不具合検出装置および画像形成装置
【課題】画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定する。
【解決手段】制御部は、読取画像データDに対して、各画像処理部によって順次画像処理が実行された結果である画像データD1,D2,D3と、各画像処理に基づいたエミュレーション処理を、この順序に従って順次実行した結果である画像データDr1,Dr2,Dr3とをそれぞれ比較、一致しない部分があるか否かを判定する。そして、比較した画像データどうしで不一致の部分があれば、画像処理順序が最先の画像処理を実行した画像処理部に不具合があると判定する。例えば、画像データD2の画像と画像データDr2の画像、及び画像データD3の画像と画像データDr3の画像とに一致しない部分があるとすれば、画像処理の結果として画像データD2を生成した画像処理部に不具合が発生している。
【解決手段】制御部は、読取画像データDに対して、各画像処理部によって順次画像処理が実行された結果である画像データD1,D2,D3と、各画像処理に基づいたエミュレーション処理を、この順序に従って順次実行した結果である画像データDr1,Dr2,Dr3とをそれぞれ比較、一致しない部分があるか否かを判定する。そして、比較した画像データどうしで不一致の部分があれば、画像処理順序が最先の画像処理を実行した画像処理部に不具合があると判定する。例えば、画像データD2の画像と画像データDr2の画像、及び画像データD3の画像と画像データDr3の画像とに一致しない部分があるとすれば、画像処理の結果として画像データD2を生成した画像処理部に不具合が発生している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理を行う装置において不具合が発生した箇所を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化や高密度化に加え、多層配線などのチップ構造の複雑化により、LSI(Large Scale Integration)の故障が増大している。また、組み込みソフトウェアの大規模化や複雑化に伴ってバグの発生機会が増加し、さらに、そのバグによって異常な動作が引き起こされることもある。例えば複写機やプリンタなどの画像形成装置にLSIが搭載されている場合には、上記のようなハードウェアやソフトウェアの不具合により、画像処理が適切に行われずに、画像に異常が発生することがある。この異常には、例えば有色画素の濃度が局所的に濃くなる“黒スジ”と呼ばれる現象や、有色画素が消えてしまう“白ヌケ”と呼ばれる現象のほか、画像の色味が意図していたものとは異なってしまったり、画像データがデータ化けによって乱れてしまうなどといったものある。
【0003】
このように、画像に異常が発生した場合には、ハードウェアやソフトウェアの不具合の発生箇所を速やかに特定し、その発生箇所に係る部品を修理又は交換する必要がある。ただし、この不具合の発生箇所の特定は一般には容易ではない。そこで、例えば特許文献1では、不具合発生時の状況を把握するために、データバスの状態を記録及び通知する方法が提案されている。また、特許文献2では、不具合が発生したときになされた操作の手順や不具合の内容を記録する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平1−106151号公報
【特許文献2】特開2001−109030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいた各エミュレート処理を、前記順序に従って画像データに対して実行するエミュレート手段と、前記エミュレート手段により各エミュレート処理が実行された結果である各画像データを記憶する第2記憶手段と、前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとを比較する比較手段であって、複数の前記画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記第1記憶手段に記憶されている画像データと、当該画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として前記第2記憶手段に記憶されている画像データどうしをそれぞれ比較する比較手段と、前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の第2の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する記憶手段と、前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいたエミュレート処理を画像データに対して実行するエミュレート手段と、前記複数の画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段を指定する指定手段と、前記指定手段によって指定された画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記記憶手段に記憶されている画像データと、当該指定された画像処理手段によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、当該画像処理に基づくエミュレート処理が前記エミュレート手段によって実行された結果を表す画像データとを比較する比較手段と前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、前記指定された画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定することを特徴とする。
【0008】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知することを特徴とする。
【0009】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知することを特徴とする。
【0010】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記複数の画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって前記画像形成手段によって形成された画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、上記構成のいずれか1の不具合検出装置と、前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の構成について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(1)構成
図1は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示操作部13と、4つの画像転送部(第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144)と、3つの画像処理部(第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153)と、画像読取部16と、画像形成部17とを備えている。制御部11は、例えばCPUや各種メモリからなり、そのメモリや記憶部12に記憶された制御プログラムに記述された手順に従って画像形成装置100の全体を制御する。また、制御部11は、同じくメモリや記憶部12に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて、画像データに対して、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153が実行する画像処理に基づいたエミュレート処理を実行する。ここでいう「第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153が実行する画像処理に基づいたエミュレート処理」とは、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153がそれぞれ実行する画像処理と同じ内容の画像処理を、これらの画像処理部とは独立に実行する処理のことをいう。即ち、制御部11は、各画像処理部が実行する画像処理を擬似的に実行する機能をも実装している。
【0015】
表示操作部13は、例えばタッチパネルであり、ユーザによる操作を受け付ける操作手段として機能するとともに、ユーザに対する対話画面や各種の画像を表示する表示手段としても機能する。画像読取部16は、例えばスキャナであり、図示せぬ光源、結像レンズおよびラインセンサを有しており、被撮像物に光を照射し、その反射光の強度に基づいて画像データを生成して出力する処理手段である。この画像データは画像形成装置100に入力されることになるから、画像読取部16は、画像形成装置100に画像データを入力する入力手段として機能する。
【0016】
第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153は、画像データに対してそれぞれ異なる画像処理を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)やLSIである。第1画像処理部151は、画像の背景に関する背景処理、画像の変倍処理又は回転処理などの第1の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第2画像処理部152は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の画像データをC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の画像データに変換するなどの色変換処理や、画像の解像度を変換する解像度変換処理などの第2の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第3画像処理部153は、スクリーン処理などの第3の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。各画像処理部は、前段にある構成部品、又は制御部11から供給された画像データに対して実行した画像処理の結果である画像データを、後段にある構成部品(画像転送部)に出力する。ここでいう「前段」とは、この画像形成装置100において画像データが流れる方向の上流側のことであり、反対に、「後段」とはその下流側のことである。例えば第1画像処理部151は、前段の構成部品である第1画像転送部141、又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第1の画像処理を実行して、後段の構成部品である第2画像転送部142に出力する。同様に、第2画像処理部152は、第2画像転送部142又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第2の画像処理を実行して、第3画像転送部143に出力する。第3画像処理部153は、第3画像転送部143又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第3の画像処理を実行して、第4画像転送部144に出力する。
このように各画像処理は、第1の画像処理→第2の画像処理→第3の画像処理というように、予め決められた順序で実行されるようになっている。
【0017】
第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144はそれぞれ、前段にある構成部品から受け取った画像データを、記憶部12と、後段にある構成部品とにそれぞれ転送する。例えば第1画像転送部141は、前段にある画像読取部16から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第1画像処理部151に転送する。また、第2画像転送部142は、前段にある第1画像処理部151から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第2画像処理部152に転送する。第3画像転送部143は、前段にある第2画像処理部152から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第3画像処理部153に転送する。第4画像転送部144は、前段にある第3画像処理部153から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させるとともに、後段にある画像形成部17に転送する。
