説明

一酸化炭素選択酸化触媒

【課題】 高空間速度条件下においても低温触媒活性に優れるCO選択酸化触媒を提供する。
【解決手段】 白金原子、並びに、コバルト、マンガン、ニッケル、銅からなる群から選択される1種または2種以上の助触媒原子を含有する一酸化炭素選択酸化触媒を、コア部と、前記コア部の周囲を被覆するシェル部と、からなるマイクロカプセル構造とし、前記白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金触媒粉末と、前記助触媒原子を含む助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなる助触媒粉末とを、前記コア部、または前記シェル部もしくは前記シェル部の表面のいずれかに分離して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(以下、「CO」とも称する)を選択的に酸化するための、CO選択酸化触媒に関する。詳細には、本発明は、低温においても高いCO選択酸化活性を示すCO選択酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の水素−酸素燃料電池が開発されており、中でも、低温(通常100℃以下)で作動可能な固体高分子型燃料電池が注目を集め、自動車用低公害動力源としての実用化が検討されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、純粋な水素を燃料源として用いることがエネルギー効率の観点からは好ましいが、安全性やインフラの普及等を考慮すると、アルコール、ガソリン、軽油等の液体を燃料源として用い、これらを改質装置において水素リッチな改質ガスに転換する方法も有望な候補である。
【0004】
炭化水素系液体燃料を燃料源として用いた場合、改質ガス中にはある程度の量のCOが残存する。ところが、このCOは、燃料電池の電極に用いられている白金系触媒に対し、触媒毒として作用する。このため、このCOを例えばCOに転化するなどして除去し、白金系電極触媒に対する被毒を防止する必要がある。具体的には、まずシフト反応(CO+HO→CO+H)を利用し、改質ガス中に含まれるCO濃度を1体積%程度にまで低減する。そして、貴金属等が無機担体に担持されてなるCO選択酸化触媒を用い、COを酸化除去(COに転化)する方法が提案されている。
【0005】
この場合、CO選択酸化触媒においては、酸化反応の進行に伴い触媒温度が上昇する。その結果、逆シフト反応(CO+H→CO+HO)によるCO濃度の増加や、メタン化反応(CO+3H→CH+HO、CO+4H→CH+2HO)による水素の消費、といった問題が生じる。このため、熱交換器などを用いてCO選択酸化触媒の温度を比較的低い温度範囲に維持し、上記の好ましくない反応を抑制する工夫が施されるのが一般的である。
【0006】
上記の好ましくない反応は、低温条件ほど効果的に抑制されうる。このため、低温活性に優れる触媒が望まれている。また、自動車に搭載する改質装置を考えると、頻繁な起動停止や激しい負荷変動があることから、雰囲気変動に強い触媒が望まれる。以上の観点からは、貴金属系、とりわけ白金系の触媒が有望である。反面、白金系触媒の欠点として、低温条件下では白金原子にCOが強く吸着するという吸着被毒現象により、COの除去効率が低下するという問題がある。
【0007】
かような問題に鑑み、白金原子の他に、ルテニウム原子およびロジウム原子などの貴金属原子や、鉄原子およびコバルト原子などの遷移金属原子を触媒成分としてさらに添加して、低温領域におけるCO選択酸化活性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【特許文献1】特開2001−149781号公報
【特許文献2】特開2002−263501号広報
【特許文献3】特開2002−306972号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、CO選択酸化触媒を備えるCO選択酸化装置を車載する場合を考えると、より高い空間速度条件下においても優れたCO選択酸化活性を発現しうる触媒が、装置のコンパクト化等の観点から有利である。
【0009】
しかしながら、上記の文献に記載の触媒はいずれも、車載に充分な程度の高空間速度条件下における触媒活性が充分であるとはいえず、かような高空間速度条件下での低温触媒活性に優れる触媒の開発が望まれているのが現状である。
【0010】
上記のような現状のもと、本発明は、高空間速度条件下においても低温触媒活性に優れるCO選択酸化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、白金原子、並びに、コバルト、マンガン、ニッケル、銅からなる群から選択される1種または2種以上の助触媒原子を含有する一酸化炭素選択酸化触媒であって、コア部と、前記コア部の周囲を被覆するシェル部と、からなるマイクロカプセル構造を有し、前記白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金触媒粉末と、前記助触媒原子を含む助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなる助触媒粉末と、が、前記コア部、または前記シェル部もしくは前記シェル部の表面のいずれかに分離して配置されてなることを特徴とする、CO選択酸化触媒である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のCO選択酸化触媒によれば、低温領域における触媒活性が向上しうる。特に、高い空間速度条件下における触媒活性に優れるCO選択酸化触媒が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
上述したように、従来、貴金属原子である白金原子を含有する白金粒子が無機担体に担持されてなるCO選択酸化触媒において、鉄原子やコバルト原子などの遷移金属原子をさらに含有させると、低温領域におけるCO選択酸化活性が向上することが知られている。本発明者は、遷移金属原子であるコバルト、ニッケル、マンガン、および銅の4種を助触媒原子として含有させることで、CO選択酸化触媒の触媒活性のさらなる向上を図るべく、鋭意研究を行った。
【0015】
なお、これらの助触媒原子の添加によりCO選択酸化活性が向上するメカニズムはいまだ明らかとはなっていない。ただし、助触媒原子の存在により、改質ガス中の酸素や水などが活性化されて何らかの活性種(本明細書中、「CO酸化活性種」とも称する)が生成し、この活性種がCOのCOへの酸化に何らかの関与をしているものと推測される。また、助触媒原子の作用によってCOがより酸化されやすい形態へと変化し、これによりCOへの酸化が促進されるというメカニズムも推定されている。ただし、これらのメカニズムはいずれも推測に基づくものであり、COのCOへの酸化が上記のメカニズム以外のメカニズムにより促進されていたとしても、本発明の技術的範囲は何ら影響を受けない。
【0016】
ここで、前記文献1に好ましい調製方法として記載されているように、白金原子と助触媒原子とを同時に無機担体に担持させることによって、CO選択酸化触媒を製造する場合を考えてみる。かような調製方法によれば、白金原子は、例えば白金金属の粒子または白金酸化物の粒子(白金粒子)として無機担体の表面に担持される。一方、助触媒原子も同様に、例えば助触媒原子の金属粒子または酸化物(例えば、コバルト酸化物(Co)など)の粒子(助触媒原子粒子)として無機担体の表面に担持される。この際、無機担体の1個の粒子に着目すると、この無機担体粒子の表面には、白金成分と助触媒成分とが共存している。多くの場合には、白金金属の粒子と、助触媒原子の酸化物の粒子とが、無機担体粒子の表面に同時に存在していると考えられる。
【0017】
従って、場合によっては、無機担体に担持された白金成分が、助触媒原子の酸化物などの助触媒成分により被覆されてしまう虞がある。あるいは逆に、無機担体に担持された助触媒成分が白金成分により被覆されてしまう虞もある。その結果、被覆された成分が活性を充分に発揮できず、最終的なCO選択酸化活性が低下してしまう場合もありうると推測される。
【0018】
本発明者は、上記の問題を解決してCO選択酸化触媒の触媒活性を向上させるためのアプローチとして、白金成分および助触媒成分の触媒中での存在状態を制御することを試みた。具体的には、白金成分を含む触媒と、助触媒成分を含む触媒とを別々に調製し、これらをマイクロカプセル化することで、上述した問題の解決を図った。
【0019】
