一方向回転伝達装置
【課題】構造が簡単で安定した回転伝達動作が得られる一方向回転伝達装置を提供する。
【解決手段】入出力軸1、2を同一軸心上に配して、入力軸1の外周に一対の対向傘歯車3、4を回転自在に嵌め込み、これらの両対向傘歯車3、4と噛み合う中間傘歯車5を設けるとともに、出力軸2と一方の対向傘歯車3とを一体回転するように接続し、入力軸1の正回転を一方の対向傘歯車3に伝達する第1の一方向クラッチ6と、入力軸1の逆回転を他方の対向傘歯車4に伝達する第2の一方向クラッチ7を設けて、入力軸1に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸2に出力する構成とした。これにより、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来装置に比べて、部品点数が少なく、回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくいものとすることができる。
【解決手段】入出力軸1、2を同一軸心上に配して、入力軸1の外周に一対の対向傘歯車3、4を回転自在に嵌め込み、これらの両対向傘歯車3、4と噛み合う中間傘歯車5を設けるとともに、出力軸2と一方の対向傘歯車3とを一体回転するように接続し、入力軸1の正回転を一方の対向傘歯車3に伝達する第1の一方向クラッチ6と、入力軸1の逆回転を他方の対向傘歯車4に伝達する第2の一方向クラッチ7を設けて、入力軸1に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸2に出力する構成とした。これにより、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来装置に比べて、部品点数が少なく、回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくいものとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力する一方向回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の駆動部には、入力軸に回転駆動源や往復駆動源から正逆両方向の回転が入力され、出力軸に一方向回転を出力することが要求されるものがある。このような駆動部では、駆動源から入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力する一方向回転伝達装置が使用されることがある。
【0003】
上記のような一方向回転伝達装置としては、例えば図13および図14に示すものが提案されている(特許文献1参照。)。この一方向回転伝達装置は、図13に示すように、同一軸心上に配された入出力軸51、52と、出力軸52の外周に回転自在に嵌め込まれた一対の対向傘歯車53、54と、両対向傘歯車53、54と噛み合う中間傘歯車55と、入力軸51と出力軸52の間に配される第1の一方向クラッチ56と、入力軸51と一方の対向傘歯車53の間に配される第2の一方向クラッチ57と、他方の対向傘歯車54と出力軸52の間に配される第3の一方向クラッチ58とを備えている。
【0004】
前記各一方向クラッチ56、57、58は、それぞれ図14(a)、(b)、(c)に示すように、外輪59の内周面に複数の傾斜カム面60を設け、各カム面60が設けられた周方向位置にころ61を配し、各ころ61をカム面60でロックされる方向にばね62で押圧したものである。そのうち、第1および第3の一方向クラッチ56、58は、外輪59が正回転(図中の左回転)したときに各ころ61がカム面60でロックされるように組み込まれ、第2の一方向クラッチ57は、外輪59が逆回転(図中の右回転)したときに各ころ61がカム面60でロックされるように組み込まれている。
【0005】
従って、第1および第3の一方向クラッチ56、58は、それぞれの外輪59と一体回転する入力軸51または他方の対向傘歯車54が正回転するかあるいは出力軸52が逆回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ57は、その外輪59と一体回転する入力軸51が逆回転するかあるいは一方の対向傘歯車53が正回転したときに回転伝達を行う。
【0006】
次に、入力軸51に駆動源から回転が入力されたときの動作について説明する。図13および図14では、入力軸51が正回転したときの動作を実線矢印で示し、入力軸51が逆回転したときの動作を一点鎖線矢印で示している。
【0007】
入力軸51が正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ56で出力軸52に伝達される。このとき、第2の一方向クラッチ57は入力軸51の正回転を一方の対向傘歯車53に伝達せず、また第3の一方向クラッチ58は出力軸52の正回転を他方の対向傘歯車54に伝達しないので、各傘歯車53、54、55は停止したままである。一方、入力軸51が逆回転した場合は、その逆回転が第2の一方向クラッチ57で一方の対向傘歯車53に伝達され、中間傘歯車55を介して他方の対向傘歯車54に正回転として伝達される。そして、他方の対向傘歯車54の正回転が第3の一方向クラッチ58で出力軸52に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ56は、入力軸51が逆回転し同時に出力軸52が正回転するため回転伝達を行わない。すなわち、この一方向回転伝達装置では、入力軸51に正逆いずれの回転が入力されても出力軸52に正回転が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−84783号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の一方向回転伝達装置は、3個の一方向クラッチを組み込んでいるため、部品点数が多いうえ、回転時に各クラッチの軸心がずれて伝達トルクにむらが生じたり作動トルクが大きくなったりしやすいという難点がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、構造が簡単で安定した回転伝達動作が得られる一方向回転伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は第1の手段として、入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記出力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸の正回転を前記出力軸または一方の対向傘歯車に伝達する第1の一方向クラッチと、前記入力軸の逆回転を他方の対向傘歯車に伝達する第2の一方向クラッチを設けた。
【0012】
