説明

不活性末端基を有するポリオキサゾリン類、保護された開始基から調製されるポリオキサゾリン類及び関連化合物

本開示は、不活性化学基を用いてポリオキサゾリン重合を終結させることによって調製される新規な官能性ポリオキサゾリン誘導体を提供する。また、本開示は、オキサゾリン重合を開始でき、重合の条件に耐えることができる保護された官能基を有する新規な求電子性開始剤の合成を実証する。これらの開始剤は、上記の不活性末端ポリオキサゾリン誘導体及び活性末端基を有するその他のポリオキサゾリンを合成するのに使用される。また、本開示は、ポリオキサゾリン−脂質複合体及びこのようなポリオキサゾリン−脂質複合体を使用して調製されるリポソーム組成物を提供する。また、標的分子との複合体を調製するのに前記誘導体を使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2008年7月10日に出願された米国特許仮出願第61/079,799号の利益を主張する。
【0002】
(開示の分野)
一般に、本開示は、特定のポリオキサゾリン誘導体、かかるポリオキサゾリン誘導体の合成方法、かかるポリオキサゾリン誘導体の製造に有用な中間体化合物、並びにポリオキサゾリン誘導体と、標的分子、例えば治療薬、診断薬及び/又は標的薬との複合体に関する。具体的には、本明細書の開示は、不活性化学基で終端するポリオキサゾリン誘導体に関する。
【発明の概要】
【0003】
(背景)
重合体修飾治療薬は、現代の薬学において極めて有用であることが証明されている。重合体修飾治療薬の成功により、特に従来の重合体が有していない特性を有する重合体を提供するために、このような用途に適した重合体の範囲を拡大することが重要である。標的分子との所望の複合体を調製するのに使用できる官能性で、水溶性で、毒性のない重合体に対する要求がある。これらの治療複合体を調製するためには、高分子量及び高純度の水溶性重合体を合成することが必要であることが多い。本開示は、不活性基で終端されたホモ官能性ポリオキサゾリン化合物であって、一連の標的分子、例えば以下に限定されないが、治療、診断及び/又は標的部分に対して容易な結合を提供する、不活性基で終端されたホモ官能性ポリオキサゾリン化合物を提供する。また、本開示は、ホモ官能性であってもよいし又はホモ官能性でなくてもよく、初めて本明細書に開示された新規なポリオキサゾリン開始剤から調製される幾つかの新規ポリオキサゾリン類を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
(詳細な記述)
定義
本明細書で使用するとき、「POZ」、「POZ化合物」又は「POZ重合体」という用語は、構造−[N(COR)CHCH−(式中、Rは、それぞれの反復単位について、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され、nは3〜1000である。)を有する反復単位を含有する2−置換−2−オキサゾリンの重合体を指す;一つの実施形態において、前記の非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基は、1〜10個の炭素原子を含有し、さらに具体的な実施形態において、Rは、メチル、エチル又はn−プロピルである。
【0005】
本明細書で使用するとき、「PMOZ」という用語は、構造−[N(COCH)CHCH−を有する反復単位をもつPOZを指す。
【0006】
本明細書で使用するとき、「PEOZ」という用語は、構造−[N(COCHCH)CHCH−を有する反復単位をもつPOZを指す。
【0007】
本明細書で使用するとき、「PiPrOZ」という用語は、構造[N(COCH(CH)CHCH−を有する反復単位をもつPOZを指す。
【0008】
本明細書で使用するとき、「PnPrOZ」という用語は、構造−[N(CO(CHCHCH))CHCH−を有する反復単位をもつPOZを指す。
【0009】
本明細書で使用するとき、「M−POZ」、「M−PMOZ」、「M−PEOZ」、「M−PiPrOZ」及び「M−PnPrOZ」という用語は、開始末端の窒素がメチルに結合されている前記重合体を指す。
【0010】
本明細書で使用するとき、「POZ誘導体」又は「ポリオキサゾリン誘導体」という用語は、POZ重合体を含有する構造を指し、前記POZ重合体は、開始剤末端、停止末端(terminal end)、又は該POZ重合体のペンダント位置に少なくとも1つの活性官能基を有し、前記活性官能基は、標的分子の化学基と直接的又は間接的に結合を形成することができる。
【0011】
本明細書で使用するとき、「標的分子」という用語は、治療用途、診断用途又は標的機能を有する任意の分子を指し、前記標的分子は、POZ重合体又は本開示のPOZ誘導体の活性官能基と結合を形成することができ、例えば、以下に限定されないが、治療薬(例えば、以下に限定されないが薬剤)、診断薬、標的薬、有機小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、タンパク質、糖質、例えばヘパリン又はヒアルロン酸、あるいは脂質、例えばリン脂質である。
【0012】
本明細書で使用するとき、「活性官能基」という用語は、反応するために強力な触媒作用、高温、又は実行不可能な反応条件を必要とする基とは対照的に、求電子性基又は求核性基と容易に反応する基、あるいは環付加反応によって容易に反応する基を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、「不活性基」、「不活性部分」又は「不活性化学基」という用語は、標的分子又はPOZ誘導体の化学基と直接的に又は間接的に結合を容易に形成しない基を意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、「結合する」「結合した」「結合」又は「リンカー」という用語は、本明細書に記載のPOZ誘導体又はその成分に関して使用される場合には、通常は化学反応の結果として形成され、典型的には共有結合である基又は結合を指す。
【0015】
本明細書で使用するとき、ヒドロキシル基、アミン基、スルフヒドリル基及びその他の反応基に関する「保護された」という用語は、本明細書に記載の手順を使用して付加するか又は除去することができる当業者に知られている保護基、例えばProtective Groups in Organic Synthesis,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,(3rd Edition,1999)に記載の保護基を用いて、望ましくない反応から保護されるこれらの官能基の形成を指す。保護されたヒドロキシル基の例としては、以下に限定されないが、シリルエーテル類、例えばヒドロキシル基と、試薬、例えば、以下に限定されないが、t−ブチルジメチル−クロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリエチルクロロシランとの反応によって得られるシリルエーテル類;置換メチル及びエチルエーテル類、例えば、以下に限定されないが、メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、t−ブトキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシエチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、1−エトキシエチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル;エステル類、例えば、以下に限定されないが、ギ酸ベンゾイル、ギ酸エステル、酢酸エステル、トリクロロ酢酸エステル、及びトリフルオロ酢酸エステルが挙げられる。保護されたアミン基の例としては、以下に限定されないが、アミド類、例えばホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、及びベンズアミド;イミド類、例えばフタルイミド及びジチオスクシンイミドなどが挙げられる。保護されたスルフヒドリル基の例としては、以下に限定されないが、チオエーテル類、例えばS−ベンジルチオエーテル及びS−4−ピコリルチオエーテル;置換S−メチル誘導体、例えばヘミチオアセタール、ジチオアセタール及びアミノチオアセタールなどが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語は、単独で使用されようと置換基の一部として使用されようと、1から20個の炭素原子を含有する直鎖炭化水素基を包含する。従って、この語句は、直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを包含する。また、この語句は、直鎖アルキル基の分岐鎖異性体、例えば、以下に限定されないが、例として提供される以下の基:−CH(CH、−CH(CH)(CHCH)、−CH(CHCH、−C(CH、−C(CHCH、−CHCH(CH、−CHCH(CH)(CHCH)、−CHCH(CHCH、−CHC(CH、−CHC(CHCH、−CH(CH)CH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CH、−CHCHCH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CHCH、−CHCHC(CH、−CHCHC(CHCH、−CH(CH)CHCH(CH、−CH(CH)CH(CH)CH(CH)CH(CH、−CH(CHCH)CH(CH)CH(CH)(CHCH)などを包含する。また、この語句は、環状アルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルなどを包含し、このような環は、前記で定義したような直鎖及び分鎖アルキル基で置換される。また、この語句は、多環式アルキル基、例えば、以下に限定されないが、アダマンチルノルボルニル及びビシクロ[2.2.2]オクチルを包含し、このような環は、前記で定義したような直鎖及び分鎖アルキル基で置換される。
【0017】
本明細書で使用するとき、「アルケニル」という用語は、単独で使用されようと置換基の一部として使用されようと、任意の2個の隣り合った炭素原子の間に少なくとも1個の二重結合を有するアルキル基を包含する。
【0018】
本明細書で使用するとき、「アルキニル」という用語は、単独で使用されようと置換基の一部として使用されようと、任意の2個の隣り合った炭素原子の間に少なくとも1個の三重結合を有するアルキル基を包含する。
【0019】
本明細書で使用するとき、「非置換アルキル」、「非置換アルケニル」及び「非置換アルキニル」という用語は、異種原子を含んでいないアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を指す。
【0020】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」及び「置換アルキニル」という語句は、前記で定義したようなアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基であって、1つ以上の炭素(1個又は複数個)又は水素(1個又は複数個)に対する1つ又はそれ以上の結合が、非水素原子又は非炭素原子、例えば、以下に限定されないが、アルコキシ基又はアリールオキシ基などの基の酸素原子;アルキル及びアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、及びスルホキシド基などの基の硫黄原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリルシリル基、アルキルジアリルシリル基、及びトリアリルシリル基などの基のケイ素原子;並びに種々のその他の基の異種原子に対する結合によって置換されている前記で定義したようなアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、「非置換アリール」という用語は、環部分に6から12個の炭素原子を有し、異種原子を含んでいない単環式又は二環式芳香族炭化水素基、例えば、以下に限定されないが、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基及びジフェニル基を指す。「非置換アリール」という語句は、ナフタレンなどの縮合環を含む基を包含するが、トリルなどのアリール基は本明細書では以下に記載の置換アリール基とみなされることから、環員のうちの1つに結合されるアルキル基又はハロ基などのその他の基を有するアリール基は包含しない。しかし、非置換アリール基は、親化合物の1つ以上の炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子に結合されていてもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、「置換アリール基」という用語は、非置換アリール基に関して、置換アルキル基が非置換アルキル基に関して有していたと同じ意味を有する。しかし、置換アリール基はまた、芳香族炭素のうちの1つが、非炭素原子又は非水素原子、例えば以下に限定されないが、置換アルキルに関して上記に記載した原子の1つに結合されているアリール基を包含し、またアリール基の1つ以上の芳香族炭素が、本明細書で定義したような置換及び/又は非置換アルキル、アルケニル又はアルキニル基に結合されているアリール基を含む。この置換アリール基は、縮合環系(例えば、ジヒドロナフチル又はテトラヒドロナフチル)を定義するためにアリール基の2個の炭素原子が、アルキル基又はアルケニル基の2個の原子に結合されている結合配置も含む。従って、「置換アリール」という語句は、特にトリル及びヒドロキシフェニルを含むが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用するとき、「非置換アラルキル」という用語は、非置換又は置換アルキル又はアルケニル基の水素結合又は炭素結合が、上記で定義したような置換又は非置換アリール基で置換されている上記で定義したような非置換アルキル又はアルケニル基を指す。例えば、メチル(CH)は、非置換アルキル基である。メチル基の水素原子が、該メチル基の炭素がベンゼンの炭素に結合された場合のように、フェニル基に対する結合によって置換される場合には、この化合物は、非置換アラルキル基(すなわち、ベンジル基)である。
【0024】
本明細書で使用するとき、「置換アラルキル」という用語は、非置換アリール基に関して、置換アルキル基が非置換アルキル基に関して有していたと同じ意味を有する。しかし、置換アラルキル基はまた、該アラルキル基のアルキル部分の炭素結合又は水素結合が非炭素又は非水素原子に対する結合によって置換されている基を包含する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「非置換ヘテロシクリル」という用語は、3個以上の環原子を含有し、その1つ以上の原子が、異種原子、例えば、以下に限定されないが、N、O、及びSである単環式、二環式及び多環式環状化合物、例えば以下に限定されないが、キヌクリジルを含む芳香族環状化合物及び非芳香族環状化合物の両方を意味する。「非置換ヘテロシクリル」という語句は、ベンゾイミダゾリルなどの縮合複素環を包含するが、2−メチルベンゾイミダゾリルなどの化合物が、以下に定義するような「置換ヘテロシクリル」基であることから、環構成要素のうちの1つに結合されたアルキル基又はハロ基などのその他の基を有するヘテロシクリル基は包含しない。ヘテロシクリル基の例としては、以下に限定されないが、1から4個の窒素原子を含有する不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル;1から4個の窒素原子を含有する飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル;1から4個の窒素原子を含有する縮合不飽和複素環式基、例えば、以下に限定されないが、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル;1から2個の酸素原子と1から3個の窒素原子を含有する不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないがオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル;1から2個の酸素原子と1から3個の窒素原子を含有する飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、モルホリニル;1から2個の酸素原子と1から3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環式基、例えば、以下に限定されないが、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル(例えば、2H−1,4−ベンゾオキサジニルなど);1から3個の硫黄原子と1から3個の窒素原子を含有する不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリルなど);1から2個の硫黄原子と1から3個の窒素原子を含有する飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、チアゾロジニル;1から2個の硫黄原子を含有する飽和及び不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、チエニル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン;1から2個の硫黄原子と1から3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環、例えば、以下に限定されないが、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアジニル(例えば、2H−1,4−ベンゾチアジニルなど)、ジヒドロベンゾチアジニル(例えば、2H−3,4−ジヒドロベンゾチアジニルなど)、酸素原子を含有する不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが、フリル;1から2個の酸素原子を含有する不飽和縮合複素環、例えば、以下に限定されないが、ベンゾジオキソジル(例えば、1,3−ベンゾジオキソイル等);1個の酸素原子と1から2個の硫黄原子を含有する不飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないがジヒドロオキサチイニル;1から2個の酸素原子と1から2個の硫黄原子を含有する飽和3から8員環、例えば、以下に限定されないが1,4−オキサチアン;1から2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合環、例えば、以下に限定されないが、ベンゾチエニル、ベンゾジチイニル;及び1個の酸素原子と1から2個の酸素原子を含有する不飽和縮合複素環、例えば、以下に限定されないが、ベンゾオキサチイニルが挙げられる。また、ヘテロシクリル基としては、環の1つ以上のS原子が1個又は2個の酸素原子に二重結合されている前記の基(スルホキシド及びスルホン)が挙げられる。例えば、ヘテロシクリル基としては、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェンオキシド、及びテトラヒドロチオフェン 1,1−ジオキシドが挙げられる。好ましいヘテロシクリル基は、5員又は6員環を含む。さらに好ましいヘテロシクリル基としては、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、チオモルホリン;チオモルホリンのS原子が1つ以上のO原子に結合されているチオモルホリン;ピロール、ホモピペラジン、オキサゾリジン−2−オン、ピロリジン−2−オン、オキサゾール、キヌクリジン、チアゾール、イソオキサゾール、フラン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用するとき、「置換ヘテロシクリル」という用語は、非置換ヘテロシクリル基に関して、置換アルキル基が非置換アルキル基に関して有していたと同一の意味を有する。しかし、置換ヘテロシクリル基はまた、炭素のうちの1つが、非炭素原子又は炭素原子、例えば、以下に限定されないが、置換アルキル及び置換アリール基に関して上記で記載の原子のうちの1つに結合されているヘテロシクリル基を包含し、また、ヘテロシクリル基の1つ以上の炭素が、本明細書で定義したような置換及び/又は非置換アルキル、アルケニル又はアリール基に結合されているヘテロシクリル基も包含する。この置換ヘテロシクリルは、縮合環系を定義するためにヘテロシクリル基の2個の炭素原子がアルキル、アルケニル又はアルキニル基の2個の原子に結合されている結合配置を包含する。例として、以下に限定されないが、特に2−メチルベンゾイミダゾリル、5−メチルベンゾイミダゾリル、5−クロロベンズチアゾリル、1−メチルピペラジニル、及び2−クロロピリジルが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用するとき、「非置換ヘテロシクリルアルキル」という用語は、上記で定義したような非置換アルキル又はアルケニル基であって、前記非置換アルキル又はアルケニル基の水素結合又は炭素結合が、上記で定義したような置換又は非置換ヘテロシクリル基に対する結合で置換されている非置換アルキル又はアルケニル基を指す。例えば、メチル(CH)は、非置換アルキル基である。メチル基の水素原子がヘテロシクリル基に対する結合で置換される場合には、例えばメチル基の炭素がピリジンの炭素2(ピリジンのNに結合された炭素のうちの1つ)又はピリジンの炭素3又は4に結合された場合には、該化合物は、非置換ヘテロシクリルアルキル基である。
【0028】
本明細書で使用するとき、「置換ヘテロシクリルアルキル」という用語は、非置換ヘテロシクリルアルキル基との関連において、非置換アリール基に関して置換アリール基が有するものと同一の意味を有する。しかし、置換ヘテロシクリルアルキル基はまた、非水素原子が、ヘテロシクリルアルキル基のヘテロシクリル基の異種ヘテロ原子、例えば、以下に限定されないが、ピペリジニルアルキル基のピペリジン環の中の窒素原子に結合されている基も包含する。
【0029】
概要
ポリオキサゾリン(POZ)は、2−置換−2−オキサゾリン単量体から調製される重合体である。これらの重合体は水溶性であり、哺乳動物モデル系において無毒性であると報告されている。POZは、一般に、適切な化学量論量の2−アルキル−2−オキサゾリンと、求電子性開始剤、例えばトリフリック酸(CF−SO−H)、p−トルエンスルホン酸メチル(又は「トシレート」、CH−OSO−C−CH)又はトリフリック酸メチル(CH−OSO−CF)との反応、次いで求核試薬、例えば水酸化物又はアミンを用いた停止によって調製される。製造される重合体は、左端基で示され開始基及び右端基で示される停止基を用い、中央に2−アルキル−2−オキサゾリン成分を用いて、略語で都合よく記載される。従って、この略語での記載が本願明細書で使用される場合には、特に示されない限り、前記指定の左側は「開始剤末端」を示し、前記指定の右側は「停止末端(terminal end)」を示すことが意図される。例えば、2−置換−2−オキサゾリンが2−メチル−2−オキサゾリンである場合には、トシル酸メチルが開始剤として使用され、水酸化物が停止剤として使用され、以下の重合体:
CH−[N(COCH)CHCH−OH
が製造される。
【0030】
上記の重合体は、便宜上、略語でM−PMOZ−OHと記載され、この場合、メチル開始剤は、左端M(開始剤末端)で示され、PMOZは、PMOZのMで示される反復単位のメチルを有するポリメチルオキサゾリンを示し、末端ヒドロキシルは、−OH(停止末端で)で示される。重合度nは、約3から約1000の範囲にあり得る。
【0031】
別の慣用される単量体は、2−エチル−2−オキサゾリンであり、トリフリック酸メチルによる開始と水酸化物による停止は、次のPOZ重合体:
CH−[N(COCHCH)CHCH−OH M−PEOZ−OH
を提供する。
【0032】
上記の重合体は、便宜上、略語でM−PEOZ−OHと記載され、この場合、メチル開始剤は左端M(開始剤末端で)で示され、PEOZは、PEOZのEで示される反復単位のエチルを有するポリエチルオキサゾリンを示し、末端ヒドロキシルは、−OH(停止末端で)で示される。その他の慣用される単量体は、2−n−プロピル−及び2−イソプロピル−2−オキサゾリンである。
【0033】
より複雑な求電子試薬又は求核試薬が、使用できる。例えば、2−エチル−2−オキサゾリン重合の臭化ベンジルによる開始及び過剰エチレンジアミンによる停止は、次の重合体:
−CH−[N(COCHCH)CHCH−NH−CHCH−NH
を生成する。
【0034】
また、異なる単量体を、同じ重合体に使用して、種々のランダム共重合体又はブロック共重合体を得ることができる。
【0035】
前記重合法は、求電子試薬による開始がオキサゾリニウムカチオンを生成し、次いでこれが次に追加単量体単位と連鎖反応で反応して、鎖末端にオキサゾリニウムカチオンを有する成長する「リビング」カチオンを生成することから、リビングカチオン重合と呼ばれる。
【0036】
【化1】