なお、本願において「CO選択酸化触媒」とは、少なくともCOおよびOを含有するガスに接触することにより、前記ガス中のCOのCOへの酸化反応を選択的に促進する触媒をいう。また、本願において「低温」とは、例えば、200℃程度以下の温度を指し、より詳細には、100〜180℃程度の温度を指す。以下、図面を参照しながら、本発明のCO選択酸化触媒の形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下に記載する形態のみには制限されない。
【0020】
[CO選択酸化触媒]
(第1実施形態)
本発明は、白金原子、並びに、コバルト、マンガン、ニッケル、銅からなる群から選択される1種または2種以上の助触媒原子を含有する一酸化炭素選択酸化触媒であって、コア部と、前記コア部の周囲を被覆するシェル部と、からなるマイクロカプセル構造を有し、前記白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金触媒粉末と、前記助触媒原子を含む助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなる助触媒粉末と、が、前記コア部、または前記シェル部もしくは前記シェル部の表面のいずれかに分離して配置されてなることを特徴とする、CO選択酸化触媒である。
【0021】
[構成]
図1は、本実施形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。なお、本願においては、説明の便宜上、図面に示す各構成成分の寸法比率は誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のCO選択酸化触媒10は、マイクロカプセル構造を有する。そして、当該マイクロカプセル構造は、コア部20と、前記コア部20の周囲を被覆するシェル部30とからなる。
【0023】
本実施形態において、コア部20は、助触媒粉末を含む。一方、シェル部30は、白金触媒粉末を含む。以下、各触媒粉末の構成について、より詳細に説明する。
【0024】
図2は、本実施形態のCO選択酸化触媒のシェル部30に含まれる白金触媒粉末32の構成を説明するための拡大模式断面図である。図3は、本実施形態のCO選択酸化触媒のコア部20に含まれる助触媒粉末22の構成を説明するための拡大模式断面図である。
【0025】
図2に示すように、シェル部30に含まれる白金触媒粉末32は、白金原子を含む白金粒子34が、第1の無機担体36に担持されてなる構成を有する。同様に、図3に示すように、コア部20に含まれる助触媒粉末22は、助触媒原子を含む助触媒粒子24が、第2の無機担体26に担持されてなる構成を有する。なお、無機担体(26、36)の表面には多数の微細孔が形成されている場合があるが、この微細孔は省略されている。
【0026】
以下、本実施形態のCO選択酸化触媒の好ましい構成について、詳細に説明する。
【0027】
[白金触媒粉末]
白金触媒粉末32は、上述したように、白金粒子34が第1の無機担体36に担持されてなる構成を有する。なお、本明細書において、前記の「第1の」という語、および、後述する助触媒粉末22用の無機担体に冠せられる「第2の」という語は、白金粒子34と助触媒粒子24とが別々の無機担体に担持されていることを示すために便宜的に用いられる。従って、「第1の」および「第2の」という序列自体に格別な意味はない。
【0028】
白金粒子34は、白金原子を含有する金属粒子である。この白金原子は、本発明の触媒の使用時において、流通するガス中のCOを吸着する機能を有する。図2に示す形態において、白金粒子34は、白金原子のみからなる粒子である。ただし、白金粒子34は白金原子のみからなる粒子に限られず、例えば、白金酸化物(一酸化白金(PtO)、二酸化白金(PtO)など)からなる粒子、白金と白金酸化物との混合物からなる粒子、白金合金からなる粒子などであってもよい。白金合金としては、後述する他の貴金属や遷移金属と白金との合金が例示される。
【0029】
第1の無機担体36の具体的な形態は、特に制限されず、触媒用の無機担体として従来公知の化合物が用いられうる。例えば、アルミナ(αアルミナ、θアルミナ、γアルミナ、δアルミナ、βアルミナなど)、チタニア、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、マグネシア、ゼオライトなどの金属酸化物が例示される。なかでも、触媒活性に優れ、原料の入手、担体の製造および取扱いが容易であるという観点から、アルミナが好ましく用いられる。なお、これらは1種のみが単独で用いられてもよく、これらの混合物が用いられてもよい。ここで、金属酸化物の混合物には、2種以上の金属酸化物が物理的に混合された形態のほか、酸化物粒子のある部分と他の部分とで結晶性の異なる金属酸化物も含まれる。
【0030】
第1の無機担体36の比表面積は、好ましくは30〜250m/g程度である。この比表面積が小さすぎると、白金粒子34の分散性の悪化に伴い触媒活性が低下する虞がある。一方、この比表面積が大きすぎると、白金原子が吸着したCOとCO酸化活性種との接触効率が低下するなどして、やはり触媒活性が低下する虞がある。かような観点から、第1の無機担体34としては、γアルミナ、θアルミナ、またはこれらの混合物が好ましく用いられる。なお、本明細書に記載の「比表面積」は、例えば、窒素吸着によるBET比表面積を測定することにより算出されうる。
【0031】
第1の無機担体36の平均粒子径についても、特に制限はない。ただし、第1の無機担体36の平均粒子径が小さすぎると、飛散性が上昇して取扱いが煩雑となる虞がある。一方、第1の無機担体36の平均粒子径が大きすぎると、無機担体の比表面積の減少に伴って白金粒子の分散性が悪化し、触媒性能が低下する虞がある。また、触媒の成形性が悪化し、例えば触媒をモノリス担体に塗布して使用する場合などに剥離し易くなる虞がある。さらに、マイクロカプセル化工程における分散性が低下し、製造効率が低下する虞がある。
【0032】
白金触媒粉末32において、白金原子および第1の無機担体のそれぞれの含有量は特に制限されず、所望の触媒性能や製造コストなどを考慮することにより、適宜調整されうる。ただし、白金原子の含有量は、白金触媒粉末32の全量に対して、好ましくは0.2〜3.0質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%、さらに好ましくは0.8〜2.0質量%である。この白金原子の含有量が少なすぎると、充分な触媒活性が得られない虞がある。一方、白金原子の含有量が多すぎると、含有量の増加に見合った触媒活性が得られなくなり、触媒の製造コストが高騰してしまう虞がある。なお、本願において、白金原子や助触媒原子などの金属原子の含有量は、特に断りのない限り、金属換算した上での含有量をいう。例えば、白金原子や助触媒原子が金属酸化物として含有されている場合には、金属酸化物としての質量ではなく、金属酸化物中の金属原子部分の含有量をいう。
【0033】
なお、第1の無機担体36に白金粒子34が担持されてなる白金触媒粉末32の比表面積の好ましい範囲は、上述した第1の無機担体36の比表面積の好ましい範囲と同様である。
【0034】
[助触媒粉末]
助触媒粉末22は、上述したように、助触媒粒子24が第2の無機担体26に担持されてなる構成を有する。
【0035】
図3に示す形態において、助触媒粒子24は、助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、および銅)の酸化物(例えば、Co、MnO、NiO、CuOなど)からなる粒子である。助触媒粒子24は、単独の酸化物のみからなる粒子であってもよく、2種以上の酸化物の混合物または複合酸化物からなってもよい。ただし、かような形態のみに制限されず、助触媒粒子32は、例えば、助触媒原子のみからなる粒子、助触媒原子とその酸化物とからなる粒子などであってもよい。
【0036】
本発明においては、助触媒原子として4種の原子を採用したが、なかでも、低温領域と高温領域との双方におけるCO酸化活性を両立させるという観点からは、助触媒原子としてコバルト原子が含まれることが好ましい。
【0037】
助触媒粉末22は、白金原子を実質的に含有しない。上述したように、助触媒粉末22に含有される助触媒原子はCOのCOへの酸化を促進させる目的で含有される。一方、本発明のCO選択酸化触媒10は、助触媒粉末22に加えて、上述したように白金原子を含有する白金触媒粉末32をもその一構成要素として含む。従って、CO吸着作用は白金含有触媒粉末32に含有される白金原子によって担われることから、助触媒粉末22が白金原子を実質的に含有しなくとも本発明の触媒におけるCO吸着能が不充分となる虞はなく、触媒活性の向上が達成されうる。なお、「実質的に含有しない」とは、不純物程度の混入は許容されうることを意味し、一例を挙げると、助触媒粉末22の全量に対して0.3質量%以下程度の白金原子の混入は許容されうる。ただし、助触媒粉末22中への混入が許容される白金原子の質量は前記の範囲のみに制限されない。
