説明

一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置

【課題】 特に低温特性及び熱安定性に優れたグリースを封入することで、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の耐久性を改善する。
【解決手段】 サポート軸受が、40℃における動粘度が20〜100mm/sで、かつ、流動点が−40℃以下であるエステル油を基油とし、増ちょう剤としてジウレア化合物をグリース全量の10〜30質量%含有し、混和ちょう度が250〜340で、更にリン−硫黄系添加剤とリン系添加剤とを合計でグリース全量の1〜10質量%含有するグリースで潤滑されていることを特徴とする一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用の発電機であるオルタネータの回転軸の端部に固定し、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡すことにより、上記オルタネータを駆動するために利用する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、エンジンを駆動原とするカーエアコン等の各種補機が装備されている。これら補機は、一方向クラッチを介してエンジンに接続しており、その駆動/停止が制御される。一方向クラッチは、駆動クラッチ部と軸受部とを兼備しており、それぞれグリースで潤滑されるのが一般的である。
【0003】
一方向クラッチ用グリースとして種々のものが知られており、例えば、圧力粘度係数が12GPa−1以上(25℃)のエステル系あるいは合成油系の基油にウレア系増ちょう剤を配合したグリース(例えば、特許文献1参照)、40℃における動粘度が60cst以下の基油に、増ちょう剤としてウレア化合物を配合したグリース(例えば、特許文献2参照)等が知られている。また、軸受部にエーテル油を基油とした混和ちょう度280〜300のグリースを封入し、駆動クラッチ部にエステル系油を基油とした混和ちょう度250〜280のグリースを封入した一方向クラッチも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−234638号公報
【特許文献2】特開2000−253620号公報
【特許文献3】特開2002−130433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、オルタネータの高性能化・高出力化が益々進んでおり、これに伴って一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の使用条件も厳しくなってきており、特に低温での動作性、回転の高速化、高負荷、発熱及び振動等に対する要求が高まってきている。このような要求に対し、上記に挙げたようなグリースによる潤滑では、必ずしも対応できていないのが現状である。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特に低温特性及び熱安定性に優れたグリースを封入することで、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の耐久性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下に示す一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を提供する。
(1)互いに同心に配置した一対の回転部材と、これら両回転部材の互いに対向する周面同士の間の軸方向に関して一部に設けられ、これら両回転部材同士が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、これら両回転部材の間で回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、これら両回転部材の互いに対向する周面同士の間でこの一方向クラッチに対し軸方向に外れた部分に設けられ、これら両回転部材同士の間に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら両回転部材同士の相対回転を自在とする、転がり軸受であるサポート軸受とを備えた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、
前記サポート軸受が、40℃における動粘度が20〜100mm/sで、かつ、流動点が−40℃以下であるエステル油を基油とし、増ちょう剤としてジウレア化合物をグリース全量の10〜30質量%含有し、混和ちょう度が250〜340で、更にリン−硫黄系添加剤とリン系添加剤とを合計でグリース全量の1〜10質量%含有するグリースで潤滑されていることを特徴とする一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
(2)前記リン−硫黄系添加剤が、チオフォスフェートまたはチオフォスファイトであることを特徴とする上記(1)記載の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、サポート軸受を潤滑するグリースにおいて、基油に特定の動粘度及び流動点のエステル油を用い、耐熱性に優れたジウレア化合物を増ちょう剤に用いたため、低温から高温まで良好な潤滑性を発揮し、更に優れた耐摩耗性を付与する添加剤を併用することにより、より耐久性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の一種である一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を示す断面図である。この一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、互いに同心に配置した1対の回転部材である、スリーブ1とプーリ2とを備える。そして、これらスリーブ1の外周面とプーリ2の内周面との間に、一方向クラッチであるローラクラッチ3と1対のサポート軸受4、4とを設けている。