【0037】
前記リビングカチオンは以下の非環形で表すことができると仮定することにより停止の生成物を予測できるが、実際には環形が間違いなく最も重要であり、所望の生成物は、環の5位への求核攻撃によって生成される:
CH−[N(COCH)CHCH−N(COCH)CHCH
【0038】
本開示において、このカチオンは、M−PMOZと表される。上記のように、このPOZカチオンは、水酸化物又はアミンなどの求核試薬と反応することによって「停止させる」ことができる。興味深いことに、弱い求核試薬水による停止では、環の5位の攻撃の所望生成物(「熱力学的」生成物)が得られないが、むしろ2位の攻撃の所望生成物(「動力学的」生成物)が得られる。この動力学的生成物は、不安定であり、転移してエステル生成物を生じるか又はカチオンに戻り得る(O.Nuyken、G.Maier、A.Gross、Macromol.Chem.Phys.197,83−85(1996))。前記エステルの加水分解は、第二級アミン不純物を生成する。他の一般的な不純物は、1つの鎖が停止され、新たな鎖がプロトンを用いて開始される連鎖移動により生じる(特許協力条約出願第PCT/US200802626号明細書で論じられている。)。連鎖移動の結果として、これまで官能性開始剤を用いて調製されたポリオキサゾリンは、官能性開始剤なしでは相当な量の生成物を含有する。Greg:本出願人は、この参考文献を読者に委ねる。
【0039】
ヒドロキシル末端重合体は、さらに修飾して活性誘導体を得ることができる。例えば、Zalipskyは、末端−OHを無水グルタル酸と反応させてグルタル酸基で停止させたPOZを得た(M.C.Woodle、C.M.Engbers and S.Zalipsky、Bioconjugate Chem.,1994,5,493−496)。
M−PMOZ−OC−CHCHCH−CO
上記重合体は、スクシンイミジルエステルとして活性化され、リン脂質に結合され、調製されたPOZ修飾リポソームに使用された。これらのリポソームは、PEG修飾リポソームに類似した特性を有することが認められた。
【0040】
アミン末端重合体もまた、さらなる誘導のために有用な反応基を提供する。例えば、環状ジアミンピペラジンによる停止は、活性基−NCNHで停止されたPOZを生じる。
【0041】
リービングPOZカチオンを複雑な求核試薬で停止させて、脱保護してカルボン酸を生じさせることができるエステル基を生じさせることも可能である(特許協力条約出願第PCT/US08/02626号明細書に記載されており、これはこの教示について参照により本明細書に組み込まれる。):
【0042】
【化2】

【0043】
オキサゾリン重合もまた、官能性求核試薬を用いて開始することができる。例えば、求電子性開始剤3−ブロモプロピオン酸エチルが、2−エチル−2−オキサゾリン重合の開始に使用されている。水酸化物による停止は、次の二官能性重合体:
HOC−CHCH−[N(COCHCH)CHCH−OH
を生じる。
【0044】
別の官能性開始剤が、官能性オキサゾリニウムカチオンの使用によって提供される。例えば、Gaertnerは、1モルのトリフリック酸メチルを、1モルの種々の2−置換−2−オキサゾリンと反応させて対応するオキサゾリニウムカチオンを得ており、この求電子試薬を、重合を開始させるのに使用し、開始剤位置に官能基を有するポリオキサゾリンを得ている(F.C.Gaertner、R.Luxenhofer、B.Blechert、R.Jordan and M.Essler、J.Controlled Release,2007,119,291−300)。上記のように、連鎖移動は、官能性開始剤よりもむしろプロトンを用いて開始された重合体の相当な量の形成をもたらす。
【0045】
開始剤末端及び停止末端に同一の官能基を有するPOZが化学的に異なることは、注目すべきである;開始剤末端の基は、窒素に結合し、これに対して停止末端の基は、炭素に結合する。例えば、以下の2つの重合体は、両方共にPMOZのプロピオン酸誘導体であるが、開始剤末端のプロピオン酸が窒素に結合し、停止末端のプロピオン酸が炭素に結合する点で異なる(明確にするため、最初又は最後の単量体単位を示す。):
HOOCCHCH−N(COCH)CHCH−PMOZ−OH
M−PMOZ−N(COCH)CHCH−O−CHCHCOOH
【0046】
活性官能基を有するポリオキサゾリンを調製する第3の経路は、官能性求電子試薬又は求核試薬による開始又は停止の他に、2−エチル−2−オキサゾリンなどの単量体を、2位に活性官能基を有するオキサゾリン単量体と重合させることである。例えば、Jordanとその同僚は、アセチレンと、2位の保護されたアルデヒド、カルボン酸及びアミンとを用いてオキサゾリンを調製している(F.C.Gaertner、R.Luxenhofer、B.Blechert、R.Jordan and M.Essler、J.Controlled Release,2007,119,291−300)。これらの官能性モノマーと2−エチル−2−オキサゾリンとの共重合は、多数の側鎖又は「ペンダント」活性官能基を有するランダム共重合体を生じる。例えば、トリフリック酸メチルによる2−エチル−2−オキサゾリンと2−ペンチニル−2−オキサゾリンの共重合の開始、次いでピペラジン(NHCNH)による停止は、以下のランダム共重合体:
【0047】
【化3】

を生じる。
上付き文字「ran」は、重合体がランダム共重合体であることを示す。ブロック共重合体も調製できる。nの値は、典型的には約20〜30であり、一方、mは約2〜5である。上記の場合、アセチレン基は、活性基であり、種々の付加環化及びその他の反応に関与できる。
【0048】
これらの種々の官能性ポリオキサゾリンは、一連の生物医学用途のペプチド、タンパク質及びリポソームに結合されている。
【0049】
POZ重合体及びPOZ誘導体の一般的な合成方法は、特許協力条約出願第PCT/US08/02626号明細書、具体的には第14〜21頁に見出すことができ、この明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
要約
本開示は、不活性化学基を用いてポリオキサゾリンリビングカチオンを停止させることによって調製される新規な官能性ポリオキサゾリン誘導体を提供する。ポリオキサゾリンへのこの経路は、これまでに利用されていなかった。一つの実施形態において、前記不活性化学基は、重合反応を停止させるのに使用される求核性基である。典型的な不活性化学基としては、置換又は非置換アルキル又はアリールメルカプチド部分が挙げられる。これらのアルキル又はアリールメルカプチド部分は、停止求核試薬として重合反応を停止させるのに使用でき、不活性アルキル又はアリールチオエーテル末端基を有するポリオキサゾリン誘導体を提供できる。対照的に、これまでに記載されている全てのPOZ誘導体は、化学反応性の官能性末端基、典型的にはヒドロキシル(水酸化末端に由来)、エステル(カルボキシル末端に由来)又はアミン(アミン末端に由来)を有している。末端部位に不活性化学基を有するこのようなポリオキサゾリン誘導体は、開始剤位置又はペンダント位置に1個以上の活性官能基を含有していてもよい。
【0051】
また、本開示は、オキサゾリン重合を開始することができ、重合の条件に耐えることができる保護された官能基を有する新規な求電子性開始剤の合成を実証する。これらの開始剤は、上記の不活性末端ポリオキサゾリン誘導体及びその他の活性末端を有するポリオキサゾリンを合成するのに使用される。
【0052】
さらにまた、本開示は、保護された官能基を有する新規な求電子性開始剤を用いてオキサゾリン重合を開始させることによって調製される新規な官能性ポリオキサゾリン誘導体を提供する。製造されるポリオキサゾリン誘導体は、末端位置に不活性化学基又は活性官能基を有していてもよい。さらにまた、このようなポリオキサゾリン誘導体は、開始剤位置及び/又はペンダント位置に1つ以上の活性官能基を有していてもよい。
【0053】
また、本開示は、新規なポリオキサゾリン−脂質複合体及び該ポリオキサゾリン−脂質複合体を組み込んだリポソーム組成物を提供する。一つの実施形態において、前記ポリオキサゾリン−脂質複合体のポリオキサゾリン部分は、ペンダント位置に活性官能基を含有する。前記ポリオキサゾリン部分は、さらに追加活性官能基を含有していてもよい。
【0054】
本開示において、ポリオキサゾリン誘導体又はポリオキサゾリン重合体に言及する場合にはいつでも、ポリオキサゾリン重合体は、低い多分散性(PD)値と高められた純度を特徴とするものであり得る;このような重合体は、医薬用途において有用である。具体的な実施形態において、本開示の方法は、増大したMW値で低いPD値を有するポリオキサゾリン誘導体を提供する。このような実施形態において、少なくとも1つのポリオキサゾリン重合体鎖は、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する。低いPD値を有するポリオキサゾリン重合体及びその誘導体を合成する方法は、特許協力条約出願第PCT/US2008/002626号及び同第PCT/US2008/078159号明細書で論じられており、これらの明細書は、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体
一つの実施形態において、本開示は、末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体を提供する。一つの実施形態において、末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体は、一官能性ポリオキサゾリン誘導体である。このような実施形態において、第一の活性官能基は、開始剤位置あるいは1つ又はそれ以上のペンダント位置に存在していてもよい。別の実施形態において、末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体は、複数のペンダント位置に同一の官能基の多数のコピーを含有し、開始剤位置に不活性部分を含有する。さらに別の実施形態において、末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体は、開始剤位置に活性官能基を含有し、ペンダント位置に不活性部分を含有する。さらに別の実施形態において、末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体は、複数のペンダント位置に同一の官能基の多数のコピーを含有し、開始剤位置に同じ活性官能基を含有する。
【0056】
末端位置に不活性部分を有するポリオキサゾリン誘導体は、求電子試薬、例えば、以下に限定されないが、トリフリック酸(H−SO−CF)、あるいはトリフラート(−OSO−CF)又はトシレート(−OSO−C−CH)含有部分を用いてオキサゾリン重合を開始させて、前記のリビングカチオン重合を開始するオキサゾリニウムイオン生成させることによって調製してもよい。求電子試薬は、前記の活性官能基を含有していてもよい。別の方法では、オキサゾリン重合は、求電子性開始剤、例えば、以下に限定されないが、トリフリック酸(H−SO−CF)、トリフリック酸アルキル(R−OSO−CF)又はトシル酸アルキル(R−OSO−C−CH)を、オキサゾリン単量体(例えば、2−置換−2−オキサゾリン単量体)と等モル量で混合することによって開始させることができる。2−置換基が官能基又は保護された官能基を含有する場合には、反応の結果は、ペンダント位置に活性官能基を有するオキサゾリニウムカチオンである。このオキサゾリニウムカチオンは、次いで、オキサゾリン重合を開始させるのに使用できる。この開始方法は、開始剤位置に結合された活性官能基を有するポリオキサゾリンを生じる。求電子性開始基が活性官能基を含有する場合には、活性官能基は保護されていてもよい(例えば、以下に限定されないが、エステルとして保護されたカルボン酸)。
【0057】
活性官能基はまた、ポリオキサゾリン重合体鎖のペンダント位置に存在していてもよい。ペンダント側鎖の活性官能基もまた、保護されていてもよい。ランダム共重合体及びブロック共重合体両方のペンダント位置の活性官能基の例は、特許協力条約出願第PCT/US2009/030762号明細書に提供されており、前記明細書は、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
この末端位置に不活性基を有するポリオキサゾリン誘導体は、従来技術に対する幾つかの利点を提供する。前記のように、不活性末端基を有するポリオキサゾリン誘導体は、一官能性POZ誘導体又は多官能性POZ誘導体として調製されていてもよい。また、POZ誘導体が、開始剤位置に活性官能基を有する一官能性POZ誘導体である場合には、合成は、化学量論量の、活性官能基を有する求電子性開始剤のみを使用して行うことができる。活性官能基を含有する求核性末端基を使用して一官能性POZ誘導体を合成する別のアプローチは、著しく過剰の停止剤(通常は2から3倍過剰)を必要とする。過剰の反応剤の使用は、費用がかかり(特に複雑な末端基について)、生成を複雑にし、収量の低下、より高い割合の不純物及び費用の増大を招き得る。本開示のさらなる利点は、連鎖移動がない限りは、重合がいったん達成されると、活性官能基の組み込みが自動的に定量的であることである。活性官能基を含有する求核性末端基を使用する官能化は、幾つかの求核試薬については失敗に終わり、副生成物を生成し得る(O.Nuyken、G.Maier、A.Gross、Macromol.Chem.Phys.197,83−85(1996))。本明細書に記載の不活性求核性基、例えば、以下に限定されないが、アルキル及びアリールメルカプチドを用いる停止は、効率の高い反応であり、望まれてい副生成物を容易に生成しない。一官能性POZ誘導体は、タンパク質のような複雑な多官能性標的分子に結合させるに有用である。一官能性誘導体を使用することによって、架橋及び凝集が回避される。多官能性POZ誘導体もまた、有用である(特許協力条約出願第PCT/US2009/030762号明細書参照、前記明細書は、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0059】
開始位置に官能基を有する一官能性POZ誘導体を合成する主な利点は、連鎖移動不純物が容易に除去できることである。例えば、本出願人は、トリフリック酸メチルを用いて重合を開始させ、次いでメルカプトプロピオン酸エチルエステルを用いて停止させ(次いで加水分解する。)ことによって、CH−[N(COCHCH)CHCH−S−CHCH−COHを調製した。この生成物は、開始メチル基が水素原子に置換されている連鎖移動生成物を混入しているであろう。この連鎖移動生成物は、除去することができない。一方、酸基が開始基に存在する場合には、本発明者らが本開示に記載しているように、前記連鎖移動生成物を除去することができる。例えば、酸を用いて開始し、ベンジルメルカプチドを用いて停止させる場合には、所望の生成物は、以下に示す酸であり、前記連鎖移動生成物は、開始位置に水素を有する重合体である。連鎖移動生成物を含有していない所望の生成物は、イオン交換クロマトグラフィーで単離できる。このようなクロマトグラフィーはまた、水不純物を用いて停止させることによって形成される第二級アミンも除去する。本発明者らは、これらの不純物はかなりの割合の反応生成物を構成することができることを見出した。
【0060】
【化4】

