の正面図である。
【図5】計測装置の正面図である。
【図6】マーキング装置の正面図で、同図(A)は眼鏡レンズの一側部にマーキングを施している状態を示し、同図(B)は眼鏡レンズの他側部にマーキングを施している状態を示している。
【図7】マーキング後の眼鏡レンズの平面図である。
【図8】プリズムレンズを使用する場合のマーキング装置の正面図で、同図(A)は眼鏡レンズの一側部にマーキングを施している状態を示し、同図(B)は眼鏡レンズの他側部にマーキングを施している状態を示している。
【図9】レーザーパワーの大きさを説明するための図である。
【図10】マークの高さを説明するためのグラフで、同図(A)は本発明によるマーキング装置によって形成された耳側のマークの高さを示し、同図(B)は本発明によるマーキング装置によって形成された鼻側のマークの高さを示している。
【図11】制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】マーキング装置の準備動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】マーキング装置のマーキング動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】計測装置の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るワーク用処理装置の一実施の形態を図1〜図13によって詳細に説明する。この実施の形態では、本発明を眼鏡レンズ用マーキング装置に適用する場合の例を示す。
図1に示す眼鏡レンズ用マーキング装置11は、詳しくは後述するがワークとしてのプラスチック製眼鏡レンズ12(以下、単にレンズ12という)をレンズ面が上方を指向する状態で水平方向に搬送する搬送装置13を備えている。
【0015】
この搬送装置13は、前記レンズ12をマーキング位置設定工程A→計測工程B→距離調整工程C→マーキング工程Dという一連の工程において順次所定の動作が行われるように搬送する。この搬送装置13は、レンズ12を後述する第1、第2の搬送テーブル14,15に保持させた状態で搬送するものである。
【0016】
前記マーキング位置設定工程Aは、レンズ12の目標マーキング位置を特定する工程である。この工程は、後述するマーキング位置設定装置16を用いて実施される。
前記計測工程Bは、レンズ12の目標マーキング位置と後述するレーザーマーカー17との間の距離(図6および図8参照)を測る工程である。この工程は、詳細は後述するが、前記目標マーキング位置に対して高さを読み取る変位計測器を使用した計測装置18によって実施される。
この工程は、後述する計測装置18を用いて実施される。
【0017】
前記距離調整工程Cは、前記計測工程Bで計測された距離が予め定めたマーキング距離Lと一致するようにレンズ12とレーザーマーカー17との距離を変化させる工程である。この工程は、後述する距離調整装置19によって実施される。
前記マーキング工程Dは、レンズ12の目標マーキング位置にレーザーマーキングを施す工程である。この工程は、後述するレーザーマーカー17によって実施される。
【0018】
この実施の形態によるマーキング装置11の水平方向の両端部には、作業者(図示せず)がレンズ12の搬入と搬出とを行うために第1、第2の処理ユニット21,22が設けられている。第1の処理ユニット21は、マーキング装置11における図1において左側の端部に設けられ、第2の処理ユニット22は、他端部に設けられている。これらの第1、第2の処理ユニット21,22には、装置前方(図1の紙面の上方)に向けて開放された作業スペースSがそれぞれ形成されている。この実施の形態においては、これらの第1、第2の処理ユニット21,22によって、本発明でいう搬入部が構成されている。すなわち、この実施の形態に示すマーキング装置11は、二箇所の搬入部を備えている。
【0019】
第1の処理ユニット21においては、第1の搬送テーブル14に対してレンズ12の着脱が行われる。第2の処理ユニット22においては、第2の搬送テーブル15に対してレンズ12の着脱が行われる。このように二つの搬送テーブル14,15を使用する理由は、第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにおいてレンズ12の搬入・搬出作業を個別に行うことができるようにするためである。
【0020】
レンズ12は、作業者によって第1または第2の処理ユニット21,22内に搬入される。レンズ12は、左眼用のものと右眼用のものとが一つのトレイT(図1参照)に収納されており、このトレイT毎に第1、第2の処理ユニット21,22に対して搬入または搬出が行われる。前記トレイTには、このトレイTに収納されたレンズ12を特定可能なレンズ毎の識別番号が付与されている。この識別番号は、この実施の形態においてはバーコードとしてトレイTに設けられている。このバーコードによって、本発明でいう「識別タグ」が構成されている。なお、識別タグとしては、バーコードを用いる他に、RFIDタグ(図示せず)を使用することができる。
【0021】
第1、第2の処理ユニット21,22に搬入されたレンズ12は、マーキング位置設定装置16を用いて所定の位置に位置決めされ、この位置決め状態で第1、第2の搬送テーブル14,15に保持される。次に、このレンズ12は、搬送装置13によって計測装置18とレーザーマーカー17とに送られ、これらの装置による処理が終了した後に搬入時と同じ第1または第2の処理ユニット21,22に戻される。この実施の形態によるマーキング装置11は、このような各装置の動作を自動的に行うために制御装置23とマーカー側PLC24とを備えている。
【0022】
