説明

一本鎖オリゴヌクレオチド変異ベクター

【課題】一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド、その特定の誘導体、および生細胞の標的遺伝子の中に所定の遺伝子変化を導入する方法の提供。
【解決手段】遺伝子変化をコードする一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドであって、オリゴデオキシヌクレオチドは、3'-3'結合シトシンヌクレオチドおよび5'結合インドカルボシアニン色素などの3'および5'ブロッキング置換基の結合により修飾される。この修飾は、ほぼ3'および/またはほぼ5'のヌクレオチド間ホスホジエステル結合をホスホロチオエートジエステル結合もしくはホスホルアミデート結合などの非加水分解性結合で置換することにより構成されてもよい。遺伝子変化をコードするオリゴデオキシヌクレオチドおよび高分子担体からなる組成物は、該担体として、ポリカチオン、水溶性コア脂質小胞または脂質ナノスフェアのいずれかを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1999年8月27日出願の米国出願番号第09/384,960号の一部継続出願であり、該出願の開示は全て本出願中に参照として組み込むこととする。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド、その特定の誘導体、および生細胞内の標的遺伝子中の所定の位置に所定の変化を導入するためのこれらの使用に関する。細胞は、哺乳動物、昆虫、魚類、蠕形動物もしくは鳥類の細胞でよく、これらは人工的培養培地中にあるものでも器官内にあるものでもよく、または細菌細胞もしくは植物細胞であってもよい。標的遺伝子は、染色体内の遺伝子でもよく、染色体外の遺伝子(つまり、細菌人工染色体上の遺伝子)でもよい。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
細胞の標的核酸配列内の所定の位置に所定の変化をもたらす技術は既に記載されている。これらの技術は、DNAの修復および相同組換えに関する細胞の酵素を利用する。これらの技術では、標的遺伝子とは異なる「変異誘発領域(mutator region)」と呼ばれる領域に隣接する2つの標的遺伝子配列を有している領域を含むオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体を合成する。本明細書中では、このようなオリゴヌクレオチドおよび類似体は概して「変異ベクター(mutational vector)」と呼ぶ。このような変異ベクターにより、相同組換えならびに/または核酸の切除および修復に関与すると考えられる機構により標的遺伝子内に所定の遺伝子変化を導入することができる。
【0004】
Kmiecに付与された米国特許第5,565,350号および第5,731,181号には、第1鎖に第2鎖のデオキシリボヌクレオチドとワトソンクリック型塩基対を形成するリボヌクレオチド類似体を含む相補鎖を含有する変異ベクターが記載されている。KumarおよびMetzに付与された米国特許第6,004,804号は、その変異誘発領域が二本鎖の一方の鎖にだけ存在する変異体を含む二重鎖変異ベクターの特定の改良について記載している。Kmiec型の変異ベクターの哺乳動物系における使用は、米国特許第5,760,012号に記載されており、ならびにKrenらの国際特許出願公開番号WO98/49350中に高分子担体と併せて、および関連米国特許出願番号第09/108,006号に記載されている。さらに、Kmiec型の変異ベクターの使用についての記載は、Cole-Straussら、1996,Science 273: 1386; Krenら、1998, Nature Med. 4:285; およびBandyopadhyayら、1999, J. Biol. Chem. 274: 10163に見られる。植物細胞におけるKmiec型の変異ベクターの使用は、Pioneera Hi-bred Internationalの国際特許出願公開番号WO99/25853、Kimeragen, Incの国際特許出願公開番号WO99/07865、Zeneca Ltd.の国際特許出願公開番号WO98/54330中に記載されている。植物におけるKmiec型の変異ベクターの使用を記載している科学刊行物には、Beethamら、1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774およびZhuら、1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8768がある。
【0005】
二本鎖のKmiec型変異ベクターおよびその変異体の使用は、KumarおよびMetzに付与された米国特許第6,004,804号に記載されている。KumarおよびMetzの出願は、とりわけ、細菌細胞においてKmiec型変異ベクターおよびその変異体を使用できることを教示している。
【0006】
酵母S. cerevisiaeの染色体内の遺伝子における変化をもたらす変異ベクターとしての一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドの使用は、エール大学のF.Sherman博士の研究室から発表された報告に記載された(Moerschellら、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 524-528およびYamamotoら、1992, Yeast 8: 935-948)。これらの研究に用いる変異ベクターの最適な長さは、50ヌクレオチドであった。
【0007】
染色体内の遺伝子に変化をもたらす試みへの160ヌクレオチドの一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの使用についての1つの報告は、Hunger-Bertling, 1990, Mol. Cell. Biochem. 92: 107-116に見受けられる。二本鎖ポリヌクレオチドを用いる実験の産物しか解析されていないので、一本鎖ポリヌクレオチドについての結果ははっきりしなかった。
【0008】
嚢胞性線維症コンダクタンス制御因子遺伝子に特異的な遺伝子変化をもたらすための488塩基対からなる一本鎖DNA断片の使用は、Gonczら、1998, Hum. Mol. Genetics 7: 1913;およびKunzelmannら、1996, Gene Ther. 3:859により報告されている。
【0009】