なお、以下の説明においては、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153のことを、「画像処理部151〜153」と総称することがある。同様に、第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144のことを、「画像転送部141〜144」と総称することがある。
【0018】
画像形成部17は、C,M,Y,Kのトナー毎に設けられた画像形成ユニットを備えており、第4画像転送部144から転送されてくる画像データに応じた画像を用紙などの記録媒体に形成して出力する処理手段である。各々の画像形成ユニットは、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部及び定着部を有する。感光体ドラムは、軸を中心にして所定の速度で周回するドラム状の部材であり、帯電部によって所定の電位に帯電させられる。露光部は、帯電した感光体ドラムにレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像部は、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する。転写部は、感光体ドラムに現像された各色のトナー像を用紙に転写する。定着部は用紙に転写されたトナー像をその用紙に定着させてから機外に排出する。
【0019】
(2)動作
次に、画像形成装置100の動作を説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100における動作モードには、「通常モード」と、「故障検出モード」とがある。「通常モード」とは、画像形成装置100が上記のような不具合検出を行うことなく、与えられた画像データに応じた画像形成処理を行う通常の動作モードである。一方、「故障検出モード」とは、画像形成装置100が用紙に画像を形成するときに、画像処理部151〜153などに不具合が発生しているか否かを検出するときの動作モードである。この動作モードの設定方法については、例えばユーザが表示操作部13を操作して所望する動作モードを指定するようにしてもよいし、制御部11が所定期間毎に「通常モード」から「故障検出モード」に切り替え、その故障検出モードにおける不具合の検出処理が完了したら、再び「通常モード」に戻すようにしてもよい。
【0020】
まず、「通常モード」における画像形成装置100の動作について説明する。
この「通常モード」においては、画像形成装置100は画像形成処理を行う。具体的には、制御部11は、ユーザが画像読取部16に原稿をセットし、表示操作部13を操作して原稿の複写を指示すると、制御部11は、画像読取部16に原稿の画像を読み取らせる。続いて、制御部11は、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、画像読取部16によって読み取られて画像形成装置100に入力された画像データ(以下、「読取画像データ」という)に対し、前述した第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を順次行わせて画像形成部17に画像を形成させるとともに、画像処理部151〜153による各画像処理の結果である画像データをそれぞれ記憶部12に転送させ、そこに記憶させる。
【0021】
具体的には、画像読取部16によって図3の上段に示すような読取画像データDが生成された場合、この読取画像データDは、第1画像転送部141によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第1画像処理部151に転送される。次に、第1画像処理部151は、この読取画像データDに対して、前述した第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データD1は、第2画像転送部142によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。次に、第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データD1に対して、前述した第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データD2は、第3画像転送部143によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。次に、第3画像処理部153は、第3画像転送部143から転送されてくる画像データD2に対して、前述した第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データD3は、第4画像転送部144によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、画像形成部17に転送される。画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データD3に基づいた画像を用紙に形成する。
【0022】
以上の処理により、記憶部12には、読取画像データD、画像データD1,D2,D3が記憶されることになる。これらの画像データは、画像形成装置100が故障検出モードで動作するときに用いるものである。
なお、記憶部12の記憶領域の確保をするため、制御部11は所定容量を限度として、画像を形成した日時が古いものから順に一組ずつ画像データを記憶部12から消去していき、新たに与えられた画像データを記憶部12に記憶させる。もちろん、所定時間や画像の数を限度として消去してもよい。
【0023】
次に、「故障検出モード」における画像形成装置100の動作について説明する。
この「故障検出モード」において、制御部11は、以下に説明する第1動作例〜第3動作例を行う。
(2−1)第1動作例
「故障検出モード」において、まず、ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像形成装置100内の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて、制御部11が図2に示す処理を開始する。この操作時において、制御部11は、記憶部12に蓄積された読取画像データのサムネイル画像を表示操作部13に表示させ、ユーザに対して不具合の検出に用いる画像を指定させるものとする。この第1動作例では、ユーザによって読取画像データDが指定されるものとする。なお、この場合において、制御部11が不具合の検出に好適な画像データを選択してもよく、例えば、画像形成装置100に与えられた日時が最新の読取画像データを選択してもよいし、例えば色数が多いものを選択するといった具合に画像の内容に基づいて読取画像データを選択してもよい。
【0024】
図2において、まず、制御部11は、ユーザによって指定された読取画像データDに対して、上記の画像処理部151〜153のそれぞれによって実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を順次実行し、それぞれのエミュレート処理の結果を表す画像データを記憶部12に記憶させる(ステップS1)。このエミュレート処理の順序においても、画像処理部151〜153に対して決められた画像処理の順序に従うものとする。
【0025】
このステップS1における処理の一例を、図3の下段を参照しながら説明する。
まず、制御部11は、上記の読取画像データDを記憶部12から読み出し、第1画像処理部151が実行する第1の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第1のエミュレート処理Emu1」という。)を実行する。制御部11は、この第1のエミュレート処理Emu1の結果である画像データDr1を記憶部12に記憶させる。次いで、制御部11は、この画像データDr1に対して、第2画像処理部152が実行する第2の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第2のエミュレート処理Emu2」という。)を実行する。そして、ここでも、制御部11は、この第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr2を記憶部12に記憶させる。続いて、制御部11は、この画像データDr2に対して、第3画像処理部153が実行する第3の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第3のエミュレート処理Emu3」という。)を実行する。そして、制御部11は、この第3のエミュレート処理Emu3の結果である画像データDr3を記憶部12に記憶させる。
なお、制御部11は、これらの画像データに基づいた画像を形成させることはないので、画像データDr1,Dr2およびDr3を画像形成部17には供給しない。
以上の処理により、記憶部12には、画像データDr1,Dr2,Dr3が記憶されることになる。
【0026】
ここで、例えば第2画像処理部152に何らかの不具合が発生していると仮定する。この場合、第2画像処理部152における第2の画像処理の結果として記憶部12に記憶されている画像データD2には、画質の劣化や欠陥などの何らかの異常が含まれているはずである。図3の画像データD2の画像における「×」印は、この異常が発生している様子を象徴的に表現したものであり、その「×」印の位置は異常が発生している画像上の位置を表している。以降の図5,7,8においても、この「×」印が意味するところは同じである。このとき、第2画像処理部152の後段の第3画像処理部153には一切の不具合が発生していないとしても、この第3画像処理部153に画像データD2が供給される時点で、既にその画像データD2に異常が含まれているはずである。よって、第3画像処理部153による第3の画像処理の結果である画像データD3においても、画像データD2における異常発生位置と同じ位置に、画像データD2における異常とほぼ同様の内容の異常が発生することになる。
【0027】
その一方で、制御部11が、画像データDr1に対して第2の画像処理に基づいた第2のエミュレート処理Emu2を実行した場合、不具合が発生している第2画像処理部152を経由した処理を行っていないので、第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr2の画像には異常は含まれない。当然、第3のエミュレート処理Emu3の結果においても、画像データDr3の画像には異常は含まれないことになる。
【0028】
ここで図2に戻って説明する。
次いで、制御部11は、通常モードで記憶部12に記憶させた画像データD1,D2,D3の画像と、ステップS1にて、エミュレート処理の結果として記憶部12に記憶された画像データDr1,Dr2,Dr3の画像とをそれぞれ比較し(ステップS2)、一致しない部分があるか否かを判定する(ステップS3)。つまり、制御部11は、画像データD1に含まれる各画素値と、画像データDr1に含まれる各画素値との間で、同じ座標値の画素値どうしを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。同様に、制御部11は、画像データD2に含まれる各画素値と画像データDr2に含まれる各画素値とを比較し、画像データD3に含まれる各画素値と画像データDr3に含まれる各画素値とを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。このように、制御部11は、画像処理部151〜153のうちのいずれかの画像処理部によって画像処理が実行された結果として記憶部12に記憶されている画像データ(D1,D2,D3)と、この画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として記憶部12に記憶されている画像データ(Dr1,Dr2,Dr3)どうしをそれぞれ比較する。
【0029】
上記のように第2画像処理部152に不具合が発生している場合には、制御部11による比較の結果、画像データD2における異常が発生している位置(xy座標の位置)において、画像データD2の画像と画像データDr2の画像とが一致しないことになる。また同様に、画像データD3の画像と画像データDr3の画像も一致しないことになる。
【0030】