【0011】
上記スリーブ1は、全体を円筒状に形成しており、オルタネータ等の補機の回転軸に外嵌固定して、この回転軸と共に回転自在である。一方、上記プーリ2は、やはり全体を円筒状に形成しており、その外周面の幅方向に関する断面形状を波形として、ポリVベルトと呼ばれる無端のベルトの一部を掛け渡し自在としている。そして、上記スリーブ1の外周面と上記プーリ2の内周面との間に存在する円筒状空間の軸方向中間部に上記ローラクラッチ3を、同じくこの空間の軸方向両端部でこのローラクラッチ3を軸方向両側から挟む位置に上記サポート軸受4、4を、それぞれ配置している。
【0012】
サポート軸受4,4は、内周面に外輪軌道13が形成された外輪14と、外周面に内輪軌道15が形成された内輪16との間に、複数の転動体(玉)17が保持器19により周方向に略等間隔で転動自在に保持されており、更に封入グリースの漏洩や外部からの異物の侵入を防止するために、シール部材18で密封して構成されている。
【0013】
また、ローラクラッチ3は、上記プーリ2が上記スリーブ1に対して所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、これらプーリ2とスリーブ1との間での回転力の伝達を自在とする。この様なローラクラッチ3は、クラッチ用内輪5と、クラッチ用外輪6と、複数個のローラ7、7と、クラッチ用保持器8と、図示しないばねとから成る。このうちのクラッチ用内輪5は上記スリーブ1の中間部外周面に、上記クラッチ用外輪6は上記プーリ2の中間部内周面に、それぞれ締め嵌めて嵌合固定している。また、上記クラッチ用外輪6の中間部内周面を単なる円筒面とするとともに、上記クラッチ用内輪5の外周面をカム面9としている。即ち、このクラッチ用内輪5の外周面に、それぞれがランプ部と呼ばれる複数の凹部10、10を、円周方向に関し等間隔に形成して、このクラッチ用内輪5の外周面を上記カム面9としている。
【0014】
そして、このカム面9と上記クラッチ用外輪6の中間部内周面との間に、上記複数個のローラ7、7と、これら各ローラ7、7を転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に支持するための上記クラッチ用保持器8とを設けている。このクラッチ用保持器8は、全体を合成樹脂により造っており、その内周縁部を上記カム面9の一部と係合させることで、上記クラッチ用内輪5に対する相対回転を阻止している。これとともに、図示の例では、上記クラッチ用保持器8の端部内周面に形成した凸部11を、上記クラッチ用内輪5の軸方向端面と上記スリーブ1の外周面に設けた段差面12との間で挟持することにより、上記クラッチ用保持器8の軸方向に関する位置決めを図っている。また、上記クラッチ用保持器8と上記各ローラ7、7との間には、これら各ローラ7、7を円周方向に関して同方向(上記各凹部10、10が浅くなる方向)に押圧する為の、図示しないばねを設けている。
【0015】
尚、上述の様なローラクラッチ3を構成する場合、上記複数個のローラ7、7と当接する円筒面及びカム面9は、それぞれ前記プーリ2の内周面及び上記スリーブ1の外周面に直接形成する場合もある。また、上記円筒面と上記カム面9との径方向に関する配置は、上述した構造と逆にする場合もある。また、サポート軸受についても、転動面をプーリ内周及びスリーブ外周に直接設けることができる。
【0016】
上述のように構成される一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、上記スリーブ1をオルタネータ等の補機の回転軸の端部に外嵌固定するとともに、上記プーリ2の外周面に無端ベルトを掛け渡す。この無端ベルトはエンジンのクランクシャフト等の端部に固定された駆動プーリに掛け渡され、この駆動プーリの回転により駆動する。このような状態で組み付けられる一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、上記無端ベルトの走行速度が一定もしくは上昇傾向にある場合には、上記プーリ2から上記回転軸への回転力の伝達を自在とし、反対に上記無端ベルトの走行速度が低下傾向にある場合には、これらプーリ2と回転軸との相対回転を自在とする。この結果、上記クランクシャフトの回転角速度が変動した場合でも、上記無端ベルトと上記プーリ2とが擦れ合うことを防止して、鳴きと呼ばれる異音の発生や摩耗による無端ベルトの寿命低下を防止するとともに、オルタネータの発電効率が低下することを防止できる。
【0017】
また、上記一方向クラッチ内蔵型プーリ装置をエンジンのアイドルストップ時の補機駆動装置に利用する場合には、この一方向クラッチ内蔵型プーリ装置をクランクシャフトや電動モータの駆動軸の端部に装着する。これにより、これらエンジンと電動モータとのうちの一方の装置が運転状態にあり、他方の装置が停止状態にある場合に、この一方の装置の回転軸から上記プーリ2への回転力の伝達を自在にするとともに、上記他方の装置の回転軸が回転しないようにする。
【0018】
そして、サポート軸受4には、下記に示すグリースが充填される。
【0019】
グリースの基油には、40℃における動粘度が20〜100mm/sで、かつ、流動点が−40℃以下のエステル油を用いる。エステル油は、他の潤滑油と比べて極性が大きく、滑り摩擦時の耐衝撃性に優れるという特性を有する。但し、基油動粘度が20mm/s(40℃)未満ではグリースが耐熱性に劣るようになり、100mm/s(40℃)を越えると滑り時の発熱が大きくなる。好ましい基油動粘度は20〜50mm/s(40℃)である。