哺乳動物細胞において、長さが約40ヌクレオチドの一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドは、エピソーム遺伝子の研究の対照として用いられ、該オリゴデオキシヌクレオチドは、3重鎖形成オリゴヌクレオチドに共有結合し、該オリゴデオキシヌクレオチド単独で約5X104につき1個またはもっと少ない割合でエピソーム遺伝子の所定の遺伝子変化をもたらした(Chanら、1999, J. Biol. Chem. 74: 11541)。哺乳動物細胞内のエピソーム遺伝子の中に所定の変化をもたらすための一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドの使用についてのさらに以前の報告は、Campbellら、1989, The New Biologist 1:223に見られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、インドカルボシアニン色素を結合させることにより修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドに関する。インドカルボシアニン色素は、優れた蛍光発光団として知られている。固相ヌクレオチド合成への使用に好適なブロック化インドカルボシアニンβシアノエチルN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト合成は、米国特許第5,556,959号および第5,808,044号に記載されている。
【0011】
本発明の第2の態様は、所定の遺伝子変化をコードする一本鎖オリゴヌクレオチド、および標的細胞の表面にある受容体に対するリガンドを含む高分子担体を含む組成物に関する。ポリ-L−リジン、アシアロ糖タンパク質受容体に対するリガンド、および21〜24ヌクレオチドのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを含む組成物は、国際特許出願公開番号WO93/04701に記載されている。
【0012】
本発明の第3の態様は、3'-3'結合ヌクレオチドの結合によるオリゴデオキシヌクレオチドの修飾に関する。米国特許第5,750,669号は、かかる修飾オリゴデオキシヌクレオチドを教示している。
【0013】
本明細書中の第2節またはいずれかの節におけるあらゆる参照の引用または特定は、かかる参照が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈するべきではない。
【0014】
3.発明の概要
本発明は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドが、特に、適切に修飾されているか、または適切な高分子担体と共に組成物中に含まれる場合、細胞内の標的遺伝子における所定の遺伝子変化を作製するのに先行技術(即ち、Kmiec型変異ベクター)と同等またはそれ以上に効果的であり得るという予想外の発見に基づいている。本発明に適切な一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドは、以後、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド変異ベクターまたはSSOMVと呼ぶ。
【0015】
1実施形態では、本発明は動物(例えば、哺乳動物)の細胞の染色体内の遺伝子に変化をもたらすための、遺伝子変化をコードするオリゴデオキシヌクレオチドおよび高分子担体からなる組成物を提供する。該担体は、ポリカチオン、水溶性コア脂質小胞または脂質ナノスフェアのいずれかであってよい。in vivoでの使用に好適なさらなる実施形態では、該担体には、クラスリン被覆小孔受容体(例えば、アシアロ糖タンパク質受容体、葉酸受容体、またはトランスフェリン受容体など)に対するリガンドなどの、細胞内に移行する細胞表面受容体に結合するリガンドがさらに含まれる。好ましい実施形態では、オリゴデオキシヌクレオチドは、3'-3'結合シトシンヌクレオチドおよび5'結合インドカルボシアニン色素などの3'および5'ブロッキング置換基の結合により修飾される。他の実施形態では、この修飾は、ほぼ3'および/またはほぼ5'のヌクレオチド間ホスホジエステル結合をホスホロチオエートジエステル結合もしくはホスホルアミデート結合などの非加水分解性結合で置換することにより構成されてもよい。
【0016】
第2の態様では、本発明は所定の遺伝子変化をコードするオリゴデオキシヌクレオチドの3'末端および5'末端の修飾を提供する。本発明は、かかる修飾は遺伝子変化をもたらすオリゴデオキシヌクレオチドの効果を阻害しないという予想外の発見にさらに基づいている。かかる実施形態の一つは、3'-3'結合シトシンヌクレオチドと5'結合インドカルボシアニン色素との組合せである。このように修飾されると、オリゴデオキシヌクレオチドは、細菌細胞内に遺伝子変化をもたらすための用いる場合、対応する非修飾のオリゴデオキシヌクレオチドに比べて50倍を上回るほど効果的である。
【0017】
第3の態様では、本発明は、所定の遺伝子変化をコードするオリゴデオキシヌクレオチドを植物細胞の核に導入することにより、植物細胞内に所定の遺伝子変化を導入するための化合物および方法を提供する。
【0018】
好ましい実施形態では、オリゴデオキシヌクレオチドは、3'-3'結合シトシンヌクレオチドおよび5'結合インドカルボシアニン色素などの3'および5'ブロッキング置換基を結合させることにより修飾される。他の実施形態では、この修飾は、ほぼ3'および/またはほぼ5'のヌクレオチド間ホスホジエステル結合をホスホロチオエートジエステル結合もしくはホスホルアミデート結合などの非加水分解性結合で置換することからなる。あるいはまた、5'結合インドカルボシアニン色素およびほぼ3’のヌクレオチド間ホスホジエステル結合である非加水分解性結合を第3の態様にも用いることができる。
【0019】
本発明は、以下の詳細な説明および特定の実施形態の例示的な実施例を参照することによりさらに十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
4.発明の詳細な説明
SSOMVの配列は、従来の変異ベクター(mutational vector)と同じ原理に基づく。SSOMVの配列は、「変異誘発領域」と呼ばれる所望の遺伝子変化を含む領域により隔てられた、2つの標的配列に相同な領域を含む。変異誘発領域は、標的配列中の該相同領域を隔てる配列と同じ長さで且つ異なる配列を有することができる。このような変異誘発領域は、置換を引き起こす。あるいは、SSOMV中の該相同領域は互いに連続していてもよいが、標的遺伝子中の同じ配列を有する該領域は、1個、2個またはそれ以上のヌクレオチドにより隔てられていてもよい。このようなSSOMVは、SSOMVには無いヌクレオチドを標的遺伝子から欠失させる。また、標的遺伝子中の該相同領域と同じ配列は該標的遺伝子の中で隣接していてもよいが、SSOMVの配列中では1個、2個またはそれ以上のヌクレオチドにより隔てられていてもよい。このようなSSOMVは、標的遺伝子の配列において挿入を引き起こす。
【0021】
SSOMVのヌクレオチドは、その3'側末端および/または5'末端側のヌクレオチド間結合あるいはその2つの3'側末端および/または5'側末端のヌクレオチド間結合はホスホロチオエートまたはホスホロアミダイトであってもよいが、それ以外は非修飾ホスホジエステル結合によって結合されたデオキシリボヌクレオチドである。本明細書中で用いるヌクレオチド間結合という用語は、SSOMVのヌクレオチド間の結合であって、3'側末端ヌクレオチドまたは5'側末端ヌクレオチドとブロッキング置換基との間の結合を含まない(以下参照)。
【0022】
