説明

上皮細胞の分離方法、細胞を前条件付けする方法、およびバイオ人工皮膚もしくは真皮を上皮細胞または条件付けされた細胞を用いて調製する方法

【課題】上皮細胞の分離方法および細胞の前条件付け方法の提供。
【解決手段】ヒトの皮膚組織または内臓組織を磁気撹拌しながらトリプシン/EDTA処理して、上皮細胞を分離する方法、生物細胞に物理的な刺激(すなわち伸張力)を共することによって前条件付けする方法、およびフィブロネクチンもしくはグリコスアミノグリカンを単独で、又は共に添加することによって前条件付けする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上皮細胞の分離方法および細胞の前条件付けの方法に関する。より詳細には皮膚組織または内臓組織をトリプシン/EDTA処理し、かつ同時に磁気撹拌する上皮細胞の分離方法、および生体(body)から分離された皮膚細胞の培養時に物理的な刺激を与えるインビトロでの細胞前条件付けの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚組織は大きく3部分に分けられる、すなわち外側にある表皮、表面下の真皮、および皮下組織よりなる。表皮は表皮と真皮の間の基底膜由来の層状化表皮細胞およびメラニン形成細胞、ならびにランゲルハンス細胞からなる。真皮は繊維芽細胞および繊維芽細胞が分泌した細胞外基質よりなる。
【0003】
皮膚上皮細胞は、位置した層によって細胞の年齢および分化の程度が変わる。これは基底層にある幹細胞が細胞分裂を進めながら、インテグリン受容体の数を下方修正し、上部細胞層に移動するためである。上皮細胞の上層は下層よりさらに分化し、最後に最上層(外側)に到達すれば核を失い、その中に残っているケラチンが凝結することにより角質層(keratin layer)を形成する。皮膚上皮細胞の主な機能が角質を作って体(body)を外環境から保護することであるので、これを「ケラチノサイト」とも呼ぶ。角質層は周期的に表皮層から脱落し、表皮層の細胞数を一定に維持するように基底細胞膜において細胞分裂して新しい細胞を補充する。基底細胞層は幹細胞および幹細胞から分裂した娘細胞(transit amplifying cell)で構成される。これら2種類の細胞を互いに見分けることは困難である。しかし近年、幹細胞(娘細胞ではなく)が、支配的なβ1インテグリン発現およびβ1インテグリン発現に関係すると思われている基底膜への高い付着性を示したという報告がいくつかあった。β1インテグリンを主に発現する幹細胞は、基底層の乳頭間隆起上に、基底細胞層の約4〜10%を占めることが知られる。この幹細胞を培養プレートで培養すれば、通常、高いコロニー形成効率および遅い細胞分裂速度を示す(BickenbachおよびChism、1998、ECR 244:184-195(非特許文献1);JonesおよびWattら、1993、Cell 73:713-724(非特許文献2))。
【0004】
幹細胞は、皮膚表皮層以外にも全ての上皮細胞に存在する。角膜の幹細胞は、角膜縁の基底層に存在することが知られている。ヒトの内臓組織のうち食道と膣の場合にも、幹細胞は基底層に存在すると知られている。胃、小腸、大腸のように腺状構造を形成する粘膜上皮細胞は単一細胞層のように形成され、幹細胞は腺状構造の最も深い所に位置している。すなわち、全ての上皮組織の幹細胞は腺状構造の深部および露出されない「肝細胞ニッチ(niche)」と呼ばれる部分に存在する。したがって、幹細胞は他の細胞に比べて分離が容易ではないと予想される。
【0005】
皮膚組織または内臓は、火傷、外傷、または潰瘍などによって部分的に損傷されうる。この場合に創傷組織の治癒のために、または成形外科のために、患者または他人の皮膚組織または内臓から上皮細胞(ケラチノサイト)を分離・培養して、これを損傷した皮膚または内臓に移植する方法が広く使われている。このために上皮細胞を効果的に分離する技術が要求される。さらに、培養環境中の細胞増殖率を高めるためおよび移植の成功を確実にするために、分離された細胞のうち幹細胞の比率が高くなければならない。
【0006】
1975年に、RheinwaldおよびGreenが開発した細胞分離法(以下、「グリーン法」)が一次ヒト上皮細胞の分離および培養のための通常的な方法であった。この方法によれば、表皮細胞を穏やかに振とうしながら、またはせずに、トリプシン/EDTA、またはトリプシンのみでを処理して細胞を分離する。「グリーン法」は研究を目的とした細胞分離には充分な細胞収率を提供するが、組織工学をベースとした工業的用途を目的とする細胞分離である。
【0007】
最近には、酵素処理で表皮と真皮とを分離した後、表皮を酵素処理して上皮細胞(ケラチノサイト)を分離する、2段階酵素処理方法(以下、「サーモリシン法」または「ディスペース法」)が導入された。この方法は皮膚組織をサーモリシン(Germainら、1993、Burns 19:99-104(非特許文献3))またはディスペース(SimonおよびGreen、1985、Cell 40:677-683(非特許文献4))を用いて前処理して表皮層と真皮層にそれぞれ分離させた後、表皮をトリプシン/EDTA処理して個々の表皮細胞に分離する。さらに具体的に言うとサーモリシンはデスモソームを破壊せずに水泡性類天疱瘡抗原とラミニンの間の反応性をもって皮膚の真皮と表皮の接合を破壊するもの知られている。サーモリシンまたはディスペースによって真皮から表皮を分離することによって、繊維芽細胞の汚染を減少させるという点で好都合である。しかし、2段階酵素処理方法による場合、サーモリシンやディスペースの不活性化を制御できないという不都合がある。これらの2つの酵素は表皮分離したのち起こりうる細胞に好ましくない分離を阻止するために、表皮分離後しばらくの間、酵素基質複合体内においてその機能が持続されることが知られている。このような起こりうる細胞分離は本発明者らによって図4で示すように、2段階酵素処理法によって改善され、その結果、2段階酵素処理法によって分離された上皮細胞は低いコロニー形成効率(CFE)を示した。
【0008】
グリーン法または2段階酵素処理法のような既存の方法で分離した上皮細胞(ケラチノサイト)は、一次細胞培養時に制限された回数の細胞増殖だけをし、自家移植後、移植細胞の一部だけが患者の皮膚に残留するものと報告されている。このことは上皮細胞の移植治療の大きい問題点に台頭されている。これは恐らく分離された細胞のうち含まれた幹細胞の比率が低いためである。複雑な網状隆起構造および基底細胞の基底膜への強い結合能力を考慮する時、基底細胞(特に幹細胞)を基底膜から分離させるには従来の方法は役に立たない。このことは図1に示されるように細胞を皮膚から分離した後、組織試料中には基底膜が相当な割合で残っていることで証明される。
【0009】
本発明者らはトリプシン/EDTA処理に加えて強い物理的な撹拌を同時に適用すれば、基底細胞がさらに効率的に分離されると仮定した。本発明者らはまた、この方法で幹細胞の獲得率も大幅に増加すると予想した。すなわち、細胞分離工程にトリプシン/EDTA処理と併せた磁気撹拌を適用して上皮細胞を分離することによって細胞分離方法を改善した(以下、「磁気攪拌法」)。また、本発明者らは磁気撹拌法が高濃縮された幹細胞集団を含む上皮細胞を分離する効率性を立証するために、皮膚組織から上皮細胞を分離し分離した上皮細胞の細胞収率、CFEおよびコロニーサイズ(細胞数/コロニー)をについて、磁気撹拌法を既存の細胞分離方法である「グリーン法」、サーモリシン法およびディスペース法と比較した。その結果、本発明による磁気撹拌法の細胞収率、CFEおよびコロニーサイズが他の3つの細胞分離法に比べて著しく増加したことを確認した。
【0010】
前記のように培養条件下での高い細胞増殖潜在力および移植の成功を確実にするために細胞の分離方法が重要であるだけでなく、分離された細胞を培養する方法も重要である。
【0011】
皮膚の損傷を治癒するために多様なヒト細胞一次培養物が皮膚移植に活用されている。しかし、低い細胞生存率および宿主組織への一次皮膚細胞の同化(integration)率の低さは皮膚移植の成功を困難にする(Burkeetal、1981、Ann Surg 194:413-428(非特許文献5))。これは移植された細胞が組織内で受ける様々なストレスおよび物理的な刺激について適応せず、壊死したためである。したがって、細胞の生存率を増進させて宿主組織への同化比率を改善する新しい培養法が要求される。
【0012】
物理的な刺激および細胞分化の密接な関連性を支持する研究結果が軟骨または脛骨組織で既に報告された(TagileおよびAspenberg、1999、J. Orthop Res 17:200-4(非特許文献6)およびAspenbergら、2000、Acta Orthop Scand 71:558-62(非特許文献7))、このような理由から軟骨組織の一次培養時に加圧して分化を誘導する。
【0013】
インビボで腱繊維芽細胞または心臓の繊維芽細胞に適用された物理的な刺激としての伸張力(strain)の、有糸分裂誘発または細胞外基質の合成における影響について、いくつか報告がある。
【0014】
鳥類の腱繊維芽細胞やラットの心臓繊維芽細胞に伸張力のみを提供した場合、有糸分裂誘発およびプロコラーゲンの合成について有意な効果がなかった。血小板由来成長因子(PDGF-BB)およびインシュリン様成長因子(IGF-I)を伸張力と一緒に供与した場合、わずかに繊維芽細胞有糸分裂誘発が刺激された。牛胎児血清(FBS)、形質転換成長因子(TGF-β)が供与された場合に、プロコラーゲン合成が約2〜4倍以上促進した(Banesら、1995、J.Biomechanics 28:1505-1513(非特許文献8);ButtおよびBishop、1997、J.Mol.Cell Cardiol 29:1141-1151(非特許文献9))。
【0015】
