説明

不燃性化粧板

【課題】不燃性を有し、かつ意匠性、搬送性及び施工性に優れた不燃性化粧板を提供すること。
【解決手段】難燃性基材上に、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有するエマルション系接着剤からなる接着剤層と、化粧シートとが順に積層された不燃性化粧板であって、該難燃性基材の総発熱量と該化粧シートの総発熱量との合計が8〜10MJ/m2であり、該不燃性化粧板の総発熱量が8MJ/m2以下である不燃性化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不燃性を有し、かつ意匠性、搬送性及び施工性に優れた不燃性化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフィルムの基材に色彩や模様、もしくは凹凸等を施すことにより美観を付与した化粧シートを、せっこうボードからなる基板に貼り合わせた化粧板は、建築物の天井、壁材等の内外装用建材又は家具等の様々な用途に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
これらのせっこうボードを基板とする化粧板の内、不燃性の高い化粧板は、流し台、ガスコンロ等のキッチン回りやその他の建築基準法上不燃性を要請されている建築物の各所に用いられており、せっこうボードを基板とする化粧板が不燃認定を受けることは、非常に重要であり、この認定を受けるべく種々の試みがなされている。
【0003】
例えば、せっこうボード等の無機質系基板の一方の面に、接着剤層、化粧シート、表面保護層が順次積層された積層体において、前記表面保護層が難燃剤を添加した電離放射線硬化性樹脂からなる難燃性化粧板が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、層状珪酸塩、金属水酸化物、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、グラスファイバー及び/又はメラミン誘導体を配合してなるポリオレフィン系樹脂層を有するシート状成形体をせっこうボード等の不燃性基板に貼り合わせてなる化粧板が開示されている(例えば、特許文献3〜7参照)。
これらの発明は、いずれもシート基材や表面保護層に難燃剤を配合することにより難燃性化粧シートを得ようとするものであり、せっこうボードのように亜鉛めっき鋼板又は珪酸カルシウム板より燃え易い基板の場合、シート基材や表面保護層に多量の難燃剤を配合する必要があった。
しかしながら、シート基材であるポリオレフィン系樹脂に多量の難燃剤を配合すると、化粧シートの製造や得られた化粧シートの化粧板への加工が困難になり、実用性を有し、かつ「不燃性認定」を備えた化粧板を得ることが難しかった。
また、表面保護層に難燃剤を多量に配合すると、表面硬度が低くなり、意匠性にも劣るので問題であった。
【0004】
ところで、化粧板に求められる性能として、意匠性がある。意匠性の高い化粧シートは、一般的に一定のシート厚を要するので総発熱量が大きく、建築基準法に規定される不燃材料に適合するには、用いる化粧シートを薄くする、あるいは化粧板の基材の総発熱量を低減するといった対策が必要であった。しかし、化粧シートを薄くすると、意匠性が劣る、化粧板の基材の不陸を拾いやすくなり、化粧板表面が柚子肌となってしまうといった問題があった。また、化粧板の基材の総発熱量を低減するには、基材を薄くする、または基材の有機分量を下げる必要が生じるため、基材の曲げ強度が低下し、搬送時、及び施工時の割れや欠損といった問題が生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−32240号公報
【特許文献2】特開2000−43184号公報
【特許文献3】特開2003−12942号公報
【特許文献4】特開2003−311901号公報
【特許文献5】特開2004−58659号公報
【特許文献6】特開2004−149664号公報
【特許文献7】特開2004−160818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況の下で、不燃性を有し、かつ意匠性、搬送性及び施工性に優れた不燃性化粧板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材と化粧シートを貼着する際に、特定のエマルション系接着剤を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0008】
1.難燃性基材上に、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有するエマルション系接着剤からなる接着剤層と、化粧シートとが順に積層された不燃性化粧板であって、該難燃性基材の総発熱量と該化粧シートの総発熱量との合計が8〜10MJ/m2であり、該不燃性化粧板の総発熱量が8MJ/m2以下である不燃性化粧板。
2.化粧シートが表面保護層を有し、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる上記1に記載の不燃性化粧板。
3.難燃性基材と接着剤層との間に、シーラー層を有する上記1又は2に記載の不燃性化粧板。
4.水酸化アルミニウムが、エマルション系接着剤に用いられる樹脂100質量部に対して20〜80質量部用いられ、平均粒径が2〜15μmである上記1〜3のいずれかに記載の不燃性化粧板。
5.エマルション系接着剤の塗布量が、20〜100g/m2(固形物換算)である上記1〜4のいずれかに記載の不燃性化粧板。
