三量体コラーゲン足場抗体
【課題】三量体コラーゲン足場抗体を提供すること。
【解決手段】自己三量体化を導く、コラーゲンまたはコラーゲン様ドメインを含むコラーゲン足場ドメインが提供される。コラーゲン足場ドメインは、抗体ドメインなどの1種もしくは複数種の異種ドメインと融合され得る。足場ドメインおよび融合タンパク質を生成しかつ使用する方法もまた提供される。
【解決手段】自己三量体化を導く、コラーゲンまたはコラーゲン様ドメインを含むコラーゲン足場ドメインが提供される。コラーゲン足場ドメインは、抗体ドメインなどの1種もしくは複数種の異種ドメインと融合され得る。足場ドメインおよび融合タンパク質を生成しかつ使用する方法もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年12月15日出願の米国特許仮出願第60/750,746号明細書に対して優先権を主張する、2006年12月12日出願の米国特許出願第11/609,410号明細書の一部継続出願であり、それらは双方ともに参照により本明細書中に援用される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
タンパク質に基づく結合試薬は、治療または診断用途において様々な使用法を有する。抗体はかかる試薬における優れたパラダイムであることが判明している。実際、多数のモノクローナル抗体(mAbs)の癌、感染性疾患および炎症性疾患の治療における使用が奏功している(非特許文献1)。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
抗体親和性は、治療物質としての抗体の成功を握る主要な因子である。高親和性を有する抗体は、抗体の、標的化された受容体における天然リガンドとの有効な競合、それによる用量、毒性、およびコストの低減を可能にする。抗原結合部位の多量体化が、抗体アビディティー(antibody avidity)(機能的親和性(functional affinity))として定義される、抗体の抗原に対する全体的な結合力を高める有効な手段であることが示されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。多価抗体が抗癌活性をインビボで高めている(非特許文献7;非特許文献8)。免疫グロブリンG(IgG)が二価の性質を有することから、従来式に設計されたIgGを3つ以上の異なる抗原に対する同時結合として用いることはできない。したがって、多価または多重特異的タンパク質に基づく結合試薬としての需要が存在する。
【0004】
いくつかの場合では、Fc領域の設計を通じて抗体依存性の細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)などのエフェクター機能を回避することは、分裂促進性(mitogenicity)の副作用の低減に必要である。例えば、マウス抗−ヒトCD3 mAb(オルソクローン(Orthoclone)OKT3、ムロモナブ(muromonab)−CD3)は、ヒトT細胞上のT細胞受容体(TCR/CD3複合体)を標的化する強力な免疫抑制物質である。同種移植片拒絶の予防または治療がここ20年間にわたり利用されている(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。しかし、この治療の利用に対する1つの大きな欠点がTNF−α、IL−2、およびIFN−γなどのサイトカインの全身放出であり、その結果、インフルエンザ様症状、呼吸困難、神経症状、および急性尿細管壊死を含む一連の逆マイトジェン効果がもたらされる(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。OKT3および他の抗−CD3 mAbのマイトジェン活性がFcR−陽性細胞(例えば単球)への結合を介する広域のTCR/CD3架橋に依存することから、最近ではFcRへの結合性の改変によって非マイトジェン形態の抗−CD3抗体を開発することに努力がなされている。したがって、高親和性、低いマイトジェン効果、および高いインビボでの安定性を有する、タンパク質に基づく結合試薬に対する需要が存在する。
【0005】
コラーゲンは哺乳類において最も豊富に存在するタンパク質である。トリプレット配列Gly−X−Y(式中、XおよびYはプロリン(アミノ酸コードでPもしくはPro)およびヒドロキシプロリン(アミノ酸コードでOもしくはHyp)であることが多い)のリピートを有する1つもしくは複数の三重らせん領域(コラーゲンドメイン)を有する細胞外マトリックスタンパク質である。かかるトリプレットの存在は、3つのコラーゲンポリペプチド鎖(α−鎖)における三重らせん高次構造への折り畳みを可能にする。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質はヒト血清中に存在し、感染性生物からの防御における先天性免疫系としての機能を果たす。これらは、補体タンパク質Clq、マクロファージ受容体、コレクチンファミリータンパク質−マンノース結合レクチン(MBL)、フィコリンならびにサーファクタントプロテインAおよびD(SP−AおよびSP−D)を含む。これら「防御コラーゲン(defense collagen)」分子の中で見られる共通の構造的特徴は、それらのすべてがC末端に標的結合ドメインを有する多重三量体タンパク質を単位とする点である。結果として、多量体化によりこれらの防御コラーゲン分子の結合ドメインにおける機能的親和性が有意に高まる。
【0006】
コラーゲンドメインを有する異種融合タンパク質の三量体化が、コラーゲンドメインに融合される同種または異種いずれかの三量体化ドメインを用いてコラーゲン三重らせんの形成を駆動することによって実現されている。三量体−オリゴマー化ドメインの例として、プロコラーゲンのC−プロペプチド、コレクチンファミリータンパク質のコイルドコイルネックドメイン、FasLのC末端部分およびバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドン(foldon)ドメインが挙げられる(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)。
【0007】
線維性コラーゲン(タイプI、II、III、IV、V、およびXI)およびコレクチンファミリータンパク質の三量体構築は、それらの大きい球状のC末端ドメイン(C−プロペプチド、約250個のアミノ酸)およびC末端コイルドコイルネックドメイン(約35個のアミノ酸)の各々における三量体の会合により開始され、次いでC末端からN末端にかけてのジッパー様形態でのコラーゲンドメインの伝播が生じる(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24)。
【0008】
配列Gly−Pro−Hypはコラーゲンにおける最も安定化しかつ最も一般的なトリプレットであり、かつペプチド(Gly−Pro−Hyp)10は高度に安定な三重らせん構造に自己会合可能である(非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28)。化学合成された(Gly−Pro−Hyp)10ペプチドと異なり、(Gly−Pro−Pro)10ペプチドは生理的条件下で安定な三重らせんに自己会合することはない(非特許文献26)。熱的に安定な(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんを得るため、2つのアプローチの記載がなされている。第1に、鎖間ジスルフィド結合された(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんが、コラーゲン様ペプチドに隣接するタイプIIIコラーゲンのC末端またはN末端のジスルフィドノット(disulfide knot)の20℃でのレドックス−シャッフリングプロセスによりインビトロで得られた(非特許文献29;非特許文献30)。第2に、バクテリオファージT4フィブリチン(fibritin)由来の安定な異種の三量体化フォルドンドメインが(Gly−Pro−Pro)10ペプチドのC末端に融合されることで、コラーゲン様ペプチドの三量体化および正確な折り畳みがP4H欠乏性の大腸菌(E.coli)発現系内で駆動された(非特許文献16)。多数の研究にてG−X−Yリピートの融解温度/安定性が試験されている。(非特許文献16;非特許文献31;非特許文献32;および非特許文献33)。これらの研究に基づき、様々なリピート構造の安定性が予測可能である。
【0009】
上記のアプローチは、異種ポリペプチドの正常な三量体化および折り畳みを支持することなく、潜在的な治療用途を極端に限定しうると思われる免疫応答のリスクに関連した異種抗遺伝子断片を導入しうることからその使用が限定されている。したがって、三量体融合タンパク質の形成を駆動する熱的に安定な三重らせん構造を形成可能であり、インビトロとインビボの双方でかかる三量体化されたポリペプチドの使用を可能にするインビボ発現系が必要である。
【0010】
機能的な三重らせん高次構造を有するコラーゲンおよびヒドロキシプロリンを含有するペプチドの組換え発現は、特異的な翻訳後酵素、特にプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)を必要とする(非特許文献22)。コラーゲンのGly−X−YモチーフのY位置内で特定されたプロリンは、一般にプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)により4−ヒドロキシプロリンに翻訳後修飾されることで、コラーゲンの三重らせん構造が安定化される。プロリンの水酸化の非存在下では、コラーゲンに必須の三重らせん高次構造は、生理的温度未満で熱的に不安定である(非特許文献34;非特許文献35)。原核生物はP4H活性を全く有していない。外因性のP4H遺伝子(αおよびβサブユニットの双方)が同時に導入されることで活性α2β2四量体が形成されない限り、酵母および昆虫細胞は、組換えコラーゲンの発現を行うのに不十分な酵素活性を示す。
【0011】
非線維性FACIT(三重らせんが中断された状態の線維結合型コラーゲン)コラーゲン(タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIおよびXXII)は、コラーゲンファミリー内のサブグループである。それらは線維性コラーゲンおよび他のマトリックス成分または細胞と結合するように見える(非特許文献36)。FACITでは、4つのアミノ酸によって分離される2つの保存されたシステインはCOL1およびNC1ドメインの接合部位に位置し、3つの構築されたコラーゲン鎖内の鎖間ジスルフィド結合を担っており(非特許文献37)、詳細にはその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0012】
C末端先端(extreme C−terminal)のコラーゲン(COL1)および非コラーゲン(NC1)ドメインをヒトP4H遺伝子の2つのサブユニットとともに含むタイプXIIおよびXXIミニコラーゲンは、それぞれバキュロウイルスに感染したイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)およびショウジョウバエ(Drosophila)S2昆虫細胞内で同時発現されている(非特許文献37;非特許文献38)。鎖間ジスルフィド結合されたミニコラーゲンXIIおよびXXIの形成は、コラーゲン鎖のヒドロキシプロリン含量に依存し、それは三重らせんの折り畳みがジスルフィド結合の形成に先行することを示唆している。ミニコラーゲンXXI内での不十分なプロリルの水酸化は、鎖間ジスルフィド結合された二量体および鎖間ジスルフィド結合された単量体の生成をもたらす(非特許文献38)。ニワトリコラーゲンXIIのCOL1ドメイン全体を有するコンストラクトが三量体を形成可能であった。マッツォラーナ(Mazzorana)は、ニワトリコラーゲンXIIのNC1ドメイン全体およびCOL1ドメインの5つの末端G−X−Yリピートのみを有するコンストラクトが三量体を形成できなかったことを示している。COL1ドメインにおける5つの追加のC末端G−X−Yリピートの存在は、三量体の形成を可能にした。マッツォラーナ(Mazzorana)によって用いられたコンストラクトは、タグとしてヒトc−mycタンパク質の短い断片を含んでいた。そのようなものとして、マッツォラーナ(Mazzorana)は、これらの配列による三量体化の、付着分子の折り畳みまたは機能性に対する効果、またはより大きな付着分子の自己三量体化に対する効果については言及しなかった。
【0013】
【特許文献1】国際公開第98/56906号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/4678号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献4】国際公開第92/18619号パンフレット
【特許文献5】国際公開第91/17271号パンフレット
【特許文献6】国際公開第92/20791号パンフレット
【特許文献7】国際公開第92/15679号パンフレット
【特許文献8】国際公開第93/01288号パンフレット
【特許文献9】国際公開第92/01047号パンフレット
【特許文献10】国際公開第92/09690号パンフレット
【特許文献11】国際公開第90/02809号パンフレット
【特許文献12】国際公開第91/00906号パンフレット
【特許文献13】国際公開第91/10741号パンフレット
【特許文献14】国際公開第92/03918号パンフレット
【特許文献15】国際公開第92/03917号パンフレット
【特許文献16】国際出願PCT/US86/02269号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第184,187号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第171,496号明細書
【特許文献19】欧州特許出願公開第173,494号明細書
【特許文献20】国際公開第86/01533号パンフレット
【特許文献21】米国特許第4,816,567号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第125,023号明細書
【特許文献23】米国特許第5,585,089号明細書
【特許文献24】米国特許第5,693,761号明細書
【特許文献25】米国特許第5,693,762号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第519596Al号明細書
【特許文献27】米国特許第5,208,020号明細書
【特許文献28】米国特許第5,475,092号明細書
【特許文献29】米国特許第5,585,499号明細書
【特許文献30】米国特許第5,846,545号明細書
【特許文献31】米国特許第6,235,883号明細書
【特許文献32】米国特許第6,232,107号明細書
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【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明は、三量体抗体を含む組成物、方法、およびキットに関する。抗体は、高いアビディティー、低いマイトジェン効果、および高いインビボでの安定性を有しうる。抗体は多価または多重特異的でありうる。
【0015】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティー(平衡会合定数KAによって示される)でリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0016】
本発明はまた、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、Y残基のうちの少なくとも6個はヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0017】
本発明はまた、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも6個、少なくとも7個、または少なくとも8個のG−P−Oリピートを含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0018】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体は、少なくとも108M−1のアビディティーまたは少なくとも109M−1のアビディティーでそのリガンドに結合する。
【0019】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドは、ヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、ヒトHER2/neu、またはヒトTNF−αである。
【0020】
三量体可溶性抗体は、マーカーポリペプチドのコード配列をさらに含みうる。好ましい実施形態では、マーカーポリペプチドはルシフェラーゼポリペプチドである。別の好ましい実施形態では、マーカーポリペプチドは緑色蛍光ポリペプチドである。
【0021】
一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、各ポリペプチドは13個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは20個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは30個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは50個未満のG−X−Yリピートを含む。
【0022】
一実施形態では、各ポリペプチドはコラーゲンNC1ドメインを含まない。一実施形態では、各ポリペプチドはジスルフィドノットを含まない。一実施形態では、各ポリペプチドはバクテリオファージT4のフィブリチンフォルドンドメインを含まない。
【0023】
一実施形態では、各ポリペプチドは42kD未満の分子量を有する。一実施形態では、三量体可溶性抗体は130kD未満の分子量を有する。
【0024】
一実施形態では、1/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、1/2を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、2/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、3/4を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、すべてのG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む。
【0025】
本発明は、三量体可溶性抗体をコードする核酸を包含する。本発明は、宿主細胞に導入される場合、三量体可溶性抗体を発現する発現ベクターをさらに包含する。本発明は、三量体可溶性抗体を発現する発現ベクターを含む宿主細胞も包含する。
【0026】
本発明は、10〜30個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)を含むコラーゲン足場ドメインをコードする核酸を、リガンドに対する抗体ドメインをコードする核酸にインフレームに連結するステップと、G−P−Pリピートのうちの少なくとも6個をY位置でヒドロキシプロリネート化する、細胞内のコードされたポリペプチドを発現するステップと、を含む、三量体可溶性抗体を生成する方法およびキットであって、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される方法およびキットを包含する。
【0027】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドの生物学的活性を調節する(すなわち阻害または増大する)方法およびキットであって、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成され、かつ三量体可溶性抗体のリガンドへの結合によりリガンドの生物学的活性が阻害される方法およびキットを包含する。
【0028】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドを検出するための方法およびキットであって、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成され、かつ三量体可溶性抗体のリガンドへの結合が検出される方法およびキットを包含する。
【0029】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体はルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的にはコラーゲン足場ドメインにインフレームで融合された抗体ドメインが足場ドメインの三量体化による三量体抗体の産生を可能にするという試験結果に基づいており、得られる三量体抗体の結合アビディティー(binding avidity)は二価IgGおよび一価scFvの形式の場合よりも高められる。本発明に従って作製された三量体抗体は、そのリガンドに対して109M−1よりも大きい機能親和性(アビディティー)を有しうる。
【0031】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインが融合ポリペプチドの三量体化を駆動するようにコラーゲン足場ドメインを融合ポリペプチド内で結合タンパク質にインフレームで融合させてもよく、ここではそのリガンドに対するその結合能が保持される。結合ドメインは、例えばサイトカインドメイン、サイトカイン受容体ドメイン、または抗体ドメインであってもよい。一実施形態では、サイトカインはTNF−αである。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインを抗体ドメインにインフレームで融合することで三量体抗体を産生してもよい。好ましい実施形態では、三量体抗体は可溶性抗体である。可溶性抗体とは、生理的条件下で可溶性の抗体である。好ましい実施形態では、可溶性三量体抗体は分泌抗体である。分泌抗体とは、細胞によって分泌される抗体である。抗体の分泌を、抗体ドメインを含むポリペプチド上にシグナル配列を有することにより標的化してもよい。
【0032】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体は、そのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜1010M−1のアビディティーを有する。
【0033】
一実施形態では、(Gly−Pro−Pro)10などの熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチドは、足場ドメインとして用いられることで、抗体ドメインの三量体化が十分なP4H活性を有する系内での融合コンストラクトの発現により駆動される。このアプローチにより、インビボでのタンパク質の価数、安定性、および機能に作用する安定な三重らせん構造の導入が促進される。
【0034】
本発明は、異種融合タンパク質のC末端もしくはN末端方向からの自己核形成(self−nucleation)および伝播を可能にするコラーゲン足場ドメインとして、コラーゲン配列、例えばミニコラーゲンタイプXIIまたはXXI、あるいはコラーゲン様配列、例えば(Gly−Pro−Pro)10または(GPP)5GKPGKP(GPP)6の使用を包含する。本発明では、任意の他の三量体化構造ドメインに対する需要が回避される。
【0035】
コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、プロリル4−ヒドロキシラーゼを有する系内での融合コンストラクトの発現により熱的に安定な三重らせん構造を形成しうる。さらに、本発明の自己三量体化コラーゲン足場は、融合パートナーの一方の末端ならびに両末端への付着を同時に可能にする。これは、自己三量体化コラーゲン足場を、2つの大きな結合パートナーと同時に相互作用可能な分子(各末端が最大3または6の結合価数を有する)を作成するのに使用することができるという重要な結果を有する。本発明は、三量体抗体が正確に折り畳み、かつ高い溶解度、アビディティー、および安定性を示しうることも示している。
【0036】
本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、それ自体で三重らせん構造の形成を可能にするコラーゲンまたはコラーゲン様ドメインであり、「三重らせん構造」は3つのサブユニットの共有結合または非共有結合された複合体である。本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、足場ドメインの自己三量体化を指示するコラーゲンまたはコラーゲン様ドメインを示す。
【0037】
本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、プロコラーゲンのC−プロペプチド、コレクチンまたはフィコリンファミリータンパク質のコイルドコイルネックドメイン、テトラネクチンのC型レクチン様ドメイン、β−ガラクトシダーゼ三量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー突然変異体の3つのコイルドコイルヘリックス構造((非特許文献39))、ClqおよびTNFスーパーファミリータンパク質のClqおよびTNFドメイン、ならびにバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドンドメインを示すものではない。
【0038】
「コラーゲン足場抗体」または「CSA」は、抗体ドメインに融合されるコラーゲン足場ドメインを含む抗体である。CSAおよびそのコード配列は、以下に示す配列番号の任意の組み合わせを含みうる。これらの各組み合わせは詳細に検討されている。例えば、CSAは配列番号1、3、5および9の1つもしくは複数を有しうる。
【0039】
したがって、本発明の一態様は、第1のコラーゲン足場ドメインと第1のコラーゲン足場ドメインの一端にインフレームで融合された第1の抗体ドメインとを有する第1の融合ポリペプチド鎖、第2のコラーゲン足場ドメインを有する第2の融合ポリペプチド鎖、ならびに第3のコラーゲン足場ドメインを有する第3の融合ポリペプチド鎖を含む単離された組換えタンパク質複合体を特徴とする。第1、第2、および第3のコラーゲン足場ドメインは、三重らせんコイルを形成するように整列される。第1のコラーゲン足場ドメインおよび第1の抗体ドメインは、インフレームにかつ同じペプチド鎖上に融合される。
【0040】
融合ポリペプチド鎖は、酵素ドメインまたは蛍光タンパク質の配列を含みうる。蛍光タンパク質の例として、GFPおよびdsRed、ならびにそれらの変異体が挙げられる。酵素ドメインの例として、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびβ−ラクタマーゼのドメインが挙げられる。
【0041】
融合ポリペプチド鎖は、本発明の融合タンパク質の検出および精製を目的とするアフィニティータグの配列を含むんでも含まなくてよい。アフィニティータグの例として、ポリヒスチジン−タグ、myc−タグ、Strep−タグ、FLAG、E−タグ、ヘマグルチン(hemagglutin)タグ、T7、S−タグ、HSV、VSV−G、抗−Xpress、およびVS−タグが挙げられる。
【0042】
「抗体ドメイン」は、免疫グロブリンの1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)を含む。したがって、抗体ドメインはVHドメインおよびFabなどの抗体の抗原結合部分を含みうる。一実施形態では、第1の抗体ドメインは、例えばCluster Designation 3(CD3)、表皮成長因子受容体(EGFR)、HER2/neuまたは腫瘍壊死因子−α(TNF−α)に特異的な抗原結合断片または一本鎖抗体の配列を有する。第1のポリペプチド鎖は、第1の足場ドメインの他端にインフレームで融合される第2の抗体ドメインをさらに有しうる。
【0043】
一実施形態では、第2の融合ポリペプチド鎖は第2の抗体ドメインを有する。好ましい実施形態では、第1および第2の抗体ドメインは互いに同一である。第1および第2の抗体結合ドメインは、同一の結合パートナーまたは2つの異なる結合パートナーに結合しうる。例えば、第1の抗体ドメインおよび第2の抗体ドメインは、CD3およびEGFRにそれぞれ特異的に結合する第1の一本鎖抗体および第2の一本鎖抗体の配列を有しうる。一実施形態では、第1および第2の融合ポリペプチドはいずれも第1および第2の抗体結合ドメインを有する。
【0044】
第2の融合ポリペプチド鎖は、第2の足場ドメインの一端にインフレームで融合された第3の抗体ドメイン、第2の足場ドメインの他端にインフレームで融合された第4の抗体ドメイン、または2つの末端にインフレームで融合された両ドメインを有しうる。同様に、第3の融合ポリペプチド鎖は、第3の足場ドメインの一端にインフレームで融合された第5の抗体ドメイン、第3の足場ドメインの他端にインフレームで融合された第6の抗体ドメイン、または双方を有しうる。6つのすべての抗体ドメインは互いに同一であるかまたは異なりうる。したがって、それらは1、2、3、4、5、または6つの結合パートナーに結合しうる。換言すれば、タンパク質複合体は一価、二価、三価、四価、五価、または六価でありうる。
【0045】
三重らせんコイルを形成するための第1、第2、および第3の足場ドメインにおいては、3つの足場ドメインの各々は、コラーゲンまたはコラーゲン様ドメインとして知られる1つもしくは複数の三重らせんリピートを有し、各リピートは以下の式(G−X−Y)n(式中、GはGly残基であり、XおよびYは任意のアミノ酸残基、および好ましくはアミノ酸プロリンまたはヒドロキシプロリンであり、かつnは5もしくはそれより大きい)の配列を有する。本明細書中で参照される「リピート」は、2つ以上の連続的なG−X−Y配列を示す。
【0046】
足場ドメインは完全な反復G−X−Yトリプレットを含む可能性があり、それは短い欠陥によって中断され、その場合、Glyの第1の位置またはY残基の第3の位置が欠けており、それは多数の天然コラーゲンおよびコラーゲン様ドメインを有するタンパク質にて見出される。例えば、本発明の足場ドメインのヒトタイプXXIミニコラーゲンは、コラーゲンドメイン内にGFおよびKEという2つの欠陥を有する。
【0047】
特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸である)を含むコラーゲン足場ドメインである。特定の実施形態では、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oである。特定の実施形態では、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oである(式中、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)。コラーゲン足場ドメインは自己三量体化を指示する。
【0048】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは10個のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、35、40、45、または50個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは150、125、100、90、80、70、60、50、または40個未満のアミノ酸長である。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは本質的に10〜30個のG−X−Yリピートからなり、それらは自己三量体化を引き起こす。
【0049】
一実施形態では、1/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、1/2を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、2/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、3/4を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、すべてのG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、足場ドメインは配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む。一実施形態では、足場ドメインは配列(G−P−P/O)10(式中、P/OはY位置がPまたはOであることを示す)を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも10個のG−X−Yリピートを含み、ここでY残基のうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はヒドロキシプロリンである。コラーゲン足場ドメインは自己三量体化を指示する。
【0051】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個のG−P−Oリピートおよび抗体ドメインを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは6または7個のG−P−Oリピートを含む。G−P−Oリピートは連続的であってもまたは間隔を空けてもよい。例えば、G−P−Pリピートは、1、2、3、4、または5個のGXYリピートで分離され、3、4、または5個のG−P−Oリピートを含む2つのインフレームのアミノ酸配列として間隔を空けてもよい。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは(G−P−O)3GXY(GPO)4を含む。
【0052】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、非線維性FACIT(三重らせんが中断された状態の線維結合型コラーゲン)コラーゲンのコラーゲン(COL1)ドメインである。好ましくは、非線維性FACITのCOL1ドメインを含む三量体抗体はFACITの非コラーゲン(NC1)ドメインを有さない。好ましい実施形態では、COL1ドメインはタイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来する。好ましい実施形態では、三量体抗体は配列番号7を含む。
【0053】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来する完全なCOL1ドメインと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインのG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。
【0054】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインの10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または30個のG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。特に好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインの10個のG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。
【0055】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインのG−X−Y配列は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個のヒドロキシプロリンをY位置に含む。
【0056】
同一性の割合(%)は、例えばDevereuxらにより記載され(非特許文献40)、かつユニバーシティ・オブ・ウィスコンシン・ジェネティクス・コンピューター・グループ(University of Wisconsin Genetics Computer Group)(UWGCG)より入手できるGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することにより判定可能である。GAPプログラムでは、NeedlemanおよびWunschのアラインメント方法(非特許文献41)であってSmithおよびWatermanによって修正されたもの(非特許文献42)が利用される。GAPプログラムにおける好ましいデフォルトパラメータは、(1)非特許文献43に記載される、ヌクレオチドについての単一(unary)比較マトリックス(同一に対して1および非同一に対して0の値を有する)およびグリブスコフ(Gribskov)およびブルゲス(Burgess)の加重比較マトリックス、(非特許文献44);(2)各ギャップにおける3.0のペナルティおよび各ギャップ内の各シンボルにおける追加の0.10のペナルティ;ならびに(3)エンドギャップにおいてペナルティなしを含む。
【0057】
一実施形態では、上記の第1、第2、および第3の融合ポリペプチドは実質的に同一であり、互いに少なくとも75%(例えば、75%〜100%の任意の数を含む)の配列同一性を有する。3つの同一の融合ポリペプチドによって形成された複合体はホモ三量体である。3つの融合ポリペプチドは機能的等価物でありうる。「機能的等価物」は、共通のポリペプチドのポリペプチド誘導体、例えば1つもしくは複数の点突然変異、挿入、欠失、切断を有するタンパク質、融合タンパク質、またはそれらの組み合わせを示し、実質的に三重らせんコイルに対する形成能や、リガンドへの結合など、異種ドメインの活性を保持するものである。
【0058】
異種のポリペプチド、核酸、または遺伝子は、自然に会合することのない別のポリペプチド、核酸、または遺伝子に関連したポリペプチド、核酸、または遺伝子である。2つの融合ドメインまたは配列は、もしそれらが天然タンパク質または核酸内で互いに隣接しない場合、互いに異種である。
【0059】
本発明は、(i)三重らせんコイルを形成するためのコラーゲン足場ドメインと、(ii)足場ドメインの一端にインフレームで融合された第1の異種ドメインまたは足場ドメインの他端にインフレームで融合された第2の異種ドメインと、を有する単離された組換え融合ポリペプチド(例えば、上記の3つの融合ポリペプチドの各々)も含む。異種ドメインは、上記の抗体ドメインの1つを含みうるとともに、ファージディスプレイスクリーニングなどの様々な当該技術分野で認識された方法によって取得されうる。
【0060】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質複合体は、天然に関連した分子を実質的に含有さないポリペプチドまたはタンパク質複合体を示す、すなわちそれは乾燥重量に対して少なくとも75%(すなわち75%〜100%の任意の数を含む)の純度である。純度は、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析といった任意の適切な標準的方法により測定可能である。本発明の単離されたポリペプチドまたはタンパク質複合体は、天然ソースから精製され、組換えDNA技術によって生成可能である。
【0061】
好ましくは、三量体化して三量体抗体を形成する3つのポリペプチドは隣接していない。別の実施形態では、三量体化して三量体抗体を形成する3つのポリペプチドは隣接している、すなわち単一の翻訳産物として翻訳される。この実施形態では、3つのポリペプチドは2つ以上の柔軟なヒンジ領域によって連結されうる。
【0062】
本発明は、直前に記載の融合ポリペプチドをコードする配列または同配列の相補体を有する単離核酸も包含する。核酸は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、あるいはDNAまたはRNA類似体を示す。DNAまたはRNA類似体は、ヌクレオチド類似体から合成可能である。核酸分子は一本鎖または二本鎖でありうるが、好ましくは二本鎖DNAである。「単離核酸」は、構造が任意の天然核酸の構造または天然ゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない核酸である。したがって同用語は、例えば、(a)天然ゲノムDNA分子のある部分の配列を有するが、それが天然に生じる生物のゲノム内の分子のその部分に隣接する両コード配列によって隣接されないDNA、(b)得られる分子が任意の天然ベクターまたはゲノムDNAと同一でないように原核生物または真核生物のベクター内またはゲノムDNA内に取り込まれる核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、または制限断片などの分離分子、および(d)雑種遺伝子すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列を網羅している。上記の核酸を用いることで本発明のポリペプチドを発現可能である。この目的のため、核酸を適切な調節配列に作動可能に連結することで、発現ベクターの生成が可能である。
【0063】
ベクターは、それが連結されている別の核酸を輸送可能である核酸分子を示す。ベクターは、自動複製または宿主DNAへの統合における能力を有しうる。ベクターの例として、プラスミド、コスミド、またはウイルスベクターが挙げられる。本発明のベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適する形態をなす核酸を含む。好ましくは、ベクターは、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結される1つもしくは複数の調節配列を含む。「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節因子(例えばポリアデニル化シグナル)を含む。調節配列は、ヌクレオチド配列、ならびに組織特異的な調節および/または誘導配列の構成的発現を指示するものである。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要素に依存しうる。発現ベクターを宿主細胞に導入することで、本発明のポリペプチドの生成が可能である。本発明の範囲内には、上記の核酸を有する宿主細胞も含まれる。例として、大腸菌細胞、昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞またはバキュロウイルスに感染された昆虫細胞を使用)、酵母細胞、または哺乳類細胞(例えば、マウス骨髄腫NS0細胞)が挙げられる。例えば、非特許文献45を参照のこと。
【0064】
本発明の融合ポリペプチドの生成を目的に、培地内で宿主細胞を本発明の核酸によってコードされたポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養し、かつ培養された細胞または細胞の培地からポリペプチドを精製することができる。あるいは、本発明の核酸に対し、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写および翻訳を行うことが可能である。
【0065】
本発明のタンパク質複合体の生成を目的に、培地内で上記の第1、第2、および第3の融合ポリペプチドを各々コードする第1、第2、および第3の核酸を有する宿主細胞を3種の核酸によってコードされたポリペプチドの発現および発現されたポリペプチドの間の三重らせんコイルの形成を可能にする条件下で培養し、かつ培養された細胞または細胞の培地からタンパク質複合体を精製することができる。好ましくは、宿主細胞はプロリン残基をヒドロキシル化する酵素活性を有する真核細胞である。
