説明

一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース

【課題】一般試料または生体細胞の設置のため電子顕微鏡と合わせて利用し観測を行うことが可能な電子顕微鏡用試料ケースを提供する。
【解決手段】内部に収容室16を有する殻体11を含み、該殻体11の頂底部にそれぞれ少なくとも一つの収容室16と連通する観察孔17を有し、且つ互いに同軸で相対する殻体11上面の観察孔17底端と、殻体11下面の観察17孔頂端との距離が50μmよりも小さい所に位置する。また、極薄の厚さを有するため、たとえ液体試料を注入しても電子顕微鏡の電子ビームが透過できないということはなく、観測のために提供することが可能であり、一般試料または生体細胞の設置のため、電子顕微鏡と合わせて利用し観測を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子顕微鏡に関し、特に一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において電子顕微鏡を操作し物体を観察する場合、通常、電子顕微鏡内の試料ケースの真空環境は制限を受け、そのため検鏡用の物体を必ず非揮発性物質とし、ようやく観察を行うことができた。例えば、真空試料室に放置した後、大量の気体を発生する液態または気態の流体物質は、電子ビームが物体を透過できず回折を行うことができない、もしくは結像の実験を行うことができない状況を生み出すだけでなく、顕微鏡の電子銃など高真空部分の真空度の低下または汚染をもたらし、さらには電子顕微鏡を損壊させる。
【0003】
上記より、真空環境の制限を受ける昔ながらの電子顕微鏡は、試料室内で固態物質の組織構造の観察、あるいは脱水後の生体細胞(原核細胞prokaryoteの細菌、真核細胞eukaryoteの動植物等)、病毒などの生物組織を観察することが出来るのみで、流体試料または流体環境中で生理的効能を有する細胞や病毒などを観察することは出来なかった。また、大きな気圧の流体環境下において、細胞核内DNAからRNAへの情報転写(transcription)、RNA情報から蛋白質(protein)合成への翻訳(translation)、細胞質内微小管(microtubules)などの生化学反応過程、および神経筋接合部(neuromuscular junction)の伝達(physiology of transduction)機能等生命現象の過程は、当然のことながら観察することが出来なかった。
【0004】
ゆえに、生体細胞または生体組織内部に置くことが可能であり、さらに電子顕微鏡内に設置し、観察を行うことができる装置が必要とされている。目下のところ一部の人々により電子顕微鏡内で観測できる環境が提供されており、Gai P. L.が率いる研究グループが2002年に示した成果は電子顕微鏡で気相・液相・固相化学反応実験(Gai P. L., Microscopy & Microanalysis 8, 21, 2002)を観察できるというものであったが、その欠点は電子ビームを透過させることができない、あるいは顕微鏡の解析度の大幅な低下を避けるため、液体・気体試料層厚を効果的に制御することができない点にあった。同時に、試料室より散逸した高圧蒸気、または外界から気圧室に注入された高圧気体は電子顕微鏡の試料室中の上・下極ポールピース(pole pieces)間の全空間に充満し、電子が気体分子との過分な衝突により多重散乱反応を生み出す深刻な状態へと変化し、さらには電子ビームが順調に結像または電子回折実験を行うことができなくなる状況を引き起こすことになった。
【0005】
このほか、Gai P. L.の設計は顕微鏡の主要部分を分解し、それから顕微鏡の各部品の組立ができるというものであったため、量産の可能性が高いものではなかった。
これを鑑み、本発明者は試作と実験を繰り返し、ついに前述の問題を解決でき、電子顕微鏡で観測を行う際に合わせて利用し、一般試料と生体細胞の設置に用いることが可能な本発明の試料ケースを発明するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主要な目的は、一般試料/生体細胞の観測を行うための電子顕微鏡用試料ケースを提供することであり、一般試料または生体細胞の設置のため電子顕微鏡と合わせて利用し観測を行うことが可能な電子顕微鏡用試料ケースを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、一般試料/生体細胞の観測を行うための電子顕微鏡用試料ケースを提供することである。