説明

不定形耐火物用結合剤及び不定形耐火物

【課題】従来のアルミナセメントよりも、強度発現性、スラグや溶鉄などに対する高温での耐食性に優れ、施工性及び高温での安定性に優れた不定形耐火物用結合剤及び不定形耐火物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、SrAlの化学組成からなる不定形耐火物用結合剤、または、SrAlに所定量のSrAl以外の成分が配合された不定形耐火物用結合剤と、耐火骨材を配合してなることを特徴とする不定形耐火物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯炉の内張りや補修用に用いられる不定形耐火物用結合剤及びそれを用いた不定形耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プロセスをはじめとする各種高温プロセスの窯炉の内張り耐火物の結合剤には、りん酸ソーダ、けい酸ソーダ、フラン樹脂、フェノール樹脂、ピッチ、乳酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ、シリカゾル、アルミナゾル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルシリケート、アルミナセメント、水硬性アルミナなど、数多くの無機及び有機化合物が用いられている。
【0003】
近年、耐火物分野では、施工性の改善や補修のし易さ等から不定形化が進み、従来、定形煉瓦が使用されていた溶鉄や高温のスラグに接する部位にまで、不定形耐火物は広く使用されるようになってきた。
【0004】
不定形耐火物の製造では定形耐火物の製造に見られるような高圧のプレスは行われない。したがって、原料やバインダーの特性の重要性が高い。なかでも、アルミナセメント(主要構成化合物:CaO・Al,CaO・2Al,12CaO・7Al)は、樋材、取鍋材、タンディッシュ等の耐火材のバインダーとして幅広い用途で使用されている。
【0005】
さらに、CaO−Al以外の成分を含むアルミナ系のバインダーも検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、バリウムもしくはストロンチウムとアルミナを主体とする耐火性アルミナセメント製造用原料混合物が開示されている。具体的には、炭酸塩及び塩化物の混合物を適切に熱処理することで、セメント製造用の原料混合物を得るものである。
特許文献2及び特許文献3では、ストロンチウムアルミネートを結合剤とし、高温強度の大きいキャスタブル調合物が開示されている。
【0007】
非特許文献1では、CaO−SrO−Al系のセメントに、市販の高純度試薬を添加して混合・焼成して試作したものが開示されており、水を添加して硬化する性質が示されている。
【0008】
また、特許文献3では、CaO−SrO−Al組成のセメント製造用原料混合物を用いた不定形耐火物用結合剤が開示されており、CaO−Al組成の結合剤と比較して、高温での耐スラグ性が向上することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭52−148524号公報
【特許文献2】特開昭58−26079号公報
【特許文献3】特開昭56−104783号公報
【特許文献4】特開2008−290934号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】伊藤,水野,河野,鈴木:窯業協会誌,89,10,P.572−577,1981年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、鋼品質の向上が求められる中で、操業の温度等の条件は厳しくなる一方で、従来の結合剤では高温での耐食性等が不十分となりつつある。一般に使用されているCaO−Al系のアルミナセメントをはじめとする結合剤は、不定形耐火物を構成する耐火骨材成分に比べて、溶鉄やスラグ中の酸化鉄と低融物を形成しやすく、結合剤の部分から耐火物の損耗や浸潤が進んで、耐火骨材成分が有する本来の耐用性を十分に発揮できないという課題があった。
【0012】
ちなみに、特許文献1では、炭酸バリウムもしくは炭酸ストロンチウムとアルミナと前記金属の塩化物又は塩化カリウム又は塩化ナトリウムとを主体とする耐火性アルミナセメント製造用原料混合物が提供されており、これを利用したクリンカー水硬性材料の強度等が調べられているものの、圧縮強度は製造後3日及び7日では十分に発現せず、28日後でようやく最大の強度が発現している。
【0013】
しかし、通常の不定形耐火物では、1日後には乾燥・昇熱が行われ、使用環境に晒されることが多く、このような観点からは、24時間以内に最大の強度が発現していなければならない。そのため、28日後にようやく最大強度が発現するような結合剤は不定形耐火物用としては適用できない。
【0014】
また、特許文献1では、高温の溶鉄やスラグに対する耐食性については不明であり、高温での耐食性に優れた不定形耐火物へ適用するための手段は何ら示されていない。
【0015】
また、特許文献2及び特許文献3では、ストロンチウムアルミネートを結合剤とした断熱性キャスタブル調合物が提供されており、高温での強度を有する断熱材が得られているものの、窯炉の背面にライニングされる断熱用途であるため、窯炉のウェアライニングに必須の特性である高温の溶鉄やスラグに対する耐食性については不明である。断熱性キャスタブルに限らず、断熱用途以外の耐火物に対しても、その混練物の流動性、養生時間や養生強度、乾燥特性や耐爆裂性等、耐火物製造に不可欠となる特性を示唆するものは記載されていない。さらに、この特許文献2の請求項ではストロンチウムアルミネートというストロンチウムとアルミニウムからなる複合酸化物の総称で記載されており、具体的には実施例のなかで、SrO・Al、SrO・2Al、SrO・6Alの混合物が示されているのみである。また、これらのストロンチウムとアルミニウムからなる複合酸化物のなかで、結合剤として適切な化学組成や結晶子径等については記載されていない。
【0016】
また、非特許文献1ではCaO−SrO−Al系のセメントが試作され、0.3〜0.4molのSr置換量において硬化体強度が極大となることが示されているが、1000℃を超えるような高温での特性は全く開示されておらず、やはり、高温での耐食性に優れた不定形耐火物へ適用するための手段は何ら示されていない。
【0017】
以上の制約により、実際に工業化されている不定形用耐火物用結合剤は、CaO・Alを主体として、α−Alや、CaO・2Al、12CaO・7Al、及び各種添加剤を含有したアルミナセメントが用いられているのが現状である。
【0018】
ちなみに、現在、不定形耐火物用結合剤に使用されているアルミナセメントとしては、例えば、電気化学工業社製商品名「ハイアルミナセメントES」、「ハイアルミナセメントVS−2」、「ハイアルミナセメントスーパー90」、「ハイアルミナセメントスーパーG」、「ハイアルミナセメントスーパー2」、「ハイアルミナセメントスーパー」等やケルネオス社製商品名「セカール71」、「セカール80」等が挙げられるが、いずれもCaO・Alを主体として、α−AlやCaO・2Al、12CaO・7Al、及び特性に応じて少量の添加剤を配合したものである。
【0019】
従って、操業の温度等の条件は厳しくなることに対応して、高温での溶鉄やスラグに対する耐食性に優れた不定形耐火物用の結合剤の開発が強く望まれていた。
【0020】
尚、特許文献4では、CaO−SrO−Al組成のセメント製造用原料混合物を用いた結合剤を使用することにより、高温での耐スラグ性がより優れることが示されているが、結合剤が与える不定形耐火物の重要な特性である硬化強度発現性能については、従来のものと同等であり、その性能向上が望まれる。
【0021】
本発明は、従来のアルミナセメントよりもスラグや溶鉄などに対する高温での耐食性に優れ、施工性及び高温での安定性に優れる他、硬化強度発現性能に優れる不定形耐火物用結合剤及び不定形耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)SrAlの化学組成からなることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
(2)SrAlの化学組成と、SrAl以外の成分を5質量%以下含有してなることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
(3)SrAlに、Alが混合されていることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
(4)SrAlが10質量%以上60質量%以下、かつAlが40質量%以上90質量%以下となるように混合されてなることを特徴とする、(3)に記載の不定形耐火物用結合剤。
(5)SrAlが20質量%以上50質量%以下、かつAlが50質量%以上80質量%以下となるように混合されてなることを特徴とする、(3)に記載の不定形耐火物用結合剤。
(6)前記不定形耐火物用結合剤中に、分散剤及び硬化遅延剤の少なくともいずれか一方が配合されてなることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
(7)前記不定形耐火物用結合剤中のSrAlの結晶子径が40nm以上80nm以下であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
(8)前記不定形耐火物用結合剤中に、不可避的不純物として混入するSrAlの含有量が、SrAl100質量部に対して3質量部以下であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤と、粒径1μm以下の超微粉アルミナを含む耐火骨材とを配合してなることを特徴とする、不定形耐火物。
(10)前記不定形耐火物用結合剤と前記耐火骨材の合計量を100質量部とした場合に、前記不定形耐火物用結合剤を0.2質量部以上20質量部以下含有することを特徴とする、(9)に記載の不定形耐火物
(11)前記不定形耐火物用結合剤と前記耐火骨材の合計量を100質量部とした場合に、前記不定形耐火物用結合剤を0.5質量部以上12質量部以下含有することを特徴とする、(9)に記載の不定形耐火物。
(12)前記不定形耐火物に、分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤のうちの少なくともいずれか1種が添加されてなることを特徴とする、(9)に記載の不定形耐火物。
(13)前記不定形耐火物に、少なくとも硬化促進剤が添加されてなることを特徴とする、(12)に記載の不定形耐火物。
(14)前記分散剤が、ポリカルボン酸系分散剤、リン酸系分散剤、オキシカルボン酸類、メラミン系分散剤、ナフタレン系分散剤、及びリグニンスルホン酸系分散剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記硬化促進剤が、リチウム塩類及びアルミン酸塩のうちの少なくともいずれか一方であり、前記硬化遅延剤が、ホウ酸類及びケイフッ化物のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする、(12)又は(13)に記載の不定形耐火物。
(15)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤と、粒径1μm以下の超微粉アルミナを含む耐火骨材とを配合して混練した後、得られた不定形耐火物を施工することを特徴とする、不定形耐火物の施工方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】CaAlを用いた場合のCaイオンの溶出挙動の一例を示す図である。
【図2】SrO・AlとSrAlとSrAl1219との混合物を用いた場合のSrイオンの溶出挙動の一例を示す図である。
【図3】SrAlを用いた場合のSrイオンの溶出挙動の一例を示す図である。
【図4】SrAlを用いた場合のSrイオンの溶出挙動の一例を示す図である。
【図5】SrAl1219を用いた場合のSrイオンの溶出挙動の一例を示す図である。
【図6】SrAlのX線回折測定結果の一例を示す図である。
【図7】実施例で使用した評価試料の形状を示す説明図である。
【図8】実施例で使用した回転侵食炉の外観を示す説明図である。
【図9】実施例で使用した回転侵食炉の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
本発明者は、不定形耐火物中の特に超微粒子を凝結させる作用を有する水中への陽イオンの供出源としてSrAlに着目し、SrAlがスラグや溶鉄に対する耐食性に優れ、施工性や乾燥特性及び高温での安定性も向上できることを新たに見出した。
【0026】
特に、不定形耐火物の結合部、すなわち、耐火骨材粒子同士を結びつけ所定の強度の発現に寄与する部分は、アルミナセメントと、耐火骨材に含まれるアルミナ、シリカ、粘土などの超微粉原料と、各種分散剤とから構成され、超微粉の分散特性が不定形耐火物の流動性などに大きく影響する。
【0027】
不定形耐火物中に添加されたSrAlから多価イオン(Sr2+、Al3+)が溶出する。硬化遅延剤や分散剤のイオン封鎖能によって、いわゆる可使時間が得られる。その時間の間では微粉の分散状態が保たれ流動性を有するが、その限界を超えたところで凝集を開始し次第に流動性を失い、一定の形状を保持できるようになる。このような状態を凝結と呼んでいる。凝結が終わると機械的強さを増すようになり、これを硬化と呼んでいるが、凝結と硬化の境界は明確ではない。
【0028】
本発明者等は、SrAlから溶出してくるSr2+あるいはAl3+のような多価イオンによって凝縮させることによって脱枠可能な養生強度を短時間で発現することを見出した。ただし、過度にSrAlからの溶出速度が速すぎて、極短時間で多価イオンの濃度が高まると凝集が急速に進み、施工のために十分な作業時間を確保することが困難になることには留意する必要がある。さらに、本発明者等は、不定形耐火物の結合剤として最適なSrAlの結晶子径の範囲を新たに見出した。
【0029】
具体的には、SrAlから混練水中へのSrイオンが溶出する速度・溶出量と、従来のアルミナセメントの主成分であるCaAlからCaイオンが溶出する速度・溶出量を比較するために、蒸留水400g中に試料200gを投入、マグネチィックスターラーを用いて所定時間撹拌した後の溶液を抽出し、ICP(誘導結合プラズマ)で分析して、溶液中の元素量を測定した。溶液中の元素は各種のイオンの状態で存在すると仮定し、その結果、図1及び図3に示す様に、SrAlから混練水中へのSrイオンが溶出する速度・溶出量は、従来のアルミナセメントの主成分であるCaAlからCaイオンが溶出する速度・溶出量よりも遥かに上回ることを見出した。なお、参考までに、Alイオンが溶出する速度・溶出量についても、示している。
【0030】
さらに、本発明者は、図2に示した結果や以下の実施例に示す結果から、このSrAlから水中に溶出するSrイオンによって不定形耐火物を構成する骨材同士が凝集・結合して硬化・強度発現することを新たに突き止めた。このメカニズムについては、SrAlからSr2+が水中に溶出することによって、液性がアルカリ性となることによる。耐火骨材中に含まれる超微粉アルミナ(Al)は中性酸化物であるため、液性がアルカリになると水中に溶出しやすくなる。その結果、溶液中のAl3+量も上昇する。溶出量が飽和域に達すると、それ以上は溶出し難くなり、AlやSrあるいはその両方を含む水和物が析出する。これらの水和物が耐火骨材中に生成することによって結合部が形成され養生強度が発現すると推定できる。
【0031】
また、特許文献2や特許文献3の実施例に記載されている様な、SrAl、SrAl、SrAl1219の混合物(混合比率は、質量比で1:1:1)について、上記と同様の方法により、Srイオンの溶出速度・溶出量を確認した。その結果、図2に示す様に、SrAl、SrAl、SrAl1219の混合物では、SrAl単独の場合に比べて、Srイオンの溶出速度及び溶出量が、顕著に低いレベルとなることを、併せて見出した。
【0032】
この原因を確認するために、SrAlおよびSrAl1219それぞれ単独でのSrイオンの溶出速度及び溶出量を、上記と同様の方法により確認した。その結果、図3、図4に示す様に、SrAlではSrイオンの溶出速度及び溶出量がSrAlと比べて遥かに低いレベルにあること、また、図5に示す様に、SrAl1219ではさらにSrイオンの溶出速度及び溶出量が低く、硬化への寄与は低いことを見出した。
【0033】
結合剤の成分としてSrAlの他にSrAlおよびSrAl1219を含むものは、SrAlを主要成分として含むものと比べて強度発現性が劣る為、同等の不定形耐火物の強度を得る為により多くの結合剤を必要とする。また、SrAlの他にSrAlおよびSrAl1219を含む結合剤は、SrAlを主要成分として含むものと比べて不定形耐火物の流動性が低下してしまう為、同等の流動性を得る為の添加水量を多く必要とする。この影響は、強度発現性を増す為に結合剤量を増やした場合により顕著となる。
【0034】
これらの影響により、SrAlの他にSrAlおよびSrAl1219を含む結合剤は、SrAlを主要成分として含むものと同等の強度発現性を有する場合、不定形耐火物中の耐火骨材よりも融点の低い結合剤の割合が増す他、添加水量が増加し気孔率の高い硬化体組織となる為、高温での耐スラグ性が低下し、不定形耐火物の寿命が低下してしまう問題がある。また、多くの結合剤を必要とする為、原料であるストロンチウム化合物及びアルミナの使用量が増してしまう他、ストロンチウムアルミネート成分を合成する為のエネルギーの増加も生じ、製造コストの増加を招いてしまう。
【0035】
したがって、スラグや溶鉄に対する耐食性に優れ、高温で使用される窯炉の内張りの不定形耐火物用の結合剤として、その機能を十分に発現するには、SrAlを必須成分とするとともに、SrAlおよびSrAl1219等のSrAl以外の化学組成のストロンチウムアルミネートは、極力、含有させないことが重要であることがわかった。
