説明

不織布及びそれを用いた拭き取り材

【課題】拭き取り性能の高い不織布及び拭き取り材を提供する。
【解決手段】本発明の不織布10は、繊維集合体を含む不織布であって、前記不織布はニードルパンチにより構成繊維を交絡させ、この状態で残存する部分を第1交絡部1とし、さらに前記不織布の所定個所の構成繊維を交絡させて第2交絡部2とし、前記第1交絡部1と前記第2交絡部2とは相互に離間して複数列存在しており、前記第1交絡部1は前記第2交絡部2に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき、前記第1交絡部1は前記第2交絡部2より少なくとも片面の表面に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及びそれを用いた拭き取り材に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に様々な機能を与えるために、用途に応じた模様などが与えられた不織布が従来から提案されている。特許文献1には、例えば包帯などに使用され、多数の開孔がほぼ全面に形成された不織布が開示されている。この多数の開孔には、体液などが通過しにくいよう、大きさ及び/又は形状が種々様々な開孔が混在している。特許文献2には、例えば拭き取り材としての機能を向上させる工夫がなされた不織布が開示されている。この不織布には、貫通した開孔が連続的に連なった開孔列と、非開孔列が交互に存在している。
【0003】
特許文献3には、不織布支持体と不織布を一体化させ、不織布の片面に嵩高部と非嵩高部を形成し、液体の吸収性を向上させた複合体が開示されている。特許文献4には、支持シートの上に繊維ウェブを載せ、筋状に水流処理することにより一体化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−182460号公報
【特許文献2】特開2000−45161号公報
【特許文献3】特開2003−103677号公報
【特許文献4】特開2004−313559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の不織布は、例えば土足のまま使用するスーパーマーケットの床やキッチンの床などに敷かれている樹脂シート、フローリング床などにある砂粒やパン屑、たばこの葉などの比較的大きなダストを有する面を拭き取るには拭き取り性能が不足であり、改善の要求がある。また、特許文献3及び特許文献4の不織布は、嵩高な部分を有しているため、比較的大きなダストでも拭き取ることは可能だが、その嵩高な部分は強度が弱く、拭き取り時に不織布が変形しやすく、また、繊維の抜け落ちが多く、改善の要求がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、機能性及び意匠性の高い不織布、及び前記不織布を用いた拭き取り材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の不織布は、繊維集合体を含む不織布であって、前記不織布はニードルパンチにより構成繊維を交絡させ、この状態で残存する部分を第1交絡部とし、さらに前記不織布の所定個所の構成繊維を交絡させて第2交絡部とし、前記第1交絡部と前記第2交絡部とは相互に離間して複数列存在しており、前記第1交絡部は前記第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき、前記第1交絡部は前記第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出していることを特徴とする。
【0008】
本発明の拭き取り材は、前記の不織布を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布は、第2交絡部の繊維の交絡がより強くかかっているので、第1交絡部の機能性を持ちながら、不織布全体の強力が高く、耐久性が向上する。また、本発明の不織布は、第1交絡部と第2交絡部とが相互に離間して複数列存在しており、断面から観察したとき前記第1交絡部は前記第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出しているため、意匠性に優れている。
【0010】
また、本発明の不織布を拭き取り材として用いた場合は、第1交絡部と第2交絡部とが相互に離間して複数列存在しており、前記第1交絡部は前記第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき前記第1交絡部は前記第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出していることにより、ダスト捕集性が向上し、比較的大きなダストも効率よく捕集でき、拭き取り性能の高い拭き取り材が提供できる。すなわち、第1交絡部は前記第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、繊維の自由度が大きくて嵩高であるので、不織布の表面部分だけでなく、不織布の内部にまでダストを取り込むことができる。また、第1交絡部はニードルパンチにより構成繊維を交絡させているので、特有のパンチング孔が開いており、この中にもダストを取り込むことができる。この結果、拭き取り性能の高い拭き取り材が提供できる。加えて、第1交絡部はニードルパンチにより繊維を交絡しているため、ウェブと比べて不織布の変形や繊維の抜け落ちが抑えられ、ワイパーとして強く擦った時の拭き取り対象面に対する逆汚染を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは本発明の一実施例における不織布の平面図、図1Bは同I−I線の断面図である。
【図2】図2Aは本発明の別の実施例における不織布の平面図、図2BはII−II線の同断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施例におけるニードルパンチ処理の工程説明図である。
【図4】図4はニードルパンチに使用するニードル(針)の側面図である。
【図5】図5は第2交絡部形成時のニードルパンチに使用するニードルが植針されたニードルボードの斜視図である。
【図6】図6は本発明の一実施例における水流交絡処理の工程説明図である。
