説明

下流側における調整機構を有する紡績準備機械

【課題】繊維スライバーの質量の高周波の変化に対する補償を改善すること。
【解決手段】一対の上流ローラ(5)と一対の下流ローラ(7)とを有するドラフトシステム(4)と、センサ手段(2、3、20)と、処理ユニット(22)と、カレンダローラ(14)と、回転台(17)を有する収納手段(16、17)とを備える紡績準備機械、特に、繊維材料(FB)をドラフトおよび/または二重にするドラフトシステム(4)を有する練条機または梳綿機または梳毛機において、一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)が処理ユニット(22)による制御により回転速度に少なくとも一次的な速度変化を伴って駆動されるとともに、収納手段(16、17)が一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)の速度変化と比較してより小さな速度変化を伴って駆動され、または、基本的に一定の回転速度で駆動される紡績準備機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に係る紡績準備機械(spinning preparation machine)に関し、特に、供給された繊維材料をドラフト(練条)および/または二重にするドラフトシステムを備えた練条機(draw frame)または梳綿機(carder machine)または梳毛機(combing machine)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の紡績準備機械は、従来から知られている。
紡績準備機械に供給された繊維材料としての単一または複数の繊維スライバーが、ドラフトシステムにより均質化され、その結果として得られた繊維スライバーはケンス内に移送されるように設計されている。
一般に、練条機のドラフトシステムは、ドラフト前の繊維材料がローラを通過する方向に並べて配置された一対の上流ローラ(入口ローラ)と、一対の中央ローラと、一対の下流ローラ(出口ローラ)とを有している。
繊維材料を間に挟み込む各一対のローラは、繊維材料の移送方向の下流側においてより高い回転速度で繊維材料を挟み込みながら回転して、ドラフト(延伸)を行うように設計されている。
一対の上流ローラと一対の中央ローラとの間のドラフト領域は、サブドラフト領域として知られており、一対の中央ローラと一対の下流ローラとの間のドラフト領域はメインドラフト領域として知られている。
【0003】
ドラフトを変化させる、すなわち、繊維スライバーの質量を計測するセンサ手段により測定された繊維スライバーの質量の変化に応じて、繊維材料の厚みの変化を補償(compensate)する様々な方法が知られている。
単純に、オートレベラー(autoleveler)式の練条機では、繊維の移送方向の上流側における調整(入口側における調整)のみを行う場合、一対の上流ローラおよび一対の中央ローラのうち下側にそれぞれ位置するローラの速度は調整されるものの、一対の下流ローラのうち下側に位置するローラの速度は調整されないように設計されている。
その結果、繊維スライバーは、ドラフトシステムから一定の速度で排出されるようになっている。
一方、単純に、繊維の移送方向の下流側における調整(出口側における調整)のみを行う場合、紡績準備機械が全速に到達した後は、一対の上流ローラと一対の中央ローラの速度は、一定に保たれるが、一対の下流ローラの速度は、繊維材料の不整を補償するように制御されている。
本明細書では、一対のローラに対する制御または駆動に言及する場合、ほぼ常に、一対のローラのうちの一方だけが駆動され、他方がその動きに従動することを意味している。
【0004】
前述した2つの方法、すなわち、繊維材料の厚みの変化を補償する2つの方法では、動かされる質量(繊維材料の質量)、または、このプロセスに伴う機械構成部材の慣性モーメントが比較的大きいため、回転速度の変化に関する周波数および振幅の許容される変化が制限されてしまうという問題があった。
この問題に対する1つの改善策が、本出願人の独国特許第102004007143号明細書から知られている。
この独国特許第102004007143号明細書では、繊維スライバーの変化は、第1制御ループの測定信号のある部分的な振幅に関して、また、他の制御ループの別の部分的振幅に関して補償されるように設計されている。
この独国特許第102004007143号明細書では、高周波成分(すなわち、短波長信号成分)と低周波成分(すなわち、長波長信号成分)が分割されて、上流側における調整機構と下流側における調整機構のそれぞれに割り当てられ、その結果、オートレベラー式の練条機のドラフト能力を向上するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第102004007143号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に繊維スライバーの質量の高周波の変化に対する補償を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1の特徴を備えた紡績準備機械により達成される。
