説明

不具合事例登録検索方法および装置

【課題】不具合事例の登録検索に関して、蓄積された不具合事例をより有効に活用できるようにする。
【解決手段】不具合事例登録検索は、過去に発生した不具合事象に関して、その不具合内容やそれに対してとられた対策が記述された不具合事例を編集・作成して不具合事例登録検索装置に登録しておき、必要時に登録不具合事例から参考となる不具合事例を検索・抽出して利用できるようにしたものである。このような不具合事例登録検索において、不具合事象を構成する複数の構成事象について、その一つを主事象(22、27)、その他を副事象(25)とし、これら主事象と副事象を因果の連鎖で関係付けた事象連鎖(24、26)を不具合事例ごとに編集・設定するとともに、不具合事例ごとに設定された事象連鎖について、主事象で共通する事象連鎖間を当該共通の主事象で関係付けた事象連鎖ネットワーク(23)を編集・設定するものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過去に発生した不具合事象に関して、その不具合内容やそれに対してとられた対策などを記述した不具合事例を登録しておき、必要時に登録不具合事例から参考となる不具合事例を検索・抽出して利用できるようにした不具合事例登録検索方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ある不具合事象に遭遇してそれを解決する場合、あるいはプラントなどの設計において想定される不具合事象の発生を未然に防止するためにそれへの対策を設計に反映しようとする場合などにあっては、過去に発生した類似の不具合事象の事例を調査し、そこでとられていた原因や対策を参考にすることが有効な手段の1つである。このため、過去に発生した不具合事象について、その不具合内容やそれに対してとられた対策などを記述した不具合事例(不具合事例データないし不具合事例ファイル)を所定のフォーマットで収集、整理してデータベースに蓄積しておき、必要なときにインデックス検索やキーワード検索などにより参考となる不具合事例を検索・抽出することが様々な分野で行われている。
【0003】
また不具合事例の検索精度を向上させるために、例えば、特許文献1に記載された故障解析事例蓄積装置では、故障原因から故障現象に至る過程を複数の中間状態で関連付けた物理的因果ネットワークとして故障事例を整理し、不具合事例を利用する際にその物理的因果ネットワークを参照することにより最適な参考事例を抽出できるようにしている。
【0004】
また、近年、解決すべき問題が与えられたときに、その問題に類似した不具合事例を事例ベースから検索・抽出し、解決すべき問題の特徴に合致するように事例を修正して当該問題の解を得るようにした事例ベース推論システムも注目されている(例えば非特許文献1、2)。
【0005】
【特許文献1】特開平10‐55277号公報
【非特許文献1】小林重信著“事例ベース推論の現状と展望”(人工知能学会誌Vol.17,No.4,1992)。
【非特許文献2】仲谷善雄著“事例ベース推論の動向”(人工知能学会誌Vol.17,No.1,2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来にあっては不具合事例をデータベース化するのに、不具合事例を特徴付ける事象を1件の不具合事例ごとにインデックスやキーワードとして付加することにより、不具合事例を分類・整理して事例ベースへ登録している。そして必要時に、インデックス検索やキーワード検索により目的の不具合事例つまり解決すべき問題などに類似した不具合事例を検索して抽出するのが一般的である。
【0007】
しかしながら、このような分類整理だけによる検索では、参考となり得る不具合事例を漏れなく抽出することは必ずしも容易でない。例えば、プラントなどの設計において事前に想定される不具合事象の発生を未然に防止するためにその対策を設計へ反映しようとするようなケースがある。この場合、設計者は想定不具合事象における特徴事象をインデックスあるいはキーワードとして不具合事例のデータベースを検索して絞り込むことで目的の不具合事例を抽出し、それらの不具合事例に記載された原因、対策、反省事項などを設計へ反映することとなる。
【0008】
