説明

不織布バインダー用共重合体ラテックス

【課題】 製造時、および取扱い時の作業性が良好で、高温度下において高い強度を発現する不織布バインダー用共重合体ラテックスの提供。
【解決手段】 エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜25重量%、シアン化ビニル単量体3〜50重量%、および共重合可能な他の単量体96.5〜25重量%を乳化重合して得られ、ガラス転移温度が80〜140℃であることを特徴とする、不織布バインダー用共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布用バインダーとして用いられるラテックスに関するものであり、特に、建築分野で使用されるアスファルト含浸用不織布向けに、優れた熱時抗張力を発現する不織布バインダー用ラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の防水用、例えばビルの屋上防水用として、アスファルトを不織布に含浸させたアスファルトルーフィング材が広く使われている。アスファルト含浸布は、不織布に高温のアスファルトを含浸させて製造されるため、不織布には高温度下における加工に耐えられる高い強度が要求される。アスファルト含浸用の不織布に使用されるバインダーとしては、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂等の熱硬化性アミノ樹脂と水性エマルション、またはラテックスを併用する方法が知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、熱硬化性アミノ樹脂を主体とするバインダーは、施工時にホルマリンが発生することから、ホルマリン発生の低減化が望まれている。アミノ樹脂の使用量を削減する、またはアミノ樹脂の使用を止める等の方法が考えられるが、この場合、高温度下の強度が不十分となるため、併用する水性エマルション、またはラテックスにはその改良が求められる。
ホルマリンの発生を防ぐ方法として、アミノ樹脂を使用せずに、酸価が高く、ガラス転移温度が100℃以上であるラテックスをバインダーに用いる方法が提案されている(特許文献4、特許文献5特許文献6)。しかし、酸価の高いラテックスは、粘度が高くなりやすく、製造時、および取扱時に作業性が低下するため、この改良が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平6−136135号公報
【特許文献2】特開平9−170151号公報
【特許文献3】特開平9−176947号公報
【特許文献4】特開平6−263991号公報
【特許文献5】特開平6−263807号公報
【特許文献6】特開平7−258555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造時、および取扱い時の作業性が良好で、不織布用バインダーとして用いたときに、高温度下において高い強度を発現するラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記の実情に鑑み、特定の組成を有し、特定のガラス転移温度を有するラテックスが、良好な作業性を有し、不織布バインダーとして優れた性能を示すことを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜25重量%、シアン化ビニル単量体3〜50重量%、および共重合可能な他の単量体96.5〜25重量%を乳化重合して得られ、ガラス転移温度が80〜140℃であることを特徴とする、不織布バインダー用共重合体ラテックス。
(2)不織布がアスファルト含浸用であることを特徴とする(1)記載の不織布バインダー用共重合体ラテックス。
【発明の効果】
【0006】
本発明の共重合体ラテックスは、取扱いが容易であると同時に、不織布用バインダーとして用いた時に、高温度下で高い強度を発現するという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明においては、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を用いることが必須である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、不織布の強度、および高温下での強度を付与するために重要である。この使用量は、全単量体の重量に基づき、0.5〜25重量%、好ましくは1〜20重量%の割合で用いられる。接着力および安定性の点から、0.5重量%以上の使用が好ましく、ラテックス取扱時の作業性に関わるラテックス粘度の点から、25重量%以下の使用が好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体の好ましい例としてはアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどを挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。不織布の吸湿寸法安定性の点から、アクリル酸、メタアクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましい。
【0008】
本発明におけるシアン化ビニル単量体は、ラテックスに硬さや強度、耐熱強度を付与するために必要である。その使用量は、2〜50重量%、好ましくは3から40重量%である。耐熱強度の点から、2重量%以上が好ましく、また、重合時の安定性の点から50重量%以下が好ましい。シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどを挙げることができ、これらを単独に、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0009】
本発明においては、共重合可能な他の単量体が必須である。この共重合可能な他の単量体を適宜選択することにより、共重合体ラテックスに適度な硬度を設定することがきる。共重合可能な他の単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類などがあげられ、これらは1種または2種以上が組み合わせて用いられる。
共重合可能な他の単量体として共役ジエン単量体を用いる場合、その好ましい使用量は、20重量%以下である。共役ジエンの適度な使用は耐熱性の改良に有効だが、ガラス転移温度の低下に伴う高温度下の強度低下を防ぐためには、20重量%以下の使用が好ましい。
【0010】
本発明における共重合体ラテックスは、不織布の高温下での強度発現の点から、そのガラス転移温度は80℃から140℃であることが好ましく、90℃から140℃であることがさらに好ましい。共重合体のガラス転移温度は、使用する単量体組成を適宜調整することにより、好ましい範囲に設定することが可能である。また、140℃を超えるガラス転
移温度を設定する場合、通常はエチレン性不飽和カルボン酸を、25重量%を超えて使用する必要があり、ラテックスの取扱い性が低下する。
なお、本発明の共重合体のガラス転移温度は、例えば示差走査熱量計または動的粘弾性測定装置などにより測定できる。
【0011】
