説明

下水処理運転支援装置およびプログラム

【課題】予測流入量に基づき下水処理運転を適切に支援できるようにする。
【解決手段】演算処理部15の処理量算出手段15Cにより、設備情報14Cと各予測期間における予測流入量14Bとに基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示手段15Dにより、これら各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部13で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理技術に関し、特に雨天における下水処理運転を支援するための下水処理運転支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場では、下水管を介して流入する下水を浄化する際、沈殿処理や微生物処理など、ある程度時間がかかる処理が必要となる。このため、雨天時など下水流入量が大幅に増加して下水処理が追いつかない場合には、滞水池への一時的な取り込みや下水処理の簡略化など、各種の下水処理運転を適切に切り替えて、流入下水を効率よく処理する必要がある。したがって、下水処理運転では、下水流入量の変化に備えた計画や準備が必要となり、下水処理運転にとって下水流入量を正確に予測することは極めて重要なファクターとなる。
【0003】
このような下水処理場へ流入する下水の流入量を予測する技術として、下水流入量を示す流入量データとこの流入量データに対応する気象データとを含む履歴データにより非線形のブラックボックス予測モデルを作成し、このブラックボックス予測モデルを用いて、入力された予測条件に対応する下水の流入量をリアルタイムで予測する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
この技術によれば、将来の下水流入量を十分な信頼性を持って予測することが可能となり、下水処理運転に役立てることができる。
【0004】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開2002−208734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の下水処理運転において、オペレータは下水流入量だけでなく他の多くのファクターを考慮して運転方法を判断する必要がある。
例えば、下水流入量の変化や滞水池の滞水状況を考慮して、所望水準に放流水の水質を保つよう、高級処理、簡易処理、放流処理、および滞水処理の運転タイミングや、滞水処理で滞水する量を判断する必要がある。また、滞水状況や滞水のためのポンプの能力を考慮し、下水流入量の変化に応じてポンプの運転台数、運転開始タイミング、さらにはポンプ運転のための自家発電設備の起動要否を判断する必要がある。
【0006】
したがって、上記従来技術によれば正確な下水流入量が予測できるものの、オペレータの経験や勘に基づき多くのファクターを考慮して下水処理の運転方法を判断する必要があるため、経験の浅いオペレータでは適切に運転することができず、特に大雨や長雨の場合にはベテランのオペレータであっても判断が難しいという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、予測流入量に基づき下水処理運転を適切に支援できる下水処理運転支援装置およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる下水処理運転支援装置は、各予測期間に流入する下水の予測流入量に基づいて、各種下水処理を行う下水処理設備を用いた下水処理運転を支援する下水処理運転支援装置であって、各下水処理で処理できる下水の処理量を含む下水処理設備の設備情報を記憶する記憶部と、設備情報と各予測期間における予測流入量とに基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出する処理量算出手段と、下水処理運転に関する各種支援情報を画面表示する画面表示部と、処理量算出手段で算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部で画面表示する運転状況表示手段とを備えている。
【0008】
この際、処理量算出手段で、処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示手段で、滞水処理の要否を予測期間ごとに表示するようにしてもよい。
【0009】
また、処理量算出手段で、処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示手段で、滞水池の滞水状況として滞水池の貯留量が所望の値へ到達する到達時点を表示するようにしてもよい。
【0010】
また、処理量算出手段で、各予測期間における予測流入量と流入下水を一時貯留する滞水池の各予測期間における貯留状況とに基づいて各下水処理を運転する優先順位を決定し、この優先順位に基づいて当該予測流入量を各下水処理に順次振り分けることにより当該予測期間における各下水処理での処理量を算出するようにしてもよい。
【0011】
この際、処理量算出手段で、任意の予測期間で下水流入量を各下水処理のうち高級処理に加えて滞水処理または簡易処理へ振り分ける際、簡易処理に比較して滞水処理へ優先して振り分けるようにしてもよい。
【0012】
あるいは、処理量算出手段で、任意の予測期間で下水流入量を滞水処理へ振り分ける際、滞水池の貯留量が所定の貯留指定量に到達するまで滞水処理へ振り分け、残りの下水流入量を簡易処理へ振り分けるようにしてもよい。
【0013】
また、処理量算出手段で、オペレータから指定された貯留指定量に基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示手段で、処理量算出手段で算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部で表示するようにしてもよい。
【0014】
あるいはまた、処理量算出手段で、異なる貯留指定量ごとに各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、得られた算出結果のうちから所定の評価基準に応じて所望の算出結果を選択し、運転状況表示手段で、処理量算出手段で選択した算出結果の各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部で表示するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかるプログラムは、各予測期間に流入する下水の予測流入量に基づいて、各種下水処理を行う下水処理設備を用いた下水処理運転を支援する下水処理運転支援装置のコンピュータに、各下水処理で処理できる下水の処理量を含む下水処理設備の設備情報を記憶部で記憶する記憶ステップと、設備情報と各予測期間における予測流入量とに基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出する処理量算出ステップと、下水処理運転に関する各種支援情報を画面表示する画面表示ステップと、処理量算出ステップで算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示ステップにより画面表示する運転状況表示ステップとを実行させるようにしたものである。
【0016】
この際、処理量算出ステップで、処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示ステップで、滞水処理の要否を予測期間ごとに表示するようにしてもよい。
【0017】
また、処理量算出ステップで、処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示ステップで、滞水池の滞水状況として滞水池の貯留量が所望の値へ到達する到達時点を表示するようにしてもよい。
【0018】
また、処理量算出ステップで、各予測期間における予測流入量と流入下水を一時貯留する滞水池の各予測期間における貯留状況とに基づいて各下水処理を運転する優先順位を決定するステップと、この優先順位に基づいて当該予測流入量を各下水処理に順次振り分けることにより当該予測期間における各下水処理での処理量を算出するステップとを実行させるようにしてもよい。
【0019】
この際、処理量算出ステップで、任意の予測期間で下水流入量を各下水処理のうち高級処理に加えて滞水処理または簡易処理へ振り分ける際、簡易処理に比較して滞水処理へ優先して振り分けるステップを実行させるようにしてもよい。
