説明

一軸偏心ねじポンプ

【課題】各部品単位での累積誤差によらず、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易に行なうことのできる一軸偏心ねじポンプを提供する。
【解決手段】この一軸偏心ねじポンプは、ステータ4が、ゴム製の一つのステータ内筒4aと、このステータ内筒4aの外側に嵌め込まれる円筒部4eおよび該円筒部4eの端部に設けられてステータ内筒4aの軸方向両端部に対向する端面部4dを有する金属製の二つのステータ外筒4b,4cとから構成され、各ステータ外筒4b,4cの端面部4dとステータ内筒4aの軸方向両端部4tとの対向面間を密封するように吸入側および吐出側のそれぞれに配設された円環状のステータパッキン12,14を備え、これらステータパッキン12,14は、吸込側と吐出側の両側から二つのステータ外筒4b,4cによって挟み込まれて介装されることで、ステータ4の軸方向を位置決めする構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原料、化学原料、下水汚泥などの粘性液を定量圧送する一軸偏心ねじポンプに係り、特に、この種の一軸偏心ねじポンプのステータ支承構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の一軸偏心ねじポンプとしては、雌ねじ状の内面をもつ固定されたステータに雄ねじ状のロータを内装し、そのロータを、自在継手を介して駆動軸に連結したものがある(例えば特許文献1の第1図参照)。この一軸偏心ねじポンプによれば、その駆動軸を回転させることにより、ステータの軸心に対してロータが回転しつつ偏心運動を行うことによって流体を吸入側から吐出側へ圧送することができる。
【0003】
しかし、同文献記載の一軸偏心ねじポンプは、ロータの回転軸線がステータの軸線を中心として公転するため、駆動軸とロータとの間に自在継手を介在させる必要があり、構造が複雑になるばかりでなく、特に食品の圧送においては、自在継手のデッドスペースの洗浄の問題があり、自在継手を分解しなければ洗浄できないという問題があった。また、自在継手は、吸入側の吸込み部における輸送物の流入を阻害し、さらに、ロータの公転は振動発生の原因ともなっていた。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、特許文献2に開示されるように、自在継手を介さずに、駆動軸に直結された雄ねじ状のロータと、軸受を介して回転可能に支承されるとともにその回転軸線がロータの回転軸線に対して偏心して配置される雌ねじ状の内面を有するステータとを備える一軸偏心ねじポンプが開発されてきた。
同文献記載の一軸偏心ねじポンプは、図3に示すように、ステータ104は、ゴム製のステータ内筒104aを有し、このステータ内筒104aの外周には軸方向両端に二つのステータ外筒104b,104cが装着されている。そして、このステータ104を自己潤滑軸受5,6で回転自在に支承すると共に、駆動軸3に固定した雄ねじ状のロータ2を、回転軸線L2がステータ4の軸線L1から所定距離Eだけ偏心するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−153992号公報
【特許文献2】特開2009−293529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、同文献記載の一軸偏心ねじポンプは、ステータ104にかかるスラスト荷重が、二つのステータ外筒104b,104cと自己潤滑軸受5,6との対向面、および自己潤滑軸受5,6によって受ける構造となっており、自己潤滑軸受5,6でスラスト荷重を受ける軸方向対向面間長さBは、ステータ104、自己潤滑軸受5,6および二つのステータ外筒104b,104cの各軸方向長さの累積寸法によって決定されることになる。そのため、例えば同図において組み付け時の管理寸法として、この軸方向対向面間長さBを管理する場合、その正確な寸法管理を行なうためには、各軸方向長さの累積誤差を各部品単位で高精度に管理しなければならないという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、各部品単位での累積誤差によらず、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易にし得る一軸偏心ねじポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動軸に直結された雄ねじ状のロータと、すべり軸受を介して回転可能に支承されるとともにその回転軸線が前記ロータの回転軸線に対して偏心して配置される雌ねじ状の内面を有するステータとを備え、前記ロータが