【図7】図7は図6の水流交絡処理に用いるノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の不織布は、繊維集合体を主成分として含む。ここで主成分とは、不織布の全体質量に対して、含有量が60〜100質量%である成分のことをいう。繊維は、通常ウェブ(多数の繊維を配列させた集合体)として使用するものであればどのような繊維であってもよい。例えば、コットン、麻、ウールに代表される天然繊維、レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース(例えば、商品名“リヨセル”、“テンセル”)に代表される再生繊維、アセテートに代表される半合成繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、アクリル系に代表される合成繊維などを使用できる。繊維に混合して使用できる物質としては、パルプなどがある。繊維の繊度は、0.1〜60dtexが好ましく、1〜30dtexがより好ましく、1.5〜10dtexがさらに好ましい。繊度がこの範囲であると、第1交絡部と第2交絡部との厚みの違いを大きくしやすくなるため、好ましい。繊度が大きいと、不織布は嵩高くなるため、好ましいが、60dtexを超えると、第2交絡部の厚みを第1交絡部の厚みより小さくすることが難しくなる場合や、拭き取り材として十分な交絡が得られず、繊維の抜け落ちが起こりやすくなる場合がある。また、繊度が0.1dtex未満では、第1交絡部を嵩高くすることが難しくなり、第2交絡部との厚みの差が出にくくなる。
【0013】
本発明の不織布は、繊維を所定の方向に配列させたウェブで構成される。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、クリスクロスウェブ、セミランダムウェブ及びランダムウェブなどのカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブなどの短繊維ウェブ、ならびにスパンボンドウェブ、メルトブローンウェブなどの長繊維ウェブなどから選択されるいずれの形態であってもよい。また、繊維ウェブは、繊維の交絡性や不織布の嵩高性を考慮すると、短繊維ウェブであることが好ましく、カードウェブであることがより好ましい。繊維ウェブが短繊維ウェブである場合は、繊維の交絡性を考慮すると、繊維の繊維長は5〜110mmが好ましく、25〜80mmがより好ましく、35〜70mmがさらに好ましい。また繊維層は単一層であっても良いし、異なる素材の繊維を積層させてもよい。
【0014】
本発明の不織布に用いられる繊維集合体の構成繊維の形状については、特に限定されず、例えば単一繊維、鞘芯型複合繊維、分割型複合繊維又は異形断面を有する繊維などが挙げられる。異形断面としては、Y型、W型、三角などの多角型、星形多角形型、トライパス型、偏平型などが挙げられる。異形断面の繊維を含むと、不織布の拭き取り性が向上し、また、嵩高性が向上するため、好ましい。また、異形断面の繊維を含むと、フィルターとして使用した場合に、濾過効率が向上するため、好ましい。また、中空断面の繊維を用いると、不織布の嵩高性が向上するため好ましく、フィルターとして使用した場合は、向上した嵩高性により、圧力損失が減少するため、好ましい。
【0015】
繊維集合体の構成繊維は、1種又は2種以上の材料を含む。構成繊維が2種以上の材料からなる場合、2種以上の材料のうちの少なくとも1種については、他の材料よりも相対的に融点が低い材料を含んでいると、後述する規則的な模様を良好に保持しながら構成繊維同士を融着させることができ好ましい。ここで、構成繊維が2種以上の材料からなる場合は、繊維集合体が1種の構成繊維からなりその構成繊維自体が2種以上の材料からなる場合と繊維集合体が材料の異なる2種以上の構成繊維からなる場合とを含む。以下においても同様である。
【0016】
本発明の不織布は、熱融着繊維を含んでいると好ましい。熱融着繊維を含んでいると、それらが隣り合う繊維と熱融着することで、不織布の形状安定性が向上し、使用に伴う厚みの低下も抑制される。また、このような不織布は、伸びにくいので拭き取り材に適しており、拭き易く、力を加えずに軽く拭ける拭き取り材を提供できる。また、このような不織布は、繊維同士が熱融着しているので、繊維の毛羽抜けを抑えることができ、拭き取り材として使用した場合に拭き取り対象面に対する逆汚染を抑えることができる。このような熱融着繊維は、不織布全体質量に対して、5〜50質量%含まれていると好ましい。熱融着繊維の含有量が上記範囲内にあると、形状安定性が良好であり、かつ、毛羽立ちが少なくよれにくい不織布を提供できる。
【0017】
本発明の不織布は、繊度が3dtex以上である太繊度の繊維を含むと、不織布の嵩高性が得られやすくなるため、好ましい。また、太繊度の繊維を含むと、同じ密度であって、より細い繊度を含む不織布よりも、繊維間の距離が大きくなるため、拭き取り材として使用した際にダストを取り込みやすくなるため、好ましい。このような太繊度の繊維は、不織布全体質量に対して、30質量%以上含まれていると好ましく、50質量%以上含まれているとより好ましく、70質量%以上含まれているとさらに好ましい。
【0018】
本発明の不織布は、ポリエステル系繊維を含むと、繊維自体の剛直があること、融点が高くて不織布製造時の熱処理などによってへたりにくいこと、コストが安いなどの理由で好ましい。このようなポリエステル系繊維は、不織布全体質量に対して、30質量%以上含まれていることが好ましく、50質量%以上含まれていることがより好ましく、70質量%以上含まれていることがさらに好ましい。
【0019】
また、不織布の構成繊維中には、親水性繊維を10質量%以上含んでいてもよい。より好ましくは、30質量%以上である。レーヨン、パルプなどの親水性繊維を含むと、水との親和性が高く、拭き取り効率が向上する。また、親水性繊維を上記の範囲で含むと、水流交絡を行う場合は、繊維の交絡性が良く、後述する規則的な模様の形成性が良くなる。不織布が単層からなる場合は、親水性繊維は80質量%以下であることが好ましい。特に、親水性繊維の繊度が3dtex以下である場合は、50質量%以下であることが好ましい。親水性繊維の含有量が多いと、濡れた拭き取り対象を拭き取る際に、抵抗感が多くなるためである。
【0020】
