説明

不安大うつ病性障害を処置する方法

本発明は、不安大うつ病性障害(AMDD)を処置するための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N、N−ジエチルベンズアミド、又はそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、及び/又はそれらの混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安大うつ病性障害(AMDD)を処置するための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不安大うつ病性障害(AMDD)は、患者が顕著な併発性不安症状による大うつ病性障害(MDD)を患う重篤な精神疾患である。MDDは、共通の、慢性で再発性の著しい罹患率をもつ深刻な精神疾患であり、しばしば命にかかわるようになる。不安は、MDDの患者に共通する症状である。MDD患者における併発性不安症状の推定有病率は、45〜60%の範囲であると報じられている。AMDDの患者は、高い抑うつ性の重篤度、高い機能障害、うつ病再発の高リスク、増大した自殺傾向のリスク、社会的苦痛の悪化、高いアルコール及び薬物乱用の発生率、無不安うつ病患者よりも悪い治療反応及び転帰を有するという証拠が増えている。STAR*Dによる最近の報告では、研究者は、不安うつ病でない患者と対比して不安うつ病患者は、寛解する可能性が著しく低いようであり、かつ時間がかかる可能性があることを見出した。
【0003】
ミュー(「μ」)、デルタ(「δ」)及びカッパ(「κ」)受容体は、ヒトを含む多くの生物種の中枢及び末梢神経系の両者によく表れている、確立されたオピオイド受容体である。受容体局在化の研究から、δ−オピオイド受容体は、気分の調整に関わる脳領域内に存在することが示されている。例えば、δ−オピオイド受容体の、扁桃体への局在性は不安状態の調節と一致し、これに対して、皮質及び海馬への局在性はうつ病の調節と一致している。δ−オピオイド受容体は、高揚した不安状態及び抑うつ様の行動が、δ−オピオイド受容体ノックアウトマウスで常に観察された際に、うつ病及び不安神経症を処置するための可能性のある標的として最初に確認された。不安の低下は、種々の動物モデルで1つ又はそれ以上のδ−オピオイド受容体が活性化されたときに観察されている。更に、多くの研究者は、強制水泳試験のようなモデルで、選択的δ−オピオイド受容体アゴニストが抗うつ薬様の性質を有することを見出している。
【0004】
うつ病の処置に使用できる薬品があるにもかかわらず、AMDDの患者の多くは、現在利用できる抗うつ薬による処置に対して反応しない。現在の抗うつ薬の主要な生化学的効果は、シナプス内のモノアミン濃度を高めることによって発揮されるもので、従って、AMDD処置の効果は制限される。上記のデータは、うつ病だけでなく不安神経症も効果的に処置する医薬品開発の重要性を際立たせる。現在入手可能なAMDD処置の効果が限定的であることの結果として、AMDDを処置する治療的に有効なδ−オピオイド受容体リガンドを開発する取り組みが行われて来た。より具体的には、取り組みは選択的δ−オピオイド受容体リガンドの開発に焦点が当てられてきた。選択的δ−オピオイド受容体リガンドは、非選択的δ−オピオイド受容体リガンドよりも副作用の発生が有利に低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書で記述されることは、温血動物における不安大うつ病性障害(AMDD)を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物を投与することを含む方法である。
【0006】
更に本明細書で記述されることは、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0007】
また更に本明細書で記述されることは、不安大うつ病性障害を処置するための薬剤の製造における、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物の使用である。
【0008】
なお更に本明細書で記述されることは、不安大うつ病性障害を処置するための、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0009】
その上なお更に本明細書で記述されることは、不安大うつ病性障害を処置するための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者によってより容易に理解することができる。明確にする理由で上記及び下記に別々の実施態様に関連して記載される本発明の或る種の特徴は、組み合わせて単一の実施態様を形成してもよいことは理解される。反対に、簡潔にする理由で、単一の実施態様に関連して記載された本発明の様々な特徴は、組み合わせてそれらのサブコンビネーションを形成してもよい。
【0011】
本明細書において特に断らない限り、単数での言及は複数を包含してもよい。例えば、「1つの」は、「1つの」又は「1つ又はそれ以上の」の何れに言及してもよい。本明細書で例示的と認識される実施態様は、説明のためであり、限定することを意図しない。本明細書に記載された定義は、参照によって本明細書に組み込まれるいかなる特許、特許出願、及び/又は公開特許出願に記載の定義に優先する。
【0012】
「光学異性的に純粋」とは、そこに含まれる可能性のある2つのエナンチオマーの総数の内、少なくとも75%の指定されたエナンチオマーを含む化合物を指す。別の実施態様において、「光学異性的に純粋」とは、そこに含まれる可能性のある2つのエナンチオマーの総数の内、少なくとも90%の指定されたエナンチオマーを含む化合物を指す。さらなる実施態様では、「光学異性的に純粋」とは、そこに含まれる可能性のある2つのエナンチオマーの総数の内、少なくとも95%の指定されたエナンチオマーを含む化合物を指す。
【0013】
本明細書で使われるように、「薬学的に許容される」という用語は、「薬学的に許容される」として特定される対象物質が患者への投与に好適であり、且つ、生理学的に受容できることを示す。例えば、用語の「薬学的に許容される塩(類)」は、好適で生理学的に受容できる塩(類)を意味する。
【0014】
特定の表示がない限り、「治療」という用語は、更に「予防」を含む。「治療」という用語は、既存の病状、急性又は慢性、並びに再発性の状態を緩和させることを包含する。「治療上の」及び「治療的に」という用語は、この定義に従って解釈されるべきであり、それは同様に再発性の状態を防止するための予防的治療及び慢性疾患のための継続的な治療を包含する。
【0015】
「4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物」という語句は、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドの遊離塩基、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド遊離塩基のエナンチオマー、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド遊離塩基の薬学的に許容される塩、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド遊離塩基のエナンチオマーの薬学的に許容される塩、及び/又は前述のもののいずれかの混合物を指す。
【0016】
「4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物」という語句は、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド遊離塩基、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド遊離塩基の薬学的に許容される塩、及び/又は前述のもののいずれかの混合物を指す。
【0017】
「治療的有効量」という用語は、処置される状態又は病気の1つ又はそれ以上の症状を調節するのに十分な化合物の量を指す。「治療的有効量」及び/又は本発明の処置の方法に用いられる化合物の用量域は、当業者によってそれぞれの患者の年齢、体重及び反応性を含む既知の尺度を通して決定され、処置する及び/又は予防する疾患という枠の中で判断されればよい。哺乳類への典型的な単回又は分割投与量は、約0.01〜約300mg/kg/日である。
【0018】
1つの実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0019】
別の実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0020】
更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む化合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0021】
その上別の実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0022】
その上更に別の実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0023】
さらなる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を投与することを含む方法に向けられる。
【0024】
別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物に向けられる。
【0025】
その上別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物に向けられる。
【0026】
その上なお更に別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む化合物に向けられる。
【0027】