【0066】
本発明の1つもしくは複数の実施形態の詳細が添付の図面および下記に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点が、明細書および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0067】
本発明の可溶性三量体抗体は、従来の抗体に勝る利点を有する。一方では、6つのうちの2つ以上の抗体ドメインが互いに同一である場合、タンパク質複合体は従来の抗体と比較して1つの結合パートナー(例えば抗原)に特異的である2〜6つの抗体ドメインを有する可能性があり、それが有するかかるドメインは2つだけである。換言すれば、抗原に対して二価にすぎない従来の抗体と異なり、タンパク質複合体は二価、三価、四価、五価、または六価でありうる。結果として、それを従来の抗体よりも高い親和性を有するように作製可能である。より高い親和性故に、望ましい目標、例えば治療効果を達成することによって治療コストを低減しかつ副作用(例えば望ましくない免疫応答)を最小にするのに、従来の抗体の場合と比較し、必要とされるタンパク質複合体はより少なくかつインキュベーション時間はより短い。
【0068】
他方では、6つのうちの2つ以上の抗体ドメインが互いに異なる場合、本発明のタンパク質複合体は2〜6つの異なる結合パートナーに特異的である2〜6つの抗体ドメインを有しうる。それは異なる特異性の多重結合パートナー部位を1つのユニットに統合し、多重結合パートナーを結集させる能力を有し、それ故にナノメーターレベルでの治療、組織再構築、および活性タンパク質機構(例えば多重サブユニット酵素)の構築において望ましい用途を有する。
【0069】
ヒトにおけるインビボでの使用においては、本発明の三量体抗体は、好ましくはヒトに由来する。例えば、それはヒトに由来するコラーゲン足場ドメインにインフレームで融合されるヒト化一本鎖抗体配列を含みうる。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質が血中でかなり安定であることから、足場ドメインの融合タンパク質も同様に血中での構造的完全性を保持する必要がある。
【0070】
配列Gly−Pro−Hypは概ね三重らせん構造の形成および安定化に寄与し、かつGly−Pro−Hypトリペプチドリピートは高度に安定な三重らせんに自己組織化する。それ故、ミニコラーゲンXXIのコラーゲンドメインは、本明細書中に記載のCSAにおける足場鋳型として熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10に置換され、それらが十分なP4H活性を有する哺乳類系内で発現されることで安定な三重らせん構造の導入が促進された。実際、erb_scFv−ColとOKT3_scFv−Colの双方は三量体構造に構築され、かつerb_scFv−Colは、おそらくは2つの三量体内で2つのC末端のシステイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介して六量体にさらにオリゴマー化されうる。還元された三量体構造がerb_scFv−Colの六量体形態で一般に見出される濃度よりも高い濃度でより高次の構造に組織化しないことから、erb_scFv−Colの三量体から六量体へのオリゴマー化は細胞内プロセスである。
【0071】
マウス骨髄腫NS0細胞は、組換えコラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質の生成にとって良好な発現系である。(Gly−Pro−Pro)10のコラーゲンGXYトリプレット配列のY位置におけるプロリン残基の総数の約61%が組換えerb_scFv−Col内でヒドロキシル化される。したがって、少なくとも6個のGly−Pro−Proリピートがこの系内でヒドロキシル化される。ウエスタンブロット分析による試験によるとCSAの単量体形態が培地内にほとんど存在しなかったことから、プロリルヒドロキシル化された(Gly−Pro−Pro)10モチーフがCSA分子の三量体構築に対して寄与することは顕著であった。最大45℃の温度でCSAの精製試料中に存在する2Mの尿素は、図6Bおよび図14Bにて示される融解した単量体のレベルから判定すると、2% SDSローディング緩衝液の添加後、CSAの三量体形態を解離させるほど十分に強力ではなかった。様々なerb抗体形式がヒト血清中、37℃で最大7日間インキュベートされた血清安定性アッセイでは、erb_scFv−Colに対してELISAにて用いられた抗体濃度は、二価erb_scFv−Fvおよび一価erb_scFv対応物の各々についてのサブミクロモル範囲内およびミクロモル範囲内ではなくナノモル範囲内であった。したがって、CSAは生理的条件下でその多価の標的との結合形式を保持しうる。
【0072】
CSAの熱的に安定な三量体構造は、将来のインビボ用途に対する多目的の多量体化する系における要件を満たす。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質がヒト血清中に存在し、感染性生物からの保護における先天性免疫系としての機能を果たす。これらは、補体タンパク質Clq、コレクチンファミリータンパク質−マンノース結合レクチン(MBL)、フィコリンならびにサーファクタントプロテインAおよびD(SP−AおよびSP−D)を含む。これらの「防御コラーゲン」分子内で共通の構造的特徴は、それらすべてがC末端に標的との結合ドメインを有する多重三量体タンパク質ユニット内に存在するという点である。これら多重三量体構造を形成するための駆動力は、線維性コラーゲンの場合に類似している。3つのポリペプチド鎖はまず、標的との結合ドメインに隣接するN末端であるそれらのコイルドコイルネックドメインを用いて三量体化され、次いでコラーゲン様ドメインの三重らせん状の折り畳みがC末端からN末端にかけてジッパー様に進行し、その後に最終的にそれらのN末端のシステイン残基を用いて三量体分子の重層または鎖間ジスルフィド架橋が生じた(非特許文献20;非特許文献21;非特許文献23;非特許文献24)。その結果、多量体化はこれらの防御コラーゲン分子の結合ドメインの機能的親和性を有意に増大させる。
【0073】
標的との結合アビディティーの影響は、様々なerbおよびOKT3抗体種が表面プラズモン共鳴(SPR)および競合フローサイトメトリー分析を用いて比較される場合に明らかであった。結合データは、CSA分子における価数の増加がインビボでの標的化の程度および特異性を改善する結果、標的保持が促進されうることを示した。T細胞活性化を免疫抑制するための三価OKT3 CSAの有効用量が混合されたリンパ球反応において試験された親OKT3 IgGの有効用量よりも少ない。
【0074】
OKT3_scFv−Colは、ヒトPBMC内でT細胞の増殖またはIL−2の産生を誘発することはなく、一過性のT細胞活性化の結果としてのサイトカインの放出によって誘発されるOKT3の初回用量症候群の効果を顕著に低下させる。この新たな抗−CD3形式は、治療における用量、毒性、およびコストが低下した強力な免疫抑制剤を提供しうる。CDR残基をマウスからヒトへ形質転換することを目的とした構造に基づく設計の有無にかかわらず、CDR−移植によるマウスmAbのヒト化によって結合親和性の低下または喪失がもたらされることが多い(非特許文献46;非特許文献47)。好ましい実施形態では、三量体可溶性抗体はFcドメインを有さない。
【0075】
高親和性結合剤におけるファージディスプレイscFvライブラリースクリーニングを用いた鎖シャッフリングによる親和性成熟は扱いが困難なプロセスであり、現状では結合親和性を改善する結果については不確実である。したがって、多数の治療抗体がヒト化後における標的抗原に対する親和性が低いことによって阻害される場合がある。いくつかの場合では、抗体の特性は一層改良されるにちがいない。抗原−結合パートナーの重合により、標的細胞に極めて接近した特異的な同一のリガンド群への結合に対するそれらの有用性が格段に高まる。機能的親和性を改善するための多価分子を取得することを目的として、異なるアプローチが提案されている。その一部は、免疫グロブリンを有する足場(非特許文献48)または完全に異なるタンパク質のトポロジー(非特許文献49)に基づいて別の結合タンパク質を生成するステップを含む。例えば、プロテインAのFc−結合ドメインと融合されたFv断片(非特許文献50)、四量体複合体を形成するためのコア−ストレプトアビジン(非特許文献51)、または転写因子p53のヒト四量体化ドメイン(非特許文献3)の使用についての報告がなされている。「アンチカリン(anticalins)」(非特許文献52)、「アンキリン(Ankyrin)リピート」(非特許文献53)、「アフィボディ(Affibody)分子」(非特許文献54)、およびテトラネクチンのC−タイプレクチン様ドメイン(Christian et al. 国際公報、特許文献1;非特許文献55)などの非IgGタンパク質足場断片は、最近では標的の結合親和性、熱安定性、および感受性を高めるのに利用されている。しかし、これらの分子の一部は、ヘテロアンティジェネティック(heteroantigenetic)断片であるかまたは血漿の天然成分ではなく、治療適用の可能性を著しく限定しうると思われる免疫応答のリスクに関連している。
【0076】
熱的に安定な多価タンパク質結合剤の形成を目的に三重らせんを形成するコラーゲン様ペプチドの融合足場を用いることで、本明細書においてCSAが治療抗体の機能的親和性および分裂促進性に対する改善を可能にする新たなプラットフォームであることが示された。より重要なことには、CSA内でのscFvとコラーゲン様足場ドメインの融合により、標的に結合する活性または三重らせん構造の三量体構築を危うくすることなく各ドメインの正確な折り畳みがもたらされることが判明している。三重らせんを形成するコラーゲン様ドメインは、融合タンパク質のアプローチで活性タンパク質を三量体化する(さらに防御コラーゲンファミリーの場合と類似する、コラーゲン線維性の重層または三量体分子の鎖間ジスルフィド架橋を介してオリゴマー化する)ことにより既存または新規のタンパク質薬剤に対する足場として使用可能であり、それはタンパク質ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、成長因子、レクチン、酵素および可溶性の受容体断片、またはセレクチンおよびインテグリンなどの接着分子を含む。
【0077】
本発明のタンパク質複合体またはポリペプチドは、組換え技術によって取得可能である。核酸によりコードされるポリペプチドの発現およびポリペプチド間の三重らせんコイルの形成を可能にする条件下で、適切な宿主細胞に複合体のポリペプチドをコードする核酸を導入しかつポリペプチドを発現することができる。三重らせんコイルの足場の形成を促進するため、宿主細胞内でコラーゲンの生合成における鍵酵素であるプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)を共発現することができる。
【0078】
異種タンパク質ドメインは、抗体またはその断片(例えばその抗原結合断片)を含むがこれらに限定されない「結合ドメイン」を有しうる。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子またはその免疫学的活性部分すなわち抗原結合部分を示す。それは少なくとも1つおよび好ましくは2つの重(H)鎖可変領域(VH)、ならびに少なくとも1つおよび好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(VL)を含むタンパク質を示す。したがって、「抗体ドメイン」は、抗体または抗体の抗原結合部分を示し、 VH、VL、またはFabドメイン、一本鎖抗体のFv断片(scFv)、およびVHHドメイン(特許文献2を参照)を含む。
【0079】
VHおよびVL領域は、超可変領域にさらに細分割され、「相補性決定領域」(「CDR」)と称され、「フレームワーク領域」(FR)と称されるより保持された領域とともに散在されうる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(非特許文献56、および非特許文献57を参照、これらは参照により本明細書中に援用)。VHおよびVLの各々は、通常は3つのCDRおよび4つのFRからなり、 アミノ末端からカルボキシ末端にかけてFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。抗体は、重鎖および軽鎖の定常領域をさらに含み、それにより免疫グロブリン重鎖および軽鎖をそれぞれ形成しうる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3よりなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLよりなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを有する。抗体の定常領域は通常、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0080】
本明細書で用いられる「免疫グロブリン」という用語は、実質的に免疫グロブリン遺伝子によってコードされた1つもしくは複数のポリペプチドよりなるタンパク質を示す。認識されたヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパー、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDまたは214のアミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)での可変領域遺伝子およびCOOH末端でのカッパーまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDまたは446のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116のアミノ酸)および上記の他の定常領域遺伝子の1つ、例えば(約330アミノ酸をコードする)ガンマによって同様にコードされる。
【0081】
本明細書で用いられる抗体(または「抗体部分」または「断片」)の「抗原結合断片」という用語は完全長抗体の1つもしくは複数の断片を示し、同抗体はそのリガンドまたは抗原、例えばEGFRまたはCD3ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する能力を保持する。
【0082】
抗体の抗原結合断片の例として、(i)VL、 VH、CL、およびCH1ドメインよりなる一価断片のFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片のF(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインよりなるFd断片、(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインよりなるFv断片、(v)VHドメインよりなるdAb断片(非特許文献58)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)VLまたはVHドメインが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHが別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、VLおよびVH領域が対合して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られ、例えば、(非特許文献59;および非特許文献60を参照)を形成する場合の単一のタンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーによる組換え方法を用いて連結してもよい。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内にも包含される。これらの抗体断片を当業者に既知の従来の技術を用いて取得してもよく、同断片における有用性は無傷抗体の場合と同様にスクリーニングされる。
【0083】
抗体はモノクローナル抗体でありうる。一実施形態では、抗体を、例えばファージディスプレイまたはコンビナトリアルな方法によって組換え産生してもよい。抗体を産生するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアルな方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Ladner et al. 特許文献3;Kang et al. 国際公報、特許文献4;Dower et al. 国際公報25号、特許文献5;Winter et al. 国際公報、特許文献6;Markland et al. 国際公報、特許文献7;Breitling et al. 国際公報、特許文献8;McCafferty et al. 国際公報、特許文献9;Garrard et al. 国際公報、特許文献10;Ladner et al. 国際公報、特許文献11;非特許文献61;非特許文献62;非特許文献63;非特許文献64;非特許文献65;非特許文献66;非特許文献67;非特許文献68;非特許文献69;ならびに非特許文献70を参照、これらすべての内容は参照により本明細書中に援用される)。
【0084】
一実施形態では、抗体は完全ヒト抗体(例えば、遺伝子操作されてヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が産生されているマウス内で作製される抗体)、あるいは非ヒト抗体、例えば齧歯類(マウスまたはラット)、ヤギ、霊長動物(例えばサル)、またはラクダの抗体である。好ましくは、非ヒト抗体は齧歯類抗体(マウスまたはラット抗体)である。齧歯類抗体を産生する方法は当該技術分野で既知である。
【0085】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて産生可能である。目的の抗原で免疫されたこれらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞を用いることで、ヒトタンパク質に由来するエピトープに対して特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマが生成される(例えば、Wood et al. 国際公報、特許文献12、Kucherlapati et al. PCT15公報、特許文献13);Lonberg et al. 国際公報、特許文献14;Kay et al. 国際公報、特許文献15;非特許文献71;非特許文献72;非特許文献73;非特許文献74;非特許文献75;非特許文献76を参照)。
【0086】
抗体は、可変領域またはその一部、例えばCDR領域が非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて生成される場合の抗体であってもよい。キメラ抗体、CDR移植抗体、およびヒト化抗体を用いてもよい。非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて産生される抗体、次いでヒト内での抗原性を低下させるための、例えば可変フレームワークまたは定常領域内での修飾抗体については本発明に含まれる。
【0087】
キメラ抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技術により産生可能である。例えば、マウス(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化することでマウスFcをコードする領域が除去され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子に相当する部分は置換される(Robinson et al, 国際特許公報、特許文献16;Akira, et al,特許文献17;Taniguchi, M.,特許文献18;Morrison et al,特許文献19;Neuberger et al 国際出願、特許文献20;Cabilly et al.特許文献21;Cabilly et al,特許文献22;非特許文献77;非特許文献78;非特許文献79;非特許文献80;非特許文献81;非特許文献82;および非特許文献83)。
【0088】
ヒト化またはCDR移植抗体は、ドナーCDRと置換された(免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の)少なくとも1つもしくは2つであるが一般的には全部で3つのレシピエントCDRを有することになる。抗体は非ヒトCDRの少なくとも一部と置換可能であるか、またはCDRのほんの一部が非ヒトCDRと置換可能である。CDRのヒト化抗体またはその断片の結合にとって必要な多数のCDRを置換することがあくまで必要とされる。好ましくは、ドナーは齧歯類抗体、例えばラットまたはマウス抗体となり、かつレシピエントはヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークとなる。典型的には、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と称され、かつフレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。一実施形態では、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば齧歯類)である。アクセプターフレームワークは天然(例えばヒト)フレームワークまたはコンセンサスフレームワークであるか、あるいはそれに対して約85%もしくはそれより高い、好ましくは90%、95%、99%もしくはそれらより高い割合で同一の配列である。本明細書で用いられる「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリー内で最も頻繁に現れるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を示す(例えば、非特許文献84を参照)。タンパク質のファミリー内でのコンセンサス配列内の各位置は、ファミリー内のその位置で最も頻繁に現れるアミノ酸によって占められる。もし2つのアミノ酸が表れる頻度が等しい場合、コンセンサス配列内にいずれかを含めてもよい。「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列内のフレームワーク領域を示す。
【0089】
抗体を当該技術分野で既知の方法によってヒト化してもよい。ヒト化抗体を、抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域からの対応する配列と置き換えることによって産生してもよい。ヒト化抗体を産生するための一般的方法は、非特許文献85;非特許文献86;ならびにQueen et al.特許文献23、特許文献24および特許文献25(これらすべての内容は参照により本明細書中に援用される)によって提供されている。それらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも一方に由来する免疫グロブリンFv可変領域のすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離するステップと、操作するステップと、発現するステップとを含む。かかる核酸のソースは当業者にとって周知であり、例えば、目的のポリペプチドまたはその断片に対する抗体を産生するハイブリドーマから取得可能である。次いで、ヒト化抗体をコードする組換えDNAまたはその断片を適切な発現ベクターにクローニングしてもよい。
【0090】
特定のアミノ酸が置換、削除、または添加されているヒト化抗体についても足場に融合可能である。好ましいヒト化抗体は、例えば抗原に対する結合を改善するための、フレームワーク領域内にアミノ酸置換基を有する。例えば、ヒト化抗体は、ドナーのフレームワーク残基またはレシピエントのフレームワーク残基以外の別のアミノ酸と同一のフレームワーク残基を有することになる。かかる抗体を産生するため、ヒト化免疫グロブリン鎖の選択された小数のアクセプターのフレームワーク残基を対応するドナーのアミノ酸と置き換え可能である。置換基の好ましい位置は、CDRに隣接するかまたはCDRと相互作用可能なアミノ酸残基を含む。アミノ酸をドナーから選択するための基準は、特許文献23(その内容は参照により本明細書中に援用される)中に記載されている。抗体をヒト化するための他の技術は、Padlan et al.特許文献26中に記載されている。
【0091】
一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはコラーゲンのNC1ドメインを有していない。一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはジスルフィドノットを有していない。一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドンドメインを有していない。
【0092】
好ましくは、三量体抗体の足場は最小サイズである。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、各ポリペプチドは13個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、三量体抗体は11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、35、40、45、または50個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドは35、37、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50kD未満の分子量を有する。一実施形態では、三量体可溶性抗体は105、110、115、120、125、130、135、140、145、または150kD未満の分子量を有する。
【0093】
好ましい実施形態では、三量体可溶性抗体は3つのポリペプチドを含み、ここで各ポリペプチドは少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Y残基のうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、3つのポリペプチドのコラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0094】
本発明は、本発明のタンパク質複合体を形成する融合ポリペプチドをコードする核酸も含む。核酸をファージディスプレイライブラリからスクリーニングするか、または上記の適切な抗体または抗体誘導体を発現する細胞系から(例えばRT−PCRにより)単離してもよい。核酸を発現ベクターに機能的にライゲートしてもよい。核酸またはベクターで形質転換された細胞を用い、本発明の融合ポリペプチドまたはタンパク質複合体を生成してもよい。抗体の産生に有用な細胞は、昆虫細胞および哺乳類細胞を含む。これらの細胞は、骨髄腫NS0細胞、CHO細胞、およびリンパ細胞を含むがこれらに限定されない。
【0095】
本発明は、例えば従来の分子技術を用いたコラーゲン足場ドメインを含む核酸と抗体ドメインを含む核酸との連結による三量体可溶性抗体を生成するための方法を包含する。コラーゲン足場ドメインを、抗体ドメインに直接連結するかまたはヒンジ領域をコードするヌクレオチド配列などの追加の配列によって分離してもよい。核酸を、NS0細胞など、ヒドロキシプロリネート化を可能にする細胞系内で発現してもよい。
【0096】
一実施形態では、本発明は、コラーゲン様ドメインをコードする核酸と抗体ドメインをコードする核酸とをインフレームに連結することによって三量体可溶性抗体を生成するための方法を包含する。好ましい実施形態では、コラーゲン様ドメインは10個を超えるG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは10〜30個のG−X−Yリピートを含む(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは、リガンドに対する抗体ドメインをコードし、かつG−P−Pリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個をY位置でヒドロキシプロリネート化する、細胞内のコードされたポリペプチドを発現する核酸にインフレームに連結され、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することでリガンドに少なくとも107M−1のアビディティーで特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0097】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜l010M−1のアビディティーを有する。
【0098】
一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒト表皮成長因子受容体である。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトHER2/neuである。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトCD3である。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトHER2/neuである。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトTNF−αである。
【0099】
足場ドメインタンパク質および足場ドメイン融合タンパク質は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を有するベクター、好ましくは発現ベクターから発現可能である。本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、その連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子を示し、プラスミド、コスミド、またはウイルスベクターを含みうる。ベクターは、自動複製可能でありうるかまたは宿主DNA内に統合されうる。ウイルスベクターは、例えば複製不能レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを含む。原核生物内でのタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質の発現を指示する構成または誘導プロモーターを含有するベクターを有する大腸菌内で行われることが最も多い。
【0100】
融合ベクターでは、多数のアミノ酸がその内部にコードされたタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に添加されうる。かかる融合ベクターは、典型的には、1)組換えタンパク質の発現を高め、2)組換えタンパク質の溶解度を高め、かつ3)親和性精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製にて寄与するという3つの目的に役立つ。タンパク質分解の切断部位が融合部分と組換えタンパク質の接合部に導入されることで、融合タンパク質の精製後、組換えタンパク質の融合部分からの分離が可能になることが多い。かかる酵素およびそれらの同族認識配列は、因子Xa、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。
【0101】
典型的な融合発現ベクターは、pGEX(ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech Inc.);非特許文献87)、pMAL(ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)、ベバリー(Beverly)、マサチューセッツ州)およびpRIT5(ファルマシア(Pharmacia)、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)を含み、これらはそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる。
【0102】
大腸菌内での組換えタンパク質の発現を最大にすることは、組換えタンパク質をタンパク質分解切断する能力が低下した宿主細菌内でタンパク質を発現することである(非特許文献88)。別の戦略は、各アミノ酸に対する個々のコドンが大腸菌内で優先的に利用されるものであるように核酸の核酸配列を改変して発現ベクターに挿入することである(非特許文献89)。本発明の核酸配列のかかる改変を標準のDNA合成技術によって行ってもよい。
【0103】
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞であってもよい。本発明のタンパク質は、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞、酵母、または哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など(アフリカ緑ザルの腎臓細胞CV−1由来のSV40細胞;非特許文献90)において発現可能である。他の適切な宿主細胞は当業者にとって既知である。
【0104】
ベクターDNAは、従来の形質転換または形質移入技術を介して宿主細胞に導入可能である。本明細書で用いられる「形質転換」および「形質移入」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介形質移入、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための種々の当該技術分野で認識された技術を示すように意図されている。
【0105】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドの生物学的活性を阻害するための方法を包含し、三量体可溶性抗体のリガンドへの結合はリガンドの生物学的活性を阻害する。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)のコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0106】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜l010M−1のアビディティーを有する。
【0107】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドは、ヒト表皮成長因子受容体、ヒトHER2/neu、ヒトCD3、ヒトHER2/neu、またはヒトTNF−αである。
【0108】
本発明のタンパク質複合体は、細胞毒素などの治療部分、治療物質、または放射性イオンに抱合されうる。細胞毒素または細胞毒性物質は、細胞に対して有害な任意の作用物質を含む。例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド(maytansinoids)、例えばメイタンシノール(maytansinol)(特許文献27を参照)、CC−1065(特許文献28、特許文献29、および特許文献30を参照)およびその類似体またはホモログが挙げられる。治療物質は、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、CC−1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(旧ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン、(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソールおよびメイタンシノイド)を含むがこれらに限定されない。
【0109】
本発明の実施形態にて検討された放射性イオンは、111インジウム、113Indium、99レニウム、105レニウム、101レニウム、99Mテクネチウム、121Mテルリウム、122Mテルリウム、125Mテルリウム、165ツリウム、167ツリウム、168ツリウム、123ヨード、125ヨード、126ヨード、131ヨード、133ヨード、81クリプトン、33キセノン、90イットリウム、213ビスマス、77臭素、18フッ素、95ルテニウム、97ルテニウム、103ルテニウム、105ルテニウム、107M水銀、203水銀、67ガリウム、68ガリウム、35硫黄、および14炭素を含むがこれらに限定されない。
【0110】
所定の生物学的応答を改良するため、抱合体の宿主への投与を通じて抱合体を用いてもよい。薬剤部分は、古典的な化学治療物質に限定されるものとして解釈されるべきではない。例えば、薬剤部分は所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。かかるタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエクソトキシン、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子などのタンパク質;あるいは、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子などの生物学的応答修飾因子を含みうる。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、足場ドメインの融合タンパク質は高分子に抱合されうる。かかる高分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリオキシエチル化ポリオールを含むがこれらに限定されない。
【0112】
上記のタンパク質複合体および抱合体は、異種結合ドメインの特異性に基づき、癌、炎症性疾患、代謝疾患、線維性疾患、および心血管疾患を含む様々な障害を治療するために使用可能である。したがって、本発明は、例えば治療を必要とする被験者に有効量の本発明のタンパク質複合体を投与することで疾患を治療するといったかかる疾患を治療する方法を特徴とする。治療対象の被験者は、疾患に特徴的な症状を有するか、または同症状にかかるおそれがある者として同定可能である。この方法を単独または他の薬剤または治療と併せて実施してもよい。
【0113】
本発明のタンパク質複合体の多重特異的な特徴故に、通常互いに関連しない架橋分子または細胞に対してそれを使用することができる。この特徴は、細胞に基づく治療にとって特に有用である。一例では、タンパク質複合体内の1つの異種ドメインが細胞毒性細胞(例えば細胞毒性T細胞)を、細胞毒性細胞上のエフェクター抗原に特異的に結合することによって活性化可能である一方、別の異種ドメインが破壊対象の病原体細胞上または悪性細胞上の標的抗原に特異的に結合する。このようにして、タンパク質複合体は病原体または悪性細胞によって誘発される障害を治療可能である。
【0114】
「治療」という用語は、疾患、疾患の症状、疾患に伴う病状、または疾患への素因に対する治癒、緩和、軽減、修復、予防、または改善を目的とした、被験者への組成物の投与として定義される。「有効量」は、治療を受ける被験者において例えば上記のような医学的に望ましい結果を提供可能な組成物の量である。
【0115】
細胞毒性T細胞の活性化が、本発明のタンパク質複合体による細胞毒性T細胞の表面上のエフェクター抗原としてのCD3抗原の結合を介して生じうる。他のリンパ球様細胞に関連したエフェクター抗原は、ヒトCD16抗原、NKG2D抗原、NKp46抗原、CD2抗原、CD28抗原、CD25抗原、CD64抗原、およびCD89抗原を含む。これらのエフェクター抗原への結合の結果、単球、好中球、および樹状細胞などのエフェクター細胞の活性化がもたらされる。次いで、これらの活性化細胞は標的細胞上に細胞毒性効果またはアポトーシス効果を発揮する。
【0116】
標的抗原は、疾患状態に関連した標的細胞上に固有に発現されるが、健常状態では発現されないか、低レベルで発現されるか、または取得不能な抗原である。悪性細胞に関連したかかる標的抗原の例として、EpCAM、CCR5、CD19、HER2/neu、HER3、HER4、EGFR、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5.sub.AC、MUC5.sub.B、MUC7、β−hCG、ルイス−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3,9−O−アセチル−GD3、GM2、グロボ(Globo)H、フコシルGM1、ポリSA、GD2、カルボアンヒドラーゼ(Carboanhydrase)IX(MN/CA IX)、CD44v6、ソニックヘッジホッグ(Shh)、Wue−1、形質細胞抗原、(膜結合性)IgE、メラノーマコンドロイチンサルフェートプロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン(mesothelin)、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6、デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカーおよびミュラー管抑制物質(MIS)受容体タイプII、sTn(シリル化Tn抗原;TAG−72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原)、エンドシアリン(endosialin)、EGFRvIII、LG、SASならびにCD63が挙げられる。
【0117】
1つのインビボアプローチでは、治療組成物(例えば本発明のタンパク質複合体を含有する組成物)が被験者に投与される。一般に、複合体は医薬的に許容できる担体(例えば生理食塩水)中に懸濁され、かつ経口的にまたは静脈内注入によって投与されるか、あるいは皮下、筋肉内、髄腔内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻内、胃内、気管内、または肺内に注射または移植される。
【0118】
必要用量は、投与経路の選択;剤形の性質;被験者の疾患の性質;被験者の身長、体重、表面積、年齢、および性別;投与されている他の薬剤;ならびに主治医の判断に依存する。適切な用量は0.01〜100.0mg/kgの範囲内である。適切な用量は、0.01〜100.0mg/kgまたはより詳細には0.1〜100、0.1〜75、0.1〜50、0.1〜25、0.1〜10、0.5〜100、0.5〜75、0.5〜50、0.5〜25、0.5〜10、1〜100、1〜75、1〜50、または1〜25mg/kgの範囲内である。好ましい用量は、1〜10、10〜100、10〜75、10〜50、10〜25、25〜50、50〜75、25〜100、25〜50、50〜100、または75〜100mg/kgを含む。最も好ましくは、用量は1〜2、3〜4、5〜6、7〜8、または9〜10mg/kgの範囲であってもよい。本発明の治療組成物を、約1〜10週、好ましくは2〜8週、より好ましくは約3〜7週、およびさらにより好ましくは約4、5、もしくは6週にわたり毎日、週に1回、2回、もしくは3回またはそれより頻回に投与してもよい。必要用量におけるばらつきは、使用可能な種々の組成物および投与の様々な経路の異なる効率を考慮して想定されるべきである。例えば、経口投与であれば静脈内注射による投与よりも高用量が必要であると想定されることになる。これらの用量レベルにおけるばらつきは、当該技術分野で十分に理解されているように最適化のための標準の経験的なルーチンを用いて調節してもよい。適切な送達媒体(例えば高分子微粒子または移植可能なデバイス)中での組成物のカプセル化により、特に経口送達において送達の効率が増大しうる。