図2において、制御部11は、このように一致しない画像があると判定した場合(ステップS3;YES)、一致しない画像の画像データを出力した画像処理部151〜153のうち、画像処理の順序が最先の画像処理部、つまり、最も前段にある画像処理部を特定する(ステップS4)。ここでは、画像データD2の画像と画像データDr2の画像とが一致しないし、画像データD3の画像と画像データDr3の画像とが一致しないから、画像処理の順序が最先の画像処理部によって生成された画像データは、画像データD2である。よって、この画像データを生成した第2画像処理部152が特定されることになる。そして、制御部11は、この特定した第2画像処理部152に不具合が発生していると判定し、その旨を報知する(ステップS5)。このとき、制御部11は、例えば「第2画像処理部に故障が発生しています。」といった具合に、どこの画像処理部に不具合が発生しているかを知らせるメッセージを表示操作部13に表示させることで、ユーザに対してステップS3の判定結果を報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。
【0031】
一方、ステップS3にて、制御部11は、一致しない画像がない、つまり、比較した画像の全ての画像が一致すると判定した場合(ステップS3;NO)、不具合が発生している画像処理部151〜153はないと判定する(ステップS6)。この場合、制御部11は、「正常動作を確認しました。」といった具合に、全ての画像処理部151〜153に不具合が発生していない旨のメッセージを表示操作部13に表示させて、ユーザに報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。また、どのようなメッセージも表示乃至出力しないことで、不具合がないことをユーザに知らせるようにしてもよい。
【0032】
(2−2)第2動作例
上述した第1動作例では、画像処理部151〜153のそれぞれが画像処理を実行した結果である画像データと、制御部11が各画像処理に基づいたエミュレート処理を実行した結果である画像データとをそれぞれ比較していた。次に述べる第2動作例では、不具合の検出を行う画像処理部の順番を指定し、制御部11は指定された画像処理部から順に故障が発生しているか否かを検出する。
以下では、設計段階において、予め第2画像処理部152→第1画像処理部151→第3画像処理部153の順に不具合の検出を行うよう決められているものとする。また、以下では、第2画像処理部152に不具合があると仮定して、図4に示すフローチャートを参照しながら動作説明を行う。
【0033】
また、この第2動作例においても、第1動作例と同じで、通常モードにおける画像の形成時において、故障検出に用いられる画像データがすでに記憶部12に記憶されているものとする。この第2動作例においても、読取画像データD、および画像データD1,D2,D3が記憶部12に記憶され、これらが不具合の検出に用いられるものとする。
【0034】
ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像処理部の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて図4に示す処理を開始する。
まず、制御部11は、不具合の検出を行っていない画像処理部のうち、最先に設定された画像処理部を指定する(ステップS11)。ここでは、すべての画像処理部について不具合の検出を行っていないから、前述したように、制御部11は第2画像処理部152を指定する。続いて、制御部11は、指定した画像処理部によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、この画像処理に基づくエミュレーション処理を実行する(ステップS12)。
【0035】
このステップS12における処理の一例を図5に示す。
ステップS11において、第2画像処理部152を選択したから、図5に示すように、制御部11はこの第2画像処理部152の前段にある第1画像処理部151による第1の画像処理の結果である画像データD1に対して、第2のエミュレート処理Emu2を実行することになる。具体的には、制御部11は記憶部12に記憶されている画像データD1を読み出し、読み出した画像データD1に対して第2の画像処理に基づく第2のエミュレート処理Emu2を実行し、その第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr12を生成する。
【0036】
次いで、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データD2を読み出し、この第2画像処理部152による第2の画像処理の結果である画像データD2が表す画像と、第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr12とをそれぞれ比較し(ステップS13)、一致しない部分があるか否かを判定する(ステップS14)。つまり、制御部11は、画像データD2に含まれる各画素値と、画像データDr12に含まれる各画素値との間で、同じ座標値の画素値どうしを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。ここでは第2画像処理部152に不具合が発生しているので、制御部11による比較の結果、画像データD2における異常が発生している位置において、画像データD2の画像と画像データDr12の画像とが一致しないことになる。
【0037】
このとき、制御部11は両者の画像データは一致しないと判定し(ステップS14;YES)、一致しない画像の画像データを出力した第2画像処理部152を特定する(ステップS15)。そして、制御部11は、この特定した第2画像処理部152に不具合が発生していると判定し、その旨を報知する(ステップS16)。そして、制御部11は、不具合を検出する処理を終了する。このステップS15,16における処理は、第1動作例のステップS4,5と同じである。
【0038】
このステップS16において、制御部11が第2画像処理部152に不具合があると判定することができるのは、指定した画像処理部によって画像処理が実行される対象となる画像データと、この画像処理に基づくエミュレート処理を実行する対象となる画像データが同じであるという理由に基づく。前述したように第1画像処理部151によって第1の画像処理が実行された画像データD1に対して、第2画像処理部152による第2の画像処理、及び第2のエミュレート処理Emu2がそれぞれ実行されるので、第2画像処理部152に不具合が発生していないのであれば、当然、この画像処理の結果とエミュレート処理の結果とは一致するはずである。仮に、画像処理部151に不具合が発生していて画像データD1の画像に異常が含まれていたとしても、これらの処理の対象となる画像データは同じであるから、その内容とは無関係に、第2画像処理部152に異常がなければ画像データD2の画像と画像データDr2の画像とは一致し、第2画像処理部152に異常があれば両者は不一致となるのである。
【0039】
一方、前述のステップS14の判定結果が「NO」となり、制御部11が画像データD2の画像と、画像データDr2の画像とが一致すると判定すると、選択した第2画像処理部152に不具合はないと判定し(ステップS17)、不具合の検出を行っていない画像処理部があるか否かを判定する(ステップS18)。ここでは、制御部11は、第2画像処理部152について不具合の検出を行っただけであるから、判定結果は「YES」となり、ステップS11に戻る。
【0040】
ステップS11においては、不具合の検出を行っていない画像処理部のうち最先に指定された画像処理部を指定するから、続いて、制御部11は第1画像処理部151を指定する。そして、ステップS13において、制御部11は第1画像処理部151によって第1の画像処理が実行された画像データD1と、読取画像データDに対して第1の画像処理に基づく第1のエミュレート処理Emu1を実行した結果である画像データとを比較することになる。そして、制御部11は、上述したステップS14〜S18と同様の処理を実行する。
【0041】
ここで、制御部11が第1画像処理部151にも不具合が発生していないと判定したら、次いで、第3画像処理部153の不具合の検出を行う。制御部11は、記憶部12から読み出した画像データD3と、記憶部12から読み出した画像データD2に対して、第2の画像処理に基づく第3のエミュレート処理Emu3を実行した結果である画像データとを比較することになる。
【0042】
この第2動作例によれば、制御部11は、予め設定された順序で画像処理部の不具合の検出を行って、そこに不具合が発生しているか否かを判定することができる。したがって、例えば故障が発生しやすい順序に検出を行うことが設計段階やサービスマンの操作によって予め決められているとすれば、制御部11は不具合を検出したら直ちに不具合検出に係る処理を終了することによって、第1動作例の場合よりも迅速に故障発生箇所を特定することができる。
【0043】
(2−3)第3動作例
上述した第1動作例では、複数の画像処理部151〜153のうち、或る画像処理部によって画像処理が実行された画像データと、この画像処理に基づくエミュレート処理が実行された画像データどうしを比較し、その比較の結果、全ての画像データが一致した場合には、不具合が発生している画像処理部はないと判定していた。また、第2動作例では、或る決められた順序で画像処理部の不具合の判定を行って、故障発生箇所を特定するものであった。次の第3動作例では、第1動作例において全ての画像データが一致した場合であっても、画像に異常が発生しているか否かについてユーザに目視判定を促し、その目視判定の結果に基づき不具合の発生箇所を判定するようにしている。以下では、不具合が発生している箇所を第1画像処理部151の前段又は後段の構成部品であると仮定し、前掲の図2、及び図6に示すフローチャートと、図7,8の説明図を参照しながら動作説明を行う。
【0044】
また、この第3動作例においても、第1動作例と同じで、通常モードにおける画像の形成時において、故障検出に用いられる画像データがすでに記憶部12に記憶されているものとする。ただし、この第3動作例においては、読取画像データD0、およびこの読取画像データD0に対する第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理の結果として、それぞれ画像データD10,D20,D30が記憶部12に記憶され、これらが不具合の検出に用いられるものとする。
【0045】
ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像処理部の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて不具合を検出するための処理を開始する。
まず、制御部11は、図2に示したステップS1の処理を行い、ステップS2にて、画像処理部151〜153のそれぞれによって画像処理が実行された画像データと、読取画像データD0を用いてそれぞれの画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果である画像データ(画像データDr10,Dr20,Dr30とする)どうしを比較する。ここで、第1画像処理部151の前段の構成部品に不具合が発生していると仮定した場合、図7に示すように、画像データD10と画像データDr10とが一致し、画像データD20と画像データDr20とが一致し、画像データD30と画像データDr30とが一致することになる。よって、図2のステップS5にて、制御部11の処理は「NO」に進む。
【0046】
次に、制御部11は、図2のステップS6に代えて、図6に示す処理を実行する。
図6において、制御部11は、記憶部12に記憶された画像データD10,D20,D30のうちのいずれかの画像を表示操作部13に表示する(ステップS21)。このとき、画像データD10,D20,D30は、異常があるかないかという点では、全て同じ状態の画像であるはずだから、表示操作部13に表示する画像データはこれらのうちのどれでもよい。そして、制御部11は、「画像に異常がありますか?」というように、画像に異常があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけた場合には、「YES」を選択する。制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(図6のステップS22;YES)、第1画像処理部151の前段の構成部品(画像読取部16等)に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS23)。
【0047】