【0008】
本発明は、二対のローラのみが存在して1つのドラフト領域のみが存在するか否かに関わらず、または、典型的なドラフトシステムと同様に、3つ以上のドラフト領域が存在するか否かに関わらず、任意のドラフトシステムに適用できる。
【0009】
本発明では、特に、一対の下流ローラ(すなわち、練条機の場合、一対の出口ローラ)と一対のカレンダローラとを少なくとも一定の期間、収納手段と比較して低い回転速度および/または高い回転速度で駆動することが可能であり、繊維スライバーの高周波の不良(すなわち、短波長の不良)を補償することができる。
この場合、収納手段は、一対の下流ローラと一対のカレンダローラの回転速度の変化に追随しない、少なくとも同じ程度には追随しないように設計されている。
すなわち、収納手段、特に、回転台が一定の速度で駆動され、または、一対の下流ローラと一対のカレンダローラの変化範囲よりも小さな範囲、すなわち、変化範囲で駆動されるのが好ましい。
【0010】
したがって、メインドラフト領域の下流側に設置される全ての構成部材の速度が、同程度に変化するのではなく、下流ローラ(下流シリンダ、出口シリンダ)とカレンダローラ(非ドラフトプーリ)とだけが大きな動力的変化を伴って駆動されて繊維スライバーの質量の高周波の変化を補償する下流側における調整機構を本発明では提案する。
特に、回転台とケンス(繊維スライバー用の収納容器)とが、基本的に一定の速度で回転し続けるように設計するのが好ましい。
したがって、大きく動的に変化させられる質量が著しく減少され、その結果、全体としての動力的挙動が極めて有益に向上する、すなわち、繊維スライバーの質量の大幅な変化が抑制され、その結果、紡績準備機械全体の作業精度や作業効率が著しく向上するように設計されている。
【0011】
他方で、公知な従来の練条機では、一定の出力速度(上流側における調整機構)の場合、メインドラフト領域の上流側に設置される全ての構成部材の速度を変化させる必要があり、または、一定の入力速度(下流側における調整機構)の場合、メインドラフト領域の下流側に設置される全ての構成部材の速度を変化させる必要があるという問題があった。
本発明は、一対の下流ローラ(出口ローラ)および一対のカレンダローラの速度と、これら構成部材に後続する構成部材、特に、回転台の速度とを相互に完全に一致させる必要がないという効果を有している。
回転台は、一対の下流ローラと一対のカレンダローラとの補償された速度変化から意図的に分離され、または、より小さな動力的変化を伴った状態で駆動されるように設計されている。
【0012】
制御手段、すなわち、処理ユニットは、正常動作時に、収納手段を一定速度で駆動するように設計されているのが好ましい。
一方、これとは対照的に、低周波(長波長)または高周波(短波長)のスライバー不良を補償するために、一対の下流ローラと一対のカレンダローラとをより低速またはより高速で(より大きな動力的変化をともなって)駆動するように設計されている。
そして、回転速度における高周波(短波長)の変化を低振幅に限定することにより、カレンダローラと回転台またはケンスの回転との間における速度差から生じると予想されるドラフト不良が、繊維スライバーの品質およびケンス内における収納パターンに悪影響を及ぼさないこと、または、極僅かな影響しか及ぼさないということが判明している。
【0013】
下流側における調整機構は、規定質量の20%未満、15%未満、特に、好ましくは10%未満の繊維材料の質量における高周波(短波長)の変化を補償するように設計されているのが好ましい。
また、下流側における調整機構は、5Hz以上、好ましくは10Hz以上の周波数の繊維材料の変化を補償するように設計されているのが好ましい。
特に、本発明は、10Hz以上の周波数で、質量の規定数値からのズレの振幅が最高10%である繊維スライバーの不良信号成分については、収納パターン、または、得られる繊維スライバーの品質に対して悪影響を及ぼさないことが判明している。
【0014】
さらに、典型的なオートレベラー式の練条機で行われてきたように、繊維スライバーの不良信号の低周波成分を上流側における調整機構により補償するのがより好ましい。
そのため、本発明による紡績準備機械は、一対の上流ローラと一対の下流ローラとの間に一対の中央ローラを備えている。
単純な上流側における調整を行う場合、一対の上流ローラと一対の中央ローラの速度は、一定速度を維持しながら制御され、一対の下流ローラと一対のカレンダローラと収納手段とは、一定速度で駆動されている。