【0119】
医薬的に許容できる担体は、溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤を含む。具体的には、これらの作用物質は、生理食塩溶液、固定オイル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調節するための作用物質を含んでもよい。医薬組成物pHを、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節してもよい。
【0120】
本発明の範囲内に、医薬的に許容できる担体および有効量の本発明のタンパク質複合体を含有する医薬組成物も含まれる。医薬組成物の使用により、上掲の障害を治療してもよい。医薬的に許容できる担体は、溶剤、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤を含む。医薬組成物を、従来の方法を用いて異なる投与経路における製剤形態に調合してもよい。
【0121】
本発明の組成物の有効性をインビトロとインビボの双方で評価してもよい。インビボ研究においては、組成物を動物(例えばマウスモデル)に注射してもよく、そこでその治療効果が得られる。その結果に基づき、適切な用量範囲および投与経路の判定が可能である。
【0122】
本明細書で用いられる「特異的な」および「特異的に結合する」という用語は、抗体または抗体の断片がそのリガンドに対して少なくとも10−6Mのアビディティーを有することを意味する。
【0123】
本発明の実施形態では、第1の足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体の断片との融合物であり、この場合の断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0124】
本発明の別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体の断片との融合物であり、この場合の断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0125】
本発明のさらに別の実施形態では、第1の足場ドメインの融合タンパク質は、(GPP)10と、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片およびCD3に特異的な抗体または融合タンパク質との二重特異性融合タンパク質である。EGFRに特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端に融合され、かつCD3に特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のC末端に融合されうる。この実施形態は、二重特異性コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質763CSAOKT3を含むがこれに限定されない。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端に融合され、かつEGFRに特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のC末端に融合されうる。
【0126】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメイン融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2のコラーゲン足場ドメイン融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0127】
本発明の実施形態では、抗−EGFR scFvコラーゲン足場ドメインのタンパク質は763_scFv−Colである。
【0128】
本発明の実施形態では、抗−CD3 scFvコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質はOKT3_scFv−Colである。
【0129】
本発明の別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体の断片との融合物であり、ここで断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0130】
本発明の実施形態では、抗−TNF−α scFvコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は357_scFv−Colである。
【0131】
本発明のさらに別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、TNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片とCD3に特異的な抗体または融合タンパク質の双方を有する(GPP)10の二重特異性融合タンパク質である。TNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、かつCD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、かつTNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。
【0132】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体または抗体の断片の間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2の足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片の間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0133】
本発明のさらに別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、EGFRに特異的な抗体および抗体の断片とCD3に特異的な抗体または融合タンパク質の双方を有する(GPP)10の二重特異性融合タンパク質である。EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。
【0134】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0135】
本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質はマーカータンパク質に対する融合物を含んでもよい。マーカータンパク質は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、および増強された緑色蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されない。これらの実施形態は、HER2/neuに特異的なコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質h4D5CSA−Lucを含むがこれらに限定されない。
【0136】
マーカータンパク質を含むコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質を診断および分子イメージングにおいて用いてもよい。本発明の実施形態では、マーカータンパク質または放射性イオンを含むコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質あるいは他の融合部分を、足場ドメインの融合タンパク質および特異的分子のイメージングに必要な他の試薬を含むキット内にパッケージ化してもよい。これらの試薬は、生物学的試料を調製するための試薬およびマーカータンパク質を可視化するための試薬を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0137】
本発明は、リガンドを検出するための方法であって、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップと、三量体可溶性抗体のリガンドへの結合を検出するステップとを含む、方法を包含する。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン様ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−X−Oであり、Oはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0138】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体は、そのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜1010M−1のアビディティーを有する。
【0139】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体はルシフェラーゼポリペプチドを含む。
【0140】
本発明の実施形態は、第1のコラーゲン足場ドメインおよび第1の足場ドメインの一端に融合された第1の異種ドメインを有する第1の融合ポリペプチド鎖、第2のコラーゲン足場ドメインを有する第2の融合ポリペプチド鎖、および第3の足場ドメインを有する第3の融合ポリペプチド鎖を含む組換えタンパク質複合体を含み、ここで第1、第2、および第3の足場ドメインを整列することで三重らせんコイルが形成される。
【0141】
さらなる実施形態では、本発明は、第1の融合ポリペプチド鎖が第1のコラーゲン足場ドメインの他端に融合される第2の異種ドメインをさらに有する場合のタンパク質複合体を提供する。本発明の他の実施形態は、第1の異種ドメインがCD3に特異的に結合する第1の一本鎖抗体の配列を有するかまたは第2の異種ドメインがEGFRに特異的に結合する第2の一本鎖抗体の配列を有する場合のタンパク質複合体を含んだ。
【0142】
本発明のさらなる実施形態では、タンパク質複合体は、第2の足場ドメインの一端に融合される第3の異種ドメインを含む第2の融合ポリペプチド鎖および第2の足場ドメインの他端に融合される第4の異種ドメインを含む第2の融合ポリペプチド鎖を含み、第3の融合ポリペプチド鎖は第3の足場ドメインの一端に融合される第5の異種ドメインおよび第3の足場ドメインの他端に融合される第6の異種ドメインを有し、ここで各リピートは(GPP)10の配列を有する。
【0143】
下記の具体例は、あくまで図示目的であって開示の残りの部分がどのような内容であっても決して限定するものではないとして解釈されるべきである。当業者は、さらなる検討を行うことなく本明細書中の記載に基づいて本発明をその最大限の範囲で利用できると考えられる。本明細書で引用されるすべての発行物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0144】
実施例1
抗−EGFR抗体ドメインに対するファージライブラリの選択
表皮成長因子受容体細胞外ドメイン(EGFR−ECD)に結合する可変断片(scFv)を含有するerbファージミドを、ヒトシングルフォールドscFvファージディスプレイライブラリ(トムリンソン I+J(Tomlinson I+J);親切にもI.M.トムリンソン(I.M.Tomlinson)およびG.ウインター(G.Winter)、MRC ラボラトリー・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Laboratory of Molecular Biology)、ケンブリッジ(Cambridge)、英国から提供を受けた)のスクリーニングにより単離した。選択を、10μgのEGF受容体(EGFR−ECD;リサーチ・ダイアグノスティクス(Research Diagnostics,Inc.))の精製された組換え細胞外ドメインでコートされたイムノチューブ(immunotubes)(マキシソープ(Maxisorp);ヌンク(Nunc)、ロスキレ(Roskilde)、デンマーク)を用いて行った。溶出されたファージのブロッキング、パニング、洗浄、溶出、および再増幅を製造業者のプロトコルに従って行った。多数のクローンを同定した。ウエスタンブロッティングおよびELISAによる確認後、1つのクローンerb_scFvを追加の実験用に選択した。erb_scFvをコードするcDNAを取得し、標準的方法により発現ベクターにライゲートした。以下にerb_scFvのポリペプチド配列(配列番号l)およびそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号2)を挙げる。
【0145】
【化1】
【0146】
次いで、発現ベクターを昆虫細胞系ショウジョウバエ(Drosophila)S2内で発現させた。抗−EGFR erb_scFvを精製し、それに対してウエスタンブロット分析およびELISAを行い、EGFRに対するその特異性を確認した。
【0147】
実施例2
CD3抗体ドメイン
RT−PCRを実施し、抗−CD3モノクローナル抗体OKT3の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をコードするハイブリドーマ細胞系cDNAを取得した。次いで、その2つのcDNAをライゲートし、OKT3のVH−VLの融合タンパク質をコードする融合配列を生成した。以下に、この融合タンパク質のポリペプチド配列(配列番号3)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号4)を挙げる。
【0148】
【化2】
【0149】
実施例3
EGFR抗体ドメイン
同じ手順を実施し、抗−EGFRモノクローナル抗体528のVHおよびVLをコードするcDNAおよび抗−EGFR 528のVH−VLの融合タンパク質をコードする融合配列を取得した。528モノクローナル抗体は、細胞膜、例えばヒト表皮癌A431細胞上のEGFRに結合する。この528一本鎖抗体のポリペプチド配列(配列番号5)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号6)を以下に挙げる。
【0150】
【化3】
【0151】
実施例4
抗体ドメインのヒトミニコラーゲンXXIへの融合
上記の抗−EGFR erb、OKT3 VH−VL、および抗−EGFR 528VH−VLをコードするcDNAを、それぞれヒトIgGのヒンジ領域、5’末端のEPKSCDKTHTCPPCPRSIP、および3’末端のヒスチジンタグ配列を有するヒトミニコラーゲンXXI cDNAにインフレームで融合した。下記にヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドの足場ドメインおよびcDNA配列(各々、配列番号7および8)が示される。
【0152】
【化4】
【0153】
アミノ末端のOKT3 IgGに由来する抗−CD3 scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチド、その後にT4フィブリチンフォルドンドメインおよびヒスチジンタグを有するOKT3mC21fdを作成した。27個のアミノ酸NH2−GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL−COOHからなり、疎水性の内部を有するβ−プロペラ様構造を形成するバクテリオファージT4のフィブリチンフォルドンドメインは、三量体化およびコラーゲンドメインの正確な折りたたみを駆動するのに十分である(非特許文献16)。
【0154】
OKT3mC21とOKT3mC21fdの双方に対して得られた発現ベクターを、安定的に発現されたヒトプロリル4−ヒドロキシラーゼ遺伝子をそれぞれ有するショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞内に形質移入した。細胞をブラスティシジンの存在下で培養し、ブラスティシジン耐性細胞を選択した。細胞培養上清を回収し、ウエスタンブロッティングにより、α(XXI)コラーゲンのC末端NC1ドメインを認識するモノクローナル抗体3E2で分析した。図2に示されるように、OKT3mC21とOKT3mC21fdの双方が非還元条件下で三量体構造(Tとして示される)を形成することが見出された。鎖間ジスルフィド結合された三量体(Mtとして示される)もまたOKT3mC21とOKT3mC21fdの双方にて検出された。結果は、OKT3_scFvの異種融合タンパク質がT4フォルドンドメインなどの任意の三量体化構造さえ伴うことなくミニコラーゲンXXIの足場ドメインの三量体化特性に影響を与えないことを示している。
【0155】
実施例5
抗体ドメインのコラーゲン様ドメインに対する融合
ミニコラーゲンXXIのコラーゲンドメインを、CSAに対する足場鋳型としての熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10と置換した。erb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、763_scFv−Col、357_scFv−Col、erb_scFv−GPP10、Col−erb_scFv、763CSA−OKT3、およびh4D5CSA−Lucといった8種の融合ポリペプチドを生成した。別のコラーゲン様ペプチドの(GPP)5GKPGKP(GPP)6を763_CSA2を作成するための足場を三量体化するものとして用いた。これらの足場ドメインの融合タンパク質を、マウス骨髄腫NS0細胞内で可溶性分泌タンパク質として安定的に発現させた。
【0156】
組換えプラスミドの作成
erbのscFvをコードするcDNAをerbファージミドからPCR増幅した。マウスIgG2a抗−CD3 mAb OKT3(オーソ・ファーマシューティカル・コーポレーション(Ortho Pharmaceutical Corporation))をコードする配列をOKT3ハイブリドーマ(ATCC、CRL−8001)由来の逆転写産物により取得した。OKT3 mAbのVHおよびVLに対するcDNAを公開されたヌクレオチド配列に基づくRT−PCRにより取得した。erbおよびOKT3のscFv PCR融合物を、VLおよびVH鎖をグリシン−リンカー(GGGGS)3に連結させることにより生成した。
【0157】
mAb763のVLおよびVHをコードするcDNAを、公開されたヌクレオチド配列(特許文献31)に基づくパニツムマブ(panitumumab)(ベクティビックス(Vectibix)、アムジェン(Amgen,Inc.))のcDNAに由来するプライマーセットを用いてPCR増幅した。763のscFv PCR融合物を、VLおよびVH鎖をグリシン−リンカー(GGGGS)3に連結させることにより生成した。
【0158】
RT−PCRを実施し、ハイブリドーマ357−101−4細胞系(ECACC No.92030603)に由来する抗−TNF−αモノクローナル抗体357、強力な中和活性を有するマウス抗−ヒトTNF−α mAbの軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)をコードするcDNAを取得した。次いで、2つのcDNAをグリシン−リンカー(GGGGS)3(イタリック体)と連結させ、357 scFvの融合タンパク質をコードする融合配列を生成した。以下に、この融合タンパク質のポリペプチド配列(配列番号9)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号10)を挙げる。
【0159】
【化5】
【0160】
scFv−Colを生成するため、scFv−Colのコード領域は、N末端のscFvヌクレオチド配列と、C末端のEPKSCDKTHTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCFSVIARRDPFRKGPNY(配列番号11)(ヒトIgGのヒンジ領域(イタリック体)、コラーゲン様足場ドメイン(太字)、およびタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインを含む)のペプチド配列をコードする遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号11および12)を示す。
【0161】
【化6】
【0162】
この合成配列(配列番号12)を重複型(overlapping)PCRにより調製し、NotIおよびXhol部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))の同じ部位にクローニングした。次いで、erb、OKT3、763および357のscFvsを上記のC末端のコラーゲン足場を有するコンストラクトのAscIおよびNotI部位にインフレームにクローニングし、それぞれerb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、763_scFv−Colおよび357_scFv−Colの発現コンストラクトを作製した。
【0163】
次いで、erb_scFv−GPP10を生成し、CSAのコラーゲン−足場ペプチド(GPP)10がそれ自体でコラーゲン様ドメインの内部に存在するかまたはそれに隣接する鎖間架橋アミノ酸残基(CysおよびLysなど)の援助なしに非共有結合された三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを示した。erb_scFv−GPP10のコード領域は、N末端のerb_scFvのヌクレオチド配列と、C末端のGSP(GPP)10GPSSGG(コラーゲン様足場ドメイン(太字)を含む)のペプチド配列をコードする合成遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号13および14)を示す。
【0164】
【化7】
【0165】
erb_scFvのcDNAを重複型PCRにより上記のC末端のコラーゲン足場配列にインフレームにクローニングし、AscIおよびAgeI部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))にクローニングしてerb_scFv−GPP10の発現コンストラクトを作製した。
【0166】
次いで、Col−erb_scFvを作製した。Col−erb_scFvのコラーゲン足場領域は、TCPPCPRSIPおよびGICDPSLCという2つのジスルフィドノットに隣接するコラーゲン様ドメイン(GPP)10を含むTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCのペプチド配列を有する。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号15および16)を示す。
【0167】
【化8】
【0168】
erb_scFvのcDNAを重複型PCRにより上記のN末端のコラーゲン足場配列(配列番号16)にインフレームにクローニングし、BamHIおよびAgeI部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))にクローニングしてCol−erb_scFvの発現コンストラクトを作製した。
【0169】
次いで、763CSA2を作製した。763CSA2のコード領域は、アミノ末端の763_scFv(抗−EGFR)と、C末端のEPKSGDKTHTCPPCPRSIP(GPP)5GKPGKP(GPP)6GICDPSLC(配列番号17)(ヒトIgGの変異ヒンジ領域(イタリック体)、コラーゲン様ドメイン(太字)、およびタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を含む)のペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号17および18)を示す。
【0170】
【化9】
【0171】
この合成配列(配列番号17)を重複型PCRにより調製し、NotIおよびXhol部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))の同じ部位にクローニングした。次いで、763のscFvsを上記のC末端のコラーゲン足場を有するコンストラクトのAscIおよびNotI部位にインフレームにクローニングして763CSA2の発現コンストラクトを作製した。
【0172】
二重特異性CSA、763CSAOKT3を以下のように生成した。OKT3のscFvを763_scFv−ColのC末端のAgeIおよびBamHI部位にインフレームにクローニングして763CSAOKT3の発現コンストラクトを作製した。この場合、763の抗−EGFR scFvがN末端に配置され、それにコラーゲン足場ポリペプチド(配列番号11)およびC末端にOKT3の抗−CD3 scFvが続いた。
【0173】
別の二機能性結合パートナーのh4D5CSA−Lucを以下のように作成した。まず、h4D5CSAを、763CSA2の作成のセクションで述べたように、ヒト化抗−HER2/neu IgG(非特許文献91)に由来するアミノ末端のh4D5_scFvをC末端のコラーゲン足場を有する発現ベクターに融合することによって作製した。次いで、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼcDNA(特許文献32)をh4D5_scFv−ColのC末端のAgeIおよびBamHI部位にインフレームで融合した。
【0174】
様々なscFv、scFv−Fc、およびCSA分子の各オープンリーディングフレームは、分泌、検出、および精製目的で、N末端のリーダー配列およびC末端のmycエピトープ/ポリヒスチジンタグをコードする配列を有する。
【0175】
下記表に上記の発現コンストラクトによってコードされた様々な組換えタンパク質/抗体をまとめる。
【0176】
【表1】
【0177】
実施例6
組換えタンパク質の発現
組換えタンパク質複合体/抗体を産生するため、上記のscFv、scFv−Fc、およびCSAコンストラクトを、Effectene(キアゲン(Qiagen))を用い、製造業者の使用説明書に従い、マウス骨髄腫NS0細胞に形質移入した。ハイグロマイシン(400μg/ml)を用いた選択の4週間後、安定な各クローンを、2%のウシ胎仔血清を含有する化学的組成の明らかな(chemically−defined)培地HyQCDM4NS0(ハイクローン(Hyclone))内で初期播種密度を5×105細胞/mlとして振とうフラスコ内で培養した。培養物を150rpm、37℃で5日間維持した。アスコルビン酸ナトリウム(80μg/ml)を、上記の抗体ドメインおよびコラーゲン足場ドメインすなわちコラーゲン足場抗体(CSA)を有するタンパク質をコードする発現コンストラクトを有する細胞用培地に毎日添加した。
【0178】
実施例7
組換えタンパク質の精製
表1上に列挙されたCSAタンパク質を精製するため、約2Lの濾過された培地の各々を、0.5MのKC1、pH8.0を含有する50mMトリス−HCl緩衝液で平衡化したT−ゲルカラム(1.5×8cm、ピアス(Pierce))に60ml/時間の流速で適用した。同じ緩衝液で洗浄後、組換えタンパク質またはタンパク質複合体を50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0で溶出した。それらのUV吸光度を280nmで監視し、ピーク画分を0.5M NaCl、pH8.0を含有する50mMトリス−HCl緩衝液で平衡化したZnSO4で帯電、キレート化したSepharose High Trapカラム(ベッド容量で1ml、GE ヘルスケア(GE Healthcare))上に流速60ml/時間で適用した。まずカラムを20mMのイミダゾールで洗浄し、次いで結合タンパク質またはタンパク質複合体を同じ緩衝液中の0.25Mのイミダゾールで溶出した。最終調製物を50mMのヘペス緩衝液、pH7.0に対して透析した。次いで、SDS−PAGEをランニング緩衝液(インヴィトロジェン(Invitrogen))としてMOPSを有する10%NuPAGEビス−トリスポリアクリルアミドゲルまたは酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲルを用いて実施した。次いで、タンパク質をクマシーブリリアントブルーR−250で染色した。タンパク質バンドの密度を、Chemilmager 5500(アルファ(Alpha)Inn8)を用いるデンシトメトリーによって定量した。
【0179】
三量体化試験
三重らせんの性質を試験するため、精製erb_scFv−Col(1mg/ml)を10mM DTTの非存在下または存在下、37℃で1時間インキュベートした。DTTで処理した試料からの一定分量を50mMのN−エチル−マレイミド(NEM)と周囲温度で30分間さらに反応させ、遊離スルフヒドリルおよび三量体の再構築を永久的にブロッキングした。各試料から等量のタンパク質を、ランニング緩衝液として酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。ゲルをクマシーブルーで染色した。精製CSAがホモ三量体または鎖間ジスルフィド結合された六量体であり、緩和な還元条件下で2つの三量体に解離されうることが見出された。
【0180】
erb_scFv−Colの三量体構造の熱安定性を試験した。2M尿素を含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中の精製erb_scFv−Colを、10mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の非存在下または存在下で、周囲温度で処理した。次いで、還元試料を50mMのNEMで周囲温度でアルキル化した。等量のタンパク質を有する各試料を、SDS−ローディング緩衝液との混合前に35、45、55、65、75、および85℃で10分間加熱した。試料を、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。ゲルをクマシーブルーで染色した。結果は、erb_scFv−Col三量体が高い熱安定性を示すことを示した。実際、65℃で10分間処理後、50%を超える三量体が残存した。erb_scFv−Colのコラーゲン様ドメインの三量体構造がプロリルヒドロキシル化されることも見出された。
【0181】
erb_scFv−ColまたはOKT3_scFv−Colの一次構造は、ヒトまたはマウス一本鎖Fvの標的化ドメイン、ヒトIgG1ヒンジ領域、(Gly−Pro−Pro)10コラーゲン様ペプチド、およびタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインを含む。erb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvの組換え抗体をマウス骨髄腫NS0細胞内の可溶性分泌タンパク質として発現させ、上記のようにカラムクロマトグラフィーにより培地から別々に精製した。図5Aはこれらの精製抗体のSDS−PAGE分析を示す。非還元条件下で、2つの主要バンドがerb_scFv−Col(レーン2)において分解された一方、1つの主要バンドのみがOKT3_scFv−Col(レーン3)において観察された。erb_scFv−ColとOKT3_scFv−Colの双方の下のバンドは、両scFv−Col単量体(41kD)の三量体形態の計算された分子量の近似値に対応する125kDの位置に移動した。erb_scFv−Col(レーン2)にて示される上のバンドは、三量体の鎖間ジスルフィド結合された二量体であるように見られる。
【0182】
この試験結果を図5Bに示される緩和な還元条件下で試料をインキュベートすることによって確認し、erb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合された六量体(250kD)を2つの三量体(125kD)に解離させた。図5Aでは、試料を50mMのDTTを有する還元条件下で70℃で10分間処理し、erb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合された六量体を三量体形態に完全に還元する一方、erb_scFv−Col三量体のほんの一部を単量体にさらに解離させた(レーン7)。興味深いことに、OKT3_scFv−Colの三量体高次構造は、これらの還元条件下で単量体形態への解離に抵抗性を示した(レーン8)。erb抗体の二価対応物、erb_scFv−Fcが明らかに125kDの分子量を有する非還元条件下での二量体として移動することで(レーン4)、鎖間ジスルフィド結合の還元後に明らかに57kDの分子量を有するほぼ単量体の形態が出現した(レーン9)。
【0183】
これらの結果は、erb_scFv−ColおよびOKT3_scFv−ColのCSA分子内の短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10は熱的に安定な三量体高次構造への組織化を担いうることを示唆している(下記参照)。erb抗体の一価対応物であるerb_scFvは、非還元条件下または還元条件下で明らかに28kDの分子量を有する単一バンドとして移動した。図5に示されるerb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合種の六量体および三量体構造を、その三重らせんの熱安定性を判定するためにさらに特徴づけた。鎖間ジスルフィド橋のCSA分子の三量体構築に対する寄与を除外するため、erb_scFv−Col内のシステイン残基をまず強力な還元剤TCEPを室温で用いて完全に還元し、次いでNEMでアルキル化し、ジスルフィド結合の再構築を阻止した。等量の非還元または還元/アルキル化された試料を2M尿素を含有するトリス−HCl(50mM、pH8)中で指示温度でインキュベートし、三重らせんの解離について非還元条件下でのSDS−PAGEによりアッセイし、コラーゲンの三重らせんの熱安定性を評価した。予想どおり、鎖間ジスルフィド結合された六量体種は35℃で容易に三量体に解離した(図6A、レーン1および4を比較)。インキュベーション温度が高まるにつれ、三量体は単量体に有意に解離した(図6A、レーン4〜9)。還元/アルキル化後における2M尿素下でのerb_scFv−Colの中間転位温度(Tm)が66℃であると測定され、同温度で三量体の半分がほどかれて単量体になった(図6A)。非還元条件下での同じ実験(図6A、レーン1〜3)では、六量体または三量体の構造上の変化が全く示されなかったが、erb_scFv−Colは高いインキュベーション温度で部分的に分解された。
【0184】
この現象は、GPPを有するペプチドが90℃での加熱に感受性を示し、部分的に分解され、かつ2.5MのグアニジウムHClのコラーゲン様試料への導入によってTmが27℃低下することを示した他の研究に一致している。
【0185】
ヒドロキシプロリンは、コラーゲンの三重らせん構造の熱安定性にとって重要である。アミノ酸組成物分析を精製試料上で行い、erb_scFv−Col中でのヒドロキシプロリンの存在について検討した。精製erb_scFv−Colを50mM酢酸に対して透析し、6NのHCl中、110℃で24時間加水分解し、ウォーターズ(Waters)Pico・Tag(登録商標)システム内でアミノ酸分析を行った。測定されたアミノ酸組成物とerb_scFv−Colの推定上のcDNA配列に基づく予測データ(表2)がほぼ一致することが観察された。さらに、ヒドロキシプロリン誘導体のピーク位置がHPLC溶出特性上で検出され、それは(Gly−Pro−Pro)10内のコラーゲンのGly−X−YトリプレットのY位置内のPro残基が水酸化されたことを示唆している(図7)。
【0186】
erb_scFv−Col中でのプロリルの水酸化の範囲は、その(Gly−Pro−Pro)10モチーフ内の完全にヒドロキシル化された10個のプロリン残基の理論値から判定すると61%である(表2中のHyp残基を参照)。結果は、CSA分子内の(Gly−Pro−Pro)10モチーフがプロリル4−ヒドロキシラーゼにおける良好な基質であり、かつマウス骨髄腫NS0細胞がコラーゲン分子の生合成において十分なプロリルヒドロキシラーゼ活性を示すことを示している。
【0187】
【表2】
【0188】
培養上清中での高レベルの三量体可溶性抗体の存在から、抗体ドメインおよび足場ドメインを有する単量体サブユニットが三量体化されかつ分泌されうることが示された。足場ドメインと同じポリペプチド内での抗体ドメインの存在により、三量体化が阻止されず、可溶性抗体の形成が阻止されず、かつ抗体の培地への分泌が阻止されなかった。したがって、本発明は、抗体の三量体化、可溶性抗体の形成、および可溶性三量体抗体の分泌を可能にする。
【0189】
実施例9
結合試験
erb抗体変異体のEGFR−ECDへの結合速度をランニング緩衝液HBS−EP(10mMヘペス、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)中でのBIAcore Xバイオセンサー(ビアコア(BIACORE,Inc.)、ウップサーラ(Uppsala)、スウェーデン)を用いて測定した。つまり、EGFR−ECDをアミン共役を介してClセンサーチップ上に固定化して1700のレベルの応答ユニット(RU)にし、異なる濃度を有する精製抗体を10μl/分の流速で注射した。表面を10mMグリシン−HCl5μl、pH3.5の注射により再生した。センサーグラムを各濃度で取得し、プログラムBIA Evaluation 3.2を用いて評価した。結合データに1:1ラングミュア(Langmuir)結合モデルというタイトルを付け、平衡解離定数KDを計算し、それを解離速度(koff)/結合速度(kon)の比として定義した。結果を下記の表3に示した。
【0190】
【表3】
【0191】
表3に示されるように、EGFR−ECDに対するerb_scFv−Colの結合アビディティーは二価(erb_scFv−Fc)および一価(erb_scFv)mAb対応物よりもそれぞれ約20倍および約1000倍強力である。
【0192】
抗体結合分析では、CSA分子の構造設計によりscFvドメインのアビディティーが改変されないことが示されている。表面プラズモン共鳴および細胞フローサイトメトリーを用い、scFv結合アビディティーがerb_scFv−ColおよびOKT3_scFv−Colにおいてそれぞれ保持されるか否かを試験した。さらに、CSA分子内での三価scFvによる抗原−結合アビディティーの増大をそれらの二価および/または一価対応物による場合と比較した。erb_scFv−Col、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvという3種のerb抗体変異体とEGFR−ECDとの相互作用を表面プラズモン共鳴アッセイを用いて試験し、平衡解離定数KDを解離速度定数と結合速度定数の間の比(koff/kon)として判定した。一価erb_scFvとEGFR−ECDリガンドの結合におけるKDが10−6Mの桁である一方、二価erb_scFv−Fcおよび三価erb_scFv−ColとEGFRの結合におけるKDはそれぞれ10−7Mおよび10−9Mの桁である(図8および表3)。二価および一価の対応物の明確なアビディティーを超える三価erb CSAの同アビディティーにおける増大はそれぞれ約20倍および約1000倍である。注目すべきことに、erb_scFv−Colの解離速度定数(koff)が8.22×10−4s−1でありかつerb_scFv−Fcにおいては94.4×10−4s−1であり、それは三価種でのオフレートにおいて11倍改善することを示している。
【0193】
OKT3_scFv−ColおよびOKT3 IgGの、ヒトCD3(+)T細胞の細胞表面上のCD3分子への結合における機能的親和性を、競合相手として飽和濃度(0.25μg/ml)のOKT3−FITCを伴う抗体変位アッセイを用いるフローサイトメトリー分析により測定した。以下のすべての手順を4℃で実施した。ヒトT細胞を、FCM緩衝液(2%FBSおよび0.1%アジ化ナトリウムを有するリン酸塩緩衝生理食塩水)中に1×106細胞/mlの密度で懸濁した。細胞をすべてのマウスIgG(2μg/ml、ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories))で30分間処理し、次いで連続希釈したOKT3_scFv−ColまたはOKT3抗体とともに1時間インキュベートした。確定した(フローサイトメトリーによって決定した)飽和量のFITCと抱合したOKT3(0.25μg/ml、イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.)から購入)を直接添加した。1時間のインキュベーション後、細胞をFCM緩衝液で洗浄し、FACScan(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、サンホセ(San Jose)、カリフォルニア州)上でのフローサイトメトリーにより免疫蛍光について分析した。データを、ブロッキング抗体の非存在下でのT細胞のOKT3−FITCによる染色によって得られる平均蛍光強度として定義される、最大蛍光強度の阻害率(%)として示した。最大蛍光強度の半分(IC50)を阻害するのに必要とされる各mAbの濃度を計算した。
【0194】
OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−ColのヒトCD3(+)T細胞に対する結合アビディティーはOKT3 IgGにおいて1.33nM、OKT3_scFv−Colにおいて0.45nMであると評価された。したがって、IC50値は三価OKT3_scFv−ColのCD3(+)T細胞に対するアビディティーが二価OKT3 IgGの場合よりも約3倍大きいことを示した(図9)。結果は、OKT3_scFv−ColがヒトCD3+T細胞に天然マウスOKT3 mAbよりも強力に結合することを示した。
【0195】
したがって、表面プラズモン共鳴および細胞結合アッセイを用いて得られた結合分析結果は、三価erbとOKT3 CSAの双方が結合アビディティーをそれらの二価対応物と比べて有意に改善することを示す。結合分析は、本発明の三量体可溶性抗体がナノモル範囲内の結合親和性を示しうることも示す。結果として、本発明の場合、可溶性三量体抗体におけるそのリガンドに対する高親和性が実現可能である。
【0196】
実施例10
安定性および薬物動態アッセイ
血清安定性アッセイにおいては、様々な形態のerb_scFv−Col、erb_scFv−Fc、またはerb_scFv抗体の安定性を、ヒト血清とともに37℃でインキュベートすることにより測定した。異なる期間のインキュベーション時間経過後に残存する活性抗−EGFRの量を定量ELISAにより測定した。ELISAを、(捕捉試薬として)組換えEGFR−ECDおよび抗−c−myc mAb(9E10、シグマ・ケミカル(Sigma Chemical Co.)、その後にHRPと抱合した親和性精製されたポリクローナルヤギ抗−マウスIgGおよび化学発光基質(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))を用いて実施した。薬物動態アッセイにおいては、BALB/cヌードマウス3匹を用いてerb_scFv−Colクリアランスを分析した。つまり、各マウスに、事前の採血(pre−bleed)を行った後、25μg(2mg/体重キログラム)のerb_scFv−Colを皮下注射した。次の70時間にわたり、血液試料を定期的に採取し、同試料中のerb_scFv−Colの含量をELISAにより評価した。