回転しつつ前記ステータの軸心に対して偏心運動を行うことによって流体を吸入側から吐出側へ圧送する一軸偏心ねじポンプであって、前記ステータは、ゴム製の一つのステータ内筒と、このステータ内筒の外側に嵌め込まれる円筒部および該円筒部の端部に設けられて前記ステータ内筒の軸方向両端部に対向する端面部を有する金属製の二つのステータ外筒とから構成され、各ステータ外筒の端面部とステータ内筒の軸方向両端部との対向面間を密封するように吸入側および吐出側のそれぞれに配設された円環状のステータパッキンを備え、各ステータパッキンは、前記吸込側と吐出側の両側から二つのステータ外筒によって挟み込まれて介装されることで、ステータの軸方向を位置決めする構造となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る一軸偏心ねじポンプのステータ支承構造によれば、円環状のステータパッキンを、二つのステータ外筒でステータ内筒の吸込側と吐出側の両端から挟み込む構成としたので、この介装したステータパッキンの弾性変形による軸方向長さに対する冗長性によって、従来必要であった各部品単位での累積誤差による、スラスト荷重を受ける対向面間の長さの調整を不要とし、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易にすることができる。
【0009】
ここで、本発明に係る一軸偏心ねじポンプにおいて、前記吸込側および吐出側の各ステータ外筒に、相互の軸方向に沿って螺合される雄ねじおよび雌ねじからなる螺合部を設け、該螺合部によって吸込側と吐出側のステータ外筒相互を連結することは好ましい。
このような構成であれば、吸込側と吐出側のステータ外筒それぞれの雄ねじと雌ねじの締め込み加減によって、ステータ内筒両端を挟み込むことができるので、ステータ外筒と内筒との間をシールし且つステータの軸方向を位置決めするとともに、吸込側および吐出側の二つのステータ外筒とステータ内筒との連結一体化が簡便に行なえる。
【0010】
また、本発明に係る一軸偏心ねじポンプにおいて、前記ステータ内筒のゴムの面が軸方向両端部の全面に亘って設けられており、上述のステータパッキンに替えて、前記吸込側と吐出側の両端から前記二つのステータ外筒で前記ステータ内筒両端部のゴムの面を直接挟み込むことにより、前記ゴム製のステータ内筒端面自体でステータ外筒と内筒との間をシールし且つステータの軸方向を位置決めすることは好ましい。
このような構成であれば、上述のステータパッキンを用いることなしに、ステータ外筒と内筒との間をシールするとともに、従来必要であった各部品単位での累積誤差による、スラスト荷重を受ける対向面間の長さの調整を不要とし、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明に係る一軸偏心ねじポンプによれば、各部品単位での累積誤差によらず、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る一軸偏心ねじポンプの一実施形態の側面図であり、同図では要部を軸線に沿った断面にて図示している。
【図2】本発明に係る一軸偏心ねじポンプの一実施形態の変形例の側面図である。
【図3】従来の一軸偏心ねじポンプの側面図であり、同図では要部を軸線に沿った断面にて図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第一の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この一軸偏心ねじポンプ1は、不図示のモータが収容されるブラケット11を有しており、このブラケット11には、不図示のモータの駆動軸側の面11aにハウジング7が装着されている。このハウジング7は、吸込側(同図の右側)から順に、吸込部7a、本体部7bおよび吐出部7cを備えて構成されている。ハウジング7の吸込部7aには圧送流体の吸込口8が形成されており、また、吐出部7cには圧送流体の吐出口9が形成されている。そして、この一軸偏心ねじポンプ1は、このハウジング7内に、雄ねじ状のロータ2と、雌ねじ状の内面をもつステータ4とを備えている。
【0014】
ロータ2は、先端側の螺旋部2aと、直線状の基端部2bとから構成されている。基端部2bは、自在継手(ユニバーサルジョイント)を用いることなくモータ駆動軸に直結される。一方、螺旋部4eは、自身の回転軸線L2に対して偏心した長円形断面を有しており、この螺旋部2aが、雌ねじ状の内面を形成したステータ4に内装されている。そして、このステータ4の回転軸線L1に対して、上記ロータ2の回転軸線L2は、所定の偏心量Eだけ偏心するように配置されている。
【0015】