皮膚移植の成功に密接に関係する、真皮の主要な細胞外基質としては、コラーゲン以外にもフィブロネクチン、エラスチン、グリコサミノグリカン(GAG)がある。特に、フィブロネクチンは、組織および血液に同時に存在し、血管内皮細胞、繊維芽細胞、筋細胞、上皮細胞、神経細胞などに合成されると知られている。フィブロネクチン(2つのポリペプチドが結合したダイマー(220KDa))は細胞の他の細胞もしくはコラーゲンへの付着、または細胞遊走に寄与する。特に、フィブロネクチンは、創傷治癒の初期過程に関与する重要な細胞外基質成分であって、繊維芽細胞、血管内皮細胞、ケラチノサイトの付着および移動に必須成分と知られている(YamadaおよびClark、1996、Molecular and cellular biology of woundrepair、Provosional Matrix p51-93(非特許文献10))。
【0016】
真皮繊維芽細胞が分泌する成分のうち創傷治癒に重要な成分としてMMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)-2およびMMP-9がある。MMP-2およびMMP-9は、創傷治癒過程、発生過程および血管新生過程で細胞外基質の再配列に関与し、上皮細胞、血管内皮細胞の移動にも重要な役割をする(Yuら、1998、72kDa Gelatinase(Gelatinase A):Structure、Activation、Regulation、and Substrate Specificity、from Matrix Metalloproteinases:85-113(非特許文献11))。特に、MMP-9は傷発生後、数時間内に作られ、傷を覆うために移動するケラチノサイトで特に発現量が増加することから、ケラチノサイトの移動および初期創傷治癒過程に重要な役割をするものと思われる(VuおよびWerb、1998、Gelatinase B:Structure、Regulation、and Function、Matrix Metalloproteinases:115-147(非特許文献12)およびParksら、1998、Matrix metalloproteinase、from Matrix metalloproteinases:85-113(非特許文献11))。
【0017】
前記のように、移植された細胞がヒト組織内でのストレスおよび物理的な刺激について適応できないことが皮膚移植の成功を防塞する事実に基づき、本発明に着手した。皮膚移植の成功の指標を同定する実験およびその結果についての分析を通じて、本発明の効果を確認した。
【非特許文献1】BickenbachおよびChism、1998、ECR 244:184-195
【非特許文献2】JonesおよびWattら、1993、Cell 73:713-724
【非特許文献3】Germainら、1993、Burns 19:99-104
【非特許文献4】SimonおよびGreen、1985、Cell 40:677-683
【非特許文献5】Burkeetal、1981、Ann Surg 194:413-428
【非特許文献6】TagileおよびAspenberg、1999、J. Orthop Res 17:200-4
【非特許文献7】Aspenbergら、2000、Acta Orthop Scand 71:558-62
【非特許文献8】Banesら、1995、J.Biomechanics 28:1505-1513
【非特許文献9】ButtおよびBishop、1997、J.Mol.Cell Cardiol 29:1141-1151
【非特許文献10】YamadaおよびClark、1996、Molecular and cellular biology of woundrepair、Provosional Matrix p51-93
【非特許文献11】Yuら、1998、72kDa Gelatinase(Gelatinase A):Structure、Activation、Regulation、and Substrate Specificity、from Matrix Metalloproteinases:85-113
【非特許文献12】VuおよびWerb、1998、Gelatinase B:Structure、Regulation、and Function、Matrix Metalloproteinases:115-147
【発明の開示】
【0018】
発明の開示
本発明の第1の目的は、従来の細胞分離方法の問題点を克服するためのものであって、細胞収率、CFEおよびコロニーサイズ(幹細胞の比率)が増加した、上皮細胞の新しい分離方法を提供することである。
【0019】
また、本発明の2番目の目的はインビトロで伸張力によって真皮繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは血管内皮細胞を前条件付けさせる方法を提供することである。
【0020】
また、本発明の3番目の目的は、前記方法で分離された上皮細胞または前記方法で前条件付けされた細胞を利用して移植能力に優れたバイオ人工皮膚またはバイオ人工真皮を調製する方法を提供することである。
【0021】
本発明の4番目の目的は、前記方法で分離された上皮細胞、前記方法で前条件付けされた細胞またはその細胞を利用して調製されたバイオ人工真皮またはバイオ人工皮膚を火傷、外傷、または潰瘍によって損傷した皮膚または内臓に移植することによって損傷した皮膚組織または内臓組織を効果的に治療する方法を提供することである。
【0022】
第1の目的を達成するために、本発明は皮膚組織または内臓組織をトリプシン/EDTA処理する際に同時に磁気撹拌する上皮細胞の分離方法を提供する。本発明の方法は、従来の「グリーン法」を変形したものであって、強い磁気的撹拌による物理的な力を加えながら、トリプシン/EDTA処理による酵素作用によって得られた単一細胞懸濁液を獲得する。皮膚組織または内臓は任意の動物の皮膚または組織から得られるものであってよい。皮膚組織は包皮、脇のした(axilla)、股関節(hip)、乳房、頭皮、角膜、陰毛(pubes)、または育児嚢(marsupium)から得ることが好ましく、内臓組織は口腔粘膜、食道粘膜、胃粘膜、腸粘膜、鼻腔粘膜、咽喉(gorge)、気管、腎臓、尿道、子宮粘膜、膀胱、または膣から得ることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記トリプシン/EDTA処理は周知のグリーン法によって行われる(RheinwaldおよびGreen、1975)。処理されるトリプシン/EDTAの量はトリプシンが0.025〜0.25%、EDTAが0.005〜0.02%であることが好ましい。トリプシン/EDTAの量がこれより低い場合には細胞の分離が十分に起こらず、高い場合には細胞が損傷するため、コロニーの数が著しく減少する。
【0024】
磁気撹拌は60〜700rpm、さらに好ましくは150〜500rpmの速度で10分〜4時間実施されることが好ましい。60rpm以下である場合には細胞が十分に分離しない。700rpmより速い場合には細胞が損傷するためコロニーの数が著しく減少する。本発明の磁気撹拌は、基底細胞の基底膜への結合能力を弱化させて細胞の分離を促進させる。
【0025】
また、2番目の目的を達成するために、物理的な刺激、すなわち伸張力を加えながら、分離された皮膚細胞を培地中でインビトロで前条件付け方法を提供する。本発明の方法によれば、皮膚細胞が体組織に移植された後に受けるであろう様々な物理的刺激に対して皮膚細胞を前条件付けするための、従来の細胞一次培養法に基に、移植の前に皮膚細胞に物理的な刺激を付加的に供与する。
【0026】
本発明の方法において、前記物理的な刺激は真空によって生じ、コンピュータ化されたバイオストレッチシステムもしくはフレクサセルテンションプラス(商標)システムまたはその類似装置を使用する。この装置は真空の圧力を利用してゴム底部よりなる培養プレートを拡張することによって接種された細胞および支持体に伸張力を提供できる。伸張力(strain)は周波数0.1Hz〜3.0Hz、最大伸張力0.01%〜40%で拍動的または継続的に適用されることが好ましい(伸張(elongation))。最大伸張力がこれより小さい時には細胞に物理的な刺激が提供されず、大きい時には細胞に損傷が生じたり細胞の付着力が弱くなって、好ましくない。
【0027】
本発明のインビトロ細胞前条件付けの方法を具体的に説明すれば、次のようである。
【0028】
まず、細胞をゴム底部に容易に付着させるために、IP型コラーゲン(Cell matrix、Gelatin Corp.)またはIA型コラーゲン(Cell matrix、Gelatin Corp.)を底部がゴムよりなる6ウェルプレートにコーティングする。コーティングされた6ウェルプレートにフィブロネクチンおよび/またはグリオセアミノグリカン(GAG)を添加して細胞の付着および増殖を向上できる。細胞をコラーゲンまたは他の細胞外基質でコートされたプレートに接種して80〜90%程度の密集度に到達するまで適切な培地で培養する。培地は2日に一回ずつ交換し、細胞の前条件付けの間に無血清培地(2ml)に交換する。適切な成長因子の添加をするもしくはしない、または血清を添加するもしくはしないという条件で、細胞を前条件付けする間、周波数0.1〜3.0Hz、最大伸張力0.01〜40%を継続的に提供する。好ましくは、前記細胞は繊維芽細胞または血管内皮細胞(VEC)またはケラチノサイトである。繊維芽細胞には0.5〜15%の最大伸張力、VECには10〜30%の最大伸張力、ケラチノサイトには0.1〜30%の最大伸張力を提供する。
【0029】
また、3番目の目的を達成するために、本発明は前記磁気撹拌法で分離された上皮細胞を人工真皮構築物単独でもしくは脱表皮真皮(de-epidermized dermis)(DED)単独で、または繊維芽細胞と共に、同時にまたは順次に接種してバイオ人工皮膚を調製する方法を提供する。
【0030】
本発明において、前記真皮構築物は商用化された任意の人工真皮構築物も使用でき、例えば、FDA許可されたもしくはFDA許可進行中である中和されたキトサンスポンジもしくは中和されたキトサン/コラーゲン混合スポンジ(MTT社のBAS(商標))、Integra(登録商標)(Integra Life Sciences社)、Alloderm(Life Cell社)、Terudermis(Terumo Co.)またはBeschitin W(Unitika Ltd.)を挙げられる。また、バイオ人工皮膚に用いられるDEDは人間の死体または動物から得られることが好ましい。
【0031】
また本発明の3番目の目的を達成するために、好ましくは人工真皮構築物にメラニン細胞、毛嚢細胞または真皮鞘を共に接種して作られたバイオ人工皮膚を調製する方法も提供される。