更にその上別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物に向けられる。
【0028】
更にその上更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物に向けられる。
【0029】
なお更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物に向けられる。
【0030】
更に更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマーを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0031】
その上更に更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0032】
その上更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0033】
なお更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0034】
更になお更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0035】
その上更になお更なる実施態様は、温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の光学異性的に純粋な、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0036】
更にその上更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマーを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に向けられる。
【0037】
なお更にその上更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に向けられる。
【0038】
更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、治療的有効量の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に向けられる。
【0039】
更に更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物を含む治療的有効量の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む医薬組成物に向けられる。
【0040】
その上更に更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物を含む治療的有効量の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む医薬組成物に向けられる。
【0041】
その上更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物を含む治療的有効量の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む医薬組成物に向けられる。
【0042】
1つの実施態様では、温血動物は哺乳類種である。典型的な哺乳類種としては、例えば、ヒト及び、例えばイヌ、ネコ、及びウマのような家畜が挙げられるがこれに限定されない。
【0043】
更なる実施態様では、温血動物はヒトである。
【0044】
1つの実施態様では、薬学的に許容される担体は、固体の担体及び液体の担体から選択される。
【0045】
固体の担体としては、限定されるものではないが、例えば、粉剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤、及び坐剤が挙げられる。固体の担体は、1つ又はそれ以上の物質であってもよく、それはまた稀釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、又は錠剤の崩壊剤として働くことができる。固体の担体は、また、封入材料であってもよい。
粉剤では、担体は、微粉末化した本発明の化合物と混合した微粉末化した固体である。
【0046】
錠剤では、本発明の化合物は、目的の形状とサイズに圧縮するために好適な比率で、必要な結合特性を有する担体と混合される。
【0047】
坐剤では、最初に例えば、脂肪酸グリセリドとカカオバターの混合物のような低融点ワックスを融解し、その中に本発明の化合物を、例えば、攪拌によって分散させる。次に、融解した均質な混合物を都合の良い鋳型に流し込み、冷却して凝固させる。
【0048】
好適な担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス及びカカオバターが挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
「組成物」という用語は、また、カプセルを提供するための担体として封入材を用いた本発明の化合物の製剤であって、本発明の化合物が(他の担体の有無にかかわらず)その様に封入剤に関連する担体によって包まれたカプセルを含むことを意味する。同様に、カシェ剤も含まれる。
【0050】
錠剤、粉剤、カシェ剤及びカプセルは、経口投与に好適な固形の剤形として使用することができる。
【0051】
液体の剤形としては、例えば、溶液、懸濁液、及び乳液が挙げられるが、これに限定されない。例えば、本発明の化合物の滅菌水又はプロピレングリコール溶液は、非経口投与に好適な液体製剤である可能性がある。液体の剤形は、また、水性ポリエチレングリコール溶液として処方されてもよい。
【0052】
経口投与用の液体剤形は、本発明の化合物を水に溶かし、好適な着色剤、着香剤、安定化剤及び増粘剤を添加することによって、所望通りに製造することができる。経口投与用の液状懸濁剤は、微粉末化した本発明の化合物を、例えば、天然合成ゴム、樹脂、メチルセルロース及びナトリウムカルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤と共に水に分散させることによって作ることができる。
【0053】
1つの実施態様は、0.05%〜99%(質量パーセント)の少なくとも1種の本発明の化合物を含む医薬組成物に向けられ、ここで、すべての質量パーセントは、組成物の総量を基準にしている。
【0054】
別の実施態様は、0.10〜50%(質量パーセント)の少なくとも1種の本発明の化合物を含む医薬組成物に向けられ、ここで、すべての質量パーセントは組成物の総量を基準にしている。
【0055】
本発明の或る化合物は、非溶媒和の形態と同様に、溶媒和した、例えば、水和した形態で存在してもよい。結果として、本発明は、溶媒和した形態の化合物による処置方法を包含する。
【0056】
薬学的に許容される本発明の化合物の塩は、業界で良く知られた標準的な手法を用いて、例えば、十分に塩基性の化合物の、例えば、アルキルアミンを、生理学的に許容されるアニオンを与える好適な酸の、例えば、HCl又は酢酸と反応させることによって得ることができる。また、カルボン酸又はフェノールのような好適な酸性プロトンを有する本発明の化合物を、水性溶媒中で1当量のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは(エトキシド又はメトキシドのような)アルコキシド、又は(コリン又はメグルミンのような)好適な塩基性有機アミンで処理することによって、対応するアルカリ金属(ナトリウム、カリウム又はリチウムなど)又はアルカリ土類金属(カルシウムなど)の塩を作ることが可能である。
【0057】
1つの実施態様では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩のような酸付加塩である。
【0058】
その上別の実施態様では、薬学的に許容される塩は、セスキフマル酸塩又は一塩酸塩である。
【0059】
別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置する薬剤を製造ための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に向けられる。
【0060】
その上別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置する薬剤を製造ための、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に向けられる。
【0061】
更にその上別の実施態様は、不安大うつ病性障害を処置する薬剤を製造ための、光学異性的に純粋な、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に向けられる。
【0062】
なお更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置する薬剤を製造ための、光学異性的に純粋な、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に向けられる。
【0063】
更に更なる実施態様は、不安大うつ病性障害を処置する薬剤を製造ための、光学異性的に純粋な、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物の使用に向けられる。
【0064】
その上別の実施態様は、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、又は治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物を含む医薬組成物又は製剤、及び少なくとも1つの他の薬学的に活性な化合物によって、不安大うつ病性障害に罹った患者を処置する方法に向けられ、その中で、上述の化合物及び他の薬学的に活性な化合物は、共に、同時に、逐次的に又は別々に投与され、そして上述の少なくとも1つの他の薬学的に活性な化合物は下記から選択される。