該電子顕微鏡用試料ケースは極薄の厚さを有しており、たとえ内部に液体を注入しても電子顕微鏡の電子ビームが透過できないということはなく、観測のために提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本発明が提供する一般試料/生体細胞の電子顕微鏡用試料ケースは、内部に収容室を有する殻体を含み、該殻体の頂底部にそれぞれ少なくとも一つの前記収容室と連通する観察孔を有し、且つ互いに同軸で相対する殻体上面の観察孔底端と、殻体下面の観察孔頂端との距離が50μmよりも小さい所に位置する。また、前記試料ケースは極薄の厚さを有するため、たとえ液体試料を注入しても電子顕微鏡の電子ビームが透過できないということはなく、観測のために提供することが可能であり、一般試料または生体細胞の設置のため、電子顕微鏡と合わせて利用し観測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の構造および特徴を詳細に説明するため、以下に5つのより好ましい実施例を挙げ、図面と共に説明する。
図1は本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの斜視図である。
図2は本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
図3は本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの動作概略図である。
【0009】
図4は本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースのもう一つの動作概略図である。
図5(A)、(B)、及び(C)は本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの観察孔の断面の模式図である。
図6は本発明の第二実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
【0010】
図7は本発明の第三実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
図8は本発明の第四実施例による電子顕微鏡用試料ケースの斜視図である。
図9は本発明の第五実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
図10は本発明の第五実施例による電子顕微鏡用試料ケースの動作概略図である。
図1及び図2は、本発明の第一実施例による一般試料/生体細胞を観測するために提供される電子顕微鏡用試料ケース10を示し、主に以下のものを有する。
【0011】
一体成型または組み合わせて形成することが可能で、本実施例中では台座12と蓋体14の組み合わせによるものを例とする殻体11を有し、前記台座12と前記蓋体14との間は両側の各嵌め込み突起15により互いに接合される。殻体11の内部は収容室16を有し、殻体11の頂底面のそれぞれに少なくとも1つの前記収容室16と連通する観察孔17を有し、且つ互いに同軸で相対する。前記各観察孔17の孔径は5μm〜500μmの間に介在し、50μmを最適値とする。前記殻体11の頂面に位置する観察孔17の底端と、前記殻体11の底面に位置する観察孔17の頂端との距離は50μmより小さくなる。前記各観察孔17は前記収容室16に近い一端に比較的薄いリング板171を形成し、該リング板171は貫通孔172を有する。貫通孔172の孔径は前記観察孔17よりも小さく、各観察孔17の孔壁と前記リング板171の外表面および前記殻体11の外表面とには、例えば直径が数百μm以内の複数の柱状物(pillar)を製造するといった疎水または超疎水処理を施し、またその表面に疎水性自己組織化単分子膜(self-assembly monomolecular layer)を付着させ、超疎水効果の達成もしくは水に濡れることのない排水性の達成のため、その他従来の超疎水方法を用い、水滴の表面的接触角度(contact angle)が150度より大きくなるようにする。また、前記殻体11の内壁、前記リング板171の前記収容室16に近い方の端面、および貫通孔172の孔壁に親水処理を施し、前記殻体11内に水が保存されるようにする。上述の表面疎水処理を用いることにより、添加する過分な量の水は前記観察孔17の孔壁および前記リング板171外表面からの排斥を受け、観察孔17の孔壁とリング板171外壁面に残留することはない。本実施例中では、前記殻体11はマイクロリソグラフィ技術(microlithography)(この方法はイエロールーム内で行うフォトリソグラフィ、エッチング等を含む)により製造される。あるいは、レーザマイクロマシニング(laser micromachining)またはメカニカルマイクロマシニング(mechanical micromachining)等の製造技術を使用することも可能である。前記殻体11の片側には注入穴18を有する。