【0197】
コラーゲンドメインの三重らせん構造は、通常、非特異的なタンパク質分解酵素に抵抗性を示すコラーゲンを作る。erb_scFv−Colの血清安定性について試験し、ヒト血清中の各精製抗体変異体を37℃で様々な期間インキュベートすることにより、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvの血清安定性と比較した。様々なerb抗体の免疫反応性をELISAにより測定した。図10Aに示されるように、erb_scFv−Colは生理的温度でのヒト血清中でerb_svFv−Fcよりも安定であり、インキュベーションの72時間以内でのその初期アビディティーは60%保持された。erb_scFvはヒト血清中で速やかに分解され、インキュベーションの1時間以内に保持されたその初期アビディティーは40%未満であった。結果はerb_scFv−Colの三重らせんコラーゲン様ペプチドおよびerb_scFv−FcのFc領域が血清プロテアーゼによる消化に対してerb_scFvよりも抵抗性を示すことを示した。したがって、本発明の可溶性三量体抗体は、単量体抗体または二量体抗体よりも高い血清安定性を有しうる。
【0198】
図10Bは、マウス内でのerb_scFv−Colの薬物動態学的特性を示す。erb_scFv−Col2mg/kgの単回静脈内投与後での2区画モデルの動態について測定した。免疫反応性の血漿レベルは、0.21時間の分布相半減期(t1/2α)および4.78時間の最終消失相半減期(t1/2β)の場合、二相的に低下した。
【0199】
T細胞増殖アッセイおよび混合リンパ球反応(MLR)
5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の細胞増殖アッセイを実施した。つまり、ヒト末梢血単核球(PBMC)を、66時間かけて10倍に連続希釈したOKT3(イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.))またはOKT3_scFv−Colの存在下で、37℃で、10%FBSを含有する100μlのRPMI−1640培地内、ブラック96ウェル平底組織培養プレート内に2×105細胞/ウェルで蒔いた。次いで、細胞に10μMのBrdUで6時間パルスした。培地を取り出した後、細胞を固定し、DNAをFixDenatを用いて1ステップで変性させた。その後、細胞をペルオキシダーゼで標識した抗−BrdU抗体(抗−BrdU POD、Fab断片)とともに室温で1.5時間インキュベートした。化学発光検出および定量をマイクロプレート−ルミノメータ(luminometer)(ハイデックス(Hidex)、CHAMELEON検出プラットフォーム、フィンランド)を用いて行った。
【0200】
一方向の混合リンパ球反応におけるT細胞の増殖および免疫抑制について以下のように評価した。ヒトPBMCを健常ドナー2名から得た(刺激物質(stimulator)および応答物質(responder))。刺激物質または応答物質の細胞を、5%CO2を含有する37℃の加湿空気中、完全培地(10%ヒトAB血清、2mMグルタミン、50nM 2−メルカプトエタノール、および100単位/mlのペニシリンおよびストレプトマイシンの各々を補充したRPMI1640)内で25μg/mlのマイトマイシンC(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))で30分間処理した後、RPMI1640培地内で3回洗浄した。応答物質細胞を、200μlの完全培地内、2×105細胞/ウェルで、単独かあるいはマイトマイシンCで処理した刺激物質またはマイトマイシンCの応答物質細胞と1:1の比で混合して培養した。精製OKT3_scFv−ColまたはOKT3を、応答物質細胞を蒔いた直後に異なる濃度で培養物に添加した。5日後、培養細胞に10μMのBrdUをパルスし、24時間後に採取した。次いで、細胞増殖アッセイを上記のように実施した。
【0201】
OKT3_scFv−ColがCD3(+)T細胞に対する結合アビディティーの増大時に親OKT3 IgGの場合を上回る免疫抑制活性を示しうるか否かを判定するため、双方における一方向の混合リンパ球反応(MLR)でのT細胞マイトジェン活性化について試験した。抗体治療を受けずに5日間インキュベートされた混合PBMC培養物(マイトマイシンCで処理された刺激物質+応答物質)中で、混合リンパ球反応(MLR)がT細胞活性化の同種刺激の結果として生じた(図11B、塗りつぶした四角)。混合PBMC培養物をOKT3 IgGで処理することで、T細胞の増殖がさらに刺激される(図11B、塗りつぶした丸)。それに対し、OKT3_scFv−Colは用量依存的にMLRを抑制し、100ng/mlの濃度でバックグラウンドレベルに達した(図11B、白丸)。これらの結果は、OKT3_scFv−ColがT細胞増殖の強力な免疫抑制剤である一方、インビトロで分裂促進性の低下を示すことを示している。
【0202】
サイトカインの測定
マウスOKT3のマイトジェン活性は、FcR−陽性細胞への結合を介する広範囲のT細胞受容体(TCR)−CD3の架橋により誘発される。したがって、最近ではFc受容体への結合を改変することにより抗−CD3の非マイトジェン形態を生じさせる努力がなされている。CSA分子のモデルとしてOKT3_scFv−Colを生成し、それがOKT3 IgGのFc領域とコラーゲン様ペプチドとの置換えにより非マイトジェンを示すか否かを試験した。ヒトPBMCを、10倍に連続希釈したOKT3またはOKT3_scFv−Colの存在下、37℃で10%FBSを有する0.1mlのRPMI−1640培地内に2×105細胞/ウェルで蒔いた。上清を異なる時点で回収し、複数のサイトカインをヒトサイトカインイムノアッセイキット(イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.))を用いて測定した。
【0203】
OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colにおける、T細胞増殖を誘発しかつ炎症性サイトカインおよび他のサイトカイン(IL−2、IFN−γおよびTNF−α)を放出する能力を測定した。予想どおり、OKT3 IgGが極めて低用量でT細胞増殖およびサイトカイン産生を誘発する一方、検出不能なT細胞増殖またはサイトカイン産生がOKT3_scFv−Colによりそれが高濃度であっても誘発された(図11Aおよび図12)。したがって、これらの結果は、OKT3_scFv−ColがOKT3 IgGと異なりT細胞活性化特性を示さないことを示している。結果は、OKT3_scFv−Colの投与により誘発されるサイトカイン放出がマウスOKT3 IgGの場合よりも極めて少ないことを示した。
【0204】
これらの結果は、OKT3_scFv−ColがT細胞増殖の免疫抑制にてより有効である一方、T細胞増殖の刺激にて示されるマイトジェン活性は無視できることを示している。したがって、本発明の可溶性三量体抗体は分裂促進性を低下させている可能性がある。結果として、コラーゲン足場抗体は、抗腫瘍および免疫調節の用途のいずれであっても治療抗体の設計において望ましい構造でありうる。
【0205】
実施例11
異種ドメインのC末端足場ドメインへの付着
先行研究によると、鎖間ジスルフィド結合された(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんが、コラーゲン様ペプチドに隣接するC末端またはN末端のタイプIIIコラーゲンのジスルフィドノットにおける20℃でのレドックス−シャッフリングプロセスによりインビトロで取得可能であることが報告された(非特許文献30)。(Gly−Pro−Pro)10がインビボでC末端の融合パートナーの三量体化を駆動可能であるか否かを検討するため、N末端のTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCのペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子よりなるCSA分子、Col−erb_scFvおよびC末端のerb_scFvを生成した(図13A)。結果は、Col−erb_scFvにおける六量体の量がerb_scFv−Colのそれより少ないこと以外では、精製Col−erb_scFvがerb_scFv−Colにて観察された構造の特徴と類似した特徴を示すことを示した(図13B)。したがって、(Gly−Pro−Pro)10のペプチド足場はそれ自体でscFvのN末端またはC末端における融合パートナーの三量体化を駆動することが可能である。
【0206】
実施例12
CSAの三量体化を駆動するための要件
CSA分子、erb_scFv−GPP10を生成することで、(GPP)10を含むコラーゲン様ペプチドがそれ自体でコラーゲン様ドメインの内部に存在するかまたはそれに隣接する任意の他の三量体化ドメインまたは鎖間架橋アミノ酸残基(CysおよびLysなど)の援助なしに非共有結合状態の三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを実証した。erb_scFv−GPP10のコード領域は、N末端のerb_scFvのヌクレオチド配列およびC末端のGSP(GPP)10GPSSGGのペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子を含んでいた(図14A)。図14Bに示されるように、erb_scFv−GPP10は、erb_scFv−Colの還元/アルキル化された鎖間ジスルフィド結合構造の場合に類似した融解温度を有する、熱的に安定な三量体のみを形成する(図6A)。その一方で、erb_scFv−GPP10はEGFR−ECDに対して強力な結合アビディティーを保持し、それはerb_scFvが正確に折り畳まれることを示している(図14C)。
【0207】
実施例13
足場ドメインとして異なるコラーゲン様ペプチドを有するCSA分子の生成
ベクティビックス(Vectibix)(パニツムマブ;アムジェン(Amgen)、サウザンド・オークス(Thousand Oaks)、カリフォルニア州、米国)から入手したscFvである治療用の完全−ヒト抗−EGFR mAbを用い、2つの異なるタイプのCSA、すなわち足場ドメインとして(GPP)10(図15A)および(GPP)5GKPGKP(GPP)6(図16A)という異なるコラーゲン様ペプチドをそれぞれ有する763_scFv−Colおよび763CSA2を作成した。SDS−PAGEによる分析によると、両CSAは三量体に組織化した(図15Bおよび16B)。763_scFv−Colは、親パニツムマブに等しい濃度でEGFRシグナル伝達を有効に遮断した(図15C)。その一方で、763CSA2は(ヒト上皮癌A431細胞系から精製した)EGFRに対する強力な結合アビディティーを保持し、それはerb_scFvが正確に折り畳まれることを示している(図16C)。
【0208】
実施例14
二重特異性CSA分子の生成
二重特異性CSA分子763CSAOKT3を生成することで、コラーゲン足場の自己三量体化が融合パートナーの両末端への付着を同時に可能にするという点で用途がより広いことを実証した(図17A)。4つの異なる安定なクローンに由来する分泌性763CSAOKT3を含有する培地をウエスタンブロット分析により試験した。763CSAOKT3分子は三量体構造内に構築されたものであり、同分子はおそらくは2つの三量体内の2つのC末端システイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介してさらに六量体にオリゴマー化されうる(図17B)。精製後、主要な形態の763CSAOKT3は非還元条件下で三量体として存在する(図17C、レーン1)。
【0209】
自己三量体化コラーゲン足場の配置により、2つの大きい結合パートナーと同時に相互作用可能な分子の作成が可能である(各末端は最大3または6の結合価数を有する)ことから、上記の結果は重要な結果を有している。図18に示されるように、二重特異性763CSAOKT3はA431(EGFR−陽性)とヒトCD3(+)T細胞を架橋可能である。結果として、763CSAOKT3は、様々なEGFRを発現する癌細胞に対してT細胞の細胞毒性を再び指示することが可能なT細胞のエンゲージャ(engager)としての機能を果たしうる。
【0210】
実施例15
二機能性CSA分子の生成
二機能性CSA分子、h4D5CSA−Lucを図19Aに示されるように生成した。分泌性h4D5CSA−Lucを含有する培地をクロマトグラフィーにより精製した。h4D5CSA−Luc分子は三量体構造内に構築されたものであり、同分子はおそらくは2つの三量体内の2つのC末端システイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介してさらに六量体にオリゴマー化されうる(図19B)。生物発光ELISAを実施することで、h4D5CSA−LucがHER2/neuの結合と生物発光活性の双方を保持することを実証した。図19Cに示されるように、HER2/neuを過剰発現するヒト卵巣SKOV−3癌細胞でコートされたウェル内に捕捉された精製h4D5CSA−Lucがセレンテラジンに対する触媒能および濃度依存的な発光能を保持した。
【0211】
自己三量体化コラーゲン足場の配置により、結合パートナーと相互作用可能な分子の作成が可能であり(各末端は最大3または6の結合価数を有する)、かつ相互作用はC末端の二機能性CSA分子のルシフェラーゼドメインを生物発光基質とともにインキュベートすることにより直接検出可能であることから、上記結果は重要な結果を有している。おそらくは、h4D5CSA−Lucは、分子診断用または光学イメージング用の試薬としての機能を果たしうる。
【0212】
実施例16
抗−TNF−α CSAの生成
ハイブリドーマ357−101−4細胞系(ECACC No.92030603)に由来するscFvである、強力な中和活性を有するマウス抗−ヒトTNF−α mAbを用い、CSA分子357scFv−Colを作成した。精製357_scFv−Colは、scFv−Colの形式において観察される構造の特徴に類似した特徴を示す(図20A)。TNF−αに誘発されるL929細胞のアポトーシスの357_scFv−Colおよび357IgGによる中和の程度を比較した。図20Bに示されるように、357_scFv−Colは二価357IgGよりも約4倍強力な中和活性を示す。
【0213】
本明細書中に開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせ可能である。本明細書中に開示される各特徴は、同一、等価、または類似の目的に役立つ別の特徴によって置換え可能である。したがって、他に明示的に記述されない限り、開示される各特徴は一般的な一連の等価または類似の特徴の一例にすぎない。
【0214】
上記から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認し、かつその精神および範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更および改良を行い、それを様々な使用および条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態もまた添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0215】
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【図面の簡単な説明】
【0255】
図面の簡単な説明
【図1】例えばヒトタイプXXIミニコラーゲンまたは(GPP)10のコラーゲン様ドメインに由来するものなどの自己組織化した三重らせんコイルのコラーゲン足場ドメインおよび異種ドメインを有するタンパク質複合体を示す図面である。
【図2】図2Aおよび2Bの各々は、(A)OKT3(抗−CD3)、528(抗−EGFR)、またはerb(抗−EGFR)(各々、インフレームにヒトIgGのヒンジ領域に融合される)に由来するアミノ末端scFvと、ヒトタイプXXIミニコラーゲンのコラーゲン足場ドメインと、その次のヒスチジンタグとを有する三量体コラーゲン足場抗体(CSA)の略図(点線:鎖間ジスルフィド結合)、および(B)タンパク質複合体のウエスタンブロッティングの結果の図面である。OKT3mC21は、OKT3 IgGに由来するアミノ末端抗−CD3 scFvと、ヒトIgGのヒンジ領域と、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドと、その次のヒスチジンタグとを有し、OKT3mC21fdは、OKT3 IgGに由来するアミノ末端抗−CD3 scFvと、ヒトIgGのヒンジ領域と、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドと、その次のT4フィブリチンフォルドンドメインおよびヒスチジンタグとを有する。安定的に形質移入されたショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞由来の培地は、非還元条件下でSDS−PAGE上で電気泳動され、次いでタイプXXIコラーゲン、3E2のC末端に対するモノクローナル抗体で免疫ブロットされた(T:鎖間ジスルフィド結合された三量体;Mt:鎖間ジスルフィド結合された三量体を有する単量体)。
【図3】アミノ末端OKT3一本鎖抗体(OKT3_scFv)、ヒトIgGのヒンジ領域、ヒトタイプXXIミニコラーゲンのコラーゲン足場ドメイン、その次のC末端528一本鎖抗体(528_scFv)を有する二重特異性三量体CSAを示す図面である。
【図4】図4A(a〜e)および4B(a〜c)は抗体の異なる形式の略図である。(A)アミノ末端scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、およびタイプXXIコラーゲンのカルボキシル末端NC1ドメインを有する三量体コラーゲン足場抗体scFv−Col(a);アミノ末端scFvおよびコラーゲン様ドメインGSP(GPP)10GPSを有するscFv−GPP10(b);アミノ末端ジスルフィドノット(TCPPCPRSIP)、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインに由来するカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびscFvを有するCol−scFv(c);アミノ末端scFv1、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびscFv2を有するBiscFv−Col(d);アミノ末端scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびルシフェラーゼを有するscFv−Col−Luc(e);(B)左から右に、(a)免疫グロブリンG(IgG)、(b)キメラ(scFv−Fc)、および(c)一本鎖抗体(scFv、灰色領域)。点線:鎖間ジスルフィド結合。
【図5】図5A〜Bは哺乳類細胞内での様々な抗体分子の精製および構造の特徴づけを示す。(A)指示抗体は哺乳類細胞内で安定的に発現され、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は非還元条件下(レーン1〜5)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン6〜10)でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(B)erb_scFv−Col六量体が2つの三量体分子の鎖間ジスルフィド結合により形成される。精製されたerb_scFv−Col(1mg/ml)は、10mM DTTの非存在下(レーン1)または存在下(レーン3)、37℃で1時間インキュベートされた。さらにDTTで処理された試料からの一定分量が50mM N−エチル−マレイミド(NEM)と周囲温度で30分間反応された(レーン2)。等量のタンパク質を有するすべての試料が、ランニング緩衝液として酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはクマシーブルーで染色された。「M」は分子量標準を示す。
【図6】図6A〜Bはerb_scFv−Colの三量体構造の熱安定性を示す。(A)2M尿素を含含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中で精製されたerb_scFv−Colが周囲温度、10mM TCEPの非存在下(レーン1〜3)または存在下(レーン4〜9)で処理された。還元された試料は周囲温度、50mM NEMでアルキル化された。等量のタンパク質を有するすべての試料が指示温度で10分間加熱され、その直後にSDS−ローディング緩衝液が添加された。試料は、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはクマシーブルーで染色された。(B)(レーン4〜9からの)(a)における異なるインキュベーション温度での還元/アルキル化されたerb_scFv−Colの三量体レベルを定量化したものである。タンパク質バンドの密度が密度計を用いて定量された。各温度点での三量体および単量体の全体量が100に正規化された。
【図7】図7は、酸加水分解後でのerb_scFv−Colのフェニルチオカルバミル(PTC)アミノ酸誘導体のHPLC溶出プロファイルを示す。酸加水分解後にerb_scFv−Colのフェニルイソチオシアネート(phenylisothiocyanate)(PITC)で誘導体化されたアミノ酸が逆相C18シリカカラム上で分離され、PTC発色団が254nmで検出された。ヒドロキシプロリン(Hyp)誘導体のピーク位置が矢印で示される。
【図8】図8A〜Cは、EGFRの細胞外ドメインとerb_scFv−Col(A)、erb_scFv−Fc(B)またはerb_scFv(C)の間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析を示す。各抗体は指示濃度で注射され、10μl/分の流速で固定化EGFR細胞外ドメインを有する表面チップ上に流された。
【図9】OKT3の変位アッセイを示す。ヒトCD3(+)T細胞が連続希釈したOKT3_scFv−ColまたはOKT3 IgGとともに1時間インキュベートされた。飽和量のOKT3−FITCが添加され、さらに1時間インキュベートされた。細胞が洗浄されて結合され、OKT3−FITCがフローサイトメトリーにより定量された。値は、予め抗体のブロッキングを行わずにOKT3−FITCを添加することにより測定された最大蛍光の阻害率(%)として表される。
【図10】図10A〜BはCSA分子の安定性を示す。(A)ヒト血清中の様々な形態のerb抗体の安定性。erb_scFv−Col、erb_scFv−Fcまたはerb_scFvの安定性がヒト血清中、37℃でのインキュベーションによって測定された。様々な期間のインキュベーション後に残存する活性を示す抗−EGFRの量が抗−c−myc mAbを用いたELISAにより測定された。(B)マウスにおけるerb_scFv−Colの薬物動態。雄C57BL/6マウスに対し、2mg/Kgのerb_scFv−Colが静脈内注射された。血液試料が異なる時刻に採取された。血漿中のerb_scFv−Colレベルが、HRPと抱合したウサギ抗−c−myc抗体を用いるELISAにより測定された。結果は各時刻において動物3匹から平均化されたもので、エラーバー(error bar)は標準偏差を示す。
【図11】図11A〜BはOKT3に由来するCSAが有効な免疫抑制活性で細胞分裂を引き起こさないことを示す。(A)OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colに応答するT細胞増殖。ヒトPBMCが3つの健常ドナーから採取され、対数にて連続希釈したOKT3 IgGまたはOKT3_scFv−Colとともに個別に72時間インキュベートされ、10μMのBrdUでさらに8時間パルスされた。細胞増殖が、化学発光イムノアッセイを用いるBrdU−ELISAにより測定され、DNA合成の間でのBrdUの取込みが定量された。各点は3つのドナーの平均±標準偏差を示す。(B)混合リンパ球反応のOKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colによる阻害。マイトマイシンCで処理された刺激物質PBMCと混合された応答物質PBMCが異なる濃度のOKT3 IgG(黒丸)またはOKT3_scFv−Col(白丸)の存在下で5日間共培養され、BrdUでさらに16時間パルスされた。細胞増殖はBrdU−ELISAにより測定された。抗体の非存在下でのマイトマイシンCで処理された刺激物質PBMCと混合された応答物質PBMCおよび応答物質PBMCの各々が塗りつぶした四角および塗りつぶした三角で示された。抗体の非存在下での未処理の刺激物質PBMCの細胞増殖が白四角で示される。
【図12】図12A〜Fは、OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colにより誘発されるサイトカインの放出を示す。ヒトPBMCが健常ドナー3名から採取され、対数にて連続希釈したOKT3 IgG(黒丸)またはOKT3_scFv−Col(白丸)とともに個別にインキュベートされた。培養上清中のIL−2および残りの指示サイトカインのレベルが、ELISAによりそれぞれ24時間および72時間経過した時点で測定された。各点は3つのドナーの平均±標準偏差を示す。
【図13】図13A〜BはCol−erb_scFvの精製を示す。(A)アミノ末端のジスルフィドノット(TCPPCPRSIP)、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端のタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインに由来するジスルフィドノット(GICDPSLC)およびerb_scFv(抗−EGFR)を有するコラーゲン足場抗体、Col−erb_scFvの略図。(B)Col−erb_scFvの精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換えCol−erb_scFvがカラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン2)でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。
【図14】図14A〜Cは、(GPP)10を含むCSAのコラーゲン足場ペプチドがそれ自体で熱的に安定な非共有結合された三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを示す。(A)CSA、すなわちアミノ末端erb_scFv(抗−EGFR)およびコラーゲン様ドメインGSP(GPP)10GPSを有するerb_scFv−GPP10の略図。(B)erb_scFv−GPP10の三量体構造の熱的安定性。2M尿素を含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中の精製erb_scFv−GPP10が、10mM TCEPの非存在下(レーン1〜3)または存在下(レーン4〜9)で周囲温度で処理された。等量のタンパク質を有するすべての試料が指示温度で10分間加熱され、その直後にSDS−ローディング緩衝液が添加された。試料は、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。(C)erb_scFv−GPP10のEGFR−ECDに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロタイタープレートが1μg/mlのEGFR−ECDでコートされ、次いで様々な濃度の精製erb_scFv−GPP10およびHRPと抱合した抗−c−myc抗体とともにインキュベートされた。450nmでの吸光度が測定された。
【図15】図15A〜Cは763_scFv−Colの精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を有する763_scFv−Colの略図。(B)抗体は、マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現され、培地からカラムクロマトグラフィーにより精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(C)EGFRのEGFに誘発されるチロシンリン酸化の763_scFv−Colによる阻害。A431細胞が、763_scFv−Col(0.2〜150nM)の非存在下または存在下で16nM EGFを伴う場合または伴わない場合に30分間インキュベートされた。細胞溶解物が、還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で分離された。異なる細胞溶解物に由来する等量のタンパク質全体が各レーンにて負荷された。細胞溶解物中でのEGFRリン酸化が、抗−ホスホチロシンmAbを用いるウエスタンブロッティングにより検出された。抗−β−アクチンがローディング対照として用いられた。抗体の非存在下でのEGFに誘発されるEGFRチロシンリン酸化が100%として指定された。
【図16】図16A〜Cは763_CSA2の精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)5GKPGKP(GPP)6、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を有する763CSA2の略図。(B)三量体の同定。試料は、非還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。レーン1は分子量マーカーである。(C)763CSA2のEGFRに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロタイタープレートが1μg/mlのEGFRでコートされ、次いで様々な濃度の精製763CSA2およびHRPと抱合した抗−c−myc抗体とともにインキュベートされた。450nmでの吸光度が測定された。
【図17】図17A〜Cは二重特異性CSA、763CSAOKT3の精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)およびカルボキシル末端OKT3_scFv(抗−CD3)を有する763CSAOKT3の略図。(B)組換え二重特異性763CSAOKT3抗体を含有する培地のウエスタンブロット分析。(1〜4に番号付けされた)4つの異なる安定なクローンに由来する一定分量20μlの培地が、非還元条件下および還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で分離され、次いで抗−c−myc mAbで免疫ブロットされた。結合抗体がペルオキシダーゼと抱合した抗−マウス二次抗体を用いて検出された。(C)763CSAOKT3の精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換え763CSAOKT3がカラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。
【図18】図18A〜Cは、二重特異性CSA、763CSAOKT3、架橋A431(EGFR−陽性)およびヒトCD3(+)T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。等量(1×106細胞)のPKH−67で標識されたA431細胞とPKH−26で標識されたCD3(+)T細胞が、組換え二重特異性763CSAOKT3抗体を有する培地の非存在下(A)または1:4希釈物の存在下(B);1:2希釈物の存在下(C)で混合された。
【図19】図19A〜Bは、二機能性CSA、h4D5CSA−Lucの精製および特徴づけを示す。(A)アミノ−末端h4D5_scFv(抗−HER2/neu)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)およびカルボキシル末端ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼを有するh4D5CSA−Lucの略図。(B)h4D5CSA−Lucの精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換えh4D5CSA−Lucが、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン2)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン3)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。レーン1は分子量マーカーである。(C)h4D5CSA−LucのSKOV−3細胞上で過剰発現されたHER2/neuに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロプレートが5×104細胞/ウェルでコートされ、2倍に連続希釈した精製h4D5CSA−Lucとともにインキュベートされた。PBS/1% BSAでのプレートの洗浄後、結合抗体がセレンテラジンの添加により検出され、生物発光値がマイクロプレートルミノメータを用いて取得された。試料が3通りにアッセイされた。
【図20】図20A〜Bは357_scFv−Colの精製および特徴づけを示す。(A)抗体は、マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現され、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(B)TNF−αに誘発されるL929細胞のアポトーシスの357_scFv−Colおよび357 IgGによる中和。L929マウス線維芽細胞(5×103細胞)が、2μg/mlのアクチノマイシンDおよび10ng/mlのヒト組換えTNF−αを含有する、異なる濃度の357_scFv−Colまたは357 IgGのいずれかとともに24時間インキュベートされた。TNF−αに誘発される細胞の細胞毒性がMTTアッセイにより測定された。生存細胞の数が460nmでの光学密度の測定により判定された。抗体によるTNF−αの中和については、式%中和=100×(細胞毒性ctrl−細胞毒性Ab)/細胞毒性ctrl;%細胞毒性=100×(Actrl−Atest)/Actrl(式中、Actrlは(TNF−αを伴わない)対照ウェル内の吸光度であり、AtestはTNF−α(細胞毒性ctrl)またはTNF−α+抗体(細胞毒性Ab)を伴う場合のウェル内の吸光度であった)を用いて計算された。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年12月15日出願の米国特許仮出願第60/750,746号明細書に対して優先権を主張する、2006年12月12日出願の米国特許出願第11/609,410号明細書の一部継続出願であり、それらは双方ともに参照により本明細書中に援用される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
タンパク質に基づく結合試薬は、治療または診断用途において様々な使用法を有する。抗体はかかる試薬における優れたパラダイムであることが判明している。実際、多数のモノクローナル抗体(mAbs)の癌、感染性疾患および炎症性疾患の治療における使用が奏功している(非特許文献1)。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
抗体親和性は、治療物質としての抗体の成功を握る主要な因子である。高親和性を有する抗体は、抗体の、標的化された受容体における天然リガンドとの有効な競合、それによる用量、毒性、およびコストの低減を可能にする。抗原結合部位の多量体化が、抗体アビディティー(antibody avidity)(機能的親和性(functional affinity))として定義される、抗体の抗原に対する全体的な結合力を高める有効な手段であることが示されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。多価抗体が抗癌活性をインビボで高めている(非特許文献7;非特許文献8)。免疫グロブリンG(IgG)が二価の性質を有することから、従来式に設計されたIgGを3つ以上の異なる抗原に対する同時結合として用いることはできない。したがって、多価または多重特異的タンパク質に基づく結合試薬としての需要が存在する。
【0004】
いくつかの場合では、Fc領域の設計を通じて抗体依存性の細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)などのエフェクター機能を回避することは、分裂促進性(mitogenicity)の副作用の低減に必要である。例えば、マウス抗−ヒトCD3 mAb(オルソクローン(Orthoclone)OKT3、ムロモナブ(muromonab)−CD3)は、ヒトT細胞上のT細胞受容体(TCR/CD3複合体)を標的化する強力な免疫抑制物質である。同種移植片拒絶の予防または治療がここ20年間にわたり利用されている(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。しかし、この治療の利用に対する1つの大きな欠点がTNF−α、IL−2、およびIFN−γなどのサイトカインの全身放出であり、その結果、インフルエンザ様症状、呼吸困難、神経症状、および急性尿細管壊死を含む一連の逆マイトジェン効果がもたらされる(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。OKT3および他の抗−CD3 mAbのマイトジェン活性がFcR−陽性細胞(例えば単球)への結合を介する広域のTCR/CD3架橋に依存することから、最近ではFcRへの結合性の改変によって非マイトジェン形態の抗−CD3抗体を開発することに努力がなされている。したがって、高親和性、低いマイトジェン効果、および高いインビボでの安定性を有する、タンパク質に基づく結合試薬に対する需要が存在する。
【0005】
コラーゲンは哺乳類において最も豊富に存在するタンパク質である。トリプレット配列Gly−X−Y(式中、XおよびYはプロリン(アミノ酸コードでPもしくはPro)およびヒドロキシプロリン(アミノ酸コードでOもしくはHyp)であることが多い)のリピートを有する1つもしくは複数の三重らせん領域(コラーゲンドメイン)を有する細胞外マトリックスタンパク質である。かかるトリプレットの存在は、3つのコラーゲンポリペプチド鎖(α−鎖)における三重らせん高次構造への折り畳みを可能にする。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質はヒト血清中に存在し、感染性生物からの防御における先天性免疫系としての機能を果たす。これらは、補体タンパク質Clq、マクロファージ受容体、コレクチンファミリータンパク質−マンノース結合レクチン(MBL)、フィコリンならびにサーファクタントプロテインAおよびD(SP−AおよびSP−D)を含む。これら「防御コラーゲン(defense collagen)」分子の中で見られる共通の構造的特徴は、それらのすべてがC末端に標的結合ドメインを有する多重三量体タンパク質を単位とする点である。結果として、多量体化によりこれらの防御コラーゲン分子の結合ドメインにおける機能的親和性が有意に高まる。
【0006】
コラーゲンドメインを有する異種融合タンパク質の三量体化が、コラーゲンドメインに融合される同種または異種いずれかの三量体化ドメインを用いてコラーゲン三重らせんの形成を駆動することによって実現されている。三量体−オリゴマー化ドメインの例として、プロコラーゲンのC−プロペプチド、コレクチンファミリータンパク質のコイルドコイルネックドメイン、FasLのC末端部分およびバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドン(foldon)ドメインが挙げられる(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)。
【0007】
線維性コラーゲン(タイプI、II、III、IV、V、およびXI)およびコレクチンファミリータンパク質の三量体構築は、それらの大きい球状のC末端ドメイン(C−プロペプチド、約250個のアミノ酸)およびC末端コイルドコイルネックドメイン(約35個のアミノ酸)の各々における三量体の会合により開始され、次いでC末端からN末端にかけてのジッパー様形態でのコラーゲンドメインの伝播が生じる(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24)。
【0008】
配列Gly−Pro−Hypはコラーゲンにおける最も安定化しかつ最も一般的なトリプレットであり、かつペプチド(Gly−Pro−Hyp)10は高度に安定な三重らせん構造に自己会合可能である(非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28)。化学合成された(Gly−Pro−Hyp)10ペプチドと異なり、(Gly−Pro−Pro)10ペプチドは生理的条件下で安定な三重らせんに自己会合することはない(非特許文献26)。熱的に安定な(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんを得るため、2つのアプローチの記載がなされている。第1に、鎖間ジスルフィド結合された(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんが、コラーゲン様ペプチドに隣接するタイプIIIコラーゲンのC末端またはN末端のジスルフィドノット(disulfide knot)の20℃でのレドックス−シャッフリングプロセスによりインビトロで得られた(非特許文献29;非特許文献30)。第2に、バクテリオファージT4フィブリチン(fibritin)由来の安定な異種の三量体化フォルドンドメインが(Gly−Pro−Pro)10ペプチドのC末端に融合されることで、コラーゲン様ペプチドの三量体化および正確な折り畳みがP4H欠乏性の大腸菌(E.coli)発現系内で駆動された(非特許文献16)。多数の研究にてG−X−Yリピートの融解温度/安定性が試験されている。(非特許文献16;非特許文献31;非特許文献32;および非特許文献33)。これらの研究に基づき、様々なリピート構造の安定性が予測可能である。
【0009】
上記のアプローチは、異種ポリペプチドの正常な三量体化および折り畳みを支持することなく、潜在的な治療用途を極端に限定しうると思われる免疫応答のリスクに関連した異種抗遺伝子断片を導入しうることからその使用が限定されている。したがって、三量体融合タンパク質の形成を駆動する熱的に安定な三重らせん構造を形成可能であり、インビトロとインビボの双方でかかる三量体化されたポリペプチドの使用を可能にするインビボ発現系が必要である。
【0010】
機能的な三重らせん高次構造を有するコラーゲンおよびヒドロキシプロリンを含有するペプチドの組換え発現は、特異的な翻訳後酵素、特にプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)を必要とする(非特許文献22)。コラーゲンのGly−X−YモチーフのY位置内で特定されたプロリンは、一般にプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)により4−ヒドロキシプロリンに翻訳後修飾されることで、コラーゲンの三重らせん構造が安定化される。プロリンの水酸化の非存在下では、コラーゲンに必須の三重らせん高次構造は、生理的温度未満で熱的に不安定である(非特許文献34;非特許文献35)。原核生物はP4H活性を全く有していない。外因性のP4H遺伝子(αおよびβサブユニットの双方)が同時に導入されることで活性α2β2四量体が形成されない限り、酵母および昆虫細胞は、組換えコラーゲンの発現を行うのに不十分な酵素活性を示す。