【0020】
あるいは、処理量算出ステップで、任意の予測期間で下水流入量を滞水処理へ振り分ける際、滞水池の貯留量が所定の貯留指定量に到達するまで滞水処理へ振り分けるステップと、残りの下水流入量を簡易処理へ振り分けるステップとを実行させるようにしてもよい。
【0021】
また、処理量算出ステップで、オペレータから指定された貯留指定量に基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示ステップで、処理量算出ステップで算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示ステップにより表示するようにしてもよい。
【0022】
あるいはまた、処理量算出ステップで、異なる貯留指定量ごとに各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、得られた算出結果のうちから所定の評価基準に応じて所望の算出結果を選択し、運転状況表示ステップで、処理量算出ステップで選択した算出結果の各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部で表示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設備情報と各予測期間における予測流入量とに基づいて各下水処理での処理量が予測期間ごとに算出され、これら各処理量に基づいて各下水処理の運転要否が予測期間ごとに画面表示されるため、将来の各予測期間において必要となる下水処理を正確に予測して画面表示することができる。
したがって、予測流入量に基づき下水処理運転を適切に支援できるため、オペレータの経験や勘に基づき多くのファクターを考慮して運転方法を判断する必要がなくなり、経験の浅いオペレータでも適切に下水処理運転を行うことができ、大雨や長雨の場合でも、経験の有無にかかわらず適切に下水処理運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の構成を示すブロック図である。
この下水処理運転支援装置1は、全体として入力情報に対して所定の演算処理を行うコンピュータからなり、入出力インターフェース部(以下、入出力I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0025】
本実施の形態は、演算処理部15により、各予測期間における予測流入量に基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、これら各下水処理での処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに画面表示部13で画面表示することにより、流入する下水に対して各種下水処理を行う下水処理施設での下水処理運転を支援するようにしたものである。
【0026】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる下水処理支援装置1の構成について詳細に説明する。
入出力I/F部11は、外部装置と通信回線や通信網を介してデータ通信を行う回路部からなり、下水流入量の予測に用いるデータ、運転状況の予測に用いる各下水処理の運転状況やその予測結果、さらには下水処理運転支援装置で用いる各種プログラムをやり取りする機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDやCRTなどの画面表示装置からなり、演算処理部15からの制御に基づき下水処理の運転支援に関する各種情報を画面表示する機能を有している。
【0027】
記憶部14は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15での処理に用いる各種処理情報を記憶する機能を有している。
記憶部14で記憶される主な処理情報としては、事例ベース14A、予測流入量14B、設備情報14C、予測処理量14D、およびプログラム14Pがある。
【0028】
事例ベース14Aは、実際に計測した下水流入量を示す流入量データとこの流入量データに対応する気象データとを含む履歴データから作成された非線形のブラックボックス予測モデルである。この事例ベース14Aは、演算処理部15で作成してもよく、外部装置で作成したものを入出力I/F部11を介して記憶部14へ格納してもよい。
予測流入量14Bは、予測期間ごと、例えば1時間あたりに流入する下水の下水流入量である。この予測流入量14Bは、後述する演算処理部15の流入量予測手段15Aにより、事例ベース14Aを用いて所望の予測条件に基づき各予測期間ごとに予測される。
【0029】
設備情報14Cは、下水処理場に設けられている各設備の仕様や能力に関する情報であり、例えば最大貯留量Qcmax、貯留指定量Qcth、最大滞水量Qrmax、最大高級処理量Qhmax、最大簡易処理量Qlmax、最大浄化処理量Qpmax、ポンプ情報などがある。
このほか、設備情報14Cには、下水処理場における予測開始時点での運転状況を示す運転状況情報として、例えば滞水池の蓄積量などの情報が含まれる。この運転状況情報は、後述する演算処理部15の情報取得手段15Bにより、下水処理場の各設備に設けられたセンサから入出力I/F部11を介して取得してもよく、オペレータの操作により操作入力部12から入力してもよい。
【0030】
また、設備情報14Cには、下水流入量の予測に用いる予測条件情報として、例えば流入量予測直前に計測された下水流入量や各予測期間における気象データ(予報)などの情報が含まれる。この予測条件情報のうち、下水流入量については後述する演算処理部15の情報取得手段15Bにより、下水処理場に設けられた流量計から入出力I/F部11を介して取得してもよく、気象データについては外部装置から入出力I/F部11を介して取得してもよい。あるいは、これら予測条件情報をデータオペレータの操作により操作入力部12から入力してもよい。
このようにして設備情報14Cは、取得あるいは入力され記憶部14へ格納される。
【0031】
なお、最大貯留量Qcmaxは滞水池に貯留可能な総貯留量である。貯留指定量Qcthは滞水池の余力貯留量を決定するためのしきい値である。最大滞水量Qrmaxは、流入下水を一時貯留する滞水池に対して単位時間あたりに滞水できる下水の処理量である。最大高級処理量Qhmaxは、単位時間あたりに高級処理できる下水の処理量である。最大簡易処理量Qlmaxは、単位時間あたりに簡易処理できる下水の処理量である。最大浄化処理量Qpmaxは、単位時間あたりに高級処理と簡易処理とで浄化処理できる下水の処理量である。ポンプ情報は、流入した下水を汲み上げるポンプの台数、能力、発電設備起動の要否を示す情報である。
【0032】
予測処理量14Dは、各予測期間において各下水処理で処理する下水の処理量である。この予測処理量14Dは、後述する演算処理部15の処理量算出手段15Cにより算出される。また、運転状況表示手段15Dにより参照されて各下水処理の運転要否が判断され、画面表示部13で運転支援画面に表示される。
プログラム14Pは、演算処理部15に読み込まれて実行されることにより各種機能手段を実現するプログラムであり、外部装置、記録媒体、あるいは通信網から入出力I/F部11を介して読み込まれ、予め記憶部14に格納される。
【0033】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、これらハードウェアと記憶部14のプログラム14Pとを協働させて下水処理運転支援のための処理を行う各種機能手段を実現する機能部である。
演算処理部15で実現される主な機能手段としては、流入量予測手段15A、情報取得手段15B、処理量算出手段15C、および運転状況表示手段15Dがある。
【0034】
流入量予測手段15Aは、記憶部14の事例ベース14Aを用いて、所定の予測条件に対応する下水の流入量を将来の予測期間ごとにリアルタイムで予測し、その予測結果を予測流入量14Bとして出力する機能を有している。この流入量予測手段15Aや事例ベース14Aの詳細については、例えば特許文献1に記載の下水流入量予測技術などの公知の推論システムを用いればよく、ここでの詳細な説明は省略する。なお、流入量予測については、非線形のブラックボックス予測モデルを用いた推論システムに限定されるものではなく、他のモデルを用いた推論システムを用いてもよい。
【0035】
