説明

下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全のための装置

下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全を治療あるいは防止するための装置(1)であって、下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全のための一対の弾圧縮性タイツ(2)と、静脈およびリンパ管の循環を刺激するための複数の弾性膨らみ(3−9)であって、生ゴムからつくられた分離した粒体で充填され、前記タイツ(2)と一体とされ、前記タイツ(2)自体が履かれたとき足裏と接触する該タイツの部分(20)に配置されている複数の弾性膨らみ(3−9)とを含む装置(1)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全を治療あるいは防止するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野の専門家には周知のように、人間は足裏においてレジャンの静脈足裏(Lejan′s venous sole )と称される構造を有している。これは基礎物質であるコンドロイチン硫酸とジャルロニック(jaluronic)酸富有の弛緩脂肪質組織において含まれた毛細血管がからまり合ったものであって、これらの毛細血管は歩行の止まっている間押しつぶされ、血液で充たされたスポンジの如くに単純な機械的な押しつぶし作用によって絞り出され、心臓に向かって上昇する向心性の押上げ力を血液に対して加える。
【0003】
前述した静脈の戻り、およびまたリンパ管の戻りの欠陥の可能性を矯正あるいは防止するために、靴の内部に挿入可能であり、反射発生性(reflexogenic)のために足裏の選定した部分を刺激することを目的とした種々タイプの足底敷き(plantars)が知られている。
【0004】
しかしながら、既知の足底敷きは滑りやすく、特に女性のストッキングあるいはショートソックスと一緒に履いた場合、足裏に対して動く嫌いがある。このことによって足に対する足底敷き自体の正しくない位置決めを行い、その結果その効果を低下させる。
【0005】
また、前述の欠点のため、足底敷きによって得られうる治療結果は特に、人の下肢に対して悪影響を及ぼしうる各種の血管およびリンパ管の病理に関して極めて限定的なものとなる可能性がある。
【0006】
そのような血管および(または)リンパ管の病理を治療および防止するべく、静脈およびリンパ管の戻りを促進するための構造を有する所謂弾圧縮性のソックスが使用されることが多い。しかしながら、そのようなソックスによって得られうる結果も治療可能な病理に関する限り限定的であり、かつ不完全であることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明によって設定され、かつ解決される技術的課題は既知の技術に関して前述した欠点を排除できる、下肢における静脈および(または)リンパ管の機能不全を防止あるいは治療するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのような課題は特許請求の範囲の請求項1に記載の装置によって解決される。
【0009】
本発明の好適な特徴は特許請求の範囲の従属項に含まれている。
【0010】
本説明において、「ソックス」という用語は、足の一部分あるいは全体を、ある場合には人の下肢の一部分あるいは全体を被覆するようにされた一片の衣類、特にストッキング、タイツ、および男性用短靴下、シャンクソックス(レッグウオーマ)などを含む最広義に解されるべきである。
【0011】
本発明はある重要な利点を提供する。主要な利点は弾圧縮性のソックスの構造とその中に組み込まれた膨らみとの間の相乗効果によって、人の治療に大いに役立ち、かつより効果的な方法で血管および(または)リンパ管の病理を防止あるいは治療できるようにする組み合わされた治療結果を得ることができるようにすることにある。更に、足に対するそれらの正しい位置に対して前記の膨らみが動きうるという危険性が排除される。
【0012】
本発明のその他の利点、特徴および適用については、限定的な目的ではなく、例として示された本発明の若干の実施例についての以下の詳細説明から明らかとなる。添付図面にある図を以下参照する。
【0013】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全を防止あるいは治療する装置が全体的に1で指示されている。
【0014】
前記装置1は下肢の静脈およびリンパ管の戻りを促進するように既知の方法に従って構成された構造を有する弾圧縮性ソックス2を含む。この例においては、ソックス2は一足のタイツである。前記タイツ2はそれを履いている人の下肢および脚を全体的に覆っている。
【0015】