【0061】
連鎖移動生成物を除去するこのアプローチは、連鎖移動が開始剤位置で官能基の喪失を招くことから、以下に示すように多官能性物質を調製するのにも有用である。
【0062】
前記のように、オキサゾリン重合の開始は、一般に、求電子試薬、例えば、以下に限定されないが、トリフラート(−OSO−CF−)含有又はトシレート(−OSO−C−CH)含有部分を使用して行われる。他の求電子試薬を利用してもよいが、一般にハロゲン化物は、所望のリビングカチオン重合メカニズムを生じないことから、避けなければならない(特許協力条約出願第PCT/US2008/002626号明細書、これは、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。)。多数の基が求電子性開始剤と反応し得ることから、特定の実施形態においては、求電子性開始剤は、保護される。例えば、トリフラートが求電子性開始剤である場合には、トリフラートは、保護されたエステル−トリフラートとして提供し得る。この保護された形で、求電子性開始剤は、重合を開始させることができ、求電子性開始剤の任意の反応性基は、反応しない形で維持される。
【0063】
末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体の一つの実施形態の一般的な代表を、以下のスキーム1に示す。
【0064】
【化5】

(式中、
Iは、開始基(開始剤位置に存在する基)を表し;
2−R−2−Oxは、2−置換2−オキサゾリン単量体を表し;
n=3から1000であり、
は、それぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;一つの実施形態において、前記非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基は、1〜10個の炭素原子を含有し、さらに具体的な実施形態において、Rは、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルであり;Rは、ペンダント位置を占めると定義され;
Catは、カチオン、例えば、以下に限定されないが、金属カチオン、例えば、以下に限定されないが、Li、Na及びKを表し;
Sは、硫黄原子であり;及び
は、Rと同じ基から選択されるが、Rと無関係である。)。
【0065】
この実施形態において、Iは、活性官能基又は不活性部分であり得る。また、Rの基は、活性官能基又は不活性部分であってもよい。しかし、最終ポリオキサゾリン誘導体は、存在している1個の活性官能基を有するべきである。活性官能基は、本明細書に記載の標的分子の結合パートナーと結合を形成できる化学基であり得る。一つの実施形態において、活性官能基は、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、エステル、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドであり得る。
【0066】
一つの実施形態において、Iは、トリフラート(−OSO−CF)又はトシレート(−OSO−C−CH)含有部分である。1個以上の活性官能基が最終重合体に存在していてもよく、前記活性官能基が開始剤位置(上記Iで表される。)、又は1個以上のペンダント位置(上記Rで表される。)にあることが認められるべきである。
【0067】
I基はまた、本明細書に記載の保護された形であってもよい。一つの実施形態において、保護されたI基は、本明細書に記載の保護トリフラートである。この実施形態において、末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体及びこれを合成する方法を、以下のスキーム2に示す。
【0068】
【化6】

【0069】
これらの反応において、置換基は、pが保護基を表すことを除いて、上記スキーム1において定義した通りである。
【0070】
末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体及びこれを合成する方法の別の例を、以下のスキーム3に示す。この例において、開始基Iは、保護求電子性開始基(この場合は、トリフラート含有部分)で表される。
【0071】
【化7】

【0072】
これらの反応において、Q−X−R’−OTfは、求電子性開始剤を表し、この場合にはトリフラート含有開始部分は、保護された活性官能基を含有し、式中のQ−X−は、保護された活性官能基を表し、Xは官能基を表し、R’は結合基を表し、、2−R−2−Ox、n、R、R及びCatは、スキーム1において前記定義した通りである。
【0073】
官能基Xは、以下に限定されないが、以下の一つ:アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、エステル、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドであり得る。
【0074】
以下のスキーム4に示す反応は、スキーム3で表される式の具体的な実施形態を提供する。この反応において、2−Et−2−Oxは、2−エチル−2−オキサゾリンを表し、前記エステル−トリフラートCH−OC−(CH−OTfは、Q−X−R’−OTf(保護された求電子性開始部分)であり、前記メチルエステル基CH−OC−は、Q−X−(保護された活性官能基)であり、HOC−は、X(脱保護された官能基)であり、NaはCatであり、Rはエチルであり、Rは−CH−Cであり、及びR’−は−(CH)S−である。
【0075】
【化8】

【0076】
末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体及びこれを合成する方法の別の例を、以下のスキーム5に示す。本明細書に記載のように、活性官能基は、オキサゾリン重合体鎖の少なくとも1つのペンダント位置に存在していてもよい。この例(スキーム5)において、Fは、不活性基であり、求核性不活性基は、ポリオキサゾリン重合体の少なくとも1つのペンダント位置に活性官能基を有するオキサゾリン重合体の重合を停止させるのに使用される。
【0077】
【化9】

【0078】
この一連の反応において、I’は、スキーム1のRに記載の基から選択される不活性基であり;一つの実施形態において、I’は、水素又はアルキルである。2−(Q−Z−R’)−2−Oxは、R位の保護された活性官能基Q−Z−R’−(式中、Qは保護基であり、Zは保護された活性官能基であり及びR’は結合基である。)を有する2−置換 2−オキサゾリン単量体である。一つの実施形態において、Zは、特許協力条約出願第PCT/US08/02626号明細書(これは、参照により本明細書に組み込まれる。)に記載の活性官能基である;あるいは、Zは、スキーム3について上記に記載した基の一つであることができる。mは、1〜1000の整数であり、nは、0〜1000の整数である。2−R−2−Ox、R、Cat及びRは、スキーム1において前記で定義した通りである。また、特定の実施形態において、R−位に活性官能基を含有するオキサゾリン単量体は、使用される唯一の単量体であってもよい(式中、n=0)。
【0079】
末端位置に不活性化学基を有するポリオキサゾリン誘導体のブロック共重合体もまた、上記に従って合成でき、以下のスキーム6に示すように表すことができる。
【0080】
【化10】

【0081】
スキーム5に示す合成の具体例を、スキーム7に示す生成物によって例証する。この例において、Vはトリフリック酸メチルであり、2−(Q−Z−R’)−2−Oxは、以下に示すオキサゾリン単量体であり、式中のQ−Z−は、メチルエステルであり、R’は、−CHCH−であり、2−R−2−Oxの基Rは、−CHCHであり、Cat+−S−Rは、C−CH−SNaである。
【0082】
【化11】

【0083】
エステル加水分解によるZ基の脱保護の後に、次のPOZ誘導体が生成する。
【0084】
【化12】

【0085】
また、同じPOZ誘導体が、前記のように及びスキーム8に示すようにブロック共重合体で合成できる。
【0086】
【化13】

【0087】
異なるポリオキサゾリン基を含む上記実施形態(スキーム5〜8)において、ポリオキサゾリン重合体は、単独重合体であってもよい;同様に、ポリオキサゾリン重合体は、第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられている第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含有するランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。例えば、ポリオキサゾリン重合体は、単独重合体(n=0である場合)であってもよい。また、ポリオキサゾリン重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体(n>1である場合)であってもよい。このような実施形態において、第一のポリオキサゾリンの単一の単位又はブロックは、第二のポリオキサゾリンの単一の単位又はブロックで隔てられていてもよい。
【0088】
一つの実施形態において、Rを含むポリオキサゾリン重合体は、単独重合体であってもよいし、あるいは適切なR基の選択によって第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられている第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含有するランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。Rは、独立して、ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について選択される。一つの実施形態において、第一のポリオキサゾリン及び第二のポリオキサゾリンのR基は、独立して、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである。別の実施形態において、第一のポリオキサゾリン及び第二のポリオキサゾリンのR基は、独立してC−Cアルキル基である。
【0089】
一つの実施形態において、Rを含むポリオキサゾリン重合体は、C−Cアルキル(例えば、メチル又はエチル)の単独重合体であるか、あるいはC−Cアルキルのランダム又はブロック共重合体である。このような実施形態において、C−Cアルキル単独重合体あるいはランダム又はブロック共重合体は、存在する全ポリオキサゾリン重合体を50%、75%、90%、95%又は99%を構成し得る。
【0090】
ランダム又はブロック共重合体の調製は、特許協力条約出願第PCT/US2009/030762号明細書に記載されており、該明細書、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
上記の実施形態にいずれかにおいて、保護基は、任意であり、所望に応じて含有させてもよいし又は除外してもよい。
【0092】
保護されたトリフラートの合成
本開示の特定の実施形態において、求電子性開始基は、保護される。本明細書に記載のように、保護されたスルホン酸エステル、例えば、以下に限定されないが、トリフラートは、求電子性開始基として使用されてもよい。保護された活性官能基を含有するトリフラート開始剤の調製及び利用は、保護された活性官能基がトリフラート調製及びトリフラート開始オキサゾリン重合の両方に安定でなければならないという点でやりがいがある。また、保護基は、得られるPOZ誘導体を破壊せずに又は得られるPOZ誘導体におい望まれない反応を引き起こすことなく容易に除去されねばならない。モノ保護されたジオールの場合が、実例となる。常用されるアルコール保護基は、ベンジルエーテルである。しかし、この保護基は、一般に、水素添加又は強酸によって除去され、これらの反応条件下では、POZ誘導体のアミド活性官能基は、損傷するであろう。
【0093】
本発明者らの実験において、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基が、トリフラート調製及びカチオン重合中に安定であることが確認された唯一のヒドロキシル保護基である。前記アルコール保護基TBDPSは、上記の要件を全て満たすことが認められた。TBDPS基でモノ保護されているジオールの未保護ヒドロキシルは、TBDPS基に悪影響を及ぼすことなくトリフラートに転化させることができる。また、TBDPS基は、オキサゾリン重合に耐え、悪影響を及ぼすことなく又は得られるPOZ誘導体において望まれない反応を引き起こすことなく温和な酸で処理することによって容易に除去できる。典型的なTBDPS保護トリフラート基を、以下のスキーム9に示す。
【0094】
【化14】