ところが、事象は1つずつ独立したものでなく、1つの事象が発生するとその事象に誘発されて別の事象が連鎖的に発生するケースが多い。過去に報告された不具合事象の事例を調べると、1つの不具合事象が単独の事象だけからなる場合より、原因と結果の因果関係を持って連鎖的に発生する複数の事象を含む場合の方が多く見受けられる。すなわち1つの不具合事例として報告される不具合事象は、因果関係を持った複数の事象を構成事象(不具合事象構成事象)としてなっている場合の方が多い。また、個々の不具合事象の関係においても、それぞれの構成事象の組み合わせは異なるが、その構成事象の中に同じかもしくは類似する事象が含まれるケースも少なからずある。このようなケースでは、構成事象間の関連性や波及性を十分考慮せず不具合事象の主たる構成事象やそれに関連する事象をキーワードとして手当たり次第に挙げて不具合事例を検索するだけでは、参考となり得る不具合事例を漏れなく抽出できない可能性が残る。すなわちこのような検索であると、例えば上記設計段階で不具合事例を参照するような場合、設計者が想定不具合事象に関して予想できる関連範囲のキーワードなどによる検索にとどまり、設計者に予想できない関連範囲については不具合事例を抽出することができない。このことは、想定不具合事象に対する対処法の有力な参考となる不具合事例を見落とすことにつながる。
【0009】
このように不具合事例の登録検索では、不具合事象を構成する構成事象間の関連性や異なる不具合事象間での構成事象の関連性が重要である。しかるに従来ではこの構成事象間の関連性について十分な考慮が払われておらず、蓄積された不具合事例の活用範囲が不十分なものであった。
【0010】
本発明は、以上のような事情を背景になされたものであり、蓄積された不具合事例のより有効な活用を可能とする不具合事例登録検索方法およびその装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的のために本発明では、過去に発生した不具合事象に関して、その不具合内容やそれに対してとられた対策が記述された不具合事例を編集・作成して不具合事例登録検索装置に登録しておき、必要時に前記登録不具合事例から参考となる不具合事例を検索・抽出して利用できるようにされてなる不具合事例登録検索方法において、前記不具合事象を構成する複数の構成事象について、その一つを主事象、その他を副事象とし、これら主事象と副事象を因果の連鎖で関係付けた事象連鎖を前記不具合事例ごとに編集・設定するとともに、前記不具合事例ごとに設定された前記事象連鎖について、前記主事象で共通する事象連鎖間を当該共通の主事象で関係付けた事象連鎖ネットワークを編集・設定することを特徴としている。
【0012】
また本発明では上記のような不具合事例登録検索方法について、前記主事象で共通する事象連鎖間の関係付けは、前記事象連鎖間を前記共通の主事象で統合することでなすようにしている。
【0013】
また本発明では上記のような不具合事例登録検索方法について、前記副事象で共通する事象連鎖間にも前記事象連鎖ネットワークとしての関係付けをなすようにしている。
【0014】
また本発明では上記のような不具合事例登録検索方法について、前記副事象で共通する事象連鎖間の関係付けは、前記副事象で共通する事象連鎖の間にリンクを付すリンク付けでなすようにしている。
【0015】
また本発明では上記のような不具合事例登録検索方法で用いるためにコンピュータを用いて構成される不具合事例登録検索装置について、前記不具合事例の作成や検索に必要なデータを入力するための入力操作部を備えるとともに前記コンピュータのデータ処理部にコンピュータプログラムとして実行エンジン部を備え、さらに前記不具合事例や前記事象連鎖を格納するためのデータベースを前記コンピュータのデータ格納部に備え、前記不具合事例の作成や検索に必要なデータを入力するための入力操作部を備えるとともに実行エンジン部を備え、さらに前記不具合事例や前記事象連鎖を格納するためのデータベースを備え、前記実行エンジン部は、入力編集処理部と制御部を備え、前記入力編集処理部は、前記不具合事例の編集をなす事例編集処理部、前記事象連鎖の編集をなす事象連鎖編集処理部、前記事象連鎖ネットワークの編集をなす事象連鎖ネットワーク編集処理部、および前記検索のための検索入力処理部を備え、前記制御部は、前記事例編集処理部で編集・作成した不具合事例の前記データベースへの登録をなす事例登録制御部、前記事例編集処理部で編集・作成した不具合事例と前記事象連鎖編集処理部で編集・作成した事象連鎖との対応関係を設定する事例/事象連鎖対応制御部、および前記事象連鎖ネットワークにおける事象連鎖間の関係付けを設定する事象連鎖ネットワーク制御部を備える構成を与えるものとしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、不具合事例における不具合事象を構成する構成事象についての事象連鎖を不具合事例ごとに設定するとともに、その事象連鎖について構成事象間の関係付けによる事象連鎖ネットワークを設定するようにしている。