【0036】
ちなみに、特許文献2ではストロンチウムアルミネートからの水和によって生成する3SrO・Al・6HOやAl(OH)が結合作用を有すると記載されており、確かに、長期養生後にこのような水和物による緻密な組織が形成することによる強度発現への寄与もあるものの、本発明者は、SrAlから多量に水中に溶出するSrイオンの効果の方が遥かに大きいことを見出した。
【0037】
上記の知見に基づき、本発明の第一の形態の不定形耐火物用結合剤は、SrAlの化学組成からなるものとした。
【0038】
結合剤中にSrAl以外の残部がある場合がある。例えば、SrAlの原料が均一に混合できていない状態で焼成を行った場合には、部分的にSrOとAlの成分が等モル量にならない。その際、SrAlやSrAl等が生じる場合がある。これに対しては、原料を十分に混合することで生成を抑制することが可能である。
【0039】
また、本発明においては、SrAlやSrAl1219等のSrAl以外のストロンチウムアルミネートの化学組成のものは、含有させないことを基本としているが、製造時に不可避的に生成することがある。但し、製造時に不可避的に生成するSrAlやSrAl1219等のSrAl以外のストロンチウムアルミネートの化学組成については、通常は、1質量%以下程度の少量なので、この程度であれば、本発明の効果に影響がないため、本発明の範囲内とする。
【0040】
その他に、原料を均一に混合して製造した場合でもSrAlに不可避的な残部がある場合があり、その残部の組成としては、Alが代表的であるが、その他には、SiO,TiO,Fe,MgO、SrO等が存在することが例示できる。これらが本発明の結合剤中に入る経路としては、使用原料中に予め含まれている場合や結合剤原料及び製造品の粉砕装置、輸送装置及び焼成装置等の製造工程からのコンタミネーションが考えられる。
【0041】
工業的に使用される原料の適用及び製造工程の管理、適正化を行うことで、上記の不純物の含有量は、本発明の効果に影響が無い程度に低減することができる。その量はそれぞれの物質の酸化物換算した化学成分量の合計で、本発明の結合剤全体の質量に対して5質量%以内であることが望ましい。5質量%より大きいと、結合剤を使用した不定形耐火物の強度発現性及び耐食性が低下する等の性能低下が生じる場合がある。
【0042】
本発明の不定形耐火物用結合剤の別の形態として、SrAlが水と反応して硬化体となった際に、硬化体の強度や耐火度をより高めることが要求される場合は、SrAlにAlを混合した形態、すなわち、SrAlとAlの両方が配合されてなる結合剤としても良い。それぞれの好適な結合剤中の含有量は、SrAlが10質量%以上60質量%以下、かつ配合されたAlが40質量%以上90質量%以下であることが好ましい。SrAlとAlの両方が配合されてなる結合剤は、両者が十分に混合されて成分濃度が均一化されていることが望ましい。
【0043】
SrAl含有量が10質量%未満では、不定形耐火物の耐火骨材の成分や粒度分布によっては、十分な硬化強度が発現されにくくなる場合があるためである。一方、SrAl含有量が60質量%超では、相対的にAlの配合量が低下するため、硬化体の強度や耐火度を十分に高めることができない場合があるためである。
【0044】
一般的に流し込み施工を行う不定形耐火物における結合剤の量は、かつては10〜30質量%程度であったが、最近では10質量%以下まで低減されたものが主流である。
【0045】
結合剤中のSrAl含有量が10質量%未満であっても、結合剤そのものの添加量を増やし、不定形耐火物中のSr量を高くすれば、確かに結合剤として機能し、不定形耐火物を得ることができる。しかしながら、耐火骨材は粒度の幅が結合剤のそれに比べるとはるかに広く、耐火骨材と結合剤を混合した際の均一度は結合剤同士(SrAlとAl)を混合した時の均一度に比べて劣ることが多い。従来のCaAlや今回のSrAlのような水硬性成分とアルミナAlを予め均一に混合させることで、耐火性骨材等と共に混合し不定形耐火物を製造した際に、より均一に水硬性成分を分散させることができる。その結果、硬化時の水和生成物の分布状態や加熱・焼成後に生成されるCA,SrA,CAやSrAあるいはそれらの固溶体の分布が均一となり、不定形耐火物の品質の安定化を図ることが可能になる。したがって、本発明においても、事前にSrAlをAlと混合するほうが好ましい。
【0046】
また、配合させるAlが40質量%以上であると、硬化体の強度や耐火度を十分に高めることができるため好ましい。但し、Alを90質量%超配合させた場合では、SrAlの含有量が相対的に少なくなり、均一に硬化させにくくなる場合があるため、Alの配合量は90質量%以下が好ましい。尚、不可避的な残部がある場合については、SrAlの化学組成からなる場合と同様である。
【0047】
本発明の不定形耐火物用結合剤では、水と混合した際に2価の陽イオンであるSrイオンの溶出速度が過度に大きくなることで、結合剤や耐火骨材粒子の凝集が起こりやすくなり、不定形耐火物の作業性を低下させる場合がある。この為、不定形耐火物の骨材の配合量及び添加水量によっては、施工に必要な作業時間が確保できない場合がある。これを改善する為に、本発明の不定形耐火物用結合剤には、分散剤や硬化遅延剤の添加を行うことが好ましい。
【0048】
分散剤の添加により、結合剤や耐火骨材の粒子が凝集するのを防ぐ他、硬化遅延剤により結合剤の水への溶解を抑制したり、溶出したイオンの封鎖を行うことで、不定形耐火物の作業性の低下を改善することができる。
【0049】
分散剤及び硬化遅延剤は、結合剤中に混合し均一化して使用することが好ましい。これは、結合剤中の成分と添加剤を予め均一に混合させることで、耐火性骨材等と共に混合し不定形耐火物を製造した際に、より均一に結合剤成分、添加剤と骨材を分散させることができ、品質の安定化を図ることができる為である。また、分散剤及び硬化遅延剤を結合剤中に加えずに、不定形耐火物を製造する際に結合材及び耐火骨材等と共に添加し混合して使用することも可能であり、前述したいずれの方法でも構わない。
【0050】
本発明で使用可能な分散剤としては、一般的に市販されているセメント用分散剤(減水剤)が使用でき、リン酸系分散剤、オキシカルボン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミン系分散剤、ナフタレン系分散剤、及びリグニン系分散剤の中から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0051】
本発明に係るオキシカルボン酸類とは、オキシカルボン酸又はその塩である。具体的には、オキシカルボン酸類として、例えば、クエン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸及びグルコン酸等のオキシカルボン酸、並びにその塩が挙げられるが、これらのうち、クエン酸及び/又はそのアルカリ金属塩が好ましく、中でもクエン酸ナトリウムの使用が好ましい。オキシカルボン酸類の粒度は、セメントと混和した際、水に溶解しやすいように、細かいほど好ましく、100メッシュ以下、特に200メッシュ以下が好ましい。
【0052】
本発明に係るポリカルボン酸系分散剤としては、ポリイタコン酸類、ポリアクリル酸類、ポリメタクリル酸類の他、アクリル酸(メタクリル酸)系及びマレイン酸系の共重合体、それら重合体にエチレンオキサイドのグラフト鎖を付加させたもの等が挙げられる。
【0053】
メラミン系分散剤としては、スルホン化メラミン高縮合物や変性メチロールメラミン縮合物を主成分として含むものを使用することができる。
【0054】
ナフタレン系分散剤としては、(ポリ)アルキルアリルスルホン酸又はその塩やアルキルナフタレンスルホン酸又はその塩を主成分として含むものを使用することができる。
【0055】
リグニン系分散剤としては、リグニンスルホン酸又はそのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等が挙げられ、入手しやすさからナトリウム塩の使用が好ましい。
【0056】
これらの中で、ポリカルボン酸系分散剤の分散性能が高く、他の種類の分散剤と比較して少ない添加量で不定形耐火物の作業性を確保することが出来る為、ポリカルボン酸系分散剤の使用が特に好ましい。
【0057】
また、本発明では、不定形耐火物の可使時間延長効果を有する面から、硬化遅延剤を使用することが好ましい。本発明で使用する硬化遅延剤としては、アルミナセメントに通常使用されるものであり、具体的には、ホウ酸類、ケイフッ化物及び糖類からなる群より選ばれた1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0058】
ホウ酸類は、ホウ酸及びそのアルカリ塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等があるが、そのうち、硬化遅延作用の強いホウ酸の使用が好ましい。ホウ酸類の粒度は、流し込み用不定形耐火物に混練した際、水に溶解し易いように小さい程好ましい。また、ホウ酸類の純度は特に限定されるものではないが、現在、工業的に精製されているものの使用が可能である。ホウ酸類の粒度はアルミナセメントと混和した際、水に溶解しやすいように、細かい程好ましく、100メッシュ以下が好ましく、200メッシュ以下がより好ましい。
【0059】
ケイフッ化物としては、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、及びケイフッ化マグネシウム等の使用が好ましく、これらのうち、ケイフッ化ナトリウムの使用が硬化遅延作用が強いので特に好ましい。ケイフッ化物の粒度は、アルミナセメントと混和した際、水に溶解しやすいように、細かい程好ましく、100メッシュ以下が好ましく、200メッシュ以下がより好ましい。ケイフッ化物の純度は特に限定されるものではないが、現在、工業的に精製されているものの使用が可能であって、目的とするケイフッ化物の純度が80質量%程度以上のものの使用が好ましい。
【0060】
糖類としては、多価アルコールのアルデヒド、ケトン、並びに、酸や多価アルコール自体及びそれらの誘導体や置換体であり、具体的にはグルコース、フルクトース、デキストリン、及びショ糖等が挙げられる。
【0061】
本発明の分散剤及び硬化遅延剤としては、粉体及び液体のいずれも使用可能であり、粉体の場合は結合剤と予め混合することが可能である。液体の場合は、本発明の結合剤を用いた不定形耐火物を水と混合する際に添加し使用することができる。どちらを用いた場合でも目的の効果を発現することができる。
【0062】
分散剤及び/又は遅延剤の種類の組み合わせは、結合剤の成分や数量、耐火骨材の種類や物性及び使用時の温度等の条件によって適宜選択できるもので、特に限定されるものではなく、材料配合に合わせて組み合わせを変えることが可能である。分散剤及び硬化遅延剤の使用量は、不定形耐火物の良好な作業性が得られる面から、結合剤100質量部に対して0.2〜10質量部の添加が好ましい。ここで、分散剤及び硬化調整剤が液体の場合は、溶媒等を除いた有効成分量で添加量を定める。
【0063】
一般に不定形耐火物の可使時間、硬化時間は、材料の保管温度、貯蔵時間、ミキサーの種類や回転速度、水温、水質、気温等の影響を受けやすく、適切な作業時間と硬化時間を一定の範囲内に保つために添加材を配合している。添加剤は可使時間や硬化時間の他に、流動性や減水性の改善など多面的な特性の改善の役割がある。多くの分散剤、硬化遅延剤や硬化促進剤を各々単独で使用した場合、流動性や可使時間、硬化時間などの特性のバランスが取りにくいため、実機での施工においては、2種類以上の添加剤を併用して使う場合が多い。
【0064】
本発明の不定形耐火物用結合剤を使用して実際の不定形耐火物を製造する場合、結合剤と耐火骨材の配合比率は、特に規定するものではなく、任意の配合比率であっても、その効果があることを確認している。
【0065】
但し、本発明の不定形耐火物用結合剤を使用して実際の不定形耐火物を製造する場合、結合剤と耐火骨材の配合比率は、結合剤と耐火骨材の合計量を100質量部とした場合に、結合剤を0.2質量部以上20質量部以下と、さらに好ましくは0.5質量部以上12質量部以下とすることが推奨される。また、結合剤中のSrAl含有量によっても最適な結合剤添加量は変わるものである。
【0066】
この理由は、0.2質量部未満では、結合が不十分で結合剤が硬化した後の強度が不十分な場合があるためである。また、20質量部を超えると、結合剤の水和や脱水過程での体積変化等が不定形耐火物全体に影響することがあり、亀裂等が発生する場合があるためである。
【0067】
不定形耐火物用の耐火骨材としては、電融アルミナ、電融ボーキサイト、焼結アルミナ、仮焼アルミナ、電融ムライト、合成ムライト、溶融シリカ、電融ジルコニア、電融ジルコニアムライト、ジルコン、マグネシアクリンカー、電融マグネシア、電融マグクロ、焼結スピネル、電融スピネル、窒化珪素、炭化珪素、鱗状黒鉛、土状黒鉛、シリマナイト、カイアナイト、アンダルサイト、ろう石、ばん土頁岩、ドロマイトクリンカー、けい石、粘度、シャモット、石灰、クロム、溶融石英、カルシウムアルミネート、カルシウムシリケート、シリカフラワー等が使用可能である。これらの一種でも二種以上の組み合わせでも構わない。
【0068】
本発明の結合剤を不定形耐火物の結合剤に用いる場合、施工する際の水または水含有溶媒の量は特に規定するものではない。但し、骨材の粒度分布や分散剤の種類・量にも依存するが、概ね耐火骨材に対して外掛けで2〜10質量%程度が好適である。
【0069】
2質量%よりも少ないと硬化させにくくなるためである。また、10質量%よりも多いと硬化組織形成に関わる量が相対的に高くなり、硬化反応中の体積変化等が耐火物の品質に悪影響を与え易くなるためである。
【0070】
また、本発明の結合剤を不定形耐火物の結合剤に用いる場合、気温や湿度に応じて、水和・硬化反応の速度を適性に制御するために、不定形耐火物中又はそれに水を加えて混練りする際に分散剤や硬化調整剤を加えることが好ましい。
【0071】
分散剤としては、炭酸ソーダ、炭酸水素ソーダ等の炭酸塩、クエン酸やクエン酸ソーダ、酒石酸、酒石酸ソーダ等のオキシカルボン酸類、ポリアクリル酸やメタクリル酸及びその塩類や、トリポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダ等のリン酸塩類及び/又はそのアルカリ金属、アルカリ土類金属塩類などが主に使用できる。
【0072】
さらに、本発明の不定形耐火物を用いて緻密な硬化体を製造するため、水との混練時にポリカルボン酸系減水剤、リグニン系減水剤などの減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の化学混和剤が使用できる。これら化学混和剤の種類や添加量は、配合する耐火骨材の種類や量、施工温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0073】
硬化調整剤には、硬化遅延剤又は硬化促進剤を用いることができる。硬化遅延剤としては、ホウ酸、硼砂、ケイフッ化物などを用いることができる。一方、硬化促進剤としては、クエン酸リチウムや炭酸リチウムなどのリチウム塩類や消石灰などの水酸化物及びアルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩を用いることができる。
【0074】
また、ビニロンなどの有機繊維、金属アルミニウム粉、乳酸アルミニウム等の爆裂防止剤を添加し、材料の通気率を上げる方法も用いることができる。
【0075】
さらに、流動性の改善、充填性向上や焼結性向上のために、超微粉を添加することができる。このような超微粉は、例えば、シリカヒューム、コロイダルシリカ、易焼結アルミナ、非晶質シリカ、ジルコン、炭化珪素、窒化珪素、酸化クロム及び酸化チタンなどの0.01〜100μm程度の粒径の無機微粉末である。
【0076】
マグネシア等の塩基性骨材を配合する場合、マグネシアの水和膨張に伴う亀裂が発生する可能性がある。これを抑制するために、ヒュームドシリカのような表面活性の高い添加物を加えることが好ましい。
【0077】
本発明の不定形耐火物用結合剤の水硬性材料であるSrAlの製造方法としては、精製アルミナ(α−Al、Al(OH))やボーキサイト(Al原料)、ストロンチアン鉱(SrCO)や天青石(SrSO)を原料とし、目的とするSrAlの組成の結合剤のモル比となるように原料を配合し、電気炉、反射炉、平炉、縦型炉またはシャフトキルンやロータリーキルンで、1200℃以上、好ましくは1400℃以上の高温で溶融あるいは焼成する方法が挙げられる。
【0078】
これらの温度や溶融・焼成時間は炉の容積や加熱能力等の仕様によって変わるものであり、実際には、溶融・焼成後試料の生成相をX線回折測定で確認し、目的の結合剤の生成有無を確認することが重要である。
【0079】
なお、図6にSrAlのX線回折測定結果の一例を示す。
【0080】
本発明の不定形耐火物用結合剤において、SrAl合成の際に、不可避的にSrAlが生成される場合がある。このSrAlの含有量がSrAlに対して3質量部越えると、硬化時間が短くなり十分な作業時間を確保することが困難になる場合がある。そのため、3質量部以下とすることが好ましい。
【0081】
SrAlの生成を抑制する為には、原料中のSrO/Alモル比を1.05以下(SrCO/Al質量比を1.55以下)となるように調整調整し、且つ焼成時の反応性を増す為原料を微細に粉砕し、偏りの無い様に出来るだけ均一に混合することが好ましい。また、本発明のSrAlの化学組成を得る為には、原料中のSrO/Alモル比を0.95以上とすることが好ましく、0.98以上とすることがより好ましい。SrO/Alモル比が0.95より小さい場合、焼成後の水硬性材料がSrAlの他にSrAl及び/又はSrAl1219を含むものとなり、強度発現性の低下が生じる恐れがある。
【0082】