【0065】
(i)例えば、アゴメラチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、ジェピロン、イミプラミン、イプサピロン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、ネファゾドン、パロキセチン、フェネルジン、プロトリプチリン、ラメルテオン、レボキセチン、ロバルゾタン、セレギリン、セルトラリン、シブトラミン、チオニソキセチン、トラニルシプロマイン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの抗うつ薬;
(ii)例えば、アミスルピリド、アリピプラゾール、アセナピン、ベンジソキシジル、ビフェプルノックス、カルバマゼピン、クロザピン、クロルプロマジン、デベンザピン、ジベンザピン(dibenzapine)、ジバルプロエックス、ドロペリドール、フルフェナジン、ハロペリドール、イロペリドン、ロクサピン、メソリダジン、モリンドン、オランザピン、パリペリドン、ペルフェナジン、フェノチアジン、フェニルブチルオイペリジン、ピモジド、プロクロルペラジン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、スプロクロン、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、トリメトジン、バルプロ酸塩、バルプロ酸、ゾテピン、ジプラシドン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの抗精神病薬;
(iii)例えば、アジナゾラム、アルプラゾラム、バレゼパム、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロチゾラム、ブスピロン、クロナゼパム、クロラゼプ酸塩、クロルジアゼポキシド、シプラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フォサゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メプロバメート、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、レクラゼパム、スリクロン、トラカゾレート、トレピパム、テマゼパム、トリアゾラム、ウルダゼパム、ゾラゼパム、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの抗不安薬;
(iv)例えば、カルバマゼピン、オキスカルバゼピン、バルプロエート、ラモトロジン、ガバペンチン、トピラメート、フェニトイン、エトスクシミド、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの抗痙攣薬;
(v)例えば、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスティグミン、タクリン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などのアルツハイマー病の治療薬;
(vi)例えば、レボドパ、カルビドパ、アマンタジン、プラミペキソール、ロピニロール、ペルゴリド、カベルゴリン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、MAOB阻害薬(即ち、セレジン及びラサジリン)、COMT阻害薬(即ち、エンタカポネ及びトルカポネ)、アルファ−2阻害剤、抗コリン薬(即ち、ベンズトロピン、ビペリデン、オルフェナドリン、プロシクリジン及びトリヘキシフェニジル)、ドーパミン再取込阻害剤、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、及びニューロンの一酸化窒素シンターゼ阻害剤、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、パーキンソン病の治療法及び錐体外路系症状を処置するための薬剤;
(vii)例えば、アルモトリプタン、アマンタジン、ブロモクリプチン、ブタルビタール、カベルゴリン、ジクロラールフェナゾン、エレトリプタン、フロバトリプタン、リスリド、ナラトリプタン、ペルゴリド、プラミペキソール、リザトリプタン、ロピニロール、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ゾミトリプタン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、片頭痛の治療薬;
(viii)例えば、アブシキシマブ、アクチベース、NXY−059、シチコリン、クロベニチン、デスモテプラーゼ、レピノタン、トラキソプロジル、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、脳梗塞治療薬;
【0066】
(ix)例えば、ダラフェナシン、ジサイクロミン、ファルボキセート、イミプラミン、デシプラミン、オキシブチニン、プロピヴェリン、プロパンテジン(propanthedine)、ロバルゾタン、ソリフェナシン、アルファゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、トルテロジン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、尿失禁の治療薬;
(x)例えば、ガバペンチン、リドデルム、プレガブリン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、神経障害性疼痛の治療薬;
(xi)例えば、セレコキシブ、コデイン、ジクロフェナク、エトリコキシブ、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボ−α−アセチルメタドール,ロキソプロフェン、ルミラコキシブ、メペリジン、メサドン、モルヒネ、ナプロキセン、オキシコドン、パラセタモール、プロポキシフェン、ロフェコキシブ、スフェンタニル、バルデコキシブ、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、侵害受容性疼痛の治療薬;
(xii)例えば、アゴメラチン、アロバルビタール、アロニミド、アモバルビタール、ベンゾクタミン、ブタバルビタール、カプリド、抱水クロラール、クロナゼパム、クロラゼペート、クロペリドン、クロレペート、デクスクラモール、エスタゾラム、エスゾピクロン、エトクロルビノール、エトミデート、フルラゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、メクロカロン、メラトニン、メフォバルビタール、メタカロン、ミダフルール、ミダゾラム、ニソバメート、パゴクロン、ペントバルビタール、ペルラピン、フェノバルビタール、プロポフォール、クアゼパム、ラメルテオン、ロレタミド、スプロクロン、テマゼパム、トリアゾラム、トリクロホス、セコバルビタール、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、不眠症の治療法及び催眠鎮静薬;
(xiii)例えば、カルバマゼピン、ジバルプロエックス、ガバペンチン、ラモトリジン、リチウム、オランザピン、オキシカルバゼピン、クエチアピン、バルプロ酸塩、バルプロ酸、ベラパミル、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、気分安定剤;
(xiv)例えば、オルリスタット、シブトラミン、リモナバント、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、肥満症処置のための薬剤;
(xv)例えば、アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、モダフィニル、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、ADHDを処置するための薬剤;及び
(xvi)例えば、ニコチン代償療法(即ち、ガム、パッチ及びスプレー式点鼻薬);ニコチン作動性受容体アゴニスト、半アゴニスト、及びアンタゴニスト、(例えば、バレニクリン);アカンプロセート、ブプロピオン、クロニジン、ジスルフィラム、メタドン、ナロキソン、ナルトレキソン、及び同等物並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物などの、物質乱用障害、依存症、及び離脱症状を処置するために使用される薬剤。
【0067】
そのような併用療法では、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を、本明細書に記載の用量範囲で、及び他の薬学的に活性な化合物又は化合物類を承認された用量範囲及び/又は関連する出版物に記載の用量内で使用する。
【0068】
不安大うつ病性障害に罹った人を処置する場合、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物は、通常の医薬組成物の形態で、経口的、筋肉内、皮下、局所、鼻腔内、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、脳室内、及び関節内を含むが、これらに限定されない、如何なる経路によって投与されてもよい。
【0069】
本発明の1つの実施態様では、投与経路は、経口、静脈内、及び筋肉内から選択される。
【0070】
任意の特定の対象者に対する用量の具体的な服用レベル及び頻度は異なる可能性があり、一般的に、例えば、投与された形態での本発明の化合物の生物学的利用能;本発明の特定の化合物の代謝安定性及び作用時間;対象の種、年齢、体重、健康状態、性別及び食事;投与の形態及び時間;排泄速度;薬物併用;そして、特定の状態の重症度;及び、個別の投薬計画及び特定の患者のために最も適切な用量レベルを決める場合に主治医が通常考える他のあらゆる要因を含むが、これに限定されない様々な要因に依存する。