すなわち、上記第1手段の構成によれば、入力軸が正回転した場合は、その正回転を第1の一方向クラッチで出力軸または出力軸と一体回転する一方の対向傘歯車に伝達し、入力軸が逆回転した場合は、その逆回転を第2の一方向クラッチで他方の対向傘歯車に伝達したうえで、中間傘歯車を介して一方の対向傘歯車および出力軸に正回転として伝達できるので、一方向回転伝達装置に組み込まれる一方向クラッチが2個ですむことになる。これにより、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来の装置に比べて、部品点数の削減が図れるとともに、回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合を生じにくくすることができる。
【0013】
また、本発明は第2の手段として、入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記入力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸または一方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第1の一方向クラッチと、前記他方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第2の一方向クラッチを設けた。
【0014】
すなわち、上記第2手段の構成によれば、入力軸が正回転した場合は、その正回転または入力軸と一体回転する一方の対向傘歯車の正回転を第1の一方向クラッチで出力軸に伝達し、入力軸が逆回転した場合は、その逆回転を一方の対向傘歯車および中間傘歯車を介して他方の対向傘歯車に正回転として伝達したうえで、第2の一方向クラッチで出力軸に伝達できるので、第1手段と同じく、一方向回転伝達装置に組み込まれる一方向クラッチが2個ですみ、部品点数の削減と各クラッチの軸心ずれによる不具合の減少を図ることができる。
【0015】
上記第1手段または第2手段においては、前記第1の一方向クラッチと前記第2の一方向クラッチを同一仕様のものとすることにより、組立前の一方向クラッチの部品管理を容易にすることができる。
【0016】
また、前記一対の対向傘歯車の少なくとも一方に、外部の回転部材との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段を設けるようにすれば、回転伝達手段を有する対向傘歯車に入力軸または出力軸の役割を兼ねさせて、装置全体の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
前記回転伝達手段としてはリング歯車を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一方向回転伝達装置は、上述したように、2個の一方向クラッチを用いて、入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力できるようにしたものであるから、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来の装置に比べて部品点数の少ない簡単な構造となり、しかも回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくく、安定した回転伝達動作が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図2】a、bは、それぞれ図1のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図3】第2実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図4】a、bは、それぞれ図3のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図5】第3実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図6】a、bは、それぞれ図5のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図7】第4実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図8】a、bは、それぞれ図7のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図9】第5実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図10】a、bは、それぞれ図9のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図11】第6実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図12】a、bは、それぞれ図11のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図13】従来の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図14】a、b、cは、それぞれ図13のA−A線、B−B線、C−C線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は第1の実施形態を示す。この一方向回転伝達装置は、図1に示すように、同一軸心上に配された入出力軸1、2と、入力軸1の外周に回転自在に嵌め込まれた一対の対向傘歯車3、4と、両対向傘歯車3、4と噛み合う中間傘歯車5と、入力軸1と一方(出力側)の対向傘歯車3の間に配される第1の一方向クラッチ6と、入力軸1と他方(入力側)の対向傘歯車4の間に配される第2の一方向クラッチ7とを備えている。入力軸1および出力軸2は、それぞれ筒状ケーシング8の両端蓋部8a、8bにあけられた貫通孔の内周面で回転自在に支持されている。また、中間傘歯車5は、その軸部5aをケーシング8内周面に形成された円形穴8cに回転自在に嵌め込まれている。なお、図示は省略するが、ケーシング8は2分割されており、入出力軸1、2、各傘歯車3、4、5および各一方向クラッチ6、7を組み込んだ状態で一体化されるようになっている。
【0021】
前記出力軸2は、ケーシング蓋部8bに回転自在に支持される小径筒部2aと、出力側の対向傘歯車3が接続される大径筒部2bとが2段に設けられている。入力軸1は、その先端部を出力軸2の筒部2a、2bに挿入され、止め輪9で抜け止めされている。また、各対向傘歯車3、4はそれぞれ一方向クラッチ6、7を収容する筒部3a、4aを有しており、出力側の対向傘歯車3は、その筒部3aが出力軸2の大径筒部2b内周に回転不能に嵌め込まれて、出力軸2と一体回転するようになっている。
【0022】