一方、ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合、制御部11は、画像形成装置の各部に不具合が発生していないと判定することもできるが、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生している可能性も考えられる。例えば、図8に示すように、画像処理部151〜153の前段の構成部品である画像読取部16、及び画像処理部151〜153そのものには不具合が発生していないけれども、画像処理部151〜153の後段の構成部品である画像形成部17に不具合が発生しているような場合には、実際に用紙に形成された画像には異常が含まれる。そこで、このようにユーザが「NO」を選択した場合(ステップS22;NO)、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データD30を読み出して画像形成部17に転送し、これに応じて画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データD30に基づいた画像を用紙に形成する(ステップS24)。このステップS24の処理によって、画像形成部17からは、画像d40が形成された用紙とが出力されることになる。
【0048】
そして、制御部11は、画像形成部17によって用紙に形成された画像d40を見て何らかの乱れがあるか否かをユーザに問い合わせる。具体的には、制御部11は、「画像に乱れている部分がありますか?」という画像に乱れた部分があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが何らかの乱れを見つけた場合、「YES」を選択する。この乱れた部分は画像の異常に相当するから、制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(ステップS25;YES)、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS26)。一方、ユーザが画像の異常を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合(ステップS25;NO)、制御部11は、画像形成装置100のどこにも不具合はないと判定して、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS27)。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、画像処理部によって画像処理が実行された結果である画像データと、その画像処理部によって実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を実行した結果である画像データとを比較するだけで、画像形成装置100において不具合が発生した構成部品を特定することができる。よって、構成部品の誤交換などによる信頼低下や、部品コストの損失などを小さくすることができる。
【0050】
(3)変形例
なお、上記実施形態を次のように変形してもよい。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
(3−1)変形例1
上述した実施形態では、制御部11、記憶部12、画像転送部141〜144および画像処理部151〜153などからなる不具合検出装置が画像形成装置100に内蔵されている例で説明したが、この不具合検出装置は、画像形成装置に内蔵されているものに限らず、例えば画像形成装置に接続されて画像処理を行うコンピュータに内蔵されていてもよい。
また、実施形態では、画像形成装置100は画像処理部を3つ備えていたが、この数はいくつであってよく、その数は、画像形成装置の仕様に応じて適宜決められるものである。画像転送部についても同様である。
【0051】
(3−2)変形例2
上述した実施形態の第2動作例では、制御部11がステップS11において画像処理部を指定すると、この画像処理部の前段の画像処理部によって画像処理が実行された結果である画像データに対して、指定した画像処理部が実行する画像処理に基づくエミュレート処理を実行していた。これに対し、制御部11は、前段の画像処理部によって実行される画像処理に基づくエミュレート処理が実行された画像データに対して、指定した画像処理部により実行される画像処理に基づくエミュレート処理を実行してもよい。
例えば、第2画像処理部152を指定した場合、制御部11は記憶部12に記憶された読取画像データDに対して、第1の画像処理に基づいた第1のエミュレート処理Emu1を実行して、その結果である画像データDr1を記憶部12に記憶させる。次いで、制御部11は、記憶部12から画像データDr1を読み出し、この画像データDr1に対して第2画像処理部152に第2の画像処理を実行させ、その結果を表す画像データD2’を記憶部12に記憶させる。一方、制御部11は、記憶部12から読み出した画像データDr1に対して、第2の画像処理に基づいた第2のエミュレート処理Emu2を実行し、その結果である画像データDr2を得る。そして、制御部11は、画像データD2’を記憶部12から読み出し、この画像データの画像と、画像データDr2の画像とを比較し、両者の一致、不一致に応じて故障の判定を行う。
このようにしても、故障検出の対象となる画像処理部が画像処理を実行する画像データと、制御部11がその画像処理に基づいて実行するエミュレート処理の対象となる画像データとは同じのものであるから、両者の結果が一致すれば、指定された画像処理部に故障は発生していないし、不一致であれば故障が発生していることになる。
【0052】
また動作例2においては、制御部11は、或る画像処理部に不具合が発生していると判定したら、そこで不具合の検出を終了していた。これに対し、不具合が発生している構成部品が複数ある場合もあるので、制御部11は設定された順序に従って、すべての画像処理部について故障の検出を行ってもよい。
【0053】
(3−3)変形例3
画像データを比較する際の比較方法は、実施形態で例示したものに限らず、例えば画像データの各画素の濃度、輝度或いは明度や、それらの平均値や分布状況などの、画像データの何らかの特徴を表す特徴量を比較するものであってもよい。
【0054】
(3−4)変形例4
上述した実施形態においては、故障検出モードで画像データを記憶して不具合の検出を行っていたが、故障検出モードなる特別な動作モードを設けずに、通常の画像形成時において、上記のような不具合の検出を常に行うようにしてもよい。
【0055】
(3−5)変形例5
上述した実施形態においては、画像データの全領域を比較していたが、一部の領域どうしを比較するものであってもよい。例えば画像形成部17から出力された画像のうち、画像の乱れがある領域のおおよその位置をユーザが表示操作部13を用いて指定可能な構成にすれば、制御部11は、その指定された領域のみについて、画像データの比較を行えばよい。このようにすれば、制御部11の処理量を低減し、処理の高速化を図ることができる。
【0056】
上述した実施形態においては、画像形成装置100が内蔵する記憶部12に、比較用の画像データを記憶していたが、この記憶場所は、画像形成装置100にネットワーク経由で接続された記憶装置であってもよい。
【0057】
上述した実施形態においては、不具合がある構成部品を特定すると、画像形成装置100自体においてその旨を報知していたが、これ以外にも、例えば、画像形成装置100に接続された通信装置に不具合がある構成部品を報知する方法も考えられる。
【0058】
上述した実施形態において、画像形成装置100は、通常モードの動作をするときに画像を形成するために与えられた読取画像データと、画像処理部151〜153によって画像処理が実行された結果の画像データとを記憶部12に記憶させておき、これらを故障検出に用いていた。これに対し、制御部11は、故障検出のための画像データを記憶することが表示操作部13によってユーザにより指示された場合のみに、記憶部12に蓄積させるようにしてもよい。
また、故障検出に用いる画像データは、通常モードにおいて画像の形成に用いるものに限らない。例えば、画像形成装置100が不具合検出モードにおける動作を開始するときに、ユーザに対して画像読取部16に原稿をセットすることを促し、このときセットされた原稿を読み取って生成した読取画像データを用いて不具合を検出してもよい。また、記憶部12に、予め、読取画像データに対応する故障検出専用の画像データが記憶されているようにしてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、予め記憶部12に記憶されたプログラムに基づいて、制御部11は画像処理部151〜153により実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を実行していた。エミュレート処理を実行するのは制御部11に限らず、例えばエミュレート処理を実行する専用のハードウェアを別途設けてもよいし、ネットワーク経由で接続された他の画像形成装置や、コンピュータ装置が行ってもよい。
【0060】
上述した制御部11が実行するプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。即ち、本発明をプログラムとして実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の動作例において画像形成装置の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図4】第2の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図6】第3の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図8】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
11…制御部、12…記憶部、13…表示操作部、141…第1画像転送部、142…第2画像転送部、143…第3画像転送部、151…第1画像処理部、152…第2画像処理部、153…第3画像処理部、16…画像読取部、17…画像形成部、100…画像形成装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理を行う装置において不具合が発生した箇所を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化や高密度化に加え、多層配線などのチップ構造の複雑化により、LSI(Large Scale Integration)の故障が増大している。また、組み込みソフトウェアの大規模化や複雑化に伴ってバグの発生機会が増加し、さらに、そのバグによって異常な動作が引き起こされることもある。例えば複写機やプリンタなどの画像形成装置にLSIが搭載されている場合には、上記のようなハードウェアやソフトウェアの不具合により、画像処理が適切に行われずに、画像に異常が発生することがある。この異常には、例えば有色画素の濃度が局所的に濃くなる“黒スジ”と呼ばれる現象や、有色画素が消えてしまう“白ヌケ”と呼ばれる現象のほか、画像の色味が意図していたものとは異なってしまったり、画像データがデータ化けによって乱れてしまうなどといったものある。
【0003】
このように、画像に異常が発生した場合には、ハードウェアやソフトウェアの不具合の発生箇所を速やかに特定し、その発生箇所に係る部品を修理又は交換する必要がある。ただし、この不具合の発生箇所の特定は一般には容易ではない。そこで、例えば特許文献1では、不具合発生時の状況を把握するために、データバスの状態を記録及び通知する方法が提案されている。また、特許文献2では、不具合が発生したときになされた操作の手順や不具合の内容を記録する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平1−106151号公報