【0071】
一般に、本発明の化合物は、次のスキーム及び当業者の一般的な知識に従って、及び/又は後の実施例で説明する方法に従って製造することができる。溶媒、温度、圧力及び他の反応条件は、当業者は容易に選択することができる。出発原料は市販されている又は当業者によって容易に準備できる。組み合わせ技術は、例えば、中間体がこれらの技術に好適な基を持つ化合物の製造に使用することができる。
【0072】
【化1】

【0073】
【化2】

【0074】
生物学的評価
本明細書の実施例に記載された化合物を含む本発明の少なくとも1つの化合物は、下記に記載の生体外アッセイで試験した場合、δ受容体に対して活性である。特に、本発明の少なくとも1つの化合物は、有効なδ受容体リガンドである。生体外活性は生体内活性に関連する可能性はあるが、直線的に結合親和性に相関しない可能性がある。本明細書に記載される少なくとも1つの生体外アッセイでは、本発明の少なくとも1つの化合物がδ受容体に対する活性を試験し、特定の化合物のδ受容体に対する選択的活性を測定するために、IC50が得られる。現在の状況では、IC50は一般に、標準の放射性δ受容体リガンドの50%置換が観察された化合物の濃度をいう。
本発明の少なくとも1つの化合物のκ及びμ受容体に対する活性も、同様のアッセイで測定することができる。
【0075】
生体外モデル
細胞培養
クローン化したヒトのκ、δ及びμ受容体及びネオマイシン耐性を発現するヒト293S細胞は、カルシウム不含DMEM、10%FBS、5%BCS、0.1%プルロニックF−68及び600μg/mLジェネティシンが入ったシェーカーフラスコで、37℃、5%CO2で、浮遊状態で増殖させる。
ラット脳は、秤量し、氷冷したPBS(2.5mMのEDTAを含有、pH7.4)ですすぎ洗いする。脳は、氷冷した溶解緩衝液(50mMのトリス、pH7.0、2.5mMのEDTA、DMSO:エタノール中の0.5Mの保存液から0.5mMになるように使用直前に添加したフェニルメチルスルフォニルフルオライドを含む)中で、ポリトロンを用いて30秒間均質化する。
【0076】
膜の調製
細胞をペレット状にし、溶解緩衝液(50mMのトリス、pH7.0、2.5mMのEDTA、エタノール中の0.1Mの保存液から0.1mMになるように使用直前に添加したPMSFを含む)に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートし、次にポリトロンを用いて30秒間均質化する。懸濁液は、4℃、1000×g(最大)で10分間回転させる。上清は氷上で保存し、ペレットは再懸濁して前述のように回転させる。両回転からの上清を併せ、46,000×g(最大)で30分間回転させる。ペレットは、冷却したトリス緩衝液(50mMのトリス/Cl(pH7.0))に再懸濁し、再び回転させる。最終ペレットは、膜緩衝液(50mMのトリス、0.32Mのショ糖、pH7.0)に再懸濁させる。ポリプロピレン製のチューブに入れた一定量(1mL)を、ドライアイス/エタノール中で凍結させ、使用するまで−70℃で保存する。タンパク質濃度は、ドデシル硫酸ナトリウムを用いる改変ローリーアッセイによって測定する。
【0077】
結合アッセイ
膜は、37℃で解凍し、氷で冷却し(直ちに使用しなければ氷上に保つ)、25ゲージ注射針を3回通過させ、そして結合緩衝液(50mMのトリス、3mMのMgCl2、1mg/mLのBSA(Sigma A-7888)、pH7.4、;0.22mのフィルターによる濾過の後4℃で保存する;そして、膜が組織由来(ラット、マウス、サル、DTTなし)である場合、新たに5μg/mLのアプロチニン、10μMのベスタチン、10μMのジプロチンAが添加されている)で希釈する。100μLの分量を、100μLの適切な放射性リガンド及び100μLの種々の濃度の試験化合物が入った氷冷した12×75mmポリプロピレンチューブに添加する。合計(TB)及び非特異的(NS)結合は、それぞれ、10μMのナロキソンの非存在及び存在下で測定する。チューブは、ボルテックス攪拌して25℃で60〜75分間インキュベートし、その後、内容物を予め0.1%のポリエチレンイミンに少なくとも2時間浸漬したGF/Bフィルター(Whatman)で急速に減圧ろ過し、氷冷した約12mL/チューブの洗浄用緩衝液(50mMのトリス、pH7.0、3mMのMgCl2)で洗浄する。フィルターを6〜7mLのシンチレーション液を含むミニバイアルに少なくとも12時間浸漬した後、フィルターに保持された放射活性(dpm)をβカウンターで測定する。アッセイを96穴ディープウェルプレートにセットすると、濾過は96穴のPEIに浸漬したユニフィルターで済み、それを3×1mLの洗浄用緩衝液で洗浄し、55℃のオーブン内で2時間乾燥させる。フィルタープレートは、50μL/ウェルのMS−20シンチレーション液を添加した後、TopCount(Packard)で計数する。96穴ディープウェルプレートで行うアッセイの場合は、化合物のIC50は、δの場合は10ポイント置換曲線から、μ及びκの場合は5ポイント置換曲線から評価する。アッセイは、適切な量の膜タンパク質(δ、μ及びκの場合、それぞれ2μg、35μg及び1μg)及び50000〜80000dpm/ウェルの適切なトレーサー(δ、μ及びκに対してそれぞれ125I-DeltorphinII、125I-FK33824及び125I-DPDYN)を含む300μLで行われる。総結合及び非特異的結合は、10μMのナロキソンの非存在及び存在で測定する。
【0078】
機能性のアッセイ
本発明の少なくとも1つの化合物のアゴニスト活性は、化合物・受容体の複合体が、受容体が結合するGタンパク質へのGTPの結合を活性化する程度を決定することによって測定することができる。GTP結合アッセイでは、GTP[γ]35Sを、試験化合物及び、クローン化したオピオイド受容体を発現しているHEK−293S細胞由来の膜又は均質化したラット若しくはマウス脳由来の膜と混ぜ合わせる。アゴニストは、これらの膜におけるGTP[γ]35Sの結合を刺激する。化合物のEC50及びEmax値は、用量反応曲線から決定する。δアンタゴニストのナルトリンドールによる用量反応曲線の右シフトを行って、アゴニスト活性がδ受容体を通して仲介されることを確認する。ヒトδ受容体機能をアッセイするためには、アッセイで使用されるヒトδ受容体が、EC50(高)を決定するのに使用するものに比較してより低いレベルで発現された場合、EC50(低)を測定する。Emax値は、標準のδアゴニストSNC80に関して決定する。即ち、100%より高ければ、SNC80より有効性が優れた化合物である。
【0079】
ラット脳GTPについての手順
ラット脳の膜を37℃で解凍し、末端平滑の25ゲージ注射針を3回通過させ、GTPγS結合緩衝液(50mMのHepes、20mMのNaOH、100mMのNaCl、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、pH7.4;新鮮な1mMのDTT、0.1%のBSAを添加)で希釈する。終濃度120μMのGDPを膜希釈液に添加する。化合物のEC50及びEmaxは、適切な量の膜タンパク質(20μg/ウェル)及びウェル当り100000〜130000dpmのGTPγ35S(0.11〜0.14nM)を用いて300μL中で行う、10ポイント用量反応曲線から評価する。基底及び最大刺激の結合は、3μMのSNC80の非存在及び存在で測定する。クローン化されたδ受容体を安定的に発現するHEK293S細胞で行うアッセイは、わずかに異なる緩衝液(50mMのHepes、20mMのNaOH、200mMのNaCl、1mMのEDTA、5mMのMgCl2、pH7.4;新鮮な0.5%のBSAを添加、DTTなし)中で、最終濃度3μMを用いて行なう。
【0080】
データ解析
特異的結合(SB)はTB−NSとして計算し、各種試験化合物の存在下でのSBはコントロールSBのパーセントとして表現した。結合した放射性リガンドを特異的に置換するリガンドについてのIC50値及びHill係数(nH)は、ロジットプロット又はLigand、GraphPad Prism、SigmaPlot、又はReceptorFitのような曲線適合プログラムから計算した。Kiの値はCheng-Prussoffの式から計算した。IC50、Ki及びnHの平均±S.E.M.値は、少なくとも3つの置換曲線で試験されたリガンドについて報告した。
【0081】
以下に示す表1は、上記で基本的に説明したような結合及び/又は機能性のアッセイに従って生成されたIC50値である。
【0082】
【表1】

【0083】
受容体飽和実験
放射性リガンドKd値は、推定されるKdの0.2〜5倍(もし要求される放射性リガンドの量が実行可能なら10倍まで)の範囲の濃度で、適切な放射性リガンドによる細胞膜への結合アッセイを行うことによって決定される。特異的な放射性リガンドの結合は、pmole/mg膜タンパク質として表現される。個別実験からのKδ及びBmax値は、1部位モデルに従って、特異的結合(B)対それぞれからのnM遊離(F)放射性リガンドの非線形フィットから得られる。
【実施例】
【0084】
本発明は、本発明の化合物を製造し、精製し、分析しそして生物学的に試験する方法を説明し、そして本発明を制限すると解釈されない、以下の実施例によってより詳細に説明される
【0085】
指定しない限り、本明細書で議論される化合物は、一般に、「有機化学命名法」セクションA、B、C、D、E、F及びH、Pergamon Press, Oxford, 1979、中に記述される例及び規則に従って命名した。場合により、本明細書で議論される化合物の名前は、例えば、ACD/ChemSketch, Version 5.09/September 2001, Advanced Chemistry Development, Inc., Toronto, Canadaのような化学物質命名プログラムを使用して作成してもよい。
【0086】