前記各一方向クラッチ6、7は、それぞれ図2(a)、(b)に示すように、外輪10の内周面に複数の傾斜カム面11を設け、各カム面11が設けられた周方向位置に係合子としてのころ12を配し、各ころ12をカム面11でロックされる方向にばね13で押圧したものである。両一方向クラッチ6、7は同一仕様のもので、そのうちの第1の一方向クラッチ6は、外輪10が逆回転(図中の右回転)したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれ、第2の一方向クラッチ7は、外輪10が正回転(図中の左回転)したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。
【0023】
従って、第1の一方向クラッチ6は、その外輪10と一体回転する出力側の対向傘歯車3が逆回転するかあるいは入力軸1が正回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ7は、その外輪10と一体回転する入力側の対向傘歯車4が正回転するかあるいは入力軸1が逆回転したときに回転伝達を行う。
【0024】
次に、入力軸1に駆動源(図示省略)から回転が入力されたときの動作について説明する。図1および図2では、入力軸1が正回転したときの動作を実線矢印で示し、入力軸1が逆回転したときの動作を一点鎖線矢印で示している(後述する他の実施形態を示す各図も同じ)。
【0025】
入力軸1が正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ6で出力側の対向傘歯車3に伝達され、この傘歯車3と一体に出力軸2が正回転する。このとき、出力側の対向傘歯車3の正回転は中間傘歯車5を介して入力側の対向傘歯車4に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ7は回転伝達を行わない。
【0026】
一方、入力軸1が逆回転した場合は、その逆回転が第2の一方向クラッチ7で入力側の対向傘歯車4に伝達される。そして、入力側の対向傘歯車4の逆回転は中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車3に正回転として伝達され、この傘歯車3と一体に出力軸2が正回転する。このとき、第1の一方向クラッチ6は、入力軸1が逆回転し同時に出力側の対向傘歯車3が正回転するため回転伝達を行わない。
【0027】
この一方向回転伝達装置は、上述したように、2個の一方向クラッチ6、7を用いて、入力軸1に正逆いずれの回転が入力されても出力軸2に正回転が出力されるようにしたので、3個の一方向クラッチを組み込んだ前述の従来装置(図13、図14)に比べると、部品点数が少ない簡単な構造となり、しかも回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくく、安定した回転伝達動作が得られる。また、前述の従来装置では、各一方向クラッチのうちの一つを他のものと異なる仕様(径方向寸法)としていたのに対し、この装置では、各一方向クラッチ6、7を同一仕様のものとしているので、組立前の一方向クラッチの部品管理が容易である。
【0028】
図3および図4は第2の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、第1の実施形態の入力側と出力側を逆にして2個の一方向クラッチを同じ向きで組み込んだものである。すなわち、図3に示すように、この実施形態の入力軸14は第1実施形態の出力軸2と同じ構成であり、出力軸15は第1実施形態の入力軸1と同じ構成である。そして、図4(a)、(b)に示すように、一方(入力側)の対向傘歯車3と出力軸15の間に配される第1の一方向クラッチ16と、他方(出力側)の対向傘歯車4と出力軸15の間に配される第2の一方向クラッチ17は、いずれも外輪10が正回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。その他の部分の構成は第1実施形態と同じである。
【0029】
この実施形態では、入力軸14が入力側の対向傘歯車3と一体に正回転すると、その正回転が第1の一方向クラッチ16で出力軸15に伝達される。このとき、入力側の対向傘歯車3の正回転は中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車4に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ17は回転伝達を行わない。
【0030】
一方、入力軸14が入力側の対向傘歯車3と一体に逆回転すると、その傘歯車3の逆回転が中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車4に正回転として伝達される。そして、出力側の対向傘歯車4の正回転は、第2の一方向クラッチ17で出力軸15に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ16は、入力側の対向傘歯車3が逆回転し同時に出力軸15が正回転するため回転伝達を行わない。
【0031】
上述したように、この実施形態も、2個の一方向クラッチ16、17を用いて、入力軸14に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸15に出力する機構を構築しているので、第1実施形態と同じ特長を有している。
【0032】
図5および図6(a)、(b)は第3の実施形態を、図7および図8(a)、(b)は第4の実施形態をそれぞれ示す。これらの各実施形態の一方向回転伝達装置は、それぞれ第1および第2の実施形態の一対の対向傘歯車3、4に、外部の回転部材(図示省略)との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段としてのリング歯車3b、4bを設けて、これらの対向傘歯車3、4に出力軸または入力軸の役割を兼ねさせたものである。
【0033】
これらの各実施形態では、両端が開放された筒状ケーシング18を用い、このケーシング18の内部に、第3実施形態の入力軸1または第4実施形態の出力軸15を通す円筒部19aと中間傘歯車20の軸孔に通される円柱部19bとからなる支持部材19を設けている。この支持部材19は、その円筒部19aの一部をケーシング18の内周面に当接させ、円柱部19bをケーシング18内周面に形成された円形穴18aに嵌め込むことにより固定されて、円筒部19a内周面で入力軸1または出力軸15を回転自在に支持するとともに、円柱部19bで中間傘歯車20を回転自在に支持している。また、支持部材19に支持された入力軸1または出力軸15は、2個の止め輪9で抜け止めされている。
【0034】
そして、各対向傘歯車3、4は、ケーシング18からはみ出した部位に設けられたリング歯車3b、4bで外部回転部材と回転伝達して、出力軸または入力軸の役割を兼ねるようになっており、第1実施形態の出力軸2(第2実施形態の入力軸14)を不要としている。その他の部分の構成および回転伝達動作については、第3実施形態は第1実施形態と同じであり、第4実施形態は第2実施形態と同じである。この結果、第3および第4実施形態では、第1および第2実施形態に比べて装置全体が軸方向にコンパクトなものになっている。