【特許文献2】特開2001−109030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいた各エミュレート処理を、前記順序に従って画像データに対して実行するエミュレート手段と、前記エミュレート手段により各エミュレート処理が実行された結果である各画像データを記憶する第2記憶手段と、前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとを比較する比較手段であって、複数の前記画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記第1記憶手段に記憶されている画像データと、当該画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として前記第2記憶手段に記憶されている画像データどうしをそれぞれ比較する比較手段と、前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の第2の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する記憶手段と、前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいたエミュレート処理を画像データに対して実行するエミュレート手段と、前記複数の画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段を指定する指定手段と、前記指定手段によって指定された画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記記憶手段に記憶されている画像データと、当該指定された画像処理手段によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、当該画像処理に基づくエミュレート処理が前記エミュレート手段によって実行された結果を表す画像データとを比較する比較手段と前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、前記指定された画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定することを特徴とする。
【0008】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知することを特徴とする。
【0009】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知することを特徴とする。
【0010】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記複数の画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって前記画像形成手段によって形成された画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、上記構成のいずれか1の不具合検出装置と、前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の構成について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(1)構成
図1は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示操作部13と、4つの画像転送部(第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144)と、3つの画像処理部(第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153)と、画像読取部16と、画像形成部17とを備えている。制御部11は、例えばCPUや各種メモリからなり、そのメモリや記憶部12に記憶された制御プログラムに記述された手順に従って画像形成装置100の全体を制御する。また、制御部11は、同じくメモリや記憶部12に記憶されたアプリケーションプログラムに基づいて、画像データに対して、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153が実行する画像処理に基づいたエミュレート処理を実行する。ここでいう「第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153が実行する画像処理に基づいたエミュレート処理」とは、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153がそれぞれ実行する画像処理と同じ内容の画像処理を、これらの画像処理部とは独立に実行する処理のことをいう。即ち、制御部11は、各画像処理部が実行する画像処理を擬似的に実行する機能をも実装している。
【0015】
表示操作部13は、例えばタッチパネルであり、ユーザによる操作を受け付ける操作手段として機能するとともに、ユーザに対する対話画面や各種の画像を表示する表示手段としても機能する。画像読取部16は、例えばスキャナであり、図示せぬ光源、結像レンズおよびラインセンサを有しており、被撮像物に光を照射し、その反射光の強度に基づいて画像データを生成して出力する処理手段である。この画像データは画像形成装置100に入力されることになるから、画像読取部16は、画像形成装置100に画像データを入力する入力手段として機能する。
【0016】
第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153は、画像データに対してそれぞれ異なる画像処理を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)やLSIである。第1画像処理部151は、画像の背景に関する背景処理、画像の変倍処理又は回転処理などの第1の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第2画像処理部152は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の画像データをC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の画像データに変換するなどの色変換処理や、画像の解像度を変換する解像度変換処理などの第2の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第3画像処理部153は、スクリーン処理などの第3の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。各画像処理部は、前段にある構成部品、又は制御部11から供給された画像データに対して実行した画像処理の結果である画像データを、後段にある構成部品(画像転送部)に出力する。ここでいう「前段」とは、この画像形成装置100において画像データが流れる方向の上流側のことであり、反対に、「後段」とはその下流側のことである。例えば第1画像処理部151は、前段の構成部品である第1画像転送部141、又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第1の画像処理を実行して、後段の構成部品である第2画像転送部142に出力する。同様に、第2画像処理部152は、第2画像転送部142又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第2の画像処理を実行して、第3画像転送部143に出力する。第3画像処理部153は、第3画像転送部143又は制御部11から画像データを受け取ると、これに第3の画像処理を実行して、第4画像転送部144に出力する。
このように各画像処理は、第1の画像処理→第2の画像処理→第3の画像処理というように、予め決められた順序で実行されるようになっている。
【0017】
第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144はそれぞれ、前段にある構成部品から受け取った画像データを、記憶部12と、後段にある構成部品とにそれぞれ転送する。例えば第1画像転送部141は、前段にある画像読取部16から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第1画像処理部151に転送する。また、第2画像転送部142は、前段にある第1画像処理部151から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第2画像処理部152に転送する。第3画像転送部143は、前段にある第2画像処理部152から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第3画像処理部153に転送する。第4画像転送部144は、前段にある第3画像処理部153から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させるとともに、後段にある画像形成部17に転送する。
なお、以下の説明においては、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153のことを、「画像処理部151〜153」と総称することがある。同様に、第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144のことを、「画像転送部141〜144」と総称することがある。
【0018】
画像形成部17は、C,M,Y,Kのトナー毎に設けられた画像形成ユニットを備えており、第4画像転送部144から転送されてくる画像データに応じた画像を用紙などの記録媒体に形成して出力する処理手段である。各々の画像形成ユニットは、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部及び定着部を有する。感光体ドラムは、軸を中心にして所定の速度で周回するドラム状の部材であり、帯電部によって所定の電位に帯電させられる。露光部は、帯電した感光体ドラムにレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像部は、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する。転写部は、感光体ドラムに現像された各色のトナー像を用紙に転写する。定着部は用紙に転写されたトナー像をその用紙に定着させてから機外に排出する。
【0019】
(2)動作
次に、画像形成装置100の動作を説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100における動作モードには、「通常モード」と、「故障検出モード」とがある。「通常モード」とは、画像形成装置100が上記のような不具合検出を行うことなく、与えられた画像データに応じた画像形成処理を行う通常の動作モードである。一方、「故障検出モード」とは、画像形成装置100が用紙に画像を形成するときに、画像処理部151〜153などに不具合が発生しているか否かを検出するときの動作モードである。この動作モードの設定方法については、例えばユーザが表示操作部13を操作して所望する動作モードを指定するようにしてもよいし、制御部11が所定期間毎に「通常モード」から「故障検出モード」に切り替え、その故障検出モードにおける不具合の検出処理が完了したら、再び「通常モード」に戻すようにしてもよい。
【0020】
まず、「通常モード」における画像形成装置100の動作について説明する。
この「通常モード」においては、画像形成装置100は画像形成処理を行う。具体的には、制御部11は、ユーザが画像読取部16に原稿をセットし、表示操作部13を操作して原稿の複写を指示すると、制御部11は、画像読取部16に原稿の画像を読み取らせる。続いて、制御部11は、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、画像読取部16によって読み取られて画像形成装置100に入力された画像データ(以下、「読取画像データ」という)に対し、前述した第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を順次行わせて画像形成部17に画像を形成させるとともに、画像処理部151〜153による各画像処理の結果である画像データをそれぞれ記憶部12に転送させ、そこに記憶させる。
【0021】