溶融あるいは焼成前に、これらの原料が粉砕機で50%平均径が0.5〜100μm程度まで粉砕されていることが好ましい。これよりも粗大な粒子を含むと、未反応の部分及びSrAlの他、SrAlおよびSrAl1219等の目的とするSrAl以外の化学組成が多数残り、発明の本来の効果が発揮されにくくなる場合があるためである。
【0083】
本発明の不定形耐火物用結合剤には、流動性の改善、充填性向上や焼結性向上のために、超微粉を添加することができる。このような超微粉は、例えば、シリカヒューム、コロイダルシリカ、易焼結アルミナ、非晶質シリカ、ジルコン、炭化珪素、窒化珪素、酸化クロム及び酸化チタンなどの0.01〜100μm程度の粒径の無機微粉末である。
【0084】
さらに、本発明の結合剤を使用する場合、特に1μm以下の超微粉量を増すことで強度発現性を向上させることが出来る。これは、結合剤より溶出した多量のSrイオンが骨材の界面に付着して凝集し強度を発現する為であると考えられ、不定形耐火物を構成する材料の粒度が細かく表面積が大きい程、強度発現性が向上する。しかし、過剰な超微粉の増量は、不定形耐火物の流動性の低下が生じ均一な施工体が得難くなる他、耐火物を乾燥及び焼結させた際の体積変化が大きくなり、微細な亀裂の発生が起こる等して耐久性の低下を引き起こす恐れがある。
【0085】
本発明の結合剤を用いた不定形耐火物における1μm以下の超微粉の添加量は、2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。1μm以下の超微粉が2質量%より小さい場合、養生強度が低下するおそれがある。一方、70質量%より大きい場合、水と混練した後の流動性の低下が生じる他、不定形耐火物を乾燥・焼結させた後の収縮量が大きくなる。その結果、内部応力が発生し微細な亀裂が生じる等して、不定形耐火物の耐久性が低下してしまうおそれがある。なお、本発明における超微粉の粒径は、二次粒子の体積平均であり、粒径測定の方法や原理等は、後述の実施例で示すもの(レーザー回折法やレーザー散乱法、あるいは沈降天秤法などの粒度分析機器による測定結果であって、50%平均径を表す。)に準ずる。
【0086】
原料の混合には、アイリッヒミキサー、ロータリードラム、コーンブレンダー、V型ブレンダー、オムニミキサー、ナウターミキサー、パン型ミキサー等の混合機で均一化することができる。
【0087】
また、溶融又は焼成後、高圧の空気や水に接触させて冷却し、均一な組織の結合剤(水硬性材料)とすることが好ましい。
【0088】
さらに、使用する原料は原料中のAl及びSrOの合計が98質量%以上の高純度のものが好ましい。ボーキサイト、ストロンチアン鉱や天青石に含まれているSiO、TiO、MgO、Fe等の不純物は高温での物性を低下させる懸念があり、極力少量であることが好ましい。
【0089】
不定形耐火物中の結合剤の含有量は、X線回折−リートベルト法による鉱物組成定量法により、不定形耐火物中のSrAl量及びα−アルミナ量を定量することで求めることができる。(ただし、不定形耐火物中の耐火骨材にアルミナが配合されている場合には、結合剤に含まれるα−アルミナの定量をすることはできない。)
【0090】
本発明の不定形耐火物の作業性を確保し、作業確保のための時間、硬化速度及び硬化体の強度を適正な範囲とするためにはSrAlの結晶子径を40nm以上80nm以下とすることが好ましい。SrAlの結晶子径が40nm未満の場合、硬化時間が早くなり、特に施工量が多いときには十分な作業時間を確保することが困難になったり、混練した後に施工するまでの間に材料の一部が硬化することに伴って流動性が低下し、施工性が低下及び施工体の品質が低下する可能性がある。また、80nmを超える場合には、施工した後の養生後の施工体の強度発現が遅くなったり、また、同一の養生時間で比較した場合に養生強度が低くなる可能性がある。この場合、養生時間の延長による生産性の低下や養生強度低下に伴う乾燥時の耐爆裂性の低下等の施工体の品質低下を招くことになる。
【0091】
なお、結晶子とは、JIS H7008で定義されているように、「多結晶体中において、完全な単結晶として存在する微小結晶の大きさ」のことをいう。また、本発明では、SrAlの結晶子径は、粉末X線回折測定により得られた2θ=28.4°前後の(−2 1 1)面の回折ピークにより半価幅を求め、Scherrer法により算出した値を用いることとする。
【0092】
具体的には、各種原料を調合し焼成法にて合成を行ったSrAlを、その平均的な評価サンプルが得られるように、焼成体の表面や内部等の各所から採取し集合及び縮分を行った後、粉砕機にて中心粒子径で10μm以下に粉砕する。これを粉末X線回折装置(例えば、日本電子社製JDX−3500)を用いて測定を行い、粉末X線回折パターン解析ソフトJADE6を用いて結晶子径の算出を行うことができる。
【0093】
X線回折装置を用いた結晶子径の測定は、例えば、X線源:CuKα、管電圧40kV、管電流300mA、ステップ角度0.02°、分光器:モノクロメーターの測定条件で2θ=15〜40°の範囲で行えばよい。また、結晶子径の解析に用いるX線回折装置由来の半価幅は、同装置同条件のもとでケイ素粉末試料を測定し、その半価幅曲線を求めて値を使用することができる。なお、後述する実施例におけるSrAlの結晶子径の測定は、上述した方法で行った。
【0094】
上記のSrAlの結晶子径を40nm以上80nm以下にする場合、例えば電気炉、シャトルキルン及びロータリーキルン等の焼成装置を用いて、原料の成型体を1200℃〜1600℃の温度で焼成することが望ましく、1400℃〜1500℃であることがより好ましい。焼成温度が1200℃より小さい場合、未反応の原料が残り易くなりSrAlの合成が出来ない場合がある。また、1600℃より大きい場合、SrAlの結晶子径が大きくなり、水と混合した際の反応性が低下して、強度発現性が低下する場合がある。1400℃〜1500℃の温度では、所定の結晶子径を得る為の焼成時間を短くすることが出来る他、過焼成による結晶子径の過剰な増加が生じ難くなる為、生産性の向上が図れ、製造時の過焼成による強度発現性低下のトラブルを防止することができる。焼成を行う時間は、各々の温度で目標の結晶子径が得られるように調整すればよく、例えば、1400℃の場合0.7〜60時間、1500℃の場合0.5〜48時間程度である。
【0095】
SrAlの結晶子径を上記の範囲外とする場合、以下の条件で製造することができる。しかし、結晶子径は原料の粒度、原料成型体製造時の水量及び成型体の大きさ等により変化する為、下記の条件にて製造できない場合もある。
【0096】
40nmより小さい結晶子径のSrAlを作製する場合は、1100〜1300℃程度の温度で0.5〜10時間程度の焼成を行うことができる。温度が1100℃より小さかったり、焼成の時間が極端に短い場合、反応が進まず未反応の原料が残り易くなる。また、80nmより大きい結晶子径のSrAlを作製する場合は、1600℃以上の温度で12時間以上の焼成を行うことで製造することができる。
【0097】
結合剤(水硬性材料)の粒度は水和反応や硬化速度に影響するため、溶融または焼成後、粉砕機にて1〜20μm程度に整粒化されることが好ましい。この粒度は、レーザー回折法やレーザー散乱法、あるいは沈降天秤法などの粒度分析機器による測定結果であって、50%平均径を表す。
【0098】
粉砕機としては、振動ミル、チューブミル、ボールミル、ローラーミル等の工業用粉砕機を用いることができる。
【0099】
また、本発明の別の形態の結合剤は、上記に記載した方法により得られたSrAlにα−アルミナ粉末を配合して製造することができる。
【0100】
α−アルミナ粉末は、Alを90質量%以上含む高純度のアルミナであり、一般的にアルミナはバイヤー法によって製造される。この方法では、まずボーキサイトを水酸化ナトリウム(NaOH)の熱溶液で250℃で洗浄する。この過程でアルミナは水酸化アルミニウム(Al(OH))に変換され、以下の化学式に示すような反応によって溶解する。
Al+2OH+3HO → 2[Al(OH)
【0101】
このとき、ボーキサイト中の他の成分は溶解せず、固体の不純物としてろ過により除去できる。次に溶液を冷却すると、溶けていた水酸化アルミニウムは白色の綿毛状固体として沈殿する。これをロータリーキルン等で1050℃以上で焼成処理すると、以下に示すような脱水が起こってアルミナが生成する。
2Al(OH)→Al+3H
【0102】
水硬性材料に配合するα−Alの比表面積によって、結合剤としての流動性が左右されるため、α−Alは、BET比表面積が0.1〜30m/g程度のものが好適である。
【0103】
このα−Alは、水硬性材料と所定の割合で配合し粉砕機で混合粉砕するか、α−Alを単独で結合剤相当の粒度まで粉砕後、同様に粉砕した水硬性材料と混合して使用することが可能である。α−Alを単独で粉砕する場合は、中心粒子径が1〜10μ程度となるように粉砕することが好ましい。本発明では、α−Alを水硬性材料とを混合粉砕した方が結合剤組成中に均一に混合され、不定形耐火物に使用した際、硬化体組織が均一となり易く、耐食性等の性能が向上する傾向がある為好ましい。
【実施例】
【0104】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0105】
水硬性材料の原料として、純度98質量%のSrCO(堺化学工業社製)と、純度99質量%の高純度α−アルミナ(日本軽金属社製)とを使用した。また、Caを含む従来のアルミナセメントを用いた例と比較するため、比較例として、純度99質量%のCaCO(宇部マテリアルズ社製)も使用した。
【0106】
また、不可避的不純物の影響を把握する為、純度99.5質量%の酸化ケイ素、酸化チタニウム、酸化マグネシウム及び第二酸化鉄の各種試薬を使用した。
【0107】
下記の表1〜11の化学組成になるように各原料を天秤で秤量し、乳鉢で混合粉砕した。混合粉砕した原料に対して、外掛けで15質量%の水を加えて混合し、得られた混合物を直径20mm程度の球状に造粒成形した後、2kg程度をアルミナ製容器に投入して、電気炉(炉容積130L)中にて大気雰囲気中で1400℃で48時間の加熱処理を行い、その後、常温まで降温し空気中で放冷後、バッチ式ボールミルにて粉砕し、実施例に示す水硬性材料を得た。
【0108】
なお、SrCO及びα−アルミナの2種の原料を用いて、SrOとAlの成分が等モル比になるように調整して上記方法で作製した水硬性材料は、不可避的不純物の影響が少なくSrAlの組成が得られている為、以後SrAlと称し、また、CaCO及びα−アルミナの2種の原料を用いて、CaOとAlの成分が等モル比になるように調整して作製した水硬性材料も同様にCaAlと称する。
【0109】
さらに、Alを配合した実施例については、得られた水硬性材料に高純度α−アルミナ(日本軽金属製)を所定の成分になるように配合し、バッチ式ボールミルを用いて混合粉砕を行い、結合剤を作製した。また、水硬性材料及びα−Alの他に、分散剤、硬化遅延剤、SrAl化学組成、SrAl1219化学組成及びSrAl化学組成を配合した結合剤を作製する場合も、各種材料を所定の成分になるように配合し、バッチ式ボールミルを用いて混合粉砕を行い、結合剤を作製した。
【0110】
この結合剤8質量部と、耐火骨材92質量部(篩い分けの粒度が1μm以下の焼結アルミナ50質量%、粒度が75μm〜5mmの電融アルミナ43質量%、マグネシア6質量%、シリカフラワー0.8質量%、ビニロン繊維0.15質量%)をオムニミキサーで1分間混合し、さらに、20℃の恒温室にてこれらの混合物100質量部に対して水6.8質量部を加えてモルタルミキサーで混合・混練を3分間行い、不定形耐火物試料を得た。
【0111】
養生後曲げ強度は、不定形耐火物試料を40×40×160mmの型枠に鋳込み、20℃恒温室内にて所定時間養生した後、JIS R2553に準拠して測定を行った。また、養生時間は、不定形耐火物に水を加えての混合開始から6、12、24及び48時間とした。
【0112】
高温でのスラグに対する耐食性の評価は回転侵食法により実施した。回転炉には、耐火物を図7の形状に切り出して試験片(耐火物1)を作製し、図8のように耐火物1を8枚内張りして組み込んだ。そのサイズは、a=67mm,b=41mm,c=48mm,d=114mmとした。また、耐火物1を8枚内張した内側には、円筒状の保護板2(略150mmφ)を組み込んだ。
【0113】
この組み込まれた耐火物1を、図9に示す様に、回転炉に設置し、耐火物1を回転させながら、回転炉の内部からバーナー3の燃焼により昇温させた。燃焼ガスとして体積比でLPG1:酸素5のものを用いた。尚、4はスラグであり、5は充填材である。
【0114】
各試験片の損耗量は、20mmおきに5点の残寸を測定し初期厚み(48mm)との差を算出して、その平均を求めた。スラグ4の組成は、CaO=50.5質量%,SiO=16.8質量%,MgO=7質量%,Al=2質量%,MnO=3.5質量%,FeO=20.2質量%として、試験温度は1600℃、25分を1チャージとしてスラグ4を500g入れ替え、合計6チャージ、2時間30分の試験を実施した。スラグ4の入れ替えは、横型ドラムを傾転させ排出する方法で行った。
【0115】
[1]SrAlの化学組成からなる結合剤を用いた不定形耐火物
本発明例1は、結合剤の成分がSrAlの化学組成からなるよう調整した水硬性材料を用いて製造した不定形耐火物を、本発明例2〜10は、使用する原料及び製造工程からの不可避的不純物のコンタミネーションの量の影響を確認する為、各種コンタミネーション成分を調合して製造した水硬性材料を用いた不定形耐火物を、比較例1〜6は各種コンタミネーション成分の調合量を増した場合の不定形耐火物を、比較例7は結合剤の成分にSrを含有しないものを使用して製造した不定形耐火物を用いて、養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行ったものである。各本発明例及び比較例の化学組成及び化学成分、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
評価結果を表1に示す。本発明例1では混練中に材料の一部が硬化した為、それ以外の部分から材料を取り出して養生を行い、曲げ強度測定及び回転浸食試験用の供試体を作製した。本発明例1〜10では、Srを含有しない比較例7よりもスラグを用いた回転侵食試験における損耗量が明らかに少なく、高温での耐スラグ性に優れることが明らかになった。
【0118】
さらに、本発明例1〜10の6、12及び24時間養生後の曲げ強度は、比較例7と比べて大きな値となり、養生強度発現性に優れることが明らかになった。特に、6時間養生後曲げ強度は比較例と比較して著しく大きく、早期の強度発現性に優れていることが確認された。
【0119】
また、比較例1〜6においては、複合酸化物であるSrAlを構成するSrO及びAl以外の成分を8.5〜15.5質量%含有させることで、養生曲げ強度の低下及びスラグを用いた回転侵食試験における損耗量の増加が生じているが、本発明例2〜10の場合は良好な強度発現性及び高温での耐スラグ性が優れており、SrO及びAl以外の成分を5質量%以下とすることで良好な特性が得られることが明らかとなった。
【0120】
[2]SrAlにAlが配合されてなる結合剤を用いた不定形耐火物
本発明例1は、結合剤の成分がすべてSrAlの化学組成からなる水硬性材料を用いて製造した不定形耐火物を、本発明例11〜19は、さらにAlが所定量配合されている結合剤を用いて製造した不定形耐火物を、比較例7〜10は結合剤の成分にSrを含有しないもの及びそれにAlが所定量配合されている結合剤を用いて製造した不定形耐火物を用いて、養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行ったものである。各本発明例及び比較例の化学組成、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
評価結果を表2に示す。本発明例1及び11〜15では混練中に材料の一部が硬化した為、それ以外の部分から材料を取り出して養生を行い、曲げ強度測定及び回転浸食試験用の供試体を作製した。本発明例1及び11〜本発明例19では、比較例1〜4よりもスラグを用いた回転侵食試験における損耗量が明らかに少なく、高温での耐スラグ性に優れることが明らかになった。
【0123】
さらに、本発明例1及び11〜19の6、12及び24時間養生後の曲げ強度は、比較例1〜4と比べて大きな値となり、養生強度発現性に優れることが明らかになった。特に、6時間養生後曲げ強度は比較例と比較して著しく大きく、早期の強度発現性に優れていることが明らかとなった。
【0124】
また、本発明例11〜19においては、Alを配合させていることにより、本発明例1と比べても、スラグを用いた回転侵食試験における損耗量をさらに少なくすることができ、高温での耐スラグ性がより優れることが明らかになった。
【0125】
その中でも、SrAlが10質量%以上60質量%以下であり、かつAlが40質量%以上90質量%以下配合されてなる結合剤を用いた場合に良好な強度発現性を有しつつ高温での耐スラグ性を高めることができ、さらにSrAlが20質量%以上50質量%以下であり、かつAlが50質量%以上80質量%以下配合されてなる結合剤を用いた場合に、より適度な強度が得られ耐スラグ性を高めることができる。
【0126】
[3]分散剤及び硬化遅延剤を含む結合剤を用いた不定形耐火物
上記の試験方法の中で、SrAl化学組成40質量部とAl60質量部を配合した結合剤を基として、SrAl化学組成、α−Al、分散剤及び/又は硬化遅延剤を所定量配合して混合粉砕を行い結合剤を作製した。加える水の量を結合剤と耐火骨材の混合物100質量部に対して6.2質量部と減じて不定形耐火物を作製し同様の試験を行った。各本発明例及び比較例の化学組成、分散剤及び硬化遅延剤の配合割合、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表3に示す。
【0127】
なお、表3中の分散剤としては、市販されている粉末ポリカルボン酸系分散剤を使用し、硬化遅延剤としては、ホウ酸(試薬1級)を200メッシュ以下に粉砕して使用した。
【0128】
【表3】

