説明

一酸化炭素分解触媒、その一酸化炭素分解触媒を用いた一酸化炭素分解フィルタ、その一酸化炭素分解フィルタを用いた空気浄化装置、空気調和装置、及び一酸化炭素分解触媒の製造方法

【課題】低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する一酸化炭素分解触媒の提供。
【解決手段】金属を含むタンパク質を、窒素雰囲気中、又はアルゴン雰囲気中、水素等の還元性ガスを含む還元性雰囲気中、若しくは、不活性ガスに水蒸気や二酸化炭素を加えた雰囲気中で加熱することで炭化させて得られる一酸化炭素触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素分解触媒、その一酸化炭素分解触媒を用いた一酸化炭素分解フィルタ、その一酸化炭素分解フィルタを用いた空気浄化装置、空気調和装置、及び一酸化炭素分解触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油ストーブの使用時や喫煙時において、空気が不完全燃焼することにより生ずる一酸化炭素が問題視されている。一酸化炭素は、人体の血液中のヘモグロビンと結合して人体の組織内機能を麻痺させる、あるいは停止させる猛毒物質である。従って、例えば建築基準法、ビル管理法、あるいは大気汚染防止法などによって一酸化炭素の濃度基準が定められている。
【0003】
従来提案されている一酸化炭素の濃度を低減させる材料は、一酸化炭素を吸着することにより一酸化炭素濃度を低減させる材料(以下、「一酸化炭素吸着材料」とすることがある。)と、一酸化炭素を吸着して、吸着した一酸化炭素を分解することにより一酸化炭素濃度を低減させる材料(以下、「一酸化炭素分解触媒」とすることがある。)とに大別することができる。一酸化炭素吸着材料としては、例えばゼオライト、活性炭、銀(Ag)や銅(Cu)等の金属、金属ハロゲン化物等が挙げられる。一酸化炭素分解触媒としては、ポプカライト(金属酸化物)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属、塩化パラジウム(PdCl2)に代表される貴金属塩化物、金属を含有するタンパク質等が挙げられる。
【特許文献1】特開2004−217507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゼオライト等の一酸化炭素吸着材料は、単に一酸化炭素を吸着する機能のみを有する。このため、所定量の一酸化炭素を吸着した後は、一酸化炭素濃度を低減させる機能が得られなくなる。従って、一酸化炭素吸着材料では、一酸化炭素濃度を十分長期にわたって低減させることが困難であるという問題がある。また、使用により、一酸化炭素の吸着量が増加するにしたがって、一酸化炭素の吸着能が低下するという問題がある。
【0005】
一方、貴金属等の一酸化炭素分解触媒は、一酸化炭素を吸着する機能と、吸着した一酸化炭素を分解する機能とを併せ持つ。このため、一酸化炭素分解触媒は、触媒活性を失わない限り、半永久的に一酸化炭素を吸着・分解することができる。従って、一酸化炭素分解触媒は、比較的長い寿命を有し、高い吸着・分解能を長期間にわたって持続させることができる。
【0006】
しかしながら、一酸化炭素分解触媒の一種であるポプカライトでは、一酸化炭素濃度が比較的低い雰囲気中においては、十分な一酸化炭素の吸着・分解能が得られないという問題がある。また、貴金属、貴金属塩化物等に関しては、非常に高価であるという問題があり、金属を含有するタンパク質に関しては、水分に対する安定性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する一酸化炭素分解触媒を提供することにある。
【0008】
尚、特許文献1には、金属を含有する有機天然物を、酸素量を制限した雰囲気で熱処理することを特徴とする金属を含有する活性炭の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1には、上記方法で製造された活性炭が一酸化炭素を吸着する機能、及び吸着した一酸化炭素を分解する機能を有することは、記載も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
誠意研究の結果、本発明者は金属を含むタンパク質を加熱させて成る材料が一酸化炭素を吸着する機能、及び吸着した一酸化炭素を分解する機能を有することを初めて見いだし、本発明をなすに至った。
【0010】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒は金属を含むタンパク質を加熱して成る。詳細には、金属を含むタンパク質を加熱させることにより炭化させて成る。金属を含むタンパク質を好適に炭化させるためには、酸素濃度が低い雰囲気中で加熱させることが好ましい。窒素雰囲気中、又はアルゴン雰囲気中といった不活性ガス雰囲気中、水素等の還元性ガスを含む還元性雰囲気中、若しくは、不活性ガスに水蒸気や二酸化炭素を加えた雰囲気中で加熱することがより好ましい。