前記搬送装置13は、前記第1、第2の搬送テーブル14,15をそれぞれ上下方向に移動させる機能と、これらの搬送テーブル14,15をそれぞれ水平方向に移動させる機能とを有している。第1、第2の搬送テーブル14,15は、図4に示すように、支持板25と、この支持板25に設けられた二つの吸着パッド26,26とによって構成されている。前記支持板25は、後述する搬送装置13の昇降スライダ27に支持されている。
【0023】
吸着パッド26は、空気ホース28を介して図示していない吸引装置に接続されており、レンズ12の下面(マーキングが施されるレンズ面とは反対側の面)に吸着し、レンズ12を移動することがないように保持する。二つの吸着パッド26,26は、搬送装置13の搬送方向に予め定めた距離をおいて並べられている。一方の吸着パッド26には左眼用レンズ12Lが吸着され、他方の吸着パッド26には右眼用レンズ12Rが吸着される。図4は、同図の右側に左眼用レンズ12Lが位置し、同図の左側に右眼用レンズ12Rが位置する状態で描いてある。
【0024】
搬送装置13は、図2および図3に示すように、前記各搬送テーブル14,15を上下方向に移動させる二つの昇降装置31と、各搬送テーブル14,15を水平方向に移動させる二つの水平移動装置32とを備えている。
前記昇降装置31は、第1、第2の搬送テーブル14,15が取付けられた昇降用スライダ27をボールねじ機構によって昇降させる構成が採られている。
【0025】
昇降用スライダ27は、後述する水平移動装置32に支持された昇降ベースプレート33に上下方向に移動自在に支持されている。昇降用スライダ27の移動する方向は、昇降ベースプレート33に設けられた2本のガイドレール34によって規制されている。これらのガイドレール34は、上下方向に延びるとともに、互いに水平方向に離間している。
昇降ベースプレート33には、上下方向に延びるボールねじ軸35が回転自在に支持されているとともに、このボールねじ軸34を回転させる第1、第2の昇降サーボモータ36,37が取付けられている。
【0026】
前記ボールねじ軸35は、2本のガイドレール34の間に配設されている。このボールねじ軸35には、昇降用スライダ27に回転自在に支持されたボールねじナット38が螺合している。すなわち、この昇降装置31は、第1、第2の昇降サーボモータ36,37の駆動によりボールねじ軸35が回転することによって、昇降用スライダ27が第1の搬送テーブル14または第2の搬送テーブル17とともに上昇または下降する。
【0027】
第1、第2の昇降サーボモータ36,37の動作は、後述する制御装置23によって制御される。制御装置23は、第1、第2の搬送テーブル14,15が後述する計測装置18の下方に位置しているときと、レーザーマーカー17の下方に位置しているときに昇降装置31によって第1、第2の搬送テーブル14,15を昇降させる。
【0028】
前記水平移動装置32は、図2および図3に示すように、前記昇降装置31の昇降ベースプレート33をボールねじ機構によって水平方向に移動させる構成が採られている。昇降ベースプレート33は、水平方向に延びるように形成された横移動ベースプレート41に水平方向に移動自在に支持されている。
【0029】
昇降ベースプレート33が移動する方向は、横移動ベースプレート41に設けられた2本のガイドレール42によって規制されている。これらのガイドレール42は、水平方向に延びるとともに、互いに上下方向に離間している。前記横移動ベースプレート41には、水平方向に延びるボールねじ軸43が回転自在に支持されているとともに、このボールねじ軸43を回転させる第1、第2の横移動サーボモータ44,45が取付けられている。
【0030】
前記ガイドレール42は、二つの昇降ベースプレート33,33を支持している。前記ボールねじ軸43には、昇降ベースプレート33に回転自在に支持されたボールねじナット46が螺合している。この実施の形態による二つの水平移動装置32は、横移動ベースプレート41とガイドレール42とを共有する構成が採られている。すなわち、ボールねじ軸43と、第1、第2の横移動サーボモータ44,45と、ボールねじナット46とは、それぞれ昇降ベースプレート33毎に設けられている。
【0031】
2本のボールねじ軸43は、2本のガイドレール42の間に上下方向に並ぶ状態で配置されている。上側に位置するボールねじ軸43は、前記第1の処理ユニット21と対応する一端部が第1の横移動サーボモータ44によって駆動される。下側に位置するボールねじ軸43は、前記第2の処理ユニット22と対応する他端部が第2の横移動サーボモータ45によって駆動される。
【0032】
すなわち、第1の搬送テーブル14は、第1の横移動サーボモータ44の駆動により上側のボールねじ軸43が回転することによって水平方向に移動する。第2の搬送テーブル15は、第2の横移動サーボモータ45の駆動により下側のボールねじ軸43が回転することによって水平方向に移動する。これらの横移動サーボモータ44,45の動作は、後述する制御装置23によって制御される。
【0033】
前記マーキング位置設定装置16は、図1に示すように、前記第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにそれぞれ設けられている。この実施の形態によるマーキング位置設定装置16は、図4に示すように、撮像装置51と、この撮像装置51によって撮像された画像を表示するためのモニター52とによって構成されている。これらの撮像装置51とモニター52とは、図11に示すように、マーカー側PLC24を介して制御装置23に接続されている。
【0034】