【0035】
なお、各対向傘歯車に設けられる外部回転部材との間の回転伝達手段は、実施形態のようなリング歯車に限らず、プーリ等を採用することもできる。
【0036】
図9および図10は第5の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、図9に示すように、第1実施形態と同じく、同一軸心上に配された入出力軸21、22と、入力軸21の外周に嵌め込まれた一対の対向傘歯車23、24と、両対向傘歯車23、24と噛み合う中間傘歯車25とを備えており、各傘歯車23、24、25および2個の一方向クラッチ26、27が筒状ケーシング8内に収容されている。また、入出力軸21、22および中間傘歯車25をケーシング8で回転自在に支持する構成も第1実施形態と同じである。
【0037】
一方、この実施形態の第1実施形態との相違点は、入力軸21と一方(入力側)の対向傘歯車23が一体回転するように接続されていること、入力軸21と出力軸22の間に第1の一方向クラッチ26が配され、他方(出力側)の対向傘歯車24と出力軸22の間に第1の一方向クラッチ26より径方向寸法の大きい第2の一方向クラッチ27が配されていること、両一方向クラッチ26、27が同じ向きで組み込まれていることである。
【0038】
また、前記出力軸22は、ケーシング蓋部8bに回転自在に支持される小径筒部22aと、2個の一方向クラッチ26、27を収容する大径筒部22bとが2段に設けられている。そして、入力側の対向傘歯車23はキー結合により入力軸21と一体回転するようになっており、出力側の対向傘歯車24は入力軸21と第2の一方向クラッチ27の間に挿入される筒部24aを有している。
【0039】
前記各一方向クラッチ26、27の基本的な構成は第1実施形態のものと同じである。そして、各一方向クラッチ26、27は、それぞれ図10(a)、(b)に示すように、いずれも外輪10が逆回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。すなわち、第1の一方向クラッチ26は入力軸21が正回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ27は出力側の対向傘歯車24が正回転したときに回転伝達を行うようになっている。
【0040】
従って、入力軸21が入力側の対向傘歯車23と一体に正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ26で出力軸22に伝達される。このとき、入力側の対向傘歯車23の正回転は中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車24に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ27は回転伝達を行わない。
【0041】
一方、入力軸21が入力側の対向傘歯車23と一体に逆回転した場合は、その傘歯車23の逆回転が中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車24に正回転として伝達される。そして、出力側の対向傘歯車24の正回転は、第2の一方向クラッチ27で出力軸22に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ26は、入力軸21が逆回転し同時に出力軸22が正回転するため回転伝達を行わない。
【0042】
図11および図12は第6の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、第5の実施形態の入力側と出力側を逆にして2個の一方向クラッチを逆向きに組み込んだものである。すなわち、図11に示すように、この実施形態の入力軸28は第5実施形態の出力軸22と同じ構成であり、出力軸29は第5実施形態の入力軸21と同じ構成である。そして、図12(a)、(b)に示すように、入力軸28と出力軸29の間に配される第1の一方向クラッチ30は、外輪10が正回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれ、入力軸28と他方(入力側)の対向傘歯車24の間に配される第2の一方向クラッチ31は、外輪10が逆回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。その他の部分の構成は第5実施形態と同じである。
【0043】
この実施形態では、入力軸28が正回転すると、その正回転が第1の一方向クラッチ30で出力軸29に伝達される。このとき、出力軸29と一体回転する出力側の対向傘歯車23の正回転は中間傘歯車25を介して入力側の対向傘歯車24に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ31は回転伝達を行わない。
【0044】
一方、入力軸28が逆回転すると、その逆回転が第2の一方向クラッチ31で入力側の対向傘歯車24に伝達される。そして、入力側の対向傘歯車24の逆回転は中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車23に正回転として伝達され、この傘歯車23と一体に出力軸29が正回転する。このとき、第1の一方向クラッチ30は、入力軸28が逆回転し同時に出力軸29が正回転するため回転伝達を行わない。
【0045】
すなわち、上述した第5および第6の実施形態でも、第1〜4の実施形態と同じく、2個の一方向クラッチを用いて、入力軸に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸に出力する機構を構築することができる。
【0046】
なお、上述した各実施形態では、一方向クラッチとしてころを係合子とするものを用いたが、スプラグ等を係合子とする他のタイプの一方向クラッチを用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1、14、21、28 入力軸
2、15、22、29 出力軸
3、4、23、24 対向傘歯車
3b、4b リング歯車
5、20、25 中間傘歯車
6、16、26、30 第1の一方向クラッチ
7、17、27、31 第2の一方向クラッチ
8、18 ケーシング
10 外輪
11 カム面
12 ころ
13 ばね
19 支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力する一方向回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の駆動部には、入力軸に回転駆動源や往復駆動源から正逆両方向の回転が入力され、出力軸に一方向回転を出力することが要求されるものがある。このような駆動部では、駆動源から入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力する一方向回転伝達装置が使用されることがある。