【0011】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、雰囲気中に存在する一酸化炭素を吸着する機能と、吸着した一酸化炭素を分解する触媒機能とを併せ持つ。このため、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、触媒活性を失わない限り、半永久的に一酸化炭素を吸着して分解することができる。従って、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は長い寿命を有する。
【0012】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、例えば金属を含む天然由来の天然タンパク質を用いて製造することができ、高価なプラチナ(Pt)等の貴金属を要さない。そのため、比較的安価に製造することができる。また、本発明に係る一酸化炭素分解触媒はタンパク質を炭化させた炭化物であるため、酸素や水分に対して安定である。さらに、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、高い一酸化炭素吸着・分解能を有する。具体的には、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、一酸化炭素濃度が低い雰囲気中においても、一酸化炭素の高い吸着・分解能を有する。
【0013】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒では、タンパク質が、金属として、鉄又は銅のいずれか一方を少なくとも含むことが好ましい。鉄を含むタンパク質(以下、「鉄タンパク質」とすることがある。)や銅を含むタンパク質(以下、「銅タンパク質」とすることがある。)は、金属を含むタンパク質の中でも比較的安価であるため、鉄タンパク質や銅タンパク質を用いて製造することにより、より安価な一酸化炭素分解触媒を実現することができる。
【0014】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒では、タンパク質がヘモグロビン又はカタラーゼのいずれか一方を少なくとも含むことが好ましい。ヘモグロビンやカタラーゼは金属を含むタンパク質の中でも比較的安価である。このため、この構成によれば、より安価な一酸化炭素分解触媒を実現することができる。
【0015】
本発明に係る一酸化炭素分解フィルタは、本発明に係る一酸化炭素分解触媒を備えている。
【0016】
本発明に係る空気浄化装置は本発明に係る一酸化炭素分解フィルタを備えている。
【0017】
本発明に係る空気調和装置は本発明に係る一酸化炭素分解フィルタを備えている。
【0018】
上述のように、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。このため、本発明に係る一酸化炭素分解フィルタもまた、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。そして、本発明に係る空気調和装置及び空気浄化装置もまた、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。
【0019】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒の製造方法は本発明に係る一酸化炭素分解触媒を製造するための方法である。本発明に係る一酸化炭素分解触媒の製造方法は、金属を含むタンパク質を大気よりも酸素濃度が低い酸素濃度抑制雰囲気中に搬入する第1工程と、酸素濃度抑制雰囲気中においてタンパク質を加熱する第2工程とを備えている。
【0020】
本発明に係る一酸化炭素分解触媒の製造方法によれば、本発明に係る一酸化炭素分解触媒を好適に製造することができる。尚、酸素濃度抑制雰囲気は、窒素雰囲気、又はアルゴン雰囲気といった不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガスを含む還元性雰囲気、若しくは、不活性ガスに水蒸気や二酸化炭素を加えた雰囲気等であっても構わない。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る一酸化炭素分解触媒、一酸化炭素分解フィルタ、空気浄化装置、及び空気調和装置は、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。また、本発明に係る一酸化炭素分解触媒の製造方法によれば、本発明に係る一酸化炭素分解触媒を好適に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
《一酸化炭素分解触媒》
