説明

不燃性繊維シート

【課題】本発明の課題は、軽量で不燃性の繊維シートを提供することにある。
【解決手段】アルミナ繊維を主体とする繊維のシートであって、上記シートには合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されている不燃性繊維シートを提供する。該繊維シートは成形が容易であり、用途に応じて所定形状に成形が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミナ繊維を主体とする繊維シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の内装材等に使用される繊維シートとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の合成繊維をニードルパンチングによって絡合したり、合成樹脂によって結着したり、あるいは上記合成樹脂の一部もしくは全部が低融点合成繊維の場合には加熱融着したりしてシート化したものが使用されていたが、特に自動車の内装材等に使用する繊維シートの場合には、難燃性であることが要求されている。
上記繊維シートを難燃性にするためには、通常上記繊維シートにリン酸系難燃剤、ジカルボン酸のハロゲン化物、三酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤を塗布あるいは含浸あるいは混合する方法が採用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−348766号公報
【特許文献2】特開平10−226952号公報
【特許文献3】特開平10−168756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記方法によれば、シートを構成する繊維自体は可燃性であり、また難燃剤がシートから分離することもあって、高度な難燃化は出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するための手段として、アルミナ繊維を主体とする繊維のシートであって、上記シートには合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されている不燃性繊維シートを提供するものである。
上記合成樹脂は低融点合成樹脂および/またはフェノール系樹脂であることが望ましく、また上記フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されていること、更に上記低融点合成樹脂は繊維状であることが望ましい。
通常上記繊維シートは所定形状に成形されている。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明にあっては、シートがそれ自体不燃性であるアルミナ繊維を主体とするから、高度に難燃性あるいは不燃性でかつ軽量の繊維シートが得られる。
【0007】
フェノール系樹脂は合成樹脂の中でも比較的難燃性であり、値段も安価であるから、上記シートに結着剤あるいは成形性付与剤として使用するには好適な合成樹脂である。
フェノール系樹脂を使用する場合には、スルホメチル化および/またはスルフィメチル化して樹脂水溶液が広いpH範囲で安定になるようにすることが望ましい。
また低融点合成樹脂を使用する場合には、シートを加熱軟化させて冷間プレス成形が出来る。この場合上記低融点合成樹脂として繊維状のものを使用すると、アルミナ繊維等と強固に絡み合うので結着力が大きくなる。
上記繊維シートは通常用途に応じて所定形状に成形される。
【0008】
〔効果〕
本発明の繊維シートは不燃あるいは高度に難燃性であり、しかも軽量であるから、自動車の内装材等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔アルミナ繊維を主体とする繊維のシート〕
本発明のアルミナ繊維シートは、例えば塩基性塩化アルミニウム水溶液にケイ素化合物を添加した紡糸液を用いてブローイング法で紡糸したアルミナ繊維前駆体をシート化し、該アルミナ繊維前駆体シートを焼成してアルミナ繊維シートとする方法が一般的である。上記方法の詳細は、例えば特開2007−332531号公報、特開2008−7933号公報等に詳記されている。上記方法で製造されたアルミナ繊維前駆体シートあるいはそれから得られたアルミナ繊維シートには、ニードルパンチングが施されても良い。
【0010】
上記アルミナ繊維シートには、例えばアルミナ繊維以外のセラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ、蚕糸、キワタ、ガマ繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、トウモロコシ等のデンプンから得られる乳酸を原料とした生分解性繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維、等の有機繊維等が混合使用されてもよいが、シートの不燃性を確保するためには、有機繊維の場合には繊維シート全体量の15質量%以下の混合量にすることが望ましい。無機繊維の場合には、アルミナ繊維シートの物性、例えば軽量性に悪影響を与えない程度の量、即ち繊維シート全体量の25質量%以下の混合量とすることが望ましい。
【0011】
〔合成樹脂〕
本発明の繊維シートには、合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合される。