この事象連鎖ネットワークは、1つの不具合事例に対する他の不具合事例の関連性を一覧的に表示できるものであり、したがって、不具合事例の検索に際して、この事象連鎖ネットワークに基づいた不具合事例の検索をなすことにより、キーワードやインデックスなどによる検索だけの場合よりも幅広く検索することができるようになり、参考となり得る不具合事例を漏れなく抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施する上で好ましい形態について説明する。図1に一実施形態による不具合事例登録検索装置の構成をブロック図で示す。図1に見られるように、不具合事例登録検索装置は、実行エンジン部1、データベース12、表示部16および入力操作部17を備えている。その実行エンジン部1は、入力編集処理部2と制御部7を備え、入力編集処理部2には、事例編集処理部3、事象連鎖編集処理部4、事象連鎖ネットワーク編集処理部5および検索入力処理部6が設けられ、制御部7には、事例登録制御部8、事例/事象連鎖対応制御部9、事象連鎖ネットワーク制御部10および事例検索部11が設けられている。またデータベース12には、事例格納部13、事象連鎖格納部14および管理情報格納部が設けられている。なおこれらは、コンピュータシステムによって構成される。すなわち実行エンジン部1はコンピュータのデータ処理部にコンピュータプログラムとして搭載され、表示部16および入力操作部17はコンピュータシステムのそれらとして構成され、データベース12はコンピュータシステムにおけるデータ格納部として配置される。
【0018】
以下、各要素について具体的に説明する。まず実行エンジン部1の入力編集処理部2について説明する。事例編集処理部3は、不具合事例の登録に際して所定のフォーマットで不具合事例を編集したり、また既に登録されている不具合事例を再編集したりする処理に用いられる。具体的には、不具合事例を新規に登録する場合であれば、その登録に必要な入力フォーマットを表示部16に表示し、ユーザはこの入力フォーマットに必要事項を入力操作部17で入力することになる。不具合事例入力フォーマットの一例を図2に示す。図2の例は、不具合事象が発電プラントや化学プラントなどのプラントに関する場合の例であり、フォーマットとして、事例名称、発生プラント、発生設備、発生日時、不具合内容、不具合原因、対策などの内容を記載できるようにされている。なお、不具合事象における不具合の内容は不具合の原因とは分かちがたい場合が多い。したがって図2の例に代えて、不具合内容と不具合原因を一つの欄に記載するフォーマットとするようにしてもよい。
【0019】
事象連鎖編集処理部4は事象連鎖の編集処理をなす。ここで、事象連鎖とは、不具合事例における不具合事象を構成する複数の構成事象(不具合事象構成事象)について、その一つを主事象、他を副事象とし、そしてこれら主事象と副事象をノードで表わして、そのノード間を、各事象間の因果関係を示すリンク(因果関係リンク)で連鎖的に関係付けたものであり、事例編集処理部3で編集処理される不具合事例ごとに作成される。事象連鎖編集処理部4で事象連鎖の編集処理をなすには、まず事例編集処理部3にて編集処理された不具合事例について、ユーザがその不具合事例における不具合内容や不具合原因の記載内容から不具合事象の構成事象を抽出する。それから抽出した構成事象について、主事象を1つ選定し、他を副事象とするとともに、これら主事象と副事象の間にそれぞれの因果の順番に応じた因果的な連鎖関係を設定することで事象連鎖を作成する。
【0020】