【0095】
同様に、本発明者らは、6−ヒドロキシヘキサン酸エチルが保護基として使用でき、トリフラート調製及びカチオン重合中に安定であることを見出した。TBDPSのように、6−ヒドロキシヘキサン酸エチルの6位のヒドロキシル基は、トリフラートに転化させることができ、このトリフラートは、オキサゾリン重合を開始させるのに使用できる。最後に、該エステル基は、悪影響を及ぼすことなく又は得られるPOZ誘導体において望まれない反応を引き起こすことなく、カルボン酸基を生成する温和な塩基で処理することによって加水分解できる。
【0096】
上記化合物は、本明細書に記載の任意の反応においてオキサゾリン重合を開始させるのに使用し得る。
【0097】
追加関連重合体
前記の新規な求電子性開始剤(例えば、本明細書に記載の保護されたトリフラート基及びその他の基)は、上記の群の他に新規ポリオキサゾリン誘導体を調製するのに使用し得る。一つの実施形態において、このような化合物は、以下のスキーム10に示す一般式で表し得る。
D−R−POZ−R−X
スキーム10
(式中:
Dは、−OH、−COHであるか、あるいは活性−OH基又は活性−COH基を含有する基であり;
及びRは、結合基であり;
POZは、構造[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
は、ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
Xは、活性官能基であるか又は活性官能基に転化させることができる基であり、前記標活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成でき;及び
nは、3〜1000の整数である。)。
【0098】
典型的なX基としては、以下に限定されないが、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、エステル、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0099】
典型的なR基としては、−(CH−(式中、pは、1〜25の整数である。)が挙げられるが、これに限定されない。典型的なR基としては、−S−CH−CH−が挙げられるが、これに限定されない。
【0100】
スキーム10に入る化合物の例として、2−メチル−2−オキサゾリンの重合を開始させ、次いで水酸化物を用いて停止させる前記の欄に記載の保護されたエステル−トリフラートの使用は、次の重合体を生じる:
CHC−(CH−[N(COCH)CHCH−OH
脱保護は、以下を生成する:
HOC−(CH−[N(COCH)CHCH−OH
【0101】
同様に、スキーム9において上記に示すTBDPSでヒドロキシル保護されたトリフラートを用いた開始は、末端位置又はペンダント位置に活性官能基を有するPOZ誘導体を調製するのに使用できる。ヒドロキシル保護されたトリフラート開始剤は、求電子性開始剤として使用して、開始剤位置のヒドロキシル基及びその他の末端基を用いてPOZ重合を生じさせることができる。
【0102】
例えば、2−メチル−2−オキサゾリンの重合を開始させ、次いで水酸化物を用いて停止させ、脱保護するために前記の欄に記載のヒドロキシル保護トリフラートTBDPSの使用は、次の有用な重合体を生じる:
HO−(CH12−[N(COCH)CHCH−OH
【0103】
開始剤としての保護トリフラートの具体的な用途は、得られる酸のイオン交換クロマトグラフィーを使用して連鎖移動不純物を含有していないヘテロ官能性POZ誘導体を調製することにある。
【0104】
上記の方法は、前記トエステル−トリフラート開始剤を用いて、開始剤カルボキシル及びペンダント官能基を有するヘテロ官能性化合物を調製するのに使用することもできる。一つの実施形態において、このような化合物は、以下のスキーム11に示す一般式で表し得る
E−R−{POZ−POZII−S−R
スキーム11
〔式中:
及びRは、上記スキーム10で定義した通りであり;
Eは、−OH、−COHであるか、あるいは活性−OH基又は活性−COH基を含有する基であり;
POZは、構造[N(CO−R’−Z)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
POZIIは、構造[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
R’は、任意の結合基であり;
Zは、活性官能基であるか又は活性官能基に転化させることができる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル基、又は活性官能基、あるいは活性官能基に転化させることができる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
nは、0〜1000の整数であり、但し、n=0である場合には、m>1であることを条件とし;
mは、1〜1000の整数であり;及び
aは、ランダム共重合体を示すran、又はブロック共重合体を示すblockである。〕。
【0105】
典型的な活性官能基(Z及びR)としては、以下に限定されないが、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、エステル、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0106】
典型的なR基としては、−(CH−(式中、pは1〜25の整数である。)が挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
この実施形態において、Z及び/又はRは、活性官能基であってもよいし、あるいはZは、活性官能基であってもよく、またRは、不活性基であってもよい。
【0108】
スキーム11に入る化合物の例として、ポリオキサゾリンの重合を開始させる前記の欄に記載の保護されたエステル−トリフラートの使用は、次の重合体を生じる:
【0109】
【化15】

【0110】
スキーム11に入る化合物の追加例として、前記のスキーム9に示したTBDPS−ヒドロキシル保護されたトリフラートを用いる開始は、開始剤ヒドロキシ及びペンダント官能基を有するヘテロ官能性化合物を調製するのに使用できる。
【0111】
【化16】

【0112】
本明細書に記載のように、ポリオキサゾリン重合体は、単独重合体(n=0である場合)であってもよいし、あるいはランダム又はブロック共重合体であってもよい。
【0113】
標的分子−POZ複合体
本開示は、前記のような標的分子−POZ複合体を生成させるために標的分子と結合を形成できる種々様々なPOZ誘導体を記載する。一般的な実施形態において、本開示は、スキーム9に示す一般式を有する標的分子−POZ複合体を提供する:
−B−TM
スキーム9
式中、
Aは、本明細書に記載のPOZ誘導体であって、前記POZ誘導体の活性官能基と標的分子の結合パートナーとの反応中に除去される脱離基がないPOZ誘導体であり
TMは、結合パートナーを含有する標的分子であり;
aは、結合されたPOZ誘導体の数を示し、POZ誘導体の活性官能基の数及び標的分子の結合パートナーの数に応じて変化し;
TMは、標的分子であり;
下付き文字tは、結合されたTMの数を示す整数であり、POZ誘導体の活性官能基の数及び標的分子の結合パートナーの数に応じて変化し;
Bは、本開示のPOZ誘導体の官能性活性基と標的分子の結合パートナーの間に形成される結合であり、結合Bの性質は、一官能性POZ誘導体の活性官能基及び標的分子の結合パートナーの性質に依存することが理解される。一つの実施形態において、B結合は、加水分解安定性結合である。典型的な活性基、結合パートナー及びB結合は、特許協力条約出願第PCT/US2008/002626号明細書に記載されている(特にその表3参照)、前記明細書は、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる(このようなリストは、包括的であることを意味せず、その他の組み合わせ及び得られるB結合は、本開示の教示を与えると想定し得る。)。
【0114】
本明細書使用する「標的分子」という用語は、治療用途、診断用途又は標的機能を有する任意の分子を指し、前記標的分子は、本開示のPOZ重合体又はPOZ誘導体の活性官能基、例えば、以下に限定されないが、治療薬、診断薬、標的薬、有機小分子、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、タンパク質、炭水化物、例えばヘパリン又はヒアルロン酸、又は脂質、例えばリン脂質と反応することができる。
【0115】
標的分子−POZ複合体の例は、特許協力条約出願第PCT/US2008/002626号明細書(特に、実施例17〜18、25〜27及び34〜35参照)及び特許協力条約出願第PCT/US2009/030762号明細書(特に、実施例13〜14参照)において見出すことができる。これらの明細書は、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
POZ−脂質複合体
本開示はまた、ポリオキサゾリン−脂質複合体を提供する。本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体は、ポリオキサゾリン部分に結合された脂質分からなる。一つの実施形態において、脂質部分は、少なくとも1つの疎水性部分と、ポリオキサゾリン部分の化学基と結合を形成できる化学基とを含有する。別の実施形態において、脂質部分は、2つの疎水性部分を含有し、化学基は、頭部基位置に配置され、ポリオキサゾリン部分は、頭部基位置に配置された化学基を介して脂質部分に結合される。
【0117】
一般的な形において、本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体は、式:LP−L−POZ(式中、LPは、脂質部分を表し、Lは、脂質部分とポリオキサゾリン部分の間の結合を表し及びPOZは、ポリオキサゾリン部分を表す。)で表し得る。脂質部分及びポリオキサゾリン部分は、以下に記載する。
【0118】
脂質は、疎水性部分と親水性部分を含有する分子の1つの分類である。疎水性部分と親水性部分は、これらの分子に両親媒性を提供し、水性環境で二重層及びベシクル/リポソームを形成する特定の方法でこれらの分子を凝集させる。リン脂質は、このような両親媒性を有する1種の脂質である。リン脂質の頭部基は、親水性であり、これに対して尾部基は、疎水性である。親水性頭部基は、負に帯電しているリン酸基を含有し、その他の極性基を含有していてもよい。疎水性尾部基は、一般に、長い脂肪酸炭化水素鎖からなる。水性環境に置かれた場合に、リン脂質は、リン脂質の特異性に応じて種々の構造を形成する。
【0119】
ポリオキサゾリン−脂質複合体の脂質部分は、ベシクル/リポソームを形成できる脂質を、単独で又はリポソーム組成物(以下に記載する。)の他の脂質成分と組み合わせて含有していてもよい。脂質は、合成物であってもよいし又は天然物であってもよい。脂質部分を含有する脂質の厳密な性質に関係なく、脂質は、ポリオキサゾリン部分の化学基と結合を形成するのに適した化学基を含有する。結合の性質は、ポリオキサゾリン部分に存在する化学基と、脂質部分に存在する化学基とに依存する。一つの実施形態において、ポリオキサゾリン部分と結合を形成する化学基は、脂質部分の頭部基に配置される。例えば、化学基は、アミン基、ヒドロキシル基、アルデヒド基又はカルボン酸基であってもよく;その他の化学基は除外される。ポリオキサゾリン部分は、開始剤の適切な化学基又は重合体の末端によって結合していてもよい。
【0120】
一つの実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体の脂質部分は、2つの疎水性部分を含有する。疎水性部分は、典型的には、アルキル部分を含有するアシル鎖である。アシル鎖のアルキル部分は、長さが変化し得る;また、アルキル部分は、飽和されていてもよい(二重結合を含有していない。)又は1つ又はそれ以上の不飽和領域を含有していてもよい(1つ以上の二重結合を含有する。)。不飽和である場合には、アルキル部分は、種々の不飽和度、例えば1から4個の不飽和領域を有し得る。アルキル部分が、不飽和領域を含有する場合には、二重結合の水素原子は、シス又はトランス配置であり得る。一つの実施形態において、アシル鎖のアルキル部分は、14から24個の炭素を含有する。2つの疎水性部分のアルキル部分は、同一であってもよいし又は異なっていてもよい。
【0121】
一つの実施形態において、脂質は、リン脂質、グリセロ脂質、又はステロール脂質である。特定の実施形態において、脂質は、リン脂質、例えば、以下に限定されないが、ホスホグリセリド又はスフィンゴ脂質である。典型的なホスホグリセリドとしては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン及びホスファチジン酸が挙げられるが、これらに限定されない;典型的なスフィンゴ脂質としては、スフィンゴミエリンが挙げられるが、これに限定されない。具体的な実施形態において、脂質部分は、ホスファチジルエタノールアミンである。ホスファチジルエタノールアミンは、ポリオキサゾリン部分と結合を形成するのに使用できる反応性アミノ基を含有する。
【0122】
ポリオキサゾリン−脂質複合体の脂質部分は、本明細書に記載のリポソーム組成物に所望の特性を付与するのに選択し得る。例えば、不飽和度は、本明細書に記載のリポソーム組成物に所望の特性を提供するのに選択し得る。例えば、脂質部分の不飽和度の上昇は、リポソーム組成物に流動性を付与し得る;また、不飽和領域の周りのシス配置もまた、リポソーム組成物に高められた流動性を付与し得る。同様に、飽和脂質部分は、リポソーム組成物に剛性を付与し得る。流動性及び/又は剛性は、リポソーム組成物の安定性及び/又はリポソーム組成物から薬物又はポリオキサゾリン−脂質複合体の放出の速度を、少なくとも部分的に調整するのに選択し得る。一般に、より流動性の脂質が流動性であればあるほど、より剛性の脂質成分よりも、処方し、大きさを分けるのがより簡単である。
【0123】
ポリオキサゾリン−脂質複合体のポリオキサゾリン部分は、本明細書に記載のように作成し得る。一つの実施形態において、ポリオキサゾリン部分は、標的分子の結合パートナーと反応することができるペンダント官能基を含有する。この実施形態において、ポリオキサゾリン部分は、次式:−L{POZ−POZII−S−LII−R又はI−{POZ−POZII−S−LII−で表し得る;
式中、
POZは、構造[N(CO−R’−Z)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
POZIIは、構造[N(COR)CHCH]nのポリオキサゾリン重合体であり;
R’、L及びLIIは、それぞれ任意の結合基であり;
Zは、活性ペンダント官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基、又は活性官能基、あるいは活性官能基に転化させることができる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
Iは、開始剤位置に存在する基であり;
nは、0〜1000の整数であり、但し、n=0である場合には、mは>1であることを条件とし;
mは、1〜1000の整数であり;及び
aは、ランダム共重合体を示すran、又はブロック共重合体を示すblockであり、但し、n=0である場合には、aはblockである。
【0124】
前記ペンダント活性官能基は、POZのZ基で表され;代表的なZ基は、本明細書において提供され、本明細書に開示のZ基は、記載のポリオキサゾリン−脂質複合体に使用し得る。一つの実施形態において、Zは、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、エステル、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである。活性官能基である場合には、Rは、これら同じ基であり得る。Iは、本明細書に開示の開始基であり得る;一つの実施形態において、Iは、不活性基、例えばH又はアルキルである。
【0125】
一つの実施形態において、L及びLIIは、それぞれ独立して−(CH−NHCO−(CH−、−(CHNHCO−(CH−又は(CH(式中、f、g及びhは、それぞれ0〜10から独立して選択される整数である。)である。
【0126】
一つの実施形態において、前記複合体のポリオキサゾリン部分は、水性環境に可溶性である。前記ペンダント基の性質は、溶解性をある程度まで変化させることができる。ポリオキサゾリン部分の溶解性は、ポリオキサゾリン部分がリポソーム表面の向こうに及びリポソーム外環境に広がることを可能にする。このように、ポリオキサゾリン部分は、リポソーム表面を効率的に遮蔽し、リポソーム外環境に対する標的分子曝露を提供できる。
【0127】
前記ポリオキサゾリン部分は、単独重合体であってもよい;同様に、ポリオキサゾリン部分は、第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられている第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含有するランダム又はブロック共重合体であってもよい。例えば、ポリオキサゾリン部分は、単独重合体(n=0である場合)であってもよく、ポリオキサゾリン部分は、POZだけを含有する。また、ポリオキサゾリン部分は、ランダム又はブロック共重合体(n>1である場合)であってもよい。このような実施形態において、POZの単一の単位又はブロックは、POZIIで表されるポリオキサゾリン重合体の単一の単位又はブロックで隔てられていてもよい。
【0128】
一つの実施形態において、POZIIは、適切なR基の選択により第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられている第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含むランダム又はブロック共重合体であり得る。Rは、独立して、POZIIで表されるポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について選択される。一つの実施形態において、第一及び第二のポリオキサゾリンのR基は、独立して、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである。別の実施形態において、第一及び第二のポリオキサゾリンのR基は、独立してC1からC4アルキル基である。
【0129】
一つの実施形態において、POZIIは、C1−C2アルキル(例えば、メチル又はエチル)の単独重合体であるか、あるいはC1−C2アルキルのランダム又はブロック共重合体である。このような実施形態において、C1−C2アルキル単独重合体、あるいはランダム又はブロック共重合体は、ポリオキサゾリン部分に存在するポリオキサゾリン重合体の50%、75%、90%、95%又は99%を構成し得る。
【0130】
ポリオキサゾリン重合体は、単一の活性官能基又は多数の活性官能基を含有していてもよく、多数の活性官能基は、同一であるか又は異なる。例えば、一つの実施形態において、R基及びR基の少なくとも1つは、不活性基である。別の実施形態において、R基及びR基の少なくとも1つは、活性官能基である。
【0131】
一つの実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、脂質部分としてリン脂質を含有する。この実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、一般構造:
【0132】
【化17】

(式中、RH1及びRH2は、それぞれ独立して、飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であり、Lは、脂質部分の親水性部分及びポリオキサゾリン部分を結合する結合基である。)
で表し得る。
【0133】
別の実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、脂質部分としてリン脂質を含有する。この実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、一般構造:
【0134】
【化18】

(式中、RH1及びRH2は、上記で定義した通りである。)
で表し得る。
【0135】
前記のように、アルキル部分は、飽和されていてもよいし又は1つ以上の不飽和領域を有していてもよく、鎖長を変化させることができる。前記のように、結合の性質は、ポリオキサゾリン部分に存在する化学基と脂質部分に存在する化学基とに依存する。一つの実施形態において、ポリオキサゾリン部分と結合を形成する化学基は、脂質部分の頭部基及びポリオキサゾリン部分の開始剤末端に配置される。例えば、化学基は、アミン基、ヒドロキシル基、アルデヒド基又はカルボン酸基であってもよく;その他の化学基は除外される。
【0136】
一般に、重合体とベシクル形成脂質との共有結合は、ポリオキサゾリン部分の活性化学基と、脂質部分の相補的化学基との反応によって達成される。ポリオキサゾリン部分及び/又は脂質部分の活性化学基は、反応(例えば、以下に限定されないが、保護基の除去)に先立って活性化されていてもよい。ヒドロキシル基、アミン基又はカルボキシル基は、一官能性活性化剤、例えば、特にN−ヒドロキシスクシンイミド、ギ酸エチル、DCCD、ウッドワード試薬K、シアヌル酸及びトリフルオロメタンスルホニルクロリドによってカップリングのために活性化されていてもよい。異なる反応性を有する複数の基を含有する多数の二官能性架橋試薬、例えば幾つかのジイソシアネートも使用し得る。
【0137】
本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体の形成を例証するために、以下のスキームは、ペンダントアセチレン基を含有するポリオキサゾリン−脂質複合体を形成するために、活性官能基としてペンダントアセチレン基を有するPOZ NHSエステルと、アミノ−リン脂質(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、DPPE)との結合を表す。ポリオキサゾリン部分は、本明細書の実施例19に記載され、使用した略語は、実施例19〜22において見出すことができる。本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体の追加例を、本明細書の実施例22〜24に示す。
【0138】
【化19】

