説明

不快な味を隠蔽した経口薬剤

【課題】不快な味を有するドネペジル塩酸塩を含有する経口薬剤組成物の不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物。また、不快な味を有するドネペジル塩酸塩を配合する経口薬剤組成物の不快な味を隠蔽する方法。
【解決手段】不快な味を有するドネペジル塩酸塩およびアルギン酸並びにその塩を含有する事により不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物。また、不快な味を有するドネペジル塩酸塩にアルギン酸並びにその塩を配合する事を特徴とする不快な味を隠蔽する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物並びに不快な味の隠蔽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不快な味を有する薬物のマスキングには多くの技術が開発されている。例えば、アルギン酸塩を加えて造粒し、アルギン酸の硬化剤溶液を噴霧する事によりなる被覆剤の製造方法(特開昭51‐076413号公報)、L‐アスパラギン酸ナトリウムおよびプラム系フレーバーもしくはシトラス系フレーバー、更にコンドロイチン硫酸ナトリウムを配合する事により、肝臓加水分解物を含有する経口液剤の不快な風味の改善方法(特開平05‐163154号公報)、イブプロフェン、増粘剤および界面活性剤の共存下で加熱処理する事により苦味を軽減した混濁液の提供方法(特開平08‐333245号公報)、非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤をアルギン酸塩の水溶液に接触させる事により不快な味を隠蔽する方法(特開平10‐114683号公報)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51‐076413号公報
【特許文献2】特開平05‐163154号公報
【特許文献3】特開平08‐333245号公報
【特許文献4】特開平10‐114683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不快な味を有する薬物のマスキングを目的として、多くの技術が検討されているが、マスキング効果が不充分である事、製造工程の複雑性等の問題があり、更なる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、不快な味を有するドネペジル塩酸塩およびアルギン酸並びにその塩を含有する不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物である。又、本発明は、不快な味を有するドネペジル塩酸塩にアルギン酸並びにその塩を配合する事を特徴とする不快な味を隠蔽する方法である。
【0006】
本発明におけるドネペジル塩酸塩は化学名(±)‐2‐[(1‐benzylpiperidin‐4‐yl)methyl]‐5,6‐dimethoxyindan‐1‐one monohydrochlorideであり、アルツハイマー型認知症の中核症状である認知機能障害の進行を抑制するアルツハイマー治療剤であるが、口に含むと激しい苦味および口腔内の痺れを呈する。
【0007】
本発明における経口薬剤組成物の剤形は、固形剤として経口的に服用される剤形を意味し、固形剤の具体的な例として顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、丸剤等を挙げる事ができる。
【0008】
本発明に係る経口薬剤組成物の投与方法は特に限定されず、薬物の性質により、食前、食後又は食間に1日1回から数回経口的に投与する事ができる。
【0009】
本発明における、ドネペジル塩酸塩とアルギン酸並びにその塩の割合は、一般に、ドネペジル塩酸塩1重量部に対し、アルギン酸並びにその塩0.1から20重量部であり、このましくは、0.5から10重量部である。本発明に係る経口薬剤組成物は、ドネペジル塩酸塩とアルギン酸並びにその塩を均一に混合する事により不快な味の隠蔽効果が得られる。又ドネペジル塩酸塩とアルギン酸並びにその塩、更には賦形剤等を混合し、水やエタノール等の溶媒で造粒する事によっても不快な味の隠蔽効果が得られる。必要に応じて溶媒中に結合剤を溶解し造粒する事によっても不快な味の隠蔽効果が得られる。
【0010】
本発明に係る不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物の製造方法は特に限定されず一般に用いられる方法による事ができる。例えば、錠剤の場合は、ドネペジル塩酸塩、アルギン酸もしくはアルギン酸塩、更に乳糖、マンニトール、デンプン、結晶セルロース等の賦形剤、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤等を混合し、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤を溶解した溶液を添加しながら、通常用いられる造粒・乾燥・打錠装置を用いて製造できる。更に、ショ糖、キシリトール、マンニトール、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン等の甘味剤、メントール、バニラエッセンス、アップルフレーバー等の矯味剤等を加える事もできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る経口薬剤組成物は、ドネペジル塩酸塩特有の苦味、痺れ等の不快な味が隠蔽されているため、非常に服用しやすいものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
不快な味を有するドネペジル塩酸塩について、充分なマスキング効果が得られ、且つ特殊な製造技術を要しない不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物の作製、並びに隠蔽する方法を実現した。
【実施例1】
【0013】
ドネペジル塩酸塩1g、アルギン酸1g、D‐マンニトール7g、軽質無水ケイ酸1gを均一に混合した後、水約2gを徐々に添加して乳鉢造粒し、乾燥後30号篩で篩過して造粒物を得た。造粒物50mg(ドネペジル塩酸塩として5mg相当量)を口に含み、苦味と痺れの程度を5段階で評価した。評価は10人で実施し、表1のとおり評価基準を設け、評価結果を平均、比較した。
【実施例2】
【0014】
実施例2
実施例1と同様の方法で、アルギン酸の代わりにアルギン酸ナトリウムを使用し評価を行った。
[比較例1]
【0015】
実施例1と同様の方法で、アルギン酸の代わりに寒天を使用し評価を行った。
[比較例2]
【0016】
実施例1と同様の方法で、アルギン酸の代わりにカルメロースナトリウム(CMC‐Na)を使用し評価を行った。
【0017】
評価基準を表1に、実施例1、2および比較例1、2の結果を表2に示した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
表2から明らかなように、アルギン酸並びにその塩を使用する事によってドネペジル塩酸塩特有の不快な苦味、痺れが抑制された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不快な味を有するドネペジル塩酸塩およびアルギン酸並びにその塩を含有する不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物。
【請求項2】
不快な味を有するドネペジル塩酸塩1重量部に対して、アルギン酸並びにその塩0.1〜20重量部を含む請求項1に記載の経口薬剤組成物。
【請求項3】
請求項1、2に記載の経口薬剤組成物において、不快な味を有するドネペジル塩酸塩にアルギン酸並びにその塩を配合する事を特徴とする不快な味の隠蔽方法。

【公開番号】特開2011−79784(P2011−79784A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234184(P2009−234184)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(398058382)日新製薬株式会社 (3)
【Fターム(参考)】