不具合事象構成事象に対して選定する1つの主事象は、それを含む不具合事象の内で最も中心になる構成事象である。その判断は経験的になされることになる。例えば発電プラントの場合であれば、過去に発生した不具合事象から、主要な事象項目としては40件程度であることが分っている。そこでこれについて予めリストを作成し、その主事象リストをデータベース12にあらかじめ登録しおく。そして事象連鎖の編集処理に際し、そのリストを表示してユーザがこれを参考にして主事象を選定できるようにする。
【0021】
図3に発電プラントにおける主事象リストの例を示す。また事象連鎖の入力編集の例を図4に示す。図4には不具合事例1に対応する事象連鎖の例と不具合事例nに対応する事象連鎖の例を示してある。不具合事例1に対応する事象連鎖18は、主事象19が始めに発生し、それに起因して副事象20が3つ直列に続けて発生するケースであり、これら4つの事象をそれぞれノードとし、その各ノード間を因果関係リンク21でシリーズに接続した事象連鎖として作成される。一方、不具合事例nに対応する事象連鎖は、主事象が途中で発生し、また副事象が並列的に発生するケースである。
【0022】
事象連鎖ネットワーク編集処理部5は、事象連鎖にネットワークを編集する処理をなす。事象連鎖ネットワークは2つの関係性をもとに編集される。1つは主事象についての関係性で、同じ主事象を持つ事象連鎖をその主事象に関して関係付ける。具体的には、同じ主事象を持つ事象連鎖をその主事象に関して統合させる。他の1つは副事象についての関係性で、同じ副事象を持つ事象連鎖間をその同じ副事象に関して関係付ける。具体的には、同じ副事象を持つ事象連鎖間をその同じ副事象についてリンク(事象連鎖間リンク)で接続させる。発電プラントのオフガス処理系統における事象連鎖ネットワークの編集例を図5に示す。図5の例は、主事象として「燃焼・爆発」が共通である複数の事象連鎖をその「燃焼・爆発」ノード22に関して統合した事象連鎖ネットワーク23が既に構成されている状態で、同じ「燃焼・爆発」を主事象として持つ事象連鎖24が事象連鎖編集処理部4で新たに編集された場合に、この事象連鎖24が事象連鎖ネットワーク編集処理部5にて事象連鎖ネットワーク23に統合される状態を示している。また主事象ノード27を「かじり」とし、副事象に「ドレン流入」ノード25を持つ別の事象連鎖26がさらに編集された場合に、その副事象で「ドレン流入」ノード25を事象連鎖24と共通にすることから、この共通の副事象ノードについて事象連鎖間リンク28を設定する状態についても示している。
【0023】
検索入力処理部6は、データベース12に蓄積されている不具合事例を検索する際に検索入力画面を表示し、ユーザはその検索入力画面で検索に必要なデータを入力して不具合事例の検索を行う。
【0024】
以上の各種編集処理などは、表示部16でなされた表示を見ながら入力操作部17で必要なデータの入力を行うことで進められる。
【0025】
次に、実行エンジン部1の制御部7について説明する。事例登録制御部8は、事例編集処理部3で編集処理して入力された不具合事例をデータベース12の事例格納部13に登録する。事例/事象連鎖対応制御部9は、事例編集処理部3で不具合事例が編集処理されるごとにその不具合事例について事象連鎖編集処理部4で作成される事象連鎖の不具合事例に対する1対1の対応付けを設定する。事象連鎖ネットワーク制御部10は、事象連鎖ネットワークの編集で形成された事象連鎖間の関係つまり事象連鎖間の主事象に関する統合関係と事象連鎖間の副事象に関するリンク関係の設定を行う。事例検索部11は、検索入力処理部6で設定されたデータに基づいてディレクトリ検索あるいはキーワード検索を実施する。
【0026】
次にデータベース12について説明する。事例格納部13は、事例編集処理部3にて入力編集した不具合事例を格納する。事象連鎖格納部14は、事象連鎖編集処理部4で作成編集した事象連鎖を格納する。管理情報格納部15は、事例/事象連鎖対応制御部9で設定された不具合事例と事象連鎖との1対1の対応付け情報、それに事象連鎖ネットワーク制御部10で設定された事象連鎖間の統合関係情報とリンク関係情報を格納する。
【0027】
以下では不具合事例の登録から事象連鎖ネットワークの編集までの一連の処理つまりコンピュータのデータ処理部がコンピュータプログラムである実行エンジン部1で行う処理部ついて図6に示すフローチャートに沿って説明する。ステップS1では事例編集処理部3により図2に示した不具合事例入力フォーマットを表示する。ユーザはステップS2で新規不具合事例を入力フォーマットに入力してその登録を行う。ここまでが不具合事例の登録処理である。