【0012】
前述の試料ケース10の使用時において、該試料ケース10内に液体91と生体細胞試料92を置く場合、該液体91と生体細胞92とを前記注入孔18より注入することが可能であり、または適量の液体91と生体細胞92とを先ず直接試料室16の台座12内に滴入し、その後蓋体14を閉じると、台座12と蓋体14とは接着剤(粘着剤)により接合される。前記試料ケース10は電子顕微鏡(図示せず)の観測ケース21の中に設置することができ、図3に示すように該観測ケース21は気体室22、および気体室22の上下方にそれぞれ位置する緩衝室24を有する。前記試料ケース10は前記気体室22内に設置され、気体室22の上下方にそれぞれ気体孔23を有し、前記観測ケース21の頂底端はそれぞれ外孔25を有し、外孔25、気体孔23、および前記観察孔17は同軸である。
【0013】
操作時において、前記気体室22に対し、例えば総圧が大きな気圧となる飽和水蒸気(または飽和されていない水蒸気)と、窒素、酸素、二酸化炭素、および不活性気体等特定気体との混合気体といった予め定められた圧力の蒸気を提供し、前記気体室22内の水蒸気は前記収容室16内の水の蒸発速度を抑制することができる。このほか、大きな気圧の特定気体を前記気体室22中に提供することが可能で、さらに、該特定気体の圧力と前記試料ケース10内の水溶液との圧力差を前記試料室16内の水溶液の臨界圧力(Keller S. et., Journal of Food Protection 66, 1260, 2003)と同等もしくは小さくなるように制御することができる。これより、前記収容室16内の液体溶液が前記観察孔17より流出することが避けられ、わずかな蒸気形態を以って緩慢に揮発し、前記緩衝室24内に進入することができる。該緩衝室24に対し排気を持続的に行うことにより、気体室22から散逸し、前記2つの緩衝室24に進入した蒸気と気体とは排気され、前記観測ケース21に散逸することなく、また、電子顕微鏡中に進入することはない。観測を行う時は電子顕微鏡の電子ビームを前記外孔25、前記気体孔23、および観察孔17に透過させ、前記試料ケース10内の試料に対し、観測を行うことが可能となる。
【0014】
図4が示すように、試料ケース10内に生体細胞試料92を設置し、さらに予め定められた圧力の水蒸気(例えば大きな気圧の飽和水蒸気)と特定気体の混合気体93(特定気体とは、窒素、酸素、二酸化炭素、不活性気体等である)とを注入した場合、前記試料ケース10は電子顕微鏡(図示せず)の別の観測ケース21’中に設置することが可能である。観測ケース21’内部の空間は試料ケース10を被覆し、且つ該観測ケース21’の頂底端はそれぞれ外孔25’を有し、外孔25’と前記観察孔17とは同軸である。また、前記各観察孔17の小口径により、前記試料ケース10内の気体または液体蒸気は緩慢に外部へ向かって前記観測ケース21’内部まで散逸し、試料ケース10内部の蒸気環境効果の保持を達成することが可能である。さらに外部に向かって散逸した微量の気体または液体蒸気は注入孔18を通じ、持続的に補充することができ、その上、前記観測ケース21’に対する内部排気により、蒸気と特定気体との混合気体93が外孔25’より観測ケース21’に散逸し、電子顕微鏡中に進入するのを避けることができる。
【0015】
本実施例の同軸の上下観察孔17の距離(50μmよりも小さい)は肝心であり、この距離により試料ケース10内の液体が厚くなりすぎないように保持することと、電子ビームの透過と結像を確保することとができる。さらに試料ケース10内では水蒸気または液体を維持することが可能で、生体細胞を設置し観測することができる。また、本実施例は生体細胞、細菌または病毒を観測することが可能であり、生命機能を備えていない細胞あるいはその他一般試料も、当然ながら観測することができる。
【0016】
前記各観察孔17の断面形状は前掲した実施例の形状に限られたものではなく、図5(A)が示す縦孔状の観察孔17’、さらに図5(B)が示す外側が大きく、内側が小さいすり鉢状の観察孔17’’、あるいは図5(C)が示している外側が大きく、徐々に小さくなっていく階段状の観察孔17’’’としてもよい。
図6を参照すると、本発明の第二実施例による一般試料/生体細胞の観測のための電子顕微鏡用試料ケース30は、主として概ね前掲の第一実施例と同一であるが、異なるのは以下の点である。
【0017】