まず、本発明の実施形態に係る一酸化炭素分解触媒について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は金属を含むタンパク質を加熱して成る。換言すれば、本発明の実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は金属を含むタンパク質を炭化させて成るものである。金属を含むタンパク質を好適に炭化させるためには、金属を含むタンパク質を大気より酸素濃度が低い雰囲気中で加熱することが好ましく、酸素を実質的に含まない雰囲気中で加熱することがより好ましい。具体的には、窒素雰囲気中、又はアルゴン雰囲気中といった不活性ガス雰囲気中、水素等の還元性ガスを含む還元性雰囲気中、若しくは、不活性ガスに水蒸気や二酸化炭素を加えた雰囲気中で加熱することが好ましい。
【0024】
また、金属を含むタンパク質を好適に炭化させるためには、金属を含むタンパク質を400度以上1200度以下の温度で加熱することが好ましく、600度以上900度以下の温度で加熱することがより好ましい。加熱時間は30分以上5時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は、例えば金属を含む天然由来の天然タンパク質を用いて製造することができ、白金(Pt)等の高価な貴金属を要さない。このため、本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は安価に製造することができる。
【0026】
タンパク質は、金属として、鉄又は銅のいずれか一方を少なくとも含むものであることが好ましい。鉄タンパク質や銅タンパク質は、金属を含むタンパク質の中でも比較的安価であるため、鉄タンパク質や銅タンパク質を用いて製造することにより、より安価な一酸化炭素分解触媒を実現することができる。
【0027】
鉄タンパク質としては、例えばヘモグロビン、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒドロゲナーゼ、オキシゲナーゼ、シトクロム、ミオグロビン、レグヘモグロビン、又はヘモペキシン等のヘムタンパク質、若しくはルブレドキシン、フェレドキシン、ニトロゲナーゼ、亜硫酸レダクターゼ等の鉄−硫黄タンパク質を含む非ヘムタンパク質等が挙げられる。
【0028】
銅タンパク質としては、例えばビリルビン・オキシダーゼ、ラッカーゼ、又はチロシナーゼ等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒の原材料は、1種又は2種以上の金属を含むタンパク質を含むものであれば特に限定されるものではなく、金属を含むタンパク質以外の物質を含むものであってもよい。例えば、ヘモグロビン等の鉄タンパク質を含む血粉、屠殺動物の廃棄物等を原材料とすることができる。本来廃棄対象物であった血粉や屠殺動物を原材料として用いることにより、さらに安価な一酸化炭素分解触媒を実現することができる。
【0030】
一般的に、タンパク質は酸素や水分に対する安定性が比較的乏しい。しかし、タンパク質を炭化させたものは酸素や水分に対する高い安定性を有する。このため、本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は酸素や水分に対する高い安定性を有する。
【0031】
本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は、雰囲気中に存在する一酸化炭素を吸着する機能と、吸着した一酸化炭素を分解する触媒機能とを併せ持つ。このため、本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は、触媒活性を失わない限り、半永久的に一酸化炭素を吸着して分解することができる。従って、本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は長い寿命を有する。また、本実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は、一酸化炭素濃度にかかわらず、低い一酸化炭素濃度雰囲気中においても、一酸化炭素の高い吸着・分解能を有する。
【0032】
《一酸化炭素分解触媒の製造方法》
次に、本発明に係る一酸化炭素分解触媒の製造方法について説明する。まず、例えば鉄タンパク質(ヘモグロビン等)を含む血粉を大気よりも酸素濃度が低い酸素濃度抑制雰囲気中に搬入する(第1工程)。酸素濃度抑制雰囲気は、実質的に酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素雰囲気、又はアルゴン雰囲気といった不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガスを含む還元性雰囲気、若しくは、不活性ガスに水蒸気や二酸化炭素を加えた雰囲気等であってもよい。次に、酸素濃度抑制雰囲気中において、第1工程において搬入したタンパク質を加熱することにより本発明に係る一酸化炭素分解触媒が得られる(第2工程)。酸素濃度抑制雰囲気中でタンパク質を加熱することにより、好適に炭化されたタンパク質を得ることができる。加熱温度は400℃以上1200度以下の温度であることが好ましく、600度以上900度以下であることがより好ましい。加熱時間は30分以上5時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましい。