本発明の不織布は、2層以上の積層構造をしていてもよい。例えば親水性繊維を主として含む層を含む場合は、薬液などを保持させれば、拭き取り材として、優れた拭き取り性を得ることが可能となる。特に、不織布が3層以上の積層構造をしており、パルプなどの親水性繊維を主として含む層を中間層として含む場合は、親水性繊維を主として含む層が保液層となり、液を表面に徐々に出すことが出来るので、好ましい。また、パルプなどの親水性繊維を主として含む層を中間層として含む場合は、第2交絡部が水流交絡により形成する場合は、後述する規則的な模様を鮮明にすることができるので、好ましい。ここで、「主として」とは、親水性繊維を主として含む層において、親水性繊維が主成分として50質量%以上含まれることを意味する。親水性繊維を主として含む層を中間層として含む場合は、不織布の表面層の繊維として親水性繊維を含む必要はなく、疎水性繊維のみであれば、濡れた拭き取り対象を拭き取る際の抵抗感が少なくなり、好ましい。ただし、表面層の目付や厚みが大きい場合は、表面層が疎水性繊維のみでは水分を吸収しにくいため、適宜、親水性繊維を含めたり、目付や厚みを調整すればよい。
【0021】
また、本発明の不織布が2層以上の積層構造である場合、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)不織布、経緯直交型不織布、樹脂製などのネット、スクリムなどの織物を積層すると、不織布の形態保持性が高くなるため、好ましい。特に3層以上の積層構造で、上記のような織物を中間層として含む場合が好ましい。このようなスパンボンド不織布やネットとしては、新日石プラスト株式会社製の経緯直交型不織布(商品名“ミライフ”)、同社製の経緯直交型ネット(商品名“コンウェッドネット”)などが挙げられる。特に、コンウェッドネットなどの経緯直交型ネットによれば、交絡度合いが低くても不織布の形態保持性が高いため、好ましい。
【0022】
前記繊維を含む繊維ウェブ全面に対してニードルパンチにより構成繊維を交絡させる。この技術は、ウェブ層に刺をつけた針で数10本/cm2以上、場合によっては数千本/cm2までも突き刺すことにより構成繊維を絡めフェルト状にする技術である。このニードルパンチにより構成繊維を交絡させた部分で、次の第2交絡部を形成する部分以外の部分に当たる部分を第1交絡部とする。ニードルパンチによる処理は、通常のニードルパンチ機を用いて行うことができる。ニードルパンチ処理の条件としては、針(ニードル)が植針されたニードルボードを用い、繊維ウェブの上又は下から、ニードルボードを上下運動させて針を繊維ウェブ中に貫通させると良い。このとき、針深度が3〜20mmとなるように、ニードルボードの上下運動を調節すると良い。針は、バーブの数が3〜9であり、番手が36〜42番手であるものを用いると良い。また、ペネ数(単位面積当たりの針の打ち込み本数)が10〜500本/cm2であるように、針密度やウェブの搬送速度を調節すると良い。ペネ数が10本/cm2未満であると、繊維の交絡が弱くなり、繊維の抜け落ちが増加する場合がある。ペネ数が500本/cm2を超えると、繊維の交絡が強くなり、第1交絡部の嵩高性が小さくなる場合がある。ペネ数の好ましい範囲は30〜200本/cm2である。
【0023】
なお、この第1交絡部は、本発明の効果を奏する範囲であれば、熱処理で構成繊維同士を熱融着させるなどの操作を行っても良く、本発明の構成要件である、「この状態で残存する」という用語は、このような操作を行った場合も含まれる。ニードルパンチにより構成繊維を交絡させれば、嵩高な不織布を得ることができ、拭き取り材として用いた場合、繊維密度が低く、繊維の自由度が大きくて嵩高であるので、比較的大きなダストも捕集でき、また、不織布の表面部分だけでなく、不織布の内部にまでダストを取り込むことができる。また、ニードルパンチにより構成繊維を交絡させているので、特有のパンチング孔が開いており、この中にもダストを取り込むことができる。この結果、拭き取り性能の高い拭き取り材が提供できる。また、繊維を交絡させているため、ウェブと比べ、不織布の強力は高く、不織布の変形や繊維の抜け落ちを抑えることができ、ワイパーとして強く擦った時の拭き取り対象面に対する逆汚染を抑えることができる。
【0024】
さらに前記不織布の所定個所の構成繊維を交絡させて第2交絡部とする。この第2交絡部はニードルパンチにより形成しても良いし、水流交絡させてもよい。第2交絡部を形成することで、第2交絡部の繊維の交絡がより強くかかっているので、不織布全体の強力が高く、耐久性が向上する。第2交絡部を水流交絡により形成する場合は、ニードルパンチにより形成する場合と比べてより強力に繊維が交絡するため、より強力な不織布が得られる点で好ましい。また、第2交絡部を水流交絡処理で形成する場合は、ニードルパンチ不織布がもつ特性(嵩高性など)を維持しながら、所定の間隔で水流交絡部が存在するため、ニードルパンチ不織布と水流交絡不織布の機能を併せ持った不織布が得られる。水流交絡処理は、繊維ウェブを、搬送支持体の上に載置し、ウェブの片面又は両面に水流を噴射して実施する。このとき、構成繊維同士が交絡して、不織布が得られる。水流交絡処理条件は繊維ウェブの目付ならびに搬送支持体の速度などに応じて適宜設定することができる。水流の供給には、例えば、その長手方向が、繊維ウェブの進行方向と直交するように配置され、複数のオリフィス(開口)を有するノズルを1個以上用いることができる。オリフィスの口径は、鮮明な模様を形成可能であるという理由から、0.05mm以上であると好ましく、繊維ウェブを乱すことなく地合いを整えることが可能であるという理由から0.5mm以下であると好ましい。図7に示しているように、オリフィスは、1つ以上のオリフィス71からなるオリフィス群72を形成しており、隣り合うオリフィス群の間隔dは、2mm以上であることが好ましい。好ましい上限値は300mmであり、より好ましい範囲は5〜150mmである。拭き取り材として使用する不織布を得る場合は、好ましい上限値は50mmであり、5〜30mmがより好ましい。また、1つのオリフィス群の幅cは、2mm以上であることが好ましい。好ましい上限値は300mmであり、より好ましい範囲は5〜150mmである。拭き取り材として使用する不織布を得る場合は、好ましい上限値は50mmであり、5〜30mmがより好ましい。オリフィス群が2つ以上のオリフィスからなる場合は、オリフィス群の中での隣り合うオリフィスの間隔は、0.2〜1.5mmであることが好ましい。そして、このようなノズルを用いて、水圧1〜20MPaの水流を、繊維ウェブの表裏面側からそれぞれ1〜4回ずつ噴射するとよい。水圧が1MPa未満であると、繊維同士の交絡が不十分となり、得られた不織布において毛羽抜けが生じやすくなる場合がある。水圧が20MPaを越えると、繊維同士の交絡が強固になりすぎて、繊維の自由度が低下し、風合いが硬くなる場合や、繊維が引きちぎれる場合がある。
【0025】
