三次元エコーデータ取込用超音波探触子
【課題】3Dプローブによって三次元空間を形成し、その三次元空間内に設定された切断面に相当する断層画像を表示する場合に、3Dプローブ(あるいは三次元空間)と、切断面との対応関係を容易に認識できるようにする。
【解決手段】3Dプローブ10にはθ方向に対応して第1物理マーク18が設けられ、φ方向に対応して第2物理マーク20が設けられる。三次元空間V内において設定された切断面を断層画像として表示する場合には、第1物理マーク18に対応する第1表示マークが表示され、第2物理マーク20に対応する第2表示マークが表示される。それらの表示マークにより断層画像の観察において切断面の位置、向きを直感的に認識できる。第1物理マークは、θ方向の基準点に対応し、あるいは、θ方向を含む切断面の向きに対応する。第2物理マークは、φ方向の基準点に対応し、あるいは、φ方向を含む切断面の向きに対応する。
【解決手段】3Dプローブ10にはθ方向に対応して第1物理マーク18が設けられ、φ方向に対応して第2物理マーク20が設けられる。三次元空間V内において設定された切断面を断層画像として表示する場合には、第1物理マーク18に対応する第1表示マークが表示され、第2物理マーク20に対応する第2表示マークが表示される。それらの表示マークにより断層画像の観察において切断面の位置、向きを直感的に認識できる。第1物理マークは、θ方向の基準点に対応し、あるいは、θ方向を含む切断面の向きに対応する。第2物理マークは、φ方向の基準点に対応し、あるいは、φ方向を含む切断面の向きに対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元エコーデータ取込用超音波探触子に関し、特に三次元エコーデータを取り込んで超音波画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元エコーデータ取込用超音波探触子(3Dプローブ)は、生体内に三次元エコーデータ取込空間(三次元空間)を形成するためのプローブである。その3Dプローブは、生体組織の三次元画像を形成する場合や三次元空間内に設定された切断面に相当する断層画像(組織画像、血流画像)などを形成する場合に用いられる。3Dプローブとしては、2Dアレイ振動子(スパースアレイ型を含む)を用いて超音波ビームを2次元走査するもの、1Dアレイ振動子を機械的に走査するもの、単振動子を機械的に2次元走査するもの、などが知られている。
【0003】
ところで、三次元空間内の切断面に相当する断層画像を形成し、それを表示する場合には、その表示された断層画像から、三次元空間(あるいは3Dプローブ)と断層画像(つまり切断面)との位置的関係を直感的に認識するのは困難である。具体的には、切断面と超音波ビームの第1及び第2走査方向との関係を理解するのが困難である。また、切断面の視点がその手前側にあるのか奥側にあるのかを理解するのが困難である。この問題は三次元画像を表示する場合にも生じ得る。いずれにしても、三次元空間に対する超音波診断において、ユーザーの画像観察上の便宜を図ることが要望されている。
【0004】
なお、従来の1Dアレイ振動子を有するローブにおいては、一般に、1Dアレイ振動子の一方端(電子走査の開始点に相当する基準端)に対応するケース側面に突起状の物理マーカーが設けられている。また、断層画像を表示する場合には、断層画像における基準端に相当する側(右側又は左側)に、物理マーカーに対応する表示マーカーが表示される。表示マーカーが表示された側を特定することにより、断層画像の視点が手前側にあるのか奥側にあるのかを把握できる。しかし、3Dプローブ及びそれを利用した断層画像表示においては、ユーザーの画像観察上の便宜が十分に図られていない現状にある。本願に関連する技術が以下の特許文献1−3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−269337号公報
【特許文献2】特開平07−2134521号公報
【特許文献3】特開平11−070110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、三次元エコーデータ取込空間内において取り込まれたデータに基づいて超音波画像を形成する場合に、その画像観察上の便宜を図ることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、3Dプローブと超音波画像との位置的関係を容易に理解できるようにすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、3Dプローブにおいて2つの走査方向を直感的に理解できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の好適な実施形態に係る超音波診断装置は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する三次元エコーデータ取込用超音波探触子と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第1走査方向及び前記第2走査方向を特定するための物理マーカー部と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子からの受信信号に基づいて、超音波画像を形成する画像形成手段と、前記超音波画像と共に、前記物理マーカー部に対応付けられた表示マーカー部を表示する表示処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、三次元エコーデータ取込用超音波探触子(3Dプローブ)の外表面に物理マーカー部が設けられ、超音波画像を表示する際には、物理マーカーに対応付けられた表示マーカー部が表示される。これにより、超音波画像の観察に当たって、3Dプローブとの位置的関係(あるいは、三次元エコーデータ取込空間(第1走査方向と第2走査方向)との位置的関係)を容易に把握できる。
【0011】
上記の3Dプローブはユーザによって把持され、体表面上に当接されるものであるのが望ましいが、体腔内に挿入されるものに応用することができる。上記の超音波画像は、切断面に相当する組織画像又は血流画像であるのが望ましい。但し、三次元画像を表示する場合にも上記構成を適用可能であり、その場合には、三次元画像と共に第1走査方向及び第2走査方向に対応する位置に表示マーカーが表示される。
【0012】
上記構成において、物理マーカー部は複数の物理マーカーによって構成されるのが望ましく、その場合には互いにその形態(色、形など)を異ならせるのが望ましい。また、表示マーカー部を、物理マーカー部の構成に合わせて、複数の表示マーカーによって構成するのが望ましく、その場合には、各表示マーカーの形態を、対応する物理マーカーの形態と同一又は類似にするのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記物理マーカー部は、前記第1走査方向に対応付けられた第1物理マーカーと、前記第2走査方向に対応付けられ、前記第1物理マーカーとは視覚的に異なる形態を有する第2物理マーカーと、で構成される。
【0014】
望ましくは、前記表示マーカー部は、前記第1物理マーカーに対応付けられた第1表示マーカーと、前記第2物理マーカーに対応付けられた第2表示マーカーと、で構成される。
【0015】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に直交する第1側面と、前記第2走査方向に直交する第2側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられる。
【0016】
望ましくは、前記第1側面は前記第1走査方向の基準端側の側面であり、前記第2側面は前記第2走査方向の基準端側の側面である。各側面は完全な平面でなくてもよく、もちろん曲面あるいは傾斜面であってもよい。各物理マーカーは、3Dプローブの下部(把持状態で露出する可能性が高い部位)に設けるのが望ましいが、その上部に設けることも可能である。各基準端は、電子走査(又は機械走査)の原点であるのが望ましい。もちろん、基準端とは反対側の端(終端)に対応して物理マークを設けるようにしてもよい。
【0017】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に広がった第2側面と、前記第2走査方向に広がった第1側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられる。第2側面は第2走査方向に直交し且つ第1走査方向と略平行な面であり、第1側面は第1走査方向に直交し且つ第2走査方向と略平行な面である。上記構成によれば、3Dプローブの各側面と各走査方向(あるいは各走査面)との対応関係を直感的に認識できる。
【0018】
望ましくは、前記第1物理マーカーは前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられる。この構成によれば、各物理マーカーの変位方向によって各走査方向の基準端を容易に認識することが可能である。
【0019】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、水平断面が略矩形の形状を有し、これにより4つの角部が構成され、前記4つの角部の内で特定の角部に前記物理マーカー部が設けられる。ここで、望ましくは、前記物理マーカー部は、前記第1走査方向の基準端及び前記第2走査方向の基準端の両方に対応する角部に設けられる。
【0020】
望ましくは、前記特定の角部は第1側面及び第2側面の連結によって構成され、前記物理マーカー部は、前記第1側面上に存在する一方の物理マーカーと、前記第2側面上に存在する他方の物理マーカーと、で構成される。一方の物理マーカーは、第1走査方向の基準端に対応する側面あるいは第1走査方向に平行な側面であることを表し、他方の物理マーカーは、第1走査方向の基準端に対応する側面あるいは第1走査方向に平行な側面であることを表す。つまり、2つの物理マーカーは別体で分離配置してもよいし一体的に結合してもよい。
【0021】
望ましくは、前記画像形成手段は、前記三次元エコーデータ取込空間内に設定された切断面の断層画像を形成し、前記表示マーカー部は、前記切断面と前記各走査方向との位置的関係に応じて、前記断層画像の近傍に又はその上に表示される。切断面は、第1走査方向、第2走査方向及び深さ方向の中から選択される2つの方向によって規定される面であるのが望ましい。但し、任意切断面を設定する場合にも本発明を応用することができる。
【0022】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を含む。また、望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及びその一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する。
【0023】
(2)本発明の好適な実施形態に係る超音波診断装置は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する三次元エコーデータ取込用超音波探触子と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第1走査方向に対応付けられた第1物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第2走査方向に対応付けられた第2物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子からの受信信号に基づいて、前記三次元エコーデータ取込空間に設定された切断面の断層画像を形成する画像形成手段と、前記第1物理マーカーに対応付けられた第1表示マーカーと前記第2物理マーカーに対応付けられた第2表示マーカーとを表示する手段であって、前記切断面と前記第1及び第2走査方向との位置的関係に応じて、前記断層画像と共に、前記第1表示マーカー及び前記第2表示マーカーの一方又は双方を表示する表示処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0024】
望ましくは、前記第1物理マーカーの形態と前記第1表示マーカーの形態とが対応付けられ、前記第2物理マーカーの形態と前記第2表示マーカーの形態とが対応付けられる。
【0025】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、を有し、前記第1側面に前記第1物理マーカーが設けられ、前記第2側面に前記第2物理マーカーが設けられる。
【0026】
