説明

不法電波源探索方法および不法電波源探索システム

【課題】不法電波源の探索を高精度かつ簡便に実現させる。
【解決手段】無線端末3は、通信の開始を試みる際に、使用する周波数帯でのキャリアセンスを実行し、周辺からの電波の受信入力があった場合には、当該受信入力の受信信号の復調処理を試み、パイロット信号等を有さず復調処理を行うことができない場合には、受信信号は不法な電波であると判断し、当該受信信号から検出した干渉情報を制御局1に送信する。また、周辺に不法な電波源が存在することになるので、当該周波数帯では、通信を行わず、他の周波数帯での通信を可能とするように無線端末の回路を切り替える。また、周辺からの受信入力がなかった場合には、当該周波数帯での干渉波は存在しないことになるので、当該周波数帯でユーザが希望する内容での通信(通話、パケット通信等)を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不法電波源探索方法および不法電波源探索システムに関する。さらに詳述すると、ソフトウェア無線機能を有する無線端末を用いた周辺の電波環境の認知により、不法電波源の情報を収集し、当該不法電波源の位置を特定する不法電波源探索方法および不法電波源探索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波利用環境保護の重要性が高まっており、増加傾向にある不法無線局の防止や取り締まり等のためには、より効率的かつ効果的な電波監視を行う必要がある。このような電波監視を行う電波監視システムとしては、現在、総務省によりデューラスシステム(DEURAS:DEtect Unlicenced RAdio Station)が実施されている。
【0003】
デューラスシステムは、各地に設置されたセンサ局やセンサ局を搭載した車両(不法無線局探索車)を、各総合通信局に設置されたセンタ局から遠隔操作することにより、センサ局で受信した電波のモニタリングを行ったり、電波発射源の方向探知を行い、不法電波源の位置を特定するものである(非特許文献1)。
【0004】
また、近年ソフトウェア無線モジュールを変更するだけで無線通信機の機能を変更し、異なった通信システムに対応できるソフトウェア無線端末の開発が進んでいる。ソフトウェア無線端末は、予め使用可能な通信システムに加えて、利用する通信システムに対応したソフトウェア無線モジュールを必要に応じてダウンロードして使用するものである。
【0005】
特許文献1には、外部からデータ信号を受ける入力部と、データ信号を機能変更データと認証表示データとに分割するデータ分割回路と、機能変更データを受けて、ソフトウェア無線端末の機能を変更するリコンフィギュラブル回路と、認証表示データを受けて、技術基準適合試験に合格したことを示す物理的な表示を電子表示する認証表示部とを備えるソフトウェア無線端末が提案されている。
【非特許文献1】総務省関東総合通信局ホームページ:電波監視システムの概要, (http://www.kanto-bt.go.jp/re/system/index.html)
【特許文献1】特開2005−260671号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、デューラスシステムでは、各地に設置されたセンサ局でしか恒常的に不法電波源の探索を行うことができないという問題がある。即ち、各地に設置されたセンサ局がカバーできるエリア内での不法電波源の探索に限られていた。また、設置されるセンサ局だけで、すべてのエリアの不法電波源の探索を行うためには、膨大な数のセンサ局を設置する必要があり、その設置費用等のコスト面から当該設置は現実的ではない。
【0007】
このため、これを補うために、センサ局を搭載した不法無線局探索車を巡回させている。しかしながら、不法無線局探索車を巡回させても、探索車の行動範囲または巡回時間によりすべてのエリアにおいて不法電波源を常時監視することはできないという問題があった。
【0008】
また、不法無線局探索車による探索精度を向上させるためには、探索車を増加することが不可欠であるが膨大なコストがかかり、経済的ではない。
【0009】
そこで、本発明はソフトウェア無線端末を用いて簡便、低コスト化を図り且つ高精度の不法電波源探索方法および不法電波源探索システムを提供することを目的とする。更に、探索した不法電波源の位置情報を表示する電波環境地図を作成すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の不法電波源探索方法は、複数の周波数帯での電波の送受信をソフトウェアの切り替えにより可能とするソフトウェア無線機能を備えた無線端末が基地局を介して制御局との情報の送受信を行う通信システムにおいて、無線端末は、通信を行う周波数帯において周辺からの電波の受信入力の有無をキャリアセンスにより検知し、受信入力が存在しない場合には、該周波数帯での通信を行うことが可能な他の通信機器との間でユーザ所望の情報の通信を開始し、受信入力が存在する場合には、該受信信号を復調処理し、該復調処理ができない場合には、受信信号を不法電波源により発信された電波によるものであると判断し、受信信号の電波強度、受信時刻及び無線端末の現在位置を干渉情報として制御局へ送信し、かつ周波数帯を、ソフトウェア無線機能により変更して他の周波数帯での通信に切り替える処理を行い、更に、制御局は、干渉情報をデータベースに記録するようにしている。
【0011】
また、請求項4に記載の不法電波源探索システムは、複数の周波数帯での電波の送受信をソフトウェアの切り替えにより可能とするソフトウェア無線機能、キャリアセンスにより周辺の電波環境の認知を行う認知部、受信信号の解析を行う解析部、受信入力があった場合に復調処理を行う復調部、現在位置を特定する位置情報を取得する位置情報取得部及び、各処理の制御を行う制御部を備えた無線端末と、無線端末との間での電波の送受信を行う基地局と、基地局との間で通信を行う制御局とを備え、制御部は、認知部により検知された通信を行う周波数帯における周辺からの電波の受信入力の有無を判断し、受信入力が存在しない場合には、周波数帯での通信可能な他の通信機器との間で通信を開始し、受信入力が存在する場合には、復調部により受信信号を復調処理ができるかどうかを判断し、該復調処理ができない場合には、受信信号を不法電波源により発信された電波によるものであると判断し、解析部により検出された受信信号の電波強度、受信時刻及び位置情報取得部から取得した無線端末の現在位置を干渉情報として制御局へ送信し、周波数帯を、ソフトウェア無線機能により変更して他の周波数帯での通信に切り替え、かつ、制御局は、無線端末から受信した干渉情報及び検出情報をデータベースに記録するものである。
【0012】