SSOMVの長さは、標的遺伝子が位置する細胞の種類に応じて相違する。標的遺伝子が動物細胞(例えば哺乳動物細胞または鳥類細胞等)の染色体内の遺伝子である場合、SSOMVは25〜65ヌクレオチド、好ましくは31〜59デオキシヌクレオチドおよび最も好ましくは34〜48デオキシヌクレオチドである。相同領域の全長は通常SSOMVよりも1、2または3ヌクレオチド短い。変異誘発ヌクレオチドは、SSOMV中の2箇所以上の位置に導入することができ、これにより、SSOMV中に3つ以上の相同領域ができる。相同領域が2つであれ3つ以上であれ、該相同領域の少なくとも2つの長さはそれぞれ8デオキシヌクレオチドとする。
【0023】
原核細胞の場合、SSOMVの長さは15〜41デオキシヌクレオチドである。原核生物に使用するオリゴデオキシヌクレオチドの好適な長さは、使用される3'保護基のタイプに応じて相違する。3'保護置換基が3'-3'結合デオキシシチジンである場合、該オリゴヌクレオチドは好ましくは約21〜28デオキシヌクレオチドであり、それ以外の場合は、最適な長さは25〜35デオキシヌクレオチドである。したがって、相同領域の長さは全長が少なくとも14デオキシヌクレオチドであり、かつ少なくとも2つの相同領域はそれぞれ少なくとも7デオキシヌクレオチド長を有する。
【0024】
植物細胞の場合、SSOMVの長さは21〜55デオキシヌクレオチドであり、したがって相同領域の長さは全長が少なくとも20デオキシヌクレオチドであり、かつ少なくとも2つの相同領域はそれぞれ少なくとも8デオキシヌクレオチド長を有する。
【0025】
上記の範囲内で、該オリゴデオキシヌクレオチドの最適な長さはGC含量によって決まり、GC含量が高くなれば最適オリゴデオキシヌクレオチドは短くなる。しかし、50%を超えるGC含量が好ましい。
【0026】
SSOMVは、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、魚類細胞または蠕形動物(線虫)細胞等のあらゆる種類の動物細胞と共に用いることができる。またSSOMVは、任意の種類の植物細胞において用いることもできる。さらにSSOMVは、グラム陽性細菌細胞またはグラム陰性細菌細胞等の任意の種類の細菌細胞と共に用いることができる。細菌の種類の例としては、サルモネラ菌、大腸菌、シュードモナス、Rostani等が挙げられる。その細胞が活発に複製するか否か、または標的遺伝子が転写活性を有するか否かは重要ではない。ただし、標的遺伝子が細菌中にある場合、その細菌がRecA+であることが重要である。従って、組換えDNA作業において一般的に使用される細菌株の大部分はRecA-であるため、一緒にクローニングされるプラスミドの遺伝子の不安定性を低減するためには、これらの細菌は本発明で使用するのに適していない。さらに、細菌細胞内において、標的遺伝子はプラスミド上または細菌人工染色体(BAC)上、ならびに細菌染色体上に位置していよい。
【0027】
SSOMVは、標的遺伝子のコード鎖または非コード鎖のいずれかに相補的となるよう設計することができる。所望の突然変異が1塩基の置換である場合、該変異誘発ヌクレオチドがピリミジンであることが好ましい。所望の機能的な結果を得るために、相補鎖中の標的とするヌクレオチドおよび変異誘発ヌクレオチドは両方ともピリミジンであることが好ましい。特に好適なのは、トランスバージョン変異をコードする(すなわちCまたはTの変異誘発ヌクレオチドがそれぞれ相補鎖中のCまたはTとミスマッチする)SSOMVである。
【0028】
該オリゴデオキシヌクレオチドに加えて、SSOMVは、リンカーを介して5'末端炭素に結合された5'ブロッキング置換基を含み得る。このリンカーの化学的性質は、その長さ(好ましくは少なくとも6原子長である)および該リンカーが柔軟でなければならないこと以外は重要ではない。
【0029】
哺乳動物、鳥類または植物細胞の5'側ブロッキング置換基の化学的性質は、分子量以外は重要ではなく、その分子量は、約1000ダルトン未満でなければならない。ビオチン、コレステロールもしくは他のステロイド等の種々の非毒性置換基または非インターカレート陽イオン蛍光色素を使用することができる。しかし、細菌系で使用する場合は、該ブロッキング置換基は、SSOMVの有効性に大きな影響を及ぼし、好ましくは、3,3,3',3'-テトラメチルN,N'-オキシアルキル置換インドカルボシアニンである。SSOMVを作製するための試薬として特に好適なのは、Amersham Pharmacia Biotech (Piscataway, NJ)によりCy3(商品名)およびCy5(商品名)として販売されている試薬であり、これらはオリゴヌクレオチド中に組み込まれるとそれぞれ 3,3,3',3'-テトラメチルN,N'-イソプロピル置換インドモノカルボシアニンおよびインドジカルボシアニン色素を生成するブロッキングされたホスホロアミダイトである。インドカルボシアニンは、N-オキシアルキル置換されると、5'末端ホスフェートを有するホスホジエステルによりオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端に共有結合され得る。色素とオリゴデオキシヌクレオチドとの間の色素リンカーの化学的性質は重要ではなく、合成上の便宜によって選択される。市販されているCy3ホスホロアミダイトを指示通りに使用する場合、得られる5'修飾は、ブロッキング置換基およびリンカーが一緒になって形成するN-ヒドロキシプロピル, N'-ホスファチジルプロピル3,3,3',3'-テトラメチルインドモノカルボシアニンからなる。
【0030】
他の実施形態において、イオンドカルボシアニン色素(例えばCy3ホスホロアミダイト等)は、オリゴデオキシヌクレオチドが合成された後にそのオリゴデオキシヌクレオチドに結合することができる。
【0031】
好適な実施形態において、インドカルボシアニン色素は、インドール環の3位および3'位でテトラ置換される。理論に制限されることなく、これらの置換は、色素がインターカレート色素となるのを防ぐ。上記の位置にある置換基の正体は重要ではない。
【0032】
SSOMVはさらに、3'ブロッキング置換基を有することができる。この3'ブロッキング置換基の化学的性質も、標的遺伝子が細菌細胞内以外の場所に存在する場合、非毒性であること、および分子量が約1000未満であることを除いては重要ではない。しかし、標的遺伝子が細菌細胞内に存在する場合、好適な3'ブロッキング置換基はいわゆる逆方向ヌクレオチド(inverted nucleotide)、すなわち非置換3'-3'ホスホジエステルにより結合されたヌクレオチドである(米国特許第5,750,669号に教示されている)。より好適な実施形態において、該逆方向ヌクレオチドはチミジンであるか、または最も好適なのはデオキシシチジンである。細菌細胞内で使用する場合、Cy3の5'側ブロッキング置換基と逆方向デオキシシチジンの3'ブロッキング置換基との組み合わせは、その2つの修飾がSSOMVの効力に対して相乗効果を示すため、特に好ましい。上記修飾がなされたSSOMVは、従来の固相ヌクレオチド合成により合成することができる。
【0033】
SSOMVは、Kmiec型変異ベクターを動物細胞および植物細胞内に導入するために用いられるのと同じ技法により、標的遺伝子を含む細胞内に導入することができる。細菌細胞の場合、SSOMVの好適な導入方法は、エレクトロポレーションによるものである。