キラル純度は、以下の条件を使用してHPLCによって決定した:Chiralpack AD カラム(ダイセル化学);低流速、1mL/分;実行時間、30分、25℃;定組成、15%EtOH(0.1%体積/体積のジエチルアミン含有)85%ヘキサン(0.1%体積/体積のジエチルアミン含有);分子保持時間=20分。
【0087】
本明細書では以下の略語が使われる:ACN:アセトニトリル;aq:水溶液;n−BuLi:n−ブチルリチウム;CH2Cl2:ジクロロメタン;CH3CN:アセトニトリル;EtOH:エタノール;EtOAc:酢酸エチル;Eq:同等物;h:時間;HCl:塩酸;HPLC:高速液体クロマトグラフィー;MeOH:メタノール;MgSO4:硫酸マグネシウム;min:分;MS:質量スペクトル;NaHCO3:重炭酸ナトリウム;NaOH:水酸化ナトリウム;Na2SO4:硫酸ナトリウム;NH4Cl:塩化アンモニウム;Na2SO4:硫酸ナトリウム;NMR:核磁気共鳴;RT:室温;sat.:飽和;及びTHF:テトラヒドロフラン。
【0088】
中間体1:4−ヨウド−N,N−ジエチルベンズアミド
500mLのCH2Cl2中の4−ヨード−ベンゾイルクロリド(75g)の混合物に、Et3N(50mL)及びEt2NH(100mL)の混合物を0℃で添加した。添加後、得られた反応混合物を1時間内に室温まで加温し、次に飽和NH4Clで洗浄した。有機抽出物は乾燥(Na2SO4)し、濾過し、そして濃縮した。残留物を熱ヘキサンから再結晶して80gの中間体1を得た。
【0089】
中間体2:4−[ヒドロキシ(3−ニトロフェニル)メチル]−N,N−ジエチルベンズアミド
N,N−ジエチル−4−ヨードベンズアミド(5.0g、16mmol)は、THF(150mL)に溶解し、窒素雰囲気下で−78℃に冷却した。n−BuLi(15mL、ヘキサン中の1.07M溶液、16mmol)を、−65〜−78℃で10分間の滴下で添加した。溶液は次に、トルエン/THF(凡そ1:1,100mL)中の3−ニトロベンズアルデヒド(2.4g、16mmol))に−78℃でカニューレ注入した。30分後に、NH4Cl(水溶液)を添加した。減圧濃縮、EtOAc/水による抽出、有機相の乾燥(MgSO4)及び蒸発の後、残渣をシリカ上のクロマトグラフィーで精製し、中間体2(2.6g、50%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δH 1.0-1.3 (m, 6H), 3.2 (m, 2H), 3.5 (m, 2H), 5.90 (s, 1H), 7.30-7.40 (m, 4H), 7.50 (m, 1H), 7.70 (d, J = 8 Hz, 1H), 8.12 (m, 1H), 8.28 (m, 1H)。
【0090】
中間体3: N,N−ジエチル−4−[(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド
アルコール中間体2(10.01g、30.5mmol)のCH2Cl2溶液(200mL)に、臭化チオニル(2.58mL、33.6mmol)を加えた。室温で1時間後、反応物を飽和NaHCO3水溶液(100mL)で洗浄し、有機層を分離した。水層はCH2Cl2(3×100mL)で洗浄し、併せた有機抽出液は、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして濃縮した。粗製の臭化ベンジルをCH3CN(350mL)に溶解し、ピペラジン(10.5g、122mmol)を添加した。反応物を65℃で1時間加熱した後、反応物を飽和NH4Cl/EtOAcで洗浄し、有機層を分離した。水層はEtOAc(3×100mL)で抽出し、併せた有機抽出液は、乾燥(MgSO4)、濾過し、そして濃縮し、ラセミ体の中間体3を得た。
【0091】
中間体4b: N,N−ジエチル−4−[(R)(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド
ラセミ体の中間体3をEtOH(150mL)に溶解し、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(11.79g,1当量)を添加した。生成物は、12時間にわたって沈澱させた。固形物を濾過によって収集し、固形物がすべて溶解するまで還流するEtOHに再溶解した(約1200mLのEtOH)。冷却した上で、固形物を濾過によって収集し、再結晶を2回繰り返した。固形物を濾過によって収集し、NaOH水溶液(2M)で処理し、そしてEtOAcで抽出した。有機抽出物を、次に乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして濃縮して、1.986gの中間体4bを得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δH 1.11 (br
s, 3H), 1.25 (br s, 3H), 2.37 (br s, 4H), 2.91 (t, J = 5 Hz, 4H), 3.23 (br s, 2H), 3.52 (br s, 2H), 4.38 (s, 1H), 7.31-7.33 (m, 2H), 7.41-7.43 (m, 2H), 7.47 (t, J= 8 Hz, 1H), 7.75-7.79 (m, 1H), 8.06-8.09 (m, 1H), 8.30-8.32 (m, 1H)。
【0092】
中間体4a: N,N−ジエチル−4−[(S)(3−ニトロフェニル)(1−ピペラジニル)メチル]ベンズアミド
中間体4aは、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸を用いて以下の分割手法を実行することによって得られる:Chiralpack ADカラム(ダイセル化学);低流速、1mL/分;実行時間、30分、25℃;定組成、15%EtOH(0.1%体積/体積のジエチルアミン含有)85%ヘキサン(0.1%体積/体積のジエチルアミン含有);分子保持時間=20分。
【0093】
〔実施例1〕
4−{(S)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド
【化3】

中間体4a(467mg)の1,2−ジクロロエタン溶液(13mL)に、4−フルオロベンズアルデヒド(252μL;2当量)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(498mg;2当量)を添加した。反応物は、窒素雰囲気下、室温で18時間撹拌し、そして濃縮した。飽和NaHCO3を加え、水溶液を3分割のCH2Cl2で抽出し、併せた有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。生成した化合物は、EtOH、THF、水及び飽和のNH4Clの混合物(4mL;比率4:2:1:1体積/体積)に溶解した。鉄ナノ粒子(スパチュラで3杯)を添加し、溶液をマイクロウェーブ内で、150℃で10分間加熱した。生成した混合物を冷却し、セライトで濾過し、濃縮した。残留物は、シリカゲルのフラッシュ・クロマトグラフィーによって、CH2Cl2中1%〜5%メタノールグラジエントにより溶離して精製した。得られた生成物は、1MのHClを含むエーテル1.2mLを添加したCH2Cl2に溶解した。溶媒を除去し、生成物を塩酸塩として分離し、164mgの実施例1を無色固体として得た(収率30%)。純度(HPLC):>99%;光学純度(キラルHPLC):>99%;1H NMR (400MHz, CD3OD), 1.08 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 1.21 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 3.20-3.26 (m, 4H), 3.51-3.54 (m, 6H), 4.43 (s, 2H), 7.19-7.23 (m, 2H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.54-7.63 (m, 3H), 7.70-7.82 (m, 4H)。計算値:C、54.63;H、6.49;N、8.68。C29364OF×4.1HCl×0.8H2O×0.1C410Oは、C、57.67;H、6.51;N、8.67%を有する。
【0094】
〔実施例2〕
4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド
【化4】

中間体4b(5.790g、14.6mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(60mL)に、4−フルオロベンズアルデヒド(2.04mL;19.0mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(4.02g;19.0mmol)を添加した。室温で20時間の後、反応をNaHCO3水溶液で停止させ、有機層を分離した。水層をCH2Cl2(3×100mL)で抽出し、併せた有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、そして濃縮した。残留物は、ヘキサン中の30%〜50%アセトンで溶離するフラッシュ・クロマトグラフィーによって精製して、ニトロ中間体である無色の泡状物質(5.285g、71%)を得た。ニトロ中間体(5.285g、10.4mmol)は、EtOH、THF、水及び飽和NH4Cl水溶液の混合物(比率4:2:1:1、体積/体積)(100mL)に溶解し、鉄の顆粒(0.63mg、11.5mmol)を添加した。反応物を加熱還流し、一定時間ごとに更に鉄顆粒を添加した。24時間還流(90℃)した後、反応物は室温に冷却し、セライトで濾過し、濃縮した。残留物に、NaHCO3の水溶液及びCH2Cl2を加えた。有機層を分離し、水層はCH2Cl2(3×100mL)で抽出し、そして併せた有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、そして濃縮した。生成物は、シリカゲル上で、CH2Cl2中1%〜5%メタノールで溶離して精製し、黄白色の泡状物質として3.505gの実施例2を得た。不純な生成物を、更に上記のフラッシュ・クロマトグラフィーから得た。不純な生成物を、2回目のフラッシュ・クロマトグラフィーで再精製し、更に0.949gの実施例2を得た。合わせた取得物質:4.454g(収率90%)。純度(HPLC):>99%;光学純度(キラルHPLC):>99%;1H NMR (400MHz, CD3OD), 1.08 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 1.21 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 3.20-3.26 (m, 4H), 3.51-3.54 (m, 6H), 4.43 (s, 2H), 7.19-7.23 (m, 2H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.54-7.63 (m, 3H), 7.70-7.82 (m, 4H)。計算値:C、54.00;H、6.36;N、8.47。C2935FN4O×4.7HCl×0.2C410O×0.1H2Oは、C、54.02;H、6.37;N、8.46%を有する。
