説明

三次元メモリを有する海洋レーダーシステム

【課題】航海上の標的と固定物体を自動的に識別するレーダシステムを提供する。
【解決手段】レーダーシステム10は、地理的領域を特徴づけるレーダー戻りデータを記憶装置に入れる際、操作可能であるメモリ装置20、地理的領域と関連した固定境界標識を表す一組の海図データを含むデータベース28、およびメモリ装置に結合したプロセッサ22を含む。プロセッサは、メモリ装置より少なくとも1つの地理的領域の連続スキャンに対応する複数のレーダー戻りデータセットを取得し、複数のデータセット間で相関処理を実行し、第1相関データセットを生じ、これと固定境界標識海図データ間で相関処理を実行し、第2相関データセットを生じ、第2相関データセットを処理し、固定境界標識海図データを一掃し、そこから固定境界標識ではないスキャンされた物体を表す第3データセットを生じるよう配列されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
商業用海洋レーダーシステムは、100個以上の標的(例えば以前は識別されなかった、および/または/海図に記されなかった物体)を、自動的にレーダーで標的として発見し、追跡することが求められる。標的と航海上の固定物体を識別する能力は、大変な関心事である。目に明らかな動きがない標的、あるいは目に明らかな動きがないように思われる標的を発見することはとりわけ重要である。
【発明の概要】
【0002】
実施形態では、レーダーシステムは、少なくとも1つの地理的領域を特徴づけるレーダー戻りデータを記憶する際に、操作可能であるメモリ装置、少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識を表す一組の海図データを含むデータベース、およびメモリ装置に結合したプロセッサを含む。プロセッサは、メモリ装置より少なくとも1つの地理的領域の連続スキャンに対応する複数のレーダー戻りデータセットを取得し、複数のデータセット間で相関処理を実行し、第1相関データセット生じ、第1相関データセットと少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識海図データ間で相関処理を実行し、第2相関データセットを生じ、第2相関データセットを処理し、前記の固定境界標識海図データを一掃し、そこから固定境界標識ではないスキャンされた物体を表す第3データセットを生じるよう配列されている。
【0003】
以下の図面に関し、本発明の好適な、かつ既存のものに代わる実施形態を下記で詳細に説明する。

【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従い形成された典型的なシステムを図解したものである。
【図2】図2は、実施形態に従うメモリ装置の機能性について、概念的に図解したものである。
【図3】図3は、図1のシステムの機能性を図解したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の実施形態では、二次元レーダー反射能データの処理を利用し、地理的領域において固定されていない、または知られていない境界標識である物体を発見し、識別する。本説明で用いたように、“境界標識” という用語は、広大な土地のような地質学上の物はもちろんのこと、ブイのように固定され航海の助けとなる物も含む、と解釈しなければならない。実施形態は、発見された航法上の項目の識別情報をレーダーが提供できるよう、直接的な方法を与えるだけでなく、観察レーダーに関して、船舶または浮遊危険物の速力がゼロの場合、船舶あるいは浮遊危険物と、固定されたか、あるいはそうではない既知の境界標識、例えば航海用ブイを識別するという問題も解決する。
【0006】
本アプローチは、動きを補正した海図データベースを他との区別を示すメモリ層として利用し、可航水路内にある物体の既知の位置を明らかにし、さらに連続メモリ層を利用し、周辺海域および広大な土地の詳細なレーダー像を、動きが安定した海図データベースの"上"に直接保持する、あるいは表示し保持する、という点で海洋レーダーに関する既存の標的を発見し、追跡するという概念とは異なる。
【0007】
層状三次元メモリは、海況または降雨によるクラッターを減らし、既知の固定物体あるいはデータベースには含まれていない浮遊脅威物と海上で衝突することを避けるため、記憶装置に入れたイメージ層間での高等処理に役立つ。
【0008】
図1は、本発明の実施形態が実行される場合がある適切な機能環境だけでなく、実施形態に従ったシステムをも図解したものである。機能環境は適当な機能環境の一例に過ぎず、本発明の利用または機能性の範囲に関し、何らかの限界を示唆する意図は全くない。