上記構成において、望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示される。また望ましくは、前記切断面が前記第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第2基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。更に望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向及び第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示され、かつ、前記断層画像に対して前記第2基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記第1走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点であり、前記第2走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点である。
【0027】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に広がる第2側面と、前記第2走査方向に広がる第1側面と、を有し、前記第2側面において前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に前記第1物理マーカーが設けられ、前記第1側面において前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に前記第2物理マーカーが設けられる。各物理マークの変位によって各走査方向の基準点を容易に特定でき、断層画像を表示する場合においても、表面と裏面を容易に区別できる。
【0028】
上記構成において、望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1走査方向の基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示される。望ましくは、前記切断面が前記第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第2走査方向の基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向及び第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1走査方向の基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示され、かつ、前記断層画像に対して前記第2走査方向の基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記第1走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点であり、前記第2走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点である。
【0029】
(3)本発明に係る三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する手段であって、二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を有する手段として、又は、前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及び当該一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する手段として構成された送受波手段と、前記送受波手段を収容したケースと、前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第1表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第1走査方向を識別するための第1物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第2表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第2走査方向を識別するための第2物理マーカーと、を含むことを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、第1物理マーカーと第2物理マーカーとによって、第1走査方向と第2走査方向とを容易に識別できる。
【0031】
望ましくは、前記ケースは、前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられる。
【0032】
望ましくは、前記ケースは、前記第1走査方向に広がる第2側面と、前記第2走査方向に広がる第1側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられる。望ましくは、前記第1物理マーカーは前記第2側面における前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面における前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられる。
【0033】
望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは色及び形の少なくとも一方が互いに異なる。また、望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の一方は隆起形状を有し、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の他方は窪み形状を有する。凹凸を利用して区別すれば、触感によっても各走査方向を容易に認識できる。
【0034】
望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは、前記ケースの第1側面と前記第2側面に跨って一体形成される。
【0035】
望ましくは、前記ケースと前記第1及び第2物理マーカーは互いに色が異なる。この構成によれば、ケースの背景色に対して物理マーカー部の視認性を向上できる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザーに対して超音波画像を観察する場合においてその便宜を図ることができ、特に3Dプローブと超音波画像との位置的関係を容易に認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。3Dプローブ10は、三次元エコーデータ取込用超音波探触子である。すなわち、超音波ビームBをθ方向(第1走査方向)及びφ方向(第2走査方向)の両方向に走査し、これにより三次元エコーデータ取込空間(三次元空間)Vを形成するものである。
【0039】
図1においては、深さ方向がrで表されており、超音波ビームBの電子走査によって形成される走査面がSで示されている。
【0040】
本実施形態において3Dプローブ10は複数の振動素子を二次元配列してなる2Dアレイ振動子を有している。すなわち、θ方向及びφ方向の両方向に超音波ビームを電子走査することができる。2Dアレイ振動子として、いわゆるスパース型2Dアレイ振動子を用いてもよい。また、1Dアレイ振動子とそれを機械走査する機構とを設けて、三次元空間Vを形成するようにしてもよい。
【0041】
3Dプローブ10のケース12内には上記の2Dアレイ振動子(図示せず)が設けられている。その2Dアレイ振動子は、具体的には、送受波面13の近傍に設けられている。送受波面13は体表面上に当接される面である。なお、本発明は上記のように体表面上に当接して用いられる3Dプローブに適用するのが特に望ましいが、体腔内に挿入される3Dプローブに対しても適用することが可能である。その場合には、後述する各物理マークをX線などによって観察できるように各物理マークにX線造影剤を含ませるようにするのが望ましい。
【0042】
ケース12の下部(生体側の端部)には、図1に示されるように、物理マーク部16が形成されている。この物理マーク部16は本実施形態において第1物理マーク18と第2物理マーク20とによって構成されている。図1に示す実施形態においては、第1物理マーク18は、ケース12における4つの側面の内で、θ方向の原点(走査の原則的な開始点)に対応する側面(原点に最も近く走査方向に直交する側面)に設けられている。第2物理マーク20は4つの側面の内で、φ方向の原点に対応する側面に設けられている。
【0043】
第1物理マーク18と第2物理マーク20は、本実施形態において色及び形が相違しており、例えば第1物理マーク18は四角形の形状を有し、その色はオレンジであり、第2物理マーク20の円形の形状を有し、その色は緑である。もちろん、物理マーク18,20は、それぞれ視覚的に容易に識別できる限りにおいてそれらの形態としては各種のものを採用できる。
【0044】
例えば、後に図2を用いて説明するように、2つの物理マーク18,20の内で、一方を隆起状とし、他方を凹部とするようにしてもよい。
【0045】
図1においては、各物理マーク18,20が側面における下端部の中央部に設けられているが、他の部位に設けることも可能である。ただし、ケース12を把持した状態において、それらの物理マーク18,20が操作者の手によって隠蔽されない位置に各物理マーク18,20を設けるのが望ましい。
【0046】
したがって、以上の説明から明らかなように、本実施形態では、第1物理マーク18は第1走査方向であるθ方向に対応付けられており、しかもその基準端である原点に対応付けられている。これと同様に、第2物理マーク20は、第2走査方向であるφ方向に対応付けられており、しかもその基準端である原点に対応付けられている。
【0047】
なお、ケース12は一般に白色あるいはグレーといった色彩を有しているが、そのケース12の色彩に対して各物理マーク18,20の色を異ならせるのが望ましい。各物理マーク18,20としては、例えばゴム材などを利用し、樹脂などで構成されるケース12と質感を異ならせるのが望ましい。
【0048】
送信部30は、送信ビームフォーマーとして機能し、アレイ振動子を構成する複数の振動素子に対して所定の遅延関係をもって送信信号を供給する。これにより3Dプローブ10において送信ビームが形成される。また、受信部32は、複数の振動素子から出力される受信信号に対して整相加算を実行する受信ビームフォーマーとして機能する。送信部30及び受信部32の両方とも、超音波ビームを二次元的に電子走査する機能を備えている。
【0049】
この超音波ビームの二次元の走査により、上述した三次元空間Vが構成される。この場合においては、θ方向に超音波ビームを走査し、これによって形成される走査面Sをφ方向の各位置に形成するようにしてもよい。
【0050】
信号処理部34は、例えば検波器や対数変換器など有している。もちろん、ドプラ信号処理を行う場合には直交検波器や自己相関回路などを設ければよい。いずれにしても、信号処理部34によって処理された受信信号(エコーデータ)は3Dメモリ36上に格納される。
【0051】
その格納にあたっては、3Dメモリ36のアドレスがφ,θ,rに対応付けられており、各エコーデータは三次元空間V内における三次元座標に対応付けられたアドレスに格納される。ただし、三次元画像形成や断層画像形成を順次実行可能な場合には、3Dメモリ36を除外することもでき、あるいはそれに代えてフレームメモリやラインメモリなどを設けるようにしてもよい。なお、3Dメモリ36へのデータの格納に際しては、上記のような極座標系ではなく、直交座標系(x,y,z)で格納するようにしてもよい。いずれにしても、3Dメモリ36の書き込み時あるいは読み出し時に座標変換が行われるのが望ましい。三次元画像形成部38は、積算投影法やボリュームレンダリング法などの手法を利用して三次元空間Vを三次元画像として形成するものである。その場合においては、3Dメモリ36内に格納された各エコーデータが読み出され、それらのエコーデータを利用して三次元画像が形成される。
【0052】
一方、断層画像形成部40は、ユーザーによって設定された切断面に対応にする断層画像を形成するモジュールである。すなわち、その切断面上における各エコーデータは3Dメモリ36から読み出され、それらのエコーデータによって断層画像が形成される。この場合においては、その切断面上に存在するエコーデータのみを利用して断層画像を形成するようにしてもよいし、その切断面の近傍に存在するエコーデータを考慮し、補間演算などを実行して断層画像を形成するようにしてもよい。あるいは、切断面に一定の有限な厚み(スラブ)を設け、その厚み内のエコーデータから断層画像を形成するようにしてもよい。いずれにしても断層画像の形成方法としては各種のものを利用可能である。