本発明において使用される合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性合成樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等のような熱硬化性合成樹脂等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体が使用されてもよい。上記合成樹脂は単独あるいは二種以上併用されてもよく、通常粉末、エマルジョン、ラテックス、水溶液、有機溶剤溶液等として使用される。
【0012】
本発明で使用される合成樹脂として望ましいのは、フェノール系樹脂である。以下、本発明で使用するフェノール系樹脂について説明する。
フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0013】
〔フェノール系化合物〕
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0014】
〔一価フェノール〕
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0015】
〔多価フェノール〕
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0016】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
【0017】
〔ホルムアルデヒド供与体〕
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0018】
〔フェノール系樹脂の製造〕
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常粉末で提供される。
本発明に使用されるフェノール系樹脂にあっては、まず上記フェノール系化合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて初期縮合物とし、該初期縮合物を繊維シートに付着させた後、硬化触媒および/または加熱によって樹脂化する。
上記縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0019】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。
上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0020】
例えば、上記(a) 一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0021】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0022】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0023】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0024】
〔フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0025】
〔スルホメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0026】
〔スルフィメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0027】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0028】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0029】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0030】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0031】
本発明で使用する合成樹脂には、更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂等の難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタール酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0032】
更に本発明の合成樹脂として望ましいのは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点ポリエステル、低融点ポリアミド等の融点が200℃以下の低融点合成樹脂である。上記低融点合成樹脂はシート内において他の繊維あるいは低融点合成樹脂相互の絡み合いを図るために繊維状にすることが望ましい。
合成樹脂として上記低融点合成樹脂を使用すると、繊維シートは熱可塑性となり、容易に加熱軟化するから、冷間プレス成形、真空および/または圧空成形が容易になる。
【0033】
該繊維シートに液状合成樹脂あるいは合成樹脂溶液を塗布および/または含浸および/または混合した場合には、塗布、含浸、あるいは混合した後、該繊維シートを乾燥する。該繊維シートに含まれる合成樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、該樹脂をB状態にすると長期保存が可能になり、かつ低温短時間の成形が可能になる。
【0034】
上記繊維シートに合成樹脂を塗布あるいは含浸するには、通常液状合成樹脂あるいは合成樹脂溶液に該繊維シートを浸漬するか、あるいは液状合成樹脂あるいは合成樹脂溶液を該繊維シートにスプレーするか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