6.化粧シートがダブリングシートである上記1〜5のいずれかに記載の不燃性化粧板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不燃性を有し、かつ意匠性、搬送性及び施工性に優れた不燃性化粧板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の不燃性化粧板の典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の好ましい不燃性化粧板1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、本発明の不燃性化粧板1は、難燃性基材2上に、必要に応じて設けられるシーラー層5と、接着剤層3と、化粧シート41と、必要に応じて設けられる表面保護層42とが順次積層されたものである。
本発明の不燃性化粧板が有する不燃性は、人的災害等の発生を抑制する見地から望まれるものである。ここで、「不燃性」とは、建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第2条第9号及び同法施行令第108条の2第1〜3号(不燃材料)の規定に適合するものをいう。具体的には、本発明の不燃性化粧板1に対して、同法第2条第9号に定める燃焼性評価試験装置を用いて、前記不燃性化粧板1の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、かつ加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないことを指す。
以下、本発明の好ましい実施形態の一つを示した図1に基づいて、詳細に説明する。
【0011】
[難燃性基材2]
難燃性基材2は、難燃性を有しているものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、一般に不燃材として知られる石膏ボード、ロックウール、火山性ガラス複層板(JIS A5440「不燃火山性ガラス質複層板」に準拠)、木片セメント板、ケイ酸カルシウム板、セメント系不燃板(軽量セメント板等)が挙げられる。
チタン紙等に印刷を施した上で、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂(必要に応じて難燃剤を含有する)を含浸したものを重ねて、熱圧処理により一体成形したもの、あるいは印刷チタン紙を貼り合わせた上に不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂層を形成して得られる熱硬化性樹脂板も挙げられる。このような熱硬化性樹脂板は、一般に耐熱性や難燃性に優れ、かつ耐溶剤性、耐汚染性、耐磨耗性等の表面特性に優れるので、難燃性基材として好ましく用いることができる。
また、特開2006−97192号公報、及び特開2001−129958号公報に開示される、紙の中に難燃剤を含有させた紙、及びパルプを主体とする繊維と難燃剤とを主成分として抄造したもの等、いわゆる難燃紙が挙げられる。
これらのなかでも、ロックウール、火山性ガラス複層板、ケイ酸カルシウム板、熱硬化性樹脂板を好ましく用いることができる。
難燃性基材2の厚みは、材質にもよるが、通常2〜15mmであり、総発熱量、搬送性及び施工性の観点から、好ましくは2〜10mmである。
【0012】
[接着剤層3]
接着剤層3は、難燃性基材2と化粧シート41とを接着し、かつ本発明の不燃性化粧板に不燃性を付与するために設けられる層であり、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有するエマルション系接着剤からなることを特徴とする。エマルション系接着剤は、有機溶剤を用いないので環境汚染への負荷が低い接着剤である。
エマルション系接着剤に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げることができ、これらを用いた公知のエマルション系接着剤を、用途に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0013】
エマルション系接着剤は、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有する。該水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムは、本発明の化粧板に不燃性を付与するものであり、難燃性付与剤として添加される。エマルション系接着剤は、水酸化アルミニウムを単独で含有してもよいし、水酸化マグネシウムを単独で含有してもよいし、また、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとを同時に含有してもよい。水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとを同時に含有する場合、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとの配合比(質量比)は、特に制限はない。
【0014】
水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの平均粒径は、2〜15μmが好ましい。この範囲内であれば、接着剤のチキソ性が適当となるので塗工適性が良好であり、また、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが沈降することなく、安定性も良好に保つことができる。ここで、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの平均粒径は、レーザ散乱法における粒度分布測定法によって求められる体積基準の値であって、より具体的には、レーザ散乱式粒度分布系にて測定した値として求めることができる。