【0053】
制御部48は、図1に示される各構成の動作制御を行っている。その制御部48には操作パネル50が接続されている。この操作パネル50は例えばトラックボールやキーボードなどによって構成され、その操作パネル50を用いて、ユーザーは三次元画像の形成条件や断層画像の形成条件などを入力することができる。特に、操作パネル50を利用して後述するトリプレーン表示における各切断面の位置の設定が行われる。そのように設定された1つの切断面あるいは複数の切断面の座標情報が断層画像形成部40に出力され、断層画像形成部40は設定された各切断面に対応する断層画像を形成する。また、制御部48はグラフィック画像形成部42の動作制御を行っている。グラフィック画像形成部42は、三次元画像あるいは断層画像に重ねて表示されるグラフィック画像を形成するモジュールである。後述するように、グラフィック画像には第1表示マーク及び第2表示マークの少なくとも一方が含まれ、ここで、第1表示マークは上記の第1物理マーク18に対応し、第2表示マークは上記の第2物理マーク20に対応する。すなわち、それらの対応関係によって、断層画像を表示した場合において、その断層画像について、三次元空間内における位置やその視点の向きなどを容易に認識することができる。したがって、制御部48はグラフィック画像形成部42が表示マークを含むグラフィック画像を形成できるように必要な情報を与えている。
【0054】
表示処理部44は画像合成機能などを有し、三次元画像や断層画像に対してグラフィック画像を合成し、その合成された画像データを表示部46へ出力する。表示部46には、本実施形態において三次元画像を含む合成画像が表示され、あるいは直交三断面に相当するトリプレーン画像がグラフィックと共に表示される。もちろんその表示形態としては各種のものを採用することができ、例えば1つの断層画像をグラフィックと共に表示するようにしてもよい。
【0055】
図2は、図1に示した3Dプローブ10の斜視図である。上述したように、3Dプローブ10におけるケース12の外表面上には第1物理マーク18及び第2物理マーク20が設けられている。ケース12は4つの側面12A〜12Dを有し、本実施形態では、第1物理マーク18が第1側面12Aに設けられ、第2物理マーク20は第2側面12Bに設けられている。ここで、第1側面12Aは第1走査方向であるθ方向の基準端(原点)に対応した側面(θ方向に直交し且つφ方向に略平行な側面)であり、第2側面12Bは第2走査方向であるφ方向の基準端に対応した側面(φ方向に直交し且つθ方向に略平行な側面)である。送受波面13は体表面上に当接されるものであり、その奥側には上述した2Dアレイ振動子13Aが設けられている。
【0056】
図2に示されるように、この例では、第1物理マーク18が四角形の形態を有しており、しかもそれは窪みとして形成されている。一方、第2物理マーク20は隆起した突起状の形態を有し、その全体形状はおよそ円形あるいは楕円形である。このような凸凹関係によりユーザーは触感により各物理マークを認識することができる。また、視覚的に観察する場合においてもそのような凹凸は極めて識別性が高い。なお、第1物理マークを第1側面及び第3側面に設け、第2物理マークを第2側面及び第4側面に設けることも可能である。その場合に、2つの第1物理マークの形態を変えるようにするのが望ましい。同様に、2つの第2物理マークの形態を変えるようにするのが望ましい。これにより、各物理マークを識別することが可能となる。このような場合には、各物理マークごとに同じ形態をもって表示マークが表示される。
【0057】
図3には、物理マーク部の変形例が示されている。図3において、3Dプローブ60のケース62は図2に示したものと同様に水平断面がおよそ矩形の形状を有しており、すなわちその側周囲に4つの角部が合成されている。その角部の内、θ方向の基準端及びφ方向の基準端の両者に対応する角部(上記第1側面と第2側面とが交わる角部)70に物理マーク部68が形成されている。この物理マーク部68は、角部70の稜線を間においた第1側面62Aに存在する部分64と第2側面62Bに存在する部分66とによって構成されている。すなわち、それらの部分64,66が一体的に連結し、2つの側面にまたがって物理マーク部68が存在している。このような実施形態においても後述するように各断層画像を表示した場合においてそれぞれの走査方向及び走査向きを認識することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、第1物理マークが第1走査方向の原点の位置を特定し、第2物理マークが第2走査方向の原点の位置を特定するという、基準点特定型のマーク付与ルールが採用されていたが、後述する他の実施形態では、第1物理マークが第1走査面の面の向き(あるいは第1走査面と略平行な側面)を特定し、第2物理マークが第2走査面の面の向き(あるいは第2走査面と略平行な側面)を特定するという、面の向き特定型のマーク付与ルールが採用される。後者の場合において、図3に示したような3Dプローブ60を用いる場合には、部分66が第1物理マークに相当し、部分64が第2物理マークに相当する。実際に採用されるマーク付与ルールについては超音波画像を観察するユーザーが理解する必要がある。
【0059】
図3に示す実施形態においては、送受波面63の奥側には2Dアレイ振動子63Aが設けられている。なお、物理マーク部68の部分66は、図2に示した第1物理マーク20に相当し、部分64は図2に示した第1物理マーク18に相当している。よってそれらの部分64,66を互いに異なる色で、形成するようにしてもよい。また、図3に示す3Dプローブ60において、角部70としての稜線の全体にわたって例えば着色を施し、その着色をもって物理マーク部68とするようにしてもよい。
【0060】
次に、図4〜図11を用いて図1に示した表示部46に表示される画像の例について説明する。なお、以下に示す各画像の内容は、実施形態を説明するためのもので、実際の心臓の構造とは必ずしも対応していない。
【0061】
図4には、3Dプローブ10と生体内の臓器としての心臓100との位置的な関係が示されている。ここで、符号102は設定された切断面を表しており、すなわちその切断面102に相当する走査面が形成されている。
【0062】
このような切断面の設定を行った場合、図5に示すような画像が表示される。すなわち、表示画面104上には電子セクタ走査によって形成された扇状の断層画像106が表示され、その断層画像106の上部にはその近傍に第2表示マーク20Aが表示される。この第2表示マーク20Aは第2物理マーク20に対応した色及び形を有している。具体的には、その第2表示マーク20Aではオレンジの色を有している。よって、図2に示すような表示によれば、ユーザーは、その断層画像がr−φの平面に対応したものであることを直感的に理解でき、しかもφ方向における基準端を直感的に理解することができる。すなわち、図4において符号200で示されるように断層画像の観察方向すなわち視点の向きを容易に把握することができる。
【0063】
また、図6に示すように心臓100に対してθ方向に切断面108が設定された場合には、図7に示すような画像が表示される。すなわち表示画面104上において、R−θ面に相当する断層画像110が表示される。その場合においては、θ方向の基準端に相当する側に第1表示マーク18Aが表示される。すなわち、扇状の断層画像110の上部の右側に第1表示マーク18Aが表示される。その第1表示マーク18Aは、3Dプローブ10における第1物理マーク18と同様の形及び色を有している。具体的にはその形は四角形であり、その色は例えば緑である。
【0064】
結果、ユーザーは、この図7に示すような表示を観察することにより、断層画像の三次元空間内における位置を容易に認識でき、しかも走査方向の基準端を容易に認識できる。すなわち手前から見た断層画像であるのか奥側から見た断層画像であるのかを容易に認識できる。図6には、符号202によって視点の向きが示されている。
【0065】
また、図8に示されるように、三次元空間V内において水平方向の切断面112が設定された場合には、図9に示すような画像が表示される。ここで、その切断面112はφ−θ面に相当し、あるいは深さ方向をz方向としてx−y面に相当する。
【0066】
図9において、表示画面104においては図8に示した切断面112に相当する断層画像114が表示されているが、その場合においてそれぞれの物理マーク18,20に対応して2つの表示マーク18A,20Aが表示されている。この場合においては断層画像114の2つの辺の中央部の近傍にそれぞれの表示マーク18A,20Aが表示されている。よって、この場合においても、ユーザーはそれらの表示マーク18A,20Aの位置を把握することにより、断層画像114と3Dプローブ10との位置的な関係を直感的に認識することができる。この場合においては図8に示すように視点の向きは符号204で示されるとおりである。
【0067】
また、図10に示すように、表示画面104上に直交三断面としてのトリプレーン表示を行うこともできる。すなわち図5、図7及び図9に示した各断層画像を並べて表示し、それに伴って対応する表示マーク18A,20Aを表示したものである。ここで、左下の部分に例えば3Dプローブを模式的に表す図形及び三次元空間を模式的に表す図形を表示するようにしてもよい。その場合においては3Dプローブを模式的に表す図形上に2つの物理マークを表示してもよく、また三次元空間を模式的に表す図形上に各切断面の位置をワイヤなどによって表現するようにしてもよい。
【0068】
また、図3に示すような3Dプローブ60が用いられる場合には、図11に示すようなトリプレーン表示を行ってもよい。すなわち表示画面104上においては各断層画像106,110,114が表示されているが、それぞれの近傍には図3に示した物理マーク68に対応付けられた表示マーク部120が表示されている。
【0069】
したがって、このような表示によっても各断層画像106,110,114の向きなどを容易に認識することが可能となる。
【0070】
次に、図12〜図20を用いて他の実施形態について説明する。なお、各図において、上記実施形態と同様の構成には同一符号を付すことにする。
【0071】
この他の実施形態も上記実施形態と同様に、第1物理マーク及び第2物理マークと第1表示マーク及び第2表示マークとを対応付けることによって、超音波画像を観察する際に、第1走査方向及び第2走査方向を視覚的に容易に特定できるようにするものである。
【0072】
但し、上記実施形態では、第1物理マークが第1走査方向と直交関係にある第1側面に設けられ、第2物理マークが第2走査方向と直交関係にある第2側面に設けられていたが、この実施形態では、以下に詳述するように、第1物理マークが第1走査面と平行的関係にある第2側面に設けられ、第2物理マークが第2走査面と平行的関係にある第1側面に設けられている。このような違いはあるものの、プローブ座標系と表示画像の座標系とを対応付ける原理面で両者は共通である。具体的に以下に説明する。
【0073】
図12には、この実施形態に係る3Dプローブ10が示されている。ケース12には、互いにほぼ直交する関係にある4つの側面12A〜12Dが形成されている。その内で、第2側面12Bの下部には、第1物理マーク300が形成され、第1側面12Aの下部には、第2物理マーク302が形成されている。第1物理マーク300は、第1走査方向(θ方向)の走査原点側へ変位した位置に設けられ、第2物理マーク302は、第2走査方向(φ方向)の走査終点側へ変位した位置に設けられている。もちろん、第1物理マーク300が第1走査方向の終点側へ変位した位置に設けられてもよく、第2物理マーク302が第2走査方向の原点側へ変位した位置に設けられてもよい。いずれにしても、ユーザーに対して、走査面、物理マーク、表示マークの関係をあらかじめ理解させておくべきである。各実施形態ではマーク付与ルールが異なるが、実施されたルールをユーザーが理解していれば画像把握上の混乱が生じることはない。
【0074】
第1物理マーク300は例えば円形の凸形をもったオレンジ色のマークであり(説明の便宜上、上記実施形態の第2物理マーク20と同じ形態で表現してある)、第2物理マーク302は例えば矩形で凹形をもった緑色のマークである(説明の便宜上、上記実施形態の第1物理マーク18と同じ形態で表現してある)。上記実施形態と同様に、第1物理マーク300と第2物理マークは、形、凹凸、色などを互いに異ならせるのが望ましい。後述する第1表示マークは第1物理マーク300と同じ形及び色を有し、第2表示マークは第2物理マーク302と同じ形及び色を有する。
【0075】