【0033】
以上説明したように、実施形態に係る一酸化炭素分解触媒は、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。このため、実施形態に係る一酸化炭素分解触媒を備えている一酸化炭素分解フィルタは、安価であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、さらに、長い製品寿命を有する。同様に、この一酸化炭素分解フィルタを備えている空気浄化装置、空気調和装置もまた、安価であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、さらに、長い製品寿命を有する。
【0034】
《空気浄化装置》
以下、実施形態に係る一酸化炭素分解触媒(12a)を備えている一酸化炭素分解フィルタ(12)を備えた空気浄化装置(1)の構成について、図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。尚、図1は空気浄化装置(1)の分解斜視図であり、図2は空気浄化装置(1)の内部を上方から視た図である。空気浄化装置(1)は一般家庭や小規模店舗などで用いられる民生用の空気浄化装置であり、空気中の有害成分に加えて、特に空気中の一酸化炭素を処理する機能を有する。
【0035】
空気浄化装置(1)は、一端が開放された箱形のケーシング本体(2)と、ケーシング本体(2)の開放端面に装着される前面カバー(3)とを備えている。前面カバー(3)の両側面及び前面中央部には、室内空気が導入される空気吸込口(4)が形成されている。ケーシング本体(2)の天板の背面側寄りには、室内空気を流出させる空気吐出口(5)が形成されている。
【0036】
ケーシング本体(2)内には、空気吸込口(4)から空気吐出口(5)までに亘って室内空気が流れる流通通路(6)が形成されている。流通通路(6)には、室内空気の流れの上流側(図2において下側)から順に、空気を浄化させる各種の機能部品と、流通通路(6)に室内空気を流通させるための遠心送風機(40)とが配置されている。
【0037】
機能部品は、前面カバー(3)側より順に配列された、プレフィルタ(8)と、イオン化部(9)と、放電装置(10)と、集塵フィルタ(11)と、及び一酸化炭素分解フィルタ(12)とにより構成されている。また、空気浄化装置(1)のケーシング本体(2)の後部下側寄りには、放電装置(10)の電源手段(18)が設けられている(図1参照)。
【0038】
プレフィルタ(8)は室内空気中に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するフィルタである。イオン化部(9)は、複数のイオン化線(9a)と、各イオン化線(9a)に対応する対向電極(9b)とを備えている。イオン化部(9)はプレフィルタ(8)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させる。イオン化部(9)の下流側に配置されている集塵フィルタ(静電フィルタ)(11)はイオン化部(9)により帯電された塵埃を捕集する。
【0039】
複数のイオン化線(9a)は波型形状ないし複数の「コ」の字が連なった水平断面形状に形成された波形部材(15)の前側に配置されている。空気浄化装置(1)においては、2つの波形部材(15)が左右に配列されている。波形部材(15)の前側には、複数の前側開口部(15a)が形成されており、各イオン化線(9a)は各前側開口部(15a)内において波形部材(15)の上端から下端までに亘って張架されている。イオン化線(9a)に対応する対向電極(9b)は波形部材(15)の前側開口部(15a)を形成する壁面に設けられている。この波形部材(15)の後側寄りの面には、集塵フィルタ(11)と略平行に配置されるメッシュ板(19)が連結されている。
【0040】
放電装置(10)は、複数の放電電極(13)と、各放電電極(13)に対向する面状の対向電極(14)とを備えている。放電電極(13)は、線状ないし棒状に形成されており、波形部材(15)の後側に配置されている。放電電極(13)は、放電装置(10)の拡大斜視図である図3(A)に示すように、波形部材(15)の後側開口部(15b)内に配置されるとともに、上下方向に延在する電極保持部材(20)に支持されている。電極保持部材(20)は、水平断面が「コ」の字型に形成されており、所定の部位には前方に向かって屈曲形成された複数の支持板(20a)が形成されている。線状ないし棒状に形成された放電電極(13)は放電電極(13)を挟み込むようにしてかしめられた支持板(20a)の先端部によって支持されている(図3(B)、放電装置の水平断面図参照)。以上のようにして、放電電極(13)の両端部は支持板(20a)から上下方向に突出した状態となっている。