撮像装置51は、第1、第2の処理ユニット21,22に位置している第1、第2の搬送テーブル14,15と、この搬送テーブル14,15上に吸着されたレンズ12とを上方から撮像するように構成されている。この実施の形態による撮像装置51は、図示していない移動装置に支持されており、右眼用レンズ12Rの真上に位置している状態で右眼用レンズ12Rを撮像し、その後、左眼用レンズ12Lの真上に移動し、左眼用レンズ12Lを撮像する。
モニター52は、第1、第2の搬送テーブル14,15およびレンズ12を上方から撮像した画像の他に、レンズ12上のペイントマーク(図示せず)を合わせるための基準線を表示する。この基準線は、レンズ12毎に予め決められた位置に表示される。モニター52による基準線の表示は、制御装置23の表示部53(図11参照)によって制御される。
【0035】
前記ペイントマークは、マーキング装置11によってレーザーマーキングを施す位置(以下、この位置を目標マーキング位置という)を特定するためのものである。このペイントマークは、レンズ面に目視可能な状態で予め記入されている。この実施の形態で使用するレンズ12の目標マーキング位置は、レンズ12の一側部(耳側)と他側部(鼻側)とにある。レンズ12は、前記二箇所の目標マーキング位置が搬送装置13の搬送方向に並ぶ状態で第1、第2の搬送テーブル14,15に吸着されて位置決めされる。
【0036】
この位置決めは、モニター52に表示されたペイントマークの画像がモニター52の基準線と一致するようにレンズ12を第1、第2の搬送テーブル14,15の吸着パッド26に吸着させることによって行う。このようにレンズ12が第1、第2の搬送テーブル14,15上で位置決めされることにより、レンズ12の目標マーキング位置が特定されることになる。
【0037】
前記計測装置18は、図1および図2に示すように、レーザーマーカー17の両側であって、搬送装置13の搬送経路の上方に位置付けられている。この計測装置18は、図示してはいないが、このマーキング装置11のフレームに支持ブラケットを介して固定されている。この実施の形態による計測装置18の変位計測器は、図5に示すように、二つの高さ計測ゲージ54によって構成されている。これらの二つの高さ計測ゲージ54は、1枚のレンズ12の耳側の目標マーキング位置と鼻側の目標マーキング位置との距離と同じ距離で配置されている。
【0038】
これらの高さ計測ゲージ54は、下端部に設けられている接触子54aが上方へ移動したときの接触子54aの移動量を計測するものである。接触子54aは、レンズ12が接触したときにレンズ12が損傷されることがないように、フッ素樹脂によって形成されている。この実施の形態による高さ計測ゲージ54は、上述した昇降装置31によって上昇させられたレンズ12により接触子54aが下方から押し上げられたときの接触子54aの移動量を検出する。
【0039】
この検出データは、マーカー側PLC24を介して制御装置23の計測部55(図11参照)に送られる。この計測部55は、前記接触子54aの移動量と、高さ計測ゲージ54の設置時の高さと、この高さ計測ゲージ54とレーザーマーカー17との高低差とに基づいて、前記目標マーキング位置とレーザーマーカー17との高低差を計算によって求める。目標マーキング位置とレーザーマーカー17との高低差は、目標マーキング位置がレーザーマーカー17の真下(鉛直方向の下方)に位置している状態においては、これら両者間の距離になる。すなわち、計測装置18は、目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を測ることになる。
【0040】
また、接触式変位センサである高さ計測ゲージ54の代わりに、たとえば図14に示すように、非接触式変位センサ54Aを用いることも可能である。この非接触式変位センサ54Aの例としては、投光素子から投光レンズを介してレンズ12に投光し、レンズ12から反射した光線の一部を受光して距離を測定するレーザセンサ等が挙げられる。この非接触式変位センサ54Aを使用して目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を測るためには、非接触式変位センサ54Aで目標マーキング位置毎に連続して計測する。
【0041】
前記距離調整装置19は、前記搬送装置13の昇降装置31を利用して構成されている。昇降装置31は、制御装置23の距離調整部56(図11参照)により制御されることによって、距離調整装置19として動作する。距離調整部56は、前記計測装置18によって検出された距離、すなわち目標マーキング位置とレーザーマーカー17と間の距離(高低差)と、予め定めたマーキング距離Lとが一致するように、昇降装置31によってレンズ12を上昇または下降させる。
【0042】
前記マーキング距離Lは、制御装置23に設けられたメモリ57(図11参照)に距離データとして記憶されている。この実施の形態による前記マーキング距離Lは、レーザーマーカー17の焦点距離に設定されている。このため、レンズ12の目標マーキング位置は、レーザーマーカー17の真下に位置付けられた状態においては、レーザーマーカー17の焦点位置に配置される。なお、マーキング距離Lは、前記焦点距離に限定されることはなく、焦点距離より長く設定することができるし、焦点距離より短く設定することもできる。
【0043】
前記レーザーマーカー17は、図6および図8に示すように、一箇所の照射部17aからレーザー光を照射する構成のものである。このレーザーマーカー17は、レーザー光が鉛直方向の下方を指向して照射されるように、マーキング装置11のフレームに取付けられている。このレーザーマーカー17は、図11に示すように、マーカー側PLC24を介して制御装置23に接続されている。レーザーマーカー17の動作は、制御装置23のマーキング部58によって制御される。
【0044】