【0011】
非線維性FACIT(三重らせんが中断された状態の線維結合型コラーゲン)コラーゲン(タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIおよびXXII)は、コラーゲンファミリー内のサブグループである。それらは線維性コラーゲンおよび他のマトリックス成分または細胞と結合するように見える(非特許文献36)。FACITでは、4つのアミノ酸によって分離される2つの保存されたシステインはCOL1およびNC1ドメインの接合部位に位置し、3つの構築されたコラーゲン鎖内の鎖間ジスルフィド結合を担っており(非特許文献37)、詳細にはその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0012】
C末端先端(extreme C−terminal)のコラーゲン(COL1)および非コラーゲン(NC1)ドメインをヒトP4H遺伝子の2つのサブユニットとともに含むタイプXIIおよびXXIミニコラーゲンは、それぞれバキュロウイルスに感染したイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)およびショウジョウバエ(Drosophila)S2昆虫細胞内で同時発現されている(非特許文献37;非特許文献38)。鎖間ジスルフィド結合されたミニコラーゲンXIIおよびXXIの形成は、コラーゲン鎖のヒドロキシプロリン含量に依存し、それは三重らせんの折り畳みがジスルフィド結合の形成に先行することを示唆している。ミニコラーゲンXXI内での不十分なプロリルの水酸化は、鎖間ジスルフィド結合された二量体および鎖間ジスルフィド結合された単量体の生成をもたらす(非特許文献38)。ニワトリコラーゲンXIIのCOL1ドメイン全体を有するコンストラクトが三量体を形成可能であった。マッツォラーナ(Mazzorana)は、ニワトリコラーゲンXIIのNC1ドメイン全体およびCOL1ドメインの5つの末端G−X−Yリピートのみを有するコンストラクトが三量体を形成できなかったことを示している。COL1ドメインにおける5つの追加のC末端G−X−Yリピートの存在は、三量体の形成を可能にした。マッツォラーナ(Mazzorana)によって用いられたコンストラクトは、タグとしてヒトc−mycタンパク質の短い断片を含んでいた。そのようなものとして、マッツォラーナ(Mazzorana)は、これらの配列による三量体化の、付着分子の折り畳みまたは機能性に対する効果、またはより大きな付着分子の自己三量体化に対する効果については言及しなかった。
【0013】
【特許文献1】国際公開第98/56906号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/4678号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献4】国際公開第92/18619号パンフレット
【特許文献5】国際公開第91/17271号パンフレット
【特許文献6】国際公開第92/20791号パンフレット
【特許文献7】国際公開第92/15679号パンフレット
【特許文献8】国際公開第93/01288号パンフレット
【特許文献9】国際公開第92/01047号パンフレット
【特許文献10】国際公開第92/09690号パンフレット
【特許文献11】国際公開第90/02809号パンフレット
【特許文献12】国際公開第91/00906号パンフレット
【特許文献13】国際公開第91/10741号パンフレット
【特許文献14】国際公開第92/03918号パンフレット
【特許文献15】国際公開第92/03917号パンフレット
【特許文献16】国際出願PCT/US86/02269号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第184,187号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第171,496号明細書
【特許文献19】欧州特許出願公開第173,494号明細書
【特許文献20】国際公開第86/01533号パンフレット
【特許文献21】米国特許第4,816,567号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第125,023号明細書
【特許文献23】米国特許第5,585,089号明細書
【特許文献24】米国特許第5,693,761号明細書
【特許文献25】米国特許第5,693,762号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第519596Al号明細書
【特許文献27】米国特許第5,208,020号明細書
【特許文献28】米国特許第5,475,092号明細書
【特許文献29】米国特許第5,585,499号明細書
【特許文献30】米国特許第5,846,545号明細書
【特許文献31】米国特許第6,235,883号明細書
【特許文献32】米国特許第6,232,107号明細書
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【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明は、三量体抗体を含む組成物、方法、およびキットに関する。抗体は、高いアビディティー、低いマイトジェン効果、および高いインビボでの安定性を有しうる。抗体は多価または多重特異的でありうる。
【0015】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティー(平衡会合定数KAによって示される)でリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0016】
本発明はまた、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、Y残基のうちの少なくとも6個はヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0017】
本発明はまた、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を包含し、各ポリペプチドは、少なくとも6個、少なくとも7個、または少なくとも8個のG−P−Oリピートを含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0018】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体は、少なくとも108M−1のアビディティーまたは少なくとも109M−1のアビディティーでそのリガンドに結合する。
【0019】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドは、ヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、ヒトHER2/neu、またはヒトTNF−αである。
【0020】
三量体可溶性抗体は、マーカーポリペプチドのコード配列をさらに含みうる。好ましい実施形態では、マーカーポリペプチドはルシフェラーゼポリペプチドである。別の好ましい実施形態では、マーカーポリペプチドは緑色蛍光ポリペプチドである。
【0021】
一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、各ポリペプチドは13個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは20個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは30個未満のG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、各ポリペプチドは50個未満のG−X−Yリピートを含む。
【0022】
一実施形態では、各ポリペプチドはコラーゲンNC1ドメインを含まない。一実施形態では、各ポリペプチドはジスルフィドノットを含まない。一実施形態では、各ポリペプチドはバクテリオファージT4のフィブリチンフォルドンドメインを含まない。
【0023】
一実施形態では、各ポリペプチドは42kD未満の分子量を有する。一実施形態では、三量体可溶性抗体は130kD未満の分子量を有する。
【0024】
一実施形態では、1/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、1/2を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、2/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、3/4を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、すべてのG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む。
【0025】
本発明は、三量体可溶性抗体をコードする核酸を包含する。本発明は、宿主細胞に導入される場合、三量体可溶性抗体を発現する発現ベクターをさらに包含する。本発明は、三量体可溶性抗体を発現する発現ベクターを含む宿主細胞も包含する。
【0026】
本発明は、10〜30個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)を含むコラーゲン足場ドメインをコードする核酸を、リガンドに対する抗体ドメインをコードする核酸にインフレームに連結するステップと、G−P−Pリピートのうちの少なくとも6個をY位置でヒドロキシプロリネート化する、細胞内のコードされたポリペプチドを発現するステップと、を含む、三量体可溶性抗体を生成する方法およびキットであって、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される方法およびキットを包含する。
【0027】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドの生物学的活性を調節する(すなわち阻害または増大する)方法およびキットであって、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成され、かつ三量体可溶性抗体のリガンドへの結合によりリガンドの生物学的活性が阻害される方法およびキットを包含する。
【0028】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドを検出するための方法およびキットであって、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成され、かつ三量体可溶性抗体のリガンドへの結合が検出される方法およびキットを包含する。
【0029】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体はルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的にはコラーゲン足場ドメインにインフレームで融合された抗体ドメインが足場ドメインの三量体化による三量体抗体の産生を可能にするという試験結果に基づいており、得られる三量体抗体の結合アビディティー(binding avidity)は二価IgGおよび一価scFvの形式の場合よりも高められる。本発明に従って作製された三量体抗体は、そのリガンドに対して109M−1よりも大きい機能親和性(アビディティー)を有しうる。
【0031】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインが融合ポリペプチドの三量体化を駆動するようにコラーゲン足場ドメインを融合ポリペプチド内で結合タンパク質にインフレームで融合させてもよく、ここではそのリガンドに対するその結合能が保持される。結合ドメインは、例えばサイトカインドメイン、サイトカイン受容体ドメイン、または抗体ドメインであってもよい。一実施形態では、サイトカインはTNF−αである。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインを抗体ドメインにインフレームで融合することで三量体抗体を産生してもよい。好ましい実施形態では、三量体抗体は可溶性抗体である。可溶性抗体とは、生理的条件下で可溶性の抗体である。好ましい実施形態では、可溶性三量体抗体は分泌抗体である。分泌抗体とは、細胞によって分泌される抗体である。抗体の分泌を、抗体ドメインを含むポリペプチド上にシグナル配列を有することにより標的化してもよい。
【0032】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体は、そのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜1010M−1のアビディティーを有する。
【0033】
一実施形態では、(Gly−Pro−Pro)10などの熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチドは、足場ドメインとして用いられることで、抗体ドメインの三量体化が十分なP4H活性を有する系内での融合コンストラクトの発現により駆動される。このアプローチにより、インビボでのタンパク質の価数、安定性、および機能に作用する安定な三重らせん構造の導入が促進される。
【0034】
本発明は、異種融合タンパク質のC末端もしくはN末端方向からの自己核形成(self−nucleation)および伝播を可能にするコラーゲン足場ドメインとして、コラーゲン配列、例えばミニコラーゲンタイプXIIまたはXXI、あるいはコラーゲン様配列、例えば(Gly−Pro−Pro)10または(GPP)5GKPGKP(GPP)6の使用を包含する。本発明では、任意の他の三量体化構造ドメインに対する需要が回避される。
【0035】
コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、プロリル4−ヒドロキシラーゼを有する系内での融合コンストラクトの発現により熱的に安定な三重らせん構造を形成しうる。さらに、本発明の自己三量体化コラーゲン足場は、融合パートナーの一方の末端ならびに両末端への付着を同時に可能にする。これは、自己三量体化コラーゲン足場を、2つの大きな結合パートナーと同時に相互作用可能な分子(各末端が最大3または6の結合価数を有する)を作成するのに使用することができるという重要な結果を有する。本発明は、三量体抗体が正確に折り畳み、かつ高い溶解度、アビディティー、および安定性を示しうることも示している。
【0036】
本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、それ自体で三重らせん構造の形成を可能にするコラーゲンまたはコラーゲン様ドメインであり、「三重らせん構造」は3つのサブユニットの共有結合または非共有結合された複合体である。本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、足場ドメインの自己三量体化を指示するコラーゲンまたはコラーゲン様ドメインを示す。
【0037】
本明細書で用いられる「コラーゲン足場ドメイン」という用語は、プロコラーゲンのC−プロペプチド、コレクチンまたはフィコリンファミリータンパク質のコイルドコイルネックドメイン、テトラネクチンのC型レクチン様ドメイン、β−ガラクトシダーゼ三量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー突然変異体の3つのコイルドコイルヘリックス構造((非特許文献39))、ClqおよびTNFスーパーファミリータンパク質のClqおよびTNFドメイン、ならびにバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドンドメインを示すものではない。
【0038】
「コラーゲン足場抗体」または「CSA」は、抗体ドメインに融合されるコラーゲン足場ドメインを含む抗体である。CSAおよびそのコード配列は、以下に示す配列番号の任意の組み合わせを含みうる。これらの各組み合わせは詳細に検討されている。例えば、CSAは配列番号1、3、5および9の1つもしくは複数を有しうる。
【0039】
したがって、本発明の一態様は、第1のコラーゲン足場ドメインと第1のコラーゲン足場ドメインの一端にインフレームで融合された第1の抗体ドメインとを有する第1の融合ポリペプチド鎖、第2のコラーゲン足場ドメインを有する第2の融合ポリペプチド鎖、ならびに第3のコラーゲン足場ドメインを有する第3の融合ポリペプチド鎖を含む単離された組換えタンパク質複合体を特徴とする。第1、第2、および第3のコラーゲン足場ドメインは、三重らせんコイルを形成するように整列される。第1のコラーゲン足場ドメインおよび第1の抗体ドメインは、インフレームにかつ同じペプチド鎖上に融合される。
【0040】
融合ポリペプチド鎖は、酵素ドメインまたは蛍光タンパク質の配列を含みうる。蛍光タンパク質の例として、GFPおよびdsRed、ならびにそれらの変異体が挙げられる。酵素ドメインの例として、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびβ−ラクタマーゼのドメインが挙げられる。
【0041】
融合ポリペプチド鎖は、本発明の融合タンパク質の検出および精製を目的とするアフィニティータグの配列を含むんでも含まなくてよい。アフィニティータグの例として、ポリヒスチジン−タグ、myc−タグ、Strep−タグ、FLAG、E−タグ、ヘマグルチン(hemagglutin)タグ、T7、S−タグ、HSV、VSV−G、抗−Xpress、およびVS−タグが挙げられる。
【0042】
「抗体ドメイン」は、免疫グロブリンの1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)を含む。したがって、抗体ドメインはVHドメインおよびFabなどの抗体の抗原結合部分を含みうる。一実施形態では、第1の抗体ドメインは、例えばCluster Designation 3(CD3)、表皮成長因子受容体(EGFR)、HER2/neuまたは腫瘍壊死因子−α(TNF−α)に特異的な抗原結合断片または一本鎖抗体の配列を有する。第1のポリペプチド鎖は、第1の足場ドメインの他端にインフレームで融合される第2の抗体ドメインをさらに有しうる。
【0043】
一実施形態では、第2の融合ポリペプチド鎖は第2の抗体ドメインを有する。好ましい実施形態では、第1および第2の抗体ドメインは互いに同一である。第1および第2の抗体結合ドメインは、同一の結合パートナーまたは2つの異なる結合パートナーに結合しうる。例えば、第1の抗体ドメインおよび第2の抗体ドメインは、CD3およびEGFRにそれぞれ特異的に結合する第1の一本鎖抗体および第2の一本鎖抗体の配列を有しうる。一実施形態では、第1および第2の融合ポリペプチドはいずれも第1および第2の抗体結合ドメインを有する。
【0044】
第2の融合ポリペプチド鎖は、第2の足場ドメインの一端にインフレームで融合された第3の抗体ドメイン、第2の足場ドメインの他端にインフレームで融合された第4の抗体ドメイン、または2つの末端にインフレームで融合された両ドメインを有しうる。同様に、第3の融合ポリペプチド鎖は、第3の足場ドメインの一端にインフレームで融合された第5の抗体ドメイン、第3の足場ドメインの他端にインフレームで融合された第6の抗体ドメイン、または双方を有しうる。6つのすべての抗体ドメインは互いに同一であるかまたは異なりうる。したがって、それらは1、2、3、4、5、または6つの結合パートナーに結合しうる。換言すれば、タンパク質複合体は一価、二価、三価、四価、五価、または六価でありうる。
【0045】
三重らせんコイルを形成するための第1、第2、および第3の足場ドメインにおいては、3つの足場ドメインの各々は、コラーゲンまたはコラーゲン様ドメインとして知られる1つもしくは複数の三重らせんリピートを有し、各リピートは以下の式(G−X−Y)n(式中、GはGly残基であり、XおよびYは任意のアミノ酸残基、および好ましくはアミノ酸プロリンまたはヒドロキシプロリンであり、かつnは5もしくはそれより大きい)の配列を有する。本明細書中で参照される「リピート」は、2つ以上の連続的なG−X−Y配列を示す。
【0046】
足場ドメインは完全な反復G−X−Yトリプレットを含む可能性があり、それは短い欠陥によって中断され、その場合、Glyの第1の位置またはY残基の第3の位置が欠けており、それは多数の天然コラーゲンおよびコラーゲン様ドメインを有するタンパク質にて見出される。例えば、本発明の足場ドメインのヒトタイプXXIミニコラーゲンは、コラーゲンドメイン内にGFおよびKEという2つの欠陥を有する。
【0047】
特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸である)を含むコラーゲン足場ドメインである。特定の実施形態では、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oである。特定の実施形態では、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oである(式中、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)。コラーゲン足場ドメインは自己三量体化を指示する。
【0048】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは10個のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、35、40、45、または50個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、コラーゲン足場ドメインは150、125、100、90、80、70、60、50、または40個未満のアミノ酸長である。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは本質的に10〜30個のG−X−Yリピートからなり、それらは自己三量体化を引き起こす。
【0049】
一実施形態では、1/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、1/2を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、2/3を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、3/4を超えるG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、すべてのG−X−YリピートはG−P−PまたはG−P−Oである。一実施形態では、足場ドメインは配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む。一実施形態では、足場ドメインは配列(G−P−P/O)10(式中、P/OはY位置がPまたはOであることを示す)を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも10個のG−X−Yリピートを含み、ここでY残基のうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はヒドロキシプロリンである。コラーゲン足場ドメインは自己三量体化を指示する。
【0051】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個のG−P−Oリピートおよび抗体ドメインを含み、ここで3つのポリペプチドのコラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは6または7個のG−P−Oリピートを含む。G−P−Oリピートは連続的であってもまたは間隔を空けてもよい。例えば、G−P−Pリピートは、1、2、3、4、または5個のGXYリピートで分離され、3、4、または5個のG−P−Oリピートを含む2つのインフレームのアミノ酸配列として間隔を空けてもよい。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは(G−P−O)3GXY(GPO)4を含む。
【0052】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、非線維性FACIT(三重らせんが中断された状態の線維結合型コラーゲン)コラーゲンのコラーゲン(COL1)ドメインである。好ましくは、非線維性FACITのCOL1ドメインを含む三量体抗体はFACITの非コラーゲン(NC1)ドメインを有さない。好ましい実施形態では、COL1ドメインはタイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来する。好ましい実施形態では、三量体抗体は配列番号7を含む。
【0053】
一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来する完全なCOL1ドメインと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。一実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインのG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。
【0054】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプIX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXIまたはXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインの10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または30個のG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。特に好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインは、タイプXXIIコラーゲンに由来するCOL1ドメインの10個のG−X−Yリピートと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。
【0055】
好ましい実施形態では、コラーゲン足場ドメインのG−X−Y配列は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個のヒドロキシプロリンをY位置に含む。
【0056】
同一性の割合(%)は、例えばDevereuxらにより記載され(非特許文献40)、かつユニバーシティ・オブ・ウィスコンシン・ジェネティクス・コンピューター・グループ(University of Wisconsin Genetics Computer Group)(UWGCG)より入手できるGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することにより判定可能である。GAPプログラムでは、NeedlemanおよびWunschのアラインメント方法(非特許文献41)であってSmithおよびWatermanによって修正されたもの(非特許文献42)が利用される。GAPプログラムにおける好ましいデフォルトパラメータは、(1)非特許文献43に記載される、ヌクレオチドについての単一(unary)比較マトリックス(同一に対して1および非同一に対して0の値を有する)およびグリブスコフ(Gribskov)およびブルゲス(Burgess)の加重比較マトリックス、(非特許文献44);(2)各ギャップにおける3.0のペナルティおよび各ギャップ内の各シンボルにおける追加の0.10のペナルティ;ならびに(3)エンドギャップにおいてペナルティなしを含む。
【0057】
一実施形態では、上記の第1、第2、および第3の融合ポリペプチドは実質的に同一であり、互いに少なくとも75%(例えば、75%〜100%の任意の数を含む)の配列同一性を有する。3つの同一の融合ポリペプチドによって形成された複合体はホモ三量体である。3つの融合ポリペプチドは機能的等価物でありうる。「機能的等価物」は、共通のポリペプチドのポリペプチド誘導体、例えば1つもしくは複数の点突然変異、挿入、欠失、切断を有するタンパク質、融合タンパク質、またはそれらの組み合わせを示し、実質的に三重らせんコイルに対する形成能や、リガンドへの結合など、異種ドメインの活性を保持するものである。
【0058】
異種のポリペプチド、核酸、または遺伝子は、自然に会合することのない別のポリペプチド、核酸、または遺伝子に関連したポリペプチド、核酸、または遺伝子である。2つの融合ドメインまたは配列は、もしそれらが天然タンパク質または核酸内で互いに隣接しない場合、互いに異種である。
【0059】
本発明は、(i)三重らせんコイルを形成するためのコラーゲン足場ドメインと、(ii)足場ドメインの一端にインフレームで融合された第1の異種ドメインまたは足場ドメインの他端にインフレームで融合された第2の異種ドメインと、を有する単離された組換え融合ポリペプチド(例えば、上記の3つの融合ポリペプチドの各々)も含む。異種ドメインは、上記の抗体ドメインの1つを含みうるとともに、ファージディスプレイスクリーニングなどの様々な当該技術分野で認識された方法によって取得されうる。
【0060】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質複合体は、天然に関連した分子を実質的に含有さないポリペプチドまたはタンパク質複合体を示す、すなわちそれは乾燥重量に対して少なくとも75%(すなわち75%〜100%の任意の数を含む)の純度である。純度は、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析といった任意の適切な標準的方法により測定可能である。本発明の単離されたポリペプチドまたはタンパク質複合体は、天然ソースから精製され、組換えDNA技術によって生成可能である。
【0061】
好ましくは、三量体化して三量体抗体を形成する3つのポリペプチドは隣接していない。別の実施形態では、三量体化して三量体抗体を形成する3つのポリペプチドは隣接している、すなわち単一の翻訳産物として翻訳される。この実施形態では、3つのポリペプチドは2つ以上の柔軟なヒンジ領域によって連結されうる。
【0062】
本発明は、直前に記載の融合ポリペプチドをコードする配列または同配列の相補体を有する単離核酸も包含する。核酸は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、あるいはDNAまたはRNA類似体を示す。DNAまたはRNA類似体は、ヌクレオチド類似体から合成可能である。核酸分子は一本鎖または二本鎖でありうるが、好ましくは二本鎖DNAである。「単離核酸」は、構造が任意の天然核酸の構造または天然ゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない核酸である。したがって同用語は、例えば、(a)天然ゲノムDNA分子のある部分の配列を有するが、それが天然に生じる生物のゲノム内の分子のその部分に隣接する両コード配列によって隣接されないDNA、(b)得られる分子が任意の天然ベクターまたはゲノムDNAと同一でないように原核生物または真核生物のベクター内またはゲノムDNA内に取り込まれる核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、または制限断片などの分離分子、および(d)雑種遺伝子すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列を網羅している。上記の核酸を用いることで本発明のポリペプチドを発現可能である。この目的のため、核酸を適切な調節配列に作動可能に連結することで、発現ベクターの生成が可能である。
【0063】
ベクターは、それが連結されている別の核酸を輸送可能である核酸分子を示す。ベクターは、自動複製または宿主DNAへの統合における能力を有しうる。ベクターの例として、プラスミド、コスミド、またはウイルスベクターが挙げられる。本発明のベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適する形態をなす核酸を含む。好ましくは、ベクターは、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結される1つもしくは複数の調節配列を含む。「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節因子(例えばポリアデニル化シグナル)を含む。調節配列は、ヌクレオチド配列、ならびに組織特異的な調節および/または誘導配列の構成的発現を指示するものである。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要素に依存しうる。発現ベクターを宿主細胞に導入することで、本発明のポリペプチドの生成が可能である。本発明の範囲内には、上記の核酸を有する宿主細胞も含まれる。例として、大腸菌細胞、昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞またはバキュロウイルスに感染された昆虫細胞を使用)、酵母細胞、または哺乳類細胞(例えば、マウス骨髄腫NS0細胞)が挙げられる。例えば、非特許文献45を参照のこと。
【0064】
本発明の融合ポリペプチドの生成を目的に、培地内で宿主細胞を本発明の核酸によってコードされたポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養し、かつ培養された細胞または細胞の培地からポリペプチドを精製することができる。あるいは、本発明の核酸に対し、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写および翻訳を行うことが可能である。
【0065】
本発明のタンパク質複合体の生成を目的に、培地内で上記の第1、第2、および第3の融合ポリペプチドを各々コードする第1、第2、および第3の核酸を有する宿主細胞を3種の核酸によってコードされたポリペプチドの発現および発現されたポリペプチドの間の三重らせんコイルの形成を可能にする条件下で培養し、かつ培養された細胞または細胞の培地からタンパク質複合体を精製することができる。好ましくは、宿主細胞はプロリン残基をヒドロキシル化する酵素活性を有する真核細胞である。
【0066】
本発明の1つもしくは複数の実施形態の詳細が添付の図面および下記に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点が、明細書および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0067】
本発明の可溶性三量体抗体は、従来の抗体に勝る利点を有する。一方では、6つのうちの2つ以上の抗体ドメインが互いに同一である場合、タンパク質複合体は従来の抗体と比較して1つの結合パートナー(例えば抗原)に特異的である2〜6つの抗体ドメインを有する可能性があり、それが有するかかるドメインは2つだけである。換言すれば、抗原に対して二価にすぎない従来の抗体と異なり、タンパク質複合体は二価、三価、四価、五価、または六価でありうる。結果として、それを従来の抗体よりも高い親和性を有するように作製可能である。より高い親和性故に、望ましい目標、例えば治療効果を達成することによって治療コストを低減しかつ副作用(例えば望ましくない免疫応答)を最小にするのに、従来の抗体の場合と比較し、必要とされるタンパク質複合体はより少なくかつインキュベーション時間はより短い。
【0068】
他方では、6つのうちの2つ以上の抗体ドメインが互いに異なる場合、本発明のタンパク質複合体は2〜6つの異なる結合パートナーに特異的である2〜6つの抗体ドメインを有しうる。それは異なる特異性の多重結合パートナー部位を1つのユニットに統合し、多重結合パートナーを結集させる能力を有し、それ故にナノメーターレベルでの治療、組織再構築、および活性タンパク質機構(例えば多重サブユニット酵素)の構築において望ましい用途を有する。
【0069】
ヒトにおけるインビボでの使用においては、本発明の三量体抗体は、好ましくはヒトに由来する。例えば、それはヒトに由来するコラーゲン足場ドメインにインフレームで融合されるヒト化一本鎖抗体配列を含みうる。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質が血中でかなり安定であることから、足場ドメインの融合タンパク質も同様に血中での構造的完全性を保持する必要がある。
【0070】
配列Gly−Pro−Hypは概ね三重らせん構造の形成および安定化に寄与し、かつGly−Pro−Hypトリペプチドリピートは高度に安定な三重らせんに自己組織化する。それ故、ミニコラーゲンXXIのコラーゲンドメインは、本明細書中に記載のCSAにおける足場鋳型として熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10に置換され、それらが十分なP4H活性を有する哺乳類系内で発現されることで安定な三重らせん構造の導入が促進された。実際、erb_scFv−ColとOKT3_scFv−Colの双方は三量体構造に構築され、かつerb_scFv−Colは、おそらくは2つの三量体内で2つのC末端のシステイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介して六量体にさらにオリゴマー化されうる。還元された三量体構造がerb_scFv−Colの六量体形態で一般に見出される濃度よりも高い濃度でより高次の構造に組織化しないことから、erb_scFv−Colの三量体から六量体へのオリゴマー化は細胞内プロセスである。
【0071】
マウス骨髄腫NS0細胞は、組換えコラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質の生成にとって良好な発現系である。(Gly−Pro−Pro)10のコラーゲンGXYトリプレット配列のY位置におけるプロリン残基の総数の約61%が組換えerb_scFv−Col内でヒドロキシル化される。したがって、少なくとも6個のGly−Pro−Proリピートがこの系内でヒドロキシル化される。ウエスタンブロット分析による試験によるとCSAの単量体形態が培地内にほとんど存在しなかったことから、プロリルヒドロキシル化された(Gly−Pro−Pro)10モチーフがCSA分子の三量体構築に対して寄与することは顕著であった。最大45℃の温度でCSAの精製試料中に存在する2Mの尿素は、図6Bおよび図14Bにて示される融解した単量体のレベルから判定すると、2% SDSローディング緩衝液の添加後、CSAの三量体形態を解離させるほど十分に強力ではなかった。様々なerb抗体形式がヒト血清中、37℃で最大7日間インキュベートされた血清安定性アッセイでは、erb_scFv−Colに対してELISAにて用いられた抗体濃度は、二価erb_scFv−Fvおよび一価erb_scFv対応物の各々についてのサブミクロモル範囲内およびミクロモル範囲内ではなくナノモル範囲内であった。したがって、CSAは生理的条件下でその多価の標的との結合形式を保持しうる。
【0072】
CSAの熱的に安定な三量体構造は、将来のインビボ用途に対する多目的の多量体化する系における要件を満たす。コラーゲンドメインを有する多数のコラーゲン様タンパク質がヒト血清中に存在し、感染性生物からの保護における先天性免疫系としての機能を果たす。これらは、補体タンパク質Clq、コレクチンファミリータンパク質−マンノース結合レクチン(MBL)、フィコリンならびにサーファクタントプロテインAおよびD(SP−AおよびSP−D)を含む。これらの「防御コラーゲン」分子内で共通の構造的特徴は、それらすべてがC末端に標的との結合ドメインを有する多重三量体タンパク質ユニット内に存在するという点である。これら多重三量体構造を形成するための駆動力は、線維性コラーゲンの場合に類似している。3つのポリペプチド鎖はまず、標的との結合ドメインに隣接するN末端であるそれらのコイルドコイルネックドメインを用いて三量体化され、次いでコラーゲン様ドメインの三重らせん状の折り畳みがC末端からN末端にかけてジッパー様に進行し、その後に最終的にそれらのN末端のシステイン残基を用いて三量体分子の重層または鎖間ジスルフィド架橋が生じた(非特許文献20;非特許文献21;非特許文献23;非特許文献24)。その結果、多量体化はこれらの防御コラーゲン分子の結合ドメインの機能的親和性を有意に増大させる。
【0073】
標的との結合アビディティーの影響は、様々なerbおよびOKT3抗体種が表面プラズモン共鳴(SPR)および競合フローサイトメトリー分析を用いて比較される場合に明らかであった。結合データは、CSA分子における価数の増加がインビボでの標的化の程度および特異性を改善する結果、標的保持が促進されうることを示した。T細胞活性化を免疫抑制するための三価OKT3 CSAの有効用量が混合されたリンパ球反応において試験された親OKT3 IgGの有効用量よりも少ない。
【0074】
OKT3_scFv−Colは、ヒトPBMC内でT細胞の増殖またはIL−2の産生を誘発することはなく、一過性のT細胞活性化の結果としてのサイトカインの放出によって誘発されるOKT3の初回用量症候群の効果を顕著に低下させる。この新たな抗−CD3形式は、治療における用量、毒性、およびコストが低下した強力な免疫抑制剤を提供しうる。CDR残基をマウスからヒトへ形質転換することを目的とした構造に基づく設計の有無にかかわらず、CDR−移植によるマウスmAbのヒト化によって結合親和性の低下または喪失がもたらされることが多い(非特許文献46;非特許文献47)。好ましい実施形態では、三量体可溶性抗体はFcドメインを有さない。
【0075】
高親和性結合剤におけるファージディスプレイscFvライブラリースクリーニングを用いた鎖シャッフリングによる親和性成熟は扱いが困難なプロセスであり、現状では結合親和性を改善する結果については不確実である。したがって、多数の治療抗体がヒト化後における標的抗原に対する親和性が低いことによって阻害される場合がある。いくつかの場合では、抗体の特性は一層改良されるにちがいない。抗原−結合パートナーの重合により、標的細胞に極めて接近した特異的な同一のリガンド群への結合に対するそれらの有用性が格段に高まる。機能的親和性を改善するための多価分子を取得することを目的として、異なるアプローチが提案されている。その一部は、免疫グロブリンを有する足場(非特許文献48)または完全に異なるタンパク質のトポロジー(非特許文献49)に基づいて別の結合タンパク質を生成するステップを含む。例えば、プロテインAのFc−結合ドメインと融合されたFv断片(非特許文献50)、四量体複合体を形成するためのコア−ストレプトアビジン(非特許文献51)、または転写因子p53のヒト四量体化ドメイン(非特許文献3)の使用についての報告がなされている。「アンチカリン(anticalins)」(非特許文献52)、「アンキリン(Ankyrin)リピート」(非特許文献53)、「アフィボディ(Affibody)分子」(非特許文献54)、およびテトラネクチンのC−タイプレクチン様ドメイン(Christian et al. 国際公報、特許文献1;非特許文献55)などの非IgGタンパク質足場断片は、最近では標的の結合親和性、熱安定性、および感受性を高めるのに利用されている。しかし、これらの分子の一部は、ヘテロアンティジェネティック(heteroantigenetic)断片であるかまたは血漿の天然成分ではなく、治療適用の可能性を著しく限定しうると思われる免疫応答のリスクに関連している。