また、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの単独又は併用する場合の合計の添加量は、不燃性の付与及び接着剤の塗工適性、接着性ならびに安定性の観点から、エマルション系接着剤に用いられる樹脂100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましく、40〜65質量部がさらに好ましい。
【0015】
接着剤層3は、エマルション系接着剤を、グラビアコート、バーコート、スプレーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式より塗布して形成することができる。当該エマルション系接着剤の塗布量は、2〜10g/m2(固形物換算)が好ましく、4〜8g/m2(固形物換算)がより好ましい。この範囲内であれば、接着性能を良好に保つことができ、化粧板の表面の平滑性が向上する。
【0016】
[化粧シート41]
化粧シート41は、本発明の不燃性化粧板1に意匠性を付与するために設けられる。化粧シートとしては、通常化粧板に用いられる樹脂シート等を制限なく用いることが可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリブテン系、エチレン−プロピレン系共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン系共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂等を挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0017】
また、化粧シート41としては、上記の樹脂からなる着色樹脂シートと透明樹脂シートとを貼り合わせて得られるダブリングシートを用いることもできる。この場合、着色樹脂シート、及び透明樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよく、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、樹脂の組合せとしては、ポリエチレン系−ポリエチレン系、ポリエチレン系−ポリプロピレン系、ポリプロピレン系−ポリプロピレン系の組合せが好ましい。
ダブリングシートは、例えば上記樹脂からなる樹脂シートAの表面にコロナ放電処理等を施してプライマー層を設け、該樹脂シートAにベタ層及び/又は絵柄層を印刷形成した後に、上記樹脂からなる樹脂シートBを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着・圧着させて得られる。また、樹脂シートBは、表面にエンボス加工を施してもよく、エンボス加工が施されたダブリングシートは、ダブリングエンボスシートと呼ばれる。なお、樹脂シートAは、一般に着色樹脂シートが用いられるが、無着色シートであってもよい。
上記の樹脂のなかでは、安価な点からポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂が好ましく、また、意匠性の観点からダブリングシートが好ましい。
化粧シート41の厚みは、ダブリングシートではない場合は、30〜90μmが好ましく、40〜70μmがより好ましい。また、ダブリングシートの場合は、100〜200μmが好ましく、120〜160μmがより好ましい。
【0018】
[表面保護層42]
化粧シート41には、本発明の不燃性化粧板に耐摩耗性、耐傷付性や耐汚染性等を付与する目的で表面保護層42が設けられることが好ましい。表面保護層42としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等により形成される表面保護層や、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなる表面保護層を挙げることができる。なかでも電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなる表面保護層が特に好ましく、後述の形成方法により形成することができる。また、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなる表面保護層42を有する化粧シート41として、市販される化粧シートを用いることもできる。
【0019】
[表面保護層42:電離放射線硬化性樹脂組成物]
表面保護層42に好ましく用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する電離放射線硬化性樹脂と、その他の所望の成分とからなる組成物である。また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0020】
表面保護層42に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよく、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用される重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。以下に代表例を記載する。
【0021】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、中でもラジカル重合性不飽和基を持つアクリレート系オリゴマーが好ましく、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0024】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0025】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0026】
[電離放射線硬化性樹脂組成物:シリコーン(メタ)アクリレート]