レーザーマーカー17から照射されるレーザー光のレーザーパワーは、図9に示すように、最大値と最小値との略中間となるような大きさに設定されている。この実施の形態によるレーザーマーカー17は、レーザーパワーを最大にするとレンズ面の反射防止膜が剥がれ、レーザーパワーを最小にした状態では視認性が最も低くなる状態でマーキングが行われるものが用いられている。
【0045】
上述した各装置を制御する制御装置23は、図11に示すように、データ処理部60と、搬送部61と、表示部53と、計測部55と、距離調整部56と、マーキング部58と、メモリ57とを備え、サーバー62、第1のバーコードリーダー63およびマーカー側PLC24などが接続されている。
【0046】
前記データ処理部60は、後述するサーバー62から取得したデータを用いてレンズ12毎のマーキングデータを作成する。このマーキングデータは、レーザーマーカー17を制御するためのものである。
前記搬送部61は、前記搬送装置13の動作を制御する。前記表示部53は、前記モニター52の表示を制御する。前記計測部55は、前記計測装置18から送られた検出データを用いて目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離を求める。
【0047】
前記距離調整部56は、前記計測部55が求めた前記距離と予め定めたマーキング距離Lとが一致するように前記昇降装置31(距離調整装置19)の動作を制御する。
前記マーキング部58は、前記マーキングデータに基づいて目標マーキング位置に所定のマークが形成されるように前記レーザーマーカー17の動作を制御する。
前記メモリ57は、制御装置23が各装置の動作を制御する際に用いる各種のデータを記憶するためのものである。
【0048】
前記サーバー62は、マーキングを行う全てのレンズ12の全データを記憶する機能と、データを制御装置23やマーカー側PLC24に送る機能とを有している。
前記第1のバーコードリーダー63は、オーダーシート(図示せず)に記載されたバーコードを読むためのものである。オーダーシートには、マーキング装置11において1回の作業単位(以下、単に1ロットという)でマーキングを行うすべてのレンズ収納用トレイTの識別番号とマーキング順序とがバーコードとして記載されている。
【0049】
制御装置23の前記データ処理部60は、前記第1のバーコードリーダー63を用いてオーダーシートのバーコードから1ロット分の全てのトレイTの識別番号を読み取る。そして、データ処理部60は、各トレイTに収納されているレンズ12の詳細なデータをサーバー62から取得する。このときにサーバー62から取得するデータとしては、例えば、左眼用レンズと右眼用レンズとを判別するためのデータ、凸面カーブ・凹面カーブのデータ、中心部の厚み、モニター52に表示する画像のデータなどである。これらのデータと各トレイTの識別番号のデータとは、レンズ12にマーキングを施すときに前記マーキング順序通りにマーカー側PLC24にレンズ12毎に送られる。
【0050】
前記マーカー側PLC24(プログラマブル ロジック コントローラ)は、制御装置23から送られた上記データに基づいてマーキング装置11の各装置を所定の順序で動作させるためのものである。この実施の形態によるマーカー側PLC24には、メモリ64が設けられているとともに、第2のバーコードリーダー65が接続されている。
前記メモリ64は、制御装置23から送られたマーキングデータとトレイTの識別番号のデータとを保存するためのものである。
【0051】
この第2のバーコードリーダー65は、レンズ収納用トレイTに設けられているバーコードを読むためのものである。このバーコードは、各トレイTの識別番号を判別できるように形成されている。なお、レンズ収納用トレイTにバーコードの代わりにRFIDタグを取付ける場合は、第2のバーコードリーダー65の代わりにRFIDタグリーダー(図示せず)を使用する。
第2のバーコードリーダー65は、前記第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とにおいてそれぞれトレイTのバーコードを読むことができるように構成されている。
【0052】
第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とには、作業者によって操作されるスタートスイッチ66,67(図11参照)がそれぞれ設けられている。マーカー側PLC24は、前記スタートスイッチ66,67がON操作されたときにマーキング装置11に実際のマーキング動作を開始させる。
【0053】
マーカー側PLC24は、第1の処理ユニット21のスタートスイッチ66がON操作された場合は、第1の処理ユニット21に位置している第1の搬送テーブル14を使用してマーキング動作を開始する。また、マーカー側PLC24は、第2の処理ユニット22のスタートスイッチ67がON操作された場合は、第2の処理ユニット22に位置している第2の搬送テーブル15を使用してマーキング動作を開始する。
【0054】
レンズ12は、作業者によって第1の処理ユニット21と第2の処理ユニット22とに交互に搬入される。レンズ12の搬入順序は、オーダーシートに記載されているマーキング順序と一致していなければならない。すなわち、第1の処理ユニット21に搬入される予定のレンズ12が第2の処理ユニット22に誤って搬入された場合、このレンズ12に他のレンズ12のマークがマーキングされてしまう。この実施の形態によるマーカー側PLC24は、このような不具合を解決するために、チェック機能を有している。
【0055】