この場合、一対の上流ローラと一対の中央ローラとの間におけるサブドラフト領域でのドラフトは、一定であり、質量の変化に対する補償は、一対の中央ローラと一対の下流ローラとの間におけるメインドラフト領域内で行われるように設計されている。
前述したような上流側における調整機構が、本発明の下流側における調整機構と組み合わされた場合、一対の上流ローラと一対の中央ローラとが一定のサブドラフトをともなって駆動され続けることが好ましい、すなわち、一対の上流ローラと一対の中央ローラとがコンスタントに予備的なドラフトを行うように駆動されるのが好ましい。
この場合、繊維材料の高周波の変化に対する補償は、メインドラフト領域内で行なわれるように設計されている。
これ、すなわち、前述したような各構成部材の制御は、紡績準備機械内におけるコンピュータを用いた周波数の割り当てにより実現するように設計されている。
前述したような装置設計では、収納手段は、一定速度で駆動され続けるようになっている。
【0015】
メインドラフト領域内で低周波成分と高周波成分の両方を補償することが可能な本発明の紡績準備機械の一実施例では、低周波成分は、一対の中央ローラの速度を(したがって一対の上流ローラの速度も)双曲線関数で変化させることにより扱われ(すなわち、補償され)、一方、高周波成分は、一対の下流ローラ(出口ローラ)と一対のカレンダローラとの速度を線形変化させることにより扱われる(すなわち、補償される)のが好ましい。
繊維スライバーの材料不良信号の位相変位情報を考慮に入れるのが好ましい。
【0016】
単一の紡績準備機械内で低周波成分と高周波成分とを補償する代わりに、2つの紡績準備機械を連続させて、このような作業プロセス、すなわち、低周波成分と高周波成分とを補償する一連の2つの作業ステップにより、すなわち、2つの通過機能により行うように設計しても何ら構わない。
この場合、第1通過機能は、上流側における調整機構を備えた典型的なオートレベラー式の練条機で達成し、第2の通過機能は、前述した短期調整、すなわち、下流側における調整機構を有した紡績準備機械で達成するように設計しても良い。
また、これらの2つの通過機能の順序を置換しても何ら構わない。
【0017】
本発明のより好適な実施形態は、従属する請求項の特徴により達成される。
【0018】
図面を用いて、本発明を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の練条機を示す概略的な側面図。
【図2】本発明の一実施例である練条機として設計された紡績準備機械を示す概略的な側面図。
【図3】繊維スライバーの不良信号を示す簡略的な説明図。
【図4】排出機構を備えたドラフトシステムを示す概略的な側面図。
【図5】繊維材料が長経路に沿って通過する状態を示す回転台の概略的な断面図。
【図6】繊維材料が短経路に沿って通過する状態を示す回転台の概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上流側における調整機能のみを備えた公知な従来の練条機の基本的な動作を図1の概略図を用いて以下に説明する。
この公知な練条機においては、実質的に撚りを施されていない繊維材料としての複数の繊維スライバーFBが、並列にドラフトシステム4に供給されるように設計されている。
なお、単一の繊維スライバーFBが、練条機に供給されるように設計しても良い。
繊維スライバーFBを圧縮する漏斗状部材1が、練条機の上流側、すなわち、繊維材料の移送方向の上流側に設置されている。
また、他の種類の圧縮機器を用いても何ら構わない。
この時点、すなわち、漏斗状部材1により繊維スライバーFBが圧縮された後、圧縮された個別の繊維スライバーFBからなる繊維スライバーFB’は、センサ手段としての一対のセンサローラからなるセンサユニット2、3を通過した後、ドラフトシステム4に供給されるように設計されている。
ドラフトシステム4には、通常3つのドラフト部材、すなわち、三対のローラが組み込まれ、これら三対のローラ間で繊維スライバーFB’のドラフト(延伸)が行なわれるように設計されている。
これら三対のローラは、一対の上流ローラ(取入ローラ)5と、一対の中央ローラ6と、一対の下流ローラ(出口ローラ、配送ローラ)7とから構成され、これらローラの回転速度は、前述した順番で増加するように設定されている。
その結果、繊維スライバーFB’は、前述したローラの回転速度の程度に応じてドラフトされるように設計されている。
一対の中央ローラ6と一対の下流ローラ7とで構成されるメインドラフト領域には、繊維スライバーFB’を方向転換させるテンションバー8が設けられ、これにより、特に、一対の中央ローラ6の間または一対の下流ローラ7の間で挟み込まれていない状態の繊維スライバーFB’(すなわち、浮遊繊維)のガイド状態が改善するように設計されている。