【0041】
対向電極(14)は放電電極(13)が配置される波形部材(15)の後側開口部(15b)内の第1面(後面)(15c)に形成されている。第1面(15c)が放電電極(13)に対向する電極面として機能している。このようにして、支持板(13a)から突出する放電電極(13)が対向電極(14)の電極面と略平行に配置されている。尚、対向電極(14)の上端部及び下端部には、それぞれ対向電極(14)と電極保持部材(20)とに介設されるスペーサー(41)が設けられている。放電電極(13)の先端部から対向電極(14)までの間の距離がスペーサー(41)によって一定間隔に保持されている。
【0042】
以上のような構成の放電装置(10)は、電源手段(18)により電圧が印加されることで、両電極(13,14)間においてストリーマ放電を行うように構成されている。放電装置(10)は、ストリーマ放電による低温プラズマの発生に伴って、反応性の高い物質(オゾン、高速電子、イオン、ラジカルなどの活性種)を発生させるように構成されている。
【0043】
静電フィルタ(11)は放電装置(10)の下流側に配置されている。静電フィルタ(11)は、上流側の面において、上述したイオン化部(9)によって帯電された比較的小さな塵埃を捕集する一方、下流側の面には光触媒(光半導体)が担持されている。この光触媒は、放電装置(10)の放電によって生成される活性種によってさらに活性化され、室内空気中の有害物質の分解を促進する。光触媒としては、例えば二酸化チタンや酸化亜鉛、あるいはタングステン酸化物や硫化カドミウム等が挙げられる。また、静電フィルタ(11)は、水平断面が波形状に屈曲して形成された、いわゆるプリーツフィルタで構成されている。
【0044】
一酸化炭素分解フィルタ(12)は放電装置(10)及び静電フィルタ(11)の下流側近傍に配置されている。一酸化炭素分解フィルタ(12)は、図4(A)に示すように、複数の波板で構成されたコルゲート状の基材(50)を備えている。基材(50)には、空気中の一酸化炭素以外の臭気成分(炭化水素、揮発性有機化合物、窒素酸化物、硫黄系化合物など)を吸着する吸着剤(12c)が成形されている。吸着剤(12c)としては、活性炭、炭素繊維などが挙げられる。さらに、基材(50)の表面には、本発明に係る一酸化炭素分解触媒(12a)と酸化分解反応促進触媒(12b)とが担持されている(図4(B)参照)。一酸化炭素分解触媒(12a)は空気中の一酸化炭素を選択的に吸着する。一酸化炭素分解触媒(12a)に吸着された一酸化炭素は、一酸化炭素分解触媒(12a)の触媒作用と、上述した放電装置(10)のストリーマ放電とによって分解される。
【0045】
酸化分解反応促進触媒(12b)は放電装置(10)のストリーマ放電による一酸化炭素の酸化分解反応を促進するためのものである。酸化分解反応促進触媒(12b)としては、金属酸化物又は複合金属酸化物上に貴金属を固定化した金固定化金属酸化物からなる触媒、あるいは貴金属を固定化した金属酸化物又は複合金属酸化物を担体に担持して構成された触媒などが挙げられる。
【0046】
次に、空気浄化装置(1)の運転動作について詳細に説明する。空気浄化装置(1)の運転中は、遠心送風機(40)が起動し、室内空気がケーシング本体(2)内の流通通路(6)を流通する。この状態において、イオン化部(9)及び放電装置(10)へは、電源手段(18)から高電圧が印加される。
【0047】
室内空気がケーシング本体(2)内に導入されると、まずプレフィルタ(8)によって比較的大きな塵埃が除去される。プレフィルタ(8)を通過した室内空気はイオン化部(9)へと流れる。イオン化部(9)では、イオン化線(9a)と対向電極(9b)との間で発生する放電により室内空気中の比較的小さな塵埃が帯電する。帯電した塵埃を含む室内空気は静電フィルタ(11)へ流入する。そして、静電フィルタ(11)において、これらの帯電した塵埃が捕集される。
【0048】
放電装置(10)では、放電電極(13)と対向電極(14)との間でのストリーマ放電により活性種が生成している。このため、放電装置(10)により生成した活性種が室内空気とともに下流側に流れる。
【0049】
上放電装置(10)より生成する活性種は室内空気と接触して室内空気中の有害物質や臭気物質を分解する。また、活性種が静電フィルタ(11)に達すると、静電フィルタ(11)に担持された光触媒によってさらに活性化され、室内空気中の有害成分や臭気成分の分解がさらに促進される。
【0050】
一酸化炭素分解フィルタ(12)においては、室内空気中の一酸化炭素が一酸化炭素分解触媒(12a)によって吸着され、一酸化炭素分解触媒(12a)の触媒機能により吸着された一酸化炭素の一部が分解される。室内空気中の一酸化炭素以外の臭気成分や有害成分は一酸化炭素分解フィルタ(12)の基材(50)を構成する吸着剤(12c)に吸着される。
【0051】