合成樹脂を含浸または混合した該繊維シート内の合成樹脂量を調節するには、合成樹脂含浸または混合後、繊維シートを絞りロールやプレス盤を使用して絞る。この場合繊維シートは厚みを減少するが、該繊維シートの主体であるアルミナ繊維は剛性が高く、絞った後は厚みが弾性的に復元し、ある程度の厚みが確保される。特に該繊維シートに低融点合成繊維が含まれている場合には、該繊維シートを加熱して前記低融点合成樹脂あるいは前記低融点合成繊維を溶融させ、繊維を該溶融物によって結着しておくことが望ましい。そうすると該繊維シートは強度および剛性が更に向上し、合成樹脂含浸の際の作業性が向上し、また絞り後の厚みの復元も顕著になる。
【0035】
合成樹脂がフェノール系樹脂の場合には、ノボラックの場合には一般に粉末状の初期縮合物として繊維に混合されそしてシート化され、また初期縮合物の水溶液(初期縮合物液)の場合には該繊維シートに含浸あるいは塗布される。該初期縮合物液は、所望により、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、トリメチルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アビエチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の上記グリコール類のエステル類やその誘導体、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、エチルラクテート、イソプロピルラクテート、ジグリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド等の水溶性有機溶剤が使用されてもよい。
【0036】
〔繊維シートの成形〕
本発明の繊維シートは平板状あるいは所定形状に成形されるが、通常成形にはホットプレス成形が適用される。本発明の繊維シートはホットプレスにより平板状に成形した後、熱圧プレスにより所定形状に成形されてもよく、また低融点合成樹脂や低融点合成樹脂繊維あるいはその他の熱可塑性樹脂が含まれている場合には、加熱して該低融点合成樹脂や熱可塑性樹脂を軟化させてからコールドプレスによって所定形状に成形してもよい。本発明の繊維シートは、複数枚重ねて使用してもよい。本発明の繊維シートは、例えば、自動車の天井材、ダッシュサイレンサ、フードサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、フロアマット、ダッシュボード、ドアトリアム等の内装材の基材、あるいは基材に積層する補強材あるいは、吸音材、断熱材、建築材料等として有用である。
【0037】
本発明の繊維シートから得られる成形物の通気抵抗は、0.01〜100kPa・s/mであることが望ましい。
ここで通気抵抗R(Pa・s/m)とは通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗Rの測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
(式)R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。なお通気抵抗R(Pa・s/m)は通気度C(m/Pa・s)とC=1/Rの関係にある。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
通気抵抗が0.01〜100kPa・s/mの範囲にある成形物は吸音性に優れる。
【0038】
本発明の繊維シートの片面または両面に、表皮材、裏面材、芯材、他の繊維シート等の他の材料を積層してもよい。本発明の繊維シートと他の材料との接着は、ホットメルトシート、ホットメルト接着剤粉末を介して行なうか、該繊維シートに合成樹脂が塗布されている場合該合成樹脂により接着させてもよい。
該ホットメルトシートやホットメルト接着剤粉末は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂の変性物を含む)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体等の1種または2種以上の混合物等の低融点合成樹脂を材料とする。
ホットメルトシートを接着に使用する場合には、例えば、Tダイより押し出されたホットメルトシートを本発明の繊維シートにラミネートし、更にその繊維シートに他の材料を積層して熱圧プレス成形する。
また更に、該繊維シートを部品に取付けるには、金具を使用したり、上記接着剤を用いたり、また部品がプラスチックの場合、熱融着や高周波、超音波接着剤を用いて取付けることが出来る。
【0039】
通気性を確保するためには、該ホットメルトシートは多孔性であることが望ましい。該ホットメルトシートを多孔性にするには、該ホットメルトシートに予め多孔を設けるか、あるいは該繊維シートに該ホットメルトシートをラミネートしてからニードル等によって多孔を設けるか、あるいは該繊維シートに例えば、Tダイより押出された加熱軟化状態のホットメルトシートをラミネートし、押圧すると該フィルムに微細な多孔が形成される。該多孔は、繊維シート表面の毛羽によって形成されるものである。この方法ではホットメルトシートを予め多孔にする工程を必要としないし、また微細な多孔は製品の吸音性にとって良い影響を及ぼす。上記ホットメルト接着剤の繊維状のものあるいは粉末状のものを接着に使用する場合には、積層物の通気性は確保される。
上記積層物を所定形状に成形して得られる積層物の通気抵抗は0.01〜100kPa・s/mであることが望ましい。通気抵抗が0.01〜100kPa・s/mの範囲にある成形物は吸音性に優れる。
【0040】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお本発明は以下に示される実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