また、第2交絡部を水流交絡により形成する場合は、第2交絡部に規則的な模様を形成することも可能となる。規則的な模様とは、模様を構成する構成単位が、例えば、凹凸及び開孔からなる群から選ばれる少なくとも1種から選ばれる模様のことである。具体的には、ドット(円、楕円、三角形、多角形等)模様、杉綾模様、市松模様、格子模様、千鳥模様、およびジグザグ模様等があげられる。
【0026】
このような規則的な模様を形成する方法としては、これらの規則的な模様を有する支持体を用いればよい。支持体の形態について、特に制限はないが、モノフィラメントまたは金属線が織成されて形成されたパターンネットや、突起物が設けられたロール等、汎用されているものを任意に使用できる。具体的には、平織り、杉綾織り、綾織り、スパイラル織りなどのパターンネットや、開口プレート、開口ロールなどが挙げられる。
【0027】
各規則的な模様には様々な機能や効果がある。例えば、開孔が所定の間隔で形成されたドット模様などは掻き取り性の向上に寄与する。杉綾模様では、繊維の密度が相対的に高い部分と低い部分とが小さい周期で繰り返されているので、毛細管現象などを起こしやすく、不織布の吸水性を向上させる。よって複数種の模様を付与すれば、複数の機能を有する不織布を提供できる。
【0028】
上記規則的な模様の構成単位が開孔である場合、開孔の面積及び開孔間距離が下記範囲にあると、ダスト捕集性の優れた拭き取り材に好適な不織布を提供できる。開孔の面積は0.1〜6.0mm2であると好ましく、0.3〜5.5mm2であるとより好ましい。相互に最も近接した開孔間の距離については1.0〜3.0mmであると好ましく、1.5〜3.0mmであるとより好ましい。
【0029】
第2交絡部をニードルパンチにより形成する場合は、図5に示しているように、針が植針されたニードルボードにおいて、繊維ウェブの搬送方向と交差する方向における幅が2mm以上であるニードル群を有し、隣り合うニードル群の間隔bが2mm以上であるように、針が植針されたニードルボードを用いると良い。ニードル群の幅aは、好ましい上限値は300mmであり、より好ましい範囲は5〜150mmである。また、拭き取り材として使用する不織布を得る場合は、ニードル群の好ましい上限値は50mmであり、5〜30mmであるとより好ましい。隣り合うニードル群の間隔bは、好ましい上限値は300mmであり、より好ましい範囲は5〜150mmである。拭き取り材として使用する不織布を得る場合は、隣り合うニードル群の間隔の好ましい上限値は50mmであり、5〜30mmであるとより好ましい。第2交絡時のニードルパンチ処理の条件は、ペネ数が30〜700本/cm2となるように、針密度や繊維ウェブの搬送速度を調節すればよい。ペネ数が30本/cm2未満であると、第1交絡部との厚み(密度)の差を設けにくくなる。ペネ数が700本/cm2を超えると、繊維の交絡が強くなるが、拭き取り材として使用した際には、第2交絡部が拭き取り性に寄与しにくくなる。ペネ数の好ましい範囲は50〜400本/cm2である。
【0030】
このようにして、第1交絡部と第2交絡部とは相互に離間して複数列存在させる。これにより、第1交絡部は前記第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき、第1交絡部は第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出していた不織布が得られる。この不織布は、第1交絡部は嵩高で低密度であるため粒径の大きなダストを捕集でき、第2交絡部の高密度な部分で小さなダストを捕集できる。また、この不織布は、意匠性が優れたものであり、厚みの大きい第1交絡部と厚みの小さい第2交絡部とが列をなして複数存在していることから、列方向に沿って折りたたむことが容易となる。断面から観察したときの第1交絡部が第2交絡部より両表面に突出している場合は、両面に優れた拭き取り性を有し、不織布を有効に使用できるため、好ましい。また、断面から観察したときの第1交絡部が第2交絡部より片面の表面のみに突出している場合は、拭き取り装置への取り付けが容易になるため、好ましい。
【0031】
不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、第1交絡部は前記第2交絡部に比較して繊維密度が0.005〜0.14g/cm3低いことが好ましい。これにより、さらにダスト捕集性が向上し、比較的大きなダストも効率よく捕集でき、拭き取り性能を高めることができる。より好ましい範囲は、0.006〜0.12g/cm3である。第2交絡部が水流交絡処理により形成される場合は、第1交絡部は第2交絡部に比較して繊維密度が0.04〜0.12g/cm3低いことが好ましい。第2交絡部がニードルパンチにより形成される場合は、第1交絡部は第2交絡部に比較して繊維密度が0.006〜0.10g/cm3低いことが好ましい。
【0032】
不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、第1交絡部の繊維密度は、0.015〜0.10g/cm3であることが好ましい。より好ましい範囲は、0.020〜0.080g/cm3である。繊維密度が0.015g/cm3未満であると、不織布の強力が弱く、拭き取り材として使用した際に、不織布が変形しやすく、また、繊維の脱落が多くなりやすい。繊維密度が0.10g/cm3を超えると、繊維の自由度が小さくなり、ダストを取り込みにくくなる。
【0033】
不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、第2交絡部の繊維密度は、第2交絡部が水流交絡処理により形成される場合は、0.080〜0.25g/cm3が好ましく、より好ましい上限値は0.15g/cm3である。また、第2交絡部がニードルパンチにより形成される場合は、0.020〜0.15g/cm3が好ましく、より好ましい上限値は0.10g/cm3である。
【0034】
この不織布は、不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、第1交絡部は第2交絡部より少なくとも片面の表面に0.3〜2.0mm突出していることが好ましい。これにより、さらにダスト捕集性が向上し、比較的大きなダストも効率よく捕集でき、拭き取り性能を高めることができる。より好ましくは、0.4〜1.8mm突出していることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜1.6mmである。
【0035】