【0009】
本発明は、1台以上のコンピュータプロセッサ、あるいは他の装置で実行されるプログラムモジュールのようなコンピュータで遂行可能な指示の総合的な文脈中で説明される場合もある。一般にプログラムモジュールには、ルーチン、プログラム、オブジェクトコード、コンポーネント、データ構造などが含まれるが、これらは特定のタスクを実行したり、特定の抽象的なデータタイプを満たしている。概して、プログラムモジュールの機能性は、様々な実施形態において、望ましいように組み合わされたり、分配されたりすることがよくある。
【0010】
図1で図解したシステム/機能環境は、概して、少なくともコンピュータで読み取り可能な何らかの形の記録媒体を含むが、1つ以上のプロセッサ、および/またはメモリ装置と関連している場合がある。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、そうした機能環境の1つ以上のコンポーネントでアクセスでき、求めに応じられる記録媒体であり得る。実例を挙げれば、必ずしも以下に限定されるものではないが、コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、コンピュータ記憶記録媒体、および通信媒体からなることがある。コンピュータ記憶記録媒体は、いかなる方法を用いても実行される揮発性・不揮発性の記録媒体、取り外し可能・不可能な記録媒体を含むか、あるいはコンピュータ読み取り命令、データ構造、プログラムモジュール、あるいは他のデータのような情報を記憶するためのテクノロジーを含む。コンピュータ記憶記録媒体は、必ずしも以下に限定されるものではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリテクノロジー、CD−ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)または他の光学的記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、あるいは他の記憶媒体を含むが、これらを利用し、望みの情報を記憶装置に入れ、そうした機能環境の1つ以上のコンポーネントでアクセス可能である。通信媒体は、一般的には、コンピュータ読み取り命令、データ構造、プログラムモジュール、または搬送波や他の運搬メカニズムのような変調データ信号における他のデータを1つの組織体としてまとめ、さらに情報配達記録媒体をも含む。“変調データ信号”という用語は、1組以上の特性を有する信号、または信号で情報をコード化するような方法で変化した信号を意味する。実例を挙げれば、必ずしも以下に限定されるものではないが、通信媒体は、有線ネットワークや直接有線接続のような有線記録媒体、音響、RF、赤外線や他の無線記録媒体のような無線記録媒体を含む。上記の何かの組合せも、またコンピュータ読み取り記録媒体の範囲内に含めなければならない。
【0011】
本発明の実施形態は、レーダーの標的または浮遊危険物の観察レーダーに対する相対速度がゼロの場合、標的を(固定および/または航海用ブイのような既知の物体に対立するものとして)船舶あるいは浮遊危険物として分類するシステム、およびコンピュータプログラム製品を含み、システムが実行されている船舶の航行と位置を実証するだけでなく(ここでは示さない)発見された航海上の項目の識別情報をレーダーが提供できるように直接的な方法を与える。図1は、本発明の実施形態に従い形成された典型的なシステム10を図解したものである。システム10は、レーダーアンテナ12、スキャンモーター、アンテナの方位角を示すように操作可能なアングルインジケータアセンブリ14を含む。システム10は、さらに、レーダートランシーバー16,レーダー信号プロセッサ18,メモリ装置20、レーダー航法プロセッサ22、レーダー発見プロセッサ24,船舶進行方向インジケータ26、海図データベース28、GPS受信機30,およびレーダー表示装置32を含む。メモリ装置20は、容積測定バッファーテクノロジーを含むハネウェル(登録商標)製RDR−4000天候レーダーシステムのような、あるいはこれに類似した三次元バッファ処理システムを含むこともあれば、そのコンポーネントとなっている場合もある。
【0012】
図2は、実施形態に従い、メモリ装置20の機能性を概念的に図解したものである。船舶の位置および船舶の進行方向に関する緯度と経度の方角を定める詳細な海洋航法海図データを提供する“基部” 層を含む三次元メモリが組み立てられており、同三次元メモリは、乾燥岩、島、航海用ブイ、昼標、あるいは海図に記された他の固定物体のような既知の境界標識の位置を含む。海図層の上にある連続層は、海図層上に概念的に重ね合わせることができる海洋レーダーアンテナ12により、予め決定した時間間隔ΔTで、連続360度スキャンから収集されるレーダー発見データを含む。図2では2つのスキャン層しか図解されていないが、都合の良いことに、本文書の以下でより詳細に検討した原理に従い、戻りデータの冗長な履歴が評価されるよう、そうした層は3つ以上がメモリに保持されていることを認めなければならない。