したがって、不特定多数のユーザが通信の開始を試みる際に、使用する周波数帯でのキャリアセンスを実行し、周辺からの電波の受信入力があった場合には、当該受信入力の受信信号の復調処理を試み、パイロット信号等を有さず復調処理を行うことができない場合には、受信信号は不法な電波であると判断し、当該受信信号から検出した干渉情報を制御局に送信している。また、周辺に不法な電波源が存在することになるので、当該周波数帯では、通信を行わず、他の周波数帯での通信を可能とするように無線端末の回路を切り替える。また、周辺からの受信入力がなかった場合には、当該周波数帯での干渉波は存在しないことになるので、当該周波数帯でユーザが希望する内容での通信(通話、パケット通信等)を開始している。更に、制御局は受信した干渉情報をデータベースにより一元管理するようにしている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の不法電波探索方法において、無線端末は、復調処理ができた場合に、受信信号の電波強度、受信時刻及び無線端末の現在位置を検出情報として制御局へ送信し、かつ、周波数帯での多元接続が可能な場合には、他の通信機器との間でユーザ所望の情報の通信を開始し、多元接続ができない場合には、周波数帯を、ソフトウェア無線機能により変更し、他の周波数帯での通信に切り替える処理を行い、更に、制御局は、検出情報のうち、電波強度が予め設定された閾値以上である場合に、検出情報は、不法電波源により発信された電波についての情報であると判断するようにしている。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の不法電波源探索システムにおいて、制御部は、復調処理ができた場合に、受信信号の電波強度、受信時刻及び無線端末の現在位置を検出情報として制御局へ送信し、かつ、周波数帯での多元接続が可能な場合には、他の通信機器との間の通信を開始し、多元接続ができない場合には、周波数帯を、ソフトウェア無線機能により変更し、他の周波数帯での通信に切り替え、更に、制御局は、検出情報のうち、電波強度が予め設定された閾値以上である場合に、検出情報は、不法電波源により発信された電波についての情報であると判断するものである。
【0015】
したがって、復調処理ができた場合は、適法な電波局による電波と不法な電波局による出力の大きい電波を含んでいるので、電波の検出情報を制御局に送信し、制御局は、検出情報の電波強度により不法電波源によるものか否かの判断をしている。更に、電波の検出情報を制御局に送信した後に、当該周波数帯でのタイムスロット等に空きがあり多元接続が可能かどうかを判断し、多元接続が可能な場合には、当該周波数帯でそのまま通信を開始するが、多元接続ができない場合には、当該周波数帯では、通信を行わず、他の周波数帯での通信を可能とするように無線端末の回路を切り替えている。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の不法電波探索方法において、制御局は、干渉情報及び検出情報の内で不法電波源により発信された電波についての情報についての電波強度、受信時刻及び無線端末の位置情報を、基地局毎の通信可能な範囲を示した地図情報に関連づけて不法電波源の位置を示す電波環境地図を作成し、制御局が備える電波環境地図作成装置の出力装置に表示するようにしている。
【0017】
したがって、制御局がデータベースに記録した干渉情報及び検出情報の電波強度、受信時刻及び無線端末の位置情報を、一つの基地局がカバーするエリアの地図上に、関連づけて電波環境地図を作成して、当該電波環境地図を電波環境作成装置の出力装置に表示している。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1に記載の不法電波探索方法及び請求項4に記載の不法電波源探索システムによれば、ユーザが通話やパケット通信等の通信を行うために所有する無線端末を用いて、ユーザが所望の通信を行う過程において、制御局が不法電波源についての情報を収集することが可能となる。
【0019】
これにより、専用的にセンサ局を設置することなく、不法電波源の探索を行うことが可能となる。即ち、ユーザが行う不法電波源の特定を目的としない他の通信過程において、制御局は、不法電波源の情報を収集することが可能となる。また、専用センサ局を設置する必要がないので、コストの大幅な削減を図ることができる。更に、既存の通信設備をそのまま利用することも可能であり、初期コストも抑えることができる。
【0020】
また、当該無線端末のユーザは、不特定多数存在するものであり、大量に存在すればするほど、様々な場所で不法電波源の探索が行われることとなり、従来のセンサ局ではカバーしきれなかったエリアを網羅した幅広いエリアでの不法電波源の探索を行うことが可能となる。
【0021】
また、干渉波を検出した場合に、無線端末は、周波数を切り替え、他の周波数帯での通信を行うこととしている。このため、ユーザが望んだ通信を電波障害を受けることなく高速かつ高精度で行うことができる。また、これにより周波数の利用効率も向上することができる。
【0022】
また、不法電波を探知するための不法無線局探索車等も不要となるので、コスト削減を図ることができる。更に、探索車が入っていけないような地域での不法電波源の探索も可能となる。更に、不法電波を探索するための専門の調査員等も不要となり、低コスト化を図ることができる。
【0023】
更に、無線端末において検知した電波強度等の干渉情報をデータベースで一元管理することにより、不法電波源の特定に際して干渉情報を様々な形式での利用を図ることが可能となる。
【0024】
また、請求項2に記載の不法電波源探索方法及び請求項5に記載の不法電波源探索システムによれば、制御局が受信した、復調処理ができる適法な形式の電波についての検出情報のうち、不法電波源により発信された電波のみを検出することができる。更に、多元接続が可能かどうかを判断した上で、通信の開始を決定することにより、周波数の利用効率を向上させることができる。
【0025】
また、請求項3に記載の不法電波探索方法によれば、データベースに記録された干渉情報及び検出情報の電波強度、受信情報、無線端末の位置情報から不法電波源を特定する電波環境地図を作成することができ、監視員は、不法電波源の位置を目視により簡単に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本発明の不法電波源探索方法は、不特定多数のユーザが通信の開始を試みる際に、使用する周波数帯でのキャリアセンスを実行し、周辺からの電波の受信入力があった場合には、当該受信入力の受信信号の復調処理を試み、パイロット信号等を有さず復調処理を行うことができない場合には、受信信号は不法な電波であると判断し、当該受信信号から検出した干渉情報を制御局に送信している。また、周辺に不法な電波源が存在することになるので、当該周波数帯では、通信を行わず、他の周波数帯での通信を可能とするように無線端末の回路を切り替える。また、周辺からの受信入力がなかった場合には、当該周波数帯での干渉波は存在しないことになるので、当該周波数帯でユーザが希望する内容での通信(通話、パケット通信等)を開始している。更に、制御局は受信した干渉情報をデータベースにより一元管理するようにしている。