【0038】
第2の無機担体26の種類は、特に制限されず、白金触媒粉末32用の第1の無機担体36として上述した形態が同様に採用されうる。
【0039】
ただし、第2の無機担体26の比表面積は、上記の第1の無機担体36よりも小さいほうがよく、好ましくは10〜120m/g程度である。この比表面積が小さすぎると、助触媒粒子24の分散性の悪化に伴い触媒活性が低下する虞がある。一方、この比表面積が大きすぎると、助触媒粒子24が高分散するために無機担体26との相互作用が増大し、これにより助触媒成分の本来の活性の発現が抑制されてしまう結果、最終的には触媒活性が低下する虞がある。かような観点から、第2の無機担体38としては、θアルミナ、αアルミナ、およびこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0040】
第2の無機担体26の平均粒子径についても、特に制限はない。ただし、第1の無機担体36の平均粒子径について上述した理由、並びに、マイクロカプセルのコア部20を形成する場合のガス拡散の影響および造粒の容易さを考慮すると、第2の無機担体26の平均粒子径は、好ましくは0.8〜5.5μm、より好ましくは1.5〜2.5μmである。
【0041】
助触媒粉末22における助触媒粒子24および第2の無機担体26のそれぞれの含有量は、所望の触媒性能や製造コストなどを考慮することにより、適宜調整されうる。ただし、助触媒原子の含有量は、助触媒粉末22の全量に対して、好ましくは0.6〜14質量%、より好ましくは1.2から10質量%、さらに好ましくは2〜8質量%である。この助触媒原子の含有量が少なすぎると、白金原子に吸着されたCOの酸化が充分に促進されない虞がある。一方、助触媒原子の含有量が多すぎると、助触媒原子が無機担体の表面上で凝集してしまい、助触媒原子の有効利用率が低下する虞がある。
【0042】
なお、第2の無機担体26に白金粒子24が担持されてなる白金触媒粉末22の比表面積の好ましい範囲は、上述した第2の無機担体26の比表面積の好ましい範囲と同様である。
【0043】
[CO選択酸化触媒]
本実施形態のCO選択酸化触媒10は、図1を参照して上述したように、助触媒粉末22を含むコア部20と、白金触媒粉末32を含み、前記コア部20の周囲を被覆するシェル部30とからなる。
【0044】
CO選択酸化触媒10に含まれる白金触媒粉末32および助触媒粉末22のそれぞれの具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
上記のような構成を有する本発明のCO選択酸化触媒10がそのCO選択酸化活性を発揮する際には、まず、シェル部30に含まれる白金触媒粉末32中の白金原子にCOが吸着される。一方、ガス中の酸素や水がコア部20中へ拡散し、助触媒原子の作用によりCO酸化活性種が生成する。そして、生成したCO酸化活性種がシェル部30を拡散し、シェル部30に含まれる白金触媒粉末の白金原子に吸着されたCOの酸化が促進される。ただし、メカニズムにより本発明の技術的範囲は影響を受けない。
【0046】
本実施形態のCO選択酸化触媒10において、コア部20およびシェル部30のサイズは特に制限されない。これらのサイズは、白金原子および助触媒原子の所望の含有量や、採用する製造方法に応じて変動しうる。
【0047】
好ましい形態として、コア部の直径(図1に示す長さD)は、好ましくは100〜600μmであり、より好ましくは200〜500μmであり、さらに好ましくは300〜400μmである。コア部20の直径が小さすぎると、CO酸化活性種が充分に生成できない虞がある。一方、コア部20の直径が大きすぎると、コア部20の成形が困難となる虞がある。ただし、コア部20がこの範囲を外れるサイズを有してもよいことは勿論である。
【0048】
同様に、好ましい形態として、シェル部30の厚さ(図1に示す長さd)は、好ましくは20〜80μmであり、より好ましくは30〜60μmであり、さらに好ましくは40〜50μmである。シェル部30の厚さが薄すぎると、白金触媒を保持する空間の体積が不充分であり、COを充分に酸化除去できない虞がある。一方、シェル部30の厚さが厚すぎると、水や酸素などの反応分子がコア部に侵入し難くなる虞がある。ただし、シェル部30がこの範囲を外れるサイズを有してもよいことは勿論である。
【0049】
本発明のCO選択酸化触媒10において、白金原子や助触媒原子の含有量は特に制限されず、所望の触媒性能や製造コストを考慮することにより、適宜調整されうる。ただし、上述した本発明の触媒の作用メカニズムに鑑みれば、シェル部30に含まれる白金触媒粉末34とコア部20に含まれる助触媒粉末22との配合量のバランスが良好に保たれると、触媒のCO選択酸化活性が効率的に向上しうる。一例を挙げると、本発明のCO選択酸化触媒に含有される白金原子と助触媒原子(「Me」とも称する)との含有量の比(Pt/Me;金属原子換算モル比)は、好ましくは0.002〜1.2程度であり、より好ましくは0.05〜0.8であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。白金原子と助触媒原子との含有量の比がかような範囲内の値であると、CO吸着とCO酸化促進とのバランスに優れる触媒が提供されうる。ただし、この範囲を外れる形態の触媒もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
本発明の作用および効果が損なわれないのであれば、上述した各金属原子以外の金属原子が白金粒子34および/または助触媒粒子24の一成分として本発明の触媒中に含有されてもよい。例えば、白金原子以外にも、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの他の貴金属原子が含有されうる。これらの貴金属原子は、図2に示す白金粒子34と同様の粒子、または白金原子との合金の粒子として、第1の無機担体36に担持されることが好ましい。さらに、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムなどの希土類原子や、他の遷移金属原子が含有されてもよい。これらの原子は、図3に示す助触媒粒子24と同様の粒子、または助触媒原子との合金の粒子として、第2の無機担体26に担持されることが好ましい。なお、これらの金属原子の無機担体(26、36)への担持量は、特に制限されないが、CO選択酸化触媒10の全量に対して、金属原子換算で0.05〜3質量%程度が適当である。
【0051】
さらに、本発明のCO選択酸化触媒10において、コア部20および/またはシェル部30は、必要に応じて、それぞれを構成する触媒粉末に加えてその他の添加剤を含んでもよい。かような添加剤は、バインダとして添加されるものであり、コア部20の造粒やシェル部30によるコア部20の被覆の際に用いられ、マイクロカプセル構造の安定性を向上させうる。かようなバインダとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、などの無機バインダの他、パラフィンワックス、アルコール系の有機バインダも用いられる。なお、図1に示す第1実施形態において、コア部20にはバインダとしてパラフィンワックスを用いており、シェル部30はバインダとしてアルミナゾルを含む。
【0052】
[製造方法]
本実施形態のCO選択酸化触媒10は、例えば、「木村、西井、長島、堀尾、流動層シンポジウム講演論文集、vol.8th、P195―202(2002.12.05)」に記載の手法を参照することにより、製造されうる。
【0053】
すなわち、本実施形態のCO選択酸化触媒10の製造方法の一例においては、まず、白金原子を含有する白金粒子を第1の無機担体に担持させることにより、白金触媒粉末を調製する(白金触媒粉末調製工程)。一方、コバルト、ニッケル、マンガン、および銅からなる群から選択される助触媒原子を含有する助触媒粒子を第2の無機担体に担持させることにより、助触媒粉末を調製する(助触媒粉末調製工程)。その後、前記助触媒粉末を造粒してコア部を形成する(コア部形成工程)。最後に、前記コア部の周囲を前記白金触媒粉末で被覆してシェル部を形成する(シェル部形成工程)ことで、CO選択酸化触媒が完成しうる。以下、かような製造方法について工程順に詳細に説明するが、下記の形態のみには制限されず、その他の手法によっても製造可能である。また、以下の説明では、無機担体としてアルミナを用いる場合を例に挙げて記載する。ただし、アルミナ以外の無機担体が用いられてもよいことは、上述した通りである。
【0054】
[白金触媒粉末調製工程]