【0076】
熱的に安定な多価タンパク質結合剤の形成を目的に三重らせんを形成するコラーゲン様ペプチドの融合足場を用いることで、本明細書においてCSAが治療抗体の機能的親和性および分裂促進性に対する改善を可能にする新たなプラットフォームであることが示された。より重要なことには、CSA内でのscFvとコラーゲン様足場ドメインの融合により、標的に結合する活性または三重らせん構造の三量体構築を危うくすることなく各ドメインの正確な折り畳みがもたらされることが判明している。三重らせんを形成するコラーゲン様ドメインは、融合タンパク質のアプローチで活性タンパク質を三量体化する(さらに防御コラーゲンファミリーの場合と類似する、コラーゲン線維性の重層または三量体分子の鎖間ジスルフィド架橋を介してオリゴマー化する)ことにより既存または新規のタンパク質薬剤に対する足場として使用可能であり、それはタンパク質ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、成長因子、レクチン、酵素および可溶性の受容体断片、またはセレクチンおよびインテグリンなどの接着分子を含む。
【0077】
本発明のタンパク質複合体またはポリペプチドは、組換え技術によって取得可能である。核酸によりコードされるポリペプチドの発現およびポリペプチド間の三重らせんコイルの形成を可能にする条件下で、適切な宿主細胞に複合体のポリペプチドをコードする核酸を導入しかつポリペプチドを発現することができる。三重らせんコイルの足場の形成を促進するため、宿主細胞内でコラーゲンの生合成における鍵酵素であるプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)を共発現することができる。
【0078】
異種タンパク質ドメインは、抗体またはその断片(例えばその抗原結合断片)を含むがこれらに限定されない「結合ドメイン」を有しうる。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子またはその免疫学的活性部分すなわち抗原結合部分を示す。それは少なくとも1つおよび好ましくは2つの重(H)鎖可変領域(VH)、ならびに少なくとも1つおよび好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(VL)を含むタンパク質を示す。したがって、「抗体ドメイン」は、抗体または抗体の抗原結合部分を示し、 VH、VL、またはFabドメイン、一本鎖抗体のFv断片(scFv)、およびVHHドメイン(特許文献2を参照)を含む。
【0079】
VHおよびVL領域は、超可変領域にさらに細分割され、「相補性決定領域」(「CDR」)と称され、「フレームワーク領域」(FR)と称されるより保持された領域とともに散在されうる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(非特許文献56、および非特許文献57を参照、これらは参照により本明細書中に援用)。VHおよびVLの各々は、通常は3つのCDRおよび4つのFRからなり、 アミノ末端からカルボキシ末端にかけてFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。抗体は、重鎖および軽鎖の定常領域をさらに含み、それにより免疫グロブリン重鎖および軽鎖をそれぞれ形成しうる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3よりなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLよりなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを有する。抗体の定常領域は通常、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0080】
本明細書で用いられる「免疫グロブリン」という用語は、実質的に免疫グロブリン遺伝子によってコードされた1つもしくは複数のポリペプチドよりなるタンパク質を示す。認識されたヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパー、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDまたは214のアミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)での可変領域遺伝子およびCOOH末端でのカッパーまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDまたは446のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116のアミノ酸)および上記の他の定常領域遺伝子の1つ、例えば(約330アミノ酸をコードする)ガンマによって同様にコードされる。
【0081】
本明細書で用いられる抗体(または「抗体部分」または「断片」)の「抗原結合断片」という用語は完全長抗体の1つもしくは複数の断片を示し、同抗体はそのリガンドまたは抗原、例えばEGFRまたはCD3ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する能力を保持する。
【0082】
抗体の抗原結合断片の例として、(i)VL、 VH、CL、およびCH1ドメインよりなる一価断片のFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片のF(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインよりなるFd断片、(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインよりなるFv断片、(v)VHドメインよりなるdAb断片(非特許文献58)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)VLまたはVHドメインが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHが別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、VLおよびVH領域が対合して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られ、例えば、(非特許文献59;および非特許文献60を参照)を形成する場合の単一のタンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーによる組換え方法を用いて連結してもよい。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内にも包含される。これらの抗体断片を当業者に既知の従来の技術を用いて取得してもよく、同断片における有用性は無傷抗体の場合と同様にスクリーニングされる。
【0083】
抗体はモノクローナル抗体でありうる。一実施形態では、抗体を、例えばファージディスプレイまたはコンビナトリアルな方法によって組換え産生してもよい。抗体を産生するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアルな方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Ladner et al. 特許文献3;Kang et al. 国際公報、特許文献4;Dower et al. 国際公報25号、特許文献5;Winter et al. 国際公報、特許文献6;Markland et al. 国際公報、特許文献7;Breitling et al. 国際公報、特許文献8;McCafferty et al. 国際公報、特許文献9;Garrard et al. 国際公報、特許文献10;Ladner et al. 国際公報、特許文献11;非特許文献61;非特許文献62;非特許文献63;非特許文献64;非特許文献65;非特許文献66;非特許文献67;非特許文献68;非特許文献69;ならびに非特許文献70を参照、これらすべての内容は参照により本明細書中に援用される)。
【0084】
一実施形態では、抗体は完全ヒト抗体(例えば、遺伝子操作されてヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が産生されているマウス内で作製される抗体)、あるいは非ヒト抗体、例えば齧歯類(マウスまたはラット)、ヤギ、霊長動物(例えばサル)、またはラクダの抗体である。好ましくは、非ヒト抗体は齧歯類抗体(マウスまたはラット抗体)である。齧歯類抗体を産生する方法は当該技術分野で既知である。
【0085】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて産生可能である。目的の抗原で免疫されたこれらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞を用いることで、ヒトタンパク質に由来するエピトープに対して特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマが生成される(例えば、Wood et al. 国際公報、特許文献12、Kucherlapati et al. PCT15公報、特許文献13);Lonberg et al. 国際公報、特許文献14;Kay et al. 国際公報、特許文献15;非特許文献71;非特許文献72;非特許文献73;非特許文献74;非特許文献75;非特許文献76を参照)。
【0086】
抗体は、可変領域またはその一部、例えばCDR領域が非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて生成される場合の抗体であってもよい。キメラ抗体、CDR移植抗体、およびヒト化抗体を用いてもよい。非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて産生される抗体、次いでヒト内での抗原性を低下させるための、例えば可変フレームワークまたは定常領域内での修飾抗体については本発明に含まれる。
【0087】
キメラ抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技術により産生可能である。例えば、マウス(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化することでマウスFcをコードする領域が除去され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子に相当する部分は置換される(Robinson et al, 国際特許公報、特許文献16;Akira, et al,特許文献17;Taniguchi, M.,特許文献18;Morrison et al,特許文献19;Neuberger et al 国際出願、特許文献20;Cabilly et al.特許文献21;Cabilly et al,特許文献22;非特許文献77;非特許文献78;非特許文献79;非特許文献80;非特許文献81;非特許文献82;および非特許文献83)。
【0088】
ヒト化またはCDR移植抗体は、ドナーCDRと置換された(免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の)少なくとも1つもしくは2つであるが一般的には全部で3つのレシピエントCDRを有することになる。抗体は非ヒトCDRの少なくとも一部と置換可能であるか、またはCDRのほんの一部が非ヒトCDRと置換可能である。CDRのヒト化抗体またはその断片の結合にとって必要な多数のCDRを置換することがあくまで必要とされる。好ましくは、ドナーは齧歯類抗体、例えばラットまたはマウス抗体となり、かつレシピエントはヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークとなる。典型的には、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と称され、かつフレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。一実施形態では、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば齧歯類)である。アクセプターフレームワークは天然(例えばヒト)フレームワークまたはコンセンサスフレームワークであるか、あるいはそれに対して約85%もしくはそれより高い、好ましくは90%、95%、99%もしくはそれらより高い割合で同一の配列である。本明細書で用いられる「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリー内で最も頻繁に現れるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を示す(例えば、非特許文献84を参照)。タンパク質のファミリー内でのコンセンサス配列内の各位置は、ファミリー内のその位置で最も頻繁に現れるアミノ酸によって占められる。もし2つのアミノ酸が表れる頻度が等しい場合、コンセンサス配列内にいずれかを含めてもよい。「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列内のフレームワーク領域を示す。
【0089】
抗体を当該技術分野で既知の方法によってヒト化してもよい。ヒト化抗体を、抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域からの対応する配列と置き換えることによって産生してもよい。ヒト化抗体を産生するための一般的方法は、非特許文献85;非特許文献86;ならびにQueen et al.特許文献23、特許文献24および特許文献25(これらすべての内容は参照により本明細書中に援用される)によって提供されている。それらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも一方に由来する免疫グロブリンFv可変領域のすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離するステップと、操作するステップと、発現するステップとを含む。かかる核酸のソースは当業者にとって周知であり、例えば、目的のポリペプチドまたはその断片に対する抗体を産生するハイブリドーマから取得可能である。次いで、ヒト化抗体をコードする組換えDNAまたはその断片を適切な発現ベクターにクローニングしてもよい。
【0090】
特定のアミノ酸が置換、削除、または添加されているヒト化抗体についても足場に融合可能である。好ましいヒト化抗体は、例えば抗原に対する結合を改善するための、フレームワーク領域内にアミノ酸置換基を有する。例えば、ヒト化抗体は、ドナーのフレームワーク残基またはレシピエントのフレームワーク残基以外の別のアミノ酸と同一のフレームワーク残基を有することになる。かかる抗体を産生するため、ヒト化免疫グロブリン鎖の選択された小数のアクセプターのフレームワーク残基を対応するドナーのアミノ酸と置き換え可能である。置換基の好ましい位置は、CDRに隣接するかまたはCDRと相互作用可能なアミノ酸残基を含む。アミノ酸をドナーから選択するための基準は、特許文献23(その内容は参照により本明細書中に援用される)中に記載されている。抗体をヒト化するための他の技術は、Padlan et al.特許文献26中に記載されている。
【0091】
一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはコラーゲンのNC1ドメインを有していない。一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはジスルフィドノットを有していない。一実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドはバクテリオファージT4フィブリチンのフォルドンドメインを有していない。
【0092】
好ましくは、三量体抗体の足場は最小サイズである。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは配列(G−P−P/O)10を含む。一実施形態では、各ポリペプチドは13個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、三量体抗体は11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、35、40、45、または50個未満のG−X−Yリピートを含む。特定の実施形態では、三量体抗体の各ポリペプチドは35、37、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50kD未満の分子量を有する。一実施形態では、三量体可溶性抗体は105、110、115、120、125、130、135、140、145、または150kD未満の分子量を有する。
【0093】
好ましい実施形態では、三量体可溶性抗体は3つのポリペプチドを含み、ここで各ポリペプチドは少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Y残基のうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、3つのポリペプチドのコラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0094】
本発明は、本発明のタンパク質複合体を形成する融合ポリペプチドをコードする核酸も含む。核酸をファージディスプレイライブラリからスクリーニングするか、または上記の適切な抗体または抗体誘導体を発現する細胞系から(例えばRT−PCRにより)単離してもよい。核酸を発現ベクターに機能的にライゲートしてもよい。核酸またはベクターで形質転換された細胞を用い、本発明の融合ポリペプチドまたはタンパク質複合体を生成してもよい。抗体の産生に有用な細胞は、昆虫細胞および哺乳類細胞を含む。これらの細胞は、骨髄腫NS0細胞、CHO細胞、およびリンパ細胞を含むがこれらに限定されない。
【0095】
本発明は、例えば従来の分子技術を用いたコラーゲン足場ドメインを含む核酸と抗体ドメインを含む核酸との連結による三量体可溶性抗体を生成するための方法を包含する。コラーゲン足場ドメインを、抗体ドメインに直接連結するかまたはヒンジ領域をコードするヌクレオチド配列などの追加の配列によって分離してもよい。核酸を、NS0細胞など、ヒドロキシプロリネート化を可能にする細胞系内で発現してもよい。
【0096】
一実施形態では、本発明は、コラーゲン様ドメインをコードする核酸と抗体ドメインをコードする核酸とをインフレームに連結することによって三量体可溶性抗体を生成するための方法を包含する。好ましい実施形態では、コラーゲン様ドメインは10個を超えるG−X−Yリピートを含む。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは10〜30個のG−X−Yリピートを含む(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)。一実施形態では、コラーゲン様ドメインは、リガンドに対する抗体ドメインをコードし、かつG−P−Pリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個をY位置でヒドロキシプロリネート化する、細胞内のコードされたポリペプチドを発現する核酸にインフレームに連結され、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することでリガンドに少なくとも107M−1のアビディティーで特異的に結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0097】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜l010M−1のアビディティーを有する。
【0098】
一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒト表皮成長因子受容体である。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトHER2/neuである。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトCD3である。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトHER2/neuである。一実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドはヒトTNF−αである。
【0099】
足場ドメインタンパク質および足場ドメイン融合タンパク質は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を有するベクター、好ましくは発現ベクターから発現可能である。本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、その連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子を示し、プラスミド、コスミド、またはウイルスベクターを含みうる。ベクターは、自動複製可能でありうるかまたは宿主DNA内に統合されうる。ウイルスベクターは、例えば複製不能レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを含む。原核生物内でのタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質の発現を指示する構成または誘導プロモーターを含有するベクターを有する大腸菌内で行われることが最も多い。
【0100】
融合ベクターでは、多数のアミノ酸がその内部にコードされたタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に添加されうる。かかる融合ベクターは、典型的には、1)組換えタンパク質の発現を高め、2)組換えタンパク質の溶解度を高め、かつ3)親和性精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製にて寄与するという3つの目的に役立つ。タンパク質分解の切断部位が融合部分と組換えタンパク質の接合部に導入されることで、融合タンパク質の精製後、組換えタンパク質の融合部分からの分離が可能になることが多い。かかる酵素およびそれらの同族認識配列は、因子Xa、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。
【0101】
典型的な融合発現ベクターは、pGEX(ファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech Inc.);非特許文献87)、pMAL(ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)、ベバリー(Beverly)、マサチューセッツ州)およびpRIT5(ファルマシア(Pharmacia)、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)を含み、これらはそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる。
【0102】
大腸菌内での組換えタンパク質の発現を最大にすることは、組換えタンパク質をタンパク質分解切断する能力が低下した宿主細菌内でタンパク質を発現することである(非特許文献88)。別の戦略は、各アミノ酸に対する個々のコドンが大腸菌内で優先的に利用されるものであるように核酸の核酸配列を改変して発現ベクターに挿入することである(非特許文献89)。本発明の核酸配列のかかる改変を標準のDNA合成技術によって行ってもよい。
【0103】
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞であってもよい。本発明のタンパク質は、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞、酵母、または哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など(アフリカ緑ザルの腎臓細胞CV−1由来のSV40細胞;非特許文献90)において発現可能である。他の適切な宿主細胞は当業者にとって既知である。
【0104】
ベクターDNAは、従来の形質転換または形質移入技術を介して宿主細胞に導入可能である。本明細書で用いられる「形質転換」および「形質移入」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介形質移入、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための種々の当該技術分野で認識された技術を示すように意図されている。
【0105】
本発明は、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップを含む、リガンドの生物学的活性を阻害するための方法を包含し、三量体可溶性抗体のリガンドへの結合はリガンドの生物学的活性を阻害する。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)のコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0106】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜l010M−1のアビディティーを有する。
【0107】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体に対するリガンドは、ヒト表皮成長因子受容体、ヒトHER2/neu、ヒトCD3、ヒトHER2/neu、またはヒトTNF−αである。
【0108】
本発明のタンパク質複合体は、細胞毒素などの治療部分、治療物質、または放射性イオンに抱合されうる。細胞毒素または細胞毒性物質は、細胞に対して有害な任意の作用物質を含む。例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド(maytansinoids)、例えばメイタンシノール(maytansinol)(特許文献27を参照)、CC−1065(特許文献28、特許文献29、および特許文献30を参照)およびその類似体またはホモログが挙げられる。治療物質は、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、CC−1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(旧ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン、(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソールおよびメイタンシノイド)を含むがこれらに限定されない。
【0109】
本発明の実施形態にて検討された放射性イオンは、111インジウム、113Indium、99レニウム、105レニウム、101レニウム、99Mテクネチウム、121Mテルリウム、122Mテルリウム、125Mテルリウム、165ツリウム、167ツリウム、168ツリウム、123ヨード、125ヨード、126ヨード、131ヨード、133ヨード、81クリプトン、33キセノン、90イットリウム、213ビスマス、77臭素、18フッ素、95ルテニウム、97ルテニウム、103ルテニウム、105ルテニウム、107M水銀、203水銀、67ガリウム、68ガリウム、35硫黄、および14炭素を含むがこれらに限定されない。
【0110】
所定の生物学的応答を改良するため、抱合体の宿主への投与を通じて抱合体を用いてもよい。薬剤部分は、古典的な化学治療物質に限定されるものとして解釈されるべきではない。例えば、薬剤部分は所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。かかるタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエクソトキシン、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子などのタンパク質;あるいは、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子などの生物学的応答修飾因子を含みうる。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、足場ドメインの融合タンパク質は高分子に抱合されうる。かかる高分子は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリオキシエチル化ポリオールを含むがこれらに限定されない。
【0112】
上記のタンパク質複合体および抱合体は、異種結合ドメインの特異性に基づき、癌、炎症性疾患、代謝疾患、線維性疾患、および心血管疾患を含む様々な障害を治療するために使用可能である。したがって、本発明は、例えば治療を必要とする被験者に有効量の本発明のタンパク質複合体を投与することで疾患を治療するといったかかる疾患を治療する方法を特徴とする。治療対象の被験者は、疾患に特徴的な症状を有するか、または同症状にかかるおそれがある者として同定可能である。この方法を単独または他の薬剤または治療と併せて実施してもよい。
【0113】
本発明のタンパク質複合体の多重特異的な特徴故に、通常互いに関連しない架橋分子または細胞に対してそれを使用することができる。この特徴は、細胞に基づく治療にとって特に有用である。一例では、タンパク質複合体内の1つの異種ドメインが細胞毒性細胞(例えば細胞毒性T細胞)を、細胞毒性細胞上のエフェクター抗原に特異的に結合することによって活性化可能である一方、別の異種ドメインが破壊対象の病原体細胞上または悪性細胞上の標的抗原に特異的に結合する。このようにして、タンパク質複合体は病原体または悪性細胞によって誘発される障害を治療可能である。
【0114】
「治療」という用語は、疾患、疾患の症状、疾患に伴う病状、または疾患への素因に対する治癒、緩和、軽減、修復、予防、または改善を目的とした、被験者への組成物の投与として定義される。「有効量」は、治療を受ける被験者において例えば上記のような医学的に望ましい結果を提供可能な組成物の量である。
【0115】
細胞毒性T細胞の活性化が、本発明のタンパク質複合体による細胞毒性T細胞の表面上のエフェクター抗原としてのCD3抗原の結合を介して生じうる。他のリンパ球様細胞に関連したエフェクター抗原は、ヒトCD16抗原、NKG2D抗原、NKp46抗原、CD2抗原、CD28抗原、CD25抗原、CD64抗原、およびCD89抗原を含む。これらのエフェクター抗原への結合の結果、単球、好中球、および樹状細胞などのエフェクター細胞の活性化がもたらされる。次いで、これらの活性化細胞は標的細胞上に細胞毒性効果またはアポトーシス効果を発揮する。
【0116】
標的抗原は、疾患状態に関連した標的細胞上に固有に発現されるが、健常状態では発現されないか、低レベルで発現されるか、または取得不能な抗原である。悪性細胞に関連したかかる標的抗原の例として、EpCAM、CCR5、CD19、HER2/neu、HER3、HER4、EGFR、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5.sub.AC、MUC5.sub.B、MUC7、β−hCG、ルイス−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3,9−O−アセチル−GD3、GM2、グロボ(Globo)H、フコシルGM1、ポリSA、GD2、カルボアンヒドラーゼ(Carboanhydrase)IX(MN/CA IX)、CD44v6、ソニックヘッジホッグ(Shh)、Wue−1、形質細胞抗原、(膜結合性)IgE、メラノーマコンドロイチンサルフェートプロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−α前駆体、STEAP、メソテリン(mesothelin)、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6、デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカーおよびミュラー管抑制物質(MIS)受容体タイプII、sTn(シリル化Tn抗原;TAG−72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原)、エンドシアリン(endosialin)、EGFRvIII、LG、SASならびにCD63が挙げられる。
【0117】
1つのインビボアプローチでは、治療組成物(例えば本発明のタンパク質複合体を含有する組成物)が被験者に投与される。一般に、複合体は医薬的に許容できる担体(例えば生理食塩水)中に懸濁され、かつ経口的にまたは静脈内注入によって投与されるか、あるいは皮下、筋肉内、髄腔内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻内、胃内、気管内、または肺内に注射または移植される。
【0118】
必要用量は、投与経路の選択;剤形の性質;被験者の疾患の性質;被験者の身長、体重、表面積、年齢、および性別;投与されている他の薬剤;ならびに主治医の判断に依存する。適切な用量は0.01〜100.0mg/kgの範囲内である。適切な用量は、0.01〜100.0mg/kgまたはより詳細には0.1〜100、0.1〜75、0.1〜50、0.1〜25、0.1〜10、0.5〜100、0.5〜75、0.5〜50、0.5〜25、0.5〜10、1〜100、1〜75、1〜50、または1〜25mg/kgの範囲内である。好ましい用量は、1〜10、10〜100、10〜75、10〜50、10〜25、25〜50、50〜75、25〜100、25〜50、50〜100、または75〜100mg/kgを含む。最も好ましくは、用量は1〜2、3〜4、5〜6、7〜8、または9〜10mg/kgの範囲であってもよい。本発明の治療組成物を、約1〜10週、好ましくは2〜8週、より好ましくは約3〜7週、およびさらにより好ましくは約4、5、もしくは6週にわたり毎日、週に1回、2回、もしくは3回またはそれより頻回に投与してもよい。必要用量におけるばらつきは、使用可能な種々の組成物および投与の様々な経路の異なる効率を考慮して想定されるべきである。例えば、経口投与であれば静脈内注射による投与よりも高用量が必要であると想定されることになる。これらの用量レベルにおけるばらつきは、当該技術分野で十分に理解されているように最適化のための標準の経験的なルーチンを用いて調節してもよい。適切な送達媒体(例えば高分子微粒子または移植可能なデバイス)中での組成物のカプセル化により、特に経口送達において送達の効率が増大しうる。
【0119】
医薬的に許容できる担体は、溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤を含む。具体的には、これらの作用物質は、生理食塩溶液、固定オイル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調節するための作用物質を含んでもよい。医薬組成物pHを、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節してもよい。
【0120】
本発明の範囲内に、医薬的に許容できる担体および有効量の本発明のタンパク質複合体を含有する医薬組成物も含まれる。医薬組成物の使用により、上掲の障害を治療してもよい。医薬的に許容できる担体は、溶剤、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤を含む。医薬組成物を、従来の方法を用いて異なる投与経路における製剤形態に調合してもよい。
【0121】
本発明の組成物の有効性をインビトロとインビボの双方で評価してもよい。インビボ研究においては、組成物を動物(例えばマウスモデル)に注射してもよく、そこでその治療効果が得られる。その結果に基づき、適切な用量範囲および投与経路の判定が可能である。
【0122】
本明細書で用いられる「特異的な」および「特異的に結合する」という用語は、抗体または抗体の断片がそのリガンドに対して少なくとも10−6Mのアビディティーを有することを意味する。
【0123】
本発明の実施形態では、第1の足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体の断片との融合物であり、この場合の断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0124】
本発明の別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体の断片との融合物であり、この場合の断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0125】
本発明のさらに別の実施形態では、第1の足場ドメインの融合タンパク質は、(GPP)10と、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片およびCD3に特異的な抗体または融合タンパク質との二重特異性融合タンパク質である。EGFRに特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端に融合され、かつCD3に特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のC末端に融合されうる。この実施形態は、二重特異性コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質763CSAOKT3を含むがこれに限定されない。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端に融合され、かつEGFRに特異的な抗体または抗体の断片は(GPP)10のC末端に融合されうる。
【0126】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメイン融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2のコラーゲン足場ドメイン融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0127】
本発明の実施形態では、抗−EGFR scFvコラーゲン足場ドメインのタンパク質は763_scFv−Colである。
【0128】
本発明の実施形態では、抗−CD3 scFvコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質はOKT3_scFv−Colである。
【0129】
本発明の別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体との融合物である。本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体の断片との融合物であり、ここで断片はscFv、 VL、 VH、またはFab断片であってもよいがこれらに限定されない。
【0130】
本発明の実施形態では、抗−TNF−α scFvコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は357_scFv−Colである。
【0131】
本発明のさらに別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、TNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片とCD3に特異的な抗体または融合タンパク質の双方を有する(GPP)10の二重特異性融合タンパク質である。TNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、かつCD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、かつTNF−α、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。
【0132】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とTNF−αに特異的な抗体または抗体の断片の間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2の足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片の間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0133】
本発明のさらに別の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は、EGFRに特異的な抗体および抗体の断片とCD3に特異的な抗体または融合タンパク質の双方を有する(GPP)10の二重特異性融合タンパク質である。EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。本発明の別の実施形態では、CD3に特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のN末端に融合し、EGFRに特異的な抗体または抗体の断片を(GPP)10のC末端に融合してもよい。
【0134】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とEGFRに特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であり、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。第2のコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質は(GPP)10とCD3に特異的な抗体または抗体の断片との間の融合物であってもよく、ここで抗体または抗体の断片は(GPP)10のN末端またはC末端に融合される。
【0135】
本発明のさらなる実施形態では、コラーゲン足場ドメインの融合タンパク質はマーカータンパク質に対する融合物を含んでもよい。マーカータンパク質は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、および増強された緑色蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されない。これらの実施形態は、HER2/neuに特異的なコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質h4D5CSA−Lucを含むがこれらに限定されない。
【0136】
マーカータンパク質を含むコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質を診断および分子イメージングにおいて用いてもよい。本発明の実施形態では、マーカータンパク質または放射性イオンを含むコラーゲン足場ドメインの融合タンパク質あるいは他の融合部分を、足場ドメインの融合タンパク質および特異的分子のイメージングに必要な他の試薬を含むキット内にパッケージ化してもよい。これらの試薬は、生物学的試料を調製するための試薬およびマーカータンパク質を可視化するための試薬を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0137】