この不織布の目付けは、一般的にニードルパンチ処理で加工できる目付であれば特に限定されないが、40〜300g/m2の範囲であることが好ましい。この範囲であると拭き取り材として都合がよい。より好ましい範囲は、50〜200g/m2であり、さらに好ましい範囲は60〜150g/m2である。また、用途が吸音材などの用途であれば、である場合には、100〜500g/m2の範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明の不織布は、拭き取り材として使用する場合、第1交絡部及び第2交絡部の長手方向と直交する方向における10%伸長時応力は、0.1N/5cm以上であることが好ましく、0.8N/5cm以上であることがより好ましい。この範囲であると、拭き取り時に不織布がよれにくく、拭き取り材としての耐久性が向上するため好ましい。ただし、この10%伸長時応力が大きすぎると、拭き取り性が低下する場合があるため、目付が40〜300g/m2であれば、好ましい上限値は、50N/5cmであり、より好ましい上限値は、30N/5cmである。
【0037】
この不織布の第1交絡部の幅は2mm以上であり、第2交絡部の幅は2mm以上であることが好ましい。上限値は不織布の用途によって自由に設定すれば良いが、例えば使用時の不織布において、第1交絡部と第2交絡部が2列以上ずつ存在するように設定すればよい。第1交絡部の幅または第2交絡部の幅の好ましい上限値は300mmであり、より好ましい範囲は5〜150mmである。拭き取り材の用途では、好ましい第1交絡部の幅は2〜50mmであり、好ましい第2交絡部の幅は2〜50mmである。これにより、さらにダスト捕集性が向上し、比較的大きなダストも効率よく捕集でき、拭き取り性能を高めることができる。より好ましい範囲は、第1交絡部の幅が5〜30mmである。拭き取り材の用途では、第2交絡部の幅は短い方が拭き取り性が向上し、より好ましい上限値は30mm以下であり、さらに好ましい上限値は15mmであり、特に好ましい上限値は5mmである。また、拭き取り材の用途では、第1交絡部の幅と第2交絡部の幅との比の値(第1交絡部の幅/第2交絡部との幅)は、1〜8であると、拭き取り性が向上するため好ましく、より好ましい範囲は2〜6である。
【0038】
第1交絡部の幅と第2交絡部の幅は、同じである必要はなく、異なっていてもよい。また、複数の第1交絡部の幅はそれぞれ同じである必要はない。複数の第2交絡部の幅もそれぞれ同じである必要はない。本発明の不織布が有する複数の第1交絡部又は第2交絡部の幅は、不織布の意匠性を高めるために、不織布のCD方向(横方向)又はMD方向(縦方向)に沿って除々に大きくなっていてもよい。
【0039】
また、本発明の不織布は、複数の第1交絡部の幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が、複数回繰り返されたものであってもよい。複数の第2交絡部の幅についてもその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が、複数回繰り返されていてもよい。不織布を拭き取り材として用いた場合に、第1交絡部又は第2交絡部の幅により、捕捉されやすいダストの粒径、ダストの種類が異なることから、上記のように不織布が幅の異なる第1交絡部又は第2交絡部を有していると、様々な種類のダストを捕集でき、好ましい。
【0040】
また、全面が無地又は多数の開孔などの模様がほぼ全面に形成された、従来の拭き取り材では、拭き取り材のうちの、床などの被拭き取り面と接する面の縁部でダストが集中的に捕集されるため、拭き取り材の被拭き取り面と接する面の中央部を、拭き取りのために効果的に使えなかった。しかし、複数の第1交絡部又は第2交絡部の幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が複数回繰り返されたものである場合は、下記の理由により、不織布の被拭き取り面と接する面の中央部におけるダスト捕集能が従来の不織布製の拭き取り材より高い。
【0041】
上述のとおり、第1交絡部又は第2交絡部の幅が異なると、捕捉されやすいダストの粒径、ダストの種類が異なる。そのため、拭き取り材のうちの、床などの被拭き取り面と接する面の縁部に位置する第1交絡部又は第2交絡部で捕捉されなかったダストは、縁部よりも内側に入り込み、縁部に位置する第1交絡部又は第2交絡部よりも内側に位置する、幅の異なる第1交絡部又は第2交絡部で捕捉され、この第1交絡部又は第2交絡部でも捕捉されなかったダストは、さらに内側に位置する幅の異なる第1交絡部又は第2交絡部で捕捉される。よって、第1交絡部又は第2交絡部の幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が複数回繰り返されたものである不織布である場合は、複数の第1交絡部又は第2交絡部の幅が等しい不織布よりも、ダスト捕集能がよい。
【0042】
また、本発明の不織布は、不織布に含まれるすべての第1交絡部の幅が上記の範囲を満たす必要はなく、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、上記の範囲の幅に含まれない第1交絡部が存在しても良い。第2交絡部についても、不織布に含まれるすべての第2交絡部の幅が上記の範囲を満たす必要はなく、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、上記の範囲の幅に含まれない第2交絡部が存在しても良い。本発明の不織布に含まれる第1交絡部のうち、幅が上記の範囲を満たす第1交絡部の列数が、不織布に含まれる第1交絡部の全ての列数のうち、50%以上含まれると、拭き取り材として、より優れた拭き取り性を示すため、好ましい。70%以上含まれると、より好ましい。また、本発明の不織布に含まれる第2交絡部のうち、幅が上記の範囲を満たす第2交絡部の列数が、不織布に含まれる第2交絡部の全ての列数のうち、50%以上含まれると、拭き取り材として、より優れた拭き取り性を示すため、好ましい。70%以上含まれると、より好ましい。
【0043】
本発明の不織布における第1交絡部及び第2交絡部は、本願発明の効果が確保される限りにおいて、MD方向及びCD方向のうちのいずれと平行であってもよいが、MD方向と平行であると好ましい。通常、不織布の製造過程において繊維集合体にはMD方向のテンションがかかっているので、第1交絡部及び第2交絡部をMD方向に沿って形成する場合は、所望の交絡部の幅を得る場合や、第2交絡部が水流交絡により形成され、規則的な模様を得る場合において、安定して形成できるため好ましい。
【0044】