このチェック機能は、マーカー側PLC24に設けられた判定部68によって実現している。判定部68は、前記第2のバーコードリーダー65を用いて読み込まれたトレイTの識別番号(レンズ毎の識別番号)と、制御装置23からマーカー側PLC24に送られたレンズ12毎のデータに含まれているトレイTの識別番号(レンズ毎の識別番号)とを照合する。これら両方の識別番号どうしが一致するということは、第1、第2の処理ユニット21,22に搬入されたレンズ12と、マーキング用データの対象になっているレンズ12とが一致していることを意味する。
【0056】
また、前記判定部68は、前記二つの識別番号が一致していない状態では前記スタートスイッチ66,67の機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を有効にする構成が採られている。
さらに、前記判定部68は、前記二つの識別番号を照合させた結果、これらの識別番号が一致していない場合は、前記モニター52に警告情報を表示させ、図示していないブザーで警報を発生させる。この実施の形態においては、前記モニター52とブザーとによって、請求項2記載の発明でいう警報装置が構成されている。
【0057】
この実施の形態においては、前記制御装置23と、前記制御用PLC24と、前記サーバー62とによって、本発明でいう制御部(図11参照)が構成されている。また、この実施の形態においては、前記撮像装置51および前記モニター52(マーキング位置設定装置16)と、計測装置18と、レーザーマーカー17と、搬送装置13と、スタートスイッチ66,67などによって、本発明でいうワーク処理部が構成されている。
【0058】
次に、上述したように構成された眼鏡レンズ用マーキング装置11の動作を図12および図13に示すフローチャートによって詳細に説明する。
先ず、図12に示すフローチャートのステップS1において、作業者が1ロット分の全てのレンズ収納用トレイTの識別番号とマーキング順序とを制御装置23に入力する。この入力は、第1のバーコードリーダー63でオーダーシートのバーコードを読むことによって行う。
【0059】
このデータが入力された制御装置23は、ステップS2において、マーキング順序通りにトレイTの搬入先を選択する。すなわち、複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定する。ステップS2においては、例えばマーキング順序を示す数値が1番、3番、5番等の奇数であるトレイTの搬入先は第1の処理ユニット21が選択され、偶数であるトレイTの搬入先は第2の処理ユニット22が選択される。
ステップS2において、該当するトレイTの搬入先として第1の処理ユニット21が選択された場合はステップS3に進む。
【0060】
ステップS3において、制御装置23は、該当するトレイTに収納されている2枚のレンズ12にマーキングを施すために必要なデータをサーバー62から取得する。そして、制御装置23は、ステップS4において、サーバー62から取得したデータに基づいてレーザーマーカー制御用のマーキングデータを作成する。このマーキングデータと、該当するレンズ収納用トレイTの識別番号データとは、制御装置23からマーカー側PLC24に送られる(ステップS5)。
【0061】
上記ステップS2において、該当するトレイTの搬送先として第1の処理ユニット21が選択された場合、作業者は、次にマーキングを施すレンズ12が収納されたトレイTを第1の処理ユニット21に搬入する。そして、作業者は、制御装置23による前記データ処理と平行して第1の処理ユニット21においてレンズ12の装着作業を行う(ステップS6)。
【0062】
この装着作業は、前記マーキング位置設定装置16を使用して行う。すなわち、先ず、作業者が左眼用レンズ12Lと右眼用レンズ12Rとを第1の搬送テーブル14の吸着パッド26,26に吸着させる。そして、作業者は、モニター52に表示されたレンズ12のペイントマークの画像がモニター52の基準線と一致するように、吸着パッド26上でレンズ12の位置を変えて位置決めする。このようにレンズ12の位置決めが終了した後、作業者は、第1の処理ユニット21に搬入されたトレイTのバーコードを第2のバーコードリーダー65によってマーカー側PLC24に読み込ませる(ステップS7)。
【0063】
マーカー側PLC24は、前記トレイTのバーコードから読み出したトレイTの識別番号と、制御装置23から送られたデータに含まれているトレイTの識別番号とを照合する(ステップS8)。これらの識別番号が一致していた場合は、マーカー側PLC24がスタートスイッチ66を有効(操作可能)にする。また、これらの識別番号が一致しなかった場合は、マーカー側PLC24が例えばモニター52を用いて警告表示を行い、一時停止状態になる(ステップS9)。すなわち、第1または第2の処理ユニット21,22に搬入したトレイTが正規のものでなかった場合は、マーキング動作が中断するから、レンズ12に他のレンズ12のマークが誤ってマーキングされることを防ぐことができる。この場合は、作業者が正しいレンズ12を装着し、第2のバーコードリーダで正しいトレイTのバーコードをマーカー側PLC24に読ませることによって、マーキング動作が継続して行われる。
【0064】
上記ステップS2において、次にマーキングを行うレンズ12が収納されたトレイTの搬送先として第2の処理ユニット22が選択された場合は、制御装置23はこのトレイTに収納されているレンズ12のデータについて前記ステップS3〜S5と同じ処理をステップS10〜S12において行う。すなわち、制御装置23は、ステップS10において、該当するトレイTに収納されているレンズ12の詳細なデータをサーバー62から取得する。そして、制御装置23は、ステップS11において、マーキングデータを作成し、ステップS12において、マーキングデータとトレイTの識別番号のデータとをマーカー側PLC24に送る。
【0065】