【0034】
哺乳動物細胞および鳥類細胞等の動物細胞で使用する場合、細胞内への好適な送達方法は、保護高分子担体を用いるものである。リポフェクトアミン(Lipofectamine;商品名)やスーパーフェクト(Superfect;商品名)等の市販されているリポソーム性トランスフェクト試薬は、トランスフェクトしようとする核酸が静電気により該リポソームの露出表面に付着するように設計される。このような担体は、保護高分子担体ほど好ましいわけではない。好適な保護高分子担体は、国際特許出願公開番号第98/49350号および第WO99/40789号ならびにBandyopadhyayら, 1999、J. Biol. Chem. 274:10163に開示されており、これらの文献はそれぞれ本明細書中に参照として全て組み込むこととする。
【0035】
特に好適な高分子担体は、SSOMVを水性コアの中にトラップする、水性コアを有する脂質小胞またはリポソームである。このような小胞は、溶媒を含まない脂質膜を取り、SSOMVの水溶液を加えた後、ボルテックス、押し出しまたはミクロ濾過膜による濾過を行うことにより作製される。1つの好適な実施形態において、脂質成分は、ジオレオイルホスファチジルコリン/ジオレオイルホスファチジルセリン/ガラクトセレブロシドの混合物(1:1:0.16)である。他の担体としては、そのうち25kdの好適な種および脂質ナノスフェア(nanosphere)を有する、分子量が500ダルトン〜1.3Mdであるポリエチレンイミン等のポリカチオンが挙げられ、その中でSSOMVは親油性塩の形態で提供される。
【0036】
SSOMVを用いて哺乳動物および鳥類の細胞内に遺伝子変化を導入する場合、該高分子担体は細胞内移行される細胞表面受容体に対するリガンドをさらに含むことが好ましい。好適な受容体としては、クラスリン被覆小孔経路により細胞内移行される受容体が挙げられ、例えばアシアロ糖タンパク質受容体、上皮増殖因子およびトランスフェリン受容体等がある。また、カベオラ経路を介して細胞内移行される受容体(例えば葉酸受容体等)も好適である。ガラクトセレブロシドは、アシアロ糖タンパク質受容体に対するリガンドである。本明細書中で使用される細胞内移行が可能な受容体は、クラスリン被覆小孔経路またはカベオラ経路により細胞内移行される受容体である。
【0037】
従来技術の変異ベクターが用いられるあらゆる目的のために、SSOMVを用いることができる。具体的な用途としては、疾患を引き起こす遺伝子障害を復帰させることによる遺伝子疾患の治療が含まれる。このような疾患としては、例えば血友病、α1抗-トリプシン欠乏症、およびクリグラー-ナジャー症候群、ならびに国際特許出願公開番号WO98/49350号により教示される他の疾患が挙げられる。
【0038】
あるいは、SSOMVを用いて、国際特許出願公開番号WO99/07865号(本明細書中に参考として全て組み込まれる)に記載された目的で植物を改変することができる。植物におけるSSOMVの更なる用途は、除草剤耐性植物の作出であり、これにより、外来もしくは異種遺伝子を作物植物中に導入する必要性が回避される。特に興味深いのは、除草剤グリホサート(ROUNDUP:登録商標)に対する耐性である。グリホサート耐性を付与する変異の正体は、国際特許出願公開番号WO99/25853およびWO97/04103に見られる。
【0039】
あるいは、SSOMVを用いて細菌を改変することができる。SSOMVを細菌の遺伝子操作に用いることは、抗生物質製造の分野およびワクチン製造のための特異的に弱毒化された細菌の構築において特に貴重である。上記用途の双方において、抗生物質耐性遺伝子が最終的に改変された細菌の中に残存しないことが重要である。
【0040】
さらに、SSOMVを細菌人工染色体(BAC)と組合わせて用いて、BAC中にクローニングされた任意の種に由来するターゲッティングされた遺伝子を改変することができる。標的とする遺伝子よりもはるかに大きな断片を組み込むことができる。クローニングされた標的とする遺伝子を含有するBACを細菌宿主内に入れ、所定の遺伝子変化を本発明にしたがって導入する。所定の遺伝子変化を有するBACサブクローンを同定し、該挿入体を除去して更に使用することができる。本発明により、PCR断片を作製し該断片を元の遺伝子中にまた挿入し戻す作業に伴う時間およびコストを省いて、所定の変化を達成することができる。
【実施例】
【0041】
5.実施例1:Gunnラットの治療
Gunnラットは、クリグラー‐ナジャー病において突然変異している遺伝子と同じ遺伝子である、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ遺伝子の中に突然変異を含む(Roy-Chowdhuryら, 1991, J. Biol. Chem. 266: 18294;Iyanangiら, 1989, J. Biol. Chem. 264: 21302)。Gunnラットにおいて、1206番目のヌクレオチドに突然変異があり、これはGの欠失を有する。CN3-35UPと呼ばれる35ヌクレオチドのSSOMV(アンチセンス鎖に対応)は、この突然変異を復帰させるために構築したものであり、以下の配列を有する:5'-ATCATCGGCAGTCATTTCCAGGACATTCAGGGTCA-3'(配列番号1)。CN3-35LOWと呼ばれる第2のSSOMV(センス鎖に対応)は、以下の配列を有する:5'-TGACCCTGAATGTCCTGGAAATGACTGCCGATGAT-3'(配列番号2)。変異誘発ヌクレオチドは下線で示してある。
【0042】
5'Cy3, 3'-3' dC修飾CN3-35UP(2匹)およびCN3-35LOWならびに非修飾CN3-35UPを、ジオレオイルホスファチジルコリン/ジオレオイルホスファチジルセリン/ガラクトセレブロシド(1:1:0.16)からなる脂質成分を有する水性コアを有する脂質小胞中に製剤化した。500μgのSSOMVを含む5%デキストロース(約2.0ml)を用いて脂質2mgを水和した後、該小胞を押し出しにより直径0.5μmとした。カプセル化効率は80%であった。陽性対照群を、同じ担体中に入れた等モル量のKmiec型MVで処理した(2匹)。ラット(体重250g)を連続5日間300μgのSSOMVまたは該担体で処理した。得られた血清ビリルビンレベルは以下の通りであった(mg/dl)。
【表1】

【0043】
このデータは、修飾SSOMVおよび非修飾SSOMVの両方ならびにセンス配列およびアンチセンス配列の両方が、少なくとも同等であり、およびより長期の時点においてはSSOMVがKmiec型変異ベクターより優れているようであることを示す。
【0044】
6.実施例2:ヒトUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ遺伝子の改変
以下の実施例は、高分子担体中の非修飾SSOMVを用いて、人工培地中の哺乳動物細胞内に特異的遺伝子変化を、Kmiec型DNA/2'OMeRNA変異ベクターで観察される比率の約3分の1の比率で、導入することができることを示す。これらのデータはさらに、ホスホロチオエート結合1つという最小限の修飾で、十分に匹敵する比率が得られることを示す。
【0045】