まず、白金触媒粉末を調製する。この工程において調製される白金触媒粉末は、後述するシェル部形成工程において、助触媒粉末からなるコア部を被覆する成分として用いられる。なお、調製される白金触媒粉末の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
白金触媒粉末としては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。
【0056】
白金触媒粉末を自ら調製する場合には、例えば、無機担体(第1の無機担体)であるアルミナに白金原子を担持させ、焼成することにより、アルミナの表面に白金粒子を成長させて、白金触媒粉末とするとよい。以下、かような手法により白金触媒粉末を調製する具体的な方法を説明する(後述する実施例も参照)。ただし、その他の手法により白金触媒粉末を調製しても、勿論よい。
【0057】
初めに、無機担体(第1の無機担体)として、アルミナを準備する。ここで、準備されるアルミナ(第1の無機担体)の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
アルミナとしては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。ここでは、第1の無機担体としてのアルミナを自ら調製する場合の一手法について説明する。
【0059】
まず、アルミナ原料を準備する。アルミナ原料は、焼成によりアルミナとなりうる原料であれば特に制限されない。アルミナ原料としては、例えば、ベーマイトアルミナ、ギブサイトなどの水酸化アルミニウムのほか、γアルミナ、θアルミナ、αアルミナなどが挙げられる。新たに開発された材料がアルミナ原料として用いられてもよい。
【0060】
続いて、アルミナ原料を焼成する。これにより、アルミナが得られる。
【0061】
焼成の具体的な手法や焼成条件については特に制限はなく、触媒調製分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成手段としては、例えば、従来公知の焼成炉が挙げられる。
【0062】
ここで、焼成条件を調節することによって、得られるアルミナの比表面積や結晶状態を制御可能である。例えば、焼成温度を低くするか、または焼成時間を短くすることによって、比表面積が比較的大きいアルミナが得られる。一方、焼成温度を高くするか、または焼成時間を長くすることによって、比表面積が比較的小さいアルミナが得られる。好ましい焼成条件として、焼成温度は、好ましくは500〜1200℃、より好ましくは800〜1100℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは2〜8時間である。かような焼成条件によれば、好ましい構成として上述した、比較的大きい比表面積(30〜250m/g程度)を有するアルミナが得られる。場合によっては、異なる温度で2回以上焼成を行ってもよい。焼成雰囲気についても特に制限はなく、例えば、空気雰囲気や窒素雰囲気の下で焼成が行われうる。
【0063】
必要であれば、焼成後に、得られたアルミナを粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有するアルミナのみを選別してもよい。
【0064】
次に、上記で準備したアルミナ(第1の無機担体)に、白金原子を担持させるための溶液を調製する。
【0065】
具体的には、白金イオンが溶解した溶液(以下、単に「白金原子含有溶液」とも称する)を調製する。この白金原子含有溶液は、白金原子を上記で準備したアルミナ(第1の無機担体)に担持させる目的で、後述する担持工程において用いられる。
【0066】
この白金原子含有溶液を調製する工程では、まず、白金原料である白金化合物を準備する。さらに、白金化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に白金化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、白金原子含有溶液を調製する。
【0067】
白金原料である白金化合物としては、金属塩の形態の化合物が挙げられ、例えば、ジニトロジアンミン白金、塩化白金酸などが挙げられる。これらの化合物は、入手が容易で触媒調製時の原料として広く用いられており、アルミナ(第1の無機担体)へ担持する際の取扱いも簡便である。
【0068】
白金原子含有溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0069】
白金原子含有溶液中の白金原子の濃度は特に制限されず、上記で準備したアルミナ(第1の無機担体)の量や得られる白金触媒粉末における所望の含有量、担持方法などを考慮して、適宜調節されうる。
【0070】
得られる白金触媒粉末において、白金原子以外の金属原子(特に、貴金属原子)をアルミナ(第1の無機担体)に担持させたい場合には、本工程において、白金原子含有溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加し、必要に応じて撹拌して、溶解させるとよい。
【0071】
その後、上記で調製した白金原子含有溶液に溶解している白金原子を、上記で準備したアルミナ(第1の無機担体)に担持させる。
【0072】
担持させるための具体的な手法としては、例えば、含浸法、共沈法、競争吸着法などの触媒調製分野において従来公知の手法が採用されうる。処理条件は、採用される手法に応じて適宜選択されうるが、通常は、常温〜80℃にて0.5〜4時間程度、アルミナ(第1の無機担体)と白金原子含有溶液とを接触させればよい。
【0073】
アルミナ(第1の無機担体)に白金原子を担持させた後、必要に応じてこれを乾燥させる。乾燥させるための具体的な手法としては、例えば、自然乾燥、蒸発乾固のほか、ロータリーエバポレータや送風乾燥機等を用いた乾燥などが採用されうる。乾燥時間は、採用される手法に応じて適宜設定されうる。場合によっては、この乾燥段階を省略し、後述する焼成工程において乾燥させることとしてもよい。
【0074】
続いて、白金原子が担持されたアルミナ(第1の無機担体)を焼成する。これにより、アルミナ(第1の無機担体)の表面において白金粒子が成長し、白金触媒粉末が得られる。
【0075】
焼成の具体的な手法や焼成条件については特に制限はなく、触媒調製分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成条件について一例を挙げると、焼成温度は、好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜4時間、より好ましくは2〜3時間である。場合によっては、異なる温度で2回以上焼成を行ってもよい。焼成雰囲気についても特に制限はなく、例えば、空気雰囲気や窒素雰囲気の下で焼成が行われうる。
【0076】
必要であれば、焼成後に、得られた白金含有触媒粉末を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する粉末のみを選別してもよい。
【0077】
[助触媒粉末調製工程]
一方、助触媒粉末を調製する。この工程において調製される助触媒粉末は、後述するコア部形成工程において造粒され、本発明のCO選択酸化触媒のコア部とされる。なお、調製される助触媒粉末の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0078】
助触媒粉末としては、自ら調製したものを用いてもよいし、商品が市販されている場合には、その商品を購入して用いてもよい。
【0079】
助触媒粉末を自ら調製する場合には、例えば、無機担体(第2の無機担体)であるアルミナに助触媒原子を担持させ、焼成することにより、アルミナの表面に助触媒粒子を成長させて、助触媒粉末とするとよい。以下、かような手法により助触媒粉末を調製する具体的な方法を説明する(後述する実施例も参照)。ただし、その他の手法により助触媒粉末を調製しても、勿論よい。
【0080】
初めに、助触媒原子を担持させるための無機担体(第2の無機担体)として、アルミナを準備する。ここで、準備されるアルミナ(第2の無機担体)の好ましい構成については、上記の本発明の第1の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。また、その調製方法としては、第1の無機担体としてのアルミナについて上記の[白金触媒粉末調製工程]の欄で説明した手法が同様に採用されうる。ただし、好ましい焼成条件として、焼成温度は、好ましくは1000〜1200℃、より好ましくは1000〜1100℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは2〜8時間である。かような焼成条件によれば、好ましい構成として上述した、比較的小さい比表面積(10〜120m/g程度)を有するアルミナが得られる。なお、この場合のアルミナは、γアルミナ、δアルミナ、θアルミナ、およびαアルミナなどを含み、焼成温度が高いとθアルミナおよびαアルミナの比率が増す。