第1走査方向(θ方向)への超音波ビームの走査により第1走査面が形成され(超音波ビームの二次元走査により形成された3Dエコーデータ空間から当該走査面上のデータ抽出を行ってもよい)、その第1走査面と第2側面12Bは平行的関係(略平行関係)にある。第1走査面は第2走査方向における超音波ビームの偏向角度によって傾斜するが、その偏向角度がゼロ度つまり第1走査面が垂直になった状態では、第1走査面と第2側面12Bが平行となる(後に説明する図15参照)。同様に、第2走査方向(φ方向)への超音波ビームの走査により第2走査面が形成され(超音波ビームの二次元走査により形成された3Dエコーデータ空間から当該走査面上のデータ抽出を行ってもよい)、その第2走査面と第1側面12Aは平行的関係(略平行関係)にある。第2走査面は第1走査方向における超音波ビームの偏向角度によって傾斜するが、その偏向角度がゼロ度つまり第2走査面が垂直になった状態では、第2走査面と第1側面12Aが平行となる(後に説明する図13参照)。但し、各側面が若干湾曲あるいは傾斜していても、各走査面と各側面との対応関係はユーザにおいて直感的に理解できる。
【0076】
この実施形態では、後に図14や図16に示すように、各物理マークを断層画像へそのまま投影したように各表示マークを表示できるので、上記実施形態よりも、より自然に対応関係を把握できるという利点がある。
【0077】
なお、図12に示す3Dプローブを有する超音波診断装置の構成は図1に示したものと同様である。
【0078】
次に、図13〜図20を用いて表示部に表示される画像の例について説明する。
【0079】
図13には、3Dプローブ10と生体内の臓器としての心臓100との位置的な関係が示されている。ここで、図4と同様に、符号102は設定された切断面を表しており、すなわちその切断面102に相当する走査面(第2走査面)が形成されている。
【0080】
このような切断面の設定を行った場合、図14に示すような画像が表示される。すなわち、表示画面104上には電子セクタ走査によって形成された扇状の断層画像106が表示され、その断層画像106の上部にはその右側近傍に第2表示マーク302Aが表示される。右側に表示されるのは、3Dプローブ10において、第2物理マーク302が第1側面上で右側に変位していることに対応している。つまり、第2表示マーク302Aは第2物理マーク302を切断面上に投影したような印象をもって表示される。これは後述するように第1表示マーク300Aの表示を行う場合においても同様である。この第2表示マーク302Aは第2物理マーク302に対応した色及び形を有している。よって、図2に示すような表示によれば、ユーザーは、その断層画像がr−φの平面に対応したものであることを直感的に理解でき、しかもφ方向における基準端を直感的に理解することができる。すなわち、図13において符号200で示されるように断層画像の観察方向すなわち視点の向きを容易に把握することができる。
【0081】
なお、切断面の裏面を表示する場合には、第2表示マーク302Aが断層画像の左側に表示される。その場合において、形状及び色を維持しつつも輝度を落とすなどの処理を適用し、つまり表示形態を若干変化させるようにしてもよい。このことは他の切断面を表示する場合においても同様である。
【0082】
また、図15に示すように心臓100に対してθ方向に切断面(第1走査面に相当)108が設定された場合には、図16に示すような画像が表示される。すなわち表示画面104上において、R−θ面に相当する断層画像110が表示される。その場合においては、θ方向の基準端に相当する側に第1表示マーク300Aが表示される。すなわち、扇状の断層画像110の上部の右側に第1表示マーク300Aが表示される。これは、3Dプローブ10において、第2側面の右側に第1物理マーク300が設けられていることに対応したものである。その第1表示マーク300Aは、3Dプローブ10における第1物理マーク18と同様の形及び色を有している。
【0083】
その結果、ユーザーは、この図16に示すような表示を観察することにより、断層画像の三次元空間内における位置を容易に認識でき、しかも走査方向の基準端を容易に認識できる。すなわち手前から見た断層画像であるのか奥側から見た断層画像であるのかを容易に認識できる。図15には、符号202によって視点の向きが示されている。
【0084】
また、図17に示されるように、三次元空間V内において水平方向の切断面112が設定された場合には、図18に示すような画像が表示される。ここで、その切断面112はφ−θ面に相当し、あるいは深さ方向をz方向としてx−y面に相当する。
【0085】
図18において、表示画面104においては図17に示した切断面112に相当する断層画像114が表示されているが、その場合において、それぞれの物理マーク300,302に対応して2つの表示マーク300A,032Aが表示されている。この場合においては断層画像114の特定の2つの辺の右端部にそれぞれの表示マーク300A,302Aが表示されている。つまり、3Dプローブ10における各物理マーク300,302を上方から見たような配置で、各表示マーク300A,302Aが表示される。この場合の表示の仕方は、図9に示した場合と同様のルールに立っている。よって、この場合においても、ユーザーはそれらの表示マーク300A,302Aの位置を把握することにより、断層画像114と3Dプローブ10との位置的な関係を直感的に認識することができる。この場合においては図17に示すように視点の向きは符号204で示されるとおりである。
【0086】
また、本実施形態でも、図19に示すように、表示画面104上に直交三断面としてのトリプレーン表示を行うこともできる。すなわち図14、図16及び図18に示した各断層画像を並べて表示し、それに伴って対応する表示マーク300A,302Aを表示したものである。ここで、左下の部分に例えば3Dプローブを模式的に表す図形及び三次元空間を模式的に表す図形を表示するようにしてもよい。その場合においては3Dプローブを模式的に表す図形上に2つの物理マークを表示してもよく、また三次元空間を模式的に表す図形上に各切断面の位置をワイヤなどによって表現するようにしてもよい。
【0087】
また、図3に示すような3Dプローブ60が用いられる場合には、図20に示すようなトリプレーン表示を行ってもよい。すなわち表示画面104上においては各断層画像106,110,114が表示されているが、それぞれの近傍には図3に示した物理マーク68に対応付けられた表示マーク部が表示されている。ここで、表示マーク部は、物理マーク68が設けられている角部の位置を示す例えば矩形の表示マーク400Aと、物理マーク68と同じような形態(L字形)を有し、角部の位置を示す表示マーク400Bと含む。
【0088】
したがって、このような表示によっても各断層画像106,110,114の向きなどを容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】3Dプローブの一例を示す斜視図である。
【図3】3Dプローブの他の例を示す斜視図である。
【図4】切断面の設定例を示す図である。
【図5】図4に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図6】切断面の設定例を示す図である。
【図7】図6に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図8】切断面の設定例を示す図である。
【図9】図8に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図10】トリプレーン表示例を示す図である。
【図11】他のトリプレーン表示例を示す図である。
【図12】他の実施形態に係る3Dプローブの斜視図である。
【図13】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図14】他の実施形態における、図13に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図15】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図16】他の実施形態における、図15に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図17】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図18】他の実施形態における、図17に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図19】他の実施形態における、トリプレーン表示例を示す図である。
【図20】他の実施形態における、他のトリプレーン表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10 3Dプローブ(三次元エコーデータ取込用超音波探触子)、16 物理マーク部、18,300 第1物理マーク、20,302 第2物理マーク、30 送信部、32 受信部、34 信号処理部、36 3Dメモリ、38 三次元画像形成部、40 断層画像形成部、42 グラフィック画像形成部、44 表示処理部、46 表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元エコーデータ取込用超音波探触子に関し、特に三次元エコーデータを取り込んで超音波画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元エコーデータ取込用超音波探触子(3Dプローブ)は、生体内に三次元エコーデータ取込空間(三次元空間)を形成するためのプローブである。その3Dプローブは、生体組織の三次元画像を形成する場合や三次元空間内に設定された切断面に相当する断層画像(組織画像、血流画像)などを形成する場合に用いられる。3Dプローブとしては、2Dアレイ振動子(スパースアレイ型を含む)を用いて超音波ビームを2次元走査するもの、1Dアレイ振動子を機械的に走査するもの、単振動子を機械的に2次元走査するもの、などが知られている。
【0003】
ところで、三次元空間内の切断面に相当する断層画像を形成し、それを表示する場合には、その表示された断層画像から、三次元空間(あるいは3Dプローブ)と断層画像(つまり切断面)との位置的関係を直感的に認識するのは困難である。具体的には、切断面と超音波ビームの第1及び第2走査方向との関係を理解するのが困難である。また、切断面の視点がその手前側にあるのか奥側にあるのかを理解するのが困難である。この問題は三次元画像を表示する場合にも生じ得る。いずれにしても、三次元空間に対する超音波診断において、ユーザーの画像観察上の便宜を図ることが要望されている。
【0004】
なお、従来の1Dアレイ振動子を有するローブにおいては、一般に、1Dアレイ振動子の一方端(電子走査の開始点に相当する基準端)に対応するケース側面に突起状の物理マーカーが設けられている。また、断層画像を表示する場合には、断層画像における基準端に相当する側(右側又は左側)に、物理マーカーに対応する表示マーカーが表示される。表示マーカーが表示された側を特定することにより、断層画像の視点が手前側にあるのか奥側にあるのかを把握できる。しかし、3Dプローブ及びそれを利用した断層画像表示においては、ユーザーの画像観察上の便宜が十分に図られていない現状にある。本願に関連する技術が以下の特許文献1−3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−269337号公報
【特許文献2】特開平07−2134521号公報
【特許文献3】特開平11−070110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、三次元エコーデータ取込空間内において取り込まれたデータに基づいて超音波画像を形成する場合に、その画像観察上の便宜を図ることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、3Dプローブと超音波画像との位置的関係を容易に理解できるようにすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、3Dプローブにおいて2つの走査方向を直感的に理解できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の好適な実施形態に係る超音波診断装置は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する三次元エコーデータ取込用超音波探触子と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第1走査方向及び前記第2走査方向を特定するための物理マーカー部と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子からの受信信号に基づいて、超音波画像を形成する画像形成手段と、前記超音波画像と共に、前記物理マーカー部に対応付けられた表示マーカー部を表示する表示処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、三次元エコーデータ取込用超音波探触子(3Dプローブ)の外表面に物理マーカー部が設けられ、超音波画像を表示する際には、物理マーカーに対応付けられた表示マーカー部が表示される。これにより、超音波画像の観察に当たって、3Dプローブとの位置的関係(あるいは、三次元エコーデータ取込空間(第1走査方向と第2走査方向)との位置的関係)を容易に把握できる。