【0028】
また、復調処理ができた場合は、適法な電波局による電波と不法な電波局による出力の大きい電波を含んでいるので、電波の検出情報を制御局に送信し、制御局は、検出情報の電波強度により不法電波源によるものか否かの判断をしている。更に、電波の検出情報を制御局に送信した後に、当該周波数帯でのタイムスロット等に空きがあり多元接続が可能かどうかを判断し、多元接続が可能な場合には、当該周波数帯でそのまま通信を開始するが、多元接続ができない場合には、当該周波数帯では、通信を行わず、他の周波数帯での通信を可能とするように無線端末の回路を切り替えている。
【0029】
本実施形態の不法電波源探索システムは、図1に示すように、基地局2との通信を行う制御局1と、無線端末3と電波の送受信を行う基地局2と、ソフトウェア無線機能を備えた無線端末3を備えるものである。また、不法電波源を符号4で示している。
【0030】
制御局1は、基地局2と光ファイバ等で有線接続され、各情報の通信を行うものである。尚、制御局1と基地局2は、無線により通信を行うものであっても良い。また、制御局1と無線端末3が直接電波の送受信可能な範囲にある場合は、基地局2を介さず直接電波の送受信を行うようにしても良い。
【0031】
制御局1は、無線端末3から送信される干渉電波の情報を記録する干渉情報データベース5を備えている。また、基地局2が設置されている位置情報及び基地局2から送信される各基地局2のエリア内で検出した通信状況を記録する基地局情報データベース7を備えている。また、各周波数帯の通信情報を記録する候補システムデータベース9を備えている。更に、無線端末3が受信した検出信号の情報を記録する検出情報データベース6を備えることが好ましい。また、無線端末3のソフトウェア無線機能の機能変更のための機能変更データを保管する機能変更データベース8を備えることが好ましい。また、各データベースの管理サーバ10を備えている。更に、制御局1は、電波環境地図を作成する電波環境地図作成装置20を備えることが好ましい。
【0032】
基地局2は、無線端末3から受信した干渉情報を、制御局1に送信する中継の役割を果たす。尚、基地局2と制御局1が無線により通信を行う場合であって、基地局2と制御局1が電波の送受信可能な距離にない場合は、他の基地局2を中継して制御局1との通信を行う。また、基地局2には、一意の基地局IDが付与されているものとし、基地局IDとそれに対応する基地局の設置位置情報との対応は、制御局1が備える基地局情報データベース7に予め記憶させておくことにより管理される。
【0033】
また、基地局2は、一定時間毎に基地局2の無線端末3との間での通信状況を制御局1に送信する。具体的には、各基地局2内の周波数帯の使用状況、空きチャネル(タイムスロット、空き符号等)等に基地局IDを付して制御局1に送信するものである。当該通信状況は、基地局情報データベース7に記録される。
【0034】
本実施形態での無線端末3の構成図の一例を図2に示す。本実施形態では、無線端末3は、ユーザインターフェース部31と、無線処理部32と、電波環境検知部33と、アンテナ部34から構成されるものであり、ユーザが他の無線通信が可能な端末との間で、通話やパケット通信を行うために携帯するものである。即ち、ユーザが携帯して移動することが可能な移動局の役割を果たすものである。尚、本実施携帯での無線端末3が、通信可能な他の無線通信が可能な端末とは、他の無線端末3に限らず、携帯電話、PHS、無線LANアクセスポイント等を含むものである。
【0035】
ユーザインターフェース部31は、無線端末3のユーザが操作可能なインターフェースを備える。インターフェース部31は特に限られるものではないが、最低限、制御局1への通信要求に対する結果が表示される表示部35、通信開始及び通信切断に用いるダイヤル、ボタン、スイッチ等により構成される操作部36を備える。
【0036】
無線処理部32は、変調部37と復調部38とからなる。変調部37は、送受信を行うデータを使用する周波数帯にて利用可能である無線方式に変換(変調)するものである。また、復調部38は、受信した無線信号を復調部においてデータに変換(復調)するものである。
【0037】
電波環境検知部33は、受信機入力解析部39とミキサ40と局部発振器41からなる。更に、受信機入力解析部39は、制御部42、記憶部43、リコンフィギュラブル回路44、認知部45、解析部46、位置情報取得部47とを備えるものである。
【0038】
制御部(コントローラ)42は、無線端末3が行う各処理の制御を行う。例えば、使用する周波数帯の制御、機能変更データをリコンフィギュラブル回路に適用する制御等を行う。
【0039】
記憶部43には、予め入力される種々のパラメータ等が記憶されている。また、各周波数帯での電波の送受信を可能とする機能変更データを含むソフトウェアが記憶されている。また、当該記憶部43には、新たな周波数帯での電波の送受信を行う必要が生じた際には、制御局1の機能変更データベース8からダウンロードされた機能変更データを含むソフトウェアが記憶される。更に、各無線端末3は、一意の無線端末IDを有し、当該無線端末IDは、予め記憶部43に記憶されている。
【0040】
リコンフィギュラブル回路44は、記憶部43に予め記憶された各周波数での通信に対応する、またはダウンロードするソフトウェアに含まれる機能変更データに基づいて、無線端末の機能を変更する。尚、リコンフィギュラブル回路44は、FPGA(Field Programmable Gate Array) やDSP(Digital Signal Processor) などから構成される。リコンフィギュラブル回路44は、必要なアルゴリズムをハードウェア回路の組み替えで構成することによって、多様なアルゴリズムに対応することが可能な低消費電力のデバイスである。
【0041】
また、本実施形態では、無線端末3と基地局2との間の電波の送受信には、予め設定される周波数帯(以下、専用チャネルという)を用いている。尚、当該専用チャネルとユーザが無線端末3を用いて通信を行う際に実際に使用する周波数帯との切り替えもソフトウェア無線機能により行うようにしても良い。したがって、記憶部43には専用チャネルでの通信を可能とする機能変更データも記憶される。尚、無線端末3と基地局2との間の電波の送受信に必ずしも制御用の専用チャネルを用いる必要はなく、一般回線チャネルであっても良い。
【0042】