表面保護層42に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物には、シリコーン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。シリコーン(メタ)アクリレートは、電離放射線硬化性樹脂との相乗効果により、主に壁紙に耐汚染性等の表面物性を付与する目的で添加されるものである。シリコーン(メタ)アクリレートは、ポリシロキサンからなるシリコーンオイルのうち、または片方乃至両方の末端に(メタ)アクリル基を導入した変性シリコーンオイルの中の一つである。シリコーン(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものが使用でき、有機基が(メタ)アクリル基であれば特に限定されず、該有機基を1〜6つ有する変性シリコーンオイルを好ましく用いることができる。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置には、特に制限はない。
上記シリコーン(メタ)アクリレートの含有量は、表面保護層の表面張力が所望の範囲となるように適宜調節すればよいが、耐汚染性の向上とその使用効果を十分に得る観点から、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜4質量部が好ましく、1.0〜2.5質量部がより好ましい。また、シリコーン(メタ)アクリレートの官能基当量(分子量/官能基数)としては、例えば1000〜20000の条件を有するものが挙げられる。
【0027】
[電離放射線硬化性樹脂組成物:各種添加剤]
また、電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる表面保護層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0028】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の10〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
【0029】
[表面保護層42の形成]
表面保護層42の形成に電離放射線硬化性樹脂組成物を用いる場合は、まず、重合性モノマーや重合性オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて用いられるシリコーン(メタ)アクリレート、及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合して得られる、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製する。この電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はないが、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
このようにして調製された電離放射線硬化性樹脂組成物を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると、所望の機能を有する表面保護層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0030】
次いで、上記の未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された表面保護層42には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0031】
[シーラー層5]
本発明の不燃性化粧板1には、難燃性基材2の表面を平滑にして、均質な塗面を得るため、いわゆる目止めのためのシーラー層5を、難燃性基材2と接着剤層3との間に設けることが好ましい。
シーラー層5には、目止めのために有効なものであれば特に制限なく、有機シーラー、無機シーラー及びそれらの混合物のいずれを用いてもよい。
有機シーラーとしては、ポリエステルポリオール樹脂、アクリルポリオールとイソシアネートとによるアクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、アミノアルキド樹脂等の樹脂の中から、シーラー層を配設する目的を満足するものを適宜選択使用すれば良い。
ウレタン樹脂としては、例えば2液硬化型ウレタン樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体等のアクリル樹脂が挙げられる。
【0032】
無機シーラーとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、カオリナイト及び二酸化チタンのいずれか1成分又はこれらから選んだ2成分以上を含有する層として形成することが好ましい。ここで、酸化ケイ素成分は、オルガノアルコキシシラン、第4級アンモニウム珪酸塩、又はアミノ基含有シリケートを用い、酸化ジルコニウム成分としては、オルガノアルコキシジルコニウムを用い、酸化アルミニウムとしては、コロイド状或いは微粒子状アルミナを用いれば良い。カオリナイトとは、アルミニウムの含水珪酸塩鉱物で粘土鉱物の一種をいい、天然カオリナイト及び合成カオリナイトのいずれであってもよい。二酸化チタンは、ルチル型及びアナターゼ型のいずれであってもよい。
無機シーラーを用いたシーラー層5は、無機シーラー用塗料を塗布して形成するとよい。なお、無機シーラーとして複数種の成分を用いる場合には、それらを塗料の状態で混合し使用すればよい。ここで塗料は、無機シーラー、水及び/又は親水性有機溶剤を含むものであり、水及び/又は親水性有機溶剤にて粘度等の塗布適性を適宜調整することができる。