【0095】
〔実施例3〕
4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩
フマル酸(36.9g,318mmol)のEtOH(700mL)溶液に、35℃で、実施例2(92.3g、194mmol)のEtOH(500mL)溶液を、制御された方法で添加した。2つの溶液の混合によって結晶化が起こった。スラリーを20℃に冷却し、この温度で16時間撹拌した。生成物を濾過によって集め、EtOH(100mL)で洗浄した後、減圧下60℃で乾燥し、114.5gの実施例3を得た。純度(HPLC):>98%;光学純度(キラルHPLC):>98%;1H NMR (d6-DMSO) δH 1.06 (br, 6H), 2.30 (br, 2H), 2.36 (br, 2H), 2.47 (br, 4H), 3.16 (br, 2H), 3.37 (br, 2H), 3.54 (s, 2H), 4.11 (1H, s), 6.37 (dd, J=1.3 and 7.9 Hz, 1H), 6.55 (d, J=7.6 Hz, 1H), 6.62 (t, J=1.8 Hz, 1H), 6.62 (s, 2H), 6.91 (t, J=7.7 Hz, 1H), 7.13 (t, J=8.8 Hz, JHF= 8.8 Hz, 2H), 7.25 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.32 (dd, J=8.4 Hz, JHF=5.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J 8.1 Hz, 2 H). IR (cm-1) 2973 (NH), 1725 (C=O), 1708 (C=C), 1613 (C=O), 1563 (C=C)。計算値:C、62.15;H、6.35;N、8.20。3×C44O及び4.5%H2Oを持つ2×C2935FN4Oは、C、61.88;H、6.58;及びN8.25%を必要とする。
【0096】
〔実施例4〕
4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドのラット生体内処罰反応方法(改変されたGeller-Seifter)における抗不安作用
目的
本研究の目的は、改変されたGeller-Seifter葛藤試験における4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド(以下「化合物A」)の抗不安効果を測定することである。
方法
葛藤試験では、空腹の動物に、2つの条件下で、標準のオペラントチャンバ内で食物供給のためのレバー押しを訓練させた。第1の条件は、非抑制要素と呼ばれ、平均17回のレバー押しが行われると食物が供給された(VR17の強化スケジュールとも呼ばれる)。第2の条件では、抑制要素と呼ばれ、オペラントチャンバ内の点滅光によって信号が送られ、食物は同様に平均17回のレバー押しが行われた後に供給されたが、更に別のVR17スケジュールの下で、ケージの床に電気ショックが送られた。1日のセッションは、各要素タイプの5つの交互提示で構成された:抑制(3分間)及び非抑制(2分間)。抑制要素において発せられたレバー押しの回数は、非抑制要素と比較して明らかに低かった。ラットは、化合物A(0.21〜21μmol/kg)が投与され、無処罰及び処罰要素における反応の割合を記録した。
【0097】
薬剤投与及び準備
化合物Aは蒸留脱イオン水/乳酸に溶解し、そしてそれを1mL/kg体重の量で経口的に投与した。化合物Aは、60分間の前処理時間を有した。化合物Aは火曜日と金曜日に投与し、媒体は木曜日に投与した。月曜日と水曜日は、ウォッシュアウト/ベースラインの日とした。
【0098】
装置
2本レバーの標準オペラントチャンバ(Med Associates)を使用した。チャンバには、2つの格納式反応レバー及び2つのレバーのそれぞれの上の刺激ランプが取り付けられた。ペレットディスペンサーは、チャンバ内の2つの反応レバーの下及びそれらの間に置かれたカップに、45mgの飼料ペレット(Bio Serv)を供給した。チャンバの天井及び背面のランプは、室内照明の働きをした。オペラントチャンバの格子状の床を、ショック発生器及び周波数帯変換器(Med Associates)に連結させた。室内のすべての事象は、マイクロプロセッサで制御し、モニターした。
【0099】
手順
手順には、2つの構成要素が存在した:1)2分間の非抑制反応要素(無処罰);及び2)3分間の抑制反応要素(処罰)。
無処罰要素では、室内灯及び反応レバー上の2つの刺激ランプが両者共点灯され、チャンバの左側にあるレバーが伸ばされ、チャンバ内のレバーへの平均17回の反応(3〜40反応の範囲)の後に、飼料ペレットが供給された:可変比率17スケジュール(VR17)。
処罰要素(無処罰要素に続く)では、右側のレバーがチャンバ内に伸張され;この要素の開始合図となる刺激ランプ及び室内灯が1秒間隔で連続的にオンオフし;VR17スケジュールの下に飼料が得られるが、しかし独立のVR17スケジュールの下にチャンバの格子状の床に送られる電流(0.5秒間)が付随した。電流の強さは、個々の対象について、処罰要素における反応が無処罰要素の約5%〜10%に低下するまで、0.2mAから0.75mAの範囲の強さに調整した。無処罰と処罰要素は、両方の反応レバーが格納され、すべての刺激ランプが消灯した10秒の休止期間で分離された。2秒無処罰及び3秒処罰要素は、それぞれが5回終了するまで交互に行われた。1日のセッションは常に無処罰要素で開始された。あらゆる所定の薬物試験に対して、訓練されたラットの多数の予備要員から反応が最も安定したラットを選択した。数種の投与量を、所定の試験日に異なる対象で試験した。次に、それぞれの用量を異なるラットの小集団で試験した。
【0100】
データ解析
記録した従属変数は、無処罰及び処罰要素における反応の比率(要素の下での総反応/総時間)及び与えたショックの数である。選択的抗不安効果は、無処罰要素において反応に及ぼす作用が比較的少なく又は無く、処罰要素において反応が増加すること、と定義した。特定の投与量に用いられたラットの媒体投与の日における対照の反応率の平均を、同じラットで次に供給される化合物Aのそれぞれの投与量(それぞれの投与量内で使用されたラットのみについて)の平均と比較するために、t検定を使用した。
【0101】
結果
本研究の結果は、以下に示す表2及び3にまとめた。化合物Aは、0.63、2.11、6.3及び21.1μmol/kgで、それらの媒体対照と比較して処罰反応の比率が増加した。化合物Aは、2.11μmol/kgで最大の効果があり、処罰反応で約300%の増加をもたらした。0.21μmol/kgでの4つの化合物Aは、このモデルでは効果がなかった。化合物Aは、試験した投与量で無処罰反応を著しく減少させることはなかった。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
結論
化合物Aは、改変されたGeller-Seifterの葛藤モデルにおいて、ジアゼパムと同レベルの効果(経口による3.5μmol/kgで〜250%;データ未表示)をもつ強い抗不安活性を有する。ホームケージ内の被験対象の観察では、化合物Aは鎮静作用/極度に活動的な特性を有しないことが示唆される。
【0105】
〔実施例5〕
4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドのラットの学習性無力感法における抗うつ作用
目的
本研究の目的は、学習性無力感試験において4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド(以下「化合物A」)の抗うつ薬の可能性を測定することである。
【0106】
方法
雄性のSprague-Dawley(SD)ラットを、2日連続で1日1時間の不可避電気刺激に曝し(コンディショニングし)、次に実験ケージの反対側に駆け寄ることによって電気刺激を回避又は逃避する様に訓練した。コンディショニング及び訓練期間中、2つの別々の実験にわたって、動物には媒体、イミプラミンHCI(15mg/kg)又は0.1、1及び10mg/kgの化合物Aを1日に2回動物に注射した。訓練相では、電気刺激が逃避可能であった場合、逃避失敗の回数を記録した。格子状床が取り付けられた標準シャトルケージ(20L×16W×21センチメートルH)を使用した。チャンバは、閉じた仕切りで又は動物がケージの2つの側の間で通過できるアーチ道で分割することができた。コンピューターによって、チャンバ内のすべての事象を制御し、監視した。
【0107】
手順