【0020】
また、流動点については、自動車は−40℃付近での使用(エンジン始動)にも耐える必要から規定されたものであり、下限値については−70℃程度である。
【0021】
エステル油の種類には制限がないが、ジエステル油、ポリオールエステル油、芳香族エステル油等を好適に使用できる。具体的には、ジエステル油として、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジオクチルアゼレート(DOZ)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)等を挙げることができる。また、ポリオールエステル油として、炭素数4〜18のアルキル鎖が導入されたペンタエリスリトールエステル油、同ジペンタエリスリトールエステル油、同トリペンタエリスリトールエステル油、ネオペンチル型ジオールエステル油、トリメチロールプロパンエステル油等を挙げることができる。また、芳香族エステル油としては、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等を挙げることができる。これらエステル油は、それぞれ単独でも、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0022】
増ちょう剤には、耐熱性に優れるジウレア化合物を用いる。ウレア化合物は、ジウレア、トリウレア、テトラウレアあるいはそれ以上のポリウレアが使用できるが、特に下記一般式(I)で表されるジウレア化合物が好ましい。
R1−NHCO−R3−NHCO−R2 ・・・(I)
尚、式中、R1、R2は炭素数6〜18の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよく、R3は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基である。中でも、R1,R2がシクロヘキシル基、あるいはシクロヘキシル基と脂肪族基との混合であるジウレア化合物が好適である。これに対しR1,R2に芳香族基を導入したジウレア化合物は、加熱により硬化する傾向があり、高温での滑り部の潤滑には適さないことがある。
【0023】
増ちょう剤の配合量は、グリース全量の10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%とする。増ちょう剤量が10質量%未満では、基油とともにグリースを形成し安定に維持できなくなるおそれがある。また、増ちょう剤量が30質量%を越えると、グリースが硬くなりすぎて、潤滑性能に劣るおそれがある。
【0024】
また、グリースの混和ちょう度を、250〜340とする。混和ちょう度が250未満では、グリースが硬すぎて主にクラッチ部において滑り時に必要な部位にグリースが行きわたらなくなるおそれがあり、更にはクラッチのロック/アンロックに使用されるバネの動きを遅くするという問題もある。一方、混和ちょう度が340を越えると、グリースが軟らかすぎ、走行時の振動等により流出しやすくなる。
【0025】
また、上記グリースには、リン系添加剤及びリン−硫黄系添加剤が、合計でグリース全量の0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%添加される。添加量が0.1質量%未満では、所期の効果を十分に得ることが困難になり、10重量%を超えると添加剤効果が飽和し、更に熱安定性が劣り、実用的でなくなる。
【0026】
リン系添加剤としては、下記一般式(II)で表されるリン酸エステルが好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、R4〜R6は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数6〜30のアリール基であり、同一でも異なっていてもよい。一般式(II)で表されるリン酸エステルの具体例としては、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリクレジルホスフェート等を挙げることができる。
【0029】
また、リン系添加剤として、下記一般式(III)または(IV)で表される酸性リン酸エステルも好ましい。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、R7及びR8は、炭素数炭素数1〜30のアルキル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ペンタデシル基、各種オクタデシル基、各種ナデシル基、各種エイコシル基、各種ヘンエイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、各種ペンタコシル基、各種ヘキサコシル基、各種ペンタコシル基、各種オクタコシル基、各種ノナコシル基、各種トリアコンチル基が挙げられる(各種とは、分岐状または直鎖状を示す)。また、R7及びR8は同一でも異なっていてもよい。中でも、メチル基が好ましい。
【0032】
上記酸性リン酸エステルは、アミン塩でもよい。アミン塩を形成するアミン類としては、下記一般式(V)で表されるものが好ましい。
R8NH3−n ・・・(V)
尚、式中、R8は炭素数1〜30の分岐状または直鎖状のアルキル基(具体例は上記の通り)であり、nは1、2または3である。また、R8が複数、即ちジ置換(第2級)アミンやトリ置換(第3級)アミンの場合、複数のR8は同一でも異なっていてもよい。これらの中では、ドデシル基置換第1級アミンが好ましい。
【0033】
リン−硫黄系添加剤とは、リン原子及び硫黄原子を含む化合物を意味し、チオフォスフェートやチオフォスファイトのように分子中にリン原子と硫黄原子の両方を有する化合物の他に、分子中にリン原子を有する化合物(リン系添加剤)と、分子中に硫黄原子を有する化合物(硫黄系添加剤)とを混合したものを含む。