【0003】
上記のような一方向回転伝達装置としては、例えば図13および図14に示すものが提案されている(特許文献1参照。)。この一方向回転伝達装置は、図13に示すように、同一軸心上に配された入出力軸51、52と、出力軸52の外周に回転自在に嵌め込まれた一対の対向傘歯車53、54と、両対向傘歯車53、54と噛み合う中間傘歯車55と、入力軸51と出力軸52の間に配される第1の一方向クラッチ56と、入力軸51と一方の対向傘歯車53の間に配される第2の一方向クラッチ57と、他方の対向傘歯車54と出力軸52の間に配される第3の一方向クラッチ58とを備えている。
【0004】
前記各一方向クラッチ56、57、58は、それぞれ図14(a)、(b)、(c)に示すように、外輪59の内周面に複数の傾斜カム面60を設け、各カム面60が設けられた周方向位置にころ61を配し、各ころ61をカム面60でロックされる方向にばね62で押圧したものである。そのうち、第1および第3の一方向クラッチ56、58は、外輪59が正回転(図中の左回転)したときに各ころ61がカム面60でロックされるように組み込まれ、第2の一方向クラッチ57は、外輪59が逆回転(図中の右回転)したときに各ころ61がカム面60でロックされるように組み込まれている。
【0005】
従って、第1および第3の一方向クラッチ56、58は、それぞれの外輪59と一体回転する入力軸51または他方の対向傘歯車54が正回転するかあるいは出力軸52が逆回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ57は、その外輪59と一体回転する入力軸51が逆回転するかあるいは一方の対向傘歯車53が正回転したときに回転伝達を行う。
【0006】
次に、入力軸51に駆動源から回転が入力されたときの動作について説明する。図13および図14では、入力軸51が正回転したときの動作を実線矢印で示し、入力軸51が逆回転したときの動作を一点鎖線矢印で示している。
【0007】
入力軸51が正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ56で出力軸52に伝達される。このとき、第2の一方向クラッチ57は入力軸51の正回転を一方の対向傘歯車53に伝達せず、また第3の一方向クラッチ58は出力軸52の正回転を他方の対向傘歯車54に伝達しないので、各傘歯車53、54、55は停止したままである。一方、入力軸51が逆回転した場合は、その逆回転が第2の一方向クラッチ57で一方の対向傘歯車53に伝達され、中間傘歯車55を介して他方の対向傘歯車54に正回転として伝達される。そして、他方の対向傘歯車54の正回転が第3の一方向クラッチ58で出力軸52に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ56は、入力軸51が逆回転し同時に出力軸52が正回転するため回転伝達を行わない。すなわち、この一方向回転伝達装置では、入力軸51に正逆いずれの回転が入力されても出力軸52に正回転が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−84783号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の一方向回転伝達装置は、3個の一方向クラッチを組み込んでいるため、部品点数が多いうえ、回転時に各クラッチの軸心がずれて伝達トルクにむらが生じたり作動トルクが大きくなったりしやすいという難点がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、構造が簡単で安定した回転伝達動作が得られる一方向回転伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は第1の手段として、入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記出力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸の正回転を前記出力軸または一方の対向傘歯車に伝達する第1の一方向クラッチと、前記入力軸の逆回転を他方の対向傘歯車に伝達する第2の一方向クラッチを設けた。
【0012】
すなわち、上記第1手段の構成によれば、入力軸が正回転した場合は、その正回転を第1の一方向クラッチで出力軸または出力軸と一体回転する一方の対向傘歯車に伝達し、入力軸が逆回転した場合は、その逆回転を第2の一方向クラッチで他方の対向傘歯車に伝達したうえで、中間傘歯車を介して一方の対向傘歯車および出力軸に正回転として伝達できるので、一方向回転伝達装置に組み込まれる一方向クラッチが2個ですむことになる。これにより、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来の装置に比べて、部品点数の削減が図れるとともに、回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合を生じにくくすることができる。
【0013】
また、本発明は第2の手段として、入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記入力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸または一方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第1の一方向クラッチと、前記他方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第2の一方向クラッチを設けた。
【0014】
すなわち、上記第2手段の構成によれば、入力軸が正回転した場合は、その正回転または入力軸と一体回転する一方の対向傘歯車の正回転を第1の一方向クラッチで出力軸に伝達し、入力軸が逆回転した場合は、その逆回転を一方の対向傘歯車および中間傘歯車を介して他方の対向傘歯車に正回転として伝達したうえで、第2の一方向クラッチで出力軸に伝達できるので、第1手段と同じく、一方向回転伝達装置に組み込まれる一方向クラッチが2個ですみ、部品点数の削減と各クラッチの軸心ずれによる不具合の減少を図ることができる。
【0015】
上記第1手段または第2手段においては、前記第1の一方向クラッチと前記第2の一方向クラッチを同一仕様のものとすることにより、組立前の一方向クラッチの部品管理を容易にすることができる。
【0016】
また、前記一対の対向傘歯車の少なくとも一方に、外部の回転部材との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段を設けるようにすれば、回転伝達手段を有する対向傘歯車に入力軸または出力軸の役割を兼ねさせて、装置全体の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