本発明は、リガンドを検出するための方法であって、3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとともにインキュベートするステップと、三量体可溶性抗体のリガンドへの結合を検出するステップとを含む、方法を包含する。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−P−Oであり、PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン様ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン様ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。好ましい実施形態では、各ポリペプチドは、少なくとも10個のG−X−Yリピート(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、G−X−Yリピートのうちの少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個はG−X−Oであり、Oはヒドロキシプロリンである)を含むコラーゲン足場ドメインと抗体ドメインとを含み、ここで3つのポリペプチドのヒドロキシプロリネート化コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用することで少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに結合する三量体可溶性抗体が形成される。
【0138】
一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して107M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して108M−1を超えるアビディティーを有する。一実施形態では、可溶性三量体抗体はそのリガンドに対して109M−1を超えるアビディティーを有する。特定の実施形態では、可溶性三量体抗体は、そのリガンドに対して107M−1〜1010M−1、107M−1〜109M−1、107M−1〜108M−1、108M−1〜1010M−1、108M−1〜109M−1、および109M−1〜1010M−1のアビディティーを有する。
【0139】
特定の実施形態では、三量体可溶性抗体はルシフェラーゼポリペプチドを含む。
【0140】
本発明の実施形態は、第1のコラーゲン足場ドメインおよび第1の足場ドメインの一端に融合された第1の異種ドメインを有する第1の融合ポリペプチド鎖、第2のコラーゲン足場ドメインを有する第2の融合ポリペプチド鎖、および第3の足場ドメインを有する第3の融合ポリペプチド鎖を含む組換えタンパク質複合体を含み、ここで第1、第2、および第3の足場ドメインを整列することで三重らせんコイルが形成される。
【0141】
さらなる実施形態では、本発明は、第1の融合ポリペプチド鎖が第1のコラーゲン足場ドメインの他端に融合される第2の異種ドメインをさらに有する場合のタンパク質複合体を提供する。本発明の他の実施形態は、第1の異種ドメインがCD3に特異的に結合する第1の一本鎖抗体の配列を有するかまたは第2の異種ドメインがEGFRに特異的に結合する第2の一本鎖抗体の配列を有する場合のタンパク質複合体を含んだ。
【0142】
本発明のさらなる実施形態では、タンパク質複合体は、第2の足場ドメインの一端に融合される第3の異種ドメインを含む第2の融合ポリペプチド鎖および第2の足場ドメインの他端に融合される第4の異種ドメインを含む第2の融合ポリペプチド鎖を含み、第3の融合ポリペプチド鎖は第3の足場ドメインの一端に融合される第5の異種ドメインおよび第3の足場ドメインの他端に融合される第6の異種ドメインを有し、ここで各リピートは(GPP)10の配列を有する。
【0143】
下記の具体例は、あくまで図示目的であって開示の残りの部分がどのような内容であっても決して限定するものではないとして解釈されるべきである。当業者は、さらなる検討を行うことなく本明細書中の記載に基づいて本発明をその最大限の範囲で利用できると考えられる。本明細書で引用されるすべての発行物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0144】
実施例1
抗−EGFR抗体ドメインに対するファージライブラリの選択
表皮成長因子受容体細胞外ドメイン(EGFR−ECD)に結合する可変断片(scFv)を含有するerbファージミドを、ヒトシングルフォールドscFvファージディスプレイライブラリ(トムリンソン I+J(Tomlinson I+J);親切にもI.M.トムリンソン(I.M.Tomlinson)およびG.ウインター(G.Winter)、MRC ラボラトリー・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Laboratory of Molecular Biology)、ケンブリッジ(Cambridge)、英国から提供を受けた)のスクリーニングにより単離した。選択を、10μgのEGF受容体(EGFR−ECD;リサーチ・ダイアグノスティクス(Research Diagnostics,Inc.))の精製された組換え細胞外ドメインでコートされたイムノチューブ(immunotubes)(マキシソープ(Maxisorp);ヌンク(Nunc)、ロスキレ(Roskilde)、デンマーク)を用いて行った。溶出されたファージのブロッキング、パニング、洗浄、溶出、および再増幅を製造業者のプロトコルに従って行った。多数のクローンを同定した。ウエスタンブロッティングおよびELISAによる確認後、1つのクローンerb_scFvを追加の実験用に選択した。erb_scFvをコードするcDNAを取得し、標準的方法により発現ベクターにライゲートした。以下にerb_scFvのポリペプチド配列(配列番号l)およびそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号2)を挙げる。
【0145】
【化1】
【0146】
次いで、発現ベクターを昆虫細胞系ショウジョウバエ(Drosophila)S2内で発現させた。抗−EGFR erb_scFvを精製し、それに対してウエスタンブロット分析およびELISAを行い、EGFRに対するその特異性を確認した。
【0147】
実施例2
CD3抗体ドメイン
RT−PCRを実施し、抗−CD3モノクローナル抗体OKT3の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をコードするハイブリドーマ細胞系cDNAを取得した。次いで、その2つのcDNAをライゲートし、OKT3のVH−VLの融合タンパク質をコードする融合配列を生成した。以下に、この融合タンパク質のポリペプチド配列(配列番号3)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号4)を挙げる。
【0148】
【化2】
【0149】
実施例3
EGFR抗体ドメイン
同じ手順を実施し、抗−EGFRモノクローナル抗体528のVHおよびVLをコードするcDNAおよび抗−EGFR 528のVH−VLの融合タンパク質をコードする融合配列を取得した。528モノクローナル抗体は、細胞膜、例えばヒト表皮癌A431細胞上のEGFRに結合する。この528一本鎖抗体のポリペプチド配列(配列番号5)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号6)を以下に挙げる。
【0150】
【化3】
【0151】
実施例4
抗体ドメインのヒトミニコラーゲンXXIへの融合
上記の抗−EGFR erb、OKT3 VH−VL、および抗−EGFR 528VH−VLをコードするcDNAを、それぞれヒトIgGのヒンジ領域、5’末端のEPKSCDKTHTCPPCPRSIP、および3’末端のヒスチジンタグ配列を有するヒトミニコラーゲンXXI cDNAにインフレームで融合した。下記にヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドの足場ドメインおよびcDNA配列(各々、配列番号7および8)が示される。
【0152】
【化4】
【0153】
アミノ末端のOKT3 IgGに由来する抗−CD3 scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチド、その後にT4フィブリチンフォルドンドメインおよびヒスチジンタグを有するOKT3mC21fdを作成した。27個のアミノ酸NH2−GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL−COOHからなり、疎水性の内部を有するβ−プロペラ様構造を形成するバクテリオファージT4のフィブリチンフォルドンドメインは、三量体化およびコラーゲンドメインの正確な折りたたみを駆動するのに十分である(非特許文献16)。
【0154】
OKT3mC21とOKT3mC21fdの双方に対して得られた発現ベクターを、安定的に発現されたヒトプロリル4−ヒドロキシラーゼ遺伝子をそれぞれ有するショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞内に形質移入した。細胞をブラスティシジンの存在下で培養し、ブラスティシジン耐性細胞を選択した。細胞培養上清を回収し、ウエスタンブロッティングにより、α(XXI)コラーゲンのC末端NC1ドメインを認識するモノクローナル抗体3E2で分析した。図2に示されるように、OKT3mC21とOKT3mC21fdの双方が非還元条件下で三量体構造(Tとして示される)を形成することが見出された。鎖間ジスルフィド結合された三量体(Mtとして示される)もまたOKT3mC21とOKT3mC21fdの双方にて検出された。結果は、OKT3_scFvの異種融合タンパク質がT4フォルドンドメインなどの任意の三量体化構造さえ伴うことなくミニコラーゲンXXIの足場ドメインの三量体化特性に影響を与えないことを示している。
【0155】
実施例5
抗体ドメインのコラーゲン様ドメインに対する融合
ミニコラーゲンXXIのコラーゲンドメインを、CSAに対する足場鋳型としての熱的に安定な短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10と置換した。erb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、763_scFv−Col、357_scFv−Col、erb_scFv−GPP10、Col−erb_scFv、763CSA−OKT3、およびh4D5CSA−Lucといった8種の融合ポリペプチドを生成した。別のコラーゲン様ペプチドの(GPP)5GKPGKP(GPP)6を763_CSA2を作成するための足場を三量体化するものとして用いた。これらの足場ドメインの融合タンパク質を、マウス骨髄腫NS0細胞内で可溶性分泌タンパク質として安定的に発現させた。
【0156】
組換えプラスミドの作成
erbのscFvをコードするcDNAをerbファージミドからPCR増幅した。マウスIgG2a抗−CD3 mAb OKT3(オーソ・ファーマシューティカル・コーポレーション(Ortho Pharmaceutical Corporation))をコードする配列をOKT3ハイブリドーマ(ATCC、CRL−8001)由来の逆転写産物により取得した。OKT3 mAbのVHおよびVLに対するcDNAを公開されたヌクレオチド配列に基づくRT−PCRにより取得した。erbおよびOKT3のscFv PCR融合物を、VLおよびVH鎖をグリシン−リンカー(GGGGS)3に連結させることにより生成した。
【0157】
mAb763のVLおよびVHをコードするcDNAを、公開されたヌクレオチド配列(特許文献31)に基づくパニツムマブ(panitumumab)(ベクティビックス(Vectibix)、アムジェン(Amgen,Inc.))のcDNAに由来するプライマーセットを用いてPCR増幅した。763のscFv PCR融合物を、VLおよびVH鎖をグリシン−リンカー(GGGGS)3に連結させることにより生成した。
【0158】
RT−PCRを実施し、ハイブリドーマ357−101−4細胞系(ECACC No.92030603)に由来する抗−TNF−αモノクローナル抗体357、強力な中和活性を有するマウス抗−ヒトTNF−α mAbの軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)をコードするcDNAを取得した。次いで、2つのcDNAをグリシン−リンカー(GGGGS)3(イタリック体)と連結させ、357 scFvの融合タンパク質をコードする融合配列を生成した。以下に、この融合タンパク質のポリペプチド配列(配列番号9)およびそれをコードするcDNA配列(配列番号10)を挙げる。
【0159】
【化5】
【0160】
scFv−Colを生成するため、scFv−Colのコード領域は、N末端のscFvヌクレオチド配列と、C末端のEPKSCDKTHTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCFSVIARRDPFRKGPNY(配列番号11)(ヒトIgGのヒンジ領域(イタリック体)、コラーゲン様足場ドメイン(太字)、およびタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインを含む)のペプチド配列をコードする遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号11および12)を示す。
【0161】
【化6】
【0162】
この合成配列(配列番号12)を重複型(overlapping)PCRにより調製し、NotIおよびXhol部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))の同じ部位にクローニングした。次いで、erb、OKT3、763および357のscFvsを上記のC末端のコラーゲン足場を有するコンストラクトのAscIおよびNotI部位にインフレームにクローニングし、それぞれerb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、763_scFv−Colおよび357_scFv−Colの発現コンストラクトを作製した。
【0163】
次いで、erb_scFv−GPP10を生成し、CSAのコラーゲン−足場ペプチド(GPP)10がそれ自体でコラーゲン様ドメインの内部に存在するかまたはそれに隣接する鎖間架橋アミノ酸残基(CysおよびLysなど)の援助なしに非共有結合された三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを示した。erb_scFv−GPP10のコード領域は、N末端のerb_scFvのヌクレオチド配列と、C末端のGSP(GPP)10GPSSGG(コラーゲン様足場ドメイン(太字)を含む)のペプチド配列をコードする合成遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号13および14)を示す。
【0164】
【化7】
【0165】
erb_scFvのcDNAを重複型PCRにより上記のC末端のコラーゲン足場配列にインフレームにクローニングし、AscIおよびAgeI部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))にクローニングしてerb_scFv−GPP10の発現コンストラクトを作製した。
【0166】
次いで、Col−erb_scFvを作製した。Col−erb_scFvのコラーゲン足場領域は、TCPPCPRSIPおよびGICDPSLCという2つのジスルフィドノットに隣接するコラーゲン様ドメイン(GPP)10を含むTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCのペプチド配列を有する。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号15および16)を示す。
【0167】
【化8】
【0168】
erb_scFvのcDNAを重複型PCRにより上記のN末端のコラーゲン足場配列(配列番号16)にインフレームにクローニングし、BamHIおよびAgeI部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))にクローニングしてCol−erb_scFvの発現コンストラクトを作製した。
【0169】
次いで、763CSA2を作製した。763CSA2のコード領域は、アミノ末端の763_scFv(抗−EGFR)と、C末端のEPKSGDKTHTCPPCPRSIP(GPP)5GKPGKP(GPP)6GICDPSLC(配列番号17)(ヒトIgGの変異ヒンジ領域(イタリック体)、コラーゲン様ドメイン(太字)、およびタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を含む)のペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子を含んだ。下記に合成コラーゲン足場を有するポリペプチドおよびcDNA配列(各々、配列番号17および18)を示す。
【0170】
【化9】
【0171】
この合成配列(配列番号17)を重複型PCRにより調製し、NotIおよびXhol部位に隣接するPCR産物を発現ベクターpSecTag2/Hygro(インヴィトロジェン(Invitrogen))の同じ部位にクローニングした。次いで、763のscFvsを上記のC末端のコラーゲン足場を有するコンストラクトのAscIおよびNotI部位にインフレームにクローニングして763CSA2の発現コンストラクトを作製した。
【0172】
二重特異性CSA、763CSAOKT3を以下のように生成した。OKT3のscFvを763_scFv−ColのC末端のAgeIおよびBamHI部位にインフレームにクローニングして763CSAOKT3の発現コンストラクトを作製した。この場合、763の抗−EGFR scFvがN末端に配置され、それにコラーゲン足場ポリペプチド(配列番号11)およびC末端にOKT3の抗−CD3 scFvが続いた。
【0173】
別の二機能性結合パートナーのh4D5CSA−Lucを以下のように作成した。まず、h4D5CSAを、763CSA2の作成のセクションで述べたように、ヒト化抗−HER2/neu IgG(非特許文献91)に由来するアミノ末端のh4D5_scFvをC末端のコラーゲン足場を有する発現ベクターに融合することによって作製した。次いで、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼcDNA(特許文献32)をh4D5_scFv−ColのC末端のAgeIおよびBamHI部位にインフレームで融合した。
【0174】
様々なscFv、scFv−Fc、およびCSA分子の各オープンリーディングフレームは、分泌、検出、および精製目的で、N末端のリーダー配列およびC末端のmycエピトープ/ポリヒスチジンタグをコードする配列を有する。
【0175】
下記表に上記の発現コンストラクトによってコードされた様々な組換えタンパク質/抗体をまとめる。
【0176】
【表1】
【0177】
実施例6
組換えタンパク質の発現
組換えタンパク質複合体/抗体を産生するため、上記のscFv、scFv−Fc、およびCSAコンストラクトを、Effectene(キアゲン(Qiagen))を用い、製造業者の使用説明書に従い、マウス骨髄腫NS0細胞に形質移入した。ハイグロマイシン(400μg/ml)を用いた選択の4週間後、安定な各クローンを、2%のウシ胎仔血清を含有する化学的組成の明らかな(chemically−defined)培地HyQCDM4NS0(ハイクローン(Hyclone))内で初期播種密度を5×105細胞/mlとして振とうフラスコ内で培養した。培養物を150rpm、37℃で5日間維持した。アスコルビン酸ナトリウム(80μg/ml)を、上記の抗体ドメインおよびコラーゲン足場ドメインすなわちコラーゲン足場抗体(CSA)を有するタンパク質をコードする発現コンストラクトを有する細胞用培地に毎日添加した。
【0178】
実施例7
組換えタンパク質の精製
表1上に列挙されたCSAタンパク質を精製するため、約2Lの濾過された培地の各々を、0.5MのKC1、pH8.0を含有する50mMトリス−HCl緩衝液で平衡化したT−ゲルカラム(1.5×8cm、ピアス(Pierce))に60ml/時間の流速で適用した。同じ緩衝液で洗浄後、組換えタンパク質またはタンパク質複合体を50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0で溶出した。それらのUV吸光度を280nmで監視し、ピーク画分を0.5M NaCl、pH8.0を含有する50mMトリス−HCl緩衝液で平衡化したZnSO4で帯電、キレート化したSepharose High Trapカラム(ベッド容量で1ml、GE ヘルスケア(GE Healthcare))上に流速60ml/時間で適用した。まずカラムを20mMのイミダゾールで洗浄し、次いで結合タンパク質またはタンパク質複合体を同じ緩衝液中の0.25Mのイミダゾールで溶出した。最終調製物を50mMのヘペス緩衝液、pH7.0に対して透析した。次いで、SDS−PAGEをランニング緩衝液(インヴィトロジェン(Invitrogen))としてMOPSを有する10%NuPAGEビス−トリスポリアクリルアミドゲルまたは酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲルを用いて実施した。次いで、タンパク質をクマシーブリリアントブルーR−250で染色した。タンパク質バンドの密度を、Chemilmager 5500(アルファ(Alpha)Inn8)を用いるデンシトメトリーによって定量した。
【0179】
三量体化試験
三重らせんの性質を試験するため、精製erb_scFv−Col(1mg/ml)を10mM DTTの非存在下または存在下、37℃で1時間インキュベートした。DTTで処理した試料からの一定分量を50mMのN−エチル−マレイミド(NEM)と周囲温度で30分間さらに反応させ、遊離スルフヒドリルおよび三量体の再構築を永久的にブロッキングした。各試料から等量のタンパク質を、ランニング緩衝液として酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。ゲルをクマシーブルーで染色した。精製CSAがホモ三量体または鎖間ジスルフィド結合された六量体であり、緩和な還元条件下で2つの三量体に解離されうることが見出された。
【0180】
erb_scFv−Colの三量体構造の熱安定性を試験した。2M尿素を含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中の精製erb_scFv−Colを、10mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の非存在下または存在下で、周囲温度で処理した。次いで、還元試料を50mMのNEMで周囲温度でアルキル化した。等量のタンパク質を有する各試料を、SDS−ローディング緩衝液との混合前に35、45、55、65、75、および85℃で10分間加熱した。試料を、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。ゲルをクマシーブルーで染色した。結果は、erb_scFv−Col三量体が高い熱安定性を示すことを示した。実際、65℃で10分間処理後、50%を超える三量体が残存した。erb_scFv−Colのコラーゲン様ドメインの三量体構造がプロリルヒドロキシル化されることも見出された。
【0181】
erb_scFv−ColまたはOKT3_scFv−Colの一次構造は、ヒトまたはマウス一本鎖Fvの標的化ドメイン、ヒトIgG1ヒンジ領域、(Gly−Pro−Pro)10コラーゲン様ペプチド、およびタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインを含む。erb_scFv−Col、OKT3_scFv−Col、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvの組換え抗体をマウス骨髄腫NS0細胞内の可溶性分泌タンパク質として発現させ、上記のようにカラムクロマトグラフィーにより培地から別々に精製した。図5Aはこれらの精製抗体のSDS−PAGE分析を示す。非還元条件下で、2つの主要バンドがerb_scFv−Col(レーン2)において分解された一方、1つの主要バンドのみがOKT3_scFv−Col(レーン3)において観察された。erb_scFv−ColとOKT3_scFv−Colの双方の下のバンドは、両scFv−Col単量体(41kD)の三量体形態の計算された分子量の近似値に対応する125kDの位置に移動した。erb_scFv−Col(レーン2)にて示される上のバンドは、三量体の鎖間ジスルフィド結合された二量体であるように見られる。
【0182】
この試験結果を図5Bに示される緩和な還元条件下で試料をインキュベートすることによって確認し、erb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合された六量体(250kD)を2つの三量体(125kD)に解離させた。図5Aでは、試料を50mMのDTTを有する還元条件下で70℃で10分間処理し、erb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合された六量体を三量体形態に完全に還元する一方、erb_scFv−Col三量体のほんの一部を単量体にさらに解離させた(レーン7)。興味深いことに、OKT3_scFv−Colの三量体高次構造は、これらの還元条件下で単量体形態への解離に抵抗性を示した(レーン8)。erb抗体の二価対応物、erb_scFv−Fcが明らかに125kDの分子量を有する非還元条件下での二量体として移動することで(レーン4)、鎖間ジスルフィド結合の還元後に明らかに57kDの分子量を有するほぼ単量体の形態が出現した(レーン9)。
【0183】
これらの結果は、erb_scFv−ColおよびOKT3_scFv−ColのCSA分子内の短いコラーゲン様ペプチド(Gly−Pro−Pro)10は熱的に安定な三量体高次構造への組織化を担いうることを示唆している(下記参照)。erb抗体の一価対応物であるerb_scFvは、非還元条件下または還元条件下で明らかに28kDの分子量を有する単一バンドとして移動した。図5に示されるerb_scFv−Colの鎖間ジスルフィド結合種の六量体および三量体構造を、その三重らせんの熱安定性を判定するためにさらに特徴づけた。鎖間ジスルフィド橋のCSA分子の三量体構築に対する寄与を除外するため、erb_scFv−Col内のシステイン残基をまず強力な還元剤TCEPを室温で用いて完全に還元し、次いでNEMでアルキル化し、ジスルフィド結合の再構築を阻止した。等量の非還元または還元/アルキル化された試料を2M尿素を含有するトリス−HCl(50mM、pH8)中で指示温度でインキュベートし、三重らせんの解離について非還元条件下でのSDS−PAGEによりアッセイし、コラーゲンの三重らせんの熱安定性を評価した。予想どおり、鎖間ジスルフィド結合された六量体種は35℃で容易に三量体に解離した(図6A、レーン1および4を比較)。インキュベーション温度が高まるにつれ、三量体は単量体に有意に解離した(図6A、レーン4〜9)。還元/アルキル化後における2M尿素下でのerb_scFv−Colの中間転位温度(Tm)が66℃であると測定され、同温度で三量体の半分がほどかれて単量体になった(図6A)。非還元条件下での同じ実験(図6A、レーン1〜3)では、六量体または三量体の構造上の変化が全く示されなかったが、erb_scFv−Colは高いインキュベーション温度で部分的に分解された。
【0184】
この現象は、GPPを有するペプチドが90℃での加熱に感受性を示し、部分的に分解され、かつ2.5MのグアニジウムHClのコラーゲン様試料への導入によってTmが27℃低下することを示した他の研究に一致している。
【0185】
ヒドロキシプロリンは、コラーゲンの三重らせん構造の熱安定性にとって重要である。アミノ酸組成物分析を精製試料上で行い、erb_scFv−Col中でのヒドロキシプロリンの存在について検討した。精製erb_scFv−Colを50mM酢酸に対して透析し、6NのHCl中、110℃で24時間加水分解し、ウォーターズ(Waters)Pico・Tag(登録商標)システム内でアミノ酸分析を行った。測定されたアミノ酸組成物とerb_scFv−Colの推定上のcDNA配列に基づく予測データ(表2)がほぼ一致することが観察された。さらに、ヒドロキシプロリン誘導体のピーク位置がHPLC溶出特性上で検出され、それは(Gly−Pro−Pro)10内のコラーゲンのGly−X−YトリプレットのY位置内のPro残基が水酸化されたことを示唆している(図7)。
【0186】
erb_scFv−Col中でのプロリルの水酸化の範囲は、その(Gly−Pro−Pro)10モチーフ内の完全にヒドロキシル化された10個のプロリン残基の理論値から判定すると61%である(表2中のHyp残基を参照)。結果は、CSA分子内の(Gly−Pro−Pro)10モチーフがプロリル4−ヒドロキシラーゼにおける良好な基質であり、かつマウス骨髄腫NS0細胞がコラーゲン分子の生合成において十分なプロリルヒドロキシラーゼ活性を示すことを示している。
【0187】
【表2】
【0188】
培養上清中での高レベルの三量体可溶性抗体の存在から、抗体ドメインおよび足場ドメインを有する単量体サブユニットが三量体化されかつ分泌されうることが示された。足場ドメインと同じポリペプチド内での抗体ドメインの存在により、三量体化が阻止されず、可溶性抗体の形成が阻止されず、かつ抗体の培地への分泌が阻止されなかった。したがって、本発明は、抗体の三量体化、可溶性抗体の形成、および可溶性三量体抗体の分泌を可能にする。
【0189】
実施例9
結合試験
erb抗体変異体のEGFR−ECDへの結合速度をランニング緩衝液HBS−EP(10mMヘペス、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)中でのBIAcore Xバイオセンサー(ビアコア(BIACORE,Inc.)、ウップサーラ(Uppsala)、スウェーデン)を用いて測定した。つまり、EGFR−ECDをアミン共役を介してClセンサーチップ上に固定化して1700のレベルの応答ユニット(RU)にし、異なる濃度を有する精製抗体を10μl/分の流速で注射した。表面を10mMグリシン−HCl5μl、pH3.5の注射により再生した。センサーグラムを各濃度で取得し、プログラムBIA Evaluation 3.2を用いて評価した。結合データに1:1ラングミュア(Langmuir)結合モデルというタイトルを付け、平衡解離定数KDを計算し、それを解離速度(koff)/結合速度(kon)の比として定義した。結果を下記の表3に示した。
【0190】
【表3】
【0191】
表3に示されるように、EGFR−ECDに対するerb_scFv−Colの結合アビディティーは二価(erb_scFv−Fc)および一価(erb_scFv)mAb対応物よりもそれぞれ約20倍および約1000倍強力である。
【0192】
抗体結合分析では、CSA分子の構造設計によりscFvドメインのアビディティーが改変されないことが示されている。表面プラズモン共鳴および細胞フローサイトメトリーを用い、scFv結合アビディティーがerb_scFv−ColおよびOKT3_scFv−Colにおいてそれぞれ保持されるか否かを試験した。さらに、CSA分子内での三価scFvによる抗原−結合アビディティーの増大をそれらの二価および/または一価対応物による場合と比較した。erb_scFv−Col、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvという3種のerb抗体変異体とEGFR−ECDとの相互作用を表面プラズモン共鳴アッセイを用いて試験し、平衡解離定数KDを解離速度定数と結合速度定数の間の比(koff/kon)として判定した。一価erb_scFvとEGFR−ECDリガンドの結合におけるKDが10−6Mの桁である一方、二価erb_scFv−Fcおよび三価erb_scFv−ColとEGFRの結合におけるKDはそれぞれ10−7Mおよび10−9Mの桁である(図8および表3)。二価および一価の対応物の明確なアビディティーを超える三価erb CSAの同アビディティーにおける増大はそれぞれ約20倍および約1000倍である。注目すべきことに、erb_scFv−Colの解離速度定数(koff)が8.22×10−4s−1でありかつerb_scFv−Fcにおいては94.4×10−4s−1であり、それは三価種でのオフレートにおいて11倍改善することを示している。
【0193】
OKT3_scFv−ColおよびOKT3 IgGの、ヒトCD3(+)T細胞の細胞表面上のCD3分子への結合における機能的親和性を、競合相手として飽和濃度(0.25μg/ml)のOKT3−FITCを伴う抗体変位アッセイを用いるフローサイトメトリー分析により測定した。以下のすべての手順を4℃で実施した。ヒトT細胞を、FCM緩衝液(2%FBSおよび0.1%アジ化ナトリウムを有するリン酸塩緩衝生理食塩水)中に1×106細胞/mlの密度で懸濁した。細胞をすべてのマウスIgG(2μg/ml、ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories))で30分間処理し、次いで連続希釈したOKT3_scFv−ColまたはOKT3抗体とともに1時間インキュベートした。確定した(フローサイトメトリーによって決定した)飽和量のFITCと抱合したOKT3(0.25μg/ml、イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.)から購入)を直接添加した。1時間のインキュベーション後、細胞をFCM緩衝液で洗浄し、FACScan(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、サンホセ(San Jose)、カリフォルニア州)上でのフローサイトメトリーにより免疫蛍光について分析した。データを、ブロッキング抗体の非存在下でのT細胞のOKT3−FITCによる染色によって得られる平均蛍光強度として定義される、最大蛍光強度の阻害率(%)として示した。最大蛍光強度の半分(IC50)を阻害するのに必要とされる各mAbの濃度を計算した。
【0194】
OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−ColのヒトCD3(+)T細胞に対する結合アビディティーはOKT3 IgGにおいて1.33nM、OKT3_scFv−Colにおいて0.45nMであると評価された。したがって、IC50値は三価OKT3_scFv−ColのCD3(+)T細胞に対するアビディティーが二価OKT3 IgGの場合よりも約3倍大きいことを示した(図9)。結果は、OKT3_scFv−ColがヒトCD3+T細胞に天然マウスOKT3 mAbよりも強力に結合することを示した。
【0195】
したがって、表面プラズモン共鳴および細胞結合アッセイを用いて得られた結合分析結果は、三価erbとOKT3 CSAの双方が結合アビディティーをそれらの二価対応物と比べて有意に改善することを示す。結合分析は、本発明の三量体可溶性抗体がナノモル範囲内の結合親和性を示しうることも示す。結果として、本発明の場合、可溶性三量体抗体におけるそのリガンドに対する高親和性が実現可能である。
【0196】
実施例10
安定性および薬物動態アッセイ
血清安定性アッセイにおいては、様々な形態のerb_scFv−Col、erb_scFv−Fc、またはerb_scFv抗体の安定性を、ヒト血清とともに37℃でインキュベートすることにより測定した。異なる期間のインキュベーション時間経過後に残存する活性抗−EGFRの量を定量ELISAにより測定した。ELISAを、(捕捉試薬として)組換えEGFR−ECDおよび抗−c−myc mAb(9E10、シグマ・ケミカル(Sigma Chemical Co.)、その後にHRPと抱合した親和性精製されたポリクローナルヤギ抗−マウスIgGおよび化学発光基質(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))を用いて実施した。薬物動態アッセイにおいては、BALB/cヌードマウス3匹を用いてerb_scFv−Colクリアランスを分析した。つまり、各マウスに、事前の採血(pre−bleed)を行った後、25μg(2mg/体重キログラム)のerb_scFv−Colを皮下注射した。次の70時間にわたり、血液試料を定期的に採取し、同試料中のerb_scFv−Colの含量をELISAにより評価した。
【0197】
コラーゲンドメインの三重らせん構造は、通常、非特異的なタンパク質分解酵素に抵抗性を示すコラーゲンを作る。erb_scFv−Colの血清安定性について試験し、ヒト血清中の各精製抗体変異体を37℃で様々な期間インキュベートすることにより、erb_scFv−Fcおよびerb_scFvの血清安定性と比較した。様々なerb抗体の免疫反応性をELISAにより測定した。図10Aに示されるように、erb_scFv−Colは生理的温度でのヒト血清中でerb_svFv−Fcよりも安定であり、インキュベーションの72時間以内でのその初期アビディティーは60%保持された。erb_scFvはヒト血清中で速やかに分解され、インキュベーションの1時間以内に保持されたその初期アビディティーは40%未満であった。結果はerb_scFv−Colの三重らせんコラーゲン様ペプチドおよびerb_scFv−FcのFc領域が血清プロテアーゼによる消化に対してerb_scFvよりも抵抗性を示すことを示した。したがって、本発明の可溶性三量体抗体は、単量体抗体または二量体抗体よりも高い血清安定性を有しうる。
【0198】
図10Bは、マウス内でのerb_scFv−Colの薬物動態学的特性を示す。erb_scFv−Col2mg/kgの単回静脈内投与後での2区画モデルの動態について測定した。免疫反応性の血漿レベルは、0.21時間の分布相半減期(t1/2α)および4.78時間の最終消失相半減期(t1/2β)の場合、二相的に低下した。
【0199】
T細胞増殖アッセイおよび混合リンパ球反応(MLR)
5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の細胞増殖アッセイを実施した。つまり、ヒト末梢血単核球(PBMC)を、66時間かけて10倍に連続希釈したOKT3(イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.))またはOKT3_scFv−Colの存在下で、37℃で、10%FBSを含有する100μlのRPMI−1640培地内、ブラック96ウェル平底組織培養プレート内に2×105細胞/ウェルで蒔いた。次いで、細胞に10μMのBrdUで6時間パルスした。培地を取り出した後、細胞を固定し、DNAをFixDenatを用いて1ステップで変性させた。その後、細胞をペルオキシダーゼで標識した抗−BrdU抗体(抗−BrdU POD、Fab断片)とともに室温で1.5時間インキュベートした。化学発光検出および定量をマイクロプレート−ルミノメータ(luminometer)(ハイデックス(Hidex)、CHAMELEON検出プラットフォーム、フィンランド)を用いて行った。
【0200】
一方向の混合リンパ球反応におけるT細胞の増殖および免疫抑制について以下のように評価した。ヒトPBMCを健常ドナー2名から得た(刺激物質(stimulator)および応答物質(responder))。刺激物質または応答物質の細胞を、5%CO2を含有する37℃の加湿空気中、完全培地(10%ヒトAB血清、2mMグルタミン、50nM 2−メルカプトエタノール、および100単位/mlのペニシリンおよびストレプトマイシンの各々を補充したRPMI1640)内で25μg/mlのマイトマイシンC(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))で30分間処理した後、RPMI1640培地内で3回洗浄した。応答物質細胞を、200μlの完全培地内、2×105細胞/ウェルで、単独かあるいはマイトマイシンCで処理した刺激物質またはマイトマイシンCの応答物質細胞と1:1の比で混合して培養した。精製OKT3_scFv−ColまたはOKT3を、応答物質細胞を蒔いた直後に異なる濃度で培養物に添加した。5日後、培養細胞に10μMのBrdUをパルスし、24時間後に採取した。次いで、細胞増殖アッセイを上記のように実施した。
【0201】
OKT3_scFv−ColがCD3(+)T細胞に対する結合アビディティーの増大時に親OKT3 IgGの場合を上回る免疫抑制活性を示しうるか否かを判定するため、双方における一方向の混合リンパ球反応(MLR)でのT細胞マイトジェン活性化について試験した。抗体治療を受けずに5日間インキュベートされた混合PBMC培養物(マイトマイシンCで処理された刺激物質+応答物質)中で、混合リンパ球反応(MLR)がT細胞活性化の同種刺激の結果として生じた(図11B、塗りつぶした四角)。混合PBMC培養物をOKT3 IgGで処理することで、T細胞の増殖がさらに刺激される(図11B、塗りつぶした丸)。それに対し、OKT3_scFv−Colは用量依存的にMLRを抑制し、100ng/mlの濃度でバックグラウンドレベルに達した(図11B、白丸)。これらの結果は、OKT3_scFv−ColがT細胞増殖の強力な免疫抑制剤である一方、インビトロで分裂促進性の低下を示すことを示している。
【0202】
サイトカインの測定
マウスOKT3のマイトジェン活性は、FcR−陽性細胞への結合を介する広範囲のT細胞受容体(TCR)−CD3の架橋により誘発される。したがって、最近ではFc受容体への結合を改変することにより抗−CD3の非マイトジェン形態を生じさせる努力がなされている。CSA分子のモデルとしてOKT3_scFv−Colを生成し、それがOKT3 IgGのFc領域とコラーゲン様ペプチドとの置換えにより非マイトジェンを示すか否かを試験した。ヒトPBMCを、10倍に連続希釈したOKT3またはOKT3_scFv−Colの存在下、37℃で10%FBSを有する0.1mlのRPMI−1640培地内に2×105細胞/ウェルで蒔いた。上清を異なる時点で回収し、複数のサイトカインをヒトサイトカインイムノアッセイキット(イーバイオサイエンス(eBioscience,Inc.))を用いて測定した。
【0203】
OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colにおける、T細胞増殖を誘発しかつ炎症性サイトカインおよび他のサイトカイン(IL−2、IFN−γおよびTNF−α)を放出する能力を測定した。予想どおり、OKT3 IgGが極めて低用量でT細胞増殖およびサイトカイン産生を誘発する一方、検出不能なT細胞増殖またはサイトカイン産生がOKT3_scFv−Colによりそれが高濃度であっても誘発された(図11Aおよび図12)。したがって、これらの結果は、OKT3_scFv−ColがOKT3 IgGと異なりT細胞活性化特性を示さないことを示している。結果は、OKT3_scFv−Colの投与により誘発されるサイトカイン放出がマウスOKT3 IgGの場合よりも極めて少ないことを示した。
【0204】
これらの結果は、OKT3_scFv−ColがT細胞増殖の免疫抑制にてより有効である一方、T細胞増殖の刺激にて示されるマイトジェン活性は無視できることを示している。したがって、本発明の可溶性三量体抗体は分裂促進性を低下させている可能性がある。結果として、コラーゲン足場抗体は、抗腫瘍および免疫調節の用途のいずれであっても治療抗体の設計において望ましい構造でありうる。