本発明の共重合体ラテックスを得るための乳化重合の方法については特に制限はなく、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行うなど公知の方法を用いることができる。
使用する乳化剤についても特に制限はなく、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤があげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0012】
ラジカル開始剤は、熱または還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい例としてはペルオキソニ硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがあり、具体的にはペルオキソニ硫酸カリウム、ペルオキソニ硫酸ナトリウム、ペルオキソニ硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、また他に、POLYMER HANDBOOK(3rd edition)、J.BrandrupおよびE.H.Immergut著、John Willy & Sons刊(1989)に記載されている化合物があげられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤と組み合わせて用いるいわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0013】
本発明の共重合体ラテックスを重合する際の重合温度は、特に限定しないが、通常5〜100℃であり、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜95℃である。
また、本発明の共重合体ラテックスを得るための乳化重合においては、ラジカル重合で通常用いられる公知の連鎖移動剤を用いることが可能である。連鎖移動剤の好ましい例としては核置換α−メチルスチレンのニ量体の一つであるα−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、連鎖移動剤の添加方法にも特に制限はなく、一括添加、回分添加、連続添加など公知の添加方法が用いられる。
【0014】
本発明の共重合体ラテックスを得るための乳化重合において、単量体混合物を反応器へ添加する方法は、公知の方法を使うことができ、一括添加、連続添加、分割添加のいずれでも構わない。一定組成の単量体混合物を連続的に反応器に添加する方法が一般的だが、組成が異なる数種の単量体混合物を多段階に分けて添加する方法も効果的に用いることができる。単量体混合物を多段階に分けて添加する方法としては、例えば、2段重合法、3段重合法等があるが、いずれの場合でも、最終段階に添加する単量体混合物中に、エチレン性不飽和カルボン酸、およびシアン化ビニル単量体を含むことが好ましい。
【0015】
乳化重合においては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。これらは例えばpH調整剤、キレート剤などであり、pH調整剤の好ましい例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどがあげられ、キレート剤の好ましい例としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどがあげられる。
【0016】
本発明の共重合体ラテックスの固形分、粒子径についても特に制限はなく、通常固形分は30〜60重量%、粒子径は0.04〜0.4μm、好ましくは0.05〜0.2μmの範囲に調製される。粒子径の調整のため公知のシード重合法を用いることも可能であり、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を適宜選択して用いることができる。
【0017】
本発明の共重合体ラテックスのゲル含有量(トルエン不溶分)についても特に制限は無いが、通常は70〜100%、好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%である。
本発明の共重合体ラテックスには、必要に応じて各種添加剤を添加して用いる事が可能である。例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤などを添加することができる。
【0018】
本発明の共重合体ラテックスを不織布バインダーとして用いる場合、共重合体ラテックスを単独で不織布に付着させて使うことができるが、他の材料とともに用いることも可能である。例えば、架橋剤、水溶性バインダー、他のラテックス、および増粘剤等である。架橋剤としては、特に限定されず、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂等のアミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂(ブロックイソシアネート)等を使うことができる。水溶性バインダーとしては、スターチ、ポリビニルアルコール等を使うことができる。他のラテックスとしては、例えばアルカリ感応型ラテックスや、本発明の共重合体ラテックス以外のラテックスである。増粘剤は公知のものを使用することができる。
【0019】
本発明の共重合体ラテックスは、不織布の接着剤として使用するが、不織布に付着させる方法は特に限定されず、例えば、含浸、塗布等の方法を用いることができる。本発明の共重合体を接着剤として用いることができる不織布の素材は、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維、絹、綿、麻等に天然繊維を用いることができる。この中で、アスファルトルーフィング材用不織布にはポリエステル繊維が好適である。
本発明の共重合体ラテックスは、通常、不織布に対し、15〜30重量%(固形分)を用いる。
【実施例】
【0020】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
攪拌装置と温度調節用のジャケットを備える耐圧反応容器にイオン交換水70重量部、粒子径0.0215μmのシードラテックス0.50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部を仕込み、内温を80℃に昇温した。次いで、スチレン80重量部、アクリロニトリル15重量部およびメタクリル酸5重量部からなる単量体混合物100重量部を5時間で、また水20重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.2重量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部からなる開始剤系水溶液を5.5時間で、それぞれ一定の流速で添加した。単量体混合物および開始剤系水溶液の添加が終了した後、90℃で1.5時間反応を継続させて重合転化率95%以上の共重合体ラテックスを得た。該共重合体ラテックスは、水酸化ナトリウ
ムでpH7.0に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去した。アンモニア水でpH8.0に調整し、固形分50重量%となるように調整した。以上のようにして得られたラテックスは、以下の方法で、粒子径、ガラス転移温度、トルエン不溶分を測定した。その結果を表1に示した。