情報取得手段15Bは、入出力I/F部11を介して下水処理場の各設備に設けられたセンサから、あるいは操作入力部12でのオペレータ操作から、下水処理場内の各設備の運転状況を取得し、設備情報14Cとして出力する機能と、前述した予測条件情報を入出力I/F部11や操作入力部12を介して取得し、設備情報14Cとして出力する機能とを有している。
【0036】
処理量算出手段15Cは、将来の各予測期間における予測流入量14B、予測開始時における設備情報14Cに基づき、各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、予測処理量14Dとして出力する機能を有している。
運転状況表示手段15Dは、予測処理量14Dに基づき、将来の各予測期間における各下水処理の運転要否を示す運転状況を、画面表示部13の運転支援画面に画面表示する機能を有している。
【0037】
[下水処理場]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1が適用される一般的な下水処理場について説明する。図2は、本実施の形態にかかる下水処理運転支援装置が適用される下水処理場の構成を示す説明図である。
【0038】
沈砂池(スクリーン)20は、下水管を介して集められた汚水や雨水などの下水から、砂や大きなゴミを取り除く機能を有している。以下では、任意の期間内に沈砂池20へ流入する下水の流入量を下水流入量と呼び、任意の予測期間t内に流入する下水の流入量を予測流入量Qtという。
下水ポンプ21は、沈砂池20から下水を汲み上げる電動ポンプである。汲み上げられた下水は、直接放流路22、滞水池23、および分配槽24へ配分される。
【0039】
直接放流路22は、沈砂池20から下水ポンプ21で汲み上げられた下水を後段の浄化設備へ供給することなく海や河川に放流するための経路であり、台風などにより下水流入量が極めて多く、後述する高級処理および簡易処理からなる浄化処理や、滞水処理が追いつかない場合に利用される。以下では、単位時間あたりに下水ポンプ21から直接放流路22を介して直接放流される下水の放流量を直接放流量Qdという。
【0040】
滞水池23は、沈砂池20から下水ポンプ21で汲み上げられた下水を一時的に滞水する滞水処理を行うための設備である。大雨などにより下水流入量が増大して浄化処理が追いつかない場合に下水を滞水しておき、浄化処理に余裕ができた時点で滞水池の下水が処理される。以下では、単位時間あたりに下水ポンプ21から滞水池23に滞水される下水の処理量を滞水量Qrといい、その最大値を最大滞水量Qrmaxという。また、滞水池23に貯留できる下水の最大値(満水量)を最大貯留量Qcmaxといい、任意の予測時点において滞水池23に貯留されている下水の貯留量を滞水貯留量Qcという。また、滞水池23での貯留余力を確保するために任意に設定される貯留量のしきい値を貯留指定量Qcthという。
【0041】
分配槽24は、沈砂池20から下水ポンプ21で汲み上げられた下水や、滞水池23からの下水を浄化処理する際、その下水を各系統に分配するための設備である。以下では、単位時間あたりに分配槽24から配分される下水の量を浄化処理量Qpといい、その最大値を最大浄化処理量Qpmaxという。
最初沈殿池(第1沈殿池)25は、分配槽24からの下水が時間をかけて緩やかに流れていく間に主として有機質の細かい浮遊物を沈殿および分離させる機能を有している。
【0042】
反応タンク(ばっ気槽)26は、最初沈殿池25で沈殿処理を終えた下水に活性汚泥を加え、微生物の活発な活動に必要な量の空気を吹き込みながら撹拌する設備である。ここでは、6〜8時間かけて撹拌することにより、下水中に溶けている有機物が微生物の栄養として吸収され、水や二酸化炭素に分解される。また、最初沈殿池25で沈殿しない細かい浮遊性の有機物も、微生物の周囲に付着して、フロックと呼ばれる沈殿しやすい塊となる。
【0043】
最終沈殿池(第2沈殿池)27は、反応タンク26からの下水について、その上澄み水とフロックの集まりである活性汚泥とに分離するための設備である。
これら反応タンク26と最終沈殿池27により、浄化処理のうち浄化効果の高い高級処理が実現される。以下では、単位時間あたりに最初沈殿池25から反応タンク26へ分配される下水の量を高級処理量Qhといい、その最大値を最大高級処理量Qhmaxという。
【0044】
簡易処理経路28は、最初沈殿池25で沈殿処理を終えた下水を反応タンク26と最終沈殿池27をバイパスさせるための経路である。浄化処理のうち、最初沈殿池25で沈殿処理だけを行い、簡易処理経路28を経由させて高級処理を省略する処理を簡易処理といい、高級処理に比較して浄化効果が低い。簡易処理は、高級処理が追いつかない場合に利用される。以下では、単位時間あたりに最初沈殿池25から簡易処理経路28へ分配される下水の量を簡易処理量Qlといい、その最大値を最大簡易処理量Qlmaxという。
接触タンク29は、高級処理または簡易処理された下水を海や河川に放流する前に、その下水に塩素を投入して消毒するための設備である。
【0045】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3および図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の運転状況予測処理を示すフローチャートである。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の運転状況予測動作を示す動作フローである。
【0046】
下水処理運転支援装置1の演算処理部15は、予測処理開始タイミングの到来、あるいは操作入力部12を介したオペレータからの指示操作に応じて、図3に示す運転状況予測処理を開始する。
まず、演算処理部15は、情報取得手段15Bにより、予測処理実行開始時点における滞水池23の滞水貯留量Qcや直前の下水流入量(実績)、さらには予測条件情報16などの入力情報17を取得し、設備情報14Cとして記憶部14へ格納する(ステップ100)。
【0047】
次に、演算処理部15は、流入量予測手段15Aにより、上記予測条件情報16に基づき事例ベース14Aを参照して、将来の各予測期間における下水流入量Qt(t=0〜n)を予測し、予測流入量14Bとして記憶部14へ格納する(ステップ101)。これにより、下水処理場への下水流入量が予測期間ごと、例えば0〜22時間後まで1時間(予測期間長=1時間)ごとに合計23個の予測期間についてそれぞれ予測される。この際、Q0(t=0)は、最初の予測期間、すなわち予測処理実行開始時点から1時間経過するまでの期間に流入する合計流入量である。
【0048】
続いて、演算処理部15は、処理量算出手段15Cにより、予測期間tにおける予測流入量Qtを記憶部14の予測流入量14Bから取得し(ステップ102)、記憶部14の設備情報14Cのポンプ情報を参照して、予測期間t内に予測流入量Qt分の下水を沈砂池20から引き上げるのに必要な下水ポンプ21の使用台数を算出する(ステップ103)。この場合、各下水ポンプ21の処理能力に基づき予測流入量Qtを割り振っていけばよい。
【0049】
また、これら使用する下水ポンプ21のうち自家発電設備の起動が必要なものがある場合、起動すべき自家発電設備の台数を算出する(ステップ104)。下水ポンプ21には、非常用として自家発電設備で駆動可能な予備ポンプが設けられており、増水時のみ使用される。使用する下水ポンプ21の台数のうち予備ポンプが使用される場合は、その使用ポンプの消費電力に応じて自家発電設備を起動する台数を算出すればよい。
【0050】
そして、演算処理部15は、処理量算出手段15Cにより、予測期間tにおける予測流入量Qtに基づき各下水処理での処理量を算出する処理量算出処理を実行し、得られた当該予測期間tにおける各下水処理での処理量を予測処理量14Dとして記憶部14へ格納する(ステップ105)。なお、処理量算出処理の詳細については後述する。
【0051】
次に、演算処理部15は、運転状況表示手段15Dにより、記憶部14の予測処理量14Dを参照して、当該予測期間tにおける各下水処理の運転要否を判断し、各下水処理の運転要否を当該予測期間tと関連付けて画面表示部13の運転支援画面へ表示する(ステップ106)。
また、演算処理部15は、運転状況表示手段15Dにより、予測期間tにおける各下水処理での処理量に基づき滞水池23の滞水状況を判断し、その滞水状況として所望の滞水貯留量への到達を当該予測期間tと関連付けて画面表示部13の運転支援画面へマーク表示する(ステップ107)。
【0052】
このようにして、予測期間tに対する運転状況予測処理を終了した後、未処理の予測期間がある場合(ステップ108:YES)、演算処理部15は、次の予測期間を選択した後(ステップ109)、前述したステップ102へ戻って次の予測期間t=t+1における運転状況予測処理を開始する。