試料ケース30の同軸上の2つの観察孔37において、観察孔37(例えば下方の観察孔37)内のリング板371の貫通孔372をさらに非結晶カーボン膜などの非結晶性薄膜374で密封する。薄膜374の厚さは約100〜50μmの間であるため、電子ビームが電子の多重散乱の問題を引き起こすことがない。また、試料ケース30が前掲の第一実施例に合わせて用いられた観測ケース21または21’に設置される場合、同様の条件に基づき、試料ケース30内に液体または気体を放置することができ、さらに同様の操作方法により操作することも可能である。
【0018】
図7を参照すると、本発明の第三実施例による一般試料/生体細胞の観測のための電子顕微鏡用試料ケース40は、主として概ね前掲の第一実施例と同一であるが、異なるのは以下の点である。
試料ケース40の同軸上の2つの観察孔47内のリング板471上にある貫通孔472は全て非結晶カーボン膜など非結晶性薄膜474で密封されている。薄膜474の厚さは100〜50μmの間であるため、電子ビームが電子多重散乱の問題を引き起こすことがない。操作時において、試料ケース40を直接電子顕微鏡(図示せず)に設置し観測することが可能で、前記薄膜474の設置により試料ケース40内の液体または気体を試料ケース40内に保持させることが可能である。また、試料ケース40を電子顕微鏡内の観測ケース中に設置することも可能である。観測ケースの気体室と緩衝室を利用し、減圧効果(第一実施例と同一のため、再述しない)を提供することと、薄膜474の両面の圧力差を下げることにより薄膜474の厚さを更に薄くし、電子ビームに対する影響を低減することとができる。
【0019】
図8で示すのは、本発明の第四実施例による一般試料/生体細胞の観測のための電子顕微鏡用試料ケース50であり、主として概ね前掲の第一実施例と同一であるが、異なるのは以下の点である。
試料ケース50の殻体51の頂底面は多数組の同軸の観察孔57を設置することができ、更に多くの観測位置を提供することが可能である。本実施例のその他操作方法は前掲の第一実施例と概ね同一であるため、再述しない。
【0020】
図9を参照すると、本発明の第五実施例による一般試料/生体細胞の観測のための電子顕微鏡用試料ケース60は、主として以下を有する。
マイクロリソグラフィ法により製造された殻体61は一体成型、または組み合わせにより形成することが可能で、該殻体内部は少なくとも1つの仕切り板611を有し、その内部を収容室66と少なくとも1つの厚さが極薄な気体室69とに隔てる。収容室66の頂底面はそれぞれ少なくとも1つの観察孔67を有し、前記仕切り板611に設けられる。前記各観察孔67は前記収容室66に連通し、且つ互いに同軸で相対する。収容室66の頂面に位置する前記観察孔67の底端と、収容室66の底面に位置する前記観察孔67の頂端との距離は50μmよりも小さくなる。前記気体室69は前記観察孔67を被覆し、且つ前記気体室69の頂底面はそれぞれ少なくとも1つの気体穴691を有する。気体孔691と観察孔67とは同軸である。該各気体孔691の気体室69に近い方の一端と、最も接近する観察孔67の気体室69に近い方の一端との間の距離は5000μm〜5μmの間に介在することができ、また、殻体61は前記収容室66の側に注入孔68を設け、前記気体室69の側に排気孔692を設ける。
【0021】
操作時において、試料ケース60を電子顕微鏡内の観測ケース71中に設置することが可能であり、さらに治具81を合わせて用い、観測を実施することができる。図10で示すように、観測ケース71内部の空間は試料ケース60を被覆し、且つ観測ケース71の頂底端はそれぞれ外孔75を有する。外穴75、前記気体孔691、および観察孔67は同軸であり、さらに前記治具により前記注気孔692を通じ、前記気体室69に対し、水蒸気または水蒸気と特定気体との混合気体を注入することができる。その他操作方式は概ね前掲の第一実施例と同一であるため、再述しない。
前記殻体61内の収容室66の頂底面の各観察孔67にある貫通孔は全て非結晶性薄膜で密封しており、薄膜の設置方式については前掲の第三実施例を参照のこととする。もしくは、下方(または上方)の各観察孔67の貫通孔上に非結晶性薄膜を設置することもまた可能であるが、その実施と操作方式は概ね前掲の本発明の実施例と同一であるため、再述しない。
【0022】