本発明の不織布は、拭き取り材として好適に用いられるが、他の用途としては、エアフィルター、液体用フィルター、吸収性物品(特に吸収体用基布)、カーペットの表面材、熱交換器、結露防止シート、壁紙、クッション材、吸音材、断熱材、保温材、播種シート、パップ剤用基布、液吸い上げ用の芯、スポンジ、マット、液体保持材、乾燥剤・吸着剤・脱臭剤などを入れる収納物などの各種用途にも好適である。カーペットの表面材、壁紙、クッション材、吸音材、断熱材、保温材、播種シート、スポンジ、マット、液体保持材などの用途では、本発明の不織布が有する優れた意匠性を発揮できる。熱交換器、結露防止シートなどの用途では、第2交絡部が溝のように存在することで、所望の性能を発揮することができる。液吸い上げ用の芯などの用途では、第2交絡部の吸い上げ性を高め、第1交絡部の吸い上げ性を低く設定することで、芳香剤などに使用した場合に、寿命を長くすることができる。また、複数層の不織布を向きを変えて交互に積層することで、第1交絡部と第2交絡部の厚みの差を利用して、第2交絡部に空間を形成することができる。このような積層不織布は、乾燥剤・吸着剤・脱臭剤などを入れる収納物として使用することができる。
【0045】
本発明の不織布を得るためには、一例として、短繊維集合体をカードで開繊し、構成繊維を所定の方向に配列させてウェブとし、このウェブにまず第1工程としてニードルパンチ処理により構成繊維を交絡させ、次に第2工程として所定の個所をニードルパンチ処理又は水流交絡処理して第2交絡部を形成する。
【0046】
次に図面を用いて説明する。図1Aは本発明の一実施例における不織布の平面図、図1Bは同断面図である。この不織布10は、第1交絡部1と第2交絡部2で構成され、全面がまずニードルパンチ処理により構成繊維を交絡されており、その上に水流交絡処理して第2交絡部2が形成されている。これにより、第2交絡部2以外の部分は第1交絡部1となり、第1交絡部と第2交絡部とは相互に離間して複数列存在している。また、図1Bに示すように第1交絡部1は第2交絡部2に比較して相対的に繊維密度が低く、断面から観察したとき、第1交絡部1は第2交絡部2より両表面に突出している不織布が得られる。
【0047】
図2Aは本発明の別の実施例における不織布の平面図、図2Bは同断面図である。この不織布11が図1A−Bと異なる点は、第2交絡部4がニードルパンチ処理により形成されていることである。すなわち第1交絡部3も第2交絡部4もニードルパンチ処理により形成されている。
【0048】
図3は本発明の一実施例におけるニードルパンチ処理の工程説明図である。ニードルパンチ処理装置30は、コンベア21で搬送されてきたウェブ22をストリッパプレート23とベッドプレート24の上下プレート間に導入し、ニードル25が植針されたニードルボード26をニードルビーム27にて上下運動させることによりニードル25をウェブ22中に貫通させる。上下のプレートには各貫通位置にあわせて孔が穿孔されている。処理後のウェブ29はデリベリローラ28a,28bによって取り出される。
【0049】
図4はニードルパンチに使用するニードル(針)の側面図である。このニードル40には、ブレード部41とシャンク部43とクランク部44からなり、ブレード部41にはバーブ(刺)42が複数個、貫通方向に逆らうように形成されており、ウェブの構成繊維を絡める作用機能がある。
【0050】
図5は第2交絡部形成時のニードルパンチに使用するニードルが植針されたニードルボードの斜視図である。ニードルボード60において、ニードル群62は、幅がaであり、隣り合うニードル群の間隔はbである。隣り合うニードル群が所定の間隔を有することにより、第1交絡部と第2交絡部を形成することができる。
【0051】
図6は本発明の一実施例における水流交絡処理の工程説明図を示す。この水流交絡処理装置50は、第1交絡処理された不織布52を高圧の水流(ウォータージェット:WJ)51によりさらに交絡させる。不織布52の下又は上にメッシュスクリーン53を配置させ、下側にロールシェル54と減圧ライン55を配置させて処理水56を吸引除去する。WJ処理した後の不織布は乾燥させ、巻き取る。この不織布を拭き取り材とするには、所定の寸法に裁断する。
【0052】
図7は図6の水流交絡処理に用いるノズルの断面図である。ノズル70は、一つ以上のオリフィスからなるオリフィス群を有し、オリフィス群の幅はcであり、隣り合うオリフィス群の間隔はdである。隣り合うオリフィス群が所定の間隔dを有することにより、第1交絡部と第2交絡部を形成することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例及び比較例で得られた不織布の各物性は、以下の通り測定した。
【0055】
(1)第1交絡部及び第2交絡部を含む全体の厚み
不織布の厚み測定機(商品名“THICKNESS GAUGE”、モデル:CR−60A、株式会社大栄科学精器製作所製)を用い、JIS L 1096に準じて試料1cm2あたり3gの荷重を加えた状態で測定した。
【0056】
(2)第1交絡部及び第2交絡部各々の厚み
不織布の厚み測定機(商品名“THICKNESS GAUGE”、モデル:CR−60A、株式会社大栄科学精器製作所製)を用い、JIS L 1096に準じて試料1cm2あたり3gの荷重を加えた状態で測定した。測定の際に、第1交絡部のみ及び第2交絡部のみをそれぞれ不織布から切り取って各々測定した。
【0057】
(3)破断強力、破断伸度
JIS L 1096に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をチャックの間隔が10cmとなるように把持し、定速伸長型引張試験機(商品名:テンシロン UCT−1T オリエンテック株式会社製)を用いて引張速度30cm/分で試料片を伸長し、破断時の荷重値及び伸長率をそれぞれ破断強力、破断伸度として測定した。
【0058】
(4)10%伸張時応力
破断強力測定時の10%伸長時における荷重値、すなわち、測定開始地点から1cm伸張させたときの荷重値(チャック間の間隔(10cm)が11cmになったときの荷重値)を10%伸張時応力として測定した。
【0059】
(5)目付け
JIS L 1096に準じ、試験片を採取し、それぞれの質量を量り、1m2当たりの質量(g/m2)を求めた。
【0060】
(6)密度
厚みと目付けから、密度を計算した。
【0061】
(7)ダスト吸着試験