アマン人の群は、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ遺伝子の222番目ヌクレオチドのC→Aの置換により生じたクリグラー‐ナジャー病を有する。この突然変異は、TAC(チロシン)をTAA停止コドンに変えるものである。ヒト肝細胞癌細胞株HuH-7にこの疾患を引き起こす突然変異を導入するためにSSOMVを設計した。CNAM3-35UPと呼ばれる35ヌクレオチドのSSOMVは、該アンチセンス鎖に対応し、以下の配列を有する:5'-GGGTACGTCTTCAAGGTTTAAAATGCTCCGTCTCT-3'(配列番号3)。変異ヌクレオチドは下線で示してある。
【0046】
CNAM3-35UP、様々に修飾されたCNAM3-35UP、または等モル量の82ヌクレオチドのKmiec型変異ベクターを含む本発明の実施例1の担体(300μl)を、HuH-7細胞(106/cm2)に与えた。細胞を回収し、関連遺伝子断片をPCRで増幅し、クローニングし、Bandyopadhyay(前掲)の方法に従って対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションにより分析した。以下の転換率(conversion rate)が観察された。
【0047】
非修飾SSOMV 6%
5'Cy3 SSOMV 15%
3'-3'dC SSOMV 5%
5'Cy3, 3'-3' dC SSOMV 15%
5'ホスホロチオエート SSOMV 16%
3'ホスホロチオエート 12%
Kmiec型MV 14%
これらのデータは、高分子担体の存在下において修飾SSOMVがKmiec型変異ベクターと同じくらい有効であったこと、および非修飾SSOMVはその約3分の1の効力しかなかったことを示す。
【0048】
7.実施例3:BACにおけるカナマイシン耐性の転換
以下の実施例は、細菌細胞内において、修飾SSOMVがKmiec DNA/2'OMeRNA変異ベクターよりも効率的であることを示す。
【0049】
インフレームATG停止コドンの挿入によってカナマイシン耐性遺伝子は不活化された。カナマイシン耐性は、第3のヌクレオチドをCに変える(すなわち第3のヌクレオチドにトランスバージョンを行う)ことにより回復する。
【0050】
カナマイシン耐性の回復のためのセンス鎖に対応する41 ntのSSOMVの配列は、以下の通りである:5'-GTGGAGAGGCTATTCGGCTACGACTGGGCACAACAGACAAT-3'(配列番号4)。変異ヌクレオチドは下線で示してある。
【0051】
pBACKansを作製するために、BamHIリンカーをpKansの唯一のSmaI部位に挿入し、得られた1.3kbのBamHI-HindIII断片(突然変異カナマイシン遺伝子を含む)を、BACクローニングベクターpBeloBAC11(Genome Systems, Inc., St. Louis, MO)のBamHI/HindIII部位に挿入した。大腸菌株MC1061およびDH10BをpBACKansで形質転換し、LBクロラムフェニコールプレートで選択し、電気的コンピテント(electrocompetent)にした。
【0052】
40μlの電気的コンピテント細胞に5〜10μgのSSOMVをエレクトロポレーションにより導入した。使用した条件は以下の通りである:25kV/cm, 200ohms, 25マイクロファラド。エレクトロポレーションの直後に、1mLのSOCを細胞に加え、培養物を37℃にて振蕩しながら1時間培養した。4mLのLB+クロラムフェニコール(最終濃度12.5μg/mL)を加え、培養物を更に2時間37℃にて振蕩しながら培養した。培養物を適度に希釈したものを、生存率の評価のためにL B-クロラムフェニコールプレートにプレーティングし、そして、転換率評価のためにLB-カナマイシンプレートにプレーティングした。転換頻度は、1mLあたりのカナマイシン耐性コロニーの数を1mLあたりのクロラムフェニコール耐性コロニーの数で割って算出した。
【0053】
5'Cy3, 3'-3'dC修飾25ヌクレオチドSSOMVで観察された転換率は、100個の生存細菌あたり約1個の転換に相当した。
【0054】
相対転換率は以下の通りである:
68 nt Kmiec MV w/2'OMe RNAリンカー 0.04
68 nt Kmiec MV w/DNAリンカー 0.004
41 nt SSOMV w/3',5'ホスホチオエート 0.4
35 nt SSOMV w/3',5'ホスホチオエート 4.0
29 nt SSOMV w/3',5'ホスホチオエート 0.9
25 nt SSOMV w/3',5'ホスホチオエート 1.0
41 nt SSOMV w/3'-3'dC,5'Cy3 2.0
35 nt SSOMV w/3'-3'dC,5'Cy3 2.9
35 nt SSOMV w/3'-3'dC 2.5
35 nt SSOMV w/5'Cy3 2.5
29 nt SSOMV w/3'-3'dC,5'Cy3 4.2
25 nt SSOMV w/3'-3'dC,5'Cy3 42.0
25 nt SSOMV w/3'-3'dC 1.3
25 nt SSOMV w/5'Cy3 1.8
25 nt SSOMV w/3'ホスホチオエート,5'Cy3 8.4
35 nt SSOMV w/3'ホスホチオエート,5'Cy3 10.2
これらのデータは、最適SSOMVの転換率がKmiec型変異ベクターの転換率に比べて103〜104倍大きかったことを示す。
【0055】
8.実施例4:哺乳動物細胞-ハイグロマイシン耐性における保護担体を用いないSSOMVの使用
この実施例は、保護高分子担体の不在下で修飾SSOMVを用いた哺乳動物細胞の改変を示す。修飾SSOMVは、Kmiec型変異ベクターよりも15〜30倍の高率で遺伝子改変を導入することができた。この実施例は実施例3と同じ遺伝子を用いている。ただしこの遺伝子はHuH-7細胞株中で発現させる。
【0056】
IRES含有ベクター(pIRESKan-)中に安定に組み込まれた突然変異カナマイシン遺伝子のコピーを含むHuH7細胞のクローンを、ハイグロマイシン選択下で作製した。組み込まれた構築物からの発現率を高レベルに維持するために、100mg/mlハイグロマイシンを含むDMEM高グルコース/10% FBS中で細胞を培養した。トランスフェクションの24時間前に細胞を100mmディッシュの中に1.0×106個の密度で接種した。トランスフェクションの2時間前に、増殖培地を10mlのOpti-MEM(商品名)に取り替えた。40μgのオリゴヌクレオチドおよび40ml(80μg)のリポフェクトアミン(Lipofectamine:商品名)を、200mlのOpti-MEM pH8.5の入った別々の試験管中で希釈した。次にリポフェクトアミンを該オリゴヌクレオチドに加え、ピペットで混合し、室温にて30分間インキュベートした後、3.6mlのOpti-MEM pH8.5を加えた。培地を細胞から吸引除去し、4mlのトランスフェクション混合物と取り替える。細胞を37℃にて2時間インキュベートした後、トランスフェクション混合物を標準増殖培地と取り替える。トランスフェクションの2日後に、450mg/ml G418を含む10mlの培地を入れた2つの100mmディッシュに細胞を分注する。10日間G418含有培地を毎日取り替えた後、顕微鏡でコロニーが見えるようになる(トランスフェクションの16〜18日後)までは1週間に2回取り替える。トランスフェクションの約21日後にクローンを回収し、分子的分析のために増殖させる。