具体的には、画像読取部16によって図3の上段に示すような読取画像データDが生成された場合、この読取画像データDは、第1画像転送部141によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第1画像処理部151に転送される。次に、第1画像処理部151は、この読取画像データDに対して、前述した第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データD1は、第2画像転送部142によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。次に、第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データD1に対して、前述した第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データD2は、第3画像転送部143によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。次に、第3画像処理部153は、第3画像転送部143から転送されてくる画像データD2に対して、前述した第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データD3は、第4画像転送部144によって記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、画像形成部17に転送される。画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データD3に基づいた画像を用紙に形成する。
【0022】
以上の処理により、記憶部12には、読取画像データD、画像データD1,D2,D3が記憶されることになる。これらの画像データは、画像形成装置100が故障検出モードで動作するときに用いるものである。
なお、記憶部12の記憶領域の確保をするため、制御部11は所定容量を限度として、画像を形成した日時が古いものから順に一組ずつ画像データを記憶部12から消去していき、新たに与えられた画像データを記憶部12に記憶させる。もちろん、所定時間や画像の数を限度として消去してもよい。
【0023】
次に、「故障検出モード」における画像形成装置100の動作について説明する。
この「故障検出モード」において、制御部11は、以下に説明する第1動作例〜第3動作例を行う。
(2−1)第1動作例
「故障検出モード」において、まず、ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像形成装置100内の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて、制御部11が図2に示す処理を開始する。この操作時において、制御部11は、記憶部12に蓄積された読取画像データのサムネイル画像を表示操作部13に表示させ、ユーザに対して不具合の検出に用いる画像を指定させるものとする。この第1動作例では、ユーザによって読取画像データDが指定されるものとする。なお、この場合において、制御部11が不具合の検出に好適な画像データを選択してもよく、例えば、画像形成装置100に与えられた日時が最新の読取画像データを選択してもよいし、例えば色数が多いものを選択するといった具合に画像の内容に基づいて読取画像データを選択してもよい。
【0024】
図2において、まず、制御部11は、ユーザによって指定された読取画像データDに対して、上記の画像処理部151〜153のそれぞれによって実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を順次実行し、それぞれのエミュレート処理の結果を表す画像データを記憶部12に記憶させる(ステップS1)。このエミュレート処理の順序においても、画像処理部151〜153に対して決められた画像処理の順序に従うものとする。
【0025】
このステップS1における処理の一例を、図3の下段を参照しながら説明する。
まず、制御部11は、上記の読取画像データDを記憶部12から読み出し、第1画像処理部151が実行する第1の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第1のエミュレート処理Emu1」という。)を実行する。制御部11は、この第1のエミュレート処理Emu1の結果である画像データDr1を記憶部12に記憶させる。次いで、制御部11は、この画像データDr1に対して、第2画像処理部152が実行する第2の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第2のエミュレート処理Emu2」という。)を実行する。そして、ここでも、制御部11は、この第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr2を記憶部12に記憶させる。続いて、制御部11は、この画像データDr2に対して、第3画像処理部153が実行する第3の画像処理に基づいたエミュレート処理(以下、「第3のエミュレート処理Emu3」という。)を実行する。そして、制御部11は、この第3のエミュレート処理Emu3の結果である画像データDr3を記憶部12に記憶させる。
なお、制御部11は、これらの画像データに基づいた画像を形成させることはないので、画像データDr1,Dr2およびDr3を画像形成部17には供給しない。
以上の処理により、記憶部12には、画像データDr1,Dr2,Dr3が記憶されることになる。
【0026】
ここで、例えば第2画像処理部152に何らかの不具合が発生していると仮定する。この場合、第2画像処理部152における第2の画像処理の結果として記憶部12に記憶されている画像データD2には、画質の劣化や欠陥などの何らかの異常が含まれているはずである。図3の画像データD2の画像における「×」印は、この異常が発生している様子を象徴的に表現したものであり、その「×」印の位置は異常が発生している画像上の位置を表している。以降の図5,7,8においても、この「×」印が意味するところは同じである。このとき、第2画像処理部152の後段の第3画像処理部153には一切の不具合が発生していないとしても、この第3画像処理部153に画像データD2が供給される時点で、既にその画像データD2に異常が含まれているはずである。よって、第3画像処理部153による第3の画像処理の結果である画像データD3においても、画像データD2における異常発生位置と同じ位置に、画像データD2における異常とほぼ同様の内容の異常が発生することになる。
【0027】
その一方で、制御部11が、画像データDr1に対して第2の画像処理に基づいた第2のエミュレート処理Emu2を実行した場合、不具合が発生している第2画像処理部152を経由した処理を行っていないので、第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr2の画像には異常は含まれない。当然、第3のエミュレート処理Emu3の結果においても、画像データDr3の画像には異常は含まれないことになる。
【0028】
ここで図2に戻って説明する。
次いで、制御部11は、通常モードで記憶部12に記憶させた画像データD1,D2,D3の画像と、ステップS1にて、エミュレート処理の結果として記憶部12に記憶された画像データDr1,Dr2,Dr3の画像とをそれぞれ比較し(ステップS2)、一致しない部分があるか否かを判定する(ステップS3)。つまり、制御部11は、画像データD1に含まれる各画素値と、画像データDr1に含まれる各画素値との間で、同じ座標値の画素値どうしを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。同様に、制御部11は、画像データD2に含まれる各画素値と画像データDr2に含まれる各画素値とを比較し、画像データD3に含まれる各画素値と画像データDr3に含まれる各画素値とを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。このように、制御部11は、画像処理部151〜153のうちのいずれかの画像処理部によって画像処理が実行された結果として記憶部12に記憶されている画像データ(D1,D2,D3)と、この画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として記憶部12に記憶されている画像データ(Dr1,Dr2,Dr3)どうしをそれぞれ比較する。
【0029】
上記のように第2画像処理部152に不具合が発生している場合には、制御部11による比較の結果、画像データD2における異常が発生している位置(xy座標の位置)において、画像データD2の画像と画像データDr2の画像とが一致しないことになる。また同様に、画像データD3の画像と画像データDr3の画像も一致しないことになる。
【0030】
図2において、制御部11は、このように一致しない画像があると判定した場合(ステップS3;YES)、一致しない画像の画像データを出力した画像処理部151〜153のうち、画像処理の順序が最先の画像処理部、つまり、最も前段にある画像処理部を特定する(ステップS4)。ここでは、画像データD2の画像と画像データDr2の画像とが一致しないし、画像データD3の画像と画像データDr3の画像とが一致しないから、画像処理の順序が最先の画像処理部によって生成された画像データは、画像データD2である。よって、この画像データを生成した第2画像処理部152が特定されることになる。そして、制御部11は、この特定した第2画像処理部152に不具合が発生していると判定し、その旨を報知する(ステップS5)。このとき、制御部11は、例えば「第2画像処理部に故障が発生しています。」といった具合に、どこの画像処理部に不具合が発生しているかを知らせるメッセージを表示操作部13に表示させることで、ユーザに対してステップS3の判定結果を報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。
【0031】
一方、ステップS3にて、制御部11は、一致しない画像がない、つまり、比較した画像の全ての画像が一致すると判定した場合(ステップS3;NO)、不具合が発生している画像処理部151〜153はないと判定する(ステップS6)。この場合、制御部11は、「正常動作を確認しました。」といった具合に、全ての画像処理部151〜153に不具合が発生していない旨のメッセージを表示操作部13に表示させて、ユーザに報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。また、どのようなメッセージも表示乃至出力しないことで、不具合がないことをユーザに知らせるようにしてもよい。
【0032】
(2−2)第2動作例
上述した第1動作例では、画像処理部151〜153のそれぞれが画像処理を実行した結果である画像データと、制御部11が各画像処理に基づいたエミュレート処理を実行した結果である画像データとをそれぞれ比較していた。次に述べる第2動作例では、不具合の検出を行う画像処理部の順番を指定し、制御部11は指定された画像処理部から順に故障が発生しているか否かを検出する。
以下では、設計段階において、予め第2画像処理部152→第1画像処理部151→第3画像処理部153の順に不具合の検出を行うよう決められているものとする。また、以下では、第2画像処理部152に不具合があると仮定して、図4に示すフローチャートを参照しながら動作説明を行う。
【0033】
また、この第2動作例においても、第1動作例と同じで、通常モードにおける画像の形成時において、故障検出に用いられる画像データがすでに記憶部12に記憶されているものとする。この第2動作例においても、読取画像データD、および画像データD1,D2,D3が記憶部12に記憶され、これらが不具合の検出に用いられるものとする。
【0034】
ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像処理部の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて図4に示す処理を開始する。
まず、制御部11は、不具合の検出を行っていない画像処理部のうち、最先に設定された画像処理部を指定する(ステップS11)。ここでは、すべての画像処理部について不具合の検出を行っていないから、前述したように、制御部11は第2画像処理部152を指定する。続いて、制御部11は、指定した画像処理部によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、この画像処理に基づくエミュレーション処理を実行する(ステップS12)。
【0035】
このステップS12における処理の一例を図5に示す。
ステップS11において、第2画像処理部152を選択したから、図5に示すように、制御部11はこの第2画像処理部152の前段にある第1画像処理部151による第1の画像処理の結果である画像データD1に対して、第2のエミュレート処理Emu2を実行することになる。具体的には、制御部11は記憶部12に記憶されている画像データD1を読み出し、読み出した画像データD1に対して第2の画像処理に基づく第2のエミュレート処理Emu2を実行し、その第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr12を生成する。