認知部45は、周辺の電波環境の認知・認識を行う。このような認知機能を備えた無線端末をコグニティブ(認知)無線という。尚、本実施形態では、周波数帯を切り替える毎に、キャリアセンスを実行することで、周辺に当該周波数帯での他の信号が存在していないかのを検出を行うものである。しかしながら、周辺の電波環境の検出方法に際しては、上述した技術に限られず、その他の公知技術あるいは新規の技術を利用できることはいうまでもない。
【0043】
解析部46は、認知した受信信号の解析を行って、当該受信信号から検出情報を検出し、不法電波であるか否かの判断等を行う。尚、本実施形態では、不法電波であるか否かの判断は、受信信号に含まれるパイロット信号にあわせた同期または復調処理が可能であるかどうかにより判断することとしているが、これに限られるものではなく、その他の公知技術あるいは新規の技術を利用できることはいうまでもない。
【0044】
位置情報取得部47は、GPS(Global Positioning System)機能を備え、GPS衛星から当該無線端末3の位置情報を受信する。
【0045】
ミキサ40及び局部発振器41は、制御部42からの命令に基づいて発信及び受信する周波数帯の選択を行う。
【0046】
アンテナ部34は、複数の帯域での送受信を可能とする広帯域アンテナ、マルチバンドアンテナを用いる。これには限られず、例えばアレーアンテナを用いても良い。
【0047】
以上、本実施形態での無線端末3に構成について説明したが、無線端末3の構成はこれに限られるものではなく、ソフトウェア無線機能により複数の周波数帯を切り替えて電波の送受信が可能であり、かつ、キャリアセンスにより周辺の電波状況の認知を行うこと(以下、コグニティブ機能ともいう)ができ、更に、GPS機能等により無線端末3の現在位置の位置情報が取得可能であればよい。
【0048】
本実施形態では、無線端末3は、ソフトウェア無線機能を備えた専用のハードウェアとして構成しているが、これに限られるものではない。例えば、既存の携帯電話に上述のソフトウェア無線機能、コグニティブ機能及びGPS機能が具備されることとしても良い。また、携帯電話に限られるものではなく、無線通信可能な移動端末であればよい。例えば、PDA、データ通信カードを備えたモバイルノートパソコン等にも適用することが可能である。
【0049】
また、GPS機能を実現するソフトウェアをダウンロードするようにしても良い。即ち、GPS機能についてもソフトウェア無線機能により実現することも可能である。この場合、例えばGPSによる通信と1.9GHz帯PHS(personal handyphone system)との多重伝送も可能である。
【0050】
不法電波源4とは、不法電波を発信している電波局であって、固定電波局または移動電波局の双方を含むものである。具体的には、電波法4条に違反する電波源及び無線局をいうものとする。
【0051】
また、本実施形態では、制御局1は、次のデータベースを備えている。干渉情報データベース5には、無線端末3から基地局2を介し、制御局1に送信された干渉情報が記録される。また、検出情報データベース6には、無線端末3から送信される受信信号の検出情報が記録される。また、基地局情報データベース7には、基地局IDと予め記録される基地局2の設置位置、無線端末IDと無線端末3の現在位置情報及び各基地局2から伝送される各基地局2内の周波数帯の使用状況、空きチャネル(タイムスロット、空き符号等)等の通信状況が記録される。また、機能変更データベース8には、無線端末3のソフトウェア無線機能を変更するための機能変更データが記録されている。
【0052】
また、制御局1は、候補システムデータベース9を備えるものとする。候補システムデータベース9は、制御局1が無線端末3に提供する通信可能と解される候補システム(具体的には、周波数帯)の情報が記録されている。具体的には、各周波数帯をキーとして、リアルタイム通信が可能か否か、伝送誤り率、伝送速度、時間当たりの通信料金などを記録するものである。尚、記録する候補システムの情報はこれには限られない。
【0053】
図4(a)に本実施形態での管理サーバ10の構成の一例を示す。管理サーバ10は、ディスプレイ等の出力装置11と、キーボード、マウス等の入力装置12と、CPU13と、主記憶装置(RAM)14と、ハードディスク等の補助記憶装置15等により構成される。また、これらのハードウェア資源は例えばバス16を通じて電気的に接続される。また、入力I/F17を介して外部との通信を行う。尚、上述した干渉情報データベース5等の各種データベースは、管理サーバ10の補助記憶装置15内に構成しても、外部の記憶装置内に構成することとしても良い。
【0054】
さらに、管理サーバ10は、無線端末3に通信可能と解される複数の周波数帯の情報を提供する候補システム提供手段18と、無線端末3に各周波数帯での通信を可能とする機能変更データを提供する機能変更提供手段19とを有するものである。上記の候補システム提供手段18及び機能変更提供手段19は、CPU13で実行されるソフトウェアを管理サーバ10により実行させることにより構成でき、その実行の際に必要なデータは、RAM14にロードされる。尚、管理サーバ10の構成は一例であり、これに限られるものではない。
【0055】
上述した不法電波源探索システムを用いた不法電波源探索方法について以下述べる。
【0056】
図3のフローチャートに本発明の不法電波探索システムが行う処理の一例を示す。
【0057】
まず、無線端末3は、制御局1に対し通信要求を行う(S101)。これは、例えば操作部36に設けられる通信開始ボタンをユーザが操作することにより行われる。無線端末3からの通信要求は、専用チャネルを用いて制御局1に送信される。
【0058】
通信要求を受けた制御局1は、どのチャネルをキャリアセンスすべきかについての情報(候補システム情報)を無線端末3及び基地局2に対して返信する。以下、キャリアセンスを実行する周波数を候補システムと呼ぶ。本実施形態では、候補システム提供手段18により、現在利用可能と考えられる周波数f1〜fnを候補システムとして提示する。
【0059】
本実施形態では、候補システムは、例えば次のように提示される。先ず、ユーザは通信を開始する際に、各種の通信要求を行う。ここで、通信要求とは、例えばリアルタイムでの通信であるか否か、許容誤り率、伝送速度、予め設定されている時間単位での利用料金、提供を希望する候補システム数などから、必要に応じて選択されるものである。尚、通信要求の項目は、これには限られない。具体的には、無線端末3の表示部35に、ユーザに各種の通信要求の選択を可能にするために通信要求メニューが表示され、ユーザは、操作部36により選択、または値を入力して、各通信要求を送信する。また、通信要求を記憶部43に複数パターン記録しておき、通信要求を行うようにしても良い。
【0060】