【0011】
上記の3Dプローブはユーザによって把持され、体表面上に当接されるものであるのが望ましいが、体腔内に挿入されるものに応用することができる。上記の超音波画像は、切断面に相当する組織画像又は血流画像であるのが望ましい。但し、三次元画像を表示する場合にも上記構成を適用可能であり、その場合には、三次元画像と共に第1走査方向及び第2走査方向に対応する位置に表示マーカーが表示される。
【0012】
上記構成において、物理マーカー部は複数の物理マーカーによって構成されるのが望ましく、その場合には互いにその形態(色、形など)を異ならせるのが望ましい。また、表示マーカー部を、物理マーカー部の構成に合わせて、複数の表示マーカーによって構成するのが望ましく、その場合には、各表示マーカーの形態を、対応する物理マーカーの形態と同一又は類似にするのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記物理マーカー部は、前記第1走査方向に対応付けられた第1物理マーカーと、前記第2走査方向に対応付けられ、前記第1物理マーカーとは視覚的に異なる形態を有する第2物理マーカーと、で構成される。
【0014】
望ましくは、前記表示マーカー部は、前記第1物理マーカーに対応付けられた第1表示マーカーと、前記第2物理マーカーに対応付けられた第2表示マーカーと、で構成される。
【0015】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に直交する第1側面と、前記第2走査方向に直交する第2側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられる。
【0016】
望ましくは、前記第1側面は前記第1走査方向の基準端側の側面であり、前記第2側面は前記第2走査方向の基準端側の側面である。各側面は完全な平面でなくてもよく、もちろん曲面あるいは傾斜面であってもよい。各物理マーカーは、3Dプローブの下部(把持状態で露出する可能性が高い部位)に設けるのが望ましいが、その上部に設けることも可能である。各基準端は、電子走査(又は機械走査)の原点であるのが望ましい。もちろん、基準端とは反対側の端(終端)に対応して物理マークを設けるようにしてもよい。
【0017】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に広がった第2側面と、前記第2走査方向に広がった第1側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられる。第2側面は第2走査方向に直交し且つ第1走査方向と略平行な面であり、第1側面は第1走査方向に直交し且つ第2走査方向と略平行な面である。上記構成によれば、3Dプローブの各側面と各走査方向(あるいは各走査面)との対応関係を直感的に認識できる。
【0018】
望ましくは、前記第1物理マーカーは前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられる。この構成によれば、各物理マーカーの変位方向によって各走査方向の基準端を容易に認識することが可能である。
【0019】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、水平断面が略矩形の形状を有し、これにより4つの角部が構成され、前記4つの角部の内で特定の角部に前記物理マーカー部が設けられる。ここで、望ましくは、前記物理マーカー部は、前記第1走査方向の基準端及び前記第2走査方向の基準端の両方に対応する角部に設けられる。
【0020】
望ましくは、前記特定の角部は第1側面及び第2側面の連結によって構成され、前記物理マーカー部は、前記第1側面上に存在する一方の物理マーカーと、前記第2側面上に存在する他方の物理マーカーと、で構成される。一方の物理マーカーは、第1走査方向の基準端に対応する側面あるいは第1走査方向に平行な側面であることを表し、他方の物理マーカーは、第1走査方向の基準端に対応する側面あるいは第1走査方向に平行な側面であることを表す。つまり、2つの物理マーカーは別体で分離配置してもよいし一体的に結合してもよい。
【0021】
望ましくは、前記画像形成手段は、前記三次元エコーデータ取込空間内に設定された切断面の断層画像を形成し、前記表示マーカー部は、前記切断面と前記各走査方向との位置的関係に応じて、前記断層画像の近傍に又はその上に表示される。切断面は、第1走査方向、第2走査方向及び深さ方向の中から選択される2つの方向によって規定される面であるのが望ましい。但し、任意切断面を設定する場合にも本発明を応用することができる。
【0022】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を含む。また、望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及びその一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する。
【0023】
(2)本発明の好適な実施形態に係る超音波診断装置は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する三次元エコーデータ取込用超音波探触子と、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第1走査方向に対応付けられた第1物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子の外表面に設けられ、前記第2走査方向に対応付けられた第2物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子からの受信信号に基づいて、前記三次元エコーデータ取込空間に設定された切断面の断層画像を形成する画像形成手段と、前記第1物理マーカーに対応付けられた第1表示マーカーと前記第2物理マーカーに対応付けられた第2表示マーカーとを表示する手段であって、前記切断面と前記第1及び第2走査方向との位置的関係に応じて、前記断層画像と共に、前記第1表示マーカー及び前記第2表示マーカーの一方又は双方を表示する表示処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0024】
望ましくは、前記第1物理マーカーの形態と前記第1表示マーカーの形態とが対応付けられ、前記第2物理マーカーの形態と前記第2表示マーカーの形態とが対応付けられる。
【0025】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、を有し、前記第1側面に前記第1物理マーカーが設けられ、前記第2側面に前記第2物理マーカーが設けられる。
【0026】
上記構成において、望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示される。また望ましくは、前記切断面が前記第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第2基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。更に望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向及び第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示され、かつ、前記断層画像に対して前記第2基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記第1走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点であり、前記第2走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点である。
【0027】
望ましくは、前記三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、前記第1走査方向に広がる第2側面と、前記第2走査方向に広がる第1側面と、を有し、前記第2側面において前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に前記第1物理マーカーが設けられ、前記第1側面において前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に前記第2物理マーカーが設けられる。各物理マークの変位によって各走査方向の基準点を容易に特定でき、断層画像を表示する場合においても、表面と裏面を容易に区別できる。
【0028】
上記構成において、望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1走査方向の基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示される。望ましくは、前記切断面が前記第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第2走査方向の基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記切断面が前記第1走査方向及び第2走査方向を含む面である場合に、前記断層画像に対して前記第1走査方向の基準端に相当する側に、前記第1表示マーカーが表示され、かつ、前記断層画像に対して前記第2走査方向の基準端に相当する側に、前記第2表示マーカーが表示される。望ましくは、前記第1走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点であり、前記第2走査方向の基準端は前記超音波ビームの走査の始点又は終点である。
【0029】
(3)本発明に係る三次元エコーデータ取込用超音波探触子は、超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する手段であって、二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を有する手段として、又は、前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及び当該一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する手段として構成された送受波手段と、前記送受波手段を収容したケースと、前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第1表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第1走査方向を識別するための第1物理マーカーと、前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第2表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第2走査方向を識別するための第2物理マーカーと、を含むことを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、第1物理マーカーと第2物理マーカーとによって、第1走査方向と第2走査方向とを容易に識別できる。
【0031】
望ましくは、前記ケースは、前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられる。
【0032】
望ましくは、前記ケースは、前記第1走査方向に広がる第2側面と、前記第2走査方向に広がる第1側面と、を有し、前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられる。望ましくは、前記第1物理マーカーは前記第2側面における前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、前記第2物理マーカーは前記第1側面における前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられる。