【0081】
次に、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)に、助触媒原子を担持させる。
【0082】
まず、助触媒原子のイオンが溶解した溶液(以下、単に「助触媒原子含有溶液」とも称する)を調製する。この助触媒原子含有溶液は、助触媒原子をアルミナ(第2の無機担体)に担持させる目的で、後述する担持工程において用いられる。
【0083】
この助触媒原子含有溶液を調製する工程では、まず、助触媒原子の原料として、助触媒原子を含有する化合物(以下、単に「助触媒化合物」とも称する)を準備する。さらに、この助触媒化合物を溶解させるための溶媒を準備する。その後、準備した溶媒に助触媒原子の原料である助触媒化合物を添加し、必要に応じて撹拌して、助触媒原子含有溶液を調製する。
【0084】
助触媒原子の原料である助触媒化合物としては、金属塩の形態の化合物が挙げられ、例えば、助触媒原子(コバルト、マンガン、ニッケル、銅)の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、炭酸塩などの化合物が例示される。これらの化合物は、入手が容易で触媒調製時の原料として広く用いられており、アルミナ(第2の無機担体)へ担持する際の取扱いも簡便である。
【0085】
助触媒原子含有溶液の調製に用いられる溶媒としては、水やエタノール等が例示されるが、これらに制限されることはない。
【0086】
助触媒原子含有溶液中の助触媒原子の濃度は特に制限されず、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)の量や得られる助触媒粉末における所望の含有量、担持方法などを考慮して、適宜調節されうる。
【0087】
得られる助触媒粉末において、助触媒原子以外の金属原子(例えば、その他の遷移金属原子)をアルミナ(第2の無機担体)に担持させたい場合には、本工程において、助触媒原子含有溶液中に所望の成分を所望の量だけ添加するとよい。この際、所望の成分は、やはり金属塩の形態で溶媒中に添加し、必要に応じて撹拌して、溶解させるとよい。
【0088】
その後、上記で調製した助触媒原子含有溶液に溶解している助触媒原子を、上記で準備したアルミナ(第2の無機担体)に担持させ、必要に応じて乾燥させる。担持や乾燥の具体的な手法や条件について特に制限はなく、白金触媒粉末について上記の[白金触媒粉末調製工程]の欄で説明した形態が同様に採用されうる。このため、ここでは説明を省略する。
【0089】
続いて、助触媒原子が担持されたアルミナ(第2の無機担体)を焼成する。これにより、アルミナ(第2の無機担体)の表面において助触媒粒子が成長し、助触媒粉末が得られる。
【0090】
焼成の具体的な手法や焼成条件についても特に制限はなく、上記の[白金触媒粉末調製工程]の欄で説明した形態が同様に採用されうる。このため、ここでは説明を省略する。
【0091】
必要であれば、焼成後に、得られた助触媒粉末を粉砕し、篩分けすることで、所望の粒子径を有する粉末のみを選別してもよい。
【0092】
[コア部形成工程]
続いて、上記で調製した助触媒粉末を造粒する。これにより、本発明のCO選択酸化触媒のコア部が形成される。
【0093】
造粒にあたっては、まず、上記で調製した助触媒粉末と、造粒に用いるバインダを準備する。ただし、バインダを用いなくとも造粒が可能なのであれば、バインダの使用は必ずしも必須ではない。準備される助触媒粉末の好ましい構成については、上記の本実施形態の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでも説明を省略する。バインダとしては、例えば、パラフィンワックスが用いられうる。
【0094】
次いで、上記で準備した助触媒粉末およびバインダを、造粒装置中に仕込む。各成分の仕込み量は特に制限されないが、助触媒粉末100質量部に対して、バインダを3〜7質量部程度仕込めばよい。造粒装置の具体的な形態は特に制限されず、粉末の造粒について従来公知の知見が適宜参照されうる。造粒装置としては、例えば、圧力スイング造粒機、転動造粒機などが挙げられる。
【0095】
その後、造粒機を駆動し、造粒を行う。造粒条件は特に制限されず、造粒により得られる粒子の所望のサイズやコストなどを考慮することにより、適宜設定されうる。一例を挙げると、造粒温度は40〜70℃程度であり、造粒時間は10〜40分時間程度である。また、造粒時には、通常、球体粒子を形成させる目的で、乾燥空気を造粒機中に導入する。導入ガスの温度を調整することで造粒時の温度条件を制御することも可能である。この際、バインダの添加量や造粒時の温度条件を調節することにより、コア部のサイズが制御されうる。
【0096】
[シェル部形成工程]
続いて、上記で調製した白金触媒粉末を用い、同じく上記で調製したコア部の表面を被覆する。
【0097】
被覆にあたっては、まず、上記で造粒して得たコア部と、同じく上記で調製した白金触媒粉末とを準備する。準備されるコア部および白金触媒粉末の好ましい形態については、上記の本実施形態の[構成]の欄において既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0098】
次いで、上記で準備したコア部および白金触媒粉末を、被覆装置中に仕込む。各成分の仕込み量は特に制限されず、形成されるシェル部の所望のサイズや、コア部に含まれる助触媒粉末とシェル部に含まれる白金触媒粉末との所望の含有量の比などを考慮して、適宜調節されうる。一例を挙げると、コア部100質量部に対して、白金触媒粉末を10〜100質量部程度仕込めばよい。被覆装置の具体的な形態は特に制限されず、粉末による他の粉末の被覆について従来公知の知見が適宜参照されうる。被覆装置としては、例えば、加振乾燥機、噴霧乾燥機が挙げられる。なお、白金触媒粉末を用いてコア部の周囲を被覆する際には、被覆に用いる装置を加振するとよい。加振により、白金触媒粉末による被覆が効率的に行われうる。また、被覆時には、アルミナゾル、シリカゾルなどの適当なバインダを噴霧してもよい。バインダを噴霧することにより、コア部の確実な被覆が可能となる。
【0099】
続いて、コア部の周囲が白金触媒粉末により被覆されてなる粉末を、焼成する。これにより、白金触媒粉末からなるシェル部が前記コア部の周囲に形成され、本実施形態のCO選択酸化触媒が完成する。
【0100】
焼成の具体的な形態は特に制限されず、粉体加工の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。焼成温度の一例を挙げると、好ましくは200〜500℃程度であり、より好ましくは400〜450℃である。
【0101】
なお、本実施形態のCO選択酸化触媒をモノリス触媒の形態に加工するには、例えば、製造されたCO選択酸化触媒に、適当な溶媒やバインダ(例えば、アルミナゾルなど)を添加して混合し、モノリス担体へコーティングするためのコーティングスラリーを調製する。その後、前記コーティングスラリーをモノリス担体の内表面へコーティングし、必要に応じて乾燥および焼成処理を施せばよい。モノリス担体の形態は特に制限されないが、セラミックスや金属から構成されるハニカム担体のほか、同様の材料から構成されるフォーム成形体が、モノリス触媒の担体として用いられうる。なお、触媒が熱交換器と一体化されてなる形態では、本発明のCO選択酸化触媒を熱交換器のフィン部にコーティングして用いてもよい。
【0102】
コーティングスラリーをモノリス担体や熱交換器のフィン部へコーティングするための手法は特に制限されず、例えば、吹き付け法、浸漬法といった従来公知の手法が用いられうる。また、乾燥および焼成の具体的な手法および条件も特に制限されず、触媒調製分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0103】
以上、助触媒粉末からなるコア部と、白金触媒粉末からなるシェル部とから構成される第1実施形態のCO選択酸化触媒について、図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。例えば、本発明のCO選択酸化触媒は、白金触媒粉末からなるコア部と、助触媒粉末からなるシェル部とから構成されてもよい。かような形態の触媒は、第1実施形態について上述した製造方法を参照することにより、同様に製造されうる。ただし、より効率的にCOを酸化除去するという観点からは、助触媒粉末によりコア部が構成され、白金触媒粉末によりシェル部が構成される第1実施形態が、より好ましい形態として採用されうる。これは、かような構成とすることで、助触媒原子とCOとの相互作用が抑制され、CO酸化活性種がより効率的に生成することに起因するものと推測される。