一方、予測流入量が得られた各予測期間に対する運転状況予測処理がすべて終了した場合(ステップ108:NO)、演算処理部15は、予測処理実行開始時点を基準とした一連の運転状況予測処理を終了し、例えば1時間後の予測処理開始タイミングの到来、あるいは操作入力部12を介したオペレータからの指示操作まで待機し、次の予測処理開始時点を基準とした運転状況予測処理を開始する。
【0053】
このように、本実施の形態では、演算処理部15の処理量算出手段15Cにより、将来の各予測期間tにおける下水の予測流入量Qtに基づいて各下水処理での処理量を予測期間tごとに算出し、運転状況表示手段15Dにより、これら処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間tごとに画面表示部13で表示するようにしたので、将来の各予測期間において必要となる下水処理を正確に予測して画面表示することができる。
【0054】
一般に、下水処理運転では、所望の水準内に放流水の水質を保つよう、高級処理、簡易処理、放流処理の処理切替タイミングを判断する必要がある。また、滞水池での滞水状況や滞水のためのポンプの能力を考慮し、下水流入量の変化に応じてポンプの運転台数、運転開始タイミング、さらにはポンプ運転のための自家発電設備の起動要否を判断する必要がある。このため、正確な下水流入量が予測できても、オペレータの経験や勘に基づき多くのファクターを考慮して運転方法を判断する必要があるため、経験の浅いオペレータでは適切に運転することができず、特に大雨や長雨の場合には、ベテランのオペレータであっても判断が難しい。
【0055】
本実施の形態によれば、前述した各下水処理の運転要否を予測期間ごとに運転支援画面へ表示されるため、予測流入量に基づき下水処理運転を適切に支援できるため、オペレータの経験や勘に基づき多くのファクターを考慮して運転方法を判断する必要がなくなり、経験の浅いオペレータでも適切に下水処理運転を行うことができ、大雨や長雨の場合でも、経験の有無にかかわらず適切に下水処理運転を行うことができる。
【0056】
また、滞水処理は、高級処理、簡易処理、および直接放流の各下水処理と組み合わせて運転されるとともに、滞水貯留量に応じて滞水処理の継続可否を判断する必要があり、その運転状況を事前にイメージするのは難しいといわれている。本実施の形態によれば、処理量算出手段15Cにより、流入する下水の滞水処理に関する処理量を予測期間ごとに算出し、運転状況表示手段15Dにより、その滞水処理の要否を予測期間ごとに表示するようにしたので、滞水処理の運転状況を容易に把握できる。
この際、滞水貯留量が所望の貯留量に到達する到達時点を表示してもよく、滞水処理の要否だけでなくその滞水処理による滞水貯留量も把握でき、滞水状況全体を容易に把握できる。
【0057】
[処理量算出動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1における処理量算出動作について詳細に説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1における処理量算出処理を示すフローチャートである。
演算処理部15は、図3のステップ105において、処理量算出手段15Cにより、予測期間tにおける予測流入量Qtに基づき各下水処理での処理量を算出するため、図5に示すような処理量算出処理を実行する。
【0058】
この処理量算出処理は、下水処理優先順位決定処理(ステップ110〜120)と、処理量配分処理(ステップ121)の2つの処理手順から構成されている。
下水処理優先順位決定処理は、予測期間tにおける予測流入量Qtと滞水池23での滞水状況に基づき、流入する下水に対する下水処理の優先順位を決定する処理である。処理量配分処理は、下水処理優先順位決定処理で決定された優先順位に基づき予測流入量Qtを各下水処理に配分することにより、各下水処理での下水処理量を決定する処理である。
【0059】
まず、処理量算出手段15Cは、予測期間tにおける予測流入量Qtと最大高級処理量Qhmaxとを比較し(ステップ110)、予測流入量Qtが最大高級処理量Qhmax以下の場合(ステップ110:YES)、予測流入量Qtのすべてを高級処理で処理可能と判断し、優先順位として「高級処理」のみを採用する(ステップ111)。
この後、処理量算出手段15Cは、上記優先順位に基づき処理量配分処理を行った後(ステップ121)、一連の処理量算出処理を終了する。この場合、予測流入量Qtはすべて高級処理量Qhに配分され、Qt→Qhとなる。
【0060】
一方、ステップ110において、予測流入量Qtが最大高級処理量Qhmaxを上回る場合(ステップ110:NO)、処理量算出手段15Cは、予測流入量Qtと最大浄化処理量Qpmaxとを比較する(ステップ112)。
この際、予測流入量Qtが最大浄化処理量Qpmax以下の場合(ステップ112:YES)、さらに滞水貯留量Qcと貯留指定量Qcthとを比較する(ステップ113)。
【0061】
ここで、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthより少ない場合(ステップ113:YES)、予測流入量Qtを高級処理で処理し、残りを滞水処理により処理可能と判断し、優先順位として「高級処理→滞水」を採用する(ステップ114)。
この後、処理量算出手段15Cは、上記優先順位に基づき処理量配分処理を行った後(ステップ121)、一連の処理量算出処理を終了する。この場合、予測流入量Qtは高級処理量Qhに最大高級処理量Qhmax分だけ配分されるとともに、残りが滞水量Qrに配分され、Qt→Qhamx+Qrとなる。
【0062】
一方、ステップ113において、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcth以上の場合(ステップ113:NO)、貯留指定量Qcth以上の滞水処理を回避するため、予測流入量Qtを高級処理で処理し、残りを簡易処理により処理可能と判断し、優先順位として「高級処理→簡易処理」を採用する(ステップ115)。
この後、処理量算出手段15Cは、上記優先順位に基づき処理量配分処理を行った後(ステップ121)、一連の処理量算出処理を終了する。この場合、予測流入量Qtは高級処理量Qhに最大高級処理量Qhmax分だけ配分されるとともに、残りが簡易処理量Qlに配分され、Qt→Qhmax+Qlとなる。
【0063】
一方、ステップ112において、予測流入量Qtが最大浄化処理量Qpmaxを上回る場合(ステップ112:NO)、処理量算出手段15Cは、滞水貯留量Qcと貯留指定量Qcthとを比較する(ステップ116)。
ここで、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthより少ない場合(ステップ116:YES)、予測流入量Qtを高級処理で処理し、次に滞水処理により当該予測期間tにおいて貯留指定量Qcthまで滞水処理を行う。そして、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthへ到達した時点で、残りを簡易処理し、余った分を最大滞水量Qrmaxで最大貯留量Qcmaxまで滞水処理し、それでも処理仕切れない分は直接放流するものと判断し、優先順位として「高級処理→滞水(Qcthまで)→簡易処理→滞水(Qcmaxまで)→直接放流」を採用する(ステップ117)。
【0064】
この後、処理量算出手段15Cは、上記優先順位に基づき処理量配分処理を行った後(ステップ121)、一連の処理量算出処理を終了する。この場合、予測流入量Qtは高級処理量Qhに最大高級処理量Qhmax分だけ配分され、次に滞水貯留量Qcが当該予測期間tにおいて貯留指定量Qcthまで到達するような滞水量Qrで滞水処理が行われる。そして、未処理分が生じる場合は簡易処理Qlへ配分され、さらに最大簡易処理量Qlmax超える分については、滞水貯留量Qcが最大貯留量Qcmaxとなるまで最大滞水量Qrmaxで滞水処理を行う。したがって、Qt→Qhmax+Qr(Qcthまで)が基本で、QcがQcthに達した後、Qlを開始する。そして、残り分がある場合は、Ql=Qlmaxとし、その残り分については、さらにQrmax(Qcmaxまで)を加え、この後の残り分についてはQdとなる。
【0065】
一方、ステップ116において、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcth以上の場合(ステップ116:YES)、処理量算出手段15Cは、滞水貯留量Qcと最大貯留量Qcmaxとを比較する(ステップ118)。