ドラフト(練条)された繊維スライバーFB’は、上方偏向ローラ9に補助されて複数のスライバーガイド部材内に移送され(詳細な拡大図を参照、すなわち、図4を参照)、一対のカレンダローラ14を経由して、収納手段としての湾曲したスライバー通路部材16内に移送されるように設計されている。
一対のカレンダローラ14では、繊維スライバーFB’の断面積を測定するために、一対のカレンダローラ14の一方が、バネ15により付勢されている。
繊維スライバーFB’は、角速度ωで回転する収納手段としての回転台17に設けられたスライバー通路部材16を通過した後、速度VLでケンス18の中に移送されるように設計されている。
【0021】
図1に示すように、繊維スライバーFB’の質量の変化を補償する(compensate)目的で、センサユニット2、3から伝達される信号が用いられている。
繊維スライバーFB’は、固定状態のセンサディスク2と可動式のセンサディスク3とで構成されるセンサユニット2、3の相互間を通過し、この際、センサディスク2に対して押し当てられるセンサディスク3のズレが、繊維スライバーFB’の断面積の測定値と判断されるようになっている。
センサディスク3は、例えば、センサ手段としての誘導センサ部材20に連結されている。
誘導センサ部材20からの出力信号(電圧信号)がデータ貯蔵部(store)21に伝達されることにより、センサユニット2、3間の通過とドラフトシステム4への進入との距離的差異または時間的差異を許容するように設計されている(FIFOメモリ=先入れ先出しのバッファ)。
この時間的差異の経過後、出力信号、すなわち、データ貯蔵部21からの出力信号は、評価機能および調整機能を有する処理ユニット22に伝達されるように設計されている。
メインドラフト領域(メイン練条領域)における繊維スライバーFB’の質量変化に対する補償は、遊星歯車機構24の制御回転を生じさせるサーボ駆動部23の回転速度を変化させることにより行われるように設計されている。
一対の上流ローラ5および一対の中央ローラ6のうち下側にそれぞれ位置するローラは、メインモータとしてのモータ25により駆動される遊星歯車機構24により制御された速度で駆動されるように設計されている。
モータ25により駆動される一対の下流ローラ7のうち下側に位置する下側ローラの速度は一定に保たれているため、製造された繊維スライバーFB’の長さを正確に計算することが可能である。
モータ25は、一対のカレンダローラ14と回転台17とケンス台19とを併せて駆動するように設計されている。
【0022】
本発明の一実施例である紡績準備機械は、概略的に図示された図2に示すように、練条機1として設計されている。
同一の構成部材に対しては、図1と同一の符号を使用している。
この練条機は、図1に示す公知の練条機と同様に、上流側における調整機構を備えている。
本実施例では、モータ25は、正常動作時に、一対の下流ローラ(出口ローラ)7と一対のカレンダローラ14とを一定速度で駆動することなく、また、これらローラの下流側に配置される収納手段の構成部材、特に、回転台17も一定速度で駆動することなく、遊星歯車機構24だけを駆動するように設計されている。
一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14だけを駆動する他のモータ26が設けられている。
また、収納手段としての回転台17は、この回転台17に対して固定状態で設置された収納手段としてのスライバー通路部材(バンドチャネル部材)16と共に他のモータ27により実質的に一定の速度で駆動され、また、同様に、ケンス台19は、モータ27により実質的に一定の速度で駆動されるように設計されている。
また、回転台17とケンス台19とをモータ25に連結しても何ら構わない。
その場合、モータ27は、不要である。
処理ユニット22は、モータ25、26、27に対して関連の制御信号を発信するように設計されている。
その結果、一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14は、高度に動力的な制御を受けて、高周波のスライバー不良を補償するように設計されている(図3参照)。
【0023】
図3は、繊維スライバーFB’の不良信号を極めて概略的に示す図である。
実際には、繊維スライバーFB’の不良信号では、多数の異なる波形が重なり合っている。
本実施例では、基本となる低周波(長波長)L1が存在し、この基本となる低周波(長波長)L1に高周波(短波長)L2が重なり合っている。
本発明で用いられる一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14とによる短期の調整では、繊維スライバーFB’の不良信号のうちL2の波長を有する高周波(短波長)L2のみが取り扱われるように設計されている。
このため、適切なフィルタリング(高域のフィルタリング)により、低周波(長波長)L1が除去されるように設計されている。