【0033】
望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは色及び形の少なくとも一方が互いに異なる。また、望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の一方は隆起形状を有し、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の他方は窪み形状を有する。凹凸を利用して区別すれば、触感によっても各走査方向を容易に認識できる。
【0034】
望ましくは、前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは、前記ケースの第1側面と前記第2側面に跨って一体形成される。
【0035】
望ましくは、前記ケースと前記第1及び第2物理マーカーは互いに色が異なる。この構成によれば、ケースの背景色に対して物理マーカー部の視認性を向上できる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザーに対して超音波画像を観察する場合においてその便宜を図ることができ、特に3Dプローブと超音波画像との位置的関係を容易に認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。3Dプローブ10は、三次元エコーデータ取込用超音波探触子である。すなわち、超音波ビームBをθ方向(第1走査方向)及びφ方向(第2走査方向)の両方向に走査し、これにより三次元エコーデータ取込空間(三次元空間)Vを形成するものである。
【0039】
図1においては、深さ方向がrで表されており、超音波ビームBの電子走査によって形成される走査面がSで示されている。
【0040】
本実施形態において3Dプローブ10は複数の振動素子を二次元配列してなる2Dアレイ振動子を有している。すなわち、θ方向及びφ方向の両方向に超音波ビームを電子走査することができる。2Dアレイ振動子として、いわゆるスパース型2Dアレイ振動子を用いてもよい。また、1Dアレイ振動子とそれを機械走査する機構とを設けて、三次元空間Vを形成するようにしてもよい。
【0041】
3Dプローブ10のケース12内には上記の2Dアレイ振動子(図示せず)が設けられている。その2Dアレイ振動子は、具体的には、送受波面13の近傍に設けられている。送受波面13は体表面上に当接される面である。なお、本発明は上記のように体表面上に当接して用いられる3Dプローブに適用するのが特に望ましいが、体腔内に挿入される3Dプローブに対しても適用することが可能である。その場合には、後述する各物理マークをX線などによって観察できるように各物理マークにX線造影剤を含ませるようにするのが望ましい。
【0042】
ケース12の下部(生体側の端部)には、図1に示されるように、物理マーク部16が形成されている。この物理マーク部16は本実施形態において第1物理マーク18と第2物理マーク20とによって構成されている。図1に示す実施形態においては、第1物理マーク18は、ケース12における4つの側面の内で、θ方向の原点(走査の原則的な開始点)に対応する側面(原点に最も近く走査方向に直交する側面)に設けられている。第2物理マーク20は4つの側面の内で、φ方向の原点に対応する側面に設けられている。
【0043】
第1物理マーク18と第2物理マーク20は、本実施形態において色及び形が相違しており、例えば第1物理マーク18は四角形の形状を有し、その色はオレンジであり、第2物理マーク20の円形の形状を有し、その色は緑である。もちろん、物理マーク18,20は、それぞれ視覚的に容易に識別できる限りにおいてそれらの形態としては各種のものを採用できる。
【0044】
例えば、後に図2を用いて説明するように、2つの物理マーク18,20の内で、一方を隆起状とし、他方を凹部とするようにしてもよい。
【0045】
図1においては、各物理マーク18,20が側面における下端部の中央部に設けられているが、他の部位に設けることも可能である。ただし、ケース12を把持した状態において、それらの物理マーク18,20が操作者の手によって隠蔽されない位置に各物理マーク18,20を設けるのが望ましい。
【0046】
したがって、以上の説明から明らかなように、本実施形態では、第1物理マーク18は第1走査方向であるθ方向に対応付けられており、しかもその基準端である原点に対応付けられている。これと同様に、第2物理マーク20は、第2走査方向であるφ方向に対応付けられており、しかもその基準端である原点に対応付けられている。
【0047】
なお、ケース12は一般に白色あるいはグレーといった色彩を有しているが、そのケース12の色彩に対して各物理マーク18,20の色を異ならせるのが望ましい。各物理マーク18,20としては、例えばゴム材などを利用し、樹脂などで構成されるケース12と質感を異ならせるのが望ましい。
【0048】
送信部30は、送信ビームフォーマーとして機能し、アレイ振動子を構成する複数の振動素子に対して所定の遅延関係をもって送信信号を供給する。これにより3Dプローブ10において送信ビームが形成される。また、受信部32は、複数の振動素子から出力される受信信号に対して整相加算を実行する受信ビームフォーマーとして機能する。送信部30及び受信部32の両方とも、超音波ビームを二次元的に電子走査する機能を備えている。
【0049】
この超音波ビームの二次元の走査により、上述した三次元空間Vが構成される。この場合においては、θ方向に超音波ビームを走査し、これによって形成される走査面Sをφ方向の各位置に形成するようにしてもよい。
【0050】
信号処理部34は、例えば検波器や対数変換器など有している。もちろん、ドプラ信号処理を行う場合には直交検波器や自己相関回路などを設ければよい。いずれにしても、信号処理部34によって処理された受信信号(エコーデータ)は3Dメモリ36上に格納される。
【0051】
その格納にあたっては、3Dメモリ36のアドレスがφ,θ,rに対応付けられており、各エコーデータは三次元空間V内における三次元座標に対応付けられたアドレスに格納される。ただし、三次元画像形成や断層画像形成を順次実行可能な場合には、3Dメモリ36を除外することもでき、あるいはそれに代えてフレームメモリやラインメモリなどを設けるようにしてもよい。なお、3Dメモリ36へのデータの格納に際しては、上記のような極座標系ではなく、直交座標系(x,y,z)で格納するようにしてもよい。いずれにしても、3Dメモリ36の書き込み時あるいは読み出し時に座標変換が行われるのが望ましい。三次元画像形成部38は、積算投影法やボリュームレンダリング法などの手法を利用して三次元空間Vを三次元画像として形成するものである。その場合においては、3Dメモリ36内に格納された各エコーデータが読み出され、それらのエコーデータを利用して三次元画像が形成される。
【0052】
一方、断層画像形成部40は、ユーザーによって設定された切断面に対応にする断層画像を形成するモジュールである。すなわち、その切断面上における各エコーデータは3Dメモリ36から読み出され、それらのエコーデータによって断層画像が形成される。この場合においては、その切断面上に存在するエコーデータのみを利用して断層画像を形成するようにしてもよいし、その切断面の近傍に存在するエコーデータを考慮し、補間演算などを実行して断層画像を形成するようにしてもよい。あるいは、切断面に一定の有限な厚み(スラブ)を設け、その厚み内のエコーデータから断層画像を形成するようにしてもよい。いずれにしても断層画像の形成方法としては各種のものを利用可能である。
【0053】
制御部48は、図1に示される各構成の動作制御を行っている。その制御部48には操作パネル50が接続されている。この操作パネル50は例えばトラックボールやキーボードなどによって構成され、その操作パネル50を用いて、ユーザーは三次元画像の形成条件や断層画像の形成条件などを入力することができる。特に、操作パネル50を利用して後述するトリプレーン表示における各切断面の位置の設定が行われる。そのように設定された1つの切断面あるいは複数の切断面の座標情報が断層画像形成部40に出力され、断層画像形成部40は設定された各切断面に対応する断層画像を形成する。また、制御部48はグラフィック画像形成部42の動作制御を行っている。グラフィック画像形成部42は、三次元画像あるいは断層画像に重ねて表示されるグラフィック画像を形成するモジュールである。後述するように、グラフィック画像には第1表示マーク及び第2表示マークの少なくとも一方が含まれ、ここで、第1表示マークは上記の第1物理マーク18に対応し、第2表示マークは上記の第2物理マーク20に対応する。すなわち、それらの対応関係によって、断層画像を表示した場合において、その断層画像について、三次元空間内における位置やその視点の向きなどを容易に認識することができる。したがって、制御部48はグラフィック画像形成部42が表示マークを含むグラフィック画像を形成できるように必要な情報を与えている。
【0054】
表示処理部44は画像合成機能などを有し、三次元画像や断層画像に対してグラフィック画像を合成し、その合成された画像データを表示部46へ出力する。表示部46には、本実施形態において三次元画像を含む合成画像が表示され、あるいは直交三断面に相当するトリプレーン画像がグラフィックと共に表示される。もちろんその表示形態としては各種のものを採用することができ、例えば1つの断層画像をグラフィックと共に表示するようにしてもよい。
【0055】
図2は、図1に示した3Dプローブ10の斜視図である。上述したように、3Dプローブ10におけるケース12の外表面上には第1物理マーク18及び第2物理マーク20が設けられている。ケース12は4つの側面12A〜12Dを有し、本実施形態では、第1物理マーク18が第1側面12Aに設けられ、第2物理マーク20は第2側面12Bに設けられている。ここで、第1側面12Aは第1走査方向であるθ方向の基準端(原点)に対応した側面(θ方向に直交し且つφ方向に略平行な側面)であり、第2側面12Bは第2走査方向であるφ方向の基準端に対応した側面(φ方向に直交し且つθ方向に略平行な側面)である。送受波面13は体表面上に当接されるものであり、その奥側には上述した2Dアレイ振動子13Aが設けられている。
【0056】
図2に示されるように、この例では、第1物理マーク18が四角形の形態を有しており、しかもそれは窪みとして形成されている。一方、第2物理マーク20は隆起した突起状の形態を有し、その全体形状はおよそ円形あるいは楕円形である。このような凸凹関係によりユーザーは触感により各物理マークを認識することができる。また、視覚的に観察する場合においてもそのような凹凸は極めて識別性が高い。なお、第1物理マークを第1側面及び第3側面に設け、第2物理マークを第2側面及び第4側面に設けることも可能である。その場合に、2つの第1物理マークの形態を変えるようにするのが望ましい。同様に、2つの第2物理マークの形態を変えるようにするのが望ましい。これにより、各物理マークを識別することが可能となる。このような場合には、各物理マークごとに同じ形態をもって表示マークが表示される。
【0057】
図3には、物理マーク部の変形例が示されている。図3において、3Dプローブ60のケース62は図2に示したものと同様に水平断面がおよそ矩形の形状を有しており、すなわちその側周囲に4つの角部が合成されている。その角部の内、θ方向の基準端及びφ方向の基準端の両者に対応する角部(上記第1側面と第2側面とが交わる角部)70に物理マーク部68が形成されている。この物理マーク部68は、角部70の稜線を間においた第1側面62Aに存在する部分64と第2側面62Bに存在する部分66とによって構成されている。すなわち、それらの部分64,66が一体的に連結し、2つの側面にまたがって物理マーク部68が存在している。このような実施形態においても後述するように各断層画像を表示した場合においてそれぞれの走査方向及び走査向きを認識することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、第1物理マークが第1走査方向の原点の位置を特定し、第2物理マークが第2走査方向の原点の位置を特定するという、基準点特定型のマーク付与ルールが採用されていたが、後述する他の実施形態では、第1物理マークが第1走査面の面の向き(あるいは第1走査面と略平行な側面)を特定し、第2物理マークが第2走査面の面の向き(あるいは第2走査面と略平行な側面)を特定するという、面の向き特定型のマーク付与ルールが採用される。後者の場合において、図3に示したような3Dプローブ60を用いる場合には、部分66が第1物理マークに相当し、部分64が第2物理マークに相当する。実際に採用されるマーク付与ルールについては超音波画像を観察するユーザーが理解する必要がある。