ここで、滞水貯留量Qcが最大貯留量Qcmax下回る場合(ステップ118:YES)、予測流入量Qtを高級処理と簡易処理で処理し、残りを最大貯留量Qcmaxまで滞水処理し、それでも処理仕切れない分は直接放流するものと判断し、優先順位として「高級処理→簡易処理→滞水(Qcmaxまで)→直接放流」を採用する(ステップ119)。したがって、Qt→Qhmax+Qlmax+Qr(Qcmaxまで)となり、残り分についてはQdとなる。
【0066】
また、ステップ118において、滞水貯留量Qcが最大貯留量Qcmax以上の場合(ステップ118:NO)、最大貯留量Qcmax以上の滞水処理ができないことから、予測流入量Qtを高級処理、簡易処理、および直接放流で処理するものと判断し、優先順位として「高級処理→簡易処理→直接放流」を採用する(ステップ120)。したがって、Qt→Qhmax+Qlmax+Qdとなる。
【0067】
このように、任意の予測期間において流入下水量を高級処理に加えて滞水処理または簡易処理へ振り分ける場合(ステップ112:YES)、簡易処理に比較して滞水処理へ優先して振り分けるようにしたので(ステップ113,ステップ114,ステップ115)、雨の降り始めに発生する汚れのひどい下水すなわちファーストフラッシュを優先して滞水池23へ滞水することができる。これにより、その後、下水流入量が減少して高級処理に余裕ができた時点で滞水池23のファーストフラッシュを順次高級処理することができ、ファーストフラッシュが簡易処理あるいは直接放流で放流される場合と比較して、下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる。
【0068】
また、滞水貯留量Qcに対するしきい値として、最大貯留量Qcmaxより少ない貯留指定量Qcthを設け、任意の予測期間において流入下水量を滞水処理へ振り分ける場合、滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthに到達する分まで滞水処理へ優先して振り分け、残りの下水流入量を簡易処理へ振り分けるようにしたので(ステップ113,ステップ114,ステップ115)、その後、さらに下水流入量が増加した場合には、滞水貯留量Qcが最大貯留量Qcmaxとなるまでさらに滞水処理を行うことができる(ステップ117,ステップ119)。これにより、貯留指定量Qcthを設けずに最大貯留量Qcmaxまで一度に滞水する場合と比較して、その後の下水流入量の増加にある程度対応して、直接放流の開始時点を先延ばしすることができ、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる。
【0069】
[処理量算出例]
次に、処理量算出例について説明する。ここでは、下水処理場における最大高級処理量Qhmaxが1.5[m3/sec]で、最大簡易処理量Qlmaxが1.2Qhamx=1.8[m3/sec]の場合で、さらに貯留指定量Qcthが10000[m3]で、その滞水配管の太さからその最大滞水量Qrmaxが11[m3/sec]に制限されている場合を考える。
【0070】
このような設備構成において、任意の予測期間tにおいて予測流入量Qtが15[m3/sec]あり、予測期間tの開始時点における滞水池23での滞水貯留量Qcが7300[m3]の場合、Qt>Qhamx(ステップ110:NO)→Qt>Qpmax(ステップ112:NO)→Qc<Qcth(ステップ116:YES)と判断されて下水処理の優先順序としてステップ117が選択される。
【0071】
次に、各下水処理の処理量が上記優先順序に基づき予測流入量Qtから順に減算されてそれぞれ算出される。
まず、優先順位の最も高い高級処理については、Qt=15[m3/sec]でありQhmax=1.5[m3/sec]であることから、Qhmax分だけ振り分けられ、残りの下水流入量Q1は、
Q1=Qt−Qhmax=15−1.5=13.5[m3/sec]
となる。
【0072】
優先順位が次に高い滞水処理については、予測期間tの開始時点においてQc<Qcthなので貯留指定量Qcthまで滞水処理することができる。ここで、予測期間t内に滞水できる残りの滞水可能量Qc1は、
Qc1=Qcth−Qc=10000−7300=2700[m3]
であることから、予測期間t内で2700[m3]を滞水するための滞水処理量Qr1は、
Qr1=Qc1/1[h]=2700[m3]/3600[sec]=0.75[m3/sec]
となり、このQr1分が滞水処理に振り分けられる。よって、残りの下水流入量Q2は、
Q2=Q1−0.75=13.5−0.75=12.75[m3/sec]
となる。
【0073】
優先順位が次に高い簡易処理については、Qlmax=1.8[m3/sec]なので、Qlmax分だけ振り分けられ、残りの下水流入量Q3は、
Q3=Q2−1.8=12.75−1.8=10.95[m3/sec]
となる。
ここで、残りの下水処理量Q3を処理する必要があるので、次の優先順位である滞水処理を最大滞水量Qrmaxで、QcがQcmaxとなるまで行う。この際、前述した上位の優先順位での滞水処理を見込んで、この優先順位で行う滞水処理の滞水最大量をQr2=10[m3/sec]とした場合、予測期間t内に滞水できる総滞水可能量Qc2は、
Qc2=Qr2×1[h]=10×3600[sec]=36000[m3/h]
となり、予測期間tの終了時点における滞水貯留量Qc’は
Qc’=Qcth+Qc2=10000+36000=46000[m3]
となる。
【0074】
よって、残りの下水流入量Q4は、
Q4=Q3−Qr2=10.95−10=0.95[m3/sec]
となる。
この場合、未処理分Q4がまだ存在することから、優先順位の最後にある直接放流が用いられ、その処理量Qd=0.95だけ、直接放流が行われることになる。
【0075】
なお、以上で説明した処理量算出例については、あくまでも一例であり、本実施の形態が上記処理算出例に限定されるものではなく、例えば各下水処理場での実際の運転管理方法に応じて上記処理算出例を修正してもよい。特に、各下水処理場の設備については、その規定を超えるある程度のオーバーシュートに対しても処理可能なよう、余裕を持って設計されているため、これを利用して処理量を算出してもよい。
【0076】
例えば、滞水配管から制限されるQrmaxに関して、上記算出例ではQrmax=Qr2+1[m3/sec]と見なした場合について説明したが、Qr2に比較して小さいQr1を余裕処理分すなわち処理量算出の誤差と見なし、Qrmax=Qr2として算出してもよく、各下水処理の処理量をオペレータが把握しやすい。あるいは、Qrmax=Qr2+Qr1として処理量を算出してもよく、余裕処理分を利用せず、各下水処理の処理量を厳密に算出できる。
【0077】
[マーク表示動作]
次に、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1におけるマーク表示動作について詳細に説明する。図6は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1におけるマーク表示処理を示すフローチャートである。
演算処理部15は、図3のステップ107において、運転状況表示手段15Dにより、予測期間tにおける滞水貯留量に基づき滞水状況として所望の滞水貯留量へ到達したことを表示するため、図6に示すようなマーク表示処理を実行する。
【0078】
まず、運転状況表示手段15Dは、直前予測期間t−1の開始時点における滞水貯留量Qc(t−1)と最大貯留量Qcmaxとを比較し(ステップ130)、滞水貯留量Qc(t−1)が最大貯留量Qcmaxを下回る場合(ステップ130:YES)、予測期間tの開始時点における滞水貯留量Qc(t)と最大貯留量Qcmaxとを比較する(ステップ131)。
ここで、滞水貯留量Qc(t)が最大貯留量Qcmax以上の場合(ステップ131:YES)、この予測期間tの開始時点においてQcがQcmaxを超えたと判断し、運転状況表示手段15Dは、画面表示部13の運転支援画面で、予測期間tに関連付けて滞水池23が満水であることを示す満水マークを表示し(ステップ132)、一連のマーク表示処理を終了する。
【0079】
一方、ステップ130において、滞水貯留量Qc(t−1)が最大貯留量Qcmax以上の場合(ステップ130:NO)、あるいはステップ131において、滞水貯留量Qc(t)が最大貯留量Qcmaxを下回る場合(ステップ131:NO)、運転状況表示手段15Dは、直前予測期間t−1の開始時点における滞水貯留量Qc(t−1)と貯留指定量Qcthとを比較する(ステップ133)。