この低周波(長波長)L1は別処理により取り扱われるが、本実施例においては、このような別処理として、例えば、図2のように構成された公知の上流側における調整機構(上流側における制御機構)が採用されている。
本実施例では、モータ27は、回転台17とケンス台19とを基本的に一定の速度で駆動するように設計されている。
【0024】
図4は、収納手段を備えたドラフトシステム4を極めて概略的に示した拡大図である。
この図4における構成部材の配置は、実質的に図2の配置と同様であり、駆動される構成部材以外については図示を省略している。
図4においては、同期の取れた速度で駆動される構成部材は、同一の斜線で表されている。
一対の上流ローラ5と一対の中央ローラ6とは、繊維スライバーFB’の質量の低周波の変化を補償するために、比較的小さな速度変化を伴って動作するように駆動され(図2のモータ25、サーボ駆動部23、遊星歯車機構24を参照)、また、一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14とは、繊維スライバーFB’の質量の高周波数の変化を補償するために、高度に動力的な制御で駆動、すなわち、比較的大きな速度変化を伴って駆動され、そして、回転台17は、実質的に一定の速度で動くように設計されている。
繊維スライバーFB’は、繊維スライバーFB’の質量の低周波の変化および高周波の変化の両方に対するメインドラフト領域でドラフトされるように設計されている。
この目的のために、評価機能を備えた制御ユニット22は、適切な周波数分配を行い、サーボ駆動部23とモータ26とに対して信号を伝達するように設計されている(図3)。
一対の上流ローラ5と一対の中央ローラ6、また、一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14とは、平均の回転速度が実質的に一定であり、また、その大きさ、すなわち、回転速度は、ドラフトの設定の程度に応じて設定されている。
一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14の平均回転速度は、繊維スライバーFB’が現れる箇所における回転台17の一定の回転速度に対応している。
【0025】
ここで、繊維スライバーFB’の不良信号のうち高周波(短波長)L2(図3参照)のプラス変化がドラフト(ドラフトの移送量)を増大させることにより補償される場合、カレンダローラ14と、ケンス18内において積み上げられた繊維スライバーFB’の最上部に繊維スライバーFB’を置く場所との間に位置する繊維スライバーFB’の質量が短期間だけ増大するようになっている。
一方、繊維スライバーFB’の不良信号のうち高周波(短波長)のマイナス変化が補償される場合、前述した区域内の繊維スライバーFB’の質量が短期間だけ減少するようになっている。
【0026】
カレンダローラ14とケンス18との間における短期間の繊維スライバーFB’の質量の増大または減少の効果を図5および図6に示している。
図5に示すように、1つまたは複数の高周波(短波長)の厚いセグメントを補償した後は、スライバー通路部材16内により多くの材料が存在することになり、その結果、繊維スライバーFB’は、スライバー通路部材16の中心軸に沿って移動する場合と比較して比較的長い経路を通過するように設計されている。
図6は、本発明の下流側における調整機構が1つまたは複数の薄いセグメントを補償した結果として、スライバー通路部材16内における繊維スライバーFB’の弛みが少なくなった状態を示している。
この繊維スライバーFB’がスライバー通路部材16内を通る経路は短いが、その結果として繊維スライバーFB’がきつく引っ張られ、または、ドラフトされることはない。
【0027】
換言すると、繊維スライバーFB’が、一対の下流ローラ6と一対のカレンダローラ14との回転速度の変化に応じて、不規則的に短い間隔でスライバー通路部材16内の長経路または短経路を通ることにより、スライバー通路部材16内の質量の変化が補償されている。
スライバー通路部材16は、繊維スライバーFB’の質量を平均化する緩衝機能を発揮するように設計されている。
この繊維スライバーFB’の質量の緩衝は、図5に示す状態と図6に示す状態とを絶え間なく変化を繰り返すことにより可能になる。
【0028】
本発明による補償は、質量の変化の振幅が繊維スライバーFB’の規定質量の10%未満であるとき、かつ、変化の周波数が10Hz以下であるとき、すなわち、変化の波長L2が相応に短いとき、特に、繊維スライバーFB’の整合性が改善することが判明している。
そうでない場合、すなわち、スライバー通路部材16を前述したように設計していない場合、カレンダローラ14とケンス18内における繊維スライバーFB’の蓄積点との間の距離と、スライバー通路部材16の設計とに依存して、繊維スライバーFB’の質量の収納容量を超過したり、ドラフト不良が発生したりする可能性がある。