【0104】
(第2実施形態)
第2実施形態のCO選択酸化触媒は、マイクロカプセル構造のシェル部が触媒金属を含まないアルミナから構成され、このアルミナからなるシェル部の表面に白金触媒粉末が担持されている点で、第1実施形態とは異なる。以下、第2実施形態のCO選択酸化触媒について、図面を用いて詳細に説明する。
【0105】
図4は、第2実施形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【0106】
図4に示すように、第2実施形態のCO選択酸化触媒10も、マイクロカプセル構造を有する点では上記の第1実施形態と同様である。このマイクロカプセル構造は、第1実施形態と同様に、コア部20と、シェル部30とからなる。第2実施形態において、コア部20は、第1実施形態と同様に助触媒粉末から構成される。これに対し、シェル部30は、第1実施形態とは異なり、アルミナから構成される。そして、アルミナからなるシェル部30の表面に、白金触媒粉末32が担持されている。なお、図4においては、白金触媒粉末32を構成する第1の無機担体36のみを図示し、当該担体に担持された白金粒子の図示は省略されている。
【0107】
以下、第2実施形態のCO選択酸化触媒10の好ましい構成について説明する。
【0108】
第2実施形態のCO選択酸化触媒10に含まれる白金触媒粉末32および助触媒粉末22のそれぞれの具体的な形態については、図2および図3を参照して上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0109】
上記のような構成を有する本発明のCO選択酸化触媒10がそのCO選択酸化活性を発揮する際には、まず、シェル部30の表面に担持された白金触媒粉末32に含まれる白金原子にCOが吸着される。一方、ガス中の酸素や水がコア部20中へ拡散し、助触媒原子の作用によりCO酸化活性種が生成する。そして、生成したCO酸化活性種がアルミナからなるシェル部30の細孔を拡散してシェル部30の表面に到達し、表面に存在する白金触媒粉末の白金原子に吸着されたCOの酸化が促進される。ただし、メカニズムにより本発明の技術的範囲は影響を受けない。
【0110】
本実施形態のCO選択酸化触媒10において、コア部20およびシェル部30のサイズや、シェル部30の表面に担持される白金触媒粉末32の担持形態は特に制限されない。これらの形態は、白金原子および助触媒原子の所望の含有量や、採用する製造方法に応じて変動しうる。
【0111】
第2実施形態においても、助触媒粉末22からなるコア部20の直径やアルミナからなるシェル部30の厚さの好ましい範囲については、上述した第1実施形態の好ましい形態が同様に採用されうる。従って、ここでは詳細な説明を省略する。
【0112】
また、白金原子や助触媒原子の含有量や、これらの原子以外に含まれうる他の原子の形態などについても、上述した第1実施形態の好ましい形態が同様に採用されうるため、ここでは説明を省略する。
【0113】
以上、シェル部30がアルミナから構成される形態を例に挙げて第2実施形態を説明したが、シェル部30の構成材料はアルミナのみには制限されず、その他の金属酸化物が、シェル部30の構成材料として同様に用いられうる。アルミナ以外の使用可能な金属酸化物の一例としては、例えば、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、マグネシアなどが挙げられる。
【0114】
第2実施形態において、シェル部30を構成する金属酸化物の平均粒子径について特に制限はないが、好ましくは10〜40μmであり、より好ましくは20〜30μmである。この平均粒子径が小さすぎると、シェル部30に形成される細孔の径が小さくなり、シェル部30を介したガスやCO酸化活性種の拡散が充分に行われなくなる虞がある。一方、この平均粒子径が大きすぎると、シェル部30に形成される細孔の径が大きくなり、白金触媒粉末32がシェル部30表面へ有効に担持されない虞がある。さらに、シェル部30の形成自体もまた、困難となる虞がある。
【0115】
[製造方法]
本実施形態のCO選択酸化触媒10を製造する際には、まず、上述の第1実施形態の製造方法と同様の手法により、白金触媒粉末および助触媒粉末を調製する(白金触媒粉末調製工程、および助触媒粉末調製工程)。その後、前記助触媒粉末を造粒してコア部を形成する(コア部形成工程)。続いて、前記コア部の周囲をアルミナで被覆してコア−シェル型の助触媒粉末とする(シェル部形成工程)。最後に、シェル部の表面に上記の白金触媒粉末を担持させることで、CO選択酸化触媒が完成しうる(白金触媒粉末担持工程)。以下、かような製造方法について工程順に詳細に説明するが、下記の形態のみには制限されず、その他の手法によっても製造可能である。
【0116】
[白金含有触媒粉末調製工程および助触媒粉末調製工程]
まず、白金触媒粉末および助触媒粉末を、それぞれ調製する。
【0117】
第2実施形態において用いられる白金含有触媒粉末および助触媒粉末は、上記の第1実施形態の欄において説明したのと同様の手法により、調製されうる。従って、ここでは詳細な説明を省略する。なお、本工程において調製される助触媒粉末は、後述するコア部形成工程において造粒され、本発明のCO選択酸化触媒のコア部とされる。一方、本工程において調製される白金触媒粉末は、後述する白金触媒粉末担持工程においてシェル部の表面に担持される
[コア部形成工程]
続いて、上記で調製した助触媒粉末を造粒する。これにより、本発明のCO選択酸化触媒のコア部が形成される。
【0118】
本工程において助触媒粉末を造粒してコア部を形成する手法についても、上述の第1実施形態の欄において説明したのと同様の手法が採用されうる。また、形成されるコア部の形態についても、上述の本実施形態の[構成]の欄において説明したとおりである。従って、ここでは詳細な説明を省略する。
【0119】
[シェル部形成工程]
その後、上記で調製したコア部の表面を、金属酸化物であるアルミナを用いて被覆し、その後焼成する。これにより、アルミナからなるシェル部が前記コア部の周囲に形成され、コア−シェル型の助触媒粉末が調製される。
【0120】
本工程において用いられるアルミナの具体的な形態や、本工程における被覆および焼成の具体的な手段についても、上述の第1実施形態の欄において説明した手法が同様に採用されうる。
【0121】
被覆する際のコア部およびアルミナの配合量は特に制限されず、形成されるシェル部の厚さや、製造するCO選択酸化触媒の所望のサイズなどを考慮して、適宜調節されうる。
【0122】
[白金触媒粉末担持工程]
最後に、上記で調製したコア−シェル型の助触媒粉末の表面に、同じく上記で調製した白金触媒粉末を担持させ、焼成する。これにより、本実施形態のCO選択酸化触媒が完成する。
【0123】
コア−シェル型の助触媒粉末の表面に白金触媒粉末を担持させるには、例えば、これらの2成分を混合すればよい。
【0124】
混合の具体的な手法は特に制限されず、従来公知の混合手段が適宜用いられうる。混合手段としては、例えば、乾式混合、湿式混合、乾燥空気を吹き込んでの噴霧混合などが挙げられる。
【0125】
混合する際のコア−シェル型の助触媒粉末および白金触媒粉末の配合量は特に制限されず、CO選択酸化触媒における白金原子と助触媒原子との含有量比の所望値などを考慮して、適宜調節されうる。
【0126】
コア−シェル型の助触媒粉末と白金触媒粉末とを混合する際には、アルミナゾル、シリカゾル等のバインダを添加剤として添加してもよい。これらの添加剤の添加量は特に制限されず、適宜調節されうる。
【0127】
コア−シェル型の助触媒粉末と白金触媒粉末とを混合した後、混合粉末を焼成する。これにより、第2実施形態のCO選択酸化触媒が完成する。本工程における焼成の具体的な手法も特に制限されず、上記の[シェル部形成工程]における焼成の形態が同様に採用されうる。
【0128】
なお、上述の第1実施形態の欄の説明を参照して、第2実施形態のCO選択酸化触媒をモノリス担体や熱交換器のフィン部へコーティングし、触媒として用いても勿論よい。
【0129】
[CO選択酸化反応装置]
本発明のCO選択酸化触媒は、例えば、CO選択酸化反応装置に配置される。本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO選択酸化反応装置は、例えば、固体高分子型燃料電池に供給される水素リッチガス中のCOを選択的に酸化除去するために用いられうる。
【0130】
以下、本発明のCO濃度低減装置について、図面を用いて詳細に説明する。図5は、本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO選択酸化反応装置が用いられている燃料電池システムの概略図である。