使用した手順は、誘導期及び回避訓練期を必要とした。誘導期では、ラットをシャトルケージの1つの側に入れ、電気刺激(2mA、9.9秒間)を、2、5又は10秒(各試験に対してランダムに選択)毎に、90回の電気刺激になるまで、ケージの床に送った。対象は、電気刺激から逃げる又は回避する機会は無かった。誘導は、連続して2日間行った。訓練期では、ラットが通過できるアーチ付きの仕切りをシャトルケージの中央に挿入した。方法としては、複合の条件付けされた刺激(5秒間の音及びラット収容ケージ側のランプの点灯)がケージの床への電気的刺激の付与が差し迫ったことを示す働きをする標準的なシャトル回避を用いた。電気刺激は、条件付けされた刺激の開始の5秒後に、5秒間与えた。電気刺激が発生する前にアーチ付きの仕切りを通ってシャトルケージの反対側に入ることが、試験の終了をもたらした(回避反応)。もし電気刺激が送られた場合は、ケージの反対側に入ることは、電気的刺激及び条件付けされた刺激の終了をもたらした(逃避)。30秒の試験間隔を採用した。50試験から成る40分間の回避訓練セッションは、最終誘導セッション後48時間に開始し、連続した2日に行った。
【0108】
薬剤投与及び準備
すべての化合物の投与量は、遊離塩基として表示した。イミプラミン及び化合物Aは、蒸留脱イオン水に溶解し、1mL/kg体重の量を経口で投与した。薬剤は、コンディショニング及び訓練セッションの直後及び最初の注射後約7〜8時間に、並びにコンディショニング及び訓練が行われなかった場合は試験の中間の日に投与した。試験2では、回避訓練を行う30分前に、イミプラミンを投与したのに対して、すべての他の状況では、薬剤は訓練の後に投与した。
【0109】
データの解析
主要な従属変数は、回避訓練の間の逃避失敗であった。また、いくつかのδオピオイドアゴニストは運動刺激を生み出すことが示されているので、運動活動の尺度となる回避訓練中の中央横断も同様に記録し、群の中で比較した。媒体対照に関わる中央横断の増加は、運動刺激が部分的に又は完全に化合物の想定される抗うつ薬の作用に関与する可能性がある事を示唆した。媒体投与群と薬剤処置群の成績を比較するためにt検定を使用した。非誘導群は、媒体処理群と比較することによって、学習性無力感が確立されたかどうかを測るために使用した。
【0110】
結果
本試験の結果を、以下に示す表4にまとめた。生理食塩水で処置され不可避電気刺激(誘導期)に曝されたラットは、50回の試験の内16(平均)で回避期における逃避に失敗した。試験の完全性は、不可避電気刺激に曝されない生理食塩水処置を受けないラット及びイミプラミンを投与したラットにおいて、逃避失敗の数が有意に少ないことによって確認した。化合物Aの3投与量は、2つの高投与量だけが生理食塩水で処置され不可避電気刺激に曝されたラットとは有意に異なったけれども、すべてが逃避失敗を減少させる傾向があった。逃避失敗の減少は、処置群のケージ内の中央横断が、生理食塩水で処置され不可避電気刺激に曝されたラットと比較して変わりないか又はむしろ僅かに減少したので、自体の運動増加によるものではなかった。
【0111】
【表4】

【0112】
結論
化合物Aは、潜在的な抗うつ作用を示す、学習性無力感試験における逃避失敗の減少を生じさせた。
【0113】
〔実施例6〕
4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩によるAMDD患者の処置
概説
ハミルトンうつ病評価基準(以後、「HRSD17」)及びハミルトン精神病的不安神経症評価基準(以後、「HAM−A」)の合計スコア及びDSM−IVに従い、そして精神疾患診断マニュアル用の構造化した臨床インタビュー、第6版、患者編(以後、「SCID−I/P」)(First MB, Spitzer RL, Gibbon M, Williams AR (2001): Structured
Clinical Interview for DSM-IV TR Axis I Disorders, Research Version, Patient Edition. New York: New York State Psychiatric Institute, Biometrics Researchを参照)によって確認された、AMDDの診断基準に適合するが精神病性特徴を持たない18歳〜65歳の男性及び女性患者に、1日2回、4週間にわたって投与する3mgの4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩(以後、化合物B)の有効性と安全性を評価するために、無作為の、二重盲検で、プラセボを対照とした、並列群の実証研究を設計した。
【0114】
より具体的には、この研究に関与する患者は、1)DSM−IVが提出した以下のうちの少なくとも1つの基準に適合する文書化された臨床診断を持つ:296.22大うつ病性障害、単一エピソード、中等度;296.23大うつ病性障害、単一エピソード、精神病性特徴が無く重症、持続期間が少なくとも1年;296.32大うつ病性障害、反復性、中等度;296.33大うつ病性障害、反復性、精神病性特徴が無く重症;及び2)HRSD17の合計スコア≧20;HAMA−Aの合計スコア≧16;そして、記載及び無作為化の両者での臨床的全体印象の重症度(以後、「CGI−S」)スコア≧4。
【0115】
HRSD17は、広く使用されているうつ病の重篤度の観察的評価基準である。(Hamilton M (1960b): A rating scale for depression. J Neurol Neurosurg Psychiatry 23:56-62を参照)。HAMDとも呼ばれるこの尺度の17項目版は、うつ病の重症度を評価するために実施される。HAMDは、精神病性特徴が無いうつ病を特徴づける個々の徴候及び症状の存在及び重篤度の両者を評価する。
【0116】
HAMAは、広く使用されている不安神経症の重篤度の観察的評価尺度である。尺度は、14の項目から成る。各項目は、0〜4の尺度で評価される。この尺度は、不安神経症の重篤度及び治療経過中の改善度を評価するために実施される。HAM−Aの合計スコアは14項目の合計であり、スコアは0〜56に及ぶ。
【0117】
ハミルトンうつ病評価尺度の不安神経症/身体化サブスケール(以後、「HRSD17(AS)」)は、HRSD17の下位尺度である。それは、HRSD17の項目10、11、12、13、15及び17由来のスコアを要因として入れる。
【0118】
SCIDI/Pは、半構造化面接である。それは精神疾患を診断する臨床医によって実施され、臨床医の診断を補助するための探測質問並びにフォローアップ質問を提供する。それには、人口統計、仕事、主訴、現病歴、既往歴、治療履歴及び現在の機能に関する情報を得るための概要が含まれる。SCIDI/Pの本体には、全部で51の精神疾患を診断するためにデザインされた9つのモジュールが含まれる。研究バージョンのモジュールは、調査の必要性、用途及び目標に合わせることができる。それは、現行並びに過去の精神障害についての項を含む。
【0119】
CGI−I/S尺度は、精神病患者における治療反応を評価する3項目の尺度である。(Guy W (1976): ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology, Revisedを参照)。施行時間は5分である。尺度は、3つの項目から成る:疾患の重症度(項目1);全体的な改善(項目2);及び有効性指数(項目3)。項目1は、正常である1から中でも病状が極めて重い7の、7点の尺度で評価する。項目2は同様に、非常に大きく改善した1から非常に悪くなった7の、7点尺度で評価する。それぞれは、更に「評価なし」の応答を含む。項目3は、「ゼロ」から「治療を上回る効果」の4点尺度で評価する。項目1及び3は、前の週の経験に基づいて評価される。項目2は、現在の治療開始からの期間から、評価される。
【0120】
CGI−S尺度は、CGI−I/S尺度の項目1疾患の重症度尺度である。
【0121】
この研究で80を無作為化するために、AMDDをもつ約96人の対象者を審査した。無作為化は、以下の2群に2:1の比率で行った:
処置群A:第1日目の朝、処置群Aのすべての患者は、3mg用量の化合物Bを受領した。第2日目に、用量を、3mgの化合物Bの1日2回受領に増加した。患者は、3mgの化合物Bの1日2回受領を、約28日間継続した;そして
処置群B:処置群Bの患者は、処置群Aが受領したカプセルの色、大きさ及び外観と一致したプラセボカプセルを受領した。投薬計画は、処置群Aの投薬計画と同一であった。
【0122】
投与量選択:げっ歯類で、平均血漿露出量≧2ng/mLを生じる化合物Bの投与量は、抗不安活性及び抗うつ活性の別々の試験で有効であることが示されている。第1相プログラム(N=96、雄性対象)で収集した化合物のヒト薬物動態データに基づくモンテカルロシミュレーション(N=1000)によって、3mgの1日2回は初期投与で96%の対象に平均血漿露出量≧2ng/mLを達成し、定常状態で対象の≧98%に増加することが推定された。
【0123】
スクリーニング期間
スクリーニング期間は、処置期間の第1日に先立つ30日までとした。すべての患者には、処置期間の第1日の少なくとも14日前に、現行の抗うつ薬処置の停止が要求した。患者は、彼らのうつ症状の悪化に基づいて、ウォッシュアウト期間中、臨床研究センター(以後、「CRC」)に入院することができた。
【0124】
処置期間
第1日〜第7日:処置期間の第1日目に、患者は、無作為化スケジュールに基づいて、化合物B(処置群A)又はプラセボ(処置群B)のいずれかを受領するために、無作為に割り付けられた。
第7日〜第28日:患者は、処置期間の中の安全性、耐容性、及び有効性の評価のために、第2、第3及び第4週の3予定来院のためにCRCに戻った。
【0125】
追跡調査
患者には、外来の期間が終了した7〜10日後に、追跡調査のために来院するよう依頼した。追跡調査の間、更なる安全性、耐容性、及び有効性の評価を行なった。
【0126】
データ解析
