説明

下路合成桁を有する鋼・複合橋

【課題】付着力および粘りが強く、かつ、質量効果の大きいゴムラテックスモルタルを用いることにより、施工が容易で、耐荷性・耐候性に優れ、騒音の低減を図ることができる下路合成桁を有する鋼・複合橋を提供する。
【解決手段】下路合成桁を有する鋼・複合橋において、下路合成桁4の鋼板5及びベース鋼板2の所定の部位にゴムラテックスモルタル3,6を形成し、低コスト化と低騒音化を図るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下路合成桁を有する鋼・複合橋に係り、特に、低コスト化と低騒音化を図るようにしたゴムラテックスモルタルを用いた下路合成桁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鋼・複合橋の構造物の騒音対策としては、鋼板部に制振材を取り付ける方法や、被覆コンクリートを用いる方法がとられている。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した鋼板部に制振材を取り付ける方法は、コストが嵩むといった問題があった。
【0004】
また、被覆コンクリートを用いる方法は、剥落対策で300mm程度の厚さが必要であり、死荷重が大きくなりすぎるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、付着力および粘りが強く、かつ、質量効果の大きいゴムラテックスモルタルを用いることにより、施工が容易で、耐荷性・耐候性に優れ、騒音の低減を図ることができる下路合成桁を有する鋼・複合橋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕下路合成桁を有する鋼・複合橋において、下路合成桁の鋼板の所定の部位にゴムラテックスモルタルを形成し、低コスト化と低騒音化を図るようにしたことを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記下路合成桁のベース鋼板上にベースゴムラテックスモルタルを形成するようにしたことを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔1〕記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記下路合成桁の鋼板にゴムラテックスモルタルを形成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
〔4〕上記〔1〕記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記ゴムラテックスモルタルを前記下路合成桁の鋼板の両面に形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
〔5〕上記〔1〕記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記ゴムラテックスモルタルを前記下路合成桁の鋼板の片面に形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、付着力および粘りが強く、かつ、質量効果の大きいゴムラテックスモルタルを用いることにより、施工が容易で、耐荷性・耐候性に優れ、騒音を低減した下路合成桁を有する鋼・複合橋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の下路合成桁を有する鋼・複合橋は、下路合成桁の鋼板の所定の部位にゴムラテックスモルタルを形成し、低コスト化と低騒音化を図るようにした。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例を示す下路合成桁を有する鋼・複合橋を示す斜視図、図2はその鋼・複合橋を示す断面図である。
【0015】
これらの図において、1は基礎、2は基礎1上に敷設され、下路合成桁を支えるベース鋼板、3はベース鋼板2上に形成されるベースゴムラテックスモルタル、4は下路合成桁、5は下路合成桁4の鋼板、6は下路合成桁4の鋼板5の両面に形成されるゴムラテックスモルタル(厚さt=5mm)、7は下路合成桁4上に構築される軌道路、8はレールである。
【0016】
ゴムラテックスモルタルは、スチレンブタジエン(SBR)を混入したモルタルであり、ゴムとモルタルの両者の性能を併せ持っている。すなわち、(1)鋼材、コンクリートへの吸着力が非常に強い。(2)ゴムの性能により、薄く形成しても剥離しない。(3)モルタルの性能により、ゴムより質量効果が大きい。(4)透水、透気性が低く、鋼材の腐食防止、コンクリートの中性化抑制が可能である。
【0017】
図3は本発明の下路合成桁の鋼板へのゴムラテックスモルタルの形成状態を示す図、図4は本発明のゴムラテックスモルタルの合成桁への施工状況を示す図面代用写真である。
【0018】
このように、ゴムラテックスモルタルは、下路合成桁4の鋼板5に吹き付けにより施工される。そのため、施工が簡単であり、従来騒音対策として用いられてきた鋼板部に制振材を取り付ける方法や、被覆コンクリートを用いる方法に比べて、低コスト化を図ることができる。
【0019】