【0059】
図3に示す実施形態においては、送受波面63の奥側には2Dアレイ振動子63Aが設けられている。なお、物理マーク部68の部分66は、図2に示した第1物理マーク20に相当し、部分64は図2に示した第1物理マーク18に相当している。よってそれらの部分64,66を互いに異なる色で、形成するようにしてもよい。また、図3に示す3Dプローブ60において、角部70としての稜線の全体にわたって例えば着色を施し、その着色をもって物理マーク部68とするようにしてもよい。
【0060】
次に、図4〜図11を用いて図1に示した表示部46に表示される画像の例について説明する。なお、以下に示す各画像の内容は、実施形態を説明するためのもので、実際の心臓の構造とは必ずしも対応していない。
【0061】
図4には、3Dプローブ10と生体内の臓器としての心臓100との位置的な関係が示されている。ここで、符号102は設定された切断面を表しており、すなわちその切断面102に相当する走査面が形成されている。
【0062】
このような切断面の設定を行った場合、図5に示すような画像が表示される。すなわち、表示画面104上には電子セクタ走査によって形成された扇状の断層画像106が表示され、その断層画像106の上部にはその近傍に第2表示マーク20Aが表示される。この第2表示マーク20Aは第2物理マーク20に対応した色及び形を有している。具体的には、その第2表示マーク20Aではオレンジの色を有している。よって、図2に示すような表示によれば、ユーザーは、その断層画像がr−φの平面に対応したものであることを直感的に理解でき、しかもφ方向における基準端を直感的に理解することができる。すなわち、図4において符号200で示されるように断層画像の観察方向すなわち視点の向きを容易に把握することができる。
【0063】
また、図6に示すように心臓100に対してθ方向に切断面108が設定された場合には、図7に示すような画像が表示される。すなわち表示画面104上において、R−θ面に相当する断層画像110が表示される。その場合においては、θ方向の基準端に相当する側に第1表示マーク18Aが表示される。すなわち、扇状の断層画像110の上部の右側に第1表示マーク18Aが表示される。その第1表示マーク18Aは、3Dプローブ10における第1物理マーク18と同様の形及び色を有している。具体的にはその形は四角形であり、その色は例えば緑である。
【0064】
結果、ユーザーは、この図7に示すような表示を観察することにより、断層画像の三次元空間内における位置を容易に認識でき、しかも走査方向の基準端を容易に認識できる。すなわち手前から見た断層画像であるのか奥側から見た断層画像であるのかを容易に認識できる。図6には、符号202によって視点の向きが示されている。
【0065】
また、図8に示されるように、三次元空間V内において水平方向の切断面112が設定された場合には、図9に示すような画像が表示される。ここで、その切断面112はφ−θ面に相当し、あるいは深さ方向をz方向としてx−y面に相当する。
【0066】
図9において、表示画面104においては図8に示した切断面112に相当する断層画像114が表示されているが、その場合においてそれぞれの物理マーク18,20に対応して2つの表示マーク18A,20Aが表示されている。この場合においては断層画像114の2つの辺の中央部の近傍にそれぞれの表示マーク18A,20Aが表示されている。よって、この場合においても、ユーザーはそれらの表示マーク18A,20Aの位置を把握することにより、断層画像114と3Dプローブ10との位置的な関係を直感的に認識することができる。この場合においては図8に示すように視点の向きは符号204で示されるとおりである。
【0067】
また、図10に示すように、表示画面104上に直交三断面としてのトリプレーン表示を行うこともできる。すなわち図5、図7及び図9に示した各断層画像を並べて表示し、それに伴って対応する表示マーク18A,20Aを表示したものである。ここで、左下の部分に例えば3Dプローブを模式的に表す図形及び三次元空間を模式的に表す図形を表示するようにしてもよい。その場合においては3Dプローブを模式的に表す図形上に2つの物理マークを表示してもよく、また三次元空間を模式的に表す図形上に各切断面の位置をワイヤなどによって表現するようにしてもよい。
【0068】
また、図3に示すような3Dプローブ60が用いられる場合には、図11に示すようなトリプレーン表示を行ってもよい。すなわち表示画面104上においては各断層画像106,110,114が表示されているが、それぞれの近傍には図3に示した物理マーク68に対応付けられた表示マーク部120が表示されている。
【0069】
したがって、このような表示によっても各断層画像106,110,114の向きなどを容易に認識することが可能となる。
【0070】
次に、図12〜図20を用いて他の実施形態について説明する。なお、各図において、上記実施形態と同様の構成には同一符号を付すことにする。
【0071】
この他の実施形態も上記実施形態と同様に、第1物理マーク及び第2物理マークと第1表示マーク及び第2表示マークとを対応付けることによって、超音波画像を観察する際に、第1走査方向及び第2走査方向を視覚的に容易に特定できるようにするものである。
【0072】
但し、上記実施形態では、第1物理マークが第1走査方向と直交関係にある第1側面に設けられ、第2物理マークが第2走査方向と直交関係にある第2側面に設けられていたが、この実施形態では、以下に詳述するように、第1物理マークが第1走査面と平行的関係にある第2側面に設けられ、第2物理マークが第2走査面と平行的関係にある第1側面に設けられている。このような違いはあるものの、プローブ座標系と表示画像の座標系とを対応付ける原理面で両者は共通である。具体的に以下に説明する。
【0073】
図12には、この実施形態に係る3Dプローブ10が示されている。ケース12には、互いにほぼ直交する関係にある4つの側面12A〜12Dが形成されている。その内で、第2側面12Bの下部には、第1物理マーク300が形成され、第1側面12Aの下部には、第2物理マーク302が形成されている。第1物理マーク300は、第1走査方向(θ方向)の走査原点側へ変位した位置に設けられ、第2物理マーク302は、第2走査方向(φ方向)の走査終点側へ変位した位置に設けられている。もちろん、第1物理マーク300が第1走査方向の終点側へ変位した位置に設けられてもよく、第2物理マーク302が第2走査方向の原点側へ変位した位置に設けられてもよい。いずれにしても、ユーザーに対して、走査面、物理マーク、表示マークの関係をあらかじめ理解させておくべきである。各実施形態ではマーク付与ルールが異なるが、実施されたルールをユーザーが理解していれば画像把握上の混乱が生じることはない。
【0074】
第1物理マーク300は例えば円形の凸形をもったオレンジ色のマークであり(説明の便宜上、上記実施形態の第2物理マーク20と同じ形態で表現してある)、第2物理マーク302は例えば矩形で凹形をもった緑色のマークである(説明の便宜上、上記実施形態の第1物理マーク18と同じ形態で表現してある)。上記実施形態と同様に、第1物理マーク300と第2物理マークは、形、凹凸、色などを互いに異ならせるのが望ましい。後述する第1表示マークは第1物理マーク300と同じ形及び色を有し、第2表示マークは第2物理マーク302と同じ形及び色を有する。
【0075】
第1走査方向(θ方向)への超音波ビームの走査により第1走査面が形成され(超音波ビームの二次元走査により形成された3Dエコーデータ空間から当該走査面上のデータ抽出を行ってもよい)、その第1走査面と第2側面12Bは平行的関係(略平行関係)にある。第1走査面は第2走査方向における超音波ビームの偏向角度によって傾斜するが、その偏向角度がゼロ度つまり第1走査面が垂直になった状態では、第1走査面と第2側面12Bが平行となる(後に説明する図15参照)。同様に、第2走査方向(φ方向)への超音波ビームの走査により第2走査面が形成され(超音波ビームの二次元走査により形成された3Dエコーデータ空間から当該走査面上のデータ抽出を行ってもよい)、その第2走査面と第1側面12Aは平行的関係(略平行関係)にある。第2走査面は第1走査方向における超音波ビームの偏向角度によって傾斜するが、その偏向角度がゼロ度つまり第2走査面が垂直になった状態では、第2走査面と第1側面12Aが平行となる(後に説明する図13参照)。但し、各側面が若干湾曲あるいは傾斜していても、各走査面と各側面との対応関係はユーザにおいて直感的に理解できる。
【0076】
この実施形態では、後に図14や図16に示すように、各物理マークを断層画像へそのまま投影したように各表示マークを表示できるので、上記実施形態よりも、より自然に対応関係を把握できるという利点がある。
【0077】
なお、図12に示す3Dプローブを有する超音波診断装置の構成は図1に示したものと同様である。
【0078】
次に、図13〜図20を用いて表示部に表示される画像の例について説明する。
【0079】
図13には、3Dプローブ10と生体内の臓器としての心臓100との位置的な関係が示されている。ここで、図4と同様に、符号102は設定された切断面を表しており、すなわちその切断面102に相当する走査面(第2走査面)が形成されている。
【0080】
このような切断面の設定を行った場合、図14に示すような画像が表示される。すなわち、表示画面104上には電子セクタ走査によって形成された扇状の断層画像106が表示され、その断層画像106の上部にはその右側近傍に第2表示マーク302Aが表示される。右側に表示されるのは、3Dプローブ10において、第2物理マーク302が第1側面上で右側に変位していることに対応している。つまり、第2表示マーク302Aは第2物理マーク302を切断面上に投影したような印象をもって表示される。これは後述するように第1表示マーク300Aの表示を行う場合においても同様である。この第2表示マーク302Aは第2物理マーク302に対応した色及び形を有している。よって、図2に示すような表示によれば、ユーザーは、その断層画像がr−φの平面に対応したものであることを直感的に理解でき、しかもφ方向における基準端を直感的に理解することができる。すなわち、図13において符号200で示されるように断層画像の観察方向すなわち視点の向きを容易に把握することができる。
【0081】
なお、切断面の裏面を表示する場合には、第2表示マーク302Aが断層画像の左側に表示される。その場合において、形状及び色を維持しつつも輝度を落とすなどの処理を適用し、つまり表示形態を若干変化させるようにしてもよい。このことは他の切断面を表示する場合においても同様である。
【0082】
また、図15に示すように心臓100に対してθ方向に切断面(第1走査面に相当)108が設定された場合には、図16に示すような画像が表示される。すなわち表示画面104上において、R−θ面に相当する断層画像110が表示される。その場合においては、θ方向の基準端に相当する側に第1表示マーク300Aが表示される。すなわち、扇状の断層画像110の上部の右側に第1表示マーク300Aが表示される。これは、3Dプローブ10において、第2側面の右側に第1物理マーク300が設けられていることに対応したものである。その第1表示マーク300Aは、3Dプローブ10における第1物理マーク18と同様の形及び色を有している。
【0083】
その結果、ユーザーは、この図16に示すような表示を観察することにより、断層画像の三次元空間内における位置を容易に認識でき、しかも走査方向の基準端を容易に認識できる。すなわち手前から見た断層画像であるのか奥側から見た断層画像であるのかを容易に認識できる。図15には、符号202によって視点の向きが示されている。
【0084】
また、図17に示されるように、三次元空間V内において水平方向の切断面112が設定された場合には、図18に示すような画像が表示される。ここで、その切断面112はφ−θ面に相当し、あるいは深さ方向をz方向としてx−y面に相当する。
【0085】
図18において、表示画面104においては図17に示した切断面112に相当する断層画像114が表示されているが、その場合において、それぞれの物理マーク300,302に対応して2つの表示マーク300A,032Aが表示されている。この場合においては断層画像114の特定の2つの辺の右端部にそれぞれの表示マーク300A,302Aが表示されている。つまり、3Dプローブ10における各物理マーク300,302を上方から見たような配置で、各表示マーク300A,302Aが表示される。この場合の表示の仕方は、図9に示した場合と同様のルールに立っている。よって、この場合においても、ユーザーはそれらの表示マーク300A,302Aの位置を把握することにより、断層画像114と3Dプローブ10との位置的な関係を直感的に認識することができる。この場合においては図17に示すように視点の向きは符号204で示されるとおりである。