ここで、滞水貯留量Qc(t−1)が貯留指定量Qcthを下回る場合(ステップ133:YES)、運転状況表示手段15Dは、予測期間tの開始時点における滞水貯留量Qc(t)と貯留指定量Qcthとを比較する(ステップ134)。
【0080】
この際、滞水貯留量Qc(t)が貯留指定量Qcth以上の場合(ステップ134:YES)、この予測期間tにおいてQcがQcthを超えたと判断し、運転状況表示手段15Dは、画面表示部13の運転支援画面で、予測期間tに関連付けて滞水池23が貯留指定量へ到達したことを示す指定量マークを表示し(ステップ135)、一連のマーク表示処理を終了する。
また、ステップ133において、滞水貯留量Qc(t−1)が貯留指定量Qcth以上の場合(ステップ133:NO)、あるいはステップ134において、滞水貯留量Qc(t)が貯留指定量Qcthを下回る場合(ステップ134:NO)、いずれのマークも表示することなく一連のマーク表示処理を終了する。
【0081】
このように、運転支援画面において、滞水貯留量Qcが所望の貯留量、例えば貯留指定量Qcthや最大貯留量Qcmax(満水)に到達する到達時点を表示するようにしたので、滞水処理の要否だけでなくその滞水処理による滞水貯留量も把握でき、滞水状況全体を容易に把握できる。なお、マーク表示する貯留量については、オペレータが任意に設定してもよい。
また、滞水量Qrに基づき、Qcが所望の貯留量に達する時間位置を正確に算出し、当該予測区間内の対応する時間位置にマークを表示するようにしてもよい。
【0082】
[運転支援画面の表示例]
次に、図7を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置による運転支援画面の表示例について説明する。図7は、本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置による運転支援画面の表示例である。
この運転支援画面には、予測結果表示領域30、運転状況表示領域31、滞水状況表示領域32、ポンプ運転状況表示領域33、および下水流入量表示領域34が設けられている。
【0083】
予測結果表示領域30は、予測開始時点から所定期間後までの予測期間(t=0〜n)における予測結果として、予測期間での総流入量、高級処理量、簡易処理量、および直接放出量が表示されている。
一方、運転状況表示領域31、滞水状況表示領域32、ポンプ運転状況表示領域33、および下水流入量表示領域34については、横軸が時間軸を示すグラフが表示され、現在時刻40の左側にそれまでの運転経過(予測履歴)を示す実績表示領域41が設けられ、現在時刻40の右側に将来の運転予測を示す予測表示領域42が設けられている。
【0084】
このうち、運転状況表示領域31には、高級処理、簡易処理、および直接放流の各下水処理に関する運転要否が表示シンボル(矩形)の表示有無により、予測期間ごとにグラフィック表示されている。例えば、現在時刻「16:50」から1時間後までの期間では「高級処理」だけを運転しておけばよいが、時刻「02:50」から1時間後までの期間では「高級処理」に加えて「簡易処理」を運転する必要があることがわかる。
この際、「高級処理」、「簡易処理」、および「直接放流」の各下水処理を示す表示シンボルは異なった色を用いて表示されており、特に各下水処理のうち運転をなるべく控えるべき処理ほど、すなわち「高級処理」→「簡易処理」→「直接放流」の順に視認性や警告性の高い色が用いられている。
【0085】
滞水状況表示領域32には、下水ポンプ21で汲み上げた下水を滞水池23へ滞水する滞水処理に関する運転要否が表示シンボル(矩形)の表示有無により、予測期間ごとにグラフィック表示されている。例えば、現在時刻「16:50」から1時間後までの期間では「滞水処理」の必要はないが、時刻「02:50」から1時間後までの期間では「滞水処理」を運転する必要があることがわかる。
【0086】
また、滞水状況表示領域32の時間軸に合わせて、滞水池23の滞水貯留量Qcが所望の貯留量、ここでは貯留指定量Qcthや最大貯留量Qcmax(満水)に到達する到達時点の位置に、表示シンボル(三角マーク)が表示されている。例えば、時刻「02:50」には指定量マーク50が表示されており、この時点で滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthに到達することがわかる。また、時刻「14:50」付近には満水マーク51が表示されており、この時点で滞水貯留量Qcが最大貯留量Qcmax(満水)に到達することがわかる。
これにより、滞水処理の要否だけでなくその滞水処理による滞水貯留量も把握でき、滞水状況全体を容易に把握できる。
【0087】
ポンプ運転状況表示領域33には、下水ポンプ21の各ポンプ(1台目から6台目まで)に関する運転要否が表示シンボル(矩形)の表示有無により、予測期間ごとにグラフィック表示されている。例えば、現在時刻「16:50」から1時間後までの期間では「1台目」のポンプだけを運転しておけばよいが、時刻「02:50」から1時間後までの期間では「1台目」〜「5台目」までのポンプを運転する必要があることがわかる。
この際、「5台目」,「6台目」のポンプについては、その運転に自家発電設備の起動が必要となることから、他のポンプに比べて視認性や警告性の高い色の自家発電シンボル52が用いられている。これにより、自家発電設備を起動する必要があることが容易に確認でき、その起動のための準備作業の必要性を容易に想起できる。
【0088】
下水流入量表示領域34には、下水処理場へ流入する下水の流入量について、その下水流入量実績グラフ53と下水流入量予測グラフ54が表示されている。例えば、現在時刻「16:50」から1時間後までの期間では予測流入量が「1.0 m3/s」程度であるが、時刻「02:50」から1時間後までの期間では「5.0 m3/s」まで増大することがわかる。
【0089】
このように、図7の運転支援画面の運転状況表示領域31、滞水状況表示領域32、およびポンプ運転状況表示領域33では、高級処理、簡易処理、直接放流、および滞水処理の各下水処理の運転要否や、下水ポンプの運転要否を、表示シンボルの表示有無により予測期間ごとにグラフィック表示するようにしたので、将来、どの時点でどのような下水処理が必要となるか容易に確認でき、雨天増水に対する一連の下水処理運転についてその全体を正確に把握できるとともに、各下水処理運転のための準備作業の必要性を容易に想起できる。
特に、滞水状況表示領域32では、滞水貯留量が所望の貯留量に到達する到達時点を表示するようにしたので、滞水処理の要否だけでなくその滞水処理による滞水貯留量も把握でき、滞水状況全体を容易に把握できる。
【0090】
[第2の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置による運転支援画面の表示例である。
【0091】
前述した第1の実施の形態では、運転状況予測処理の際、規定値として記憶部14の設備情報14Cに予め設定されている貯留指定量Qcthを用いる場合を例として説明した。本実施の形態では、任意の貯留指定量Qcthに基づき運転状況予測処理を再実行させる場合について説明する。
なお、本実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1の他の構成については、前述した第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0092】
図8の運転支援画面には、前述した予測結果表示領域30、運転状況表示領域31、滞水状況表示領域32、ポンプ運転状況表示領域33、および下水流入量表示領域34に加えて、滞水池23に関する貯留指定量Qcthをオペレータが任意に設定するための入力シンボルとして貯留指定量入力欄60が設けられている。また、貯留指定量入力欄60に設定した貯留指定量Qcthに基づき、前述した図3の運転状況予測処理を再実行させるための再実行ボタン61が設けられている。
【0093】
この場合、下水処理運転支援装置1の演算処理部15は、操作入力部12で再実行ボタン61の押下が検出された場合、操作入力部12を介して貯留指定量入力欄60から取得した貯留指定量Qcthを用いて、処理量算出手段15Cにより、運転状況予測処理を再実行する。
これにより、オペレータが所望する任意の貯留指定量Qcthを用いた場合の運転状況予測結果が得られる。
【0094】