前述の本発明の実施例において、試料ケース内は生体細胞試料92(図4に示す)を置くために提供される。生体細胞試料92は試料ケース内の壁面(内側壁または内部の頂底面を含む)に固定されるが、固定方法はケース内壁上に右旋性のポリ‐D‐リシン(poly-D-lysine)系細胞固定剤を塗布するか、または細胞を図6および図7に示す観測孔上に設置した薄膜に固定する方法がある。これより、試料ケースは小型培養皿として成ることができ、分析しようとする細胞試料を直接この試料ケース内で培養することが可能である。また、注入孔18により液体培養液と検鏡用の流体物質を注入し、さらに流出孔(図示せず)を通じて流出し、培養液または前記検鏡用の流体物質が収容室16、66内で循環流動を行うようにする。図6で示す観察孔37が片側のみ薄膜374で密封されている状態と、図2で示す観察孔17が薄膜で密封されていない状態について言えば、注入孔18に対し、生体細胞92と培養液または検鏡用の液体試料91を注入する場合、操作上において、予め定められた圧力を提供された特定気体が観測ケースの気体室中で合わせて用いられ、さらに特定気体の圧力と収容室内の液体圧力との差が収容室内の液体溶液の臨界圧力(Keller S. et al., journal of Food Protection 66, 1260, 2003)と同等もしくは小さくなるように制御する。このように、注入する培養液、または分析しようとする液体試料を収容室内で循環流動させることにより、前記観測孔から流出することはない。このほか、収容室16、66内の液体試料91の分量と圧力を制御するため、注入孔18に対し、排水または注水を利用することが可能である。
【0023】
上記からわかるように、本発明の優れた点は以下である:
一、電子顕微鏡における観測に合わせて用いられ、一般試料または生体細胞を置くために提供される。また、前掲の各実施例において明らかにされている操作方法に基づき操作することができる。
二、本発明は流体試料の厚さを有効的に制御することが可能であり、内部に液体を注入
させ、液体の厚さが変らないよう維持することができる。このほか、マイクロリソグラフィ法を利用した試料ケースは、その内部に液体試料の収容室を含み、蒸気と気体を含む気体室の厚さは全て極薄であるため、電子ビームが多重散乱の問題を引き起こすことがなく、観測の解析度への影響も及ぼさない。
本実施例が明らかに示している部材は、例を挙げて説明するためだけのものであり、本発明案の範囲を制限するものではない。本発明案の範囲は特許請求の範囲を以って基準とするものとし、本発明より派生したその他の変化と転用は本案の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
【図3】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの動作概略図である。
【図4】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースのもう一つの動作概略図である。
【図5A】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの観察孔の断面の模式図である。
【図5B】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの観察孔の断面の模式図である。
【図5C】本発明の第一実施例による電子顕微鏡用試料ケースの観察孔の断面の模式図である。
【図6】本発明の第二実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
【図7】本発明の第三実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
【図8】本発明の第四実施例による電子顕微鏡用試料ケースの斜視図である。
【図9】本発明の第五実施例による電子顕微鏡用試料ケースの断面の模式図である。
【図10】本発明の第五実施例による電子顕微鏡用試料ケースの動作概略図である。
【符号の説明】
【0025】
10 試料ケース、11 殻体、12 台座、14 蓋体、15 嵌め込み突起、16 収容室、17、17’、17’’、17’’’ 観察孔、171 リング板、172 貫通孔、18 注入孔、21、21’ 観測ケース、22 気体室、23 気体孔、24 緩衝室、25、25’ 外孔、30 試料ケース、37 観察孔、371 リング板、372 貫通孔、374 薄膜、40 試料ケース、47 観察孔、471 リング板、472 貫通孔、474 薄膜、50 試料ケース、51 殻体、57 観察孔、60 試料ケース、61 殻体、611 仕切り板、66 収容室、67 観察孔、68 注入孔、69 気体室、691 気体孔、692 排気孔、71 観測ケース、75 外孔、81 治具、91 液体、92 生体細胞試料、93 混合気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケースにおいて、