【0034】
チオフォスフェート類としては、チオリン酸エステルの基本構造を有するもので、例えばトリフェニルフォオロチオネート(TPPT)等が挙げられる。また、チオフォスファイト類としては、一般式「(RS)P;Rはアルキル基」で表される有機トリチオフォスファイトが挙げられ、例えばトリブチルトリチオフォスファイトやトリ(2−エチルヘキシル)チオフォスファイト等が挙げられる。
【0035】
また、グリースには、必要に応じて、各種の添加剤を添加してもよい。中でも酸化防止剤を添加することが好ましく、高温使用時の基油の酸化劣化が抑えられて長寿命となる。酸化防止剤としては、ジフェニルアミン誘導体、フェノチアジン誘導体、ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤が好適であり、その添加量はグリース全量の1〜10質量%が好ましい。添加量が1質量%未満ではこのような効果が十分に発現せず、10質量%を越えて添加しても効果の増分が見られず、相対的に他の成分が少なくなり、他の成分による効果が得られなくなる。
【0036】
その他にも、その性能を一層高めるために、従来からグリースに添加されている公知の添加剤を添加してもよい。
【0037】
グリースは上記の各成分を含有するが、その製造方法には制限がなく、従来のウレア系グリースと同様にして調製することができるが、一般的には基油中でジウレア化合物の原料(アミン及びジイソシアネート)を反応させて得られる。尚、そのときの加熱温度や攪拌・混合時間等の製造条件は、使用する基油やジウレア化合物の原料、添加剤等により適宜設定される。また、添加剤を添加した後は、十分に攪拌して添加剤を均一に分散させる必要があるが、その際に加熱することも有効である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0039】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
表1及び表2に示す配合にて試験グリースを調製した。そして、試験グリースを用いて下記に示す(1)耐摩耗性試験及び(2)熱安定性試験を行った。結果を表1及び表2に併記する。
(1)耐摩耗性試験
四球試験(ASTM D2266に準拠)を行った。試験条件は、回転数1200rpm、荷重392N、温度75℃であり、60分経過後の摩耗痕径を測定した。試験は3回行い、その平均値で示す。0.5mm以下を合格とした。
(2)熱安定性試験
ステンレス(SUS304)製のシャーレに試験グリースを厚さ3mmとなるように均一に塗布し、150℃で500時間放置した後、全酸価を測定し、試験前の全酸価からの増加量を求めた。全酸価増加量が5mgKOH/g以下を合格とした。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1及び表2に示されるように、本発明に従う各実施例の試験グリースは、優れた耐摩耗性及耐熱性を示しており、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の耐久性の向上に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の一例である一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 スリーブ
2 プーリ
4 サポート軸受
3 ローラクラッチ
5 クラッチ用内輪
6 クラッチ用外輪
7 ローラ
8 クラッチ用保持器
14 外輪
16 内輪
17 玉
18 シール部材
19 保持器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心に配置した一対の回転部材と、これら両回転部材の互いに対向する周面同士の間の軸方向に関して一部に設けられ、これら両回転部材同士が所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、これら両回転部材の間で回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、これら両回転部材の互いに対向する周面同士の間でこの一方向クラッチに対し軸方向に外れた部分に設けられ、これら両回転部材同士の間に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら両回転部材同士の相対回転を自在とする、転がり軸受であるサポート軸受とを備えた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、
前記サポート軸受が、40℃における動粘度が20〜100mm/sで、かつ、流動点が−40℃以下であるエステル油を基油とし、増ちょう剤としてジウレア化合物をグリース全量の10〜30質量%含有し、混和ちょう度が250〜340で、更にリン−硫黄系添加剤とリン系添加剤とを合計でグリース全量の1〜10質量%含有するグリースで潤滑されていることを特徴とする一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
【請求項2】
前記リン−硫黄系添加剤が、チオフォスフェートまたはチオフォスファイトであることを特徴とする請求項1記載の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−349137(P2006−349137A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179317(P2005−179317)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】