【0131】
まず、燃料改質装置110に、燃料を供給する。供給される燃料は、燃料改質触媒との接触により水素リッチガスを生成しうるものであれば特に制限されない。燃料としては、例えば、メタン、イソオクタン、ガソリン、軽油、ナフサなどの炭化水素系燃料や、エタノール、メタノールなどのアルコール系燃料などが用いられうる。場合によっては、その他の燃料が用いられてもよい。
【0132】
燃料に加えて水または水蒸気を同時に燃料改質装置110に供給することで、燃料改質装置110においては水蒸気改質反応が進行し、燃料から水素リッチガスが生成しうる。また、水蒸気に加えて、酸素を含むガスをさらに供給することにより、水蒸気改質反応に加えて部分酸化反応が併発するオートサーマル改質反応が進行し、さらに効率的に水素リッチガスが生成しうる。
【0133】
次いで、燃料改質装置110において生成した水素リッチガスを、シフト触媒を備えたシフト反応装置120に供給する。シフト反応装置120においては、水素リッチガス中のCOがシフト触媒と接触し、COシフト反応(CO+H0→CO+H)を介してCOへと転化されて、水素リッチガス中のCO濃度が1体積%程度まで低減される。
【0134】
その後、シフト反応装置120を通過した水素リッチガスを、本発明のCO選択酸化触媒10を備えたCO選択酸化反応装置130に供給する。CO選択酸化反応装置130において、水素リッチガス中のCOは本発明のCO選択酸化触媒と接触し、CO選択酸化反応(2CO+O→2CO)を介してCOへと転化される。これにより、水素リッチガス中のCO濃度がppmオーダーにまで低減される。
【0135】
CO選択酸化反応装置130においてCO濃度がppmオーダーにまで低減された水素リッチガスは、固体高分子型燃料電池(PEFC)140の燃料として供給される。このPEFC140には、酸化剤として酸素含有ガス(例えば、空気など)が同時に供給される。これにより、PEFCにおいて発電反応が進行し、発生した電力は、例えば電気自動車などのモータを駆動するための電力として消費されうる。
【0136】
PEFC140からは、使用済み燃料および酸化剤が排出される。系全体のエネルギー効率を向上させうるという観点からは、燃焼装置150および蒸発装置160を設けるとよい。具体的には、燃焼装置150において上記の使用済み燃料および酸化剤を燃焼させ、蒸発装置160においてはこの際の燃焼熱を利用して水を蒸発させて、燃料改質装置110に供給される水蒸気を生成させる。なお、燃焼装置150および蒸発装置160には、必要に応じて炭化水素などを供給してもよい。
【0137】
上述したように、本発明のCO選択酸化触媒10は、高空間速度条件下においても低温触媒活性に優れる。よって本発明は、CO選択酸化反応装置や燃料電池システムなどの装置のより一層の小型化を可能とし、燃料電池自動車の実用化に大きく寄与しうる。
【0138】
以上、本発明のCO選択酸化触媒の好ましい用途として、固体高分子型燃料電池用CO選択酸化反応装置に配置されて燃料電池システムに用いられる場合を例に挙げて説明したが、かような用途のみには制限されない。本発明のCO選択的酸化触媒は、微量のCOを酸化除去する目的で、その他の用途にも適用されうる。その他の用途としては、例えば、トンネルのような密閉空間内におけるCO除去、エンジンや燃焼器からの排気中のCO除去等も挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施例のみには制限されない。
【0140】
<実施例1:第1実施形態>
以下の手法により、図1に示すような本発明の第1実施形態のCO選択酸化触媒を調製した。なお、助触媒原子としてはコバルト原子を採用した。
【0141】
[助触媒粉末調製工程]
以下の手法により、助触媒粉末を調製した。
【0142】
まず、助触媒粉末用の無機担体(第2の無機担体)の原料として、ベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。次いで、準備したベーマイトアルミナの未焼成粉末を電気炉中で600℃にて2時間、次いで1000℃にて2時間、さらに1100℃にて2時間焼成して、助触媒粉末用の無機担体(第2の無機担体)であるアルミナを得た。得られたアルミナの比表面積をBET法により測定したところ、68m/gであった。また、得られたアルミナの粒子径は約3.5〜4.5μmであった。
【0143】
一方、コバルト原料である硝酸コバルトの所定量を溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、コバルト原子含有溶液を準備した。
【0144】
続いて、上記で調製したアルミナ(第2の無機担体)の粉末を、同じく上記で調製したコバルト原子含有溶液に含浸させて、アルミナにコバルト原子を担持させた。さらに、コバルト原子を担持させたアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で500℃にて2時間焼成し、アルミナの表面にコバルト酸化物粒子を成長させて、助触媒粉末(コバルト触媒粉末)を調製した。なお、本工程においては、助触媒粉末(コバルト触媒粉末)の全量に対するコバルト原子の含有量が4.0質量%となるように、コバルト原料およびアルミナ(第2の無機担体)の量を調節した。また、得られた助触媒粉末(コバルト触媒粉末)の比表面積をBET法により測定したところ、64m/gであった。さらに、得られた助触媒粉末(コバルト触媒粉末)の粒子径は約4〜5μmであった。
【0145】
[コア部形成工程]
以下の手法により、上記で調製した助触媒粉末を造粒して、本実施例のCO選択酸化触媒のコア部を調製した。
【0146】
続いて、上記で調製した助触媒粉末(コバルト触媒粉末)(100質量部)に対して、パラフィンワックス(4質量部)を添加し、φ約5mmのアルミナボールを仕込み、アルミナポットミル中で乾式混合を行った。その後、得られた混合物を圧力スイング造粒機(不二パウダル株式会社製;DQ−LABO)中に仕込み、70℃の乾燥空気を吹き込みながら触媒粉末を造粒し、最終的にはアルミナボールを分離して、CO選択酸化触媒のコア部を調製した。得られたコア部の平均粒子径は、SEMで観察したところ、約320μmであった。
【0147】
[白金触媒粉末担調製工程]
以下の手法により、白金触媒粉末を調製した。
【0148】
まず、白金触媒粉末用の無機担体(第1の無機担体)の原料として、上記と同様のベーマイトアルミナの未焼成粉末を準備した。次いで、準備したベーマイトアルミナの未焼成粉末を電気炉中で600℃にて2時間焼成して、白金触媒粉末用の無機担体(第1の無機担体)であるアルミナを得た。得られたアルミナの比表面積をBET法により測定したところ、175m/gであった。また、得られたアルミナの平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定したところ、約2.8μmであった。
【0149】
一方、白金原料であるジニトロジアンミン白金の所定量を溶媒である蒸留水に添加し、撹拌して、白金原子含有溶液を準備した。
【0150】
続いて、上記で調製したアルミナ(第1の無機担体)の粉末を、同じく上記で調製した白金原子含有溶液に含浸させて、アルミナに白金原子を担持させた。さらに、白金原子を担持させたアルミナを120℃にて24時間以上乾燥させた後、電気炉中で500℃にて2時間焼成し、アルミナの表面に白金粒子を成長させて、白金触媒粉末を調製した。なお、本工程においては、白金触媒粉末の全量に対する白金原子の含有量が2.5質量%となるように、白金原料およびアルミナ(第1の無機担体)の量を調節した。また、得られた白金触媒粉末の比表面積をBET法により測定したところ、170m/gであった。さらに、得られた白金触媒粉末の平均粒子径は、約2.2μmであった。
【0151】
[シェル部形成工程]
以下の手法により、上記で調製した、助触媒粉末(コバルト触媒粉末)を含むコア部の表面に、白金触媒粉末を含むシェル部を形成して、CO選択酸化触媒を完成させた。
【0152】
まず、上記で調製したコア部(造粒後のコバルト触媒粉末)(60質量部)、および上記で調製した白金触媒粉末(40質量部)を、加振機能を有する噴霧乾燥機中に仕込んだ。次いで、バインダであるアルミナゾル(アルミナ(平均粒子径:13μm)を20質量%含有)を約0.15g/minの速度で噴霧しながら、当該乾燥機を約1000rpmの速度で60℃にて30分間撹拌して、白金触媒粉末を含むシェル部でコア部の表面を被覆した。さらに、120℃にて30分間乾燥後、450℃にて1時間焼成して、本実施例のCO選択酸化触媒を完成させた。なお、得られたCO選択酸化触媒の平均粒子径をSEMで観測したところ、約400μmであった。