【0032】
さらに、3番目の目的を達成するために目的を達成するために、本発明は繊維芽細胞を人工真皮構築物またはDEDに接種してバイオ人工真皮を調製する方法およびこれを創傷治癒、組織拡張(tissue expansion)、または形成外科のために体組織にバイオ人工真皮を移植する方法を提供する。
【0033】
本発明の3番目の目的はまた、人工真皮構築物中で、VEC単独で、または人工真皮構築物と共に、人工バイオ人工真皮を調製する方法によっても達成される。
【0034】
前記のバイオ人工皮膚またはバイオ人工真皮の調製方法では、本発明の方法によって分離・培養された上皮細胞および/または繊維芽細胞を1×104〜1×106 cells/cm2(スカフォールド)で供与する。振とう器を利用してフローを与えつつ細胞を真皮構築物に付着させた後、振とう器を利用してフローを与えつつ培養する動的方法、およびフローを与えず細胞を真皮構築物に付着させて培養する静的方法を全て使用した。
【0035】
また、4番目の目的は、本発明は本発明の細胞分離方法で分離された上皮細胞を単独もしくは真皮繊維芽細胞と共に動物の損傷した皮膚組織または内臓組織に移植して損傷した皮膚または内臓を治療する方法によって達成される。
【0036】
本発明の4番目の目的はさらに本発明の細胞分離方法で分離された上皮細胞および/または繊維芽細胞を人工真皮構築物に接種して作られたバイオ人工皮膚またはバイオ人工真皮を動物の損傷した皮膚組織または内臓組織に移植して損傷した皮膚または内臓を治療する方法を提供する。
【0037】
本発明において、分離された細胞の移植方法は当業界によく知られた方法(Wangら、2000、JID 114:674-680)によって自家移植または同種移植して実施できる(実施例4参照)。
【0038】
本発明において、損傷した皮膚組織は火傷、外傷、または潰瘍による皮膚損傷部位だけでなく、皮膚成形外科手術、組織伸張(tissue augmentation)および組織増強(tissue expansion)のための部位も含む。また、前記内臓組織は口腔粘膜、食道粘膜、胃粘膜、腸粘膜、鼻腔粘膜、咽喉、気管、腎臓、尿道、子宮粘膜、膀胱、または膣を含む。
【0039】
さらに、本発明で調製されたバイオ人工皮膚またはバイオ人工真皮は、臨床適用、研究用または試験用モデルとして利用されうる。例えば、化粧品原料の毒性または効能を試験するためのモデル、医薬品の皮膚透過試験または効能もしくは毒性を試験するためのモデル、発毛剤の効能を試験するためのモデル、創傷治癒を研究するためのモデル、細胞遊走、癌細胞の侵入、癌細胞の転移または癌の進行を研究するためのモデル、血管新生を研究するため、または血管新生促進剤もしくは血管新生抑制剤の効能を試験するためのモデル、あるいは上皮細胞、基質細胞およびVECの相互作用、細胞分化、タンパク質の機能または遺伝子の機能を研究するためのモデルに使用されうる。
【0040】
本発明者らは分離された上皮細胞の細胞収率、CFEおよびコロニーサイズ(細胞数/コロニー)について本発明による磁気撹拌法を従来のグリーン法、サーモリシン法(Germainら、1993、Burns 19:99-104)およびディスペース法(SimonおよびGreen、1985、Cell 40:677-683)を比較した。その結果、磁気撹拌法の細胞収率の相対値は6.3(グリーン法)、2.2(サーモリシン法)および4.9(ディスペース法)であった(図2、3)。磁気撹拌法のCFEの相対値は1.2(グリーン法)、4.2(サーモリシン)および1.4(ディスペース法)であった(図4)。包皮した試料当り獲得できるコロニー形成細胞(幹細胞)の総数(細胞収率をCFEに掛けることによって得られる)は、磁気撹拌法の相対値は7.2(グリーン法)、9.2(サーモリシン)および6.9(ディスペース)であった(図5)。
【0041】
また、本発明による磁気撹拌法を用いた場合、細胞分離法の細胞表面のβ1インテグリンの発現レベルが磁気撹拌法によって右側に移動(上昇)した(図6)。これは幹細胞のマーカーであるインテグリンブライト細胞(主にインテグリンを発現する細胞)の比率が増加したことを意味する。しかし、インボルクリン陽性細胞(終末分化(terminal differentiation)のマーカーであるインボルクリン)の比率は他の分離法に比べて磁気撹拌法が低かった。結局、本発明の磁気撹拌法による細胞分離法は細胞収率およびCFEを向上させつつ終末分化を抑制する。したがって本発明の磁気攪拌法は、細胞の分化および老化の影響を抑制しつつその数を拡大するのに最も適切な細胞分離法である。幹細胞の割合が増加するため、皮膚移植に使用するのにも良い方法であると言える。
【0042】
また、本発明の3番目の目的は、本発明は人工または天然の真皮構築物に前条件付けされた真皮構成細胞を接種してバイオ人工真皮を調製する方法によって達成される。前記インビトロの前条件付けの方法によって前条件付けされた繊維芽細胞および/またはVECを人工または天然の真皮に1×103〜1×107cells/cm2の密度で動的方法および/または静的方法で接種してバイオ人工真皮を調製する。
【0043】
バイオ人工真皮の形成する、さらに別の方法は、繊維芽細胞および/またはVECを前記と同じ方法によって人工または天然真皮に1×103〜1×107 cells/cm3の密度で接種した後、インビトロ細胞前条件付けの方法のとおり物理的な刺激を与えながら、前条件付けを行う方法である。
【0044】
バイオ人工真皮を調製するさらに他の方法は、真皮構築物としてコラーゲン溶液またはフィブリン溶液を使用する方法がある。
【0045】
本発明の前記インビトロ細胞前条件付けの方法によって前条件付けされた繊維芽細胞および/またはVECをコラーゲン溶液またはフィブリン溶液に1×103〜1×107 cells/cm3の密度で混合し、ゲル化させてバイオ人工真皮を調製できる。
【0046】
または、本発明の前記インビトロ細胞前条件付けの方法によって前条件付けされた繊維芽細胞および/またはVECをコラーゲン溶液またはフィブリン溶液に1×103〜1×107 cells/cm3の密度で混合し、ゲル化させた後、前記のインビトロ細胞前条件付けの方法のような物理的な刺激を提供してバイオ人工真皮を調製できる。
【0047】
または、本発明のインビトロ細胞前条件付けの方法で前条件付けされていない繊維芽細胞および/またはVECをコラーゲン溶液またはフィブリン溶液に1×103〜1×107 cells/cm3の密度で先に混合してゲル化させた後、前記のインビトロ細胞前条件付けの方法のような物理的な刺激を提供してバイオ人工真皮を調製できる。
【0048】
好ましくはバイオ人工真皮の調製の際に供される物理的な刺激は前記のインビトロで細胞を前条件付けする方法と同じ条件下で供与される伸張力であってもよい。バイオ人工真皮を調製するための条件は利用される人工真皮構築物の形や種類に応じて、また調製された人工真皮を用いて実施される臨床試験の目的に応じて、変化させることができる。
【0049】
前記バイオ人工真皮を調製するのにおいて、前記真皮構築物はDED、コラーゲン溶液、フィブリン溶液、ゲル化コラーゲン、ゲル化フィブリンのような天然の真皮構築物または商用化された如何なる人工真皮構築物も使用できる。人工真皮構築物としては中和されたキトサンスポンジ、中和されたキトサン/コラーゲン混合スポンジ(MTT社のBAS(商標))、Integra(登録商標)(Integra Life Sciences社)、Alloderm(Life Cell社)、Terudermis(Terumo Co.)またはBeschitin W(Unitika Ltd.)が適している。
【0050】
バイオ人工真皮を調製する時、使用される真皮構築物にフィブロネクチンおよび/またはグリコスアミノグリカン(GAG)を添加してバイオ人工真皮を調製する。
【0051】
また本発明の3番目の目的は、本発明はバイオ人工皮膚を調製する方法によって達成される。この方法において前記のインビトロ細胞前条件付けの方法で前条件付けされた表皮構成細胞をは真皮構築物に1×103〜1×107cells/cm3の密度で静的方法で接種される。
【0052】
また本発明に記載のバイオ人工皮膚を調製する際、真皮構築物に前条件付けされていない表皮構成細胞を1×103〜1×107cells/cm3の密度で接種した後、前記のインビトロ細胞前条件付けの方法のような物理的な刺激を加える。バイオ人工皮膚調製の際に供される物理的な刺激は、前記のインビトロ細胞前条件付けの方法と同じ条件下で共される伸張力でありうる。
【0053】
前記の本発明の方法でバイオ人工皮膚を調製するために使われる真皮構築物は、人工真皮、天然真皮、前記の方法で調製されたバイオ人工真皮、前記の方法以外の方法で調製されたバイオ人工真皮である。人工真皮構築物としては中和されたキトサンスポンジ、中和されたキトサン/コラーゲン混合スポンジ(MTT社のBAS(商標))、Integra(登録商標)(Integra Life Sciences社)、Alloderm(Life Cell社)、Terudermis(Terumo Co.)またはBeschitin W(Unitika Ltd.)が好ましい。
【0054】
バイオ人工皮膚の調製時に使用される表皮細胞は、ケラチノサイトおよびメラニン細胞を各々または共に使用できる。好ましくはメラニン細胞、毛嚢細胞、真皮鞘を各々または3つすべてを接種してバイオ人工皮膚を調製する。
【0055】
本発明の4番目の目的を達成するために、前記の方法で調製されたバイオ人工真皮またはバイオ人工皮膚を移植して損傷した組織を治療する方法も提供する。または前記の細胞前条件付けの方法で前条件付けされたケラチノサイト、繊維芽細胞、またはVECを損傷した皮膚組織または内臓組織の移植部位に直接接種して損傷した組織を治療する方法を提供する。バイオ人工真皮、バイオ人工皮膚を移植する方法や、ケラチノサイト、繊維芽細胞、またはVECを接種する方法は、当業者に周知である。
【0056】
本発明者らは繊維芽細胞、VEC、およびケラチノサイトのような多様な真皮細胞への、インビトロ前条件付けの効果を以下の実施例から確認した。
【0057】
発明を実施するための最良の態様