このステータ4は、その両端が、すべり軸受としての、円環状の自己潤滑軸受5および自己潤滑軸受6を介して上記ハウジング7内に回転自在に支承されている。なお、ハウジング7を構成する吸込部7aおよび本体部7bの内周面には、凹の段部7tがそれぞれ形成されている。また、ステータ4自身の外周面(後述するステータ外筒4b,4c)にも、その両端部に自己潤滑軸受5、6が外嵌される凹の段部4uがそれぞれ形成され、これら凹の段部4uおよび7tによって、上記自己潤滑軸受5、6の軸方向への移動が拘束されるようになっている。
【0016】
また、このステータ4は、軸方向の中央に配設された一つのステータ内筒4aを有する。このステータ内筒4aはゴム製の本体部4hと、この本体部4hの外周面に接着された円筒状をなす金属製の躯体部4gとからなる。そして、このステータ内筒4aには、その外側に金属製の二つのステータ外筒4bが嵌め込まれてハウジング7内に固定されている。なお、本体部4h内部に形成される螺旋部4eは、その雌ねじ状のピッチがロータ2の螺旋部2aの2倍である。
【0017】
各ステータ外筒4bは、ステータ内筒4aの外側の躯体部4gにインロー嵌合して嵌め込まれる円筒部4eと、この円筒部4eの吸入側または吐出側の端部に設けられた端面部4dとをそれぞれ有する。ステータ外筒4bの端面部4dとステータ内筒4aの端面4tとの間(相互の軸方向対向面間)には、円環状のステータパッキン12,14が吸入側および吐出側それぞれに介装されている。そして、ステータ内筒4a(本体部4h内部)は、その螺旋部4eが押しねじ19によってステータ内筒4aの躯体部4gにそれぞれ固定され、これらが一体で回転するようになっている。
【0018】
ここで、円環状のステータパッキン12,14は、吸込側と吐出側の両側からステータ外筒4b,4cに挟み込まれて介装されており、これにより、各ステータ外筒4b,4cとステータ内筒4aとの間をステータパッキン12,14によってシールするとともに、このステータパッキン12,14によってステータ4の軸方向を位置決めするステータ支承構造となっている。
【0019】
次に、この一軸偏心ねじポンプのステータ支承構造の作用・効果について説明する。
この一軸偏心ねじポンプ1は、駆動軸に直結された雄ねじ状のロータ2と、自己潤滑軸受5、6を介して回転可能に支承されるとともにその回転軸線L1がロータ2の回転軸線L2に対して偏心して配置される雌ねじ状の内面を有するステータ4とを備え、ロータ2が回転しつつステータ4の軸心に対して偏心運動を行うことによって流体を吸入側から吐出側へ圧送する構成なので、モータの駆動軸3によってロータ2を回転させると、ロータ2はその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ2の螺旋部2aの動きに伴ってステータ4もその回転軸線L1を中心としてロータ2の回転と同期して従動回転することにより、圧送流体を吸込口8から吐出口9へ圧送することができる。
そのため、自在継手を用いない構成とすることができるので、構造が簡単であり、特に食品の圧送においては、自在継手のデッドスペースの洗浄の問題も解消され、吸入側の吸込み部における輸送物の流入も阻害されず、振動も少ない。
【0020】
そして、この一軸偏心ねじポンプによれば、そのステータ支承構造は、ステータ内筒4aの外周に装着するステータ外筒4b,4cで、吸込側と吐出側の両端からステータパッキン12,14を介してステータ内筒4aを挟み込む構成としたので、この介装したステータパッキン12,14の弾性変形による軸方向長さに対する冗長性によって、従来必要であった各部品単位での累積誤差による、スラスト荷重を受けるステータ4の組み付け時の管理寸法としていた、自己潤滑軸受5,6の対向面間の長さBの調整を不要とし、ステータ4の軸方向位置の正確な寸法管理を容易にすることができる。
【0021】
以上説明したように、この一軸偏心ねじポンプのステータ支承構造によれば、ステータの組み付け時の軸方向の寸法管理を容易に行なうことができる。なお、本発明に係る一軸偏心ねじポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、図2に変形例を示す。
同図に示す例では、ステータ内筒4aおよびステータ外筒4b,4cの構成が、上記実施形態の例と異なっている。以下、異なる点について説明する。
同図に示すように、このステータ内筒4aは、円筒状の躯体部4gの軸方向の長さが本体部4hよりも短くなっており、ステータ内筒4aの本体部4hのゴムの面4fが軸方向両端部の全面に亘って設けられている。これにより、上述のステータパッキン12,14を不要として、ステータパッキン12,14に替えて、吸込側と吐出側の両端から二つのステータ外筒4b,4cで当該ステータ内筒4aの両端部のゴムの面4fを直接挟み込むことにより、ゴム製のステータ内筒4a端面自体でステータ外筒4b,4cと内筒4aとの間をシールし且つステータ4の軸方向を位置決めしている。