前述した第1の実施の形態では、滞水貯留量Qcに対するしきい値として、最大貯留量Qcmaxより少ない貯留指定量Qcthを設け、滞水処理を運転している際には滞水貯留量Qcが貯留指定量Qcthに到達した時点で滞水処理を停止して簡易処理の運転を開始することにより、直接放流の開始時点を先延ばしすることができ、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる点について説明した。
この際、将来の下水流入量の変化によっては、貯留指定量Qcthが最大貯留量Qcmaxに近いほうがよかったり、逆に貯留指定量Qcthを低く設定したほうがいい場合がある。
【0095】
例えば、降雨期間が短く下水流入量が比較的少ない場合、貯留指定量Qcthを高めに設定して最大貯留量Qcmaxに近い値を用いることにより、滞水池23への滞水する下水の処理量を多くして簡易処理で処理する下水の処理量を低減させることができ、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる。
【0096】
一方、降雨期間が長く、下水流入量が一旦低下した後、再び増加することが予測されている場合、貯留指定量Qcthを低く設定することにより、予め滞水池23へ滞水する下水の処理量を控え、その分、早期に簡易処理を開始して順次下水を処理しておき、この後の下水流入量が増大した時点で滞水処理を再開することにより、高級処理、簡易処理、および滞水処理で下水流入量の増大に対応できる場合もあり、この場合には、直接放流を回避できることから、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる。
【0097】
このように、将来予測される下水流入量に応じた貯留指定量Qcthを使い分けることにより、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる。したがって、本実施の形態によれば、オペレータが所望する任意の貯留指定量Qcthを用いた場合の運転状況予測結果を得られことができ、将来予測される下水流入量に最適な運転状況を予測できるという、極めて大きな効果が得られる。さらに、入力された貯留指定量Qcthだけでなく、その貯留指定量Qcthに前後する複数の値についても自動的に運転状況予測処理を行っておき、オペレータからの操作に応じてそれぞれの運転状況予測を切り替え表示するようにしてもよい。
【0098】
なお、以上では、オペレータが任意に貯留指定量Qthを入力して最適な運転状況を見つける場合を例として説明したが、下水処理運転支援装置1により最適な運転状況を自動的に検索するようにしてもよい。
図9は、本発明の第2の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置での運転状況検索処理を示すフローチャートである。以下、下水処理運転支援装置での運転状況検索動作について説明する。
【0099】
下水処理運転支援装置1の演算処理部15は、予測処理開始タイミングの到来、あるいは操作入力部12を介したオペレータからの指示操作に応じて、図9に示す運転状況検索処理を開始する。
まず、演算処理部15は、処理量算出手段15Cにより、記憶部14の設備情報14Cに予め複数(あるいは範囲)指定されている貯留指定量を参照して、処理に用いる貯留指定量Qcthを初期化し(ステップ200)、その貯留指定量Qcthを用いて前述の運転状況予測処理(図3)を実行する(ステップ201)。この際、ステップ106,107の表示処理については省略してもよい。
【0100】
次に、演算処理部15は、処理量算出手段15Cにより、得られた予測結果ここでは各予測期間における各下水処理の処理量を記憶部14に格納し(ステップ202)、未処理の貯留指定量Qcthがある場合(ステップ203:YES)、次の貯留指定量Qcthを選択した後(ステップ204)、前述したステップ201へ戻って新たな貯留指定量Qcthを用いた運転状況予測処理を繰り返し実行する。
【0101】
一方、各貯留指定量Qcthを用いた運転状況予測処理がすべて終了した場合(ステップ203:NO)、記憶部14の設備情報に予め設定されている評価基準を取得し(ステップ205)、この評価基準に基づいて、記憶部14に格納しておいたそれぞれの予測結果を評価し、所望の予測結果を選択する(ステップ206)。そして、図3のステップ106,107の表示処理と同様にして、その予測結果に基づき、予測期間ごとに各下水処理の運転要否、さらには滞水状況を示す指定量マーク50や満水マーク51を運転支援画面に表示し(ステップ207)、一連の運転状況検索処理を終了する。
【0102】
このように、異なる貯留指定量ごとに運転状況予測処理を実行し、得られた各予測結果から評価基準に応じて所望の予測結果を選択し、その予測結果に応じて将来の各予測期間における各下水処理の運転状況を運転支援画面に表示するようにしたので、オペレータが貯留指定量を繰り返し選択入力することなく、予測流入量に応じた最適な運転状況を表示することができる。
【0103】
なお、評価基準としては、将来必要となる各下水処理に評価点を付与しておき、その合計に基づき最良の予測結果を選択すればよい。例えば、直接放流や簡易処理を回避する点を重視する場合、各予測期間で直接放流や簡易処理が必要となるごとに評価点が下がるようにしておけば、これら直接放流や簡易処理が少ない予測結果が選択でき、結果として下水処理場からの放流水の水質を高く維持することができる運転状況を予測できる。
【0104】
[実施の形態の拡張]
本発明の各実施の形態では、下水処理運転支援装置1の演算処理部15に、流入量予測手段15Aを設けるとともに、記憶部14に事例ベース14Aを設け、将来の各予測期間における下水流入量を予測する場合を例として説明したが、これら演算処理部15および事例ベース14Aを、下水処理運転支援装置1とは別個の下水流入量予測装置に構成し、下水処理運転支援装置1において、下水流入量予測装置で予測した予測流入量を、入出力I/F部11を介して記憶部14へ予測流入量14Bとして格納するようにしてもよい。
これにより、下水処理運転支援装置1の構成を簡素化できるとともに、既存の下水流入量予測装置を利用でき、下水処理管理システムを柔軟に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態にかかる下水処理運転支援装置が適用される下水処理場の構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の運転状況予測処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置の運転状況予測動作を示す動作フローである。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1における処理量算出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置1におけるマーク表示処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置による運転支援画面の表示例である。
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置による運転支援画面の表示例である。
【図9】本発明の第2の実施の形態にかかる下水処理運転支援装置での運転状況検索処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
1…下水処理運転支援装置、11…入出力I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…事例ベース、14B…予測流入量、14C…設備情報、14D…予測処理量、14P…プログラム、15…演算処理部、15A…流入量予測手段、15B…情報取得手段、15C…処理量算出手段、15D…運転状況表示手段、16…予測条件情報、17…入力情報、20…沈砂池、21…下水ポンプ、22…直接放流路、23…滞水池、24…分配槽、25…最初沈殿池、26…反応タンク、27…最終沈殿池、28…簡易処理経路、29…接触タンク、30…予測結果表示領域、31…運転状況表示領域、32…滞水状況表示領域、33…ポンプ運転状況表示領域、34…下水流入量表示領域、40…現在時刻、41…実績表示領域、42…予測表示領域、50…指定量マーク、51…満水マーク、52…自家発電シンボル、53…下水流入量実績グラフ、54…下水流入量予測グラフ、60…貯留指定量入力欄、61…再実行ボタン、Qt…予測流入量、Qr…滞水量、Qrmax…最大滞水量、Qc…滞水貯留量、Qcth…貯留指定量、Qcmax…最大貯留量、Qh…高級処理量、Qhmax…最大高級処理量、Ql…簡易処理量、Qlmax…最大簡易処理量、Qp…浄化処理量、Qpmax…最大浄化処理量、Qd…直接放流量。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各予測期間に流入する下水の予測流入量に基づいて、各種下水処理を行う下水処理設備を用いた下水処理運転を支援する下水処理運転支援装置であって、