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。この実施例は、本発明の理解をさらに容易にするためのものであって、本発明の範囲がこの実施例に限定されることではない。
【0058】
<実施例1:細胞分離および培養>
一次ケラチノサイトを成人の包皮から分離した。細胞が分離するまで、切られた包皮を1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび250 ng/mlのファンギゾン(Fungizone:Gibco、Cat.No.15240-062)を含有する表皮最小培地(以下E-培地)に4℃で放置した。一次ケラチノサイトは環状切除後24時間以内に分離した。
【0059】
包皮試料を5%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するリン酸緩衝液(PBS)において、少なくとも8回洗浄した。ほとんどの皮下組織を包皮試料の真皮から滅菌外科用鋏で除去し、残留部分を1〜2mm2以下の組織片に切った。
【0060】
細胞を分離するための4つの方法は、本発明による(i)磁気撹拌法ならびに従来の方法である(ii)グリーン法、(iii)サーモリシン法および(iv)ディスペース法で、参考文献に準じて実行し、4つの方法を比較した(図2参照)。
【0061】
(i)磁気撹拌法
組織片を、10mlの0.00125%トリプシンおよび0.01%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で、30分間100rpmで磁気撹拌させた。分離された細胞を20%牛胎血清を含有する10mlのE-培地で洗浄してトリプシンを不活化し、遠心分離した。細胞ペレットをケラチノサイト成長培地(KGM)(カタログ番号.CC-3111、Clonetics BioWhittaker、Walkersville)に再懸濁し、5X103/cm2の密度で接種した。この工程は3回実施した。
【0062】
(ii)グリーン法
組織片を10mlの0.025%トリプシン溶液中で、細胞を分離するために5分おきに一回ボルテックスしつつ、37℃で30分間培養した。分離された細胞を20%牛胎血清を含有する10mlのE-培地で洗浄してトリプシンを不活化し、遠心分離した。細胞ペレットをKGM(カタログ番号.CC-3111、Clonetics BioWhittaker、Walkersville)に再懸濁し、培養プレートに5X103/cm2の密度で接種した。この工程は3回実施した。
【0063】
(iii)サーモリシン法
組織片を37℃で4時間、サーモリシン溶液(250μg/ml、カタログ番号.P1512、Sigma-Aldrich Korea)で処理した。表皮層を分離し、洗浄した後、得られた細胞を10mlの0.05%トリプシンおよびEDTA中で、37℃で30分間振とうさせながらさらに培養した。分離された細胞を20%牛胎血清を含有する10mlのE-培地で洗浄してトリプシンを不活化し、遠心分離した。細胞ペレットをKGM(カタログ番号.CC-3111、Clonetics BioWhittaker、Walkersville)に再懸濁させ、培養プレートに5X103/cm2に接種した。
【0064】
(iv)ディスペース法
組織片を、37℃で4時間ディスペースII溶液(2.4U/ml、カタログ番号.165859、Roche、Mannheim)で処理した。表皮層を分離し、洗浄した後、得られた細胞懸濁液を10mlの0.05%トリプシンおよびEDTAの中で37℃で30分間振とうさせながらさらに培養した。分離された細胞を、20%牛胎血清を含有する10mlのE-培地で洗浄してトリプシンを不活化し、遠心分離した。細胞ペレットをKGM(カタログ番号.CC-3111、Clonetics BioWhittaker、Walkersville)に再懸濁させ、培養プレートに5X103/cm2の密度で接種した。
【0065】
4つの異なる方法で分離された細胞は、細胞収率を確認(発明の効果1参照)するか、もしくは前述の密度でカバースリップに接種した後、純度を確認(発明の効果2参照)するか、または、インテグリンの発現(発明の効果4参照)もしくはインボルクリンの発現(発明の効果5参照)を確認するために検査した。また、2週間培養した後、培養プレートに接種された細胞は、CFE(発明の効果3参照)するか、または、実施例2のように、幹細胞マーカーであるβ1インテグリンブライトセルの比率を流動細胞測定法で確認する。または実施例4のような方法で、培養細胞をヌードマウスに直接移植して、培養細胞が皮膚へと分化するかどうかを確認するか(発明の効果6参照)、または実施例5のような方法で、脱表皮真皮(DED)に接種して、培養細胞が皮膚へと分化するかどうかを確認した(発明の効果7参照)。
【0066】
<実施例2:蛍光活性化細胞分類法(FACS)>
実施例1から得られた細胞のうち、幹細胞のマーカーとして知られるβ1インテグリンを多く発現するβ1インテグリンブライトセルの比率を測定するために、4つの方法で分離した細胞におけるβ1インテグリンの発現レベルをFACSにを用いて比較した。4つの方法によって各々分離された細胞を、β1インテグリン抗体(Chemicon)と共にインキュベートした後、フルオレセイン・イソチアネート(FITC)結合された山羊抗マウス抗体と共に45分間氷上でインキュベートした。各段階間に、細胞を5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝液(PBS)で洗浄した。染色手順の最後に、細胞を1X106 cells/mlに再懸濁し、FACStarPlus(Beckton Dickinson)を使用して分類した。実験当り少なくとも10,000細胞を流動細胞測定法で分析した。実験ごとに自然蛍光抗体およびイソタイプ対照抗体を使用して結果を補正した(発明の効果4および図6参照)。
【0067】
<実施例3:免疫染色>
実施例1から得られたケラチノサイトをカバースリップで培養した後、4℃で10分間、エタノール/メタノール(1:1)混合物中で固定した。分離、培養された細胞がケラチノサイトだけからなるかどうかを確認するために、固定された細胞を上皮細胞のマーカーであるパン・サイトケラチン抗体で染色した(図8、発明の効果2参照)。また、分離、培養された細胞が基底細胞の特徴を表すか否かを確認するために、固定した細胞をα2インテグリン抗体で染色し(図8、発明の効果4参照)、分化する細胞数を確認するためにインボルクリン抗体で染色した(図8、発明の効果5参照)。インテグリンα2(chemicon)、β1(chemicon)の抗体はマウスモノクローナル抗体を使用し、パン・サイトケラチン(Novocastra)、インボルクリン(BiomedicalTechnologies、ケラチノサイトの分化マーカー)の抗体はウサギポリクローナル抗体を使用した。一次抗体存在下で培養した後に、標準ABCキット(Vector Laboratories)を利用して染色した。
【0068】
<実施例4:ヌードマウスに移植されたケラチノサイトの皮膚への分化>
分離されたケラチノサイトが皮膚への分化に成功するかどうかを生体内で(インビボ)評価するために、分離したヒトケラチノサイトをヌードマウスに移植した(図9、発明の効果6参照)。直径1cmの全層性の切り込みをヌードマウスの背に付け、その切り込みにプラスチックチャンバを設置する。実施例1で培養したケラチノサイト(5×105 cells/cm2)および真皮繊維芽細胞(1×105 cells/cm2)をKGMに混合した細胞懸濁液を、ヌードマウスの背に先に移植したプラスチックチャンバ内それぞれ接種した。1週間後にプラスチックチャンバを除去して表皮の分化を誘導した。再生された皮膚組織を分離して、3.7%ホルマリン/PBSに固定し、ヘマトキシリン&エオジンを含む適切な試薬で組織染色を実施して、接種した細胞の皮膚組織への分化(proliferation)を確認した(図10参照)。
【0069】
<実施例5:DED上でのケラチノサイトの皮膚表皮層への分化>
ケラチノサイトおよび繊維芽細胞が皮膚組織への分化に成功するかどうかをインビトロで評価するために、人体死体から得た脱表皮真皮(DED)に、ケラチノサイトおよび繊維芽細胞を接種して3週間培養した(図11、発明の効果7参照)。特に1×105細胞/cm2の密度で繊維芽細胞を下部皮膚網上部(bottom dermal reticulus)に、一日後に5×105 cells/cm2の密度でケラチノサイトを上方皮膚乳頭部に接種した。得られるDEDを水に浸った条件で1週間、そして空気-液体界面で2週間培養した。得られる培養物の一部を取り除き、3.7%ホルマリン/PBSに固定し、ヘマトキシリン&エオジンを含む適切な試薬で組織染色を実施して、接種された細胞の皮膚組織への分化(proliferation)を確認した。
【0070】
<実施例6および7>
バイオ人工皮膚は、繊維芽細胞を含むか、または含まないで調製されてもよい。本態様において、繊維芽細胞を含むバイオ人工皮膚はインビボおよびインビトロにおいて構築された。繊維芽細胞を分離して培養し、インビボ接種に供して真皮層を形成させた(図9、10、発明の効果6)。インビトロの調製のため、皮膚繊維細胞を人工真皮に接種してバイオ人工真皮を得た後(図11、12、13、14、発明の効果7)、インビボ移植をおこなった(図15、発明の効果8)。
【0071】
<実施例6:繊維芽細胞の人工皮膚構築物への接種>