一方、この場合においても、作業者は、第2の処理ユニット22においてレンズ12を第2の搬送テーブル15に装着して所定位置に位置決めする(ステップ13)。そして、作業者は、該当するトレイTのバーコードを第2のバーコードリーダー65によってマーカー側PLC24に読み込ませる(ステップS14)。マーカー側PLC24は、ステップS15において、制御装置23から送られたデータに含まれているトレイTの識別番号と、バーコードから読み込んだトレイTの識別番号とを照合する。マーカー側PLC24は、前記両識別番号が一致している場合はスタートスイッチ67を有効とし、両識別番号が一致していない場合は、モニター52で警告表示を行うとともに不図示のブザーから警報音を発生させて動作を停止する(ステップS16)。
【0066】
作業者は、上述したように第1の処理ユニット21または第2の処理ユニット22においてスタートスイッチ66,67が有効になった後、図13に示すフローチャートのステップP1において、スタートスイッチ66,67をON操作する。
スタートスイッチ66,67がON操作されることにより、マーカー側PLC24が全ての装置の動作を制御してマーキングが行われる。
【0067】
マーキングを行うに当たっては、先ず、搬送装置13が第1または第2の搬送テーブル14,15を計測装置18の下方に搬送し、レンズ12の目標マーキング位置の高さが計測される(ステップP2およびステップP3)。このとき、第1の処理ユニット21においてスタートスイッチ66がON操作された場合は、図2中に矢印(A)で示すように、第1の搬送テーブル14が搬送装置13によって最寄りの計測装置18の下方に搬送させられ、左眼用レンズ12Lが一対の高さ計測ゲージ54の下方に位置付けられる。そして、昇降装置31が第1の搬送テーブル14を上昇および下降させ、計測装置18が左眼用レンズ12Lの目標マーキング位置の高さを計測する。このとき、左眼用レンズ12Lの耳側の目標マーキング位置と鼻側の目標マーキング位置とが同時に高さ計測ゲージ54に下方から接触させられる。
【0068】
その後、搬送装置13が矢印(B)に示すように、右眼用レンズ12Rを高さ計測ゲージ54の下方に位置付け、昇降装置31と計測装置18とが動作して右眼用レンズ12Rの二箇所の目標マーキング位置の高さが計測される。右眼用レンズ12Rの高さ計測は、二つの高さ計測ゲージ54に耳側、鼻側の目標マーキング位置を同時に下方から接触させることによって行われる。
【0069】
一方、第2の処理ユニット22のスタートスイッチ67がON操作された場合には、図2中に矢印(a)で示すように、第2の搬送テーブル15が搬送装置13によって最寄りの計測装置18の下方に搬送させられ、右眼用レンズ12Rが一対の高さ計測ゲージ54の下方に位置付けられる。そして、昇降装置31が第2の搬送テーブル15を上昇および下降させ、計測装置18が右眼用レンズ12Rの高さを計測する。その後、搬送装置13が矢印(b)に示すように、左眼用レンズ12Lを高さ計測ゲージ54の下方に位置付け、昇降装置31と計測装置18とが動作して左眼用レンズ12Lの高さが計測される。
【0070】
両レンズ12の高さ計測が終了した後、ステップP4において、右眼用レンズ12Rの耳側に位置する目標マーキング位置がレーザーマーカー17の鉛直方向の下方に位置付けられる。このとき、第1の搬送テーブル14は、図2中に矢印(C)で示すように、同図において右方へ搬送される。一方、第2の搬送テーブル15は、図2中に矢印(c)で示すように、計測装置18の下方から同図において左方へ搬送される。
【0071】
この搬送、位置決めが終了した後、前記耳側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離がマーキング距離Lとなるように、距離調整装置19(昇降装置31)が第1の搬送テーブル14または第2の搬送テーブル15を上昇または下降させる{図6(A)および図8(A)参照}。そして、レーザーマーカー17がレーザー光を照射し、所定のマーキングが行われる(ステップP5)。
【0072】
その後、ステップP6において、搬送装置13が図2中に矢印(D)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、右眼用レンズ12Rの鼻側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP7において、距離調整装置19が前記鼻側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとする。このとき、図8に示すように、レンズ12の耳側12aの厚みが鼻側12bより厚い場合、図8(A)に示すように耳側にマーキングが施された後、図8(B)に示すように、例えばレンズ12が厚みの差分だけ上昇する。このようにレンズ12が高さ方向に位置決めされた後、レーザーマーカー17によって鼻側12bの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0073】
次に、ステップP8において、搬送装置13が図2中に矢印(E)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、左眼用レンズ12Lの鼻側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP9において、距離調整装置19が前記鼻側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとした後に、レーザーマーカー17によってこの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0074】