【0057】
バックグラウンドのハイグロマイシン耐性の発生率は106個あたり約1個である。Kmiec型変異ベクターを用いた場合、耐性コロニーの数は増加しなかった。5つのコロニーのうち1つを配列決定したところ、この特異的突然変異が起こっていた。他の4つのコロニーにおいて突然変異は特定されなかった。41ヌクレオチドSSOMV w/3'-3' dC, 5'Cy3を用いた場合、ハイグロマイシン耐性コロニーの発生率は15〜30倍増加した(すなわち105個あたり約3個)。これらのコロニーの配列決定により、これらのコロニーの100%〜80%が正しい遺伝子変化を有していたことが分かった。w/3'-3' dC, 5'Cy3またはw/3'ホスホロチオエート5'Cy3またはw/2つのホスホロチオエート結合(それぞれ3'側および5'側末端)を有する35nt SSOMVを用いた実験はそれぞれ、修飾41ヌクレオチドSSOMVの約半分のハイグロマイシン耐性の発生率を示した。
【0058】
9.実施例5:哺乳動物細胞-チロシナーゼ中における保護担体を用いないSSOMVの使用
この実施例は、哺乳動物細胞系において、保護担体を用いない非修飾SSOMVが5'Cy3/3'-3'dC修飾SSOMVおよびKmiec型DNA/2'OMe RNA変異ベクターの両方よりも優れていることを示す。
【0059】
これらの実験は、チロシナーゼ遺伝子の82番目のコドンがCからGに突然変異(この変異はインフレームの停止を作製する)しているネズミメラノサイト細胞株Melan-cを用いる(Bennettら, 1989, Development 105: 379)。このコード配列に対応する35ヌクレオチドSSOMVを設計した。このSSOMVは以下の配列を有する:5'-CCCCAAATCCAAACTTACAGTTTCCGCAGTTGAAA-3'(配列番号5)。変異誘発ヌクレオチドは下線で示してある。
【0060】
10%ウシ胎児血清、100nM ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)および0.1mM β-メルカプトエタノール(Gibco, Bethesda, MD)を含むRPMI培地中で、Melan-c細胞を培養した。トランスフェクションの2日前に、6枚の6ウェルプレートに0.5〜1.5×105細胞/ウェルの密度で細胞を接種し、トランスフェクションの24時間前に新しい培地を加えた。5〜10μg(220〜440nM)のオリゴヌクレオチドを、0.1mlのTE(10mM TRIS pH7.5, 1mM EDTA)中の6〜9μgのスーパーフェクチン(Suprfectin:商品名)中で室温にて30分間インキュベートした。10%血清および100nM PMAを含むDMEM高グルコース増殖培地(0.9ml)を含む細胞にトランスフェクション混合物を加えた。6〜18時間後に、リン酸緩衝食塩水で細胞を洗浄し、2mlのDMEM培地を加えた。顕微鏡で、細胞の色素沈着の変化についてモニターした。トランスフェクションの5〜8日後に色素沈着した細胞または細胞クラスタの数を計数することにより、転換発生数を測定した。
【0061】
105細胞あたりのアルビノから野生型(色素沈着した細胞)への転換率は以下の通りである。
【0062】
Kmiec型MV 1
非修飾SSOMV 5
SSOMV w/3',5'ホスホロチオエート 6
SSOMV w/3'-3'dC 2
SSOMV w/5'Cy3 3
SSOMV w/3'-3'dC, 5'Cy3 1
10.実施例6:植物中の修飾SSOMVの使用
この実施例は、シロイヌナズナArabodopsis thalianaのアセトヒドロキシ酸シンターゼ(アセトール酸シンターゼ(acetolatate synthase)としても知られている)の653位に変異(Ser→Asn)を導入するためのSSOMVの使用に関する。この変異は、AGTコドンのAATコドンへの変換を必要とし、イミダゾリン除草剤およびスルホニル尿素除草剤に対する耐性を導入する。
【0063】
3'-3'dCおよび5'Cy3修飾を有する25ヌクレオチドSSOMVおよび35ヌクレオチドSSOMVを合成した。これらはそれぞれ以下の配列を有していた:5'-CGATCCCGAATGGTGGCACTTT-3'(配列番号6);および5'-GTTGCCGATCCCGAATGGTGGCACTTTCAACG-3'(配列番号7)。変異誘発ヌクレオチドは下線で示してある。
【0064】
プレートあたり106個のばらばらのA. thaliana細胞集団を調製し、SSOMVまたは同じ配列を有するKmiec型MVの遺伝子銃による導入に供した。プラスミドを用いた対照プレートは、遺伝子銃による系の効率が、接種した細胞200個あたり約1個に送達されたことを示した。2ヶ月後に遺伝子銃により処理した細胞集団の各々に対し10μM Imazaquin(商品名)を用いて選択を行ったところ、変異ベクターが首尾良く導入された細胞103個あたり約1個のImazaquin耐性のバックグラウンド修正率を示した。
【0065】
11.実施例7:葉酸コンジュゲートPEIの調製
この実施例は、本発明で高分子担体として使用するのに適した葉酸コンジュゲートPEIの調製について記載する。
【0066】
リン酸ナトリウム緩衝液(1.5mL、133mM、pH4.5)中の葉酸(4.4mg、10μモル)を200μLのピリジンおよび1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸(EDC、15.5mg、98μモル)で処理し、室温にて1時間インキュベートした。活性化した葉酸溶液(1.7mL)をポリエチレンイミン(25kDa、24.55mg/mL;1.02mL)の水溶液に加え、室温にて3日間ゆっくり攪拌しながらインキュベートした。コンジュゲートしたポリエチレンイミンを、12kDa 分子量カットオフ膜を用いて水に対して透析して精製した。生成物は、ニンヒドリンアッセイによりアミンに対し陽性であり、かつ、紫外線吸光度により葉酸に対して陽性であった(259、289および368nmで最大)。
【0067】
結合は1000アミンあたり約1〜2葉酸成分であり、これは、PEI分子1つあたり1〜2個の葉酸に相当する。
【0068】
本発明の範囲は、本明細書中に記載された特定の実施形態によって限定されない。実際に、上記記述および添付した図面から、本明細書中に記載したもの以外にも、本発明の様々な改良が当業者には自明である。このような改良は特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0069】
様々な文献が本明細書に引用されており、これらの開示内容は、本明細書中に参考として全て組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物細胞の標的とする染色体内の遺伝子の中に所定の遺伝子変化をもたらすための組成物であって:
(a) 3'末端ヌクレオチドと5'末端ヌクレオチドとを有し、25個以上65個以下のデオキシヌクレオチドを有する一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドであって、それぞれ少なくとも8個のデオキシヌクレオチドからなる少なくとも2つの領域を含む配列を有しており、該2つの領域は、それぞれ標的とする染色体内の遺伝子の2つの領域と同一であり、これら2つの領域は、標的とする染色体内の遺伝子の配列内もしくはオリゴデオキシヌクレオチドの配列内、またはその両方において、少なくとも1個のヌクレオチドで隔てられており、該2つの領域を合計すると少なくとも24ヌクレオチド長である、上記一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド;ならびに
(b) 以下の
(i) 水性コア内に上記一本鎖オリゴヌクレオチドを含んでいる水性コアを有する脂質小胞、
(ii) 一本鎖オリゴヌクレオチドの親油性の塩を含んでいる脂質ナノスフェア、および
(iii) オリゴ核酸塩基と塩を形成する、平均分子量が500ダルトン〜1.3Mdであるポリカチオン、
からなる群より選択される高分子担体;
を含む、上記組成物。
【請求項2】
一本鎖オリゴヌクレオチドが31個以上59個以下のデオキシヌクレオチドからなる長さを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
標的とする遺伝子の中に所定の遺伝子変化を含む動物細胞を取得する方法であって、
(a) 培養培地に入った動物細胞の集団を用意し;
(b) 該培養培地に請求項2に記載の組成物を添加し;そして
(c) 該集団内の所定の遺伝子変化を有する細胞を特定すること;
を含む、上記方法。
【請求項4】
同定された細胞を単離することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
高分子担体が、その表面に接着した、動物細胞の細胞内移行可能な受容体に対するリガンドをさらに含んでいる、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
対象とする哺乳動物の組織内に所定の遺伝子変化をもたらす方法であって、
(a) 薬学的に許容される担体中の請求項5記載の組成物を対象の哺乳動物に投与し;そして
(b) 対象の哺乳動物の組織の細胞内における所定の遺伝子変化の存在を検出すること;
を含む、上記方法。
【請求項7】
対象の哺乳動物が、遺伝子障害を有するヒトであり、該遺伝子障害は所定の遺伝子変化によって復帰するものであり、該遺伝子障害の影響を回復させるのに有効な量の上記組成物を投与することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
組織が肝臓である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
受容体が、アシアロ糖タンパク質受容体、トランスフェリン受容体および上皮増殖因子受容体からなる群より選択されたものである、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
受容体が葉酸受容体である、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
5'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
5'末端ヌクレオチドの5'水酸基が5'ブロッキング置換基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
5'ブロッキング置換基が、N'-ヒドロキシアルキル置換3,3,3',3'-テトラ置換インドカルボシアニン色素であり、リンカーを介して5'水酸基に結合している、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
インドカルボシアニン色素およびリンカーが一緒になって、N-ヒドロキシプロピル, N'-ホスファチジルプロピル3,3,3',3'-テトラメチルインドモノカルボシアニンである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
3'末端ヌクレオチドに結合しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
3'末端ヌクレオチドの3'水酸基が3'ブロッキング置換基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
3'ブロッキング置換基が、3'末端ヌクレオチドの3'水酸基に3'-3'結合しているブロッキングヌクレオチドである、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
動物細胞の標的とする染色体内の遺伝子の中に所定の遺伝子変化をもたらすための化合物であって、3'末端ヌクレオチドと5'末端ヌクレオチドとを有し、25個以上65個以下のデオキシヌクレオチドを有する一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドを含んでおり、該一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドは、それぞれ少なくとも8個のデオキシヌクレオチドからなる少なくとも2つの領域を含む配列を有しており、該2つの領域は、それぞれ標的とする染色体内の遺伝子の2つの領域と同一であり、これら2つの領域は、標的とする染色体内の遺伝子の配列内もしくはオリゴデオキシヌクレオチドの配列内、またはその両方において、少なくとも1個のヌクレオチドで隔てられており、該2つの領域を合計すると少なくとも24ヌクレオチド長である、上記化合物。
【請求項20】
標的遺伝子中に所定の遺伝子変化を含む動物細胞を取得する方法であって、
(a) 培養培地に入った動物細胞の集団を用意し;
(b) 該培養培地に請求項19記載の化合物を添加し;そして
(c) 該集団内の所定の遺伝子変化を有する細胞を特定すること、
を含む、上記方法。
【請求項21】
3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項19記載の化合物。
【請求項22】
5'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
標的とする遺伝子の中に所定の遺伝子変化を含む動物細胞を取得する方法であって:
(a) 培養培地に入った動物細胞の集団を用意し;
(b) 該培養培地に請求項22記載の組成物を添加し;そして
(c) 該集団内の所定の遺伝子変化を有する細胞を特定すること、
を含む、上記方法。
【請求項24】
N'-ヒドロキシアルキル置換3,3,3',3'-テトラ置換インドカルボシアニン色素が、リンカーを介して5'末端ヌクレオチドの5'水酸基に結合している、請求項21記載の化合物。
【請求項25】
5'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項19記載の化合物。
【請求項26】