実施例1の方法、すなわち滅菌鋏を用いて(磁気撹拌法、グリーン法)、またはサーモリシン(サーモリシン法)もしくはディスペース(ディスペース法)での処理により、成人ヒト包皮から分離した。分離した真皮層を0.07%コラゲナーゼ溶液10mlに浸して摂氏37度で2時間培養した。その後ピペッティングして培養物から繊維芽細胞を分離した。このように分離された繊維芽細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン・ストレプトマイシンを含むF-培地(ダルベッコ最小基本培地(DMEM):F-12=3:1)で培養した後、直ちに人工皮膚構築物に接種した。または保存液(DMEM50%、牛胎児血清40%、DMSO10%を含む)中で凍結させ、皮膚構築物に接種する前に解凍した。人工皮膚構築物は無菌フード中で、直径8〜10mmのサイズに穿孔して、それぞれが10mmの直径を有する24ウェルの培養プレートに置いた。直径8mmのバイオ人工真皮を調製するため、1X105個の生存細胞(トリパンブルー溶液で判定)を最小体積のDMEM培養液で希釈して、穿穴皮膚構築物に安定に結合させるために均一に接種した。用いた人工皮膚構築物は(Bioartificial skin(BAS(商標)、図12、発明の効果8参照)、Integra(登録商標)、Alloderm(Life Cell)、Terudermis(図14、発明の効果8参照)(Terumo Co.日本)、Beschitin W(Unitika Ltd.日本)、および脱表皮真皮(DED)(図13、発明の効果8参照)であった。繊維芽細胞を接種した皮膚構築物は5%CO2下において37℃で3〜5時間放置した後に、50μlのDMEM培養液を培養プレートのそれぞれ別のウェルに加え、24時間後に1mlの培養液を各々のウェルに添加した。人工皮膚構築物は3〜4週間同じ条件下で培養し、培地交換を一週間に3回おこなって、バイオ人工真皮を得た。
【0072】
<実施例7:バイオ人工真皮と人工真皮のヌードマウスについての移植実験>
実施例6のような方法でバイオ人工真皮をヌードマウスの背に移植し、組織の拡張についての効果を確認した(図15、16、発明の効果9参照)。使用されたバイオ人工真皮は真皮繊維芽細胞を人工真皮構築物(Integra(登録商標)およびTerudermis)および純粋人工真皮構築物(Integra(登録商標)およびTerudermis)に接種することによって調製された。ヌードマウスは無菌室で飼育する。ヌードマウスの背に1cm幅の切り込みを入れた。ピンセットを利用して直径8mmのバイオ人工真皮または人工真皮をそれぞれのマウスの筋膜上に移植し、縫合糸で縫った後、消毒されたガーゼで覆った。感染を防止するために抗生物質(アンピシリンおよびストレプトマイシン)を含む水をマウスに与えた。実験マウスの移植部位の高さを毎日測定し、28日後に屠殺した。組織学的分析のために、そのマウスから無処置皮膚および移植部位を含む組織部位を分離した。組織試料は3.7%ホルマリン/PBSに固定した後、パラフィンで包埋し、切片化して、ヘマトキシリン&エオジン溶液で染色する。
【0073】
<実施例8:真皮繊維芽細胞の前条件付け>
包皮切除した新生児包皮または成人皮膚組織を、包皮切除直後にペニシリンおよびストレプトマイシンを含んだPBSに10回以上洗浄し、組織を2mm単位に分画した。その組織画分を2.4 U/mlディスパーゼを4℃で一夜処理してケラチノサイトを分離し、0.35%コラゲナーゼで、37℃、2時間処理して単一繊維芽細胞に分離した。その単離した単一繊維芽細胞をF-培地(DMEM/F-12=3:1に10%牛胎児血清または10%牛新生児血清を含んだ培地)で培養して、約80%の密集度に至った時に継代培養した。4継代の繊維芽細胞を3×104cells/ウェルの密度で接種して、2日に一回ずつ培地を交換しながら、F-培地で8日間した後に前条件付けを実施した。細胞前条件付けのために、無血清培地(2ml)に交換した。無血清培地は、何の成長因子を添加しない培地か、または50ng/ml 血小板-誘導成長因子(PDGF)-BB、10ng/mlインシュリン成長因子(IGF-I)、または50ng/ml PDGF-BBと10ng/ml IGF-Iを添加した培地だった。伸張力は前条件付けのために、真皮繊維芽細胞に、FX-4000T(商標)を用いて、37℃2日間、最大伸張力10%、周波数1.0Hzで適用された。対照試料は同じ条件で培養し、伸張力を加えなかった。
【0074】
真皮繊維芽細胞を前条件付けした後、真皮繊維芽細胞をトリプシンで取り離し、コラーゲンIVがコーティングされた直径13mmのカバースリップに接種し、F-培地で培養した。細胞内のフィブロネクチンを免疫蛍光染色し、細胞核をDAPI染色して細胞前条件付けの効果が持続されるか否かを確認した。
【0075】
細胞前条件付けによる繊維芽細胞の総タンパク質量の増加および細胞数の変化を確認した(発明の効果10参照)。細胞分裂誘発に関与するサイクリン-D1の発現量の増加をウェスタンブロット分析で確認(発明の効果11参照)、培養液中に分泌された細胞外基質構成成分(フィブロネクチン)の増加を免疫沈殿で確認した(発明の効果12参照)。真皮繊維芽細胞が筋繊維芽細胞に転換されていないことを免疫蛍光染色で確認した(発明の効果14参照)。培養液中のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性の増加をザイモグラフィで測定した(発明の効果15参照)。細胞前条件付けの効果が持続していることをカバースリップに接種後、4日目、7日目に免疫蛍光染色で確認(発明の効果13参照)した。
【0076】
<実施例9:生体VECの前処理>
4継代由来のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を2×105cells/ウェルの密度で接種し、細胞接着のために一日間静置した。FX-4000T(商標)を用いて周波数1.0Hz、最大伸張力15%を加えながら、HUVECを2日間上皮成長培地(EGM)-MV(Clonetics Inc.)で培養した。対照試料は同じ条件下で伸張力を加えずに培養した。
【0077】
細胞を前条件付けした後、HUVECの細胞外基質構成成分であるコラーゲンIVレベルの増加を免疫細胞染色で測定した(発明の効果12参照)。培地中に分泌された血管内皮成長因子(VEGF)の増加を酵素結合免疫測定(ELISA)法で測定した(発明の効果17参照)。
【0078】
<実施例10:生体ケラチノサイトの前処理>
3継代の皮膚ケラチノサイトを5×105cells/ウェルの密度で接種してKGM培地で培養した。培地交換後、FX-4000T(商標)を利用して最大伸張力20%、周波数0.5Hzを加えつつ、皮膚ケラチノサイトを2日間培養した。対照試料は同じ条件下で伸張力を加えずに培養した。
【0079】
前条件付けした後、皮膚ケラチノサイトのフィブロネクチンの増加を免疫沈殿で測定した(発明の効果12参照)。培養液中のMMP活性の増加をザイモグラフィで確認した(発明の効果15参照)。
【0080】
<実施例11:同種繊維芽細胞の創傷治療への適用:繊維芽細胞の継代培養によって生じるHLA-ABC発現減少の測定>
成人の繊維芽細胞を包皮試料から分離させた後、MACS抗繊維芽細胞マイクロビーズ(Miltenyi Biotec.)で室温で1時間反応させ、カラムに供与して純粋な繊維芽細胞を確保した。分離した繊維芽細胞を100mm培養皿一枚当たり1×105cell接種して、80〜90%密集度に到達する度に継代培養した。培地はF-培地を使用し、2日に一回ずつ培地を交換した。一次継代由来の繊維芽細胞をFACSを供して、HLA-ABC(Deko)およびHLA-DR(Neomarker)の発現レベルを測定した。その結果、HLA-DRは発現されていなかった。そのため、以後の継代からはHLA-DRを分析しなかった。FACS分析のために、分離した繊維芽細胞をトリプシンで処理し、FACS試薬で洗浄した後、HLA-ABC抗体(Dako)およびHLA-DR抗体(Neomarkers)と反応させ、FITC標識2次抗体に反応させた。細胞濃度はFACS分析のために5×105〜1×106cellsに調整した(発明の効果16参照)。
【0081】
<実施例12:総細胞タンパク質量の分析>
細胞内の総タンパク質量の定量分析のために、細胞プレート(BioFlex)をPBSで洗浄し、タンパク質分解酵素阻害剤として作用する2mMフェニルメチルスルホニルフッ化物(PMSF)を添加した、細胞溶解緩衝液(20mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、1mM Na2EDTA、1mM EGTA、1% Triton X-100、2.5mM ナトリウムピロリン酸塩、1mM Na3VO4、1mM β-グリセロリン酸塩、1μg/ml ロイぺプチン)中で4℃20分間、細胞を溶解させた。細胞スクレーパを利用して細胞溶解物を掻き集め、12,000rpm、4℃で20分間遠心分離した。遠心分離物から得た上澄み液は細胞内のタンパク質の分析のために回収され、分析はビシンコニン酸(BCA)で実施された。上澄み液10μlをBCA:4% CuSO4=49:1に混合された溶液2mlに添加して37℃で30分間反応させた後、562nmの波長で吸光度を測定した。タンパク質の濃度はウシ血清アルブミン(BSA)で算出された標準曲線と比較して換算した。
【0082】
<実施例13:免疫沈殿>
FX-4000T(商標)による前条件付けの後、細胞培養液は細胞が分泌した成分の分析のために保管した。細胞培養液中の関心対象のタンパク質を細胞培養プレートの単位面積当りの細胞数を基準に定量した。
【0083】
予め決められた量の細胞培養液にコンカナバリンAセファロース4Bを添加して、回転器で4℃で2時間を超えて反応させた。得られた細胞を細胞溶解緩衝液(1% Tx-100、50mM Tris-Cl(pH7.4)、150mM NaCl、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.2% SDS)で3回洗浄した。その細胞を、高塩濃度緩衝液(0.5M NaCl、50mM Tris(pH7.4))および低塩濃度緩衝液(10mM Tris(pH7.4))に各々1回ずつ再度洗浄して、残っている細胞溶解緩衝液を除去した。その細胞に2×試料緩衝液を入れて95℃で5分間溶解させた後、遠心分離した。上澄み液を一般的な方法に準じて電気泳動およびウェスタンブロット分析を実施した。フィブロネクチンモノクローナル抗体およびI型コラーゲンモノクローナル抗体を利用してフィブロネクチンおよびコラーゲンを同定した。定量分析のために、増強された化学発光(ECL)濃度測定によってフィブロネクチンおよびコラーゲンのバンドが可視化され、対照試料と比較された。一次抗体としてフィブロネクチン(Hybridoma)、コラーゲンI(Quartett)、サイクリンD1(Dako)はモノクローナル抗体を使用した。
【0084】
<実施例14:免疫蛍光染色法>