図2からよく判るように、それぞれ3,4,5,6,7,8および9で指示する数個の弾性の膨らみが人の足裏に付着しようとするよう前記ソックス2の部分20に配置され、かつ前記部分に固定されて該ソックス2に組み込まれている。前記の膨らみは下肢の静脈および(または)リンパ管の循環、特に静脈および(または)リンパ管の戻りを刺激しようとする。
【0016】
前記膨らみ3−9は図に実際に示すように足裏の反射発生部分に配置されている。
【0017】
当該技術分野の専門家には既知のように、足底敷きによる足裏反射治療法は足底敷きの足の土踏まず部を支持するために所謂内在筋肉の着点に概ね対応する足裏の所定箇所を刺激することからなり、それによって治療目的で人体の一般的な生理機能、特に静脈およびリンパ管の戻りに影響を与えることができる。
【0018】
一般に、膨らみ3−9は血管および(または)リンパ管障害を矯正するために固有受容性、エステロ受容性(esteroceptive)、圧受容性および(または)反射発生性刺激を果たそうとする性向があり、この目的に対して、それらはエステロ受容体(esteroceptors)、固有受容体、圧受容体および(または)足裏のその他いずれかの反射発生箇所に配置される。表面、関節、および深在タイプのそのような固有受容体、エステロ受容体、圧受容体および反射発生箇所は概ね足裏の筋肉の着点において位置される。
【0019】
特に、図に概略示されているように、第一の膨らみは足指の大指の回転筋に、第二の膨らみは大指の短い屈筋に、第三の膨らみは第五足指の短い屈筋に、第四の膨らみは第五足指の内転筋に、第五の膨らみは回外筋の楔に、第六の膨らみは回内筋の楔に、そして第七の膨らみは大指の内転筋に配置させることができる。
【0020】
実施例の変形では、前述した7個の固有受容性箇所と関連して、あるいは関連せずに、足裏のエステロ受容性、圧受容性、および反射発生刺激のその他いずれかの箇所に対応する位置に配置した膨らみを提供することができることは勿論である。
【0021】
特に別の好適実施例が図4に示されている。前記の図から判るように、前記膨らみは所謂レジャン(Lejan′s)静脈足裏に属する足裏の領域に丁度配置されており、詳しくは丸い形状が好ましい第一の膨らみ11が足指の集合静脈の接合部に配置され、第二の膨らみ12が足の内側縁に沿って延在し、かつ内側の足底敷きの静脈叢の解剖学的座に配置されており、第三の膨らみ13は静脈およびリンパ管の流れを内側静脈叢に向かって運ぶよう踵骨の領域上に、かつ足の側縁部において位置される。
【0022】
図3Aに示されているように、ここまで説明してきた実施例において、各膨らみ、例えば3で指示するものは、各々同等の形状および寸法であって、気胞を提供するために重ねられ、かつ結合されている第一の下層30と第二の上層31を含む。
【0023】
第一の、約1ミリメートルの厚さの層30は非中毒性で、概ね非アレルギ性のゴム材料であって、適度の長寿命性を有する材料からつくられている。ゴム材料としては、天然のもの、特にパラゴムすなわち生ゴムである材料が好ましい。当該技術分野の専門家には、同等の機械的特性を備えたいずれかのその他の非アレルギ性材料を利用しうることが認められうることは勿論である。特に、合成ゴム、例えばシリコンゴムが使用されうる。
【0024】
これも薄い第二の層は手触りが柔らかで、足底との接触に適しており、特に手触りに対してセーム革あるいはビロードタイプの材料からつくられている。天然ものの織物、特にアルカンタラ(alcantara)が好ましい。変形実施例では足の水分蒸発および十分な接触快適さを保証するのに適した材料の織物あるいは巻き上げシートを使用できるようにする。
【0025】
第一の層30と第二の層31とは、例えば膨らみの周囲において間に糊付けされて固定される。
【0026】
気胞の周囲は該気胞自体をソックス2に固定するためにも使用することができるそれぞれの直線縫い目によって強化することができる。
【0027】
本実施例において、各膨らみ3−9は更に、概ね非アレルギ性のゴム材料からつくられることが好ましい弾性の分離した粒体10を充填する。刺激をより良好にするためには、そのような粒体10は概ね不規則な形状で、かつ面および縁部を有することが好ましい。
【0028】
前記粒体10は、前記第一の層30を構成するために使用されたパラゴムあるいは生ゴムのシートを小さい立方体に適度に切断することによって製造することができ、各々断面寸法が約1ミリメートルである。代替的に、不規則な形状で、厚さが約2ミリメートルである1粒のシリコン粒との1ミリメートル厚さの天然生ゴムの複合物、あるいはシリコン粒のみのものでさえも提供しうる。
【0029】
当該技術分野の専門家は、交番的に、あるいは前記の分離した粒体10と共に、気胞には結果的に扱い易く、そして気胞中へ挿入するのが簡単である例えばゲルのような材料のようないずれかの他のタイプの弾性材料を充填できることを理解する。
【0030】
結果できた各膨らみ3−9の厚さは約3ミリメートルであることが好ましい。