通信要求をうけた制御部1の候補システム提供手段18は、先ず、無線端末3からの通信要求を満たす周波数帯を候補システムデータベース9から複数抽出する。次に、基地局情報データベース7に順次更新されている各基地局2から受信した当該周波数帯の使用状況と照合し、例えば、通信可能容量に対して、現在の通信量が予め設定された割合以下の周波数帯を候補システムデータベース9から複数抽出する。更に、これを候補システムとして、無線端末3に送信する。例えば、ユーザから伝送速度についての通信要求があれば、該当する通信要求及びそれに近い通信要求をいくつか候補システムとして提示するものである。
【0061】
尚、抽出の際には、既存のデータベース技術を用いればよく特に限定されるものではない。また、いくつの候補システムを提示するかについては、予め提示数を固定的に設定しておいても、通信要求に提示数を含めるようにしても良い。また、候補システムの提供方法は、これに限られるものではなく、例えば、制御局1は、予め固定的に設定された周波数を順番に提供するようにしても良い。
【0062】
また、制御局1は、各無線端末IDごとに、既に適用した機能変更データについての情報をデータベースに記録しておいても良い。これにより、各無線端末3に候補システムを提示する際に、同時に、機能変更提供手段19により、無線端末3にまだダウンロードされていない機能変更データを併せて送信することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、無線端末3に候補システムを提示する際に、基地局2から送信された空きチャネル(タイムスロット、空き符号等)の情報についても併せて送信する。
【0064】
本実施形態では、無線端末3は、制御局1から提示された周波数f1、f2、f3の候補システムでの通信が可能であって、f1からf3の順にキャリアセンスを行うものとする。即ち、無線端末3は、各周波数f1〜f3での通信を可能とするソフトウェア無線機能を備えているものとする。具体的には、各周波数帯での通信を可能とする機能変更データが記憶部43に記憶されているものである。また、各候補システムでの通信を可能とする機能変更データが記憶部43にダウンロードされていないと制御部42が判断した場合は、当該候補システムでの通信を可能とするための機能変更データを有するソフトウェアを機能変更データベース8からダウンロードするものである。尚、機能変更データのダウンロード要求があった場合は、機能変更提供手段19は、該当する機能変更データを送信する。
【0065】
本実施形態では、f1は800MHz帯携帯電話(W−CDMA等)、f2は1.9GHz帯PHS、f3は2.4GHz帯無線LAN(IEEE802.11b等)である場合を例にして説明する。尚、候補システムの周波数が、これに限られないのは勿論である。例えば、CDMA(800MHz)、IEEE802.11a(5GHz)、デジタルTV(400MHz)等の組合せでも良い。また、通信可能な周波数帯の数も特に限られるものではなく、加えてETCやGPSによる通信を可能とするようにしても良い。これらは、機能変更データベース8から機能変更データを含むソフトウェアをダウンロードすることにより新たな周波数帯域での通信を可能とするものである。
【0066】
尚、制御局1に対し、通信要求を行わないで通信を開始しても良い。例えば、無線端末3が電波の送受信が可能な複数の周波数帯に対して、予め優先順位を記憶部43に記憶させておき、当該優先順位に従って、キャリアセンスを実行するようにしても良い。また、当該優先順位を、ユーザが操作部36から操作することにより変更を可能としても良い。
【0067】
次に、制御局1から提示された候補システムの周波数f1でのキャリアセンスを行う(S102)。尚、キャリアセンス機能とは、当該周波数帯において、伝送路(無線を含む)が使用中でないかの確認を行うものであり、無線LAN等に広く用いられているものである。本実施形態では、キャリアセンス機能には、例えばCSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:衝突回避型搬送波検知多重アクセス方式)を用いることとしているが、これに限られるものではなく、その他の公知技術あるいは新規の技術を利用できることはいうまでもない。
【0068】
次に、キャリアセンスの結果を判断する。本実施形態では、予め指定された時間(以下、待機時間という)内に、無線端末3への電波の入力があったかどうか、即ち無線端末3の周辺の電波の検出があったかどうかの判断をする(S103)。ここで、キャリアセンスの待機時間は、受信信号を確認するために十分な時間を予め設定しておけばよく、特に限られるものではない。尚、本実施形態では、一秒以上としている。
【0069】
無線端末3への入力があったかどうかの判断は、制御部42が、ノイズレベル以上の受信を確認した場合に、入力があったものと判断することとしている。尚、受信した信号が、ノイズレベルかどうかの判断基準は、記憶部43に予め閾値として設定するものである。本実施形態では、例えば、−100dBmを判断基準とし、この基準を超える入力があった場合には、受信機への入力があったものとしている。尚、当該パラメータは一例であって、これに限られるものではない。
【0070】
無線端末3が受信信号を検知しない場合(S103:No)は、当該周波数帯は、無線端末3の周辺では使用されていないこととなるので、周波数f1によりユーザ所望の通信が開始される(S110)。ユーザ所望の通信とは、ここでは周波数f1(800MHz帯)を利用した情報の送受信であり、ここでは、800MHz帯携帯電話を用いた他の800MHz帯携帯電話との通話をいう。尚、制御部42は、表示部35に対して通信が可能である旨の表示を出力表示する。
【0071】
このように、キャリアセンスを行って周囲に干渉波が存在しないかどうかを確認することで、当該周波数帯で、高速に通信を行うことができる。尚、周辺に干渉波が存在しない状態とは、付近の他の無線局が当該周波数帯を使用しておらず、回線が空いていることを意味している。
【0072】
これに対し、受信入力が認められた場合(S103:Yes)は、当該受信信号の解析を行う(S104)。受信信号の解析とは、復調部38が受信信号の復調処理をし、データを受信機入力解析部39に渡す処理、及び渡されたデータから解析部46が、当該受信信号の電波強度等を検出する処理をいう。更に、図示はしないが、解析部46は、無線端末3が備えるタイマーより当該受信信号の受信時刻を検出する。尚、各無線端末3は、NTPサーバを利用して時刻同期をとるようにしても良い。また、GPSクロックにより時刻同期を取るようにしても良い。
【0073】