【0129】
評価結果を表3に示す。分散剤及び/又は硬化遅延剤を用いた場合、不定形耐火物への添加水量を減じたにも関わらず、何れの実施例においても混練中及び供試体作製中の材料の硬化はみられず、供試体の製造を行うことができた。また、添加水量を減じて不定形耐火物を作製した為、養生曲げ強度の増加及びスラグを用いた回転浸食試験での損耗量の低減が得られた。
【0130】
本発明例20〜28は、同様に分散剤及び/又は硬化遅延剤を添加し添加水量を減じて、結合剤の成分にSrを含有しない結合剤を用いた比較例11〜13と比べて、何れの養生時間においても曲げ強度が大きく養生強度発現性に優れることが明らかになった。特に、6時間養生後曲げ強度は比較例と比較して著しく大きく、早期の強度発現性に優れている他、スラグを用いた回転侵食試験における損耗量が明らかに少なく、高温での耐スラグ性に優れることが明らかになった。
【0131】
[4]SrAlの結晶子径を変化させた結合剤を用いた不定形耐火物
上記の試験方法の中で、水硬性材料の焼成温度を1050℃〜1600℃で変化させて所定時間の加熱処理を行い、結晶子径を調整したSrAlを作製した。また、1300℃の焼成温度を5時間保持して焼成を行った試料を作製し、特許文献2の焼成条件との比較を行った。それらのSrAl化学組成及び試料40質量部とAl60質量部を配合した結合剤を用いて製造した不定形耐火物について同様の試験を行った。配合及び焼成条件を表4に示す。
【0132】
【表4】