【0028】
続いて事象連鎖の編集となり、ステップS3では、入力した不具合事例における不具合事象を構成する構成事象の中から主事象を選定し、さらにステップS4では残りの構成事象を副事象として抽出する。ステップS5では事象連鎖編集処理部4により事象連鎖編集画面が表示されるので、ユーザは選定した主事象と抽出した副事象の因果関係を判断し、原因と結果の順番にしたがって各事象のノード間を因果関係リンクで関係付けて事象連鎖を図4に示した例のように作成する。ステップS6では、新規不具合事例とこれに対応する事象連鎖を図4に示した例のように1対1で対応付けてデータベースに登録する。ここまでが事象連鎖の編集と登録の処理であり、続いて事象連鎖ネットワークの編集を行う。
【0029】
ステップS7では、事象連鎖ネットワーク編集処理部5より事象連鎖ネットワーク編集の画面を表示し、ステップS6にて新規登録した事象連鎖における主事象と同じ主事象を持つ登録済みの事象連鎖が存在するか否かを事象連鎖ネットワーク編集処理部5がチェックし、存在する場合は、図5の例で示したように、新規事象連鎖を登録済みの事象連鎖に共通の主事象ノードに関して統合した事象連鎖ネットワークを作成してデータベース12に格納するとともに、それを表示部16に表示する。この場合に、事象連鎖ネットワーク上で新規事象連鎖部分を色や点滅などにより強調表示する。一方、新規登録した事象連鎖と同じ主事象を持つ登録済みの事象連鎖が存在しない場合は、新規事象連鎖のみを事象連鎖ネットワーク編集画面上に表示する。なお、事象連鎖の統合に関しては、システムが設定した統合をユーザが削除したり、ユーザが新たに統合を追加したりする編集も行えるようにするのが好ましい。ステップS8では、既に登録されている事象連鎖の中に、ステップS6にて新規登録した事象連鎖と同じ副事象を持つ事象連鎖が存在するか否かを事象連鎖ネットワーク編集処理部5がチェックし、存在する場合は、ステップS9において、その同じ副事象を持つ事象連鎖を付加した事象連鎖ネットワークを作成してデータベース12に登録するとともに、表示部16において強調表示する。そしてステップS10において、新規事象連鎖と同じ副事象を持つ既登録の事象連鎖との間で副事象間に、図5の例のように、事象連鎖間リンクを事象連鎖ネットワーク制御部10が設定する。この事象連鎖間リンクについても、ユーザによる削除や追加を行えるようにするのが好ましい。
【0030】
次に、不具合事例検索における処理を図7に示すフローチャートに沿って説明する。検索が開始されるステップS11では、検索に必要なキーワードやインデックスとなる事象名(通常は主事象名)のリストが検索入力画面として表示されるので、ユーザはそのリストから必要な事象名を選択することで検索に必要なデータを入力する。ステップS12では、入力された事象名で特定される構成事象(通常は主事象)を持つ不具合事例を事例検索部11が検索して抽出し、その抽出不具合事例を事例名称のリストで表示部16に表示する。ステップS13では、事例名称リストからユーザが任意に選択した不具合事例の内容を表示する。ステップS14では、その不具合事例に対応する事象連鎖を表示する。この場合にその事象連鎖が事象連鎖ネットワークに組み込まれている場合には、その事象連鎖ネットワークとして表示し、その中から該当の事象連鎖を特定して強調表示する。ステップS15では、ステップS14で表示された事象連鎖と同じ副事象を持つ事象連鎖が他に存在する場合に、その関連事象連鎖も事象連鎖ネットワーク上で強調表示する。このような事象連鎖ネットワークの表示により、ユーザは1つの不具合事例に対する他の不具合事例の関連性を一覧的に捉えることができる。ステップS16では、その事象連鎖ネットワークにおいて強調表示されている関連事象連鎖をクリックすることで、その関連事象連鎖に対応する不具合事例を事例検索部11が抽出する。以上のような事象連鎖ネットワークを利用した検索・抽出により、キーワードやインデックスなどによる検索だけの場合よりも幅広く検索することができるようになり、参考となり得る不具合事例を漏れなく抽出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、不具合事例の登録検索に関し、より幅広い検索を行えるようにして参考となり得る不具合事例の漏れない抽出を可能とするものであり、不具合事例の登録検索を活用する産業分野に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一実施形態による不具合事例登録検索装置の構成を示すブロック図である。