【0139】
アセチレン基は、標的分子の結合パートナーに対する結合を形成するのに適しており、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、少なくとも1つのポリオキサゾリン−脂質複合体を含有するリポソーム組成物を製造するのに使用できる。
【0140】
当業者は、その他の官能基を連結する方法を知っている。例えば、末端ヒドロキシル基の活性化は、Zalipskyによって開示されている(Zalipsky、Biotechnol Appl Biochem.1992,15(1):100−14)。一つのこのような方法において、OH基を有するポリオキサゾリン重合体を、無水コハク酸と反応させてカルボキシル基を生成させる。カルボキシル基は、N−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることによって活性化され、ポリオキサゾリン重合体は、アミノ基含有リン脂質と反応させる。
【0141】
リポソーム組成物
ポリオキサゾリン−脂質重合体を組み込む本開示のリポソーム組成物は、本開示のポリオキサゾリン−脂質重合体を組み込んでいない同様のリポソーム組成物よりも多数の利点を提供する。例えば、本開示のリポソーム組成物は、体内でのリポソーム組成物について長い滞留時間を提供し;例えば、リポソーム組成物は、取り込まれた標的分子、例えば治療薬を、長長時間にわたって放出することができる。また、長期滞留時間は、リポソーム組成物が体内の種々の部位に効率的に到達し、このような領域に入ることを可能にする。
【0142】
本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体は、リポソーム組成物の調製に使用される。一つの実施形態において、リポソーム組成物は、ヒト疾患を治療するための治療薬を含有する。別の実施形態において、リポソーム組成物は、診断薬を含有する。さらに別の実施形態において、リポソーム組成物は、該リポソーム組成物を特定の細胞又は組織に標的として向ける標的薬を含有する。本開示のリポソーム組成物はまた、前記薬剤の組み合わせ(例えば、治療薬と標的試薬又は診断薬と標的薬)を含有していてもよい。一つの実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、リポソーム組成物に組み込まれた場合には、リポソーム組成物の脂質層に約0.5%から約50%のモル%のモル比で、リポソーム組成物の脂質層に約1%から約30%のモル%のモル比で、リポソーム組成物の脂質層に約2%から約20%のモル%のモル比で、又はリポソーム組成物の脂質層に約5%から約10%のモル%のモル比で存在する。このような実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、ポリオキサゾリン−脂質複合体を欠いているリポソームの血液循環時間よりもリポソームの血液循環時間を延ばすのに有効な層を形成し得る。
【0143】
前記リポソーム組成物は、本開示のポリオキサゾリン−脂質複合体を、ベシクル及び/又はリポソームを形成できるその他の脂質成分(ポリオキサゾリン成分を欠いている。)と組み合わせて含有する(ポリオキサゾリン成分を欠いている前記脂質成分は、非誘導化脂質と呼ばれる。)。非誘導体化脂質としては、疎水性及び極性の頭部基部分を有する両親媒性脂質が挙げられ、該非誘導体化脂質は、(a)水中で二重層ベシクルに自然になることができるか、又は(b)内部と接触している疎水性部分(二重層膜の疎水性領域)と、外部に向けた極性頭部基部分(二重層膜の極性表面)とを有する脂質二重層に安定的に組み込まれる。
【0144】
一つの実施形態において、非誘導体化脂質は、2つの疎水性部分と親水性頭部基とを含有する。疎水性部分は、典型的には、アルキル部分を含有するアシル鎖である。アシル鎖のアルキル部分は、長さが変化し得る;また、アルキル部分は、飽和されていてもよい(二重結合を含有していない。)又は1つ又はそれ以上の不飽和領域を含有していてもよい(1つ以上の二重結合を含有する。)。不飽和である場合には、アルキル部分は、種々の不飽和度、例えば1から4個の不飽和領域を有し得る。アルキル部分が、不飽和領域を含有する場合には、二重結合の水素原子は、シス又はトランス配置であり得る。一つの実施形態において、アシル鎖のアルキル部分は、14から24個の炭素を含有する。2つの疎水性部分のアルキル部分は、同一であってもよいし又は異なっていてもよい。
【0145】
一つの実施形態において、脂質は、リン脂質、グリセロ脂質、又はステロール脂質である。特定の実施形態において、脂質は、リン脂質、例えば、以下に限定されないが、ホスホグリセリド又はスフィンゴ脂質である。典型的なホスホグリセリドとしては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン及びホスファチジン酸が挙げられるが、これらに限定されない;典型的なスフィンゴ脂質としては、スフィンゴミエリンが挙げられるが、これに限定されない。具体的な実施形態において、脂質部分は、ホスファチジルエタノールアミンである。
【0146】
リポソーム組成物のポリオキサゾリン−脂質複合体は、本明細書に記載のように調製される。ポリオキサゾリン−脂質複合体は、ポリオキサゾリン−脂質複合体を欠いているリポソーム組成物の血液循環時間を延ばすのに又は体の細胞又は組織に標的分子を効率的に送達させるのに十分なモル濃度で存在する。具体的な実施形態において、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、ペンダント位置に活性官能基を有する少なくとも1つのポリオキサゾリン重合体を含有する。
【0147】
脂質組成物は、標的分子を組み込むために設計される。標的分子は、リポソーム組成物内に遊離形態で取り込まれるか又は本明細書に記載のように、又は前記の組み合わせによってポリオキサゾリン−脂質複合体に結合されていてもよい。標的分子としては、標的薬、診断薬又は治療薬が挙げられる。典型的な標的分子としては、以下に限定されないが、有機小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、タンパク質、又は炭水化物が挙げられる。リポソーム組成物は、2個以上の標的分子を含有していてもよい。例えば、リポソーム組成物は、リポソーム組成物内に取り込まれた治療薬又は診断薬を有していてもよく、またリポソーム組成物のポリオキサゾリン複合体に結合された標的薬を有していてもよい。このように、リポソーム組成物は、体の特定の細胞又は組織に標的として向け得る。一つの実施形態において、標的分子の少なくとも一部分は、リポソーム外環境(例えば、血流並びに体の細胞及び組織)に曝される。
【0148】
リポソーム組成物中のリポソーム/ベシクルの大きさは、変化し得る。一つの実施形態において、この大きさは、約0.025ミクロンから約10ミクロンの間にある;別の実施形態において、この大きさは、約0.025ミクロンから約5ミクロンの間にある;さらに別の実施形態において、この大きさは、約0.025ミクロンから約1ミクロンの間にある。サイズ分別方法は、本明細書に開示される。
【0149】
本開示のリポソーム組成物は、種々の方法で調製し得る。一つの実施形態において、リポソームは、逆相蒸発法で調製される(Szoka et al.,PNAS 1978 vol.75,4194−4198;Smiraov et al.,Byulleten’Eksperimental’noi Biologii i Meditsiny,1984,Vol.98,pp.249−252;米国特許第4,235,871号明細書)。この方法において、リポソーム形成脂質の有機溶液(これは、ポリオキサゾリン−脂質複合体を、結合された標的分子と共に又は結合された標的分子なしで含有し得る。)は、少量の水性媒体と混合され、得られる混合物は、油中水型エマルジョンを形成するために、好ましくは発熱物質を含有していない成分を使用することによって分散される。送達させるべき標的分子は、脂質溶液に(親油性標的分子の場合)、又は水性媒体に(水溶性標的分子の場合)加えられる。脂質溶媒は、蒸発によって除去され、得られるゲルがリポソームに変換される。逆相蒸発ベシクル(REV)は、約0.2〜0.4ミクロンの間の典型的な平均サイズを有し、主としてオリゴラメラ状である、すなわち1個又は数個の脂質二重層外殻(shell)を含有する。REVは、以下で論じるように、好ましくは約0.05から0.2ミクロンの間の選択されたサイズを有するオリゴラメラベシクルを得るために、押し出しによって、容易にサイズを分け得る。
【0150】
また、多層状ベシクル(MLV)を作成することができる。この方法において、リポソーム形成脂質の混合物(これは、本明細書に記載のように、ポリオキサゾリン−脂質複合体を、結合された標的分子と共に又は結合された標的分子なしで含有していてもよい。)は、適当な溶媒に溶解され、容器中で蒸発されて薄膜を形成する。次いで、薄膜が、水性媒体で覆われる。脂質薄膜は、水和してMLVを形成する。MLVは、一般に約0.1から10ミクロンの間のサイズを示す。MLVは、押し出し法及び本明細書に記載のその他の方法で所望のサイズ範囲にサイズを小さくし得る。
【0151】
REV及びMLVについて一つの効果的なサイジング方法は、選択された均一な細孔径、典型的には0.05ミクロン、0.08ミクロン、0.1ミクロン、0.2ミクロン、又は0.4ミクロンを有するポリカーボネート膜を通してリポソームの水性懸濁物を押し出すことを含む (Szoka et al.,PNAS 1978 vol.75,4194−4198)。前記膜の細孔径は、特に調製物が前記と同じ膜を通して2回以上押し出される場合には、その膜を通して押し出すことによって製造されるリポソームの最大径にほぼ相当する。大きいサイズのMLVのサイジング方法は、Zhuら(PLoS One.2009;4(4):e5009.Epub 2009 Apr 6)によって提供されている。
【0152】
小さい粒径が望まれる場合には、REV又はMLV調製物は、処理して0.04〜0.08ミクロン範囲のサイズを特徴とする小さい単層状ベシクル(SUV)を製造することができる。このような粒子は、前記粒子を毛細血管壁を介して吸収し得る腫瘍組織又は肺組織を標的とするのに有用であり得る(0.1ミクロンよりも大きい粒子は吸収されないかもしれない。)。
【0153】
また、ポリオキサゾリン−脂質複合体は、結合された標的分子と共に又は結合された標的分子なしで、リポソームが前記の技法を使用して形成された後に、リポソーム組成物中に導入し得る。このアプローチにおいて、予め形成されたリポソームが、ポリオキサゾリン−脂質複合体の存在下でインキュベートされる;ポリオキサゾリン−脂質複合体は、拡散によってリポソーム中に組み込まれる。溶液中の遊離の又はリポソームによって取り込まれるポリオキサゾリン−脂質複合体の濃度が、監視され、前記プロセスは、リポソーム組成物中のポリオキサゾリン−脂質複合体の所定の濃度が達成された場合に終了される。インキュベーション溶液は、リポソーム組成物中へのポリオキサゾリン−脂質複合体の拡散を促進するために界面活性剤又はその他の薬剤を含有していてもよい。
【0154】
リポソーム組成物は、使用に先立ち無関係な成分を除去するために処理し得る。例えば、界面活性剤が前記のように使用される場合には、過剰の界面活性剤は、使用に先立ち除去し得る。また、標的分子、例えば治療薬又は診断薬が、リポソーム組成物に取り込まれる場合には、過剰の又は取り込まれていない治療薬又は診断薬は、使用に先立ち除去し得る。この課題を達成する分離法は、当該技術において知られており、選択される具体的方法は、除去すべき成分の性質に依存し得る。典型的な方法としては、以下に限定されないが、遠心分離、透析及び分子篩クロマトグラフィーが、適当である。組成物は、慣用の0.45ミクロン厚のフィルターに通して濾過することによって滅菌できる。
【実施例】
【0155】
材料及び一般的方法
試薬は、EM Science社、Acros Organics社、ABCR社又は社又はAldrich社から購入した。乾燥溶媒は、蒸留し、次いで水素化カルシウム上で蒸留するで乾燥することによって調製した。単量体は、水素化カルシウム上で蒸留するか又は乾燥ベンゼンを使用して凍結乾燥した。GPCは、Agilent Technologies社の装置でRI検出器を用いて行った。2本のPhenogel GPCカラム(Phenomenex製、5ミクロン、300×7.8mm)を、直列で60℃で使用した。移動相は、DMFであった。較正曲線は、MALDI TOFによって測定される異なる分子量のM−PEOZ−OH試料を用いて作成した。MALDI−TOF MSは、ジトラノールマトリクスを用いてBruker社のMicroflex又はBiflex IIIを用いて行った。試料は、重合体のクロロホルム溶液とマトリックス(10mg/mL)とを1:1(v/v)の比率で混合することによって調製した。NMRスペクトルは、CDCl3中でBruker ARX−300又はVarian 500MHz装置で記録した。EI質量スペクトルは、Finigann MAT8200で、70eVで得た。
【0156】
実施例1. 1−(tert−ブチルジフェニルシリル)オキシ−ドデカン−12−オール(1)の調製
シュレンクフラスコで、1,12−ドデカンジオール(7.96g、39.4ミリモル、1当量)を、40mLの乾燥DMFに窒素下で溶解した。イミダゾール(2.63g、38.6ミリモル、1当量)と、tert−ブチルクロロジフェニルシラン(TBDPS)(10.84g、39.4ミリモル、1当量)とを加え、この反応混合物を45℃に加熱した。48時間攪拌した後に、300mLの蒸留水を用いて反応を停止させた。水相を、ジエチルエーテルで4回抽出し、有機相を採取し、2NのHCl(2×100mL)で2回洗浄し、飽和NaHCO(200mL)で1回洗浄し、飽和NaCl(200mL)で1回洗浄し、NaSOで乾燥した。10:1のヘキサン:酢酸エチルを溶出液として使用するシリカゲル上でのカラム−クロマトグラフィーにより、7.98g(46%)の所望生成物を淡黄色油状物として得た。H NMR(300.13MHz):δ(ppm)=1.05(s、9H、tert−ブチル)、1.26(br、16H、−O−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.58(m、4H、−O−CH−CH−)、3.65(m、4H、−O−CH−)、7.40(m、6H、フェニル)、7.69(m、4H、フェニル)。13C NMR(75.48MHz):δ(ppm)=19.2、25.7、25.8、25.9、29.3、29.4、29.58、29.6、32.6、32.8、63.1、64.0、127.5、129. 4、134.1、135.6
【0157】
実施例2. 12−(tert−ブチルジフェニルシリル)オキシ−ドデシル 1−トリフルオロメタンスルホネート(2)
シュレンクフラスコに、アルゴン雰囲気下で無水KCO(320mg、23.4ミリモル、10当量)を装填し、次いで前記(1)(103mg、2.34ミリモル、1当量)を装填した。その後に、3.2mlの乾燥クロロホルム中の無水トリフルオロメタンスルホン酸の溶液を加え、得られた懸濁物を激しく攪拌した。16時間後に、溶媒を真空中で蒸発させ、次いで3mLの乾燥クロロホルムを加えた。保護雰囲気下でPTFEシリンジフィルターに通して濾過し、次いで溶媒を蒸発させて、表記(2)134mg(100%)を無色液体として得た。H NMR(250.13MHz):δ(ppm)=1.05(s、9H、tert−ブチル)、1.26(br、16H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.56(m、2H、−Si−O−CH−CH−)、1.83(m、2H、FC−SO−O−CH−CH−)、3.66(t、2H、J=5Hz、−Si−O−CH−)、4.53(t、2H、J=6.5Hz、FC−SO−O−CH−)、7.40(m、6H、フェニル)、7.69(m、4H、フェニル)
【0158】
実施例3. 10,12−ドコサジイン−1,22−ジオール(3)
表記の物質を、10.3gの10−ウンデシン−1−オール(61.2ミリモル)から出発してBader及びRingsdorfによって報告された方法(J.Polym.Sci.,1982,20,1623)に従って合成した。この反応により、9.5g(28.4ミリモル、93%)の所望生成物を得た。H NMR(250.13MHz):δ(ppm)=1.26(br、20H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.54(m、8H、−O−CH−CH−及び−C≡C−CH−CH−)、2.24(t、4H、J=6.8Hz、−C≡C−CH−)、3.64(t、J=6.7Hz、HO−CH−)
【0159】
実施例4. 1−(tert−ブチルジフェニルシリル)オキシ−10,12−ドコサジイン−22−オール(4)
この物質は、前記(1)に関する方法と同じ方法に従って合成し、9.40gの前記(3)(28.1ミリモル)をジオール成分として使用して、同等の収量で得た。4.25gの1−(tert−ブチルジフェニルシリル)オキシ−10,12−ドコサジイン−22−オール(7.24ミリモル)が26%の収率で得られた。H NMR(250.13MHz):δ(ppm)=1.05(s、9H、tert−ブチル)、1.26(br、20H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.53(m、8H、−O−CH2−CH−及び−C≡C−CH−CH−)、2.24(t、4H、J=6.8Hz、−C≡C−CH−)、3.64(t、2H、J=6.5Hz、−Si−O−CH−)、3.65(t、2H、J=6.5Hz、HO−CH−)、7.40(m、6H、フェニル)、7.69(m、4H、フェニル)。13C NMR(75.48MHz):δ(ppm)=25.69、25.72、26.9、28.30、28.34、28.8、29.00、29.04、29.30、29.34、29.4、32.5、32.8、63.1、64.0、127.5、129.5、134.1、135.6
【0160】
実施例5. 22−(tert−ブチルジフェニルシリル)オキシ−10,12−ドコサジイン−1 トリフルオロメタンスルホネート(5)
この分子は、前記(2)と同じ方法で合成して所望の生成物を定量的に得た。H NMR:δ(ppm)=1.05(s、9H、tert−ブチル)、1.30(br、20H、−O−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.54(br、8H、−O−CH−CH−、−C≡C−CH−CH−)、2.24(m、2H、CFSO−O−CH2−CH−)、3.65(t、2H、J=7Hz、−C≡C−CH−)、4.53、(t、2H、J=7Hz、FC−SO−O−CH−)、7.40(m、6H、フェニル)、7.68(m、4H、フェニル)。19F NMR:δ=−29.31ppm(−OSO−CF)。EI−MS:m/z=646.9[M−tert−ブチル]、496.9[M−tert−ブチル、−OSOCF
【0161】
実施例6. 重合の一般的な合成方法
乾燥アルゴン雰囲気下のシュレンクフラスコで、0.23ミリモル(1当量)のω−TBDPS保護トリフラートを、6mLの乾燥クロロホルムに溶解した。2−メチル−2−オキサゾリン(587mg、6.91ミリモル、30当量)を加えた。反応混合物を、60℃に加熱し、攪拌した。24時間後に、212mgのピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.14ミリモル、5当量)を加え、この混合物をさらに4時間攪拌し、次いで300mgのKCOを加え一夜攪拌した。室温まで冷却した後に、得られた溶液を、10倍量過剰の氷冷ジエチルエーテルに注入することによって沈殿させ、15分間4000rpmで遠心分離した。液相のデカンテーション後に、固相を、穏やかな空気流下で乾燥し、蒸留水に溶解した。その後の凍結乾燥により、所望の重合体を得た。
【0162】
実施例7. TBDPS−O−(CH12−[N(COCH)CHCH]35−NCN−BOC(6)の調製
上記重合体を、前記(2)(125mg、0.22ミリモル、1当量)と2−メチル−2−オキサゾリン(650mg、7.65ミリモル、35当量)から合成した。40時間後に、ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(406mg、2.18ミリモル、10当量)を加えることによって、カチオン重合を停止させた。収量:644mg(82%).H NMR:δ(ppm)=1.03(s、9H、−Si−C(CH)、1.26(br、16H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.44(s、9H、−CO−O−(CH)、1.54(br、4H、−O−CH−CH−)、2.07−2.12(br、146H、−N−CO−CH)、3.45(b、191H、−N−CH−CH−N−)、3.65(t、2H、J=6.75Hz、−Si−O−CH−)、7.38(m、6H、フェニル)、7.67(m、4H、フェニル)。MALDI−TOF:M=3586g/モル、PDI=1.01
【0163】
実施例8. TBDPS−O−(CH12−[N(COCH)CHCH16−NC10(7)の調製
上記重合体を、前記(2)(462mg、0.81ミリモル、1当量)と2−メチル−2−オキサゾリン(1.23g、14.5ミリモル、18当量)から合成した。重合は、ピペリジン(500mg、5.87ミリモル、7.25当量)を加えることにより停止させた。収量:984mg(57%)。H NMR:δ(ppm)=1.03(s、9H、−Si−C(CH)、1.24(br、16H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.55(br、4H、−O−CH−CH−)、1.70(br、2H)、1.86(br、5H)、2.07−2.14(br、53H、−N−CO−CH)、2.47(br、2H)、3.12(bm、7H)、3.45(br、65H、−N−CH−CH−N−)、3.64(t、2H、J=5.5Hz、−Si−O−CH−)、7.38(m、6H、フェニル)、7.67(m、4H、フェニル)。MALDI−TOF:M=1922g/モル、PDI=1.03
【0164】
実施例9. TBDPS−O−(CH12−[N(COCH)CHCH18−OH(8)の調製
上記重合体を、前記(2)(66mg、0.12ミリモル、1当量)と2−メチル−2−オキサゾリン(176mg、2.07ミリモル、17当量)から2.75mLのクロロホルム中で合成し、2.75mLの水と5.75mLのメタノールとの混合物に溶解した280mgの炭酸カリウム(2.03ミリモル、17当量)を加えることによって重合を停止させた。この混合物を、60℃に加熱し、一夜攪拌した。溶媒を蒸発させ、固形残留物を、クロロホルム(4mL)で抽出した。10倍過剰のジエチルエーテルにPTFEシリンジフィルターによって注入し、その後に水を使用して凍結乾燥して、120mg(51%)の重合体を得た。H NMR:δ(ppm)=1.28、(br、20H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.53(br、8H、−O−CH−CH−及び−C≡C−CH−CH−)、2.06−2.13(b、95H、−N−CO−CH)、3.25(2H、−N−CH−CH−Nピペラジン−)、3.49(br、60H、−N−CH−CH−N−)、3.56(t、2H、J=6.5Hz、HO−CH−)、3.64(t、2H、J=6.5Hz、−Si−O−CH−)、3.77(2H、−CH−CH−CH−N−),7.38(m、6H、フェニル)、7.67(m、4H、フェニル)。MALDI−TOF:M=1980g/モル、PDI=1.02
【0165】
実施例10. TBDPS−O−(CH12−[N(COCH)CHCH53−NCNH(9)の調製
上記重合体を、前記(2)(89mg、0.17ミリモル、1当量)と2−メチル−2−オキサゾリン(720mg、8.46ミリモル、50当量)から4.5mLのクロロホルム中で合成し、3mLのクロロホルム中450mgピペラジン(5.23ミリモル、31当量)の溶液を60℃で注入することによって重合を停止させた。収量:551mg(67%)。H NMR:δ=1.03ppm(s、9H、−Si−C(CH)、1.24(br、16H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.54(br、4H、−O−CH−CH−)、2.07−2.13(br、53H、−N−CO−CH)、2.93(br、16H)、3.07(s、12H)、3.23(br、8H)、3.45(br、65H、−N−CH−CH−N−)、3.64(t、2H、J=5.5Hz、−Si−O−CH−)、7.38(m、6H、フェニル)、7.67(m、4H、フェニル)。MALDI−TOF:Mn=4951g/モル、PDI=1.01
【0166】
実施例11. TBDPS−O−(CH−CC−CC−(CH−[N(COCH)CHCH35−NCN−BoC(10)
【0167】
【化20】