【0133】
評価結果は表4に示す通り、比較例14〜16では硬化が早く、不定形耐火物の混練中に作業性を失ってしまった為、強度測定及び回転浸食試験用供試体を作製することができなかった。特許文献2に記載の焼成条件に合わせて温度1300℃で5時間保持の焼成を行った比較例17においても、同様に混練中に作業性が低下した為、供試体作製時の鋳込みの不良が生じ、養生強度の低下及び回転浸食試験における損耗量が増加した。また、比較例18では6、12及び24時間養生後の曲げ強度が低く、養生強度を短時間で十分に発現することはできなかった。そのため、回転侵食試験による耐食性の評価に供することはできなかった。
【0134】
一方、本発明例29〜35では、供試体作製の為の作業性を確保することができた他、比較例18と比べて、大きな曲げ強度となった。また、同水硬性成分配合量でCaAlを配合した比較例9と比べて何れの場合も大きな曲げ強度を得られる他、スラグを用いた回転侵食試験における損耗量も少なくすることができ、強度発現性及び高温での耐スラグ性が優れることが明らかである。以上の試験結果より、本発明におけるSrAl組成の結晶子径の範囲は40〜80nmが好適となる。
【0135】
[5]SrAlの化学組成からなる成分を含有する不定形耐火物
また、上記と同様の方法により、結合剤の成分がすべてSrAlの化学組成からなる水硬性材料を得るとともに、得られた水硬性材料に高純度α−アルミナ(日本軽金属製)を所定の成分になるように混合した。
【0136】
比較例21は、結合剤の成分がすべてSrAlの化学組成からなる水硬性材料を用いて製造した不定形耐火物を、比較例19、比較例20、及び比較例22〜比較例24は、さらにAlが所定量配合されている結合剤を用いて製造した不定形耐火物を、比較例25〜28は結合剤の成分にSrを含有しないものを用いて製造した不定形耐火物の養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行ったものである。
【0137】
【表5】