本発明においては、不燃性を確保する観点から、シーラー層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、カオリナイト及び二酸化チタンからなる群から選ばれる一種もしくは2種以上の無機材料を、シーラー層基準で(すなわち、シーラー層の塗膜形成後の全固形分基準で)、15質量%以上含有することが好ましい。該無機材料の平均粒径は0.1〜50μmであることが好ましい。残部のシーラー層基準で85質量%未満のものとしては、例えば樹脂成分を接着剤層との接着性向上剤等として添加しても良い。該樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール、アクリルウレタン樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等を用いることができる。
また、上記塗料中には、必要に応じて、炭酸カルシウム、ゼオライト等の平均粒径0.1〜50μmの無機粒子、顔料等の着色剤、あるいはチタン酸カリウムウィスカーのような針状無機材料等を添加しても良い。
【0033】
本発明においては、シーラー層5を形成する有機シーラー、あるいは無機シーラー用塗料の塗工量が、0.5〜20g/m2(固形物換算)であることが好ましい。2g/m2以上であれば、難燃性基材2からのアルカリ成分溶出を防止し、接着剤層3の難燃性基材2への浸透を防止すると共に、接着剤層3との密着性を向上するという効果を好適に奏することができる。20g/m2以下であれば、効率よく効果を得ることができるので、経済的であり、また、防火性能の点でも好ましい。
【0034】
[製造方法]
本発明の不燃性化粧板は、例えば以下の製造方法によって製造されるが、これによって制限されるものではない。
図1に示される本発明の不燃性化粧板1は以下のように製造される。まず、エマルション系接着剤に用いられる樹脂を含有するエマルションに、所定の水酸化アルミニウムと分散材とを添加し、攪拌してエマルション系接着剤を得る。化粧シート41としてダブリングシートを用い、該化粧シート41の一方の面に、所望により設けられる表面保護層42を上記の形成方法に従って形成した後、化粧シート41の表面保護層42を設けた面の反対側に、エマルション系接着剤を、スプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。次いで、難燃性基材2に、所望により設けられるシーラー層5を形成し、硬化後、該シーラー層5の表面に、化粧シート41に設けた接着剤層3表面を対向するように重ね合わせ、接着する。化粧シート41が貼着された難燃性基材1は、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレス等の貼着装置を用いて圧締され、本発明の不燃性化粧板を得る。
得られた不燃性化粧板は、建築物の天井、壁材等の内外装用建材や、家具等の様々な用途に用いることができる。特に、本発明の不燃材化粧板が有する不燃性をいかして、流し台、ガスコンロ等のキッチン周辺建材や、その他の建築基準法上、不燃性を要請される建築物の各所に好適に用いることができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた化粧板について、以下の方法で評価した。
(1)総発熱量の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板を、建築基準法第2条9号に定める燃焼性評価試験装置を用いて、加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)を求めた。
(2)最大発熱速度の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板を、建築基準法第2条9号に定める燃焼性評価試験装置を用いて、加熱開始後20分間の最大発熱速度として、200kW/m2を超える時間を秒単位で求めた。
(3)基材の亀裂の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板を、建築基準法第2条9号に定める燃焼性評価試験装置を用いて、加熱開始後20分間の試験終了後の基材の亀裂や穴の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○ 裏面まで貫通する亀裂や穴は全くなかった
× 裏面まで貫通する亀裂や穴が多数あった
(4)外観の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板の表面を目視し、以下の基準で評価した。
○ 凹凸が全くなく、平滑である
△ 凹凸が若干存在するが、実用上問題ない
× 凹凸又は柚子肌が著しい
(5)接着性の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板の表面にセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(商標)」2.5mm幅)を貼着させ、その後強制的に剥離した。該化粧板の剥離面を目視で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎ 化粧シートの剥離が全くない
△ 化粧シートの剥離はあるが軽微であり実用上問題がない(面積率20%以下)
× 化粧シートの剥離が著しい(面積率21〜100%)
【0036】
製造例1(エマルション系接着剤の製造)
酢酸ビニル系エマルション接着剤(商品名:AE−128、アイカ工業株式会社製)に含まれる樹脂100質量部に、所定性状を有する水酸化アルミニウムを所定量と分散剤(アデカ製)0.1質量部を添加して、ディスパー(新東科学株式会社製「BL3000」)を用いて、回転数1000rpmで10分間攪拌し、本発明にかかるエマルション系接着剤を製造した。ここで、水酸化アルミニウムの性状及び添加量は、第1表に示される従い、各実施例及び比較例に用いるエマルション系接着剤を製造した。