なお、ゴムラテックスモルタルを使用した場合、プライマー等も不要であるため、制振材の施工に比べて初期コストで約50%低減できる試算になっている。
【0020】
ゴムラテックスモルタル6は下路合成桁4の鋼板5の両面に形成することにより、下路としての軌道路7を車両が通過する際の下路合成桁4の騒音を低減することができる。
【0021】
振動解析および計測試験により、鋼板5の両面に厚さ各5mmゴムラテックスモルタル6を形成することで、従来使用されてきた制振材と同等な性能を得られることを確認した。
【0022】
さらに、基礎1上に敷設されるベース鋼板2上に厚さ10〜15mmのベースゴムラテックスモルタル3を形成することで、下路合成桁4の騒音を低減させる。
【0023】
各種試験により、これらのベースゴムラテックスモルタル3およびゴムラテックスモルタル6ともに耐候性が優れていることが確認された。特に、ベースゴムラテックスモルタル3は、十分な耐荷性が確保されていることも確認できた。
【0024】
なお、上記実施例では、下路合成桁の鋼板5には両面にゴムラテックスモルタル6を形成するようにしたが、片面のみに形成するようにしてもよい。
【0025】
また、本発明は、従来のもう一つの騒音対策として挙げられている被覆コンクリートを用いた場合に対して、死荷重が大幅に低減できるため、橋梁の鋼重を5〜7%低減できる試算となっている。
【0026】
さらに、鋼板として、従来の鋼材に比べて高強度・高じん性であるとともに、溶接施工性・加工性に優れた高性能鋼材(BHS:Bridge High−performance Steel)を用いると、鋼重を低減させることができる。例えば、連続合成桁の鋼材SM520,SM400の一部をBHSに変更することにより、鋼重をさらに3〜5%低減することができる。そのため、製作費の増加を抑え、さらなる低コスト化を図ることができる。
【0027】
その他、ゴムラテックスモルタルは防水性にも優れており、鋼部材の塗装・塗り替えが不要になるため、ライフサイクルコスト低減にも効果がある。
【0028】
ゴムラテックスモルタルの適用にあたっては、大型の桁試験体による吹き付け施工試験を行い、施工性および吹き付け厚の管理方法について確認した。また、耐荷性(付着性能含)や耐候性についても各種試験を行い、実際の橋梁に適用した場合でも十分な性能が確保されていることが確認できた。
【0029】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の下路合成桁を有する鋼・複合橋は、施工が容易で、耐荷性・耐候性に優れ、騒音の低減を図ることができる下路合成桁を有する鋼・複合橋として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例を示す下路合成桁を有する鋼・複合橋を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す下路合成桁を有する鋼・複合橋を示す断面図である。
【図3】本発明の下路合成桁の鋼板へのゴムラテックスモルタルの形成状態を示す図である。
【図4】本発明のゴムラテックスモルタルの合成桁への施工状況を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0032】
1 基礎
2 ベース鋼板
3 ベースゴムラテックスモルタル
4 下路合成桁
5 鋼板
6 ゴムラテックスモルタル
7 軌道路
8 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下路合成桁の鋼板の所定の部位にゴムラテックスモルタルを形成し、低コスト化と低騒音化を図るようにしたことを特徴とする下路合成桁を有する鋼・複合橋。
【請求項2】
請求項1記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記下路合成桁のベース鋼板上にベースゴムラテックスモルタルを形成するようにしたことを特徴とする下路合成桁を有する鋼・複合橋。
【請求項3】
請求項1記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記下路合成桁の鋼板にゴムラテックスモルタルを形成するようにしたことを特徴とする下路合成桁を有する鋼・複合橋。
【請求項4】
請求項1記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記ゴムラテックスモルタルを前記下路合成桁の鋼板の両面に形成するようにしたことを特徴とする下路合成桁を有する鋼・複合橋。
【請求項5】
請求項1記載の下路合成桁を有する鋼・複合橋において、前記ゴムラテックスモルタルを前記下路合成桁の鋼板の片面に形成するようにしたことを特徴とする下路合成桁を有する鋼・複合橋。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47896(P2010−47896A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210211(P2008−210211)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】