本実施例においては、上流側における調整機構は一方では均一化をもたらすが、他方では、ドラフトシステム4を経た後に、ドラフトされたスライバー不良が再度存在することになる。
【0029】
前述した下流側での調整による繊維スライバーFB’の動きは、スライバー通路部材16内における繊維スライバーFB’の経路が連続的に変化するという効果を奏し、また、副次的な効果として、スライバー通路部材16内における蓄積物の堆積を防止できる。
このような効果がない場合、移送速度(繊維スライバーFB’の移送速度)が一定である際に、スライバー通路部材16内に蓄積物が堆積する可能性があり、この蓄積物が堆積した箇所を繊維スライバーFB’が通過しないことになる。
したがって、本発明の副次的な効果として、繊維の塊を堆積させることなく、繊維を蓄積させる、すなわち、繊維スライバーFB’を円滑に移送してケンス18内に蓄積させることができる。
また、この場合のリスクとしては、ケンス18内が満杯になった後、前述したような繊維の塊が空のスライバー通路部材16から満杯のケンス18内に向けて滑り出ることであるが、これは好ましい状況ではない。
【0030】
本発明を回転台17(したがって、スライバー通路部材16)とケンス台19との回転速度が実質的に一定である典型的な実施例を用いて詳しく説明した。
しかし、スライバー通路部材16の質量の収納容量を増大させるために、回転台17とケンス台19の回転速度を比較的ゆっくりとした反応に修正、すなわち、回転台17とケンス台19の回転速度を比較的ゆっくりとした程度に変化させても良い。
このために、制御ユニット22は、適切な命令信号をモータ27に送ることが可能であるように設計されている。
【0031】
他の実施例では、本発明に下流側における調整機構だけが設けられ、上流側における調整機構は設けられていない。
この場合、図4によるドラフトシステム4では、一対の上流ローラ5と一対の中央ローラ6と回転台17とケンス台19とは、一定速度で駆動され、一対の下流ローラ7と一対のカレンダローラ14とは、回転速度の可変制御を受けている。
【0032】
更に他の実施例では、下流側における調整機構を有したドラフトシステムに、上流側における調整機構を備えた他のドラフトシステムを先行させることで、2つの通過機能を実現している。
この2つの通過機能は、順番を相互に逆転させても何ら構わない。
【0033】
また、本発明では、断面矩形状を呈するケンス18を採用しても何ら構わない。
この場合、ケンス18は、回転するケンス台19上に設置されることなく、回転する回転台17の下側で、直線状に動くように設計されている。
【0034】
前述した本発明の効果として、特に質量の高周波(短波長)の変化を補償できること(本明細書で用いられる「質量」という用語は、厚みおよび/または密度の変化のことも意味している)、また、スライバー通路部材が繊維スライバーの質量を平均化する緩衝機能を発揮すること、また、従来の上流側における調整機構に対して補償を重ね合わせることが可能であること、また、2つの通過機能で使用できること、また、繊維の塊を堆積させることのない繊維スライバーの蓄積を実現すること、そして、練条機の梳綿機および梳毛機で全般的に適用できること等が挙げられる。
【符号の説明】
【0035】
2 ・・・ センサ手段(センサユニット、センサディスク)
3 ・・・ センサ手段(センサユニット、センサディスク)
4 ・・・ ドラフトシステム
5 ・・・ 上流ローラ(入口ローラ、取入ローラ)
6 ・・・ 中央ローラ
7 ・・・ 下流ローラ(出口ローラ、配送ローラ)
8 ・・・ テンションバー
9 ・・・ 上方偏向ローラ
14 ・・・ カレンダローラ
15 ・・・ バネ
16 ・・・ 収納手段(スライバー通路部材)
17 ・・・ 収納手段(回転台)
18 ・・・ ケンス
19 ・・・ ケンス台
20 ・・・ センサ手段(誘導センサ部材)
21 ・・・ データ貯蔵部
22 ・・・ 処理ユニット
23 ・・・ サーボ駆動部
24 ・・・ 遊星歯車機構
25、26、27 ・・・ モータ
FB ・・・ 繊維材料(繊維スライバー)
FB’ ・・・ 繊維材料(繊維スライバー)
L1 ・・・ 低周波(長波長)
L2 ・・・ 高周波(短波長)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の上流ローラ(5)と一対の下流ローラ(7)とを有するドラフトシステム(4)と、該ドラフトシステム(4)の上流側に設置されて繊維材料(FB)の質量または厚みまたは密度の変化を測定するセンサ手段(2、3、20)と、該センサ手段(2、3、20)に連結されて一対の下流ローラ(7)を制御する基準としてセンサ手段(2、3、20)の信号を用いてローラの回転速度を修正して下流側における調整を行う処理ユニット(22)と、前記ドラフトシステム(4)の下流側に設置されてドラフトシステム(4)からドラフト後の繊維材料(FB’)を引き出して前方に移送するカレンダローラ(14)と、前記繊維材料(FB’)をケンス(18)の中に移送する回転台(17)を有する収納手段(16、17)とを備える紡績準備機械、特に、前記繊維材料(FB)をドラフトおよび/または二重にするドラフトシステム(4)を有する練条機または梳綿機または梳毛機において、