【0031】
各気胞はカニューレあるいは類似の装置によって充填できるように閉鎖しておくことができる開口を有しうる。
【0032】
このように、前記膨らみ3−9は足裏に対して前述のように刺激を与えようとする全体的な弾性構造を有することが理解される。
【0033】
特に、各膨らみの形状、厚み、および弾性は足裏の一般的な自己受容体、エステロ受容体、圧受容体および反射発生箇所に対して正確な反射療法ストレスを得るために選定することができる。特に、膨らみ3−9のそのようなパラメータは当該装置1を履く必要のある患者に関わる治療方向に基づいて選定される。更に、本発明による本装置1は各種のサイズで製造することが可能である。前記気胞は医療処方に基づいて、適当量の弾性粒体10が充填されるまでは空のままとしうる。
【0034】
同様に、ソックス2の圧縮強度さえも当該患者の特定の要件に合わせることもできる。この後者の局面に関しては、予防手段としての補助具では約15から25デニール(den)の弾圧縮性ソックス、刺激性の弱い治療補助具では約30から50デニールの弾圧縮性ソックス、そして更に重症の静脈機能不全に対する治療補助具では約50から70デニールの弾圧縮性ソックスを提供することができる。
【0035】
人の下肢に対して加えられる加圧器の作用に関しては、予防手段としての補助具には約200mmHgの軽めの圧縮を加えようとする弾圧縮性ソックスを、刺激性の弱い治療に対する補助具には約30mmHgに等しい中庸な圧縮を加えようとする弾圧縮性ソックスを、より重症の静脈機能不全のための治療補助具には約40−50mmHgに等しい強力な圧縮を加えようとする弾圧縮性ソックスを具備させることができる。
【0036】
このように構成された膨らみは患者に対して最適な反射療法のための刺激を提供することができることが認められる。特に、それらは歩行停止の間足の中間領域に対してより大きな厚み、従ってより強力な圧力を加えようとする。そのような刺激は長期間あるいは一生不変に保つことができる。
【0037】
従って、当該技術分野の専門家は静脈の肥大および足裏静脈の押しつぶし(squashing)の少なさによる脚での血液およびリンパ液の循環速度の低減による静脈およびリンパ管の機能不全が存在するときに、本発明による装置は顕著な利益をもたらし、これは静脈の壁の肥大を制御しようとするソックス自体の断続した弾性と共にソックスに位置した弾性膨らみによって生じる機械的な押しつぶしが増大することによることを認識する。
【0038】
更に、本装置1は特に磨耗することはなく、常に履き心地がよい。更に、洗濯が可能であり、使用することも保守することも容易である。
【0039】
それが作られている材質は足裏の非アレルギ性および非有毒性を保証する。
【0040】
本装置はこれまで説明したものに対する代案として数種の実施例も可能であることは勿論である。例えば、膨らみを単に1個とすることが可能である。更に、膨らみはソックスの織物の連続した延長部分として直接つくることができ、その場合前述した二重層構造を有する代わりに充填材を受け入れるために局所的により厚くすることができる。更に、ソックスは前記の膨らみを有する実際の足底敷きを組み込むことができる。
【0041】
図2はソックスがシャンクソックス(shank sock)あるいは男性用の短靴下である、本発明の別の実施例を示す。
【0042】
好適実施例を参照しながら本発明をここまで説明してきた。本発明と同じ発明概念に属するその他の実施例も存在しうるが、それらは全て特許請求の範囲に記載の保護範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】人が履いたときの本発明による装置の第一の実施例の斜視図を示す。
【図2】人が履いたときの本発明による装置の第二の実施例の斜視図を示す。
【図3】図1または図2に示す装置の部分的な上面図を示す。
【図3A】図3の線A−Aに沿って見た前記装置の断面図を示す。
【図4】本発明による装置の別の実施例の部分的な上面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全を治療あるいは防止するための装置(1)において、
― 下肢の静脈および(または)リンパ管の機能不全のための弾圧縮性ソックス(2)と、
― 静脈およびリンパ管の循環を刺激する弾性膨らみ(3−9)であって、前記ソックス(2)に固定され、前記ソックス(2)自体が履かれたとき足裏と接触するようになる部分(20)に配置された少なくとも1個の弾性膨らみ(3−9)とを含むことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記弾圧縮性ソックス(2)が一足のタイツであることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記弾圧縮性ソックス(2)がショートソックスであることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記弾圧縮性ソックス(2)がシャンクソックスであることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記弾圧縮性ソックス(2)が女性用ストッキングであることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