【0153】
[コーティング工程]
上記で調製したCO選択酸化触媒(40質量部)、上記と同様のバインダ(アルミナゾル)(10質量部)、および溶媒としての蒸留水(50質量部)を撹拌機中に仕込み、1時間混合して、CO選択酸化触媒のコーティングスラリーを調製した。
【0154】
上記で調製したコーティングスラリーを、モノリス担体であるコージェライト製ハニカム担体(400セル/インチ;30mL)にコーティングし、120℃にて1時間乾燥後、電気炉中で450℃にて1時間焼成することにより、モノリス担体の内表面に触媒層を形成して、モノリス触媒を調製した。この際、コーティングスラリーのコーティング量を、コーティングスラリー中に含有される触媒の全量(コーティング工程において用いられるバインダ(アルミナゾル)を除く)がモノリス担体の体積に対して約280g/Lとなるように調節した。なお、このコーティング量のうち、白金触媒粉末相当分は約90g/Lであり、助触媒粉末(コバルト触媒粉末)相当分は約130g/Lであり、シェル部に含まれるアルミナ粒子相当分は約60g/Lである。
【0155】
<実施例2>
助触媒原子として、コバルト原子に代えてニッケル原子を採用し、助触媒粉末(ニッケル触媒粉末)の全量に対するニッケル原子の含有量を5.0質量%としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、CO選択酸化触媒を調製し、さらにモノリス触媒を調製した。
【0156】
<実施例3>
助触媒原子として、コバルト原子に代えてマンガン原子を採用し、助触媒粉末(マンガン触媒粉末)の全量に対するマンガン原子の含有量を5.0質量%としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、CO選択酸化触媒を調製し、さらにモノリス触媒を調製した。
【0157】
<実施例4>
助触媒原子として、コバルト原子に代えて銅原子を採用し、助触媒粉末(銅触媒粉末)の全量に対する銅原子の含有量を2.0質量%としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、CO選択酸化触媒を調製し、さらにモノリス触媒を調製した。
【0158】
<比較例1:混合触媒>
上記の実施例1において調製した助触媒粉末(コバルト触媒粉末)および白金触媒粉末を1:1の質量比でボールポットミル中に仕込み、室温にて約20分間混合して、本比較例のCO選択酸化触媒を調製した。
【0159】
次いで、実施例1と同様の手法により、上記で調製したCO選択酸化触媒を含むコーティングスラリーを調製した。その後、当該スラリーを実施例1と同様の手法によりモノリス担体の内表面にコーティングし、乾燥および焼成して、本比較例のモノリス触媒を調製した。この際、コーティングスラリーのコーティング量を、コーティングスラリー中に含有される触媒の全量(コーティング工程において用いられるバインダ(アルミナゾル)を除く)がモノリス担体の体積に対して約180g/Lとなるように調節した。なお、このコーティング量のうち、白金触媒粉末相当分、および助触媒粉末(コバルト触媒粉末)相当分は、それぞれ約90g/Lである。
【0160】
<比較例2:白金触媒粉末のみ>
上記の実施例1において調製した白金触媒粉末を、本比較例のCO選択酸化触媒とした。
【0161】
次いで、実施例1と同様の手法により、上記のCO選択酸化触媒(白金触媒粉末)を含むコーティングスラリーを調製した。その後、当該スラリーを実施例1と同様の手法によりモノリス担体の内表面にコーティングし、乾燥および焼成して、本比較例のモノリス触媒を調製した。この際、コーティングスラリーのコーティング量を、コーティングスラリー中に含有される触媒の全量(コーティング工程において用いられるバインダ(アルミナゾル)を除く)がモノリス担体の体積に対して約100g/Lとなるように調節した。
【0162】
<試験例>
上記の実施例および比較例で得られたモノリス触媒に対し、モデルガス(H:38体積%、CO:16体積%、HO:23体積%、CO:0.6体積%、O:0.9体積%、N:残り)をガス空間速度(ガスの総流量(cm/h)/モノリス触媒体積(cm))が100000h−1となるように供給し、CO除去試験を行った。反応温度は160℃に維持し、モノリス触媒の出口ガス中のCO濃度を測定した。それをもとに、下記数式1により、CO転化率を算出した。
【0163】
【数1】

【0164】
すなわち、CO転化率が高いほど、CO除去性能に優れる触媒であるといえる。
【0165】
各実施例および各比較例について算出されたCO転化率の値を、試験時の空間速度の値とともに下記の表1に示す。なお、下記の表1には、助触媒粉末の全量に対する助触媒原子の含有量、および白金触媒粉末の全量に対する白金原子の含有量の値をも示す。
【0166】
【表1】

【0167】
表1に示す結果から、白金触媒粉末と助触媒粉末とを別途調製し、これらをマイクロカプセル化することによって、CO選択酸化触媒のCO転化率が著しく向上しうることが示される。また、コバルト以外のマンガン、ニッケル、および銅を助触媒原子として採用した場合であっても、本発明の効果が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1実施形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【図2】第1実施形態のCO選択酸化触媒のシェル部を構成する白金触媒粉末の構成を説明するための拡大模式断面図である。
【図3】第1実施形態のCO選択酸化触媒のコア部を構成する助触媒粉末の構成を説明するための拡大模式断面図である。
【図4】第2実施形態のCO選択酸化触媒を示す模式断面図である。
【図5】本発明のCO選択酸化触媒が配置されたCO選択酸化反応装置が用いられている燃料電池システムの概略図である。
【符号の説明】
【0169】
10 CO選択酸化触媒、
20 コア部、
22 助触媒粉末、
24 助触媒粒子、
26 第2の無機担体、
30 シェル部、
32 白金触媒粉末、
34 白金粒子、
36 第1の無機担体、
100 燃料電池システム、
110 燃料改質装置、
120 シフト反応装置、
130 CO選択酸化反応装置、
140 固体高分子型燃料電池、
150 燃焼装置、
160 蒸発装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金原子、並びに、コバルト、マンガン、ニッケル、銅からなる群から選択される1種または2種以上の助触媒原子を含有する一酸化炭素選択酸化触媒であって、
コア部と、前記コア部の周囲を被覆するシェル部と、からなるマイクロカプセル構造を有し、
前記白金原子を含む白金粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金触媒粉末と、
前記助触媒原子を含む助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなり、白金原子を実質的に含有しない助触媒粉末と、
が、前記コア部、または前記シェル部もしくは前記シェル部の表面のいずれかに分離して配置されてなることを特徴とする、一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項2】
前記助触媒粉末が前記コア部に配置され、前記白金触媒粉末が前記シェル部もしくは前記シェル部の表面に配置されてなる、請求項1に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項3】
前記シェル部を構成する材料が金属酸化物である、請求項1または2に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項4】
前記シェル部を構成する材料が、平均粒子径10〜40μmのアルミナ粒子である、請求項3に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項5】
前記白金触媒粉末が、前記シェル部および前記シェル部の表面の双方に配置されてなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項6】
前記白金触媒粉末の全量に対する前記白金原子の含有量が、0.2〜3.0質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−289159(P2006−289159A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109184(P2005−109184)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】