【0037】
製造例2(化粧シートの製造)
化粧シート41としてPETフィルム(厚み50μm、東洋紡績株式会社製)を用い、該フィルムの表面に、ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアオフセットコータ法で塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させて、表面保護層42を得た。
【0038】
製造例3(化粧シートの製造)
ポリエチレン樹脂フィルム(厚み60μm)及びポリプロピレン樹脂フィルム(厚み80μm)を用意する。ポリプロピレン樹脂フィルムにウレタン系接着剤を10g/m2の塗布量で、グラビアオフセットコータ法で塗工し、ポリエチレン樹脂フィルムを貼着させて、ダブリングシート仕様の化粧シートを得た。
【0039】
実施例1
製造例2で得られた表面保護層42を有する化粧シート41の、表面保護層42を有さない面に、製造例1の平均粒径2μmの水酸化アルミニウムを、60質量部添加して得られたエマルション系接着剤を7g/m2(固形物換算)で塗布した後、難燃性基材2(商品名:パスコ不燃(熱硬化性樹脂化粧板)、北越製紙株式会社製、厚み3mm)にラミネートし、不燃性化粧板1を得た。得られた不燃性化粧板1について、総発熱量、最大発熱速度、及び亀裂の評価を行った。評価の結果を第1表に示す。
【0040】
実施例2〜15
化粧シート41、エマルション系接着剤中の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの性状及び添加量、ならびに難燃性基材2を、第1表に記載されるように変更する以外は、実施例1と同様にして不燃性化粧板1を製造した。得られた不燃性化粧板1について、総発熱量、最大発熱速度、及び亀裂の評価を行った。評価の結果を第1表に示す。
【0041】
比較例1〜5
化粧シート41、エマルション系接着剤中の水酸化アルミニウムの性状ならびに添加量、難燃性基材2を、第1表に記載されるように変更する以外は、実施例1と同様にして化粧板を製造した。得られた化粧板について、総発熱量、最大発熱速度、及び亀裂の評価を行った。評価の結果を第1表に示す。
【0042】
参考例1〜6
各実施例で用いた難燃性基材及び化粧シートを単独で、総発熱量、最大発熱速度、及び亀裂の評価を行った。評価の結果を第1表に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例で得られた不燃性化粧板は、難燃性基材と化粧シートの総発熱量の合計は8MJ/m2以上であったが、不燃性化粧板としての総発熱量は8MJ/m2以下であり、その他の全ての評価の点で高い性能を示し、建築基準法に定められる不燃性認定を取得しうるものとなった。また、不燃性付与剤としての水酸化アルミニウム単体、水酸化マグネシウム単体、及び水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムとの併用においても、同等程度の性能を示した。一方、水酸化アルミニウムを添加しないエマルション系接着剤を用いた比較例1〜5で得られた化粧板は、総発熱量が8MJ/m2以下とならず、建築基準法に定められる不燃性認定を取得できなかった。第1表によれば、本発明の不燃性化粧板は、難燃性基材及び化粧シートの総発熱量の合計が8MJ/m2以上と不燃性の基準を超えた場合であっても、所定の水酸化アルミニウムが添加されたエマルション系接着剤を用いて特定の接着層を形成することすることにより、不燃認定を取得することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、不燃性を有し、かつ意匠性、搬送性及び施工性に優れた不燃性化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の不燃性化粧板の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1.不燃性化粧板
2.難燃性基材
3.接着層
41.化粧シート
42.表面保護層
5.シーラー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性基材上に、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有するエマルション系接着剤からなる接着剤層と、化粧シートとが順に積層された不燃性化粧板であって、該難燃性基材の総発熱量と該化粧シートの総発熱量との合計が8〜10MJ/m2であり、該不燃性化粧板の総発熱量が8MJ/m2以下である不燃性化粧板。
【請求項2】
化粧シートが表面保護層を有し、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる請求項1に記載の不燃性化粧板。
【請求項3】
難燃性基材と接着剤層との間に、シーラー層を有する請求項1又は2に記載の不燃性化粧板。
【請求項4】
水酸化アルミニウムが、エマルション系接着剤に用いられる樹脂100質量部に対して20〜80質量部用いられ、平均粒径が2〜15μmである請求項1〜3のいずれかに記載の不燃性化粧板。
【請求項5】
エマルション系接着剤の塗布量が、20〜100g/m2(固形物換算)である請求項1〜4のいずれかに記載の不燃性化粧板。
【請求項6】
化粧シートがダブリングシートである請求項1〜5のいずれかに記載の不燃性化粧板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−143165(P2008−143165A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181138(P2007−181138)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】