前記回転伝達手段としてはリング歯車を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一方向回転伝達装置は、上述したように、2個の一方向クラッチを用いて、入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して出力軸に出力できるようにしたものであるから、3個の一方向クラッチを組み込んだ従来の装置に比べて部品点数の少ない簡単な構造となり、しかも回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくく、安定した回転伝達動作が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図2】a、bは、それぞれ図1のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図3】第2実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図4】a、bは、それぞれ図3のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図5】第3実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図6】a、bは、それぞれ図5のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図7】第4実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図8】a、bは、それぞれ図7のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図9】第5実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図10】a、bは、それぞれ図9のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図11】第6実施形態の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図12】a、bは、それぞれ図11のA−A線、B−B線に沿った断面図
【図13】従来の一方向回転伝達装置の正面断面図
【図14】a、b、cは、それぞれ図13のA−A線、B−B線、C−C線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は第1の実施形態を示す。この一方向回転伝達装置は、図1に示すように、同一軸心上に配された入出力軸1、2と、入力軸1の外周に回転自在に嵌め込まれた一対の対向傘歯車3、4と、両対向傘歯車3、4と噛み合う中間傘歯車5と、入力軸1と一方(出力側)の対向傘歯車3の間に配される第1の一方向クラッチ6と、入力軸1と他方(入力側)の対向傘歯車4の間に配される第2の一方向クラッチ7とを備えている。入力軸1および出力軸2は、それぞれ筒状ケーシング8の両端蓋部8a、8bにあけられた貫通孔の内周面で回転自在に支持されている。また、中間傘歯車5は、その軸部5aをケーシング8内周面に形成された円形穴8cに回転自在に嵌め込まれている。なお、図示は省略するが、ケーシング8は2分割されており、入出力軸1、2、各傘歯車3、4、5および各一方向クラッチ6、7を組み込んだ状態で一体化されるようになっている。
【0021】
前記出力軸2は、ケーシング蓋部8bに回転自在に支持される小径筒部2aと、出力側の対向傘歯車3が接続される大径筒部2bとが2段に設けられている。入力軸1は、その先端部を出力軸2の筒部2a、2bに挿入され、止め輪9で抜け止めされている。また、各対向傘歯車3、4はそれぞれ一方向クラッチ6、7を収容する筒部3a、4aを有しており、出力側の対向傘歯車3は、その筒部3aが出力軸2の大径筒部2b内周に回転不能に嵌め込まれて、出力軸2と一体回転するようになっている。
【0022】
前記各一方向クラッチ6、7は、それぞれ図2(a)、(b)に示すように、外輪10の内周面に複数の傾斜カム面11を設け、各カム面11が設けられた周方向位置に係合子としてのころ12を配し、各ころ12をカム面11でロックされる方向にばね13で押圧したものである。両一方向クラッチ6、7は同一仕様のもので、そのうちの第1の一方向クラッチ6は、外輪10が逆回転(図中の右回転)したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれ、第2の一方向クラッチ7は、外輪10が正回転(図中の左回転)したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。
【0023】
従って、第1の一方向クラッチ6は、その外輪10と一体回転する出力側の対向傘歯車3が逆回転するかあるいは入力軸1が正回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ7は、その外輪10と一体回転する入力側の対向傘歯車4が正回転するかあるいは入力軸1が逆回転したときに回転伝達を行う。
【0024】
次に、入力軸1に駆動源(図示省略)から回転が入力されたときの動作について説明する。図1および図2では、入力軸1が正回転したときの動作を実線矢印で示し、入力軸1が逆回転したときの動作を一点鎖線矢印で示している(後述する他の実施形態を示す各図も同じ)。
【0025】
入力軸1が正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ6で出力側の対向傘歯車3に伝達され、この傘歯車3と一体に出力軸2が正回転する。このとき、出力側の対向傘歯車3の正回転は中間傘歯車5を介して入力側の対向傘歯車4に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ7は回転伝達を行わない。
【0026】
一方、入力軸1が逆回転した場合は、その逆回転が第2の一方向クラッチ7で入力側の対向傘歯車4に伝達される。そして、入力側の対向傘歯車4の逆回転は中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車3に正回転として伝達され、この傘歯車3と一体に出力軸2が正回転する。このとき、第1の一方向クラッチ6は、入力軸1が逆回転し同時に出力側の対向傘歯車3が正回転するため回転伝達を行わない。
【0027】
この一方向回転伝達装置は、上述したように、2個の一方向クラッチ6、7を用いて、入力軸1に正逆いずれの回転が入力されても出力軸2に正回転が出力されるようにしたので、3個の一方向クラッチを組み込んだ前述の従来装置(図13、図14)に比べると、部品点数が少ない簡単な構造となり、しかも回転時の各クラッチの軸心ずれによる不具合が生じにくく、安定した回転伝達動作が得られる。また、前述の従来装置では、各一方向クラッチのうちの一つを他のものと異なる仕様(径方向寸法)としていたのに対し、この装置では、各一方向クラッチ6、7を同一仕様のものとしているので、組立前の一方向クラッチの部品管理が容易である。