蛍光染色のために、細胞が接種されたカバースリップを100%メタノールで固定させ、PBSで希釈された0.2% TritonX-100をもちいて浸透化させた。PBSで希釈された20% 正常ヤギ血清(NGS)で1時間反応させ、非特異的な抗原をブロックした。この後、ヒトフィブロネクチンハイブリドーマ培養上澄み液(Hybridoma)またはα平滑筋アクチン抗体(Dako)で、4℃で一夜反応させ、蛍光標識2次抗体で1時間室温で反応させた。細胞をDAPIで室温で5分間染色し、細胞核の形態を観察し、細胞数を数えた。
【0085】
染色した細胞を有するカバースリップはVectashield(Vector Laboratory)に搭載させた。細胞を蛍光顕微鏡(BX-FLA:Olympus、Japan)に蛍光的に写真撮影した。
【0086】
<実施例15:免疫染色法>
免疫染色のために、細胞が接種されたカバースリップを有する培養プレートを100%メタノールで固定させ、PBSに希釈された0.2% TritonX-100に浸透化させた。次に培養プレートの底を取り除いた。PBSで希釈された20% 正常ヤギ血清(NGS)で1時間反応させ、抗原の非特異的反応をブロックした。この後、細胞を一次コラーゲンIV抗体(Dako)で室温で45分間反応させ、標準ABCキットで染色し、Vectashield(Vector Laboratories)に搭載した。
【0087】
<実施例16:ザイモグラフィ>
FX-4000T(商標)で細胞を前条件付けした後、細胞培養液に存在するMMPの活性をザイモグラフィで分析した。細胞培養液をメルカプトエタノールが含まれていない試料緩衝液で希釈して、0.1%ゼラチンが含まれた10%ゲルでドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を実施した。電気泳動の後、ゲルを2回、2.5% TritonX-100中でそれぞれ30分間復元させた。その後、1×デベロッピング緩衝液(50mM Tris(pH7.4)、5mM CaCl2、1M ZnCl2)に浸かって常温で30分間インキュベートさせ、次に新鮮なデベロッピング緩衝液中、37℃で16時間を超えてインキュベートさせる。予め準備した染色緩衝液(10% 酢酸、10%プロパノール、0.5%クマシーブリリアントブルー)に室温で2時間染色させ、次に脱色緩衝液(10%酢酸、10%プロパノール)にバンドが現れる脱色する。蒸溜水でリンスし、10% グリセロール/12% エタノールを含む溶液中でゲルを脱水する。
【0088】
<実施例17:VEC成長因子(VEGF)のELISA分析>
HUVECをFX-4000T(商標)で伸張力を加えてながら、培地中で前条件付けした後、培養液中のVEGF分泌量のレベルの変化をR&D Qunatikineキットを利用してELISA方法で分析した。
【0089】
発明の効果
1.細胞収率
細胞を4つの方法によって組織から分離した後、残った組織を固定し、ヘマトキシリン&エオジン染色して組織中に細胞が残っているかどうかを確認した。磁気撹拌法で細胞を分離し組織中には、細胞がほとんど存在しなかった。対照的に、他の分離法で細胞を分離した組織中には多くの幹細胞が存在した(図1)。このような細胞の組織からの完全な分離は、磁気撹拌の適用によって可能であった。磁気攪拌の効果は分離された細胞数を測定することによって支持された(表1、図2、3)。本発明による磁気撹拌法はグリーン法に比べて約700%の細胞収率の改善を表す。
【0090】
(表1)細胞収率-包皮試料当り総細胞数(X107

1:平均値±SEM
【0091】
2.細胞の純度
異なる分離方法で分離された細胞の純度を確認するために、ケラチノサイトのケラチノサイトの指標としてパン・サイトケラチン抗体を用いて培養細胞を蛍光染色した。磁気攪拌法に関しては100%のパン・サイトケラチン陽性細胞(ケラチノサイト)が検出された。磁気攪拌法により分離された細胞は繊維芽細胞を含まない純粋なケラチノサイトを含むことは明らかである(図8)。他の細胞分離法に関して、培養細胞中に同じ比率でのパン・サイトケラチン陽性細胞が検出された。したがって、磁気撹拌法は細胞の純度に関して他の分離法と同じ効果を提供する。
【0092】
3.コロニー形成効率(CFE)
幹細胞の存在はコロニー形成効率(CFE)で確認できる。他の分離法と比較して、磁気撹拌法によって分離されたケラチノサイトは最も高いCFEを示した(表2、図4)。特に、大きいコロニー(128個を超える細胞を含む)のCFEは顕著に増加した(表2)。これらの結果は、磁気撹拌法によって分離されたケラチノサイトの培養細胞中における幹細胞の比率が著しく改善することを表す。
【0093】
(表2)コロニー形成効率(%)1

1:10,000個の細胞が各々の6ウェルプレートに接種されて2週間培養された。
【0094】
本発明の磁気撹拌法によって分離された細胞は、他の細胞分離法と比べてより大きなCFEおよび細胞収率を示した。したがって、磁気撹拌により生成する物理的な力が細胞収率およびCFEを改善しうることが明らかである。結論として、本発明により、包皮試料当たりのコロニー形成細胞の総数はさらに9倍向上した(図5)。
【0095】
また、移植構築物内の幹細胞の不足によって誘発される、成人皮膚移植における同化率は本発明の方法によって補完されうる。
【0096】
4.インテグリン発現
免疫染色法の結果により、磁気攪拌法により分離された全てのケラチノサイトにおいて、基底膜にある細胞(基底細胞)に特異的なα2インテグリンが発現していた(図8)。これはインビトロの細胞増殖が基底ケラチノサイトの分裂によって生じることを示す。
【0097】
β1インテグリンを用いたフローサイトメトリーは異なる分離方法で分離された皮膚ケラチノサイトにおける、幹細胞の指標であるβ1インテグリンブライト細胞の比率の相対的測定である。本発明による磁気撹拌法によって分離された皮膚ケラチノサイトにおいてβ1インテグリンブライト細胞の分布が右に偏り、他の方法により分離された細胞群と比較して幹細胞の比率が最も高かった(図6)。
【0098】
5.インボルクリン発現
ケラチノサイトの分化マーカーであるインボルクリンは、低いレベルで培養ケラチノサイト中に発現され、磁気撹拌法で7%、グリーン法で7%、サーモリシン法で17%、およびディスペース法で23%であった(表3、図7)。インボルクリンを発現する細胞は、連続的に分化・老化してすぐに死滅する。
【0099】
(表3)インボルクリン発現の比率

【0100】
6.ケラチノサイトのインビボ分化
マウスの背に移植された皮膚ケラチノサイトおよび真皮繊維芽細胞の培養物は表皮、基底膜および真皮からなる完全な皮膚に分化した(図10)。ケラチノサイトはヒト特異的パン・サイトケラチン発現において陽性を表し、真皮繊維芽細胞はヒト特異的ビメンチン発現において陽性であった。この上皮細胞および真皮繊維芽細胞がヒトから由来したことを示す。また、ヌードマウスの創傷部位付近で生存していたケラチノサイトおよび繊維芽細胞は共に移動し、各々表皮および真皮に分化したことが明らかでる。加えて、基底膜はヒト表皮とヒト真皮の間に首尾良く再生された。
【0101】
7.ケラチノサイトのインビトロ分化
自然状態でケラチノサイトは階層化した多重層表皮に分化する。本発明の磁気撹拌法で分離したケラチノサイトの多重層表皮への分化能を調べるために、分離したケラチノサイトの培養細胞を脱表皮真皮(DED)に直接接種して、固定し、H&E染色した。その結果、パン・サイトケラチン発現について陽性であるケラチノサイトが多重層に成長していることが観察された(図11)。
【0102】
8.人工真皮構築物に繊維芽細胞を接種して調製したバイオ人工真皮
繊維芽細胞を動的条件下で伸張力を適用することによって接種および培養を行う場合、静的条件で接種および培養を実施した時に比べて、人工皮膚構築物BAS(商標)に付着された皮膚繊維芽細胞の数が増加した(図16)。BAS(商標)に接種された皮膚繊維芽細胞の走査電子顕微鏡(SEM)写真は付着された細胞が細胞外基質を豊富に分泌していることを確認させる(図12)。したがって、バイオ人工真皮の細胞が機能においても生体内でと同じであることが分かる。一方、DEDに接種された皮膚繊維芽細胞はBAS(商標)に接種された皮膚繊維芽細胞が構造表面に付着されたことに比べて、構造の深い部分まで見られ、そして、比較的均等に分布して実際に真皮層で発見されるものとほぼ同程度の細胞密集度を示した(図13)。人工真皮構築物であるIntegra(登録商標)およびTerudermisに接種された皮膚繊維芽細胞もDEDと同程度の密集度および均等な細胞の分布を示す。
【0103】
9.ヌードマウスに移植されたバイオ人工真皮および人工真皮の構造
Integra(登録商標)およびTerudermisに繊維芽細胞を接種してから14日後にバイオ人工真皮(図14)を得た。および市販のIntegra(登録商標)およびTerudermisをヌードマウスに移植(図15)した。これらをヘマトキシリン&エオジン染色で調べた(図15、16)。移植部位または周辺組織で炎症反応の徴候は見られなかった。移植部位は周辺組織とよく融合されており、元サイズの相当部分がそのまま維持された(図16)。繊維芽細胞および血管の流入が移植部位の全般にわたって発見され、移植部位の繊維芽細胞の密集度は無傷のマウス真皮と類似した(図16)。移植部位の高さの変化を径(calibre)を利用して測定しようとしたが、移植物の高さが低いため、組織染色写真に基づいて移植物の高さを測定した(図17)。Integra(登録商標)およびTerudermisは全て移植部位に体積減少が起きたが、これはコラーゲンの収縮および移植物の分解によると思われる。生細胞を接種したバイオ人工真皮が人工真皮構築物より移植物の体積減少幅がせまく、特にIntegra(登録商標)がTerudermisより移植物の体積減少幅が狭かった(図17)。
【0104】
本発明によるバイオ人工皮膚やバイオ人工真皮は火傷のように傷部位が大きくて、または糖尿のように傷周辺の細胞移動が難しい場合にも使用できる。本発明のバイオ人工皮膚またはバイオ人工真皮はまた、形成手術により陥没された組織再生にも容易に使用することができる。
【0105】
10.伸張力提供による細胞数の増加
繊維芽細胞にFX-4000T(商標)で2日間37℃、10%の最大伸張力、1.0Hzの周波数で細胞を前条件付けさせた後、総タンパク質量は対照群に比べて伸張力処理群が約4.8倍、血小板由来成長因子(PDGF)処理群が約2.1倍、インスリン様成長因子(IGF-1)処理群が約1.3倍、PDGF-BB+IGF-1処理群が約1.3倍増加した。