上記重合体を、前記化合物(5)(203mg、0.29ミリモル、1当量)と2−メチル−2−オキサゾリン(788mg、9.26ミリモル、32当量)から6mLのクロロホルム中で合成し、ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(374mg、2.02ミリモル、7当量)を用いて重合を停止させた。収量:699mg(68%)。H NMR:δ=1.03ppm(s、9H、−Si−C(CH)、1.28(br、30H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.44−1.46(m、33H、−CO−O−C(CH)、1.51(br、8H、−O−CH−CH−及び−C≡C−CH−CH−)、2.00(s、5H)、2.07−2.13(br、53H、−N−CO−CH)、2.23(t、5H、J=5.75Hz、−C≡C−CH−)、2.42(br、5H)、2.50(br、3H)、3.00(br、9H)、3.21(br、7H)、3.44(br、174H、−N−CH−CH−N−)、3.61−3.71(m、4H、−Si−O−CH及びHO−CH−)、7.38(m、6H、フェニル)、7.67(m、4H、フェニル)。MALDI−TOF:M=3205g/モル、PDI=1.01
【0168】
実施例12. ポリ(2−オキサゾリン)のtert−ブチルカルボン酸及びtert−ブチルジフェニルシリル保護基の一般的な脱保護方法
tert−ブチルジフェニルシリル−及び/又はtert−ブチルカルボン酸−保護ポリ(2−オキサゾリン)を、2Nの水性塩酸(3mL/100mg重合体)に溶解し、攪拌した。24時間後に、得られた懸濁液をNaHCOで中和し、セルロースに通して濾過し、凍結乾燥した。固形残留物を、クロロホルム(3mL/100mg重合体)で3時間抽出した。10倍過剰のジエチルエーテルに室温で注入することによって、重合体を沈殿させた。エーテル相のデカンテーション、その後の水を使用する固相の凍結乾燥により、所望の重合体を得た。
【0169】
実施例13. HO−(CH12−[N(COCH)CHCH18−OH(11)の調製
前記(8)(50mg、13.9μモル)の脱保護により、40mg(88%)の表記(11)を得た。H NMR:δ=1.26ppm(br、16H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.53(br、5H、−O−CH−CH−)、2.06−2.12(b、96H、−N−CO−CH)、2.33(br、13H)、2.47(br、4H、−CH−CH−NHピペラジン)、2.87(br、3H、CH−CH−NHピペラジン)、3.44(br、125H、−N−CH−CH−N−)、3.56(t、2H、J=6.5Hz、−Si−O−CH−)
【0170】
実施例14. HO−(CH−CC−CC−(CH−[N(COCH)CHCH35−NCNH(12)の調製
前記(10)(217mg、67.7μモル)の脱保護により、149mg(77%)の上記(12)を得た。H NMR:δ=1.28(br、30H、−CH−CH−CH−CH−CH−)、1.51(br、8H、−O−CH−CH−及び−C≡C−CH−CH)、2.06−2.13(br、96H、−N−CO−CH)、2.23(t、5H、J=5.75Hz、−C≡C−CH−)、2.42(br、5H)、2.50(br、3H)、3.00(br、9H)、3.21(br、7H)、3.44(br、174H、−N−CH−CH−N−)
【0171】
実施例15. 6−ヒドロキシヘキサン酸エチルのトリフラートの調製
【0172】
【化21】

−10℃で、無水トリフリック酸(4.8mL、28.5ミリモル)を、ジエチルエーテル(150mL)中の2,6−ルチジン(3.31mL、28.5ミリモル)の溶液に滴加した。15分間攪拌した後に、6−ヒドロキシヘキサン酸エチル(4.64mL、28.5ミリモル)を滴加し、得られた混合物を室温で一夜攪拌した。混合物を濾過し、濾液を、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン:ヘキサン=1:1)で精製して、4.95g(収率65%)の所望生成物を黄色油状物として得た。H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl):δ1.27(t、J=7.0Hz、3H、−CHCH)、1.48(p、J=7.5Hz、2H、TfOCHCHCHCH−)、1.69(p、J=7.5Hz、2H、TfOCHCHCHCH−)、1.86(p、J=7.5Hz、2H、TfOCHCHCHCH−)、2.34(t、J=7.5Hz、2H、−CH(C=O)OCHCH)、4.14(q、J=7.5Hz、2H、−CHCH)、4.55(t、J=6.5Hz、2H、TfOCHCH−)
【0173】
実施例16. 重合体13の調製
【0174】
【化22】

2−エチル−2−オキサゾリン(1.01mL、10.0ミリモル)を、クロロベンゼン(5mL)中のトリフラート(0.146g、0.5ミリモル)の溶液に加えた。混合物を、110℃に30分間加熱し、室温まで冷却し、次いでピペリジン(0.2mL、2.0ミリモル)を加えることによって停止させた。室温で18時間攪拌した後に、ジエチルエーテルを加えることによって混合物を沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥して、0.98g(収率99%)の生成物を白色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.31ppm(small s)及び2.41(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.46ppm(s、4H、−N−CHCH−N−)に示す。開始ヘキサン酸エチルピーク及び終端ピペリジンピークは、1.26(t、J=7.5Hz、3H、CHCHOC(O)−)、1.33(m、2H、−CHCHCHCHN−)、1.45(m、2H、−CHCHCHCHN−)、1.58(m、4H、ピペリジル−)、1.64(m、2H、ピペリジル−)、1.69(m、2H、−CHCHCHCHN−)、2.20(m、2H、CHCHOC(=O)CH−)、3.23(m、2H、−CHCHCHN−)、4.13(q、J=6.5Hz、2H、CHCHOC(=O)−)に出現する。MALDIは、M2260Da及び1.02のPDを示した。
【0175】
実施例17. 重合体14の調製
【0176】
【化23】