【0028】
図3および図4は第2の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、第1の実施形態の入力側と出力側を逆にして2個の一方向クラッチを同じ向きで組み込んだものである。すなわち、図3に示すように、この実施形態の入力軸14は第1実施形態の出力軸2と同じ構成であり、出力軸15は第1実施形態の入力軸1と同じ構成である。そして、図4(a)、(b)に示すように、一方(入力側)の対向傘歯車3と出力軸15の間に配される第1の一方向クラッチ16と、他方(出力側)の対向傘歯車4と出力軸15の間に配される第2の一方向クラッチ17は、いずれも外輪10が正回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。その他の部分の構成は第1実施形態と同じである。
【0029】
この実施形態では、入力軸14が入力側の対向傘歯車3と一体に正回転すると、その正回転が第1の一方向クラッチ16で出力軸15に伝達される。このとき、入力側の対向傘歯車3の正回転は中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車4に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ17は回転伝達を行わない。
【0030】
一方、入力軸14が入力側の対向傘歯車3と一体に逆回転すると、その傘歯車3の逆回転が中間傘歯車5を介して出力側の対向傘歯車4に正回転として伝達される。そして、出力側の対向傘歯車4の正回転は、第2の一方向クラッチ17で出力軸15に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ16は、入力側の対向傘歯車3が逆回転し同時に出力軸15が正回転するため回転伝達を行わない。
【0031】
上述したように、この実施形態も、2個の一方向クラッチ16、17を用いて、入力軸14に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸15に出力する機構を構築しているので、第1実施形態と同じ特長を有している。
【0032】
図5および図6(a)、(b)は第3の実施形態を、図7および図8(a)、(b)は第4の実施形態をそれぞれ示す。これらの各実施形態の一方向回転伝達装置は、それぞれ第1および第2の実施形態の一対の対向傘歯車3、4に、外部の回転部材(図示省略)との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段としてのリング歯車3b、4bを設けて、これらの対向傘歯車3、4に出力軸または入力軸の役割を兼ねさせたものである。
【0033】
これらの各実施形態では、両端が開放された筒状ケーシング18を用い、このケーシング18の内部に、第3実施形態の入力軸1または第4実施形態の出力軸15を通す円筒部19aと中間傘歯車20の軸孔に通される円柱部19bとからなる支持部材19を設けている。この支持部材19は、その円筒部19aの一部をケーシング18の内周面に当接させ、円柱部19bをケーシング18内周面に形成された円形穴18aに嵌め込むことにより固定されて、円筒部19a内周面で入力軸1または出力軸15を回転自在に支持するとともに、円柱部19bで中間傘歯車20を回転自在に支持している。また、支持部材19に支持された入力軸1または出力軸15は、2個の止め輪9で抜け止めされている。
【0034】
そして、各対向傘歯車3、4は、ケーシング18からはみ出した部位に設けられたリング歯車3b、4bで外部回転部材と回転伝達して、出力軸または入力軸の役割を兼ねるようになっており、第1実施形態の出力軸2(第2実施形態の入力軸14)を不要としている。その他の部分の構成および回転伝達動作については、第3実施形態は第1実施形態と同じであり、第4実施形態は第2実施形態と同じである。この結果、第3および第4実施形態では、第1および第2実施形態に比べて装置全体が軸方向にコンパクトなものになっている。
【0035】
なお、各対向傘歯車に設けられる外部回転部材との間の回転伝達手段は、実施形態のようなリング歯車に限らず、プーリ等を採用することもできる。
【0036】
図9および図10は第5の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、図9に示すように、第1実施形態と同じく、同一軸心上に配された入出力軸21、22と、入力軸21の外周に嵌め込まれた一対の対向傘歯車23、24と、両対向傘歯車23、24と噛み合う中間傘歯車25とを備えており、各傘歯車23、24、25および2個の一方向クラッチ26、27が筒状ケーシング8内に収容されている。また、入出力軸21、22および中間傘歯車25をケーシング8で回転自在に支持する構成も第1実施形態と同じである。
【0037】
一方、この実施形態の第1実施形態との相違点は、入力軸21と一方(入力側)の対向傘歯車23が一体回転するように接続されていること、入力軸21と出力軸22の間に第1の一方向クラッチ26が配され、他方(出力側)の対向傘歯車24と出力軸22の間に第1の一方向クラッチ26より径方向寸法の大きい第2の一方向クラッチ27が配されていること、両一方向クラッチ26、27が同じ向きで組み込まれていることである。
【0038】
また、前記出力軸22は、ケーシング蓋部8bに回転自在に支持される小径筒部22aと、2個の一方向クラッチ26、27を収容する大径筒部22bとが2段に設けられている。そして、入力側の対向傘歯車23はキー結合により入力軸21と一体回転するようになっており、出力側の対向傘歯車24は入力軸21と第2の一方向クラッチ27の間に挿入される筒部24aを有している。
【0039】
前記各一方向クラッチ26、27の基本的な構成は第1実施形態のものと同じである。そして、各一方向クラッチ26、27は、それぞれ図10(a)、(b)に示すように、いずれも外輪10が逆回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。すなわち、第1の一方向クラッチ26は入力軸21が正回転したときに回転伝達を行い、第2の一方向クラッチ27は出力側の対向傘歯車24が正回転したときに回転伝達を行うようになっている。
【0040】
従って、入力軸21が入力側の対向傘歯車23と一体に正回転した場合は、その正回転が第1の一方向クラッチ26で出力軸22に伝達される。このとき、入力側の対向傘歯車23の正回転は中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車24に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ27は回転伝達を行わない。
【0041】