【0106】
(表4)各々の総タンパク質量(mg/ml)

【0107】
位相差顕微鏡で見られる細胞数はタンパク質量の増加のパターンとほぼ一致することが分かる(図19)。伸張力を提供しない対照群に比べて、伸張力提供群の細胞数が著しく増加した(図19のAとB比較)。伸張力提供による細胞数の増加は伸張力提供のないPDGF-BB(50ng/ml)、IGF-I(10ng/ml)、およびPDGF-BB+IGF-I処理群に比べても高かった(図19のA、C、E、&G比較およびB、C、E、&G比較)。また伸張力およびPDGF-BB(50ng/ml)、IGF-I(10ng/ml)、PDGF-BB+IGF-Iを同時に提供した場合、伸張力だけ提供した群と類似した細胞数の増加を示した(図19のB、D、F、&H比較)。
【0108】
成人の皮膚繊維芽細胞の場合、伸張力提供による細胞数の増加が新生児の皮膚繊維芽細胞に比べて低く、これは新生児の皮膚繊維芽細胞が成人の皮膚繊維芽細胞に比べて、伸張力についてより敏感であるためである。
【0109】
11.伸張力提供による細胞分裂関連タンパク質の発現
皮膚繊維芽細胞にFX-4000T(商標)で2日間37℃、10%の最大伸張力、1.0Hzの周波数で細胞を前条件付けさせた後、サイクリン-D1の発現量は、対照群と比較して、約8倍増加した。成長因子提供群で伸張力提供によるサイクリン-D1増加値は、伸張力を提供しない成長因子処理群に比べて、26〜29倍増加した(図20、表5)。
【0110】
(表5)サイクリン-D1発現量の相対比

【0111】
12.伸張力提供による細胞外基質分泌の増加(フィブロネクチン、コラーゲン)
FX-4000T(商標)で2日間37℃、10%の最大伸張力、1.0Hzの周波数で伸張力を提供した新生児の皮膚繊維芽細胞を前条件付けした場合、この細胞培養液に分泌されたフィブロネクチンは対照群に比べて約282倍増加した。PDGF-BB(対照群と比べて3倍増加)、またはIGF-1(対照群と比べて22倍)、またはPDGF+IGF-1(対照群と比べて108倍)処理群より最高94倍最低2.8倍増加した値である(図21のA)。フィブロネクチンの分泌量は伸張力提供だけで282倍増加し、伸張力と同時に、IGF-1、およびPDGF-BB処理群で約3.2倍増加した。しかし、伸張力提供がI型コラーゲンの発現には何らの影響も与えなかった(図21のA)。
【0112】
成人の皮膚繊維芽細胞の場合、新生児の皮膚繊維芽細胞より伸張力について感受性が劣るが、伸張力提供によるフィブロネクチン分泌が約2.6倍増加し、これはPDGF-BBまたはIGF-1のみを処理した群と類似する(図21のB)。
【0113】
FX-4000T(商標)で2日間37℃、最大伸張力20%、周波数0.5Hzで周期的な伸張力を提供した皮膚ケラチノサイトを前条件付けした場合、この細胞培養液に分泌されたフィブロネクチンは対照群に比べて4.7倍増加した(図22)。
【0114】
FX-4000T(商標)を利用して10%の最大伸張力、1.0Hzの周波数の伸張力を加えつつ血管内皮細胞を2日間前条件付けした場合、コラーゲンIVの発現が著しく増加した(図23のAとB)。特に、高配率顕微鏡で見て、血管内皮細胞と接着する底部にコラーゲンIVが密集した繊維状に分布することを確認した(図23のC)。
【0115】
コラーゲンIVは血管内皮細胞の血管形成に必須的である。従って、コラーゲンIVの合成増加およびコラーゲンIVの細胞底部分布は血管形成の促進を予想できる。
【0116】
13.継代後の伸張力適用による細胞前条件付け効果の持続性の確認
FX-4000T(商標)を用いて最大伸張力10%、周波数1.0Hzの伸張力を適用しながら37℃、2日間前条件付けをおこなった成人真皮繊維芽細胞を、トリプシン処理し、継代培養した場合、フィブロネクチンの発現量が4日後(図24)、および7日後、増加した。
【0117】
14.伸張力適用による純粋な繊維芽細胞群の増加の確認
FX-4000T(商標)を用いて最大伸張力10%、周波数1.0Hzの伸張力を適用しながら37℃、2日間前条件付けをおこなった成人真皮繊維芽細胞を、トリプシン処理し、継代培養した後に免疫蛍光染色した結果、α平滑筋アクチン(筋繊維芽細胞の指標)の陰性発現が示された(図25)。これは伸張力適用後に繊維芽細胞の特性を維持するということを支持する。しかし、成長因子処理群は、α平滑筋アクチン発現が陽性である細胞の顕著な増加を示したが(図25)、このことは成長因子処理後に相当数の細胞が筋肉繊維芽細胞に分化したことを意味する。創傷治癒過程で筋繊維芽細胞が一時的に現れる。しかしながら、創傷過程において、筋繊維芽細胞がしばらく存在する場合、傷跡が形成される可能性が高く、繊維芽細胞が筋繊維芽細胞よりさらに重要に作用する。したがって、伸張力が適用された処理群は成長因子処理群より高い創傷治癒効果を期待できた。
【0118】
15.伸張力適用によるMMPの活性増加
皮膚繊維芽細胞を、FX-4000T(商標)を用いて最大伸張力10%、周波数1.0Hzの伸張力を拍動的に適用しながら37℃、2日間前条件付けをおこなったとき、培養液に存在するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-2およびMMP-9の活性は、対照群と比較して増加していた(図26のA)。
【0119】
皮膚ケラチノサイトを、FX-4000T(商標)を用いて最大伸張力20%、周波数0.5Hzの伸張力を拍動的に適用しながら37℃、2日間前条件付けをおこなったとき、培養液に存在するMMP-9の活性は対照群と比べて増加し、MMP-2には有意な差は見られなかった(図26のB)。
【0120】
16.同種の繊維芽細胞の細胞治療技術への効用性確認:繊維芽細胞の継代培養によるHLA-ABC発現の減少変化の追跡
真皮繊維芽細胞におけるHLA-ABC発現が1次継代には約56.77%であり、2次継代に85.87%に増加した。3次継代では60.96%に減少し、4次継代は11.17%に著しく減少した。5継代は3.29%とほとんど発現されず、このことは次の継代でもほとんど同じであった。したがって、HLA-ABCの発現は5継代の真皮繊維芽細胞においてほとんどないようである(図27)。このような結果は、生体的に同種の4継代以降の繊維芽細胞は治療用細胞源として利用でき、組織不適合反応がおこらないということが立証する。
【0121】
17.伸張力提供によるVECのVEGF分泌の増加
血管内皮細胞(VEC)を、FX-4000T(商標)を用いて最大伸張力15%、周波数1.0Hzの伸張力を適用しながら2日間前条件付けをおこなったとき、VEGFの分泌レベルが約30%増加し、VEGF10ng/mlを添加して伸張力を提供した場合では約200%増加した(図28)。ケラチノサイトに伸張力を適用した場合は、VEGFの分泌レベルが約2,400%増加した(図28)。したがって、伸張力を適用することによって、VECおよびケラチノサイトの両方において、VEGF分泌が促進された。
【0122】
前述した本発明によれば、移植すべき培養細胞をインキュベーションする間伸張力を与えることによって、移植後に細胞が受けるであろうストレスと物理的刺激に対して前条件付けすることによって、移植後の細胞生存率と有糸分裂誘発能力が改善できる。その結果、改善されたフィブロネクチンの合成および分泌(創傷治癒に必須であると知られている)、ならびにをマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性の促進をもって、細胞増殖に必要な時間が短縮され、その結果、創傷の回復が促進される。さらにコラーゲンIVもまた血管形成が促進されるように増加される。細胞の前条件付けのこれらの利点は、宿主組織への同化能力を向上させ、皮膚移植の成功を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】成人包皮を多様な細胞分離方法によって細胞分離した後、ヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色写真である。
【図2】多様な上皮細胞分離方法の図である。
【図3】異なる細胞分離法による細胞収率を示す。
【図4】異なる細胞分離法によるコロニー形成効率(CFE)を示す。
【図5】異なる細胞分離法による、包皮試料あたりのコロニー形成細胞数を比較したグラフである。
【図6】異なる細胞分離法よって分離されたケラチノサイトのβ1インテグリン発現レベルを示すフローサイトメトリーである。
【図7】異なる細胞分離法による一次ケラチノサイトが発現したインボルクリンの免疫染色写真である。
【図8】磁気攪拌方法によって分離された一次ケラチノサイトのインボルクリン、パン・サイトケラチン、およびα2インテグリンについての免疫蛍光染色の写真である。
【図9】本発明の磁気攪拌方法によって分離されたケラチノサイトを繊維芽細胞と共にヌードマウスに移植する過程を示す絵である。
【図10】ヒトパン・サイトケラチン、ヒトビメンチン、ヒトコラーゲンIVおよびヒトラミニン5の免疫組織化学の写真である。
【図11】DED上の多層化した上皮ケラチノサイトのパン・サイトケラチンのH&E染色および免疫組織化学を示す。
【図12】繊維芽細胞をBAS(商標)に接種し、14日間培養した後の繊維芽細胞の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図13】繊維芽細胞をDEDに接種し、21日間培養した後の繊維が細胞のSEM写真(a)およびその細胞をH&E染色した写真(b)である。
【図14】繊維芽細胞を人工真皮構築物(Integra(登録商標)およびTerumermis)に接種し、14日間培養した後のH&E染色写真である。
【図15】DED中で繊維芽細胞を接種し、14日間培養した後の人工真皮構築物(Integra(登録商標)およびTerumermis)を、ヌードマウスの背へ移植する図である。
【図16】人工真皮構築物またはバイオ人工真皮構築物(Integra(登録商標)およびTerumermis)をマウスに移植し、28日経過した後の移植部位の隆起程度を示す写真およびその組織のH&E染色の写真である。
【図17】図16の人工真皮構築物またはバイオ人工真皮構築物の高さの変化を示す。