ベンジルメルカプタン(0.47mL、4.0ミリモル)を、クロロベンゼン(4mL)中のNaH(鉱油中60%、0.08g、2.0ミリモル)の懸濁物に、0℃で滴加した。混合物を、冷中で(in the cold)3時間攪拌した。2−エチル−2−オキサゾリン(2.02mL、20.0ミリモル)を、クロロベンゼン(10mL)中のトリフラート(0.292g、1.0ミリモル)の溶液に加えた。混合物を、110℃に30分間加熱し、室温まで冷却し、次いで開始試薬を入れたフラスコに加えた。室温で18時間攪拌した後に、混合物を、ジエチルエーテルを加えることによって沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥して、1.42gの生成物を淡黄色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.30ppm(small s)及び2.40(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.46ppm(s、4H−NCHCHN−)に示す。開始ヘキサン酸エチルピーク及び終端ベンジルメルカプタンピークは、1.27(t、J=7.5Hz、3H、CHCHOC(=O)−)、1.33(m、2H、−CHCHCHCHN−)、1.57(m、2H、−CHCHCHCHN−)、1.65(m、2H、−CHCHCHCHN−)、2.17(m、2H、CHCHOCC=O)CH−).2.56(m、2H、−CHSCHAr)、3.25(t、J=7.0Hz、2H、−CHCHCHN−)、3.74(s、2H、−SCHAr)、4.13(q、J=7.0Hz、2H、CHCHOC(=O)−)、7.27(m、1H、−Ar)、7.33(m、5H、−Ar)に出現する。MALDIは、M2130Da及び1.04のPDを示した。
【0177】
実施例18. 重合体14の脱保護
重合体14(1.421g、0.667ミリモル)を、HO(60mL)に溶解し、次いでNaOH(0.133g、3.33ミリモル)を固体として加えた。1時間攪拌した後に、混合物を、5%水性HCl溶液で酸性にし、次いでジクロロメタンで3回抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空下で乾燥して、淡黄色粉末を定量的収率で得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.13ppm(s、3H、CHCHCO−);2.32ppm(small s)及び2.42(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.48ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示す。開始ヘキサン酸エチルピーク及び終端ベンジルメルカプタンピークは、1.36(m、2H、−CHCHCHCHN−)、1.58−1.65(m、4H、−CHCHCHCHN−及び−CHCHCHCHN−)、2.18(m、2H、CHCHOC(=O)CH−)、2.54(m、2H、−CHSCHAr)、3.3l(t、J=7.0Hz、2H、−CHCHCHN−)、3.74(s、2H、−SCHAr)、7.27(m、1H、−Ar)、7.33(m、5H、−Ar)に出現する。また、H NMRは、加水分解で1.27及び4.13のエステル基(CHCHOC(=O)−)のプロトンピークの消失を示した。トリフルオロアセチル化生成物のNMR分析は、重合体がNaSBzによる不完全停止により形成された〜6%のCOH−PEOZ−OHを含有していることを明らかにした。
【0178】
実施例19. ヘキサン酸エステルで開始させた、アセチレンペンダント基を有するPOZ − HA−[(Ptyn)(Et)20−SBzの調製
【0179】
【化24】

ベンジルメルカプタン(1.47mL、12.5ミリモル)を、クロロベンゼン(38mL)中のNaH(鉱油中60%、0.30g、7.5ミリモル)の懸濁物に、室温で滴加した。混合物を、室温で2時間攪拌した。クロロベンゼン(5mL)中の2−(ペンタ−4−イニル)−2−オキサゾリン(PtynOZ、0.686g、5.0ミリモル)の溶液を、クロロベンゼン(20mL)中のヘキサン酸エチル−トリフラート(0.731g、2.5ミリモル)の溶液に加え、得られた混合物を、室温で10分間攪拌した。2−エチル−2−オキサゾリン(5.05mL、50.0ミリモル)を加え、得られた混合物を80℃に90分間加熱し、室温まで冷却し、次いで停止試薬を入れたフラスコにカニューレを使用して加えた。室温で18時間攪拌した後に、混合物をジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を、フリットを使用して収集し、真空下で乾燥して、4.37gの生成物を淡黄色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.30ppm(small s)及び2.40(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.46ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示す。開始ヘキサン酸エチルピーク及び終端チオベンジルピークは、1.26ppm(t、J=7.5Hz、3H、CHCHOC(=O)−);1.33ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.57ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.65ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);2.17ppm(m、2H、CHCHOC(=O)CH−);2.56ppm(m、2H、−CHSCHAr);3.25ppm(t、J=7.0Hz、2H、−CHCHCHN−);3.74ppm(s、2H、−SCHAr);4.13ppm(q、J=7.0Hz、2H、CHCHOC(=O)−);7.27ppm(m、1H、−Ar);及び7.33ppm(m、5H、−Ar)に出現する。ペンダント基ピークは、1.83ppm(m、2H、−CHCHC≡CH);及び2.00ppm(m、1H、−CHCHC≡CH)に示される。ペンチニルとEOZの比は、1.88:20と決定された。GPCは、Mn=1960Da及びMp=2100Da、1.07のPDIを示した。MALDIは、Mn2380Da及び1.05のPDを示した。
【0180】
ヘキサン酸エチル重合体(0.42g、0.214ミリモル)を、水性NaOH溶液(10mL、pH13)に溶解し、1時間攪拌した。この混合物を、酸性にし(pH〜3)、NaCl(15w/w%)を加え、ジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機相を、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を、フリットを使用して収集し、真空下で乾燥して、0.39gの生成物を白色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.32ppm(small s)及び2.42(large s)(全面積2H、CHCHCO−)及び3.48ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示した。開始ヘキサン酸ピーク及び終端チオベンジルピークは、1.37ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.58−1.65ppm(m、4H、−CHCHCHCHN−及び−CHCHCHCHN−);2.17ppm(m、2H、CHCHOC(=O)CH−);2.55ppm(m、2H、−CHSCHAr);3.31ppm(br s、2H、−CHCHCHN−);3.75ppm(s、2H、−SCHAr);7.27ppm(m、1H、−Ar)及び7.34ppm(m、5H、−Ar)に出現する。ペンダント基ピークは、1.85ppm(m、2H、−CHCHC≡CH)、及び2.00ppm(m、1H、−CHCHC≡CH)に示される。また、H NMRは、加水分解で1.26及び4.13のエステル基(CHCHOC(=O)−)のプロトンピークの消失を示した。GPCは、70%の重合体が重合体の先頭にCOH−官能性を含有することを示した。GPCは、Mn=1900Da及びMp=2050Da、1.07のPDIを示した。DEAEセファロースを用いたクロマトグラフィーは、純粋な酸を示す。
【0181】
実施例20. ヘキサン酸エステルで開始させた、ペンダントアセチレ及び末端アミンを有するPOZ − HA−[(Ptyn)(Et)20]−T−NHBocの調製
【0182】
【化25】

t−Bocシステアミン(2.11mL、12.5ミリモル)を、クロロベンゼン(38mL)中のNaH(鉱油中60%、0.30g、7.5ミリモル)の懸濁物に、室温で滴加した。この混合物を、室温で2時間攪拌した。クロロベンゼン(5mL)中の2−(ペンタ−4−イニル)−2−オキサゾリン(PtynOZ、0.686g、5.0ミリモル)の溶液を、クロロベンゼン(20mL)中のヘキサン酸エチル−トリフラート(0.731g、2.5ミリモル)の溶液に加え、得られた混合物を、室温で10分間攪拌した。2−エチル−2−オキサゾリン(5.05mL、50.0ミリモル)を加え、得られた混合物を、80℃に90分間加熱し、室温まで冷却し、次いで停止試薬を入れたフラスコにカニューレを使用して加えた。室温で18時間攪拌した後に、混合物をジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を、フリットを使用して収集し、真空下で乾燥して、4.71gの生成物を淡黄色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.30ppm(small s)及び2.40(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.46ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示す。開始ヘキサン酸エチルピーク及び末端基ピークは、1.26ppm(t、J=7.5Hz、3H,、CHCHOC(=O)−);;1.33ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.44ppm(s、9H、−NHBoc);1.59ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.66ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);2.17ppm(m、2H、CHCHOC(=O)CH−);2.67ppm(m、2H、−SCHCHNHBoC);2.71ppm(m、2H、−CHSCHCHNHBoC);3.32ppm(m、2H、−SCHCHNHBoC);及び4.13ppm(q、J=7.0Hz、2H、CHCHOC(=O)−)に出現する。ペンダント基ピークは、1.84ppm(m、2H、−CHCHC≡CH);及び2.01ppm(m、1H、−CHCHC≡CH)に出現する。ペンチニルとEOZの比は、1.9:20と決定された。GPCは、Mn=2090Da及びMp=2200Da、1.06のPDIを示した。MALDIは、Mn2620Da及び1.05のPDを示した。
【0183】
前記ヘキサン酸エチル重合体(0.42g、0.214ミリモル)を、水性NaOH溶液(10mL、pH13)に溶解し、1時間攪拌した。この混合物を、酸性にし(pH〜3)、NaCl(15w/w%)を加え、ジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機相を、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を、フリットを使用して収集し、真空下で乾燥して、0.39gの生成物を白色粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.30ppm(small s)及び2.40(large s)(全面積2H、CHCHCO−)及び3.46ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示す。開始ヘキサン酸ピーク及び末端基ピークは、1.37ppm(m、2H、−CHCHCHCHN−);1.44ppm(s、9H、−NHBoc);1.61−1.72ppm(m、4H、−CHCHCHCHN−及び−CHCHCHCHN−);2.17ppm(m、2H、CHCHOC(=O)CH−);2.67ppm(m、2H、−SCHCHNHBoc);2.71ppm(m、2H、−CHSCHCHNHBoC)及び3.32ppm(m、2H、−SCHCHNHBoC)に出現する。ペンダント基ピークは、1.85ppm(m、2H、−CHCHC≡CH)及び2.01ppm(m、1H、−CHCHC≡CH)に出現する。また、H NMRは、加水分解で1.26及び4.13のエステル基(CHCHOC(=O)−)のプロトンピークの消失を示した。GPCは、70%の重合体が重合体の開始剤末端にCOH−官能性を含有することを示した。GPCは、Mn=2040Da及びMp=2180Da、1.06のPDIを示した。DEAEセファロースを用いたクロマトグラフィーは、純粋な酸を示す。
【0184】
実施例21. ペンダントアセチレン及び不活性末端を有するPOZ − H−[(Ptyn)(Et)20]−SBzの調製
【0185】
【化26】

ベンジルメルカプタン(1.18mL、10.0ミリモル)を、クロロベンゼン(30mL)中のNaH(鉱油中60%、0.24g、6.0ミリモル)の懸濁物に、室温で滴加した。この混合物を、室温で2時間攪拌した。トリフリック酸(HOTf、0.177mL、0.002モル)を、クロロベンゼン(20mL)中の2−(ペンタ−4−イニル)−2−オキサゾリン(PtynOZ、0.686g、5.0ミリモル)の溶液に加え、得られた混合物を、室温で10分間攪拌した。2−エチル−2−オキサゾリン(4.04mL、40.0ミリモル)を加え、得られた混合物を80℃に90分間加熱し、室温まで冷却し、次いで停止試薬を入れたフラスコにカニューレを使用して加えた。室温で18時間攪拌した後に、混合物をジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿物を、フリットを使用して収集し、真空下で乾燥して、3.64gの生成物を白粉末として得た。NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.12ppm(s、3H、CHCHCO−);2.29ppm(small s)及び2.40(large s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.46ppm(s、4H、−NCHCHN−)に示す。末端チオベンジルピークは、2.56ppm(m、2H、−CHSCHAr);3.32ppm(m、2H、−CHCHCHN−)、3.74ppm(s、2H、−SCHAr);7.27ppm(m、1H、−Ar);及び7.33ppm(m、5H、−Ar)に出現する。ペンダント基ピークは、1.84ppm(m、2H、−CHCHC≡CH);及び2.01ppm(m、1H、−CHCHC≡CH)に出現する。ペンチニルとEOZの比は、1.85:20と決定された。GPCは、Mn=2150Da及びMp=2280、Da、1.09のPDIを示した。
【0186】
実施例22. M−PEQZ−DSPEの合成
【0187】
【化27】

M−PEOZ−T−SPA(Mn 5050Da、70.0mg、0.0139ミリモル)と、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE、15.6mg、0.0208ミリモル)とを、ジクロロメタン(5mL)に溶解した。TEA(5.8μL、0.0416ミリモル)を加えた後に、得られた混合物を、室温で16時間攪拌した。この混合物をNaCO(102mg、0.964ミリモル)と共に30分間攪拌し、濾過した。濾液を、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。ジエチルエーテル溶液をデカントし、残った白色粉末状物質を真空中で乾燥して、所望生成物M−PEOZ−DSPE(72.0mg、91%)を得た。DSPEの結合は、Mn 5470Daを示すMALDI、並びに通常の骨格ピーク及びアルキル鎖由来の脂肪族プロトンピークの他に、末端DSPEプロトンを0.87(t、6H)、3.97(m、4H)、4.16(m、1H)、4.38(m、1H)、5.22(m、1H)に示すH NMRスペクトルによって実証された。HPLC(ZORBAX 300SB−C3逆相カラム)は、92%の置換収率を示した。
【0188】
実施例23. M−PEOZ−DPPEの合成
【0189】
【化28】

M−PEOZ−T−SPA(Mn 5050Da、70.0mg、0.0139ミリモル)と、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE、14.4mg、0.0208ミリモル)とを、ジクロロメタン(5mL)に溶解した。TEA(5.8μL、0.0416ミリモル)を加えた後に、得られた混合物を、室温で16時間攪拌した。この混合物をNaCO(102mg、0.964ミリモル)と共に30分間攪拌し、濾過した。濾液を、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。ジエチルエーテル溶液をデカントし、残った白色粉末状物質を真空中で乾燥して、所望生成物M−PEOZ−DPPE(69.0mg、89%)を得た。DPPEの結合は、Mn 5530Daを示すMALDI、並びに通常の骨格ピーク及びアルキル鎖由来の脂肪族プロトンピークの他に、末端DPPEプロトンを0.87(t、6H)、3.98(m、4H)、4.16(m、1H)、4.38(m、1H)、5.22(m、1H)に示すH NMRスペクトルによって証明された。HPLC(ZORBAX 300SB−C3逆相カラム)は、99%の置換収率を示した。
【0190】
実施例24. H−[(Ptyn)(Et)50]−DPPEの合成
【0191】
【化29】

H−[(Ptyn)(Et)50]−T−SPA(Mn 5747Da、91.3mg、0.0159ミリモル)と、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE、16.5mg、0.0238ミリモル)とを、ジクロロメタン(4mL)に溶解した。TEA(6.64μL、0.0477ミリモル)を加えた後に、得られた混合物を、室温で16時間攪拌した。この混合物を、NaCO(102mg、0.964ミリモル)と共に30分間攪拌し、濾過した。濾液を、濃縮し、ジエチルエーテルに加えることによって沈殿させた。沈殿溶液を、フリットを使用して濾過し、真空中で乾燥して、所望生成物H−[(Ptyn)(Et)50]−DPPE(92.3mg、92%)を得た。DPPEの結合は、Mn 6492Daを示すMALDI、並びに通常の骨格ピーク及びアルキル鎖由来の脂肪族プロトンピークの他に、末端DPPEプロトンを0.87(t、6H)、4.12(m、4H)、4.16(m、1H)、4.35(m、1H)、5.24(m、1H)に示すH NMRスペクトルによって証明された。HPLC(ZORBAX 300SB−C3逆相カラム)は、99.7%の置換収率を示した。
【0192】
実施例25 フルオレセイン標識を有する2kDaのポリ(2−エチル)オキサゾリンコレステロール複合体の調製
【0193】
【化30】