【0138】
評価結果は表5に示す通り、SrAlからなる結合剤を用いた比較例19〜比較例24及びCaAlからなる結合剤を用いた比較例25〜28の6、12及び24時間養生後の曲げ強度は、本発明例1及び11〜19に比べて低く、養生強度を短時間で十分に発現することはできなかった。そのため、回転侵食試験によるスラグや溶鉄への耐食性の評価に供することはできなかった。
【0139】
[6]SrAlに、SrAl、及び/又はSrAl1219が配合された混合物を結合剤として用いた不定形耐火物
比較例29〜比較例42は、SrAlの化学組成からなるもの、及びSrAlの化学組成からなるものの混合物を結合剤に用いて製造した不定形耐火物を用いて、同様の試験を行ったものである。また、比較例43〜比較例45は、SrAlの化学組成からなるもの、及びSrAlの化学組成からなるもの、及びSrAl1219の化学組成からなるものの混合物を結合剤に用いて製造した不定形耐火物を用いて、同様の試験を行ったものである。さらに、比較例46〜49は結合剤の成分にSrを含有しない結合剤に用いて製造した不定形耐火物を用いて、同様の試験を行ったものである。何れの場合もそれぞれの組成物を所定量配合し、バッチ式ボールミルを用いて混合粉砕を行い、結合剤を作製して試験に供した。各比較例の化学組成、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表6に示す。
【0140】
【表6】