【0021】
(粒子径)
光散乱法粒度分析計(シーエヌウッド社製モデル6000)により、粒子径を求めた。(ガラス転移温度)
得られた共重合体ラテックスを130℃で十分乾燥させフィルムを作成し、このフィルムについて、セイコー電子社製示差熱量計(DSC−220C)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定した。
(トルエン不溶分)
得られたラテックスを130℃で30分間乾燥させて皮膜を形成させる。次いで得られた皮膜から測定用試量約0.5gを精秤し、トルエン30g中に浸漬して3時間振とう後、300メッシュのステンレスメッシュでろ過する。このときのメッシュに残った未溶解物を乾燥し、その重量を試料重量で除してトルエン不溶分率とした。
【0022】
[実施例2〜4]
用いた単量体混合物の組成を表1に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体ラテックスを得た。粒子径、トルエン不溶分、ガラス転移温度は、表1に示した。
[実施例5]
実施例1と同様に、耐圧反応容器にイオン交換水70重量部、粒子径0.0215μmのシードラテックス0.50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部を仕込み、内温を80℃に昇温した。次いで、1段目として、スチレン4重量部、ブタジエン8重量部、アクリロニトリル2重量部からなる単量体混合物を1時間かけて添加した。単量体混合物の添加と同時に、水20重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.2重量部からなる開始剤水溶液の添加を開始し、全単量体の添加が終了するまで6時間かけて連続的に添加した。1段目の単量体の添加が終了してから1時間後に、2段目として、スチレン56重量部、アクリロニトリル24重量部、アクリル酸2重量部およびメタクリル酸4重量部からなる単量体混合物を4時間で添加した。2段目の単量体混合物および開始剤系水溶液の添加が終了した後、90℃で1.5時間反応を継続させて重合転化率95%以上の共重合体ラテックスを得た。該共重合体ラテックスは、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去した。アンモニア水でpH8.0に調整し、固形分50重量%となるように調整した。粒子径、トルエン不溶分、ガラス転移温度は、表2に示した。
【0023】
[実施例6]
実施例1と同様に、耐圧反応容器にイオン交換水70重量部、粒子径0.0215μmのシードラテックス0.50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部を仕込み、内温を80℃に昇温した。次いで、1段目として、スチレン6重量部、ブタジエン6重量部からなる単量体混合物を0.5時間かけて添加した。単量体混合物の添加と同時に、水20重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.2重量部からなる開始剤水溶液の添加を開始し、全単量体の添加が終了するまで6.5時間かけて連続的に添加した。1段目の単量体の添加が終了してから1時間後に、2段目として、スチレン25重量部、メタクリル酸メチル5重量部、アクリロニトリル8重量部からなる単量体混合物を1.5時間かけて添加した。2段目の添加が終了してから1時間後、3段目として、スチレン35重量部、アクリロニトリル10重量部、メタクリル酸5重量部からなる単量体混合物を2.5時間かけて添加した。3段目の単量体混合物および開始剤系水溶液の添加が終了した後、90℃で1.5時間反応を継続させて重合転化率95
%以上の共重合体ラテックスを得た。該共重合体ラテックスは、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去した。アンモニア水でpH8.0に調整し、固形分50重量%となるように調整した。粒子径、トルエン不溶分、ガラス転移温度は、表2に示した。
【0024】
[比較例1、2]
用いた単量体混合物の組成を表1に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1、2の共重合体ラテックスを得た。粒子径、トルエン不溶分、ガラス転移温度は、表1に示した。
[比較例3、4]
用いた単量体混合物の組成を表1に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3,4の共重合体ラテックスの重合を行なった。比較例3のラテックスは、pH調整で著しく増粘し、流動性を失ったため、これ以上の評価は行なわなかった。また、比較例4のラテックスは、重合の結果、多量の凝集物があり、正常なラテックスが単離できなかったため、評価は実施しなかった。
【0025】
得られた実施例1〜6、および比較例1、2のラテックスは、以下の様にして不織布バインダーとしての性能評価を行なった。
(評価サンプルの作製)
得られた共重合体ラテックスの固形分を30%に調整した後、目付け量100g/mのポリエステル繊維製不織布20cm×20cmを該共重合体ラテックスに浸漬し、マングルで180g/m2になるように絞り、105℃に設定した乾燥機の中に10分間放置した。次いで150℃に設定した乾燥機に10分間放置して、目的とする評価サンプルを得た。該共重合体ラテックスの固形分付着量は、24g/mであった。得られたバインダー加工不織布を裁断し、縦15cm、横5cmの試験片を作製した。
【0026】
(常温下での引張試験)
引張り試験機を使用し、23℃で引張り試験を行なった。チャック間距離10cm、引張速度500mm/分で評価した。評価結果を表3に示した。
(高温処理後の引張試験)試験片を180℃で1分間処理した後、常温下の引張試験と同様に評価した。評価結果を表3に示した。
表3から明らかなように、実施例のラテックスは、常温での引張試験、および高温処理後の引張試験で、ともに良好な結果を示した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の共重合体ラテックスは、高温時の強度に優れ、アスファルト含浸に用いられる不織布のバインダーとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜25重量%、シアン化ビニル単量体3〜50重量%、および共重合可能な他の単量体96.5〜25重量%を乳化重合して得られ、ガラス転移温度が80〜140℃であることを特徴とする、不織布バインダー用共重合体ラテックス。
【請求項2】
不織布がアスファルト含浸用であることを特徴とする請求項1記載の不織布バインダー用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2007−2125(P2007−2125A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185007(P2005−185007)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】