2−エチル−2−オキサゾリン(8.08mL、80.0ミリモル)を、クロロベンゼン(40mL)中のヘキサン酸エチル−トリフラート(1.169g、4.00ミリモル)の溶液に加えた。得られた混合物を、110℃に30分間加熱し、次いで室温まで冷却した。別のフラスコで、停止試薬を調製した。t−Bocシステアミン(3.38mL、20.0ミリモル)を、クロロベンゼン(24mL)中のNaH(鉱油中60%、0.48g、80.0ミリモル)の懸濁物に、室温で滴加した。この混合物を、冷中で2時間攪拌した後に、クロロベンゼン中のリビング重合体種の溶液(第一のフラスコから)を、Boc−システアミン停止混合物に移した。この混合物を、室温でさらに16時間攪拌し、次いでジエチルエーテルに加えて沈殿させた。エーテル溶液を濾過し、沈殿物を乾燥して、エチルエステルと末端基−NHBocとを有する重合体9.03gを得た。GPCでの分析結果は、Mn=2260Da及びMp=2390Da、1.03のPDIを示した;MALDIは、Mn 2140Da及び1.04のPDを示した。
【0194】
次に、得られた沈殿物を、水に溶解し、そのpHを、水酸化ナトリウム溶液を加えることによって12に調整した。1時間攪拌した後に、混合物を酸性にし(pH〜3)、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE Sepharose FF)で精製して、所望生成物(HOC−PEOZ−T−NHBOC、2K)を白色粉末(5.3g、収率59%)として得た。生成物の分析:H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、通常の骨格ピークを1.13ppm(m、3H、CHCHCO−);2.32ppm(m)及び2.41(s)(全面積2H、CHCHCO−);及び3.47ppm(m、4H、−NCHCHN−)に示した。末端基ピークは、1.35ppm(m、2H、HOCCHCHCHCHCH−)、1.61(m、4H、HOCCHCHCHCHCH−)、2.69ppm(m、4H、−CHSCHCHNHBoC)、及び3.31ppm(m、2H、HOCCHCHCHCHCH−、及び2H、−SCHCHNHBoc)に出現する;MALDIは、Mn 2063Da及び1.03のPDを示した。
【0195】
ジクロロメタン(40mL)中のクロロギ酸コレステリル(5.00g、11.1ミリモル)の溶液を、ジクロロメタン(110mL)中のエチレンジアミン(14.9mL、223ミリモル)の溶液に、−5℃で滴加した。冷中で30分間攪拌した後に、ロータリーエバポレーターを使用して揮発分の大部分を除去した。残留物を、ジクロロメタンに溶解し、飽和NaHCO水溶液、次いで食塩水溶液で洗浄した。得られた溶液を、NaSOで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。粗製混合物を、エタノールを使用して再結晶によって精製して、3.4gの2−アミノエチルカルバミン酸コレステリルを白色粉末として収率65%で得た。H NMR(Varian、500MHz、10mg/mL CDCl)は、コレステリル基に対応するピークと共に、2.80ppm(t、J=6.0Hz、2H、−OC(=O)NHCHCHNH)及び3.21ppm(m、2H、−OC(=O)NHCHCHNH)にアミノエチルプロトンを示した。
【0196】
【化31】

【0197】
アセトニトリル(15mL)を使用して共沸蒸留により乾燥したHOBT(0.298g、2.21ミリモル)と、HOC−PEOZ−T−NHBoc(Mn 2063Da、2.0g、0.969ミリモル)とを、ジクロロメタン(15mL)に溶解した。DCC(0.273g、1.32ミリモル)を加えた後に、得られた混合物を、室温で2.5時間攪拌した。2−アミノエチルカルバミン酸コレステリルを加え、得られた混合物を室温で18時間攪拌した。この混合物を、濾紙を使用してジエチルエーテル中に濾過し、白色沈殿物を得た。エーテル溶液をデカントした。得られた白色沈殿物を、ジクロロメタンに再度溶解し、ジエチルエーテルに加えることによって再度沈殿させた。エーテルをデカントし、残留物を真空中で乾燥して、所望生成物(Chol−PEOZ−T−NHBoc)を得た。H NMRは、末端Boc基とコレステリル基の相対積分比を1:1として示した。
【0198】
Chol−PEOZ−T−NHBoc生成物を、次に3Nメタノール性HCl(80mL)に溶解し、室温で1時間攪拌した。揮発分の大部分を、ロータリーエバポレーターを使用して除去した。残留物を、水に溶解し、次いでpH値を10に調整した。得られた水溶液に、NaCl(15%w/v)を加え、ジクロロメタンで2回抽出した、一緒にした有機相を、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、真空中で乾燥して、1.95gの所望生成物(Chol−PEOZ−T−NH)を収率83%で得た。−Boc基の脱保護を、1.43ppmの−Boc基のプロトンピークの消失を示すH NMRで確認した。
【0199】
フルオレセインイソチオシアネート(0.054g、0.139ミリモル)を、DMF(5mL)中のChol−PEOZ−NH(Calc.Mn 2517Da、0.3g、0.119ミリモル)の溶液に加えた。トリエチルアミン(39μL、0.277ミリモル)を加えた後に、この混合物を、暗中で、室温で18時間攪拌した。揮発分の大部分を真空中で除去し、残留物を水にpH9.0で溶解した。そのpHを3.0に調整した後に、混合物を、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、真空中で乾燥して、0.31gの黄色粉末を収率90%で得た。
【0200】
前記の記載は、本開示の化合物及び用途の特定の実施形態を例証し、説明する。また、本開示は、本願の化合物及び用途の例示的な実施形態のみを示し、説明するものであるが、前述のように、本開示の教示は、種々のその他の組み合わせ、変更、及び環境において使用することができ、本願に示すように前記の教示及び/又は関連する技術分野における技術又は知識に相応する概念の範囲内で変化又は変更できることが理解されるべきである。前記の実施形態は、さらに、本発明の実施について知られる最良の形態を説明し、当業者が本発明をこのような実施形態又はその他の実施形態において、本発明の特定の用途又は使用によって必要とされる種々の変更とともに、利用することを可能にすることを意図する。従って、記載は、本発明を、本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。本明細書において引用された全ての参考文献は、あたかも本開示に完全に示されているかのように、参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造:
X−R’−POZ−S−R
(式中、
POZは、構造−[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
Xは、活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
R’は、結合基であり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から選択される不活性基であり;及び
nは、3〜1000の整数である。)
の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項2】
Xが、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項3】
が不活性基である、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項4】
及びRが、それぞれ独立して非置換アルキル基又はアラルキルである、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項5】
及びRが、それぞれ独立してC−C12アルキル基である、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項6】
がメチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項7】
が、−(CH−Cであり、及びoが1〜25の整数である、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項8】
活性官能基が保護される、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項9】
POZが1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項1の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項10】
一般構造:
I’−{POZ−POZII−S−R
〔式中:
I’は、開始剤位置に存在する不活性基であり;
POZは、構造[N(CO−R’−Z)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
POZIIは、構造[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
R’は、任意の結合基であり;
Zは、活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から選択される不活性基であり;
nは、0〜1000の整数であり、但し、n=0である場合には、mは>1であることを条件とし;
mは、1〜1000の整数であり;及び
aは、ランダム共重合体を示すran、又はブロック共重合体を示すblockである。〕
の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項11】
Zが、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項12】
R’が−(CH−であり、及びpが0〜25の整数である、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項13】
が不活性基である、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項14】
及びRが、それぞれ独立してC−C12アルキル基である、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項15】
がメチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項16】
が、−(CH−Cであり、及びoが1〜25の整数である、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項17】
活性官能基が保護される、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項18】
I’基がH又はメチルである、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項19】
POZ及びPOZIIの少なくとも1つが、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項20】
POZ及びPOZIIのそれぞれが、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項10の一官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項21】
一般構造:
D−R−POZ−R−X
〔式中:
Dは、−OH又は−COHであるか、あるいは活性−OH基又は活性−COH基を含有する基であり;
POZは、構造−[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
及びRは、結合基であり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
Xは、活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;及び
nは、3〜1000の整数である。)
ヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項22】
Xが、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項23】
が−(CH−であり、及びpが1〜25の整数である、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項24】
が−S−(CH−であり、及びoが1〜25の整数である、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項25】
がC−C12アルキル基である、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項26】
が、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項27】
X基が保護される、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項28】
POZが、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項29】
構造:
HO−(CH−POZ−S−(CH−X
を有し、p及びoは、1〜25から独立して選択される整数である、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項30】
構造:
HOC−(CH−POZ−S−(CH−X
を有し、p及びoは、1〜25から独立して選択される整数である、請求項21のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項31】
次の一般構造:
E−R−{POZ−POZII−S−R
〔式中:
Eは、−OH又は−COHであるか、あるいは活性−OH基又は活性−COH基を含有する基であり;
POZは、構造[N(CO−R’−Z)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
POZIIは、構造[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
R’は、任意の結合基であり;
は、結合基であり;
Zは、活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基であるか、あるいは活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
nは、0〜1000の整数であり、但し、n=0である場合には、mは>1であることを条件とし;
mは、1〜1000の整数であり;及び
aは、ランダム共重合体を示すran、又はブロック共重合体を示すblockである。〕
のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項32】
X及びRの少なくとも1つが、独立して、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項33】
が−(CH−であり、pが1〜25の整数である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項34】
R’が−S−(CH−であり、oが1〜25の整数である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項35】
及びRが、それぞれ独立してC−C12アルキル基である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項36】
が、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項37】
が、−(CH−Cであり、及びqが1〜25の整数である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項38】
が不活性基である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項39】
少なくとも1つの活性官能基が保護される、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項40】
POZ及びPOZIIの少なくとも1つが、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項41】
POZ及びPOZIIのそれぞれが、1.2以下、1.1以下又は1.05以下の多分散性値を有する、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項42】
構造:
HO−(CH−{POZ−POZII−S−R
を有しpは、1〜25から選択される整数である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項43】
構造:
HOC−(CH−{POZ−POZII−S−R
を有し、pは、1〜25から選択される整数である、請求項31のヘテロ官能性ポリオキサゾリン誘導体。
【請求項44】
一般式:A−B−TM
(式中、Aは、請求項1から43のいずれか一項のPOZ誘導体であって、前記POZ誘導体の活性官能基と標的分子の結合パートナーとの反応中に除去される脱離基がないPOZ誘導体であり;
TMは、結合パートナーを含有する標的分子であり;
Bは、活性官能基と結合パートナーの間で形成される結合であり;
aは、1からTMの活性官能基の数までの範囲の整数であり;及び
tは、1からAの活性官能基の数までの範囲の整数である。)
の標的分子−POZ複合体。
【請求項45】
Aが請求項1から9のいずれか一項のPOZ誘導体である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項46】
Aが請求項10から20のいずれか一項のPOZ誘導体である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項47】
Aが請求項21から30のいずれか一項のPOZ誘導体である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項48】
Aが請求項31から43のいずれか一項のPOZ誘導体である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項49】
標的分子が、有機小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、タンパク質、炭水化物又は脂質である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項50】
脂質がリン脂質である、請求項49の標的分子−POZ複合体。
【請求項51】
標的分子が、標的薬、診断薬又は治療薬である、請求項44の標的分子−POZ複合体。
【請求項52】
ポリオキサゾリン−リン脂質複合体であって、構造:−L{POZ−POZII−S−LII−R又はI−{POZ−POZII−S−LII−;
〔式中:
POZは、構造[N(CO−R’−Z)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
POZIIは、式[N(COR)CHCHのポリオキサゾリン重合体であり;
R’、L及びLIIは、それぞれ任意の結合基であり;
Zは、活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
は、前記ポリオキサゾリン重合体のそれぞれの反復単位について非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基から独立して選択され;
は、非置換又は置換アルキル、アルケニル、アラルキル又はヘテロシクリルアルキル基であるか、あるいは活性官能基であるか又は活性官能基に変換できる基であり、前記活性官能基は、標的分子の結合パートナーと結合を形成できるものであり;
I’は、開始剤位置に存在する基であり;
nは、0〜1000の整数であり、但し、n=0である場合には、mは>1であることを条件とし;
mは、1〜1000の整数であり;及び
aは、ランダム共重合体を示すran、又はブロック共重合体を示すblockである。〕
を有するポリオキサゾリン部分に結合された脂質部部分を含有するポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項53】
Z及びRの少なくとも1つが、独立して、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項54】
脂質部位が、2つの疎水性部分と親水性部分とを含有し、及び前記脂質部位が前記親水性部分で前記ポリオキサゾリン部分に結合される、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項55】
ポリオキサゾリン−リン脂質複合体の脂質部分が、リン脂質又は糖脂質である、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項56】
リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジリホリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項57】
POZIIが、ランダム共重合体又はブロック共重合体である、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項58】
POZIIが、第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられる第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含有するランダム共重合体又はブロック共重合体であり、前記第一のポリオキサゾリン及び第二のポリオキサゾリンのR基が、独立して、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項59】
脂質部分がリン脂質であり及びポリオキサゾリン−リン脂質複合体が、一般構造:
【化1】

を有し、RH1及びRH2は、それぞれ独立して、飽和アルキル基又は不飽和アルキル基である、請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項60】
が、アルキン、オキシアミン、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、エステル、カルボン酸、活性化カルボン酸、活性カルボナート、クロロホルマート、アルコール、アジド、ヒドラジド、アミン、保護アミン、チオール、ビニルスルホン、マレイミド又はオルトピリジルジスルフィドである、請求項59のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項61】
が不活性基である、請求項59のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項62】
脂質部分がリン脂質であり及びポリオキサゾリン−リン脂質複合体が、一般構造:
【化2】

を有し、RH1及びRH2は、それぞれ独立して、飽和アルキル基又は不飽和アルキル基である請求項52のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項63】
Iが、H及びアルキルからなる群から選択される不活性開始基である、請求項62のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項64】
リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジリホリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される、請求項59又は62のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項65】
及びLIIが、それぞれ独立して、−(CH−NHCO−(CH−、−(CHNHCO−(CH−及び−(CH−からなる群から選択され、f、g及びhは、それぞれ、0〜10から独立して選択される整数である請求項59又は62のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項66】
POZIIが、ランダム共重合体又はブロック共重合体である、請求項59又は62のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項67】
POZIIが、第二のポリオキサゾリンの1つ以上の単位によって隔てられる第一のポリオキサゾリンの1つ以上の単位を含むランダム共重合体又はブロック共重合体であり、前記第一のポリオキサゾリン及び第二のポリオキサゾリンのR基が、独立して、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピルである、請求項59又は62のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項68】
H1及びRH2が、それぞれ独立して、C14からC24飽和アルキル基又はC14からC24不飽和アルキル基である、請求項59又は62のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体。
【請求項69】
リポソームを含有してなるリポソーム組成物であって、前記リポソーム組成物が、ベシクル形成脂質と、請求項52から68のいずれか一項のポリオキサゾリン−リン脂質複合体とを含有するものであり、前記リポソームが、約0.025ミクロンから約10ミクロンのサイズを有するものであるリポソーム組成物。
【請求項70】
ポリオキサゾリン−リン脂質複合体が、約1モル%から約50モル%の濃度で存在する、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項71】
ベシクル形成脂質がリン脂質である、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項72】
リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジリホリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸及びスフィンゴミエリンである、請求項71のリポソーム組成物。
【請求項73】
さらに標的分子を含有する、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項74】
標的分子が、ポリオキサゾリン−リン脂質複合体に結合されるか又は前記リポソーム内に取り込まれる、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項75】
標的分子が、有機小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、抗体断片、タンパク質、又は炭水化物である、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項76】
標的分子が、標的薬、診断薬又は治療薬である、請求項69のリポソーム組成物。
【請求項77】
標的分子が、リポソーム外環境に曝される、請求項69のリポソーム組成物。

【公表番号】特表2011−527727(P2011−527727A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517658(P2011−517658)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050286
【国際公開番号】WO2010/006282
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509241915)セリナ・セラピユーテイツクス・インコーポレーテツド (2)
【Fターム(参考)】