【0013】
海図データは、船舶の現時点での緯度/経度に集中した現在の最大レーダーレンジの程度しかメモリに記憶されない海洋航法海図データベース28より得られる。
【0014】
図3は、本発明の実施形態に従い、システム10の機能性を図解したフローチャートである。手順200では、GPS受信機は緯度と経度の表示を提供し、システム10が実装されている船舶の地理的位置も分かる。このように、レーダーの指示位置と範囲の程度にふさわしい海図がデータベース28から取得され、本文書の以下でより詳細に検討する原理に従い、相互に関連づけるために利用されることがある。
【0015】
手順210では、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24により、360度の多重(“N”)連続アンテナ12スキャン用として、海洋レーダー発見物(レーダー戻りデータ)が収集される。GPS受信機30からの緯度と経度の入力、船舶そのもの、アンテナ12、および/またはトランシーバー16と関連しているジャイロスコープ(ここでは示さない)からの進行方向、ロール、ピッチ、ヨーの入力により、船舶の動きを把握する信号プロセッサ18で空間が安定した後、レーダー発見物は、メモリ装置20にある連続層に記憶される。それぞれの360度スキャンは、直接その“下”にあり、船舶の進行方向の方角を定められている海図データに重ね合わせた概念上のレーダー像を含む1層のデータ記憶装置に対応する。
【0016】
手順220では、N連続スキャン間で、スキャン対スキャンの相互の関連づけが、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24により行われる。
【0017】
手順230では、結果として生じたスキャン対スキャンの相関とレーダースキャンの地理的位置に対応する海洋航法海図上の固定物体の間で、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24により相互の関連づけが行われる。
【0018】
手順240では、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24が、ブイや昼標などのような航海上の助けとなるものと関連した相関関係を決定する。
【0019】
手順250では、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24が、海岸線、巨岩、小島などのような地理的境界標識と関連した相関関係を決定する。そのようなものとして、1つ以上のレーダー航法プロセッサ22とレーダー発見プロセッサ24は、既知の境界標識、航海上の助けとなるもの、あるいは他の固定物体と一致する標的リターンを表示し、海図データベース情報に基づき、航海上の項目を識別できる。
【0020】
手順260では、レーダー発見プロセッサ24は、 結果として生じる相関データセットが、船舶や海図にない潜在的危険物を示すデータのみを含むように、相関データを処理し、航海上の助けとなるものや地理的境界標識と関連した相関を除去する。そのようなものとして、レーダー発見プロセッサ24は、既知の固定物体に相当するレーダー発見物を除去し、連続レーダースキャン間で残存し、追跡すべき標的としての適格性を決定する残りの発見物にのみ焦点を合わせる。未知の航海上の特徴、または地理的特徴である発見物の動き、または動きのなさを利用し、応用できるものとして、発見された標的の位置、速度、および方向を決定する。
【0021】
本発明の実施形態に従い、既存のものに代わるアプローチを採用し、発見した標的の相対的動きを分析することで、1つ以上これらの決定を行ってもよい。第1のアプローチとしては、レーダー発見プロセッサ24は、アンテナ12およびトランシーバー16と共に、標的がアンテナのビーム幅内で観察できる時間に、発見された標的とアンテナ12間の視線速度のコンポーネントを直接測定する。この時間枠は、アンテナ12のスキャン速度とアンテナのビーム幅で決定される。
【0022】