静脈およびリンパ管の循環を刺激するための複数の弾性の膨らみ(3−9)であって、前記ソックス(2)に固定され、前記ソックス(2)自体が履かれたとき足裏と接触するようになる部分(20)において配置されている弾性の膨らみ(3−9)を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記膨らみ(3−9)が足裏の選定された反射発生領域に配置されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記足裏の反射発生領域が、大足指の内転筋、大足指の短屈筋、第五足指の短屈筋、第五足指の内転筋、回外筋楔、回内筋楔、および大足指の内転筋からなる群において選定されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記膨らみ(3−9)が足裏のレジャン(Lejan′s)静脈足裏に配置されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記膨らみ(3−9)が、足指の集合静脈結合部、中間足裏静脈叢の解剖学的座および足の側縁部における踵骨領域からなる群から選定された領域に配置されていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記膨らみ(3−9)が足裏と接触するようになる下層(30)と上層(31)とを有し、前記層の間に充填材料(10)が介装されているか、あるいは介装することができることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記下層(30)がゴム製であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記上層(31)がアルカンタラ(alcantara)からつくられていることを特徴とする請求項11または12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記充填材料が弾性の分離した粒体(10)によって形成されていることを特徴とする請求項11から13までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記粒体(10)が概ね丸い形状を有していることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記粒体(10)が生ゴムからつくられた粒体からなることを特徴とする請求項14または15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記粒体(10)がシリコン粒からなることを特徴とする請求項14から16までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記ソックス(2)が前記膨らみ(3−9)を有する足裏敷きを組み込んでいることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項19】
前記ソックス(2)が約15から25デニールの間に入る厚さを有していることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記ソックス(2)が約30から50デニールの間に入る厚さを有していることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項21】
前記ソックス(2)が約50から70デニールの間に入る厚さを有していることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載の装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【公表番号】特表2008−513088(P2008−513088A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531941(P2007−531941)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053050
【国際公開番号】WO2006/030399
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504087868)ケイエス イタリア エス.エイ.エス.ディ アムブロソネ マリオ アンド シー. (3)
【Fターム(参考)】