その後、ステップP10において、搬送装置13が図2中に矢印(F)で示すように第1または第2の搬送テーブル14,15を同図において左方に搬送する。この搬送により、左眼用レンズ12Lの耳側の目標マーキング位置がレーザーマーカー17の下方に位置付けられる。そして、ステップP11において、距離調整装置19が前記耳側の目標マーキング位置とレーザーマーカー17との間の距離をマーキング距離Lとした後に、レーザーマーカー17によってこの目標マーキング位置にマーキングが施される。
【0075】
この実施の形態においては、四箇所の目標マーキング位置をレーザーマーカー17の下方に位置付けるに当たって、レンズ12を水平方向の一方に搬送して行っている。このため、水平移動装置32のボールねじ軸43の回転方向が一方向のみとなるから、バックラッシュの影響を受けることがなく、高い精度で位置決めを行うことができる。
【0076】
このマーキング工程Dにおいて、レンズ12には、図7に示すようにマーク71が付与される。マーク71は、図10(A),(B)に示すように、レンズ表面の一部が部分的に突出することによって形成されている。図10(A)は耳側のマーク部分の断面形状をを示し、図10(B)は鼻側のマーク部分の断面形状を示している。マーク71の視認性は、図10中に示す突部72の高さに対応して向上する。この実施の形態によるマーキング装置11によれば、レンズ表面が受けるレーザーパワーの強さを略一定とすることができるから、図10(A),(B)に示すように、耳側と鼻側とで突部72の高さが略等しくなる。
【0077】
マーキング工程が終了した後、図13に示すフローチャートのステップP12において、搬送装置13が第1、第2の搬送テーブル14,15を初期の処理ユニット21,22に戻す。このとき、第1の搬送テーブル14は、図2中に矢印(G)で示すように、同図において左方に搬送されて第1の処理ユニット21に戻される。一方、第2の搬送テーブル15は、図2中に矢印(d)で示すように、同図において右方に搬送され、第2の処理ユニット22に戻される。
【0078】
第1、第2の搬送テーブル14,15が第1、第2の処理ユニット21,22に戻された後、ステップP13において、作業者が第1、第2の搬送テーブル14,15からレンズ12を取り外し、収納用トレイTに収納する。レンズ12は、このトレイTに収納された状態で後工程に搬送される。
レンズ12の取り外しが完了した後、制御装置23が図12のステップS2において、次のマーキングの対象になるレンズ12を収納したトレイTの搬入先を選択する。そして、マーキング装置11は、1ロット分の全てのレンズ12にマーキングが施されるまで上述した動作を繰り返す。
【0079】
上述した実施の形態によるマーキング装置11は、二つの搬入部を備えており、後述する第1の搬送形態と第2の搬送形態とが交互に繰り返されるように動作するものである。第1の搬送形態とは、前記第1の搬送テーブル14でレンズ12を前記計測装置18および前記レーザーマーカー17に搬送する形態をいう。第2の搬送形態とは、第2の搬送テーブル15でレンズ12を前記計測装置18および前記レーザーマーカー17に搬送する形態をいう。
このため、作業者は、計測装置18やレーザーマーカー17が動作している間に一方の処理ユニットから他方の処理ユニットに移動し、次のレンズ12を第1または第2の搬送テーブル14,15に装着しておくことができる。したがって、この実施の形態によれば、処理能力が高いマーキング装置を提供することができる。
【0080】
また、このマーキング装置11においては、第1、第2の処理ユニット21,22(搬入部)に搬入されたレンズ12と、レーザーマーカー17においてマーキングの対象になっているレンズ12とが一致している場合のみにレーザーマーカー17によるマーキングが行われる。したがって、この実施の形態によれば、複数の搬入部を備えているにもかかわらず、他のレンズ12の処理内容でレンズ12にマーキングが施されるようなことを確実に防ぐことが可能な眼鏡レンズ用マーキング装置を提供することができる。
【0081】
この実施の形態による前記判定部68は、前記第2のバーコードリーダー65を用いて読み込まれたトレイTの識別番号と、制御装置23からマーカー側PLC24に送られたレンズ12毎のデータに含まれているトレイTの識別番号とが一致していない場合にモニタ52で警告表示を行い、ブザーに警告音を発生させる。このため、この実施の形態によるマーキング装置11は、レンズ12が正規の処理ユニットに搬入されていないことを作業者に知らせることができる。
【0082】
この実施の形態による前記判定部68は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチ66,67の機能を有効にするものである。このため、この実施の形態によれば、レンズ12が正しい処理ユニットに搬入されていないときには、作業者がスタートスイッチ66,67を操作したとしてもマーキングが行われることはない。したがって、この実施の形態によれば、作業者によるスタート操作に対して装置が応答することがないから、作業者に疑念を生じさせ、レンズが正しく搬入されていないことを確実に知らせることができる。
【0083】
この実施の形態によるワーク毎の識別部材は、レンズ12を収納するトレイTによって構成されている。トレイTは、常にレンズ12とともに搬送されるものである。このため、この実施の形態においては、レンズ12と、このレンズ12を特定可能なバーコードを有するトレイTとが常に同一の処理ユニット21,22に搬入されるから、判定部68の判定結果の信頼性が高くなる。
【0084】
なお、上述した実施の形態ではレンズ12にレーザーマーキングを施すマーキング装置1に本発明を適用する例を示したが、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、本発明は、レンズにマーキングとは異なる処理を施す装置にも適用することができる。また、本発明に係る処理装置は、眼鏡レンズに何らかの処理を施す処理装置に限定されることはなく、例えば、機械部品に機械加工を施す処理装置でもよい。