【0086】
また、本実施形態でも、図19に示すように、表示画面104上に直交三断面としてのトリプレーン表示を行うこともできる。すなわち図14、図16及び図18に示した各断層画像を並べて表示し、それに伴って対応する表示マーク300A,302Aを表示したものである。ここで、左下の部分に例えば3Dプローブを模式的に表す図形及び三次元空間を模式的に表す図形を表示するようにしてもよい。その場合においては3Dプローブを模式的に表す図形上に2つの物理マークを表示してもよく、また三次元空間を模式的に表す図形上に各切断面の位置をワイヤなどによって表現するようにしてもよい。
【0087】
また、図3に示すような3Dプローブ60が用いられる場合には、図20に示すようなトリプレーン表示を行ってもよい。すなわち表示画面104上においては各断層画像106,110,114が表示されているが、それぞれの近傍には図3に示した物理マーク68に対応付けられた表示マーク部が表示されている。ここで、表示マーク部は、物理マーク68が設けられている角部の位置を示す例えば矩形の表示マーク400Aと、物理マーク68と同じような形態(L字形)を有し、角部の位置を示す表示マーク400Bと含む。
【0088】
したがって、このような表示によっても各断層画像106,110,114の向きなどを容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】3Dプローブの一例を示す斜視図である。
【図3】3Dプローブの他の例を示す斜視図である。
【図4】切断面の設定例を示す図である。
【図5】図4に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図6】切断面の設定例を示す図である。
【図7】図6に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図8】切断面の設定例を示す図である。
【図9】図8に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図10】トリプレーン表示例を示す図である。
【図11】他のトリプレーン表示例を示す図である。
【図12】他の実施形態に係る3Dプローブの斜視図である。
【図13】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図14】他の実施形態における、図13に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図15】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図16】他の実施形態における、図15に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図17】他の実施形態における、切断面の設定例を示す図である。
【図18】他の実施形態における、図17に示す切断面に対応する断層画像の表示例を示す図である。
【図19】他の実施形態における、トリプレーン表示例を示す図である。
【図20】他の実施形態における、他のトリプレーン表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10 3Dプローブ(三次元エコーデータ取込用超音波探触子)、16 物理マーク部、18,300 第1物理マーク、20,302 第2物理マーク、30 送信部、32 受信部、34 信号処理部、36 3Dメモリ、38 三次元画像形成部、40 断層画像形成部、42 グラフィック画像形成部、44 表示処理部、46 表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する手段であって、二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を有する手段として、又は、前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及び当該一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する手段として構成された送受波手段と、
前記送受波手段を収容したケースと、
前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第1表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第1走査方向を識別するための第1物理マーカーと、
前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第2表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第2走査方向を識別するための第2物理マーカーと、
を含むことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースは、
前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、
前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、
を有し、
前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項3】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースは、
前記第1走査方向に広がる第2側面と、
前記第2走査方向に広がる第1側面と、
を有し、
前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項4】
請求項3記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーは前記第2側面における前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第1側面における前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項5】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは色及び形の少なくとも一方が互いに異なることを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項6】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の一方は隆起形状を有し、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の他方は窪み形状を有することを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項7】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは、前記ケースの第1側面及び第2側面に跨って一体形成されたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項8】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースと前記第1及び第2物理マーカーは互いに色が異なることを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項1】
超音波ビームを第1走査方向及び第2走査方向に走査し、三次元エコーデータ取込空間を形成する手段であって、二次元配列された複数の振動素子からなる二次元アレイ振動子を有する手段として、又は、前記第1走査方向に配列された複数の振動素子からなる一次元アレイ振動子及び当該一次元アレイ振動子を前記第2走査方向に走査する機械走査機構を有する手段として構成された送受波手段と、
前記送受波手段を収容したケースと、
前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第1表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第1走査方向を識別するための第1物理マーカーと、
前記三次元エコーデータ取込空間内を表す断層画像又は三次元画像と共に表示される第2表示マーカーに対応付けられる物理マーカーであって、前記ケースに設けられ、前記第2走査方向を識別するための第2物理マーカーと、
を含むことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースは、
前記第1走査方向に直交する側面であって前記第1走査方向の基準端に対応する第1側面と、
前記第2走査方向に直交する側面であって前記第2走査方向の基準端に対応する第2側面と、
を有し、
前記第1物理マーカーは前記第1側面に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第2側面に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項3】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースは、
前記第1走査方向に広がる第2側面と、
前記第2走査方向に広がる第1側面と、
を有し、
前記第1物理マーカーは前記第2側面に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第1側面に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項4】
請求項3記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーは前記第2側面における前記第1走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられ、
前記第2物理マーカーは前記第1側面における前記第2走査方向の基準端側へ変位した位置に設けられたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項5】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは色及び形の少なくとも一方が互いに異なることを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項6】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の一方は隆起形状を有し、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーの内の他方は窪み形状を有することを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項7】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記第1物理マーカーと前記第2物理マーカーは、前記ケースの第1側面及び第2側面に跨って一体形成されたことを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【請求項8】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記ケースと前記第1及び第2物理マーカーは互いに色が異なることを特徴とする三次元エコーデータ取込用超音波探触子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−181373(P2006−181373A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41943(P2006−41943)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【分割の表示】特願2003−7788(P2003−7788)の分割
【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【分割の表示】特願2003−7788(P2003−7788)の分割
【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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