3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合であるか、デオキシシチジンもしくはチミジンヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドの3'水酸基に3'-3'結合しているか、またはこの両方である、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
細菌細胞内の標的とする遺伝子の中に所定の遺伝子変化をもたらす化合物であって:
(a) 3'末端ヌクレオチドと5'末端ヌクレオチドとを有し、15個以上41個以下のデオキシヌクレオチドを有する一本鎖オリゴヌクレオチドであって、それぞれ少なくとも7個のデオキシヌクレオチドからなる少なくとも2つの領域を含む配列を有しており、該2つの領域は、それぞれ標的とする遺伝子の2つの領域と同一であり、これら2つの領域は、標的とする遺伝子の配列内もしくは上記一本鎖オリゴヌクレオチドの配列内、またはその両方において、少なくとも1個のヌクレオチドで隔てられており、該2つの領域を合計すると少なくとも14ヌクレオチド長である、上記一本鎖オリゴヌクレオチド;
(b) 5'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホルチオエート結合であるか、またはN'-ヒドロキシアルキル置換3,3,3',3'-テトラ置換インドカルボシアニン色素がリンカーを介して5'末端ヌクレオチドの5'水酸基に結合している5'修飾;および
(C) 3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合であるか、デオキシシチジンもしくはチミジンヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドの3'水酸基に3'-3'結合しているか、またはこの両方である3'修飾;
を含む、上記化合物。
【請求項28】
5'修飾がN-ヒドロキシプロピル,N'-ホスファチジルプロピル3,3,3',3'-テトラメチルインドモノカルボシアニンを含むものである、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
3'修飾が3'-3'結合デオキシシチジンからなるものである、請求項27記載の化合物。
【請求項30】
3'修飾が3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間ホスホロチオエート結合からなるものである、請求項27記載の化合物。
【請求項31】
植物細胞内の標的とする遺伝子の中に所定の遺伝子変化をもたらす化合物であって、3'末端ヌクレオチドと5'末端ヌクレオチドとを有し、21個以上55個以下のデオキシヌクレオチドを有する一本鎖オリゴヌクレオチドを含み、該一本鎖オリゴヌクレオチドは、それぞれ少なくとも8個のヌクレオチドからなる少なくとも2つの領域を含む配列を有しており、該2つの領域は、それぞれ標的とする遺伝子の2つの領域と同一であり、これら2つの領域は、標的とする遺伝子の配列内もしくは一本鎖オリゴヌクレオチドの配列内、またはその両方において、少なくとも1個のヌクレオチドで隔てられており、該2つの領域を合計すると少なくとも20ヌクレオチド長である、上記化合物。
【請求項32】
標的とする遺伝子の中に所定の遺伝子変化を含む植物細胞を取得する方法であって:
(a) 植物細胞の集団に請求項31記載の化合物を導入し;そして
(b) 該集団内の所定の遺伝子変化を有する細胞を特定すること、
を含む、上記方法。
【請求項33】
特定された細胞を単離することをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
5'末端ヌクレオチドの5'水酸基が5'ブロッキング置換基に連結している、請求項31記載の化合物。
【請求項35】
3'末端ヌクレオチドの3'水酸基が3'ブロッキング置換基に連結している、請求項34記載の化合物。
【請求項36】
請求項35記載の化合物であって、
(a) 5'ブロッキング置換基が、N'-ヒドロキシアルキル置換3,3,3',3'-テトラ置換インドカルボシアニン色素であり、リンカーを介して5'末端ヌクレオチドの5'水酸基に結合しており;そして
(b) 3'ブロッキング置換基が3'末端ヌクレオチドの3'水酸基に3'-3'結合しているブロッキングヌクレオチドである;
上記化合物。
【請求項37】
一本鎖オリゴヌクレオチドが、25ヌクレオチド以上35ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
ブロッキングヌクレオチドがデオキシシチジンまたはチミジンである、請求項36記載の組成物。
【請求項39】
インドカルボシアニン色素およびリンカーが一緒になって、N-ヒドロキシプロピル,N'-ホスファチジルプロピル3,3,3',3'-テトラメチルインドモノカルボシアニンである、請求項36記載の組成物。
【請求項40】
3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項31記載の化合物。
【請求項41】
5'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項31記載の化合物。
【請求項42】
請求項31記載の化合物であって、
(a) 5'末端ヌクレオチドの5'水酸基が、5'ブロッキング置換基に結合しており;そして
(b) 3'末端ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である;
上記化合物。
【請求項43】
5'ブロッキング置換基が、N'-ヒドロキシアルキル置換3,3,3',3'-テトラ置換インドカルボシアニン色素であり、リンカーを介して5'末端ヌクレオチドの5'水酸基に結合している、請求項42記載の化合物。
【請求項44】
動物細胞が、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、蠕形動物細胞および魚類細胞からなる群より選択される、請求項1または3記載の組成物。
【請求項45】
動物細胞が、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、蠕形動物細胞および魚類細胞からなる群より選択される、請求項1または3記載の化合物。
【請求項46】
動物細胞が、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、蠕形動物細胞および魚類細胞からなる群より選択される、請求項20または23記載の方法。
【請求項47】
標的とする遺伝子が細菌の人工染色体上にある、請求項27記載の化合物。

【公開番号】特開2012−184246(P2012−184246A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108528(P2012−108528)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2001−520151(P2001−520151)の分割
【原出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(512122182)チーブス インターナショナル,エル.ピー. (1)
【Fターム(参考)】