【符号の説明】
【0085】
11…マーキング装置、12…レンズ、13…搬送装置、14…第1の搬送テーブル、15…第2の搬送テーブル、17…レーザーマーカー、18…計測装置、19…距離調整装置、21…第1の処理ユニット、22…第2の処理ユニット、23…制御装置、24…マーカー側PLC、54…高さ計測ゲージ、65…第2のバーコードリーダー、68…判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを特定可能な識別番号が識別タグとして設けられたワーク毎の識別部材と、
前記識別部材とともにワークが順次搬入される複数の搬入部と、
これらの搬入部に搬入された前記識別部材の識別タグを読むための識別タグリーダーと、
前記複数の搬入部の中から選択した一つの搬入部のワークに処理を施すワーク処理部と、
前記複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定し、この搬入部に搬入されているワークがワーク毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部を備えていることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク用処理装置において、前記制御部には警報装置が接続され、
前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない場合に前記警報装置を動作させるものであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項3】
請求項または請求項2記載のワーク用処理装置において、前記ワーク処理部は、前記搬入部に設けられているスタートスイッチがON操作されたときに処理動作を開始するものであり、
前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチの機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチの機能を有効にするものであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載のワーク用処理装置において、前記識別部材は、ワークを個々に収納するトレイであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載のワーク用処理装置において、前記ワークは眼鏡レンズであり、前記ワーク処理部は、眼鏡レンズに印を付与するマーキング装置であることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項1】
ワークを特定可能な識別番号が識別タグとして設けられたワーク毎の識別部材と、
前記識別部材とともにワークが順次搬入される複数の搬入部と、
これらの搬入部に搬入された前記識別部材の識別タグを読むための識別タグリーダーと、
前記複数の搬入部の中から選択した一つの搬入部のワークに処理を施すワーク処理部と、
前記複数の搬入部の中から一つの搬入部を指定し、この搬入部に搬入されているワークがワーク毎の処理内容で処理されるように前記ワーク処理部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ワーク処理部の動作を制御するためのデータに含まれているワーク毎の識別番号と、前記識別タグリーダーによって読み込まれた識別番号とが一致した場合にのみワーク処理部の動作を許容する判定部を備えていることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク用処理装置において、前記制御部には警報装置が接続され、
前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない場合に前記警報装置を動作させるものであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項3】
請求項または請求項2記載のワーク用処理装置において、前記ワーク処理部は、前記搬入部に設けられているスタートスイッチがON操作されたときに処理動作を開始するものであり、
前記判定部は、前記二つの識別番号が一致していない状態で前記スタートスイッチの機能を無効とし、前記二つの識別番号が一致している状態で前記スタートスイッチの機能を有効にするものであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載のワーク用処理装置において、前記識別部材は、ワークを個々に収納するトレイであることを特徴とするワーク用処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載のワーク用処理装置において、前記ワークは眼鏡レンズであり、前記ワーク処理部は、眼鏡レンズに印を付与するマーキング装置であることを特徴とするワーク用処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−233080(P2011−233080A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105207(P2010−105207)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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