【0036】
次いで、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データD2を読み出し、この第2画像処理部152による第2の画像処理の結果である画像データD2が表す画像と、第2のエミュレート処理Emu2の結果である画像データDr12とをそれぞれ比較し(ステップS13)、一致しない部分があるか否かを判定する(ステップS14)。つまり、制御部11は、画像データD2に含まれる各画素値と、画像データDr12に含まれる各画素値との間で、同じ座標値の画素値どうしを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。ここでは第2画像処理部152に不具合が発生しているので、制御部11による比較の結果、画像データD2における異常が発生している位置において、画像データD2の画像と画像データDr12の画像とが一致しないことになる。
【0037】
このとき、制御部11は両者の画像データは一致しないと判定し(ステップS14;YES)、一致しない画像の画像データを出力した第2画像処理部152を特定する(ステップS15)。そして、制御部11は、この特定した第2画像処理部152に不具合が発生していると判定し、その旨を報知する(ステップS16)。そして、制御部11は、不具合を検出する処理を終了する。このステップS15,16における処理は、第1動作例のステップS4,5と同じである。
【0038】
このステップS16において、制御部11が第2画像処理部152に不具合があると判定することができるのは、指定した画像処理部によって画像処理が実行される対象となる画像データと、この画像処理に基づくエミュレート処理を実行する対象となる画像データが同じであるという理由に基づく。前述したように第1画像処理部151によって第1の画像処理が実行された画像データD1に対して、第2画像処理部152による第2の画像処理、及び第2のエミュレート処理Emu2がそれぞれ実行されるので、第2画像処理部152に不具合が発生していないのであれば、当然、この画像処理の結果とエミュレート処理の結果とは一致するはずである。仮に、画像処理部151に不具合が発生していて画像データD1の画像に異常が含まれていたとしても、これらの処理の対象となる画像データは同じであるから、その内容とは無関係に、第2画像処理部152に異常がなければ画像データD2の画像と画像データDr2の画像とは一致し、第2画像処理部152に異常があれば両者は不一致となるのである。
【0039】
一方、前述のステップS14の判定結果が「NO」となり、制御部11が画像データD2の画像と、画像データDr2の画像とが一致すると判定すると、選択した第2画像処理部152に不具合はないと判定し(ステップS17)、不具合の検出を行っていない画像処理部があるか否かを判定する(ステップS18)。ここでは、制御部11は、第2画像処理部152について不具合の検出を行っただけであるから、判定結果は「YES」となり、ステップS11に戻る。
【0040】
ステップS11においては、不具合の検出を行っていない画像処理部のうち最先に指定された画像処理部を指定するから、続いて、制御部11は第1画像処理部151を指定する。そして、ステップS13において、制御部11は第1画像処理部151によって第1の画像処理が実行された画像データD1と、読取画像データDに対して第1の画像処理に基づく第1のエミュレート処理Emu1を実行した結果である画像データとを比較することになる。そして、制御部11は、上述したステップS14〜S18と同様の処理を実行する。
【0041】
ここで、制御部11が第1画像処理部151にも不具合が発生していないと判定したら、次いで、第3画像処理部153の不具合の検出を行う。制御部11は、記憶部12から読み出した画像データD3と、記憶部12から読み出した画像データD2に対して、第2の画像処理に基づく第3のエミュレート処理Emu3を実行した結果である画像データとを比較することになる。
【0042】
この第2動作例によれば、制御部11は、予め設定された順序で画像処理部の不具合の検出を行って、そこに不具合が発生しているか否かを判定することができる。したがって、例えば故障が発生しやすい順序に検出を行うことが設計段階やサービスマンの操作によって予め決められているとすれば、制御部11は不具合を検出したら直ちに不具合検出に係る処理を終了することによって、第1動作例の場合よりも迅速に故障発生箇所を特定することができる。
【0043】
(2−3)第3動作例
上述した第1動作例では、複数の画像処理部151〜153のうち、或る画像処理部によって画像処理が実行された画像データと、この画像処理に基づくエミュレート処理が実行された画像データどうしを比較し、その比較の結果、全ての画像データが一致した場合には、不具合が発生している画像処理部はないと判定していた。また、第2動作例では、或る決められた順序で画像処理部の不具合の判定を行って、故障発生箇所を特定するものであった。次の第3動作例では、第1動作例において全ての画像データが一致した場合であっても、画像に異常が発生しているか否かについてユーザに目視判定を促し、その目視判定の結果に基づき不具合の発生箇所を判定するようにしている。以下では、不具合が発生している箇所を第1画像処理部151の前段又は後段の構成部品であると仮定し、前掲の図2、及び図6に示すフローチャートと、図7,8の説明図を参照しながら動作説明を行う。
【0044】
また、この第3動作例においても、第1動作例と同じで、通常モードにおける画像の形成時において、故障検出に用いられる画像データがすでに記憶部12に記憶されているものとする。ただし、この第3動作例においては、読取画像データD0、およびこの読取画像データD0に対する第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理の結果として、それぞれ画像データD10,D20,D30が記憶部12に記憶され、これらが不具合の検出に用いられるものとする。
【0045】
ユーザによって表示操作部13が操作されて、画像処理部の不具合を検出する処理の開始が指示されると、制御部11はこれに応じて不具合を検出するための処理を開始する。
まず、制御部11は、図2に示したステップS1の処理を行い、ステップS2にて、画像処理部151〜153のそれぞれによって画像処理が実行された画像データと、読取画像データD0を用いてそれぞれの画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果である画像データ(画像データDr10,Dr20,Dr30とする)どうしを比較する。ここで、第1画像処理部151の前段の構成部品に不具合が発生していると仮定した場合、図7に示すように、画像データD10と画像データDr10とが一致し、画像データD20と画像データDr20とが一致し、画像データD30と画像データDr30とが一致することになる。よって、図2のステップS5にて、制御部11の処理は「NO」に進む。
【0046】
次に、制御部11は、図2のステップS6に代えて、図6に示す処理を実行する。
図6において、制御部11は、記憶部12に記憶された画像データD10,D20,D30のうちのいずれかの画像を表示操作部13に表示する(ステップS21)。このとき、画像データD10,D20,D30は、異常があるかないかという点では、全て同じ状態の画像であるはずだから、表示操作部13に表示する画像データはこれらのうちのどれでもよい。そして、制御部11は、「画像に異常がありますか?」というように、画像に異常があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけた場合には、「YES」を選択する。制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(図6のステップS22;YES)、第1画像処理部151の前段の構成部品(画像読取部16等)に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS23)。
【0047】
一方、ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合、制御部11は、画像形成装置の各部に不具合が発生していないと判定することもできるが、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生している可能性も考えられる。例えば、図8に示すように、画像処理部151〜153の前段の構成部品である画像読取部16、及び画像処理部151〜153そのものには不具合が発生していないけれども、画像処理部151〜153の後段の構成部品である画像形成部17に不具合が発生しているような場合には、実際に用紙に形成された画像には異常が含まれる。そこで、このようにユーザが「NO」を選択した場合(ステップS22;NO)、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データD30を読み出して画像形成部17に転送し、これに応じて画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データD30に基づいた画像を用紙に形成する(ステップS24)。このステップS24の処理によって、画像形成部17からは、画像d40が形成された用紙とが出力されることになる。
【0048】
そして、制御部11は、画像形成部17によって用紙に形成された画像d40を見て何らかの乱れがあるか否かをユーザに問い合わせる。具体的には、制御部11は、「画像に乱れている部分がありますか?」という画像に乱れた部分があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが何らかの乱れを見つけた場合、「YES」を選択する。この乱れた部分は画像の異常に相当するから、制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(ステップS25;YES)、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS26)。一方、ユーザが画像の異常を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合(ステップS25;NO)、制御部11は、画像形成装置100のどこにも不具合はないと判定して、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS27)。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、画像処理部によって画像処理が実行された結果である画像データと、その画像処理部によって実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を実行した結果である画像データとを比較するだけで、画像形成装置100において不具合が発生した構成部品を特定することができる。よって、構成部品の誤交換などによる信頼低下や、部品コストの損失などを小さくすることができる。
【0050】
(3)変形例
なお、上記実施形態を次のように変形してもよい。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
(3−1)変形例1
上述した実施形態では、制御部11、記憶部12、画像転送部141〜144および画像処理部151〜153などからなる不具合検出装置が画像形成装置100に内蔵されている例で説明したが、この不具合検出装置は、画像形成装置に内蔵されているものに限らず、例えば画像形成装置に接続されて画像処理を行うコンピュータに内蔵されていてもよい。
また、実施形態では、画像形成装置100は画像処理部を3つ備えていたが、この数はいくつであってよく、その数は、画像形成装置の仕様に応じて適宜決められるものである。画像転送部についても同様である。
【0051】
(3−2)変形例2
上述した実施形態の第2動作例では、制御部11がステップS11において画像処理部を指定すると、この画像処理部の前段の画像処理部によって画像処理が実行された結果である画像データに対して、指定した画像処理部が実行する画像処理に基づくエミュレート処理を実行していた。これに対し、制御部11は、前段の画像処理部によって実行される画像処理に基づくエミュレート処理が実行された画像データに対して、指定した画像処理部により実行される画像処理に基づくエミュレート処理を実行してもよい。