第2のアプローチとして、レーダー発見プロセッサ24は、1つのスキャン対スキャン相関期間とすぐ次のスキャン対スキャン相関期間の間で、標的の位置変化に注目することにより、標的の動きの方向と動きの速度を決定する。1つのスキャン対スキャン相関期間から次のスキャン対スキャン相関期間までの正確な時間の間に、発見された標的の位置が変化することに注目し、かつ観察船の動きを説明することにより、レーダー発見プロセッサ24で標的の速度と方向について、極めて正確な測定値が得られる。
【0023】
その後ディスプレイ装置32は、発見されたすべての標的、位置、動き、および方向について詳しく述べるだけでなく、発見された既知の航海項目を表示し、相互に関連づけられた海図システム上で提供されるような項目と関連したデータを表示することができる。
【0024】
手順270では、レーダー航法プロセッサ22は、例えば、相関決定で以前に確かめられた航海上の助けとなるものや地理的境界標識の位置選定に対する三角測量計算に基づき、船舶の位置と進行方向を決定する。
【0025】
手順280では、レーダー航法プロセッサ22は、既知の航海上の助けとなるもの(例えばブイや昼標)と陸上の顕著な細部との間で、相対的ベアリング角度の交差を三角法で測定することにより、船舶の位置を決定する。船舶の速度と方向は、1つの三角測量期間から次の三角測量期間までの位置変化に注目することにより得られる。そのようなものとして、たとえGPS受信機30からのデータが利用できなくなっても、他の点ではシステム10は、船舶の操縦者に位置と航海情報を提供する上で操作可能である。
【0026】
上記のように、本発明の好適な実施形態を図解し、説明したが、本発明の意図と範囲からそれることなく多くの変更を行うことは可能である。従って本発明の範囲は、好適な実施形態の開示内容で制限されることはない。それよりも本発明は、以下に記したクレームに関して完全に決定しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶上で履行されるよう構成されたレーダーシステム(10)であって、
少なくとも1つの地理的領域を特徴づけるレーダー戻りデータを記憶するよう操作できるメモリ装置(20)、およびメモリ装置に結合されたアンテナ(12)で受信されるデータと、
前記メモリ装置に結合されたデータベース(28)であって、少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識を表す一組の海図データを含みむ、ことを特徴とするデータベースと、
前記メモリ装置に結合されたプロセッサ(22)であって、
メモリ装置より、少なくとも1つの地理的領域の連続スキャンに対応する複数のレーダー戻りデータセットを取得し、
複数のデータセット間で相関処理を行い、第1相関データセットを生じさせ、
第1相関データセットと、少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識海図データの間で相関処理を行い、第2相関データセットを生じさせ、
第2相関データセットを処理し、前記の固定境界標識海図データを一掃し、そこから固定境界標識ではないスキャンされた物体を表す第3データセットを生じさせる、
ように構成されたことを特徴とするプロセッサと、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
メモリ装置(20)が三次元バッファを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
船舶上で実行するよう構成されたレーダーシステム(10)であって、
少なくとも1つの地理的領域を特徴づけるレーダー戻りデータを記憶するよう操作できるメモリ装置(20)、およびメモリ装置に結合されたアンテナ(12)で受信されるデータと、
前記メモリ装置に結合されたデータベース(28)であって、少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識を表す一組の海図データを含む、ことを特徴とするデータベースと、
前記メモリ装置に結合されたプロセッサ(22)であって、
メモリ装置から、少なくとも1つの地理的領域の連続スキャンに対応する複数のレーダー戻りデータセットを取得し、
複数のデータセット間で相関処理を行い、第1相関データセットをもたらし、
第1相関データセットと、少なくとも1つの地理的領域と関連した固定境界標識海図データの間で相関処理を行い、第2相関データセットをもたらし、
第2相関データセットを処理し、前記の固定境界標識海図データに基づき、船舶の地理的位置を決定する
ように構成されることを特徴とするプロセッサと
を有することを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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