上述した活性種が室内空気とともに一酸化炭素分解フィルタ(12)を通過すると、一酸化炭素分解触媒(12a)に吸着され、一酸化炭素分解触媒(12a)によって未だ分解されずに残存している一酸化炭素が活性種によって酸化分解される。この際、一酸化炭素分解フィルタ(12)に担持された酸化分解反応促進触媒(12b)によって一酸化炭素の酸化分解反応が促進され、一酸化炭素は速やかに二酸化炭素に変化する。同時に、吸着剤(12c)に吸着された一酸化炭素以外の有害成分も、活性種によって酸化分解される。この際には、酸化分解反応促進触媒(12b)によって活性種の活性が高められ、これらの有害成分の分解が促進される。
【0052】
以上のようにして塵埃が除去されるとともに、一酸化炭素や有害成分も除去された清浄な室内空気は、遠心送風機(40)へと取り込まれ、空気吐出口(5)から室内へ供給される。
【0053】
空気浄化装置(1)では、一酸化炭素は一酸化炭素分解フィルタ(12)に含まれる一酸化炭素分解触媒(12a)により吸着され、吸着された一酸化炭素は一酸化炭素分解触媒(12a)及びストリーマ放電に伴う活性種によって分解される。このため、空気浄化装置(1)によれば、空気中の一酸化炭素を効率的に除去することができる。
【0054】
一酸化炭素分解触媒(12a)は、本発明に係るものであり、上述のように、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。このため、一酸化炭素分解フィルタ(12)は、安価であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、さらに、長い製品寿命を有する。従って、空気浄化装置(1)もまた、安価であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、さらに、長い製品寿命を有する。
【0055】
ストリーマ放電で生じる活性種の生成量は、例えばグローコロナ放電と比較して格段に多い。このため、グローコロナ放電より小さい放電出力で、グローコロナ放電より大量の活性種を生成することができる。また、放電装置(10)によるストリーマ放電の消費電力は、例えばヒータを用いて一酸化炭素を酸化分解する空気浄化装置と比較して小さくて済む。従って、空気浄化装置(1)によって効率的且つ低消費電力で一酸化炭素を除去することができる。
【0056】
また、空気浄化装置(1)によれば、一酸化炭素分解フィルタ(12)の基材(50)に酸化分解反応促進触媒(12b)を担持している。よって、活性種による一酸化炭素の酸化分解反応を促進させることができ、空気中の一酸化炭素の分解効率を一層向上させることができる。
【0057】
さらに、空気浄化装置(1)では、一酸化炭素分解フィルタ(12)の基材(50)が吸着剤(12c)により構成されている。よって、空気中の一酸化炭素以外の有害成分が吸着剤(12c)により吸着され、吸着された有害成分は活性種によって酸化分解される。また、酸化分解反応促進触媒(12b)や吸着剤(12c)は、一酸化炭素分解フィルタ(12)に一体的に構成されるため、一酸化炭素分解フィルタ(12)に、一酸化炭素の吸着・分解能、触媒効果、一酸化炭素以外の有害成分の吸着能を兼備させることができる。従って、空気浄化装置(1)のコンパクト化を図ることができる。
【0058】
《空気調和装置》
以下、実施形態に係る一酸化炭素分解触媒を用いた一酸化炭素分解フィルタ(64)を備えた空気調和装置(60)の構成について、図7を参照しながら詳細に説明する。尚、図7は実施形態に係る空気調和装置(60)の全体構成図である。
【0059】
空気調和装置(60)は、室内機(61)と、室外機(65)とによって構成されている。室内機(61)は、室内熱交換器(62)と、室内ファン(63)と、一酸化炭素分解フィルタ(64)とを備え、室内の壁面に取り付けられている。尚、一酸化炭素分解フィルタ(64)は金属を含むタンパク質を加熱させることにより炭化させて成る一酸化炭素分解触媒を備えている。
【0060】
室外機(65)は室外に設置されている。室外機(65)には、図示しないが、圧縮機、膨張機構、室外熱交換器、室外ファン等の構成機器が収納されている。室内機(61)と室外機(65)とは、一対の連絡配管(66)によって接続されている。
【0061】
室内熱交換器(62)と共に圧縮機、膨張機構及び室外熱交換器が連絡配管(66)等によって接続されて、冷媒回路が構成されている。この冷媒回路は、図外の四路切換弁を備え、冷媒の循環方向を反転可能に構成されている。そして、冷媒回路では、冷媒が循環して冷凍サイクル動作とヒートポンプ動作とが切り換えて行われる。
【0062】
空気調和装置(60)では、室内機(61)の前面から、室内空気が室内機(61)に取り込まれる。取り込まれた室内空気は一酸化炭素分解フィルタ(64)を通過して室内熱交換器(62)に送り込まれる。室内熱交換器(62)において、取り込まれた室内空気はガス冷媒と熱交換を行う。この熱交換によって、室内空気が所定の温度に調整され、室内ファン(63)によって、再び室内に送り込まれる。