更に、解析部46は、位置情報取得部47から無線端末3の現在位置を検出する。以下、受信信号の電波強度、受信時刻及び現在位置を合わせて検出情報という。更に、検出情報には、無線端末3に予め付与された一意のID番号(以下、無線端末ID)や、キャリアセンスを行った周波数情報を付加することが好ましい。これにより、制御局1のデータベース管理の効率化を図ることができるからである。尚、無線端末IDには、例えばMACアドレスをID番号に用いることとができる。尚、無線端末IDは記憶部43に予め記憶されている。
【0074】
次に、解析部46は、当該受信信号の無線方式が認可されているものであるか否かの判断を行う(S105)。
【0075】
ここで、認可信号でないかどうか、即ち、無線方式そのものが認可されていないものかどうかは、例えば、復調部38が受信信号を復調することができたかどうかにより判断することができる。例えば、一般に認可された信号には同期のためのパイロット信号を含んでいるので、復調することが可能であるのに対し、認可されていない不法電波では、パイロット信号を含まず復調部38が復調を行うことができないからである。しかしながら、認可信号か否かの判断技術としては、上述した技術に限られず、その他の公知技術あるいは新規の技術を利用できることはいうまでもない。
【0076】
これにより、復調部38が受信信号の復調ができない場合(S105:No)は、キャリアセンスをおこなった周波数帯において周囲に何らかの不法電波源4が存在すると判断することができる。この場合は、当該受信信号の検出情報を干渉情報として、基地局2を介し、制御局1へ送信する(S108)。この場合は、周囲に当該周波数帯での干渉波が存在することになるので、当該周波数帯での通信は行わず、次の候補システムf2によりキャリアセンスを行うものとしている(S109)。具体的には、記憶部43に記憶されている候補システムf2(1.9GHz帯PHS)に対応する機能変更データをリコンフィギュラブル回路44に適用し、当該周波数帯での通信が可能かどうかの問い合わせを行うものである。
【0077】
一方、復調部38が受信信号の復調が可能な場合(S105:Yes)には、当該検出情報を基地局2を介し、制御局1へ送信する(S106)。
【0078】
次に、多元接続可能かどうかの判断を行う(S107)。受信入力があっても、認可信号である場合には、時間的に周波数を共有することで通信が可能である。これを本実施形態では、TDMA方式を用いることにより実現しているが、これに限られるものではなく、例えばCDMA方式等を用いても良い。
【0079】
しかしながら、使用しているユーザが多数いるなどの理由により、共有可能な時間がない場合には、通信開始に時間を要することとなるので、他の周波数帯で通信した方が良いと考えられる。尚、共有可能な時間とは、TDMA方式ではタイムスロット、CDMA方式では空き符号を意味する。したがって、本実施形態では、制御局1からの候補システムの提示の際に受信した、基地局2の空きチャネルの情報により、タイムスロットがあるかどうかの判断をし(S107)、タイムスロットがない場合は多元接続不可と判断し(S107:No)、当該周波数帯での通信は行わず、次の候補システムf2により通信を行うものとしている(S109)。これに対し、他にユーザが存在しない場合又は存在していてもタイムスロットが存在する場合等には、当該周波数f1により、当該周波数帯でユーザの所望の通信を開始するものとする(S110)。
【0080】
尚、候補システム提供手段18により提示された候補システムのすべてについて、干渉波が存在し、通信を開始できない場合には、新たに他の候補システムの提供を行うものとしている。
【0081】
以上、図3のフローチャートを用いて、本発明の不法電波源探索方法について説明した。上述したように、無線端末3が、コグニティブ機能により周辺からの受信信号を検出した場合には、干渉情報または検出情報が基地局2に送信される。
【0082】
基地局2は、干渉情報及び検出情報を受信すると、制御局1に対して、当該干渉情報及び検出情報を送信する。その際に、当該基地局2を示す一意のID(以下、基地局ID)及び各基地局2内の周波数帯の使用状況、空きチャネル等の通信状況の情報を付加する。尚、基地局IDは、図示はしないが基地局が備える記憶部に予め記憶されているものとする。
【0083】
尚、無線端末3は、制御局1と直接通信可能な距離にあれば、直接制御局1に当該干渉情報及び検出情報を送信することも可能である。また、制御局1と基地局2が無線による通信を行う場合であって、制御局1と直接電波の送受信可能な範囲にない基地局2は、他の基地局2を中継して制御局1との通信を行うものである。
【0084】
制御局1は、干渉情報データべース5に、無線端末3及び基地局2から送信された干渉情報を記録する。また、検出情報データベース6に、無線端末3及び基地局2から送信された検出情報を記録する。
【0085】
ここで、干渉情報は、認可されていない信号を受信した場合の受信信号の情報であり、すべて不法電波源4から発信されたものと考えることができる。これに対し、検出情報は信号自体は認可されたものであるので、検出情報のうち不法電波源4から発信されたものと、そうでないもの(適法なもの)の判別をすることが必要となる。
【0086】
ここで、不法電波には、パイロット信号を有していない等の無線のフォーマットが認められていないという特徴の他に、無線のフォーマットが認められていても、出力が大きすぎるという特徴が存在する。一般に、電波出力が大きすぎるものは、不法電波源4による出力である可能性が高いと考えられている。
【0087】
したがって、本実施形態では、検出情報のうち当該検出情報が不法電波源によるものであるかどうかは、制御局1が、当該周波数帯での一般的な出力以上であるかどうかにより判断することとしている。尚、当該判断基準となる閾値は、例えば、予め管理サーバ10の補助記憶装置15等に予め記憶させておくものとする。
【0088】
ここで、一般的な出力とは、例えば、携帯電話であれば2〜5W、無線LANであれば10mWなどを閾値とすることができるが、上記の値は、一例であって、選択的に設定することが可能である。当該閾値により検出情報から不法電波源4による検出情報(以下、干渉情報という)だけを抽出することが可能となる。
【0089】
尚、例えば無線端末3の解析部46で受信強度の判断をし、予め設定された一定の閾値以上の受信強度の検出情報だけを、制御局1に送信するようにしても良い。このように構成した場合は、検出情報もすべて不法電波源4から出力されたものと考えることができるので、当該検出情報は、干渉情報と考えることができる。このようにした場合は、検出情報を検出情報データベース6ではなく干渉情報データベース5に送信するようにしても良い。また、このように構成した場合には、不法電波源以外から出力された検出情報については、制御局1に送信することは不要となる。
【0090】
このように本発明の不法電波源探索システムによれば、ユーザが無線端末3により、ユーザ所望の通話やパケット通信等を行う過程において、制御局1が不法電波源4から発信されている干渉波の情報をデータベースに一元管理することが可能となる。更に、当該データベースに記憶された干渉情報を種々利用することが可能となる。