【0205】
実施例11
異種ドメインのC末端足場ドメインへの付着
先行研究によると、鎖間ジスルフィド結合された(Gly−Pro−Pro)10の三重らせんが、コラーゲン様ペプチドに隣接するC末端またはN末端のタイプIIIコラーゲンのジスルフィドノットにおける20℃でのレドックス−シャッフリングプロセスによりインビトロで取得可能であることが報告された(非特許文献30)。(Gly−Pro−Pro)10がインビボでC末端の融合パートナーの三量体化を駆動可能であるか否かを検討するため、N末端のTCPPCPRSIP(GPP)10GICDPSLCのペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子よりなるCSA分子、Col−erb_scFvおよびC末端のerb_scFvを生成した(図13A)。結果は、Col−erb_scFvにおける六量体の量がerb_scFv−Colのそれより少ないこと以外では、精製Col−erb_scFvがerb_scFv−Colにて観察された構造の特徴と類似した特徴を示すことを示した(図13B)。したがって、(Gly−Pro−Pro)10のペプチド足場はそれ自体でscFvのN末端またはC末端における融合パートナーの三量体化を駆動することが可能である。
【0206】
実施例12
CSAの三量体化を駆動するための要件
CSA分子、erb_scFv−GPP10を生成することで、(GPP)10を含むコラーゲン様ペプチドがそれ自体でコラーゲン様ドメインの内部に存在するかまたはそれに隣接する任意の他の三量体化ドメインまたは鎖間架橋アミノ酸残基(CysおよびLysなど)の援助なしに非共有結合状態の三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを実証した。erb_scFv−GPP10のコード領域は、N末端のerb_scFvのヌクレオチド配列およびC末端のGSP(GPP)10GPSSGGのペプチド配列をコードする合成コラーゲン足場遺伝子を含んでいた(図14A)。図14Bに示されるように、erb_scFv−GPP10は、erb_scFv−Colの還元/アルキル化された鎖間ジスルフィド結合構造の場合に類似した融解温度を有する、熱的に安定な三量体のみを形成する(図6A)。その一方で、erb_scFv−GPP10はEGFR−ECDに対して強力な結合アビディティーを保持し、それはerb_scFvが正確に折り畳まれることを示している(図14C)。
【0207】
実施例13
足場ドメインとして異なるコラーゲン様ペプチドを有するCSA分子の生成
ベクティビックス(Vectibix)(パニツムマブ;アムジェン(Amgen)、サウザンド・オークス(Thousand Oaks)、カリフォルニア州、米国)から入手したscFvである治療用の完全−ヒト抗−EGFR mAbを用い、2つの異なるタイプのCSA、すなわち足場ドメインとして(GPP)10(図15A)および(GPP)5GKPGKP(GPP)6(図16A)という異なるコラーゲン様ペプチドをそれぞれ有する763_scFv−Colおよび763CSA2を作成した。SDS−PAGEによる分析によると、両CSAは三量体に組織化した(図15Bおよび16B)。763_scFv−Colは、親パニツムマブに等しい濃度でEGFRシグナル伝達を有効に遮断した(図15C)。その一方で、763CSA2は(ヒト上皮癌A431細胞系から精製した)EGFRに対する強力な結合アビディティーを保持し、それはerb_scFvが正確に折り畳まれることを示している(図16C)。
【0208】
実施例14
二重特異性CSA分子の生成
二重特異性CSA分子763CSAOKT3を生成することで、コラーゲン足場の自己三量体化が融合パートナーの両末端への付着を同時に可能にするという点で用途がより広いことを実証した(図17A)。4つの異なる安定なクローンに由来する分泌性763CSAOKT3を含有する培地をウエスタンブロット分析により試験した。763CSAOKT3分子は三量体構造内に構築されたものであり、同分子はおそらくは2つの三量体内の2つのC末端システイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介してさらに六量体にオリゴマー化されうる(図17B)。精製後、主要な形態の763CSAOKT3は非還元条件下で三量体として存在する(図17C、レーン1)。
【0209】
自己三量体化コラーゲン足場の配置により、2つの大きい結合パートナーと同時に相互作用可能な分子の作成が可能である(各末端は最大3または6の結合価数を有する)ことから、上記の結果は重要な結果を有している。図18に示されるように、二重特異性763CSAOKT3はA431(EGFR−陽性)とヒトCD3(+)T細胞を架橋可能である。結果として、763CSAOKT3は、様々なEGFRを発現する癌細胞に対してT細胞の細胞毒性を再び指示することが可能なT細胞のエンゲージャ(engager)としての機能を果たしうる。
【0210】
実施例15
二機能性CSA分子の生成
二機能性CSA分子、h4D5CSA−Lucを図19Aに示されるように生成した。分泌性h4D5CSA−Lucを含有する培地をクロマトグラフィーにより精製した。h4D5CSA−Luc分子は三量体構造内に構築されたものであり、同分子はおそらくは2つの三量体内の2つのC末端システイン残基間の鎖間ジスルフィド架橋を介してさらに六量体にオリゴマー化されうる(図19B)。生物発光ELISAを実施することで、h4D5CSA−LucがHER2/neuの結合と生物発光活性の双方を保持することを実証した。図19Cに示されるように、HER2/neuを過剰発現するヒト卵巣SKOV−3癌細胞でコートされたウェル内に捕捉された精製h4D5CSA−Lucがセレンテラジンに対する触媒能および濃度依存的な発光能を保持した。
【0211】
自己三量体化コラーゲン足場の配置により、結合パートナーと相互作用可能な分子の作成が可能であり(各末端は最大3または6の結合価数を有する)、かつ相互作用はC末端の二機能性CSA分子のルシフェラーゼドメインを生物発光基質とともにインキュベートすることにより直接検出可能であることから、上記結果は重要な結果を有している。おそらくは、h4D5CSA−Lucは、分子診断用または光学イメージング用の試薬としての機能を果たしうる。
【0212】
実施例16
抗−TNF−α CSAの生成
ハイブリドーマ357−101−4細胞系(ECACC No.92030603)に由来するscFvである、強力な中和活性を有するマウス抗−ヒトTNF−α mAbを用い、CSA分子357scFv−Colを作成した。精製357_scFv−Colは、scFv−Colの形式において観察される構造の特徴に類似した特徴を示す(図20A)。TNF−αに誘発されるL929細胞のアポトーシスの357_scFv−Colおよび357IgGによる中和の程度を比較した。図20Bに示されるように、357_scFv−Colは二価357IgGよりも約4倍強力な中和活性を示す。
【0213】
本明細書中に開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせ可能である。本明細書中に開示される各特徴は、同一、等価、または類似の目的に役立つ別の特徴によって置換え可能である。したがって、他に明示的に記述されない限り、開示される各特徴は一般的な一連の等価または類似の特徴の一例にすぎない。
【0214】
上記から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認し、かつその精神および範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更および改良を行い、それを様々な使用および条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態もまた添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0215】
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【図面の簡単な説明】
【0255】
図面の簡単な説明
【図1】例えばヒトタイプXXIミニコラーゲンまたは(GPP)10のコラーゲン様ドメインに由来するものなどの自己組織化した三重らせんコイルのコラーゲン足場ドメインおよび異種ドメインを有するタンパク質複合体を示す図面である。
【図2】図2Aおよび2Bの各々は、(A)OKT3(抗−CD3)、528(抗−EGFR)、またはerb(抗−EGFR)(各々、インフレームにヒトIgGのヒンジ領域に融合される)に由来するアミノ末端scFvと、ヒトタイプXXIミニコラーゲンのコラーゲン足場ドメインと、その次のヒスチジンタグとを有する三量体コラーゲン足場抗体(CSA)の略図(点線:鎖間ジスルフィド結合)、および(B)タンパク質複合体のウエスタンブロッティングの結果の図面である。OKT3mC21は、OKT3 IgGに由来するアミノ末端抗−CD3 scFvと、ヒトIgGのヒンジ領域と、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドと、その次のヒスチジンタグとを有し、OKT3mC21fdは、OKT3 IgGに由来するアミノ末端抗−CD3 scFvと、ヒトIgGのヒンジ領域と、ヒトミニコラーゲンXXIポリペプチドと、その次のT4フィブリチンフォルドンドメインおよびヒスチジンタグとを有する。安定的に形質移入されたショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞由来の培地は、非還元条件下でSDS−PAGE上で電気泳動され、次いでタイプXXIコラーゲン、3E2のC末端に対するモノクローナル抗体で免疫ブロットされた(T:鎖間ジスルフィド結合された三量体;Mt:鎖間ジスルフィド結合された三量体を有する単量体)。
【図3】アミノ末端OKT3一本鎖抗体(OKT3_scFv)、ヒトIgGのヒンジ領域、ヒトタイプXXIミニコラーゲンのコラーゲン足場ドメイン、その次のC末端528一本鎖抗体(528_scFv)を有する二重特異性三量体CSAを示す図面である。
【図4】図4A(a〜e)および4B(a〜c)は抗体の異なる形式の略図である。(A)アミノ末端scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、およびタイプXXIコラーゲンのカルボキシル末端NC1ドメインを有する三量体コラーゲン足場抗体scFv−Col(a);アミノ末端scFvおよびコラーゲン様ドメインGSP(GPP)10GPSを有するscFv−GPP10(b);アミノ末端ジスルフィドノット(TCPPCPRSIP)、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインに由来するカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびscFvを有するCol−scFv(c);アミノ末端scFv1、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびscFv2を有するBiscFv−Col(d);アミノ末端scFv、ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端ジスルフィドノット(GICDPSLC)およびルシフェラーゼを有するscFv−Col−Luc(e);(B)左から右に、(a)免疫グロブリンG(IgG)、(b)キメラ(scFv−Fc)、および(c)一本鎖抗体(scFv、灰色領域)。点線:鎖間ジスルフィド結合。
【図5】図5A〜Bは哺乳類細胞内での様々な抗体分子の精製および構造の特徴づけを示す。(A)指示抗体は哺乳類細胞内で安定的に発現され、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は非還元条件下(レーン1〜5)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン6〜10)でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(B)erb_scFv−Col六量体が2つの三量体分子の鎖間ジスルフィド結合により形成される。精製されたerb_scFv−Col(1mg/ml)は、10mM DTTの非存在下(レーン1)または存在下(レーン3)、37℃で1時間インキュベートされた。さらにDTTで処理された試料からの一定分量が50mM N−エチル−マレイミド(NEM)と周囲温度で30分間反応された(レーン2)。等量のタンパク質を有するすべての試料が、ランニング緩衝液として酢酸ナトリウムを有する7% SDS/トリス−酢酸塩ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはクマシーブルーで染色された。「M」は分子量標準を示す。
【図6】図6A〜Bはerb_scFv−Colの三量体構造の熱安定性を示す。(A)2M尿素を含含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中で精製されたerb_scFv−Colが周囲温度、10mM TCEPの非存在下(レーン1〜3)または存在下(レーン4〜9)で処理された。還元された試料は周囲温度、50mM NEMでアルキル化された。等量のタンパク質を有するすべての試料が指示温度で10分間加熱され、その直後にSDS−ローディング緩衝液が添加された。試料は、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはクマシーブルーで染色された。(B)(レーン4〜9からの)(a)における異なるインキュベーション温度での還元/アルキル化されたerb_scFv−Colの三量体レベルを定量化したものである。タンパク質バンドの密度が密度計を用いて定量された。各温度点での三量体および単量体の全体量が100に正規化された。
【図7】図7は、酸加水分解後でのerb_scFv−Colのフェニルチオカルバミル(PTC)アミノ酸誘導体のHPLC溶出プロファイルを示す。酸加水分解後にerb_scFv−Colのフェニルイソチオシアネート(phenylisothiocyanate)(PITC)で誘導体化されたアミノ酸が逆相C18シリカカラム上で分離され、PTC発色団が254nmで検出された。ヒドロキシプロリン(Hyp)誘導体のピーク位置が矢印で示される。
【図8】図8A〜Cは、EGFRの細胞外ドメインとerb_scFv−Col(A)、erb_scFv−Fc(B)またはerb_scFv(C)の間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析を示す。各抗体は指示濃度で注射され、10μl/分の流速で固定化EGFR細胞外ドメインを有する表面チップ上に流された。
【図9】OKT3の変位アッセイを示す。ヒトCD3(+)T細胞が連続希釈したOKT3_scFv−ColまたはOKT3 IgGとともに1時間インキュベートされた。飽和量のOKT3−FITCが添加され、さらに1時間インキュベートされた。細胞が洗浄されて結合され、OKT3−FITCがフローサイトメトリーにより定量された。値は、予め抗体のブロッキングを行わずにOKT3−FITCを添加することにより測定された最大蛍光の阻害率(%)として表される。
【図10】図10A〜BはCSA分子の安定性を示す。(A)ヒト血清中の様々な形態のerb抗体の安定性。erb_scFv−Col、erb_scFv−Fcまたはerb_scFvの安定性がヒト血清中、37℃でのインキュベーションによって測定された。様々な期間のインキュベーション後に残存する活性を示す抗−EGFRの量が抗−c−myc mAbを用いたELISAにより測定された。(B)マウスにおけるerb_scFv−Colの薬物動態。雄C57BL/6マウスに対し、2mg/Kgのerb_scFv−Colが静脈内注射された。血液試料が異なる時刻に採取された。血漿中のerb_scFv−Colレベルが、HRPと抱合したウサギ抗−c−myc抗体を用いるELISAにより測定された。結果は各時刻において動物3匹から平均化されたもので、エラーバー(error bar)は標準偏差を示す。
【図11】図11A〜BはOKT3に由来するCSAが有効な免疫抑制活性で細胞分裂を引き起こさないことを示す。(A)OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colに応答するT細胞増殖。ヒトPBMCが3つの健常ドナーから採取され、対数にて連続希釈したOKT3 IgGまたはOKT3_scFv−Colとともに個別に72時間インキュベートされ、10μMのBrdUでさらに8時間パルスされた。細胞増殖が、化学発光イムノアッセイを用いるBrdU−ELISAにより測定され、DNA合成の間でのBrdUの取込みが定量された。各点は3つのドナーの平均±標準偏差を示す。(B)混合リンパ球反応のOKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colによる阻害。マイトマイシンCで処理された刺激物質PBMCと混合された応答物質PBMCが異なる濃度のOKT3 IgG(黒丸)またはOKT3_scFv−Col(白丸)の存在下で5日間共培養され、BrdUでさらに16時間パルスされた。細胞増殖はBrdU−ELISAにより測定された。抗体の非存在下でのマイトマイシンCで処理された刺激物質PBMCと混合された応答物質PBMCおよび応答物質PBMCの各々が塗りつぶした四角および塗りつぶした三角で示された。抗体の非存在下での未処理の刺激物質PBMCの細胞増殖が白四角で示される。
【図12】図12A〜Fは、OKT3 IgGおよびOKT3_scFv−Colにより誘発されるサイトカインの放出を示す。ヒトPBMCが健常ドナー3名から採取され、対数にて連続希釈したOKT3 IgG(黒丸)またはOKT3_scFv−Col(白丸)とともに個別にインキュベートされた。培養上清中のIL−2および残りの指示サイトカインのレベルが、ELISAによりそれぞれ24時間および72時間経過した時点で測定された。各点は3つのドナーの平均±標準偏差を示す。
【図13】図13A〜BはCol−erb_scFvの精製を示す。(A)アミノ末端のジスルフィドノット(TCPPCPRSIP)、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のカルボキシル末端のタイプXXIコラーゲンのNC1ドメインに由来するジスルフィドノット(GICDPSLC)およびerb_scFv(抗−EGFR)を有するコラーゲン足場抗体、Col−erb_scFvの略図。(B)Col−erb_scFvの精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換えCol−erb_scFvがカラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン2)でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。
【図14】図14A〜Cは、(GPP)10を含むCSAのコラーゲン足場ペプチドがそれ自体で熱的に安定な非共有結合された三量体融合タンパク質の形成を駆動しうることを示す。(A)CSA、すなわちアミノ末端erb_scFv(抗−EGFR)およびコラーゲン様ドメインGSP(GPP)10GPSを有するerb_scFv−GPP10の略図。(B)erb_scFv−GPP10の三量体構造の熱的安定性。2M尿素を含有する50mMトリス−HCl(pH8.0)中の精製erb_scFv−GPP10が、10mM TCEPの非存在下(レーン1〜3)または存在下(レーン4〜9)で周囲温度で処理された。等量のタンパク質を有するすべての試料が指示温度で10分間加熱され、その直後にSDS−ローディング緩衝液が添加された。試料は、非還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。(C)erb_scFv−GPP10のEGFR−ECDに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロタイタープレートが1μg/mlのEGFR−ECDでコートされ、次いで様々な濃度の精製erb_scFv−GPP10およびHRPと抱合した抗−c−myc抗体とともにインキュベートされた。450nmでの吸光度が測定された。
【図15】図15A〜Cは763_scFv−Colの精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を有する763_scFv−Colの略図。(B)抗体は、マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現され、培地からカラムクロマトグラフィーにより精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(C)EGFRのEGFに誘発されるチロシンリン酸化の763_scFv−Colによる阻害。A431細胞が、763_scFv−Col(0.2〜150nM)の非存在下または存在下で16nM EGFを伴う場合または伴わない場合に30分間インキュベートされた。細胞溶解物が、還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で分離された。異なる細胞溶解物に由来する等量のタンパク質全体が各レーンにて負荷された。細胞溶解物中でのEGFRリン酸化が、抗−ホスホチロシンmAbを用いるウエスタンブロッティングにより検出された。抗−β−アクチンがローディング対照として用いられた。抗体の非存在下でのEGFに誘発されるEGFRチロシンリン酸化が100%として指定された。
【図16】図16A〜Cは763_CSA2の精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)5GKPGKP(GPP)6、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)を有する763CSA2の略図。(B)三量体の同定。試料は、非還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。レーン1は分子量マーカーである。(C)763CSA2のEGFRに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロタイタープレートが1μg/mlのEGFRでコートされ、次いで様々な濃度の精製763CSA2およびHRPと抱合した抗−c−myc抗体とともにインキュベートされた。450nmでの吸光度が測定された。
【図17】図17A〜Cは二重特異性CSA、763CSAOKT3の精製および特徴づけを示す。(A)アミノ末端763_scFv(抗−EGFR)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)およびカルボキシル末端OKT3_scFv(抗−CD3)を有する763CSAOKT3の略図。(B)組換え二重特異性763CSAOKT3抗体を含有する培地のウエスタンブロット分析。(1〜4に番号付けされた)4つの異なる安定なクローンに由来する一定分量20μlの培地が、非還元条件下および還元条件下でMOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で分離され、次いで抗−c−myc mAbで免疫ブロットされた。結合抗体がペルオキシダーゼと抱合した抗−マウス二次抗体を用いて検出された。(C)763CSAOKT3の精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換え763CSAOKT3がカラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。
【図18】図18A〜Cは、二重特異性CSA、763CSAOKT3、架橋A431(EGFR−陽性)およびヒトCD3(+)T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。等量(1×106細胞)のPKH−67で標識されたA431細胞とPKH−26で標識されたCD3(+)T細胞が、組換え二重特異性763CSAOKT3抗体を有する培地の非存在下(A)または1:4希釈物の存在下(B);1:2希釈物の存在下(C)で混合された。
【図19】図19A〜Bは、二機能性CSA、h4D5CSA−Lucの精製および特徴づけを示す。(A)アミノ−末端h4D5_scFv(抗−HER2/neu)、変異ヒトIgGのヒンジ領域、コラーゲン様ドメイン(GPP)10、その次のタイプXXIコラーゲンのジスルフィドノット(GICDPSLC)およびカルボキシル末端ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼを有するh4D5CSA−Lucの略図。(B)h4D5CSA−Lucの精製。マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現された組換えh4D5CSA−Lucが、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン2)および試料が50mMのDTTで70℃で10分間処理される場合の還元条件下(レーン3)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ゲルはImperial(商標)Protein Stain溶液(ピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology,Inc.))で染色された。レーン1は分子量マーカーである。(C)h4D5CSA−LucのSKOV−3細胞上で過剰発現されたHER2/neuに対するELISAによる結合。96ウェルマイクロプレートが5×104細胞/ウェルでコートされ、2倍に連続希釈した精製h4D5CSA−Lucとともにインキュベートされた。PBS/1% BSAでのプレートの洗浄後、結合抗体がセレンテラジンの添加により検出され、生物発光値がマイクロプレートルミノメータを用いて取得された。試料が3通りにアッセイされた。
【図20】図20A〜Bは357_scFv−Colの精製および特徴づけを示す。(A)抗体は、マウス骨髄腫NS0細胞内で安定的に発現され、カラムクロマトグラフィーにより培地から精製された。試料は、非還元条件下(レーン1)および還元条件下(レーン2)で、MOPS緩衝液を有する10% SDS/ビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。(B)TNF−αに誘発されるL929細胞のアポトーシスの357_scFv−Colおよび357 IgGによる中和。L929マウス線維芽細胞(5×103細胞)が、2μg/mlのアクチノマイシンDおよび10ng/mlのヒト組換えTNF−αを含有する、異なる濃度の357_scFv−Colまたは357 IgGのいずれかとともに24時間インキュベートされた。TNF−αに誘発される細胞の細胞毒性がMTTアッセイにより測定された。生存細胞の数が460nmでの光学密度の測定により判定された。抗体によるTNF−αの中和については、式%中和=100×(細胞毒性ctrl−細胞毒性Ab)/細胞毒性ctrl;%細胞毒性=100×(Actrl−Atest)/Actrl(式中、Actrlは(TNF−αを伴わない)対照ウェル内の吸光度であり、AtestはTNF−α(細胞毒性ctrl)またはTNF−α+抗体(細胞毒性Ab)を伴う場合のウェル内の吸光度であった)を用いて計算された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項2】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項3】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項4】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項5】
前記抗体が、少なくとも107M−1のアビディティーでヒトCD3に特異的に結合する二重特異性抗体である、請求項2に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項6】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項7】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである、請求項6に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項8】
前記コラーゲン足場ドメインが配列(G−P−P/O)10を含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項9】
前記G−X−YリピートのすべてがG−P−PまたはG−P−Oである、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項10】
コラーゲン様ドメインが配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項11】
各ポリペプチドが2つの抗体ドメインを含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項12】
請求項1に記載の三量体可溶性抗体をコードする核酸。
【請求項13】
宿主細胞内に導入される場合、請求項1に記載の三量体可溶性抗体を発現する発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
三量体可溶性抗体を生成する方法であって、
(a)10〜30個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインをコードする核酸を、リガンドに対する抗体ドメインをコードする核酸にインフレームに連結するステップと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、かつ、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)
(b)細胞内で前記コードされたポリペプチドを発現させて、前記G−P−Pリピートのうちの少なくとも6個をY位置でヒドロキシプロリネート化するステップと、を含み、
3つのポリペプチドの前記ヒドロキシプロリネート化コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、方法。
【請求項16】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、またはヒトTNF−αである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リガンドの生物学的活性を調節する方法であって、
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を前記リガンドとインキュベートするステップを含み、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成し、かつ、
前記リガンドへの前記三量体可溶性抗体の結合が前記リガンドの生物学的活性を調節する、方法。
【請求項18】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、またはヒトTNF−αである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リガンドを検出する方法であって、
(1)3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとインキュベートするステップと、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成し、
(2)前記リガンドへの前記三量体可溶性抗体の結合を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記3つのポリペプチドの各々がルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
Y残基のうちの少なくとも6個はヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項22】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項23】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項24】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項25】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項26】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである請求項25に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項27】
前記三量体可溶性抗体が配列番号7を含む請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項28】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも6個のG−P−Oリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、かつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項29】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項30】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項31】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項32】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項33】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである請求項32に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項1】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項2】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項3】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項4】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項5】
前記抗体が、少なくとも107M−1のアビディティーでヒトCD3に特異的に結合する二重特異性抗体である、請求項2に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項6】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項7】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである、請求項6に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項8】
前記コラーゲン足場ドメインが配列(G−P−P/O)10を含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項9】
前記G−X−YリピートのすべてがG−P−PまたはG−P−Oである、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項10】
コラーゲン様ドメインが配列(G−P−P/O)5GKPGKP(G−P−P/O)6を含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項11】
各ポリペプチドが2つの抗体ドメインを含む、請求項1に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項12】
請求項1に記載の三量体可溶性抗体をコードする核酸。
【請求項13】
宿主細胞内に導入される場合、請求項1に記載の三量体可溶性抗体を発現する発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
三量体可溶性抗体を生成する方法であって、
(a)10〜30個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインをコードする核酸を、リガンドに対する抗体ドメインをコードする核酸にインフレームに連結するステップと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、かつ、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−Pである)
(b)細胞内で前記コードされたポリペプチドを発現させて、前記G−P−Pリピートのうちの少なくとも6個をY位置でヒドロキシプロリネート化するステップと、を含み、
3つのポリペプチドの前記ヒドロキシプロリネート化コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、方法。
【請求項16】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、またはヒトTNF−αである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リガンドの生物学的活性を調節する方法であって、
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体を前記リガンドとインキュベートするステップを含み、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成し、かつ、
前記リガンドへの前記三量体可溶性抗体の結合が前記リガンドの生物学的活性を調節する、方法。
【請求項18】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体、ヒトCD3、またはヒトTNF−αである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リガンドを検出する方法であって、
(1)3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体をリガンドとインキュベートするステップと、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも10個はG−P−PまたはG−P−Oであり、
前記G−X−Yリピートのうちの少なくとも6個はG−P−Oであり、かつ、
PはプロリンでありかつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成し、
(2)前記リガンドへの前記三量体可溶性抗体の結合を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記3つのポリペプチドの各々がルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも10個のG−X−Yリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Xは任意のアミノ酸であり、かつYは任意のアミノ酸であり、
Y残基のうちの少なくとも6個はヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項22】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項23】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項24】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項25】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項26】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである請求項25に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項27】
前記三量体可溶性抗体が配列番号7を含む請求項21に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項28】
3つのポリペプチドを含む三量体可溶性抗体であって、
各ポリペプチドが、
(a)少なくとも6個のG−P−Oリピートを含むコラーゲン足場ドメインと、
(式中、Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、かつOはヒドロキシプロリンである)
(b)抗体ドメインと、を含み、
前記3つのポリペプチドの前記コラーゲン足場ドメインが互いに相互作用して少なくとも107M−1のアビディティーでリガンドに特異的に結合する三量体可溶性抗体を形成する、三量体可溶性抗体。
【請求項29】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒト表皮成長因子受容体である請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項30】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトCD3である請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項31】
前記三量体可溶性抗体に対する前記リガンドがヒトTNF−αである請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項32】
前記ポリペプチドがマーカーポリペプチドのコード配列をさらに含む請求項28に記載の三量体可溶性抗体。
【請求項33】
前記マーカーポリペプチドがルシフェラーゼポリペプチドまたは緑色蛍光ポリペプチドである請求項32に記載の三量体可溶性抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−131237(P2009−131237A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−8995(P2008−8995)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(592082549)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (3)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8995(P2008−8995)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(592082549)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (3)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】
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