一方、入力軸21が入力側の対向傘歯車23と一体に逆回転した場合は、その傘歯車23の逆回転が中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車24に正回転として伝達される。そして、出力側の対向傘歯車24の正回転は、第2の一方向クラッチ27で出力軸22に伝達される。このとき、第1の一方向クラッチ26は、入力軸21が逆回転し同時に出力軸22が正回転するため回転伝達を行わない。
【0042】
図11および図12は第6の実施形態を示す。この実施形態の一方向回転伝達装置は、第5の実施形態の入力側と出力側を逆にして2個の一方向クラッチを逆向きに組み込んだものである。すなわち、図11に示すように、この実施形態の入力軸28は第5実施形態の出力軸22と同じ構成であり、出力軸29は第5実施形態の入力軸21と同じ構成である。そして、図12(a)、(b)に示すように、入力軸28と出力軸29の間に配される第1の一方向クラッチ30は、外輪10が正回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれ、入力軸28と他方(入力側)の対向傘歯車24の間に配される第2の一方向クラッチ31は、外輪10が逆回転したときに各ころ12がカム面11でロックされるように組み込まれている。その他の部分の構成は第5実施形態と同じである。
【0043】
この実施形態では、入力軸28が正回転すると、その正回転が第1の一方向クラッチ30で出力軸29に伝達される。このとき、出力軸29と一体回転する出力側の対向傘歯車23の正回転は中間傘歯車25を介して入力側の対向傘歯車24に逆回転として伝達されるが、第2の一方向クラッチ31は回転伝達を行わない。
【0044】
一方、入力軸28が逆回転すると、その逆回転が第2の一方向クラッチ31で入力側の対向傘歯車24に伝達される。そして、入力側の対向傘歯車24の逆回転は中間傘歯車25を介して出力側の対向傘歯車23に正回転として伝達され、この傘歯車23と一体に出力軸29が正回転する。このとき、第1の一方向クラッチ30は、入力軸28が逆回転し同時に出力軸29が正回転するため回転伝達を行わない。
【0045】
すなわち、上述した第5および第6の実施形態でも、第1〜4の実施形態と同じく、2個の一方向クラッチを用いて、入力軸に入力される正逆両方向回転を正回転に変換して出力軸に出力する機構を構築することができる。
【0046】
なお、上述した各実施形態では、一方向クラッチとしてころを係合子とするものを用いたが、スプラグ等を係合子とする他のタイプの一方向クラッチを用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1、14、21、28 入力軸
2、15、22、29 出力軸
3、4、23、24 対向傘歯車
3b、4b リング歯車
5、20、25 中間傘歯車
6、16、26、30 第1の一方向クラッチ
7、17、27、31 第2の一方向クラッチ
8、18 ケーシング
10 外輪
11 カム面
12 ころ
13 ばね
19 支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記出力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸の正回転を前記出力軸または一方の対向傘歯車に伝達する第1の一方向クラッチと、前記入力軸の逆回転を他方の対向傘歯車に伝達する第2の一方向クラッチを設けたことを特徴とする一方向回転伝達装置。
【請求項2】
入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記入力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸または一方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第1の一方向クラッチと、前記他方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第2の一方向クラッチを設けたことを特徴とする一方向回転伝達装置。
【請求項3】
前記第1の一方向クラッチと前記第2の一方向クラッチを同一仕様のものとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の一方向回転伝達装置。
【請求項4】
前記一対の対向傘歯車の少なくとも一方に、外部の回転部材との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の一方向回転伝達装置。
【請求項5】
前記回転伝達手段がリング歯車であることを特徴とする請求項4に記載の一方向回転伝達装置。
【請求項1】
入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記出力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸の正回転を前記出力軸または一方の対向傘歯車に伝達する第1の一方向クラッチと、前記入力軸の逆回転を他方の対向傘歯車に伝達する第2の一方向クラッチを設けたことを特徴とする一方向回転伝達装置。
【請求項2】
入力軸と出力軸を同一軸心上に配し、前記入力軸に入力される正逆両方向回転を一方向回転に変換して前記出力軸に出力する一方向回転伝達装置において、前記入出力軸と同一軸心上に一対の対向傘歯車を配して、これらの両対向傘歯車と噛み合う中間傘歯車を設けるとともに、前記入力軸と一方の対向傘歯車とを一体回転するように接続し、前記入力軸または一方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第1の一方向クラッチと、前記他方の対向傘歯車の正回転を前記出力軸に伝達する第2の一方向クラッチを設けたことを特徴とする一方向回転伝達装置。
【請求項3】
前記第1の一方向クラッチと前記第2の一方向クラッチを同一仕様のものとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の一方向回転伝達装置。
【請求項4】
前記一対の対向傘歯車の少なくとも一方に、外部の回転部材との間での回転伝達を可能とする回転伝達手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の一方向回転伝達装置。
【請求項5】
前記回転伝達手段がリング歯車であることを特徴とする請求項4に記載の一方向回転伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−216536(P2010−216536A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62520(P2009−62520)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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