【0091】
このように、制御局1において干渉情報、検出情報等の電波環境情報を集中管理することで、各ユーザの通信要求を満足させ、最も周波数利用効率の高いチャネル割り当てを算出することができる。これにより、システム全体としての周波数利用効率が向上し、通信品質の向上に資することが可能となる。更に、同時に不法電波源に関する情報の一元管理も可能となる。
【0092】
以上述べたように、本発明の不法電波源探索方法および不法電波源探索システムによれば、不特定多数の無線端末3の使用者からの不法電波源情報が収集でき、更に干渉波の電波情報をデータベース化し、一元管理することが可能となる。尚、当該データベースには、既存のデータベース処理用のソフトウェア等を用いて、情報の選択、並び替え、抽出等を行えば良い。
【0093】
更に、制御局1は、干渉情報データベースに記憶された干渉情報から電波環境地図を作成するための電波環境地図作成装置(以下、地図作成装置ともいう)20を備えることが好ましい。尚、地図作成装置20には、パーソナルコンピュータを用いても、専用のハードウェアを用いても良い。
【0094】
図4(b)に本実施形態での地図作成装置20の構成の一例を示す。地図作成装置20は、ディスプレイ等の出力装置21と、キーボード、マウス等の入力装置22と、CPU23と、主記憶装置(RAM)24と、ハードディスク等の補助記憶装置25等により構成される。また、これらのハードウェア資源は例えばバス26を通じて電気的に接続される。また、入力I/F29を介して外部との通信を行う。
【0095】
さらに、地図作成装置20は、地図作成手段27と、地図更新手段28とを有するものである。上記の地図作成手段27及び地図更新手段28は、CPU23で実行されるソフトウェアを地図作成装置20により実行させることにより構成でき、その実行の際に必要なデータは、RAM24にロードされる。尚、地図作成装置20の構成は一例であり、これに限られるものではない。
【0096】
以下、図5のフローチャートを用いて電波環境地図作成装置20が行う処理の一例を説明する。
【0097】
先ず、干渉情報データベース5に記憶された干渉情報及び検出情報データベース6に記憶された検出情報の読み出しを行う(S201)。尚、上述のように、干渉情報はすべて不法電波源4によるものと考えられるが、検出情報は、適法な形式で出力された電波の情報である。しかしながら、検出情報には、不法電波源4から発信された出力が非常に大きい電波が含まれる。したがって、本実施形態では、先ず検出情報から不法電波源4による干渉情報だけを抽出しておくものとする。
【0098】
次に地図作成手段27は、読み出した干渉情報から電波環境地図を作成する(S202)。地図の作成方法は、公知の地図作成技術を用いて実現することができる。地図作成技術としては、以下に述べる地図作成技術に限られるものではなく、その他の公知技術あるいは新規の技術を利用できることはいうまでもない。
【0099】
本実施形態では、一つの基地局2がカバーしているエリアにつき一枚の電波環境地図を作成する。具体的には、干渉情報データベース5から、干渉情報のうち基地局IDが同一のものであり、かつ受信時間が予め設定された秒数以内(本実施形態では、10秒)のものについて抽出する。尚、一枚の電波環境地図にどの程度の時間の電波受信状況を表すかについては特に限られるものではないが、あまり多くの時間間隔を一枚の地図に表すと、不法電波源4が移動局である場合に不法電波源4の位置特定が困難になるという問題が生じる。
【0100】
電波環境地図は、例えばGIS(Geographical Information System)等によりデジタル化された地図情報上に、電波受信状況を表示することが好ましい。このようにすることにより、不法電波源が地図上のどこに存在するのかを簡単に確認することができる。
【0101】
更に、各干渉情報の無線端末3の検出位置とその電波強度を、地図上にマッピングする。本処理は、予め基地局2毎に当該基地局2がカバーするエリアの地図を補助記憶装置25に記憶させておき、地図上に電波の検出位置とその電波強度を関連づけて電波環境地図を作成し、出力装置21に表示するものである。
【0102】
具体的には、地図上に電波強度を基準とする等高線を表示する。本実施形態では、等高線を引くために、最低限必要な検出数は3とし、等高線の間隔は、最大出力を基準として、例えば10dB刻みで等高線を作成することとしている。即ち、電波強度が同じ間隔に含まれる検出位置間を結んだ等高線を表示するものである。尚、等高線の間隔は検出数等により最適な値に選択的に設定すればよい。
【0103】
次に、地図更新手段28は、作成された電波環境地図の更新を行う(S203)。本実施形態では、少なくとも10秒毎に電波環境地図の更新を行うようにしている。更新の際の処理は、作成の際の処理と同様である。また、検出結果の表示時間は最大5分としているが、これに限られるものではない。
【0104】
図6に、作成された電波環境地図のイメージ図の一例を示す。図6は、4枚の電波環境地図(フレーム1〜4で示す)を示している。このように作成された電波環境地図上では、等高線の中心に不法電波源4が存在するものと推定することができる。尚、図6では、不法電波源f1及びf2は、数フレームに渡って移動していない不法電波局であるので固定局であると推定でき、不法電波源f3はフレーム間に渡って、即ち、時間の経過と共に移動しているため、移動不法局であることがわかる。このように、不法電波局4の位置を簡易に特定することが可能となる。
【0105】
尚、本実施形態では、表示時間内に3局以上からのスキャン結果が揃わない場合は、検出結果は表示しない。この場合は、移動する不法電波源4の検出は困難であるからである。しかしながら、固定的な不法電波源4の検出には、有用であるため、検出結果及び作成した電波環境地図はすべて補助記憶装置25及び外部の記憶装置等に少なくとも一日分以上保存することが好ましい。また、過去の検出結果については、時間を指定することにより、当該時間帯での受信情報を示す電波環境地図を参照することができる。
【0106】
このように、電波環境地図作成装置20によれば、地図上に干渉情報をマッピングすることにより、電波環境地図の作成が可能となる。基地局2のサービスエリア内の無線端末3からの情報に基づいて作成されるため、より詳細なデータ取得が可能となる。また、無線端末3を近傍に多数存在させることにより、空間的に電波環境を把握することが可能となる。
【0107】
このように作成された電波環境地図は、例えば、出力装置21に表示され、監視員は不法電波源4の位置を一目で特定することができる。また、不法電波源4が移動局である場合に、その移動状況の追跡をすることが可能となる。
【0108】