【0022】
このような構成であれば、上記実施形態同様に、従来必要であった各部品単位での累積誤差による、スラスト荷重を受ける対向面間の長さの調整を不要とし、ステータの軸方向対向面間長さの正確な寸法管理を容易にすることができる。そして、これに加え、上記ステータパッキン12,14を用いることなしに、ステータ外筒4b,4cと内筒4aとの間をシールすることができる。
さらに、この変形例においては、吸込側および吐出側の各ステータ外筒4b,4cの内周面または外周面に、相互の軸方向に沿って螺合される雄ねじ16および雌ねじ17からなる螺合部18を設けている。そして、この螺合部18によって吸込側と吐出側のステータ外筒4b,4c相互を連結している。
【0023】
このような構成であれば、吸込側と吐出側のステータ外筒4b,4cそれぞれの雄ねじ16と雌ねじ17の相互の締め込み加減によって、ステータ内筒4aをその軸方向両端から適切に挟み込むことができる。そのため、ステータ外筒4b,4cと内筒4aとの間をシールし且つステータの軸方向を位置決めするとともに、吸込側および吐出側の二つのステータ外筒4b,4cとステータ内筒4aとの連結一体化が簡便に行なえる。
【0024】
なお、この変形例では、上述のステータパッキン12,14を不要として、ステータパッキン12,14に替えて、吸込側と吐出側の両端から二つのステータ外筒4b,4cで当該ステータ内筒4aの両端部のゴムの面を直接挟み込む例において、ステータ外筒4b,4cに螺合部18を設けた例で説明したが、これに限らず、上述した実施形態でのステータパッキン12,14を使用した例に対して、ステータ外筒4b,4cに螺合部18を設けた部分を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 一軸偏心ねじポンプ
2 ロータ
3 駆動軸
4 ステータ
5 自己潤滑軸受(すべり軸受)
6 自己潤滑軸受(すべり軸受)
7 ハウジング
8 吸込口
9 吐出口
10 モータ
11 ベースブラケット
12 (吸入側の)ステータパッキン
14 (吐出側の)ステータパッキン
16 雄ねじ
17 雌ねじ
18 螺合部
19 押しねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に直結された雄ねじ状のロータと、すべり軸受を介して回転可能に支承されるとともにその回転軸線が前記ロータの回転軸線に対して偏心して配置される雌ねじ状の内面を有するステータとを備え、前記ロータが回転しつつ前記ステータの軸心に対して偏心運動を行うことによって流体を吸入側から吐出側へ圧送する一軸偏心ねじポンプであって、
前記ステータは、ゴム製の一つのステータ内筒と、このステータ内筒の外側に嵌め込まれる円筒部および該円筒部の端部に設けられて前記ステータ内筒の軸方向両端部に対向する端面部を有する金属製の二つのステータ外筒とから構成され、
各ステータ外筒の端面部とステータ内筒の軸方向両端部との対向面間を密封するように吸入側および吐出側のそれぞれに配設された円環状のステータパッキンを備え、
各ステータパッキンは、前記吸込側と吐出側の両側から二つのステータ外筒によって挟み込まれて介装されることで、ステータの軸方向を位置決めする構造となっていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項2】
前記吸込側および吐出側の各ステータ外筒に、相互の軸方向に沿って螺合される雄ねじおよび雌ねじからなる螺合部を設け、該螺合部によって吸込側と吐出側のステータ外筒相互を連結したことを特徴とする請求項1に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項3】
前記ステータ内筒は、そのゴムの面が軸方向両端部の全面に亘って設けられ、請求項1に記載のステータパッキンを用いることなしに、当該ステータパッキンに替えて、前記吸込側と吐出側の両端から前記二つのステータ外筒で前記ステータ内筒両端部のゴムの面を直接挟み込むことにより、前記ゴム製のステータ内筒端面自体でステータ外筒と内筒との間をシールし且つステータの軸方向を位置決めすることを特徴とする請求項1または2に記載の一軸偏心ねじポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17659(P2012−17659A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153883(P2010−153883)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】