各下水処理で処理できる下水の処理量を含む前記下水処理設備の設備情報を記憶する記憶部と、
前記設備情報と各予測期間における予測流入量とに基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出する処理量算出手段と、
下水処理運転に関する各種支援情報を画面表示する画面表示部と、
前記処理量算出手段で算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示部で画面表示する運転状況表示手段と
を備えることを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、前記処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示手段は、前記滞水処理の要否を予測期間ごとに表示する
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、前記処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示手段は、前記滞水池の滞水状況として前記滞水池の貯留量が所望の値へ到達する到達時点を表示する
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、各予測期間における予測流入量と流入下水を一時貯留する滞水池の各予測期間における貯留状況とに基づいて各下水処理を運転する優先順位を決定し、この優先順位に基づいて当該予測流入量を各下水処理に順次振り分けることにより当該予測期間における各下水処理での処理量を算出する
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、任意の予測期間で下水流入量を前記各下水処理のうち高級処理に加えて滞水処理または簡易処理へ振り分ける際、簡易処理に比較して滞水処理へ優先して振り分ける
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項6】
請求項4に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、任意の予測期間で下水流入量を前記滞水処理へ振り分ける際、前記滞水池の貯留量が所定の貯留指定量に到達するまで前記滞水処理へ振り分け、残りの下水流入量を簡易処理へ振り分ける
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、オペレータから指定された貯留指定量に基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示手段は、前記処理量算出手段で算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示部で表示する
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項8】
請求項6に記載の下水処理運転支援装置において、
前記処理量算出手段は、異なる貯留指定量ごとに各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、得られた算出結果のうちから所定の評価基準に応じて所望の算出結果を選択し、
前記運転状況表示手段は、前記処理量算出手段で選択した算出結果の各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示部で表示する
ことを特徴とする下水処理運転支援装置。
【請求項9】
各予測期間に流入する下水の予測流入量に基づいて、各種下水処理を行う下水処理設備を用いた下水処理運転を支援する下水処理運転支援装置のコンピュータに、
各下水処理で処理できる下水の処理量を含む前記下水処理設備の設備情報を記憶部で記憶する記憶ステップと、
前記設備情報と各予測期間における予測流入量とに基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出する処理量算出ステップと、
下水処理運転に関する各種支援情報を画面表示する画面表示ステップと、
前記処理量算出ステップで算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示ステップにより画面表示する運転状況表示ステップと
を実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、前記処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示ステップで、前記滞水処理の要否を予測期間ごとに表示する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
請求項9に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、前記処理量として流入下水を滞水池に一時貯留するための滞水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示ステップで、前記滞水池の滞水状況として前記滞水池の貯留量が所望の値へ到達する到達時点を表示する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項9に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、各予測期間における予測流入量と流入下水を一時貯留する滞水池の各予測期間における貯留状況とに基づいて各下水処理を運転する優先順位を決定するステップと、この優先順位に基づいて当該予測流入量を各下水処理に順次振り分けることにより当該予測期間における各下水処理での処理量を算出するステップと
を実行させるプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、任意の予測期間で下水流入量を前記各下水処理のうち高級処理に加えて滞水処理または簡易処理へ振り分ける際、簡易処理に比較して滞水処理へ優先して振り分けるステップ
を実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、任意の予測期間で下水流入量を前記滞水処理へ振り分ける際、前記滞水池の貯留量が所定の貯留指定量に到達するまで前記滞水処理へ振り分けるステップと、残りの下水流入量を簡易処理へ振り分けるステップと
を実行させるプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、オペレータから指定された貯留指定量に基づいて各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、
前記運転状況表示ステップで、前記処理量算出ステップで算出した各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示ステップにより表示する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記処理量算出ステップで、異なる貯留指定量ごとに各下水処理での処理量を予測期間ごとに算出し、得られた算出結果のうちから所定の評価基準に応じて所望の算出結果を選択し、
前記運転状況表示ステップで、前記処理量算出ステップで選択した算出結果の各処理量に基づいて各下水処理の運転要否を予測期間ごとに前記画面表示部で表示する
ことを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−61703(P2007−61703A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249067(P2005−249067)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(590002208)横浜市 (13)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】