【0063】
取り込まれた室内空気に含まれる一酸化炭素は、一酸化炭素分解フィルタ(64)を透過する際に、一酸化炭素分解フィルタ(64)に含まれる一酸化炭素分解触媒によって効果的に分解されるので、空気調和装置(60)によれば、一酸化炭素濃度が抑制された室内空気を室内に送り込むことができる。
【0064】
一酸化炭素分解フィルタ(64)に含まれる一酸化炭素分解触媒は本発明に係るものであり、上述のように、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、且つ長い寿命を有する。このため、本発明に係る一酸化炭素分解触媒を用いた一酸化炭素分解フィルタ(64)を備えている空気調和装置(60)もまた、安価であり、高い一酸化炭素吸着・分解能を有し、さらに、長い製品寿命を有する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明に係る一酸化炭素分解触媒は、低コストで、水や酸素に対して安定であり、高い一酸化炭素吸着・分解能及び長い寿命を有し、空気浄化装置、空気調和装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態に係る空気浄化装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る空気浄化装置の内部を上流側から視た図である。
【図3】図3(A)は、放電装置の拡大斜視図であり、図3(B)は、放電装置の水平断面図である。
【図4】図4(A)は、一酸化炭素分解フィルタを前方から視た構成図であり、図4(B)は、一酸化炭素分解フィルタの拡大図である。
【図5】一酸化炭素の分解試験装置の概略構成図である。
【図6】その他の実施形態に係る一酸化炭素分解フィルタを上流側から視た構成図である。
【図7】実施形態に係る空気調和装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0067】
(1) 空気浄化装置
(2) ケーシング本体
(3) 前面カバー
(4) 空気吸込口
(5) 空気吐出口
(6) 流通通路
(8) プレフィルタ
(9) イオン化部
(9a) イオン化線
(9b) 対向電極
(10) 放電装置
(11) 集塵フィルタ
(12) 一酸化炭素分解フィルタ
(12a) 一酸化炭素分解触媒
(12b) 酸化分解反応促進触媒
(12c) 吸着剤
(13) 放電電極
(13a) 支持板
(14) 対向電極
(15) 波形部材
(15a) 前側開口部
(15b) 後側開口部
(15c) 第1面
(18) 電源手段
(19) メッシュ板
(20) 電極保持部材
(20a) 支持板
(40) 遠心送風機
(41) スペーサー
(50) 基材
(60) 空気調和装置
(61) 室内機
(62) 室内熱交換器
(63) 室内ファン
(64) 一酸化炭素分解フィルタ
(65) 室外機
(66) 連絡配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含むタンパク質を加熱して成ることを特徴とする一酸化炭素分解触媒。
【請求項2】
請求項1に記載された一酸化炭素分解触媒において、
上記タンパク質の加熱を大気よりも酸素濃度が低い雰囲気中で行うことを特徴とする一酸化炭素分解触媒。
【請求項3】
請求項1に記載された一酸化炭素分解触媒において、
上記タンパク質は、上記金属として、鉄又は銅のいずれか一方を少なくとも含むことを特徴とする一酸化炭素分解触媒。
【請求項4】
請求項1に記載された一酸化炭素分解触媒において、
上記タンパク質はヘモグロビン又はカタラーゼのいずれか一方を少なくとも含むことを特徴とする一酸化炭素分解触媒。
【請求項5】
請求項1に記載された一酸化炭素分解触媒を備えていることを特徴とする一酸化炭素分解フィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載された一酸化炭素分解フィルタを備えていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項7】
請求項5に記載された一酸化炭素分解フィルタを備えていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項8】
金属を含むタンパク質を、大気よりも酸素濃度が低い酸素濃度抑制雰囲気中に搬入する第1工程と、
上記酸素濃度抑制雰囲気中において、上記タンパク質を加熱する第2工程と、
を備えていることを特徴とする一酸化炭素分解触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−167645(P2006−167645A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365450(P2004−365450)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】