【図2】不具合事例入力フォーマットの例を示す図である。
【図3】発電プラントにおける主事象リストの例を示す図である。
【図4】事象連鎖の編集例を示す図である。
【図5】事象連鎖ネットワークの編集例を示す図である。
【図6】不具合事例の登録から事象連鎖ネットワークの編集までの処理の流れを示す図である。
【図7】不具合事例の検索処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 実行エンジン部
2 入力編集処理部
3 事例編集処理部
4 事象連鎖編集処理部
5 事象連鎖ネットワーク編集処理部
6 検索入力処理部
7 制御部
8 事例登録制御部
9 事例/事象連鎖対応制御部
10 事象連鎖ネットワーク制御部
11 事例検索部
12 データベース
16 表示部
17 入力操作部
18 事象連鎖
19 主事象
20 副事象
21 因果関係リンク
28 事象連鎖間リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に発生した不具合事象に関して、その不具合内容やそれに対してとられた対策が記述された不具合事例を編集・作成して不具合事例登録検索装置に登録しておき、必要時に前記登録不具合事例から参考となる不具合事例を検索・抽出して利用できるようにされてなる不具合事例登録検索方法において、
前記不具合事象を構成する複数の構成事象について、その一つを主事象、その他を副事象とし、これら主事象と副事象を因果の連鎖で関係付けた事象連鎖を前記不具合事例ごとに編集・設定するとともに、前記不具合事例ごとに設定された前記事象連鎖について、前記主事象で共通する事象連鎖間を当該共通の主事象で関係付けた事象連鎖ネットワークを編集・設定することを特徴とする不具合事例登録検索方法。
【請求項2】
前記主事象で共通する事象連鎖間の関係付けは、前記事象連鎖間を前記共通の主事象で統合することでなすようにされている請求項1に記載の不具合事例登録検索方法。
【請求項3】
前記副事象で共通する事象連鎖間にも前記事象連鎖ネットワークとしての関係付けをなすようにした請求項1または請求項2に記載の不具合事例登録検索方法。
【請求項4】
前記副事象で共通する事象連鎖間の関係付けは、前記副事象で共通する事象連鎖の間にリンクを付すリンク付けでなすようにされている請求項3に記載の不具合事例登録検索方法。
【請求項5】
請求項1に記載の不具合事例登録検索方法に用いるためにコンピュータを用いて構成される不具合事例登録検索装置であって、
前記不具合事例の作成や検索に必要なデータを入力するための入力操作部を備えるとともに、前記コンピュータのデータ処理部にコンピュータプログラムとして実行エンジン部を備え、さらに前記不具合事例や前記事象連鎖を格納するためのデータベース前記コンピュータのデータ格納部に備え、
前記実行エンジン部は、入力編集処理部と制御部を備え、
前記入力編集処理部は、前記不具合事例の編集をなす事例編集処理部、前記事象連鎖の編集をなす事象連鎖編集処理部、前記事象連鎖ネットワークの編集をなす事象連鎖ネットワーク編集処理部、および前記検索のための検索入力処理部を備え、
前記制御部は、前記事例編集処理部で編集・作成した不具合事例の前記データベースへの登録をなす事例登録制御部、前記事例編集処理部で編集・作成した不具合事例と前記事象連鎖編集処理部で編集・作成した事象連鎖との対応関係を設定する事例/事象連鎖対応制御部、および前記事象連鎖ネットワークにおける事象連鎖間の関係付けを設定する事象連鎖ネットワーク制御部を備えてなる不具合事例登録検索装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−31213(P2006−31213A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206821(P2004−206821)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】