アルミナ繊維(繊度:12.5dtex、繊維長:55mm)80質量%および低融点ポリエステル繊維(軟化点:110℃、繊度:15dtex、繊維長:50mm)20質量%からなる混合繊維のウェブにニードルパンチングを施すことによって目付量120g/mの繊維シートを製造した。次に合成樹脂としてフェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(45質量%固形分の水溶液)を該繊維シートに対して30質量%の塗布量になるようにロールにて塗布含浸した後、130〜140℃で3分間乾燥させ、該繊維シートをプレキュアして上記フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物をB状態にすることによって、不燃性繊維シートを得た。得られた該不燃性繊維シートを200℃で60秒間熱圧プレス成形し、厚さ3mmの成形物を得た。
【0042】
〔実施例2〕
アルミナ繊維の再生屑を開繊機により綿状にして反毛綿を得た。次にヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:20〜30μm、融点:78〜85℃)を該反毛綿に対して30質量%になるように添加し、更に該反毛綿を開繊ミキシングしてフリースを形成した後、該フリースの両面を150℃の熱風でプレキュアして該フェノール樹脂をB状態とし、厚さ15mm、目付量800g/mの不燃性繊維シートを得た。得られた該不燃性繊維シートを200℃で60秒間熱圧プレス成形し、厚さ5mmの成形物を得た。
【0043】
〔実施例3〕
アルミナ繊維の再生屑を開繊機により綿状にして反毛綿を得た。次にヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:20〜30μm、融点:78〜85℃)を該反毛綿に対して20質量%になるようにそれぞれ添加し、更に該反毛綿を開繊ミキシングしてフリースを形成した後、該フリースの両面を150℃の熱風でプレキュアして該フェノール樹脂をB状態とし、厚さ15mm、目付量600g/mの不燃性繊維シートを得た。得られた該不燃性繊維シートを200℃で60秒間熱圧プレス成形し、厚さ5mmの成形物を得た。
【0044】
〔比較例1〕
ポリエステル繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:60mm)80質量%および低融点ポリエステル繊維(軟化点:110℃、繊度:3.3dtex、繊維長:55mm)20質量%からなる混合繊維のウェブにニードルパンチングを施すことによって目付量120g/mの繊維シートを製造した。次に合成樹脂としてフェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(45質量%固形分の水溶液)70質量%、および難燃剤としてメラミン被覆ポリリン酸アンモニウム粉末(粒度:20〜40μm)30質量%からなる混合溶液を上記の該繊維シートに対し60質量%の塗布量になるようにロールにて塗布含浸した後、130〜140℃で5分間乾燥させ、該繊維シートをプレキュアした後200℃で60秒間熱圧プレス成形し、厚さ3mmの成形物を得た。
【0045】
〔難燃性試験〕
上記実施例1,2,3および比較例1で得た成形物を用い、常態時および耐久試験後の難燃性をUL94規格に準じて行った結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1により、実施例の成形物は状態および耐久試験後でも難燃性は良好(ほとんど不燃)であるが、比較例は耐久試験後の難燃性が悪いことが判る。
【0048】
〔実施例4〕
アルミナ繊維(繊度:12dtex、繊維長:60mm)100質量%のシートに対して更にニードルパンチングを施し、目付量100g/mの繊維シートを製造した。次に合成樹脂としてフェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)を該繊維シートに対して40質量%の塗布量になるようにロールにて塗布含浸した後、130〜140℃で1分間乾燥プレキュアして該フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物をB状態として、不燃性繊維シートを得た。該不燃性繊維シートを表皮材として使用し、基材として未硬化のレゾール型フェノール樹脂が15質量%塗布されたガラスウール原綿(目付量700g/m)を用い、該不燃性繊維シートの裏面とガラスウール原綿とを重合させて200℃で60秒間熱圧プレス成形し厚さ10mmの成形物を得た。該成形物をFMVSS−302法に準じて測定した結果、難燃性は不燃であった。
【0049】
〔実施例5〕
フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)0.5質量部、水68.5質量部からなる混合液をホモミキサーを用いて均一に混合して合成樹脂液を調製した。アルミナ繊維90質量部、低融点ポリエステル繊維(融点120℃)10質量部の繊維シートを200℃、0.5分加熱して得られた繊維シート(目付量30g/m)の裏面に上記合成樹脂液をスプレー塗布により該繊維シートに固形分として30質量%となるように塗布し、140〜150℃の乾燥室内で2分間乾燥してプレキュアし、該フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物をB状態として、不燃性繊維シートを得た。該不燃性繊維シートを表皮材として使用し、基材として未硬化のレゾール型フェノール樹脂が15質量%塗布されたガラスウール原綿(目付量600g/m)を用い、該不燃性繊維シートの裏面とガラスウール原綿を重合させて200℃で65秒間熱圧プレスし厚さ10mmの成形物を得た。このものは自動車内装用品の安全基準、FMVSS−302法による不燃であり、軽量で、耐候性に優れた成形物である。