【0141】
評価結果は表6に示す通り、比較例29〜49の6、12及び24時間養生後の曲げ強度は、本発明例1及び11〜19に比べて低く、養生強度を短時間で十分に発現することはできなかった。そのため、回転侵食試験によるスラグや溶鉄への耐食性の評価に供することはできなかった。
【0142】
[7]SrAlに、SrAl及び/又はSrAl1219が配合された混合物を多量に含有する不定形耐火物
比較例50〜比較例63は、SrAlの化学組成からなるもの、及びSrAlの化学組成からなるものの混合物を結合剤に用いて製造した不定形耐火物を用いて、結合剤量を15質量%、耐火骨材を85質量%とし、作業性を得る為に添加水量を7.5質量%に増量して同様の試験を行ったものである。また、比較例64〜比較例66は、SrAlの化学組成からなるもの、及びSrAlの化学組成からなるもの、及びSrAl1219の化学組成からなるものの混合物を結合剤に用いて製造した不定形耐火物を用いて、結合剤量を20質量%、耐火骨材を85質量%とし、作業性を得る為に添加水量を7.8質量%に増量して同様の試験を行ったものである。何れの場合もそれぞれの組成物を所定量配合し、バッチ式ボールミルを用いて混合粉砕を行い、結合剤を作製して試験に供した。各比較例の化学組成、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表7に示す。
【0143】
評価結果は表7に示す通り、SrAl及びSrAlの化学組成からなるもの、SrAl及びSrAl及びSrAl1219の化学組成からなるものを含有した結合剤においても、結合剤の添加量を増すことによってSrAlの化学組成からなるものを含有した結合剤と同程度の曲げ強度を得ることができた。しかし、それらの場合のスラグを用いた回転侵食試験における損耗量は、SrAlの化学組成からなるものを含有した結合剤と比べて大きくなり、高温での耐スラグ性が劣る結果となった。
【0144】
【表7】

【0145】
次にSrAl組成の含有量による影響を検討した。
【0146】
[8]SrAlを含有する不定形耐火物
上記と同様の方法により、化学成分がすべてSrAlの化学組成からなる材料を得るとともに、得られたSrAl化学組成を粉砕し、SrAlの化学組成100質量部とAl0質量部、SrAlの化学組成40質量部とAl60質量部及びSrAlの化学組成10質量部とAl90質量部が配合されている結合剤のSrAl部に対して所定量置換添加して結合剤を作製した。何れの場合もそれぞれの組成物を所定量配合し、バッチ式ボールミルを用いて混合粉砕を行い、結合剤を作製して試験に供した。
【0147】
それぞれの結合剤を用いた場合について、養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行った。各本発明例の化学組成、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表8に示す。
【0148】
【表8】

【0149】
評価結果は表8に示す通り、比較例67及び70では不定形耐火物試料の混練中に作業性が低下してしまい、供試体型枠への鋳込みが不良となり、養生曲げ強度の低下及び回転浸食試験の損耗量が悪化した。また、比較例68及び69では不定形耐火物の混練中に、材料の硬化が生じ、供試体の作製ができず各試験を行うことができなかった。
【0150】
一方、本発明例36〜46では、SrAlを添加した結合剤において、SrAlを含まない場合と同様の優れた強度発現性と耐スラグ性を有することが明らかとなった。以上の試験結果より、SrAlの含有量をSrAlの3質量部以下とすることで、何れの結合剤の配合においても優れた特性を得ることができる。
【0151】
次に、耐火骨材と結合剤の配合比の検討を進めた。
【0152】
[9]SrAlの化学組成からなる結合剤の量を変えて用いた不定形耐火物
本発明例47〜本発明例54は、SrAlの化学組成40質量部とAl60質量部が配合されている結合剤を用いて製造した不定形耐火物において、結合剤と耐火骨材の合計を100質量部とした場合の結合剤の量を変化させ試験を行ったものである。
【0153】
それぞれの場合について、上述した内容と同様に養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行った。各本発明例の化学組成、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表9に示す。
【0154】
【表9】

【0155】
評価結果は表9に示す通り、本発明例47〜本発明例54はいずれの場合も、本発明の結合剤を用いることで、養生後曲げ強度の結果、および回転侵食試験結果のいずれも、良好な結果を得ることができた。また、比較例71では大きな養生曲げ強度を得ることができたが、耐スラグ性は劣る結果となった。これらより、本発明の結合剤の使用量は耐火骨材との合計100質量部に対して0.2〜20質量部であることが好ましい。
【0156】
ちなみに、結合剤の量が0.5〜12質量部の場合に、養生強度および耐スラグ性のバランスが優れるものとなった。
【0157】
[10]1μm以下の超微粉アルミナ量を変更した場合の不定形耐火物
本発明例A〜Fは1μm以下の超微粉アルミナ量を2〜70質量%に変更して製造した不定形耐火物を用いて、同様の試験を行ったものである。また、比較例Aは、1μm以下の超微粉アルミナ量を含まないもの、比較例Bは同アルミナを80質量%用いて製造した不定形耐火物を用いて、同様の試験を行ったものである。何れの試験もSrAlの化学組成40質量部とα−Al60質量部が配合されている結合剤を用い、1μm以下の超微粉アルミナ量が増減した分は粒度が75μm〜5mmの電融アルミナ量を調整し、アルミナの合計の質量が同じになるように不定形耐火物を作製した。尚、結合剤、マグネシア、シリカフラワー及びビニロン繊維の添加割合は変更させない。各実験例の不定形耐火物に対する1μm以下の焼結アルミナ量、75μm〜5mmの電融アルミナ量、養生後曲げ強度の測定結果および回転侵食試験結果を表10に示す。
【0158】
【表10】