Pタイル(株式会社サンゲツ製)(縦26cm、横60cm)上にJISダスト1種を縦7cm、横20cmの広さに均一に0.50g分散し、あらかじめ質量を測定しておいた。その後、各実施例、比較例の不織布(縦7cm、横12cm)で、上記ダストを拭き取った。拭き取りは、拭き取りに寄与する面積が35cm2となるように不織布をスポンジ(山崎産業株式会社製、商品名“ガラスふきワイパー”に付属のポリエチレン製スポンジバッドをサイズ縦70mm、横50mmにカットしたもの、質量4.4g)に取付け、500gの加重をかけた状態で不織布のCD方向(第1交絡部の長手方向と直交する方向)に2往復させて行った。この測定方法により、測定前後の拭き取り材不織布の質量、ダスト吸着量とダスト吸着率を求め、ダスト吸着評価を下記のように行った。
A ダスト吸着率が40%以上
B 同、30%以上40%未満
C 同、20%以上30%未満
D 同、20%未満
【0062】
[実施例1]
実施例1は、まず、繊維素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)単一繊維(繊度6.6dtex、繊維長64mm、商品名“テトロン”、東レ株式会社製)と、ビスコースレーヨン繊維(繊度1.7dtex、繊維長40mm、商品名“コロナ”、ダイワボウレーヨン株式会社製)と、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)芯鞘複合繊維(芯PP、鞘PE、PP/PE=37:63(質量比))(繊度1.7dtex、繊維長51mm、商品名“NBF(H)”、ダイワボウポリテック株式会社製)を用意した。その後、PET単一繊維、ビスコースレーヨン繊維及びPP/PE芯鞘複合繊維を、質量比で50:30:20の割合で均一に混綿し、パラレルカードウェブとした。前記ウェブに対して、表1に示す処理をした。ニードルパンチ処理(以下において、NPともいう。)は図3〜5に示す方法において、ニードルはRBA−40(フォスターニードル社製、40番手、バーブ数9)を使用し、針密度が1.4本/cm2であるニードルボードを使用し、ペネ数を50本/cm2(単位面積当たりの針の打ち込み本数)とし、上下突き全面とした。針深度は8mmとした。ウォータージェット処理(以下において、WJともいう。)は図6〜7に示す方法を用いた。WJは、カードウェブを経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネット上に載置し、速度4m/分で進行させながら、カードウェブの表面に対して、第1交絡部と第2交絡部の幅が表1に示す通りになるように、オリフィス群の幅と隣り合うオリフィス群の幅を調整した。具体的には、1つのオリフィス群に5つのオリフィスが含まれており、1つのオリフィス群の幅が3mmであり、隣り合うオリフィス群の間隔が15mmとなるように調整したノズルであり、オリフィスの孔径が0.13mmであり、1つのオリフィス群に含まれるオリフィス同士の間隔が0.6mmであるノズルを用いて、水圧6.0MPaの柱状水流を噴射し、ストライプ状の第2交絡部を得た。第2交絡部形成の後に135℃で10秒間熱処理して、実施例1の不織布を得た。
【0063】
[実施例2]
実施例2は、PET単一繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm、商品名“テトロン”、東レ株式会社製)を用意し、パラレルカードウェブを2枚作製した。2枚のカードウェブの間に、パルプ繊維100質量%からなるティッシュペーパー(目付17g/m2、ハビックス株式会社製)を積層し、3層からなる積層ウェブとした。その後、前記ウェブに対して、表1に示す処理をした。なお、ニードルパンチ処理(NP)は、実施例1と同様にして行った。その後、1つのオリフィス群の幅が6mmであり、隣り合うオリフィス群の間隔が6mmとなるように調整したノズルを用いた以外は、実施例1と同様にしてウォータージェット処理(WJ)を行い、実施例2の不織布を得た。
【0064】
[実施例3]
ウォータージェット処理(WJ)を1つのオリフィス群の幅が12mmであり、隣り合うオリフィス群の間隔が12mmとなるように調整したノズルを用いて行った以外は、実施例2と同様にして、実施例3の不織布を得た。
【0065】
[実施例4]
実施例4は、まず、PET単一繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm、商品名“テトロン”、東レ株式会社製)と、PP/PE芯鞘複合繊維(芯PP、鞘PE,PP/PE=37:63(質量比))(繊度1.7dtex、繊維長51mm、商品名“NBF(H)”、ダイワボウポリテック株式会社製)を質量比で85:15の割合で均一に混綿し、パラレルカードウェブとした。前記ウェブに対して、ニードルパンチ処理を行った。第1交絡部を形成するニードルパンチ処理(NP)は針深度4mm、ペネ数を50本/cm2とした以外は実施例1と同様とした。第2交絡部は、針をコニカル針(フォスターニードル社製、バーブ数9、38番手)に替え、針が植針されているニードルボードにおいて、繊維ウェブの搬送方向と交差する方向における幅において、25〜30mmの幅にわたって植針されたニードル群であって、隣り合うニードル群の間隔が25〜30mmとなるように針が植針されたニードルボードを用い、上突きのみで針深度10mm、ペネ数を100本/cm2としてストライプ状に処理することにより形成した。第2交絡部形成の後に135℃で10秒間熱処理して、実施例4の不織布を得た。
【0066】
[実施例5]
実施例5は、PET単一繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm、商品名“テトロン”、東レ株式会社製)と、PP/エチレン−プロピレン共重合体(EP)偏心芯鞘複合繊維(芯PP、鞘EP、PP/EP=50:50(質量比))(繊度2.2dtex、繊維長51mm、商品名“CPP”、ダイワボウポリテック株式会社製)を質量比で70:30の割合で均一に混綿し、クロスレイカードウェブとした。その後、実施例4と同様にして、第1交絡部及び第2交絡部を形成して、実施例5の不織布を形成した。
【0067】
[実施例6]
第2交絡部形成の後に135℃で10秒間熱処理した以外は、実施例5と同様にして実施例6の不織布を得た。なお、実施例6において、熱処理により不織布が熱収縮して、第1交絡部と第2交絡部の幅は表1に示す通りとなった。
【0068】
[比較例1]
実施例1と同じカードウェブを使用し、WJ処理は、水圧3.0MPa、ウェブ全面に対して表裏各1回処理とした。WJ処理の後に135℃で10秒間熱処理した。
【0069】
[比較例2]
実施例1と同じカードウェブを使用し、NP処理は、RBA−40(フォスターニードル社製、40番手、バーブ数9)を使用し、ペネ数を100本/cm2とし、上下突き全面とした。針深度は10mmとした。NPの後に135℃で10秒間熱処理した。