上述した、表示する周波数帯、電波強度、検出結果の表示時間、更新間隔などは、すべて電波の検出環境等に応じて選択的に設定可能な閾値であり、状況に応じて最適な値を選択するようにすればよい。
【0109】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば基地局2にも無線端末3と同様の機能を備えるようにし、基地局2においても周辺の電波環境の検知及び干渉情報の制御局1への送信等を行うようにしても良い。
【0110】
尚、近い将来、携帯電話に当該ソフトウェア無線機能が標準装備されることにより、端末や基地局などの無線機に周辺の電波環境を認識・認知する機能を有するコグニティブ(認知)無線環境ができると考えられている。この場合には、本発明の不法電波源探索システムにおける無線端末を携帯電話で実現することができる。これにより、携帯電話を用いた通話、パケット通信等を行う過程で、不法電波源特定のための各情報を収集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態での不法電波源探索システムの全体図である。
【図2】無線端末3の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】不法電波探索システムが行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】(a)管理サーバの構成の一例を示す図である。(b)電波環境地図作成装置の構成の一例を示す図である。
【図5】電波環境地図作成装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】電波環境地図の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
1 制御局
2 基地局
3 無線端末
4 不法電波源
5 干渉電波データベース
6 検出情報データベース
7 基地局情報データベース
8 機能変更データベース
9 候補システムデータベース
10 管理サーバ
20 電波環境地図作成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯での電波の送受信をソフトウェアの切り替えにより可能とするソフトウェア無線機能を備えた無線端末が基地局を介して制御局との情報の送受信を行う通信システムにおいて、前記無線端末は、通信を行う周波数帯において周辺からの電波の受信入力の有無をキャリアセンスにより検知し、前記受信入力が存在しない場合には、該周波数帯での通信を行うことが可能な他の通信機器との間でユーザ所望の情報の通信を開始し、前記受信入力が存在する場合には、該受信信号を復調処理し、該復調処理ができない場合には、前記受信信号を不法電波源により発信された電波によるものであると判断し、前記受信信号の電波強度、受信時刻及び前記無線端末の現在位置を干渉情報として前記制御局へ送信し、かつ前記周波数帯を、前記ソフトウェア無線機能により変更して他の周波数帯での通信に切り替える処理を行い、更に、前記制御局は、前記干渉情報をデータベースに記録することを特徴とする不法電波源探索方法。
【請求項2】
前記無線端末は、前記復調処理ができた場合に、前記受信信号の電波強度、前記受信時刻及び前記無線端末の現在位置を検出情報として前記制御局へ送信し、かつ、前記周波数帯での多元接続が可能な場合には、前記他の通信機器との間でユーザ所望の情報の通信を開始し、前記多元接続ができない場合には、前記周波数帯を、前記ソフトウェア無線機能により変更し、他の周波数帯での通信に切り替える処理を行い、更に、前記制御局は、前記検出情報のうち、前記電波強度が予め設定された閾値以上である場合に、前記検出情報は、不法電波源により発信された電波についての情報であると判断することを特徴とする請求項1に記載の不法電波源探索方法。
【請求項3】
前記制御局は、前記干渉情報及び前記検出情報の内で不法電波源により発信された電波についての情報についての前記電波強度、前記受信時刻及び前記無線端末の位置情報を、前記基地局毎の通信可能な範囲を示した地図情報に関連づけて不法電波源の位置を示す電波環境地図を作成し、前記制御局が備える電波環境地図作成装置の出力装置に表示することを特徴とする請求項2に記載の不法電波源探索方法。
【請求項4】
複数の周波数帯での電波の送受信をソフトウェアの切り替えにより可能とするソフトウェア無線機能、キャリアセンスにより周辺の電波環境の認知を行う認知部、受信信号の解析を行う解析部、受信入力があった場合に復調処理を行う復調部、現在位置を特定する位置情報を取得する位置情報取得部及び、各処理の制御を行う制御部を備えた無線端末と、前記無線端末との間での電波の送受信を行う基地局と、前記基地局との間で通信を行う制御局とを備え、前記制御部は、前記認知部により検知された通信を行う周波数帯における周辺からの電波の受信入力の有無を判断し、前記受信入力が存在しない場合には、前記周波数帯での通信可能な他の通信機器との間で通信を開始し、前記受信入力が存在する場合には、前記復調部により受信信号を復調処理ができるかどうかを判断し、該復調処理ができない場合には、前記受信信号を不法電波源により発信された電波によるものであると判断し、前記解析部により検出された前記受信信号の電波強度、受信時刻及び前記位置情報取得部から取得した前記無線端末の現在位置を干渉情報として前記制御局へ送信し、前記周波数帯を、前記ソフトウェア無線機能により変更して他の周波数帯での通信に切り替え、かつ、前記制御局は、前記無線端末から受信した前記干渉情報及び前記検出情報をデータベースに記録することを特徴とする不法電波源探索システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記復調処理ができた場合に、前記受信信号の電波強度、前記受信時刻及び前記無線端末の現在位置を検出情報として前記制御局へ送信し、かつ、前記周波数帯での多元接続が可能な場合には、前記他の通信機器との間の通信を開始し、前記多元接続ができない場合には、前記周波数帯を、前記ソフトウェア無線機能により変更し、他の周波数帯での通信に切り替え、更に、前記制御局は、前記検出情報のうち、前記電波強度が予め設定された閾値以上である場合に、前記検出情報は、不法電波源により発信された電波についての情報であると判断することを特徴とする請求項4に記載の不法電波源探索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−312078(P2007−312078A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138815(P2006−138815)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】