内部に収容室を有し、その頂底面にそれぞれ少なくとも1つの収容室と連通し互いに同軸で相対する観察孔を備える殻体であって、該殻体の頂面に位置する観察孔の底端と、該殻体の底面に位置する観察孔の頂端との距離が50μmよりも小さいことを特徴とする一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項2】
前記各観察孔の孔径は5μm〜500μmの間に介在することを特徴とする請求項1に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項3】
前記殻体は台座及び蓋体より構成されることを特徴とする請求項2に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項4】
前記蓋体および前記台座の間は少なくとも1つの嵌め込み突起により互いに接合されることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項5】
前記少なくとも1つの観察孔は薄膜で密封されることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項6】
前記各観察孔は前記収容室に近い一端に比較的薄いリング板を形成し、
該リング板は貫通孔を有し、該貫通孔の孔径は前記観察孔よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項7】
前記リング板の前記収容室に近い端面および前記貫通孔の孔壁に親水処理を施していることを特徴とする請求項6に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項8】
前記各観察孔は縦孔状、外側が大きく内側が小さいすり鉢状、あるいは外側が大きく内側に向かって徐々に小さくなっていく階段状を呈することを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項9】
前記各観察孔の孔壁に疎水処理または超疎水処理を施していることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項10】
前記殻体の内壁に親水処理を施していることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項11】
前記殻体はマイクロリソグラフィ法、レーザマイクロマシニング、もしくはメカニカルマイクロマシニングによるものであることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項12】
前記殻体の片側に注入孔を設けることを特徴とする請求項3に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項13】
一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケースにおいて、
内部に少なくとも1つの仕切り板を有する殻体であって、
該仕切り板は殻体内部を収容室と少なくとも1つの気体室とに隔て、
前記収容室の頂底面にはそれぞれ少なくとも1つの観察孔が前記仕切り板に設けられ、前記各観察孔は前記収容室と連通し、且つ互いに同軸で相対し、前記収容室頂面に位置する前記観察孔底端と、前記収容室底面に位置する前記観察孔頂端との距離が50μmよりも小さく、
前記気体室は少なくとも前記観察孔を被覆し、前記気体室の頂底面はそれぞれ少なくとも1つの気体孔を有し、前記気体孔と前記観察孔とは同軸であることを特徴とする一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項14】
前記各気体孔は前記気体室に近い一端と、最も接近する観察孔の前記気体室に近い一端との間の距離が5000μm〜5μmの間に介在することを特徴とする請求項13に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。
【請求項15】
前記殻体は前記収容室の側に注入孔を設け、前記気体室の側に排気孔を設けることを特徴とする請求項13に記載の一般試料/生体細胞の観測のために提供される電子顕微鏡用試料ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−165270(P2007−165270A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−591(P2006−591)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505206853)
【Fターム(参考)】