前記一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)が、前記処理ユニット(22)による制御により回転速度に少なくとも一次的な速度変化を伴って駆動されるとともに、
前記収納手段(16、17)が、前記一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)の速度変化と比較してより小さな速度変化を伴って駆動され、または、基本的に一定の回転速度で駆動されるように設計されていることを特徴とする紡績準備機械。
【請求項2】
前記制御ユニット(22)が、前記収納手段(16、17)を紡績準備機械の正常動作時に一定の回転速度で駆動させるとともに前記一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)を紡績準備機械の正常動作時に相対的により遅い、および/または、より速い回転速度で駆動させるように設計されていることを特徴とする請求項1記載の紡績準備機械。
【請求項3】
前記処理ユニット(22)が、前記一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)とを制御して、規定質量の20%未満、好ましくは15%未満、更に好ましくは10%未満である繊維材料(FB’)の質量の変化を補償するように設計されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紡績準備機械。
【請求項4】
前記処理ユニット(22)が、前記一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)とを制御して、5Hz以上の周波数、好ましくは10Hz以上の繊維材料(FB’)の変化を補償するように設計されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の紡績準備機械。
【請求項5】
前記一対の上流ローラ(5)と一対の下流ローラ(7)との間に一対の中央ローラ(6)が設置されているとともに、
前記一対の上流ローラ(5)と一対の中央ローラ(6)が、紡績準備機械の正常動作時に一定速度で駆動されるように設計されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の紡績準備機械。
【請求項6】
前記一対の上流ローラ(5)と一対の下流ローラ(7)との間に一対の中央ローラ(6)が設置されているとともに、
前記一対の上流ローラ(5)と一対の中央ローラ(6)に対する制御機能を有する上流側における調整機構が、高周波の変化を補償する繊維材料(FB’)の下流側における調整機構に加えて設けられて低周波の変化を補償するように設計されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の紡績準備機械。
【請求項7】
前記低周波が、双曲線関数に従った一対の中央ローラ(6)の回転速度の変化により補償され、
前記高周波が、一対の下流ローラ(7)と一対のカレンダローラ(14)の回転速度の線形変化により補償されるように設計されていることを特徴とする請求項6に記載の紡績準備機械。
【請求項8】
前記処理ユニット(22)が、前記繊維材料(FB’)の不良信号の位相変位情報を考慮して処理するように設計されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の紡績準備機械。
【請求項9】
前記下流側における調整機構のみを有する練条機と、該練条機に後続または先行して少なくとも上流側における調整機構を有する他の練条機とから構成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の紡績準備機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−270249(P2009−270249A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107430(P2009−107430)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(509120344)ライター インゴルスタドト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】