【0070】
[比較例3]
実施例1と同じカードウェブを使用し、NP処理は、RBA−40(フォスターニードル社製、40番手、バーブ数9)を使用し、ペネ数を100本/cm2とし、上下突き全面とした。針深度は8mmとした。NPの後のWJ処理は、水圧3.5MPa、ウェブ全面に対して表裏各1回処理とした。
【0071】
以上の条件をまとめて下記表1に示した。また、実施例1〜6及び比較例1〜3の不織布の物性を上記のとおり測定し、その結果を下記表1に示した。なお、表1において、MDとは不織布の機械方向(縦方向)であり、CDとは幅方向(横方向)のことである。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の実施例1〜6と比較例1〜3のデータを比較すると、実施例1の不織布は、全面が水流交絡による不織布の比較例1や、実施例1における第2交絡形成するために行ったWJ処理を不織布の全面に行った比較例3の不織布に比べ、不織布の強力では劣るものの、拭き取り性能については良好な結果を示した。これは、実施例1の不織布では、NPで交絡した部分(第1交絡部)が適度に交絡しており、繊維の自由度が大きいため、ダストを取り込みやすいためである。また、全面がNP交絡による不織布である比較例2と比較すると、実施例1の方が破断強力や10%伸長時応力は大きいものであった。つまり、実施例1の不織布は、従来の水流交絡不織布やNP不織布では持ち得なかった、拭き取り性能と不織布の強力という2つの機能を同時に兼ね備えているものである。したがって、実施例1の不織布は、良好な拭き取り性を示しつつ、拭き取り時に不織布が変形したり、繊維の脱落したりすることが少ない不織布である。
【0074】
また、実施例2と実施例3を比べると、実施例3の方が拭き取り性能がよい。これは低交絡(NP)部分の幅が大きい方が拭き取り時にダストを十分に絡み取ることができるからだと思われる。また、実施例5と実施例6とでは、実施例5の方が拭き取り性能がよい。これは、実施例6の不織布は熱処理することで構成繊維が捲縮し、嵩高になったが、密度も高くなり、繊維の自由度が無くなったこと及び嵩が出過ぎて高密度部分(第2交絡部)の拭き取りに対する寄与が少なかったためと思われる。しかし、実施例6の不織布は、第1交絡部と第2交絡部との厚み差は大きいものであり、意匠性に優れた不織布である。また、高強力であり、特にCD方向の強力は大きいものであったため、拭き取り時に不織布がよれにくいものであった。
【0075】
また、実施例1と実施例2〜6を比べると、実施例1の拭き取り性がよい。これは、太繊度(6.6dtex)の繊維を使用していることが原因の1つと考えられ、実際に実施例1の不織布はダストを取り込みやすいものであった。また、第1交絡部の幅と第2交絡部の幅との比の値(第1交絡部の幅/第2交絡部の幅)についても、実施例1が5で、実施例2〜5が1で、実施例6が約0.7であるように、実施例1の値が最も大きかったことが、実施例1の拭き取り性がよかった原因と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の不織布は、例えばスーパーマーケットの床やキッチンの床などに敷かれている樹脂シート、フローリング床などの比較的大きなダストを有する面を拭き取るのに好適である。他にも、エアフィルター、液体用フィルター、吸収性物品(特に吸収体用基布)、カーペットの表面材、熱交換器、結露防止シート、壁紙、クッション材、吸音材、断熱材、保温材、播種シート、パップ剤用基布、液吸い上げ用の芯、スポンジ、マット、液体保持材、乾燥剤・吸着剤・脱臭剤などを入れる収納物などの各種用途にも好適である。
【符号の説明】
【0077】
1,3 第1交絡部
2,4 第2交絡部
10,11 不織布
21 コンベア
22 ウェブ
23 ストリッパプレート
24 ベッドプレート
25,40,61 ニードル
26 ニードルボード
27 ニードルビーム
28a,28b デリベリローラ
29 処理後のウェブ
30 ニードルパンチ処理装置
41 ブレード部
42 バーブ(刺)
43 シャンク部
44 クランク部
50 水流交絡処理装置
51 高圧の水流(ウォータージェット:WJ)
52 第1交絡処理された不織布
53 メッシュスクリーン
54 ロールシェル
55 減圧ライン
56 処理水
60 ニードルが植針されたニードルボード
62 ニードル群
70 ノズル
71 オリフィス
72 オリフィス群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維集合体を含む不織布であって、
前記不織布はニードルパンチにより構成繊維を交絡させ、この状態で残存する部分を第1交絡部とし、
さらに前記不織布の所定個所の構成繊維を交絡させて第2交絡部とし、
前記第1交絡部と前記第2交絡部とは相互に離間して複数列存在しており、
前記第1交絡部は前記第2交絡部に比較して相対的に繊維密度が低く、
断面から観察したとき、前記第1交絡部は前記第2交絡部より少なくとも片面の表面に突出していることを特徴とする不織布。
【請求項2】
不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、前記第1交絡部は前記第2交絡部に比較して繊維密度が0.005〜0.14g/cm3低い請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
不織布1cm2あたりに3gの荷重を加えた状態において、前記第1交絡部は前記第2交絡部より少なくとも片面の表面に0.3〜2.0mm突出している請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記第2交絡部はニードルパンチ又は水流交絡により形成されている請求項1〜3のいずれかの1項に記載の不織布。
【請求項5】
前記第1交絡部の幅は2mm以上であり、前記第2交絡部の幅は2mm以上である請求項1〜4のいずれかの1項に記載の不織布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの1項に記載の不織布を含む拭き取り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117095(P2011−117095A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274737(P2009−274737)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】