例えば、第2画像処理部152を指定した場合、制御部11は記憶部12に記憶された読取画像データDに対して、第1の画像処理に基づいた第1のエミュレート処理Emu1を実行して、その結果である画像データDr1を記憶部12に記憶させる。次いで、制御部11は、記憶部12から画像データDr1を読み出し、この画像データDr1に対して第2画像処理部152に第2の画像処理を実行させ、その結果を表す画像データD2’を記憶部12に記憶させる。一方、制御部11は、記憶部12から読み出した画像データDr1に対して、第2の画像処理に基づいた第2のエミュレート処理Emu2を実行し、その結果である画像データDr2を得る。そして、制御部11は、画像データD2’を記憶部12から読み出し、この画像データの画像と、画像データDr2の画像とを比較し、両者の一致、不一致に応じて故障の判定を行う。
このようにしても、故障検出の対象となる画像処理部が画像処理を実行する画像データと、制御部11がその画像処理に基づいて実行するエミュレート処理の対象となる画像データとは同じのものであるから、両者の結果が一致すれば、指定された画像処理部に故障は発生していないし、不一致であれば故障が発生していることになる。
【0052】
また動作例2においては、制御部11は、或る画像処理部に不具合が発生していると判定したら、そこで不具合の検出を終了していた。これに対し、不具合が発生している構成部品が複数ある場合もあるので、制御部11は設定された順序に従って、すべての画像処理部について故障の検出を行ってもよい。
【0053】
(3−3)変形例3
画像データを比較する際の比較方法は、実施形態で例示したものに限らず、例えば画像データの各画素の濃度、輝度或いは明度や、それらの平均値や分布状況などの、画像データの何らかの特徴を表す特徴量を比較するものであってもよい。
【0054】
(3−4)変形例4
上述した実施形態においては、故障検出モードで画像データを記憶して不具合の検出を行っていたが、故障検出モードなる特別な動作モードを設けずに、通常の画像形成時において、上記のような不具合の検出を常に行うようにしてもよい。
【0055】
(3−5)変形例5
上述した実施形態においては、画像データの全領域を比較していたが、一部の領域どうしを比較するものであってもよい。例えば画像形成部17から出力された画像のうち、画像の乱れがある領域のおおよその位置をユーザが表示操作部13を用いて指定可能な構成にすれば、制御部11は、その指定された領域のみについて、画像データの比較を行えばよい。このようにすれば、制御部11の処理量を低減し、処理の高速化を図ることができる。
【0056】
上述した実施形態においては、画像形成装置100が内蔵する記憶部12に、比較用の画像データを記憶していたが、この記憶場所は、画像形成装置100にネットワーク経由で接続された記憶装置であってもよい。
【0057】
上述した実施形態においては、不具合がある構成部品を特定すると、画像形成装置100自体においてその旨を報知していたが、これ以外にも、例えば、画像形成装置100に接続された通信装置に不具合がある構成部品を報知する方法も考えられる。
【0058】
上述した実施形態において、画像形成装置100は、通常モードの動作をするときに画像を形成するために与えられた読取画像データと、画像処理部151〜153によって画像処理が実行された結果の画像データとを記憶部12に記憶させておき、これらを故障検出に用いていた。これに対し、制御部11は、故障検出のための画像データを記憶することが表示操作部13によってユーザにより指示された場合のみに、記憶部12に蓄積させるようにしてもよい。
また、故障検出に用いる画像データは、通常モードにおいて画像の形成に用いるものに限らない。例えば、画像形成装置100が不具合検出モードにおける動作を開始するときに、ユーザに対して画像読取部16に原稿をセットすることを促し、このときセットされた原稿を読み取って生成した読取画像データを用いて不具合を検出してもよい。また、記憶部12に、予め、読取画像データに対応する故障検出専用の画像データが記憶されているようにしてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、予め記憶部12に記憶されたプログラムに基づいて、制御部11は画像処理部151〜153により実行される画像処理に基づいたエミュレート処理を実行していた。エミュレート処理を実行するのは制御部11に限らず、例えばエミュレート処理を実行する専用のハードウェアを別途設けてもよいし、ネットワーク経由で接続された他の画像形成装置や、コンピュータ装置が行ってもよい。
【0060】
上述した制御部11が実行するプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。即ち、本発明をプログラムとして実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の動作例において画像形成装置の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図4】第2の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図6】第3の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図8】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
11…制御部、12…記憶部、13…表示操作部、141…第1画像転送部、142…第2画像転送部、143…第3画像転送部、151…第1画像処理部、152…第2画像処理部、153…第3画像処理部、16…画像読取部、17…画像形成部、100…画像形成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、
前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいた各エミュレート処理を、前記順序に従って画像データに対して実行するエミュレート手段と、
前記エミュレート手段により各エミュレート処理が実行された結果である各画像データを記憶する第2記憶手段と、
前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとを比較する比較手段であって、複数の前記画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記第1記憶手段に記憶されている画像データと、当該画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として前記第2記憶手段に記憶されている画像データどうしをそれぞれ比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段と
を備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項2】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する記憶手段と、
前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいたエミュレート処理を画像データに対して実行するエミュレート手段と、
前記複数の画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段を指定する指定手段と、
前記指定手段によって指定された画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記記憶手段に記憶されている画像データと、当該指定された画像処理手段によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、当該画像処理に基づくエミュレート処理が前記エミュレート手段によって実行された結果を表す画像データとを比較する比較手段と
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、前記指定された画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、
特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、
特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項5】
前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項6】
前記複数の画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、
前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって前記画像形成手段によって形成された画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の不具合検出装置と、
前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、
前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいた各エミュレート処理を、前記順序に従って画像データに対して実行するエミュレート手段と、
前記エミュレート手段により各エミュレート処理が実行された結果である各画像データを記憶する第2記憶手段と、
前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとを比較する比較手段であって、複数の前記画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記第1記憶手段に記憶されている画像データと、当該画像処理に基づくエミュレート処理が実行された結果として前記第2記憶手段に記憶されている画像データどうしをそれぞれ比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段と
を備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項2】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する記憶手段と、
前記複数の画像処理手段によって実行される各々の画像処理に基づいたエミュレート処理を画像データに対して実行するエミュレート手段と、
前記複数の画像処理手段のうちのいずれかの画像処理手段を指定する指定手段と、
前記指定手段によって指定された画像処理手段によって画像処理が実行された結果として前記記憶手段に記憶されている画像データと、当該指定された画像処理手段によって画像処理が実行される対象となる画像データに対して、当該画像処理に基づくエミュレート処理が前記エミュレート手段によって実行された結果を表す画像データとを比較する比較手段と
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、前記指定された画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、
特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、
特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項5】
前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項6】
前記複数の画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、
前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって前記画像形成手段によって形成された画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の不具合検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の不具合検出装置と、
前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−157477(P2009−157477A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332531(P2007−332531)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]