【0050】
〔実施例6〕
アルミナ繊維(繊度:12dtex、繊維長:60mm)70質量%と低融点ポリエステル繊維(軟化点:110℃、繊度:10dtex、繊維長:60mm)30質量%とからなる繊維ウェブを使用し、該ウェブ中に含まれている該低融点ポリエステル繊維を溶融せしめ、該溶融物によって繊維相互を接着して繊維シート(目付量:400g/m、厚さ:40mm)を製造した。次に実施例5で用いたフェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)0.5質量部、水68.5質量部からなる混合液に該繊維シートを浸漬し、該繊維シートに固形分として40質量%の含浸量になるように含浸せしめ、乾燥室内で吸引しながら100〜110℃で3分間乾燥し、該含浸繊維シートをプレキュアして該フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物をB状態とし、不燃性繊維シートを得た。次に該不燃性繊維シートを基材とし、実施例4で作成した不燃性繊維シートを表皮材として重合し、200℃で60秒間所定形状に熱圧プレスした。このものは自動車内装用品の安全基準、FMVSS−302法による不燃であり、軽量で、耐候性に優れた成形物である。
【0051】
〔実施例7〕
アルミナ繊維再生屑を開繊機により綿状にして反毛綿を得た。次にヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:20〜30μm、融点:78〜85℃)を該反毛綿に対し15質量%となるように添加し、更に該反毛綿を開繊ミキシングしフリースを形成した後、150℃の熱風で該フリースをプレキュアして該フェノール樹脂をB状態とし、厚さ15mm、目付量1000g/mの不燃性繊維シートを得た。得られた該不燃性繊維シートを200℃で60秒間熱圧プレス成形し、厚さ3mmの成形物を得た。このものはUL94規格のV−0であり、軽量で、耐候性、剛性に優れ、自動車のドアトリムやダッシュボードとして有用である。
【0052】
〔実施例8〕
アルミナ繊維(繊度:10.5dtex、繊維長:65mm)80質量%およびポリエステル繊維(繊度:12dtex、繊維長:60mm)20質量%からなる繊維シートに対してニードルパンチングを施し目付量80g/mの繊維シートを製造した。次に、スルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期共縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)1.5質量部、水67.5質量部からなる混合液を調製し、該混合液に該繊維シートを浸漬し、該混合液を繊維シートに固形分として40質量%の含浸量になるように含浸せしめた後、該含浸繊維シートの裏面にホットメルト接着剤としてポリアミド粉末(軟化点:130℃、粒子径:40〜50μm)20質量部を水80質量部に分散させた分散液を、スプレーにより固形分として25質量%になるよう塗布し、130〜140℃で2分間乾燥し、該繊維シートをプレキュアして該スルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期共縮合物をB状態とし、不燃性繊維シートからなる表皮材を得た。次に実施例6による不燃性繊維シートを基材として、その両面に該不燃性繊維シートの表皮材を重合し、210℃で60秒間所定形状に熱圧プレス成形し成形物を得た。この成形物の通気抵抗は40.5kPa・s/mであり、難燃性はUL94規格のV−0であり、軽量で、吸音性、耐候性の良好な自動車のフードサイレンサやエンジンアンダーカバーサイレンサとして有用である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の繊維シートは不燃または高度に難燃性であり、かつ軽量であるから、自動車内装材料等に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】通気抵抗Rの測定方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0055】
W 通気路
T 試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ繊維を主体とする繊維のシートであって、上記シートには合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されていることを特徴とする不燃性繊維シート。
【請求項2】
上記合成樹脂は低融点合成樹脂および/またはフェノール系樹脂である請求項1に記載の不燃性繊維シート。
【請求項3】
上記フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されている請求項2に記載の不燃性繊維シート。
【請求項4】
上記低融点合成樹脂は繊維状である請求項2または請求項3に記載の不燃性繊維シート。
【請求項5】
上記繊維シートは所定形状に成形されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の不燃性繊維シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−90490(P2010−90490A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259596(P2008−259596)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】