【図18】バイオ人工皮膚構築物(BAS(商標))に真皮繊維芽細胞を静的方法でまたは動的方法で接種した時の、細胞成長および分裂率を細胞密度を利用して比較した結果である。
【図19】実施例8で新生児ヒト繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施した後、細胞数の増加を示した位相差顕微鏡写真である。
【図20】実施例8で新生児ヒト繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施した後、細胞内のサイクリンD1の発現量の変化を成長因子処理群と比較したウェスタンブロット結果である。
【図21】実施例8で新生児および成人真皮繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施した後、細胞培養液中の分泌されたフィブロネクチンおよびコラーゲンを、成長因子処理群と比較した免疫沈殿アッセイ法の結果である。
【図22】実施例10でケラチノサイトをFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施した後、細胞培養液中に分泌されたフィブロネクチンを、成長因子処理群と比較した免疫沈殿アッセイ法の結果である。
【図23】実施例9でヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施した後、コラーゲンIVの発現量の変化を確認した免疫染色の結果である。
【図24】実施例8で成人繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施し、カバースリップに接種して4日間培養後の、細胞内のフィブロネクチンの免疫蛍光染色の写真および細胞核のDAPI染色写真である。
【図25】実施例8で新生児および成人繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けを実施し、カバースリップに接種して4日間培養後の、細胞内のα平滑筋アクチンの免疫蛍光染色の写真および細胞核のDAPI染色の写真である。
【図26】(a)は皮膚ケラチノサイトを、(b)は繊維芽細胞をFX-4000T(商標)を利用して伸張力を加えながら前条件付けさせた後の、培養液中のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性をザイモグラフィで確認した結果である。
【図27】実施例11で成人繊維芽細胞のHLA-ABC(組織適合抗原)の発現レベルを、継代培養度にフローサイトメトリーで分析した結果を示し、(b)は(a)のデータを基に作成した表およびグラフである。
【図28】血管内皮細胞(VEC)およびケラチノサイトを、血管内皮成長因子(VEGF)ありまたはなしの条件下で、FX-4000T(商標)利用して伸張力を加えながら前条件付けさせた後、VEGFをELISA分析法によって定量分析した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚組織または内臓組織をトリプシン処理またはトリプシン/EDTA処理すると同時に磁気撹拌する上皮細胞の分離方法。
【請求項2】
皮膚組織を、包皮、脇のした、股関節、乳房、頭皮、角膜、陰毛、腹部、育児嚢から得る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
内臓組織を、口腔粘膜、食道粘膜、胃粘膜、腸粘膜、鼻腔粘膜、咽喉、腎臓、尿道、子宮粘膜、膀胱、または膣から得る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
皮膚組織または内臓組織をトリプシン処理する場合は、トリプシン0.025%〜0.25%の量で添加し、皮膚組織または内臓組織をトリプシン/EDTA処理する場合は、トリプシン0.025〜0.25%およびEDTA0.005%〜0.02%の量で添加する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
磁気撹拌は、10分間〜4時間に60rpm〜700rpmの速度で撹拌する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の方法で分離された上皮細胞を単独または繊維芽細胞と共に、人工真皮構築物または脱表皮真皮(DED)に接種することによってバイオ人工皮膚を調製する方法。
【請求項7】
人工真皮構築物または脱表皮真皮(DED)に繊維芽細胞を接種して調製されたバイオ人工真皮に上皮細胞を接種する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
上皮細胞をメラニン細胞を共に接種する請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
上皮細胞を毛嚢細胞または真皮鞘を共に接種する請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
上皮細胞を血管内皮細胞を共に接種する請求項6または7記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項記載の方法で分離された上皮細胞を単独または繊維芽細胞と共に損傷した皮膚組織または内臓組織に移植して損傷した皮膚または内臓を治療する方法。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれか一項記載の方法で調製されたバイオ人工皮膚を損傷した皮膚組織または内臓組織に移植して損傷した皮膚または内臓を治療する方法。
【請求項13】
皮膚組織は、火傷、外傷、もしく潰瘍による皮膚損傷部位、または皮膚成形外科手術、組織伸張および組織増強もしくは角膜移植を必要とする皮膚部位ある、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
内臓組織は、癌治療、または他の目的のために切開または放射性治療が行われた後に回復または再生を必要とする損傷した組織部位である請求項11または12記載の方法。
【請求項15】
生体から分離された細胞を培地中で物理的な刺激を加えることによって前条件付けする方法。
【請求項16】
細胞が繊維芽細胞である請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞が血管内皮細胞である請求項15記載の方法。
【請求項18】
細胞がケラチノサイトである請求項15記載の方法。
【請求項19】
請求項15記載の方法で培養された細胞を人工または天然の真皮構築物に接種してバイオ人工真皮を調製する方法。
【請求項20】
細胞を人工または天然の真皮構築物に接種した後、物理的な刺激を加えつつバイオ人工真皮を調製する方法。
【請求項21】
天然の真皮構築物は脱表皮真皮(DED)、コラーゲン溶液、フィブリン溶液、ゲル化コラーゲン、ゲル化フィブリンからなる群より選択される少なくとも1つであり、人工真皮構築物は中和されたキトサンスポンジ、中和されたキトサン/コラーゲン混合スポンジ、Integra(登録商標)、Alloderm、Terudermis、およびBeschitinからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
細胞には繊維芽細胞および/または血管内皮細胞が含まれる、請求項19または20記載の方法。
【請求項23】
人工または天然の真皮構築物にフィブロネクチンおよび/またはグリコスアミノグリカンを添加する、請求項19または20記載の方法。
【請求項24】
真皮構築物に請求項18記載の方法で前条件付けされたケラチノサイトを単独で、またはメラニン細胞、真皮鞘もしくは毛嚢細胞と共に接種してバイオ人工皮膚を調製する方法。
【請求項25】
真皮構築物にケラチノサイトを単独で、またはメラニン細胞と共に接種した後、物理的な刺激を加えることによってバイオ人工皮膚を調製する方法。
【請求項26】
真皮構築物は、人工真皮構築物、天然真皮構築物、バイオ人工真皮構築物、請求項19または20記載の方法で調製されたバイオ人工真皮を含む、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
物理的な刺激は周波数0.1Hz〜3.0Hz、最大伸張力0.01%〜40%で適用される拍動的または継続的伸張力を含む、請求項15、20または25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
天然の真皮構築物は、脱表皮真皮(DED)、コラーゲン溶液、フィブリン溶液、ゲル化フィブリンからなる群より選択される少なくとも1つであり、人工真皮構築物は中和されたキトサンスポンジ、中和されたキトサン/コラーゲン混合スポンジ、Integra(登録商標)、Alloderm、Terudermis、Beschitinからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
請求項19もしくは20記載の方法で調製されたバイオ人工真皮または請求項24もしくは25記載の方法で調製されたバイオ人工皮膚を損傷した皮膚組織または内臓組織に移植することによって損傷した組織を治療する方法。
【請求項30】
請求項16記載の方法で前条件付けされた繊維芽細胞、請求項17記載の方法で前条件付けされた血管内皮細胞、請求項18記載の方法で前条件付けされたケラチノサイトを別々または共に損傷した皮膚組織または内臓組織に直接移植することによって損傷した組織を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−283981(P2008−283981A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162934(P2008−162934)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願2005−334531(P2005−334531)の分割
【原出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(501173645)コリア アトミック エネルギー リサーチ インスティテュート (3)
【Fターム(参考)】