【0159】
評価結果は表10に示す通り、本発明例A〜Fの養生後の曲げ強度は、何れの養生期間においても比較例Aに比べて高く、養生強度発現性が向上することが明らかとなった。また、比較例Bに比べてスラグを用いた回転侵食試験における損耗量が明らかに少なく、高温での耐スラグ性に優れることが明らかになった。このことより、本発明の結合剤を用いた不定形耐火物における1μm以下の微粉量は2〜70質量%が好適であり、5〜50質量%がより好適であることが判った。
【0160】
[11]分散剤及び/又は硬化遅延剤を添加する不定形耐火物
本発明例55〜本発明例124は、SrAlの化学組成40質量部とα−Al60質量部が配合されている結合剤を用いて、各種分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤のうちの少なくともいずれか1種を外割で所定量配合して不定形耐火物を作製し試験を行ったものである。また、比較例72〜88は結合剤の成分にSrを含有しない結合剤を用いて、分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤のうちの少なくともいずれか1種を同様に配合して、不定形耐火物を作製し試験を行ったものである。尚、分散剤及び/又は硬化遅延剤を配合した場合は、加える水の量を結合剤と耐火骨材の混合物100質量部に対して6.2質量部と減じて試験を行った。また、硬化促進剤のみを配合した場合は、通常通り6.8質量部の水を加えて試験を行った。粉体の分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤は、結合剤、耐火骨材と共にオムニミキサーで混合して使用した。液体の分散剤は、含まれる固形成分の質量を添加量とし、溶媒部の質量分を加える水量から減じて所定の水量になるよう調整を行った。また、液体分散剤は混練水と混合して使用した。
【0161】
なお、本実施例において、分散剤Aとしては、ポリカルボン酸系分散剤であるポリアクリル酸ナトリウム試薬を、分散剤Bとしては、ポリエーテル系分散剤である花王社製商品名「タイトロック」を、分散剤Cとしては、リン酸系分散剤であるトリポリリン酸ナトリウム(試薬一級)を、分散剤Dとしては、オキシカルボン酸類であるクエン酸三ナトリウム二水和物(試薬一級)を、分散剤Eとしては、メラミン系分散剤であるグレースケミカル社製商品名「FT−3S」(固形分33質量%)を、分散剤Fとしては、ナフタレン系分散剤である花王社製商品名「マイティ150」(固形分40質量%)を、分散剤Gとしては、リグニン系分散剤である日本製紙ケミカル社製商品名「バニレックスHW」を、硬化遅延剤aとしては、ホウ酸類であるホウ酸(試薬特級)を、硬化遅延剤bとしては、ケイフッ化物であるケイフッ化ナトリウム(試薬特級)を、硬化促進剤イとしては、リチウム塩類であるクエン酸リチウム(試薬一級)を、硬化促進剤ロとしては、アルミン酸塩類であるアルミン酸ナトリウム(試薬一級)を使用した。
【0162】
それぞれの場合について、上述した内容と同様に養生後曲げ強度の測定、およびスラグを用いた回転侵食試験を行った。各試験例の分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤の種類及び使用量、養生後曲げ強度の測定結果、および回転侵食試験結果を表11に示す。
【0163】
【表11】

【0164】
【表12】

【0165】
【表13】

【0166】
【表14】

【0167】
【表15】

【0168】
評価結果は表11に示す通り、分散剤及び/又は硬化遅延剤を用いた本発明例55〜90及び99〜106の場合、不定形耐火物への添加水量を減じたにも関わらず、何れの実施例においても混練中及び供試体作製中の材料の硬化はみられず、供試体の製造を行うことができた。また、添加水量を減じて不定形耐火物を作製した為、同じ結合剤を使用して分散剤及び/又は硬化遅延剤を用いない本発明例15と比較して養生曲げ強度の増加及びスラグを用いた回転浸食試験での損耗量の低減が得られた。
【0169】
硬化促進剤のみを用いた本発明例91〜98は、何れの場合も混練中に材料の一部が硬化した為、それ以外の部分から材料を取り出して養生を行い、曲げ強度測定及び回転浸食試験用の供試体を作製した。本発明例91〜98では、硬化促進剤を添加しない本発明例15よりも6、及び12時間での養生強度が増加しており、より早期強度発現性に優れることが明らかとなった。また、スラグを用いた回転侵食試験における損耗量はほぼ同等となり、優れた高温での耐スラグ性を有することが明らかになった。
【0170】
硬化促進剤を少なくとも用い、更に分散剤と硬化遅延剤の少なくともいずれか一方を用いた本発明例107〜124の場合、不定形耐火物への添加水量を減じたにも関わらず、何れの実施例においても混練中及び供試体作製中の材料の硬化はみられず、供試体の製造を行うことができた。また、硬化促進剤を用いた為、同じ結合剤、分散剤及び/又は硬化遅延剤を使用した本発明例55〜90及び99〜106と比較して、6時間及び12時間後の養生曲げ強度が増加し早期強度発現性により優れることが明らかとなった。
【0171】
本発明例55〜本発明例124は、結合剤の成分にSrを含有しない結合剤を用い、同様に分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤のうちの少なくともいずれか1種を添加して不定形耐火物を作製した比較例72〜88と比べて、何れの養生時間においても曲げ強度が大きく養生強度発現性に優れることが明らかになった。特に、6時間養生後曲げ強度は比較例と比べて著しく大きく、早期の強度発現性に優れている他、スラグを用いた回転侵食試験における損耗量が明らかに少なく、高温での耐スラグ性に優れることが明らかになった。
【0172】
このように、いずれの本発明例でも養生曲げ強度及び1600℃での耐スラグ性は、比較例よりも良好であり、養生強度発現性及び溶鉄やスラグに接触する部位での耐用性が向上することが明らかになった。
【0173】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0174】
1…耐火物(試験片)、2…保護板、3…バーナー、4…スラグ、5…充填材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
SrAlの化学組成からなることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
【請求項2】
SrAlの化学組成と、SrAl以外の成分を5質量%以下含有してなることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
【請求項3】
SrAlに、Alが混合されていることを特徴とする、不定形耐火物用結合剤。
【請求項4】
SrAlが10質量%以上60質量%以下、かつAlが40質量%以上90質量%以下となるように混合されてなることを特徴とする、請求項3に記載の不定形耐火物用結合剤。
【請求項5】
SrAlが20質量%以上50質量%以下、かつAlが50質量%以上80質量%以下となるように混合されてなることを特徴とする、請求項3に記載の不定形耐火物用結合剤。
【請求項6】
前記不定形耐火物用結合剤中に、分散剤及び硬化遅延剤の少なくともいずれか一方が配合されてなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
【請求項7】
前記不定形耐火物用結合剤中のSrAlの結晶子径が40nm以上80nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
【請求項8】
前記不定形耐火物用結合剤中に、不可避的不純物として混入するSrAlの含有量が、SrAl100質量部に対して3質量部以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤と、粒径1μm以下の超微粉アルミナを含む耐火骨材とを配合してなることを特徴とする、不定形耐火物。
【請求項10】
前記不定形耐火物用結合剤と前記耐火骨材の合計量を100質量部とした場合に、前記不定形耐火物用結合剤を0.2質量部以上20質量部以下含有することを特徴とする、請求項9に記載の不定形耐火物
【請求項11】
前記不定形耐火物用結合剤と前記耐火骨材の合計量を100質量部とした場合に、前記不定形耐火物用結合剤を0.5質量部以上12質量部以下含有することを特徴とする、請求項9に記載の不定形耐火物。
【請求項12】
前記不定形耐火物に、分散剤、硬化遅延剤及び硬化促進剤のうちの少なくともいずれか1種が添加されてなることを特徴とする、請求項9に記載の不定形耐火物。
【請求項13】
前記不定形耐火物に、少なくとも硬化促進剤が添加されてなることを特徴とする、請求項12に記載の不定形耐火物。
【請求項14】
前記分散剤が、ポリカルボン酸系分散剤、リン酸系分散剤、オキシカルボン酸類、メラミン系分散剤、ナフタレン系分散剤、及びリグニンスルホン酸系分散剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記硬化促進剤が、リチウム塩類及びアルミン酸塩のうちの少なくともいずれか一方であり、前記硬化遅延剤が、ホウ酸類及びケイフッ化物のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の不定形耐火物。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の不定形耐火物用結合剤と、粒径1μm以下の超微粉アルミナを含む耐火骨材とを配合して混練した後、得られた不定形耐火物を施工することを特徴とする、不定形耐火物の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−120843(P2010−120843A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244466(P2009−244466)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】