本研究は、経口で1日2回による3mgの化合物Bの28日の効果を、AMDDの患者における総体的うつ病の症状の改善について、プラセボと比較して評価するために設計した。主要な有効性解析は、処置を意図するサンプルの試験終点における化合物B対プラセボ群の反応率を比較した。反応性は、HRSD17又はHAM−Aの合計スコアが≧50%の低下、及び試験が完了しなかった場合は処置の第4週又は試験終点でCGI−Iスコア=1若しくは2と定義した。更に、HRSD17及びHAM−Aデータについて下記の分析を実施した:
・ベースラインからCRCを退院した日まで、ベースラインから処置の1、2、3及び4週まで、及びベースラインから追跡調査までの、HRSD17及びHAM−Aの合計スコアの変化。
・ベースラインからCRCを退院した日まで、ベースラインから処置の1、2、3及び4週まで、及びベースラインから追跡調査までの、HRSD17(A/S)及びHRSD17の項目10(不安精神病)のスコアの変化。
・抗不安反応までの時間:カプラン・マイヤーの生存率分析法を用いて、HAM−A又はHRSD17(A/S)スコアが≧50%低下の最初の評価と定義した。
・抗うつ反応までの時間:カプラン・マイヤーの生存率分析法を用いて、HRSD17合計スコアが≧50%低下の最初の評価と定義した。
【0127】
すべての統計比較は、特に断らない限り、0.05のαレベルを用いた両側検定に基づいた。一次分析のために、報告されたp値への修正はされていない。
【0128】
連続的なデータに対する記述統計には、数(n)、平均、中央値、標準偏差、最小及び最大値が含められた。カテゴリーデータに対する記述データには、n、頻度及び割合が含められた。
【0129】
有効性解析は、処置を意図する集団で実施し、そして指定しない限り、安全性解析は安全性対象集団で実施した。
【0130】
記述統計は、すべての有効性変数に対して行った。更に、連続変数に対してはANCOVAモデルを、カテゴリー変数に対してはロジスティック回帰モデルを使用した。事象に至る時間変数に対しては、コックス比例ハザードモデルを使用した。
【0131】
HRSD17、HAM−A及びCGI−I/Sを含む臨床評価を実施した。うつ症状についての情報を収集するためには、HRSD17を使用し;不安症状に関するデータを収集するためには、HAM−Aを使用し;そして、改善/病気の総合重症度に関するデータを収集するためには、CGI−I/Sを使用した。また、うつ病、不安神経症、疼痛症状及び自殺念慮に関する情報は、うつ病の症状、臨床医及び評価対象者の一覧表(以後、「IDS−C30/IDS−S30」)、うつ病不安神経症ストレス尺度(以後、「DASS42」)、23項目のケルナー(Kellner)の 身体的症状質問票(以後、「SSQ」)、並びに疼痛尺度を用いて収集した。HRSD17又はHAM−Aの合計スコア(Hamilton 1960a; Hamilton 1967)並びにCGI−I/Sのベースラインから終点までの臨床的に有意な変化を示した患者の割合は、本試験の主要有効性指標として役に立った。二次有効性評価としては、HRSD17、HAM−A、CGI−I/S、うつ病の症状、臨床医及び評価対象者の一覧表(以後、「IDS−C30/IDS−S30」)、うつ病不安神経症ストレス尺度(以後、「DASS42」)、及び疼痛尺度が挙げられる。重篤度の簡単な変更を示すことのほかに、試験の終りに、患者を反応対無反応の部類に二分するために、HRSD17合計スコアを使用した。反応者は、ベースラインから終点までのHRSD17合計スコアで、50%又はそれ以上の減少を示すあらゆる患者として定義した。寛解者は、HRSD17合計スコアが<7を示すあらゆる患者として定義した。
【0132】
IDS−C30/IDS−S30は、うつ病重篤度の30項目の観察評価指標である。この尺度を施行する推定時間は10分であった。この指標のスコアは、0〜84まで変動することができた。
【0133】
DASS42は、うつ病、不安神経症及びストレスの負の情動状態を測定する3つの自己報告尺度のセットである。高い内部整合性を有し、多様な設定で意味のある差別を生み出すために、この42項目の質問が提示された。抑圧の尺度は、神経不安、絶望、生活の切り下げ、自己非難、関心/関与の欠如、快感消失及び惰性を評価した。不安尺度は、自律神経系の覚醒、骨格筋作用、状況不安及び不安情動の主観的経験を評価した。ストレス尺度は、慢性非特異的覚醒のレベルに敏感である。それは、リラックス困難、神経の覚醒、容易に混乱/動揺、過敏/過剰反応及びせっかちを評価した。
【0134】
SSQは、陰性(17の項目)と陽性(6つの項目)体症状の両者を含む項目で構成される23項目の体性の尺度である。17の陰性体症状は次の通り:十分に空気が無い感じ、重い腕又は脚、食欲不振、強ばった頭及び首、窒息感、頭又は体の圧迫感、弱い腕又は脚、呼吸困難、体の一部の無感覚又はうずき、速い又は激しい鼓動の心拍、頭上圧迫、吐き気/胃のむかつき、腸又は胃の不調、筋肉の痛み、頭痛、痙攣、及び頭部痛。6つの陽性体症状は次の通り:健康な感じ、元気な感じ、どこも痛くない、頭又は体に不快感がない。
【0135】
典型的な疼痛尺度としては、例えば、VAS及びリッカート(Likert)の疼痛尺度が挙げられるが、これに限定されない。VAS疼痛尺度は、疼痛又は疼痛後遺症の主観的評価において患者を支援する視覚アナログ尺度である。VASは、直線(100mm)であり、その線の左端は疼痛又は症状が無いことを示し、そしてその線の右端は最悪の疼痛又は想像できる関連の症状を示した。患者は、線上の彼らが感じる疼痛/症状のところに印を付けることによって、彼らの疼痛/症状を評価した。リッカート尺度は、疼痛の程度を示すための番号がつけられた尺度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物を投与することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前述の化合物が、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物を含む化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、光学異性的に純粋な化合物が、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、光学異性的に純粋な化合物が、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前述の温血動物がヒトである方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、前述の温血動物がヒトである方法。
【請求項9】
温血動物における不安大うつ病性障害を処置する方法であって、その様な処置を必要とする上述の動物に、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前述の化合物が、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前述の化合物が、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前述の化合物が、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物、及び薬学的に許容される担体を含む方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法であって、前述の温血動物がヒトである方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、前述の温血動物がヒトである方法。
【請求項17】
不安大うつ病性障害を処置するための薬剤の製造における、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物の使用。
【請求項18】
請求項17に記載の使用であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む使用。
【請求項19】
請求項18に記載の使用であって、前述の化合物が、4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド・セスキフマル酸塩を含む使用。
【請求項20】
請求項18に記載の使用であって、前述の化合物が、少なくとも75%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む使用。
【請求項21】
請求項18に記載の使用であって、前述の化合物が、少なくとも90%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む使用。
【請求項22】
請求項18に記載の使用であって、前述の化合物が、少なくとも95%の4−{(R)−(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミドを含む光学異性的に純粋な化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む使用。
【請求項23】
不安大うつ病性障害を処置するための、4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物。
【請求項24】
不安大うつ病性障害を処置するための医薬組成物であって、治療的有効量の4−{(3−アミノフェニル)[4−(4−フルオロベンジル)ピペラジン−1−イル]メチル}−N,N−ジエチルベンズアミド若しくはそのエナンチオマー、又は薬学的に許容されるその塩、又はそれらの混合物を含む化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2011−520956(P2011−520956A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510462(P2011−510462)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050561
【国際公開番号】WO2009/142587
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】